【ニューダンV3】最原「逆転紅鮭団?」 (210)
この前に
最原「性格逆転スイッチ?」
というssを書いた者です。あれの続きやります。当然ながらネタバレオンパレードなので未クリアの人はご遠慮をば
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1486111850
前回までの紅鮭ライブ!
恋愛観察バラエティ『紅鮭団』に強制参加させられてしまった最原クンは、ある日、自分以外の全員の性格が逆転した世界へとトリップしてしまう。
それでも兄貴成分は蒸発していなかった百田クンと共に、逆転世界からの脱出に成功。しかし、その過程でアンジーさんはゴン太クンに改造されてしまう。
そもそもあの世界での紅鮭団はどうなっていたのか? そして、あの世界の最原クンはどこに行ってしまったのか?
その謎がついに明かされる……! のか?
性格逆転まとめ
赤松:しっかり者のお姉ちゃん⇔グレてやさぐれまくったひねガキ
春川:不愛想で他者と壁を作る女性⇔コミュ力カンスト気味のうざいくらい朗らかな女の子
入間:エ口方面に下品かつ妙なところで初心⇔しずしずとした雰囲気の姉御
茶柱:男死は死ね⇔女死は死ね
百田:滅茶苦茶な言動を繰り返す熱血漢⇔理路整然とした冷静沈着の男
東条:滅私奉公で一種機械的なメイド⇔仕事はできるがどこか隙だらけのドジっ子
星:生きる意味を見失ったニヒルダンディ⇔悪に堕ちる。欲望のために
アンジー:神の敬虔なる従者⇔完全なる金の奴隷
夢野:おっとりマイペース口リ⇔感情丸出しスピード狂
真宮寺:主人格がデフォで是清⇔主人格がデフォで是清姉
王馬:有ること無いこと駄々流しの子供じみた嘘吐き⇔落ち着き払った優雅なカリスマ
キーボ:人間に見下されることを嫌うロボット⇔ロボットが地球を支配する未来を夢見るディストピア脳
白銀:委員長タイプのオタク⇔孤高のスケバンかつオタク
天海:ミステリアスでクールな少年⇔鼻たれ小僧
ゴン太:心優しき昆虫博士⇔ダークネス街道まっしぐらのマッドドクター
最原:すぐに判明予定
最初の教室。最初の日。ゼロから始まる学園生活(逆転side)。
赤松(ロッカーの中に閉じ込められていたらしい私は、ゆっくりとドアを開けた。その先の光景は……)
赤松「ここって……教室?」
赤松「……!?」
赤松「えっ。何これ。ここどこ? なんで私、こんなところにいるの?」オロオロアタフタ
赤松「とっ、とにかく外に電話……ああ、くそっ! スマフォないし!」
赤松「どうして私がこんな目に……!」
ドタバタガチャーーーン!
最原「ロッカーの中からおっはーーー!」
赤松「きゃああああああああ!」ビククーーーンッ
赤松(私が詰め込まれていたのとは隣のロッカーから、謎の高校生が現れた!)
最原「キミは誰だ!?」
赤松「こっちの台詞なんだけど!?」ガビーンッ!
最原「あ、ごめん。あまりにも異常な状況に、興奮……失敬。もとい混乱していたみたいだ」
赤松「は、はあ……?」
赤松(なにコイツ……)
最原「えーっと、ひとまず自己紹介しておこうか。僕は最原終一。超高校級の探偵だよ」
赤松(……超高校級? ということは私と同じ……別に言う必要はないから言わないけど)
赤松「私は赤松楓……えっと……」
最原「す、凄いよ……まさかこんなに急に事件に巻き込まれるなんて……」
最原「探偵としての勘がうずうずしまくってるよ……」ハァハァ
最原「あっ、ごめん。聞いてなかった。もう一回お願い」
赤松「聞けよ!!」ガビーンッ
かくかくしかじか
最原「なるほど……じゃあ赤松さんも気が付いたらここに来ていたと……」
最原「ついでにここがどこなのかも、僕と同じでまったく見当がつかないと」
最原「ありがとう! 話を聞かせてくれて! どんなに些細なことでも情報は欲しいからさ!」ニコニコ
赤松「礼を言われるようなことはしてないんだけど……」
最原「ふむ。しかし、これで手詰まりかな。この教室で調べられることは、もうなさそうだし」
赤松「ねぇ。それならさっさと出ようよ。ここ、草がボーボーで、ぶっちゃけあんまり好きじゃない」
最原「そうだね。まったく同意見だ。教室のドアはあれだよね」ガララッ
エグイサル「おはっくまー」ガシャコーンッ
最原「あっ。巨大ロボだ。おっきーなー」スゲー
赤松「」
赤松「うひゃあああああああああ!?」エスケープッ
最原「あっ! 赤松さん! 急に走ると危ないよ!」ダッ
エグイサル「そうだよー! 廊下は走っちゃダメなんだぞー!」ガシャコンガシャコン!
赤松「ついてくんなああああああああ!」
赤松(こんにちは。私、赤松楓。この狂った学園生活の主人公さん)
赤松(今、妙に胡散臭い探偵と、巨大ロボに追われています)
赤松(理由? こっちが知りたいよッ!)
最原:自分の才能に対して後ろ向きで謙虚⇔自分の才能に対して前向きで慢心気味
春川「……あっ! やっぱりまだいたっ!」シュタッ
赤松「ひっ!」
赤松(謎のロボ、謎の探偵に引き続いて、謎の女の子が現れた!)
春川「そっちの道はダメ! あのバケモノがもう一匹いるから!」
赤松「えっ?」
最原「なんだって!? それは本当かい!?」ヒョコッ
赤松(もう追いついてきた!?)ガビーンッ!
春川「みんな待ってるから、こっちの道に急いで! 体育館で集合ね!」シュッ
赤松(言いながら、女の子は踵を返して更に走っていく)
最原「えっ! そっちはバケモノがいる方向じゃないの?」
春川「まだ生徒がいるかもしれないから、一応ざっと見回ってから合流するー!」
春川「先に行っててー! てー……てー……」
赤松「セルフエコーをかけながら行っちゃった……何アレ」
最原「……他の生徒?」
最原「……いや、考えるのは後にしよう。そろそろ追いつかれちゃうし」
エグイサル「待ってー」
赤松「わああああああああ!?」ガビーンッ
体育館
赤松(体育館のドアを開けた向こうには……確かに生徒たちがたくさんいました)
最原「十三人……さっきの子と、僕たちを合わせると十六人か」
百田「おい。そのさっきの子っていうのは、ツインテールに赤い制服のアイツか?」
赤松(うっ。高圧的な男子……苦手なタイプ……)
最原「まさにその子だよ。キミの知り合い?」
百田「いや、違う。初対面だ。だが俺たちをここに誘導したのは主にアイツだからな」
百田「……無事だったか?」
最原「ケガ一つなかったよ」
百田「そうか」
赤松(あれ、態度はともかく、根は優しい……?)
ガシャガシャガシャコンッ!
エグイサルs「おはっくまー! 体育館に堂々登場、エグイサルsだよーん!」
赤松「きゃああああああああ!?」ガビーンッ!
白銀「ちくしょう! 結局完全に囲まれちまったじゃねーか!」
キーボ「ひええええ! やめてください! 殺すなら愚かな人類からにしてください!」
王馬「ふん。愚かなのはキミだよ。常に余裕をもって優雅に行かないと」
東条「こ、怖いよー! バケモノもそうだけど、なんかこの子のノリも怖いよー!」ガタガタ
天海「でっかいロボだ! かっこいいー!」キラキラキラ
最原「僕もまったく同感だよ! かっこいいー!」キラキラキラ
赤松「言ってる場合じゃないでしょ!?」ガビーンッ!
天海「大丈夫だよ、名も知らぬお姉ちゃん!」
天海「武力をチラつかせて、チラつかせるだけしかやってないもん!」
天海「俺たちを殺す気ならとっくにやってるはずだよ!」
赤松「あっ、それもそうだね……って、見た目より頭いいの?」
最原「僕はそこまで考えてなかった。よく考えたらこの状況ってピンチだったね」
赤松「おい探偵!」
エグイサルレッド「あれ……おかしいな。一人足りない」
エグイサルイエロー「せやろな。一人はまだこの学園中を走り回ってるはずやで」
エグイサルブルー「すぐに来ると思うぜ。なにせ、学園のモニター中に、この状況をライブしてるからな!」
エグイサルブルー「学友がピンチになってると知れば、確実にやってくるはずだぜ!」
エグイサルピンク「エグいことするわね……」
百田「俺たちを人質にしているわけか……屈辱的だな」ギリッ
最原「さっきから思ってたけど、キミって大分いい人っぽいね」
百田「……」ギロリ
最原「あ、ごめん。挑発の意味はなかったんだけど……」シュン
赤松「……な、何のつもりなの?」
エグイサルレッド「は?」
赤松「私、こんなことに合う謂われはまったくないんだけど」
赤松「なんでもいいから、家に帰してよ!」
エグイサルイエロー「いややわ。余裕が出てきた途端に反抗的になりだしおったで」
エグイサルブルー「弱いヤツには徹底的に強気。いじめっ子の典型パターンだな」ヘルイェー!
赤松「うるさいっ! とにかく家に帰して!」
エグイサルグリーン「ダメダヨ」
赤松「は?」
エグイサルグリーン「ムリダヨ」
赤松「な……何言ってんの? ふざけてんの?」
最原「……武力をチラつかせるだけ。直接的に害は与えない。かと言って、帰すつもりもない」
最原「なにかやらせたいことがあるんだね?」
赤松「えっ?」
バターンッ!
春川「ごめん、みんな! 大丈夫!? ケガとかは……」
春川「うわぁ、モニターで見るよりでっかーい!」ガビーンッ
エグイサルレッド「あ、全員揃ったね」
エグイサルブルー「それじゃあ説明すっか! 覚悟はいいか!?」
エグイサルイエロー「あれ。お父やんは?」
エグイサルピンク「発注ミスで左右の色を逆にしちゃったからしばらく来れないって」
エグイサルレッド「ああ、オイラたちだけじゃなかったんだ……」ズーンッ
エグイサルs「……」ズーン
入間「急に意気消沈しはじめたわね」
夢野「チャンスか? チャンスじゃろ? これ。速めにやるか?」
茶柱「アホですか、そこの幼児体系! あれだけ大きければ多少の隙なんて、あってないようなものです!」
真宮寺「……あっ!」
茶柱「何か気付いたことでも?」
真宮寺「……化粧が崩れてきちゃったみたい」
茶柱「後にしてください!」
最原「みんなにも余裕が出てきたなぁ。段々グダッてきたぞ」
赤松(帰りたい……)
かくかくしかじかべにしゃけだん
赤松「れ、恋愛観察バラエティ……?」
アンジー「……れん、あい? お金の付き合いとどう違うー?」
獄原「僕が虫に向ける愛情とどう違う?」ゴゴゴゴゴゴ
星「ふはははははは! 中々面白い趣向じゃないか! どれ、ひとまず全員俺のものにするか!」
茶柱「転子の春が来たああああああああ!」ハレルヤー!
最原「みんな割と乗り気だなぁ」
赤松「冗談じゃない! こんな無理やり連れてこられて、そんなくだらないこと……!」
赤松「私は先に帰らせてもらうから!」
エグイサルグリーン「……死亡フラグ、バリバリダネ」
赤松「うっさい!」ガァー!
エグイサルレッド「ああ、行っちゃった。でも番組の概要は説明したから、もういいよね?」
エグイサルブルー「いんじゃね?」
エグイサルイエロー「ほな、さいならや。ワイらは学園の整備があるから」
春川「うん、じゃあね! バイバイ!」
春川「……とか、言うわけないでしょ」ギンッ
エグイサルピンク「えっ?」ビクッ
春川「私もあのピンクベストの子に同感。せめて、私以外の全員は出してよ」
春川「さもないと……刺し違えてでも、あなたたち全員を殺してみせる」ゴゴゴゴゴゴ
エグイサルブルー「何ィーーーっ!? 唐突なバトル漫画展開だとォーーーッ!?」ガビーンッ!
百田「待て」ガシッ
春川「!」
最原(殺気むんむんな赤い女の子を、さっきの優しい人が止めた)
春川「えーっと……百田、だっけ。放してよ」
春川「まさか、ことこの状況になってまで人殺しはいけないとか言うつもり?」
春川「ありがたいけど、そういうこと言ってられる場合じゃ……」
百田「道徳なんかどうでもいい」
春川「え?」
百田「刺し違えてでも、って部分が間違いなんだよ」
百田「俺たちを集めたお前は、間違いなく有能だ。だから、こんな場所で死ぬ人材じゃない」
百田「俺にはお前が必要だ。だから勝手に死ぬことは許さない」
春川「……」
春川「……」ボッ
最原「え。なんで赤くなってんの?」
春川「えっ。私、赤くなってる? やだ……」
真宮寺「新たな何かが始まる予感……いいわね」
夢野「速いのぅ! 流石の速さじゃのぅ!」
夢野「よし! こうしてはおられんぞ! ウチもひとまず色々やってみるんじゃ!」ギュンッ!
茶柱「よ、幼児体系が消えた!? いや違う……早すぎて見えなかった!?」
茶柱「あの幼児体系、一体……!?」
獄原「……さて。僕はちょっと虫さんを探してくるよ……」ゴゴゴゴゴゴゴ
東条「あ、解散の流れ……になってるねコレ……」
入間「いいんじゃないかしら。私様も流石に疲れたわ」
東条「じゃあ、お茶でも出そうか……私、超高校級のメイドだから任せてほしいな……ふふ」
最原(うーん……こういう流れなら、ひとまず赤松さんの様子でも見ようかな)
最原(彼女、一番反発してたから心配だし)
中庭
赤松「ひっく……ひっく……」グスグス
最原(な、泣いてるーーー! しかも結構ガチ目な泣き方だーーー!)ガビーンッ!
赤松「な、なんで……なんで出口がないの……?」エグエグ
最原「あ、赤松さん。大丈夫?」
赤松「うっ!」
赤松「……」ゴシゴシ
赤松「な、なに? 最原。気安く話しかけないでほしいんだけど」
最原「今更毅然とされても……涙の跡残ってるから……」
赤松「……チッ!」ゲシッ
最原「痛いっ! なんで蹴るの!」
赤松「うっさい!」
ああ、トイレットペーパーがないことに気付いた。ちょっと買ってくるので、逆転sideの超高校級の自己紹介は後にします
最原「なるほど……果ての壁に、来る気配のない救助……そして未整備の学園……」
最原「段々と面白いことになってきたね」
赤松「どこが?」ギロリ
最原「あ、ごめん。そう怒らないでよ。ただ僕にとっては面白いってだけの話だからさ」
最原「……あ。そうだ。赤松さん、一緒に学園をちょっと回らない?」
赤松「は?」
最原「さっきあのロボから聞いたよね?」
最原「この学園には超高校級の生徒が、合計で十六人いるって」
最原「今は学園中にバラバラに散ってるけどさ。力を合わせれば、なんでもできる気がしない?」
赤松「何が言いたいの?」
最原「さっき言った通りだよ。学校を回る。ついでに、他の生徒たちのことを知る」
最原「挨拶回りってヤツかな。どう?」
赤松「……遠慮しとく」
最原「そう」ガシッ
赤松「えっ?」
最原「じゃあ行こうか」ニコニコグイグイ
赤松(コイツ超強引!)ガビーンッ!
才囚学園 廊下
白銀「……ん。なんか用か?」
赤松(スケバンルックに眼鏡。鋭い眼光。あんまり近づきたくないタイプだ)
最原「うん、大した用じゃないからすぐ終わるんだけどさ」
最原「僕は最原終一。超高校級の探偵だ。キミは?」
白銀「……ん。なるほどな。自己紹介ってわけだ」
白銀「私の名前は白銀つむぎ。"超高校級のコスプレイヤー"だ」
赤松「スケバンじゃないの!?」
白銀「スケバンではない」
最原「コスプレイヤー……ってことは、作ったり着たりするの?」
白銀「まあ作る方が得意なんだが……」
白銀「コスプレを利用して自分の承認欲求を満たす連中を狩っていて」
赤松「は?」
白銀「そのコスプレイヤー崩れの連中の返り血を浴びている内に」
赤松「えっ?」
白銀「私自身にも着る方の能力が身に付いたってのが本当だな」
赤松(何を言ってるのかまるでわからないけど超怖ぇーーー!)ガビーンッ!
天海「あはははははは!」ダダーッ
赤松「うわっ!」
赤松(白銀と別れて廊下を歩いていたら、走る少年とぶつかりそうになった)
天海「あっ、ごめんなさい! 今ちょっと夢野さんとかくれんぼしてて!」
赤松「か、かくれんぼ……?」
赤松(初対面時でも思ったけど随分と子供っぽい……)
最原「あー……時間がないのなら自己紹介は後にしようかな」
天海「自己紹介? いいよ!」
最原「あ、そう? じゃあ改めて。僕は最原終一。超高校級の探偵だ」
天海「俺は天海蘭太郎! 超高校級の……やべっ! やっぱり後にして!」
赤松「は?」
天海「そんじゃねー!」ダダーッ
最原「あ、行っちゃった……」
赤松「自分の才能を言う手間も惜しむなんて、どんだけ慌てて……」
最原「あ、ストップ。赤松さん。ちょっと右足を出してみて」
赤松「え? 右足? こう?」ズイッ
ガンッ コケッ
夢野「んあああああああああ!?」ズシャアアアアアアア!!
赤松(右足に衝撃が走ったかと思ったら、急に幼児体系の少女が現れて、思いっきり廊下に転んだ……!?)
赤松(な、なにを言っているのかわからないと思うが、私自身もわけがわからなかった……)
夢野「このウチを、止めさせたなぁぁぁぁぁぁ!?」ギュンッ
赤松(そしてすぐに起き上がり、私の胸倉を掴んで揺さぶり始めた!)ガビーンッ!
夢野「この世の理は速さなんじゃ! 遅いことなら誰でもできる! 十年あればバカでも大魔術が使える! 月刊漫画家より週刊漫画家! 週刊よりも日刊じゃ! つまり速さこそがこの世の基本原則! この世の基本原則である以上魔法の原則であり、魔法の原則は超高校級の魔法使いでもあるウチの原則なんじゃあ! わかったらその無駄乳をよこすか謝るかを決めい!」ガクガクユサユサ
赤松「いやああああああ! 何を言ってるのかわからないけど怖いーーー!」
最原「えーっと、キミが夢野さん?」
夢野「そうじゃ! 一般では超高校級のマジシャンで通っておる! 夢野秘密子がフルネーム!」
夢野「チッ! 無駄乳を奪うのも謝らせるのも時間の無駄じゃな……」
夢野「ウチは天海を追うのでもう行くぞ!」ギュンッ!
赤松「……」
赤松「……なんなの? 凄い疲れた」ズーン
最原「ガンバ!」キュピーン!
赤松「あんたのせいでしょ……!」
食堂
入間「……ふう。本当においしいわね。この紅茶」
赤松(食堂に足を運んだ私たちは、和服を着こんだ落ち着いた雰囲気の女性を見つけた)
赤松(よかった。この人なら面倒なことにはならなさそう)ホッ
入間「あら。あなたたちは」
最原「えーっと、さっき会ったよね。僕は最原終一。超高校級の探偵だ。キミは?」
入間「この美貌でわからないかしら?」
赤松(前言撤回! やっぱなんかコイツも面倒!)ガーンッ!
入間「……わからないのね。そう」
入間「入間美兎。超高校級の発明家。目薬型コンタクトとか作ったわ。本当に知らない?」
最原「ぐいぐい来るね……って、目薬型コンタクト? あれを作ったの?」
赤松(クラスメートが使ってるのを見たことがあるな……それが本当ならちょっと凄いかも)
入間「……まあいいわ。知らないのなら、これから知っていけばいい」
入間「私様の美貌と、この頭脳。余すことなくすべてをね」ニッコリ
赤松「……凄い面倒くさい性格」
入間「何か言った?」ギンッ
赤松「ひっ」
東条「よし……二百五十六層超サクサククッキーの出来上がりっと」
東条「入間さん、喜んでくれるかなぁ……」
最原「……えーっと、ちょっといい?」
東条「えっ。あっ、はーい! なんでしょう! お茶ですか? お菓子ですか?」ニコニコ
最原「いや、お茶もお菓子も今は……いや、あとで貰おうか」
赤松「自己紹介でしょ。早くしようよ」
赤松(美味しそうな匂いが充満してて、ちょっとこの空間落ち着かないし……)
東条「作ってほしいものがあったら何でも言って!」
東条「私、東条斬美が"超高校級のメイド"の二つ名にかけて、全力で作って見せるからさ!」ニコニコ
東条「……そうだ! なんなら味見してみる?」
赤松「あ、味見?」
赤松(そこに見える出来立てクッキーを……味見?)ゴクリンコ
東条「そう! 夜に向けて作った、このおでんの味見!」グツグツグツ
赤松「」
東条「まずはこの味がよく染みた大根から。はい、あーん……」ホカホカ
赤松「お笑い芸人か私は!?」ガビーンッ!
倉庫
王馬「……ふむ。参ったな。これじゃあ部下たちと連絡が取れない」
赤松(倉庫に足を運んだ私たちが見たのは、見た目の割にやたら落ち着いた少年だった)
王馬「ん。お前たちも倉庫に何か用かい?」
最原「いや。今はちょっと探索してるだけだよ」
王馬「そっか。じゃ、そのついでに自己紹介だ。俺の名前は王馬小吉だよ」
王馬「超高校級の総統なんだ。よろしくね」
赤松「……は? 総統?」
王馬「と言っても、DICEっていう総勢十数人の小さい秘密結社の総統なんだけど」ハハ
最原「DICE! 超有名どころの犯罪組織じゃないか!」
最原「えっ。DICEの総統なの!? 本当に!? マジで!? マジで!?」キラキラ
王馬「そこまで食いつかれるほどの組織じゃないんだけどな。でも知っててくれて嬉しいよ」
赤松「……」
赤松(あ、これ私、蚊帳の外? べ、別に寂しくないけど!)
キーボ「恋愛……人類と恋愛……? バカな。ありえない……が、しかし方法がそれしかないのなら……」
最原「あれ。倉庫の端にまだ誰かいるね」
赤松「ええ? アイツにも挨拶するの……? ぶつぶつ言ってて近づきたくないんだけど」
最原「一応ね。おーい、そこのメカメカしい人ー!」
キーボ「あ。僕のことですか。卑賎なる人類がなんの用です?」
赤松(やっぱ話しかけたの、どう考えても失敗だよ!)ガビーンッ!
最原「卑賎なる人類が物申す! 僕の名前は最原終一! 超高校級の探偵だ!」
赤松「何そのノリ!?」
キーボ「興味はないが、名乗りに応じようか!」
キーボ「ボクの名前はキーボ! 超高校級のロボットだ!」
キーボ「いずれキミたちを滅ぼす者の名だ! 覚えておくがいい!」
最原「そんなことはさせはしない! 希望は……希望は前に進むんだッ!」ウオオオ!
赤松「だから何このノリ!?」ガビーンッ!
ガッチャンガッチャンガッチャン
赤松「ん。何この音……?」
最原「何かを運び出す音かな? 倉庫だから不思議じゃないけど、ちょっと量が多いな」
アンジー「あ。えーっと、誰だっけー?」
赤松(風呂敷いっぱいに何かを詰め込んでいる褐色肌の妙な女が現れた)
赤松(これまでのパターンから言って、コイツも面倒なヤツだ絶対……!)
最原「超高校級の探偵、最原終一だよ」
アンジー「おー。探偵さん。アンジーはねー、夜長アンジーっていうんだー」
アンジー「超高校級の美術部なんだよー」
最原「ってことは、その風呂敷に入ってるのは画材とか?」
アンジー「いや、金目のものをかたっぱしから詰めただけだよー」
赤松「んっ?」
アンジー「脱出できたときにこれ全部うっぱらって、アンジーの口座に入れるんだー」
アンジー「お金は裏切らないからねー」
赤松(ほらやっぱり面倒な人だったーーー!)ガビーンッ
最原「さてと。学園の中は一通り見たかな……あとは裏庭とか?」
赤松「なんか……もう既にお腹いっぱいなんだけど。何この変人見本市……」
赤松「同じ超高校級だとは思いたくないよ」
最原「……やっぱり赤松さんも超高校級の何か、なんだよね?」
赤松「ん……別に、つまらない才能だから言うつもりはないんだけど」
最原「ピアニストじゃない?」
赤松「はっ!?」
最原「あ、ビンゴだね。これ」
赤松「ちょ、ちょっと待って。なんで私の才能のこと……!」
最原「赤松さんが体育館から出て行って、合流するまでにちょっと……お。あの人影は……」
真宮寺「あら。あなたたち」
赤松(口紅とかしてるし、妙に女性的な口調で喋ってるけど、確実に男性だよね……)
最原「えーっと、僕たちは学園を回って、みんなに挨拶してるんだ」
真宮寺「そう。まあ、悪い手ではないわね。普通の手段で脱出するのなら、の話だけど」
赤松「……普通の手段?」
真宮寺「ルールに則って、誰かと恋愛関係になれば脱出可能……って話だったでしょう?」
赤松「そんなルール、クソ食らえなんだけど」
真宮寺「ふふ。怒らないで、可愛い人。まだそれ以外の脱出方法がないと決まったわけではないわ」
真宮寺「……ま、あの果ての壁がある限りは無理でしょうけど」
赤松「……チッ」
最原「えーっと……僕は最原終一。超高校級の探偵。キミは?」
真宮寺「一応、真宮寺是清。超高校級の民俗学者よ」
赤松(ん……? 一応、が付いてる場所がおかしくない……?)
赤松(……まあ、どうでもいいか)
真宮寺「……ふふ」
赤松(そして私たちは再び校庭へ繰り出した)
茶柱「きゅうじゅうきゅー。ひゃーくっ! よし! 転子は今度こそ負けませんよ!」
赤松(そこには、妙にうるさい女子生徒がいた……多分コイツもかくれんぼに参加してる……)
茶柱「あっ! あなたたちは……!」
最原「えーっと、キミもかくれんぼに参加してるの?」
茶柱「……はい。夢野さん、天海さん、星さんが参加する、超ハードモードかくれんぼに参加中です」
茶柱「転子は……転子は悔しいです。超高校級の合気道家として、これほどの屈辱を味わったことはありません」
茶柱「夢野さんに……真っ先に見つかってしまいました……!」
茶柱「女死なのに! 夢野さん、女死なのに! もう! もう!」ダンッダンッ
赤松(凄い地団太踏んでる……)
茶柱「えーっと、最原さんでしたよね。天海さんと夢野さんから聞いてます」
茶柱「ちょっとデブった女死と一緒に挨拶回りをしてるとか」
赤松「でぶっ!?」ガビーンッ!
茶柱「誰かと仲良くしようというその気概と理念には感服します」
茶柱「……が、転子は女死とだけは仲良くできませんので、悪しからず! それでは!」ダッ
赤松「ちょっ、待てっ! 私、デブッてないよ! デブッてないよね!? ね!?」
最原「デブってはないと僕は知ってるよ。探偵だから」
最原「デブってると言われたのは単純に制服が胸あたりの出っ張りでダボダボになってるからで……」
赤松「」
最原「……あれ。赤松さん? おーい、固まってるよー。どうしたー?」
赤松「そ、そこまで聞いてないんだよバカッ! 死ね!」ゲシッ
最原「理不尽ッ!」
星「ふん。茶柱はさっさと校舎の中に入っていったか」
星「甘いヤツだ。すぐ傍に俺がいる可能性に考えが及ばなかったのだからな」
赤松「うわぁ!?」
赤松(気が付いたら、すぐそば、足元に渋い声をした少年がいた。いつの間に!?)
最原「……星くん、だよね。改めて初めまして。僕は」
星「超高校級の探偵。最原終一だろう? すでに聞いたさ」
最原「耳が早いな」
星「……ところで、お前さん」
赤松「えっ、私?」
星「それくらいの方が抱き心地が最高だ。故によし! 胸を張れ!」
星「超高校級のテニス選手、星竜馬が保証してやろう! ふはははははは!」
赤松「」ブチッ
星「おっと。逆鱗に触れたようだな。俺は逃げる」
赤松「絶対殺す」
星「絶対逃げる!」ギュンッ!
赤松「……どいつもこいつも……!」イライラ
最原「彼なりの励ましのつもりだったんじゃ……」
赤松「ああ?」ギロリ
最原「ごめん」
裏庭
最原「……あれ。妙だな。一人くらいいそうな気がしたんだけど」
赤松「誰もいないじゃん。当てが外れたんじゃない?」
最原「んー。僕の勘も鈍ったかなー……ま、いいか。それじゃあ校舎に戻って……あ」
赤松「あ?」
最原「赤松さん、後ろ」
赤松「後ろ?」
獄原「……」ゴゴゴゴゴゴゴ
赤松「う、うきゃあああああああ!?」ガビーンッ!
赤松(さっきまで間違いなく誰もいなかったはずなのに、いつの間にやら私の後ろに偉丈夫が!)
最原「まさかマンホールの中から出てくるとは……」
獄原「……僕の名は獄原ゴン太。超高校級の昆虫博士」
最原「あ、どうもご丁寧に。僕は超高校級の探偵の最原終一だよ」
獄原「……」ガタンゴトン
赤松「えっ。マンホール、しめちゃうの? 出口かもしれないのに」
獄原「出口はない。少なくとも、使えるものはね」
赤松(……なんか含蓄のある言葉だな)
獄原「あと、虫もいなかった。これってどういうことだろうね?」
最原「……この学園自体がどこかおかしいって言いたいの?」
獄原「……」
赤松(ゴン太はそのままマンホールを閉め、最原の問いにも答えず、どこかへと去って行った)
最原「さて。あと行ってない場所といったら学校の地下なんだけど……」
赤松「けど?」
最原「いやー、邪魔するのは流石に悪いかなって思って、ちょっと避けてたんだよね」
最原「でももう流石に待てないから、いいよね」
赤松(なんの話?)
学校、地下への階段周辺
春川「……」ソワソワウロウロ
赤松「あっ……アイツ」
最原「うん。あの子だよ」
最原「やあ、ご機嫌いかがかな?」
春川「ふふぁっ!?」ビクーンッ!
春川「……あっ。アンタたちは……」
春川「えーっと……コホン。自己紹介はまだだったよね」
赤松(すぐに平静を取り繕った女の子は、朗らかに笑顔で自己紹介を始める)
春川「超高校級の保育士、春川魔姫だよ。よろしくね」
最原「僕は最原終一。超高校級の探偵なんだ。よろしく」
春川「……え? 探偵?」
最原「そうだよ。どうかした?」
春川「……ごめん。さっきのは嘘。実は私は超高校級の暗殺者なんだ!」ニコニコ
赤松「はっ!?」
最原「ああ、なるほど! 納得した!」
赤松「納得できんの!?」ガビーンッ!
春川「あのさ、最原。私、探偵がどうやって犯人を見つけるのか凄い興味があってさ! 仕事で役立つかもだし!」
春川「だから、暇になったらアンタのノウハウを教えてよ! 代わりに暗殺者のノウハウも教えるからさ! どう?」
最原「な……なんだって……そんなの……そんなの……」ガタガタワナワナ
最原「楽しいに決まってるじゃないか! 教えるよ! 絶対やる!」
春川「やったぁ! 交渉成立ぅ! ハイタッチハイタッチ!」
二人「「イエーーーイ!」」バチコーーーンッ!
赤松「……」
赤松(狂ってる……!)
最原「あ、ところで春川さんはこんなところで何やってたの?」
春川「えっ! そ、それは……」
春川「……も、もう用はないからいいんだよ。じゃあね」
赤松(春川は誤魔化すように、そそくさとその場から去って行った)
最原「……なるほどね。地下で間違いないようだ」ニヤリ
赤松「え?」
図書室
百田「……お前か」
最原「お前、じゃなくて最原終一だよ。超高校級の探偵なんだ」
赤松(あのときの不愛想な善人がそこにいた。図書室の本の内の一冊を、黙々と読んでいたらしい)
百田「何か用か? 忙しいわけではないが、読書の邪魔をされるのも不愉快なんだが」
最原「いや。ちょっと挨拶回りだよ。あとはキミが自分の素性を明かしてくれれば終わりだ」
百田「百田解斗。超高校級の宇宙飛行士。以上」
最原「よし赤松さん。帰ろう」
赤松「えっ。これだけっ?」
最原「んー。僕も小説読んでるときは邪魔されたくないからさ……」
赤松(常識あるのかないのか……)
ゲームルーム
最原「はぁ、疲れた。流石に十四人ともなると骨が折れるねー」
赤松「私のこの疲れは、あんたが連れまわしさえしなければなかったはずのものだけどね」
最原「厳しいな、赤松さん」アハハ
赤松「……それにしても、早いな」
最原「何が?」
赤松「さっきの見たでしょ。夢野たちが、かくれんぼで遊んでるところ」
最原「ああ……遊んでたね。そういえば体育館でも夢野さんが真っ先に動いたんだった」
赤松「速さは力、って言うだけはあるね。私には無理だよ」
最原「……そうかな? 僕はもう既に赤松さんと友達のつもりだけど」
赤松「調子に乗るな」
最原「あ、マジで厳しいやコレ」
赤松「……ねぇ。なんで私を連れまわそうって思ったの?」
赤松「私、そこまでアンタに優しくしたつもりも、するつもりもないんだけど」
最原「あー、いやー、それに関しては期待してないんだけどさ」
最原「なんか放っておけなくて」
赤松「……それだけ?」
最原「まあ、逃げたり避けたりする人間を追いたくなるのは探偵のサガだよね」
赤松「……あっそ」
赤松(なんだ。私に気があるとかじゃないのか。まあこんなナヨっとしたヤツは好みじゃないけど)
赤松「……ふぅ。それじゃあ、私そろそろ寄宿舎に行く。どんな部屋なのか知りたいし」
最原「あ、ちょっと待って赤松さん」
赤松「なに?」
最原「あのさ。実は僕、あのエグイサルから聞いたんだけどさ」
最原「この学園には超高校級の研究教室っていうのがあって、それが全員分用意されてるんだって」
最原「で、さっき学園をざっと調べてみたら、超高校級のピアニストの研究教室があったんだ」
赤松(それで私の才能にある程度の当たりがついてたのか……)
最原「中には立派なグランドピアノ。もうおあつらえ向きでさ」
赤松「……!」
赤松「まさか、私に弾け、っていうの?」
最原「うん! 超高校級のピアニストの演奏、ぜひとも聞いてみたいな!」
赤松「絶対にイヤ」
最原「えっ」
赤松「絶対にい、や!」
最原「な、なんだよ。そこまで拒否ることないじゃないか……」
赤松「コンクールとか発表会だとか、私の内申にある程度の反映があるんならともかく」
赤松「それ以外の目的で弾くのだけは絶対に御免なんだよッ!」
赤松「……チッ。気分が悪くなった。帰る!」ザッ
最原「あっ、ちょっと!」
ガチャリ バタンッ
最原「……不機嫌、っていうか……完全に激怒させちゃったみたいだな」
最原「なんで……?」
もうそろそろ零時なので寝ます! 続きは今日の朝か昼!
翌日 朝八時 赤松の自室
赤松「……夢じゃなかった……嘘でしょ……」
赤松(誰かと恋愛関係にならないと脱出不可……ハハ。私じゃあどう考えても詰んでるし)
赤松(誰か助けてくれないかな……不安で仕方ないよ)
ピンポンピンポンピンポーンッ
最原「赤松さん! 朝だよ! 赤松さん! 夢だけど夢じゃなかったんだ! 赤松さん!」ドンドンッ
赤松「助けを選ぶ権利もないのか私は……!」
ガチャリンコ
最原「あ! おはよう赤松さ……」
赤松「朝っぱらからうるさいんだよ!」ゲシッ
最原「ごめんね! ちょっと興奮してたみたいだ!」ゲフゥ
最原「超高校級の探偵に認定されてから、初めての大事件だからさ!」
最原「しかも自分が当事者! 興奮するなって方が無理臭いよ!」キラキラ
赤松(朝っぱらからキラキラしててうぜぇ……)
最原「でもさ。もしかしたら裏技とか裏ルートとかの可能性があるから」
最原「一緒に出口探しとかどうかなって!」
赤松「……あんた、なんで……いや、いい。やっぱ興味ない」
最原「ん?」
赤松「いいよ。出口探し、手伝ってあげる」
最原「本当? やったぁ! 初助手だ初助手!」イエーイ!
赤松(……こんなヤツだけど、いないよりはマシか)
赤松(不安なことを忘れられるし……調子に乗らせるだけだから絶対言わないけど)
数十分後 食堂
最原「じゃあ最初は腹ごしらえだ! 東条さんの料理に舌鼓を打つことにしよう!」
東条「任せて! 私、頑張っちゃうから!」
夢野「この時間に速さは必要ない。ゆっくりと味わい、よく噛み、飲み込み、余韻に浸り……」
天海「おかわりー!」
夢野「ウチの話を聞け天海……」フッ
星「素晴らしい! なんという味だ! 東条、お前、俺のものになる気はないか!?」
東条「ふええ!?」
赤松(騒がしすぎる!)
その後、入間の研究教室
最原「その次は道具の調達だ! 入間さんに探偵七つ道具を作ってくれるように土下座して頼んだんだ!」
入間「率直に言って、ドン引きしたわ」
赤松(同情せざるを得ない……!)
入間「労力自体はかからなかったわ。私様は天才だもの」
入間「あ、七つ目の道具だけは使わないように。自爆装置だから」
赤松「何が自爆するって!?」
入間「キーボくん」
赤松「なんで探偵七つ道具でキーボが自爆すんの!?」ガビーンッ
その後、中庭
最原「次は聞き込み調査だ! 通りがかりの人に話を聞いてみよう!」
アンジー「いやああああああ! 助けてーーー!」ダダーッ
獄原「許さないよ……僕の研究教室から標本を盗み出そうとしたことは……」ゴゴゴゴゴゴ
獄原「必ず捕まえて、医療用ヒルの餌になってもらう……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
赤松「通りがかりの人に話を聞くんだっけ?」
最原「取り込み中の人は避けよう!」
赤松(流石にコイツも空気くらいは読むか……)
裏庭
最原「で、裏庭を調べようとやってきたわけだけど……あれ。マンホールが開いてるな」
真宮寺「私たちが開けたからよ」ヒョッコリ
茶柱「あっ! 最原さん! あとピンクデブ! おっはーです!」ヒョッコリ
赤松「私のことを言ってるのならマンホールに突き落とすよ?」イライラ
茶柱「はっ。見るからに運動不足な女死に言われても全然怖くないですねぇ」
最原「茶柱さん! やめようよ! 赤松さんは胸がでかくて着ぶくれして見えるだけなんだ!」
真宮寺「あら……あらあらあら」ニコニコ
赤松「最原ァ! あんたの余計な一言のせいで真宮寺がなんか凄い品定めしてくるんだけど! 何これ!?」
真宮寺「上から90で……真ん中が……」
赤松「いやあああああああ! やめて! 目測しないでぇ!」
最原「流石に反省する」
真宮寺「まあ冗談は置いといて。マンホールの中に『使える出口』は一つたりとも無かったと断言しておくわ」
茶柱「真宮寺さんとのタッグで何度も挑んだので、間違いないですよ」
赤松「似たようなことをゴン太も言ってたよね。一体、どういうこと?」
茶柱「あなたに言う義理はありませーん」ニコニコ
赤松「はっはっは、死ね」ニコニコ
最原「キミたちの相性ってば最悪だね」
真宮寺「まあ、こういうこともあるでしょう。ここには用はないから、私たちは去るわね」
茶柱「それじゃあ、私たちはこれにて。また会いましょう最原さん、無駄乳!」
赤松「アンタだってそれなりにあるでしょうが!」
最原「どうどう」
マンホール内部
赤松「……あからさまに出口って書いてある」
最原「でもこれ、ゴン太くん、真宮寺くん、茶柱さんの言う通りなら『使用不可』なんだよね」
赤松「アイツらの言うことなんて信用できないよ。とにかく私は行くから!」
最原「あっ、ちょっと待って!」ガシッ
赤松「何!?」
最原「こんなときこそ探偵七つ道具の出番だよ!」
最原「罠があるかどうかを調べるためのデコイロボットがあるんだ……」
最原「えーと起動スイッチはこれだっけ……」ポチリ
赤松「あっ、それ自爆スイッチィ!」
最原「えっ」
一方そのころ、教室
キーボ「ぐああああああああ!」ドカーーーンッ!
王馬「ぐああああああああああ!?」ジュッ
白銀「うわああああああああああ!?」
※キーボは後で入間が責任をもって直しました。巻き添えの王馬も無事でした。めでたしめでたし
最原「さてと。気を取り直してデコイロボットを中に放り込んでみたけど」
ロボ「バタンキュー」ボロッ
最原「数十秒しない内にボロボロになって帰ってきた。これ突っ込むのは危ないね」
赤松「そ、そんな……」
最原「まあ、真宮寺くんは置いといて、ゴン太くんや茶柱さんは運動できる人だったし」
最原「あの人たちに無理なら僕たちには土台不可能……」
赤松「……」ガタガタ
最原「……顔、真っ青だよ。大丈夫?」
赤松「大丈夫なわけないでしょ……だって、ここが無理なら、私は……」
最原「……そろそろ昼ご飯の時間だね。食堂に行こう? ね?」ニコニコ
赤松「……」コクリ
食堂に行くまでの道中
最原「参ったな。出口が使用不可となると、今のところ残された脱出手段はゲームに乗ることだけ」
最原「うーん……恋愛とか完全に守備範囲外なんだけどなぁ」
最原「あ、いや。探偵として『恋愛』は好きだよ。痴情のもつれとか事件の種そのものだし」
最原「ただ僕がそれを実践するのが想像つかないだけで。事件を起こす側は、ちょっと……」
赤松「どーーーーでもいいっ!」ダンッ
最原「ごめん」
赤松「探偵でしょ? もっとよく考えてよ! お願いだから!」
赤松「私、こんなところで人生を終えたくない!」
赤松「探偵なら、私のことを助けてよ……!」
最原「……」
赤松「……ごめん。取り乱した。今のは忘れていいから」
最原「助けるよ」
赤松「あ?」
最原「探偵だからね。探偵だから、キミのことを助けるよ」
最原「僕の仕事は『真実から目を背けないこと』と『困ってる人を助けること』だから」
赤松「……」
最原「ね?」ニコニコ
赤松「……自分の才能に、どうしてそこまで前向きになれるの?」
最原「ん……まあ後ろ向きになってもいいことないしさ」
最原「僕は僕のことを信じてるんだ。きっとこの才能は、たくさんの人を助けることができるって」
最原「そう考えるとさ、なんかワクワクするでしょ?」
最原「僕にしかできないことがある! それで笑ってくれる人がいる!」
最原「ああ、素晴らしきかな世界! なんて輝かしい!」
最原「多かれ少なかれ、他の超高校級の生徒もそう思ってると思ったんだけど……」
最原「キミはそうじゃないみたいだね」
赤松「……チッ。話はこれで終わりだよ」
赤松「でも……あの……」モジモジ
最原「ん?」
赤松「……助けるって言ってくれたこと、だけは、その……」
白銀「大変だーーー! キーボが爆発して王馬が瀕死だーーー!」ウワァァァ!
最原「なんだって!? それは大変だ!」ダッ
赤松「ありがと……って聞けよ!」ガビーンッ!
食堂
最原(食堂で昼食を摂った後、赤松さんは『ちょっと一人になりたい』と言い残して去って行った)
最原(流石に連れまわして悪いことしちゃったかな……)
最原(僕は食堂に残って、食後の紅茶を楽しんでいる)
春川「あ。最原だ」
最原「ん。春川さん」
春川「今って暇?」
最原「もちろん。暇だよ暇」
春川「……」ニヤッ
最原「……」ニヤッ
二人「ハイタッチハイタッチ! イエーイ!」バチコーンッ
東条「仲いいなぁ、あの二人」
入間「微笑ましいわねぇ」
春川「それでボウガンで首をぶち抜いたんだけど、その人まだ生きててさ……」
最原「本当に!? そんなことがあるんだ!」ワクワク
春川「でもそのまま首を貫かれたことに気付かずプールに入っちゃって……」
最原「わあ! 怖いなぁ! 聞きたくないなぁ!」ワクワク
春川「そこから先はおおよそ最原の想像通りだと思うよ!」
最原「うわあーーー! やっぱりーーー!」キラキラ
入間「前言撤回。濃密なマーダートークに頭が痛くなってきたわ」ズーン
東条「ハーブティーを淹れるね……ちょっとはマシになるから……」
春川「じゃあ次はこんな話があるんだけど……」
百田「おい春川。最原」
春川「うひゅっ!?」ビクーンッ
最原「あ、百田くん。お昼ごはんにしてはちょっと遅い登場だね」
百田「読書に熱が入ってな。それはともかく、お前ら二人とも、食堂の外にまで声が聞こえてきたぞ」
百田「はっきり言ってやかましい」
春川「……あ、ご、ごめん。次からはもっと静かにするから……」シュン
百田「わかればいい……ふう」
春川「!?」
最原(あ、百田くんが無遠慮に春川さんの隣に座った)
百田「東条。悪いが何か作ってくれ。米に合う何かがいい」
東条「はーい、ただいまー」
春川「……」ドキドキドキ
最原(……百田くんは気付いてないようだけど、春川さんは顔が真っ赤だ)
最原「隣に座ってるだけなのに」
春川「最原。しーっ。しーっ」
百田「ん?」
百田「……ふむ。そうか。春川、お前……」ジロジロ
春川「え? な、なに。百田……そ、そそそそそそんなにジロジロ見ないでよ……恥ずかしいから」ソワソワ
百田「……なるほど。そういうことか」
百田「お前、好きなんだな」
春川「ええっ!?」
百田「最原のことが」ウン
春川「」
最原(百田くん鈍感すぎるーーーッ!)ガビーンッ
百田「だとすると、なるほど。確かに俺は邪魔だな。悪かった。すぐに席をどこう」
春川「あっ。あっ。百田、違っ……」アタフタ
最原「い、いいんだよ百田くん! そんなことしなくって!」
最原「ほら、僕たち百田くんのこととか結構興味あってさ! 宇宙飛行士なんでしょ!?」
百田「最原、お前は……ちょっと鈍感すぎるな」
最原「百田くんにだけは言われたくないッ!」ガーンッ!
春川「も、百田……お願い……」
百田「……ふむ」
百田「二人きりだと心細いというヤツだな? わかった。いいだろう」
最原(勘違いしたままだけど、百田くんは席に戻った……)
春川「……え、えへへ」ニヘラ
最原(この二人、これからどうするんだろう)
赤松の自室
赤松(……助ける、か)
赤松(あそこまで自分に自信を持てるって、凄いな。私には絶対にマネできない)
赤松(結局、礼が言えなかったし、気持ちが落ち着いたら最原のところ行って……)
赤松「ちゃんと、ありがとうって言わなきゃ」
赤松「ちょっと救われたのは事実だし。ちょっとだけど」
赤松「練習しとこうかな。ていうか礼を言うのってどうやるんだっけ」
赤松「……あ、ありがとう。サンキュー。しぇいしぇい?」
赤松「……」
赤松「適当でいいや! なんかハズい!」バタバタ
赤松「誰かに見られたら、特に茶柱に見られたらストレスで死んじゃうかもだし! うん! 夜時間にしよう! 夜時間!」
一方、最原と春川。
最原「え? 夜時間に相談?」
春川「内容は……わかるでしょ? ね?」
最原「どうして僕に?」
春川「一番仲がいいのが最原だから……イヤならいいけど」
最原「いいよ! 行く行く! 友達の頼みなら断れない!」
二人「「ハイタッチハイタッチ! イエーイ!」」バチコーンッ
夢野「ノリが軽い! が、故に速い! ヤツらも正義というわけじゃな!」
天海「そうなの?」
星「そうだ!」
天海「そうなのか!」
ちょっと休憩します
夜時間
赤松(……よし。そろそろいいかな。ほぼ全員、部屋に戻るころだよね)
赤松(行動開始。まずは最原の部屋に行って、ヤツを叩き起こして……)
最原「さーてとっ、約束の時間だし行かないと」ガチャリンコ
赤松(!)
最原「ふんふふーん」ルンルン
赤松(最原……? こんな時間にどこ行くの?)コソコソ
最原「待った? 春川さん」
春川「ううん、私も今来たところだよ」
最原「で……まあ用件はわかるけど、一応聞いておくよ。相談事って?」
春川「……最原は超高校級の探偵だから、もうわかってるんだよね」
春川「だから、あなたにしか言えなくって……いや、逆だね。あなただから言えるんだ」
最原(あれ結構誰にでもバレバレだと思うんだけどな。あ、赤松さんはわかってないか。体育館にいなかったし)
春川「わ、私は……百田のことが好きなんです」ゴニョゴニョ
最原「は? なんて?」
春川「だからっ! 好きなんだって!」ガァ!
最原「うおっ、いきなり大声出さないでよ! ちょっと意地悪しただけじゃないか!」
春川「……で、えーっと……だからちょっと力を貸してほしくって……」モジモジ
最原「うん、任せてよ。友達の頼みならいくらでも聞くからさ」ニコニコ
春川「えっ、本当に? っしゃあ! 勝利確定キタコレ!」ガッツポーズ
最原「そこまで頼りにされても困るよ!」ガビーンッ
春川「……ん。あれ。最原。今そこに誰かいた?」
最原「ん?」
春川「……いや、気のせいかな。ごめんごめん。相談を続けようか」
最原「うん」
ちょっとだけ時間は巻き戻る。コンテナの裏in赤松
赤松(……あれは、春川? え? なんで顔赤くしてんの? なんでモジモジしてんの? え?)
春川「……」ペラペラ
最原「……」ペラペラ
赤松(ああ、ダメだ。結構限界まで離れてるから声が微妙に聞こえない)
赤松(もうちょっと大声を出してくれれば完璧に聞き取れるんだけど。ピアニストの才能はこんなときだけ便利だな)
春川「だからっ! 好きなんだって!」
赤松「――!?」
赤松(……は? いや、待って。春川のヤツ、なんて?)
最原「……」
赤松(ああ、くそ! また聞き取れない! ここら辺が大事なのに!)
赤松(でも表情は見える。なんか満更でもなさそうな最原のあの顔!)
春川「えっ、本当に? っしゃあ! 勝利確定キタコレ!」ガッツポーズ
赤松「……」
赤松(……なんか……ちょっとガッカリしてる私がいるんだけど……)
赤松(なんでだろ。助けられたのは確かだけど、そんな感情まだないと思ってたのに)
赤松(……まだ、か)
赤松「……みんな死んじゃえ。ばーか」
翌日 朝八時 寄宿舎前
春川「えー、私と最原が会議をした結果、結局この結論に落ち着きました」
最原「当たって砕けろ!」
春川「うーん、まあ答え自体は見えてたんだけどね。結局私、誰かに背中を押してもらいたいだけだったんだね」
最原「大丈夫だよ! 春川さん、可愛いから!」
春川「あ? マジで? よっしゃあ、なんか大丈夫な気がしてきたぞう」
春川「……やっぱり不安だよ最原ー!」
最原「大丈夫大丈夫できるできる大丈夫気持ちの問題だって」
最原「希望だって前に進むんだから!」ブレーク!
夢野(聞こえるか……聞こえておるか……春川……速さじゃ。速さこそがすべてのキーなのじゃ……)
夢野(走れ。春川。走れ!)
春川(夢野が直接脳内に……!)
最原(いや物陰からボソボソ言ってるだけなんだけどね)
最原「ていうか夢野さん、いたの?」
夢野「早起きは三文の徳じゃあ!」
最原「ああ、凄い納得した」
春川「ひとまず、作戦を確認するよ」
春川「私は百田と約束を取り付ける。時間は……昼くらいがいいかな。速さは力でしょ?」
夢野「んあー! その通りじゃ! 筋がいいぞ春川ァ!」
春川「で、私はそこで百田に……」
春川「……やだ。今から顔が熱くなってきちゃった」
最原「ガンバ!」
夢野「ガンバじゃ!」
春川「ありがとう二人とも……なんか夢野にもバレてるのが気になるけど」
夢野「春川の気持ちに気付いてない人間なぞ、インテリバカの百田と、体育館にいなかった赤松くらいじゃ!」
春川「えっ」
最原「それじゃあ、ミッションスタートだ!」
春川「えっ。待って。ねぇ。待って。そんなにバレてたの? 待って」
夢野「発令は……されたのじゃ! もう引き返せない!」
夢野「行くぞ春川! 全速力でな!」ガシッ
春川「え、いや話は終わってな」ギュンッ!
最原「春川さんが夢野さんごと消えた!」ガビーンッ!
最原「……ふう。まあ、とりあえず頑張れ。春川さん」
最原(さてと。僕は赤松さんを連れて食堂に行かないと……)
赤松「……」ノソーッ
最原「お。ちょうどいいところに……って、赤松さん? どうしたの? 凄いクマ」
赤松「……別に」
最原「ん?」
最原(なんだろう。反応が薄いな。普段はもうちょっとツンケンしてたはずだけど)
最原「えっと……大丈夫? 具合が悪いのなら、僕が食堂まで食事をとりに行って、部屋に持っていこうか?」
赤松「いいよ、別に。私にそんなに優しくしなくっても」
最原「ん?」
赤松「あんたはさ。誰にでも優しいんだもんね」
最原「あい?」
赤松「……」ノソーッ
最原(様子がおかしいまま、赤松さんはどこかへと歩いて行った)
最原「……なんだろ。何があったんだ?」
数十分後 食堂
最原(……あれ。赤松さんの姿が見えないな……)
王馬「ふう……昨日は大変な目に合った」
キーボ「人類に同意するわけではありませんが、まったくその通りです」
白銀「あー。キーボが壊れなくてよかった。ビックリしすぎて心臓が破裂するかと……」
入間「ふふ。私がいる限り、彼は壊れないわ」
東条「凄いよねぇ、入間さん。私にはとても真似できないよぅ」
最原(実はキーボくんが自爆したのは半分くらい入間さんのせいなんだけど……)
春川「……」カキカキ
最原(ん。春川さんは何を書いてるんだ……?)
春川「……どう? 夢野? こんなもので」
夢野「名前の書き洩らしもなく、要件も抑えておる。問題なかろう」
夢野「ふっ。春川は贅沢じゃの。このウチを使い魔扱いとは」
夢野「強いて言えば直接に百田に言って約束を取り付けるのが一番なのじゃが……いや、言うまいよ」
夢野「百田は約束をぶっちするような人間ではないからの。心配はない」
最原(ああ。呼び出しは手紙ですることにしたのか)
春川「じゃあこの手紙を百田のポケットに」
夢野「指パッチンコ~」パッチン
春川「え?」
夢野「手紙消えるーのー」
春川「あれっ?」
夢野「テレポートー」ジャジャーン
最原(……あっ! いつの間にか手紙が百田くんのポケットの中に入ってる!)
最原(百田くんまだ気づいてないけど! 凄っ!)
最原(約束は今日の昼にとりつけられたはず。さて、そのときは僕はどうしようかな)
最原(うーん、見守っていた方がいいんだろうか……)
春川「あわわ……まだ心の準備できてなかったのに……あわわわわ……」アタフタ
最原(……見守ってた方がよさげだな)
夢野「では、後は頼んだぞ最原。ウチはこの後、かくれんぼの予定があるからの」
最原「あ、うん。任せてよ」
春川「さ、最原ァーーー! 絶対に見ててね! 絶対に後ろにいてね! カンペ用意しててね!」ガタガタ
最原「う、うん。カンペで告白する気?」
百田(相変わらず、あの二人仲いいな……)シミジミ
そして運命の昼。詳しく言えば午後二時五十分
春川「……ひっひっふー。ひっひっふー……」ドキドキ
最原「どんだけ動揺してんのさ……水でも飲む?」
春川「い、いい……大丈夫。大丈夫だから……」
最原「じゃあ僕はあそこのコンテナの裏にいるから。できるだけカンペでサポートするよ」
春川「う、うん! 本当にお願いね! あなたが頼りだからね!」
最原「任されたよ」ソソクサーッ
最原(さて。約束の時間まであと十分。それまで何が起こるかを、ある程度シミュレーションしてないとな……)
最原(探偵七つ道具の盗聴器を春川さんの襟の裏に引っ付けておいたから、遠くからでも会話の内容はわかる)
最原(うん。事前準備は万端。大丈夫大丈夫。ん?)
星「……!」ダダーッ
最原(あれは……星くんか? 何か急いで裏庭あたりから来たけど……あ、そのまま校舎に入ってった)
東条「……!」ダダーッ
星「……! ……!」ダダーッ
最原(あ。東条さんを連れて戻ってきた。何かあったのかな。血相を変えてるけど……)
百田『おう。春川。待たせたな』
最原(おっと。こっちは百田くんが到着だ。カンペの待機っと……)
入間「最原くんッ!」
最原「うおわあッ!? ビックリした!」ビクゥッ!
最原「い、入間さん? 何の用?」
入間「今すぐ一緒に来て! 緊急事態なの!」
最原「今すぐ来てって、こっちはそろそろ本番なんだけど」
入間「いいから早く! 赤松さんのことなのよ!」
最原「は?」
入間「赤松さんが……赤松さんがね……!」ガタガタ
入間「――マンホールの中で、血まみれになってるのよッ!」
最原「……」
最原「……は?」
赤松サイド
赤松(ピアノが大好きだった)
赤松(寝食を忘れるほどに、ピアノが好きでたまらなかった)
赤松(本当にそれだけで、気がついたらコンクールに入賞するようになっていた)
赤松(みんなが褒めてくれた。とても嬉しかった)
赤松(でもいつからか、その称賛が煩わしくなりはじめた)
赤松(段々と、みんなが私を見なくなっていった。みんなが見ているのはピアノを演奏している私だけ)
赤松(先生、友達、家族までが、私のことを見なくなっていった)
赤松(『私』は段々、『ピアノを演奏している私』に嫉妬するようになっていった)
赤松(みんなのために演奏する、キラキラした私は、多分私とはかけ離れてる)
赤松(多分それは嘘の私。本当の私なんて、誰も必要としていない)
赤松「……って、なんでこんなこと考えてるんだっけ」
赤松「ていうか、私、どうなって……痛っ!」
赤松「……あ、段々と思い出してきた」
赤松(なんか最原のこととか、春川のこととかで頭ぐっちゃぐちゃになって)
赤松(もうなんでもどうにでもなれーって思ってたら、マンホールの中に来てて)
赤松(無理してでもここから出てやるって気になって)
赤松(でも何回挑戦しても全然ダメで)
赤松(段々とボロボロになっていって……最後の挑戦で頭を思いっきり打って……)
赤松(あー。なんか頭の回りが熱いと思ったらこれ、出血してるのかなー……)
赤松(笑える。ゴン太や茶柱が無理だったものに、どうして私が敵うと思ったのかな)
赤松(……いや。敵うとか思ってなかったか。これは単なる自暴自棄)
赤松(もう何もかも面倒臭い。このまま死んだらそれはそれで)
赤松(本当にくだらない人生だったなぁ)
東条「赤松さん! しっかりして! 何を犠牲にしてでも必ず私が助けるからッ!」
星「赤松! ちくしょう、一体何がどうなってやがる!」
東条「まだケガの状態がわからない……迂闊に動かすわけにはいかない!」
東条「衛生状況が心配だけど、ここで治療するよッ! 絶対に死なせたりしないから!」
星「わかった! 何が必要だ?」
東条「このメモにあるものを片っ端に倉庫から持ってきて!」ビッ
星「了解!」ダッ
東条(まずい……意識がないのが本当にまずい……)
東条(流石に私も脳外科手術は専門外だよ。ケガの手当はできるけど、脳に重大な損傷があったらどうしようもない)
東条(お願い! 赤松さん! 目を覚まして!)
赤松(回りがうるさい……耳に血が入ったのか、ノイズだらけで聞き取れない……)
赤松(眠いんだから寝かせてよ。もう何も考えたくない)
東条「……赤松さんっ! お願い! 私の目の前で死なないでよぅ!」
入間「東条さん! とっておきの薬を用意してきたわ!」
東条「えっ。入間さん?」
入間「ほら、さっさと行きなさい!」ゲシィッ
最原「ああ、ちょっといきなり蹴らないで……うわああああああ!」ドスーンッ
東条「きゃあああああああ! マンホールから最原くんが落ちてきたーーー!」
東条「怪我人が増えちゃったよ!?」ガビーンッ!
入間「死にはしないわよ!」
最原「そ、そんな無茶苦茶な……!」イテテ
最原「って、うわぁ! 本当に赤松さんが血まみれになってる! なんで!?」
東条「わ、わからないの……星くんが見つけたときには、もうこんな状態だったらしくて」
東条「でも頭にケガをしてて……意識が……!」
最原「赤松さん! 起きて! 赤松さん!」
東条「絶対に揺さぶっちゃダメ! でも、お願い。そうやって話しかけ続けて!」
東条「もうそれくらいしか、私たちにやれることはない……!」
最原「わかった! 全力で呼びかけ続けるよ!」
最原「赤松さん!」
赤松「……!」ピクリ
最原「あっ、赤松さん!?」
赤松(……最原の声……)
赤松(ああ、もう。どの声よりもひときわ煩いし、不愉快)
赤松(お願いだから黙ってよ……!)
東条「あ、ちょっと不機嫌そうな顔になった! その調子で!」
最原「不機嫌そうな顔になってるのに!? い、いや、まあいいか!」
最原「起きて! 赤松さん!」
赤松(煩いって言ってるじゃん……どうせ倒れているのが私以外でも……)
最原「僕はキミを助けるって言ったんだ!」
赤松(誰にでも優しい人間からの同情なんていらない……私を見てないじゃん)
最原「キミが僕に助けてって言ったんだろ!」
赤松(ああ、くそっ。イライラする。なんで私がこんな能天気バカに煩わされなきゃ……)
最原「悔しかったら言い返してみなよ!」
最原「バーカバーカ! 赤松さんのアンポンターン! デーブ!」
赤松(……)ブチッ
グリンッ
東条「あっ! 寝返りを打った!」
赤松「誰がデブだーーー!」バシーーーンッ!
最原「痛ーーーッ!?」
東条「そして最原くんの横っ面に蹴りを入れたーーー!? 凄いーーーッ!」ガビーンッ!
赤松「ああ、もう! あと少しで眠れるところだったのに、最原ぁ!」ゲシッ
最原「痛っ! 痛いって!」
東条「……よ、よかった。意識がこれだけハッキリしていれば、出血は酷いけどなんとかなる範囲だし……」ホッ
赤松「……はぁ。あー、疲れた……まったく、アンタってヤツは本当に……」
最原「は、ははは……本当に、何……?」
赤松「……ん? 最原、アンタ……」
赤松「泣いてるの?」
最原「い、いや……本気で心配だったからさ……よかったぁ。赤松さんが大丈夫そうで……」
最原「本当に……よかっ……うううううう……」ポロポロ
赤松「……」
赤松「ありがとう。最原。私のことを助けてくれて」
最原「え?」
赤松「ずっと感謝してたんだけど……言えなくってさ……」
最原「赤松さん……」
赤松(……本当にイラつくけど、なんというか……)
赤松(私、コイツのこと好きになってたのかも……しれないな。ずっと前から)
最原「大丈夫!? 意識が混濁してるんじゃない!? そんなに素直に感謝するなんて!」
赤松「本っ当にムカつく!」ゲシッ
最原「安心の痛み!」
東条「あ、あの。あんまり動かないでね……?」
数十分後
入間「もうちょっとで怪我人移送用のゴンドラが完成するから待っててちょうだい」ズガガガガ
星「ほら。スポドリだ。確か、血を大量に流したときは経口輸液……だったか?」
東条「うん。このままだとオシッコとかしたときに、そのまんま気絶しちゃいそうだし……」
赤松「そこまで出血酷かったんだ……」
星「俺に感謝しろ。かくれんぼでここに隠れようと思わなければ、きっとお前はあのまま……」
赤松「……偶然でしょ」
星「素直じゃないな」ヤレヤレ
最原「いつもの調子に戻ってきたね」
最原「さてと。事件も解決したみたいだし、僕は再び……」
最原「……あっ」
最原「……あっ!?」ダラダラダラ
東条「どうしたの、最原くん。凄い汗だよぅ?」
最原「あわばばばばば……まずい! ごめん、あとはお願い! 僕はもう行かなきゃ!」ダッ
赤松「あっ、最原……」
星「……くっくっく。俺はこの学園の女をすべて手中に収めようと本気で思っていたが……」
星「残念だな。お前の心は既に、あの探偵のもののようだ」
赤松「は、はあ!? そ、そんなわけないじゃん!」
赤松「誰があんな能天気で優しくて自信満々で頭のいいヤツなんか!」
東条「……ところどころ誉め言葉混じってない?」
赤松「黙って。グランドピアノの中に幽閉するよ?」ギロリ
東条「ひぃ!?」ビクーンッ
入間「やれやれだわ……」
最原(そして春川さんと百田くんのところに戻ってきた僕は、とんでもないものを目にすることになるんだ……)
百田「……」スタスタスタ
春川「モモタン! 待ってよ! 一緒にこれからの話をしようよ!」
春川「子供を何人作りたいとかー。どんな家に住みたいとかー……あっ、その前にモモタンの家族に挨拶しなきゃ」
春川「えへへへへへへ」ニヘラー
最原(どうも告白は上手くいったようで、無表情の百田くんが春川さんを伴って歩いている)
最原(いや、というか、見ようによっては春川さんが百田くんをストーキングしてるように見えるんだが……)
最原(……まあ、真実はあの二人のみぞ知るってヤツだな。深く考えるのはよそう)
最原「……一件落着だよね?」
最原(空を見ながら、僕はそう呟くことしかできなかった)
翌日 食堂
春川「モモタン、はい、あーんして……」
百田「一人で食べられる」
春川「あんっ! いけずな人! でも素敵! きゃっ!」
赤松「……え? え? 春川が好きなのって……あれっ」
最原「なんで僕と春川さんを交互に見てるの?」
赤松「……ああ。そういうこと、ね。ははははは。私、完全にバカだった……」ズーン
最原「?」
赤松「……はーあ。本当に、バカみたいだな。私。まあ、これから変えていけばいいか」
最原「えっとさ。それより、赤松さん。ケガは大丈夫?」
赤松「怖いくらい元気になったよ」
東条「入間さん特性薬剤を入れた、私の特性薬膳料理を食べさせたからね!」
入間「……ふふふふふ。ふふふふふふふふふ」ニヤァ
最原「確かにあれは怖いなぁ!」ガビーンッ!
赤松「……ね。最原。後で私の研究教室に来てよ」
最原「ん?」
赤松「あんたの仕事は『真実から目をそらさないこと』でしょ?」
赤松「なら、聞かせてあげてもいいって思うから」
赤松「私のことを見失わないって思えるから」
最原「えっと?」
赤松「鈍いな! ピアノ聞かせてあげるって言ってるの!」
最原「……あ!? 本当に!? やったぁ!」
赤松(私の物語は続いていく……)
赤松(私以外の他人は、その読者。あるいは聴者)
赤松(それがコイツなら、相手にとって不足はない)
赤松(ねえ最原。知ってる? 私が男の子にピアノを弾いてあげるの、初めてなんだよ?)
赤松(絶対言わないけど)
最原「やっぱりこの学園は面白いよ!」ニコニコ
赤松「……あんまり同意したくないけど、ちょっとだけ同意してあげる。今だけはね」
逆転紅鮭団編、完
逆転最原、基準世界に行くの巻に続く
逆転最原「性格逆転スイッチ?」 の巻
最原「さーてとっ。みんなと仲良くなるためにどんどんメダルを交換していこうねー」ガチャガチャ
最原「おっ。このスイッチは見たことないな。なんだろう。なんのスイッチ?」
ポチリッ カッ
最原「うおっ、まぶしっ!」
最原「あー、びっくりした。なんだろうコレ。ドッキリ用パーティグッズ?」ポチポチスカスカ
最原「使い捨てか……もったいないことしちゃったな」
最原「さてと。食堂に戻ろう」
王馬「にっしっし! キー坊は本当に空気が読めないよねー。ロボット様様だよまったく!」
キーボ「なんですかいきなり! まだ何もしゃべってないんだから空気も何もないでしょう! ロボット差別ですよ!」
茶柱「食事時だというに、無駄に騒がしいですね、もう。これだから男死は……ね、夢野さんもそう思うでしょう?」
夢野「んあー……コメントすんのめんどい」
最原「……」
最原(あれ。なんだろう。みんなの様子がちょっとおかしくないか?)ダラダラダラ
ガチャリンコ
百田「お」
最原(呆然としていると、食堂に百田くんが入ってきた)
最原「あ、百田くん」
百田「おう、終一! お前もこれからメシか!?」
最原「んっ?」
百田「じゃあ席とっておこうぜ。後でハルマキも来るからよ!」ニカッ
最原「んっ? んっ? ハルマキ? んっ?」
春川「余計なことしないで。アンタたちと食事するのも落ち着かないし」
春川「たまには一人で食べたいんだけど?」ギンッ
最原「」
最原(僕の大親友がなんかクソ怖くなってる)ガタガタ
百田「お。もう来たかハルマキ」
最原「えっ。ハルマキって春川さんのこと!?」ガビーンッ!
最原(ま、まさか……このスイッチがなにかしたせいで、みんなの性格が変になってるのか?)
最原(機械のことなら入間さんだ! 後で相談しなきゃ!)
最原(彼女ならなんとかしてくれる! 自己顕示欲は強いけど、面倒見はいいんだ!)
ガチャリンコ
入間「ヒャッハーーー! ごきげんよう、腐れマラども! 天才発明家の登場だぜーーー!」
最原「」
入間「……あ? どうしたダサイ原。そんなまじまじと俺様のことを見て」
入間「そうか、おったってるんだな! 石化状態だな? 無理もねぇ!」
入間「ならもう我慢する必要はねぇぜ! 一生固まりたくなかったら、そのままドピュッと外に」
最原「目を覚ませェーーーッ!」ゲシィ
入間「もげらっ!?」
百田「終一のハイキックがモロに入間の顔に入ったーーーッ!?」ガビーンッ
春川「!?」
あ、晩御飯作るので休憩です
最原「はぁーっ……はぁーっ……ダメだ! コイツだけはダメだ!」
最原「入間さんの名誉のためにも、この世に存在させてちゃいけない!」
百田「どうした終一! 入間の下ネタなんてもう慣れたもんだろ!?」アタフタ
王馬「まあ入間ちゃんの存在が許されないって点だけは同意するけどさ」
入間「ひうっ……な、なんなのぉ……俺様が何したってんだよぉ……」エグエグ
最原「うおおおおお! 正気に戻るまで何度でもおおおおお! うおおおお!」
百田「ダメだ、完全に正気を失ってやがる! ハルマキ! 一緒に取り押さえるぞ!」
春川「う、うん!」ガシッ
最原「放してくれーーー! 放してくれーーー!」ジタバタ
春川「いい加減にしろ」キュッ
最原「」ガクンッ
キーボ「あ、落ちましたよ」
百田「やりすぎだーーー!」ガビーンッ!
数時間後 最原の自室
最原「ううん……ハッ!」
最原「凄まじい悪夢を見た……そうだよな。やたら馴れ馴れしい百田くんとか、怖い春川さんとか、下ネタ駄々流しの入間さんとかありえないよな」
最原「よし。今日からまた新しい日を始めよう」
最原「また春川さんところに行って……あ、そうだ。今日はどっちがノウハウ教える番だっけな」
ガチャリンコ
赤松「あ」
最原「ん。赤松さん。おはよう」
赤松「うんっ、おはよう! 最原くん!」キラキラニコニコ
最原「」
最原「?」
最原「!?!?」ガビーンッ
赤松「えっ。どうしたの? なにかショック受けたみたいな顔してるけど」
最原「はははははは……え? 赤松さん? なんか良いことあった?」
最原「そんなニコニコキラキラして……笑顔が凄い眩しいよ?」ガタガタ
赤松「あはは。別になんもないよ。変な最原くん」
最原「」
最原(バカな……あの世の中すべてを拗ねた目で見つめていた赤松さんが……一体なにが……)
最原(そうか! 昨日のは夢じゃなかったのか! すごい納得した!)
最原「オーマイゴオオオオオオッド!」ウワァァァァ!
赤松「ええっ!? 急にどうしたの最原くん! 大丈夫!?」アタフタ
最原「僕に優しくしないでくれぇぇぇぇぇぇ!」orz
最原「頼むからいつも通り僕のことを蹴ってくれよぉぉぉぉぉぉ!」orz
赤松「そんなことしたことないんだけど!?」ガビーンッ!
真宮寺「……」ジーッ
赤松「……ハッ!」
真宮寺「……僕の研究教室にはそういう道具もあるから、勝手に持ってっていいヨ?」
赤松「ちょっ! 違うんだって真宮寺くん! なんかの間違いなんだって!」
真宮寺「クックック……やはり人間は美しいネ……」スタスタ
赤松「真宮寺くーーーん!?」ガビーンッ
最原「……うう。やっと気持ちの整理がついた。ごめん赤松さん、取り乱しちゃって」
赤松「もう少し早めに再起してほしかったなぁ!」
かくかくしかじかぎゃくてんさいばん
赤松「ええっ!? 私たちの性格が丸ごと逆転してる!?」
最原「そう……いうふうに見える。少なくとも僕からは」
最原「あの百田くんがあそこまで馴れ馴れしい態度を取ることはないし」
最原「春川さんは朗らかニコニコ暗殺者だし」
最原「入間さんはあんな大胆な恰好じゃなくって和服で落ち着いた人なんだ……」エグエグ
赤松「す、凄い世界だね。それは……想像つかないな……」
赤松「って、暗殺者?」
最原「まあそこはどうでもいいんだ。原因はわかってる」
最原「このスイッチ……これのせいで世界が変わってしまったとしか思えない」
最原「僕の探偵としての勘がそう告げているんだ」ギンッ
赤松「へぇ。このスイッチで……」
赤松「じゃあ、もう一回そのスイッチを押せば全部解決じゃ……」
最原「使い捨てらしくって、もう押しても反応がない」
赤松「あー……」
赤松「……うんっ。わかった。それじゃあ私と一緒にいようよ!」ニコニコ
最原「え?」
赤松「だって、最原くんからしたら今の世界は馴染みがないんでしょ?」
赤松「なら、しばらくは私といた方がいいよ。絶対に」
赤松「なにか困ったことがあったらフォローしてあげるからさ!」
最原「……」
最原「……」涙ダバー!
赤松「ええっ!?」ガビーンッ
最原「あ、赤松さぁん! ありがとう! 本っ当にありがとう!」ダキッ
赤松「うわぁ!?」
最原「うう……まさかあの赤松さんに助けられる日が来るなんて……!」
最原「あの赤松さんに!」
赤松(そっちの私どうなってんの?)ズーン
アンジー「……」ジーッ
東条「……」ジーッ
赤松「ハッ」
アンジー「……さーてとっ。神様にお祈りしないとねー」スタスタ
東条「今日は赤飯かしら……」スタスタ
赤松「うわああああああ! 誤解が雪だるま式に加速していくーーーッ!」ガビビーンッ!
赤松「ちょっ、最原くん! 離れて離れて!」
最原「あの現金至上主義のアンジーさんが……神様……?」ガタガタ
赤松「ショックを受けるのも後にしてぇ!」
食堂 朝食タイム
百田「おう、終一! 昨日は大変だったな!」ニカッ
最原「あ、ああ。うん。まさか春川さんに落とされるとは思ってもみなかったよ」
春川「アンタが妙なことするからでしょ。私だって無駄に仲間を傷つけたりはしたくないし」
最原(あ。一応仲間だとは思ってくれてるんだ……安心した……)
最原(ていうか、性格が逆転してるんなら春川さんが百田くんを嫌っててもおかしくないと思ってたんだけど)
最原(その割には一緒にいるんだよな)
赤松「最原くん? 何を考えてるの?」
最原「ん? ああ、いや。春川さんって百田くんのこと好きなのかなって」
春川「」バリンッ!
百田「ハルマキの持ってたコップが握力で割れたーーーッ!?」ガビーンッ
春川「……」ゴゴゴゴゴゴゴ
最原「……えっ。は、春川さん?」ダラダラダラ
春川「殺されたいの?」ギロリ
最原「」
赤松「は、春川さん! やめようよ! 今は朝食の時間だからさ! ね? ね?」
百田「おい、そんなことよりハルマキ! 手! 手!」
春川「え……ああ、そっか。コップを素手で割ったから、ちょっと切っちゃったね」
百田「まったく、お前は何やってんだよ。東条! 救急箱か何かを持ってきてくれ!」
春川「いいよ別に。後で自分で処置するから」
百田「バカ野郎! いいからお前は大人しくしてろ!」
春川「……」プイッ
最原(あ、こっちの春川さんもある意味わかりやすいな……)
最原「それにしても……」
獄原「ふふ。やっぱり今日も東条さんの料理はおいしいね!」
東条「お褒めに預かり光栄よ。まだおかわりはあるから」
天海「いやぁ、毎日東条さんの料理が食べられるところは、この学園のいいところっすよね」
白銀「マンガやアニメに出てくるチートメイドそのものだよね!」
最原「……」
最原「……慣れればこっちも意外と……楽しい?」
茶柱「おはようございます赤松さん! 今日も素晴らしい朝ですよ!」
赤松「あ。茶柱さん、おはよう!」ニコニコ
最原(なによりも、赤松さんが他の生徒と普通に仲良くしてる!)
最原(あ、や、やばい。感動で涙が……)ブワッ
茶柱「うひぃ! 何急に泣き出してるんですか最原さん! 気持ち悪っ!」
最原「う、うう。ごめん。赤松さんが茶柱さんと仲良くしてるのが嬉しくて……!」
茶柱「バカにしてるんですか! 転子は男死以外なら誰とでも仲良くできますよ!」
赤松(いや、違う! 文脈的にバカにされてるのは私の方だ……! 多分!)
最原(もしかしてこの世界は理想郷的ななにかなのでは……ん?)
星「……」モクモク
最原「あれ。星くんが妙に静かだな。珍しい」
赤松「星くんが? いつもあんな感じだよ?」
最原「え? 彼が? まさか……あの精力溢れる星くんが静かだなんて考えられないんだけど」
赤松「いや本当に」
最原「……嘘でしょ」
最原(やっぱり僕の元いた世界と同じで、完璧な世界ではないのか……!)
最原(変貌がいくらなんでも極端すぎるよ……あんな悲しいオーラを背負った星くんを見たかったわけじゃない……!)
入間「ヒャッハーーー! マヨネーズをかけたウィンナーを丸かじりだぜーーー!」
最原「そしてアレだけは絶対に許せない……! 入間さんのために、近い内に確実に始末する!」ギンッ
赤松「や、やめよう! あんなんでも悪い人じゃないんだよ! 一応!」
最原「まずは僕の研究教室から毒薬をいくつか見繕って……」
赤松「やめようって! ガチな殺人計画立てないで!?」
王馬「……」
王馬「……」ニヤァ
ひとまず休憩。もしかしたら次の更新は明日になるかも
あ。違う違う。
涼宮ハルヒの反転シリーズに影響は受けてますが、あれとはまったく別口の作者です。私は
実際かなり参考にしてるから間違っても仕方ない気もしますけどね! 面白かったから!
食事終了
最原「あのスイッチは使い捨てだ。ならもう一回モノモノマシーンから出すしかない」
最原「そのためにも、ひとまず学園中を駆けずり回ってメダルを集めないと!」
赤松「うんっ、もちろん協力するよ! 細かいフォローとかも任せてね!」ニコニコ
最原「……た、頼り甲斐がある……あの赤松さんに、頼り甲斐がある……だと……!?」ガタガタ
赤松「それもうよくない!? そっちの私、どれだけダメな子なの!?」ガビーンッ
最原「ダメってわけじゃないんだけど……目が離せないっていうか……」
最原「一言で言えば面倒な子?」
赤松「……えっと、今の私はそうじゃないの?」
最原「ん? うん。なんか近所のお姉さんみたいだよね」
赤松「……ふーん」
最原(な、なんだ? ちょっと不満気になってる……褒めたはずだよな?)
最原(無駄に空気感を引っかくところは変わってないのか)
赤松「でも手当たり次第に探したところで量なんてたかが知れてるよね」
最原「大丈夫だよ! 僕には入間さんが作ってくれた探偵七つ道具が……七つ道具が……」ゴソゴソ
最原「ないッ!?」ガビーンッ
最原「くっそおおおおお! あの世界の入間さんとの絆の象徴だったのにぃぃぃぃぃ!」orz
入間「あん? 俺様がどうかしたって?」
最原「」ピクッ
最原「……」ゴゴゴゴゴゴ
赤松「どうどう。殺しちゃダメだからね?」
入間「こ、殺されるかもしれないようなことしてねーだろ!? まだ話しかけただけだろ!?」ガビーンッ
入間「メダルを探してる? へえ。チマチマシコシコご苦労なこったな」
最原「で? なんか用なの?」ゴゴゴゴゴゴ
入間「ば、バカ松ぅ! なんでコイツさっきから俺様に対しての殺意を隠しもしないの!?」
入間「なんかやらかしたっけ!?」
赤松「普段からやらかしまくってるけど、それとは全然関係ないから安心して」ニコニコ
入間「安心できねぇーーーっ!」ガビーンッ
入間「んだよ、もう! せっかくいいもんくれてやろうかと思ったのによ!」
最原「下ネタ?」
入間「ちっげぇーよ! 俺様そこまで下ネタキャラじゃねーからな!?」
赤松(完全に嘘だ)
入間「ほらよ」ポイッ
最原「ん。これは」キャッチ!
入間「メダルを集めるルンバ。略してメダルンバだ。コイツを適当に走らせるだけで結構溜まるはずだぜ?」
最原「……」
入間「んだよ、クソッ。まだ何かあんのか?」
最原「いや。評価を改めてただけだよ。キミはこの世に存在してちゃいけないと思ってたけど」
最原「せめて呼吸することくらいは許可してあげようと思う」ウン
入間「どんだけ低い評価だったんだよッ!?」
入間「……ああ、でも、恋した相手からの言葉攻めっていうのも中々クセになってきたかも」ハァハァ
最原「え? ちょっと待て、今なんて!?」ガビーンッ
入間「じゃ、用は済んだから。俺もうクソしてから帰るわ」スタスタ
最原「えええええええええええ!?」ガーンッ ガーンッ ガーンッ
赤松「色んな爆弾を投下するだけ投下してから帰っていったね……」
数十分後
最原「メダルがいっぱいぱーい」ジャラジャラ
赤松「結構溜まったね。これだけあれば、あと一回くらいはスイッチが出るんじゃないかな?」
最原「うん! どうにか希望が見えてきたみたいだよ!」
赤松「さて、それじゃあ購買部に」
王馬「あっ! 最原ちゃん、赤松ちゃん、大変だーーー!」ダダーッ
最原「あれ。王馬くん?」
赤松(ああ、こういうタイミングで出るんだよなぁ、彼は……)ガックリ
王馬「キー坊が突如トランスフォームして果ての壁を突き破り、外に出ちゃったんだー!」
赤松(もう王馬くんの嘘には慣れたものだし、そんな嘘に引っかかる人なんて……)
最原「なんだってぇ!?」ガビーンッ
赤松「え」
最原「大変だ! すぐに行かないと! 事件あるところに探偵ありだ!」ダッ
赤松「うわああああああ! 騙されてるーーーッ!」ガビーンッ
赤松「王馬くん? なんのつもり?」
王馬「こういうつもりだけど?」ガチャガチャ
赤松「ん? ガスマスク?」
王馬「で、こういうつもりだけど?」シャキーンッ
赤松「ん? 薬剤の入った瓶?」
王馬「正確に言うと、すぐに揮発して回りに散るタイプの睡眠薬だけどね! 最原ちゃんの研究教室から拝借した!」
赤松「!?」
王馬「はい、ドーンッ」バリーンッ!
赤松「」バターンッ スヤァ
王馬「……くっくっく。ゲームの始まりだよ、最原ちゃんじゃない最原ちゃん……」ニヤァ
最原「キーボくん! やっぱりキミには変形機能が付いてたんだね! 僕にも見せてよ!」ワクワク
キーボ「ちょっ、突然なんですか一体!? ロボット差別ですよ!?」
百田「なにやってんだアイツ」
春川「知らないよ」
夕食の時間 食堂
最原「うーん、キーボくんに構ってたらすっかりこんな時間になってしまった」
キーボ「それはボクの台詞でもあるんですが!? 最原クンのせいで貴重な時間を無駄にしましたよ!」
最原「ごめん」
最原「……さてと。それはともかくとして」
最原(赤松さんの姿が見えないな。彼女にメダル全部預けてすっ飛んでったから、これじゃ帰れないんだけど)
最原(あとついでに王馬くんもいないけど……まあ、こういうこともあるだろう)
東条「今日のご飯は冷しゃぶ定食よ。めしあがれ」コトッ
最原「あ。ありがとう東条さん」
東条「メイドだもの。このくらいは当然だわ」
最原(うーん、機械的な東条さんにも慣れてきたな……人間の適応力って怖い)
ガチャリンコ
王馬「はー、疲れた疲れた。いやー、久しぶりの肉体労働は堪えるなー!」
最原「ん。王馬くん、なにかやってたの?」
王馬「あれ? 最原ちゃん、わかっちゃう? 俺がどれだけ苦労したのか」
最原「いや、微かに灯油の匂いがするからさ。機械の整備でもしてたの?」
王馬「……」
王馬「……へえ」ニヤニヤ
最原(なんだろう。あっちの王馬くんとは違って、妙に陰湿な笑みだな……)
王馬「まあまあ! とにかくゆっくりご飯を食べようよ!」
王馬「その後でちょっと俺との遊びに付き合ってほしいんだ」
最原「遊び?」
王馬「まあ、詳しい話は後でね」
最原「楽しみだなぁ。超高校級の総統との遊びなんて」
王馬「俺もとっても楽しみで仕方ないよ!」
二人「「あっはっはっはっは!」」
百田「嘘だろ……終一が王馬と笑いあってる……!」ガタガタ
春川「率直に言って悪夢だね」
食後
王馬「実は俺はさっき赤松ちゃんを誘拐して、どこかに閉じ込めたんだ」
王馬「で、入間ちゃんの研究教室とか真宮寺ちゃんの研究教室とかから道具を拝借しまくって」
王馬「九時になると入間ちゃんの作った『服を溶かすローション』で赤松ちゃんが全裸になる仕掛けを作った」
王馬「その後で、赤松ちゃんの持っていたメダルをまったく別の場所に隠して」
王馬「これまた九時になると灯油が発火し、メダルが全部ダメになる仕掛けを作った」
王馬「解除方法はこの鍵を使って、赤松ちゃんまたはメダルを仕掛けから退避させることなんだけど」
王馬「この鍵は鍵穴に差し込むともう抜けないし、無理に抜こうとすると壊れちゃう」
王馬「つまり普通にプレイするとどちらか一方しか助けられないゲームなんだ! つまらなくないでしょ?」
王馬「じゃ、説明は終わったから、レッツプレイ! 頑張ってね最原ちゃん!」
王馬「仲間と協力すれば、不可能が可能に変わるかもよ? にしししし!」
最原「悪夢だーーーッ!」ガビーンッ!
百田「お。いつも通りの終一に戻ったな」
春川「現在時刻、八時五十分……あと十分しかないね」
最原「百田くん、春川さん! 助けて!」アワアワ
百田「合点! ハルマキも行くだろ?」
春川「どうせ断っても連れていくつもりでしょ?」
最原(完全に油断していた! まさか王馬くんがこんな面白愉快な変貌を遂げていたなんて!)
最原(じゃなくて、まさか仲間に手を出すなんて!)
最原(落ち着いて考えろ。赤松さんの姿が見えなくなったのは王馬くんからキーボくんのことを聞いた後)
最原(人間を誘拐するには、かなりの労力がかかるし目立つから、隠すにしてもあの場からそんなに離れているとは思えない)
最原「赤松さんがいるのは、赤松さんと別れた地下への廊下付近で間違いない!」
百田「おし! 赤松の居場所がわかったのなら、先にそっちへ行け!」
春川「私たちはメダルの方を探してみるから」
最原「う、うん! ありがとう!」
最原(今行くよ、赤松さん!)
地下への廊下付近の教室
最原「あっ! あった! 多分これだ!」
最原(なるほど、真宮寺くんの研究教室にありそうなカラクリ仕掛けの大箱だ)
最原(人が一人くらいは入れそうな大きさはしている)
最原(ひとまずメダルは後回しだ! さっさと赤松さんを救出しないと! 彼女の名誉のためにも!)ガチャガチャ
最原「よし開いた! 赤松さん、大丈夫……って、ん?」
メダル「ヤァ」
最原「赤松さんじゃなーーーいッ!?」ガビーンッ
最原「そ、そんなバカな! ありえない! 人を運ぶのはかなりの労力が必要だ! ここにあるのがメダルのはずが……」アワアワ
百田「終一! もう一つの仕掛けの在り処がわかったぞ!」ドタバタ
最原「えっ、百田くん?」
百田「聞き込みしたら、ゴン太が有力な情報をくれてな」
百田「ゴン太はどうやら、さっき王馬に頼まれて『妙に重い段ボール箱』を赤松の研究教室前へ運んだらしいんだ!」
最原「……」
最原「共犯者がいたのか……慌てすぎて全然考えてなかった、クソッ!」
百田「そう言ってやるな。ゴン太だって騙されただけなんだからよ」
最原「でも、もうダメだ! 鍵は使ってしまった! 赤松さんを助ける方法は……」
百田「そのからくり仕掛けの箱か? 鍵なんか使わなくってもぶっ壊せばいいだろ」
最原「ダメだ。その拍子にローションの仕掛けが暴発してしまう可能性も否定できない!」
最原「もう……赤松さんを救う手立ては……」クッ
百田「終一……」
百田「うおらあああああ!」ドカバキィッ
最原「痛ァーーーッ!」
百田「歯を……食いしばれ……!」
最原「それ殴る前に言うセリフ!」ガビーンッ
百田「バカ野郎! 最後まで諦めるな! 癪だけど、王馬も言ってただろ!」
百田「仲間と力を合わせれば、不可能が可能に変わるってよ!」
最原(……む、無茶苦茶だ。無茶苦茶、だけど……)
最原(でも、妙だな。なんか、また頑張れる気がしてきた)
最原「そう、だね。諦めるにはまだ早い。諦めるには……」
最原「……ん?」
最原「……百田くん、今なんて?」
百田「あ? 歯を食いしばれ?」
最原「その後」
百田「最後まで諦めるな?」
最原「もうちょい後」
百田「仲間と力を合わせれば……」
最原「その台詞、誰が言ったんだっけ」
百田「王馬だが?」
最原「……」
最原「……ああっ!? そうか、そういう意味か!」ピコーンッ
再び食堂
ドタバタガチャリンコ
最原「王馬くんっ!」
王馬「あれ? 最原ちゃん、どうしたの? そんなに血相を変えて」ニヤニヤ
最原「鍵をメダルの箱の方に使ったから、もう赤松さんの箱を開けることができないんだ!」
王馬「ありゃ、それは残念だね」ニヤニヤ
最原「だから力を貸してくれ!」
王馬「ん?」
最原「普通にプレイするとどちらかしか助けられないゲーム……裏を返せば、普通じゃないプレイ方法があるってことだ!」
最原「仲間と協力すれば不可能が可能に変わる、とも言った」
最原「キミも仲間だろ! このゲームは仕組んだ本人の協力という裏ルートが存在した!」ズバーンッ
最原「これが僕の答えだ! どう!?」
王馬「……まったく、気付くのが遅すぎるぜ」フッ
王馬「そう、これは俺自身も最原ちゃんの仲間だということに気付かせるための」
百田「戯言はいいからさっさと来いテメー! 時間ねぇんだよ!」グイッ
王馬「ぐへえ」
超高校級のピアニストの研究教室 残り五十秒
ガチャリンコ
春川「遅いよ! 何やってたの!」
百田「悪ィ! 色々手間取ってな!」
王馬「やっほー春川ちゃん」
春川「は? なんで王馬が?」
王馬「色々事情がありまして……」
百田「喋る前にピッキングしろコラ! しばくぞ!」
王馬「はーい」
最原「速く! 速く!」アワアワ
残り三十秒
百田「……おい、まだか?」
王馬「……あれ。おっかしいな。思ったより難しい仕掛けだぞ、これ。十秒くらいで開く予定だったんだけど」ダラダラダラ
最原「嘘でしょ!?」ガビーンッ
残り二十秒
王馬「うおおおおお! 頑張れ俺! 負けるな俺! なんとかできるはずだ俺!」ガチャガチャ
春川「あと二十秒切ったんだけど」
最原「うわあああああ! 早く! お願いだから早くーーー!」アタフタ
残り十秒
王馬「あっ!」
最原「開いた!?」
王馬「無理しすぎてピッキングの道具が折れちゃった。てへりんこ」
最原「」
残り五秒
王馬「あ、でも安心して。鍵自体は開いたから」
百田「それを先に言えェ! 無駄に絶望しちゃっただろうが!」
最原「赤松さぁん!」ガチャリンコ
最原(箱の中にいたのは、眠っている赤松さん。そして残り二秒を指し示す、細工された目覚まし時計)
最原(僕は無我夢中で赤松さんの体を引っ張り……)
残りゼロ秒
ボンッ!
最原「……あ、危なかった……」ギュウ
最原(赤松さんの体を抱き込む形になってしまったが、なんとか彼女を箱の中から救出できた)
百田「ギリギリセーフだな……あー。焦ったぜ。王馬のせいで無駄に」
王馬「つまらなくはなかったろ?」ニヤリ
百田「抜かせ」
春川「赤松の服は……うん。まったく無事だね。大丈夫だよ」
王馬「……あれ? おや? むむ?」
最原「どうしたの? 王馬くん」
王馬「いやー、俺の目の錯覚かなー。なんか赤松ちゃんの顔が妙に赤くなってる気がするんだけど」
赤松「!」ビクリ
最原「……えっ」
春川「あ、本当だね。狸寝入りだコレ。汗もかいてるし」
王馬「正直に答えてよ赤松ちゃん。どの時点で起きてた?」
赤松「……最原くんに体を引っ張られた衝撃で起きました……」ダラダラダラ
王馬「なんで今まで狸寝入りしてたのかな?」
赤松「……」ダラダラダラ
赤松「……」バッ
最原「おっと」
赤松「……」ダダーッ
最原(赤松さんは顔を真っ赤にしたまま、研究教室から出て行ってしまった……)
最原「あー……悪いことしちゃったかな。急いでたとはいえ」
百田「そうだな。明日謝っとけ」
春川「……本気で言ってるの? 二人して鈍感ヤローだね」
百田「ああん?」
王馬「じゃあ遊びも終わったから俺もう帰るねー……そうだ」
最原(王馬くんは帰り際、僕に言った)
王馬「……俺のこと、忘れないでね? にしし」
最原「……」
最原(忘れられないだろうなぁ……)ズーン
赤松の自室
赤松(……は、恥ずかしい。明日、どんな顔して最原くんに会えばいいんだろう)
赤松(でも、最原くんだって悪いんだよ。まるで私が手のかからない良い子みたいな言い草するから……)
赤松(ちょっとくらいイタズラしたっていいじゃん……)
赤松(……温かかった、な。最原くんの胸の中)
赤松(……うう。やっぱ恥ずかしい)
購買部
最原「あー……今日は疲れた。さてと。取り戻したメダルでスイッチを手に入れないと」
ピロリン
最原「……一発で出た。今日は運がいいなぁ」
最原「いや、悪いのかな」
最原(この世界も、決して悪い世界ではなかったし……)
最原(……でも、まあ、もういいだろう。そろそろ、あの赤松さんとか百田くんとか春川さんに会いたくなってきた)
ポチリ カッ
最原「……ただいま。僕の世界。なんてね」
翌日 朝八時 寄宿舎ホール
最原「あ」
春川「ん」
最原「……」
春川「……」
二人「「ハイタッチハイタッチ! イエーイ!」」バチコーンッ
百田「朝からうるせぇ」
春川「あ。モモタン、おはよー。今日もかっこいいね」ニコニコ
百田「さっさと食堂に行くぞ」
春川「あいあいさー」スタスタ
最原(あー……うん。やっぱりこっちが落ち着く……)
最原「春川さんが百田くんにストーキング気味のアプローチをしかける……」
最原「うん。いつも通りの世界だ。素晴らしいなぁ!」
赤松「……」ジトーッ
最原「あっ! 赤松さんも! おはよう! 相変わらず拗ねた目してるね!」ニコニコ
赤松「は? 何? 文句でもあるの?」ギロリ
最原「いや、ないよ。たださ」
最原「やっぱりこっちの赤松さんも魅力的だなって」
赤松「っ!?」
赤松「……意味わかんないこと言わないでよ」
最原「あ、ごめん。それはともかく、ちょっと赤松さんに言いたいことがあってさ」
赤松「……な、なに?」ドキドキ
最原「……ただいま!」
赤松「……?」
赤松「えーと、おかえり?」
最原「うん!」
完
HTML化依頼出してきました。これで終了!
モノクマの試練に突っ込んできます
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