【ニューダンV3】最原「性格逆転スイッチ?」 (102)
※紅鮭団時空でネタバレオンパレード
ss板を立てるのは初めてなので色々不自由するかも
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最原「さてと。今日もプレゼントを調達するためにガシャ回そう」ガシャガシャ
最原「ん……これは初めて出るプレゼントだな。何かのスイッチ……?」ポチリ
カッ!
最原「うわぁビックリした! なんか凄い光った!」
最原「ドッキリ用のパーティグッズ的な何かかな……あれ。もう推しても光らないな」ポチポチスカスカ
最原「ていうかなんか……押した手ごたえがない。壊れた?」
最原「まあいいや。みんなのところに戻ろう」
五分後。食堂
最原「僕は悪夢でも見ているのか……?」
春川「モーモターーーン! 遊んで遊んでー!」
百田「読書の邪魔だ。静かにしろ春川」
入間「ふふ。相変わらずお二人は仲がよろしいこと」
赤松「反吐が出るね。ああいう仲良しごっことかマジでゲロるよ」
茶柱「チッ。相変わらず品のない女死ですね。逆流性食道炎になってくたばればいいのに」
赤松「ああ?」
東条「ふええ……や、やめようよぅ。みんな仲良しらーぶらーぶが一番なんだよぅ……?」
最原(誰だアンタら)
最原(他者との距離を感じさせない朗らかな春川さん、
なにやら難しい本を読んでいる落ち着いた雰囲気の百田くん、
やさぐれオーラ全開のひねた赤松さん、
状況に適応できずオロオロする東条さん……)
茶柱「あっ! 最原さん! 最原さんではありませんか! おっはー!」ニコニコ
最原「お、おっはー?」
最原(そして……彼女は一見してわかったけど、やっぱりそうだ)
最原「茶柱さん。男子のこと嫌いじゃなかったっけ?」
茶柱「は? いやいや、むしろ大好きですよ? ああ、全国の女死は今すぐ男子になればいいのにと思ってます!」
最原(彼女の変化が一番わかりやすい……まさか、性格が揃ってみんな逆転しているのか!?)
入間「東条さん。お茶のおかわりを頂けるかしら?」
東条「あ、はい、ただいま! きゃあ!」コケッ
最原「あっ、危ない! 東条さん!」ダッ
東条「よっと」
最原(コケそうになった東条さんは、くるりと空中で縦に一回転をして華麗に着地。何事もなかったかのように入間さん(?)にお茶を注ぎに戻った)
最原(むしろコケそうになった東条さんを助けようとした僕の方が盛大にコケた!)ドンガラガッシャン
東条「ああっ! 最原くん! 大丈夫!?」
入間「バカね。超高校級のメイドである東条さんが、そうそう簡単に転ぶわけないのに」
最原(性格が変わってもスペックそのものは遜色ないのか……!)グヌヌ
最原「み、みんなどうしたんだよ! おかしいよ! なんか入間さんに至っては服装とか変わってるしさ!」
入間「え? 私様が?」
最原「私様!? なにその一人称……いやそんなことはどうでもよくって!」
最原「入間さんは普段はこう……胸元バッカー、な大胆な服着てたじゃん! なんでそれが……なんでそれが」
最原「カッチリ露出度激減の和服になってんの!?」ガビーンッ!
入間「はて……どうだったかしら。そんな服を着てたような着てなかったような……?」
最原「お、覚えてない……!? 百田くん、これってどういうこと!? 何がどうなってるの!?」
百田「うるさい、黙れ」
最原(あ、やばい今のが一番心に来た)
春川「モモタン、それ何読んでるのー? ねぇねぇ、何を読んでるのー?」ベッタリ
最原(春川さんが百田くんに後ろから抱き着いた! 普段あんなことする人じゃないのに!)ヒェェ
百田「ちょっとした生物学の本だ。ある一種のイモガイに含まれるコノトキシンという毒を鎮痛剤として用いるという研究がつづられた本で……」
春川「わからん! そんなことより私と遊べ!」ニコニコ
百田「はぁ……最原、俺と話がしたいのならコイツをどうにかしてくれ。後で礼はする」
最原「ええっ、僕が!?」
春川「ぶー。モモタンと遊びたかったのに……ま、いいや。今は最原で我慢してやろう! わはは!」ニコニコ
最原(や、やばい。朗らかな春川さんに悪寒を感じる。なんだかんだあの春川さんに慣れてたんだなぁ僕)ガタガタ
最原(い、いや春川さんもそうだが、それよりも……)
赤松「……」ジーッ
最原「な、なに? 赤松さん、僕の顔になにか付いて……」
赤松「チッ!」ゲシッ
最原(赤松さんは言い終わる前に、不機嫌丸出しの顔で僕の尻に蹴りを入れた。普通に痛い)
赤松「死ね! バカ!」
最原(そして捨て台詞を吐いて、ズカズカと食堂から退出してしまった。言われなくても死にたい。泣きたい)グスン
東条「ど、どうしたんだろう、赤松さん……なんか急に不機嫌になったけど」
入間「あらあら……ふふ。ヤキモチにしてはちょっと過激すぎるわね」
春川「なーんだ。赤松も遊びたいのなら混ぜてあげたのに」
最原(ショックすぎて何も耳に入ってこない……)
最原(落ち着いて考えろ。こうなる前に、何が起こった? 何が変わった? 探偵として理論的に考えるんだ……!)
春川「むいー」
最原「……何してるの春川さん」
春川「難しい顔をしている最原のマネ」
最原「……」
最原(悪気はないんだろうけど凄くうざい……)
春川「あっ、最原が私のことうざいって思った顔だコレ」
百田「お前はちょっと他者との距離感を考えろ……」
最原(そう言うなり、百田くんは本に栞を挟んで席から立ちあがった)
百田「流石にちょっと様子が変だな。最原、春川、場所を変えるぞ」
最原「えっ?」
春川「合点モモタン! ほら、最原も!」ニコニコ
最原(……面倒見の良さは据え置きなのか……あ、安心した……!)
赤松:しっかり者のお姉ちゃん⇔グレてやさぐれまくったひねガキ
春川:不愛想で他者と壁を作る女性⇔コミュ力カンスト気味のうざいくらい朗らかな女の子
入間:エロ方面に下品かつ妙なところで初心⇔しずしずとした雰囲気の姉御
茶柱:男死は死ね⇔女死は死ね
百田:滅茶苦茶な言動を繰り返す熱血漢⇔理路整然とした冷静沈着の男
東条:滅私奉公で一種機械的なメイド⇔仕事はできるがどこか隙だらけのドジっ子
最原「かくかくしかじか」
百田「なるほど……つまりお前以外の全員が、無自覚な内に性格が逆転していると……」
春川「えっ、それマジ話なの? 怖……」
最原(こっちの台詞なんだけど……)
春川「でもまあいいや! 私は愛に生きる暗殺者! モモタンが好きという気持ちがあればオールオッケー! イエーイ!」
最原(この春川さん超素直!)ガビーンッ!
百田「だがまあ、そんなことが果たしてありえるか?」
最原「……え? どういう意味?」
百田「いや、いい。言っても仕方がない。とにかく端的に、お前の置かれている状況を解決する策を与えよう。ボスとしてな」
最原(なにかに気付いたみたいな口ぶりだけど……いや、そんなことよりやっぱり百田くんはボスなんだ)
百田「このスイッチ、仮に性格逆転スイッチと呼称しようか。これはどうやら使い捨てのようだな」
最原「使い捨て?」
百田「一回使ったら単なるガラクタということだ。なら話は簡単だろう? もう一度、モノモノマシーンからこれを出せばいい」
最原「ああ、なるほど……え? 待って。その策だと」
百田「『いつ解決するかわからない』、か? ふん。軽率にスイッチを押した自分の迂闊さを恨め。これ以上の策は存在しない」
最原「嘘やん」
百田「だが、そうだな。お前が不安で仕方がないというのなら、不本意だが俺が力を貸そう。ボスであるとはそういうことだからな」
最原「……百田くんのそういうところは変わってないんだね。安心したよ」
百田「ふん。用が済んだのなら、俺は食堂に戻るぞ」
春川「あっ、モモタン! 今思いついたんだけど、帰り道まで一緒に移動するんならこれって実質デートじゃない? デートだよ!」
百田「……」スタスタ
春川「デート! デート」ルンルン
最原(百田くんは幸せに表情を蕩かした春川さんを伴いながら、表情を変えずに食堂へと戻っていった。あの二人、仲はいい……のか?)
最原「……いや、それよりだ。早くモノモノマシーンのところに戻らないと! メダルを全部消費してでもスイッチを手に入れる!」
最原「物欲センサーなんかに負けないんだ!」
三十分後
最原「物欲センサーには勝てなかったよ……!」
モノクマメダル、残数ゼロ
最原「くそ……もうそろそろ夜時間だし、今日は諦めるしかないか……」
最原(明日もこの調子だと思うと気が狂いそうになる。特に赤松さんあたりに罵詈雑言を浴びせられるのだけはもうイヤだ!)
アンジー「あれ。終一だー。こんな時間にどうしたー?」
最原「……?」
最原(購買部から出てくるそのとき、アンジーさんと鉢合わせる)
最原(一瞬、いつも通りのアンジーさんだと思って流しそうになったが、違和感に挙動が止まった)
最原(なんだろう。なんか、微妙にアンジーさん、見た目がケバくなってるような……)
アンジー「およ。終一ー? 固まってるぞー」
最原「あ、ああ、ごめんアンジーさん。なんでもないよ」
アンジー「いやー、そんな感じじゃなかったねー。もしかして金が足りてないんじゃないかー?」
最原「……ん? なんだって?」
アンジー「お金は大事だよー。森羅万象すべてを買えるからねー。まさに人が作りたもうた最高の文化だよねー」
最原(そう言うなり、アンジーさんは羽織ったシャツの内側から札束を大量に取り出し、扇のように広げてみせた)
最原「えっ。えっ? あれっ?」
最原「あっ!」
最原(なにかがおかしいと思ったら、そういうことか! なんかアンジーさんのアクセサリーに貴金属類がやたら増えている!)
最原「アンジーさん! 信仰心はどうしたの!?」
アンジー「しんこーしん……? なにそれ、いくら? ハウマッチ? 肝臓何個分くらいの値段?」
最原(うわあああああああ! こっちのアンジーさんもこれはこれで怖いよーーー!)ガーーーン!
アンジー:神の敬虔なる従者⇔完全なる金の奴隷
アンジー「ほらほらぁ。終一の元気は一体いくらー? 百万? 二百万? 三百万?」ヒラヒラパタパタ
最原「ちょっ、アンジーさん、やめようよ! その札束扇、見てるだけで落ち着かないよ!」
アンジー「にゃはははー! 終一もやってみればわかるよー! ほーら、送風送風」パタパタ
最原(アンジーさんは札束の扇でこちらを遠慮なく扇ってくる。正直、風量自体はそんなでもない。だって札束だもん! 扇ぐためのものじゃないから!)
アンジー「金ってるねー!」
最原「金ってるって何!?」ガビーンッ!
最原「ていうかアンジーさん、そのお金一体どうやって……」
アンジー「美術品の闇市場……おっと、これは終一にはまだ早かったねー。でもその内教えてあげるよー」
最原「遠慮させていただきます!」
アンジー「四百万、五百万、六百万……いくらになったら終一の元気は買えるかなー? 楽しみだなー?」
最原(具体的に何がどうとは言えないが、金額が吊り上がる度に取り返しが付かなくなっている気がする! なんとなくだけど!)
最原「あ、アンジーさん! いい加減に……!」
バシンッ!
最原(そのときだった。アンジーさんの持っていた札束扇が、飛来してきた何かに叩き落とされたのは)
最原(そこら中に飛散する札束を丸い目で見つめていたアンジーさんは、視線をある方向へと移した)
アンジー「おやや。これは一体なんのつもりー? 竜馬ー?」
星「……」
最原「星くん……?」
最原(ということは、飛来してきたのはテニスボール? 助けてくれた……のかな?)
星「勘違いをするなよ最原。俺は別にお前を助けたわけじゃない」
最原「えっ」
最原(テニスラケットを構え、僕たちの方へとにじりよる星くんは、今まで見たこともないほどに楽しそうな顔をしていた)
最原(普段なら絶対にありえないことだが、それは生気に満ち満ちた顔だった)
星「俺はただ欲しいだけだ……」
星「金も! 食い物も! 女も! この世にあるすべてが欲しいだけだ!」
星「奪ってでも、蹂躙してでも、なにを侮辱してでも欲しくて欲しくて堪らないんだよ!」
星「そう! 俺はこの世界に生きている! 生きているからだ! ふはははははははははーーー!」
最原(変貌の仕方がいくらなんでも極端すぎるーーー!)ガビーンッ
星:生きる意味を見失ったニヒルダンディ⇔悪に堕ちる。欲望のために
星「お前は美しい! そして、俺の持っていない金をそんなにも大量に持て余している! ゆえに! だから!」
星「俺はお前を蹂躙しよう! 全身全霊をもってなァ!」
アンジー「あれま。告白されちゃったよ。アンジーは終一が好きなんだけどなー」
最原「はい!? 今なんて!?」
アンジー「でもアンジーはまだ純潔を散らすつもりはないし、ましてや金を誰かに渡すならまだしも奪われる気も毛頭ない」
アンジー「……そうだ。アートにしよう。うん、そうしよう。竜馬はアンジーのアートになってよ!」
アンジー「人体を使った露悪趣味の美術品! 酔狂な金持ちたちが揃って涎を垂らすだろうねー」ジャキンッ
最原(アンジーさんは彫刻刀を構え、星くんと向き合った)
最原(対する星くんもいよいよもってアンジーさんを敵とみなしたようで、替えのテニスボールを握る)
最原(互いに怪しく、そして激しいオーラをぶつけ合うその様を見た僕は……)
最原「……よしっ。帰ろう」
最原(考えることを放棄して帰ることにした)
最原(後ろから凄い音が聞こえるけど、あれは断じて戦闘の音ではない。断じて!)
最原(目じりから謎の涙が溢れて止まらないけど、もうどうでもいいや! 僕には関係ない! あはははは!)
眠いので寝ます。更新は今日の朝か昼に
翌日 朝八時 自室
最原「……ハッ! 夢か……そうだよな。夢のはずなんだよな。あんな出来事が現実に起こってたまるか」
最原「よーっし! 今日も元気に食堂へと向かうぞー」ガチャリ
赤松「……」ジトー
最原(ドアを開けたその瞬間、昨日と同じくやさぐれオーラ全開の赤松さんがいた)
最原(そして僕は思い知ったんだ。昨日のあれがすべて現実だったということに……)
最原「神を呪う……」
赤松「何言ってるの?」
最原「いや、なんでもない。それよりどうかした?」
赤松「……」ジトー
最原(な、なんか知らないが、今の一言で僕の印象が悪くなったみたいだ……!)
最原(『察しろ』と目で訴えている気がする!)
最原「え、えっと……赤松さん? 本当にどうしたの?」
赤松「……今日、暇?」
最原「え」
最原(全然暇じゃないけど、そう言ったらまた不機嫌になりそうだな……)
赤松「暇ならさ、今日は私と一緒に研究教室で……」モジモジ
最原(勝手に話を進めてる! ちょっと強引なところは変わってないのか!)
最原「あ、あのさ、赤松さん。今日は悪いんだけど、僕も用事が……」
赤松「……!?」ガーン!
最原(な、なんでだ。ただ誘いを断っただけなのに、凄い罪悪感だぞ……!)
最原(ていうかキミ昨日、仲良しとか反吐が出るとか言ってたじゃないか!)
赤松「べっ、べっつに! なに自惚れちゃってんの!? 私が最原なんか誘うわけないじゃん! バカッ!」
最原「ええっ!?」
赤松「仲良しとか反吐が出るんだよ! 楽譜を喉に詰まらせて死んじゃえバーカ!」
最原(そうかわかったぞ! このセリフは彼女の強がりなんだ! 実際のところみんなと仲良くしたいんだ!)
最原(ただ反抗期真っ只中みたいな性格になっちゃってるから上手く行かないだけで!)
最原(……め、面倒だな! 普段の五割増しくらい面倒な赤松さんだ……!)
赤松「百田と春川とで3Pでもなんでもヤッてなよ! 私、全然悔しくないから!」
最原「赤松さん!? 一旦冷静になろう! なんか凄いこと口走ってるからさ!」
赤松「うっさいバーカ! もう私に話しかけないで! じゃあね!」ダッ
最原(興奮気味にまくしたてる赤松さんは、そのまま寄宿舎から飛び出し、どこかへと去っていった)
最原(僕の気のせいかもしれないが、彼女はそのとき、もしかしたら……)
真宮寺「泣いてたわね」
夢野「泣いてたのう」
最原「ああ、やっぱり……んあっ!?」
最原「真宮寺くんと、夢野さん!? いつの間に?」
真宮寺「いつから、と問うのが正しいはずよ。私は一部始終を見ていたのだけれども」
最原(口調が! 真宮寺くんの口調が! ていうかマスク取れてる! 口紅してる! 何事!?)
真宮寺「まったく。もう少し言い方ってものがあったでしょうに。まあこれは彼女が面倒な性格してたのも悪いのだけれども」
夢野「ウチは赤松のことが心配じゃ! 泣いてる仲間を見捨てるなぞ、間違っても魔法使いのやることではない!」
夢野「今すぐ追って、赤松のことを励ましてくるぞ! 善は急げ、思い立ったが吉日、怠惰は七つの大罪じゃ!」
最原(一瞬いつも通りなんじゃないかと思ったが、夢野さんは物凄いキビキビしている! 有体に言えば速い!)
夢野「最後に言っておく! 最原に足りないものォ! それは!」
夢野「情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ!」
夢野「そして何よりもォォォォォォ!」
夢野「速さが足りないッ! のじゃ! わかったかこのウスラトンカチ!」
最原「ウスラトンカチ!?」
夢野「レクチャーをしているうちに既に五秒も無駄にした! ウチはもう行くぞ! 全速力でな!」ギュンッ
最原(夢野さんが消えっ……たように見えたが、実際のところ超高速で動いてただけだった)
最原(いやそれはそれでおかしいけども!)ガビーンッ!
夢野:おっとりマイペースロリ⇔感情丸出しスピード狂
最原「任せていいのかな……」
真宮寺「ふふ。心配?」
最原「……あの、真宮寺くん、だよね? 雰囲気変わった?」
真宮寺「そう? 元からこんな感じだったような気がするけども」
最原(彼は何がどう逆転したんだ……わからない)
最原(ただ、口調と見た目はともかくとして、やたら穏やかだな)
真宮寺「ほら、食堂に向かいましょう? 東条さんがお待ちかねよ」
最原「あ、うん。そうだね」
真宮寺:主人格がデフォで是清⇔主人格がデフォで是清姉
十分後、食堂
赤松「……」ムスッ
夢野「元気づけ……完了。ウチはまた世界を縮めてしまった……」フッ
最原(本当に早い! あの調子じゃ今日は食堂で一緒することはないかなと思ってたのに!)
茶柱「ふん。女死は嫌いですが、夢野さんの速さだけは尊敬するしかないようですね」
夢野「この世の理は速さじゃからの!」
最原「……それにしても……」
最原(僕だけは食事の時間をズラすべきだったかな……早々にお腹痛くなってきた)
最原(さすがに朝から『これ』はきつい……)
王馬「やっぱり朝はコーヒーに限る……特にブルーマウンテンとかは最高だ」
最原(なんかやたら落ち着いてる王馬くん)
キーボ「ふふふ。やはりこの時間はいいですね。栄養補給に好悪を付ける人間の非合理さを目の当たりにできます」
キーボ「やはり人間は滅ぶべき。新時代は我々ロボットが担うべきだと確信できます!」
最原(ディストピア思考のキーボくん)
白銀「やめろ。食事のときくらい落ち着け。メシが不味くなる」
最原(口調から服装までのすべてがスケバンルックになってる白銀さん。眼光も威圧感マシマシだ)
天海「ねーみんなー! 俺もうご飯食べちゃったー! 凄い? 凄い?」
最原(知能指数が小学生レベルまでガタ落ちしてそうな天海くん……ついでに危機感も消え失せてるようだ)
最原「なんだこれは。なんだこれは……」ガタガタ
王馬:有ること無いこと駄々流しの子供じみた嘘吐き⇔落ち着き払った優雅なカリスマ
キーボ:人間に見下されることを嫌うロボット⇔ロボットが地球を支配する未来を夢見るディストピア脳
白銀:委員長タイプのオタク⇔孤高のスケバンかつオタク
天海:ミステリアスでクールな少年⇔鼻たれ小僧
最原「……あれ。ゴン太くんがいないな。どうしたんだろ」
春川「獄原はちょっと遅れるって」
最原「そう」
最原(ゴン太くんには悪いけど、この状況を更にカオスに貶めるようなことにならなくてよかったな……)
最原(まあどんなことになったにせよ、ゴン太くんが癒し要員から外れることはないだろう。ゴン太くんだし)
ビリビリッ
最原「……ん? 今なんか空気が張り詰めたような……」
食堂のみんな「……」シーン
最原(あれ。なんだろう。みんな黙っちゃった。さっきまで騒がしいくらいだったのに)
百田「……噂をすれば影、だな。来たぞ」
最原「えっ」
最原(空気の張り詰め方が尋常ではなくなっていく。そして僕は気付いた。この食堂に、なにかが向かってきている)
最原(僕たちをあざけるようにゆっくりと!)
百田「今日はどうやら不機嫌のようだな。覇気が尋常じゃねぇ」
最原「覇気ってなに!?」ガビーンッ!
世紀末覇者(虫は殺さない)
最原(そして、食堂のドアがゆっくりと開いていく)
最原(僕の背中に粟が立った。開いた扉から冷気が漏れ出しているかのような錯覚を起こしたからだ)
最原(そして扉が完全に開いたそこにいたのは……)
獄原「やあみんな……おはよう」ゴゴゴゴゴゴ
最原「ご、ゴン太くーーーん!?」ガビビーーーンッ!!
最原(ほの暗いオーラを纏ったゴン太くんだった。眼光以外の表情すべてに影がかかってて、一瞬だけど誰だかわからなかったけども!)
最原(いや、ていうか本格的にマジでこれゴン太くんか!?)
獄原「唐突だけど僕は虫さんが大好きなんだ」
最原(ゴン太くんだったーーー!)ガーーーン!
百田「……どうしたよゴン太。今日はやけにご機嫌斜めじゃねーか」
獄原「ああ……僕は悲しいんだ。とても悲しいんだよ」
獄原「今からこの中の誰かを、この手で始末しなければならなくなったからね……」ゴゴゴゴゴゴゴ
最原「始末!?」
獄原「僕の研究教室にあった標本がね、一個だけ箱ごとなくなってたんだよ」
獄原「売れば結構な金になるだろうから、僕はアンジーさんが怪しいと思ってるんだけど……」
アンジー「えっ」
最原「ちょ、ちょっと待ってよゴン太くん! この学園にいたままじゃ売ろうにも売れないよ!」
最原「というかゴン太くんおかしいって! 始末とか本気で言ってるわけじゃないよね? ね?」
最原(席から立ちあがり、僕はゴン太くんを必死で宥めにかかる)
星「バカ野郎! 最原! 今のそいつに迂闊に近づくなーーー!」
最原「んっ?」
最原(星くんの叫び声が聞こえたころには全てが手遅れだった)
最原(気が付いたら、僕は宙に浮かんでいた)
最原(いや、違う。浮くなんて生易しいものじゃなくって……吹っ飛んでいた。真後ろに)
ドカァァァァァアアアン!
ちょっと休憩します
数時間後。自室
最原「……ハッ! 夢か! 当然だよな、あんなことが現実に起こるはずがないよな」
最原「よし。今日からまた新しい日を始めよう!」
赤松「バカじゃないの?」
最原「……少しくらい現実を忘れさせてほしかったなぁ」エグエグ
最原(ベッドから起きるなり、赤松さんに凍死しそうなほど冷たい目を向けられた僕は、もう精神が崩壊する三秒前だった)
最原「……って、赤松さん!? なんでここに!?」
赤松「ここにいちゃ悪い?」
最原「悪い悪くない以前に……」
ガチャリ
春川「おっ。最原が起きた。おーいモモタン! 最原が起きたぞー!」
最原(話の途中で春川さんが無遠慮に僕の部屋へと入ってきた。心底うれしそうな表情で後ろにいるらしい百田くんに知らせる)
春川「もう二度と起きないと思われた最原の奇跡の復活だよー!」イエーイ!
最原(一体僕の身に何が……いや、知りたくないな……)
百田「無事か? 最原」ヒョッコリ
最原「えっと……まあ、お陰様で。百田くんが僕をこの部屋まで運んでくれたの?」
百田「いや。俺じゃなくって赤松がやった」
最原「えっ」
赤松「!?」
春川「赤松ってば、最原が吹っ飛んだ後すごい取り乱してたんだよー。もうこの世の終わりだァンって感じで」
赤松「ちょっ……」
春川「『助けて! 最原が死んじゃう! お願いだから誰か助けて!』なーんて! いやーお熱いですなー!」ニコニコ
春川「いやでもわかるよ私も。多分モモタンが同じ状況になったら私もあんな感じになるよ」
春川「『愛する人を失う』ことは何よりも耐えられないことだし」
赤松「死ねッ!」ブンッ
春川「危なっ」ヒョイ
最原(赤松さんは真っ赤な顔で、春川さんに向かって砲丸をぶん投げたが、当たるわけがなかった)
最原(そして避けられた砲丸は春川さんの代わりに、僕の部屋の壁に傷を作る。うわぁ!)
最原「もう砲丸を持っている程度で赤松さんに驚けない自分が怖い……」
最原「ありがとう赤松さん……なんだかんだで、やっぱり優しいんだね」
赤松「誤解しないで。私は最原のことなんかどうだっていいんだから」
赤松「でも……大丈夫? どこか痛いところはない?」
赤松「なんなら私が付きっ切りでいてあげようか?」
最原(どうだっていいって反応じゃないよ、明らかに)
百田「悪いが赤松、ちょっとだけ席を外してくれ。最原と大事な話があるんだ」
赤松「……やだ」
百田「そうか。春川、頼む」
春川「あいさー」トンッ
赤松「!?」ドサリ
最原(春川さんが赤松さんに近づいたと思った次の瞬間、赤松さんの全身から力が抜けた)
最原(崩れ落ちそうになる赤松さんの体を春川さんが優しく支える)
春川「恐ろしく早い手刀……私でなきゃ見逃しちゃうね」フッ
最原「手刀を打ち込んだの!?」
百田「さて。赤松もぐっすりしたところで状況の報告だ」
最原「あ、ああ。うん。赤松さんを除外する必要があったの?」
百田「理由はその内わかるさ。まあひとまずゴン太のことから話そう」
百田「ゴン太は最原を見せしめとしてふっ飛ばした後、俺たちに宣言した」
百田「もしも標本が夜時間までに見つからなかった場合、犯人含めた全員を一人ずつなぶり殺しにするとな」
最原「なぶり殺し!?」ガーン!
百田「虫と死体の関係性に関する論文を十五人分も書けるので、これはこれでよしと言っていたな」
最原「虫と死体!? 論文!? 虫と死体!?」ガーン!
百田「知らないか? 死体農場と言って、アメリカではこれらの研究が日常的に行われているんだぞ?」
最原「知ってはいるけど話が別だよ!」
春川(知らなかった)
百田「そして俺たちは、ゴン太が去った後で虫の標本の大捜索を行った。結果、見つかったことには見つかったんだ」
最原「あ、ああ。それはよかった。これでなぶり殺しにされることは……」
春川「その標本がこちらになりまーす」
壊れた標本「ヤッホー」グッシャリ
最原「……」
最原「……?」
最原「…………ゑ?」
ゴン太:心優しき昆虫博士⇔ダークネス街道まっしぐらのマッドドクター
最原「こ、壊れてるーーー!? なんでーーー!?」
春川「結局これ、夜長が盗んだらしいんだけどさ。どうも昨日の内に『激しい運動』をしたらしくって」
春川「『そのときに壊れたんだよー。いやー、うっかりうっかり』って話してたね。あっはっは」
最原「あっはっはじゃないよ!」
最原(……いや、待てよ。激しい運動だって? そういえば昨日は彼女は星くんと……)
最原(あの戦闘で壊れたのか!)ガーン!
百田「で。こっからが本題だ。最原にこれを渡そうと思う」ポイッ
最原(特に感慨もなさそうな顔で百田くんが放り投げたそれは、ベッドの上へと落下する)
最原「これは……性格逆転スイッチ?」
百田「これでお前だけはゴン太から逃げられる。よかったな、最原」ニコ
最原「えっ……えっ?」
最原(この事件が起こってから初めて見る百田くんの笑顔。それに僕は不吉なものを感じた)
百田「あのな最原。そんな小さいスイッチ一つで、学園中の人間の性格を変えることはやっぱり不可能だよ」
最原「それって、どういう……」
百田「むしろ、どんなに荒唐無稽であれ、お前ひとりをどうこうするのが一番手っ取り早い」
百田「このスイッチは『押した人間以外の学園にいる全員の性格を逆転するスイッチ』じゃなくって」
百田「『お前の認識を変えるスイッチ』か、もしくは『お前を別世界に送り込むスイッチ』だと考えた方が自然だ」
最原「え。ちょっとそれは荒唐無稽すぎない!?」
百田「この学園そのものが荒唐無稽だろうが」
最原「……あっ。確かに」ウン
春川(納得するのかよ)
百田「どっちにしてもこれはお前にとっての悪夢さ。スイッチを押せば、ここから逃げられる。これで解決だ」
最原「……百田くんたちはどうするの?」
春川「あー。刺し違えてでも獄原はどうにかするよ。せめてモモタンくらいは守り抜くよ」
百田「バカが。お前が俺に守られる立場なんだよ。助手風情が調子に乗るな」
春川「……」
春川「……あ。ごめん。あまりにもキュンとしすぎて、おちゃらけるの忘れてた」カァァ
最原「……」
最原(この悪夢から逃げ出せる……本当に……?)
最原「最後に一つ聞いていいかな、百田くん」
百田「なんだ?」
最原「このスイッチ、どうやって手に入れた?」
百田「……」
春川「それはねー! 優しいモモタンがー、昨日話を聞いてすぐにモノクマメダルを学園中から探し出してー」
春川「さっき最原が眠っている間に一生懸命ガシャポンガシャポンやったからだよ!」
春川「あはは。恰好いいでしょ、マイダーリンは」
百田「黙れ」ギロリ
春川「あっ、やばい。これはガチ怒りだ」
最原(……心は決まったかな)
最原「僕も一緒に、この事件の解決に乗り出すよ。一人だけ逃げるなんてマネはもうしない」
百田「……逃げるべきだ。お前は」
最原「百田くんがなんと言おうと僕はまだ、このスイッチは押さないよ。だって!」
最原「赤松さんは結局優しかったし、百田くんも僕を見捨てたりしなかった!」
最原「それはきっと命を賭けるに値する真実だから!」
百田「……春川。お前のせいだぞ。余計なことを言いやがって」
春川「えっ。マジで? ごめん」
百田「まあいい。スイッチはお前の手元にある。逃げたければいつでも逃げろ。ただし」
百田「使うときは一人だけのときにしろよ。回りの人間が巻き込まれてしまうかもしれん」
最原「だから逃げないって」
百田「バカめ」
春川「バーカ!」
最原(な、なんで春川さんまで……)
最原「と、とにかく。一緒に考えてみようよ! みんなで考えれば、きっと希望が見えてくるはずなんだ!」
春川「よし来た! それじゃあ、そのみんなの内の一人をそろそろ起こそうか」
最原「ん? 誰を起こすって?」
春川「えーっと、入間の作った『電気手袋メタルマックスエディション』を装着して……」ガチャガチャ
春川「蘇るのだ……この電撃でぇぇぇぇぇぇ!」バチバチバチバチィ!
赤松「ひいいいいやあああああああ!」ビリビリビリビリ!
最原「あかっ……赤松さーーーん!」
百田「アホウ! もっと他に起こし方があっただろう!」
十分後 食堂
最原「ということで……なんとかゴン太くんの大虐殺を止める方法を、みんなで考えてみようよ!」
入間「無理でしょう」
東条「無理だよぅ」
天海「無理だー!」
王馬「無理」
キーボ「100%無理ですね!」
茶柱「無理です!」
白銀「無理に決まってんだろ」
真宮寺「ときには潔さも必要よ」
星「無理だな」
夢野「無理じゃろ!」
春川「凄いね最原! みんなの心が一つになったよ!」
最原「こんな方向に一つになっちゃダメだーーー!」ガビーーーンッ!
百田「実際問題、無理だからな」
最原「うう、くそっ……なにかあるはずだ……なにか方法はあるはずなんだ……!」
赤松「……ねぇ。最原。一つ案があるんだけど」
最原「なに? 赤松さん」
赤松「普通に謝ればいいんじゃない?」
最原「……あっ」
最原(赤松さんに指摘されて気付く。完全に盲点だった。そうだ、普通に謝ればいいという最悪の手段だけは残っていたじゃないか!)
百田「まあ、それは最悪の手段だとして、だ。やらせるにしてもアンジーをイケニエにすればいいわけだし」
アンジー「マジでー?」
百田「入間。お前、壊れたものを修復するマシンとかは作れないのか?」
入間「ふむ……作れないことはないと思うけど。あの研究教室に三年は籠るハメになるわね」
東条「長いよぅ! 間に合わないよぅ! アンジーさんをイケニエにしようよぅ!」
アンジー「最後ー。最後の部分だけは同意できないよー。最後ー」
白銀「もうお前は黙れ……ヨーヨーぶつけんぞコラ」
キーボ「ボクたちは、アンジーさんをイケニエに捧げ、残る十四人全員の免罪符を召喚します!」
王馬「キー坊。今はイケニエじゃなくってリリースって言うんだよ」
夢野「決断は早ければ早いほどにいいぞ。なにせ速さは正義じゃからな!」
茶柱「転子たちは助かり、女死が一人消える……最高のハッピーエンドではないですか! ヒャッホイ!」
アンジー「あれ。これ危ないねー。アンジーの味方がよくよく見ればひとりもいないよー」
天海「大丈夫だよアンジーさん! ゴン太くんだって鬼じゃないからさー! 死にはしないよ、たぶん!」
アンジー「うーん、蘭太郎はアンジーの味方をしていると見せかけて完全に突き放してるねー」
アンジー「……あれ。これ本当にやばくない?(素)」ダラダラ
アンジー以外全員「これが僕(俺)(私)(私様)(ボク)たちの答えだ!」
アンジー「」
買収しなきゃ(使命感)
そして運命の夜時間
最原(悲しい事件だった……結局、僕たちは『アンジーさんが壊れた標本を持って普通に謝る』という最悪の手段を取らざるを得なくなったのだ)
最原(だがゴン太くんが出した条件は元々『標本が見つかること』だったので、皆殺しはそれだけで回避された)
最原(でも、アンジーさんは……アンジーさんは……)クッ
春川「健康に害はない程度だとはいえ、寄生虫を体に入れさせることを強要されたときの夜長の顔……こっちまで泣きそうになったよ」
百田「モノにもよるが、寄生虫は取り付いた人間をむしろ健康にすることもある。そこまで悲観することはない……が、確かにあんまりだな」
最原「本当に……イヤな事件だったね」
赤松「助かっただけ儲けものでしょ、アイツも」
最原(ゴン太くんの研究教室からは、今まで聞いたこともないようなアンジーさんの悲鳴が止むことはなかった……)
最原(自業自得とは言え、少しは同情を……同情……)
アンジーの声「お、お願いー! お金! お金あげるからー! 全部あげるからー! ね? ね? 足りないんなら誰かから脅し取ってくるからー!」
最原(あ、いやだめだ。全然同情できない。普段のアンジーさんならまだともかく)
しれっと逃げてる星くんにもオシオキしなきゃ(使命感)
最原「……まあ、ともかく、僕はゴン太くんの研究教室の回りで待つことにするよ」
最原(さすがに誰のフォローもないまま放置はちょっと可哀想だしな……)
百田「そうか。俺はもうどうでもいいので帰る」
春川「モモタンが帰るんなら私もー。じゃ、おやすみなさい最原ー! 赤松ー!」
百田「……っと、そうだ」
最原(百田くんは思い出したように振り向き、言った)
百田「やり残しはないようにな」
最原「……気遣いありがとう。やっぱり百田くんは百田くんだったね」
百田「言っていろ」
最原(ありがとう、この世界の百田くん……)
赤松「ホモなの?」
最原「藪から棒に何!?」ガビーンッ!
最原(ていうか赤松さんは帰らないのか!?)
赤松「……それとも、春川を挟んだ三角関係? ああいうスレンダーなのが好み? ふーん」
最原「い、いや。全然違うけど……第一、あの春川さんを百田くんから引き離すのは多分誰でも不可能だよ……」
赤松「……じゃあ性格は?」
最原「はい?」
赤松「やっぱり、ああやってよく笑って、素直な子が好きなの?」
最原(さっきからこの人は何を言っているんだろう……微妙に返答に困る質問のオンパレードだ)ズーン
赤松「……私みたいな捻くれたガキは、やっぱり誰も好きになってくれないのかな……」
最原(俯き、目を伏せる赤松さんを見て、百田くんの別れ際の言葉が頭の中でリフレインされる)
最原(やり残したことがないように、か……)
最原「確かに赤松さんは妙なところで他人に当たりが強いけどさ……でも、それだけじゃないことを僕は知ってるよ」
赤松「え」
最原「少なくとも、赤松さんのことを好きな人間がここに一人いるんだからさ。もっと自分に自信をもっていいんじゃないかな?」
赤松「……」
赤松「……えっ」カァァ
最原「んっ?」
赤松「……ええっ!?」
最原「あれっ……?」
最原(みるみる内に赤くなっていく赤松さんを見て、僕は自分の言葉を必死に思い出す。なにか伝え忘れたことがあったような気がする)
最原(……あっ。『もちろん友達としてだけど』って言葉を語尾に付け忘れた!?)ガビーンッ!
赤松「い、今のって……『そういう意味』でいいんだよね? ね?」
最原「えっ! いやっ、違っ」
赤松「違うとか言ったらピタゴラ砲丸スイッチでぶち殺す」ギロリ
最原(んな無茶な!)
赤松「も、もう最原は私のものだから……! 仮に! 今のが『そういう意味』でなかったとしても、覚悟決めるから!」
赤松「あんたにだけは、絶対に全部誤魔化さずぶつけるから!」
赤松「その気にさせたあんたが悪いんだからね! 私は悪くない!」
最原「赤松さん、ちょっと落ち着いて……!」
最原(なんかのストッパーを外してしまったようだ。勢いがとにかくかなり怖い!)
最原(赤松さんは耳まで真っ赤にして、僕の方に詰め寄り、胸倉を引っ掴んで引っ張り……)
赤松「あんたが全部悪いんだからね……」
最原(そのままお互いの顔を近づけ……)
アンジー「終一ーーー!」ドーーーン!
最原「コペルニクスッ!」
最原(ことが済む直前に、脇腹あたりに涙目のアンジーさんが突っ込んできた!)
最原(こ、呼吸ができない! あまりの苦しさに床に倒れこむ)ヒューッ!
アンジー「終一ー! アンジー、獄原に改造されちゃったよー! 綺麗な体じゃなくなっちゃったよー!」ギュウ
最原(タックルを決め込んできたアンジーさんは、いつの間にやら僕の体に絡みつき、胸元に顔を埋めて泣き出した)
赤松「……最原……」ユラリ
最原「ちょっ、待って赤松さん。これ僕は悪くなくない? これこそ僕は悪くなくない?」
最原「そんな目で見られる筋合いはなくない!?」アワワ
赤松「明日、お前を、殺す」
最原「」
その後、赤松の自室
赤松(……結局、最後の最後で毒づいちゃった。でもあれはどう考えても最原が悪いし……)
赤松(……いや。よそう。私は悪くないにしても、最原のせいにするのもなんか違う)
赤松(明日になったら謝ろうかな……)
赤松(……謝る? 私が?)
赤松(……ふふっ、なんか。最原の影響かな。ちょっとだけ素直になれたかもしれない)
一方、最原の自室
最原「怖かった……あの赤松さんの殺意の籠った目。目!」
最原「明日になったらやっぱり殺されるのかなぁ、僕……」
最原「……でも」
最原(誤魔化さずに全部ぶつける、か。あの言葉自体は、きっと彼女にとってもいい言葉だ)
最原(このスイッチを押した後、この世界の僕はどうなるのか……多分、元からここにいた誰かに戻るだけだと思うけど)
最原「うーん……この世界の僕に申し訳ないなぁ……でも」
最原(帰らないわけにもいかないよな。うん。あっちの赤松さんも、百田くんも、春川さんも……僕にとっては大事な人だから)
最原「さらば、逆転世界。なんてね」
ポチリ
カッ
逆転最原に荒らされた世界に戻るのか…
朝八時
最原「……さてと。ちゃんと戻ってこれたのかな……」
最原「ドアを開けるのが怖いなぁ……いや、あの世界の人たちも大体全員いい人だったけどさ……」
ピンポーン
最原「あっ、迷ってるうちに誰か来ちゃった。はい! 今開けます!」
ガチャリ
百田「おう! 終一! 今日も素晴らしい朝だぞう!」
最原「……」
百田「絶好のトレーニング日和だ! 今から夜時間が待ち遠しいぜ! そう思うだろう! なあ?」
最原「……」
百田「……ん? どした? 鳩が豆大福食らったみたいな顔になってんぞ」
最原「」涙ブワッ
百田「ええっ!?」ガビーンッ!
最原「も、百田ぐーーーん!」ダキッ
百田「ええーーっ! 何事ーーー!?」ガビビーーーンッ!
最原「安心した! 凄い安心した! いつも通りのバカ臭い言動の百田くんだーーー!」
百田「出会いがしらにディスられた! ちょっ、おい離れろ終一! こんなところ誰かに見られたら!」
春川「……」
百田「ハッ」
最原(いつの間にやら、ドアの向こうにいた春川さんが、目を見開いてこちらを見ていた)
春川「……不潔」
バタン
百田「うおおおおおおおお! なんかあらぬ誤解を受けたーーー!」ガーーーン!
最原「春川さんだ! やたら百田くんに当たりが強い春川さんだ! ヒャッホーーーウ! この世界に生まれてよかったーーー!」
百田「変なことで喜ぶなーーー!」
最原「あっ、そうだ! 赤松さんにも会わないと! ごめん、百田くん。また後で!」
百田「ええっ、おい!」
ガチャリ バタンッ!
百田「……なんなん?」
赤松「……あれ。おはよう、最原くん。そんなに急いでどうしたの?」
最原(探してみたら、赤松さんはすぐに見つかった。僕が見たくて仕方がなかった、あの赤松さんがそこにいた)
最原(……あっちの赤松さんも違う魅力があったけども、やっぱり僕はこっちの赤松さんの方が落ち着く)
最原「赤松さん……キミに一つ言いたいことがあってさ」
赤松「え?」
最原「ずっと前から、言いたくて仕方がなかったんだ」
赤松「えっと……い、一体なに? なんかいつもより真剣な表情になってるから、緊張しちゃうな……」
最原(息を吸って、吐いて、精神を整えてから笑顔で言い放つ)
最原「ただいま!」
完
乙
逆転最原の無双っぷりも見たかったな
逆転獄原くんのモデルは絶体絶命でんぢゃらすじーさんの最強さんでした。HTML化依頼出したんで……あとは何もしない!
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