後輩騎士「門を守る仕事だぜ」騎士「国を守る仕事だ」 (29)

建て直しリメイクです

更新頻度はゆっくりめです

コメントあると喜びます

肌に合わないと感じたらコメントする前にバックするようにしていただけると嬉しいです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1485446766

《夢》

「なんでだよ……なんで俺たちが戦わなければいけないんだ!!」

夢を見た。

「兄さん……悪いが、退いてもらう」

「お前は人間だ! お前の居場所はこちらだ!」

夢を見るなんて久しぶりだったが、それでもすぐに気付いた。

これは悪夢だ、と。

そして俺の胸から、幾つもの鈍色が突き出てくる。

赤い。司会が赤で満たされる。

そして耳に叫び声が響いてきたが……でも。

俺は後悔なんて、していなかったんだ。

《出会い》

後輩騎士「(俺が初めてその人を見たのは門の前だった。一人で静かに、身動ぎひとつせずに立っているその騎士は、チラとこちらを見ると先頭の隊長に声をかけた)」

「通行許可証を」

騎士隊長「まったく、お前は相変わらず頭が硬いな。女が寄り付かんぞ?」

「規則ですので」

騎士隊長「規則、規則ねぇ。個人的には少しくらい規則破ってくれる可愛げを見せてくれりゃあ嬉しいんだがな」

「仕事中に酒を飲むような騎士にはなりたくないですね」

騎士隊長「うぐっ……な、内緒な? ほ、ほれ、許可証……」

「国王すら黙認している事実にいまさら内緒も無いでしょうに。……はい、確認しました、どうぞ」

騎士隊長「うむ、御苦労! ハッハッハッハ!」

後輩騎士「(誤魔化すように笑って、慌てて門を潜る隊長の後ろに着いて門を潜る)」

後輩騎士「隊長、あの人は誰っすか? なんかいつもの隊長よりも失礼な感じしたんすけど」

騎士隊長「お前には言われたくねぇだろうなぁ……あいつは騎士って奴だ。そりゃもう真面目でな。腕もかなり良い。…………お前は口が硬いから特別に教えてやるが、俺でもまず勝てねぇ」

後輩騎士「ほぁっ!?」

騎士隊長「そういうことだ。その癖に自分から門番やってて、騎士曰く「ここが一番守れる」らしい。ま、悪い奴ではないさ。規則にはうるさいけどな」

後輩騎士「……マジすかぁ……」

騎士隊長「あいつぁあんまり人に言いたがらないから、俺が話したことは内緒な?」

後輩騎士「なんで隠してるんすかね?」

騎士隊長「そうなぁ……わかんねーけど、何か考えがあんだろ。あいつにゃあいつのな」

後輩騎士「はぁ……そっすか……」

騎士隊長「ま、なにか困ったことがあったら相談してみると良いかもな」

後輩騎士「うーっす」

後輩騎士「(……あれで、隊長より強い……のか……なるほどな……)」

《部下》

騎士「……お前が後輩騎士か」

後輩騎士「は、はいっ!」

騎士「何を緊張しているのかは知らんが、別に難しいことをする訳じゃない。それよりも何故ここに来ることにしたのかが気になるところだな……。隊長にも散々止められただろう?」

後輩騎士「まぁ……はい。いや、なんというか……楽そうかなーって」

騎士「……………………」

後輩騎士「……うぐ」

騎士「まったく……どうしてこう……。……分かった、お前のことは俺が預かる。だがその腐りきった性根を叩き潰してやるから覚悟しろ」

後輩騎士「あ、はいっ!」

後輩騎士「(……本当は、騎士さんに稽古つけて貰いたいってのがあるけど……なんか恥ずかしいよな……)」

騎士「これから朝の訓練だ。準備が出来次第訓練所2に来い」

後輩騎士「わっかりました!!」ダダダッ!

後輩騎士「(……どんだけつぇーのか、見せてもらうぜ。これでも俺は同期の中で最上位を争ってたんだ、隊長が勝てないからって俺が勝てない道理は無い……筈!)」

《はじめての特訓》

後輩騎士「よろしくお願いしまっす!」バッ!

騎士「あぁ。打ってこい」スッ

後輩騎士「うっす! でぇぇや!」ブンッ!

騎士「…………」スッ……カッ!

後輩騎士「(いなされた、正面からやる気は無いってことかよ? ……ぜってー本気出させる!)」ブンッ! ヒュッ!

騎士「………………」カッ! スッ……

後輩騎士「チッ!」バッ!

騎士「甘い」カカッ! ガッ!!

後輩騎士「えっ!? うぐっ!」ヒュンッ! ドサッ

後輩騎士「(……俺の攻撃をいなしながら剣を押して、俺が前に出た瞬間に足で引っかけられた……なんだ今の!? 完全にこちらのタイミングが読まれてるぞ!?)」

後輩騎士「まだまだぁっ!」ダンッ! ヒュンヒュンヒュン!!

騎士「手数で圧すには技量が足りんな」カカッ! カンッ!

後輩騎士「あっ」

ボトッ

騎士「腕立て100回。その後にもう一度だ」

後輩騎士「げぇっ!? ま、マジすか!?」

騎士「200回に変更。早くしろ」

後輩騎士「クソォォォォ!!!!」グッグッグッグ

騎士「………………後輩騎士。お前は何のために力を欲する?」

後輩騎士「え?」グッグッグッグ

騎士「目を見れば分かる。俺から少しでも多くのことを学習しようと考えているだろう? そこまでして得たいものはなんだ?」

後輩騎士「そーーっすねぇ…………」グッグッグッグ

後輩騎士「………………モテたい。うん、モテたいっす」グッグッグッグ

騎士「なに?」

後輩騎士「それだけじゃなくて、道を歩けば声をかけられて、女の子にはキャーキャー言われて、男共と飲みに行って、んでこの国を守って英雄! みたいなっ」グッグッグッグ

騎士「………………そうか」

後輩騎士「やっぱ何をするにも強くなきゃいけねーっしょ! ……うんまぁでも、強ければ皆に頼られるし、守りたいもんなんでも守れるし」グッグッグッグ

騎士「……………………お前の守りたいものはなんだ?」

後輩騎士「守りたいものぉ? んなもん、俺の守れる範囲のもの全部っすよ! だから、俺もっと強くなって、どんどん広げてって、んでキャーキャー言われたいっす!」グッグッグッグ

騎士「……ふっ。そうか」

後輩騎士「ウォォォォォォオ!!!!」グッグッグッグ

後輩騎士「おわりぃっ! んじゃもういっちょお願いしまっす!」

騎士「元気だな」スッ

《勇者の旅立ち》

後輩騎士「……あーー……暇っすねー」

騎士「進歩のない奴だな。俺たちはなん時に備えて門を守らねばならないんだ。気を抜くんじゃないといつも言っているだろ」

後輩騎士「んなこと言ったって、もう毎日毎日空を眺めてはこうして突っ立ってるだけじゃないっすか。前に魔物と戦ったの、いつだったか覚えてるっすか?」

騎士「良いことだ。我々の暇は即ちこの辺りが平和ということだろう」

後輩騎士「いやそりゃそうっすけど……俺の活躍見てもらわないと女の子に良いところ見せらんないっしょ。先輩だって剣振り回してる方が性にあってるでしょう?」

騎士「俺はこうして平和な国を見守っていたいが?」

後輩騎士「枯れてんだもんなぁ。あーあ、俺と先輩が旅に出られりゃ良いのに」

騎士「馬鹿なことを言うな。俺は街を守るためにここにいる。世界を守るのは勇者の仕事だ」

後輩騎士「それが変な話だと俺は思うんすよね昔っから! 勇気のある者を勇者って呼ぶんでしょ! 血筋なんかじゃねーっすよ! 勇者なんて血筋だけで腕は先輩には及ばないってのに!」

騎士「………………」

後輩騎士「ま、先輩が不満ないってんなら挟む口もないっすけど……俺だって剣もってかっこ良く戦いたいっすよ」

騎士「平穏無事日が過ぎる。それ以上望むことはない」

後輩騎士「夢がないっすねぇ……」

騎士「夢なんて見ている暇があるならここで見張りをしてる」

後輩騎士「はいはい……」

騎士「………………そろそろか」

後輩騎士「そっすね」

カンカンカンッ!

後輩騎士「っと……開門ー!」

騎士「開門ー!!」

後輩騎士「……にしても国をあげてのお見送りってかぁ、羨ましいなぁ」

騎士「そうでもないさ」

後輩騎士「本当に魔王なんて倒せるんすかね? 今回この国から旅立つのって全員女なんしょ? 勇者一行がダメだったらそんときは先輩とか俺らに声がかかったりするんすかね?」

騎士「あり得んな、国王が自己を守る為の戦力を減らすとは思えん。その為にも無理やり勇者一行を旅立たせて外面を取り繕ったんだろ」

後輩騎士「はは、確かに! もしも王様に命令されたらここ離れますか?」

騎士「……その時の状況で決めるな」

後輩騎士「え、命令無視することもあり得るってことすか!?」

騎士「場合による」

後輩騎士「怖いもん無さすぎっしょ……」

ゴゴゴゴゴ……ガァン

わーわーわー!

ザッザッザ

女勇者「……それでは! 行ってきます!」

わーわーわー!

騎士「勇者様一行に! 敬礼!」ザッ!

後輩騎士「行ってらっしゃいませ! 御武運を!」ザッ!

女勇者「あぁ、君たちも国を任せたよ!」

ザッザッザ

女騎士「…………」チラ

後輩騎士「……?」

女騎士「…………」フイ

後輩騎士「なんだあいつ?」

騎士「……どうかしたか?」

後輩騎士「やーなんでも」

騎士「そうか。閉門!!」

ゴゴゴゴゴ……ガァン

後輩騎士「あーあ、俺も旅に出てぇなぁ」

騎士「勝手に出てろ」

後輩騎士「先輩は冷たいしなぁ……そういや他の国からもこの時期に勇者が旅立つんすよね?」

騎士「あぁ。隣国のモルド王国から、それと海を挟んだ先のユーラ王国、そのもう少し先のカラミラ帝国、それぞれから勇者一行が旅に出る筈だ」

後輩騎士「はぁん……なんでそんなことになってんすか?」

騎士「それぞれの国の思惑故だろ。全員が全員、大昔の勇者は我が国の先祖だ、なんて言えばそうもなる。本物の勇者の末裔には女神がつくと言われているがな」

後輩騎士「んじゃ誰が本物の勇者かわかるんじゃ?」

騎士「それが分からない理由でも考えてろ」

後輩騎士「……あー……うっす、なんとなく理解しました」

騎士「欲深い連中は皆悉く弾けて死ねば良いのにな。勿論我が国の勇者一行が本物である証拠もない、どれが本物かなんて女神と勇者にしか分からんよ」

後輩騎士「いやでも、魔王って勇者にしか倒せないんすよね? んなら色々終わったあとで分かるんじゃ?」

騎士「その証人が勇者一行しかないなら、倒せなかった勇者一行も我こそがと名乗り上げるだろうな」

後輩騎士「げげぇー! 欲望渦巻いてるなぁー!」

騎士「人間同士で争ってる場合じゃないと言うのに、どこまでも愚かだ」

後輩騎士「なんかものすげー同意っす……」

ここまでです

また近いうちに

後輩騎士「暇っすねぇ」

騎士「お前は毎日暇だろうが」

後輩騎士「そりゃ毎日が暇なんすもん。先輩にしごかれて、それが終わったら門番やって、帰って寝て、またしごかれて。最初はやばかったっすけどもう慣れたんでやばいっすわ」

騎士「ほう、俺の訓練には飽きたと言うことだな。ならもう一段階ハメを外しても良さそうだ」

後輩騎士「嘘っすごめんなさいそのハメはがっちり繋ぎ止めてあげてくださいこれ以上しごかれたら二重の意味で立ち直れないっす」

騎士「……そう言っても、ここまで頑張ったお前も中々根性があるとは思うがな」

後輩騎士「うへへへ、諦めだけは人よりも悪いんすよねぇ俺!」

ガラガラ……

商人「お疲れ様です~。ちょっと急いでるので、お願いしても良いですか?」スッ

騎士「……はい、確認致しました。開門!!」

ゴゴゴゴゴ……ガァン

商人「ありがとうございます~」

国民「なぁなぁ、聞いたか!? 女勇者様たちが荒くれ者集団を蹴散らしたんだってよ!」

国民「知ってる知ってる! はぁ、すげぇなぁ!」

騎士「閉門!!」

ゴゴゴゴゴ……ガァン

後輩騎士「……けーっ。なにが荒くれ者集団を蹴散らしただ。んなもん俺と先輩だったら一時間もありゃ楽勝だっての」

騎士「何と張り合ってるんだ、お前は?」

後輩騎士「だってなんか納得いかねーじゃないっすか! 俺らがやっても褒められねーってのに、勇者一行がやると「流石勇者!」だもんなぁ」

騎士「誰かに褒められたくて騎士になったつもりはない。そんなに褒められたければハンターにでもなれば良かったんじゃないか?」

後輩騎士「やーそーいうのは趣味じゃねーっつーか……金もらって助けるってのは性にあわねーんすよ! やっぱほら、困ってる人を颯爽と助けて、礼は……あなたの笑顔で良いですよ……とか! くーっ!」

騎士「うるさい。相手が男ならどうするんだ?」

後輩騎士「当然おごりっしょ!」

騎士「…………そうか」

後輩騎士「……って、そんな悲しい妄想はやめっすやめ。どんなに夢見ても、俺の仕事は門番っすから」

騎士「ほう? ようやく気構えが出来てきたみたいだな?」

後輩騎士「ふっへへ、でしょー!? まぁたまーに来る魔物討伐依頼くらいで満足することにするっすかぁ」

後輩騎士「つっても……キングベアーはもうごめんっすけど……」

騎士「あぁ、確かお前の初出撃だったな」

後輩騎士「そうなんすよ! もう暴れる暴れる、手がつけらんねーって! 味方が紙っ切れみたいに空中に吹っ飛ばされんのは今でも思い出すっす……」

騎士「幸い死人は出なかったようだが」

後輩騎士「マジ幸い中の幸いでしたね。まぁあれのせいで騎士やめちまったのも何人かいるっすけど……先輩はなんだったんすか?」

騎士「初出撃か……国王の一人娘が拐われ、その救出隊の一人としての出撃が最初だな」

後輩騎士「え? ……そ、それって五年前の? マジっすか?」

騎士「あぁ」

後輩騎士「うっそマジのマジなんっすか!? あれって選りすぐりの精鋭が選出されたって聞いてたんすけど!?」

騎士「今はもういない、とある殉職した先輩に才能を見出だされてな。強引にだったが俺も連れていかれた」

後輩騎士「ど、どうだったんすか?」

騎士「いや、別にどうってことも。電撃戦だったからな、作戦自体はあっという間に終わったよ。姫も少し顔を殴られていたが、無事だった」

後輩騎士「先輩が姫様助けたんすか!?」

騎士「…………さぁな」

後輩騎士「その反応ってそうってことっすよね!? うげーマジっすか! 誓いのキッスとかしたんすか!?」

騎士「…………。相手は姫だぞ? 何を言ってるんだお前は?」

後輩騎士「なんすか今の間?」

騎士「お前が何をいってるか分からんから微塵に砕けて死ね」

後輩騎士「そんな言われるほどのこと言ったっすか俺!? いやでも、その話を聞いて俺も騎士になったんすよ!」

騎士「そうだったのか」

後輩騎士「はい! そんな英雄みたいな人たちが騎士にはいるんだ! って思って! んで、なった途端にキングベアーが暴れてるって駆り出されたんす。マジ怖かったっす」

騎士「キングベアーか……その時ちょうどクラーケン討伐に派遣されていたな、俺は」

後輩騎士「そいや同時期にクラーケン討伐に向かっていったんすよね? どう考えてもそっちのが怖いんすけど」

騎士「クラーケンは陸には近付かず、船しか襲わない。だから襲いかかってきたところを魔法で焼き払う……という作戦だったんだがな」

後輩騎士「……確か、騎士が五人と魔法使いが八人殉職したんすよね?」

騎士「あぁ。一匹二匹という報告だったのに、実際に襲ってきたのは十二匹、勝ち目なんてあるはずがない。あっという間に船が何隻も沈められた」

後輩騎士「……怖すぎるんすけど……なんすかそれ……」

騎士「あとでわかったことだが、丁度数十年に一度の繁殖期だったらしくてな。後で知っても遅い情報だったが」

後輩騎士「っていうかなんで生きてるんすか?」

騎士「運が良かったんだろうな」

後輩騎士「クラーケン十数匹が漂う海の上で船に乗っててそこから助かるとか運が絡んでも無理でしょ。どうやったんすか?」

騎士「……船ごとクラーケンを斬った」

後輩騎士「は?」

騎士「誰にも言うなよ?」

後輩騎士「………………船ごと魔物を真っ二つにした奴、って先輩のことだったんすか!?」

騎士「咄嗟にな」

後輩騎士「そのあと迫り来るクラーケンの触手を掴んで海ごと斬ったってのも!?」

騎士「気にするな」

後輩騎士「気にするわ! むしろ気にするなって方が無理ってもんでしょう!!」

騎士「俺も上手く行くかは分からなかったからな。出来る気は……ん? 戦闘構え」

後輩騎士「んえ、あ。エアハンター二匹すか」

……近づいてきたら一気に仕留めるぞ」スチャ

後輩騎士「りょーかい」カチャ

騎士「ん?」

ここまでで
またそのうちに

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom