【ガルパン】 紗希「…梓…涙」 梓「…紗希…涙」 (64)

キャラ崩壊注意
紗希ちゃん普通にしゃべってます。

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3
梓 『いつからだろう…』

『紗希は極端に口数が少ない、そのうえぼんやりとした見た目から頼りない印象を与えがちだ、でも他の装填手と比べて決して技術が劣るものではなかった。』

『無駄のない動き、確実な装填は砲手との間合いを狂わせることはない。それは車長として頼もしい心の支えだった。』

『なにより支えとなったのは紗希は一度も愚痴をこぼしたことがない。戦車の中が「暑い」「寒い」「うるさい」「狭い」こんなことは日常会話の中だったが紗希からは一言も聞いたことがない。』

『試合や練習で早々と撃破されてしまった時は「何やってんのよ!」とメンバー全員に怒鳴られたが、紗希は違った。心配そうな目で私を見たあと、優しくそっと微笑んでくれた。』

『目が合えばいつも優しく微笑んでくれる。』

『試合前、その笑顔は緊張で潰されそうな私をいつも救ってくれた。何度その笑顔に救われたことか?』

4
梓 『紗希とは二人、学校から帰る方向が同じになる。そこではいつも紗希が私の愚痴を聞いてくれた。』
『戦車のこと以外にも授業のことテストのこと、どんな話でも優しくうなずきながら…。』

『学校からしばらく歩いたところで紗希の自転車の荷台に腰を掛ける。規則違反は二人だけの秘密。こんなクダラナイことでも紗希との二人の秘密は私にとって特別なことだった。』



梓 『友情とは違う。気が付けば目で追っている。いつも心の中にいる。特別な感情で紗希を見ている。紗希のこと好きになってる。』

5
杏 「ハイ! 本日の車長会議はこれで終了~」

全車長 「お疲れ様でした!」

みほ 「明日は久しぶりに完全休養日です。冬休みに入るとすぐ関東地区合同演習がありますから、みなさんしっかりリフレッシュしてください。」

全車長 「は~い。」

杏 「休み明けから朝練だからね~よろしく~」

みほ 「澤さん、ちょっといいかな。」

梓 「はい、なんでしょうか?西住隊長。」

みほ 「最近、何か悩んでる?」

梓 「…いえ。」

みほ 「指揮に迷いが出てるよ。」

梓 「…」

みほ 「…大丈夫?」

梓 「…大丈夫です。申し訳ありませんでした。
一日休めば…なんとか。」

みほ 「それじゃ、しっかりね。お疲れ様。」

6
梓 『あれ、格納庫まだ電気ついてる。』

ナカジマ 「どうしたの?澤さんまだ帰らない の?」

梓 「いえ、格納庫の電気がついていたので見に来たんです。」

ナカジマ 「自動車部がまだ残って修理してんじゃないかな?」
「今日は、派手にM-3やられてたからね~」

梓 「あ~申し訳ありません…。」

ガラガラ~

ナカジマ 「みんなお疲れ~、どう、終わりそう?」

ホシノ 「もう終わるよ!」

スズキ 「車長会議終わったみたいだよ。」

ピョコン (少しオイルで汚れた紗希が顔を出した。)

梓 『え!紗希。』

ツチヤ 「丸山さん、お疲れ。助かったよ。」

紗希 コクリ

梓 「自動車部の皆さんいつも整備していただいてありがとうございます。」

紗希 コクリ

ナカジマ 「澤さん、丸山さん、お疲れ様。」
「もう暗いから気をつけて帰るんだよ。」

梓 「ありがとうございます。お先に失礼します。」

紗希 コクリ

ツチヤ 「なんか、不器用な二人ですね~。」

ホシノ 「不器用すぎて目が離せないよ。」

スズキ 「目が離せないけど、見守るしかないけどね。」

ナカジマ 「…。さぁ、片付けて帰るよ!」

7
梓 「待っててくれたの?」

紗希 フルフル

梓 「って、バレバレだよ。車長会議のたびに何かと用事作って残ってんだもん。」
「今日はレオポンさんのお手伝い。その前は磯辺先輩の代わりにバレーの練習。その前はカエサル先輩と装填練習装置、作ってたし。」

紗希 「…」

梓 「『遅くなるから先に帰ってて』って言ったのに」

紗希 「…」

梓 「…でも…ありがとう、ちょっとうれしかった。」

紗希 ニコッ

梓 「心配だったんでしょう?最近、調子悪いから隊長に叱られてるんじゃないかって?」

紗希 コクリ

梓 「図星。」
「叱られたって程じゃないけど『指揮に迷いが出てる』って」
「せっかく引退 した先輩達が練習に付き合ってくれてるのに、なんか申し訳ないよ…」

紗希 ナデナデ(頭)

梓 『…あっ』

梓 「ハクション」

梓 「12月になるとさすがに冷えるね。」

紗希 スルッ クルクル ニコッ (自分のマフラーを梓に)

梓 「ダメだよ。紗希が風邪ひいちゃう。」

紗希 フルフル (首を振って自転車にまたがる)

梓 「紗希は優しいね。」

8
梓 『紗希のぬくもりが残ってる…。優しいな紗希は…。「紗希、あなたが好き!」自転車の後ろに乗せてもらうたび心の中で何度も叫んだ。「紗希、あなたが好き!」「紗希、あなたが好き!」』
『伝えなければ今のまま親友でいられる、今のままだって毎日楽しい、今のまま…今のまま…。』

梓 『それが…つらいんだ。』

梓 ぎゅー 『あっ、いけない!』

紗希 『!』(キーッ)

紗希 「…梓…涙」

梓 (紗希はそう言って私の頬にそっと手をあてて指で涙を拭いてくれた。)

梓 「えっ?なんで?」
「どうしよう…とまらない。」
『ダメだ…。もう隠せない。』

梓 「紗希…。私…。あなたが好き。」

紗希 「!」

梓 「言わないでおこうと決めてたの、ずっと胸の中にしまっておこうって。」
「言えば、壊れてしまうものがたくさんあると思ったから。」
「紗希はなにも知らないからいつも優しくて、優しくされるたびにまた好きになって、どんどん好きになって、いつも紗希のことばかり考えて、戦車も勉強も手につかなくて、苦しくて…。」

紗希 「…」

梓 「『感違いだ!こんな友情もあるんだ!』って言い聞かせてきたの。」

紗希 「…」

梓 「ごめん、いや、だよね。」

紗希 「…」

梓 「何も言ってくれないんだ…。」
「なんで!」
「受入れてくれるなんて思ってない!」
「だからって何も言わないなんてそんなの…残酷だよ!」

紗希 「…乗って。」
「見てほしいもの…ある。」

9
梓 『紗希、どこに行くんだろう?』

紗希 「…入って。」

梓 「ここって?」〈MARUYAMA〉

梓 『ありふれたワンルーム、でもなぜか違和感が…この感覚、なんだろう?』
『部屋の壁には大きなバイクのポスターが2枚本棚にはモータースポーツの雑誌、少年コミックの単行本。えっ、これって…。』

紗希 「見てほしいもの…これ。」

梓 『このクローゼット…。男性用の衣類がいくつも掛けられてる。衣類の他にも帽子、靴、ハンカチ、靴下、…。』
『…性同一性障害。』
『思いもしなかった私が好きになったのは男の子の心を持った女の子。』

梓 「…紗希は心が男の子なんだね。」

梓 「…紗希…涙」
(私は紗希の頬にそっと手をあてて指で涙を拭いた。紗希がしてくれたように。)

紗希 「梓が好きになったのは…女の子の紗希。」

梓 ぎゅー

梓 「違う、私が好きになったのは、紗希のすべて!」
「今、私の腕の中にいる紗希。」
「世界でたった一人の紗希。」
「紗希。大好きだよ。」

紗希 「梓、…好きだ。」
ぎゅー
「ずっと…好きだった。」

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梓 『2時間ほど紗希の部屋ですごしたかな。紗希は少しずつ、ゆっくりと話してくれた。』
『心の病に気付いたのは小学生のころ。6年生の時思いを伝えた女の子に拒絶されたうえにクラスに変な噂が広がりイジメの標的になってしまったこと。』
『その後、不登校がちだったこと。』
『大洗女子の中等部に入学してからはできるだけ感情を表に出さないようにすごしてきたこと。』
『衣類は主にネット通販で購入したこと。』
『でも部屋で着るだけで外出はした事がないこと。』
『私のことは一目惚れだったこと。』

梓 『紗希が「ありあわせのものだけど」と言って晩ごはんを作ってくれた。チャーハンと玉子スープ。意識してしまうと男の子っぽいメニューだ、フライパンを振る姿もなんとなく力強い。』
『この部屋は紗希が自然にすごせる場所なんだ。』
『気が付けば、紗希も私も涙のかわりに笑顔があふれていた。』

梓 「ねぇ、明日デートしようよ。」

紗希 「!」

梓 「イヤ?」

紗希 フルフル

梓 「こっちの服で。」

紗希 「…」コクリ。

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梓 ぎゅー ニヤニヤ
『自転車の後ろでもう遠慮することないんだ。思いっきり!』
ぎゅー

紗希 ニコッ
『可愛いな、梓は。』

梓 「紗希、さっきはごめんね。」

紗希 『?』

梓 「怒鳴ったりして、紗希にもあったんだね、誰にも言わないで胸の中にしまっておいたこと。」

梓 「送ってくれてありがとう~風邪ひかないように~」(借りていたマフラーを紗希に巻く)

紗希 コクリ

梓 「じゃあ、おやすみ。」

紗希 ぎゅー ちゅ~~

梓 「…フフ。路チューって。紗希って意外と大胆なんだ。」

紗希 『ドキ!』

梓 「部屋じゃ何もしてこなかったくせに。フフ…」

紗希 『ドキドキ、アセアセ…』

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梓 「お財布、よし。ケータイ、よし。髪の毛、よし。もう一度姿見でチェック、よし。」
「では、初デートに向かってパンツァー・フォー」

『…これ、どうしよう…』
『このヒールだと紗希を見下ろしちゃう。』
『身長気にしてる男の子って多いよね~。』
『こっちのぺったんこのは服とイマイチ…えぇもう待ち合わせ…エェイ、今日は紗希目線のぺったんこで!』

梓 『いけない、10分遅刻。あの後ろ姿、紗希かな?』
「ごめん、待っ…『カッ、カッコイイ』た?」

紗希 フルフル キュッ、(手をつなぐ)

梓 『ドキッ!』

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<ショッピングモールへ移動車内>
梓 『紗希。イイ、マジでイイ。アイドルグループの中にいてもおかしくない。細くて長い脚、ジーンズがメチャクチャ似合う。男の子にしては長い髪の毛はキャップで隠してるから女の子ってわからない。だいたい、周りの女の子が紗希のこと見てるし!』
『あっ!「カッコイイよ」って言ってない。初めて男の子の服装で外出したのに、今さら思い出したみたいに言うのも変だし。あ~私のバカバカ。』ガクッ

紗希 『?』
「ん…」

梓 『えっ、なに?今の反応。』
『顔に何かついてた?髪の毛跳ねてる?10分の遅刻怒ってるとか?』

紗希 ニコッ (手を握って電車を降りショッピングモールへ)

梓 『怒ってはいないみたいだ。』ホッ
『紗希、けっこう引っ張るなぁ~。』
『意外とオレ様系?なんかイメージと違~う』

紗希 「イイ?」

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梓 『靴屋さん?紗希、靴見たかったんだ。』
「ジーンズならスニーカーもいいけど、こんなスエードとか…って紗希?」

梓 『紗希、店員さんと何話してるんだろう。』

紗希 ニコッ

梓 『ん?ショートブーツ。』

梓 「私の?」

紗希 コクリ

梓 『こんなのが欲しかったんだ~。ヒールもあって大人っぽい、すごくおしゃれ!』

紗希 ジーーー。

梓 『ん?』

紗希 サッ

梓 『?』

紗希 『改めて見たら梓の足って長いんだ…。制服のスカートの方がずっと短いのになんか今日のスカートの方がセクシーだな。黒のタイツのせいかな?』

店員 「グッと大人っぽくなりましたね。」
「履き心地はいかがですか?」

梓 「はい、とても。」

店員 「このまま履いて出られますか?」

紗希 コクリ

店員 「では、こちらでお会計を。」(紗希をレジに案内)

梓 『って、これいくら?…18000円??』
「まっ、待って紗希!」

紗希 「キレイだよ、梓。とても似合ってる。」

梓 「えっ!」
『キレイだよ…』『キレイ』『キレイ』。
『シュタッ!』(頭のてっぺんから白旗が!思わず頭に手をあてて確認。)
『申し訳ありません、澤梓、撃破されました。紗希の「キレイだよ」で瞬殺です。』

紗希 「?」ナデナデ(頭)

紗希 「まだ早いけど、クリスマスプレゼント」

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梓 『さっきの「ん…」って反応は足元見てたんだ。』
『紗希よりちょっと背が高くなっちゃった。』
『カフェにアミューズメントにウインドショッピング。なんか絵に描いたようなデートだな。』
『好きな人となら手をつないで歩くだけで楽しいんだ。』

紗希 「イイ?」(書店内を指差す)

梓 『ん?ヘアカタログ。』

梓 「こんなふうにしてみたいの?」

紗希 …コクリ

梓 「似合うと思うよ。」

紗希 「…」

梓 「制服を着たとき似合うかが不安なんだ。」

紗希 コクリ

梓 「大丈夫だよ!運動部じゃこれくらい子いっぱいいるし。サンダースのナオミさんなんてもっと短いけど制服姿もかっこいいし。」

紗希 「…」

梓 「切っちゃおうよ!私が美容院代出すよ!ブーツのお礼。」
「行こ!」

梓 グイグイ

紗希 あわあわ

梓 「今からすぐお願いできますか?…こんな感じで…。支払いも済ませときます。」

梓 「終わったら、クリスマスツリーの前でね。」

紗希 コクリ

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梓 『紗希、どんなふうになってくるのかな?なんか、ワクワクする。』
『このブーツ、おしゃれだな~。紗希ってセンスいいんだ。「キレイだよ、梓。」ニヒヒ…。「キレイだよ、梓。」ニヒヒヒヒ…。』

女の子 「ママ、あのお姉ちゃん一人で笑ってる。」

女の子のお母さん 「見ちゃいけません!」

(ドン) “ガッシャーン”

男 「ちょっと、どうしてくれんだよ!」

梓 「えっ、私?」

男 「ぶつかっといてなんだよ!」
「このワイン、¥20000したヴィンテージだぞ!」

梓 「も、申し訳ありません。お、お支払いします。」
『あ~やっちゃった。足元に夢中になってたし、背中にあたったのは確かだし、周りに誰もいないし、私だよね~¥20000か~』

梓 「で、では、これで…。」

ガシッ (つかんだ)
ブォーン (とんだ)
ドサッ (おちた)

梓 「ひゃっ。」

「おじさん、800円。」

男 「あ…ぁ…ぁ…」

梓 『あっ!リカーショップの店頭に〈特価800円〉』

(とりあえず仰向けの男の手に800円)

梓 「ありがとうございました。危うく騙されるところでした。」

「紗希…だけど…」

梓 「えっ、え~」
『シュタッ!』
『カッ、カッコイイ。澤梓やられました。目があっただけで瞬殺です。』

紗希 『?』ナデナデ(頭)

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あゆみ 「水戸まで足伸ばしたのって久しぶりだね~。あれ!梓じゃない?」

あや 「本当だ、しかも男連れ。」

桂利奈 「横顔しか、わからないけど、かなりイケメン。」

あゆみ 「でも、随分小柄だね。」

あや 「もしかして、年下。」

優季 「美少年キラー。」

桂利奈 「色気で落としたのか?」

あゆみ 「いや、梓に色気はない。」

優季 「じゃあ、おどしたんだ。」

あゆみ 「可能性としては、そっち。」

あや 「よし!追うぞ!」

桂利奈 「映画、観るんじゃなかったの?」

優季 「映画より面白いって!」


梓 『ちゃんと言わなきゃ、早く言わなきゃ、今度こそ言わなきゃ……。う~~。きっかけがつかめない……。』

梓 「さ、紗希って何か格闘技やってたの?」

紗希 「合気道、少しだけ。」

梓 「さっき凄いカッコ良かったよ。」
『違う、褒めるポイントを間違えた。』
『ヘアースタイルを褒めなきゃ。アイドル並みのルックスを褒めなきゃ。』

紗希 「何観る?」

梓 『もう映画館についてしまった。』
『あ~ぁ~きっかけが~』ガクッ

紗希 『?』(とりあえず)ナデナデ

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あゆみ 「梓、何観るんだろう?」

“4番スクリーン入場、ご案内いたします。”

あや 「あ、入っていく、桂利奈チケット、ゲット!」

桂利奈 「あい~。」

《大栗旬主演、ミューヅアム。》

優季 「ちょうど観る予定の映画で良かったわ~。」

あゆみ 「3列前にいるよ。」

あや 「前にでっかいカップルがいるからここはバレないよ。」

桂利奈 「でっかいカップルひとつずつポップコーン(L)持ってるよ。」

優季 「だからデカいんだ。」

あゆみ 「て言うか、晩御飯浮かせようとしてんじゃないか?」

桂利奈 「ケチな野郎~」



梓 「ん?」(後ろを振り返る)

紗希 『?』

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<上映中>
梓 「キャッ」(紗希の腕にぎゅっ)

ああ桂優 「お~っ、くっついたぁ~。」

優季 「前のでっかいカップルもくっついてる。」

あゆみ「なんか、組み合ってる感じだね。」

梓 『思わずくっついちゃったけど…何をきっかけに離れればいいんだろう?』
『紗希はどんな顔してるのかな?』
チラっ

紗希 ニコッ

梓 『いつもの優しい紗希だ。』
『映画なんてどうでもいいや。このままこうしていよう。』

『なんか、不思議…昨日まで友達だった紗希が、今は、恋人なんだ。』
『紗希も喜んでくれてたら、嬉しいな。』

あゆみ 「くっついたままずっと離れないよ。」

あや 「梓ってあんなキャラだったっけ。」

優季 「恋をすると変わるのよ。」

桂利奈 「あっ、でっかいカップルがにらんでる。」

ああ桂優 「すいません…。」




あゆみ 「結局、彼氏の顔はっきりわからないまま見失なっちゃたね~。」

あや 「なんか食べて帰ろっか。」

あ桂優 「賛成!」

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紗希 『あっ、フロアマップ。』
『レストランフロアーは?』

梓 「あ、あのさ~。昨日、紗希がごちそうしてくれたから、今日は私がなんか作るよ。」
「う、家に来ない?」

紗希 ぽっ。コクリ。『ドキドキ』

梓 『言っちゃった~。初デートで女の子の方から恋人を部屋へ招き入れるなんて~。ありかなぁ~』
『緊張してきたー。』

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梓 「ちょっとだけ待ってて、部屋着に着替える間だけ」

紗希 ドキドキ『梓の部屋着、梓の部屋着、梓の部屋着…』

梓 「お待たせ、入って。」

紗希 ドキッ!『イイ、ラフな感じがイイ。Vネックの胸元がラフすぎて…おぉ~。』

梓 「急いで作るから、楽にしてて。」

紗希 ジーーー。『部屋着とエプロンの合わせ技イイ。』

梓 「テレビでも見てなよ。」

紗希 コクリ。(ピッ、“座布団全部持ってっちゃって~。”)

梓 『カレーじゃ、芸がない。肉じゃがはいかにも家庭的さをアピールしてる感がある。よし!ここはハンバーグだ、調理実習でやったばっかりだ、あの時はうまくいった。きっとできる!』

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紗希 ジーーー。

梓 チラっ

紗希 サッ

梓 『こっち見てたのに急に目をそらした。』

紗希 ジーーー。

梓 チラっ

紗希 サッ

梓 『又だ。男の子が部屋着やエプロンが好きってホントなんだ。』
『ちょっとからかってみようかな。』
(紗希の目の前まで行って…胸元を…前かがみにして…よせて…)
「ねぇ紗希!」

紗希 (ガン見。)

梓 「ハンバーグソースは和風でいい?」

紗希 ジーーー。

梓 「ん?ん~んっ。あれ~どこ見てるのかな~。紗希のエッチ~。」

紗希 「あ、あ~ぁ~いや~~~。」ウルウル

梓 『可愛いヤツ。』
「私のエプロン姿カワイイ?」

紗希 コクッ、コクッ、コクッ。

梓 「素直でよろしい!じゃあ次は裸で着てあげよっか?」

紗希 ワクワク、ワクワク。

梓 「バカ!そんなこと頼まれてもしないわよ!この、どスケベ!」

紗希 シクシク、シクシク。

梓 「泣くことないでしょ!」

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梓 『なんでこんなに時間かかっちゃったんだろ~。』
『作り始めたころテレビじゃ“座布団が行ったり来たり”してたのに“六文銭”がならんでるよ~。』
『サラダは諦めよう、スープはカップスープにしよう。紗希が何も言わないからってもうこれ以上待ってもらうわけにはいかない。』

梓 「待たせちゃったね、焼けたよ~。」

もっわっ…。

紗希 『!』タタタタタ。『??』

梓 「あっ、あぁ~~。」
「真っ黒…。」
「ご、ごめん。」
「カレーにしよっか?レトルトだけど…。ご飯は炊いてるから…。」
「ゲッ! コンセントが抜けてる。」
「パスタ茹でるよ、やっぱりソースはレトルトだけど…。」

紗希 「梓、一緒に作ろ。」

梓 「ダメ、休んでて、今日は私が…。」

紗希 「梓、その方が楽しいよ。」ニコッ。

梓 『!』
『言葉が出なかった。紗希は何も意識してなかったかもしれない。でも私には深く心にしみた。「その方が早いよ。」じゃなかった。「楽しいよ。」だった。私は、あふれそうな涙を気付かれないようにするのが精一杯だった。』
『紗希は何もかも全てが…優しい。』

24
ブヨ~ん…。

梓 「茹ですぎた~。」
「くうっくっくっううっ~わぁ~~~。」
『今度ばかりは、こらえきれなかった。』

紗希 「梓、泣かない。」(背中をサスサス)

梓 「だって、私、何やっても、ダメなんだもん。」
「紗希に初めて食べてもらう料理がこんなのばっかりなんてヤダ~。」

紗希 「味見してもらえる? ドレッシング。」

梓 「うわっ、何これ、すっぱい。」
「ご、ごめん。自分のこと棚に上げて。」

紗希 「お酢とレモンが多かったみたい。」
「これで、あいこだね。」

梓 『絶対にわざとだ。』
『私が独りでミジメな思いをしないように下手なドレッシング味見させたんだ…。』
『私、いつも紗希の優しさに甘えてる…。』

紗希 「梓。僕、今とても楽しいよ。」
「ヒトを好きになっちゃいけないって思ってたぐらいだから…。」
「だから、もう泣かない。」

梓 「ずるいよ。そんなふうに言われたら、よけいに泣きたくなっちゃう。」

紗希 「じゃあ、こっち向いて。元気が出る魔法。」

ちゅ~~。

紗希 「どう?」

梓 「まだ効かない。もう一回。」

紗希 「よくばり。」

ちゅ~~。

25
梓 、紗希 「ごちそうさまでした。」

梓 「お茶いれるね。」
『なんだかんだで、もうテレビは“葉加瀬太郎のオープニング”が聞こえてきた。』
『この部屋に来てからも紗希は一言も愚痴をこぼさない。テレビを見たり、スマホを触ったり、時々こっちを見てニヤニヤしたり…。挙げ句の果てには料理を手伝わせて…。』
『他の人なら「まだ?」とか「腹へった!」とか、せかされたんだろあなぁ。中には「もう外で食べよう。」って連れ出されたり…。』
『でも、紗希は、紗希のままだった。真っ黒のハンバーグもブヨブヨのパスタも残さずに食べてくれた。』

梓 「これ、好きだよね?」

紗希 「知ってたんだ、きんつば。」

梓 「紗希が髪切ってる間に買ってきたの。あと、これだよね。」

紗希 「そう、昆布茶。」

梓 「あと、湯飲み茶碗。夫婦柄の。」

紗希 「夫婦柄ってなんか、テレるね。」
「僕の部屋にもなんか置いとこうかな。」

梓 「もうひとつ、これ。」

紗希 「合鍵!」

梓 「いつ来てもいいよ…。」

紗希 ニコッ 「明日、僕の部屋のをわたすね。」

梓 ニコッ


梓 『今日の紗希はいっぱい話してくれる。』
『私が落ち込んでたから気を使ったのかな。それに気が付けば、自分のことを「僕」って言ってる。今まで口数が少なかったのは、思わず男言葉が出ないように、わざと無口にしてたんだ。』
『その事をどうこう聞く気にもならない。この部屋でも紗希が自然にすごしてくれたらそれでいい。』

26
梓 「今度は、まともな料理作るからね。」

紗希 「美味しかったよ。」

梓 「やめてよ!今日の料理でそんな事言われたら逆に凹むから。」

紗希 「美味しかったよ。きんつば。」

梓 「あ~、ひど~い。」
『すねてみたりしたら紗希どうするんだろう?ちょっと困らせてやろうかな。』
「優しいことばかり言っといて結局バカにしてたんだ、紗希なんて知らない!」
プイッ
「合鍵、返せ!」
『あ~、やるんじゃなかった。恥ずかしい~。』

紗希 (ほっぺを指でツンツン。)(おもいっきり、ぎゅー。)
「可愛いね、梓は。」

梓 『シュタッ』
『澤梓、逆にヤラレました。』

「紗希って、あったかいね~。」ぎゅー
‘zzz…zzz…zzz…。’

紗希 『ん?』
『ホントに寝ちゃった。』
『疲れてたんだね。おやすみ~。』

27
「ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ、…。」(ピッ)

梓 「5時~。朝練か~。」
「ん?…わぁっ。紗希!」
「いない。」
『終わった。完全に終わった。私の恋はハンバーグとパスタと眠気に負けて終わった。』
『恋人を部屋に誘っておいて、さっさと先に寝てしまう女なんて聞いた事がない。』
『いっそ昨日の出来事が全て夢だったほうがマシだ。』
『紗希が買ってくれたブーツがある。夢じゃない現実だ。』
『一緒に料理した鍋やフライパン。一緒に食べたお皿、夫婦柄の湯飲み茶碗。全部きれいに洗って片付けられている。普段なら紗希の優しさに感謝するところだけど、今の私の心境では「立つ鳥跡を濁さず」の空気が部屋に満ちている。』
『ベッドに寝ているということは紗希が運んでくれたのか。最後の優しさだったのか。』
『今日、どんな顔をして紗希にあえばいいんだろう。おしまいだ~。』

「♪♪♪♪♪♪♪」

梓 「メール、紗希!」

〔まだ、布団の中かな?そろそろ布団から出ないと朝練遅れるよ~。
あと、炊飯器のご飯、勝手におにぎりにしました。梓と僕のお弁当だから持ってきてね。お昼に一緒に食べようね。〕

梓 「うん!食べる!」
『終わりじゃなかった。早く出なくちゃ。紗希にあいたい!』

「♪♪♪♪♪♪♪」

梓 「あっ。またメール。」

〔部屋から、ひとつとってきちゃったものがあるんだけど、このままもらってもいいかな?
梓の寝顔写真!可愛い~。〕

28
<格納庫>
あゆみ 「目標を発見したら四方から一気に距離をつめて包囲。いいわね!」
「じゃあ、持ち場に着いて。」

あ桂優 「よし!」

ああ桂優 「梓、発見!」ダダダダダ…

あゆみ 「昨日のイケメン誰?」

あや 「どこで知り合ったの?」

桂利奈 「小柄だったけど年下?」

優季 「おどしたの?」

梓 「い、いや~あれは…。」

あゆみ 「いつから付き合ってんの?」

あや 「誰かの紹介?」

桂利奈 「どこの学校?」

優季 「おどしたの?」


みほ 「おはよう。丸山さんだったんだ、気付かなかったよ!」

紗希 コクリ

沙織 「お~、思い切ったね~。」

紗希 ニコッ

華 「とてもお似合いです。」

紗希 テレテレ

優花里 「カワイイっていうよりカッコよくなっちゃいましたね~。」

紗希 ドキッ

麻子 「沙織、抱いてもらえ。」

紗希 アセアセ

あゆみ 「昨日のイケメン!」

ああ桂優 「えっ~。紗希~!。」

優季 「おどされたの?」

29
梓 「撃て!」(ドン、ドン、)

磯辺 「バカめ、2門同時に撃ちやがった。」
「一気につめてウィークポイントに回り込め、2門あろうが装填されるまでは丸腰だ。」

梓 「撃て!」(ドン)

磯辺 「何!もう撃ってきた!」

(ガァン)(シュタッ)八九式戦闘不能。

優花里 「西住殿、今日のうさぎさん凄いですね。」

みほ 「澤さん表情から迷いが消えてるね。それにもう一人。」

優花里 「あの二人…」

みほ 「車長と装填手って、なんか…、みたいだね。」

優花里 「はい!みたいですね。」

30
杏 「12月29日、本年最後の戦車道練習ならびに車長会議終了~。」
「みんな、よいお年を!」

全車長 「お疲れ様でした。よいお年を!」

梓 『何と言うか、凄い一年だった。』
『戦車道をはじめて、日本一になって、廃校の危機があって、みんなで乗り越えて。好きな人ができて、その人も私のことが好きで、恋人どうしになった。…忘れられない一年。』
『今日の車長会議は、関東地区合同演習で見えてきた来年度の課題が徹底的に話し合われたためずいぶん遅くなった。』
『でも、紗希は会議が終わるのを待っていることはなくなった。正しく言うと待っている場所が変わった。』

梓 「ただいまー。」

紗希 「おかえり。遅かったね。お腹すいたでしょ?」

梓 「うん。ペコペコ。いつもありがとう~。」

『会議で遅くなるときは、こうしてご飯を作って待っていてくれる。さらに、遅くなったときは、宿題をしながら待っていてくれる。それで食事が終われば勉強までみてくれた。』
『心は男の子なのに、やってもらってる事は、まるでお母さんだ。』
『紗希にはいつも甘えてばかり。』

『そう言えばクリスマスも紗希にヤラレタなぁ~。』

31
梓 『今年は、恋人とすごす初めてのクリスマスだった、ロマンティックな雰囲気を期待していたけど、翌日から関東地区合同演習が控えていたため戦車道履修者全員、準備に追われみんな疲れきって帰宅した。』

梓 「紗希~。レトルトのカレーでいい?明日は5時集合だし、パッと食べて早く寝ちゃおう。」

紗希 コクリ

梓 『クリスマスなのにこんな食事でも紗希は愚痴らないんだ…。その優しさが今はツライ。』

梓 「ごちそうさま~。あ~ぁ~。紗希とクリスマスしたかったなぁ~。」

紗希 「しようか。」

梓 「えっ、いつのまに?どうしたの!そのケーキ。」

紗希 ニコッ

紗希 「今朝、梓が部屋を出た後、こっそり。」
「スポンジがうまく焼けなくて、朝までかかっちゃった。」

紗希 「メリークリスマス」

梓 「メリークリスマス」ウルウル ぎゅー

梓 「ずるいよ。紗希ばっかり。」
「私、紗希に甘えてばかりで、何もしてあげてない!」

紗希 「…じゃあ。もらおうかな。」

ちゅ~~~~~。

梓 『そう言って、してきたキスはいつもより激しかった。紗希のキスってイイ。やっぱり、紗希にしてもらうばっかりだ。』

32
『戦車道の初練習は4日。チームのみんなもそれぞれの実家に帰省して行った。
私と紗希もお正月は実家で過ごし3日の午後に大洗磯前神社で待ち合わせ、初詣をして学園艦に戻る予定にした。』

梓 「明けましておめでとう。紗希。」

紗希 「明けましておめでとう。梓。」
「いこうか。」(手をきゅっ)

梓 「天気がいいからかなぁ。着物のヒト結構いるね。」

紗希 コクリ。ニコッ。

梓 「あの着物の子見て~。ハーフだよ~。可愛い~。」

紗希 「…」 コクリ
「可愛いね…。」

梓 「おじいちゃんの顔、もうデレデレじゃん。」

紗希 「…」 コクリ
「本当だね。」

梓 「本当、子供って可愛いよね。」

紗希 「…」

梓 「紗希?」

紗希 コクリ ニコッ

33
あゆみ 「明けましておめでとう。」

あや 「新年早々あついね~。」

梓 「明けましておめでとう。みんな来てたんだ。」

桂利奈 「全国大会2連覇、必勝祈願!」

優季 「この後は鍋パーティー!」
「邪魔したくないから誘わないけど~。」
「紗希ちゃん、なんか元気ないね?」

紗希 フルフル

梓 「じゃあ、また明日。初練習で!」

ああ桂優 「じゃあね~。」


紗希 「梓。悪いけど、あゆみ達と合流してもらっていいかな?」
「実は、昨日から微熱があって…」
「薬、飲んだから大丈夫だと思ったんだけど…」
「明日の初練習には出たいから今日は…」
「帰って休むよ。」

梓 「じゃあ、私も一緒に帰るよ。」
「何か、あたたまるもの作ってあげる。」

紗希 「お正月なんだから、みんなと楽しんできて、僕は独りで大丈夫だから。」
「いつも、梓を独り占めしてるから、たまにはみんなと…。ねっ。」
「いそいで、みんな行っちゃうよ。」

梓 「大丈夫?」

紗希 コクリ

梓 「じゃあ、行かせてもらうね。」
「気を付けて帰るんだよ。」

紗希 コクリ

34
あゆみ 「あれ、紗希は?」

梓 「昨日から微熱があったんだって。先に帰って休むって。」

あや 「いいの?独りにして。」

梓 「『いつも梓を独り占めしてるから、たまにはみんなと楽しんできて。』って。」

桂利奈 「紗希って男前だね~。」

梓 「へへ~。」

優季 「じゃあ、鍋も食べてく?」

梓 「ありがとう。でも遅くならないうちに紗希のとこ寄りたいから…。また誘って。」

桂利奈 「じゃあ、みんなで必勝祈願と行きますか!」


梓 「わ~、赤ちゃん。可愛い~。何ヶ月ですか?」

赤ちゃんの母 「ありがとう。もうすぐ6ヶ月よ。」

梓 「なんか、赤ちゃんのホッペって触りたくなりますね。」

赤ちゃんの母 「フフフ…。どうぞ。」

梓 「ほんと可愛いですね~。」

あゆみ 「梓、まさか。紗希と二人の時からそんな話してたんじゃ?」

35
梓 「えっ? 神社に来た時、ハーフの子がいてさ~。その子着物を着せてもらってて、すんごい可愛いかったんだ~。」

あや 「そんな話しちゃ紗希が可哀想じゃない!」

梓 「可哀想?」

桂利奈 「梓、勘違いしちゃダメだよ!」

優季 「紗希ちゃんが、男の子なのは心だけなんだよ!あとは、絶対に、どうしようもなく、女の子なんだよ!」

梓 「…紗希も一緒に笑って『可愛いね』って。」

桂利奈 「笑うしかないじゃん!」

あや 「紗希は、梓のことが大好きなんだよ!大好きな梓を初詣で置き去りにして帰れないじゃない!」

あゆみ 「偶然、私たちと会って、梓が独りになる心配がなくなったから、梓を私たちに託したんだよ。」

梓 「私…」

あゆみ 「気付いたんなら早く追って!」

梓 「みんな、ごめん。行ってくる。」

あゆみ 「鍋は中止だね。」
「防寒対策、懐中電灯、自転車、携帯フル充電、で集合!」
「でも、まあ、その前に!」

ああ桂優 (パンパン)「梓と紗希が幸せになれますように。」

36
紗希 『…夢。』
『全部…。そう思えばいいのかな。』
『楽しかった…。』
『突然、覚めてしまうものなんだ…。』
『わかってた。ちゃんと。なのに…。』
『どうして…。こんなに、つらいんだ。』
『梓は普通の女の子だ、なにも悪くない。』
『梓の人生を狂わせたくない。』


梓 『みんなは、わかってた。触れてはいけないことだって。』
『なのに…私は…。』
『誰よりも紗希の近くにいた。』
『誰よりも紗希の理解者だと思ってた。』
『なのに…紗希のことを深く傷つけた。』
『私…いったいどうすれば…。』

37
梓 “あゆみお願い!”

あゆみ “わかった。”

梓 “えっ?私まだなにも…。”

あゆみ “バカ。もう、とっくに準備は出来てる。遅いんだよ!もっと早く電話してこい!”

梓 “ごめん。部屋には戻ってない。電話も通じない。”

あゆみ “私達4人は手分けして船首から船尾に向かう。梓は紗希の行きそうな所しらみ潰しにあたって!”

梓 “ありがとう。”

あゆみ “じゃあ、あとで。”
「みんな、いくよ!」

38
あゆみ 「さがしたよ。」

紗希 「!」

あゆみ 「ずっと…。泣いてたの?」

紗希 「…」

あゆみ 「ここは、寒すぎる。部屋に戻ろう。」

紗希 「もう少しだけ…ここで…」

あゆみ 「しょうがないな。あと5分だよ。」

紗希 コクリ

あゆみ 「梓、あの後すぐ神社から飛んで出てったよ。」

紗希 「…」
「梓はなにも悪くないよ。」
「でも、たまらなく…、つらいんだ…。」

あゆみ 「………」
「そろそろ行こう、みんな心配してる。」

あゆみ “梓、見つかった。先に帰って部屋暖めておいてくれないか。”

紗希 「…あゆみ…ありがとう。」

あゆみ 「気にすんなって。」

39
紗希 「みんな、ごめん、心配かけて悪かったね。僕はもう大丈夫だから…。」

梓 「顔色悪いよ、ホントに風邪ひいちゃったんじゃ?」

紗希 「大丈夫だよ。みんな、ありがとう。」
「また明日。初練習で。」

梓ああ桂優 「…………」
「じゃあ…、また明日…。」

あゆみ 「梓、送るよ。乗って。」

梓 「あゆみ。ありがとう。見つけてくれて。」
「何か言ってた?」

あゆみ 「ずっと泣いてたみたいだ。」
「冷たい潮風に吹かれて、独りきりで。」
「一言だけ『梓は悪くない、でも、たまらなく、つらい。』って。」

梓 「…………」

あゆみ 「ちゃんと話すんだよ。」

梓 「うん…。」

40
あゆみ 「今日。紗希、熱があるから欠席したい。ってメールが来たよ。」

梓 「!」
「あゆみにメールしたんだ…。」
「もう、嫌われちゃったのかな…。」
「しょうがないよね…。私みたいな無神経な女…。」
「愛想つかされて当然だよ…。」

ああ桂優 「…………」

41
(ガァン)(シュタッ)M-3戦闘不能。

桃 「澤!何やってる!」
「あんな見え見えの囮にひっかかる奴があるか!」
「たるんでるぞ!」

梓 「みんな…。ごめん。」

ああ桂優 「………」

42
梓 “紗希、具合はどう?”

紗希 “もう、熱は、下がったよ。明日の練習には出られそうかな。”

梓 “そう、良かった。ご飯まだでしょ。おうどん買ったの、今からそっち行って作ってあげるから一緒に食べよ。”

紗希 “治りかけでも、まだ風邪だから…。うつすといけないから独りで食べるよ”

梓 “今、部屋の前にいるの…。中に入れて。”

紗希 “…………”

梓 “紗希、お願い…。”

紗希 “僕たち、もう、こんなふうに会うのはやめよう。”

梓 “どういう意味。”

紗希 “友達に戻るんだよ。”
“ほんの1ヶ月前の僕たちに戻るだけだよ。”

梓 “イヤ!”

紗希 “まだ間に合う、今ならまだ…。”
“梓のこと昨日より今日の方が好きになってる、今日よりも明日…。”
“そうやって、梓のこと、もっと、もっと好きになって、どうしようもないくらい好きになった時、梓に心変わりされたら…。冷静に受け入れる自信がない。

梓 “…どうして別れなくちゃいけないの?”

紗希 “梓は普通の女の子だから…。”
“旦那様がいて子供がいてそんな家庭を持つことを望んでる。”

梓 “…”

紗希 “僕はそんな当たり前の夢を叶えてあげられない。
“梓の理想の未来に僕はいない。いちゃいけないんだ…。”

梓 “………”
“ねぇ紗希?”
“私のこと嫌い?”

紗希 “梓の人生を狂わせたくない…。”
“でも、今ならまだ親友に戻れるよ。”
“そうしよう!梓。”

梓 “………”

紗希 “じゃあ、切るね。”

44
<翌朝、格納庫>
梓 「…おはよう、紗希。」

紗希 「…おはよう、梓。」

梓 紗希 『泣いたんだね…。目が…腫れてる。』

ああ桂優 「…………」

梓 「みんな、練習始まるよ。乗って!」


ガガガガガガ
梓 「撃て!」

あや スカッ 「えっ?」
「紗希、装填!」

紗希 「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ。」バタッ。

あや 「紗希!」
「梓、血が!」

梓 「紗希!」
「桂利奈止めて!」
“西住隊長!うさぎさんチーム離脱します。”
“紗希が血を吐いて倒れました!保健室に運びます。”

みほ “了解です。私も後で向かいます!”

杏 “西住ちゃんどうした?”

みほ “うさぎさんの丸山さんが吐血したので離脱して保健室に運ぶと連絡が入りました。”

杏 “澤ちゃん、聞こえる?”

梓 “はい!会長”

杏 “このままM-3で大洗海辺病院に向かえ!”
“保健室は無人だ。学園艦の他の医療機関もまだ休みか、やってたとしても結局は大洗海辺病院に送られるはずだ。”

梓 “わかりました。”

杏 “丸山ちゃんの様子は?”

梓 “今は呼びかけにもこたえません。”

杏 “静かに寝かせてあげて。野営用の毛布があるだろ、掛けてあげて、体を冷やさないように。口の中に吐いたものが残ってたら、かき出して、息が詰まらないようにね。”
“解った?”
“落ち着いてやるんだよ。”

梓 “解りました。ありがとうございます。”

杏 “丸山ちゃんのお父さんには私から連絡しておく。私も後で向かうから。”

梓 “ありがとうございます。急いで大洗海岸病院に向かいます!”

梓 「桂利奈、大洗海辺病院に向かって!」

桂利奈 「あいー!」

梓 「優季、大洗海辺病院に急病患者搬送の連絡!」

優季 「了解!」

梓 「紗希…。安心して私がついてるからね。」

45
杏 みほ 「丸山さんの容態は?」

梓 「今は落ち着いて眠ってます。」
「お医者様の話では急性胃粘膜病変。出血をともなう急性の胃炎だそうです。」
「内視鏡と薬の治療で治る病気だそうです。」

杏 「ひとまずは安心か…。」

みほ 「澤さん。ご苦労様、大丈夫?」

梓 「はい、私のことは心配ありません。」
「…みんな…私の責任です。」

杏 みほ 「…………」

杏 「そんなふうに自分を責めちゃダメだ。」

梓 「でも、私のことがストレスになって…。」

みほ 「今は丸山さんが回復することだけを祈ろう。」

梓 「しばらく紗希のそばにいさせてください。」

杏 「いいよ。気がすむまでいてやりな!」

46
ガラーーー
「澤 梓さんですね。」

梓 「??」

「紗希の父です。」

梓 「はっ、初めまして。澤 梓です。」

紗希の父 「紗希がご迷惑お掛けしました。」
「病院にまで搬送していただいて…。」

梓 「迷惑だなんて…。」
「謝らなくちゃいけないのは私のほうです。」
「紗希さんをこんなになるまで追い詰めたのは私なんです。」
「紗希さんとは、1ヶ月ほど前からお付き合いさせていただいてます。」

紗希の父 「はい、存じております。」

梓 『えっ!』
「このお正月、初詣に行ったとき、私…。」
「子供を見て、紗希さんの前ではしゃいでしまって …」
「紗希さんの心を深く傷つけました。」
「紗希さんはたくさん優しくしてくれました。」
「なのに…私が紗希さんにしたことは絶望させたことだけです。」
「そのせいで吐血するまで精神的にストレスを与えて…。」
「申し訳ありません。なんとお詫びをしていいのか?」

紗希の父 「やめてください。お詫びだなんて。」
「いつか、こんな日が来るのではと思っていました。どうしようもない現実に気がつく時が来るのを。」
「それまでに、もう少し心が強くなることを願っていたのですが…。」

47
紗希の父 「このお正月、紗希からたくさん澤さんのお話を聞きました。」
「出逢ったときの印象から、戦車道を始めたときのこと、全国大会、大学選抜チームとの試合、お付き合いを始めたときのこと、一緒に見た映画のことや、ハンバーグを焦がしたことまで…。」

梓 「えっ…。そんなことまで!」

紗希の父 「はい、本当に紗希なのか?と思うくらい楽しそうに…。」
「紗希は自分の心の病に気付いてからマイナス思考になるクセが付いてしまいました。確かに交際が長くなれば、子供のことは問題になってくるでしょう。でも、子供のことなんて高校生が悩むことなんかじゃありません。そんなこと、この先考える時間はいくらでもあります。」
「澤さん。私はむしろ、感謝しているんです。紗希と仲良くしていただいて。紗希も普通の高校生と同じように恋愛をして学園生活を楽しんでいるんだと。」
「あっ。感違いしないで下さいね。澤さんを心の病を持つ紗希に縛り付けようとしている訳ではありませんよ。」

梓 「はっ、はい。わかってます。」

紗希の父 「どうかこれからも、気がすむまで紗希のことを好きでいてやってください。」

梓 『気がすむまで…』

48
梓 『胸が締め付けられる思いだった。』
『紗希はお父さんになんでも話していた。』
『でも、私は両親に紗希のことを何も話していない。正直に言えば隠していた。知られてはいけないと思っていた。反対される。心配をかける。女の子が恋人なんてやっぱり普通じゃない。心のどこかでそう思ってた。』
『私はヒドイ奴だ…。紗希のことを裏切っている…。』

ウルウル、ポロポロ、…………

紗希の父 『あっ。』
「澤さん、お疲れのようですね、夜は病院の方が診てくれます。私も一度職場に戻って、途中の仕事を片付けて朝出直します。」
「学園艦までお送りしましょう。」

梓 「いさせてください…。紗希が目を覚ますまで…。お願いします…。」

紗希の父 「……わかりました。紗希のことお願いします。」

49
梓 zzz…zzz…zzz…。

紗希 ナデナデ…ナデナデ…。

梓 「…紗希!目が覚めたのね!苦しくない?痛いところは?」

紗希 「ずっと、いてくれたんだ。」
「ベッドにもたれて寝てたら風邪ひくよ。こっちに入っておいでよ。さぁ。」

梓 「バカ!病室のベッドで添い寝なんて出来るわけ無いでしょ!」

紗希 「今、僕、病人なんだよ。こんな時くらい甘えたっていいじゃない。」
「げほっ、げほっ。う~くるしい~しんじゃう~。」

梓 「本当にバカ!だいたい私、あなたにふられたのよ!ふった女に添い寝させるって、どういうつもりよ!」

紗希 (ほっぺを指でツンツン)
「やっぱり可愛いね、梓は。」
「こんなに可愛い子をふっちゃうなんてどうかしてたよ。」
「ごめんよ、梓。僕が悪かった。」

梓 「くうっくっくっううっ~わぁ~~~。」
「ごめんなさい。悪いのはみんな私なのに、私のせいで紗希にこんな辛い思いさせてるのに…。」

紗希 「梓、泣かない。」

梓 ぎゅー
「紗希!あなたが好き!」
「好きだから、一緒にいたい。誰よりもそばにいたい。それだけじゃダメ?病気になるまで深刻に考えるなんてやめようよ。」

紗希 「そうだね。僕が間違ってた。」
「寒いだろ。さぁ。こっちに。」
「梓、もっと寄って。」
ぎゅー

梓 「紗希って、あったかいね~。」

紗希 「退院したら梓のお父さんとお母さんに会いたいんだけどいいかな?」

梓 『!』

紗希 「自分でも何を話せばいいのか、何を話したいのかもよくわからないんだけど…」

梓 「ありがとう。お父さんとお母さんに話しておくね。」

紗希 「おやすみ。梓。」

梓 「おやすみ。紗希。」

ちゅ~~~~。

50
<退院後 澤家前>
紗希 ブルブル…ガクガク…

梓 「紗希、大丈夫?」

紗希 「だ、だいじょうぶ。」

梓 「別に、次、大洗に寄港した時でもよかったのに。」

紗希 「いや、こう言うことは早い方が…。」

あや 「もう10分も固まってるよ。」

あゆみ 「ふるえてるのが見てわかるね。」

梓 「なんで、あなた達までついて来てるのよ!」
「今日は映画観に行くって言ってたじゃない。」

優季 「映画より面白いって!」

梓 「面白がんないでよ!」

あゆみ 「ここは桂利奈!GO!」

桂利奈 「あいー!」
「ごめんください。大洗女子戦車道チームM-3中戦車リー、メンバー、一同です。本日はお招き頂きありがとうございます。」

梓 「招いてないって。」

51
<澤家内>
紗希 ガチガチ…ガチガチ…

あや 「ますます固まっちゃったね。」

あゆみ 「無理もないよ。ご両親の他にも、お祖父さんお祖母さん弟さんまで勢揃いだからね。」

紗希 「は、はじめまして。ま、まるやまさきと申します。」

桂利奈 「声、裏返ってるよ。」

優季 「紗希ちゃん、ファイト!」

梓の父 「まぁ、そう固くならずに、結論から言うとあなたと梓の仲を引き裂こうとしてる訳ではありませんから。」
「 梓から聞いたときは正直戸惑いました。でも、私なりに考えて。人が人を愛することにかわりはないだろうと。」
「これが私の出した結論です。」

紗希 「僕は男ではありません。ですから梓さんと子供のいる家庭を持つことは出来ません。」

梓、梓の父 『あ、あの~。話が飛躍しすぎてますけど~。』

あや 「聞いた?今の!」

あゆみ 「紗希、梓と結婚する気になってるよ。」

桂利奈 「これって、遠まわしに。」

優季 「プロポーズ!」

梓の父 「なんとも、正直な人だ。今日は子供の話は触れずにいようと思っていたのですが、丸山さんから出してきたと言うことは、子供のことがクリア出来ないと梓と前に進めないと言うことでしょう。」
「私はこう考えます。」
「互いに望みながらも不妊に悩む夫婦はたくさんいます。結婚する前に、子供が出来ないとわかっていればその夫婦は結婚しなかったでしょうか?」
「子供がいなければ家庭じゃないと言うのなら。期間を設けて、例えば、卒業までとか、その間楽しく付き合うと言うのもありますが、そんな気持ちで梓と付き合っていると言うのなら、今、この場で別れていただきたい。」
「梓は契約社員でもなければリース商品でもありません。」
「気がすむまで梓のことを好きになればいいんです。気がすむまで、ずっと。」

梓 『!』『気がすむまで…』

梓の父 「今後、子供の話はやめましょう。」
「子供の話は、あなたの心と体を痛めつけるだけです。」
「人生、どうしようもないこともあるんです。一つや二つあったっていいんじゃないですか?」

52
優季 「気がすむまで…」

あゆみ 「優しいような、厳しいような言葉。」

あや 「清々しいような、重苦しいような空気。」

桂利奈 「なんか、私たちすごい場所に居合わせちゃったね。」

梓の父 「お母さん、お茶にしようか。梓も手伝って。」
「丸山さん。きんつば、お好きですよね。」

紗希 「は、はい。」

梓の父 「梓からいろいろ聞いてます。」

紗希 『!』

梓の父 「時々、食事を用意してもらっていることとか、勉強をみてもらっていることとか。合気道でユスリを投げ飛ばしたことも。」
「梓がお世話になりっぱなしで申し訳ありません。」

紗希 「い、いえ。それくらいのことなんでも…。」

梓の父 「せっかくなので、コレコレ…….。」

梓の祖父 「おまえ、また観るのか!」

梓の祖母 「やれやれ…。」

梓の父 「M-3のメンバーが全員そろっているんですよ。ここは解説をしてもらいながら決勝戦のDVD鑑賞を…。」

梓 「やめてよ、お父さん!お正月、さんざん観たでしょ!」

梓の父 「ここ!この場面!西住隊長がM-3を救助に向うところ!」

梓の弟 「あぁ~。火がついちゃった…。」

梓 「だから、みんなの前で恥ずかしいって!」

あゆみ 「梓、ここは私たちにまかせて!」

ああ桂優 「さすが、お父様!」

梓の父 「ここ!何度観ても目頭が熱くなるんです!」

ああ桂優 「ですよね~。」

梓の母、祖父、祖母、弟 「あぁ~~~。」(退室)

54
梓の母 「梓、紗希さん」(手まねき)
「お父さん、ああなっちゃったら止まんないから、あなた達はこっちでお茶を…。」

梓 「うん、そうする。」
「みんな、大丈夫かな?」


桂利奈 「この時、M-3の中ではですね~………」

梓の父 「はぁ!はぁ!なるほど~。」


梓 「お父さんってあんなだったっけ?」

梓の母 「そうよ、昔から。」
「梓の好きなものは何でも好きになった。」
「梓が小学生の頃、友達とサッカーの試合観に行ってから、夢中になってた選手がいたでしょう。」
「お父さん『次は梓と行くんだ。』って、その選手のことネットで調べて、応援グッズまで買って。『全日本メンバーに召集されたぞ!』とか言って、梓より詳しくなっちゃって…。」

梓 「そういえば、あったね。」

梓の母 「だから紗希さんのことも、きっと…。」ニコッ

紗希 『!』

梓の母 「今年は、全試合、観に行くって、はりきってるわ。」


あゆみ 「ヤークトティーガーと相対した私たちはですね~………」

梓の父 「梓の発案がお役に立てたんですね~。」
ウルウル、ウルウル…………


梓の母 「そろそろ、みなさんを救出しないと…。」

55
あや 「ポルシェティーガーはですね~………」

梓の父 「この、ボロボロになるまでフラッグ車の盾になる姿が泣けるんです~。」
ウルウル、ポロポロ、…………

ああ桂優 『私たちは、違う涙が流れそうです~。』
ウルウル、ウルウル…………



梓の母 「お父さん、スーパーまで買い物に行きますよ。」
「せっかくだからみなさんに晩ご飯を食べて行ってもらいましょうよ。」
「梓はみなさんと海浜公園でも散歩してきたら。」

ああ桂優 『お母様~。たすかった~。』

梓 「みんな、行こう!」

ああ桂優 ウルウル、ウルウル…………。
『梓~。おそいよ~。』

56
<海浜公園>
優季 「すごかったね~。梓ちゃんのお父さん。」

梓 「みんな、ごめんね~。」

桂利奈 「梓、お父さん似だよね。」

梓 「えぇ~、私ってあんな感じ?」

ああ桂優 「絶対ああなる!」

紗希 「優しいところ、そっくり。」

ああ桂優 「いきなり、のろけてるぜ~。」
「ヒューヒュー。」

あゆみ 「で、梓。どうすんの?」

あや 「プロポーズ、受けるの?」

梓 「えっ、そりゃ、もちろん。」

ああ桂優 「おめでとう~。」
「あとは、若い者に任せて邪魔者は消えますか!」

あゆみ 「お母さんから連絡が入ったら電話して。」

ああ桂優 「じゃあ、あとでね~。」

57
梓 「びっくりしちゃった。紗希ったら、もう結婚する気になってるんだもん。」

紗希 「やっぱり…。」

梓 「まだ何か気にしてるの?」

紗希 「お父さんに孫を抱かせてあげたくなるよ、きっと。梓は優しいから…。」

梓 ギロッ

紗希 「えっ、なに?そんな恐い顔して。」

梓 「いいかげんにして!」
「だいたい、あなたの話、聞いてたら、私の方が心変わりする前提になってるのが気に入らないのよ!」
「私だって紗希のこともっと好きになるの!もっと、もっと好きになるの!どうしようもなく好きになったとき紗希に心変わりされたら、どうなっちゃうか恐いくらいなの!」

紗希 「だ、大丈夫だよ、ぼくは…。」

梓 「あっ、決めつけた!今、心変わりするのは私だって決めつけた!」

紗希 「そ、そんな…。」

梓 「私、知ってるのよ!」
「紗希が鼻の下のばしてニヤニヤしながら女の子からもらった手紙読んでるの!」

梓 ギロッ

紗希 ギクッ

梓 「怒らないから、私の目を見て正直に答えて!」

紗希 「もう、怒ってるじゃ…。」

梓 「何か言った!」

紗希 「いえ、なにも。」

梓 「今まで、何人の女の子から手紙もらったの?」

58
紗希 「7人かな?」

梓 「ぶれた!今、目線ぶれた、嘘ついてる!」
「本当は?」

紗希 「…24人」

梓 「えぇっ、私が確認出来てる倍もいるじゃない!何処の誰よ!」

紗希 「関東地区合同演習の専門分野別訓練の時。アンツィオとか聖グロリアーナとか知波単の装填手の人達に…。」

梓 「まさか、誰かと二人になって話したりとかしてたんじゃ?」

紗希 「そんなこと…。」

梓 「また、ぶれた!あったんだ!私の目が届かないのをいいことに!この浮気者!」

紗希 「それには訳が…。」

59
桂利奈 「あの二人さっそく夫婦喧嘩してるよ。」

あや 「ほっとけばいいんじゃない。犬も食わないって言うし。」

あゆみ 「喧嘩っていうより紗希が一方的にやられてるね。」

優季 「ああ言うのって、何て言うんだっけ?」

ああ桂 「かかあ天下!」

60
梓 ニコッ

紗希 『?』

梓 「紗希、モテモテじゃん。」
「心変わりするのは、どっちよ?」
「知らなかったでしょ。私こんなに気が強いんだよ。紗希が思ってるみたいな優しい女の子じゃないの。」
「手紙くれた子の中に私なんかより優しくて可愛い子いっぱいいたでしょ。」

紗希 「そ、それは…。」

梓 「そこは『いないよ』って言ってよ!バカ!」

紗希 「ご、ごめん。」

梓 「驚いたこと、もう一つあるんだ。」
「紗希のお父さんと私のお父さん同じ事言ってた『気がすむまで』って。」

紗希 「お父さんと話したんだ。何か言ってた?」

梓 「お正月に紗希から私の話をいろいろ聞いたって。」
「ハンバーグ焦がしたことまで話したんだ。」

紗希 「梓だって、いろいろ話してくれてたじゃないか。」

梓 「…ごめんなさい。私ずっと隠してたの。紗希のこと。」
「紗希のことを話したのは、紗希がうちの両親に会いたいって言ってから。」
「紗希のこと好きだとか、そばにいたいとか言っといて、ヒドイよね。紗希のこと裏切ってるんだから…。」

紗希 「気にすることないよ。誰だって、親には心配かけたくないから。」

61
梓 「紗希はいつも優しい。友達の時から、恋人になってからも、変わらずに、ずっと。」
「なのに私は、無神経で、紗希を傷付けて、裏切って、気が強くて、すぐヤキモチ焼いて、オマケに料理もヘタで、私なんかが紗希のそばに…。」

ぎゅー

梓 「ひゃっ。」

紗希 「僕が好きになったのは梓のすべて。」

梓 「それって…。」

紗希 「梓が言ってくれた、いちばん嬉しかった言葉。だから、僕からも…。」
「僕が好きになったのは、今、僕の腕のなかにいる梓。」
「世界でたった一人の梓。」
「梓、大好きだよ。」

梓 「紗希、私も。」

紗希 「こんな僕で良かったら、いつまでも梓のそばにいさせてくれないか。」

梓 「こちらこそ、こんな私で良かったら、いつまでも紗希のそばにいさせてください。」

梓 紗希 「気がすむまで、ずっと。」



62
お読みいただきありがとうございました。
HTML化と言うのがいまいちよくわかりません。
しなければいけないのか?どこで何をするのか?

62 〈て〉って何?
〈乙〉のこと?

よかった。

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