ぶしつ!
梓「こんにちは~って、まだ誰も来てない」
梓「ん?」
和「すぅ、すぅ」
梓「あれ、真鍋先輩だ。なんでけいおん部の部室に?」
和「ゆぃ、そこはだめぇ」
梓「どんな夢見てるんだろう……」
梓「気持ちよさそうに寝てるし、起こしちゃ悪いよね」
梓「自分で起きるのを待とう、先輩達もまだ来てないし」
梓「暇だなぁ、先輩達も遅いし。一体何やってるんだか」
梓「真鍋先輩、メガネ掛けたまま寝てる」
梓「フレーム歪んじゃうし、外してあげよう」
梓「いや、これは決して先輩のメガネに興味があるとか掛けてみたいとか」
梓「そういうんじゃなくて、純粋な親切心から外してあげるんですよ」
梓「って、誰に言い訳してるんだ私」
梓「そして結局掛けてしまった」
梓「似合ってるかな? ていうかこれ地味に度がキツ……」
梓「真鍋先輩ってかなり視力が悪いのかな?」
梓「う~ん、自分じゃ似合ってるかどうか分かんないなぁ」
梓「いや、だからって別に見せる人も「遅れてごめ~ん!」
梓「!?」
梓「もう、遅刻ですよ」
唯「ちょっと小テストの点数が悪くて再テストを受けさせられてまして~」
律「まったく、唯はダメダメだな」
澪「お前も再テスト、受けてたんだろうが」
律「そうだっけ? てへぺろっ」
澪「その仕草、可愛いどころかイラっとくる」
梓「はあ、それでムギ先輩と澪先輩はお二人に付き添ってたから遅れたと」
紬「そうなの、ごめんね梓ちゃん。すぐお茶入れるね」
梓「あ、いや、別に謝らなくても、っていうか練習より先にお茶ですか」
唯「んん~。あずにゃん、そのメガネどうしたの?」
梓「えっ? あっ、は、外すの忘れてた……」
澪「あれ、それって和のメガネじゃないか?」
梓「そ、そうなんです、実は真鍋先輩がってちょっと唯先輩!」
唯「メガネ掛けたあずにゃんも可愛いよ! キュートだよ!」
梓「にゃあ、ゆ、唯先輩、もっと抱きついて下さい」
律「ほら、唯、そろそろ離して……やれ?」
唯「あ、あずにゃん?」
梓「えっ、あ、あれ、今私!?」
紬「梓ちゃん、今何て言ったの? ワンモアプリーズ!」
梓「ちょ、ち、違うんです! 唯先輩が良い匂いがして抱き着かれるととっても良い匂いがして」
梓「もっと抱きついて欲しいと思ってるんです!!」
律「何も違わないな」
澪「梓……大胆だな」
唯「いやぁ、そんなに言われちゃうと流石に照れますなあ」
梓「うわあああああああ!!」
和「……もう、アンタ達、煩い」
唯「あれ? 和ちゃんだ~、どしたの?」
和「どうしたもこうしたも、あれ、何だか良く見えないわね」
梓「あっ、す、すみません! これっ!」
和「あら、梓ちゃん……よね?」
梓「すみません、フレームが曲がっちゃうと思ったので、勝手に……」
和「そうだったの、ありがとう」
和「ていうか、何をそんなに騒いでたの?」
紬「今ね! 梓ちゃんがね! 唯ちゃんにね!」
律「ムギ、興奮し過ぎ」
梓「だから違うんですよ、冗談っていうか、さっきのは気の迷いというか」
唯「え~、そうなの?」
澪「冗談には聞こえなかったような気が」
律「そもそも和、なんでウチの部室に?」
和「あ、そうそう。律、あんたまた書類出してなかったでしょ」
律「え、嘘!?」
和「これ」
律「あ、あ~、こんな書類も、あった、ような?」
澪「り~つ~……!」
律「私が悪かったです叩かないで!」
紬「じゃあその書類の為に?」
和「そう、それでここに来て」
和「誰も居なかったからしばらく待ってたんだけど」
和「天気が良いからウトウトきちゃって、気付いたら寝ちゃってたのね」
澪「毎回面倒掛けてごめんな、和」
和「別に良いわよ、いつものことだから」
律「あんた……ええ人や……」
唯「ねーねーみんな」
律「どーしたー、ゆい?」
唯「あずにゃんが顔を真っ赤にして頭を抱えてうずくまったまま動かないよ?」
梓「恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいこのまま消えてしまいたい」
澪「まあ、あれだけのことを言えばそれはそうかも」
紬「自分に素直になるって、素晴らしいことよ、梓ちゃん!」
梓「うぅ~……」
和「自分に素直……?」
澪「どうした、和?」
和「ねえ、梓ちゃん、もしかして私のメガネ、掛けたの?」
梓「つい、掛けてしましました。勝手にごめんなさい……」
和「なるほど、そういうことだったのね」
唯「和ちゃ~ん、1人で話を進めないで~」
和「梓ちゃんが唯に抱きつかれて、私は唯先輩が大好きです! と大声で言ったのね」
梓「そんなこと言ってません!」
和「その時、梓ちゃんは私のメガネを掛けていたのね?」
唯「そうだよ~、メガネを掛けたあずにゃんも可愛かったよ!」
和「そう……やっぱりね」
澪「どういうことなんだ、和?」
和「つまり、梓ちゃんは私のメガネを掛けたことで、自分の気持ちに正直になってしまったのよ!!」
「……」
唯「へえ~、凄いね!」
澪「いやいやいやいや」
紬「和ちゃんも冗談なんて言うのね」
和「実はこの赤いメガネはね、真鍋家に代々伝わるメガネだそうなの」
律「って、何か語りだすし」
和「このメガネを掛けた者はね、自分の思ったことを全て口に出してしまうのよ」
和「幼い頃の私は、自分の気持ちを上手く表せない子だったの」
和「言いたいことをハッキリ言えなかったり、そのおかげで友達も出来なかった」
和「皆が遊んでいる時に、私も混ぜて! って言えないような、そんな子だったわ」
和「そんな時、私の両親がこのメガネをくれたのよ」
和「このメガネを掛けていれば、自分に正直になれたわ」
和「そしてこのメガネのおかげで勇気を出せた私は、友達も出来て」
和「平沢姉妹とも仲良くなれたのよ」
唯「和ちゃん、私、初耳だよ!」
和「言ってなかったから」
律「じゃあ、そのメガネを掛けたから、梓はあんなことを口走ってしまったと」
和「そういうことね」
梓「そう、だったんですか……!」
澪「そうなるとさっきの梓の言葉は全部、梓自身が思っていることを?」
和「そうなるわ」
梓「にゃああああああああ!! あああああ!!」
紬「大変! 梓ちゃんが発狂してる!」
律「それにしても、これは面白いことを聞いてしまったな」
澪「おい、律」
律「和ちゃ~~んメガネお借り致しますわよん」
和「ちょ、律!」
律「唯、梓を抑えろ!」
唯「りょ~かい」
梓「にゃああああ辞めて下さいぃいいいい」
~中略~
紬「梓ちゃんって、私のことそんな風に思っていたのね。嬉しいけど恥ずかしい……」
澪「梓は私のパンツに興奮して……うう」
唯「ほえ……」
律「唯すら放心するほどの衝撃的な言葉の数々が梓の口から次々と」
梓「もうお嫁に行けないです……」
憂「こんにちは~、って皆さんどうされたんですか?」
唯「あ~、憂だ~!」
憂「お姉ちゃんだ~!」
律「出会ってすぐに抱きつく姉妹とは」
紬「相変わらず仲が良くて微笑ましいわ」
澪「憂ちゃん、どうしたんだ?」
憂「実は今日、私誕生日なんですけど」
律「えっ、そうなの!?」
唯「そうだよ~、今日はお家でお祝いなんだよ」
澪「憂ちゃん、おめでとう」
紬「おめでとう、憂ちゃん♪」
律「おめでとう!」
梓「私は朝言ったけど……、改めておめでとう、憂」
憂「わあ、皆さん、ありがとうございます!!」
澪(無理やりぶっこんできた感があるけど……黙っておこう)
憂「話を戻すとですね」
憂「折角だから、お姉ちゃんが好きな物を作ってあげたいなあと思って」
憂「何が食べたいかメールをしたんですけど」
梓「どうして自分の誕生日に姉の食べたいものを……」
憂「えへへ~、それでメールが返ってこないので直接聞きに来ちゃいました」
律「なんて姉馬鹿な妹だ……」
憂「そんな褒められても~」
梓「褒めてない褒めてない」
和「この声は、憂? ちょっと律、いい加減メガネ返して……」
憂「あれ? 和ちゃ、和さんも居たんだ。メガネは?」
和「いや、律に取られて、憂、誕生日おめでとう」
律「このタイミングで!?」
憂「ありがとうございます!」
梓「真鍋先輩、これ!」
憂「梓ちゃん!」
梓「先輩達に無理矢理……うう」
憂「?」
律「なあゆいや」
唯「なんだいりっちゃん」
律「憂ちゃんに誕生日プレゼントはあげるのか?」
唯「う~ん、欲しい物を聞いたんだけど」
憂『気持ちだけで十分だよ、お姉ちゃん! ありがとう!』
唯「って……」
律「じゃあ、和からメガネを貸して貰うのはどうだ?」
唯「?」
澪「なるほど、そういうことか」
唯「そういうことって、どういうこと?」
梓「憂に真鍋先輩のメガネを掛けて貰うってことですよ」
唯「え~、なんで?」
紬「和ちゃんのメガネは、自分の気持ちに正直になれるんでしょ?」
紬「だから、そのメガネを掛けて貰っている状態で憂ちゃんに欲しいものを聞けば」
紬「憂ちゃんの欲しい物が分かるんじゃないかしら?」
律「そそ、そういうこと」
唯「! そ、そっか! みんな天才だよ!」
唯「という訳で和ちゃん、もっかいメガネ貸して!」
和「ちょ、ゆ、唯!? もう、いい加減生徒会室に戻らせて……」
唯「そして憂! これを掛けるのだー!」
憂「和さんのメガネを?」
唯「そう!」
憂「どうして?」
唯「お姉ちゃんからのお願い!」
憂「お姉ちゃんのお願いなら、掛けるよ~」
澪「流石憂ちゃんだな……」
梓「おお、憂も結構メガネ似合うね」
憂「そうかな~、ちょっと恥ずかしいな」
紬「可愛いわよ、憂ちゃん」
憂「ありがとうございます、紬さん」
和「ボヤけてなにも見えない……」
唯「さて、憂、誕生日プレゼントに欲しい物は!?」
憂「え、突然どうしたのお姉ちゃん」
唯「い~い~か~ら~」
憂「前も言ったけど気持ちだけで十分で、欲しい物は……お姉ちゃん」
唯「へ?」
律「……ん?」
梓「憂、今なんて?」
紬(こ、これはもしかして……)
憂「え、ああ、あれ? いや、だからね、私欲しい物なんて、お姉ちゃんが」
憂「私は、お姉ちゃんが、平沢唯が欲しいです!」
唯「うううっ、憂!?」
澪「ああっ、ムギが鼻血を噴き出して倒れた!」
律「あ~、いやまあ予想出来なくは無かったけど」
憂「えええええ、わ、私なんで!? お姉ちゃん、これは違うの!」
梓「うんうん」
憂「どーして梓ちゃんは優しい微笑みで私の肩に手を置くの!?」
和「あああああ早くメガネ返して!!」
澪「和がキャラ崩壊してる!?」
唯「憂、その、私なんかで良ければ幾らでも貰ってくれれば……」
憂「お姉ちゃん……!」
澪「こっちはこっちで2人だけの世界に入ってるし!」
律「いよいよ収集が付かなくなってきたな」
澪「お前のせいだろ!!」 セイダロ‐ セイダロ‐ セイダロー (エコー)
よくじつ!
ぶしつ!
梓「さくやは おたのしみ でしたか?」
唯「いやあ、えへへぇ」
梓「えっ、まさか本当に!?」
唯「じょ、冗談だよ!」
律(ホントに冗談なのか……?)
紬「みんな、お茶が入ったわよ」
律「おっ、サンキュームギ! ……ん?」
澪「ムギ、そのメガネ……もしかして」
紬「和ちゃんから借りてきちゃいました!」
紬「みんないつもいつも私ばかりにお茶入れさせて良い御身分ね!」
紬「どうせみんな私のこと、お菓子を持ってきてくれるお茶汲み係位にしか思ってないんでしょ?」
紬「これからもお茶汲み係として、皆と仲良くさせてね!」
紬「な~んて、実はこれ、昨日買ってきた偽物でね」
紬「って、あれ……?」
梓「ムギ先輩、ごめんなさい、これからは私がお茶入れるようにします……」
紬「梓ちゃん!?」
唯「た、たまには私がお菓子持ってくるよ!」
紬「唯ちゃん!?」
澪「ムギ、そんな風に思ってたのか……気付いてやれなくてごめん」
紬「澪ちゃん!?」
律「む、ムギ! 今度家に来てくれよ、またご飯御馳走するからさ!」
紬「りっちゃん!?」
紬「どうしてこうなっちゃうの!?」
おしまい
おしまいです。
読んで下さった方、こんな時間まで付き合って下さって本当にありがとうございました。
毎年憂ちゃんの誕生日には憂ちゃんメインのSS書いてるので今年も書きました。
展開が急なのは見逃してください><
最近はけいおん!SSもめっきり見なくなって淋しいね……。
取り敢えず、最後に
憂ちゃん、誕生日おめでとう!!
皆さんも憂ちゃんSS書いて良いんですよ(チラッチラッ
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