スライム「やるもんじゃないね、キャラじゃないことは」 (53)

生後まもなく俺は親に山へ捨てられた

そこで俺は運良く山賊達に拾われ、山賊の子として育った

そして、その山賊は俺が幼い頃に王都の騎士団に皆殺しにされ、俺だけが生き残った

その後、とある大規模な盗賊組織にスカウトされ、俺は盗賊になった

だが、そこも俺が遠出をしている間に壊滅

俺はまた1人になった

今までずっと闇を歩いて生きてきたからの故のギャップだろうか

俺は光を求めた

だから、俺は闇が存在しない王都へ行った

そこなら、俺も光を歩けると思ったから

ただ、1つ誤算があるとすれば、闇は俺が手放そうとした所で後ろからへばり付いてくる訳であって、場所を変えたって何も変わりはしない

つまり、


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『各人員に通達』

ビュオオオ........

『レジスタンスの主力部隊は王都東部の方に後退しています』

『これを追撃し、殲滅すること。以上があなた方の任務です』

「……」

『改めて申し上げますが、我々は《ギルド》です』

『対価に見合うだけの成果を挙げること、これは当然の義務だと我々は考えています』

少年ゴブリン「やってやる……やってやるぞ……」ブツブツ

『くれぐれもそのおつもりで』

蛇頭「言ってくれるねぇ。あんたはどう思う、人間の兄ちゃんよ」

「そうだな……、俺は、」

『ご挨拶が遅れました。本作作戦遂行の補佐を担当いたします、《サキュバス》と申します。井後お見知りおきを』

『既に戦闘は始まっています。船艇が所定の位置に到達後、降下を開始して下さい』

蛇頭「……お互い生きてたらどっかで飲もうぜ」

「そうだな……。生きてたらな」

蛇頭「じゃあ、また後でな」

「ああ」

『各員ご武運を』

「……行くか」

バッ

ビュオオオッ!

(着地予定地点からさほど離れてない距離に3人。いけるな)

「降下した、指示があるなら頼む」

サキュバス『ではあなたの見える範囲の敵を殲滅して下さい。現状はこれだけです』

「……あんたかよ」

サキュバス『今回ギルドが雇った傭兵の内、あなただけが純粋な人間ですので。その為私が担当しろとの伝令がありました』

「そうかい。……よっと」

シュタンッ

サキュバス『生きてますか?』

「着地成功。これより作戦行動にはいる」

サキュバス『了解しました』

レジスタンスA「敵か!?」

レジスタンスB「いや、あれは人間だ!」

「悪いが敵だ」

ズバンッ!

レジスタンスA「ぐあっ……」

レジスタンスB「貴様!」

「遅い」

レジスタンスB「」ドシャァ....

少年兵「うわああああああああああ!!」タッタッタッ!

「……」

ガキンッ

少年兵「同じ人間だろっ!?なんでっ!」

「雇われたからだ」グイッ

キキンッ

少年兵「っ!」

ザシュッ

少年兵「ち、ちくしょう……」ドサッ

「降下地点にいた奴らの排除の成功、次は何処へ向かえばいい」

サキュバス『お次はそこから11時の方向に直進して下さい。お味方が交戦中との連絡が』

「了解した」

タッタッタッ........

(さっきの船艇で残りはここら辺が降下地点だったような……)

少年ゴブリン「」

「……聞こえるか。ゴブリンが着地に失敗して死んだようだ」

サキュバス『なるほど、降下後に連絡がなかったようでしたが。分かりました。担当者に連絡しておきます』

「なんの為に来たんだろうな……」

『サキュバス君、私だ。首領はどこにいる?』

(緊急通信か)

『支援部隊の指揮をとる手筈ではなかったか?』

サキュバス『申し訳ないありません近衛師団長殿、あの方は少々気まぐれでして。腕は一流なのですが、困った方です』

近衛師団長『魔王様は期待を裏切られることを何よりもお嫌いになる。一部たりとも、そのご期待に背くことがあってはならない』

サキュバス『我々はギルドです。対価に見合うだけの仕事は遂行致します。お立場の心配は無用かと』

近衛師団長『フン、下品で小賢しい女は好かんな』

サキュバス『恐れ入ります』

(あれが近衛師団長……。ドラゴンとは聞いていたが、体格に比べ器はそこまで大きくないようだな)

サキュバス『先ほど向かうように伝えた地点から、敵部隊が逃走を始めているようです』

「逃げるやつを切ればいいのか?」

サキュバス『いえ、逃走用の脱出艇を破壊して頂くだけで結構です』

「人間の手で破壊出来るとでも?」

サキュバス『方法はお任せします』

「あっそう……」

サキュバス『では、今の地点から9時の方向に向かってください。道中敵は逃さず倒して下さい』

「了解した」

レジスタンスC「行かせるかぁ!」ブンッ

ドゴンッ!

「無駄に大きな槌だな……」

レジスタンスC「俺は牛の亜人!止められまい!!」

「ちっ」タッ

ドゴンッ!

レジスタンスC「逃げんのかっ!」

「逃げはしないさ」ブンッ

グサッ

レジスタンスC「かっ……!」ドシャァ....

サキュバス『お見事です。まるでナイフのように剣を投げるとは。人間ですか』

「一応人間だ。今も昔も」

エルフ「誰か砲台を知らないか!?周辺の船艇がもう離陸を始めているっ!」

バババババ........

ミイラ「くっ、やはりゲリラ用の武装では落とせんか……!」

サキュバス『対人兵装ではやはり厳しいですか』

「出来ない事もない」

サキュバス『ほう?』

「ここらへんから」ダッ

エルフ「お、おいアンタ!そっちは壁だぞ!」

「っと」ダンッ

ダンッ!

ダンッ!

レジスタンスD「っ!敵が壁を一直線に蹴りあがってきている!近寄らせるな!!」

レジスタンスE「なんだよコイツは!」

サキュバス『それで、近寄った所でどうやって落とすのですか?』

「燃やせばいいだろ」ビャッ

パリンッ

ボオッ!

レジスタンスD「か、火災だ!」

レジスタンスE「動力炉に火が……っ!」

ボンッ!

ミイラ「あれがマジもんの傭兵か……」

サキュバス『お見事です。では次の目的地を……、』

ズアアアアアアアッ!

サキュバス『膨大な魔力反応がこちらに接近しています』

「……」

サキュバス『この速さ、恐らくは魔力ブーストかと。相当な手練のようです』

エルフ「大将首か!」ダッ

男「邪魔だ」スパンッ

ドチャッ

「……」ザッ

男「お前の相手は私だ、雇われ」

ズアアアアアアアッ!

サキュバス『確認できました。彼がレジスタンスのリーダーのようです』

「誰であろうと敵なら殺すまでだ」ダッ

ドッ!

サキュバス『まだ我々に逆らうつもりですか。既に勝敗は明らかだというのに』

リーダー「その声はギルドの連中かっ!生憎だが、我々はやらねばならないのでな!」

サキュバス『そうですか。投降する気がないのであれば結構。殺して下さい』

「こっちは元から殺す気だ」

リーダー「ふっ!」

ギンッ!

「……っ!」グイッ

ガッ

リーダー「細身だが力はあるようだな」

「それなりには鍛えてるんでね」ブンッ

ガンッ

キンッ

ギャリンッ!

リーダー「……似ているな。あの時の剣に」グググ........

「……なんのことやら」グググ........

ガキンッ!

「背中に背負ってるそれは……、使わないのか?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ........

リーダー「まだその時では、ないっ!」ヒュバッ!

キンッ

カッ

グキンッ

リーダー「オラッ!」ブンッ

「ちっ……」ブンッ

ガーンッ!

「!」ビリビリッ!

リーダー「どうした、そんなものか」

「……ギアを上げるか」トッ

バッ

リーダー「!」

ガッ、ガンッ、ガキッ、ガッ、カッ、ガガン、ガキャン!

リーダー「うおおおおおおお!!」ブンッ

「そこだ」シュッ

ザシュッ

リーダー「ぐっ……」

「浅いか」

ザアッ!

リーダー「強い……!」

「……」スタッ

リーダー「貴様のようなヤツがいてくれれば……」

ダッダッダッダッ!

ドワーフ「あそこにいるのが敵の親玉らしい!」

骸骨「俺らも参戦するぜ!」

サキュバス『どうやら援軍が来たようですね』

リーダー「……全ては過ぎた事か」バッ

「逃げるのか」ダッ

リーダー「悪いがここは退かせてもらう!」ブウン!

ズアアアアアアアッ!

サキュバス『逃がしてはなりません。追撃を』

「いや、あのスピードを今から追いかけるには加速距離が足りない」ダッタッタッ........

サキュバス『……敵の撤退を確認しました。取り逃がしたとはいえ、ダメージは与えていますので今回はいいでしょう』

「そうかい」

サキュバス『作戦を継続します。再度、撃破に向かってください』

ダッダッダッダッ

「船艇を確認」

サキュバス『排除を』

レジスタンスF「畜生!こっちだクソ野郎!」バッ

ドドドドドドドド!

サキュバス『魔力弾による連続攻撃ですか』

「……」スパンッ

レジスタンスF「なにっ!?魔法剣だと!?情報と……!」

「……」ザシュッ

ドサッ

サキュバス『放出だけではなく、憑依させることも出来たのですね』

「逆にその程度しか出来ないんだがな」トッ

ダンッ!ダンッ!ダンッ!

レジスタンスG「離陸しろ!奴の犠牲を無」ズルッ

ドシャァ

レジスタンスH「ひいっ!?」

「落ちろ」ブンッ

パリンッ

ボウッ

レジスタンスH「ば、ばけ」

キュインッ、ドーンッ!

ボボボボボボボ........

「……」スタンッ

サキュバス『今のであなたに支払わられていたノルマ分の仕事は終わりです。お疲れ様でした』

「これで終わりか」

『サッキュン聞こえる~?』

サキュバス『首領、今どちらに?』

首領『敵が西の地下遺跡に逃げちゃってさ。地下のゴミ虫のリーダー』

(地下のゴミ虫……、レジスタンスの事か)

首領『そのルーキー、そいつ向かわせて。今すぐ』

サキュバス『報酬分の仕事は済ませてありますし、現状の消耗度では少々危険かと』

首領『あ、そうなんだ』

サキュバス『ですので、』

首領『で、それがなにか問題?』

サキュバス『了解しました。お聞きの通りです』

「行けって事か」

サキュバス『当初の報酬プラス1.5倍の追加報酬を出しますので作戦を継続。地下遺跡のルートを案内しますので、敵リーダーを追撃してください』

「拒否する権利はなしか」

サキュバス『ここからですと大通りの真ん中を右折しそのまま真っ直ぐに向かえば地下遺跡の入り口に着くかと』

「はいはい……」タッタッタッ

「よっと」ザシュッ

レジスタンスI「か、母さん……」ドサッ

サキュバス『もう直ぐ地下遺跡の入り口です』

レジスタンスJ「行かせるかあああああああ!」

ドオオオオオオオオッ!

サキュバス『船艇の接近を確認』

レジスタンスK「入り口付近に降下完了!」

レジスタンスL「これ以上行かせるかよっ!」

サキュバス『入り口を塞ぐつもりですか。ですが、恰好の的』

「飛んでさえなければ……、斬る」ズアッ

レジスタンスJ「なんだあの光は……」

ズバンッ!!

「……」キンッ

レジスタンスK「び、ビビらせやがって!見かけだおしかよ!」

バチチッ

レジスタンスJ「ど、動力炉がき」

ドーンッ!

サキュバス『排除を確認。中へ』

「……」

ザッザッザッ........

サキュバス『既に何人かの名だたる傭兵が中へ突入しています。交戦中でしたら加勢を』

カツン、カツン、カッ

「……」

「」

「」

「」

「早くも3人死んでるな」

サキュバス『急いだ方が宜しいかもしれません』

「そうだな」ダッ

――――――

―――



サキュバス『さて、もう直ぐ最深部ですが』

「8人か。名だたる傭兵が」

サキュバス『やはりあの時はまだ本気ではなかったと考えるのが妥当かと』

「そうだな」

蛇頭「よう、お前もやっぱり来たか。人間の兄ちゃん」

「お前は……」

蛇頭「悪いが呑みに約束だったが行けそうにないらしい」

「だろうな」

サキュバス『下半身が胴体付近までほぼ欠損。この状態でよく喋れるものです』

蛇頭「不思議なもんだな」

「もう喋るな。もしかすればまだ」

蛇頭「無理だな。俺も歳だ。再生は無理だろう」

「……」

蛇頭「そんな顔をするなよ。俺だって死を見送ってくれるのがよりもよって野郎だから正直ガッカリしているよ」

「……何か言い残すことは。家族に伝えてやる」

蛇頭「もういないさ。20年も前に戦場の炎にみんな飲まれちったよ」

「……」

蛇頭「こいつを」スッ........

チャリッ

「これは」

蛇頭「俺のエンブレムだ。一緒に連れて行ってやってくれ」

「俺でいいのか」

蛇頭「俺には見えるんだ、お前さんが、空を、大地を、黒く染め上げ、ながら、羽ばた、く、すが」

パタッ

サキュバス『蛇頭の死亡を確認』

「……行くか」ゴソッ

カツンッ、

リーダー「貴様か」

「ああ、さっきぶりだな」

リーダー「よく追ってきてくれた。感謝するぞ」

「……」

スウッ

リーダー「魔王、見ているか!貴様の望みどおりだ!」バッ

ガコンッ!

「背負っていたやつのお目見えか」

サキュバス『まさかとは思っていましたが、UW(アルティマウェポン)を用意しているとは』

リーダー「だがそれでも……、勝ったのは我々だっ!!」

ガカンッ!

リーダー「《グラインドブレード》起動!」


ヒュオンッ

ボボボボンッ!

リーダー「があっ!?」

「火の魔力弾!」

(いったいどこから……!)

ボヨーン

スライム「じゃ、さよなら」

グチャッ

リーダー「」

ボヨーン

サキュバス『敵リーダーの死亡を確認。首領、お疲れ様でした』

(あのスライムが首領……)

首領「ハハハッ!見てたよルーキー。なかなかやるじゃない?ちょーっと時間がかかってたけど」

「……どうも」

首領「まあ、ちょうどいい腕かな。ゴミ虫の相手にはさ」

近衛師団長『どうした。トラブルか、首領』

首領「下っ端がモタついてただけですよ。近衛師団長殿」

近衛師団長『撤収しろ。報告は後ほど確認する』

首領「はいはーい」

ボヨーン、ボヨーン........

サキュバス『はい、ではそのように』

「俺はどうすればいい」

サキュバス『お疲れ様でした。本部の方に追加報酬は受け取りに来られるようお願いします。それでは』

パキンッ

(連絡水晶が……)

「正規雇用はなし、か」

「俺も帰るか」

クルッ

ザーザザッ

『リーダー、これから……ザザッ』

「!」バッ

リーダー「」

『合流地点に向かい……ザザザッ』

「アイツのからか……」

『リーダーのザー指示ザザッ……どおりねザザザッ、別々にザザッ逃げた……ザー』

(『勝ったのは我々』、か。成程な)

『返事をザザザッ……てザッ……父さんザザー……』

『ザザッ早く……待っザザザッ……る……ザー』

パキンッ

「……」

ザッザッザッ........

王都を支配する魔王とレジスタンス組織の抗争は、レジスタンスの敗北によってその幕を降ろそうとしていた

虐げられ、地下へと追いやられていた人々は屈辱の中、再び地下深くへと逃げるほかなかった

大地は汚染され尽くし、残された僅かな土地に生きとし生きる者は皆、しがみつくように生きていた

そして、それでも尚、戦いは続いていた

この世界に光を浴びれるところなど、存在しなかった

chapter.0 END






レジスタンスのリーダー

人間。
かつては王都の魔王直属の騎士団に所属していた。
だが、ある日を堺に魔王と手をきりそれ以降は地下の世界で虐げられていた亜人や魔人、人間達のリーダーとして活動するようになった。
地下遺跡の戦闘で首領に潰され死亡。




蛇頭

魔人。
半ばギルドのお抱えに近い立場の傭兵。
嘗ては魔王直属の騎士団に所属していたが、騎士団長が突如王都から消えた事により、傭兵へ転職という経歴の持ち主。
自由に生きたいという思いから、羽ばたく鳥の描かれたエンブレムを付けている。
地下遺跡の戦闘でレジスタンスのリーダーに敗れて死亡。

魔力ブースト

足に魔力を集中させ、その魔力で高速のホバー移動をすること。
応用で魔力を纏った脚で壁を蹴りあがり、空中へ飛びあがるという使い方もある。

魔力武器(魔法剣等)

魔力を武器に纏わせる、或いは込めることを前提とした魔力耐性のある武器。
通常の武器に比べ、その威力は同系列のものよりも格段に上昇している。
だが、魔力耐性を付ける加工をしてある為、通常の武器よりも脆く1回の戦場において使用できる回数は格段に下がる。
CE




魔法武器(杖等)

魔力そのものを撃ち出す媒介物。
杖の機構により何倍にも膨らませた魔力を撃ち出す事ができる。
だが、接近戦は絶望的である。
TE

UW(アルティマウェポン)

規格外の兵器、または兵装の総称。
その多くは王都外の汚染区域で作られたもの。
通常の魔力を使用する武器(魔法剣等)とは違い、本人から魔力を供給して動くのではなく、本人から稼働に必要な分を強制的に吸い上げて動く。
無論、普通の生き物であれば、起動直後に死亡する恐れもある。
だが、その威力は絶大で、これと相対する者は皆全て焼き尽くされる。
今の技術では本来製造は不可能と言われており、追い詰められた人々の生への執着心をひしひしと感じられる代物である。




グラインドブレード

正式名称は『対近衛師団規格外六連聖魔突撃剣』。
レジスタンスの技術部が作り上げた逆転の切り札。
その1本でかつての世では勇者と呼ばれる存在になれるとされたレベルの聖剣・魔剣6本を、1本の槍に似た形状の支剣に魔力で無理やり纏わせ、支剣を中心に高速回転させるという代物。
突撃とあるが現実的な使用方法としては、剣から溢れる竜巻状の魔力をぶつけるといった処か。
無論そのまま使用すると、使用者にも即死レベルの魔力波が飛んでくる為、空いてるもう片方の腕を使い、専用の魔力調節機器を使わなければならない。

―――――――――

――――――

―――





「俺は別にそれで構わないけどさ……」

女「言いたい事は分かっています……。ですが、私達にはもう、こうする事でしか……」

騎士「お前が望むものなら、我々が出来る範囲であれば何でも出そう。だから、我々と共に戦ってはもらえないだろうか」

「酔狂な話だ。お前らの仲間を殺していた奴を雇うなんて」

女「……」

騎士「だが、我々が雇うのであれば、我々の敵にその刃を向けてくれるのだろう?」

「ああ」

騎士「なら問題ない」

「……OKじゃあ契約成立だ。後日こちらの準備が整い次第そちらに合流する」スクッ

女「あ、あの!」

「なんだ?」

女「お名前を……、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

「……そう言えば、まだアンタには名乗ってなかったな」

騎士「私は存じておりますが、まだリーダーにはお教えしていませんでしたね」

「生憎俺は自分の名前を知らないからこう名乗らせてもらっている」







「――――」









NEXT→chapter1



騎士「専用の『足』が欲しいと言っていたな」

「ああ。前線でも落とされずについて来れるようなやつがいるといいが」

騎士「なら、俺の知り合いに腕利きの運び屋がいるのだが……。紹介してやろうか」

「それは有難い。……金は大丈夫なのか」

騎士「……奴は金にうるさいヤツでな。通常の3倍は要求してくるだろうな。まあ、契約書でも書いて半分は後払いにすればいいだろう」

「後払い?それはいつ払うつもりなんだ」

騎士「我々が魔王に勝利した後だ」

「……アンタいい性格してるな」

chapter1 『始』

作戦概要

王都全域への配備が進められている「警備システム」を破壊するため、中央区に工作部隊を送り込みました。
その部隊の行動を援護するため、陽動を行います。
沿岸区に出撃し、配備されている警備部隊を撃破して下さい。

依頼主:レジスタンス

敗北から1年

壊滅的ともいえる打撃をうけたレジスタンス組織は、新たなリーダーのもと、再び魔王との決戦に向けて準備を進めていた

1年の歳月は、魔王にその支配を強化する時間を与え、一方で、レジスタンスの戦力は嘗ての規模に及ぶには至らない

彼らの最後の戦いは、そのはじめから絶望の中にあった

数字で見る限りでは

ゴオオオオオオオ........

騎士『こちら騎士、聞こえるか?』

「ああ、聞こえている」

騎士『そうか。間もなく予定時刻だ、作戦を確認する』

「基地の中でも2回、出立前にもやってるわけだ。もうしなくてもいいだろ」

騎士『これまでの小規模なものとは違い、決戦に向けた重要な作戦だ。念には念を押すのは当然だ』

「……分かった。なら頼む」

騎士『コホンッ……、こちらの工作部隊は中央区にある警備部隊の連絡統括施設に向かっている。事前の打ち合わせ通りに、お前は指示した区域を移動しながら派手に暴れてくれ』

(結局のところ俺がやることはいつも通りか)

騎士『魔王は王都の全域に例の監視システムを設置する予定するつもりだ。こいつは許可証から発する魔力が探知出来ない者を見つけると施設に連絡し、部隊を呼び寄せるようだ』

「面倒だな」

騎士『その通りだ。まもなく最後の作戦が近い、その前にこれらを片付けておかねばなるまい。リーダー、何かありますか』

リーダー『この作戦は予備工作に過ぎません。今の私たちにとって、貴方はかけがえのない戦力です』

「……」

リーダー『どうか、……ご無事で』

「了解した」

騎士『時間だ、始めるぞ』

「降下する。底を開けてくれ」

ガコンッ、ゴゴゴゴゴ........

「出る」バッ

ビュオオオオオ........

ポロッ

「あっ」

騎士『どうした!?何かトラブルか!』

「タバコを落とした」

騎士『……回収ついでに暴れてこい』

一般兵「先ほど連絡もなしに一隻の船艇が領域上空を通過したようだが」

警備隊「……魔力反応なしだそうだ。急ぎ用の運び屋だったんだろうよ」

一般兵「ならば問題はな

スパンッ

ゴトッ

警備隊「……は?」

シュタンッ、

「着地に成功。作戦行動を開始する」ダッ

『で、アタシはコイツ下ろした後どうするんだっけ?儲かるんだったらニャンでもいいけど』

騎士『ワーキャット、お前には傭兵のサポートを頼む。補給や装備の換装が仕事だ。観測外エリア上空で待機してくれ、直接ポイントへ行く筈だ』

ワーキャット『はいはい、了解~。じゃ、用が出来たら呼んでね、すぐ行くから』

「……」ピョンッ

グシャッ

警備隊「」

『タダでやるんっすか?』

ワーキャット『ねぇ、WW(ウェアウルフ)。それって、もちろん冗談よね?アタシ、タダ働きとか死んでもしないから。お金もらえないんだったら、行かニャいわよ』

「チップなら用意してあるから心配するな」シュバッ

警備隊B「がっ……」

ワーキャット『あら~分かってるじゃニャい!』

「この地点ならここからの方が近いか」スタンッ

警備隊C「な、何者だ!?」ザッ

警備隊D「これ以上は行かせるかよ!」ブンッ

ガキンッ

「流石は王都の警備隊か。装備が違うな」

(盾に刺突型の魔力剣、それに軽めの鎧。ファランクスを想定した装備か)

警備隊D「死ねっ!」グッ

「嫌だ」バッ

スチャッ

キュイン

警備隊C「D!離れろ!」

「遅い」ズバンッ

警備隊D「」ドシャッ........

警備隊C「魔法剣かよ!」ダッ

「逃がすか」ブウンッ

ズアアアアアアアッ!

警備隊C「ひいっ……!」

「ふっ!」ボッ

バカコンッ!

警備隊C「」ドサッ

ヒュー........

警備隊Cの頭「」ボトッ........

WW『姉さんアイツ頭蹴り飛ばしましたよ!ヤバいっすよ!ネジぶっ飛んでますって!』

ワーキャット『あんた傭兵の癖に魔法剣ニャんて持ってるんだ。珍しいわね』

「魔力剣と違いかさばらないからな」

ワーキャット『見た感じそれニャりには魔力も余裕がありそうだし、魔導の方極めれば良かったんじゃニャい?』

「生まれてこの方その手とは無縁でな」

ワーキャット『……悪いこと聞いちゃった?』

「別に」

ワーキャット『そう。なら余計なお喋りはここまでにして仕事を再開しましょ』

「ああ」

WW『俺は無視っすか!?』

―――



警備隊Y「」ドサッ

「ふぅ……。これで今ここにいた連中は最後か」シャコンッ

ズアアアアアア........

(沿岸区の船着き場近く……。ここが第一ポイント。……!)

ドーンッ

「……」シュタッ

蟹腕「よう、待ってたぜ。……ペッ」

「誰かは知らないが、それは噛む葉じゃない。返して貰おうか」

蟹腕「やっぱりこれはお前のか。イイ葉だ。返す気が失せる程に」

「今返してくれるなら、腕を2本で済む」

蟹腕「さすがは生き残った人間か。下手な魔物よりも物騒だ」

「返す気なしか。悪いが時間が圧している。……殺す」

蟹腕「俺は最初からお前を殺す気さ。これはその上乗せ報酬だ」

「……」ザッ........

蟹腕「俺が人間の下だと?そんなことは有り得ない、有り得るはずがない!お前を殺し、それを企業の奴らに教えてやらねば」シャキーン

「行くぞ」ドッ!

蟹腕「おらよぉ!」

キュイン、ドーン!

「……」サッ

ブンッ

ガキンッ!

「!」

蟹腕「そこらの魔物の腕と一緒にするなよ?」ブウンッ

ブワッ

「……っ」ズザー

蟹腕「どうした?あの戦果はまぐれか!?」ドッ

ズアアアアアアッ!

グアキィン!

「……」

ギリギリ........

蟹腕「ぶっ潰れろぉ!」グオッ

「ちっ」ヒュバッ

ピョンッ

タッ

ブウンッ

蟹腕「オラァっ!」スパシュッ

「……」トッ

ズアッ!

蟹腕「くらいな!」

キュドンッ、キュドンッ

「……」タタンッ

シュタッ

蟹腕「やはりその程度か、人間!」

(鋭利なハサミの腕にそれからでる魔力レーザーの組み合わせか……)

「普通だな」

蟹腕「は?」

「思ったより普通だな、お前」

蟹腕「……死ねェ!」

キュドッキュドッキュドッキュドンッ!!

ゴゴゴゴゴゴゴゴ........

蟹腕「やった、か」

ユラァッ

蟹腕「っ!うし」バッ

ドスッ

蟹腕「ごはっ!?」

「硬いな、流石は魔族。魔力剣なしじゃ貫けなかった」グイッ

ズパンッ

ドチャ........

―――

ワーキャット「……今さ、全作戦概要読ませて貰ったけど」

騎士『お前の言いたいことは分かるが、もう我々にはこの方法しかないのだ』

ワーキャット「中隊規模相手にたった一人で向かわせるのが最善の策ニャのか」

WW「えっ!?増援とかないんすか!」

騎士『現在我々が雇っている傭兵は奴だけだ。奴以外に適任者がいない以上、単独でやらせるしかあるまい』

ワーキャット「やらせるしかあるまいって……。あんニャ軽装で生き延びれる筈がニャいじゃニャい」

騎士『……こればっかりは実際に見てもらわんと分からんだろうな』

ワーキャット「?」

騎士『参考に教えてやろう。あの傭兵は1年前の反攻作戦において前リーダーと対峙し唯一生き残った男だ』

ワーキャット「あの人から……?」

騎士『話は後にしよう。恐らくもう……』

WW「姉さん!そろそろあいつ目的地点に着きそうです」

ワーキャット「……見定めさせて貰おうじゃない」

―――

カランッ........

「……」ヒョイッ

パカッ

ベチャァ........

「……体液で湿ったか」ポイッ

ブオンッ

騎士『回収できたか?』

「ダメになった」

騎士『そうか。次から置いていけよ』

「覚えてたら」

騎士『ところで、1つ目の予定ポイントに到達したようだな』

「ここから例の地点に行けばいいのか」

騎士『そうだ。では次の……』

WW『姉さん、ヤバいっす……。俺……、なんか……』

ワーキャット『だってさ、騎士』

騎士『このタイミングか』

ワーキャット『まあ、とにかくそのコに教えてあげたら?』

「?」

騎士『気をつけろ、すぐに敵の増援が来る』

「それはいったい……」

騎士『なんだか知らんが、あの助手の男にはそういうのが分かるらしい』

ワーキャット『っと、なんかもう来ちゃったみたいよ』

「……!」バッ

ゴオオオオオオオ........

「小型の飛行艇が小隊規模か」

ヒュオン、ヒュオン........

シュタッ、シュタンッ

ガカコンッ!

敵部隊「各員準備完了。目標、レジスタンスの白傭兵だ」

ワーキャット『砲撃をメインとした遊撃部隊かしら』

「1人相手に随分と大盤振る舞いだな」

WW『なんかヤバくないですか、姉さん。逃げたほうがよくないすか?』

ワーキャット『ねぇWW、あんたってさぁ便利だし、いいヤツだとは思うけど……。その性格、相変わらずよねぇ。ホント残念』

WW『俺の反応は普通ですよ!普通!性格攻撃とか酷いっすよ!』

「逃げたければ逃げてもいい。逃げれるならな」

WW『え』

ドオーンッ!

WW『わぁっ!?』

ワーキャット『そーいうこと。急いで船艇の隔壁を展開しニャ』

WW『魔法壁展開っす!パターンはKE』

ドオーン、ドオーン

「騎士、どうする。作戦プランにはあのルートは存在しないが……。あいつらも倒した方がいいか」

騎士『すまんが頼めるか』

「頼まれた」ダッ

ズアアアアアアッ!

騎士『ワーキャット、あの部隊に関しての情報はないか』

ワーキャット『ちょっと待ってねぇ……。お、あったあった。あれは汚染区域付近での対運び屋を相手にしてる王都の遊撃部隊ね』

ドオーン、ドオーン........

騎士『あの部隊に対して有効な対処法はありそうか?』

ワーキャット『そうね、大砲の砲弾で吹き飛ばしつつ、射程の内側にいる重装甲の歩兵隊が蹂躙していくスタイルみたいだから動きは遅わ。砲撃部隊の場合なら次弾砲撃の間隔は長いから、その隙をついて一気に接近して倒すのがセオリーよ』

騎士『重装甲の歩兵隊はどうする』

ドオーン........、ドオーン........

ワーキャット『無視よ!無視!その装備で倒せる相手ではニャいわ』

騎士『聞いたか、傭兵。そういう事だそうだ』

「了解した」

ダッ

ピョンッ

(さて、どうするか)

ドオーン........、ドオーン........

(要は裏を取れという話だが、)

「……遠いな」

(ざっと、500m。この距離を回り込みをするならのなら、この後の作戦に時間的な支障がでる)

ピタッ

「……」スチャッ

(こっちの方がいいか)

重装兵A「こっちだ!こっちにいるぞ!」

重装兵B「隊列を!」

「俺は面倒なことが嫌いなんだ。ストレートに行かせてもらう」ダッ!

重装兵C「き、来たぞ!?」

―――



ワーキャット「やっぱり1人じゃ厳しいのかニャ。観測できる範囲でも砲撃手減ってニャいし」

WW「まあ、普通の人間なら難しい話ですよ」

ワーキャット「……ちょっとまって」

WW「……?」

シーン........

WW「あの、姉さん?」

ピッ

ワーキャット『ちょっと。さっきから砲撃止まってるんだけど』

「歩兵は残り僅かだ。砲兵も撤退準備に入ったようだ」

ズアアアアアアッ!

重装兵I「撤退許可を!撤退許可をっ!」

ドグシャッ!

騎士『そうか。追撃もしても構わんが、深入りだけはするな』

「了解」

ワーキャット『……1人で正解ね。あんニャのに部隊をくっつけても帰ってくるのは1人しかいニャいニャんて笑えニャいわ』

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