【ミリマス】765学園物語HED √TP (839)

「そろそろ起きてヨ~」

P「んあ?」

誰かに揺さぶられ、目を覚ます

「やっと起きたネ」

P「ん…エレナ?」

エレナ「エレナだヨ~」

P「どうしたんだ?」

エレナ「どうしたんだ?じゃないヨ、もうとっくにホームルーム終わってみんな帰っちゃったヨ」

P「えっ、マジか」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1483541653

エレナ「あ、そうそう、Pが寝てる間に委員会の所属が決まったんだけド…」

P「えっ」

嫌な予感がする

P「俺、どっかの所属に?」

エレナ「ウン」

P「あー…どこ?」

エレナ「誰もやりたがらなかったからワタシがPを図書委員にスイセンしてあげたヨ~」

P「お前の仕業かよ!?」

エレナ「冗談だヨ…多分」

P「おい待て、今多分って言わなかったか」

エレナ「気にしない気にしない!それよりも図書委員は図書室に行くようにってセンセイが言ってたヨ」

P「うわー面倒くせー」

エレナ「それじゃあ頑張ってネ!」

そう言って机から降りたエレナは鞄を持って教室から出て行った

誰も居なくなった教室で俺はため息を漏らす

P「はー…」

バッくれても良いのだが後々面倒になりそうなので大人しく図書室へ向かうことにした

図書室に向かう途中、学内地図を見ながら唸っている女の子を見つけた

制服のマークから察するに1年生だろう

俺は声をかけることにした

P「どうしたんだ?」

「ひゃあっ!?」

P「うおっ」

予想以上に驚かれ、俺の方も驚いてしまう

「びびびびっくりしました!」

P「あー、悪いいきなり声をかけて」

「い、いえ、私の方こそいきなり大声を上げちゃって…」

「私、人見知りであまり声をかけられることに慣れてなくて驚いちゃいました」

P「あ、それよりも地図を見て唸ってたみたいだけど、どうかした?」

「あ、そうでした」

女の子は思い出したように手を叩く

「実は私図書室を探していて…でも高等部は今日来たばかりで場所がわからなくなったばかりか私自身が今どこにいるのかさえわからなくなって…」

P「ああ…」

要するに迷子か

「そして私は気付いたんです、実は私は今居るのは現実ではない、現実の世界に似せられて創られた異世界にいるのではないかと!」

P「…ん?」

おかしいな、話が飛んだ気がする

「知らず知らずに異世界に迷い込んだ私は一人
、現実世界と異世界を往き来しながら世界の謎を解明するために未知の領域に足を踏み入れるんです」

P「…」

…長くなりそうだ

「世界の謎を解いていくうちに私はあることに気が付きます、異世界で体験した出来事が微妙に形を変えて現実世界でも起きていると」

P「あー、そろそろ良いか?」

「え?」

P「君は図書室に行きたかったんじゃないのか?」

「あっ、そ、そうでした」

P「ちょうど俺も図書室に用事があるからさ、良かったら着いてくる?」

「え?良いんですか?」

P「ここで放っていったらまた迷子になりそうな気がするからさ」

「ま、迷子…でも否定出来ない」

「えーっと…よろしくお願いします」

P「ああ、じゃあこっちだ」

図書室へ向けと歩き出す

女の子がちゃんと着いてこられるように微妙に歩行速度を調整し、図書室へ向かった




「わあっ…ここが高等部の図書室なんですね!」

P「中等部の図書室にはない本が沢山あるらしいな」

「はい!それを知ってからここに来るのがずっと楽しみでした!」

女の子が目を輝かせながら言う

どうやらかなりの本好きのようだ

「…図書室では、お静かに」

「あ、ごめんなさい」

去年C組にいた髪の長いストールを羽織った女の子に咎められる

P「ごめん」

「あ、あの本は」

本棚に向かい背伸びをする女の子

しかし手が届かないようで、足がぷるぷるしていた

P「仕方ない、ほら」

俺は女の子の後ろに立ち、本を取る

「あ、ありがとうございます」

一旦ここまで

わっほいほい
√TPってことは太ももすりすりってありますよね?

>>15
Yes

P「この本で合ってる?」

「は、はい!ありがとうございます!」

本を大事そうに胸に抱く女の子

とても嬉しそうなその顔に思わずほっこりする

「…あの、あなたのお名前を」

女の子が何かを言いかけた時、図書委員集合の声がかかった

P「おっと、集合みたいだな」

P「ところで今何か言ってなかった?」

「い、いえ、何でも無いです」

P「そうか?」

くじ引きで図書室を担当する日を決めるようで、俺が引いたのは月曜日だった

P「月曜か…相方は誰だ?」

ホワイトボードに貼られていくクラス名

同じ月曜日に貼られていたのは1-Aクラスだった

P「1年生か」

「あ、あの!」

P「ん、さっきの子か、どうしたんだ?」

「私の担当、月曜日なんです」

P「あ、じゃあ君が」

「はい、先輩と同じ日の図書委員です」

P「そっか、じゃあよろしくな…えっと」

百合子「百合子です、七尾百合子!気軽に百合子って呼んでください!」

P「わかった、よろしく百合子」

百合子「はい!よろしくお願いします、先輩!」

こうして俺は七尾百合子と同じ図書委員になった

百合子「ああ~何から読もうかな~!」

百合子からは何となく面白そうな匂いがする

不本意でなってしまった図書委員だが、退屈せずに済みそうだ

翌日の昼休み

琴葉「Pくん、今大丈夫?」

P「ん、どうした琴葉?」

隣のクラスの友人、田中琴葉が訪ねてきた

琴葉「今日何だけど少し765プロの方を手伝って貰いたくて」

P「765プロの方を?」

琴葉「うん、実は去年の私達みたいに見学に来る子達がいるんだけど流石に律子先輩みたいに一人では回せないから…どうかな?」

P「構わないよ、それくらいなら」

琴葉「ありがとう、それじゃあ放課後、よろしくお願いします」

P「わかった」

今日は図書委員の仕事も、用事も特にないのでまっすぐプロダクションに向かう

ドアをノックすると琴葉から返事があったので俺はドアを開けた

百合子「あれ、先輩?」

P「百合子?」

琴葉「二人とも、知り合い?」

P「昨日ちょっとな」

琴葉「そうなんだ、一応紹介するわね」

琴葉「彼女は七尾百合子ちゃん、765プロの書記希望なの」

P「なるほど」

百合子「先輩も765プロの社員なんですか?」

P「俺は正社員になる前に辞めちゃったから社員じゃないよ」

琴葉「たまにお手伝いをお願いしてるの」

P「まあ、そういうことだ」

百合子「そうなんですね」

琴葉「それでPくん、早速で申し訳ないんだけど百合子ちゃんに色々と教えてあげて欲しいの」

P「了解」

琴葉「私は少し席を外さなくちゃいけないから…後はお願い」

P「任せとけ」

琴葉「ありがとう」

そう言って琴葉は書類を持って事務所を出て行った

百合子「ああ…良いなぁ、琴葉さん」

P「琴葉のこと知ってるのか?」

百合子「はい、私が中等部1年生の頃に何度か見かけて…」

百合子「いつも優しくてしっかりしていて、私、琴葉さんに憧れてるんです!」

P「ま、確かに琴葉はしっかりしてるな」

百合子「ですよね!」

P「まあ琴葉の話は置いといてだ、色々と説明していくよ」

百合子「あ、お願いします」

P「よし、じゃあまずは…」

百合子にプロダクションのルールなどを教えていると琴葉が事務所へ戻ってきた

P「おかえり、琴葉」

琴葉「ただいま、Pくん」

P「粗方教え終わったよ」

琴葉「ありがとう、Pくん」

P「気にするなよ、友達なんだから」

琴葉「…そうね」

P「?」

百合子「P先輩、教えてくれてありがとうございます!」

P「いや、百合子は飲み込みが早いから教え甲斐があったよ」

P「ま、またわからないことがあれば図書委員の時にでも聞いてくれたらいいから」

百合子「はい!」

琴葉「Pくん図書委員になったの?」

P「ん、まあ色々あってさ」

百合子「図書室に行くのに迷子になっていた私を助けてくれたんです!」

琴葉「そうなのね、やっぱりPくんは優しいのね」

P「そんなことないよ」

急に褒められると照れる

P「それよりも、他に仕事はある?」

琴葉「大丈夫、Pくんのおかげで必要なことは終わらせられたから」

P「それは良かった」

琴葉「だから今日はもう閉めようかなって」

P「そうだな、早く帰れるときには早く帰った方が良い」

琴葉「それじゃあ戸締まりをするわね」

P「ああ」

事務所前で琴葉と別れた俺と百合子は、並んで廊下を歩いていた

P「俺は帰るけど…百合子はどうする?」

百合子「私は…図書室に行こうかなと」

P「図書室に?」

百合子「はい!杏奈に沢山本があるのにまだ一冊しか読めてませんから」

P「百合子は本が好きなんだな」

百合子「はい!本は引っ込み思案な私に見たことの無い世界を見せてくれるんです」

百合子「私は本の中に広がる世界が大好きなんです」

百合子「その人がどんな風に、どんな考えでその世界を創り出したのか、顔も知らない人達が創り出す世界を読むことでその人が見えてきたりします」

百合子「なんて言えば良いのかわからないんですけど…とにかく本が大好きです!」

P「なるほどね…」

百合子は本当に本が好きなのだと伝わってくる

P「そこまで夢中になれる何かがあるのは良いことだ」

やがて靴箱までやってくる

P「それじゃあ百合子、また」

百合子「はい!」

そして百合子が背を向け、歩き出す

…しかし数歩歩いてから立ち止まり

百合子「…図書室、どこでしたっけ?」

と言った

一旦ここまで
予測変換が琴葉と杏奈ちゃんにハッキングを受けている

流石にネタ切れで死ぬから勘弁

今忙しくて停滞気味だけどゲームもちゃんと制作中だから気長に待っててくれると有難い

結局来た道を引き返し、百合子を連れて図書室に向かう

百合子「実は私道を覚えるのが苦手で…」

百合子「ゲームとかでも杏奈ちゃん…友達にもマップ理解した?ってよく言われるんです」

P「まあ、そういうこともあるよな」

P「というか百合子、ゲームやるんだな」

百合子「はい、嗜む程度ですけど」

百合子「先輩はゲームをする女の子は苦手ですか?」

P「いや?俺の幼なじみや友達は普通にゲームやるタイプだからな、苦手とかそういうのは一切ないよ」

百合子「そうですか…良かったぁ」

P「良かった?」

百合子「な、何でも無いです!」

百合子が慌てて取り繕う

まあ聞かれたくないことなのかも知れないし、追求するのはやめておこう

それから程なくして、俺達は図書室に到着した

百合子「また案内していただいてありがとうございます」

P「これから一緒にやっていくんだし、気にしないでくれ」

P「覚えられるまでは連れていくからさ」

百合子「!は、はい!お願いします!」

P「それじゃあ、また」

俺は背中を向け、歩き出そうとしたが

P「…」

百合子「先輩、どうしたんですか?」

P「気が変わった」

百合子「え?」

P「せっかくだし本でも読んで帰るとするよ」

P「…」

本を読むと決めはしたものの、基本的に本を読まない俺は何を読めば良いのか迷ってしまう

P「なあ百合子」

百合子「はい」

本の山を積み上げている百合子に話し掛ける

P「初心者におすすめの本とかって何かあるか?」

百合子「初心者におすすめ、ですか…そうですね…」

百合子「有名所では銀河鉄道の夜や吾輩は猫である、羅生門、走れメロスなどはどうでしょうか?」

P「聞いたことのあるタイトルだな」

百合子「他にも色々おすすめはありますよ、例えばこの本とか!」

そう言って次から次へと本を持ってくる百合子

P「ゆ、百合子、ストップストップ」

百合子「え?」

P「そんなに一度に持ってこられても読み切れないって」

百合子「あっ、そ、そうですよね、ごめんなさい」

P「とりあえず最初に勧められたのを読んでみるよ」

百合子「はい!その本、凄く面白いですからきっと先輩も気に入ると思います!」

椅子に腰掛け、ページを捲る

挿絵もない、純粋に文字だけの本を読むのは初めてな気がする

何ページかめくったころ、百合子がこっちをジッと見ていることに気付いた

P「どうしたんだ」

百合子「え!?な、何がですか?」

P「いや、さっきから俺のことジッと見てるからさ」

百合子「と、特に理由はないんですけど…なんというか、先輩、そうやって本を読んでるとなんだか画になってて格好いいなぁって」

P「か、格好いい?」

百合子「あっ!や、やっぱり何でも無いです!」

一旦ここまで
ちなみに百合子はPに対して一目惚れしてる

一応恵美も一目惚れに近い

P「あんまり見られてると読みにくいんだが…」

百合子「そ、そうですよね!」

そう言って本で顔を隠す百合子

僅かに見える耳は、赤くなっていた




P「…ふう」

時間はかかったがようやく一冊読み終える

思っていた以上に面白かったのでつい夢中になってしまった

外を見ると暗くなり始めている

程なく完全に日没するだろう

P「帰るとするか…」

そう考え、目の前に座っていた百合子の方に目を向けると

百合子「…」

百合子は真剣な表情で本を読んでいた

百合子の側に置いてあった大量の本の半分以上は逆側に移動していた

それは俺が一冊読む間に、百合子はそれだけの本を読んだということを意味していた

P「凄い集中力だな…」

たったの数時間でこれだけの本を読めるのは素直に尊敬出来る

しかしこのまま放っておくと間違いなく読み続けるだろう

あんまり暗くなると帰り道は危険になる

だから俺は百合子に声をかける

P「百合子、そろそろ暗くなってきたし帰った方が良いぞ」

百合子「…」

無反応

P「百合子」

肩を揺すってみるが…

百合子「…」

やはり無反応だった

P「どうしたもんか」

暗い道を女の子一人で帰す訳にもいかないし…

物は試しだ、耳元で声をかけてみるか

P「百合子~」

百合子「ひゃあっ!?」

P「うおっ」

今まで完全に集中していたはずの百合子が素っ頓狂な声を上げる

百合子「な、な、何が!?み、耳!?」

P「お、落ち着け」

予想以上の反応に正直困惑する

百合子「あ、あれ?先輩?」

P「ようやく帰ってきたか」

百合子「急に耳に息がかかって…すっごくゾクッとしました」

P「…ふむ」

百合子は耳が弱いのかも知れない

P「驚かして悪いけどもう良い時間だからそろそろ帰らないか?」

百合子「え?あ、もうこんな時間」

P「かなり集中してたみたいだしな…本、面白かったか?」

百合子「はい!今なら8時間くらい感想を語れます!」

P「よーし帰るぞー」

俺は鞄を持って立ち上がった

百合子「あ!私も帰りますから待ってください!」

なんだかんだで帰り道を百合子と歩く

百合子「家まで送って貰っちゃってすいません」

P「なに、あれだけ夢中になれるものがあるっていうのは素晴らしいことだと俺は思ってるよ」

百合子「そうですか?」

P「ああ、それだけ好きだってことだし、俺にはそこまで夢中になれるものがないから少し羨ましいかな」

百合子「な、何だか照れますね」

P「まあ実際読んでみて百合子が夢中になるのも解る気がしたかな、結構面白かったし」

百合子「ですよね!」

百合子がグイッとくる

P「うおっ」

百合子「やっぱり本を読むのは楽しいですよね!先輩がそれをわかってくれる人で良かったです!」

さらにグイグイくる百合子

顔が近いし何だか良い匂いがする気がする

P「わかった、わかったから百合子、顔が近い」

百合子「え?あ、す、すみません、つい…」

P「い、いや、気にしなくて良いよ」

百合子「でも、先輩が本の良さを解ってくれるならおすすめした甲斐がありました!」

P「そうだな、また何かおすすめがあれば教えてくれるか?」

百合子「はい、もちろん!」

そう言って楽しそうに鼻歌を歌う百合子

一気にご機嫌になったようだ

百合子「あ、もうすぐ家に着きます」

P「おっ」

いつの間にか百合子の家のすぐ近くまで来ていたようだ

百合子「ここまでで大丈夫です!」

P「ん、わかった」

ふむ……耳が弱い、と……(カキカキ)
話は変わってリクエストしたいんですが、昔グリマス本家のドラマシアターで流行った胸枕をやらせたときの皆の反応が見てみたいです

百合子に別れの挨拶をし、帰路に着こうとする、そんな時

百合子「先輩!」

P「ん?」

百合子「図書委員の仕事、楽しみにしてますね!」

そう言って手を振ってから走って行った

…すぐにバテたようで膝に手をついているのが見えた

P「図書委員の仕事…か」

俺も少し、楽しみになってきたかな

一旦ここまで
胸枕ね…考えてみる
ついでにGWの出来事募集

胸枕

・海美
海美「胸枕…私上半身はあんまり自信ないけど…一応トレーニングはしてるからそんなに変じゃないと思う!ど、どうかな…?」

・恵美
恵美「胸枕?ま~た変なこと言い出して…ほら、したげるからこっちおいでよ。…な、なんか想像以上に恥ずかしいけど…Pの頭がアタシの胸にあるのってなんか新鮮…え?スイッチ入った?ちょ、ちょっとまっ」

・琴葉
琴葉「…私は恵美みたいに大きくないから満足は出来ないかも知れないけど…Pくんが喜んでくれるなら、私は胸枕…やり遂げるわ」

・翼
翼「胸枕ですか?それって未来がよくやってる感じのあれかな…?…うん、先輩なら良いですよ!その代わり、わたしもいっぱい甘えさせて欲しいなぁ…だめぇ?」

・ジュリア
ジュリア「…は?胸枕?…あんたよくそんなの考え付くな…尊敬するよ。…そんな目で見たってやらないからな!」

・志保
志保「胸枕ですか…わかりました、兄さんが望むなら私は最高の胸枕になれるように努力します。…兄さん、私の心臓の音、聞こえますか?凄くドキドキして…ずっとこの時間が続けば良いのにと願ってしまいそうです」



とりあえず√完結した子だけ

マグロ釣りは時間かかるから夏休みだな!
年末ならカードネタでサンタと除夜の鐘突き(意味深)もあるな
GWなら不思議の国のアリス体験会とか?
あのこ結構アリスカード多いし

胸枕ありがとうございまぁぁぁぁぁぁぁぁす!!
やっぱり恵美の胸には敵わなかったよ……

GW中にいつもの面々(冬馬達)がPの家に遊びに来てる時に百合子がPの家に押し掛けて修羅場になるとかどうだろうか

週が明けた月曜日、俺と百合子は二人で廊下を歩いていた

P「そろそろ道にも慣れたか?」

百合子「え!?そ、そうですね、慣れた…と思います、自信は一ミリも無いですけど!」

P「自信がないのに自信満々とはこれ如何に」

かなり短い付き合いだが、なんとなく百合子のことがわかってきた

この子、かなり面白い

図書室に着いた俺はカウンターに入り、パソコンを起動する

図書委員としての仕事は図書室内の監視と貸し出し管理

それさえやっていれば基本的には自由にしていても構わないそうだ

百合子「今日は何を読もうかな…」

…百合子は早速職務を放棄していた

貸し出されているリストを確認していると、百合子が本を持って戻ってきた

百合子「この本もおすすめです!」

P「読んでみるよ」

リストに問題がないことを確認した俺は、百合子の持ってきた本を手に取る

そしてそれをめくろうとした時、百合子に話し掛けられた

百合子「あ、その…先輩に一つお願いが」

P「お願い?」

百合子「はい、実はこれを着けて欲しくて」

そう言って百合子が取り出したのはレンズの無い、フレームだけの伊達眼鏡だった

P「なんでまた」

百合子「お願いします!」

百合子が手を合わせて懇願してくる

正直意味不明だが…害もなさそうだし別に良いか

P「これでどうだ?」

フレームを耳にかける

百合子「はう!」

すると百合子が悶えた

P「だ、大丈夫か?」

プルプルと震えだした百合子に声をかける

百合子「だ、大丈夫です…!」

顔が真っ赤になっているが本当に大丈夫なのだろうか

百合子「…ふう、駄目よ百合子、平常心平常心…」

なにやらぶつぶつと呟いている百合子を放っておくことにした俺は、本を手に取りそのまま読書に移行したのだった

百合子「そう言えば」

P「ん?」

読書をしていると百合子が声をかけてきた

百合子「先輩はゴールデンウィーク、どうするんですか?」

P「ゴールデンウィークか…どうしようかな」

正直全くのノープランだ

百合子「あ、あの…もし予定がないなら」

P「無いなら?」

百合子「私と一緒にイベントに行きませんか?」

P「イベント?」

百合子「はい、世界中の有名書籍の世界を再現、それを体験出来るイベントがあるんです」

P「へえ…」

中々に興味深い

百合子「ただ参加するには二人以上じゃないと駄目みたいで、それなら先輩と一緒にって思ったんですけど…」

P「確かに、中々面白そうだな」

百合子「ですよね!」

P「行っても良いけど、条件がある」

百合子「条件?」

P「ちょうど今シャーロックホームズを読んでて思いついたんだけど」

P「いくつかヒントを出すからそれを元に俺の家を発見して辿り着くこと」

P「百合子が見事俺の家を発見出来たら一緒に行こう」

百合子「謎解きですね!わかりました!」

百合子「ふっふっふっ、数々の探偵小説を読んできた私にとって謎解きは朝飯前です!」

P「よーし、じゃあ地図を出すから」

百合子「ごめんなさい」

百合子「う、うう…地図関係の謎ばっかり…」

P「まあ百合子が地図が苦手なのは聞いてるけど、かなり易しい問題にしてるから頑張ってみてくれ」

百合子「は、はい…」

P「っと、そんなことをしてるうちにもう時間か」

時計を見ると閉館まで後五分ほどだ

P「帰る準備しようか」

百合子「はい」

P「じゃあ謎解き、期待してるぞー」

そう言って手を振りながら先輩が歩いていく

今日も家まで送って貰い、今はこうやって先輩の背中を見送っている

普段ならこのまま家に入るところだけど…

百合子「…よし!」

私は木陰に身を隠し、先輩から隠れた

正直先輩の出した謎が一ミリもわからない

ならどうするか

先輩はシャーロックホームズを読んでたから出題してきた、ならば

探偵らしく、尾行すれば簡単に謎が解けるはず!

百合子「ふっふっふっ、これこそ発想の逆転!」

先輩と一緒に白雪姫や眠れる森の美女の世界を体験するためにも、絶対に辿り着かないと!

そして私は尾行を開始した





適度な距離を取りながら尾行を続ける

先輩には気付かれていないはずだ

…でもこうやって後ろから見ていてもやっぱり格好いいなぁ

初めて見たときからわかった

この人が私の運命の人だと

きっと前世か何かで因縁があって再び巡り会うことになったとか、そんな感じ

とにかく衝撃的だった

私の直感を確かめるためにも、今はこの気持ちの正体を探りたい

そんな時、先輩が住宅街の角を曲がった

百合子「あっ、見失っちゃう!」

私は急いで角を曲がったが…

百合子「あ、あれ?」

道路に先輩の姿はなかった

百合子「先輩が消えた…?はっ!まさか先輩は神隠しにあったんじゃ…!」

P「神隠しじゃねーよ」

百合子「ひゃあっ!?」

隠れていた電柱の陰から出て、百合子の頭に手刀をかます

百合子「せ、先輩!?一体どこから」

P「そこの電柱」

俺は隠れていた電柱を指差した

P「全く、尾行が下手すぎるぞ?」

百合子「え?気付いてたんですか?」

P「まさかあんなバレバレな尾行で気付いてないと思ってたのか?」

百合子「でも先輩、一度も後ろを振り向かなかったのに」

P「アレだよ、アレ」

そう言って俺はカーブミラーを指差す

P「アレにモロに映ってた」

百合子「そ、そんな」

百合子がガクッと膝をついた

P「ただまあ、尾行っていうアイディアは良かったな」

百合子「バレバレでしたけどね…」

P「そのアイディアに免じて、一つ大きなヒントを出そう」

P「俺の家は、ここから近い」

百合子「ど、どのくらいですか?」

P「そうだな…半径1kmくらいかな」

百合子「半径1km!かなり絞り込めますね!」

P「だろ?」

P「謎と組み合わせたら簡単に見付かるからさ、期待してるぞ」

百合子「はい!必ず先輩の家、見つけて見せます!」

立ち直った百合子は意気揚々と引き上げていった

P「…大人しく尾行させても良かったんだがな」

ただそれじゃあつまらないしな

P「ま、辿り着けなくてもイベントには付き合ってやるか」

そう考え、俺は帰路に着いた

…結局百合子は謎が解けなかった

一旦ここまで

ゴールデンウィークに入ったが百合子からのコンタクトはなかった

そんなに難しい問題じゃなかった筈なんだけどな

まあ解けなかったものは仕方ない、明日か明後日にでもこっちから誘ってやろう

P「よし、今日は」

海美「遊ぼっ!」

P「ごふっ」

突然背中に衝撃が走る

視線を向けると窓が開いていた

P「…なあ海美」

海美「何?」

俺の背中に馬乗りになっている幼なじみ、高坂海美に声をかける

P「窓、鍵をかけてたはず何だけどどうやって開けた?」

海美「えっとね!めぐみーにピッキング教えてもったからそれで開けた!」

うちの窓は内側にしか鍵がない筈なんだがどうやってピッキングしたんだ

もう一度窓の方を見る

…鍵が力任せに破壊されていた

海美「机に鍵かけたら鍵なくしちゃった」

恵美「じゃあピッキングのやり方教えたげるからそれで開けなよ」

海美「めぐみーありがと!」

なお机の鍵も破壊した模様

P「はあ…何でも良いけど降りろ」

海美「うん!」

海美が背中から降りたので体の自由が効くようになった

P「全く、お前も3年生になったんだからそろそろ落ち着きをだな」

海美「あ!昨日来たときも思ったけどこの漫画新刊出てたんだね!読んで良い?」

P「聞けよ…ていうか昨日?」

昨日は海美とは会ってない筈なんだが…まあ良いか

何故か五人分用意されていた朝食を食べた後、冬馬や恵美に電話をかける

しばらくしてから恵美達が家に遊びに来る

恵美「いやー、休みって案外暇だねー」

冬馬「遊びに誘っても用事がある奴の方が多いからな」

P「それさ」

翔太「冬馬くんがぼっちなだけなんじゃない?」

冬馬「誰がぼっちだ!」

海美「まあまあ、ぼっちでも良いじゃんあまとう」

冬馬「あまとう言うな!」

志保「みなさん、お茶です」

志保が人数分のお茶を持ってくる

海美「しほりんありがと!」

冬馬「悪いな」

翔太「いただきます」

恵美「ありがと」

お茶を配り終えた志保はそのまま流れるように俺の隣に座った

その直後、チャイムが鳴る

志保「私が」

P「いや、このみ姉さんが行くから大丈夫だ」

このみ姉さんが来客対応をしている声が聞こえてくる

…しかし何だか聞いたことのある声がするな

そう思った直後

このみ「P、百合子ちゃんが来たけど」

P「へ?」

予想すらしなかった名前が聞こえ、思わず変な声が出てしまった

百合子「おはようございます先輩!」

P「ゆ、百合子!?」

百合子が何故ここに?謎が解けたのか?自力で謎を!?

百合子「ふっふっふっ、あの程度の謎、私には造作もないものでした」

P「いや、2週間近く悩んでただろ」

百合子「…ヒューヒュー」

百合子が吹けてない口笛で誤魔化す

恵美「…誰?」

P「七尾百合子、図書委員で俺と同じ日に司書をやってるんだよ」

恵美「ふーん…またPの周りに女の子が…」

P「なんて?」

恵美「何でも無い」

海美「百合子…じゃあゆりりんだね!よろしく、ゆりりん!」

百合子「はい!よろしくお願いします!」

P「けど実際どうやって謎を解いたんだ?」

百合子「実はですね、昨日プロダクションで仕事をしていたら閃いたんです!」

百合子「琴葉さんは私とP先輩が同じ日に司書をしているのを知っていますから、先輩に忘れ物を届けるのを理由に場所を教えて貰えばいいと!」

P「そう来たか…」

百合子「私の目論見通り琴葉さんは私に先輩の家を教えてくれたので今日来てみたんです!」

P「まあ確かに誰かに教えて貰うのは無しとは言ってないし誰かから聞き出すのは探偵っぽいから合格だな」

百合子「やった!」

一旦ここまで
めぐみーは病んでないよ、危機感抱いてるだけで

一応HEDは無印時代の各√を経由しつつも誰とも深い仲にならなかった世界
だから翼、ジュリアとも知り合いだしプロダクションに所属してた過去がある

百合子「それで先輩、明日は空いてますか?」

P「明日?ああ、空いてるよ」

百合子「それなら明日、約束通りワールドブックス!に行きませんか?」

P「ああ、良いぞ」

恵美「ワールドブックス?」

志保「ゴールデンウィーク中にやっているイベントですね」

志保「世界中の有名な童話や絵本の世界を再現していて、その登場人物として物語を追体験出来るイベントです」

恵美「へー…志保、詳しいね」

志保「えっ、そ、それは…その…少し興味があったので…猫の恩返しとか…し、白雪姫とか」

海美「しほりんは昔から絵本が大好きだもんね!」

志保「う、海美さん!」

百合子「私は白雪姫とか、眠れる森の美女に興味があります!」

百合子「王子様のキスで目を覚ますのは憧れですから!」

恵美「…」ピクッ

志保「…」

海美「あ、私も私も!」

百合子の発言を聞いた途端空気が変わった気がする

なんというか、重い

冬馬「うっ、い、胃が…」

翔太「僕は無関係僕は無関係僕は無関係僕は無関係…」

冬馬は腹を押さえ、翔太は頭を抱えて震えていた

志保がスマホを取り出して何かを検索している

チラッと見えた検索ワードは

毒林檎 作り方

だった

…見なかったことにしよう

百合子「他にも原本が展示されてたりしているそうですから今から楽しみで楽しみで」

この空気に気付いていないのか暢気に話を続ける百合子

視界の端に今にも胃に穴が空きそうな顔をしている冬馬と悟りを開いたような表情の翔太が見えた

理由はわからないが百合子が来てからこの空気になったのでとりあえず百合子を帰そう

P「ま、まあ百合子、俺も今から楽しみにしてるよ」

百合子「はい!あ、あんまり長居しても迷惑でしょうし私はそろそろ帰りますね」

百合子を玄関まで見送った後、再びリビングに戻る

先程の空気はどこへやら、百合子が来る前の雰囲気に戻っていた

…うーん、百合子が何かやらかした訳ではなさそうなんだけど

冬馬「…なあ、P」

P「ん?」

息も絶え絶えな冬馬が話し掛けてくる

冬馬「誰でも良いからよ…一人選んでくれ」

P「は?何の話だ?」

冬馬「ホント、頼むぞ…!」

そう言い残し、冬馬は息絶えた

海美「ね、ね、明日私も行って良い?」

P「俺は別に構わないが、確か入場には事前販売のチケットがいるぞ?」

海美「それ、いつまで?」

P「三日前」

海美「えー…」

チケットが買えるのは当たり前!というキャッチフレーズのサイトでご用意されたものだと百合子は言っていた

恵美「…ま、Pが行くって決めたなら仕方ないか」

P「何の話だ?」

恵美「なーんでもない、それよりゲームしようよ」

そう言ってゲーム機を取り出す恵美

冬馬「へ、叩きのめしてやるぜ」

いつの間にか復活した冬馬もゲームを起動していた

志保「…」

志保も遠慮がちにゲーム機を取り出す

P「…よーし、遊ぶか!」

この日は冬馬達と沢山遊んだ

一旦ここまで

翌日

百合子が学園前を待ち合わせ場所に指定したので、校門前にもたれかかる

待ち合わせの時間まで後30分もあるので、どうやって時間を潰そうか考えていると

百合子「先輩!早いですね!」

すぐに百合子がやってきた

P「まあ家にいても暇だからな」

百合子「私は楽しみすぎて早く来ちゃいました!」

P「そんなに楽しみだったのか」

百合子「はい!だって先輩とデー…や、やっぱり何でも無いです!」

P「そうか?」

百合子が何かを言いかけたようだが、取り消した以上は追求するべきではないだろう

百合子「ふー、危ない危ない…」

P「よし、それじゃあ行くとするか」

百合子「はい!」

行く途中に色々と調べてみたが、今回のイベント、ワールドブックスは最新の技術により質量を持った立体映像が使われているそうだ

だからよりリアルに本の世界を体験出来るとのこと

P「質量を持った立体映像か…」

百合子「映像を投影するだけでそこが本の世界へ早変わりするそうです」

P「色んな意味で楽しみだ」

イベントホールに到着すると、既に結構な人数が並んでいた

P「開場まであとちょっとだな」

百合子「はい!どれから回ろうかな~」

百合子がパンフレットを見ながら楽しそうに言う

パンフレットには俺でも知っているくらいに有名な作品や、見たことも聞いたこともないような作品もあり、確かにどれから回ろうかな悩んでしまう

百合子「あ、でも出来れば先輩が知っているお話しの方が良いですよね?」

P「ん?あー、まあそうかな」

百合子「わかりました!では有名なお話しから回りましょう!」

そう言ってパンフレットを閉じる百合子

P「そうだな、百合子に任せるよ」

百合子「はい!任せてください!」

そうこうしているうちに列が進み出した

P「何から行く?」

百合子「まずはファンタジーの世界へ行きましょう!」

一旦ここまで

P「…」

百合子「ん…くっ…!」

百合子に先導され、俺達はファンタジー小説の世界を体験する

世界的に有名な額に雷型の傷のある魔法使いの物語や、指輪を巡る物語と言った世界を楽しんだ

そして今

百合子「せ、先輩」

P「どうした」

百合子「剣…重くて持てません」

俺達は百合子の書いた物語の中にいた

このイベント、なんと自分が持ち込んだ本も再現してくれるらしく、漫画やライトノベル、官能小説を持ち込む人も居るそうだ

勿論その事を知っていた百合子は自作の小説を持ってきた

自分の世界が形になったのがよっぽど嬉しかったのか、世界が再現された時は抱き付いてきたくらいだ

しかし今は草原に体育座りをしていた

百合子「うう…」

結局剣が持てなかったようだ

他の著作の場合、主人公や登場人物にはきちんとした設定がある

しかし百合子は設定を特に考えずに書いたようで、主人公のスペックは百合子の…つまり自分自身のものになっているようだ

当然高等部1年の女の子に鉄の剣など持てるはずも無く、今は妖精に慰められているところだ

P「まあこういう時もあるよな」

百合子「先輩と一緒に冒険したかったのに…」

P「このイベント、来年もやるんだろ?」

百合子「え?あ、はい、やるみたいです」

P「なら来年さ、また来れば良い」

百合子「来年…一緒に来てくれるんですか?」

P「ああ、俺も百合子の書いた物語、気になるからさ」

百合子「…」

P「百合子?」

百合子の顔が赤くなっていた

百合子「あ、な、何でも無いです!来年までにちゃんと仕上げてきますね!」

P「ああ、楽しみにしてる」

ファンタジーの世界を堪能した俺達は、童話の世界へ移動する

しかしちょうどその時、童話の世界から団体が出て来てその波に飲まれかけてしまう

P「おっと」

今までの経験から咄嗟に百合子の手を掴む

百合子「!」

P「これならはぐれずに済むかな」

人の波に逆らって進む俺と百合子

百合子ははぐれまいと俺の腕に抱き付いて身を縮めていた

その後、童話の世界で沢山の話を体験した後、俺達は最後の話を見ていた

百合子「…」

P「百合子?」

もう間もなく出口といったところで百合子が歩みを止める

百合子「ここから出ちゃったら、もう現実に戻らないと駄目なんですよね…」

どうやら百合子はこの時間を終わらせたくないらしい

P「ちょっと違うな」

百合子「え?」

P「今俺達がいるのはあくまでも現実の延長でしかない」

P「この世界は機械が作った物だし、質量があるとは言えこの樹だって偽物だ」

そういって俺は樹に触れる

P「だけどな百合子、そうじゃなきゃ駄目なんだ」

P「現実の延長にあるからこそ、触れられる、体験できる」

P「現実だからこそ楽しめた」

P「だからさ、今思うべきなのは現実に戻る悲しみじゃなくて」

P「楽しかった、これだけで十分だと思うんだよ」

百合子「先輩…」

P「なんて、ちょっと格好つけすぎたかな」

百合子「そんなことないです!」

百合子「そうですよね、先輩は現実にしかいませんもんね」

百合子「今日は私のわがままに付き合っていただきありがとうございました」

P「いや、俺も楽しかったよ」

百合子「私、今日の琴は忘れません!」

P「そっか」

百合子「また来年、一緒に来たいです」

P「俺も、百合子の書いた話をまだ体験してないからな」

P「来年、楽しみにしてるぞ」

百合子「はい!」

P「それじゃあ、帰るとするか」

百合子「はい!」

こうして俺達はワールドブックスを後にした

一旦ここまで
夏休みの出来事募集
後765学園物語、今日で1歳になりました

球技大会の近付いてきたある月曜日の放課後

委員の仕事を終わらせた俺達はいつものように本を読んでいた

百合子「むむむ…」

P「さっきから何を唸ってるんだ?」

今日の百合子は珍しく小説ではなく、野球のルールブックを読んでいた

P「あれ、今日は小説じゃないのか?」

百合子「はい…実は野球のルールを覚える必要があって…」

P「もしかして球技大会の?」

百合子「はい、同じクラスの永吉昴さんが種目決めの時に私の名前を野球のところに書いちゃって」

P「反対はしなかったのか?」

百合子「じ、実はその時本を読んでて、気が付いた時には…」

P「ああ…」

本を読んでいた訳ではないが似たような経緯で図書委員になったので簡単に想像出来た

百合子「でも私、野球のことは全然わからないのでせめてルールだけでもと思ったんです」

P「なるほどな」

百合子「うう…あんな小さなボールをグローブでキャッチなんて絶対無理…」

ルールブックを読みながら情けない声を上げる百合子が少し可哀想になった俺は、百合子にある提案をすることにした

P「なあ百合子」

百合子「?」

P「球技大会までまだ時間あるし、俺とキャッチボールでもするか?」

百合子「え?」

P「キャッチボールなら危なくないし、練習になるだろ?」

百合子「良いんですか?」

P「ああ、どうせ放課後は暇してるしな」

百合子「あ、ありがとうございます!」

P「いつから始める?」

百合子「今から!今からお願いします!」

P「急だな…まあ良いけど」

百合子「グラウンドに行きましょう!」

百合子は貸し出しカードに名前を書くと、ルールブックを持って走って行った

P「元気だな…」

俺は誰も居ない図書室の鍵をかけ、百合子の後を追った

百合子「ボールとグローブ、借りてきました!」

P「早いな」

百合子「昴さんに事情を話したらすぐに貸してくれて」

P「なるほど」

百合子「それじゃあ早速始めましょう!」

百合子からグローブを受け止り、手にはめる

中々に手に馴染む

百合子「さあ、いつでもどうぞ!」

P「よーし、まずは軽く投げるぞ」

百合子「はい!」

久しぶりにボールを投げる

ボールは思ったよりも緩やかに、しかし確実に百合子の方へ飛んでいった

百合子「!」

そして百合子は

しゃがんでボールを回避した

一旦ここまで

俺の投げたボールは百合子の頭を通り過ぎ、何度か跳ねて転がった後、静止した

地面の上にある誰にも拾って貰えなかったボールは、とてももの悲しく見えた

P「…百合子」

百合子「ち、違うんです!これは、そう!体の防衛本能が働いて!」

百合子が慌てて弁明する

百合子「うう…防衛本能が働く競技なんて危険ですよ…」

その後も何度かボールを投げたのだが、百合子は悉く回避する

P「なあ百合子」

百合子「は、はい」

P「出場競技、今からドッジボールに変えて貰った方が良いんじゃないか?」

これだけ見事に回避できるなら案外向いてそうだ

百合子「ドッジボールは今回無くて…」

P「そうか、それは残念だな」

どうしたもんかと考えていると

海美「おーい!」

向こうから海美が走ってきた

P「海美、どうしたんだ?」

海美「部活中にキャッチボールしてるのが見えたから、私もやりたいなって!」

P「なるほど」

海美「ゆりりん、ちょっとグローブ貸して?」

百合子「あ、はい、どうぞ」

P「おいおい、今百合子を球技大会に向けてだな」

言いきる前に海美は既にグローブをはめていた

海美「さあP!遠慮はいらないよ!」

P「全く、相変わらず話を聞かない奴だ」

P「いくぞ」

海美の胸の中心へ、ボールを投げた

海美「ナイスボール!」

難なくボールをキャッチした海美がボールを投げ返してくる

P「ほら」

それをキャッチした俺は、再び海美に投げ返した

しばらくキャッチボールを繰り返す

海美「ねえゆりりん」

キャッチボールの途中、海美が突然百合子に声をかける

百合子「は、はい、なんでしょう」

海美「Pさ、どこに投げてると思う?」

百合子「どこに…?それは…海美先輩のグローブでは?」

海美「そうだね、Pはグローブに投げてくれてるね」

海美「じゃあさ、これがゆりりんだったらPはどこに投げてくると思う?」

百合子「それは私のグローブに…あっ!」

海美「そう言うこと!」

ボールを投げ返した海美がグローブを外す

海美「さ、ゆりりん、やってみて」

百合子が再びグローブをはめ、海美がやっていたように構える

海美「そう、グローブを構えたら、ちゃんとPを見て」

海美が百合子の後ろ肩を抑える

百合子「あ、あの、海美先輩、動けないんですけど」

海美「大丈夫」

P「よし、いくぞ」

百合子「お、お手柔らかに!マシュマロくらいの柔らかさでお願いします!」

P「そら!」

百合子のグローブに向けて、ボールを投げた

俺の投げたボールは、小気味と良い音を立てて百合子のグローブに収まった

百合子「あっ…」

百合子は自分のグローブに収まったボールを見た後

百合子「取れました!私、取れました!」

ぴょんぴょん跳ねながら大喜びしていた

海美「良かったね、ゆりりん!」

百合子「はい!海美先輩とP先輩のおかげです!」

P「それじゃあもう1球、いくぞ」

百合子「はい!」

再び百合子のグローブへボールを投げる

百合子「!」

百合子は2球目のボールを、今度は目を閉じずにキャッチした

P「良いぞ、ちゃんとキャッチ出来るじゃないか」

海美「ゆりりん、次は私とやろうよ!」

百合子「はい!」

その後、交代しながら完全下校までキャッチボールをした

一旦ここまで

それからも百合子とキャッチボールを続け、とうとう球技大会の当日を迎える

自分の競技を適当にこなした俺は、百合子の野球を見に行くことにした

海美「あ!Pこっちこっち!」

先に見に来ていたらしい海美が俺に手招きする

P「海美、来てたのか」

海美「うん、ゆりりんの練習の成果を見に」

P「そっか」

海美はあれから毎回手伝ってくれたので結果が気になるのは当然か

アナウンスが流れ、準備が始まる

海美「いよいよだね」

P「ああ」

準備が終わり、試合が始まった

百合子のクラスは後攻のようで、百合子はライトにいるようだ

しかし百合子の方へボールが飛んでいくことはなかった

ピッチャーの子が相手を完封した

ファールすら出ない、文字通りストレートに3タテしたのだ

P「あの子凄いな」

俺はピッチャーの子を見ながら呟く

海美「すばるんは今の野球部のエースだからね!」

P「凄いな」

1年生でエースを張れるとは、相当なものだ

攻守が交代し、百合子達が攻撃する番だ

P「おっ」

最初に打席立ったのは、意外なことに百合子だった

P「百合子が第一打者だな」

海美「ゆりりーん!頑張れー!」

百合子はヘルメットの位置を正し、ピッチャーを見据えた後

百合子「…」

バットを斜めに突きだした

P「あ、あれは…!」

開幕から予告ホームランだと…!

百合子がバットを構える

P「ほう…」

バッティングの練習は一切していないが、一応形にはなっていた

…物凄いへっぴり腰だが

相手のピッチャーが振りかぶってボールを投げる

何の変哲も無いストレートだ

百合子「…」

しかし百合子はこれを見送る

第二球が投げられる

しかし百合子はこれもスルーした

P「もうツーストライクだぞ…どうするんだ?」

海美「きっと何かあるのかも」

そして第三球が投げられた

百合子「!」

三球目、とうとう百合子が動いた

片足を浮かせて地面を踏み込み、バットを思い切り振り抜く

そしてバットは

宙を切った

百合子は何処かやり遂げた顔で、ベンチに戻っていった

P「…」

海美「…」

スタジアム全体に漂う脱力感に、俺も海美もなんとも言えない気持ちになるのだった






試合は進み、最終回の表

点数は1対0で百合子のクラスが勝っている

ピッチャーの子が今まで頑張っていたからだろう

しかしここで走打を許してしまい、ツーアウトではあるものの下手をすれば点を取られてしまう状況になってしまった

連続登板で疲れていたのか、ピッチャーの子が温い球を投げてしまう

ここぞとばかりに打たれてしまい、ライトの…百合子の方へボールが飛んでいった

昴「しまった、百合子!」

ピッチャーの子が叫ぶ

百合子はボールを見据えながら走っていた

P「百合子!」

海美「ゆりりん!」

しかしぎりぎり距離が足りない

そんな時、百合子が前に飛んだ

勢い余って前転する百合子

仰向けに寝転がるがすぐに体を起こし…

百合子「取りました!」

グローブに収まったボールを掲げた

試合終了、百合子達の勝ちだ

クラスメイトにもみくちゃにされる百合子

特にピッチャーの子は大喜びで、百合子と肩を組んではしゃいでいた

休憩に入ったころ、百合子に会いに行く

P「百合子、お疲れさま」

海美「ゆりりん!頑張ったね!」

百合子「P先輩!海美さん!ありがとうございます!」

百合子に水を渡す

百合子「…ボールを追い掛けてるとき、お二人が視界に入ったんです」

百合子「そうしたら絶対取らなきゃって思って」

百合子「膝とか肘は擦りむいちゃいましたけど、取れた嬉しさの方が大きくて」

P「ん、怪我してるのか?ちょっと見せてみろ」

百合子「え?だ、大丈夫です!道具もありませんしそんな」

P「道具なら大丈夫だ」

そういって俺はズボンのポケットから救急箱を取り出し、治療した

百合子「あ、ありがとうございます」

P「気にするな、頑張ったんだからこれくらいはな」

百合子「そ、その、先輩」

P「ん?」

百合子「もし私達のクラスが優勝出来たら…」

P「出来たら?」

百合子「そ、その、一つご褒美が欲しいです!」

P「ご褒美か…そうだな、俺に出来る範囲でなら何か考えておくよ」

百合子「やった!じゃあ私、もっと頑張ります!」

P「怪我だけはしないようにな」

海美「頑張ってね、ゆりりん!応援してるから!」

百合子「はい!」

その後、約束通り百合子達は優勝を果たした

百合子「すみません、手伝ってもらっちゃって」

P「俺も倉庫に用事があったから良いよ」

球技大会の後片付けを百合子と一緒に行う

2年のB組は既に片付け終わったようで、倉庫にはいなかった

P「しかし相変わらず埃っぽいな」

百合子「運動用具がたくさんありますから仕方ないです」

そう言いながら百合子がグローブを片付ける

P「っと、その辺り足下散らかり気味だから気を付けろよ」

百合子「はい…わったった!」

言った側から何かに足を引っ掛けたようだ

P「百合子、大丈夫か…!?」

百合子「ケホッ、ケホッ…うう、転んじゃいました…」

P「」

転んだ影響か百合子は形の良いお尻をこちらに向けて突きだしており、体操服の裾は大きく捲れて白い背中が見えていた

割と目に毒な光景だ

百合子「?」

顔が赤くなった俺を見て百合子が不思議そうな顔をする

そして自分の体を見て

百合子「!」

顔を赤くして裾を引っ張った

一旦ここまで

安心しなされ、既にシナリオに組み込む用意は出来ておる

百合子「も、もう!先輩のえっち!」

P「いやいや…転んだ百合子が悪いかなーって」

P「まあいいや、ほら、立てるか?」

百合子「あ、ありがとうございます」

P「ちゃっちゃと終わらせて帰ろう」

百合子「はい」

片付けを再開し、作業を進める

P「…」

チラッと百合子の方を見る

さっきの光景を思い出し、また少し顔が赤くなりそうだった

765学園では毎年一回、近所の砂浜を貸し切って学園全体での海水浴を実施している

この時持ってくる水着は特に指定されておらず、学園指定のセーラー水着でも自前の水着でも構わない

もっとも毎年何人かは過激な水着を持ってくる人がいて、問題になっているそうだ

例えば莉緒さんとか




P「うーん、久しぶりの海だ」

照り付ける太陽の眩しさに目を細める

雲一つ無い快晴に、柄にもなくテンションが上がる

…だというのに

P「なあ百合子」

百合子「はい」

P「なんで本を読んでるんだ?」

百合子「だってパラソルから出ると暑いですし…」

杏奈「…」コクコク

そんなことを宣う百合子の隣で、百合子の友達の望月杏奈ちゃんが同意するように頭を振る

杏奈「杏奈は…クーラードリンク忘れたから…スリップダメージで…死にます」

百合子「私は実は吸血鬼の末裔で強い日差しを受けると灰になってしまうってことになりませんかね!?」

P「ならない」

ま、楽しみ方は人それぞれか

俺は俺で楽しもう

百合子「あれ、先輩どこか行くんですか?」

P「ちょっと泳ぎにな」

軽く準備運動をして体を慣らす

P「百合子も来るか?」

百合子「え?うーん…」

杏奈「…百合子さん…荷物、杏奈が…見てるから…行ってきて良い、よ?」

百合子「杏奈ちゃん…うん、ありがとう、じゃあ行ってくるね」

杏奈「いってらっしゃい…」

P「ちゃんと準備運動はしたか?」

百合子「大丈夫です!そんなに深いところには行きませんから!」

P「そういう問題じゃ…まあ良いか」

一応何かあった時のために百合子の事は見ておこう

P「…」

百合子「あ、あの」

P「ん?」

百合子「そんなに見られると恥ずかしいです…」

P「あ、すまん」

話題を逸らすために海に入る

P「おっ、中々に良い温度だ」

そのまま腰が浸かる辺りまで歩いて行く

海岸の方を見ると百合子が恐る恐る海を足で突いていた

百合子「つ、冷たい…!」

P「そうか?」

ギュッと目を瞑ってビクビクしながら海美に入ってくる百合子

百合子「あっ、でもこの辺りまで来ると気持ちいいかも」

そういって目を開いた

P「百合子は泳げるのか?」

百合子「あんまり得意ではないですけど…泳げなくはないです」

P「そっか、じゃあ適当に泳ぐくらいで良いかな」

百合子「はい」

肩まで沈み、平泳ぎをする

百合子は犬かきだった

ある程度泳いだ後、少し休憩を挟む

百合子は沖の方を見ていた

P「何か見えるか?」

百合子「はい、あれは…船かな?」

そう言いながら百合子が沖の方へ進んでいく

P「おい、危ないぞ」

百合子「大丈夫です!ちゃんと足着いてますから」

P「なら良いけど」

百合子「実はあの船、豪華客船だったりするのかな?」

百合子が手を額に当て、辺りを見渡し始めた

その直後

百合子「えっ」

少し高い波が百合子を飲み込んだ

百合子「がぼっ」

波に飲まれて大量に海水を飲んでしまった

そのまま引く波に沖の方へ流されてしまう

百合子「けほっ、けほっ」

海面に顔を出した私は、口の中に残った海水を吐き出した

波に飲まれた時に耳や鼻にも海水が入ったようで、少しふらふらする

顔を拭って海岸の方へ戻ろうとしたとき

百合子「っ!?あ、足が」

右の足がピンと伸び、激痛が走る

こんな時に足をつるなんて…!?

百合子「た、助け…!」

水の中で藻掻くがどんどん体は沈んでいく

このままじゃ死んじゃう…!

必死で沈みきらないように息を吸うが顔は海に沈みつつあり、空気の代わりに海水が口に入ってくる

それが更に沈むのを加速させる

酸素が不足し、朦朧とする意識の中、最後に覚えているのは

P「百合子!」

先輩が私を呼ぶ声だった

百合子「う…んん…」

P「!目を覚ましたのか!」

百合子「あれ…私は…」

P「無事で良かった!」

いきなり先輩に抱き締めららららら

P「目の前で溺れたからともかく目を離してたらどうなってたかと思うと…ああ、良かった!」

百合子「あわわわわわ」

海美「P、ゆりりんがパニックになってるよ」

P「あ、す、すまん」

百合子「え、えっと、一体何がどうなって?」

海美「Pがゆりりんを海から引き上げて、AEDが来るまでの間人工呼吸と心臓マッサージをやってたの」

P「受けてて良かった上級救命講習」

百合子「人工呼吸って…!?!?!?」

一気に頬が熱くなる

人工呼吸したということは私と先輩がキキキキスを!?!?

P「ど、どうした百合子!?顔が真っ赤だぞ!?」

百合子「そ、そ、その、人工呼吸したってことは…」

P「あ、あー…緊急事態だったから、その…ごめん」

百合子「い、いえ、別に嫌では無くてその…急で驚いたと言いますか、その…」

百合子「先輩は…嫌じゃなかったですか?」

P「お、俺は別に…」

百合子「そ、そうですか…」

そっか、先輩も嫌じゃなかったんだ

なんだか少し嬉しくなる

それに…

さっきも抱き締めてくれたし、溺れたのは苦しかったけど

結果的には役得だったかな?

P「とりあえず念の為に救急車を呼んであるから、病院でちゃんと検査してくるんだぞ」

百合子「はい」

先輩は息を吐いて立ち上がった

百合子「あの、先輩」

P「ん?」

百合子「助けてくれて、本当にありがとうございました」

P「当然のことだから気にするなって」

百合子が救急車に乗ったのを確認した後、俺は砂浜に突っ伏した

P「ああああ~!」

海美「どうしたの急に」

P「いくら緊急事態だったとはいえ意識のない女の子の唇を奪ってしまった…他に方法があったかも知れないのに…」

海美「でもあの場に上級救命講習受けたことあるのPしかいなかったから仕方ないよ」

P「意識がない間にファーストキスを奪われるのはとても悲しいことだって冬馬が言ってたんだよ…」

海美「あー、あまとうそういうの詳しいもんね」

P「あー、とにかく今度何かお詫びしないとな…」

海美「うーん、ゆりりんはむしろ喜んでそうだけど」

海美「それよりも、ファーストキスを経験したならもう抵抗ないよね?私とちゅーしよ!」

P「馬鹿だな、俺達はそんな関係じゃないだろ」

海美にデコピンをする

海美「痛い」

P「とりあえず戻ろう」

海美「…馬鹿」

P「何か言った?」

海美「なんでもない、いこ?」

こうして一波乱あった海水浴は終わりを告げた

一旦ここまで

海水浴から数日後、学園は夏休みに突入した

普段なら冬馬や海美辺りと遊びに行くのだが今年は図書委員の仕事があるのであまり遊べそうにない

そして俺は今、絶賛図書委員の仕事中なのだが…

P「…」

百合子「…」チラッチラッ

P「…」ペラッ

百合子「…」チラッチラッチラッ

海での一件以来百合子がしょっちゅうチラ見してくるようになった

俺が視線を向けると照れているのか顔を隠してしまうのだが

今の百合子はまるでテレサのようだ

P「…なあ、百合子」

声をかけた瞬間、やはりさっと本で顔を隠してしまう

もっとも本で顔は隠せても耳までは隠しきれておらず、見えている耳は真っ赤だった

そんなに意識されるとこっちも恥ずかしくなってくる

あの時の百合子の身体の柔らかさや唇の感触は…

P「…」

頭を振って邪念を追い出す

あれは救命活動、それ以上でもそれ以下でもない

とにもかくにもこのままではコミュニケーションにも支障が出るのは間違いない

早めにこの状況を改善しておこう

百合子が顔を隠している逆さまになった本を取り上げる

百合子「あっ!」

P「逆さまじゃ読めないだろうに」

百合子「そ、それはそうですけど」

P「…やっぱり顔は合わせ辛いか?」

百合子「そういうわけではないんですけど…先輩の顔を見ると妄想が止まらないというか夢に出て来るというか」

P「は?」

百合子「と、とにかく!先輩の顔を見てるとドキドキして心臓が破裂しそうなんです!」

P「お、おう、そうか…」

どうやら百合子の気持ちに火をつけてしまったらしい

P「ま、まあとにかく、今のままじゃまともに話も出来ないからさ、普段通りで頼むよ」

百合子「意地悪…」

意地悪と言われてもな…

俺の方も意識しないようにするので大変なんだ

俺は自分が思ってた以上に惚れっぽいのかも知れない

だけど今自分の感情に素直になるとまるで百合子の身体が目当てみたいで嫌だった

どうせ好きになるのなら、ちゃんと好きになりたい

一旦ここまで

閉館時間となったので図書室を閉め、外に出る

P「暑い」

百合子「暑いですね…」

図書室は冷房が効いていたのもあり、外に出るとうだるような暑さに参りそうになる

P「帰るとするか…」




帰り道、百合子を送るために一瞬に歩いていると百合子が話し掛けてきた

百合子「先輩は夏休みの間どうされるんですか?」

P「俺?俺は特には決めてないかな」

まあ受験もないし冬馬達と遊ぶくらいか

百合子「あ、それでしたらその…」

百合子が恥ずかしそうに顔を伏せる

P「ん?」

百合子「い、一緒に市民プール、行きませんか?」

P「プールってあの?」

百合子「はい」

ちょうど去年、市民プールが出来た

割と大きな温水プールでウォータースライダーもあるらしい

P「じゃあ予定合わせて一緒に行こうか、いつが良い?」

百合子「あ、それなら来週の火曜日に行きましょう!」

P「火曜日か、わかった」

百合子「はい!今から楽しみだなぁ…」

P「俺も新しいプールは気になってたから楽しみだ」

百合子「…意地悪」

P「何のことやら」

その日の夜、私は杏奈ちゃんとボイスチャットをしていた

百合子「というわけで先輩をプールに誘うことは出来たんだけど…」

杏奈『…』

百合子「せっかくデートに行くわけだし新しい水着にした方が良いかな?」

杏奈『うん…男の人は…女の人の…新しい一面を見られると…喜ぶって…』

杏奈『この前プレイしたエロg…恋愛ゲームで言ってた、よ?』

百合子「ねえ杏奈ちゃん」

杏奈『?』

百合子「明日、水着を買いに行きたいんだけど…一緒に来てくれたら嬉しいな」

杏奈『ん…良い、よ?』

百合子「ありがとう杏奈ちゃん!」

杏奈『杏奈は…百合子さんの恋…応援する、よ?』

百合子「うん!ありがとう!」

杏奈『それじゃあ…おやすみなさい…』

百合子「うん、おやすみ、杏奈ちゃん!」

ボイスチャットを切り、一息つく

どんな水着にしようか今から色々と考えてしまう

可愛い系も良いしセクシー系も良いなぁ

でもセクシー系ならもしかしたら先輩もその気になってくれるかも

そしてそのまま勢いに身を任せて…

百合子「…はっ!」

危ない危ない、危うくトリップするところだった

大体キスもまだなのにそんな関係になるはずがない

百合子「…」

キス…かぁ

救命活動だったとはいえ先輩とキスしたんだよね…

あの時意識がなかったのが悔やまれると同時にあの時ああならなかったら私達の関係はもっと停滞していたとも思う

鈍感なのかわざとなのかはわからないけど、先輩は人の好意を受け流すのに長けている

今だって私が私なりに精一杯アピールしているのにはぐらかすし…

何にせよ今年度中には決着をつけないと、先輩は大学部へ行ってしまうので会う機会が無くなってしまう

告白するにせよ、振られるにせよ、ぶつからないと始まらない

百合子「図書室…二人きり…」

どんなシチュエーションで先輩にアピールしようか考える

妄想は得意だ

…実行出来るかどうかは別だけど

私は夏休みの計画を練り始めるのだった

一旦ここまで
ネット通販は…最強…だね

翌日、杏奈ちゃんと一緒に町のショッピングモールに来ていた

来週のプールで着るための水着選びに付き合って貰うためだったんだけど…

百合子「あ、この本もう出てたんだ!」

途中でついつい本屋さんに立ち寄ってしまった

杏奈「…百合子さん…帰ってきて…」

百合子「帰る?どこに?」

杏奈「現実…」

百合子「…あれ、今何時?」

杏奈「13時…」

百合子「」

ショッピングモールに来たのが10時だった気が…

百合子「ご、ごめんね杏奈ちゃん!」

杏奈「ん…慣れてるから…平気、です」

百合子「あうう」

言い方を変えれば慣れるほどそれに付き合わせているということになる

百合子「付き合って貰ってるしお昼は私がご馳走するね?」

杏奈「ん…楽しみ…」

今度こそまっすぐ水着コーナーに行く

百合子「どんな水着が良いかな…」

杏奈「…可愛い水着…かな?」

水着を購入し、店を出る

試着中何故か杏奈ちゃんに裏切り者扱いされてしまった

私何もしてない筈なんだけど…

お昼をどこにするか話していると

P「あれ、百合子じゃないか」

先輩に声をかけられた

百合子「せ、先輩!?」

百合子が上擦った声を出す

そんなに驚かなくても…

冬馬「…あんた確かゴールデンウィークの時の」

冬馬がそう呟いた次の瞬間

冬馬「…!」

何かに気付いたような顔をした後

冬馬「悪い、用事を思い出す用事があるから今日は帰るわ」

と言って走り去ってしまった

P「あ、おい」

冬馬はあっという間に見えなくなった

P「何だってんだ…」

愚痴りそうになるが愚痴っても仕方ないので百合子の方に向き直る

百合子「き、奇遇ですね!」

P「そうだな」

学園以外で会うのは珍しい気がする

百合子「そ、その、私達これからお昼なんです」

百合子「だから…その…先輩がもしお昼がまだなら一緒にいかがですか…?」

P「良いのか?」

百合子「はい!」

杏奈「…杏奈も…別に…良いよ?」

P「それじゃあご一緒させてもらおうかな」

百合子「はい!」

百合子が嬉しそうに返事をする

その隣で杏奈ちゃんが慈愛に満ちた表情で百合子を見ていた

百合子「ご馳走さまでした」

佐竹飯店ショッピングモール出張店で昼食を済ませる

P「相変わらず佐竹飯店の飯は美味いな」

ここの味は昔近所にあった中華料理屋を思い出す

美味しくてよく行っていたのだが気が付いたら無くなっていて当時は結構哀しかったな

百合子「先輩はこの後どうするんですか?」

P「うーん…冬馬も帰っちまったからなぁ…正直予定がない」

杏奈「…杏奈…ゲームセンター…行きたい、です」

P「ゲーセンか」

そう言えば最近ご無沙汰だったし行っても良いかな

百合子「ゲームセンター…うん、わかった、行こう杏奈ちゃん」

杏奈「…」

杏奈ちゃんが頷く

P「っとその前に、百合子」

百合子「はい」

P「ジッとしてろよ」

百合子の頬に手を伸ばす

百合子「えっ!?せ、先輩駄目ですこんな人前で!」

P「良いから」

百合子「わ、わかりました!その…優しくしてください!」

百合子がギュッと目を瞑った

俺は百合子の頬に触れ…

頬についていた米粒を取った

P「もう良いぞ」

百合子「…はれ?」

百合子が不思議そうに首をかしげる

P「ほら、米粒がついてたからさ」

百合子「米粒…」

百合子が米粒を見る

P「何と勘違いしたんだ?」

その言葉を聞いた百合子はみるみる顔が赤くなっていった

百合子「も、もう!口で言ってくださいよ!いじめっ子!どS!」

P「ははは」

会計を済ませた後、俺達はゲーセンへ向かった

P「ゲーセンは久しぶりだ」

百合子「私はあんまり来ないですね」

杏奈「…」

杏奈ちゃんが財布の中身を確かめている

P「冬馬や翔太と来るときは大抵対戦ゲーをやるんだが…」

杏奈「…杏奈…両替してくるね」

そういって杏奈ちゃんが素早い動きでいなくなった

一旦ここまで

ボン(乳)
キュッ(胴回り)
ボン(腹)

十分程待ってみたが杏奈ちゃんが戻ってこない

P「何かあったのかな」

百合子「電話してみましょうか」

P「電話よりはメールとかの方が良いと思うぞ」

百合子「じゃあちょっとディスコードで…」

百合子が杏奈ちゃんにコンタクトを取る

数分後

百合子「あ、返信が来ました」

P「なんだって?」

百合子「えーっと、Amazoneから荷物が届くから帰る…だそうです」

P「あー、帰っちゃったのか」

せめて一言くらいは欲しかったかな

P「どうする?」

百合子「え?」

P「この後だよ、杏奈ちゃんも帰っちゃったしゲーセンに寄る理由も無くなったからさ」

百合子「そ、それなら!」

P「うおっ」

百合子「そ、それなら…その…えっと…」

百合子が言い淀んでいる

何か言いにくいことでもあるのだろうか

百合子「わ、私の家に来ませんか!?」

P「えっ」

予想以上の言葉が飛びだしてきた






P「お、お邪魔します」

百合子「ど、どうぞ」

百合子に誘われて百合子の家に行くことになった

女の子の部屋に入るのは何年ぶりだろうか

P「…おお」

百合子の部屋は中々に見事だった

大量の本棚にぎっしりと詰まった本

本を傷付けないためか部屋も少し暗めで、まるで小さな図書館にいるような気分になる

百合子「お、お茶です」

百合子がお盆を持ってくる

その上には緑茶と…

P「これは…おはぎか?」

百合子「はい、私が作ったんです」

P「へえ…俺のは二つあるみたいだけど」

百合子「あ、それは粒あんとこしあんで分けてあるんです」

百合子「やっぱり餡子にも好みがありますから、両方用意した方が確実だと思いまして」

百合子「ちなみに私は粒あんの方が好きです!」

P「餡子の種類か…そう言えば気にしたことなかったな」

百合子「両方食べて違いを楽しむというのもおすすめです」

一旦ここまで

どっちもだよ!

P「どれどれ…」

まずは粒あんのおはぎを口に運ぶ

百合子「ど、どうですか?」

P「…うん、美味い!」

百合子「良かったぁ…」

続けてこしあんを口に運ぶ

P「…おお、俺はこしあんの方が好きかも」

百合子「そ、そんな…」

P「こしあんの方が上品な感じがするな」

百合子「…絶対に」

P「ん?」

百合子「これからも先輩におはぎを作って絶対に先輩を粒あん派にしてみせます!」

P「ほう、俺は頑固だぞ?」

百合子「時間をかけてでも絶対にしてみせます!」

P「楽しみにしていよう」

P「ところで何だか良い匂いがするな」

百合子「あ、実は可憐さんからアロマを頂いたので焚いてみたんです」

P「へえ…篠宮さんのアロマなのか」

通りで良い匂いがするわけだ

プロダクションにいた頃はいつも焚かれてたっけな

百合子「アロマを焚いているとリラックスして本が読めますから」

P「なるほどね」

百合子「試しに何か読んでみますか?」

P「そうだな」

本棚から適当な本を抜き出し、読み始める

…なるほど、確かにリラックス効果のおかげか普段よりも文字が頭に入ってくる

しかしそれと同時に妙な眠気も感じる

P「…?」

おかしいな、なんでこんなに眠いんだ

P「…む」

百合子「先輩、どうしました?」

P「いや…なんか眠くてな」

百合子「!じゃ、じゃあ少しお昼寝しますか?私のベッドを使っても良いですから」

P「いや…それは流石に」

百合子「遠慮しないでください!さあさあ!」

P「わ、わかったよ…」

何故かぐいぐい来る百合子の気迫と眠気に負け、俺は少し仮眠を取ることにした

百合子「せんぱーい…寝てますか~?」

返事はなく、代わりに聞こえてくるのは穏やかな寝息だけだ

百合子「うーん、ちひろ先輩に貰ったこの睡眠薬、本当に効くなんて…」

正直色々と胡散臭い人だったけど、少しは信用して良いかも

百合子「…」

先輩の寝顔を覗き込む

普段とは違う、あどけない寝顔

寝顔を見ているとなんだか先輩が可愛く見えてきた

このまま寝顔を見つめていても良いけど、その前にやることをやらないと

百合子「お、重い…!よいしょ!」

先輩を無理矢理仰向けにする

百合子「…」

私の視線は先輩の唇に釘付けになっていた

これからしようとしていることを考える

するとあっという間に顔が赤くなり、心臓がバクバクと音を立てる

足が竦み、腰が引ける

それでもチャンスは今しかない

今勇気を出さないと、この先もずっと勇気なんか出せないと思う

だから

私は、一歩踏み出した

百合子「…ん」

触れるだけの簡単なキス

だけどそれだけで全身が溶けてなくなりそうな感じになる

事を終えた私は、床に座り込んだ

ただ簡単なキスを、それも先輩が寝ている状態でやった一方的なものなのに

腰が抜けて動けなくなるほどの快感だった

百合子「…」

自分の唇に触れる

まだ感触が残っているような気がする

…もっと

もっとしたい

蜜に誘われる蝶のように、私は先輩の唇へと引き寄せられる

もっとキスがしたい

この衝動、止められない

百合子「先輩…」

二回、三回とキスを続ける

このまま先輩の全部が欲しい

そんな考えに至りそうになる

上着のボタンを外そうとして、ふと冷静になった

このまま続けても、独り善がりなだけだと

だったら先輩の意識があるときに、想いを伝えてからの方が良いに決まってる

途中まで外した上着のボタンから手を離し、私はベッドに…先輩の隣へ潜り込んだ

…今はこれで良い

お返しのキスも出来たし、来週にはデートもする

焦らなくても、着実に距離を縮めていきたい

百合子「…先輩、好きですよ」

私は、先輩の体温を感じながら目を閉じた

一旦ここまで
変なテンションになってきた

うーん…敢えて言うならその子とどんな所に行きたいか、かな
基本的にみんなのアイディアからこれ良いなって思ったものを軸に発展させていく
例えば今回の百合子なら>>106の不思議の国のアリス体験会からヒントを得てアリス体験会→物語全体の体験会→本の世界の体験会→本の世界に質量を持たせた体験会っていう風にあったら良いなっていうものを肉付けしていく感じ

参考になっただろうか

P「ここは…」

見慣れない天井だ

まだ頭がぼんやりする

P「…ああ、そうか、百合子の部屋か」

少しずつ何があったか思い出してくる

百合子の部屋で本を読んでたら急に眠くなって、それで…

P「…ん、今何時だ」

日はかなり傾いており、少し薄暗くなっていて視界が悪い

だから気付かなかった、隣で寝ている百合子に

体を起こしてベッドに手をつく…筈だった

P「…ん?」

右手が何か柔らかい物に触れた

再度感触を確かめるためにそのまま指を動かす

百合子「んっ」

ベッドのマットのような布の感触ではない

まるで人の肌のような…

右手に視線を向ける

P「」

視線を向けた先には何故か上着がはだけた百合子がいて

俺の右手は百合子の胸を鷲掴みにしていた

P「な、なんで!?」

咄嗟に手を引く

百合子が隣で寝ているのはともかくなんで服がはだけてるんだ!?

百合子「んー…」

百合子が目を擦りながら体を起こす

百合子「あっ、先輩、起きたんですね」

P「起きたよ!起きたから前を閉じてくれ!」

百合子「前…?」

百合子が自分の胸元に視線を落とす

百合子「!」

晒されている自分の胸元を見た百合子は一瞬で顔が赤くなる

百合子がふと顔を伏せる

そのまま服を正すのかと思ったが…

百合子「せ、先輩が見たいなら…見たり…その、触っても良いですよ?」

P「なっ、ゆ、百合子お前」

百合子「先輩になら、わ、私は」

P「…正気か?」

百合子「はい」

P「いつもの暴走じゃなくて?」

百合子「暴走じゃありません!あ、ど、どきどきしすぎて心臓は暴走してるかもですけど…」

P「…」

百合子「先輩になら…その…見たり触ったり…して欲しいです」

P「…わかった」

百合子に向かって手を伸ばす

百合子はぎゅっと目を瞑って俺を待っていた

だから俺は

むぎゅ

百合子「ほへ?」

P「頭を冷やせ」

百合子「い、いふぁいれふ!」

百合子の両頬を引っ張った

百合子「ううっ…」

百合子が涙目で頬を擦っている

P「全く、なんであんなことを」

百合子「え、だってそれは…」

チラッと俺を見るが再び顔を逸らしてしまう

P「…」

その視線の意味は分かっている

正直あと一つでもきっかけがあればヤバかった

危うく百合子に襲い掛かるところだった

だがまだ早い

お互い告白すらしていないのに、そんなこと出来るわけがない

立ち上がった分身が鎮まるのを待ってから、立ち上がる

P「あんまり長居してもあれだし、今日は帰るよ」

百合子「先輩…」

P「また来週、な」

百合子の頭に手を置き、軽く撫でた

先輩を見送ってからベッドに寝転がる

百合子「…」スンスン

まだ先輩の匂いがベッドに残っている気がした

百合子「…」

あと少しで一線を越えるところだった

もちろん私としては願ったり叶ったりだけど

先輩はそうじゃなかったのかな…

百合子「…」

スマホを取り出してこっそり撮った先輩の寝顔を見る

今日の事を思い出すと身体全体が熱くなってくる

身体全体が火照って抑えきれない

私は先輩が使った枕に顔を埋めると

布団に潜り込んで自分の身体に手を伸ばした

一旦ここまで
変なテンション継続中

そんな発情期の猿みたいな事、ちょっとしかしないよ

火曜日になった

待ち合わせ場所の市民プール前で百合子を待つ

待ち合わせの時間までまだ余裕がある

こんなに早く来るなんて、なんだかんだで俺もこの日が楽しみだったようだ

百合子「お待たせしました!」

そんなことを考えていると、百合子の声が聞こえた

P「いや、今来たところだ」

百合子「今の台詞、良いですね!お約束です!」

明らかにハイテンションな百合子が飛び付いてくる

P「あ、こ、こら」

そんな百合子から逃げるように身体を動かす

百合子「え~、今日はせっかくのデートなのに、だめぇ-?」

P「なんで棒読みなんだ…?っていうか百合子に変なこと吹き込んだな翼!」

同時刻

翼「へくし」

未来「翼、風邪?」

翼「んー…誰かがわたしのうわさしてるのかも」

翼「あ、風邪と言えば馬鹿は風邪を引かないっていうけど夏風邪は馬鹿が引くらしいよ」

未来「えっ…私去年夏風邪引いたんだけど…」

翼「じゃあ未来はお馬鹿だね!」

未来「うわーん!」

このみ「追試組の馬鹿二人!喋ってないでちゃんと課題をやりなさい!」

市民プールに入場し、水着に着替えた俺は合流地点で百合子を待つ

待っている間に色々と見渡してみるが、新しいだけあってかなり綺麗だ

広さもかなりの物で、快適にプールを楽しめそうだ

百合子「お待たせしました!」

P「おっ」

さっきも聞いた言葉に振り返る

P「…おお」

水着に着替えた百合子を見て、思わず声が漏れた

ライトグリーンの可愛らしい水着を着た百合子は、その場で水着を見せるように動く

百合子「ど、どうですか?変じゃないですか?」

P「あ、ああ…よく似合ってる」

百合子「良かった…これ、杏奈ちゃんと一緒に選んだんです」

P「なるほど…」

水着がよく似合っており、少しどきどきしてしまう

P「プールに入る前に準備運動…って、気合入ってるな」

百合子「前に準備運動不足で溺れちゃいましたから」

百合子がかなり入念に準備運動をしていた

P「…」

しかし…

準備運動をする度に揺れる胸や尻に目が奪われる

中々に良い光景だ

準備運動を終えた俺達は、早速プールに入ることにした

P「ところで百合子」

百合子「はい」

P「それ、なんだ?」

百合子の後ろに置かれているビーチマットを指差す

百合子「これ、上に乗って流れるプールで遊ぶためのものらしいです」

P「へえー」

流れるプールもあるのか

百合子「それで、先輩」

P「ん」

百合子「このビーチマット、他の浮き輪を牽引出来るみたいなので…その」

百合子「私と一緒に流れませんか?」

P「そうだな…よし、わかった、俺も浮き輪を借りてくるよ」

百合子「やった!」

浮き輪をレンタルして百合子の所に戻る

ビーチマットに浮き輪を接続した後、俺達はプールにビーチマットを流した

P「…」

百合子のビーチマットに牽引されて流れるプールに身を任せる

確かに楽しいのだが…

P「これ、凄く恥ずかしいな」

百合子「そうですか?」

P「うん」

百合子「うーん…」

結局そのまましばらく流れていたのだが、そろそろ飽きてきた

P「なあ百合子」

そろそろ別の…と言いかけた時

茜「イイィィィヤッホォウウウウウ!」

流れるプールに質量兵器が投げ込まれた

百合子「きゃあ!」

P「な、何だ!?」

波が発生し、百合子がバランスを崩してビーチマットから投げ出される

P「百合子!」

投げ出された百合子を抱き止める

波と流れに踏ん張りながら、何とか収まるのを待つ

茜「ふっふっふっ、この市民プールはジャイアント茜ちゃん人形水着バージョンを披露するのに絶好の…え?出禁?」

質量兵器が引き上げられ、ようやくプールに平穏が戻った

P「百合子、大丈夫か?」

抱き締めていた百合子に声をかける

百合子「…」

しかし返事がない

P「…百合子?」

もう一度声をかけるが、やはり返事がない

もしかしたらどこかにぶつけて気絶したのでは

そう思い抱き締めていた手を離した時

百合子が俺の背中に手を回し、抱き締めてきた

P「ゆ、百合子」

無事だったことに安堵しつつも急に抱き締められ困惑する

百合子「もう少し」

P「え?」

百合子「もう少しこのままでいたいです」

P「…わかった」

俺は百合子の望み通り、抱き締め返す

すると俺を抱き締める百合子の力が少し強くなった気がした

P「楽しかったな」

百合子「はい」

夕暮れの帰り道、百合子を家まで送る

百合子「先輩のおかげでまた、私という本人思い出の一ページが増えちゃいました」

P「そっか」

百合子「…」

前を歩く百合子が急に足を止める

百合子「ねえ先輩」

P「どうしたんだ?」

夕陽を背に百合子が振り返る

百合子「私の本は…私の物語は、いつかあなたに辿り着けますか?」

P「どういう…」

意味なんだ?とは言わない

百合子が言いたいことは解っているから

百合子「今日一日遊んで、ハプニングはあったけど抱き締めて貰えて…」

百合子「…私、もう限界なんです」

百合子「この気持ち、もう抑えきれないんです」

百合子が胸の前で手をギュッと握る

P「百合子…俺は」

本当はわかっている

百合子の身体が目当てだと思われたくないからだとか、そんなものは言い訳に過ぎない

恋人になるだとか、たった一人を好きになるだとか、そういう感情がわからなくて百合子を言い訳に使っていただけだ

だけどこの感情こそが

百合子を大切にしたいと想うこの気持ちこそが

俺が百合子のことが好きだという何よりの証拠なのだろう

これ以上言い訳を重ねても、それは百合子を傷つけるだけだ

だから俺は

P「…百合子、俺は」

自分の気持ちを伝えるために口を開く

しかし、俺の口から言葉が出ることはなかった

駆け寄ってきた百合子が俺にキスをして口を塞いできたのだ

永遠のような一瞬の時間が流れ、百合子が口を離す

P「百合子…」

百合子「…先輩、球技大会の約束、覚えてますか?」

P「…ああ」

百合子達のクラスが優勝出来たら、ご褒美を1つあげるという約束

百合子「私、ずるいことをします」

百合子「あの時のご褒美、今欲しいです」

P「…何が欲しい?」

百合子「先輩が…あなたが欲しいです」

百合子「好きなんです、もうあなたのこと以外考えられないくらい」

百合子「どんな本を読んでも、こんな気持ちになることなんて無かった」

百合子「あなたのことを考えると、幸せで、でも胸が苦しくて」

百合子「ずっと一緒にいたいって思えて…だから!」

百合子「あなたが好きです、この世の何よりも、あなたが好きです」

百合子「だから、私と…付き合ってください」

一旦ここまで

篠宮可憐

視力:前方180°をカバー出来、76.5km離れた場所にいるPを視認できる
聴力:特殊な音波を感じ取ることが出来、耳を澄ませば76.5m先で針が地面に落ちた音も聞き取れる
嗅覚:森羅万象この世のあらゆるものを嗅ぎ分けることが出来る
中毒性の高いPの匂いを常摂している

ミス

上のレスは765学園物語とは一切関係ないので真面目に忘れて欲しい

アンケート
百合子のプロデュース()は多い方が良い?それとも普通くらいが良い?

君らえっちな百合子大好きだな!俺もだけどさ!

P「百合子…」

百合子の言葉は真剣で

俺の心に深く入り込んできた

百合子「駄目…ですか?」

俺の顔を見上げ、涙を流す百合子

P「駄目じゃない」

俺は百合子を力いっぱい抱き締める

百合子「あっ…」

P「百合子の気持ちは知ってたんだ、だけど俺はそれから逃げていた」

P「だけど百合子は自分の心と真剣に向き合って、俺に気持ちを伝えてくれた」

P「だから俺も逃げるのは止めだ、自分と向き合って、答えを出すよ」

百合子「先輩…」

P「初めて会ったとき、正直変な子だなって思った」

P「いきなり妄想の世界に飛び込んだしな」

百合子「うっ…」

P「だけど同じ図書委員になって、一緒にいるうちに面白い子だなって思うようになって」

P「いつの間にか目で追うようになっていたんだ」

P「それから一緒に色々やって、気が付いたら隣に百合子がいるのが当たり前になって」

P「だからあの海水浴の日、百合子が溺れているのを見たときは正直怖くなった」

P「隣にいた百合子がいなくなることが怖かったんだ」

P「だから百合子を傷付けたくなくて、俺は自分の気持ちを誤魔化した」

P「だけど今こうやって、百合子は想いを伝えてくれた」

P「それを聞いたらさ、自分のやっていたことが百合子のためじゃなくて自分が傷付きたくないだけだって気付いたんだ」

P「でも、俺はもう逃げない」

百合子の肩を掴んでまっすぐに目を見る

百合子の濡れた瞳に、俺が映っていた

P「百合子の作る話が好きだ、自分の好きな本のことを楽しそうに話す百合子が好きだ」

P「意味不明な妄想に浸って中々現実に帰ってこない百合子が好きだ、俺の隣で笑ってくれている百合子が好きだ」

P「俺は…百合子が好きだ」

P「だから百合子、返事は…喜んで」

P「むしろ俺からお願いしたいくらいだ」

百合子が俺の言葉を聞き、抱き付いてくる

胸に顔を埋め、背中に手を回して抱き締める

百合子「…夢みたいです」

百合子「実はこれが妄想の中だって言われても、信じちゃいそう」

P「ほっぺた引っ張ろうか?」

百合子「嫌です、夢が醒めちゃいますから」

百合子「…先輩」

P「どうした?」

百合子「今度は先輩からキス、して欲しいです」

P「わかった」

百合子が目を瞑り、背伸びをする

俺は百合子の頬に手を添え

百合子「…ん」

百合子とキスをした

唇を離すと、急に百合子がバランスを崩した

P「ゆ、百合子!?」

咄嗟に百合子を抱き止める

P「大丈夫か?」

百合子「はい…でもやっぱり、キスって凄い…」

何やら恍惚としながら何かを呟いているが上手く聴き取れない

P「とりあえず家まで送るよ」

百合子「はい…」

脱力しきった百合子を抱きかかえ、百合子の家へ向かった

P「ほら百合子、家に着いたぞ」

家の前で百合子を降ろす

百合子「あ、ありがとうございます」

P「立てるか?」

百合子「はい」

P「…」

正直恋人になった以上ここで解散するのは少し名残惜しい

だがいつまでもこうしているわけにはいかないので、帰らなくては

P「それじゃあ百合子、また…」

そういって帰ろうとした時

百合子「ま、待ってください!」

百合子がシャツの裾を掴んだ

P「百合子…?」

百合子「あ、えっと、その…」

百合子の口篭もる

そして深呼吸した後、何かを決意したような表情になり

百合子「きょ、今日は両親が泊まりでいないので…わ、私の部屋に来ませんか!?」

百合子「ど、どうぞ」

P「お、お邪魔します」

百合子の部屋に来るのは二度目だが、状況が違うからか全く別の部屋に見える

百合子「お茶、淹れてきますね」

そういって百合子が部屋から出て行った

P「…」

正直落ち着かない

前と違ってなんだか甘い匂いもしている気がする

百合子「お待たせしました」

そわそわしながら待っていると百合子が戻ってきた

前回とおなじようにお茶とおはぎを食べる

今回は粒あんしかなかった

P「百合子のおはぎは美味いな」

百合子「どうですか、粒あん派になりませんか?」

P「それはまだまだ先だな」

百合子「むう…」

百合子が残念そうな顔をする

…しかし妙に部屋の中が蒸し暑い

エアコンは動いているみたいだが…

百合子「…先輩、隣に行っても良いですか?」

P「ああ」

百合子が立ち上がり、俺の座っているベッドの方へ歩いてくる

しかしその途中で

百合子「あっ」

百合子が足を引っ掛けてバランスを崩し、俺の方へ飛び込んできた

P「おっと」

咄嗟に抱き止めるが百合子は俺の胸に顔を埋めたまま動かない

P「百合子…?」

百合子「先輩、今、二人っきりですよ?」

百合子が顔を上げる

微妙に胸元が開いており、視線を落とせば見えそうだ

P「百合子…」

百合子「先輩といるとずっとどきどきします、今だって」

そういって自分の胸に手を当てる

百合子「先輩にもこのどきどきを、知って欲しいから、だから」

百合子「触って…見ませんか?」

そういって胸元のボタンを外す

P「…誘ってるのか?」

百合子「はい」

P「優しくできる保障はないぞ、それでも良いのか?」

百合子「はい、先輩の全部を、私に教えてください」

P「わかった」

百合子の手を引いて、ベッドに倒れ込む

百合子にキスをする

唇が触れ合うだけじゃない、深く絡み合うように、お互いを求め合うように深く深くキスをする

百合子「…はっ…」

離した唇が糸を引き、吐息が零れた

P「…百合子」

百合子「んっ」

百合子の耳元で息を吹きかける

百合子はその行為に肩を震わせる

百合子「せ、先輩、耳は…!」

P「やっぱり耳が弱いんだな」

耳を甘噛みすると、百合子がまた嬌声をあげた

百合子「…はあ…はあ…」

耳に意識が行っている百合子の不意を突くために

百合子「…ひっ!?」

俺は百合子の首元を攻め始めた

百合子「せん…ぱい!そこっ…!」

くすぐったいのか激しく身を捩る百合子

百合子「だ、駄目…!」

P「と言いつつも嬉しそうだな」

百合子「だ、だって先輩が触るから…んん!」

百合子の首筋に舌を這わせる

百合子「い、意地悪しないで…」

クタッとした百合子が艶っぽく言う

P「それなら…百合子は俺にどうして欲しい?」

百合子「私は…」

百合子は自分の服に手をかけると



百合子の新品未開封の本を開封した

一旦ここまで
なんか三日前からテンションがピンクなままで困る

百合子「凄かったです…」

ベッドの上で腰砕けになった百合子が呟く

百合子「本のおかげで知識はありましたけど、実際に体験すると全然違ってて…」

百合子「上手く言えませんけど…気持ち良かったです」

P「そっか」

後ろから百合子を抱きかかえる

百合子「まだあなたが私の中にいるような…そんな感覚がします」

P「…それはまだやりたいって事か?」

百合子「え?」

なら期待に応えないとな

百合子「ひゃっ…」

百合子の耳を甘噛みし、お腹を撫でる

百合子「せ、先輩、また大きく…」

P「百合子が誘ってきたからな」

百合子「わ、私まだ身体が…ひゃん!」

P「この体勢でしようか?」

百合子「い、嫌です…!先輩の顔が見れないしキスも…んんっ」




百合子の本を読み返した

翌日

P「それじゃあ俺は帰るよ」

百合子「はい」

百合子が家の玄関まで見送りに来る

百合子「先輩、その…今日またお電話とかして良いですか?」

P「ああ、もちろん、俺だって百合子の声が聞きたいからな」

百合子「じゃあ夜にまたお電話しますね!」

P「ああ、楽しみにしてる」

百合子「先輩」

P「ん?」

百合子「…ん」

百合子が不意打ち気味にキスをしてくる

P「百合子…」

百合子「えへへ…」

P「もう一度ベッドに行こうか?」

百合子「そ、それはとっても魅力ですけど…今は我慢します!」

P「そうか」

P「それじゃ」

百合子「はい、お気をつけて」







先輩が玄関から出たのを確認した私は、その場に座り込んだ

百合子「危なかったぁ…」

さっきキスしただけで腰が抜けそうになってしまった

もし先輩の前で腰が抜けたらベッドに連れて行かれるのは目に見えていたから必死に耐えたけど…

百合子「…ちょっと勿体なかったかな」

腰が抜けてたらどんな風に連れて行かれたのか考える

お姫様抱っこかな?それとも別の?

もしくは玄関でそのままとか…

百合子「…あっ」

色々と妄想したせいで着替えたところなのにもう一度着替えることになりそうだ

一旦ここまで
あんま進められなかった

その日、帰宅すると桃子に昨日の夜どこで何をしていたのか問い詰められた

志保が桃子を宥めていたが、俺は正直に百合子と付き合うことになったと話すと

桃子「それならそれで良いけど、泊まるならちゃんと説明してよね!し、心配するんだから!」

と怒られた

志保はと言うと

志保「……………………兄さんが……決めたことなら」

と今にも死にそうな顔で答えた

調子の悪そうな志保を寝かし付け、部屋に戻る

ベッドを占領していた幼なじみを部屋に帰してようやく一息ついた

P「…ふう」

昨日は色々ありすぎた

百合子とプールに行ったり百合子に告白されたり

…百合子と一線を越えたり

とにかく慌ただしい一日だった

だけど、俺にとってとても大切な一日だった

胸を張ってそう言える

しかし恋人になったのは良いんだが一体何をすれば良いんだろうか

恋人らしい事って何だ?

P「わからねえ…」

誰か周りに知ってそうなのは…恵美くらいか?

恵美本人はともかく交友関係の広い恵美なら友達のそういう話も聞いているかも知れない

近いうちに連絡してみるか

昼寝をしたり、ゲームをしたりと適当に時間を潰していると

P「おっ」

百合子から電話がかかってきた

P「もしもし」

百合子『も、もしもし!』

P「こんばんは百合子」

百合子『あ、はい、こんばんはです』

P「…ははっ」

百合子『ふふ』

ただの挨拶なのになんだか可笑しくて笑ってしまう

百合子『私達、恋人になったんですよね…』

P「ああ」

百合子『なんだ夢みたいです』

P「今日ベッドの上で同じ事言ってたな」

百合子『ベッドの…上で………』

P「今、何を想像した?」

百合子『え!?な、何でも無いです!』

P「…くくっ」

百合子『もう!またそうやってからかって!』

P「すまんすまん」

百合子『…明日は図書委員の日ですね』

P「そうだな」

百合子『恋人になって初めての委員活動…なんだかどきどきします』

P「そうだな、夏休みの図書室は滅多にニヒトも来ないし」

百合子『私と先輩の、誰にも邪魔されない空間ですね!』

P「ああ、誰にも邪魔されない特別な空間だ」

百合子『ふふ、明日おはぎ作っていきますね』

P「こしあんか?」

百合子『残念、粒あんです』

P「粒あんか…」

百合子『とびきり美味しいの、作りますから』

P「よし、楽しみにしてるぞ」

百合子『はい、期待していてください!』

その後も他愛ない話を続ける俺達

桃子「お兄ちゃん、ご飯…っと」

部屋に入ってきた桃子が電話をしている俺を見て口を噤む

俺は桃子に了解のジェスチャー送った

P「夕飯が出来たみたいだからそろそろ切るよ」

百合子『はい、わかりました』

P「また明日な」

百合子『はい、また明日』

通話を終了しようとボタンを押す直前

百合子『先輩、大好きです』

と聞こえた

P「…俺もだよ」

そう返し、俺は通話を終了した

翌日

俺と百合子は図書委員の仕事のため、図書室に来ていた

P「うーん今日も誰も来ないな」

百合子「そうですね~」

流石に夏休みにまで図書室に来る物好きはそうそういない

だからこそこうして静かな空間を二人っきりで過ごすことが出来る

しかし二人っきりなのに本を読むだけというのは些か退屈ではある

せっかく恋人になった以上はイチャイチャしたいと思うのが男の性というものだろう

P「百合子、ちょっと万歳してくれるか?」

百合子「こうですか?」ハンザーイ

P「そうそうそんな感じそんな感じ…よっと」

百合子「ふえ?せ、先輩、何を?」

P「んー膝枕、かな」

百合子「どうして急に」

P「そこに百合子の太股があったから」

P「それに一昨日触った時凄く柔らかかったからさ」

百合子「も、もう、先輩のえっち!」

百合子「こうですか?」ハンザーイ

確かに犯罪チック

P「うん、やっぱり百合子の太股は良いな」

百合子「もう…おだてても何も出ませんよ?」

P「と言いつつも顔を赤くして喜んでいる百合子であった」

百合子「うっ…だ、だって私の膝枕で先輩が喜んでくれると私も嬉しくて…」

P「百合子…」

百合子「ほ、本!それよりも本を読みましょう!」

そう言って百合子は読書に戻った

百合子が本に集中し始めたので俺も本を読むことにした

P「…」

百合子「…」

P「…」

百合子「…」

集中出来ない

だって百合子の太股がすぐそこにあるんだ

誰だって集中出来るわけがない

本を閉じて何をしようか考える

P「!」

そして俺は閃いた

P「…」

今日の百合子はスカートだ、つまり太股は生足状態

ならば

俺は百合子の太股に人差し指を滑らせた

百合子「!?せ、先輩!?」

P「ふー」

百合子の太股に息を吹きかけた

百合子「っひ!」

百合子が身体を強張らせる

P「ふむ、百合子は全身が敏感なんだな」

百合子の太股を撫でながら聞いてみる

百合子「ち、ちがっ…!先輩が触るから…!」

ビクビクと身体を震わせながら否定する百合子

P「ふーん」

百合子「んっ…くっ…!」

P「どうした?」

百合子「そ、そんなに太股を撫でられたら…私…!」

P「百合子の太股は気持ち良いからな、お礼に撫でてあげたいんだ」

そう言って太股を撫で繰り回す

百合子「も…もう駄目です!これ以上は…!」

P「どう駄目なんだ?」

百合子「来ちゃいます…!来ちゃいます…!」

P「そっか」

再び太股に人差し指を滑らせた瞬間

百合子「~~!!!!」

百合子が仰け反って痙攣した

百合子「…っはあっ…はあっ…」

P「太股を撫でていただけなのに、百合子はどうしたんだ?」

百合子「い、意地悪…ドS…」

P「さ、読書に戻ろうか」

百合子「ま、待ってください…」

百合子「私…まだ…その…欲しいんです」

P「何が欲しいんだ」

百合子「い、意地悪…」

P「はは…百合子は弄りがいがあるな」

百合子「太股だけじゃなくて…私の全身、弄って欲しいです…」

P「わかった」

図書室で秘密の勉強をした

一旦ここまで
おかしい、普通に話を進めようとしても気が付くとプロデュース()方面に向かうんだ

ありがとう…本当にありがとうございます…

でもまだ太ももに顔をうずめてすんすんしてませんよ()

乙です
黒ちゃん「学校で盛るな」

>>552
そこまでいくとR板に飛ばされかねなくて泣く泣く断念

正直√TPが765学園物語Rのための練習を兼ねているのは否定しない

正直一つにまとめて√を取っ払うのも考えてたり
いずれにせよタイトルはまだ仮だし√TPと√PGでもうちょっと練習してからになると思う

√取っ払うって言うのはタイトルの話
中身はきっちり分ける予定

P「ふう…」

冷房が聞いてるとはいえやはり汗をかくな

百合子「と、図書室で…」

百合子が非常にショックを受けていた

P「ごめん、流石にやり過ぎだったか」

百合子「い、いえ、気持ち良かったから良いんですけど…」

百合子「もし誰か来てたらと思うと…」

P「そりゃそうだよな…」

百合子「で、でも」

P「?」

百合子「たまになら…良いかなって」

P「…百合子はえっちだなぁ」

百合子「ち、違います!きっと先輩が私に淫らになる魔法とか、そういうのをかけてるんです!」

P「ほう、じゃあもっと魔法をかけて良いか?」

百合子「え、えっと…ほどほどになら」

P「よしわかった」

求められたなら仕方ない

P「なあ百合子」

百合子「はい」

後片付けをしながら百合子に話し掛ける

P「明日、どこかに遊びに行かないか?」

百合子「それって…」

P「デートしよう」

百合子「はい!行きます!行きたいです!」

P「よし、それじゃあ明日はデートだ」

百合子「はい!」

その日の夜

P「もしもし、恵美か?」

恵美『Pじゃん、どしたの?』

P「ちょっと話があってな」

恵美『話?なになに、もしかしてデートのお誘い?』

P「良くわかったな」

恵美『にゃはは!なーんて…え?』

P「ちょっとデートの話をな」

恵美『で、デートの話を…アタシに?』

P「ああ」

P「それで、ちょっと聞きたいんだが」

恵美『う、うん、聞く』

P「デートってどういう風にするもんなんだろうか」

恵美『それ、本人に聞く?まあ良いけど…』

恵美『ま、アタシなら一緒にいて楽しかったらそれが一番って感じかな』

恵美『例えばピクニックとかさ、ゲーセンとかとは違う楽しさがあるじゃん?』

恵美『だからアタシは重要なのはどこに行くか、じゃなくて誰と何をするかだと思う』

P「なるほどな」

恵美『そ、それで…』

P「ん?」

恵美『どこ行くの?』

P「そうだな…とりあえず本人と相談してみることにするよ」

恵美『…本人?』

P「あ、そういえば言ってなかったっけ?」

P「俺、彼女が出来たんだよ」

プツッ

P「あれ、恵美-?」

急に通話が切れた

その後も電話をかけてみたのだが…

『おかけになった電話は、電波の届かない場所にあるか…』

繋がることはなかった

P「電池でも切れたのかな」

また近いうちにお礼をするとしよう

いかん、想像以上に自分自身へのダメージがでかい

翌日

待ち合わせの場所に到着すると、既に百合子が来ていた

P「早いな、待たせたか?」

百合子「いえ!私も今来たところですから!」

P「そっか」

こんなベタなやりとりも、百合子とやるととても楽しい

P「それじゃあ、行くか」

百合子「はい!」

百合子が俺の手を取る

俺は百合子の手を握ると、そのまま歩き出した

一旦ここまで
死にたい

765学園物語の短編所を作ろう(唐突)
そしてたまに出てくる健全なリビドーをそこで発散するというのは!

今日はなしで
すまない

>>609
誰かが書いてくれるなら大歓迎で喜んで支援する
まあトライスターの日常の1ページとか、休みの日に冬馬とネトゲみたいな小ネタは考えてたり

一応町に出てみたのだが…

P「ふむ…百合子、どこか行きたいところはあるか?」

百合子「行きたいところですか?うーん…」

P「ひとまず適当にぶらついてみるか」

百合子「はい!」

行きたいところが思い浮かばないなら目についたところに行けば良い

そう考えて俺達は歩き出した

百合子「あ、これ」

百合子が立ち止まって指を差す

その先には…

P「映画か」

百合子「はい、クラスでも結構評判で」

P「へえ…そういやうちのクラスでも話題になってたっけ」

詳しい話は聞こえてこなかったが、ジャンルは恋愛ものらしい

恵美がエレナに何かを言われて赤くなっていたのを覚えている

百合子「実はこの映画の原作を読んだことがあって」

P「お、どうだったんだ?」

百合子「派手さはありませんでしたけど、面白かったです!」

P「じゃあ期待出来るな」

百合子「この映画にしますか?」

P「そうだな、最初はここにしようか」

百合子「はい!」

二人分のチケットを買って、中に入る

端の席を取り、荷物を置く

パンフレットで巨匠、ジョーイ・ロータスのインタビューを読んだりしているとブザーが鳴り、シアター内が暗くなる

百合子「私、実は映画館のこうやって暗くなるのが好きなんです」

P「ほう?」

百合子「映画への期待値も上がりますし、何より色々と考えたり出来ますから!」

P「それは何となくわかるな」

暗いところにいると考えが纏まりやすかったりするし

ロゴがスクリーンに写り、映画が始まった

内容自体は本当に王道なストーリーだ

しかし見せ方が上手く、引き込まれそうな場面も多々あった

流石はロータス、と言ったところか

物語は終盤に差し掛かる

するととうとう主人公がヒロインに想いを告げ、二人は結ばれた

そしてそのまま濡れ場に突入した

P「ほう」

もちろん成人向けの映画ではないためかなり暈かされてはいるが…

13歳のヒロインの濡れ場は如何なものか

チラリと百合子の方を見ると

百合子「…!」

顔を赤くしながらもガン見していた

そんな百合子に俺は口を寄せ

P「…百合子」

耳元で囁く

百合子「ひゃっ…!」

声を出しそうになった百合子が慌てて自分の口を塞ぐ

P「百合子は原作を読んだって言ってたよな?つまり濡れ場があるのも知ってたわけだ」

百合子が俺から目を逸らす

P「やっぱり知ってたんだな…って事は」

俺は百合子の太股に手を伸ばして撫でる

百合子「…んくっ!」

P「誘ってきたと解釈しても良いな?」

P「…ま、映画館でやることじゃないな」

流石に色々とマズいので百合子の太股から手を離す

百合子「あっ…」

百合子は何故か残念そうな声を上げた

P「…まさか、期待してたのか?」

百合子「うっ…ちょっとだけ…はい」

P「百合子はいやらしいな…」

百合子「うう…」

P「後でじっくり、な?」

心行くまで

ちなみに後で百合子に教えてもらったことだが

原作では主人公とヒロインは18歳の設定だったらしい

しかしロータスが監督をするさいの条件としてヒロインの年齢を引き下げたそうだ

前々から噂されていたロータスの性癖が事実となりつつあった

P「さて、次はどこに行くかな」

百合子「お任せします」

任されたのは良いがアテがない

おそらく今百合子の行きたいところは俺が連れて行くところなのだろう

二人きりになれて俺も百合子も楽しめる場所となると…

P「あっ」

良いところがあった

P「百合子」

百合子「はい」

P「俺の家に来ないか?」

百合子を家に連れて行くと、出迎えた志保が何故か血を吐いて倒れた

桃子にさっさと部屋に行けと急かされたので部屋にあがる

P「百合子は俺の部屋に来るのは初めてだったな」

百合子「はい、というよりも男の人の部屋に来るのが初めてです!」

P「そっか、じゃあゆっくりしていってくれ」

百合子「はい!」

座布団を用意するが何故かそれを無視して俺のベッドに座った

そのままベッドに寝転がり、深呼吸をする

百合子「先輩のベッド、先輩の匂いがしますね」

P「そりゃあな」

百合子「先輩の匂いを嗅ぐと全身がビリビリして、身体の芯から熱くなってきます」

P「俺の匂いは危険物か何かか」

百合子「私をこんな風にしてしまう、という意味では危険物ですね」

そういって枕を抱き締める百合子

P「したいのか?」

百合子「したいです」

P「百合子は正直だな」

百合子「隠しても仕方ないですから」

P「ただまあ…ちょっと待っててくれ?」

俺は窓に近付き、窓の向こうを確認する

窓の向こうの部屋のカーテンは開いており、中が見える

…どうやら部屋の主は留守のようだ

カーテンを閉めた俺は念のため新調した鍵を三重にかけた

あれから2回ほどピッキングされたので鍵を強化したのだ

百合子「げ、厳重な施錠ですね…」

P「とりあえずこれで安心だとは思うんだが…」

そのまま扉の鍵をかける

P「これで良し、と」

俺がベッドに座ると百合子が芋虫みたいな動きで近付いてくる

そして俺の膝に頭を乗せた

百合子「膝枕…良いですね」

P「固いだろ」

百合子「この固さ、やっぱり男の人だなって思います」

P「そうかい」

撫でやすい位置にあるので百合子の髪を梳く

髪を撫でながらふと思ったことを聞いてみる

P「そういえば百合子の編み込み、よく見たこと無かったよな」

百合子「これですか?」

百合子が見せやすいように顔を俺の方へ向ける

百合子「…」

P「そうそう、これ、どうなってるんだ?」

百合子に聞いてみるが返事がない

P「百合子?」

上体を反らして百合子の顔を見る

百合子「…」

百合子は顔を赤くしながら俺の一部位を見ていた

P「…そういえばまともに見てないんだっけか」

今までの行為を思い返すがそういった場面の記憶は無い

P「百合子が見たいなら、見せてあげるけど」

百合子「お、お願いします」

P「代わりに百合子の方も…な?」

百合子「はい」

俺はベルトに手をかけ

百合子はスカートに手をかけた

そして

本を開いてじっくり眺めた

一旦ここまで
明日はそろそろPGの方を更新しようかなと

(防弾ガラスくらいなら)指先一つでダウンさ

可憐が探し海美が追い恵美が扉を開けるという素晴らしきチームワーク

志保が仲間になりたそうに見ている

>>652
こっちのことね
>可憐が探し海美が追い恵美が扉を開け志保が入る

(○・▽・○)モチョダヨー

【ミリマス】765学園物語HED √PG
【ミリマス】765学園物語HED √PG - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1478784771/)
埋め支援よろ

ヤりすぎて腰が立たなくなった百合子のために飲み物を取りに行く

リビングに降りるとテーブルの上には書き置きがあった

P「なんだ?」

志保『兄さんへ』

志保『桃子、恵美さん、海美さんと少し出掛けます、もしかすると遅くなるかも知れませんが、心配しないでください』

志保『百合子さんとなかtpjk~wmjpwmaw』

途中から文字が乱れて読めなくなっているが、どうやら志保達は出掛けたようだ

飲み物を持って部屋に戻る

百合子は未だベッドの上で腑抜けていた

P「大丈夫か?」

百合子「だいじょばないです…」

P「ほら、飲み物」

百合子「ありがとうございます…」

百合子は体を起こしてコップを受け取ると、そのままもたれ掛かってきた

百合子「ふう…」

俺はそんな百合子の肩を抱き寄せる

百合子「今の状況、先輩に包まれているみたいで凄く好きです」

P「そうか」

百合子「…私、好きな人とこうやってのんびり過ごすのが憧れの一つだったので今凄く満たされてます」

百合子「心も、体も」

百合子「だからでしょうか、もっと先輩と一緒にいたいって思うんです」

百合子「きっと私は欲張りなんですね」

P「欲張りで良いさ」

P「好きな子にそれだけ求められたら男冥利に尽きるってもんだ」

百合子「じゃあ先輩、私をもっともっと満たしてくれますか?」

P「もちろん、百合子こそこぼすなよ?」

百合子「はい!」

百合子が元気よく返事をする

なので俺はさっそく百合子の希望に応えることにした

結局この日、百合子を家に送り届けたのは日付が変わる直前だった

一旦ここまで

今日はパスで

最初から死を覚悟していれば何も怖いことは無い

百合子と付き合い始めてから夏休みはあっという間に過ぎていった

二人で花火を見た

花火で盛り上がった俺達はその勢いで浴衣でのプロデュースもし、良い思い出になった

二人で海にも行った

日焼け止めクリームを塗っているとムラムラ来たのでその勢いでプロデュースし、良い思い出になった

二人で…あれ

思い返すとかなりの頻度でプロデュースしている気がする

P「まあ良いか」

それだけ百合子が魅力的って事だしな

今日はどうしようか考えていると

P「お、電話か」

百合子から電話がかかってきた

P「もしも」

百合子『先輩!大変です!』

突然叫ばれ耳がキーンとする

百合子『ああ~どうしようどうしよう!?』

P「落ち着け、何があったんだ?」

百合子『そ、それが…』

百合子が言いにくそうに口を噤む

P「…百合子?」

百合子『…真っ白なんです』

P「は?」

百合子『真っ白なんです!課題用のノートが!』

P「は?え?」

あと三日で夏休みは明けるんだが…

百合子『先輩と一緒にいる時間が楽しすぎてつい後回しにしちゃって…』

P「むっ」

そう言われると確かに百合子を遅くまで連れ回していた俺にも責任がありそうだ

なら仕方ない、上級生としても恋人としても、一肌脱ぐとしよう

P「百合子」

百合子『はい』

P「今からうちに来ないか?課題を持って」

百合子『え?』

P「一緒に課題を片付けよう」

百合子「よろしくお願いします!」

P「ああ」

俺の部屋に来た百合子はさっそくノートを広げてやる気満々だ

P「もし詰まったりわからないところがあったら遠慮なく言ってくれ」

百合子「はい!」

百合子はノートに向かって真剣な表情で課題を始めた

俺は百合子の邪魔にならないようにベッドに座りながら本を読むことにした

読んでいた小説が一段落ついた頃、ちらっと百合子の様子を見る

百合子「…」

百合子は未だ真剣に課題を解いていた

確か数学の課題から始めてたっけな

後ろから覗き込むと

ノートには沢山の文字が書かれており、それはまるで物語のような…

P「…」

百合子「あっ!」

百合子が文字を書いていたノートを取り上げる

さっとノートに目を通す

…そこには百合子の妄想(プロデュース込み)が書き綴られていた

P「…百合子」

百合子「な、何ですか?」

P「課題、どこまでやった?」

百合子「えーっと…」

百合子の目が泳ぎ、そして

百合子「い、一問くらい?」

百合子にデコピンをした

一旦ここまで

志保なら百合子の部分を自分に置き換えるからむしろご褒美になる
なんなら実践も出来る

百合子「い、痛い…」

P「ちゃんと課題やらないならしばらく甘えさせないからな」

百合子「そ、そんな!酷いです!鬼!悪魔!男前!」

P「はいはい、ちゃんとしな」

百合子「うう…」

再びノートに向き直る百合子

俺はベッドに戻ろうとしたその時

バキッ

目の前で窓の鍵が壊れた

!?!?!?

公式が学園ガチャをやってるのに後押ししないわけにはいかないな

P「…マジか」

目の前で破壊された鍵を見て思わず呟く

そして窓が開いた

海美「遊ぼっ!」

海美が窓から部屋に入ってくる

P「海美…どうやって窓開けた?鍵かけてたけど」

海美「ピッキング!」

P「そうか…」

もはや突っ込む気になれない

P「遊ぶのは構わないけど、とりあえず静かにな」

海美「あれ、ゆりりん?」

P「前に言ったろ?百合子と付き合う事になったって」

海美「うん」

P「それで夏休みの間遊びすぎたらしくてな、課題をやってなかったらしい」

海美「…か、課題」

P「だから課題を終わらせるために俺の部屋に…ちょっと待て」

海美「な、何?」

P「何で逃げようとしてるんだ」

窓から帰ろうとしている海美の手を掴む

海美「よ、用事を思い出して」

P「ほう」

海美の目が泳いだのを俺は見逃さなかった

P「ところで海美、一つ聞きたいんだが」

海美「な、何?」

P「課題、どこまでやった?」

海美「ぜ、全部!」

P「じゃあノートを見せてくれ、答え合わせをしようじゃないか」

海美「全部やってない!」

P「今すぐノート取ってこい!」

海美「べ、勉強なんて将来役に立たないよ~」

百合子「ですよね!」

P「良いから黙ってやれ」

文句を言う2人を黙らせる

海美「あ、Pは課題やったの?」

P「当たり前だろ、あんなもん7月中には終わらせてるよ」

P「というか海美の方こそ毎年早めに終わらせといた方が良いって言っても聞かないじゃないか」

海美「だってー」

ふと視線を向けると百合子がこっちをジッと見ていた

P「どうした?」

百合子「あ、いえ…先輩と海美さん、やっぱり仲良いなぁって」

百合子が羨ましそうに言う

P「まあ長いこと一緒にいるしなぁ」

海美「幼なじみだからね!」

百合子「ちょっと羨ましいです」

…もしかしてやきもちだろうか?

一旦ここまで
とりあえずモチベは保てる
問題はない

必要なら設定使うのは全然構わない、むしろ喜んで提供する
自分の書いた物が誰かに影響を与えたなら冥利に尽きる

P「心配しなくても大丈夫だ」

そういって百合子の頭に手を置く

P「海美とは赤ん坊の頃から一緒にいるからな、俺からしたら騒がしい妹みたいなもんだ」

海美「私の方が誕生日先だからお姉さんなんだけど!」

P「やかましい!だから大丈夫、俺が好きなのは百合子だけだ」

百合子「先輩…」

海美「私の方が年上なんだけど!」

P「えぇい、わかったわかったからベッドで転がるな課題をやれ」

海美「ちぇー」

その後も何かにつけてサボろうとする海美と百合子を見張る

気が付くと昼過ぎになっていた

P「よし、ちょっと休憩しようか」

百合子「うう…数学なんて…数学なんて…」

海美「疲れたー」

P「俺はお前を抑えるのに疲れたよ…」

P「2人とも昼食べてくか?」

海美「食べる!」

百合子「ご馳走になります!」

P「急に元気になったな…じゃあちょっと待っててくれ」

先輩が部屋から出て行くと海美さんが溶けた

海美「うー…頭がパンクする」

百合子「私もです…」

数学なんて…数学なんて…

海美「…ねえ、ゆりりん」

百合子「はい?」

海美「Pといるの、楽しい?」

海美さんの質問の意図がわからない

わからないけど…

百合子「…はい!最高に楽しいです!」

海美「そっか」

海美さんはにかっと笑った

海美「楽しいことは良いことだよ、だからさ」

海美「Pとの時間、いっぱい楽しんでね!」

百合子「あっ…」

なんとなくだけど、わかった

海美さんが伝えたいこと

百合子「海美さん」

海美「ん?」

百合子「ありがとうございます」

海美「な、なんか照れるんだけど」

一旦ここまで

あ、そうだ次の√はエレナです

海美がピッキングとかしてるけどさ、窓そんなに近いのかな?
離れてるならピッキングしてる間宙に浮いてたりでもしてるのかな

>>730
窓は幼稚園児が往き来できるくらいしか離れてないから海美の部屋の窓からPの部屋の窓に手が届く
後はちょっと力を入れたらあら不思議、鍵が開きましたとさ

バレンタイン


海美の場合

海美「P!今日バレンタインだよ!」

P「そうだな」

海美「だからチョコ作ったんだ~」

P「ほう」

海美「今年はしほりんとかめぐみーにも手伝って貰ったから美味しく出来てると思う!」

P「楽しみだ」

海美「はいチョコレート!私の気持ち、食べて欲しいな」

P「海美…」

海美「はい、あーん!」



恵美の場合

恵美「P、今日は何の日かわかる?」

P「ああ、バレンタインだろ?」

恵美「当たり、じゃあさ、アタシが今から上げる物もわかるよね?」

P「もちろん」

恵美「はい、じゃあこれ、もちろん本命だから」

P「ありがとう恵美」

恵美「愛情たーっぷり込めてるから味わって食べてよ?」

P「ほう、そんなに愛情たっぷりなのか、じゃあホワイトデーを先払いしないとな」

恵美「え?ちょ、ちょっとまだ昼間…!」

琴葉の場合

琴葉「Pくん、今大丈夫?」

P「ああ」

琴葉「これ、受け取って欲しいの」

P「これは…チョコレートか?」

琴葉「今日はバレンタインだから…」

P「ありがとう、嬉しいよ琴葉」

琴葉「バレンタインは大切な人にチョコレートを渡す日だから」

琴葉「Pくんは私にとって一番大切な人、だからPくん」

琴葉「いつも私を支えてくれてありがとう」


翼の場合

翼「ねえねえP先輩、今日何の日か知ってますか?」

P「さあ、何の日かな」

翼「今日はバレンタインです!」

P「だな」

翼「だからわたし、チョコレート作ってきました~!」

P「おお、偉いな」

翼「えへへ…それでそれで、P先輩にチョコレートをあげるんですけど」

翼「せっかくだしわたしにもあーんして欲しいなぁ…だめぇ?」

ジュリアの場合

P「なあジュリア、今日何の日か知ってるか?」

ジュリア「し、知らない」

P「そうか、知らないか…ところでジュリア、その包みは何だ?」

ジュリア「か、勝手に見るなバカP!…チョコレートだよ」

P「そうか、ところでジュリア、今日は何の日か知ってるか?」

ジュリア「ああもう!わかったよチョコ渡せば良いんだろ!?」

ジュリア「ほらこれ、さっさと受け取れよ!」

P「ありがとう」

ジュリア「ったく、一応手作りだから味わって食えよ」

P「」

ジュリア「!?泡吹いてる…!」

志保の場合

志保「兄さん、今日はバレンタインですね」

P「そうだな」

志保「ですので、兄さんのためにチョコレートケーキを作りました」

P「美味しそうだ」

志保「…こうやって兄さんにチョコレートを渡すことが出来て、私は幸せです」

P「志保…」

志保「今まで渡せなかった分の気持ちも込めました、これからも私のチョコレート、受け取ってくれますか?」

P「ああ、俺も今まで貰えなかった分、しっかり味わうよ」

志保「ありがとうございます、兄さん…これからも、ずっと一緒にいてくださいね」

√UUの場合

海美「じゃじゃーん!」

P「これは?」

海美「今日バレンタインでしょ?だから」

琴葉「海美と2人で作ったの」

P「へえ…」

海美「誰かと一緒にチョコ作るの楽しかったよ!」

琴葉「そうね、私も楽しかった」

海美「私のチョコはPと琴葉に!」

琴葉「私のチョコはPくんと海美に」

海美「私達はずっと一緒だよ!」

琴葉「Pくん、海美、これからもよろしくね」

一旦ここまで
とりあえず明日、私誕生日っす

海美「ね、ゆりりん」

百合子「はい」

海美「私は、これからもPの幼なじみでいて良い?」

百合子「それはもちろんです!先輩の幼なじみは海美さんしかいません!」

海美「ありがと!じゃあこれからもよろしくね?」

百合子「はい!私も海美さんに昔の先輩のこととか、色々聞きたいです!」

海美「うんうん、いっぱい教えてあげるね!」

上から何やら楽しそうな声が聞こえてくる

…どうやら海美と百合子は仲良くなれたようだ

キャッチボールの時にもしかしてと思ったが2人とも相性が良かったようだ

P「これで良しっと」

素麺とつゆをお盆に乗せ、俺は部屋に戻るために階段を上る

部屋を覗き込むと目を輝かせながら海美に話し掛ける百合子と笑いながらそれに応える海美がいて

なんだか微笑ましく思えた

P「さて、勉強を再開しようか」

昼食を食べ終え、一息ついた後2人に声をかける

海美「えー…お腹いっぱいだから眠い~」

百合子「私も…」

P「お前ら…」

どうやらモチベーションは限りなく低いようだ

どうやったらこの2人をやる気にさせられるか…

P「あっ」

海美はともかく百合子をやる気にさせる方法はあった

…実行してみるか

P「…やる気が無いなら仕方ないな」

海美「うん、仕方ないよね!」

P「よっと」

俺は百合子のノートを取り上げる

百合子「先輩?」

俺は百合子のノートを捲って、百合子の妄想が書き綴られたページを開いた

百合子「そ、そのページは!」

俺は深呼吸すると

P「…それはある夏の日のこと」

百合子の妄想の音読を始めた

百合子「ひぃっ!お、音読なんて恥ずかしすぎます!ドS!いじめっこ…!」

P「私は憧れの先輩に逢うために朝早くに」

百合子「ごめんなさいちゃんと課題やりますから許してください!」

…良し、百合子はやる気になったみたいだ

一旦ここまで

P「お、おい、大丈夫か!?」

階段で目を回している女の子に声をかける

P「とにかく保健室に…!」

目を回した女の子を抱き上げ保健室に向かう

P「風花先生!」

風花「きゃあっ!」

保健室のドアを勢いよく開けると風花先生が飛び上がるがどうでも良いことだ

胸が揺れたの良いことだ

P「この子、階段で見つけたんですが意識が無くて」

風花「未来ちゃん?ひとまずベッドに寝かせましょう」

P「はい」

未来ちゃん?をベッドに寝かせ、風花先生に状況を説明する

風花「階段から落ちたのかしら…」

P「わかりません、俺が見つけたときにはもう目を回していましたから」

風花「頭を打った可能性があるから一度病院に連れて行った方が良いかも」

P「そうですね…」

そんな話をしていると

未来「うーん…」

未来ちゃん?が目を覚ました

風花「!未来ちゃん、目を覚ましたのね」

未来「…?」

風花「落ちた時の状況はわかる?」

未来「えーっと…」

未来ちゃんは少し困ったような顔をすると

未来「私…誰ですか?」

そう言った

メモ帳と間違えた
誤爆

百合子にノートを返すと、すぐに課題をやり始める

P「さて、次は海美の方だが…」

海美「Pが遊んでくれるなら課題やるよ!」

P「そうか、課題をやる気は無いみたいだな」

P「なら絶交だ」

海美「…え?」

P「海美が課題をやらないなら絶交するし部屋にも来させない、学園で会っても無視させて貰う」

海美「う、嘘だよね…?」

P「あのな、もう10年近く宿題しろって言い続けてるんだぞ?」

P「けど毎回聞かずに夏休みが明けてから泣き付いてくるじゃないか」

海美「そ、それはだってPとちょっとでも一緒にいたかったから…」

P「小さな声で言われても聞こえないぞ」

海美「うー…」

P「とにかく、だ」

P「もし夏休み明けまでに課題が終わっていなかったら実行するからな」

海美「」

百合子「ああ!?海美さんが銀の弾丸と十字架とニンニクと太陽光を同時に受けた吸血鬼みたいな状態に!」

P「それが嫌ならさっさと課題を終わらせろ」

それから数時間後、海美と百合子が白い灰になったところで今日の勉強は終わりになった

P「2人とも頑張れば出来るじゃないか」

終わった教科の課題を確認しながら2人に労いの言葉をかける

百合子「命かかってますから…」

海美「疲れた…」

P「お疲れさま」

一旦ここまで
そろそろ百合子√も終わりに近付きつつある

P「それじゃあ百合子、また明日」

あんまり遅くなってもアレなので勉強を切り上げ、百合子を家まで送り届ける

百合子「あ、先輩ちょっとだけ待ってください!」

P「どうした?」

百合子「え、えーっと、その…今日は課題を頑張ったので褒めて欲しいなー…なんて」

P「…本来なら課題を放置してたわけだから褒めるどころかやって当然なんだが…」

P「まあ今回は良いさ、よく頑張ったな、百合子」

百合子の頭に手を乗せて撫でてやる

百合子「そ、それだけ…?」

P「ん?」

百合子「何でも無いです…」

P「…」

百合子が何かを期待するような目で見ているが、今は無視

P「それじゃあ百合子、今度こそ」

百合子「はい、また明日…」

目に見えてしょぼくれている百合子を見ていると少し悪戯したくなる

P「百合子」

俺は百合子の耳に口を寄せ

P「ちゃんと課題を終わらせたら…百合子の望み通りのこと、してあげよう」

P「…そうだな、例えばあのノートの中身みたいなことを」

百合子「~!」

百合子の顔が速攻で真っ赤になったのを確認した俺は百合子に背を向けて歩き出した

百合子「も、もう!先輩の意地悪!」

P「ははは、課題頑張ろうな」

海美「おかえり」

P「ん、まだいたのか」

海美「うん」

部屋に戻るとまだ海美が寛いでいた

もっとも何時ものことなので今更気にはしないが

P「適当に帰れよ?鍵直さないといけないし」

海美「鍵つけなければ直す必要なくなるよ!」

P「馬鹿」

P「…ん?ちょっと、海美」

海美「どしたの?」

P「ちょっと目元腫れてないか?」

海美「えっ…な、何ともないよ」

P「それなら良いけど…」

欠伸して擦りすぎたのだろうか

一旦ここまで

海美「じゃあ私帰るね?」

P「ああ」

海美が窓を開け、身を乗り出す

海美「…ね、P」

P「うん?」

海美「ゆりりんのこと、大切にしてあげてね」

P「それはもちろん」

海美「ん、安心した」

P「なんで急に?」

海美「何でもない!じゃあまたね!」

海美は自分の部屋の窓を開け、帰って行った

この日を境に、海美が俺の部屋に来ることは無くなった

夏休みが明け、今日からまた学園が始まる

退屈な授業を終え、俺は真っ先に図書室へ向かおうとするが、教室を出るときに誰かとぶつかる

「きゃっ」

P「おっと、ごめん」

ぶつかった相手を確認する

P「…あれ、百合子?」

百合子「あ、先輩」

P「てっきり先に図書室に行ったのかと」

百合子「じ、実はですね」

百合子「図書室の場所がわからなくて…」

P「おいおい…もう結構経つぞ?」

百合子「どうしても道が覚えられなくて…」

P「まあ良いけど、それじゃあ一緒に行くか」

百合子「はい!」

百合子を連れて教室を出る

百合子「あの…先輩」

P「ん?」

百合子「手、繋いで良いですか?」

P「…図書室に着くまでの間だけな」

百合子「はい!」

俺達は手を繋ぎ、図書室へ向かった

一旦ここまで
長くなってきたから一気に文化祭に飛ばしても良いかなーって

昨日はちょっと別のSS書いてたから更新出来なかった
申し訳ない

百合子といちゃいちゃしたりたまに弄ったり、しょっちゅうプロデュース()していると気が付いたら文化祭が目の前に迫っていた

P「もうすぐ文化祭か」

百合子「先輩のクラスは何をやるんですか?」

P「ウチのクラス…というか3年生は自由出展なんだ」

P「みんな好き勝手にやるからクラス出展はないかな」

P「百合子の方は?」

百合子「私は…プロダクションの社員ですし図書委員の仕事もありますから」

P「ああ…そうだったな」

図書委員として活動する時はともかくプロダクションの社員として動く間は俺は百合子と一緒にいることは出来ない

琴葉がプロデューサーのままなら融通は利かせてくれただろうが、琴葉は既にプロデューサーを退職して伊織にその役を譲っている

P「うーん、どうしたもんかな」

百合子と一緒に文化祭を回れるとしたら今年が最後だろう

だからこそ一緒に回りたいところだが…

百合子「先輩」

P「ん?」

百合子「私、文化祭は先輩と一緒にいたいです」

百合子「だから」

百合子「文化祭の日、図書室で待ってます」

P「百合子…わかった」

そして迎えた文化祭

いつもより騒がしい学園をよそに、俺は図書室へ向かっていた

目的地へ向かうほど、騒がしさとは正反対の状態になっていく

そして図書室の前に辿り着いた俺は、扉に手をかける

しかし

P「…あれ、鍵がかかってる」

扉はしっかりと施錠されており、開く気配はなかった

P「おかしいな…時間間違えたか?」

携帯を取り出してみるが間違いなく指定された時間だ

履け

確認のために百合子に電話しようとした時

百合子「ご、ごめんなさーい!」

百合子が廊下の向こうから走ってきた

P「こら、社員が廊下を走るんじゃない」

百合子「ごめんなさい!ただ先輩を待たせたかと思うとつい…」

P「何があったんだ?」

百合子「実は…本に夢中になってて…」

P「ほう…」

本に夢中になって俺のことを忘れていたようだ

…これはオシオキせねばなるまい

百合子「今鍵開けますね」

百合子が図書室の鍵を開ける

百合子「どうぞ」

俺は百合子に促されるまま、図書室に足を踏み入れた

…この1年で随分ここに来ることが増えたな

図書委員にされたから仕方ない

最初はそう思っていたけど

…ここも、悪くない

通ううちに、そう思えるようになった

百合子が扉を閉める

P「なあ百合子」

この後どうすると口にする前に、百合子が背中から抱き付いてきた

P「…百合子?」

百合子「先輩の背中、温かいなぁ…」

P「何かあったのか?」

百合子「何かあった訳ではないですけど…ただ」

P「ただ?」

百合子「先輩と学園で一緒に出来るイベント、もう今日しかないんだって思うと急に寂しくなって」

P「…」

百合子「短い間でしたけど、先輩と一緒にいられた時間は何よりも幸せな時間でした」

百合子「私達は離れ離れになってしまいますけど…先輩は私のこと、覚えていてくれますか?」

P「…なあ、百合子」

百合子「私は先輩のこと、絶対忘れません」

P「なあ」

百合子「だから…」

P「聞け」

暴走し始めた百合子に手刀を加える

百合子「あうっ!」

P「なんか永遠に離れ離れみたいな言い方してないか?大学部になってもいつでも会える筈なんだけど」

百合子「だ、だって!こういうのは雰囲気が大事なんですよ!?」

百合子「愛しい人と離れ離れになることに心を痛めるいたいけな文学少女と己の無力を痛感し拳を握りしめる男の人…」

百合子「離れ離れになってしまうのは避けられないからこそ、可憐で清楚な文学少女は愛しい人に最後の思い出が欲しいと願うんです!」

おかしいな、いたいけな文学少女も可憐で清楚な文学少女も俺の知り合いにはいないぞ

俺の知り合いにいる文学少女は…

P「なあ、百合子」

百合子「はい」

P「どうして欲しい?」

百合子「…思い出が、欲しいです」

百合子「先輩と私が同じ校舎にいて、同じ場所で、同じ時間を共有した証が、欲しいです」

ちょっとわがままで、すぐに自分の妄想で暴走する変人だけど

P「…わかった」

何よりも愛おしい、大切な女の子だ

振り返り、百合子を抱き締める

百合子も、力強く俺を抱き返す

百合子「先輩の心臓、ちょっと速いですね」

P「そういう百合子も、顔が真っ赤だしドキドキしてるじゃないか」

百合子「ふふ、バレちゃいましたか」

P「ああ、百合子のことは何でもわかる」

百合子「私も…先輩のこと、何でもわかります」

P「そうか」

百合子「先輩…私が今して欲しいこと、わかりますか…?」

P「ああ」

百合子「じゃあ…お願いします」

P「百合子…」

百合子「はい…」

熱を帯び、少し潤んだ百合子の瞳をまっすぐに見つめる

そしてどちらともなく、キスをした

百合子「やっぱり私、先輩とキスするの、大好きです」

百合子「先輩が私を大事にしてくれてるってわかるから、ずっとしたくなっちゃう」

P「俺も、百合子とキスをするのが好きだ」

百合子「嬉しい…」

P「それじゃあ百合子」

百合子「はい、来てください」

俺は百合子の制服に手をかけ

図書室で百合子の本を永久貸し出しした

後片付けをし、換気のために窓を開ける

すると文化祭の騒がしい声が少しだけ、図書室まで届いてきた

P「百合子」

百合子「はい」

P「思い出、どうだった?」

百合子「すごく、心に残りました」

百合子「先輩が大学部に言っても、思い出があれば寂しくありません」

P「…そっか」

百合子「でも思い出は多いにこしたことはないですから、先輩が卒業するまでに、もっともっと沢山の思い出を作りたいです!」

P「百合子はいやらしいな」

百合子「私をこんな風にしたのは先輩ですから、責任を取ってずーっと一緒にいてくださいね?」

P「やれやれ」

どうやらこの先も沢山思い出を作らないと満足しそうにないな

P「百合子」

百合子「はい」

P「何時だったか、百合子が言ってたよな」

P「私の物語は、俺に辿り着けるか?って」

百合子「私が告白した時ですね」

百合子「あの日は私という本の一番大切な一ページになってます」

百合子「あの日、勇気を出して書き足した心の一ページ…」

百合子「今ならわかります、きっとこのページは先輩との未来へ、ハッピーエンドに繋がってるって」

百合子「だから先輩」

百合子「私という本を、最後までちゃんと読んでくださいね♪」

P「ああ、任せておけ」

きっとこれからも沢山の思い出が出来るだろう

その度にきっと、俺と百合子の本には栞が増えていくだろう

だけどその栞は1つ1つが大切な思い出で

P「百合子」

百合子「はい」

P「ちゃんと完結させような、2人で」

百合子「…はい!」

必ず俺達の未来へ…今はまだ何も描かれていない、始まったばかりの透明なプロローグに色をつけてくれる

そんな気がする

百合子「先輩!」

P「ん?」

百合子「大好きです!」

尾張名古屋

胸枕

百合子「先輩!何も言わず何も聞かず私に抱き付いてください!」

百合子「わあ…先輩が私の胸の中に…ふふ、何だか新鮮ですね…思わず頭を撫でたくなっちゃいます」

百合子「この体制、何だか私がお姉ちゃんみたいですね!先輩、私のこと百合子お姉ちゃんって呼んで良いですよ!…いふぁい!いふぁいれふ!ごめんなふぁい調子のりまひた!」




バレンタイン

百合子「先輩!今日は何の日か知ってますか!?」

P「知ってるよ、バレンタインだろ?」

百合子「そうです!ウァレンティヌスという聖職者が処刑された日として有名ですよね!」

P「あ、うん」

百合子「でも日本のバレンタインにはウァレンティヌスは全く関係ないので省きまして、今日は女の子が好きな人にチョコを渡す日です!」

P「そうだな」

百合子「だから私、今日はチョコレートを作ってきました!受け取ってください」

P「ありがとう百合子」

百合子「えへへ…それで、早速ですが男性はチョコレートを貰ったらホワイトデーにお返しするじゃないですか」

P「せっかちだな」

百合子「だから…その…今日、私の部屋に行きましょう、ね?」

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