【ポケモン】ヨウ「リーリエのいないアローラ地方」 (145)

「……ヨウさん……ヨウさん」

………?

「ヨウさん……私の気持ち……聞いていただけますか?」

…………

「私…ヨウさんのことが……」

ヨウ「…………!」






チュンチュン

ヨウ「…………」

ヨウ「…………夢か……」


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ヨウ「(僕がチャンピオンになってから数年が経った)」

ヨウ「(そして、リーリエがアローラを去ってからも……)」

ヨウ「(リーリエは言った。いつか必ずアローラに帰って来ると)」

ヨウ「(でも、リーリエは帰って来なかった)」

ヨウ「(彼女はもう忘れてしまったのだろうか)」

ヨウ「(エーテル財団やスカル団との戦い……冒険の中で出会った人達……)」

ヨウ「(それに、一緒に旅をしたコスモッグや僕のこと……)」

ヨウ「…………はぁ」

ポンッ

ヨウ「出ておいで。ウツロイド」

コンコン

ガチャッ

ママ「ヨウ?起きてるの?」

ママ「!!」

ヨウ「…………あー……」

ママ「ヨウ!何やってるの!!」

ベリッ

ヨウ「…………なんだよ。せっかく人が良い気分になってるのに」

ママ「ウツロイドを被るのはやめるように言われてるでしょ!」

ヨウ「うるさいな……迷惑掛けてるんじゃないんだから別に良いだろ」

ママ「またそんなこと言って……!」

ママ「今は気持ち良くても、近い将来どうなるか分からないのよ!?」

ママ「いえ、きっと録なことにはならない」

ママ「今にウツロイド無しでは生きられない体になるわよ!」

ヨウ「…………別に構わないさ」

ママ「…………!」

ヨウ「別にどうなったって良い」

ヨウ「病気になっても、早死しても」

ヨウ「なんなら今すぐに死んだって良い」

ヨウ「(そう……彼女がいないのなら……)」

ママ「~~~~!!」

ママ「あんたねぇ!」



ピ-ンポ-ン

ママ「…………!」

ママ「誰よこんな時に……はーーい!」

ヨウ「…………」

ヨウ「(こんな町から離れたところにある家に来る奴なんて決まってる)」

ママ「ヨウー!ハウ君が来てくれたわよー!」

ハウ「やぁ。おはよう」

ヨウ「……やっぱりな」

ハウ「んー?何か言った?」

ヨウ「いいや。なんでもない」

ハウ「朝御飯は?」

ヨウ「まだだよ」

ハウ「それならちょうど良かった。お土産にマラサダを買って来たんだー」

ヨウ「……要らないよ」

ヨウ「知っているだろ。食欲がないんだ」

ハウ「そっかー。じゃあ俺が全部食べよー」

ヨウ「ハウ……まさかだけどわざとやってるんじゃないだろうな」

ハウ「えー?なんのこと?」

ヨウ「……なんでもない。忘れてくれ」

ハウ「うーん。やっぱりマラサダはハウオリシティのが一番だなー」

ヨウ「……で、用件は?」

ハウ「んー?」

ヨウ「何か話があって来たんだろ?」

ヨウ「……メレメレ島の島キングさん」

ハウ「…………うん」

ハウ「じいちゃんから聞いたんだけどさー……」

ハウ「最近、リーグに全然行ってないんでしょ?」

ヨウ「…………あぁ」

ハウ「どうしてさ?じいちゃんカンカンに怒ってたよ?」

ヨウ「…………」

ヨウ「……行っても行かなくても同じさ。どうせチャレンジャーなんて来ないんだから」

ハウ「そんなことは……」

ヨウ「そんなことあるさ。あの頃……僕がチャンピオンになってすぐの頃は確かに毎日のようにチャレンジャーが来ていた」

ヨウ「それが今はどうだ。ここ数ヶ月、誰も来やしない」

ヨウ「ククイ博士も、マーマネも、プルメリさんも!」

ヨウ「そうだ、ハウ。君だって同じだ!」

ハウ「…………!」

ヨウ「君は島キングになったのを理由にしてここ数年は一度も来ていないじゃないか」

ハウ「…………それは……!」

ヨウ「……いや、やめよう」

ヨウ「ついカッとなってしまったんだ。許してくれ」

ハウ「……うん。気にしてないよ」

ヨウ「それは良かった。それにしてもどうしたんだろう。近頃はすぐ頭に血が上ってしまうんだ」

ハウ「……あのさーヨウ……」

ヨウ「……ん?」

ハウ「……やっぱりリーグには行った方がいいと思う」

ハウ「四天王とかチャンピオンを休むのって、申請がいるんでしょ?」

ヨウ「…………」

ハウ「…………」

ヨウ「…………分かったよ」

ハウ「ヨウ……!」

ヨウ「このままだとハウにも迷惑が掛かるだろうからね」

ヨウ「僕はまだ君という友人を失いたくないし、ここは大人しく従うとするよ」


ハウ「う……うん……」

ーポケモンリーグー

ヨウ「はぁ……」

ヨウ「(暫く振りに来たせいか、気が重いな……)」

ヨウ「…………」

ヨウ「(そうだ、入る前にウツロイドでも軽くやっとくか……)」




「あーーーー!!」

ヨウ「っ!?」

アセロラ「ヨウだーー!」

ヨウ「アセロラ……!」

アセロラ「久し振りー!最近来なかったけどどうしたの?」

アセロラ「あっ、もしかしてミミッキュの中身見ちゃった?」

ヨウ「……そんなんじゃないよ」

アセロラ「?……ふーん」

アセロラ「それよりバトルしよ!バトル!」

ヨウ「アセロラは会う度に勝負を挑んでくるな……」

アセロラ「えー、だって楽しいもん!」

ヨウ「……まぁいいけど」

ヨウ「(そういえばアセロラだけだな……今でも勝負挑んでくるの)」







ヨウ「ジュナイパー。影縫い」

ジュナイパー「ジュパッ!」ツンツン

アセロラ「あぁっ!ダダリーン!」

ダダリン「」ガシャン

ヨウ「……僕の勝ちだ」

アセロラ「また負けちゃったー……」

アセロラ「アセロラのポケモンをみんな一撃で倒すなんて、やっぱりヨウは強いねー」

ヨウ「…………」

ハラ「見せてもらいましたぞ」

ヨウ「ハラさん……!」

ハラ「どうやら腕は衰えていないようですな」

ヨウ「……どうも」

ハラ「……今回のことは特別に不問としておきますぞ」

ハラ「しかし次は……」

ヨウ「その事で話があります」

ハラ「…………」

ハラ「……なんですかな?」

ヨウ「申請をさせて下さい」

ハラ「……何?」

ヨウ「しばらくの間、チャンピオンの仕事は休みたいと思います」

続きは明日にでも

ハラ「……!」

ハラ「何を言うかと思えば……!」

ハラ「お前はチャンピオンの役職を何だと思っている!」

ヨウ「うるさいな……どうせチャレンジャーなんて来ないんだから、いてもいなくても一緒でしょう」

ハラ「このポケモンリーグで!最強のポケモントレーナーとしてチャレンジャーを待つ事に意味があるのですぞ!」

ヨウ「だからそのチャレンジャーが来ないと言ってるんだ!」

ヨウ「チャンピオンになったその日から!」

ヨウ「来る日も来る日も挑戦者と戦い続けた!」

ヨウ「どんなトレーナーが相手でもゼンリョクで戦って!そして勝ってきた!」

ヨウ「その結果がこれだ!」

ヨウ「今では皆、僕の強さを恐れて、誰も挑戦しに来ない!」

ハラ「…………!」

アセロラ「ふ…二人とも顔怖いよ……?」

ハラ「思い上がるな若造……!」

ハラ「驕りが過ぎますぞ……!」

ハラ「出てこい!ハリテヤマ!」

ヨウ「!」

ポンッ

ハリテヤマ「ハリィ!」

ハラ「そんなに言うのなら……この儂が相手になりますぞ!」

ハラ「休みたくば、このハリテヤマに勝ってみせるがいい!」

ヨウ「…………!」

ヨウ「分かりました……!」

ヨウ「出て来い。カプ・コケコ」

ポンッ

カプ・コケコ「…………イクゾ」

ハラ「ぬぅ……!」







ガチャッ

ヨウ「ただいま」

ママ「お帰り。随分早かったのね」

ママ「今日はポケモンリーグに行ってたんでしょ?」

ヨウ「あぁ…………あ、そうだ」

ヨウ「明日から当分リーグには行かなくても良い事になったから」

ママ「ふーん……え?」

ママ「ちょっと何よそれ!」

ママ「待ちなさい!ヨウ!」

ヨウ「…………」

ヨウ「…………(うるさい……)」

ヨウ「(僕は強くなり過ぎたんだ)」

ヨウ「(ほしぐも……ソルガレオを手に入れ、UBを従えて、守り神達にも認められた)」

ヨウ「(そんな僕に勝てるトレーナーなんて、アローラの何処を探したっていない)」

ヨウ「(僕からすればハラさんもアセロラも本気で戦うには値しない)」

ヨウ「(そう……ライチさんは行き遅れ……クチナシさんは根暗……カヒリさんはいけ好かないマイペース女……!)」

ヨウ「……はぁ……」

ヨウ「……久し振りにあそこに行ってみるか」

ーホクラニ天文台ー

ウィ-ン

ヨウ「やあ、マーマネ」

マーマネ「こんにちは。ヨウ、よく来た」

ヨウ「早速で悪いんだけど、例の物は?」

マーマネ「修理は終わった。でも前のように使うのは無理」

ヨウ「……どうしてなんだ?」

マーマネ「この中にロトムはいない」

ヨウ「……!」

ヨウ「(ある日、ロトムは僕の前から姿を消した)」

ヨウ「(突然の事だった)」

ヨウ「(朝起きると、いつものうるさいロトムの声が聞こえなくて……)」

ヨウ「(代わりに目に映ったのはバラバラの図鑑)」

ヨウ「(もちろんあちこちを探したけど、ロトムは何処にも居なかった)」

ヨウ「(今でも帰って来ないということは、腐って行く僕を見かねて出て行ったのだろう)」

ヨウ「(薄々分かっていた。認めたくはなかったけど)」


ウィ-ン

マーレイン「おや、ヨウ君」

ヨウ「マーレインさん」

マーレイン「ロトム図鑑のことは?」

ヨウ「ちょうど今聞きました」

マーレイン「そっか……残念だけど、こればかりは僕達にはどうしようもありません」

ヨウ「……はい」

ヨウ「そろそろ帰ります」

ヨウ「マーマネ。どうもありがとう。マーレインさんも」

ヨウ「…………」

ヨウ「…………」

ヨウ「…………」

ポンッ

ヨウ「おいで。ウツロイド」

ヨウ「…………」

ヨウ「…………」

ヨウ「……あぁ^~~~……」


ー数週間後ー

ハウ「おばさん。ヨウの様子は?」

ママ「駄目ね……ご飯も食べないでずっと家の中でボーッとしてる」

ママ「する事といえばウツロイドを被るくらい……」

ハウ「そっかー……」

ママ「あの子、ここに引っ越して来たばかりの頃はすっごく活き活きとしていたのに……」

ママ「どうしてこうなっちゃったのかな……」

ハウ「……元気出して。おばさん」

ハウ「…………大丈夫。ヨウは俺がなんとかするから」

ー数日後ー

ママ「ヨウーー?私、用事があって夜まで出掛けるからねー!」

ヨウ「…………」

ママ「ご飯の用意とか、自分で出来るわよねー?」

ヨウ「…………」

ママ「もう、返事ぐらいちゃんとしてよね!」

ヨウ「…………」

ガチャ

バタン

ヨウ「…………」

ヨウ「(……うるさいのがいなくなったな)」

ヨウ「(これで心置きなくウツロイドを……)」

ピ-ンポ-ン

ヨウ「…………」

ヨウ「(……無視しよう)」

ピ-ンポ-ン ピ-ンポ-ン ピ-ンポ-ン

ヨウ「…………」

ヨウ「(しつこいな……)」

ピ-ンポ-ン ピ-ンポ-ン ピ-ンポ-ン

ヨウ「(……仕方ない)」

ガチャ

ヨウ「はい。どちら様ですか」

「あ、ヨウ。久し振りだねー」

ヨウ「えっと……」

ヨウ「……!マオか……!」

マオ「当たり!忘れられちゃったのかと思ったよー」

ヨウ「いや……その……」

マオ「それとも大人っぽくなったから分からなかった?」

ヨウ「…………まぁ、大人っぽくなったとは思うよ」

マオ「うんうん。そっか~」

マオ「ヨウは……ちょっと痩せたね」

ヨウ「……そうかな」

マオ「ちゃんとご飯食べてないんでしょー」

ヨウ「…………うん」

マオ「今日、家の人は?」

ヨウ「出掛けてる」

マオ「そっか……」

マオ「じゃあ、私がご飯作ってあげる!」

ヨウ「…………え」

マオ「ほらどいてどいて!早速準備するから!」

ヨウ「いいよ別に!食欲がないんだ!」

マオ「駄ー目!ちゃんと食べないと病気になっちゃうよー!」

マオ「適当に座って待ってて!」

ヨウ「えぇ……」



ヨウ「…………はぁ」







マオ「……どう?おいしい?」

ヨウ「…………うん」

マオ「良かった~。お代わりもあるからたくさん食べてね」

ヨウ「そんなには食べられないよ……」

マオ「…………」

マオ「ヨウ……ほんとに痩せたね……」

ヨウ「…………」

マオ「聞いたよ。チャンピオンのお仕事休んでるんだって?」

ヨウ「…………うん」

マオ「挑戦者が来ないから?」

ヨウ「…………」

ヨウ「…………うん……そうだよ」

マオ「……本当に?」

ヨウ「…………本当だよ」

マオ「……私思うんだけど、そんなにチャンピオンのお仕事が嫌なら辞めちゃいなよ」

ヨウ「…………!」

マオ「そうすれば周りからうるさく言われることもないでしょ?」

ヨウ「それは……」

マオ「……辞めるのは嫌なんだよね」

ヨウ「…………」

マオ「リーリエとの思い出だから?」

ヨウ「!」

マオ「リーリエとの大切な思い出だから……それを壊すようなことをしたくないんだよね」

ヨウ「……なんで…………」

マオ「でも、それがかえってヨウを苦しめてる」

マオ「どう?違う?」

ヨウ「…………」

ヨウ「…………そうだよ」

ヨウ「初めての恋だったんだ」

ヨウ「金色の長い髪。アローラに似つかわしくない白い肌。綺麗な白のワンピース」

ヨウ「華奢な体なのに芯が強くて、頑張り屋でコロコロ変わる表情が可愛くて……」

ヨウ「そんな彼女を守るのに、僕は必死だった」

マオ「…………っ!」

ヨウ「……でも、リーリエはいなくなったんだ」

ヨウ「……すぐに帰ってくると思ってた」

ヨウ「でも、リーリエは帰って来なかった」

ヨウ「……それなら、せめて彼女がいた証だけでも残しておきたかったんだ」

ヨウ「チャンピオンの称号は僕とリーリエの旅の到達点だったから……」

ヨウ「……おかしいかな?」

マオ「……おかしいに決まってるよ……」

マオ「そのチャンピオンの称号でヨウは今こんなに苦しんでるんだよ!?」

マオ「探しに行きなよ!会いに行きなよ!」

マオ「それが出来ないんだったらチャンピオンなんてもう辞めてよ!」

マオ「私達もう子どもじゃないんだよ……!?」

マオ「忘れてよ……リーリエのことなんて……」

マオ「おかしいよ……子どもの頃に恋した女の子のことを今でも引っ張ってるなんて……!」

ヨウ「…………」




ヨウ「…………うるさいな」

マオ「……え?」

ヨウ「……分かってるよ!」

ヨウ「自分が今、どんなにみっともないか……!」

ヨウ「……でも、こんなざまじゃリーリエに会いに行くことも出来ないだろ!」

マオ「だったら!忘れてってば!」

ヨウ「うるさい!!」

ヨウ「マオには関係ないんだから放っといてくれ!」

ヨウ「本当にリーリエが好きだったんだ!」

ヨウ「リーリエの為ならなんだって頑張れた!」

ヨウ「島巡りの旅も!したくもないポケモンバトルだって!」

マオ「え……」

マオ「ちょっと待って!したくもないポケモンバトルって……!」

ヨウ「……言った通りの意味だよ」

ヨウ「本当はバトルなんて好きじゃない……!」

ヨウ「僕はずっとリーリエの為に戦って来たんだ……!」

ヨウ「そのリーリエがいない今、バトルなんてしたくない!」

マオ「…………!!」

ヨウ「…………ハァ……ハァ……」

マオ「…………それ、本気で言っているの?」

ヨウ「あぁ……本気だよ」

マオ「……分かった」

マオ「ごめんね。余計なこと言って」

マオ「……私、もう帰るね」

ヨウ「…………」

マオ「……ご飯、ちゃんと食べてね」

ガチャ

バタン

ヨウ「あ……」

ヨウ「…………」

ヨウ「なにやってるんだろう……僕は……」

ヨウ「…………」

ヨウ「……今日はやめておこう」

ヨウ「……ウツロイドをキメるような気分じゃない……」

ーまた数日後ー

ヨウ「…………」

ピ-ンポ-ン

ママ「ヨウーー!お客さんよーー!」

ヨウ「…………(またか……)」

ヨウ「(この数日間、マオ以外にも何人かが僕を訪ねて来た)」

ヨウ「(イリマやカキ、それにグラジオ)」

ヨウ「(どうせハウ辺りに頼まれて来たんだろうな)」

ヨウ「(さて、今度は誰だ……?)」

スイレン「こんにちは。ヨウさん」

ヨウ「……スイレンか」

スイレン「はい。スイレンです」

スイレン「早速ですが、釣りに行きませんか?」

ヨウ「釣り?」

ヨウ「……悪いけど遠慮しておくよ」

スイレン「まあまあ。そう仰らずに」

ヨウ「せっかくだけど用事があるんだ」

ヨウ「(ここ数週間そんなものはないけどね)」

スイレン「少しだけですから♪」

ヨウ「だから……!」

ヨウ「(……いや、ちょっと待て)」

ヨウ「(どうせ家にいてもママに文句を言われるだけだ)」

ヨウ「(だったら釣りにでも行った方が気晴らしにもなっていいのかもしれない)」

ヨウ「……分かったよ。一緒に釣りに行こう」

スイレン「はい。行きましょう」

ヨウ「それで、どこまで行くんだ?」

スイレン「そうですね……すぐそこのビーチはどうでしょう」

ヨウ「…………!」

スイレン「?」

スイレン「どうかされましたか?」

ヨウ「い……いや……なんでもない」

ヨウ「……そうだ。せっかくだし何処か遠くに行きたいな」

スイレン「遠く……といいますと?」

ヨウ「ええと……せせらぎの丘とか……」

ーせせらぎの丘ー

ヨウ「…………」

ヨウ「(釣りか……随分久し振りだ)」

ヨウ「(最後にやったのは何年前だったかな)」

スイレン「…………!」

グゲッ……

スイレン「えいっ!」

ザバッ

海パン野郎「プハァッ!」

海パン野郎「ゴホッ!ゴホッ!」

海パン野郎「いやぁ助かった!足をつって溺れていたんだ」

スイレン「いえいえ。どういたしまして」

スイレン「見ましたか?ヨウさん」

スイレン「とても活きのいい海パン野郎が釣れました」

ヨウ「ああ……そうだね……」

スイレン「ヨウさんの方はどうですか?」

ヨウ「さっぱりだよ。全然釣れない」

スイレン「ではルアーを変えてみませゆか?」

ヨウ「……そうだね。他のを試してみるよ」

ヨウ「…………」

スイレン「…………」

ヨウ「(……妙だな)」

ヨウ「(きっとスイレンは、ハウに頼まれて僕のところに来たんだろう)」

ヨウ「(マオが、イリマが、カキが、グラジオがそうだったように)」

ヨウ「(それでみんな決まって言うんだ)」

ヨウ「(しっかりしろだの、いつまでもこのままでいる気か?だのと)」

ヨウ「(それなのに、スイレンは……)」

ヨウ「スイレンは……」

スイレン「はい?」

ヨウ「……スイレンは、何も言わないんだね」

スイレン「……?」

スイレン「さっきも話したばかりだと思いましたが……」

ヨウ「違う。そうじゃないんだ」

ヨウ「スイレンは、ハウに頼まれて来たんだろう」

スイレン「はい。その通りです」

ヨウ「僕が今どんな生活をしてるのかも知ってるはずだ」

スイレン「はい。知っています」

スイレン「ヨウさんが戦っていた理由も」

スイレン「マオが泣いていた理由も、カキが怒っていた理由も、みんな知っています」

ヨウ「だったらどうして何も言ってこないんだ?」

スイレン「…………」

スイレン「……スイレンには、大切な人を失う気持ちがまだ分かりません」

ヨウ「…………!」

スイレン「だのに、今のヨウさんに言えるようなことなんて、何もありません」

ヨウ「……だったらウチに来ることなんてなかったじゃないか」

スイレン「そんなことはないですよ」

スイレン「ヨウさんと釣りをするのは楽しいですから♪」

ヨウ「……楽しい?」

スイレン「はい。楽しいんです」

ヨウ「………………えっと…………」

ヨウ「…………あぁ。惨めな僕を見ていると笑えるということか。納得したよ」

スイレン「ヨウさん。全然違います」

スイレン「ヨウさんは楽しくありませんか?」

ヨウ「……楽しいか、なんて随分考えていなかったから分からないよ」


ググッ

ヨウ「!!」

スイレン「引いてます!」

ヨウ「あ、あぁ!!」

ヨウ「はぁっ!」

グイッ!

ザバァッ!

ヨウ「!」

スイレン「釣れました!おめでとうございます!」

ヨワシ「」ピチピチ

ヨウ「これは……なんだ、ヨワシか」

ヨウ「小さい……大したことのない獲物だな……」

スイレン「そうですね。確かにヨワシは簡単に釣れる弱いポケモンです」

スイレン「でも、今のヨウさんはとても良い顔をしています」

ヨウ「え……」

ヨウ「良い顔だって……?」

スイレン「はい。海パン野郎より活きのいい……数年前、私の試練を受けた時のようなとても良い表情です」

スイレン「きっとヨウさんは今もあの時も、釣りを楽しんでいたんだと思います」

ヨウ「…………!」

ヨウ「……どうかな……」

ーヨウの部屋ー

ヨウ「…………」

ヨウ「(楽しむ……か)」

ヨウ「(あの頃の僕の旅は、リーリエの為の旅だった)」

ヨウ「(今考えるとそれはリーリエに必要とされたいと思う、僕自身の為でもあったんだろうけど……)」

ヨウ「(とにかく僕の旅はリーリエを助ける為のもので、冒険や戦いに楽しみなんてなかった)」

ヨウ「(…………そう思っていた)」

ヨウ「(でもスイレンは……)」

ヨウ「(……いや、もう考えるのはよそう)」

ヨウ「(あれはいつもの冗談だったんだ)」

ヨウ「(きっとそうに違いない)」

ガチャッ!

ヨウ「!?」

ヨウ「(なんだ!?)」

アセロラ「やっほー!遊びに来たよ!」

ヨウ「ア……アセロラ……!?」

アセロラ「全然リーグに来ないからあたしの方から来ちゃった!」

ヨウ「来ちゃったって……」

ヨウ「(アセロラもハウに頼まれて来たのか……?)」

アセロラ「ねーねー、バトルしよーよ!」

ヨウ「嫌だよ……」

アセロラ「えー!アセロラちゃんお口あんぐり!」

アセロラ「どうしてバトルしてくれないのー!?」

ヨウ「……もうバトルなんてずっとしていない」

ヨウ「元々好きでやってた訳でもないのに今更する気にもならないよ」

アセロラ「うそー!バトル好きじゃないのー!?」

ヨウ「……あぁそうだよ」

ヨウ「さ、分かったら帰ってくれ」

ヨウ「昨日はあまり眠れなかったから少しでも寝たいんだ」

ヨウ「眠い時にアセロラのテンションは……正直しんどい」

アセロラ「う~ん……」

アセロラ「そんなにバトルしたくないの?」

ヨウ「ああ。したくないね」

アセロラ「そっかぁ……じゃあ仕方ないね……」

ヨウ「そうそう。仕方ないことなんだ」

アセロラ「しょうがないから、力ずくで連れて行っちゃいます!」

ヨウ「……は?」

アセロラ「出て来て!ダダリン!」

ヨウ「ポケモンなんて出した所で僕は……」

ヨウ「……ダダリン……!?」

ヨウ「ちょっと待っ……」

ポンッ!

ガッシャーーン!!

ヨウ「」

アセロラ「わー、おっきな穴」アングリ 

ヨウ「…………」

アセロラ「えっと……ごめんね?」

ヨウ「は……はは……」

アセロラ「とりあえず……バトルする?」

ヨウ「こんな時に誰がするか!」

ヨウ「本当に申し訳ないという気持ちがあるなら今すぐ帰ってくれ……」

アセロラ「えー、してくれないのー?お口あんぐり!」

ヨウ「……こっちがお口あんぐりだよ…………」

アセロラ「うーーん……じゃあしょうがないよね……」

アセロラ「ダダリン!アンカーショ……」

ヨウ「分かった!付き合うよ!」

アセロラ「本当!?やったー!」クルリン



ヨウ「…………はぁ」







ヨウ「ジュナイパー。とどめのブレイブバードだ」

ジュナイパー「ジュッ!」ヒュンッ

ド ン ッ !

ダダリン「」

アセロラ「ダダリン!」

アセロラ「また負けちゃった~」

ヨウ「……また挑んでくるつもりなのか……」

アセロラ「うん♪次は負けないよ!」

ヨウ「…………アセロラは……」

ヨウ「……アセロラは、どうして何度も勝負を挑んで来るんだ?」

ヨウ「今まで何十回何百回と戦った」

ヨウ「でも、アセロラが勝ったのなんて、たったの一度もなかったじゃないか」

ヨウ「……だのにどうして……」

アセロラ「……?」

アセロラ「そんなの決まってるよ!」

アセロラ「楽しいから!」

ヨウ「楽しい?」

ヨウ「……負けるのが?」

アセロラ「負けるのはちょっと悔しいけど……」

アセロラ「……うん。でもやっぱり楽しい」

アセロラ「強いトレーナーに勝てたらすっごく嬉しいしー……」

アセロラ「お互いにゼンリョクでぶつかり合うのも、バトルに勝つためにいろいろ試すのも、全部楽しい!」

ヨウ「…バトルが楽しい……」

アセロラ「……ヨウは楽しくないの?」

ヨウ「……どうかな。分からないや」

ーその夜ー

ヨウ「…………」

ヨウ「(結局アセロラはただポケモンバトルがしたかっただけみたいだ)」

ヨウ「(……バトルが楽しい、か)」

ヨウ「(僕には分からない……)」

ヨウ「(……でも、あの頃はどうだっただろう)」

ヨウ「(スイレンも言っていた……あの頃の僕は……)」

ヨウ「…………あ」

ヨウ「星が綺麗だ……」

ヨウ「初めてアローラに来た夜、偉く感動したっけ……すっかり忘れてた……」

ヨウ「……天井が壊されていなければ忘れたままだったな」

ー翌日ー

ヨウ「…………」

ヨウ「……バトルの……楽しさ……」

ピ-ンポ-ン

ヨウ「(…………今度は誰だ?)」




ママ「ヨウーー!ハウ君が遊びに来たわよー!」

ヨウ「……!」

ハウ「ヨウ。久し振りー」

ヨウ「……あぁ。久し振り」

ヨウ「とうとう本人が出て来たな」

ハウ「なんだー。知ってたんだー」

ヨウ「こんな短期間に次から次へと人が訪ねてきたら誰だって分かる」

ハウ「そっかー。この天井は?」

ヨウ「……残念ながら無関係だよ」

ヨウ「やったのがアセロラじゃなければハウに修繕費を請求していたんだけどね」

ハウ「それはやだなー……」

ヨウ「で、今日はどうしたんだ?」

ハウ「……俺ー、昨日見たんだー」

ヨウ「何を?」

ハウ「ヨウが戦ってる所」

ヨウ「…………それで?」

ハウ「あのさー……俺とも戦ってよ」

ヨウ「……」

ヨウ「どういう風の吹き回しだ?」

ヨウ「今更ハウが僕に勝負を挑むなんて」

ハウ「…………」

ハウ「俺……ヨウといくら戦っても勝てなくて、いつの間にか避けてたんだ」

ハウ「スタート地点は同じだったのに、いつも一歩先を行くヨウが怖かったんだ……」

ハウ「でも、こないだヨウと話して、それじゃダメだって思ったんだ」

ハウ「だから……ゼンリョクのヨウに俺は勝ちたい」

ヨウ「ハウ……」

ヨウ「(アセロラが言っていた……ゼンリョクでぶつかり合うのが楽しいって)」

ヨウ「(ハウと戦えば……僕にも分かるのか……?)」

ヨウ「……分かった」

ハウ「…………!」

ハウ「ヨウありがとー!」

ハウ「じゃあさー、場所を変えようよー」

ヨウ「どこに行くつもりだ?」

ハウ「着いて来てー。すぐに分かるよー」

ーリリィタウンー

ヨウ「ここは……」

ハウ「覚えてるー?」

ハウ「俺達が旅に出る時のお祭り……」

ハウ「あの時、ここで戦ったよねー」

ヨウ「ああ。もちろん覚えてるよ」

ヨウ「僕はモクローとアゴジムシを使ってたっけ……」

ハウ「俺はピチューとアシマリー」

ヨウ「ピチューの静電気に苦戦したなぁ……」

ハウ「それでも勝ったのはヨウだったよねー」

ヨウ「あぁ……そうだね……」

ハウ「……でも、今度は負けないよー」

ヨウ「…………!」

ハウ「前にヨウと会ってから……たくさん修行したんだー」

ハウ「島キングにはなったけど、あのままじゃヨウには勝てないからねー」

ハウ「グラジオやイリマにも手伝ってもらったんだー」

ヨウ「…………へぇ」

ヨウ「それじゃあ……せいぜい僕を楽しませてくれよ」ヒュンッ

ハウ「うん!」ヒュンッ

ヨウ・ハウ「「行けっ!」」

ポンッ! 

ヨウ「ジュナイパー!」

ハウ「ブースター!」

ジュナイパー「ジュッ!」

ブースター「ブー!」

ヨウ「ブースター……?」

ハウ「ライチュウを出すと思ったでしょー」

ハウ「イリマに教えて貰ったんだー。俺がヨウの意表を突けるとしたら、ここだーって」

ヨウ「なるほど……」

ヨウ「よし、戻れ!ジュナイパー!」

ヨウ「行けっ!ゲッコウガ!」

ポンッ!

ゲッコウガ「ッコウガ!」

ハウ「ブースター!あまえる!」

ブースター「ブィィ~……」スリスリ

ゲッコウガ「…………!」

ヨウ「攻撃力を下げられた……!でも構わない!」

ヨウ「ゲッコウガ!水手裏剣!」

ゲッコウガ「ッコウガ!」ヒュンヒュン

ハウ「電光石火!」

ブースター「ブイッ!」シュッ

バシャッ  バシャッ

ブースター「ブッ……!」

ヨウ「2発以外全て躱された……!」

ブースター「ブイッ!!」ドンッ!

ゲッコウガ「ッコォ……!」

ハウ「もう一回!電光石火!」

ブースター「ブイッ!!」ドンッ!

ゲッコウガ「!!」

バタッ…

ゲッコウガ「」

ヨウ「……!」

ヨウ「戻れゲッコウガ!」

ヨウ「(強い……!)」

今夜はここまで

なんかもうそこそこ長くなっちゃってアレなんでバトル適当に巻きまーす

ヨウ「行けっ!ウツロイド!」

ポンッ

ヨウ「パワージェム!」  

ドドドド

ハウ「ブースター!」

その後もヨウとハウ、二人の一進一退の攻防は続いた。

ヨウ「キテルグマ!アームハンマー!」

ハウ「ネッコアラ!ウッドハンマー!」

ヨウ「カプ・コケコ!ワイルドボルト!」

ハウ「ケケンカニ!ストーンエッジ!」

そして……

ヨウ「ジュナイパー!かげぬい!」

ジュナイパー「ジュパッ!」 

プスプスッ

ライチュウ「ラー……イ……」

ドサッ

ハウ「ライチュウ!」

ヨウ「これでお互い……」

ハウ「残るは一匹……!」

ヨウ「(正直、ハウがここまでやるなんて思いもしなかった……!)」

ヨウ「(最後に戦った時と比べると段違いだ……!)」

グッ…!

ヨウ「……!」

ヨウ「(いつの間にこんなに強く手を握って……)」

ヨウ「(手が汗だらけだ……)」

ヨウ「(こんなになるまで僕は夢中で戦っていたのか……)」

ハウ「俺の最後の一匹ー!」

ハウ「行くよー!アシレーヌ!」

アシレーヌ「オォン!」

ヨウ「ジュナイパーとアシレーヌ……か」

ハウ「まるであの時と同じだねー……!」

ヨウ「あぁ……!あの時も最後はモクローとアシマリで……」

ハウ「こうやって、手に汗握る勝負をしたなー!」

ヨウ「!」

ヨウ「(……そうだ!)」

ヨウ「(あの時もこんなに夢中になって戦ってたっけ……)」

ヨウ「(手が汗でグッショリになっても気づかないで……!)」

ヨウ「(それくらいにあの勝負は……!)」

ヨウ「……!」

ヨウ「(……思い……出した……!)」

ヨウ「(ずっと忘れていた……!この感情……!)」

ヨウ「(これが……!)」

ヨウ「(この掌にあるものが……!)」

ヨウ「(楽しいと思う……






















ヨウ「……はは」

ハウ「……?」

ヨウ「…………なぁハウ」

ハウ「どうしたのー?」

ヨウ「ポケモンバトルは……楽しいな」

ハウ「ヨウ……!」

ハウ「…………うん!」

ヨウ「ジュナイパー!」

ジュナイパー「!」

ヨウ「あれをやるぞ!」

ジュナイパー「ジュッ!」コクッ  

ヨウ「これを使うのは何年振りか……」

ヨウ「……でも、ゼンリョクポーズは身体が覚えてる!」

ヨウ「ジュナイパー!シャドーアローズストライク!!」

ジュナイパー「ジュパァァァァァァ!!」

ハウ「ヨウ……!凄いよ……!」

ハウ「アシレーヌ!俺たちもゼンリョクで行くよー!」

アシレーヌ「アォン!」

ハウ「わだつみのシンフォニアー!!」








ド ン ッ ! !

ジュナイパー「…………」

アシレーヌ「…………」

ヨウ「…………」

ハウ「…………」

ドサッ

ヨウ「!!」



アシレーヌ「」

ハウ「アシレーヌ!」ダッ

ヨウ「…………」

ヨウ「勝った……!」

ジュナイパー「ジュッ……」

ヨウ「ジュナイパー……ありがとう。よく頑張ったね」

ヨウ「それに、みんなも……」

ハウ「ヨウ」

ヨウ「ハウ……その……」

ハウ「……おかえりー」

ヨウ「…………!」

ヨウ「…………ただいま」

ーその夜ー

ハウ「えーー!ヨウいないのー!?」

ママ「そうなのよ。帰って来たと思ったらポケモンも何も持たないで家を飛び出して」

ママ「でも、元気になったみたいでよかったわ」

ママ「これも全部ハウ君やみんなのおかげね」

ハウ「そうかなー」

ママ「お礼にマラサダをたっぷり焼いたの!よかったら食べて行って!」

ハウ「やったー!おばさんありがとー!」

ーメレメレの花園ー

ヨウ「懐かしいな……」

ヨウ「ここでコスモッグがはぐれてリーリエと二人で探したっけ」

ヨウ「…………」

ヨウ「…………またリーリエのことを思い出してる」

ヨウ「アローラ地方に引っ越してきて何年も経つのにな……」

ヨウ「……どこを歩いても思い出すのはリーリエとの思い出ばかりだ」

ヨウ「……僕はこれからどうすればいいんだろう」

ヨウ「リーグに戻ればきっとすぐにチャンピオンに戻れる……」

ヨウ「……でも、僕にそんな資格があるんだろうか………」

ヨウ「…………いや。きっとない」

ヨウ「……僕はたくさんの人に迷惑を掛けてしまった」

ヨウ「こんな僕に……チャンピオンなんてする資格はないんだ」

ヨウ「…………バカだなぁ。僕は」

ヨウ「…………バカヨウだ」

ざわ… ざわ…

ヨウ「……ん?」

ヨウ「……なんだか騒がしいな」

ざわ… ざわ…

ヨウ「近い……!」

オニスズメ「「「グワーーーー!」」」

ヨウ「!」

ヨウ「オニスズメの群れだ!」

ヨウ「こっちに向かってくる……!よし、カプ・コケコの放電で……」

スカッ  

ヨウ「しまった……!ポケモンはみんな置いて来たんだ……!」

オニスズメ「「「グワーーーー!」」」

ヨウ「ッ!!」

ビリビリビリッ!!

ヨウ「…………!」

ヨウ「これは……電撃……?」

ヨウ「一体誰が……」クルッ

ヨウ「あ……」






ロトム「…………」

ヨウ「ロトム!」

ーヨウの部屋ー

ヨウ「この図鑑に入ってくれ。話がしたいんだ」

ロトム「…………」コクッ

ビビビ…

ロトム「…………」

ロトム『ヨウ……』

ヨウ「ロトム……よく帰って来てくれたね……」

ロトム『急にいなくなってごめんロト……』

ヨウ「いいんだ。……でも、今まで何処で何を?」

ロトム『……ボク、リーリエを探しに行ってたロト』

ヨウ「リーリエを!?」

ヨウ「どうして……」

ロトム『リーリエがいなくなってからのヨウは見ているのが辛かったロト……』

ロトム『だから……ヨウを元気にするために、リーリエに帰って来て貰おうと思ったロト……』

ヨウ「それで急にいなくなったのか……」

ヨウ「……それで、リーリエには会えたのか?」

ロトム『カントー中を探し回って、ついこの間ようやく会えたロト』

ロトム『……でも、パソコンに乗り移ってリーリエに事情を伝えても、リーリエは帰って来るとは言わなかったロト』

ヨウ「そうか……やっぱりリーリエはまう僕のことなんて……」

ロトム『違うロト!』

ロトム『リーリエは言っていたロト!』

ロトム『今はまだ帰らない……』

ロトム『でも、ヨウは強い人だから自分がいなくてもきっと大丈夫って……』

ヨウ「…………!」

ヨウ「買いかぶりすぎだよリーリエ……」

ヨウ「僕はそんなに強くなんかない……」

ヨウ「僕は一人じゃ何にも出来ない」

ヨウ「あの旅は君がいなければ、きっと試練を乗り越えることは出来なかった」

ヨウ「今回だって、ハウやみんながいなかったら僕は……」

ヨウ「僕は……君が思っているよりずっと弱いんだ……」

ヨウ「…………!」

ヨウ「…………そうか……分かったよ……」

ヨウ「僕がこれからやるべき……いや、やりたいことが……」

ロトム『ヨウ……?どうしたロト?』

ヨウ「…………ねぇロトム」

ヨウ「君に一つ、提案があるんだ」

ロトム『?』

ヨウ「僕と……ーーーー」

ー研究所ー

ヨウ「ククイ博士」

ククイ「ヨウ……久し振りだな……」

ククイ「……元気そうでよかったぜ」

ヨウ「……はい。御心配お掛けしました」

ヨウ「今日はククイ博士にお願いがあって来たんです」

ククイ「お願い?なんだ?言ってみろよ」

ヨウ「…………」

ヨウ「僕の代わりに、アローラ地方のチャンピオンになって下さい」

ククイ「なんだって!?本気か!?」

ヨウ「はい」

ククイ「……悪いが断るよ」

ククイ「だいぶ前にも言ったと思うが、俺はチャンピオンになるつもりはないんだ」

ヨウ「何もずっとって訳じゃないんです」

ヨウ「僕が挑戦者として、リーグに挑むまでの間で良いんです」

ククイ「……どういう意味だ?」

ヨウ「……僕は、もう一度島巡りの旅に出ようと思います」

ー1番道路ー

ロトム『本当に良かったロト?』

ロトム『ポケモンも道具も全部置いて来て』

ヨウ「……良いんだ」

ヨウ「あの旅……リーリエとの旅は大切な思い出だ。忘れるつもりもない」

ヨウ「でも、これから始まる旅は前とは違う。誰の為でもない、僕達だけの旅なんだ」

ヨウ「前の旅で得た物は全部置いて行きたい」

ロトム『なるほロト……』

ロトム『これからどうするロト?』

ヨウ「そうだな……」

ヨウ「まずはみんなに謝って、あとお礼を言いたい」

ヨウ「それから島巡りをして、僕とロトムの二人で試練を受けて……」

ヨウ「リーグに挑戦してチャンピオンなって……」

ヨウ「そしたら……」

ヨウ「一緒にリーリエに会いに行こう」







終わり

くぅ疲こ完です!
思ってたより長くなってしまいそうだったので最後の方は随分描写を省いてしまいました。
これがリーリエロスに対する一つの回答です。

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