魔法使い「マスター、ここは何処なの?」 (75)

のんびりと進んでいきます

山なし落ちなし

勢いだけで書いているのでネタ切れをすぐ起こします。ネタプリーズ



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1482151947

魔法使い「マスター、ここは何処なの?」

勇者「カニがおいしく食べれるところとして有名な街だよ」

魔法使い「それはいい」

勇者「ですがカニを買えるほどのお金はありません」

魔法使い「ふざけんな」

勇者「たっかいたっかい宝玉買ったのは何処の誰なんだか」

魔法使い「ごめんなさい」

宿屋のおばちゃん「いらっしゃい。ここはかにかま亭だよ。一泊200Gだよ」

勇者「あいよ」

宿屋のおばちゃん「100、200、300、400。きっちり400Gもらったよ。しかし二人旅とは珍しいね。夫婦か何かかい?」

勇魔「「違う」」

宿屋のおばちゃん「速攻で否定しなくてもいいのに。それじゃ、ごゆっくりー」

魔法使い「マスター、夫婦だって」

勇者「照れるな」

魔法使い「えー」

勇者「ひどい返しを見た」

勇者「お楽しみの物色タイムです」

魔法使い「よくするよ」

勇者「前泊まった人が忘れたものを発見すると、なかなか楽しくなるよ」

魔法使い「知りたくない喜び」

勇者「なにがあるかなっと」ガチャ

勇者「……」

勇者「今夜のご飯は何かなあ」ガチャ

魔法使い「何があったんだい」

宿屋のおばちゃん「ご飯ですよ」

勇者「かにかまご飯にかにかまの味噌汁。素晴らしいですね」

魔法使い「かにかまってカニだっけ」

宿屋のおばちゃん「なんだかあんたたちを見ていると愚痴を言いたくなるねえ」

勇者「何たる理不尽」

魔法使い「勇者オーラ : なんとなく顔を見ていると悩みを相談したくなる」

勇者「ないない」

宿屋のおばちゃん「実はここ最近鼠が大量発生していてね、食物ほとんどやられちゃったんだよ」

魔法使い「どうりで夕食が寂しいわけだ」

宿屋のおばちゃん「それはいつもどうりだよ。鼠の退治をお願いしたいんだけどいいかい? 明日も泊まるなら無料にするよ」

勇者「今日の分は取るんですね」

魔法使い「で、マスター。受ける? 受けない?」

勇者「もちろん受けるよ」

勇者「思っていたよりもしんどかった」

魔法使い「……」ハァハァ

宿屋のおばちゃん「お疲れ様。明日もよろしくね」

勇者「まじですか」

宿屋のおばちゃん「冗談よ。今日はゆっくりお休み」

魔法使い「明日もゆっくり休んでやりますよ」

次の日

魔法使い「ふわあ、よく寝た」

勇者「魔法使いはなんで飛ぶのん」

魔法使い「マスターはまだ寝てるな」

魔法使い「どうしたものか」

魔法使い「その辺でも散歩しようかな」


商人「あ、おはようございます」ガチャ

魔法使い「おはようございます。もしかしてお隣に?」

商人「ええ、ええ。昨日の活躍は聞いていますよ」

魔法使い「活躍というほど活躍できたかは疑問ですが」

商人「ははは、それもそうですね。せや、少し散歩しません?」

魔法使い「せや?」

商人「ああすいません、私西の方に住んでいまして、ちょっと気を緩めたら方言が出てしまうんですよ」

魔法使い「大変ですねえ。あ、散歩はいいですよ。私もちょうど仕様と思っていましたし」

商人「それはありがたい」

魔法使い「しかしなぜお一人で宿屋に?仲間はどうしたんですか」

商人「あー、少し長くなるけどいいですか?」

魔法使い「どうぞ」

商人「怪物が跋扈するご時世ですから、キャラバンで大人数で動いた方がいい。そして私もキャラバンに所属していました。ご存じの通りキャラバンには傭兵が必要でして、その任期がこの町までだったんです。そこで別の傭兵を雇いに行く。そのとき何を考えたんでしょうね、暇だった私は傭兵を見に行ったのです。これがいけなかった。そのときはすでにキャラバンの隊員と傭兵が談笑していました。おそらくスカウトは終わっていたのでしょう。まあそんなことはどうでもいいのです。問題はあの傭兵が私を見て発した言葉です。なんと言われたと思います?『女の商人もいるのか。はんっ、あんたには女中がお似合いだよ』っていったんですよ!いくら何でも酷いやろうと!酒も入ってたと思うで。だからといってうちの仕事否定する必要はないやろ!思い出してまたむかついてきた、一発殴ったろっかな」

魔法使い「で、そのあと喧嘩別れしてこの宿に着いたと」

商人「そういうことです」

魔法使い「あー方言じゃなくなっちゃった」

商人「え、方言のままでもいいですか?」

魔法使い「いいよいいよ。むしろ何がだめなの?」

商人「よううちんとこの言葉は怖い言われんねん。やからできるだけ減らそうと思ってたんやけどあんたがそう言うんならいいや」

魔法使い「怖いねえ。全くわかんないな」

商人「そう言ってくれるとありがたい」

魔法使い「まあ大変だったねえ。どう、ちょうど酒場見えて来しあそこで飲む?」

商人「日中働けへんのは辛いし流石にそれはやめておくわ。かわりといっちゃなんやけど、ちょっとつきおうてくれへん?」



商人「なーな、魔法使い。魔法使いはどうやってストレス発散する?」

魔法使い「マスターに当たるかな」

商人「あんたのマスター大変やなあ。うちは草原にある岩を魔法で壊して発散すんねん」

魔法使い「地形変わったりしない?」

商人「いや、うちの魔法はそこまで強力じゃないで。この発散方法は小説で知って、疑心暗鬼で試してみたらなかなか楽しくてびっくりしてん。やからあんたにも勧めようかと思ったけど地形変わるんか。そりゃ流石に進められへんな」

魔法使い「初級魔法ならせいぜい穴が開く程度だけど、それだとつまらないしねえ」

商人「と言うわけで外に出て行こうと思ったけど、なんか傭兵が素振りしてるな」

魔法使い「へーあの人が。朝練なんてえらいねえ」

商人「普通はすると思うで?あんたらが強いだけちゃう?しかし見つかったらやっかいやなあ。回り道でもするか」

魔法使い「そう言っているうちに見つかったね」

商人「あ、こっちにやってきよる」

魔法使い「あ、落とし穴にはまったね」

商人「哀れやなあ。……ちゃう!落とし穴ってどういうことや!?あのしたになんかあんのか」

鼠’s『ちゅー』

魔法使い「うお、鼠がたくさんでてきた」

商人「傭兵助けることになるのはなんか癪やけど、しゃーない。ファイヤー!」

魔法使い「フレア-!」

商人「おーおー見事に鼠と道路がやけていくわ。あれやな、うちいらんかったわ」

魔法使い「あはは、……!商人!後ろ!」

鼠「ちゅーっ!」キバカマエ

商人「し、しまった!」

商人「あれ?怪我してない?」

傭兵「ふん」

商人「傭兵!無事やったか!」

傭兵「鼠ごときにやられるようじゃ傭兵やってらんないからな」

商人「よっさっすがー!」

傭兵「ふふっ、落ち込んでなどいなかったようだね。……商人。あのときはすまなかった。君がかわいくて、その悪戯したくなった。そして、助けてくれてありがとう」

商人「う、うちがかわいい//」

商人「そうや。こちらもむきになって悪かった。そして助けてくれてありがとう。正直死を覚悟したで」

傭兵「大袈裟だな」

魔法使い「ほらそこ!痴話げんかしてないで次の鼠来るわよ」

商人「おうよ!」

傭兵「了解!うおおおおおおお」



魔法使い「ほれマスター起きろ。寝坊助マスター。起きなさい」

勇者「あと五分」

魔法使い「もー、今日はいろいろあったのにそれを全部寝て過ごすってどうなの?」

勇者「キスしてくれたら起きれそう」

魔法使い「ほれ」チュ

勇者「もう少し恥ずかみをもって欲しかった」ガバッ

魔法使い「今日は珍しくいろいろあったんだよ。朝散歩に行こうとしてさー……」

今日はここまでです。思った以上にキャラが勝手に動いて吃驚しています。それではお休みなさい

日差しがじりじりと辛い日。勇者と魔法使いの二人は、街の門が見えてきてから口を開いた。


魔法使い「熱い……。次はどんな街かな。楽しそうなところだったらいいけど」


勇者「それはそれは楽しいところだよ。コロシアムがあるんだって」


魔法使い「コロシアム? 殺しあうところだっけ?」


勇者「そうそう。あの街では殺すのはなし、魔法も禁止。どちらかが降参するまでのトーナメント戦なんだって」


魔法使い「え~魔法禁止か。じゃあ私は見学だね。マスターはでるの?」


勇者「もちのろん。腕試しにもってこいだと思うし」


魔法使い「果たして一回戦勝てるかな?」


勇者「そのくらいやってやらあ」

門前に着いた二人は、門番に審査を受けながらコロシアムについて聞いてみた。


門番「おや、あんたも大会参加者かい。困ったねえ。お偉いさんが宣伝しすぎたせいで、一日で終わらないような人が集まっているんだよ。もしかしたら抽選になるかもね。ま、健闘を祈っておくよ」


街に入ると、コロシアムはこちら!という看板があり、他にも参加を呼びかけるようなポスターもたくさん見えた。指示に従い進んでいくと、やたらとなれなれしい村人が話しかけてくる。


村人「ようこそ! 君たちはコロシアムの観客? それとももしかして参加者かな? 今回は参加者がめちゃくちゃ多いから、

   最初はバトルロワイヤル方式で残った8人でトーナメントするんだって! 知ってた? 知らなかったら僕の手柄だね!

   そうそう、もし見るのならあの『お髭倶楽部』と書いてある店がお勧めだよ! 有難いことにビールを無料でいただけるんだ。

   サイドメニューはもちろん払わないといけないけどね。え、他の街ではそれが普通?

   この街ではめったにないからおすすめなんだよ。そもそも会場で見たい? 無理言っちゃいけないよ。

   席はすでに売り切れ、見れるといったら空中でくらいじゃないかな。

   そんなことができるのは優秀な魔導士くらいじゃないかなあ。長時間飛び続けることのできる人なんてめったにいないもの。

   なんと! 君はできるのか! いいなあ、そんなに魔力があって。羨ましいよ。あ、コロシアムが見えてきたね。

   戦う者の受け付けは一番左だよ。いい試合を!」


舌の回り続ける村人と別れるて、受付を済ませると招集がかかった。


魔法使い「えーと、A~Hの8つに分かれて、そこで勝ち残った人を戦わせるんだって。頑張ってね、マスター」


勇者「おう。行ってくる」

勇者と別れた魔法使いは、早速コロシアムの上部に行き場所取りをすることにした。遠くてよく見えなかったので、自分に遠視の魔法をかけた。


意味があるかはわからないが、空中で胡坐をかいでいたら金髪の僧侶が寄ってきた。


僧侶「ここよろしいですか?」


魔法使い「どうぞー。そちらさんの連れもここに?」


僧侶「ええ。もう、あのばかたちったら。俺が一番になってやるって聞かないんですよ。あ、ばかたちって戦士と遊び人のことなんですけどね、

   遊び人のくせにコロシアムって不思議ですよね。正直どのように負けるかを楽しみにしているんです」


魔法使い「ひどい僧侶もいたもんですね。こっちは勇者が出ているんですけど、どこまで勝てるのでしょう。

     昔は強かったんですが、普段は私が倒しているので腕が鈍りに鈍りまくっているはずなんですよね。

     その分料理の腕が磨かれていました」


僧侶「あー魔法の楽さを知ってしまったら剣を使わなくなりますよね。しかしいざって時にそれでは困りますよ」


魔法使い「注意します。あ、Aブロックが始まるようですね。そちらのおばかさんたちは何処に?」


僧侶「二人ともAですよ。そちらの勇者さんは?」


魔法使い「Bです。戦うことができたらいいですねえ」


僧侶「ですねえ」

魔法使い「お、ばったんばったん切り倒している人がいますよ」


僧侶「あれがうちのおばかの一人です……。ああ、あんな目立っちゃって。周りから狙われていますよ」


魔法使い「それにしても斧の使い方がうまいですねえ。剣みたいに操っているじゃないですか」


僧侶「ふふ、筋肉はすごくいいんですよ。あとで触ってみます?」


魔法使い「あ、いいですか?」


僧侶「ええ」


遊び人「僧侶、一体何の話をしているんですか」


僧侶「お疲れさま、遊び人。帰ってくるの早くないですか?」


遊び人「降参したらすぐに追い出されるんですよ。薄情だなあ。で、そこのれでぃーはどちらさんで? あなたの彼女ですか?」


僧侶「私にそっちのケはないですよ。つい先ほどであった魔法使いさんです。あ、名前をうかがっても?」


遊び人「まだ知らなかったんですか」


魔法使い「魔法使いです。うちの勇者がこの試合に出ているので見ているんです」


遊び人「ほー、彼氏か何かですな? あ、そろそろ落っこちそうなので降ります」


僧侶「はーい。で、彼氏かなにかですか?」


魔法使い「違いますよ」


僧侶「えー」

観客の下に出ていくと、声の波が押し寄せてきた。久しぶりの大会に足が震えてくる。周りを見ると、


武器の手入れをしているもの、周りの選手とだべっているもの、威嚇を繰り返すものなどいろいろあった。魔法使いは見つからなかった。


きちんと剣が砥げているか不安になったので、勇者も手入れをすることにした。緊張した時間が過ぎていく。


周りの音が聞こえなくなるほど集中していたとき、肩がたたかれたので振り向く。


勇者「ええっと……」


剣士「もうすぐ試合が始まりますよ」


見まわしたら座っているのは自分だけで、武器を構えている人が多かった。


勇者「あ、ありがとうございます」


剣士「ええ。良い戦いをしましょうね」


そういって剣士は他の人の影に消えていった。親切な人に感謝しつつ、実況の声に耳を傾ける。

開始の合図が聴こえた。


金属音。金属音。金属音。


勇者にも剣を向けて来た。開いていた脇にカウンターを叩きこむ。綺麗に入らなかったようで、後ろから敵意を感じたがそれはすぐに消えた。


振り返ると縄を振り回すカウボーイがいて、勇者の剣に縄をひっかけていた。


剣を放り投げ、慌てたカウボーイの鳩尾に蹴りを叩きこむ。剣を拾い上げようとし、その間に斬りつけてきたエルフに拳を叩きつけた。


剣を構えると、そこには斧を持ったゴブリンがいた。斧を振りかぶり隙だらけの体に剣技を突き付けたが少しも痛そうにせず勇者に斧が向かう。


少し掠り、勇者は膝を折る。それに追撃をかけるゴブリン。


斧に剣を当て、軌道をずらし今度は完璧にかわした。


勇者「らあっ」


ゴブリンの足を集中的に攻撃し、よろめいたところに気合の一撃を叩きこみ倒した。


次は武闘家が仕掛けてきた。


武闘家「せい!」


勇者の頬に衝撃が走り、吹っ飛ぶ。


武闘家「ゴブリンを倒したからどれほどかと思ってみたが大したことがないな! 期待した俺が馬鹿だった!」


勇者「糞ッ」


武闘家の明らかな挑発に乗り、剣を振り上げたところに拳を叩きつけられる。一発、二発と後に響きそうなダメージを食らう。


小技で攻めるがすべてかわされ、また一発もらう。


勇者は武闘家に向かって剣を投げ、勝機をなくしたと思った格闘家はそれを躱し最後の一発を当てようとした。


しかし武闘家はそこで転んだ。


武闘家「縄だと!? いつのまに」


先ほど投げた剣に縄がかかっており、うまく武闘家の足にグルグル巻きになっていた。


勇者「やーッ!」


慌てた武闘家の腹を貫き、勇者は残り人数を確認した。


剣士「どうも、良い戦いをしようとは言いましたが、最後まで残るとは予想外でした」


そこには勇者と同じく満身創痍の剣士だけがいた。

勇者「俺もだな。どんな戦いになるか楽しみだ」


勇者と剣士は叫び、二人の剣が交わり合う。


一太刀一太刀が重くあたり、そのたびに会場は沸き上がった。


勇者「せェェェい!」


先に仕掛けたのは勇者だった。


横流しのフェイントをかけ、剣士の剣をはじき反撃にかかる。


しかし剣士はその勢いで一回転し勇者に斬りつけた。勇者は気力を散らし、終わった、と思いながら空を向き倒れそうになる。


そこで魔法使いを見つけた。目があったと分かった瞬間、何を考えたのか魔法使いはウインクをしてきた。


勇者は気力が戻ってきて何とか持ち直し、単純な自分に感謝した。


回転斬りの反動で動けなくなっている剣士に、上段斬り、斬り下ろしの二連撃を与えた。


実況の、うるさいくらいの声で剣士の倒れる音は聞こえなかった。自分が勝ったことが分かった勇者の意識も、そこで途切れた。

目を開けると、主張のない胸が見えた。


魔法使い「お疲れ、マスター。まったく、起きて最初に見るのが胸とは君はヘンタイだねえ」


どうやら魔法使いが膝枕をしてくれていたらしい。


魔法使い「ほらマスター、相手の剣士さんはすでに起きているよ。積もる話もあるだろうし、さっさと行こう」


魔法使い「なに? けが人相手にそれはないって? 回復魔法で完治したくせに何を言っているんだい」


魔法使い「ほらほら、そんなに文句を言わずに会いに行こうよ。次に対戦相手もいるよ」


勇者はぶーたれながら、そして嬉しそうに魔法使いについていった。

本日はこれで終わりです。戦闘描写って本当に難しいですね。参考にしようと家を探しても推理小説ばかり見つかるので困っていました。

おかげでbtcmを久々に思い出せたので良かったですが。

次は盛り上がりのある戦闘を書けたらなあ、と思います。

ローストビーフが焼けそうなくらい熱い声援が聞こえなくなるところに、その喫茶店はあった。



そこは、名がわからぬ花が咲き乱れ、幻想の中にいるような気分を味わえるようである。



コロシアムでの戦いがなかったかのように穏やかに過ぎていく店にとって、勇者、魔法使い、戦士、僧侶と剣士の五人はどこからどうみても異質だった。



そんなことは気にせず、彼らは話し続ける。



魔法使い「あれ? そういえば遊び人さんは何処に行ったんですか?」



僧侶「おそらく掛場巡りでもしていると思いますよ。お金全部すってこなければいいのですが」

勇者「あんたが次の試合の対戦相手か。よろしくな」



戦士「ああ、よろしく。にしても勇者の剣士の戦い、とてもよかったぞ」



剣士「あとは勝てたら文句なしなんですけどね」



勇者「俺にとっては文句なしの戦いだったな」



剣士「それは勝ったから当然でしょうに」



戦士「こんなところでぎすぎすすんなよ。あんたらはあれか? 戦闘狂なのか?」



剣士「負けた相手に勝ちたいと思って何が悪い」



勇者「男なら潔く負けを認め、命を差し出そうぜ」



戦士「そこまで潔い人はなかなかいねえよ」

勇者「まあそれは冗談だ。良い試合といえば戦士が戦っているところはすごかったな。周りが迫力だけでやられていくようだったぞ」



剣士「斧も素早く振り回せていましたし凄い腕ですよ」



勇者「実はとっても軽い素材でできていたり?」



戦士「持ってみるか?」



勇者「お、重。やっぱりあんたの力か」



戦士「疑っていたくせにやっぱりとはよく言うぜ」



剣士「普段どんな筋トレしているんですか? ぜひ教えてほしいのですが」



戦士「ああいいぜ、えっとな」

魔法使い「へー、徐々に回復していく魔法なんてあるんですね。勉強になります」



僧侶「あら? 魔法使いさんなら知ってそうだったんですが、案外ご存じない物なんですね」



魔法使い「あったらいいなーとは思っていたんですが、まさか本当にあるとは思ってもいませんでした。あとで呪文を教えてもらっても?」



僧侶「ええ、いいですよ。魔法使いさんはここから一つ山を越えたとこにある街をご存知ですか? あそこには魔導書をたくさん収めた図書館があって便利ですよ」



魔法使い「前に一度聞いたことがあったような気がします。次の目標はそこにしようかな」



僧侶「お勧めですよ」



魔法使い「では私からは商売が3か月繁盛する魔法を教えましょう。なかなか面白い発動方法でしてね



勇者「あんたはなんにもわかってない! 貧乳こそが一番だよ!  魔法使いみたいなつつましい感じがいいね! すごくいい!」



戦士「わかってないのは勇者だね! 巨乳こそが一番だってんだい僧侶を見てみろ! 隠す気のないこのボイン具合が素晴らしいじゃないか!」



剣士「あーあーあんたらはいいですねえ! うちなんて旅の相手0ですよ0! 乳房の大きさなんてどうでもいいので一緒についてきてくれる人がいないかなあ!」



僧侶「あんたたちは何の話をしているのッ」ボゴッ



魔法使い「だーれがつつましいかんじよ!」ボゴッ



剣士「殴ってもらえる人がいていいなあ」



勇者「いてて……。ふふ、いいだろう羨ましいだろう」



戦士「まあ慣れるとただ辛いだけだけどな」



剣士「その当たり前が羨ましいんですよ。あ、そろそろ昼休憩終わりそうですね。会場に行きませんか?」



勇者「行きましょう行きましょう」



剣士「あーさっき殴られたから負けちゃうなあ」



僧侶「よくそんなこと言えますね……」



魔法使い「じゃ、いきますよ! テレポート!」

会場は未だに熱気で包まれていた。


戦士は斧を二振りし、勇者は剣を一閃して観客を喜ばせた。


実況席で開設が終了し、客席は今か今かとしあいがはじまるのを待ちわびている。


先ほど見たばかりなのに、勇者は戦士の斧が一回りも二回りも大きく見えた。

勇者はいっそう気を引き締める。


戦士にとって、剣の相手はこなれた物であった。


以前剣で大会を格好良く制覇する人が現れてから、剣を使う人が爆発的に増えたのである。


稽古で、剣の相手には困らなかった。


今回もいつも道理上手くいくだろう、戦士はそう思っていた。


開始の合図が鳴り響く。


勇者と戦士は叫びながら距離を縮め、両者の刃を交える。


重さで負けている剣が押され、斧はさらに勇者の体に向かった。戦士に返り血がかかる。


勇者は負けじと連擊を与えるが、すべて余裕でいなされてしまう。


さらにもう一発喰らい、、勇者の体に斬り筋ができた。


持ち手を狙おうとし空振りし、もう一発。


勇者(畜生、なぜあたらない)


血だらけの勇者は、斬り下ろしを行うがまたもや交わされてしまう。

戦士「はんッ、もう力尽きたのか。太刀筋がかたつむりよりゆっくり見えるぞ!」

勇者の首に向かって斧が飛んでいく。


それを勇者はのけぞってかわし、戦士の顎に蹴りを入れる。


戦士がひるんでいる隙に、勇者は距離をとる。


戦士は咆哮しながら勇者に突進していく。勇者は反撃の体制に入った。


斧は横に振ったが、空気が斬れただけであった。


勇者はしゃがみ相手の脚に剣を向かわせる。


戦士は自分の血が散るのが見えた。


ひるみそうになるのを我慢し、斧を勇者の背中に斬りつける。


勇者は文字にできない悲鳴を上げて転ぶ。


戦士は追撃を行おうとしたが、先ほどの攻撃で痛めた脚が動かなかった。


戦士「らああッ」


叫んで痛みを和らげ無理やり脚を動かす。


勇者(なんとか座ることはできた、が戦士の重い攻撃を座ったまま防御出るとは思えない。どうする?)


戦士は右足を踏み出し、勇者の頭に狙いをつける。


勇者はその右足に一太刀を浴びせ、戦士に膝をつかせる。


勇者は追撃を浴びせ、戦士の体にたちまち傷跡ができた。


戦士の手首を斬ったとき、斧を手放してしまいあらぬ方向に飛んでいってしまった。


しかし勇者は斧を目で追っかけてしま
い、戦士の拳を顔面でくらって吹っ飛ぶ。


戦士が勇者に馬乗りになり、剣を奪う。


戦士「これで終わりだ!」


そういって、勇者の心臓に剣が刺さった。勝敗は決まった。

魔法使い「お疲れ様、勇者。死んじゃうかと不安で仕方なかったよ」


勇者「ありがと。いやー、最後心臓に刺してくるとは思わなかったよ。俺も死ぬかと思った」


戦士「はは、そうでもしないとさらに反撃が待っている気がしてね、それ以外のてが思いつかなかったんだ」


勇者「当分トラウマとして引きずりそうだなあ」


戦士「そう言い切れる時点で大丈夫だ」


勇者「そうか。ま、楽しい試合だったよ」


戦士「こちらもな。また戦えるといいな」


魔法使い「そんなこと言っている間に次の試合が始まるよ。早く見に行こう」


勇者「おう!し合いはどこまで行った?」


戦士「EブロックとFブロック王者の対決だよ」


勇者「寝てる間にだいぶ進んだな。よし、いこう!」


魔法使い「肩貸そうか?」


勇者「じゃあお願い」

本日の分終了。何かに覚醒したり頭脳戦を行わずに反撃させるのがすごぶる苦手です。どうにかこれが克服できるよう頑張ります。

ルーン文字がびっしりと羅列された壁の前に、雪が降っている割には軽い服装をしている二人組がいました。


二人のうち、良質な剣を持っている一人がしゃべります。


勇者「魔法が発展しているとは聞いていたけど、ここまでされると恐怖を感じてしまうな」


それに杖を持っているもう一人が答えます。


魔法使い「ここまで露骨に防御しているとあえて攻撃したくなるね、マスター」


奇妙な壁相手に評価していると、トロールほどの大きさはあるような扉が見えてきました。


門兵「いらっしゃい。ここは魔法の国コオル。新しい魔法を覚えるならもってこいだよ」


ふかふかしたものがはみ出す鎧を着た門兵が話しかけてきます。


勇者「ええ、私たちもそのために来ました」


門兵「見たらわかるよ。君たちが軽装なのはあれだろう? 体を温める魔法を使っているんだろう? 僕も覚えてみようかなあ!」


二言三言話した後、荷物検査をしてから街内に入りました。


門を潜った先では、雪で覆った家がたくさん見えました。中には雪で像を形作っている家もありました。


幻想的な風景が自分を見てくれ、というように人通りはまったくといっていいほどありませんでした。


特に何も考えず道なりを歩いていくと、大きな広場でやっと一人目にあうことができました。


それは綺麗な肌をした、とてもきれいなエルフでした。エルフは基本的に皆美形ですが、その中でも特に麗しげでした。


エルフ「ようこそ旅人さん! ここまで人っ子一人居ず吃驚したでしょう! この街は時間があったら魔法を学ぶような人がたくさんいるのよ」


大げさな身振り手振りを付けくわえながら、そのエルフは喋りました。


勇者「びっくりびっくり、ホビットの洞穴かと思ったら竜の巣だった時ぐらい驚いた!」


勇者は大げさに反応し、エルフを笑わせます。


エルフ「ははっ、さすがにそれにはかなわないよ!」


魔法使い「魔法の勉強ね。そう、私たちも魔法の勉強をしに来たんだけど、
どこかいい魔導書が置いてあるところはないかい?」


エルフ「それには中央図書館がもってこいだ! やってきた旅人は一人違わずそこによるよ!
ここで会ったも何かの縁、僕が案内しよう!」


勇者と魔法使いはエルフに旅してきたことを話しながら図書館を目指します。


エルフ「へえ、面白そうだね。私もこの町から出て旅をしてみたいけど、親が全然聞いてくれないんだ。
そんな暇があったら魔法の研究しろ、世界の不思議を解明するのだってね。
魔法は好きだけど、正直そこまで熱心に研究する気はないのよね」


勇者「へえ、魔法の研究ね。新しい魔法を作ったりしているの?」


エルフ「そんな人もいるけど、それは本当の天才だけよ。
私の親はない才能で何とか火の魔法を解明しようとしているみたい。
焔は何処から出てくるのか、原子はどのように動いているのかってね。
面白そうな課題だけど、生きているうちに達成できそうにないから興味を持てないのよ」

魔法使い「誰だってそんなものだよ。あ、ドーム状のものが見えてきたけど、あれがその図書館?」


魔法使いは街の中でも一際大きい施設に指を向けました。


エルフ「ええそうよ! 入り口では魔法で審査させられるんだけど、それがこそばゆくてかなわないのよ」


体中をくすぐられるような入り口を通り過ぎ、何層にも連なる本棚が見えてきます。


中は外から見た施設よりも大きく見え、実際空間系の魔法が使われているようでした。


一般小説や漫画は入り口に少しだけあり(といっても本棚62架空分ですが)、残る大部分は魔法関係の本で埋められていました。


そこには何人か本を探す人物が見えました。


二人は喋りたがっているエルフと別れ、それぞれの本を探しに行きました。


勇者は剣の魔法を調べました。剣身を変形させる、魔法を付加する、巨大化させるなどいろいろありますが、


その中でも材質を変化させる魔法に興味を持ちました。魔法というより錬金術に近い物でしたが、

それを習得することをこの街でも目標にしました。


魔法使いは、それはそれは貪欲に数々の本に目を向けます。


彼女を止めることは無理だと勇者は察していました。


図書館と宿を往復する日々が続き、約4ヶ月たったときに魔法使いは勇者に話しました。


魔法使い「マスター、待ってくれてありがとう」


魔法使い「全部はさすがに無理だけど、知りたい魔法はほとんど知ることができた」


魔法使い「奥を探るともっと出てきそうだけど、それだけで人生が終わりそうだからこれくらいで良しとくよ」


魔法使い「不老不死になる魔法? 一応あるらしいけど禁書扱いだからね。そこまでたどり着くことができないよ」


魔法使い「ほんとうは蘇生の魔法も知りたかったんだけど、ね」


魔法使い「やっぱりじっと魔法を学ぶより、旅に出るほうがいいや! マスター、さあ行こう!」


こうして勇者と魔法使いの旅は再開しました。

今日は少なめです。なんとなく魔法を学ぶ姿を描きたかった。
>>38
の最後の行を魔法使いが呪を唱え、大空に二輪の花火が咲きました、みたいなの入れようとしたけど忘れてました。
語り手ってですます調と特に何もないの、どちらのほうがいいのでしょう?

そこは好みになるし、人によるとしか…

>>40
ですよね

勇者と魔法使いが旅をしていたところに、馬を数匹連れたホビットと出会いました。


ホビット「おお、大きい人! 初めましてだ」


話を聞くと、冬ということで動きたがらない馬たちを説得させ、散歩させているところだそうでした。


ホビット「大きい人を見たのは何年ぶりだかなあ。あの時は親方が連れてきたんだったか」


ホビット「お二人は何処へ向かってるだ? 急いでなければ、おらの村に来てほしいだ」


ホビットの村は、彼らがいる場所から3マイル歩いたところにありました。


そこには木で建てた家、斜面を掘ってできた家(ホビット穴と呼んでいます)などいろいろありました。


勇者たちはその中でも一際でかいホビット穴に招待されました。


ホビット「親方! 帰っただよ! 今日はお客様もいるだ!」


親方と呼ばれたホビットは長い髭が特徴のお方でした。


親方「お帰りそしてお疲れさま。お客を連れて来るなんて珍しいなあ。物で釣ったのか?」


ホビット「そんなことありえねえですだ。大きい人たちと話しただけですだ」


親方「そうか、ならよかった!」


親方「旅人が来るなんて何年ぶりだろう! 今日は村をあげての宴だ!」

宴の準備はすいすいと進み、いつの間にか勇者たちの椅子も用意されています。


二人はホビット達に礼を述べ、親方のあいさつが始まります。


親方は話が長いことは有名で、話し始めると夢中になって他のことは耳に入らないのでその間にいろいろなホビットに話しかけられました。


ホビットA「ねえねえ、魔法使うことはできる? 一度見てみたかったの」


魔法使い「ほら、どう?」


魔法使いの手のひらに色が変わる光が現れました。


ホビットA「わあ、綺麗!」


ホビットB「二人はどんな関係なの!? 夫婦?」


勇者「旅の仲間だよ」


ホビットC「旅を始めた理由は何でしょう。私はこの村が気に入っているのでとても旅に出て行けそうには思えません」


魔法使い「私はマスターに誘われてだったなあ。マスターは?」


勇者「うんと、どうだったかな。そうそう、住んでいた町がなくなったから、それでしかたなく旅に出たんだ」


ホビット「将来おらも旅に出たいと思っていますだ。なにか気を付けることはあるんですだ?」


勇者「いろいろ?」


話が終わったのか、親方もやってきました。


親方「私の話を無視するなんてひどいなあ! おっと、そこまで申し訳なさそうな顔しなくていいよ。これはいつものことだ」


親方「そういえば、お二人は何処に向かっているんだい? 近くに国があるなんて話を聞いたことがないけど」


魔法使い「恥ずかしい話ですが、テレポーターのトラップに引っかかってここにとばされてしまったんです」


魔法使い「まあ帰ろうと思えば帰れますが、せっかくだからと歩いていたらこのホビットと会ったんです」


ホビット「おらのおかげですだ」


親方「へえ、じゃああんたらが会えたのはたまたまだったんだな」


勇者「まあ、そういうわけです」


ホビットD「自分の腕がどれだけできるか知りたいので、手合わせ願いますか?」


勇者「お、いいねやろうやろう!」


魔法使い「げ、もう行っちゃったよ」


親方「見に行かなくてもよろしいんですか?」


魔法使い「後で忙しくなりそうなので、今のうちに休憩しておきます」


ホビット「?」


その日、魔法使いはたくさんホビットの回復に苦労することになりました。

親方「もう行ってしまうのですね」


勇者「ええ、お世話になりました」


親方「また思い出したら来てくれ。それとこれはあんたらへのプレゼントだ」


魔法使い「指輪ですか?」


ホビット「おらが見つけただ!」


親方「なんでも魔力が増幅するらしい。魔法は使えないからよくわからないんだけどね」


魔法使い「すごい……。いいんですか?」


親方「昨日のお礼さ。いらなければ売ってしまっても構わない」


魔法使い「ありがとうございます」


勇者「では、行ってきます」


親方「お元気で! どんなつらいことがあっても我々がいる! それを忘れないように!」


ホビット「おらも成人したら旅に出るだ! そのときはよろしくおねがいしますだ!」


勇者と魔法使いは、振り返らずに手を振りました。

勇者は魔法使いに起こされました。


魔法使い「マスター、マスター起きて! そろそろ私たちの番だよ」


二人は現在、キャラバンに傭兵として乗っていました。


なぜそうなったかというと、時は戻って数刻前に戻ります。

オカマが多い街に来ていた二人は、綿菓子のようなピアスをした不思議なエルフが店員をしている見世物小屋の前で足を止めました。


エルフ「さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい
御用とお急ぎのない方はお顔だけでも見てお行きなさい
こちらの髭面のおじいちゃん、
ただの爺じゃございません
でっかいそりに二匹のトナカイ、空飛ぶところを捕まえた
自慢の服は返り血か、真っ赤に染まってございます
子供が寄ると袋から、どんどん武器を出しやがる
質量無視の不思議な老人一度見ておけば孫の代まで語り草!
お代は見てのお帰りだよ!」


勇者「見世物小屋か、胸糞悪いもの見てしまったなあ」


魔法使い「なんとかしたいのはやまやまだけど、あの爺さんを養うことができないからなあ」


勇者「町の人に押し付けるのはどうだろう?」


魔法使い「引き受けてくれそうな人いるかなあ」

二人であーだこーだいってお爺さんを助ける方法を考えていると、街の警察がやってきます」


警察A「あーもう天下の王道で見世物するなんて馬鹿じゃないの!? 警察B! 警察C! やっておしまい!」


警察B「んもう、警察Aも行くんでしょう!」


警察C「ジェットストリームアタックよ!」


エルフ「捕まるものか!」


エルフは太っているおじさんを軽々持ち上げ(おそらく魔法でしょう)警察Cを踏みつけて越えていきました。


勇者「よし、警察が追っているということはあのお爺さんをどうするか考えているはずだ。たぶん」


勇者「とっととつかまえて警察に突き出せば完璧だ!」


魔法使い「うーん、それでいいのかなあ。まいっか」


二人は魔法使いの魔法で空を飛んで追いかけました。逃げたエルフが見えてきます。


するとどうでしょう。なんと見世物小屋のお爺さんも走っているではありませんか。


エルフたちに追いついて、事情を聴きます。


エルフ「あはは、ばれてしまっては仕方がない。実はこのお爺さんと組んで商売をやっているんだ」


魔法使い「それって詐欺じゃ?」


エルフ「そうともいう。しかし僕たちに追いつくとはすごい実力だなあ!」


勇者(話題無理やり変えやがった)


エルフ「実は僕たちのキャラバンで傭兵の三人が死んじゃってね、新しい人を探していたんだ」


エルフ「そこでお願いだ。次の街まででいい、護衛をしてくれないだろうか?」


爺「金はたくさんあるぞ」


勇者「そういわれてもな。ちなみに次の街は何処に行くんだ?」


エルフ「水の都ワテアだ」


勇者「それならいいよ」


魔法使い「え、マスターいいの?」


勇者「こちらが損することは何もないし、断る理由が見つからないからね」


エルフ「感謝する。「まてー! 犯罪者どもー!」やばい警察が来たぞ! こっちだ!」


そうして現在、交代でキャラバンを見ているのです。

勇者「ふわあ、魔法使い、寝ている間に襲撃はあった?」


魔法使い「狼から数匹来た程度だって」


勇者たちは赤々と燃える焚火の前に行き、別の傭兵と交代しました。


それからなにごともなく時間が過ぎていました。


火に集まってくる虫と戦っていると、また別の傭兵がやってきます。


傭兵A「お疲れ、そろそろ時間だぞ」


勇者「お疲れ様です。先上がります」


傭兵B「いやー男女二人とは羨ましいねえ。こっちはむさくるしい男が二人だぜ。むなしくなるったらありゃしない」


魔法使い「あはは、それは大変そうですねえ」


傭兵A「こいつめー」


魔法使い「きゃーせくはらーにげろー」


くだらないことをして遊んでいると、矢が三本飛んできました。


一本は傭兵Bの額、一本は焚火の中、一本はキャラバンのタイヤに当たりました。


傭兵A「糞ッ、誰だ!」


遠くの茂みを見るとオークが弓を構えているのが見えます。


勇者はそこに向かって走っていきました。


勇者の後ろの茂みから剣や斧を持ったオークが出てきます。


魔法使いは呪を唱え、火球を飛ばしました。火球は綺麗な弧を描いて飛んでいき、オークたちを倒していきます。


傭兵Aはキャラバン内に応援を呼び帰ってきました。


エルフ「眠っている間にこんなことが! ああ憐れ傭兵B。敵は私たちが打ちます!」


爺「こんにゃろう……。それあんたら! 勝利の武器じゃ! おや、これは?」


爺さんは袋から様々な剣を取り出して応戦しに来た仲間に渡していきます。

勇者がオークを倒しながら進んでいくと、ひときわ大きなオークが出てきました。


何やら雷をまとった剣を持っているのが見えます。一振りすると、雷の斬撃が飛んできました。


勇者は剣をゴムにかえ電気を無効化します。その間にオークは勇者につめてきて、斬りかかった来ます。


剣をミスリルに変え応戦しますがタイミングが少し遅く、剣から手を放してしまいました。


もう一撃食らわせに来ました。しかしそこに一つの剣が目の前をよぎり、何とか当たるのは回避します。


爺「勇者どの! その剣はとっておきじゃ! 手に取るがよい!」


先ほど爺が袋から取り出した、剣身に太陽とその周りに星が描かれた剣でした。


勇者は拾い上げると、力が湧き出てきます。いまなら走ったら世界一になりそうなくらい、スピードが出る気がします。


雷をまとった剣が振られます。そこに勇者はいませんでした。


勇者「そらっ!」


後ろから大きなオークを斬って上下に分かれさせます。他のオークは帰っていきました。


勇者「これはいったい? この剣があると、できないことができるよな気がします」


爺「そいつはずいぶん前、エルフとドワーフが仲良くしていた時代に作った代物でな、手にしたものにはるかなパワーをもたらす剣じゃ」


爺「恐ろしく速いスピードで移動でき、人が見ればテレポートに見える。それに耐える肉体にもなる。簡単に言えばかなり強くなるんじゃ」


爺「懐かしいなあ。まだこんなものが残っていたのか」


勇者「それはすごいですね」


爺「そいつはお前にやろう。袋の中の剣は持ち主を見つけると出てくる。この剣はあんたに使ってほしいようじゃな」


勇者「剣に意思なんてあるんですか」


爺「この世にあるものはすべて意思がある。箪笥だろうと土だろうと。石にも意思があるな!はっはっは」


キャラバンに戻ると、三人分の墓が立っていた。


魔法使い「お疲れさま。うん? その剣は?」


勇者「爺さんに貰った。めちゃくちゃすごい剣だよ」


魔法使い「うへえ、全然わからない」


夜が明けてから、キャラバンは進みだしました。

今日はここまで
クリスマスなんて消えればいい

勇者は、新たな剣を手に入れてから大活躍の日々を迎えていた。敵が現れたら時が止まったかのようにすぐに倒し、それを見た人々が口々に伝えるのである。勇者は敵なしであった。


そんなある日、勇者と魔法使いは思ってもいなかった人たちと再会することになった。


戦士「久しぶりだな、勇者。活躍は聞いているよ」


それはコロシアムで勇者が戦って負けた戦士であった。


勇者「久しぶり、戦士。それはよかった。ところで僧侶と遊び人は?」


戦士「あはは、実は喧嘩別れしちまってな、今は一人なんだ」


魔法使い「へー、もったいないことをしたんだねえ」


戦士「いや、いつかは仲直りしてやるさ。いつかな」


戦士「ところで二人は泊まる宿決まっているか?実はお薦めがあってさ、飯もうまくて安く止まれるところがあるんだ!」


勇者「おお!それはいい!是非教えてくれ!」


戦士「ここから近くなんだ。ついてこい」


宿を予約した二人は、戦士と何があったかを話して楽しみました。しかし戦士は笑ってはいたものの、心から楽しんではいないようでした。勇者と魔法使いは僧侶達と分かれたことを引きずっているのかなと思っていました

そしてその日の夜。梟のホホーという声が聞こえる中、勇者達の宿の扉は静かに斬りとられました。


そこから戦士が入ってきます。


戦士「………こいつが噂のとても強くなる剣か」


戦士「こんなにすごい業物を持っているんだ。積極的によいことに利用しないってことが理解できないな」


戦士「そういうわけで、こいつはもらっていく。……あいつらのためにもな」


そういって、戦士は勇者の剣を手に取ります。


戦士「すごい!これはすごいぞ!どんどん力が湧いてくる!斬られて出てくる血のように力が出てくるぞ!」


戦士「よく王族は目をつけなかったな、これさえあれば他国を攻めるのは簡単だというのに!」


戦士「ははははは!ははははは!」


戦士は狂った声で笑いました。そして笑ったまま、勇者の心臓にぶすりと剣を刺しました。


戦士「ははははは。ふう、すまないな勇者。証拠隠滅ってやつだ」


戦士は次に魔法使いを手に掛けようとしました。

魔法使い「戦士!いったいどうして!」


戦士「おっおと!起きてしまったか魔法使い。だがこの剣がある限りあんたは一瞬で殺せる。諦めるんだな!」


戦士「どうして?そうだな、どうしてだと思う?言わなくてもわかるだろう!圧倒的で最強な!負けることのないパワーが欲しかったんだよ!」


戦士「こいつさえありゃどこにでもいける!国相手にだって戦える!」


魔法使い「以前戦ったあんたはそこまで力に執着してなかったはずだ!それが急にどうした!」


戦士「以前!?以前だと!?」


戦士「少ししか会ったことのない奴に何がわかるってんだ!」


戦士「俺は力を求めていたさ!誰よりも誰よりもな!」


戦士「この世は生き抜くには力が必要だ!力なき者は憐れな生活しかできぬ!わかっているだろう!」

戦士「僧侶がいてくれたおかげで、力を求めることは少なくなっていった。僧侶は力以外の大切なことも教えてくれた」


戦士「それがあのクソッタレ遊び人め!金を全部カジノの町で使いやがったんだ!」


戦士「その上借金間でしていた!遊び人は鉱山に連れて行かれ、俺たちまで捕まりかけた」


戦士「僧侶は命を犠牲に俺を逃がしてくれた。俺は助かったんだ」


戦士「だが助かったのは俺だけだ!僧侶がいない世に俺は興味など、ない!」


戦士「俺はこいつを使って蘇生の魔導書を手に入れ、絶対に僧侶を生き返らせる」


戦士「使えなかったら使える奴を脅して使わせる!それができなかったら明日はない!」


戦士「あんたらもいつか生き返らしてやる!だからさっさとここで死ねえええええええええええええ」


魔法使い「テレポートッ」


戦士が振った剣には、魔法使いの血もべっとりとついていました。


戦士「ち、逃げられたか。だかそんな体で生き残れるかな」


戦士「いや、そんなことはどうだっていい。早く魔法図書館へ向かわないとな」

今回はこれで終わりです。お休みなさい

「魔法使い! しっかりせー!」


どこからか、聞こえてくる声が頭を響く。


「賢者あんたほんまに回復魔法かけてんな!」


「あ、ああ」


五月蠅いなあ。早く聞こえなくなればいいのに。


「死んじゃいやや! さっさと起きてこんかい……」


だんだん声に元気がなくなっている。やっと静かになった。


しかし何か重要なことを言っていたような、死んだらいや?


あれ、確か私は戦士に斬られたままテレポートして。


魔法使い「げほっ、ごほっ。そうだった、マスターを助けに行かないと」


私、魔法使いは起き上がります。そこでいきなりタックル食らった。


商人「魔法使い! 良かったあ、死んだか思ったわ!」


魔法使い「痛い痛い痛い! 死ぬっ死ぬ―!」


くそう、商人のせいで本当に死ぬかと思った。


でもなぜ?


商人「いやあ不思議なもんやな。前の街で物売ってたらいきなり目の前にあんたが現れたんや」


賢者「そこでちょうど通りかかったわたくしが回復魔法をかけまして、施設に移したのです」


そういやこんなやついたな。ちょうど通りかかるってありがたいなあ。親切な人もいたもんだ。


いや、あれ? コイツ前にも見たことあるような気が。確か戦士と一緒にいた


賢者「私です。元遊び人です。覚えていますでしょうか?」


魔法使い「そうだ! 遊び人だった! 道理で見たことあるような気がしていたんだよ」


商人「え、なんや。知り合いやったんか? まあ思い出話に花を咲かせるのは後でええ。魔法使い、何があった? あんたが血だらけで倒れるって相当なもんやで。噂では最強になった勇者もいるんやろ?」


私は二人に事の顛末を放した。遊び人のこともしっかりと。

商人「そんなことがあったんか……」


賢者「それは、その、すいませんでした」


賢者の言葉に腹が立ってくる。


魔法使い「すいませんって、それだけ! どうしてあんたがここにいるの!? あんたがいなかったら戦士がああなることもなかった! マスターが死ぬこともなかったんだ!」


賢者「ほんとうに、すいませんでした」


商人「あんたがそんな奴やったとはな。感謝して損したわ。で、ほんまに何で鉱山行きになったやつがいるんだ? それに遊び人を捨て賢者になるって、相当なことやと思うけど」


賢者「確かに私は、鉱山で奴隷として働いていました。毎日掘っては運び掘っては運び。次第に心は無になっていきます」


賢者「そんなある日、転機がおおずれます。どこからか、悲鳴が聞こえてこえるんです」


賢者「しか、悲鳴はだんだん近くいやってきます。恐怖を忘れた私は、また誰かがお仕置きが受けているのか、程度に思っていました」


賢者「そして、血で真っ赤になったホビットがやってきて言いました。『あんたが、ここで働かされている最後の奴隷だな。助けに来た。さっさと逃げるだ』と」


賢者「私は感動しました。からっぽの器に水が流れてくるように、心は満たされていったと思います」


賢者「そうして私は世のため人のために動くことを誓いました。そのためには力が要ります。自分で言うのはなんですが、それはそれは勉強しました」


賢者「いずれ私は賢者と呼ばれるようになり、本当に賢者になりました」


賢者「私は旅を決心し、ひとまずはこの町に来ることにしたのです」


魔法使い「そうだ、聞くのを忘れていたけど、ここは何処? 一体どこにとばされたの?」


商人「(お、怒りが収まってきたみたいやな)ここは帝国エンピレや。自分でテレポートしてきたから知っているもんやと思っていたけど、そういうものじゃないんやな」


魔法使い「テレポートの時に斬られたから、座標が間違っていたのよ。下手したら石の中なんかにとばされていたわ」

商人「へえ、で、賢者はこの国に何しに来たんや?」


賢者「ここは貧富の差が大きいと聞きます。なので貧しい人たちに、知識を授けようとやってきたのです。そうして商人の前に通りかかったら現れる魔法使い」


賢者「私は慌てました。正直戦士と何があったかは知られたくなかった。最初は回復だけさして消えようと思っていたのです」


商人「でも回復できそうなやつがここにはコイツしかおらんかったから、うちはこいつに無理やりおらせたんや」


魔法使い「そんなことが……」


商人「長くなってしまったが本題や。魔法使い、あんたはどうする?」


魔法使い「私は戦士を倒してマスターを復活させるわ」


賢者「戦士を倒しに行くのは無謀とも言えます。それに使者を復活させるのは世の理に反している。そんなことをしてもいいと?」


魔法使い「私にはマスター、勇者しかいないもの。たとえほかの人と付き合うのを勇者が望んでいても、私はマスターを追いかけるよ」


商人「かっかっか、よう言ってくれたわ! じゃあ戦士はどうやって倒す?」


魔法使い「ここまで行っといて人任せになるけど、国に知らせて任せることはできないの? あんな凶器が狂人に渡ったのよ。退治しないと大変なことになるよ」


商人「いや、それはないと思うで。うちもなんであのド腐れ王族たちが勇者の剣を狙わないか気になって調べてみたんや」


商人「すると驚くことが分かった。まあ今は陰謀論の域を出ないんやけどな、何でもそれぞれの国は近くの国を数秒で消すほどの神器をぎょうさんもってるらしいんや」


商人「勇者の剣なんて遅るるに足らずってことやな」


魔法使い「それなら安心ね。いや、いや。それならもう戦士は退治されているんじゃない?」


商人「……あー、確かにそうやな。知らせるまでもなく今は牢屋の中にいそうやなあ」


賢者「これまでの議論、意味なかったですね」


魔法使い「じゃあ次。勇者を復活させる方法よ」

戦士は混乱していた。無敵になったと思っていたのに、なんだこれは、と。国に近づいたとたん下半身は吹き飛ばされ、次は上半身に恐ろしいスピードで火球が飛んでくる。


もう死ぬな、と覚悟した。結局、僧侶を助けることはできなかった。その上こんなことをしてしまったのだ。僧侶と死後の世界で暮らすのも不可能だろう。


ああ、やってしまった。こんなことなら先に遊び人を亡き者にするんだった。遊び人め、遊び人め。呪ってやる呪ってやる呪ってやる……


『戦士、戦士や。人の憎しみで起こされるのは何百年ぶりだろうなあ』


火球が、いや世界が止まった。どこからともなく声が聞こえてくる。


『ふん、そこまで驚くことか。こんなこと造作もないわい。いや、すまん嘘をついた。いまは時を止めるくらいの力しか残っておらん』


『なに? それで十分じゃと? 馬鹿め! 時間の壁など数国は簡単に超えて来るわ! だからさっさと要件を放そう』


『戦士よ、力がほしいか? ワシにその体、預けてみようと思わないか?』


『フォッフォッフォ。それでいいんじゃよ。さあ、体をゆだねい』


その日、いくつかの国が地図から消えた。

魔法使い「なっ、国が消えた!?」


商人「ああ、しかも図書館の本まですべて消えたらしい」


賢者「本まで!? 一体戦士は、何を考えているんだ!?」


商人「わからない……。どうして? どうしてなんや?」


慌てる三人の下に、兵が現れる。


兵「魔法使いですね? 勇者様殺人事件の容疑者として疑いがかかっています。ご同行願いますか?」


商人「な、なんでや! 魔法使いが犯人なわけがない! 話を聞け!」


魔法使い「いや、いいの商人。なんとなくだけど、これは捕まえに来たというより……」


兵「おっと、それ以上喋ってはいけません。そうですね、協力者ということで、お二人も来ますか?」


商人「ああ、そういうことか。うちもついていく」


賢者「わたくしも行きましょう」


三人が案内された部屋は、王の食事に使うような長い机のある部屋だった。


兵「ではお座りください」


三人は指示どうりの場所に座る。


帝王「突然の拘束、悪かったな。だが事態が事態だ。理解を願いたい」

帝王「魔法使い、聞かせてくれ。あの剣、勇者が手にした輝かしき剣は、どこで、どのように手に入れた?」


魔法使い「数年前、キャラバンでオークと対峙したところ、赤い服に大きな袋を持った太ったお爺さんにもらったのです」


帝王「はん、それはまさにサンタクロースではないか。サンタとサタン、な。上手いとでも思っているんだか」


帝王「そいつは悪魔だ。人をたぶらかし、暗黒の世界にいざなう魔王の使途だ」


魔法使い「悪魔、悪魔だって! そんな奴が近くにいたなんて……」


商人「ということはその剣は悪魔の力でもあんのか? それになんでその剣を悪魔は勇者に渡した? しかもあんたらは何でそれを知っているんだ?」


帝王「質問はひとつづつにしておくれ。まずその剣だが、何と魔王が封印されている」


魔法使い「魔王? 魔王というと神が命を犠牲に封印されたあの?」


帝王「ああ、そいつだ。魔王は人の怒り、憎しみ、嫉妬なんかのマイナスの感情を吸って力を蓄えていた」


帝王「そうして今、復活した。戦士の器を借りてな」


帝王「二つ目の質問だが、勇者は、実は勇者は神の生まれ変わりなんだ。鍛えるといずれはこの世のすべての力を超える恐れがあった」


帝王「そこで悪魔はあえて強くなる武器を渡し、それ以上強くならないようにしたんだ。もし国に攻められたら、今以上の力を与えるつもりだったらしい」


帝王「そして、力に憧れた戦士がその剣を手にする。本来は体に合わない力を与え、崩壊させるつもりだった。しかしそこで、魔王は戦士が桁外れな憎しみを持つことを知った」


帝王「ああなんということだろう。魔王はその憎しみを吸収し、復活目前となる。だがそれだけではまだ自分の体を手に入れることはできなかった」


帝王「そこで戦士の器をのっとり、今に至るというわけだ」

帝王「最後の質問だな。どうして知っているかだって?」


帝王「簡単なことだ。私のとこの巫女が神様からお告げをもらったんだ。その時にこのことを聞いた」


帝王「それが今までのことだ。何か質問は?」


魔法使い「神様と神は別なんですか?」


帝王「神様は神が最初に作った人類だよ。力調整を間違えたのか、半端ないパワーを持っているけどね」


商人「ちゅーことは魔王は神様に任せたらええってことやねんな?」


賢者「では、なぜ私たちをここに連れてきたんですか? 神も、神の生まれ変わりももういない。ならばそれを伝えたところで意味などない気がしますが」


帝王「はは、なぜかって? 何故だと思う?」


帝王「その魔王様は神様なんだよ! ああ、言ってしまいました! 言ってしまいましたよ魔王様! これまで敬称を言えなくて辛かった。様を言わないたびに心臓に薔薇のとげが刺さる気分でした!」


帝王「それなのに勇者に復活してもらっては困る! そなたらは勇者を生き返らせるつもりなのだろう! 馬鹿なことはよせ! これからは魔王様の時代だ!」


帝王「やってくるぞ、逆らうものは死に、気まぐれで国が消える世界が!」


魔法使い「そんな世界の何がいい!」


帝王「ふふふ、あはははは! 約束してくれたのだ、魔王様は私を側近にしてくれるとなあ! これで隣国に震える日はなくなる!」


賢者「それで周りの国はどうなってもいいと?」


商人「ええ根性してるわ! こんな自分勝手なやつに帝国は王を任せてんのか!」


帝王「あーはっはっは! 残念ながら貴様らは閉じ込められた! 此処から出すことはできない!」

魔法使い「フレアー!」


帝王「効かん効かん! この部屋で魔法を使うことはできないのだ!」


商人「だったら刃物を使うまでや!」


帝王「これでも私は帝国一強いといわれた男だ! 魔法なしだと負けることはない!」


賢者「昔のことを自慢されても、ちっとも怖くはないわあ!」


帝王「こ、これは!?」


賢者「魔法無効を解除しました! いたちごっこならどこまでも付き合えますよ!」


魔法使い「ナイス賢者! 今度こそ……フレアー!」


帝王「こんなことは聞いてなっ、ま、魔王様あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


商人「ふう、おつかれさん」


魔法使い「場内物色してから街に戻りましょうか」

賢者「やはり、勇者の遺体は回収されていましたか」


魔法使い「警察のところだよね」


商人「うちにまかせとき。警察にはいくつか当てがある。その間に魔法使いは勇者を復活させに行き!」


魔法使い「賢者も商人と残って! もし敵がいたら厄介だわ!」


商人「その心配には及ばん! 助っ人を呼んだ!」


傭兵「おひさしぶりです、魔法使いさん」


魔法使い「商人とは仲良くできているようだね。よかった、賢者、いくよ!」


賢者「はい!」


商人「あ、まてまて、こいつを持っていけ。お代は後で結構や」


魔法使い「お金は取るんだね。えと、これは?」


商人「ディアブル・ラディーセン・フレア。以前エルフから買い取った魔導書や。えらく勉強熱心なエルフやったな」


魔法使い「ありがとう! いってくる!」


商人「しっかりやれよー!」


魔法使い「そっちこそ!」

賢者「しかし魔法使い、勇者を復活させるあてはあるんですか?」


魔法使い「う……」


賢者「正直、私は死者の復活には反対です。事件の元凶が何を言う、と思いますがそれでも私は駄目だと思う。たとえ世界の危機だろうと」


賢者「しかしあなたの思い、十分伝わりました。協力しないわけにはいかないでしょう」


賢者「死者は、不死鳥の血を飲ませると生き返るといわれています。そして不死鳥は近くの火山に住んでいる」


魔法使い「火山、ね。わかったわ、スピード上げるよ! アクセラレーション!」

門番「まて! 貴様魔王の手下か! 通さないぞ!」


魔法使い「ファイヤー! ごめんねっ」


賢者「此処が噂の」


魔法使い「不死鳥でてこい! あんたは私が相手をしてやる!」


不死鳥「ほう、貴様が私を殺してくれるか」


賢者「長生きしてだいぶ参っているようですね」


魔法使い「死ぬなら魔王に頼みなさい! 今欲しいのはあんたの血! さっさと出しな! アイシクル!」


不死鳥「血! 血だと! 生き返ることの悲しさがなぜわからぬのだ! いいだろう、そっちがその気ならやってやる! ファイア!」


賢者「ウォーターウォール!」


不死鳥「その程度で防げる炎ではないわあ!」


賢者「ぐ、しょうがない。魔法使い、手を貸してくれ!」


魔法使い「なんだ賢者! どうすればいい!」


魔法使い「!? それでいいんだな、わかった!」


不死鳥「ほう、どうするつもりだ! 不死鳥の炎は永遠不滅! 近づくことも許さんぞ!」


魔法使い「テレポート!」


不死鳥「な、テレポートだと!? どこに行くつもりだ!」


魔法使い「後ろだよ!」


不死鳥「こんなに近くでテレポート!? 死にたいのか貴様!」


賢者「あなたがいれば復活できるでしょう!」


不死鳥「なっ、手が翅と重なっている! ぐあああああああああああ」


魔法使い「テレポートで物と重なったらどうなるかはいまだに解明されていない! でも生物と重なったら血が出るのは事実! 貰いましょうかあなたの血を!」


賢者「これで血は手に入れました! ずらかりましょう!」


不死鳥「ま、待ちやがれ!」


魔法使い「テレポート!」


不死鳥「畜生」

瓶いっぱい不死鳥の血を手に入れた魔法使いたちは、帝国に戻ってきました。


商人「いいタイミングで戻ってきたな! 勇者の死体はこれや」


傭兵は勇者の遺体を床に置き、商人は魔法使いに目配せをします。


魔法使いは商人にうなずき、勇者の近くに来ました。


魔法使いは勇者の体に、不死鳥の血を一滴たらします。するとどうでしょう。勇者の体が光りだすではありませんか。


肉体の傷が再生していくのを見ることもできます。そして、腕がびくっと振るえました。


魔法使いは涙を流して勇者に抱き着きました。


魔法使い「勇者! 勇者ぁっ!」


勇者「ん? おはよう魔法使い。ここは何処何だろう」


魔法使いたちは勇者に今までのことを話しました。


勇者「俺が神様の生まれ変わり、ね。信じられないなあ」


魔法使い「それは私たちもいっしょだよ」


勇者「でも今のままでは結局魔王に勝てないんじゃないのか? あの剣での戦いを慣れてしまった今、通常よりも弱くなっているはずだけど」


商人「ぱーっと覚醒してくれたら楽やねんけどなあ。そう簡単にはいかへんか」


傭兵「賢者さんは何か案はないですか?」


賢者「覚醒については分からない。だが、僧侶を復活させて戦士がどんな反応するか、それが気になるな」


勇者「憎しみがそうそうなくなることはないと思うぜ?」


賢者「その憎しみは魔王が吸収している。今なら元に戻すことも可能かもしれない」


魔法使い「よし、それをためしてみましょう。で、僧侶の遺体は何処に?」


賢者「おそらくカジノ街の肥料となっていると思います」


魔法使い「あー、お金消えそうだからそこいったことないのよね」


賢者「わたくしが案内しますよ。行きますよ。テレポート!」

カジノ街は、かつての影など残っておらず死体の山だけ気づきあげられていた。


賢者「そ、そんな」


そして中央に座る黒い影。


戦士「ふっ、遊び人。まさか鉱山から脱走しているとは思わなかったぜ。いやあ鉱山に行ってもものぬけの殻でさ、あれ? いつの間にか俺此処潰してた? っておもっちゃったよ」


そこには魔王に取りつかれたはずの戦士がいた。


戦士「そんな泣きそうな顔しなくてもいいだろう? ははっ、別にいいんだ。僧侶が死んだこと気にすることはないよ」


一歩。


戦士「だから遊び人、いや遊び人か? そこの勇者を殺してくれたら許してやる。俺の敵が減る、お前は俺と仲直りできる。一石二鳥だろう?」


また一歩近づいてくる。


戦士「だから勇者を殺すんだ。さあ! さあ! さあ!」


賢者「ッ」


そして賢者と頭がくっつくところまできた。


賢者「お断りします!」


戦士(改め魔王)「そォいうと思ったよ賢者ァ! 戦士が許す!? そんなわけがないだろう! 今でもこいつは心でぐつぐつ憎しみの心を抱いておる!」


賢者「そうだと思いましたよ! フレア・ハリケーン!」


魔王の周りに炎の渦が吹きあがる。


魔王「ずいぶんなご挨拶だなあ賢者よ! 遊び人賢者! 愚か者賢者! その程度で儂を殺せると思うな!」


魔王が呪を唱えると、炎の龍が現れ賢者を飲み込もうとする。賢者は水の魔法で何とか直撃を避ける。


魔法使い「商人は傭兵と逃げて! 勇者、行くよ!」


勇者「ああ!」


勇者が魔王を斬りつけに行き、魔法使いが呪を唱え始める。


魔王「遅い! 遅いわ!」


魔王は一歩で距離を詰め、勇者を斬りつける。


その勢いで魔法使いの下に行くが賢者に防がれた。


賢者「この先は通させません!」


賢者は杖ごと真っ二つにされ、上半身は遠くへ飛んで行った。


魔王「おおっと、殺してしまったのお! まあこれだけ憎しみを集めれば上出来じゃ! 魔法使い、貴様で最後じゃあ!」


魔王は剣を振り上げる。そこで勇者は光だした。


魔王「時よとまれ! ふう、危ない危ない。まだ勇者はやれておらんかったな。覚醒寸前のところで止められてよかったわい」

魔王は、光り輝く勇者の下に向かおうとする。しかし、魔法使いからまだぼそぼそと呪を唱えるのが聞こえてくる。


魔王「なにい! こいつ、時を止める対策を練っているだと!? 一般の魔法使いがどうして……」


魔法使い「時止め解除! 帝国の王様に接待されたときに貰ったのよ!」


魔王「あいつめ、場内の警備を強化しろとあれほど行っておったのに」


武器や防具が変化し、背中から羽、頭に輪っかを浮かべている勇者が現れる。


魔王「し、しまったあ! つ、ついにかくせいさせてしまった!」


そして、遠くから声が聞こえる。


商人「それだけやないで! コイツを見てみい!」


商人の下に目を向けると、生き返った僧侶の姿が見える。


商人「はっはー! コイツの死体の記録は勇者探す時にみとってん! 探すのは苦労したが、これでどうや!」


魔王はもがき苦しんだ。自分から力が溢れ出ていく。風船の空気を抜かれたような力のなくなりように、魔王は絶望した。


僧侶「戦士! 戦士! あなたはそんな奴に乗っ取られたままでいいのですか! さっさと戻ってきなさい!」


魔王「やめろ! それ以上言うんじゃあない! くそっ、くそが!」


そして魔王の闇がすべて戦士の体から抜け、剣に収まっていく。


戦士「ふん! あんたにいわれずとももどってやらあ!」


一同は歓喜に震えた。賢者も生き返らせ、魔王の剣をどうするか話し合った。


魔王「これだけでは、これだけではすまさん! そうだ、思い出したぞ! 神との戦い、私は私の絶望を糧として戦った! 自分も死に近くなる諸刃の剣だが、こうなったら仕方がない!」


そんなときも束の間、剣が変形するのを見て一同はそれぞれ戦闘準備に入る。

変形したのは大きな龍。見上げないと顔を見られないほどの高さにあり、爪は鋭く、口からは炎が溢れ出る。


魔王「こんな姿になったのは何年ぶりだかなあ! 勇者! いざ尋常に勝負じゃ!」


勇者「ああ、やってやるよ! かかってこい魔王!」


そう言って、勇者と魔王が衝突する。


魔法使い「遠くから眺めておくしかないって悲しいな」


魔王は火球を放ち、勇者はそれを斬る。


戦士「しょうがないだろ。あいつらが強すぎるんだ」


火球でできた死角を魔王は通り、勇者の後ろから噛みつく。


商人「回復くらいはできそうな気がするけど、そういうわけにもいかへんの?」


勇者は左手はあきらめて、魔王の目玉に剣を突き刺す。


賢者「狙いが決まりませんからね。うっかり魔王を回復してしまった、なんてこともありえます」


魔王は思わず口をはなし、そこに勇者が胸部に拳を叩きいれる。


僧侶「やはりできるものは何もないか」


魔王は距離を取り、魔法で炎の龍を作って勇者のもとに向かわせる。勇者も水の鮫を作って応戦する。


傭兵「いずれここまで戦火が来る。その前に安全な場所に行こう」


龍と鮫は相殺して蒸気に包まれるが、その中でも攻撃の応酬が行われる。


魔法使い「そうしようか。遠くによさそうな塔がある。あそこに行くよ。テレポート!」


肉が断たれる音がし、魔王の皮膚に傷ができる。


魔王の雷の虎の突進により、勇者は電気が通り過ぎる感覚を味わう。


魔王「まだ、まだやられんか!」


太いツタが現れ勇者を襲い、それを勇者が斬り落とす。


勇者「とっとと墜ちろォォォォ!」


勇者は純白の羽をたくさん放出して攻撃し、魔王は自身の羽で防御する。


魔王の周りからいくつもの光線が放たれ、勇者は躱しながら炎の鳥を作り出して攻撃させる。

魔王「炎の鳥がなんだというのだ! わが光線の前では的も当然だ!」


宣言どうり鳥は撃ち落され、そのまま光線は勇者へと向かう。


勇者「う、うああああああああああああっ! やったな!」


勇者は穴だらけになる。しかしまけじと吹雪を起こす。


魔王は炎を吐き出し、雪を溶かしていく。


雪は結晶となり、魔王の体に傷をつけていく。


魔王「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」


魔王は咆哮しながら炎を吹き続け、あたりを炎だらけにした。


勇者「魔王! それで限界に見えるぞ!」


勇者は魔王に12連続で斬りつけ、魔王は勇者に火球を当て吹っ飛ばす。


魔王「ふん! 限界は勇者貴様にも見えるなあ!」


勇者は剣を構える。


勇者「貴様にも! 貴様にもかあ! ははははは! 自ら限界を認めたな!」


魔王「だが貴様も同じこと! 儂は次の一撃にすべてをかけよう!」


勇者「俺だって! 次で終わらせる!」


勇者と魔王の周りに気の渦ができ始める。花は枯れ、木は腐れ始めた。


勇者「はあああああああああああああああああああああああああ」


魔王「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


勇者と魔王はそれぞれに突進する。


そして、剣と牙がぶつかる。


勇者「これで、終わりだ」


魔王「くっ、無念」


そこには勇者に真っ二つにされた魔王があった。

魔王は勇者によって倒された。もう二度と復活しないために、勇者は魂が消滅するまで魔法使いとともに魔王を追いかけた。


勇者「うお、遠くまで来てしまったなあ」


魔法使い「勇者、ここは何処なの?」

これで終わりです。最後はだいぶ駆け足になってしまった気がします。
もし読んでくださった方がいたらありがとうございます。
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