茄子「おでんをしませんか？」


美優「唐突ですね…でも、最近冷えてきましたしピッタリかもしれません」


朋「事務所でやるの？」


茄子「いえ、流石にそんな非常識なことはしませんよ。私の家です」


美優「いいですね。では…今週土曜日に」


朋「お昼くらいに集まる感じかしら？」


茄子「あ、どうせでしたら泊まっていきますか？それなら時間を気にせず楽しめますし、お酒も飲めますから」


朋「いいわよ、ならあたしはお菓子とか着替え持ってくわ」


茄子「おでん自体は朝から私が仕込んでおきますから、他の物を色々お願いします」


美優「なら、私はお酒やおつまみを持って行こうかしら…」

～当日～


朋「…茄子さんの家、どこなのかしら」


朋「地図だとこの辺りな筈なんだけど…」


朋「おっかしいわねー、見当たらない」


朋「電話して聞くのが一番かしら」ピピピッ


茄子『はーい、貴女の茄子ですよぉ』


朋「あ、茄子さん？近くにいる筈なんだけどなかなか見当たらないのよ」


茄子『少々お待ち下さい…よし。朋さん、一度目を瞑って頂けますか？』


朋「閉じたわよー」


茄子「もう開いていいですよ」


～茄子家～


茄子「はい、いらっしゃいませ」


朋「お邪魔します。美優さんは先に来てる？」


茄子「もうすぐ着くそうですよ」

ピンポーン


茄子「あっ、来たみたいですね」


ガラガラ


茄子「いらっしゃいませっ！ようこそ鷹富士家へ！」


美優「お邪魔します…ふぅ、なかなか険しい道のりで時間がかかっちゃって…」


朋「美優さん、道に迷わなかったの？」


茄子「流石ですね、私の案内無しに辿り着ける人は珍しいんですよっ！」


美優「両手が荷物で塞がっていて、インターホンを押すのが難しかったです…」


朋「妙にくいちがうわね」


茄子「それはそれとして、取り敢えず飲み物は冷蔵庫にいれちゃいましょうか」


朋「あ、あたしのジュースとかスイーツも冷やさないと」

茄子「さてさて、おでんですよー」


朋「あ、もう完成してるのね」


美優「おでんなら、まずは日本酒かしら…」


茄子「まずは、取り敢えずビールにしませんか？」


朋「あたしはオレンジジュースにしようかしら」


美優「一応、近くのコンビニで柚子胡椒を頂いて来ました」


茄子「からしと味噌も用意してありますよ」


朋「…テキパキと準備が進んでいくって素敵ね」


茄子「あ、何かテレビでも見ながらにしますか？」


朋「あ、そう言えばそろそろとときら学園の時間ね。美優さんも出てるんだったかしら？」


美優「私がゲストの回は、来週放送だそうです」


朋「今日のゲストはだれかしら」


ピッ

フレデリカ(チャイルドスモッグの姿)『ヤッホーみんな、フレデリカだよー！』


朋「…チャンネル変えていいかしら？」


美優「あら…流石フレデリカさん、違和感がありません…」


茄子「私達もいつか着る日が来るんでしょうかね？」


美優「私なんて…なんか如何わしいと言われてしまって…」


朋「あの番組、普通に考えて色々とおかしいのよ」


フレデリカ(チャイルドスモッグの姿)『わぁお、舞ちゃんもFが着いてる！』


朋「司会の隣にいる杏ちゃんが凄く疲れた表情してるわね」


茄子「それでもきちんと捌けるんだからすごいですよね」

茄子「ではそろそろ、頂きましょうか」


鍋蓋ぱかっ


朋「わっ、色んな具材があるわね」


美優「美味しそうですね。時折見た事もない具材があって新鮮です」


茄子「少し気合を入れて張り切ってみましたっ！」


朋「ロールキャベツに厚焼き卵にアボガドまで」


美優「この花型の具材はなんでしょう…？」


茄子「あっ、それは梅焼きです」


朋「見てるだけで楽しめるわね」

美優「では…これはなんでしょう？」


茄子「えっ？ちくわぶですよ？」


美優「ちくわぶ…？」


茄子「なん…だと？」


朋「美優さん、ちくわぶ知らない…？」


美優「ちくわの亜種があるとは聞いていましたが…見たのは、初めてかしら」


茄子「では、ここでちくわぶについて解説致しましょう！」


朋「唐突に変なコーナーが始まったわね」

茄子「ちくわぶ自体の発祥については、記録が少ない為定かではありません」


朋「今度文香ちゃんに探して貰うのもいいかしらね」


茄子「昭和初期に、高価な魚のすり身を使うちくわに代わって安価な小麦粉で作れる物として現れたのがちくわぶです」


美優「…何故、この様な形なのかしら…」


茄子「表面をギザギザにする事で表面積を増やして、より味をしみこませる為だそうですよ」


美優「一口頂きます…あっ、あつい…」


朋「ちくわぶってドロドロしてて冷めにくいのよね」


美優「ですが、確かに味が染み込んでいて美味しいです」


茄子「美味しいのは確かです、私も大好きですから。ですが、近年までは関東以外には広まっていなかったらしいですね」


朋「そもそも、おでん以外にちくわぶが出てくる事がそうそう無いわよね」


茄子「作ろうと思えば幾らでも作れますよ。よければ後で何か作りましょうか？」


美優「ぜひ、お願いします」

朋「魚のすり身が苦手な人でもちくわぶは食べられるからいいわよね」


茄子「逆に、ちくわぶの食感が苦手と言う方もいるそうですよ」


美優「…あ、そう言えば日本酒を…」


朋「ちくわもちくわぶも好きで良かったわ」


茄子「ちくわと言えば、大明神で有名ですね」


朋「え、何それ」


茄子「お米には2千の神様が宿っていると言うように、ちくわには大明神が宿っているんです」


朋「へー、ちくわってすごいのね」


美優「ちくわ大明神」


茄子「誰だ今の。と言う流れになります」


朋「…意味がわからなくなったわ」

朋「これおでんじゃなくてもう鍋になっちゃうけど、おでんに切りたんぽもアリだと思うのよね」


茄子「切りたんぽを入れた瞬間から、それはもう切りたんぽ鍋になってしまいそうですね」


朋「そうなのよね…こう、泥の樽にワインを一滴垂らしても泥のままだけど、ワインに一滴泥を垂らしたらそれはもう泥になる、みたいな」


茄子「主張が激しすぎるというか、それ一つで別のカテゴリーに変えてしまいますからね」


美優「…あら、もうビールも空っぽ」


茄子「最近のコンビニでは、おでんにうどんやラーメンを入れるところもあるらしいですね」


朋「ほんとに最早鍋みたいになってるわね」


茄子「ところで、ちくわぶに嵌った美優さんがちくわぶを食べ尽くしてしまいましたが」


朋「あ、一応あたし無いかもって思ってちくわぶ買ってきてるわよ」


茄子「流石朋さんっ！代わりにちくわをどうぞ」


朋「…平和すぎて怖いわ」

朋「…ふぅ、もうお腹いっぱいだわ」


茄子「少し食べ過ぎてしまいましたね」


美優「…明日から、また沢山動かないと…」


茄子「あ、でしたら今からちくわぶを作りませんか？」


朋「…えっ？」


美優「いいですね…良い運動にもなりそうですし、自らの手で作ったちくわぶはより一層美味しくなりそうです」


茄子「時間はかかりますが、まだまだ夜はこれからですからね」


朋「ちょ、ちょっと」


茄子「それでは、鷹富士茄子のちくわぶ教室実践編の始まりですっ！」


朋「…普通には終われなかったかー…」