池袋晶葉「逆襲の谷」 (29)
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未央「ねえねえ、しぶりーん」
凛「どうしたの?」
未央「今度のオフの日なんだけどさー」
卯月「おやおやー?遊びに行く計画ですか?」
未央「そうそう!こないだいいお店見つけたからさ、みんなで一緒に行こうよ!」
凛「うん、付き合うよ」
未央「さすがしぶりん!」
卯月「イエス!しぶりんサイコー!」
凛「いや、そこまで賞賛されるようなことじゃないし・・・」
フレデリカ「ヘイヘイありすちゃん!」
ありす「橘です。なんですか?」
フレデリカ「凛ちゃんのしぶりんってニックネーム、かなり浸透したよねー」
ありす「そうですね、誰がそう呼び始めたのかは覚えてませんけど」
フレデリカ「ファンの人も普通にしぶりんって呼んでるらしいし」
ありす「で、それがどうかしましたか?」
フレデリカ「フレちゃんはこの風潮に物申したい!」
フレデリカ「省略された『谷』の立場はどうなるのさ!?」
ありす「・・・またいつにも増してワケの分からないことを・・・」
ありす「少なくとも私は漢字の立場になったことがないのでわかりません」
フレデリカ「一文字だけハブられるなんて可哀想じゃん!」
ありす「それを言うならフレデリカさんだって自分で三文字も省略してるじゃないですか」
フレデリカ「三文字なら仲間がいるでしょ。あれ?むしろハブられてるのはフレの方!?」
ありす「ハブられてる文字を自称してるんですか・・・」
フレデリカ「まあフレちゃんのことは置いといて、今は『谷』の話だよ」
凛「何の話?なんか呼ばれた気がしたんだけど」
ありす「かくかくしかじかで『谷』を省略するのはいかがなものかと主張しているらしいです」
未央「むむ~それは聞き捨てならないよ!しぶりんってあだ名は譲れないね!」
卯月「私も凛ちゃんのあだ名はしぶりんが一番いいと思うな!」
フレデリカ「よ~しフレちゃん受けて立っちゃうよ!朝まで徹底討論だ~!」
ありす「・・・どうしましょう、これ?」
凛「うん・・・好きにさせておけばいいんじゃないかな?そのうち飽きるでしょ」
ありす「だといいんですが・・・」
P「・・・というわけで晶葉、今月のスケジュールはこんな感じだ」
晶葉「なるほど、了解だ」
P「何か質問はあるか?」
晶葉「いや、問題ない」
P「それじゃ打ち合わせはここまでにしておこうか」
晶葉「うむ、それでは今月もよろしく頼むぞ、助手よ」
P「ああ、晶葉も頑張ってくれよ。でも無理だけはしないようにな?」
晶葉「心得ているさ。それにしても何やら騒がしいな」
P「そういえば今日はフレデリカがいるから、あいつが原因かもな・・・」
凛「晶葉、打ち合わせ終わったの?お疲れ様」
晶葉「ああ、今終わったところだが・・・この騒ぎは何なんだ?」
卯月「あ~!晶葉ちゃんだ!晶葉ちゃんにも意見聞いてみようよ!」
未央「晶葉ちゃんはしぶりん派だよね!?」
フレデリカ「だ~か~ら~『谷』をもっと尊重するべきだよね!晶葉ちゃん!?」
晶葉「待て、落ち着け、一体何の話だ?」
ありす「かくかくしかじかで・・・」
晶葉「う、うむ・・・あまり要領を得ないが・・・」
晶葉「未央・卯月組はあくまで渋谷凛の愛称はしぶりんであるべきだと主張」
晶葉「対してフレデリカは『谷』という字を省略するべきではないと主張しているわけか」
フレデリカ「イグザクトリィ!別にしぶりんが嫌って言ってるわけじゃないんだけど」
フレデリカ「もっと『谷』を活用したニックネームもアリだと思うわけですよ!」
フレデリカ「晶葉ちゃんはどっち派かな~?」
ありす「あの・・・無理して付き合う必要はありませんが、出来れば騒ぎを治めてもらえると助かります」
凛「この後、予定とかあるなら遠慮なく行ってもいいよ?」
晶葉「いや、特に用事はないので問題ない」
晶葉「さてお三方、私に意見を求める前にまずは本人の意向を確認すべきだと思うのだが?」
未央「それもそっか!」
卯月「凛ちゃん自身はどう思ってるの?」
凛「私は・・・自分の名前は気に入ってるけど、しぶりんって呼ばれるのも別に嫌じゃないし」
凛「まあ、呼ぶ人に任せるって感じかな」
晶葉「なるほど」
晶葉「愛称に関しては私も思うところがあってね、今回はしぶりん派の立場を取らせてもらおう」
晶葉「フレデリカ、すまないが今日は敵対関係だ」
ありす「晶葉さん、遠慮なく論破してやってください」
フレデリカ「ぐぬぬ~味方がいな~い!フレちゃん寂しい!」
晶葉「では僭越ながら私の意見を述べさせてもらおう」
晶葉「まずアイドルと愛称の関係性についてだ」
晶葉「私がアイドルのなんたるかについて語るにはまだまだ経験が足りないと言わざるを得ないが」
晶葉「それでもわかったことがいくつかある」
晶葉「アイドルとは皆に夢を与える存在であるが、『高嶺の花』でありすぎてもいけない」
晶葉「ある程度触れ合える、分かり合える存在であること。ファンとの絶妙な距離感」
晶葉「わかりやすく言えば『親しみやすさ』が重要なファクターの一つと言える」
晶葉「我々の大先輩にあたる765プロのトップアイドル、天海春香女史の活躍を鑑みれば」
晶葉「そこに議論の余地はないだろう」
晶葉「まあプロデュースの方針やアイドルの特性によって例外はあるがね」
晶葉「愛称とは親しい間柄の者同士で呼び合うもの」
晶葉「しぶりんという呼び名が浸透しているのは多くの人に渋谷凛というアイドルを」
晶葉「身近な存在として認知されていることの証左に他ならない」
晶葉「アイドルとして良い傾向であると言えるだろう」
未央「ふむふむ」
卯月「うわーすごい学者さんっぽい!」
凛「予想以上に本格的な分析が始まっちゃった・・・」
ありす「晶葉さんが言うと物凄く説得力が高まりますね」
フレデリカ「ここまでは私も同意見だね!」
晶葉「では続いて愛称についてだ」
晶葉「愛称の命名にはいくつかのパターンがある」
晶葉「まずは身体的特徴、外見的特徴を元に命名するシンプルなパターンだ」
晶葉「例えば私ならメガネとか博士という感じだな」
晶葉「この手の愛称は他人の欠点を揶揄するネガティブな意味合いを持たせる場合もある」
晶葉「あまりアイドルが口にすべき言葉ではないが」
晶葉「チビ、デブ、ハゲ・・・などだ」
P「 」ビクッ
晶葉「まあそこはアイドル、容姿に関しては超一級品なのでそのような心配はないだろう」
凛「・・・」テレッ
晶葉「しかしながらこのパターンでポジティブな愛称となると、実は少々命名が難しい」
晶葉「主に可愛い、綺麗、美しい・・・という系統の形容詞を使うことになるわけだが」
晶葉「ほぼ全てのアイドルが当てはまってしまうのでよほど上手く命名しなければ個人の特定が難しくなる」
ありす「しかもカワイイに関しては強力な競合相手がいますしね」
晶葉「かと言って奇抜な形容詞を使うと違和感が付きまとう」
晶葉「エキセントリック過ぎれば『親しみやすさ』からかけ離れてしまう可能性も高い」
晶葉「よってこのパターンは却下とさせてもらう」
ありす「逆にこのパターンで命名できる方は相当個性的であるとも言えますね」
晶葉「ふむ、良い着眼点だな」
未央「あ、確かにそうかも!コレ系のあだ名がある人って居たっけ?」
卯月「みくにゃんとか?」
凛「にゃんは形容詞って言っていいのかな?」
晶葉「では次に、肩書きや経歴に由来するパターンだ」
晶葉「例を挙げるなら、助手もこのパターンに該当する」
晶葉「彼は一部のアイドルにプロデューサーの頭文字であるPを取ってPちゃん、Pさんなどと呼ばれているだろう?」
晶葉「他にもファンタジー系のフィクション作品では、強大な敵を打ち倒した者を『○○キラー』と呼んだり」
晶葉「ある分野での頂点に立つ者を『○○キング』と呼んだりする」
晶葉「まあこれは愛称というよりは二つ名、異名と言った方が良いか」
晶葉「助手の場合は別として、後者の呼び方に重要なのは敬意、あるいは畏怖の念が込められているという点だ」
未央「蘭子ちゃんが好きそうな感じだね~」
フレデリカ「アイドルマスターに、私はなる!みたいなノリかな?」
ありす「間違ってはいませんが、それはマズイですフレデリカさん・・・」
晶葉「渋谷凛の代表的な経歴といえば『三代目シンデレラガール』だが・・・ふむ、例えばそうだな・・・」
晶葉「『さすが三代目シンデレラガールの渋谷凛だ!今回のライブも最高だったぜ!!』」
凛「・・・///」テレテレッ
晶葉「という風に賞賛を送る際には非常に有用だが、普段使う愛称としてはいささか重厚すぎる」
晶葉「そもそも本名より遥かに長い」
晶葉「よってこのパターンも却下とさせてもらおう」
卯月「改めて考えてみるとあだ名って結構難しいんだね」
未央「うん、何にも考えずにしぶりんって呼んでたけど・・・フレちゃんの言う通りもうちょっと考えたほうがいいのかな?」
晶葉「いやなに、今はフレデリカを言い負かすためにわざと小難しく語っているだけさ」
晶葉「自然に呼ぶようになったものを自然に使えば良い」
晶葉「本来、愛称とはそういうものだろう?」
未央「それもそっか!!」
晶葉「さて、いよいよ本命と行こうか」
晶葉「最後は名前の一部を省略する、あるいは変形するパターンだ」
晶葉「今回の議題に挙がっているしぶりんもこのパターンに該当する」
未央「しまむーもそうだね!」
フレデリカ「フレちゃんのフレちゃんもだね!」
晶葉「では『谷』を省略すべきでないというフレデリカの主張を尊重した場合はどうなるのかを考えてみよう」
晶葉「まず『谷』の代わりに『し』を省略してみると?」
卯月「ぶやりん!」
未央「なんかブタのマスコットみたいな感じだね」
ありす「ゆるキャラにいそうな響きですね」
晶葉「少々、間抜けなイメージになるだろう?クール属性のアイドルには相応しくないと言わざるを得ない」
晶葉「続いて『ぶ』だ」
卯月「しやりん!」
未央「う~んこれもイマイチぱっとしないね~」
ありす「『ひんやり』と語感が似ているのでクールに感じないこともないですが・・・」
晶葉「私もこれは論理的に説明できないが、ぶやりんよりはマシという程度の評価だな」
晶葉「次、『り』」
卯月「しぶやん!」
未央「関西人っぽくなった!」
ありす「たしかにお笑い芸人の方にいそうですね」
晶葉「その通り。関西弁では標準語で言うところの『~だろ』や『~でしょ』を『~やん』と言う」
晶葉「そのせいか『やん』を付けるとどうしても関西系のイメージがつきまとう」
晶葉「これも渋谷凛のイメージには合致しないな」
晶葉「では最後に『ん』」
卯月「しぶやり!」
未央「うわ~なんかモヤっとする~!」
ありす「もうそこまで来たら『ん』まで言い切ったほうがすっきりしますね」
晶葉「うむ、これもまた論理的な説明が難しいが、最後まで言い切らないと」
晶葉「何とも言えないもどかしさのようなものを感じてしまうのも事実だ」
晶葉「ちなみに日本人の名前は一般的に平仮名で4~10文字程度」
晶葉「『しぶやりん』は5文字、字数は少ない部類だ」
晶葉「フレデリカは文字数が多い上に外国の名前という特徴があるので2、3文字省略することも可能だが」
晶葉「渋谷凛から2文字以上省略すると原形がわからなくなってしまうので1文字省略が限界だろう」
晶葉「さて、そろそろまとめに入ろうか」
晶葉「以上の理由から、『渋谷凛』という名前のイメージを極力損なわず」
晶葉「それでいて親しみやすい可愛らしさを持った愛称は・・・」
晶葉「『しぶりん』以外に有り得ない!」バーン!
未央「おお~!」パチパチ
卯月「わかりやすかったです!」パチパチ
フレデリカ「良いプレゼンだった・・・掛け値なしに!」パチパチ
晶葉「まあ結論が消去法になってしまったのは少々不本意ではあるが、以上で証明終了とさせてもらおう」
ありす「ぐうの音も出ないほどの論破でしたね」パチパチ
凛「さすが晶葉だね!」パチパチ
晶葉「フッ、私にかかればこの程度の証明は造作もない」
カシャ! ピロリーン! ハイチーズ、パシャ!
晶葉「・・・・・・・・・なに?」
フレデリカ「よし!作戦成功だね!!」
晶葉「待て、なぜ撮影した!?」
未央「我々は!」ババッ!
卯月「晶葉ちゃんのドヤ顔を!!」シュタッ!
フレデリカ「愛で隊!!!」ビシィッ!
ありす「というわけなんですよ」
晶葉「いや、どういうわけだ!?」
フレデリカ「晶葉ちゃんといえばドヤ顔!ドヤ顔といえば晶葉ちゃん!」
未央「晶葉ちゃんはドヤ顔カワイイ!」
ありす「説明が進まないので少し黙っててください」
フレデリカ「う~ありすちゃんったら辛辣~!」
未央「晶葉ちゃんはプロデューサーとかファンの人にはよくドヤ顔を披露するけどさ~」
凛「晶葉はさ、私たちと絡む機会ってあんまりないでしょ?」
凛「それに私たちのほうが年上で先輩だからかな・・・ちょっと遠慮みたいなのも感じるし」
卯月「だから私たちが晶葉ちゃんの生ドヤ顔を見れるチャンスって少ないんですよね」
ありす「そこで何かしら問題を提起して、それを晶葉さんに解決してもらうことで」
フレデリカ「生ドヤ顔を拝もうという寸法だったのさ!」
晶葉「なるほど、それでフレデリカがいつにも増して突拍子もない主張をしていたわけか」
未央「まあさすがにフレちゃんがあんな問題をぶっこんで来たのは私たちも予想外だったけどね」
ありす「暴走を止められなくてすいません・・・」
凛「一応言っておくけど、私とありすは止めたからね?」
晶葉「いや、構わないさ。どのような形であれ、私の個性を求められるというのは」
晶葉「アイドルとして嬉しいことだと再認識できたからな」
フレデリカ「あらら~もしかして晶葉ちゃん、照れてる?」
晶葉「う、うむ・・・少しな///」
カシャ! ピロリーン! ハイチーズ、パシャ!
晶葉「なっ!?」
フレデリカ「ドヤ顔に続き照れ顔ゲットォ♪」
未央「これはレアですよ皆さん!」
卯月「照れる晶葉ちゃんもカワイイ!」
ありす「これ以上、茶化さないであげてください・・・」
未央「これからはさ、私たちにももっとぐいぐいドヤっていこう?」
卯月「うん、先輩だからって変に気を遣わなくていいからさ!」
晶葉「ふむ、言われてみれば人気アイドルである先輩諸氏に対して気後れがあったことは否定できないな・・・」
凛「皆の言う通り、遠慮なんて必要ないよ。晶葉も自分で言ってたでしょ?」
凛「アイドルに重要なのは親しみやすさだって」
晶葉「そうだな、私が自分で言ったことだった」
晶葉「アイドルのなんたるかがまた一つ分かったような気がするよ」
晶葉「このような機会を与えてくれたことに感謝しよう」
ありす(9割がたフレデリカさんの単なるイタズラ心が原因なんですけどね・・・)
未央「ふふふっ、実に有意義な時間でしたね~」
晶葉「ああ、まったくだ」
卯月「仲良きことは美しきかな!な~んてね!」
フレデリカ「では引き続き『谷』の存在意義について議論を続けようじゃないか!」
未央「あ、そこは作戦じゃなくて本気だったんだ」
ありす「その『谷』に対する執着は何なんですか!?」
晶葉「む、先ほどの証明では不服だというのか?いいだろう、受けて立とう!」
凛「そこはもうスルーしてもいいと思うよ?」
ありす(せっかく綺麗にまとまった感じだったのに、この人はまったく・・・)
ガチャ!
神谷奈緒「みんな、おはよう・・・お、今日は中々珍しい組み合わせの面子だね」
フレデリカ「奈緒ちゃんおはよ~♪」
凛「奈緒、おはよ・・・う・・・」
未央「奈緒ちゃん、おっはよ・・・」
卯月「おはよ・・・あ・・・」
ありす「おはようござ・・・」
晶葉「ああ、おはよ・・・」
奈緒「え、何?みんなどうした?」
一同( 神谷奈緒 - 谷 = 神!奈緒! )
ガタッ!
フレデリカ「このお方こそ偉大なる神!奈緒様である!!」ビシィッ!
奈緒「 」
凛「・・・ンフw」
奈緒「ちょ、なんだよそれ!?『谷』はどこ行った!?」
未央「今w絶対みんな同じこと考えたよねw」
卯月「うんうんw」
ありす「・・・くふっw」プルプル
晶葉「フフフッwすまないフレデリカ、私の負けだ」
晶葉「たしかに『谷』の存在意義は尊重すべきだな」
奈緒「いやだから『谷』の存在意義ってなんだよ!!?」
フレデリカ「イエイ!フレちゃん逆転大勝利!!」
一同「HAHAHAHAHAHA!!!」
奈緒「誰か説明しろォ!!!」
おわり
以上。
いろいろ強引だった気もするが池袋晶葉は可愛い、それだけ伝われば十分だ。
>晶葉「チビ、[ピザ]、ハゲ・・・などだ」
>P「 」ビクッ
ハゲは全剃りすればいいし[ピザ]は痩せれば直るけど、チビはなぁ…
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