文香「今日のお話は花咲かモバP」 (21)

文香「そこまで昔のお話ではありません。あるところにモバPという男がおりました」


文香「モバPは誠実で優しい男でした」


文香「ある日、モバPは芝刈りをしていると、矢で足を射られうずくまっている子犬を見つけます」


裕子「むむむーん!ぬ、抜けない…。痛いよぉ…。脚から血が出ているよぉ…」


モバP「おい!大丈夫か!?」


裕子「あ、あなたは!?どちら様ですか?」


モバP「んなことはどうでもいい!すぐに治療をするから、おとなしくするんだ!」


裕子「は、はい!」


文香「子犬である裕子はモバPに抱きかかえられて自分の家へと戻っていきました」

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モバP「矢を抜くぞ。少しだけ、我慢してくれ」


裕子「は、はい…。い、いたっ…」


モバP「大丈夫か?」


裕子「は、はい…。でも、もう少しだけ優しく…」


モバP「分かった。抜くぞ」


文香「…モバPの治療のおかげで子犬は一命を取り戻し、数日後には庭を駆け回れるほど元気になりました」


裕子「わんわん!ああ、自分の足で思い切り駆け回れるなんて、しあわせです!」


モバP「すっかり元気になったな」


裕子「はい!モバPさんのおかげで自由に駆け回れるようになりました!」


モバP「そうか。それは良かった。さ、お前はもう自由だ。どこにでも行きなさい」


裕子「え!?そ、そんな…。私は命の恩人であるあなたに…まだ何もしていません!」


モバP「別にそれが目的で助けたわけじゃないからなあ…。困っている動物がいた。だから助けた。それだけだ」


裕子「!今、私の中のサイキックが目覚めましたよー!」


文香「そう言うと子犬は一目散に走っていき、一点で立ち止まり地面を掘りはじめました」

裕子「掘ります!堀だけに!」


モバP「ユッコォ!誰から教えてもらった!?」


文香「子犬が穴を掘りつづけると、そこから金色に光るものが出てきました」


裕子「すごいですね!眩しいです!なんなんですかこれは?」


モバP「こ、これは…。小判だ!大判もある!すごいぞユッコ!」


文香「子犬が掘った穴からは大判小判がざっくざく。モバPは一気に大金持ちになりました。モバPはそのお金を自分のために使わず、貧しい子供の為に寄付を行い、一目おかれる人となりました」


文香「しかし、その中で快く思っていない人がいました。それはちひろです」


ちひろ「地面から出てきた大判小判をほとんどが寄付ですって?自分のために使わずに、何に使うというんですか!ありえません!お金は自分の幸福に使ってこそ!だから、私が有意義なお金の使い方を見せてあげましょう!」


文香「そう言うと、ちひろは駆け回っていた子犬を拉致しました」


裕子「あ、あなたは誰なんですか!?モバPさんの所へ返してください!」


ちひろ「大丈夫ですよ。あなたがきちんと大判小判の場所を教えてくれたら、モバPさんの所に返してあげましょう。――さあ!大判小判の場所を教えなさい!」


裕子「ココかなあ…?むむーん…。あんまりサイキックパワーが来ませんね。不調、なのかな…。モバPさん…」


文香「モバPに会えな子犬はしょんぼりしたまま探し、適当な位置を吠えました」


ちひろ「よくやりました。さあ、掘りなさい」


裕子「…モバPさん…」


文香「子犬が地面を掘りだすと、そこから大きなつづらが出てきました。それを見たちひろは小躍りします」


裕子「やればできるじゃないですか!それでは早速…」パカッ


文香「つづらの中には、かけたお茶碗。錆きった金属、果てにはもののけが入っていました」


ちひろ「ぎえーー!な、なんなんですかこれはー!」


裕子「私は知りません!分かりません!さようなら!」


文香「子犬は逃げようとしましたが、ちひろの手が子犬を捕まえてしまいます」


ちひろ「あんたのようなバカ犬にはお仕置きが必要ですね…」


裕子「あわわわ…。――助けてモバPさん!」

文香「子犬が見つからないモバPは少し遠くまで探しに行きます。そして…」


モバP「そ、そんな…」


文香「子犬は川にいました。彼女が動くことは二度とありませんでした」


モバP「うう…。せっかく元気になったというのに…。ユッコ…。寒かったろう…」


文香「モバPは子犬の墓を作りました。暖かい場所で凍えぬようにと、隣には木の苗も共に植えて」


――


「――モバPさん」


モバP「ふぬあ!?――またか…」


文香「子犬の墓を作って数日後、毎晩毎晩頭に響いてくる声に目を覚まします。モバPは顔を冷水で洗って、もう一度声の正体を見極めます」


「――モバPさん!ユッコです!」


モバP「ユッコか!」


裕子「――はいユッコです!私のサイキックパワーで木を大きくします!その木で臼を作って下さい!」


モバP「臼?そんなもの、俺はいらない。お前が帰ってくれば…それだけでいい」


裕子「――そう言うわけにはいきません!その臼を私だと思って使ってください!」

文香「翌朝、子犬の墓の隣には大きな大きな大木が立っていました。それを見たモバPは一瞬だけ驚き、すぐに木を切り落とし、子犬の言うとおりに臼を作りました。そしてその臼で餅をつき始めます」


モバP「作ったは良いが…。どうしようかな?食べきれる量じゃないし…」


文香「モバPが悩んでいると、その餅は見る見るうちに姿、形を変えて金銀財宝となったのです。これにはモバPも驚き腰を抜かします」


モバP「こ、こりゃ一体どういうことだ!?」


文香「扱いに困ったモバPは再び、恵まれない子供たちのために養成所を建設し、後進の育成に一役買いました。もちろん、これも多くに人々に感謝されました」


文香「…しかし、このことにまたしても気に食わない人がいました。ちひろです。モバPのことを聞いて地団太を踏んでいました」


ちひろ「きー!なんなんですか!なんであの人ばっかり!しかも慈善事業にお金を出すなんて!それを使ってもっといいことをすればいいのに!」


ちひろ「――見ていなさい。本当の有意義な使い方を教えてあげましょう!」

ちひろ「モバPさん。今度家族が来るんでお餅を振る舞いたいんです。ですのでその臼を貸していただけませんか?」


モバP「それは大変ですね。良いですよ。どうぞ」


ちひろ「ありがとうございます。――これで金銀財宝はわたしのもの…」


文香「その夜。ちひろは臼で餅をつき始めます」


ちひろ「金銀財宝♪大判小判がざっくさく♪」


文香「餅をついていると、姿かたちが変わってきました」


ちひろ「おっ。どんな財宝が出てくるんでしょうか!」


文香「しかし、餅から生まれ出たものはそれはもう、汚い物ばかりが出て来てしまいました。それに激怒したちひろは臼を破壊してしまいました」


ちひろ「こんなもの燃えてしまえ!」


文香「子犬の臼は火にかけられ、翌朝には灰になってしまいました」

文香「モバPは灰にしてしまったことに怒らず、その灰を返して欲しいと言われ、持って帰りました」


モバP「…すまん。俺があの人に貸したばかりに。こんな姿になっちまって。俺はいつまでも大切にするからな」


――


「――モバPさん!起きていますか?ユッコです!」


モバP「ユッコ!」


裕子「この灰を大切にしていただいてありがとうございます。本当に私を大切にするのであるなら、この灰をどうか枯れ木に蒔いてください」


モバP「そんな事、出来ない…。これはユッコだ。蒔いてしまったらお前は無くなってしまう…。そんなこと出来ない」


裕子「私は、灰よりもモバPさんに感動してもらいたいんです。この灰で素晴らしい花を咲かせてみましょう!」


モバP「…分かった。明日、灰を蒔きに行く」


文香「そして次の日。モバP老木に上って子犬の灰を蒔き始めました」

文香「すると、灰が付いた木の枝から見る見るうちに花が咲き始めたではありませんか。程なくして満開になった老木を通行人は足を止めて眺めています」


ゆかり「この老木に花を咲かせたのは誰ですか?」


モバP「はあ…私でございます」


有香「…素晴らしい。私の記憶ではこれは老木で花を付けなくなって久しいと聞いていたが?」


モバP「…私が愛していた者の灰を蒔いたのです。するとたちまち花をつけて咲いたのです」


法子「すばらしい!そなたに褒美をやろう!ドーナツ1年分じゃ!」


有香「この黒帯を授けよう」


ゆかり「私はこの横笛を。――素晴らしい物を見せて頂いた礼です。また見せてくださいね」


文香「この三人はこの地方の大名。有力者です。大名に気に入られたモバPは住む場所をもらい、都の近くに移り住むことになりました」

ちひろ「なんであの人が都に移ったんですか!?このままで済むものですか!私も灰を撒けば…」


文香「ちひろは老木の枝を集めては燃やし灰を作りました。そしてその灰を老木に向かって撒きはじめました」


拓海「うおっ!なんだこの灰は!?ぺっぺっ!」


亜季「て、敵襲!ものどもであえであえー!」


ちひろ「へっ?何で私が囲まれてるんですか?」


拓海「おう。誰だか知らねえけど、覚悟は出来てんだろうな?」


亜季「返答しだいによっては、地獄を見てもらう?いいな?」


ちひろ「んほーーーーー!」


文香「ちひろを囲んだのは、これまた大名の拓海と亜季。ふたりの罰によりちひろは罰を受けてしまいました」


文香「…以上で花咲爺さん。完結です」


千枝「わぁーーー」パチパチパチ


桃華「さすが文香さんですわ。読むのがすごくお上手ですわ」


くるみ「う、うん…。欲張りは駄目だってはっきりわかったでしゅ…」


文香「そうですね…。皆さん。欲をかいた行動はいけません。わかりましたか?」


千枝・桃華・くるみ「はーーい!」


おまけに続く!(明日以降)

おまけ


瑞樹「おっはよ~。今日も一日頑張るわよー!」


モバP「おはようございます。やる気満々ですね」


瑞樹「当たり前じゃない!まだ私だって捨てたものじゃないって分かったからね。燃えてるわよー!」ゴォォ


茜「川島さん!今日は背中から炎が見えています!私も負けませんよ!」ゴォォ


モバP「この時期にはありがたいが、ちょっと暑すぎるぞ二人とも!」


茜「しかし、川島さん、どうして今日はそんなに燃えているのですか!?」


瑞樹「それはね。昨日のみに行った居酒屋で、若いイケテル店員さんに『まだまだ若いんですよ!』って励まされたの。若い子からのエールって燃えるのよ」


茜「そうでしたか!私もファンも皆さんのお言葉を貰うと、燃え上がりますね!」


瑞樹「そうよね。だから昨日会った嫌なことも忘れて頑張るわよ!」


茜「その意気です!私も今日のお仕事がんばります!」


モバP「…。瑞希さんが昨日行っていた飲み屋は確か…。あそこか…」ピポパ

店員『お電話ありがとうございます。飲みのみ亭××でございます』


モバP「すいません。店長の○○さんいらっしゃいますか?」


店員『店長ですね。少々お待ちください。――はい。○○です』


モバP「いつもお世話様です。346のモバPです」


店長『なんだモバPさんか。最近ご無沙汰じゃないの?忘年会の返事待ってるから』


モバP「ははは…。うちは大所帯ですから、少し考えさせてください。――それよりも。昨晩はありがとうございました」


店長『ああ。川島瑞樹さんだろ?その様子だと、うまく行ったみたいだね』


モバP「ええ。ばっちりでした。本人は若いイケテル店員と言っていましたよ」


店長『そりゃ、うちの一番のイケメンですから。来る日が分れば準備しておきますよ』


モバP「また近いうちに御厄介になるアイドルが来るかもしれません。その時はお願います」


店長『あいよ!今をときめく346さんのお墨付きは、この業界では勲章ですから。お安いご用だよ。じゃ』


モバP「…。のみのみ亭は○っと。年長組がへこんでいる時は優待券でも渡して行かせるか…」

――別の日


美優「ふう…」


モバP「美優さん。どうしたんですか?何か悩みがあれば聞きますよ?」


美優「え?いえ…。そこまで大したものではないんです…。少しお疲れなのかもしれません…」


モバP「確かに最近は注目度も上がっていますからね…。今ある仕事のオファーが切り抜けられれば、長い休みを入れたいんですが…」


美優「…お仕事に穴をあけるわけにはいきません。頑張ります…」


モバP「…これは私の独り言なんですが。美味しい料理屋さんがあるようです。これを食べれば美優さんも元気が出るかもしれません」スッ


美優「…料理屋さんの優待券?」


モバP「はい。本当は私も一緒に行きたいのですが、アイドルとプロデューサーの関係上…。すいません。ぜひ行ってみてください」


――夜


美優「…ここね。結構しっかりしたつくり…」ガラッ


店員「いらっしゃいませー!おひとり様でしょうか?」


美優「は、はい…。これをお願いします…」スッ


店員「はい。いつもありがとうございます!一名様、特製コースご案内!」アリガトウゴザイマース

美優「――特製コース。どんなものかしら…」


店員「お待たせしました!特製薬膳鍋でございます!肉体的、身体的疲労の方にお勧めの料理でございます!」


美優「薬膳鍋…。初めて食べるけど、苦いのかしら…」モグモグ


美優「あっ…。美味しい…」


――


美優「ふう…。身体も温まって、心も軽くなった気がします…」


店員「お待たせしました!次は特製のトリュフオイルと、香草料理です!」


――次の日


美優「おはようございます…」


モバP「おはようございます。今日は顔色が良く見えますが?行きましたか?」


美優「はい…。とってもおいしかったです…。気分が軽くなる。そんな気持ちになりました。本当にありがとうございました」


モバP「そう言っていただけるとご馳走したかいがありました」


美優「あ、あの…。もしよろしければ今度は、その…。二人で行きませんか?」


モバP「…はい。この長い仕事が終わっておやすみになったら、行きましょう」


美優「!は、はい…!お仕事頑張ります…」!

モバP「…」ピポパ


店長『はい。薬師亭です』


モバP「あ、店長さん。昨日はうちのアイドルがお世話になりました」


店長「ビックリしたよ。まさか三船美優が来るなんて。裏は大パニックだったぜ?興奮した男連中をなだめるのに苦労したんだからな」


モバP「まあ、それは申し訳ない。でも、効果てきめんだったらしいですね。うちの三船の顔色も昨日とは見違えるようだった」


店長「だろ?うちの特製コースは本物なんだよ。また優待券送るからさ。バンバン宣伝してくれよ」


モバP「はいはい。その時はまたお願いします。では」


モバP「…アイドルのモチベーション管理もプロデューサーの仕事だからな」


早苗「Pくーん!いるー!?」


モバP「…どうやら、今日もいろんなお店のお世話になりそうだな」


劇終!

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