王様「そうか」
大臣「はい」
王様「…………」
大臣「…………」
王様「大臣」
大臣「……は、何か」
王様「今夜、私は国を捨てて旅に出る……死ぬつもりだ」
大臣「はい」
王様「共に来るか?」
大臣「無論ですな、此の身は王の為に磨き続けて参りました」
大臣「しかし既に老いによる限界を迎えた身……マトモな戦闘は二度が良いところでしょう」
王様「良い」
王様「そなたに感謝する、大臣」
大臣「勿体無き御言葉でございます、王……」
王様「…………」
大臣「…………」
< ザッザッザッ
< スタスタッ……!
王様「……む、そなたは」
元兵士長「この様な夜更けに、どちらへ行かれるのですかな? 陛下」
大臣「先々代の兵士長……下がりなさい、貴公には関係の無い話だ」
元兵士長「これは大臣殿は妙な事を言いなさる」
元兵士長「ワシとて老体の身、まだ朝日が昇る時まで長いというのに目が冴えてかなわんのです」
元兵士長「そうして夜な夜な城を歩き回っていれば、陛下と大臣殿が物々しいお姿で歩いていると……」
大臣「…………」
元兵士長「で、あれば」
< チャキッチャキッ……
元兵士長「老いてから久しく手にしていなかった剣を携えて、陛下の散歩に付き合おうとした次第ですな」ニヤッ
王様「……これから向かうのは、足元に気を付けていても命を落とすかも分からぬ道だぞ」
元兵士長「若き日を思い出しますな、かつて貴方の護衛を務めていた日々を」
元兵士長「あの時と今は少々勝手が変わりましたが、なに、大した違いはありますまい」
元兵士長「お供致しますぞ? 『暴れ馬王子』」
王様「……フッ」
王様「ではそなたも共に来い、兵士長」
元兵士長「どの様な相手であれ七度は剣として若かりし頃と変わらぬ実力をお見せしましょうぞ」
< ギィィイッ
< スタスタッ
元兵士長「……うむ!」
元兵士長「問題ありませぬ、陛下」
王様「これで城からは出られたな」ザッ
大臣「都を出てしまえば、素性は王のお顔を見られなければ分かりませんからな」
王様「そうだな、スクロールを調達出来れば呪文を書いて魔王の城に近い町へ飛べるが……」
王様「……この時間は民も疲れているだろう、異世界から勇者を召喚出来なかった話は誰もが気を落としているのだ」
大臣「王に非はありませぬ」
王様「分かっている、この都を出て北東にある港町まで行けば私の知り合いがいる、そこへ向かい魔王城までの道程を考えるとしよう」
< 「お待ち下さい……!」
元兵士長「何者だ……ッ」チャキッ
元兵士長(馬鹿な、私や大臣でも気配に気付かなかっただと……?)
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