武蔵「鏡花水月の夜に」 (167)
艦これです。あと長いです、地の分ありです。書き溜めてはありますが、途中っかけです。
武蔵「ふぅ...一日の終わりはやはり風呂に尽きる...」
湯船に浸かり腕を伸ばすと関節同士が干渉し合い砕けた音がなる。その感覚が心地よく自然と吐息が出てしまう。今この場には私以外誰もいないが、もしこんな姿を見られてしまったら「武蔵」としての格が下がるだろうな。
夕立「あはは!!武蔵さんって意外に年寄りくさいことするんですね!!」
武蔵「....」
声のする方を向くと、1人いた。一体いつから隣にいたんだ。それに年寄りくさいとは何だ!....と言っても「夕立」には通じないだろうな。この「夕立」という艦娘はどの娘も喋りたがりで人の話しを聞かない。聞き分けが無いとはまた訳が違うが。
だが、そこが可愛いところではある。
舐め回すように目を細め、夕立を見つめていると何かを思い出したかの様に、ハッと顔色が青ざめ夕立は申し訳なさそうにこう言った。
夕立「あっ..すいません....武蔵さん。失礼な事言って..」
ふむ、
武蔵「....あぁ。夕立は改ニになったんだな」
長年の勘からだ、自信は無いが、唐突に思いついた予感を口走ってしまった。恐らく私の知る目の前の「夕立」は近代化改修を終えて改ニへと変貌しているはずだ。
夕立「へ?なんで武蔵さん知ってるの!?今日なったばっかりだから驚かせようと思ってたのに...」
夕立の驚いた声と落胆する声が混ざりあっているのが聞こえた。会話からも「夕立」の喜怒哀楽の起伏の度合いを感じることができる。これなら例え目が見えなくともこの娘との会話は自然と笑みを育むことができるのだろう。
武蔵「普段夕立は失礼な事なんて自分で気づかないだろう。それで改ニになったと思ったんだ」
夕立「ちょっと!!それ失礼っぽい!!」
武蔵「ははは!!」
性格の事もあるがよく目を凝らすと容姿にも変化がある。風呂に入る時は基本メガネを外しているせいかその変化になかなか気づかなかった。
手っ取り早く分かる変化で言うと緑のビー玉の様にコロコロとした可愛らしく愛らしい瞳が変化していること。その瞳は赤くなっておりビー玉と形容するには優しすぎる色彩となっている。その色は、まるで血だ。
「夕立」という艦娘は改ニになると恐ろしいくらいに性能が飛躍する。その性能は時に戦艦に匹敵する火力と、駆逐艦が誇る燃費の良さ、この2つを持ち合わせることができる。それこそが「夕立」の取り柄である。
だが、私はその力を不幸だと思ってしまう。知っているからだ。「夕立」という艦娘はどのような最後を迎えるのか。その燃費、火力、使い勝手の良さのせいで多くの戦地に赴き多くの敵を殺すことになる。そのせいで少しづつ崩壊していく夕立を。
一つの例を挙げよう。その前に私は弱小鎮守府を回る「指南艦」というものである。その指南艦としていくつか回った一つの鎮守府で起きた「夕立」の話しだ。
そう、忘れもしない、あの娘の姿を。
敵地に赴けば、壊れ。砲撃を受ければ、笑い。敵を撃ち抜けば、止まらない。そして狂ったようにその骸を砲弾で貫く。
何度も、なんども、ナンドモ。
そしてその骸が何だったのかわからないくらいにぐちゃぐちゃになった頃、ピタリとそのルーチンは、止まった。
近寄り私は見た。見てしまった。その表情その行為を。私は、その瞬間こう悟ったのだ。艦娘という新たな人生、幾重にも分岐し折り重ね合う氷柱の先にある、冷たく悲哀な一つの末路 。
いつか巡り会う運命に、私は目を離せなかった。
年端もいかない少女がするには似つかわしくない恍惚そうな表情。目には返り血を浴び紅い涙を浮かべ、?は風邪を引いたかのように紅葉し、夕立の顔を全て紅く染め上げていた。そしておもむろに目線は海上に浮かぶ元は生き物だったであろうゼリー状の物質へと向かう。何を思ったかその物質の上に股がりゆっくりと、腰を降ろしていく。ゼリー状の物質一帯は赤潮のように紅色に染まり、汚染された海と一つになった夕立は、震える両手でゼリー状の何かをすくい上げる。気分が高揚し息が荒くなる夕立。少しづつ手が目的地へと近くなるたびに呼吸が早くなり喘ぐ。口からは小さく可愛らしい舌が小刻みに震えながら這い出てくる。そして、夕立はその何かを舐めとった。ほんの少し、舌先で触るくらいに。その行為で夕立は、完全に壊れた。目は見開き一気に喰らいつく。その行為に耽る姿は発情期を迎えた犬の如く。我を忘れ一心不乱に貪り尽くしていた。
.....あの一瞬、あの表情は一生忘れないだろう。
その後、その夕立はどこかの鎮守府に出向した。噂では何かしらの病を抱えた艦娘を収容する鎮守府が存在するらしくそこにいるのらしい。
追想を終えた私は改ニになった夕立に視線を向ける。右隣りにいる夕立と私は目があい心情を知ってか知らぬのか小首を傾げる。
そうだ、そうだったな。
武蔵「改ニになったのならば、胸は少し大きくなっただろう?どれ!私がどのくらい大きくなったか調べてやろう!」
夕立「へ?ちょっと武蔵さん何するの!?」
武蔵「聞こえなかったか?揉むんだよ。揉む。...ほぅ結構大きくなってるじゃないか」
夕立「あはは!!くすぐったいってば!....ちょっと!?先端はダメっぽい!!!」
私ほどではないが柔らかくもちもちした触感を楽しむ。
武蔵「ぽい?そうかそうか。そんなにダメって訳じゃないようだな」
夕立「!?それは口癖で!!」
武蔵「よいではないかーよいではないかー」
幾数人の改ニに成り立ての「夕立」達に行ったやりとりを交わす。決まってどの「夕立」も同じ反応、口癖をするものだから心の痛覚を刺激し、押さえつけるようにして吐き気が現れる。
腕の中で暴れる夕立はか弱い駆逐艦の力そのものだ。この娘の中には悪魔に等しい力が身を潜めているとは到底思えてこない。
神なんて存在はとうの昔に信じるのはやめている。いくら神に強請ろうとも神は等しく願いを叶えてはくれない。それならいないのも同然だ。だがどうしてだろうか。信仰心がなくとも人間も、また艦娘も神へと願い事託すのは。
改めて、神を私は絶対信じやしない。だがいるのならどうか、この娘だけは今と変わらず無邪気な笑みをずっと続けられるようにしてくれ。
今日は一旦終了します、もしかしたらチマチマ投稿するかもわからんです。
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夕立「もう最悪!!武蔵さんありえないっぽい!!」
武蔵「すまない....少しやり過ぎてしまった」
夕立「もう....それで武蔵さん?約束のコーヒー牛乳は?」
胸を揉みしだいたせいで夕立はひどくご立腹の様子だ。反省した私は何度も謝ったが夕立は依然として許してはくれなかった。埒があかないのでお詫びとして飲み物を一つを奢ることで一つ手を打ってくれないかと頼み込み、どうにかして許してもらえることになった。
武蔵「だがいいのか?夕立はコーヒー牛乳は飲めなかったはずだが?」
夕立「いいの!改ニになって大人になったんだから、大人の味もわかるの!」
夕立はコーヒー牛乳が飲めない。聞くところどうやらコーヒー牛乳の「コーヒー」という言葉に反応し、純粋に苦い飲み物、大人の飲み物であると思い込んでいるらしい。故に一度も試飲した事もなくイメージの中で懊悩と闘っている。
瓶製のコーヒー牛乳に付いているあの開けにくい紙の蓋を爪で引っ掻きながら文句を叫ぶ。
夕立「ぐぬぬ!!あーかーなーいー!!!」
そして、ポンっ!!と気持ちの良いくらいの音がなる。「やった!」と言い小さくガッツポーズしているのでは夕立はまだまだ少女である。
腰に手をあて全裸でコーヒー牛乳を一気飲みする。年寄りくさいな。一体何でそんな古臭い仕草を覚えたんだ。
夕立「プッハァーー!風呂上がりの一杯はやっぱ格別っぽい!!」
武蔵「そうか...それはよかったな....」
ちょっとだけ投稿。今更なんですけど>>11の?になっているのは「?」です。すみませんです。
ありゃ、また?になってるなんでじゃこりゃ。
改めてなんですが、?はほおです。ほっぺのほお。
変換候補よくみてみ
別に当用漢字のがある
夕立「それにしても全然苦くないっぽい。むしろ美味しい...」
そう言いながら夕立は目線より上に牛乳瓶に持っていきあたかも物珍しそうに、半分くらい残っているコーヒー牛乳をくるくると回転させ攪拌させた。そして額に押し付け風呂上がりの体に残る粗熱をコーヒー牛乳へと移している。
武蔵「夕立はコーヒー牛乳とカフェオレの違いを知っているか?」
私は天にも昇る心地であるだろう夕立に水を差す。
夕立「え?カフェオレとコーヒー牛乳の違い?」
こちらに近づきながら夕立はコーヒー牛乳を飲み干し私の隣へと座った。
武蔵「うむ、違いだ。互いに似たようなものだろう。何が違い、何が同じだと夕立は考える?!
空瓶を私の反対方向へと置き、うーんと唸りながら腕を組む。まるで一休さんが右から左へと考えを転がし、頓知を働かせているかのようだ。時が経ちハッと目が見開きこう言った。
夕立「実は両方とも何も変わらなくて、気取った言い方か気取らない言い方!それだけの違い!」
武蔵「うむハズレだ」
夕立「だーー!!」
悔しさを体に全体で表す。つまり腕を目一杯広げたという事だ。夕立には私との距離感を考えて欲しかったな、勿論当たらないわけがない。丁度私の鼻先へと手の甲が飛んできた。
武蔵「夕立....」
夕立「うあああ!!ご、ごめんさい!!っぽ...ンッウン!」
無理やり咳払いをし口癖を抑え込む。ぽいだなんて言ったら反省していない様に思われると思ったのだろう。あながち間違えではない、私は「夕立」を熟知しているから無問題だが他の人とかすると夕立の考えた風に思われるはずだ。成長したな。
武蔵「うむハズレだ」
夕立「だーー!!」
悔しさを体に全体で表す。つまり腕を目一杯広げたという事だ。夕立には私との距離感を考えて欲しかったな、勿論当たらないわけがない。丁度私の鼻先へと手の甲が飛んできた。
武蔵「夕立....」
夕立「うあああ!!ご、ごめんさい!!っぽ...ンッウン!」
すみません、重複したっぽいです。>>27はすっ飛ばして読んでくださいまし。
夕立「えっと...。これで冷やしてください...」
からの空き瓶を手渡される。一瞬だけ感じた冷気は熱伝達に従い私と同等の温度へと変換された。夕立なりの気遣いだ。何も言わず私はそっと鼻先へ運んだ。
武蔵「うむ...。夕立はまずデリカシーから考えなければならないな」
夕立「うっ...。ごめんなさい...。...あっ!そうだ!それで正解は?」
はぐらかすかの様に無邪気な声で言った。はたして本当にはぐらかしたのか、はたまた忘れただけなのかは夕立のみぞ知る。
武蔵「あぁそうだったな確かその話しだったな。妙に痛む事が起きたせいで忘れていた。正解はだな、コーヒーを牛乳を割ったのをカフェオレ。牛乳にコーヒーを混ぜたのがコーヒー牛乳だ」
夕立「うん?それじゃあどっちも同じってこと?」
武蔵「ニュアンス的には双方同じだな。細かく指摘すると変わってくるが」
夕立「でも私カフェオレは飲めるよ?コーヒー牛乳は飲めなかったけど」
武蔵「夕立の場合は文面からなる食わず嫌いだが、ここで大切なのは飲める飲めないの差異ではない。夕立には、私達には、どちらかを選択する自由があるということだ」
夕立「...むずかしい...」
武蔵「ハハハッ!わからないか、ではまだ夕立は気にしなくてもいい。好きな様にやりなさい。失敗しても大丈夫だ。そのために私はいるのだからな」
私は立ち上がりアルコールを販売している自販機に行く。缶ビールを一つ買いプルタブに手をかける。プシュっと、これまた気持ちの良い音がなった。脱衣所にはアルコールの独特の「大人の味」の香りが漂い始める。
一旦終了です。気が向いたら夜中にまたチビチビ投稿するかも知れません。あとミス多くてすみません。いんたーねっとはむずかしいずら。です。
>>23さんありがとうございます。これからそういったミスは減らしていこうと思います。
武蔵「やらんぞ?夕立」
アルコールの匂いを感じ取ったのか夕立は体にタオルを巻き付けやっきてた。
夕立「ほんの少しだけ、ダメ?」
武蔵「ダメだ。これは大人の飲み物だからな」
夕立「もーー!!だから私だってもう大人なんだからぁ!!」
膨れっ面をし膝に擦り寄り懇願する様は飼い主に餌を求める犬の様だ。
夕立「ダメ?」
武蔵「ダメだ。艦娘はアルコールを摂取しても血中アルコール濃度は高まらないが、いかんせん夕立程のみめかたちに与えるのは私の倫理感に反する」
夕立「あー!!もうむずかしい言葉ばっかり使ってめんどくさい!!....こうなったら力ずくでも...」
抱きついていた両腕を解き夕立は私から遠ざかる。そして首を左右に傾け音を鳴らし右手をこねくり回しは準備体操を始めた。
武蔵「なんだ夕立、やる気か?」
ごめんさい、少しだけ書きました。続きはまた後で暇ができたらです。関係ないけど武蔵の特集を見忘れた、再放送せい!
百分台の速度での戦闘では、鋭敏な筋肉の働きは不可欠であり、瞬時に適切な判断を下すための反応速度の強化もまた必然的である。
私は夕立を支えたまま放り上げたアルコール飲料の掴み取り人差し指でプルタブを開ける。炭酸が弾ける音が聞こえ、飛沫と共に迸る大人の香りが鼻腔に徐々に迫るのを感じ始めたのだ。
そして、私はようやく夕立の速度と共になった。
夕立「うぁぁあ!負けたー!」
武蔵「うむ。改ニに成り立てとはいえ中々良い動きをするな。だが、まだまだ修業が足りん」
夕立「やっぱりおかしい...。普通は戦艦より駆逐艦の私の方が速いはずなのに、どうしていつも追いつけないのかなぁ...」
武蔵「鍛錬と経験。これがモノを言う。あとはどれだけ相手の意表をつくことができるか。夕立は動きが読みやすい。もっとよく考えて行動をしてみなさい」
夕立「なら...これでどぉ!?」
さっと夕立は右腕をアルコール飲料に伸ばす。もちろん夕立は私の煽りに似たかまかけに乗っかっているとは、夢にも思ってないだろう。
私は夕立を支えていた腕を離す。夕立が落下する速度と腕を伸ばす速度が等速直線運動を結び等しく落下していくのが見える。
そして張りのある桃尻が床に接触し切れのいい音が響いた。
夕立「もうやめた...。参りました...」
大の字で広がり夕立はとうとう諦めた。呆れた私は自販機の隣にあるタオル置き場から一つを掴み取り夕立に白旗を与えのだった。
武蔵「まったく、明日も早いんだ。いいか?大人はな、明日に備えて準備をするもんだ。ほらさっさと着替えて寝るぞ」
夕立「はーーい....」
私は腰に手をあてビールを喉に流し込んだ。....やはりこれは古臭いとはまた違うのかもしれんな。ついやってしまうぞ、誰でも。
それから私はさっさと着替え終えたが髪の長い夕立は乾かすのには時間がかかったのであろう。私より後に出てきた。まぁ待ってる間に「にっが!!」と聞こえたのは聞かなかったことにしといてやろう。
大人になるにはまだ早いぞ。
例の様に時間が空いたので。
また明日もがんばります。よろしくお願いします。
ではでは。
読み返したら武蔵さん2回プルタブ開けてますね。すみません。楽しく書いてるとすぐ忘れちゃう自分の性分を許すまじ。すみません。
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武蔵「さて、全員ついてきてるな?点呼!!」
夕立「ぽい!!」
暁「ちょっと!!それ違うわよ!!」
響「ハラショー」
大井「なんで私が駆逐艦なんかのおもりを..」
飛龍「ご、5!!」
武蔵「よし、全員いるな」
今日の朝早くから私達は沖合いに出て改ニになった夕立の実施運用とついでに響、暁の訓練をしている。今の所敵の「深海棲艦」とは出会っていない。深海棲艦が出ないことは嬉しいことなのだが、今回に限ってはさっさと夕立のテストを行って帰りたい所だ。
なぜなら、
大井「ねぇ?私って今必要なの?大体武蔵さん1人で駆逐艦のお守りなんかできるんじゃないですか?」
夕立「ねー!まだなのー?」
暁「もうさっきうるさいわよ!一人前のれでぃなら少しは待てないの!?」
響「流石にこうも敵が出てこないのはツマラナイものだね」
飛龍「ほ、ほらほら!もう少しだから。ね?」
非常に空気が悪い。予定では鎮守府近郊海域でさっさと終わらせるつもりだったのだが、まったく敵と遭遇しないためわざわざ沖合にまで出向いてしまっているのだ。珍しい事もあるんだな。
大井「ちょっと聞いてます武蔵さん?やっぱ全部おかしいですって!何ですかこの人数?たかが駆逐艦の試験運用に6人!ましてや戦艦に空母までって!」
だいぶイラだっているのがわかる。大井の眉間に寄ったシワが、時間が経つにつれて増えていっているのがわかるくらいにだ。
武蔵「指南艦が来た鎮守府には資材がいつもより多く支給されることになっている。私も提督に不必要な戦力の投下に意を唱えたが、どうせ支給される資材が黒字なら轟沈するリスクを限りなくゼロに近づけるよう、こうしたと聞いた」
私も聞いた時は少し驚いた。ハッキリ言って珍しい。大概、戦力増加のために開発に回したり、いつかに備えて備蓄をしたりするのが普通だ。それが現在の戦力を強化するためにだけ使う提督はあまりに少ない。まぁ良い提督だと思うがな。彼女達は知らないからな。ここ以外の「提督」を。どれだけ恵まれているかなんての説教はするつもりはない。知らなくていい事だ。
大井「まったく...あの提督の考えなら仕方ないですね....」
武蔵「うむ、納得してもらえたか。しかし提督の話となると妙に素直だな。「大井」はやはりツンデレ?というやつなのか?」
大井「ハイハイもう何でもいいですよ...理由はわかりましたけどやっぱ早く帰りたいですね...」
手を左右に振って意思表示をする。疲れていなければ「大井」という艦娘はムキになって言い返してくるはずなのにな。
飛龍「あわわ...三人とも少し落ち着いてぇぇ.....」
新任教師飛龍の声が慌ててきた。駆逐艦三人の事を飛龍に任せておいたがとうとうガタがきたみたいだ。まったく今度は何だ。
武蔵「どうした新任教師飛龍?なんだかんだ上手くやってると思って放っておいたが?」
飛龍「なんですかそのあだ名は...それよりも!!二人が喧嘩始めちゃったんですけど....」
寝る前にちょろっとだけ。
書き溜めてある分は突然ブッパします。進み遅くなってたらあっコイツ書き溜めてないか付け足してるなこれと思ってくださいです。ではでわ。
見ると夕立と暁が互いのほっぺを引っ張りあっていた。餅の様に伸びるほっぺは忘れていた空腹感を思いだしてしまう。
暁「うるさいうるさいうるさーい!!変わったのは見た目だけで中身は何もかわってないじゃない!」
夕立「うるさいのは暁の方っぽい!!私はもう大人なんだからぁ!!」
二人共涙目になりながら口喧嘩をしている。まったくどんぐりの背比べとは正にこのことだな。身長は夕立の方が大きいが暁の言う通り中身が以前と変わらない。響はというと二人から少しだけ距離を取り、やれやれと肩をすくめている。「響」という駆逐艦はどうしてこうも大人びているのだろう。やはりわからない。
飛龍「なんとかしてくださいよぉ武蔵さん....」
武蔵「うむ、ほっぺを見てたら腹が減った。帰ったら餅を食べるとするか」
飛龍「あぁもう!!武蔵さんったら!!まったく二人とも!いーいーかーげーんーにー!!しなさああああい!」
飛龍の叫び声と同時に二人の頭にゲンコツが与えられる。
夕立「イッタィ!!何するの飛龍さん!」
暁「もうやだぁ....何で今日はこんな目にあうのよ...」
一瞬、風が変わった。肌を刺激する潮風に何かの違和感が。ほんの少しだけ混ざっていたのを感じた。
武蔵「全員戦闘態勢をとれ。そろそろ仕事の時間だ」
私のその一言を何が何だかわからないとでも言いたげに、ピタリと動きが止まった。
飛竜「え、武蔵さん?索敵機からのそんな電報
は受けてませんよ?」
ちょびっとだけ。また後でがんばります。
関係ないですけど何かオススメの本なんてのありますか?
書いててもっと本読まないとって思い始めたので...。
武蔵「....まぁ、なんだ。そうだったか。だがそうでもないかも知れん。例え間違えだったとしてもみな緊張の糸が切れている。もう一度集中を取り戻してだな...」
暁「え!武蔵さんでも間違えることがあるんですね」
暁は驚いたように目を見開きゲンコツで痛んだ頭を撫りながら意外そうにそう言った。
武蔵「なんだ、そんなに驚くことか?」
響「うん、そうだね。武蔵さんほどの艦娘が間違えるはずなんて無いと思ってたからね」
飛竜「....いいえ、そんなことはないみたいですよ」
耳元を手のひらで覆い隠している飛竜が呟いた。表情は悩ましく眉間に皺が寄っているのだが、隠しきれない喜びを?の綻びが語っている。現状では吉報であり、また凶報でもある事実を踏まえどちらの顔付きをしてよいのか、悩ましくあるのはそのせいだろう。
耳を覆い隠すこの仕草は航空母艦がやってしまう仕草の一つだ。艦載機から受けた電報を脳に直接聞き取るための仕草なのだが、無論耳から電報を受けているためこの行為は必要ない。それでも聞き入るようになってしまうのは「音を聴く」行為の常であるからだ。
今日はここまでです。眠気に負けました。
孫子ですか...取り敢えず買っておきました。後は読みます。
あとえっちぃのは全然考えてなかったですけど、ご要望があったので頑張って練りこみます。明日がんばる。デス。
>>76の訂正です。また当用漢字です、すみません。
飛竜「....いいえ、そんなことはないみたいですよ」
耳元を手のひらで覆い隠している飛竜が呟いた。表情は悩ましく眉間に皺が寄っているのだが、隠しきれない喜びを頬の綻びが語っている。現状では吉報であり、また凶報でもある事実を踏まえどちらの顔付きをしてよいのか、悩ましくあるのはそのせいだろう。
耳を覆い隠すこの仕草は航空母艦がやってしまう仕草の一つだ。艦載機から受けた電報を脳に直接聞き取ると反射的に起きてしまう仕草なのだが、無論耳から電報を受けていないため行為は必要ない。それでも聞き入るようになってしまうのは航空母艦の常である。
飛龍「索敵機からこちらに接近する深海棲艦の伝達を受けました。艦種は軽巡洋艦型ホ級一体、駆逐艦型イ級二体からなる計三体です。共にオーラを発しておらず、単縦陣を組みこちらに前進中。どうやら、私達の動向はあちらには嗅ぎつけられてはいないみたいですね」
飛龍の連絡を受けた夕立、暁、大井達からは先程まで不満げだった雰囲気は一変し、緊張糸が張り詰め始めた。
大井はというとあれだけメンドくさそうな顔をし、一目で分かる程の眉間の皺が一瞬で消えさり無表情に変わった。その事に気がついてしまった響は大井の一変した表情の移り変わりから目を逸らしほんの少し肩を震わせている。
今は、一人を除き騒がしかった時は去り、静寂が周りを瞬間的に包み込む。無意識の中聴こえるのは緩やかに海面を鼓動する波音のみ。
私は、これから一戦交える「深海棲艦」について幾つか説明しなければならない。何故なら、この深海棲艦について理解すると同時に事細かに説明を書き表わせば、艦娘が製造された理由、行き着く先を知ることができるからである。
深海棲艦とはいうならば人類の敵、だった生物だ。この一文ではもはや昔話だと感じられるだろうが、もちろん現代においても深海棲艦と人間との異種間による世界大戦の構図は変わりなどしていない。人の認識では。
ではこの認識は誰のものなのか。人ではない何か。模造品の人間である何か。艦娘での認識では、艦娘対、深海棲艦の戦争に構図は塗り替えられいる。人と艦娘、互いに認識の違いが現れるのは艦娘が世間一般でどのような兵器として考えられているかにある。
私達艦娘とは、自ら思考し、自発的に発砲する。いわば人工知能を搭載した画期的な人型兵器としてまかり通っている。人が銃を扱うように、艦娘もまた人がなす戦争の手段の一部でしかないというわけだ。
そこに認識のズレが生じる。戦っているのは私なのだ、兵器を扱い血を流すのは私なのだと、人間が考えるのには。この自分よがりな考えとなる所以は、情勢が人類対、深海棲艦にあった時代にまで遡らなければならない。
明日は花金です。夜中まで頑張れます。だから明日がんばります。
なぜ深海棲艦に成り果てるのか、原因は不明だ。ただ深海棲艦を元に造られた物を艦娘と呼ぶのならば、深海棲艦になるのも頷ける。
つまりは、卵が先か、鶏が先かである。
これにて説明は終了だ。さて時間は過去から現在の私達艦娘が活躍する時代に巻き戻る。
武蔵「どうだ、私もまだまだ捨てたものじゃないだろう」
大井「はいはい凄いのは分かりましたから。さっさと作戦を決めましょうね」
響「それで、私達はどうしたらいいんだい?武蔵さん?」
大井の百面相から解放された響はいつの間にか無表情に戻っている。
夕立「うぅー!やっと帰れるぅ!」
暁「えぇもうほんとに...」
夕立に抱きつかれた暁は完全に疲弊やつれきった顔をした。それもそうだろう。出撃から今に至るまで夕立とはずっと口喧嘩が絶えなかったのだから。
武蔵「予め立てた作戦通りに事を進める。暁、できるな?」
暁「えっ!?は、はい。できますよ?」
武蔵「うむ、ならばいい。そうだな、この機会に暁に一つ教えておこう、いや、皆に言えることだがこんな言葉がある。ピンチはチャンスと。今暁達は疲れているのは一目瞭然だ。だからこそ、逆境の時を切り抜ける手段を学べるはずだ」
艦娘が深海棲艦との戦闘を行う場合、大抵深海棲艦側に軍配は上がる。戦闘力も然ることながら、一定海域に生息する深海棲艦の群れを殲滅しながら行軍することは、燃料、弾薬、気力の全てを浪費するのだ
引き返す選択を取ることも大切だ。だがどれだけボロボロで、死にかけで、死んでも死守しなければならぬ場面が必ずやってくる。その時生死を分ける選択に自らが直面したら、経験がものを言うのだ。
いつかくる絶望的な現実のため、私は優しく彼女らを指導しなければならないのだ。
飛龍「....みなさんそろそろ対敵します。目標は航路変えずこのまま私達の正面に現れるはずです。準備はよろしいですね?」
海原の遥か向こう、青空と海原の界の色彩に豆粒の黒い影の集団が見える。
飛龍「攻撃機発艦の手筈は整っていますが、今回は無しの方向ですよね」
武蔵「あぁ、今日は苦労ばかりかけてすまないな飛龍」
大井「雷撃はどうします?作戦通りだと発射する方向でしたけど、低級深海棲艦相手だと一気に殲滅してしまいますね」
武蔵「同じく待機だ」
大井「わかりましたけど一応私も駆逐艦のサポートに行きますよ。こんなイライラしてる姿、北上さんに見せられないのでここで発散しときたいんです」
響「私達駆逐艦は散開して側面からだよね」
武蔵「うむ、夕立、大井は正面から。響は右側面から、暁は左側面から。みな常に発砲を続け包囲するように行動してくれ。当てることは構わないが、あくまで夕立の実施運用が目的であることは忘れないでくれ」
夕立「ううーー!!!やっったああああ!!!いっっくぞーーー!!!ソロモンの悪夢、見せてあげる!」
夕立が両手を上に広げて艦隊に突っ込んで行く。「夕立」はソロモンの悪夢と揶揄されているが敵には同情せざるおえないな。
こんな楽しいそうにしている悪夢に付き合わされるのだから。
暁「あ!!待ちなさい!一人じゃ危ないでしょ!!」
響「さて、やりますか」
大井「私、砲雷撃戦って聞くと…燃えちゃいます....特に今日なんかわね!!」
夕立に続いて残りの三人が後を追う。そしてこちらの動きに気づいたのか敵深海棲艦も行動を始めた。
飛龍「えと、私はどうしましょう?」
飛龍が少し困った顔でこちらを向く。どうやら四人が動き始めたのに自分だけ何もしないのは如何なものなのかと考えていそうな顔だ。なんとなく考えいることがわかる。そう考えそうなのだ「飛龍」は。
武蔵「すまないが艦載機を飛ばすと相手の標的が増えてしまい正確なデータがとれなくなってしまう。あちらがピンチになったら私と共に攻撃機の発艦を頼む」
飛龍「はい、わかりました....」
武蔵「ふむ、不服か。ならば後で飛龍には駆逐艦三人のアドバイスをする役割りを任せるとしようか。随伴艦として働くのに航空母艦のアドバイスは貴重だからな」
飛龍「はい!!わかりました!!」
責任感が強い子だまったく。いい娘ではあるが仕事とプライベートを分けられるであろう娘は汚れ仕事が何故か一番向いている。なんてのは言えないが。
そうこう考えていると向こうからいつもの聞き慣れた音が聞こえてくる。
火薬が炸裂する爆音。その爆音は私の元に届く頃には聞きやすい程の音となり私の耳を通じ鼓膜、脳へと響く。
私は目を瞑り音のイメージを膨らませる。砲身から飛び出た鉄製のマニキュアは相手の体を切り裂き、体内のありとあらゆる臓器を醜く整形したあと出入り口をご丁寧に真っ赤に塗り終えたのち、命を絡め取り海へと沈んでいく。その惨状を。
飛龍「あ!!夕立ちゃんがイ級を一体沈めましたよ!!うぁ、結構グロい...。あれが駆逐艦の一発なの...?」
今度は連続した音が聞こえてくる。ドォーンドォーンと。装填された砲弾が砲身から押し出されるリズムに合わせて。
重く敵に機械的なリズムで風穴を空けた音とよく聞き取れない少女の叫び声のハーモニー。それは公園を徘徊する蟻の群れから一匹を無作為に選び取り出したのち、嬉々としてその四肢を毟り取り楽しそうに叫ぶ幼子の声のように聞こえてしまう。
無垢な少年少女達は悪意のない衝動的なそれを、殺意とは知らない。ただ、楽しいから。お遊びでしかない。前脚をとったらどうなる?何かがたんまり溜まったここを潰すと。首を抉ったら。そんな好奇心の奥底にある感情の名前をしらないのだろう。
もしかしたら響や暁や夕立も同じなのかもしれない。
いや、私も大井もどの艦娘も。この世界に私達が産まれた時から今も昔も片時として変わらなかった戦うという宿命。
その意味を考えたことはあったのか。
艦娘としての生を人間らしく生きることができたのではないのか。そんな考えがとめどなく溢れてくるが今はその時ではない。また、思い出した時に、風呂でゆっくりと考えるとしよう。
飛龍「暁ちゃんと響ちゃんが最後のイ級を沈めましたよ!うーん、ちょっとまだヒヤヒヤする部分がありますねぇ....」
瞼を開ける。眼下に広がる死屍累々は深海棲艦の肉と体内を流れる血液の代わりをした燃料で辺り一面汚染されていた。
そしてこちらへ向かってくる影一つ。その姿は昔見た映画のジョーズにあるワンシーンを思い出す。だが決定的に違うのはこのジョーズは私を食い殺さんとするためにくるのでなく、手薄な方へと逃げようとしていることだ。
大井「武蔵さん!!!前!!!」
わかっているとも。しかし、私の出番は今回はない。主役は夕立だ。
武蔵「お前は何故こちらにきた?」
一言、そう深海棲艦に呟く。すると撤退しようとしていたホ級の進水は止まる。蛇に睨まられた蛙のように。一触即発の状況で蛇は饒舌にこの哀れな蛙へと二つ提案を促す。
武蔵「生存確率の高い方を選べ。まず前提として私は必ずお前を撃ち抜くことができる。仮にもしお前が私から後ろに行くことができても私のこの46㎝三連装砲がお前を42㎞圏内から逃がさない。ならば進路を変え後ろにいる4人から逃げる方を選んだ方が得策だとは思わんかね?もっとも、生の確率より死の確率の方が遥かに上だが。ふむ、どうやら解ってないようだな、ならば簡単に教えてやろう。お前は死ぬんだ、2つに1つのパターンでだ」
私の言葉を理解したのかホ級の表情は隠れてしまい伺えないが確実に戸惑いを感じているのであろう、左右を忙しくなく見回している。
そしてもう一度私の方へと向き返ると、動物とは違う機械と機械が激しく擦れ合う音に似た不快な雄叫びをあげ、尋常ではない程体が反り返る。すると生物と人間に似た生き物の結合部が引き裂かれ、そのつど筋肉繊維一本一本から放出する血液の有様はグロテスクという言葉以外思い浮かばない。
不意に、自らの頭蓋に砲をあてた。
耳を劈くほどの爆音、爆風が私を襲う。そしてホ級の全ては四散した。しかし自殺ではない。大井の酸素魚雷によってだ。
大井「何勝手に死のうとしてるんですか?深海棲艦なら深海棲艦らしく私達に殺されなさい。自殺なんて、あんたには許されないのよ」
細切れになった残骸の上に立ち冷淡にそう述べる。
なぜだか、その眼からはホ級に対する憐れみと同情を感じる。あんたが羨ましいわよ。そう大井は小さく呟いた。その一言はこのホ級だった物ではなく偶然聞こえてしまった私にでもない。自分自身に噛み締めて言い聞かせいるように私は感じた。
武蔵「....さて、今日は帰るとしようか。みんな、ご苦労だった」
武蔵「....さて、今日は帰るとしようか。みんな、ご苦労だった」
夕立「あ~~終わったぁぁ~~。帰ったらご飯食べよっと!」
遅れて三人が帰ってきたが服装には、血痕の後が押し目もなく広がっている。
暁「まだそんなこと言える元気があるの...」
響「確か今日は肉料理の日だったと思うよ」
暁「えっ。こんなの見た後にお肉とか....ハァ、やっぱり今日は運が悪い日よ....」
武蔵「沢山食べて精をつけないとな。よく食べよく寝る。これが早く成長する秘訣だ」
飛龍「だからって食べた後にすぐ転がると牛さんになっちゃいますからね!」
戦いを終えた私達は帰路につく。楽しげな談笑をしながら飛龍は夕立達にアドバイスを。私はそれを聞きもう少し具体的なアイディアを。大井はというと、会話に入らずどこか上の空だった。
もしかしたら、大井は私が目を逸らしていることに正面から向き合っているのだろうか。
つくづく今日は運が良くない。こうも悪いと、泣きっ面に蜂という言葉通りになってしまいそうで気味が悪い。
何事も起こらず平穏に戦争する。私はこれを望んでいる。
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奇しくも予感は現実となってしまう。長年の勘が、私の予期せぬ答えを感じえていたからだろうか。
「ふふ、やっと見つけたわよ武蔵.....」
忘れもしない。私は。この声を。あの姿を。
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今日は終了です。どちら様か出てくる様子ですが、自分のサジ加減で出てくるのが早かったり遅かったり。わかるのはまだまだ先ってことでございます。ではへーほーを読んで勉強してきます。またそのうち。
大井「きたかみさぁぁああんん!!!ただいまぁぁぁあああ!!」
鎮守府に帰投する否や艦装を霧散させ、北上に全速力を保ったまま飛びつく。手厚い大井からの愛情に対し北上はというと、直線を描きやってくる大井から体を逸らし、
北上「おーみんな。おつかれー。帰ってきて早々で悪いけど簡易チェックシートに記入よろしくねー」
私達一行に笑顔でプラスチック製のクリップボードをひらひらさせながら近づいてくる。対象物にたどり着けなかった大井はというと、北上を抱きしめる格好のままどこかに飛んで行った。
武蔵「いつもご苦労様だな、「北上」は」
北上「うん?どっちの意味?」
武蔵「両方だ」
北上「まぁ慣れだよ。私も別に嫌じゃないし、大井っちも好きでやってるみたいだしね。なんていうのかな?居酒屋でいうお通しみたいなのだよ。行ったことないけどねー」
顔色一つ変えず北上はクリップボードを私に手渡した。北上から手渡されたクリップボードには艦装の不具合、損傷箇所。艦娘の戦闘後の体調不良をレ点で申告するシートが二枚重なり挟まっている。これはこの鎮守府独自のシステムで、提督が艦娘に対する扱いの真剣さを感じる。
艦装というものは実に不思議である。艦娘の意思によって艦装は光を纏いつつ徐々に質量を帯び顕現し、意思によって霧のように霧散して跡形もなく消え去る。これは魂の具現化による艦装の出現として認識されているのは知っているだろう。
もとより、魂の具現化とは一体なんだ。
艦娘には前世の記憶がある。前世の記憶といっても人間の様に喜怒哀楽を主軸とする人生の記憶など皆無で、怒哀。この二つの感情だけが内を蝕み延々と、現世にも痛みを伴う記憶の正体である。誰かは断末魔を上げ倒れ、みな一つ憤怒の形相で役割を果たし魂が抜け落ちた死体に沸々と涙をこぼす。この記憶。
前世の私の中では地獄が広がり、夥しい数の人間が私の中で死んでいった。体内で誰かの命の灯火が消える感覚を何と言葉で形容するのか、私は未だに分からない。
大和型戦艦二番艦「武蔵」これは私の前世。日の本最後の戦艦。かの昔から武蔵とは名高き強者の証しでありその名に恥じぬような振る舞いをしなければ、私の中で眠る誇り高き彼らに顔向けできない。私が常に「武蔵」を心がけているのはそこにある。
今週は何かと忙しいので遅なりました... 。すみません。
それと書き溜めでない追加のお話しなのでシュバットドーンできません。がんばります。
艦装と艤装はちがうものなのけ?
>>138さんそこまで深く考えてなかったですけど、考えてたらピンときたんで説明しようと思います。また書き足しなんで遅くなりますけど...
私は塗装が剥がれ錆びつき焦げ茶色に酸化したビットの上に足を組み腰掛けた。そしてクリップボードからボールペンを取り外し項目に記載しようと紙面を眺めると、以前にも増して様々な項目がみっしりと敷き詰められていることに一目で気がついた。
暁「あぁ!もうまた増えてる!!」
どうやら私に限った話しではないようだ。苦虫を噛み潰したように落胆とする暁の表情が見てとれる。
北上「あー。うん、確か二十項目くらい追加したみたいだよ」
申し訳なさそうに頭を掻く。しかし北上はチェックシートの作成に携わってはいない。申し訳なさそうな反応をとるのは同情の気持ちからと、いずれ自分もこうなるのだろうと予測しての反応でもあるはずだ。
響「改善前は確か三十項目くらいだったはずだよね」
この逸脱した簡易チェックシートとやらは三ヵ月前、私がこの鎮守府に来てから始まった。
経緯はというと、元々は出撃を終えた艦娘達は損傷の大小関係なくドックへと直行していたのだ。だが私「指南艦」なる者がやってくるという事で取って付けたようにして始まってしまった。
急遽始まったこの乗り組みに当事者からすると面倒事が一つ増え、尚且つ日に日に数を増す項目に対し露骨な点数稼ぎの為だという声が少なからず上がっている。
提督曰く予々構想はあったらしい。簡易的な不良診断を行う事で艦装と艦娘とのシンクロのズレの判断材料となりうるからだ。
いつかいつかとタイミング見計らっていたら時が経ち、提督は殆ど忘れていたらしい。そんな中私がやってくるという事で、急遽突貫工事で始めたのだ。
決して点数稼ぎで始めたわけではないと提督は言う。勿論そんな事はこの鎮守府に在籍する艦娘共々知っている事だ。少なからず点数稼ぎだと言う声は提督に対し艦娘が面白おかしくイジっているだけなのである。
響「ねぇ武蔵さん」
右下にいる響は私に声をかける。
武蔵「ん?どうした響?」
響「武蔵さんはこれって意味あると思う?」
先程までとは打って変わって深海棲艦と全く遭遇せずとも顔色一つ変えなかった響は珍しく不満げな顔をし、ボールペンの芯を出し入れしている。
武蔵「うむ、ある。ただ量はもっと少なくていいがな。響は必要ないと思っているのか?」
響「そうだね。量とは関係なくこの行為自体必要ないと思っているよ。艦装の不具合と損傷なんてそんなに大事な事じゃないからね。艦装なんて艤装を取り付けるだけの装具にしかすぎないのだから。私の憶測だけどチェックシートをやるわけは司令官が艦娘の修復に使う資材の量を節約したいから、こんなメンドウな事をしてると思ってるんだ。そんなの整備担当の明石が判断する事だからチェックシートの必要性はないと思ってるんだ」
武蔵「ふむ、確かに間違ってはいない。資材の管理は提督が判断する範疇ではない。明石が管理し、最終的な判断を提督が行えばいい。だが響、間違っているな」
私は用紙の裏面に「艦装」と「艤装」と二つの文字に間隔を開け、書いたのを響に見せる。関係ないが裏面が白紙だとここにも項目が増えるのではないかと一抹の不安がよぎった。
武蔵「響が提督の思慮を理解するには艦装と艤装について深く知らなくてはならない」
クリップボードを受け取った響は不思議そうに二文字を目で追ったのち小首を傾げ時間が止まった。
響「なんで艦装と艤装の説明を始めるのさ」
私の方に座り直した響は説明をしろと言わんばかりにクリップボードを突き出した。
武蔵「響は艦装を艤装を取り付けるための装具と言ったな。まずはその誤解を解かなければならないからな。ではまずは艤装についてからだ」
私も響に対面し直す。そして艤装と書かれた隣に点線を引き説明の準備を始めた。
夢で金剛に会えました。あと夕立と武蔵さんにも。金剛さん本物見たらあんな気持ちになれるのか...。サンタさんありがとう。また三日後くらいにがんばりますデス。
艤装とは、一部制約はあるが任意で艦装に取り付けることが可能な重火器のこと。
この一文は士官学校で提督候補生達が学ぶ艤装についてを引用したものである。
いわゆる教科書の説明文なのだがこの他にも様々な艦娘ついての説明が書き連ねられている。艦娘の平均寿命や、艦娘が患う病について、対処法など。勿論この後待つ艦装についても教科書には艤装と同等な説明が施されている。
教科書において艤装の扱い方は一文を太文字であしらい、教師がマーキングを言い渡すくらいに重要な必須項目として見なされている。その割に艦娘が自分について案外理解が浅いことに私は疑問を生じ得ないでいる。
私は教科書通りを点線に沿う形で書き、このまま響に渡そうと思ったが毎度交換を行うのはなんとも面倒だと直感した。腰を曲げ、響の目線より少し下に文字が見えるよう調整をした。
響「私の認識と何ら違いがないね。武蔵さんの46㎝三連装砲は駆逐艦の私には装備できないし、艦娘が艤装で深海棲艦と戦うのは当たり前の話しだからね」
艤装は本物の軍艦に搭載された艦砲のミニチュアサイズである。私が武装する46㎝三連装砲とは名ばかりで私が軍艦時代に使用した正真正銘の46㎝三連装砲とは全くもってサイズが違う。一回りも二回り、いやそれ以上に小さく縮小されているのだ。
武蔵「あぁ艤装の認識は今はそれで間違ってはいない。駆逐艦は46㎝三連装砲を武装して深海棲艦と砲撃戦を交わえない。では、響。ここで一つ質問しよう。なぜ響は46㎝三連装砲を装備することができないのだ?」
響「そんなの当たり前の話しじゃないか。私は駆逐艦。武蔵さんは戦艦。軍艦の種類によって装備できなくて当然だ」
私は意識を集中し鉄艦だった頃の記憶を辿り始めた。現在の私に位置すべき、過去の私の現像を写し当てるために。
徐々にピントが照合し始めるとどこからか現れた蛍の灯火は私の腰回りに蜷局ぎ、密集を行う。ある程度形が見えてきた瞬間、一気に瞬き重みが腰回りに生じた。現れたのは私の艦装に武装された46㎝三連装砲だ。
艦砲を外して響に手渡す。両腕で危なかしく受け取ったが違和感を感じたのか眉をひそめた。
武蔵「どうだ響。重たいか?」
響「まぁまぁ重たいね。でも思ってたより軽い」
武蔵「響は先ほど自分は駆逐艦であるからこれを装備することができないと言ったな。正解といえば正解だ。だが響はこれを装備できないと言ったのは身体的な意味合いを大きく含んだイメージで語ったのではないか?」
響はぽんぽんと手の平でお手玉を飛ばす様に遊んでいた手を止めた。地面に置き、そしてまた人差し指で突き遊び始めた。
響「確かにこんな小さな体では支えきれないと思っていたよ。でも駆逐艦がこんな代物を扱うだなんてイメージになかったのもあるね。じゃあ武蔵さん、なんで駆逐艦はこれを付けて戦えないの?装備をこれ一つに絞れば機敏に動く自信は私にはあるよ」
武蔵「知るには次に艦装を正しく知ることだ」
初コミケ参加で遅れました。艦これのコーナーで買った小説を読むのが楽しみです。では参加なさっておられる方々、がんばってくださいませ。
見るに見かねた私はクリップボードを響に手渡そうとする。差し出すと瞬く光源から響の腕だけが現れクリップボードを掴む。確かに響が受け取ったのを私は感じると手を離した。
響「ありがとう武蔵さん。それで、見ると私が理解してる艦装と艤装については相違はない気がするけど、今までの話を聞く限り私の認識は間違ってるんだよね」
武蔵「自己の認識と事実は全く食い違う時がある。俗説もまた然りだ」
響「で、その答えは?」
武蔵「....端的に言って、艦装とは艦娘の一部分であるということだ。時に響。艦娘とは何かを知っているか?」
響「深海棲艦を模倣して造られた人型兵器。そしてその名に由来する軍艦の魂を移植した兵器の総称を言う」
武蔵「ほぅ...。話は脱線するが響は一体何者であるか、答えられるか?」
艦娘は自らの理解が浅いと私は論じた。ここから先、艦娘が艦装に理解をするには自分は何者で、何物であるかを認識しなければならない。
人間が俗説とする理解と、艦娘が俗説とする理解を。
誰もが必ず思春期に問いかけるはずだ。私は誰と。人間が導き出す解答は、紆余曲折を経て、私は人間であると帰結するのだが、結局の所人間とは血と肉、タンパク質の集合体でしかないという目に見えて筋が通った簡単な解答だから迷わない。
しかし鉄、弾薬に燃料、ボーキサイトで錬成され、挙げ句の果てには人間とは似て非なる物をした複雑怪奇な艦娘の解答は、エゴイズムに塗れた答えと、もう一つに分かれるのだ。
しかし響の話し振りだと自らは何物であるかの理解はあるようだ。ならばこの先の飲み込みもすんなりと通るだろう。
艦装から放たれる光はすべて消え去り、隠された響が露わになった。響の瞳は真っ直ぐと私の瞳と交錯していた。その瞳の威風にふと藍玉の石言葉を思い出す。海の水と名付けられた藍玉には聡明沈着、勇敢と象徴付けられている。響の透き通る藍緑色をした瞳と「響」の佇まいにもしやと、私は勘ぐるのであった。
響「兵器さ。紛うことなきね。それには暁や夕立は気づいてないみたいだけど、大井さんは気付き始めてる。飛龍さんはとっくに理解して役割を果たそうとしてるは初めて会った時に感じた。面倒だよね、艦娘って。突き詰めれば突き詰めるほど自分を苦しめる。人間にみたいに簡単な存在でありたかったと私は思うよ」
あぁそうかと。言葉を繋げた響は晴れ晴れとした空を見上げた。
響「艦装が艦娘の一部分と武蔵さんは言ったね。艦装は軍艦の頃の記憶を辿って体に出現させる。これで靄が晴れたよ。艦装は私なんだね。後付けの艤装とは違って。だから前世が駆逐艦の私には46cm三連装は取り付けられない」
武蔵「そう言うことだ」
なんとかなりました。またそのうちがんばります。
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