【ラブライブ】希「どうしてこんなことに…」理事長「ふふっ♪」 (819)

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ラブライブ板から避難
とりあえず1から貼ってくよ

あと一応前スレ

希「ん……う………ふぁぁ………」

希「…………」


希「……………………」






希「え、ここどこ………」ジャラ…



希「………えっ。えっ、ジャラ…って、手錠やん、これ……っ」

希「手首と…足と…壁に繋がって……ええっ?!」

希「何……どうなって………」





理事長「あら、おはよう。目が覚めた?」


希「理事長……?」

理事長「ふふ、そうです。気分はどう?東條さん。」

希「気分も何も……これ、どういうことですか。理事長がやったんですか?何が何だかわからないんですけど……」

理事長「あー…まぁ、なんでもいいじゃない。とりあえず敬語はやめてくれる?私、東條さんの似非関西弁が大好きなのよ。」

希「………っ、いいから説明してください!」

理事長「説明してもいいけど……その前に、敬語はやめてと言ったわよね?ねえ、言ったわよね…?」

希「っ……」ゾクッ

理事長「ね、そうでしょう、東條さん……」

希「は、い………」

理事長「…………わかってないようね。仕方ないわ」カチッ

希「っ?!」

ゥ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙……


希「あっ…//、やっだっ………や、め………んんっ///とめてぇっ…!」ビクビク

カチッ

希「はぁ…っ///はぁ……っ///」

理事長「ふふっ、気持ちよかった?」

希「気持ちよくなんか……っ」ギロッ

カチッ

希「っ……///また………ふっ、あ…………ごめん……なさい………っ///」ビクビク

カチッ

理事長「…随分素直に謝るのね、そういうところ、物分りが良くて好きよ?絢瀬さんなんかにやったらなかなか謝ってくれなさそうだもの。」

希「え、えりちにも何かしてるんで……してるんっ?!」

理事長「いいえ、"まだ"何もしてないわよ。連れてきてもいないし、多分今頃学校じゃないかしら。」

希「……………まだ、ね。こんなことして、何が目的なん?うち、何かしたんかな?それとも、何かしてほしいことがあるなら……」

理事長「ふふっ……」スッ

希「理事長……?」

理事長「……若いって、いいわね。東條さんの顎、すべすべ。最近の若い子はこれのこと、顎クイ…とかって言うんだったかしら?」

希「………そう、みたいやね。」

理事長「ふふっ、あははっ、そう、そういうところよ。普通の子ならこんなに物分りがよくないわ。こんな話を始めたら話を逸らさないでってキレたりとか、そもそもずっと泣きやまないとか……私はね、東條さん。」

理事長「そうやっていつだって飄々としていて、私わかってます、客観的にものを見てます、ってね、まるでオトナみたいに、オトナぶってるその表情を、ぐちゃぐちゃにしたいのよ。」

希「……っ」ゾッ

理事長「わかる…?貴女のその顔を、涙でぐっちゃぐちゃにしたいの、悲痛に歪む顔が見たいのよ。別に貴女に恨みも無ければ何かやってほしいことがあるわけでもないわ。単なる欲求。止められないのよ。」

希(…………狂ってる……)

理事長「あーでも、1つだけ貴女を解放する条件をあげる。知りたい?」

希「……知りたい、なぁ……」

理事長「仲間を売ること。貴女が仲間を裏切ったら、解放してあげる……そうね、『うちを解放して、○○ちゃんを代わりにして!』って言えたら解放してあげるわ。」

希「それって…」

理事長「もちろんμ'sのメンバー。ただしことり以外ね。本当はことりでもいいのだけど、そうなると必然的にことりを選びやすくなってしまうでしょう?親の罪は子が受けろってね……」

希「そんなこと」

理事長「あるわよ。極限状態になったら、どんなに小さくても選びやすくなる理由があるなら、人はそれにとびつく。そういうものよ?」

希「極限状態って…」

理事長「ふふっ、怖くなった?それならもっと怯えた表情をしてくれてもいいのよ。あぁ、でもわざと作るのはやめてくれる?東條さんならそういうこともしかねないから。」

希「………」

理事長「……質問はおしまい?はじめていいかしら?」

希「待って……ねえ、こんなのやめよう?警察に捕まるのも時間の問題だと思うんよ。今ならまだ、引き返せる。今解放してくれたら、うちは何も言わないから……」

希「それに警察に捕まったりしたら理事長でいられなくなるのはもちろん、ことりちゃんはどうなるん?ことりちゃんが理事長の娘だなんて、周知のことで……」

理事長「…ふふっ、私は多分捕まらないから大丈夫よ。」

希「……っ、そういうの今の若い子世代では、フラグって言うんよ。どこに捕まらない理由があるん?………こんなの絶対……」

理事長「だって、ねえ、東條さん……」ススッ

希「…っ」

理事長「……ふふ、耳、敏感なのね。あのね、東條さん。今東條さんが言った通りのことよ。」

理事長「私が捕まったりしたら、ことりはどうなるの?ことりは将来デザイナーになるのが夢なのよ。親がこんなことで捕まったりしたら、ことりはもう陽の当たるところでの仕事はできないわ。」

希「……それって…」

理事長「…そういうこと。東條さん自身が私を警察に突き出さないし、例えばここで捕まったとしても、できるだけ弁解してくれるでしょう?『私の性癖に理事長に付きあってもらってました。』とかね。」

希「そんなん…言うわけないやん……」

理事長「どうかしら。東條さんはことりのためならそう言ってくれると信じてるわ。今まで転校続きでろくに友達もできず、μ'sを奇跡だと信じてる貴女なら。…だって、ねえ、ことりに罪はないのよ?ことりはいい子でしょう。」

希「…………」

理事長「……ふふっ、外道って思ったかしら?それとも狂ってる?そういうことは言っていいのよ、さっきのはわかってもらうためにしただけ。思想と表現の自由を禁じるほど、私は酷い人間ではないのよ。」

理事長「……あぁ、でも問題は東條さんが仲間を売ったときね。星空さんとか選ばれたら、ことりのことまで頭が回らずに私のことを突き出しそうだわ。」

理事長「うーん…それは怖いから、東條さんが選んだ子は急ぎ足で遊んで、土の中にでも眠ってもらって、急いで海外にでもとぶことにしようかしら。」

理事長「あ、入れ替えの時は東條さんには沢山睡眠薬でも飲んでもらって、適当にどこかに捨てるつもりだから。3日くらいは起きれないわよ。」

希「…………そこまで考えてるんやね…でも大丈夫、うちはμ'sの皆を売ったりなんかしないから。」

理事長「ふふっ、頼もしいわね。本当に頼もしい。再び名前を出して悪いけど、絢瀬さんが同じ台詞を言ったらきっと、あぁこの子たぶん2~3日で落ちるわね、って思ったと思うから。」

希「えりちだってμ'sのみんなを売ったりしないよ……理事長はえりちをなんだと思ってるん……」

理事長「…何かしらね、オトナの勘ってやつかしら。東條さんもきっともう少しオトナになったらわかるわ。…それじゃあ悪いけど、そろそろ始めるわね?」

希「待って、」

理事長「……ふふ、また待ってなの?時間稼ぎかしら…でも悪いけど、もうすぐ会議の時間なのよ。だから学院に戻らないと。」

希「……じゃあ、いいや。行ってきて。」

理事長「このまま私が何もせず行くと思う?」


希「………」



理事長「ふふふ、察しがいいわね。さっきのスイッチ、胸と下の一番感じるところのローター。合わせて3つ。オンにしていくから。」

希「……っ、待っ……」カチッ

希「んっ………う……………っ///」

理事長「気持ちいいでしょう?ギリギリイけないとか、痛すぎるとか、そういう強さにはしてないつもりだから、せいぜい楽しんで。2~3時間で戻ってくるから。」

希「う、あ………っ、2、3時間?!待って、待って……!///」ビクビク

理事長「じゃあ、電気消すわね。それじゃあ行ってきます、東條さん。」



ガチャン


希「ふっ………///う………あっ…や、だ……やだっ…………///」ビクビク

希(……なんでうち、こんな目に合わなあかんの?!)

希「ん……あ………///」

希(………いや、落ち着いて、落ち着かなきゃ。とりあえず抜け出せるか…やってみないと……)

希「………っ///」ガチャンッガチャンッ

希(ダメ……か………まぁ、当たり前やんね。となると、助けがいつ来るか…警察………)

希「……う、あ………やだっ///いっちゃ……ぁあっ///」ビクンビクン

希「……はぁっ……///はぁっ……///……んんっ、やだ、もう、とまってよ………っ」

希(だめやこれ…なんも考えらんない……っ)

希「ふ………あんっ///」ビクビク

希(……今はみんなを信じよう。親が気づくのはきっとまだ先だけど…みんななら………)

希「……う、あ……あぁっ///」ビクンビクン


希「はっ…///はっ…///も、やだぁ………」

---ー
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にこ「はぁ~やっと今日も退屈な授業が終わったわ」ガチャ

にこ「あれ、絵里だけ?珍しいわね…希はどうしたの?」

絵里「あ、にこ。にここそ希のことしらない?今日学校に来てないみたいなのよ…連絡もつかないし…」

にこ「ええ…体調でも崩したのかしら…担任も連絡ついてないの?」

絵里「そうみたい…」

にこ「ふーん…ちょっと気になるわね、そういえばにこにもLINEの返信きてないわ」

絵里「ちょっとお家まで見に行こうかしら…」

穂乃果「はぁ~やっと今日も眠い授業が終わった!さぁ練習だよっ練習っ!」ガチャ

海未「あれ、絵里とにこだけですか、珍しいですね。希は?」

絵里「それが……」





海未「…なるほど。それはちょっと気になりますね…ことりと穂乃果は何か聞いてますか?」

穂乃果「穂乃果は何も聞いてないよ~…どうしたんだろう希ちゃん、焼肉の食べ過ぎかなぁ…」

ことり「あはは…それは無いと思うけど。ことりもわからないや、どうしたんだろう。」

絵里「うーん…」

凛「はぁ~今日もつまんない授業が終わったにゃ!」ガチャ

真姫「…どうしたのよこの空気」

花陽「何かあったの?」

絵里「ええっとね…」





凛「うーん…凛は何も聞いてないよ。二人は?」

真姫「私も特に何も聞いてないけど…」

花陽「花陽もです…」

絵里「はぁ。まぁそうよね…やっぱり私、希の家まで見に行ってくるわ。悪いんだけど今日の練習……」

海未「ええ、構いませんよ。それより希の方が心配ですし。」

にこ「まぁ、どーせくだらない理由だと思うけどっ希に会ったら連絡くらいちゃんとよこしなさいってポカッといてよね、絵里!」

絵里「あはは…そうね、じゃあちょっと行ってくるわ。」

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ピンポーン


絵里「……出ないわね、しょうがない。」ウエキバチヅラシ…

絵里「…あったあった、まったくこんな所に隠しとくの、無用心よね。」

ガチャ

絵里「希ー?」


絵里「いない…」



絵里「うーん…」

絵里(冷蔵庫には今日の夕飯らしきカレーが残ってるし、何処か遠出するような感じにはなってないけど…)

絵里(…なんだろう、少し胸騒ぎがする。連絡も無しに希が休むなんて、初めてだし…)

絵里「警察…行った方がいいのかしら。」

絵里(でもあんまり大事にして、明日には学校に来てました…じゃアレよね…)

絵里「…仕方ない、とりあえず明日もう一度先生に聞いてみましょう。」

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ガチャ


理事長「ただいま~♪」

希「はぁ…///はぁ…///」ビクビク

理事長「ふふふ…」コツコツ…

理事長「調子はどーお、東條さん?」ボソッ

希「ぁっ…ああああっ///」ビクンビクン

理事長「ふふっ、やっぱり耳が敏感なのね。」

希「はっ…///けほっ……ぁ……う……おね、が……トイレ……止めて、これ……」ビクビク

理事長「トイレに行きたいの?ふふ…」グイグイ

希「あっ…やだ…ぁ……お腹押さないで……っ止めて、これ…止めて………///」

理事長「トイレにも行きたいしこれも止めてほしいの?2つもお願いなんて我儘ね。」

希「お…ねがい……や、か…らぁっ…///」ビクンッ

希「はっ…///はっ…///ゆるして……」

理事長「ふふっ、じゃあμ'sの誰かに変わってもらう?」

希「それはだめ……っ」

理事長「…まぁそうよねぇ。じゃああと5時間は頑張ってもらわないと。」

希「そんな………っん、ぐ…けほっ///」

希「おねが…漏れ、ちゃ……ふっ、あ……んんっ」ビクンビクン

理事長「…これじゃあまともに会話もできないわね。仕方がないから一度止めてあげる。」カチッ

希「はぁっ…///はぁっ…///」

理事長「…それで、どうするの?」

希「……μ'sの誰かに代わる以外なら、できることならなんでもするから…っ!とりあえずトイレ行かせて……」

理事長「そうねえ…トイレ、行きたいわよね。じゃあ東條さんが今から言うお願いを聞いてくれたら、どちらか一つだけ言うことを聞いてあげる。」

希「一つだけ……」

理事長「そうよ、嫌ならこの取引はナシってことでもいいけど。」

希「……わ、かった……から、早く……っ」

理事長「ふふっ、じゃあ言うわね、東條さんのスマホのロック番号を教えてくれる?」

希「スマホ…なんに使うん……」

理事長「別になんでもいいでしょう?そんなことより早くしないと、漏れちゃうんじゃないの?ふふっ」

希「……」

希(…スマホのロック番号…なんに使うんやろ、トイレの方はもう、いっそ漏らしても…理事長しか見てないんやし………嫌やけど)

希(でも後もう5時間あれに耐えろっていうのは無理…絶対無理…だけどスマホのロックなんて解除させていいんかな、用途がたくさんある分もっと酷いことになる気もするし…)

理事長「ロック番号を教えるのは嫌?」

希「嫌…や、ないけど……っ」

理事長「…用途が気になる?別に貴女の仲間を傷つけるような言葉を送ったりはしないし、使う前には一応東條さんにどんな内容のものを誰に送るかは教えてあげるわよ。」

希「………」

理事長「ふふっ、それとももう5時間がんばる?」

希「それは無理…っ」ブンブン

理事長「…じゃあ、どうするかは決まってわよね?」

希(う…わ……これ絶対教えちゃあかんやつって、わかるのに………わかるのに……)

希(でももうあと5時間なんて、耐えられるわけない……)

希「……っ、0630……」

理事長「へえ、0630…絢瀬さんの誕生日の1021とかかしら…って思ってたけど違うのね、どうして0630なの?」

希「……なんでもいいやん。それよりじゃあ、5時間やるっていう方…そっちはやめて。お願いやから…」

理事長「ふふっ、わかったわ。そっちをとるのね。…別に私は構わないわよ?でも、トイレに行かないなら今からしばらく東條さんのスマホで録画をするけど、いいかしら。」

希「は……?」

理事長「東條さんのお漏らしシーンとか、きっと絢瀬さんに送ったら喜ぶわね。あぁでも安心して、ここではほら、機内モードにしてあるから。明日学院に着いたら送るわ。変なところで足がつくわけにはいかないもの。」

希「いや…何言ってるん…喜ぶわけないやん。それにそんなことしたらそれこそ足がつくよ?えりちが警察にそれを持ってったら一発でアウトやからね?」

理事長「流石にそんな馬鹿なことはしないわ。矢澤さんじゃあるまいし…絢瀬さんにはこういう文をつけて送るつもりよ、」

理事長「『誰かに言ったり警察に通報したりしたら東條希を殺します。ただし、貴女が単独でここまでたどり着くのは構いません。』ってね。」

理事長「あぁ、でももし本当に絢瀬さんが誰かに言ってしまったりしたら、東條さんには少し痛い目にあってもらわなきゃいけなくなるわ。」

希「……っ、えりちが誰にも言わずにここまで来たら、どうするつもりなん…解放してくれるん?」

理事長「うふふっ、するわけないじゃない。私は基本的に来るもの拒まずなのよ?」

理事長「東條さんが誰かに代わってって言わない限りこちらから手を出すことはないけど、向こうから来るなら話は別。」

希「………ほんとに、最低やね……」

希(…元々もう5時間を取り消すつもりなんて無かったんや。5時間を取り消せばえりちもこんな目に合うかもしれないって、そんなん聞いたら、うちがそれを選べるわけがないから…)

希(…ほんとに、なんでうちなんやろ……あと5時間?ふふっ、耐えられるわけないやん。そんなの壊れちゃうよ…ああもう、涙出てきた)

理事長「ふふ、東條さん、その顔すっごくそそるわ……それで、どっちにするの?」



希「…………トイレ、連れてって。」

理事長「了解♪じゃあ一回右足以外の拘束を解くけど、下手に変な真似はしないでね?」

理事長「右足の鎖はある程度伸びるからトイレまでは行けるけど、この部屋からは出られないから。」

希「………」

ジャ-

理事長「じゃあもう一度繋ぐけど…東條さん手首真っ赤ね、あんまり腕に体重かけちゃだめよ?」

希(誰のせいで……っ)

理事長「ふふ、そんなに睨まないでほしいわ。」

カチャ…

希「…………あ、う………嫌っ、嫌や!もうやめて、繋がんといてっ!」ドンッ

理事長「いったーい……何するの。μ'sのメンバーがどうなってもいいのかしら?」

希「それは……っ、それは嫌やけど、もうこんなのやめて!あと5時間?無理よ、そんなの…っ」

希「……うちは理事長が言うような人間やないんよ……もっと普通に子供なの。こんなの耐えられないの。お願いだから解放して……」ポロ…

理事長「東條さん……」



理事長「……ふふっ、上手な演技ね。私が初めにオトナぶってる貴女に興味があるようなことを言ったから、興味を削ごうとしてるんでしょう?」

希「そんな…っ、そんなんじゃなくて、本当にもう無理で……っ」ポロポロ

理事長「もういいわ。ねえ、貴女次第でμ'sのメンバーがどうなるか決まるのよ?私を押したこと、それから今、標準語だったけど…謝らなくていいの?」

希「………っ」

理事長「東條さんをこんな簡単にここに連れてこれたんだから、他の子だって簡単よ。それにね、初めに私は捕まらないって言ったけど、別に捕まってもいいのよもう。」

理事長「残りの人生だってそんなに長いわけじゃなし、人生楽しんだもの勝ちでしょう?」

希「……」

理事長「…ねえ、謝らなくていいの?」

希「………っ、ごめん…なさい………」ポロ…

理事長「ふふ、よろしい。希はいい子ね…」ナデナデ



カチャリ。

希「……っ」

理事長「…それじゃあ私、一回ことりの所に帰らないと。気絶されてても困っちゃうし、数時間に一回は見に来るから。5時間きっちり楽しんで。」

希「……ぁ………う……や、やだ…」ガクガク



理事長「ふふっ、それじゃあ行ってきます。」

カチッ


ガチャン


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絵里「はぁ…」ガチャ


絵里(結局希が今どこにいるかわからないままだけど、これで良かったのかしら…)

絵里(みんなは大丈夫、明日はきっと来るよ。なんて言ってくれるけど…)

絵里(…何かしら、この胸騒ぎ)

亜里沙「おねえちゃん、ため息ついてると幸せが逃げちゃうんだよ?」

絵里「亜里沙……」

絵里「……そう、よね………しっかりしないと…」

亜里沙「おねえちゃんは十分しっかりしてるよ?亜里沙の自慢のおねえちゃんだもん…ねえ、何か学校であったの?」

絵里「…ありがとう、亜里沙。多分大したことではないんだけどね……希が今日学校に来なくて、連絡もつかないから……心配で。」

亜里沙「希さんが……学校の先生もわからないの?」

絵里「そうなのよね…家にもいなかったし…ほんとにもう、何処に行ったのかしら…」

亜里沙「うーん……神田明神は?希さん、バイトしてるんだよね、神田明神で!」

絵里「あ、神田明神……そうよね、バイト先なら連絡してるかもしれないわ…なんで今日聞いてこなかったのかしら」

亜里沙「ふふっ、おねえちゃんは少し抜けてるところもあるからねー!でも亜里沙は、おねえちゃんのそんな所も大好きだよ!」

絵里「も、もう……って、そろそろ結構な時間よ?亜里沙夜更かしすると朝ちっとも起きないじゃない。そろそろ寝なさい。」

亜里沙「はーい!」


絵里(…神田明神か。すっかり失念していたわ…明日も希が学校に来ていないようなら、聞きにいかなくちゃ。)

絵里(というか明日も学校に来なかったりしたら、流石に警察沙汰…になるのかしら、希一人暮らしだし、ご両親とはなかなか連絡つかないし…)


絵里「…はぁ。理事長に相談したほうがいいかもしれないわね……」

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理事長「東條さん~?」ガチャ


理事長「…ふふっ、今度は意識、あるみたいね。」

希「は……っ///ぁ……っ///」ビクビク

理事長「さっき来たときは意識がなかったから、今度はもっと強い気付薬持ってきたのに…必要なかったかしら?」

希「…………っ///」ビクビク

理事長「……ねえ、聞いてるの?聞く余裕ももうないか…それとも慣れてきちゃったのかしら。」

希「……ち…………が…っ」ブンブン

理事長「うーん…よく聞こえないわ。やっぱり慣れてきちゃったのかしらね…初めみたいな声が聞こえないもの。……ふふっ、少し強くしてみましょうか?」

カチッ


希「あぁぁっ///」ビクンビクン

希「嫌っ…けほッ………や、えて……んんんんっ///」

理事長「…ふふ、なんて言ってるかわからないわよ。」

希「ぁっ……あぁぁ…ケホッ、かはっ……やえっ…やめてえええええっ」ビクンッ

理事長「やめて?うーん…だからね、誰か選んでくれたらやめてあげられるの。選ばない東條さんが悪いのよ?」

希「えらぶ!えらうから!もうむり、しんじゃう………ぁあああっ///」ガクガク

理事長「……ちょっと、それじゃあ期待外れすぎるんだけど…まぁいいわ、選ぶのよね?じゃあ一旦止めてあげる。」カチッ

希「う……あ……けはっ………はっ…///」

理事長「…で、誰にするの?ちゃんと言って?」

希「まっ…………ケホッ、ケホッ///」

理事長「…はやく…もう決まってるんでしょうね?」

希「………っ」コクコク

希(みんなごめん。本当にごめん。弱くてごめん……っ)


希(はやく決めないと……)

希(とりあえずえりちは論外…穂乃果ちゃん…も駄目、みんなのリーダーだもん…こんなところに連れてくるわけにはいかない……)

希(……じゃあ海未ちゃん?海未ちゃんがいなくなったら歌詞が…真姫ちゃんもだめ、作曲……)

希(じゃあ誰、にこっち?あんなにアイドルになるのを夢みてたのに、それを奪うようなこと…)

希(………)

希(どうしよう…どうしよう……花陽ちゃん?あんなに優しい子に?じゃあ凛ちゃん?お姉ちゃんみたいに慕ってくれてるのに…?)

希「…けほっ……ちょっと待って………」

希(情で選んだらダメ…決められるわけない……μ'sに一番不必要なのは誰…?穂乃果ちゃんはリーダー、作詞作曲は海未ちゃん真姫ちゃん、ダンスはえりち……)

希(……じゃあ不必要なのは凛ちゃん?花陽ちゃん?にこっち……?)


希「………」



『だからね、ここはこうしてこうして、こうやって動けばいいのよ。』

『うーん…難しいなぁ…』

『ふふっ、絵里ちゃんは難しく教えすぎだにゃー。希ちゃん!こうやって回って、ここで止まる!それだけでいいんだよ!』

『ここをこうやって回って、止まる……っと』

『ハラショー!凛は教えるのが上手ね。』

『えっへへ!』




『はぁーお腹減ったなぁー焼肉が食べたーい』

『そんな希ちゃんに…!じゃじゃん!今日は焼肉おにぎりを作ってみましたぁ!』

『ぇええすごいっ!ありがとう!花陽ちゃんは命の恩人やー!』

『えへへ、大袈裟だよぉ…\ピロロン/…ふぇ、』

『ふぇ、ふぇえええ!!!!』

『に、2回目です!!!2回目があります!!!』



『げーんき出しなさいよっ、落ち込むことないじゃない。ほらっ、にっこにっこにー!』

『にっこにっこにー!…あはは、にこっちはいつでもにこっちやねえ。』

『あったりまえでしょー!』

『……うん、そうやんね……ありがとう、にこっち。』

『もー、調子狂うわねえ。でも、いいのよ、たまには。』

『……?』

『アイドルはみんなに笑顔を見せる仕事じゃない…笑顔にさせる仕事だから。たまにはいいのよきっと、舞台裏でくらい。』

『にこっち…』

『それにほらっ!μ'sにはこの、宇宙No.1アイドルのにこにーにこちゃんがいるからね!いつでもみんなを笑顔にしてみせるニコッ♡』

『……ふふっ、そうやね。にこっちがいると、心強いなぁ』

希「………っ」

理事長「…そろそろ時間切れだけど。どうするの?」

希「……待っ…」


『9人や、ウチを入れて!』


希「あっ………」

希(………)

希(そっ…か…………)

理事長「…決めれた?もう流石に待てないわよ。」

希「………」

理事長「東條さん?」

希「うん……」

理事長「…で、誰にするの?小泉さんとか…それとも矢澤さん?」

希「………ねえ理事長、μ'sで一番不必要なのって、誰やと思う?」

理事長「………」

希「……元々μ'sには、不必要な子なんて1人もいないんよ。9人だからμ's。きっとそう…そう信じたい。」

希「…けほっ……だけどもし、どうしても不必要な子を決めるなら、それはきっと……」

理事長「……ふふっ、そうねぇ…誰だと思った?」


希「……っ、理事長は、答えがここに行きつのに気づいてたんやね…酷いなぁ。」


希「…………ほんと……ひどいや………」ポロッ

希「あはは…でももういいんよ、一度でも誰かを選ぼうとした自分が恥ずかしい。誰がいらないかなんて、考えた自分が恥ずかしい…」

希「………」

希「…ここに居られるのは、うちしかいないから。」

希「…だから好きにすればいいよ。壊れるまでどうにだってすればいい。ぐちゃぐちゃにしていいよ?その代わり、μ'sの誰にも手は出さないで。」

理事長「…ふふ、それはこれからの東條さん次第だけど…でもねえ、本当にそれでいいのね?さっきの続き、あと1時間くらい残っているけれど。」

希「…いいっていってるやん……はやくして。」

理事長「……ふふっ、あははっ、流石東條さん、とてもかっこいいわ。誰よりも物分りがよくて、誰よりも諦めが早くて。だから連れてきたの。」

理事長「…でもね、私は寛大だから、一度で答えを出せなんて言わないわ。心変わりしたらいつでも言ってくれていいのよ?」


希「……っ、もう、言わない、よ……」

理事長「そう。……頼もしいわ。そういうところ、大好きよ?絶対言わせたくなるじゃない。」

カチッ

希「んっあ…つよ…………ぁぁあっ///」ビクッ

希「はぁ…っ///う…ぁあっ///んんっ///」

理事長「ふふ…ねえ、東條さんってファーストキスはまだ?それとも転校しながらでも、一度くらいは彼氏とかいたのかしら。」

希「…っ…しらな………ん…っ///」

理事長「ふふ、知らないわけないじゃない…ねえ、噛まないでちょうだいね?」

希「えっ……………んぅっ…///」

理事長「ん……んん………」

希「んっ…ふ……やめ…っ…んん……///」

希「んんっ…ん……~~~~っ///」ビクンッ

理事長「……ふふ、気持ちよかった?…って、あら」

希「…っ//………っ//」ビクビク

理事長「……気絶しちゃうほど良かった…ってことかしら?うふふ。」


理事長「ね、東條さん。のーんちゃん?起きて?ふふ、気付薬が必要そうね。今持ってきてあげるから。そしたらまた、続きしましょうね。」

理事長「……ふふっ、ね、東條さんって、やっぱりまだ子供よね、オトナぶってる子供。だって……」


理事長「……まだ気持ちいいうちが花だって、きっと貴女、わかってないでしょう?」

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絵里「ええっ、今日も希学校に来てないの?」

「そうみたいだね……もうすぐHR始まるし、終わったら先生に聞いてみたら?」

絵里「そうね…待ち合わせに来ないから、薄々そうかなとは思ってたんだけど…本当どうしたのかしら…」

「HRはじめるぞー。ありゃ、東條は今日も無断欠席か…今日の6時間目のLHRでは~~」

絵里(…やっぱり担任も聞いてない……というかそんなに呑気でいいの?家族が同居してるならともかく、希は一人暮らしなのに……)

「~~進路が~~だから~~~~」

絵里(それとも私が心配しすぎ?いや、そんなことはないはず…やっぱりあとで理事長にも)

\ピロロン/

絵里「!」

「絢瀬~~HR中はスマホはマナーモードにしとけよ!」

絵里「は、はい。すみません…」

「てことで、今日の進路説明会を聞いて、きちんと未来を見据える準備をすること!以上!」

絵里「………!」

絵里(LINE…これ、希からじゃない。良かった……)



『昨日今日と無断欠席しちゃってごめんな~(ノ_<)』

『今ちょっと、親戚関係でゴタゴタあって、九州にいるんやけど…田舎すぎるのか、寝泊まりしてる所の周辺が圏外なんよ。』

『学校には今電話入れといたから…その、しばらくお休みすることになりそうなんやけど、心配しないで。』

『また連絡するなぁ。みんなにもよろしく!』


絵里(……)

絵里「はぁ、もー。心配するじゃない…」

絵里(でも親戚でゴタゴタ…?希って、九州に親戚なんていたのかしら…)

絵里(希から親戚の話はあまり聞いたことがないから、いても不思議ではない…か。)

絵里(あはは…何をこんなに疑ってるのかしら私…)

絵里「…電話してみましょう。」


プルルル…


『おかけになった電話は、現在電波の届かない所にあるか、電源が切られています。』


絵里「えっ…」

絵里(さっきLINEが来たばかりなのに、もう電波が届かない…?)

絵里(………ちょっと疑心暗鬼すぎるかしら……)

絵里「……」スッスッ


『そう…すごく心配したのよ?私もみんなも。無事なら良かったけど…』

『親戚とゴタゴタって、何があったの?大丈夫?なんだかよくわからないけど心配なのよ。』

『こっちにいつ頃帰って来れる?目処がついてるなら教えてほしいです。』

『とりあえず、みんなには伝えておくから。こっちのことは心配しなくて大丈夫よ。』


絵里「…学校に、連絡してるのよね。あとでもう一度、先生に聞いてみましょう。」


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希「…………、んん」パチ

希「……」ボ-

希「……っつつ、身体中痛い………」

希「………」

希(…布団…ひかれてる…)

希(………わかってたけど、やっぱり夢ではなかったんやね…)

希(………昨日、いつの間に寝たんやろ…理事長に無理矢理キスされて…その後のこと、覚えてないや。)


希「……はじめては、好きな人としたかったな。」

希「………」

希「…あはは、まぁ…いっか。今時この歳でしたことない方がおかしいんよね、きっと。うん…」

希(…あれ。これ、手紙……?)ピラッ



『おはよう!ふふ、おはようって時間かはわからないけれど。目が覚めたかしら?地べたじゃ辛いだろうなと思って、布団を引いておきました。私って優しいでしょう?』


『右足以外の拘束は解いておいたから、しばらくの間は自由時間。よく頑張ってたからご褒美よ?机にある菓子パンと飲み物は自由に飲んだり食べたりしていいから。トイレもご自由に。』


『今日はお仕事が忙しいのであまり相手をしてあげられないかもしれないけれど、少し顔は出すから。ふふっ…覚悟してね?』


『追伸 貴女が起きる頃にはもう送り終わっているだろうけど、絢瀬さんに以下の内容のLINEを送信、それから学校の電話と貴女のスマホとの通話履歴を残します。』

希「………」

希(…えりちにこんなLINEを送って、学校との通話履歴を残して。担任にはきっと上手いことこんな電話が来たので…とか言ってるんやろうなぁ。)

希「…こんなことしたらもう……しばらくどうにもなんないやん……」

希(九州か…なんで九州にしたんやろ、遠いから?うち、身寄りって、都内のおばあちゃんしかいないけど…)


希「……」


希(こういうとき、家族がいればまた違ったんだろうなぁ…うち父子家庭やし…お父さん海外やから、偶にしか連絡とれないし…)

希(というかそもそも、こんなガタガタな家庭だから理事長はこんなことしようと思ったんやろうね。普通に家族がいたら危険すぎるもん。)


希「はー…」


希(あ、でも……そういえば神田明神には連絡してないんやね…うちの学校原則バイト禁止やし、うち、わざわざ理事長に言ったこと…ないような)

希(…ことりちゃんが理事長に話してる線は否定できないけど、連絡してないっていうことは…理事長はきっと知らないんや。)

希(…ということは、まだ望みはあるかな?無断欠勤が続けば、誰かが気にして何かして…)


希「……」


希(希望的観測やね…)


希「はぁ…」

希「…あーだめだめ、ため息なんかついたら、幸せが逃げちゃうんやから…けほっ」

希「………声ガラッガラ。当たり前か…」

希(誰かに見つけてもらうまで待つ…?流石にそんな長い時間誰にも見つけてもらえないなんて、ないよね…?)

希(あれ、でも昔の監禁事件で10年とかってあったっけ…)


希(……)ブルッ


希(………えりちが、みんながきっとなんとかしてくれる…よね、信じよう…信じよう。)

希(でも信じてるだけじゃだめやんね…ここからどうにか逃げるか、理事長を説得するか…)

希「…とりあえず逃げれるか色々試してみようか」ガタッ

希「…ったた、腰痛い……って、えっ///」

希(なんでうち、裸なんよ!)

希「…はぁ。もう…なんでもいいや、これくらい。減るもんじゃないし…」

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---
--

にこ「はぁー…もう、心配して損したわ!戻ってきたら一発、わしわしでもこっちからお見舞いしてやろうかしら。」

絵里「ええ…そうね…」

にこ「…なーによ、晴れない顔して…まだ何か気になることがあるの?」

絵里「……なんだか少し違和感を感じるのよ。LINEがきて3分も経たないうちに折り返したのに、電波が届かないとか…あるかしら。」

にこ「電波のうっすいところでLINEしてたんじゃない?それで圏外のとこにすぐ戻ったとか。」

絵里「……まぁ、普通に考えればそうなんでしょうけど………あ。」


理事長「………、あら、こんにちは。絢瀬さん、矢澤さん。」


絵里「こんにちは。あの、理事長は希のこと…何か聞いてますか?」

理事長「ええ、聞いていますよ。今朝電話があったから。」

絵里「……!ごめんにこ、先に部室行っててくれる?」

にこ「はぁー絵里は希のこととなるとほんっと心配性なんだから。なるべく早く来なさいよ?」

絵里「ええ…!」


理事長「……」

絵里「…すみません、あの、今少し大丈夫でしょうか?」

理事長「ええ、大丈夫だけど。…ふふ、東條さんのことよね?」

絵里「はい。えっと…あの、希、なんて言ってましたか?」

理事長「…親戚関係で何かあって、しばらく休むって聞いてるけど…絢瀬さんは何も聞いてないの?」

絵里「それは聞いたんですけど…いつまで休むとか、その、親戚と何があったかとか…そもそも九州に親戚がいるっていうのも初耳で。」

理事長「……絢瀬さんは友達想いね。東條さんのこと、心配?」

絵里「え、ああ…まぁ…」

理事長「…ふふ、元気そうだったわよ、東條さん。詳しい事は私も知らないし、親戚関係のこととかは個人情報だから…私の口からは、ちょっとね。」

絵里「あ、そうです…よね…」

絵里(そうよね…私が心配しすぎ…なのよね…)

理事長「…練習、頑張ってね?」

絵里「はい…ありがとうございます。」


----
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--

希「…ったたた………」

希(……だめやね、どうやっても鎖から足は抜けない…まぁ、当たり前なんやけど。)

希(扉にはどうやっても手が届かなかったし、部屋にあった椅子を投げつけてもビクともしないし)

希(この部屋には窓もないし…)

希「…逃げるのは無理そうやね。」

希(…まぁ、そんな簡単に逃げられたら苦労しないんやけど。)

希(この部屋にあるものは…布団、机、椅子が一脚…あと簡易式トイレか。)

希(鎖の範囲でとどかないのはこの部屋の扉と、物置かなんかの扉だけ。)

希(あの物置…何が入ってるんやろ。)


希「……はぁー、わからないことだらけやー」


希「ここが何処なのかもよくわからないし…まぁ、音ノ木と理事長宅からそう離れてないのは確かやけど…」

希「あと今一体何時なんよ…窓も時計もないから、何日なのかも曖昧になってく…」


希(……そろそろ結構時間経つし、理事長…来るんかな…)

希(……)ゾクッ

希(怖い……)ギュッ

希(………だめだめ…他のこと考えよう。どうしたら出れるか、どうしたら…)


希(………)


希(…できれば理事長の言う通り、ことりちゃんの未来を考えたら…理事長は捕まってはいけない…)

希(それにうちがこんな目にあったなんて知ったら、μ'sはきっと今まで通りじゃいられなくなるし…それにお父さんも後悔する、それは嫌や…)

希(…悔しいけどきっと、なるべく早く理事長を説得して…何もなかったことにするのがみんなにとって、一番いい)

希(うちとしても、理事長には捕まってほしいけど…それよりも今まで通りμ'sで活動できる方が大事やから…)

希(けど、あの理事長を説得できるかって言ったら)

希(多分無理…やんね)


希「………」


希(それにそんな悠長なことも言ってられない…昨日みたいのが続いたら、うちだってずっとこんな風ではいられない…いられるわけない…)

希(誰かに助けてもらうにも、ここからは何も発せられない…理事長の背中にヘルプでも書ければいいけど…)


希「……まぁ普通に考えて無理やなぁ…」


希(…となると、外にいる人達に理事長に違和感を持ってもらったり、何かうちと繋がるような行動を理事長にとってもらう…とか?)

希(…多分ことりちゃんに気づいてもらうのが一番早いんよね…あれ、お母さん今までそんなことしてなかったのに。って…その疑問にうちが結びつけば……あるいは。)

希「………」

希「……はは、難しそうやね。」


理事長「なーにが難しいの?」ガチャ


希「…っ」ビクッ

理事長「…ふふっ、ただいま。」

希「……」

理事長「ただいま。」

希「……っ、おかえり…」

理事長「うふふ、よくできました。よく眠れた?ご飯は…あら、パン…ほとんど残ってるわね。」

希「………」

理事長「ふふっ…食欲わかなかった?まぁいいわ。」

理事長「起きたら裸でびっくりしたかしら。制服、汗と愛液でびちゃびちゃだったから。脱がしておいたの。」

理事長「…でも、その方がいいでしょう?もうここにいる間はずっとそれでいいと思うのよ。…ふふっ」

理事長「…っと、そうだ。今日は時間もあまりないし、お喋りはこれくらいにして…聞きたいことがあるのよ。ねえ、どうして東條さんのスマホに神田明神から電話が来るの?」

希「……っ!」

理事長「…ねえ、どうして?」

希「…そ、れは……バイトしてるから、やけど…」

理事長「…ふーん。元生徒会副会長が原則禁止のバイトを、許可なくしていた…ということね?」

希「…っ、それはそうやけど…でも、原則禁止なんて、もう暗黙の了解みたいなあれで、みんなやってるやん…!」

希(ことりちゃんだってしてるし…)

理事長「…なるほど、東條さんはみんなが万引きをしてたら自分もするような、そんな子だったのね?」

希「それとこれとは…」

理事長「……ふふっ、まぁいいわ。バイト先の人がそこまで何かするとは思えないし…」

理事長「…代わりに少し罰は受けてもらうけどね?今日から始めること、これから1週間くらいにしようかなーなんて思ってたけど、10日くらいに延長だから。」

希「…っ、今日から始めること…?」

理事長「そう。はい、東條さん。これ飲んで?」

希「なに…これ…」

理事長「いいから飲みなさい」

希「……っ」


希「……」ゴク…ゴク…

理事長「…はい、よく飲めました。」

希「……、…なんだったん、今の……」

理事長「…ふふっ、想像つかない?東條さんって案外こういうことには疎いのかしら。」

希「…こういうこと………?」

理事長「…本当にわからないのね。一人暮らしだしもっと色々知ってるかと思ってた…良い意味で期待を裏切ってくれて、嬉しいわ。」

理事長「じゃあちょっと待ってて。色々取り出さなくちゃ…ふふ。」ガタッ

希「…あ、その物置………」

理事長「…中、気になる?…ふふ、東條さんのために色々揃えておいたのよ…よいしょっと。」

希「………」

理事長「…じゃあまず、首輪つけるから。昨日みたいに暴れないでちょうだいね?」

希「………暴れないよ…」


カチャン


希「…っ」

理事長「…ふふ、えらいえらい。すごく似合ってるわよ?」ナデナデ

希「……///」

理事長「あら、照れてるの…?ふふ、顔赤いわよ。」

希「ち…ちがっ……そんなん言われても、嬉しくない……///」

希(……なに、これ。身体熱いし、なんか…)モジモジ

希(さっき飲んだもののせい…?)

理事長「…ふふ、素直じゃないわね。じゃあ次、手錠するから、後ろに手やって。」

希「…っ、」

理事長「や、っ、て?」

希「………///」サッ

理事長「…はい、カシャンっと。これで自由時間はおしまいね。」カチャ

希「……っ、」ガタガタ

理事長「………ふふっ、震えてるの?…怖い?」

希「…怖いよ……当たり前やん…………」

理事長「…ふふ、そうよねえ……でもまだあるから。」

理事長「…次に首輪と手錠をさらに鎖で繋いで…っと。ほら東條さん、ダンスやってるから身体柔らかいでしょう?こうしないと手錠前に持ってこれちゃうじゃない、それは嫌なのよね…」カチャッ…カチャ

希「……っ///……は……っ…///」モジモジ


希(なにこれ…なにこれ…なんかおかしい…///)

理事長「…ふふ、仕上げね。足、開いてくれる?」

希「……っ///」フルフル

理事長「…どうして?ここまで素直にやってくれたじゃない。」

希「…だっ…て……なんか……///」

理事長「…そういうの、無駄だってわかってるんでしょう?早く開いて。」

希「……………っ、///」スッ

理事長「うふふ、いい子いい子。じゃあ昨日のローター、東條さんの大事なとこに一つだけ…あら?」

理事長「…ね、もう濡れてるんだけど…どういうこと?拘束されて…期待しちゃった?ふふ」

希「………ちが…っ///」

希(違う、絶対さっき飲んだやつのせいやん…なんなんよあれ……///)

希(うう………///)

理事長「…ふふ、つけれたわよ。そしたら最後に貞操帯で固定して…はい、できた。」

希「………///」

理事長「……ねえ、スイッチ…つけてほしい?」

希「……っ///」

理事長「…ねえ、つけてほしいんじゃない?意地張っても何の得も無いのも、わかってるでしょう?」

希「…っ、つけ…て……///」

理事長「…ふふ、東條さんって淫乱ね。」

希「……さっき飲んだやつのせいで…///」


カチッ


希「……んっ///」

希(……あれ………なんか…弱い…………?)

理事長「…さっき飲んだやつ?…ふふ、どうかしらね。」

理事長「…それじゃあ私はそろそろ行かないと。」

希「ま…待って……///」

理事長「…なあに?」

希「…そ…その……もうちょっとだけ、強く……」



理事長「……ふふっ、嫌よ。」

希「……っ」

理事長「…あ、そうだ。それだとペットボトルは飲めないわよね。忘れるところだった…浅いお皿、持ってきたから。」

理事長「ここに水を入れてっ…と。あらら、手が滑って………さっき東條さんに飲ませた物も混ぜちゃった。…ふふ、わざとじゃないのよ?」

希「……絶対わざとやん………、…っ//」

理事長「ふふっ、ここに置いておくから、喉が乾いたらちゃんと飲むのよ?汗かくだろうし、ここで脱水症状を起こしたら死んじゃうかもしれないから。ご飯は時々食べさせに来てあげる。」

理事長「それじゃあ今度こそ行くわね?」

希「…っ、待っ、待って……!」

理事長「…はぁ、東條さんって待ってばっかりね。…ふふ、実は寂しがり屋?」


希(………小さなことだけど…何もしないよりは、いいやんね。)

希「……うち、菓子パン苦手なんよ…だからあんまり食べれなかったん。○○スーパーの焼肉おにぎりが食べたいな…なんて。」

理事長「…わがままね。でもそれくらいなら…そうね、何も食べないでいられても困るし…まぁ買ってきてあげてもいいわよ。」

希「…!あり…がとう………っ…///」

理事長「………その代わりしっかり楽しませてね?それじゃあ行ってきます。」


………ガチャ


希「………ううっ///」



希(……い、…イキたい………///)モジモジ

---------
-------
-----
---
--







凛「かーよちんっ、真姫ちゃん!お昼食べよー!」

凛「わー真姫ちゃんのサンドイッチ、すっごく豪華だにゃー!」

真姫「ま…まぁね、凛も食べたかったら…その、一切れあげてもいいわよ?」クルクル

凛「ええっ、いいの、やったぁ!真姫ちゃん大好きー!」

花陽「ふふっ、良かったね、凛ちゃん!」

真姫「花陽もほら…一切れ食べなさいよ。」

花陽「いいの?えへへっ…ありがとう、真姫ちゃん。」

真姫「別に、これくらい…いいわよ。」クルクル

花陽「ふふ…あ、おいしい!」モグ


『……それでさー、そのおにぎりがね…』

花陽(おにぎり…?)

『あーあんたの好きな焼肉おにぎり?』

『そうそう…っ、というかまぁ、いつも売れ残るからさ、バイト帰りにタダで貰ってたのよ。』

『…ふふ、それで?』


花陽「……」モグモグ


『それをね!最近理事長が気に入ったのか、毎日のように買い占めて帰っちゃうから~バイト上がりに貰えなくってさ!とうとう金出してまで買うか悩んでるってわけよー』


「……!」


『…あっはは、悩みってそれのことー?買えばいいじゃん、好きならさー。』


「……ょちん!」


『そりゃそうだけどー今までタダだったからぁー、はぁ、私のおにぎり…くっそ~理事長めぇ……』


凛「かよちん!」


花陽「っ!、あ、凛ちゃん…ごめんごめん、なに?」

凛「もーかよちん、あっちの子達がおにぎりの話してるから、凛達の話聞いてなかったんでしょー!」

花陽「あはは…ごめんね、凛ちゃん、真姫ちゃん。」

真姫「花陽って、本当におにぎりが好きなのね…」

花陽「えへへ……」

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---
--

希「はぁ…っ///はぁ…っ///」


希(イキたいイキたいイキたいイキたいイキたいイキたいイキたい)


希「………っ///」ブンブン

希(今…何日経った…わかんない…わかんない…)

希「……う、……けほっ…///」モジモジ

希(…つらい……………)

希(喉…乾いた……けど…飲んだら……ますます…)

希「はっ…///けほっ…けほっ…///」

希(…だめだ…飲まないと………)

希「………っ///」ペロ…

希「……んっ///……ん///」ペロ…ペロ…


ガチャ


理事長「東條さん~♪」

希「……っ!///」ペロ…

理事長「あら…ごめんなさいね、飲んでる最中だったの。飲み続けていいわよ?」

希「……っ///」フルフル


理事長「…飲み続けて、いいわよ?」


希「……っ」ゾクッ

希「………」ペロ…

希「……ん……ん///」ペロ…ペロ…

理事長「ふふふ…」サワ…

希「………っ///」ビクッ

希「けほっ、ケホッ……///」

希「……なにするん…っ///」

理事長「…だって東條さんが、お尻突き出して飲んでるから…触ってほしいのかと思って」

希「…こんな拘束されてたら、普通に飲めるわけないやん…もう…やめて………」

希「…どうせ最後までしてくれないんやろ?つらいだけやから…触らないで。」

理事長「…ふふ、そうねえ……じゃあ見てるわ。」

希「…、それだけなら……」


希「………」


希「………///」モジモジ

希「……っ、………う…///」モジ…モジ…


理事長「………」


理事長「うーん…」

理事長「………やっぱり嫌っ♪」ワシッ

希「………っあ///」ビクッ

希「やめて………やっ///」ビクビク

理事長「いーやーよ。東條さんよくやってたじゃない、わしわしって、うふふ…やられる側の気持ちはどうかしら?」ワシワシ

希「あ……ああ………っ///やめ…やめてっ///」ガチャッガチャッ

理事長「ふふ…抵抗できないのがもどかしい?いくら暴れても手錠は取れないわよ?」

希「…わかっ…て………ふ…あ………いっちゃ……///」ビク…

理事長「……」パッ

希「ああっ………」

希「…………っ…なん……で……///」

理事長「なんでって…ねえ。ふふふ。…で、どうだったかしら、やられる側の気持ちは?」

希「……っ…そんなん…違うやん…こんなの……こんなの………」ポロ…

希「…も…イカせてよ………」ポロポロ

希「蛇の生殺しみたいな…こんなん…もう嫌や………」ポロポロ

理事長「ふふ…イキたい?」

希「……っ」コクコク

理事長「ふふふ…嫌よ」ワシッ

希「……んっ///やだ……やだっ///」ビクッ

理事長「ふふふふ…」ワシワシ

希「……あ………ぁあっ、あ……あっ!///」ビク…

理事長「……」パッ

希「ああああっ」ガチャッガチャッ

理事長「…ふふ、外れないって言ってるじゃない」

希「もう嫌!やめて!!外して!!!イカせてよ!!!いやぁぁあっ」ガチャンッガチャンッ

理事長「いくら泣いてもイカせないわよ?じゃあ次は…あむっ」パク

希「ああああっ耳…っ…やめてっ///」ビクッ

理事長「ん…れろ………ふふ……」ジュルッ

希「ぁ…ああ……あああ……///」ビクビク

理事長「うふふ…胸も触ってあげる。」ワシ…ジュル…

希「ああああっ…ああっ……んっ!///」ビク…

理事長「……」パッ

希「あ……」

理事長「ふふふふ…」

希「なんで…なんでよ…………」ポロ…

希「やだ…もうやだ………」ポロポロ

希「初日みたいにしてよ…壊れるまでやればいいやん…なんで……なんで………っ」ポロポロ

希「うっ……えぐっ………もうやや……やだぁ…………」ポロポロ

希「帰りたい…家に帰りたい…みんなに会いたい…もうやだ…やだ……う……ぐすっ……」ポロポロ

理事長「あらあら…その顔すっごいそそるわよ…かわいいわ、東條さん。」

希「………っ」フイッ

理事長「…ふふっ、でもイカせてあげない……10日って約束でしょう?」

希「そんな………」ポロポロ

希「嫌や…もう…無理……」ポロポロ

理事長「…それじゃあ誰かに代わってもらう?」

希「……っ」フルフル

理事長「ふふ、それじゃあ仕方ないわね…でも、ねえ気づいてた?あと2日よ。」

希「2日……」

理事長「…そう、2日。正確には2日と少しだけど…ふふっ。明日と明後日ね、土日なのよ。」

理事長「ことりには友達と温泉旅行にいくーって言ってあるから。つきっきりで相手してあげるわね?」

希「つきっきり…?」

理事長「ふふ、そう…つきっきり。」

希「…」

希「……」ガタガタ

希「……っ」ガバッ


理事長「…なるほど、足は自由だものね…二日間、この狭い部屋で逃げるつもり?」

希「さわ…さわらないで…っ」

理事長「……ふふ、いいわよ、触らないであげる……でもね、忘れてない?」

希「……?なにを……」

理事長「……あははっ、馬鹿ね。」カチッ


ヴヴヴ…ッ


希「ぁ……やだ……やだ……っぁああっ///」ビクッ

希「やだ…やだ……やめっ///」ビクビク

希「は……///う、あ…………あっ!///」ビク…


カチッ


理事長「…ふふっ♪たーのしっ」

希「あ……ああ………あああ………」

希「も……やだ…………だれか………」





希「………だれか……………たすけて……」ポロッ



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---
--

絵里「ねえ、にこ……やっぱり変だと思わない?」

にこ「……?希のこと?」

絵里「そう…今日で希がいなくなって丁度一週間経つけど…なんていうか…色々……」

にこ「LINE…?」

絵里「そう、そうなの…!時々来るLINE、少し違和感感じない?それに電話は絶対に出ないし…」

絵里「………なにか、おかしい気がして……」

にこ「うーん…そうね……」

にこ「にこの方にも2回くらいLINEは返ってきてるけど…確かに少しだけ違和感感じるのよね。それに電話にこれだけ出ないとなると…」

にこ「…でもまだ一週間だしね。その親戚との何かで忙しいとか…」

絵里「親戚に…殺されてたりしないかしら……」

にこ「ばっ…物騒なこと言わないでよね…!」

にこ「流石にそれはないと思うけど…何か親戚と面倒なことになってんのかしらね…希一人暮らしだし…その関係かしら」

絵里「希……」ポロ

にこ「あーもうっ、泣かないでよ…あんたって希がいないと、てんでダメなのね…」

絵里「私…気づかなかったのよ…希がいないだけで…こんな……」ポロポロ

絵里「こんなに私の中で希のことが大きくなってるなんて…知らなかった」ポロポロ

にこ「絵里…」


絵里「……っ………ねえ、明日から金土日って、三連休でしょう?」

絵里「私……九州まで、行ってくる。」

にこ「九州って……」

にこ「……遠いし広いわよ、どこの県かもわからないのに…」

絵里「…それでも何かわかるかもしれないから。」

絵里「たかが一週間で、連絡も来てるのに大袈裟だって、わかってるけど…」

絵里「…でも、なんだかよくわからない胸騒ぎが収まらないの。だから……」

にこ「………」

にこ「…はぁ。止めても聞かなそうね、これ…持ってって。」

絵里「…これって……お守り?」

にこ「…昔希がくれたのよ…なんだか胡散臭い見た目だけど、これを持っていたから今があるのかもしれない。」

にこ「持ってって…あいつのこと、見つけてやって?そんでポカって、連れて帰ってきて。」

絵里「…にこ……」

絵里「……ありがとう。」

にこ「ふんっ、ほら、そしたら行く行く!」グイグイ

絵里「えっ、でも今日の練習…っ」

にこ「明日からの準備があるでしょう?それにそんなに目真っ赤にして、あいつらにどう説明すんのよっ」グイグイ

絵里「…っ、そうね…」

絵里「………にこ…本当にありがとう。私行ってくる!」ガチャッ


タッタッタ…



にこ「………」

にこ「…はーまったく…手がかかるんだから…」


にこ(希……)

にこ(何事も無いと、いいんだけど……)

---
--

絵里「はっはっ…」タッタッ…

絵里(あっ…希に一応、メール入れといたほうがいいわよね…何県なのかも、今まで濁してたけど…来るとなれば、教えてくれるかもしれない。)

絵里「……」スッスッ

『私明日から、希のところに…九州に、行くから。』

絵里「………」タッタ…

絵里「…あ、ここ……神田明神…」

絵里「………そう言えば…メールが来たから、ここには聞きに来てなかったわね…」

絵里(お参りがてら、聞いていきましょうか…)



シャランシャラン

絵里「……」パンッパン

絵里(希にどうか何事もありませんように…見つかりますように…)

「…!きみ、きみ。」

絵里「…は、はい…なんでしょうか?」

「…きみ、希ちゃんの友達じゃないかい?」

絵里「……!そうですけど…」

「ああ、良かった…おじさんここで希ちゃん雇ってる者なんだがね…先週からずっと連絡つかなくて、何か知らないかい?」

絵里(……!)

絵里(あれ…希、明神には連絡入れてなかったの…?)

絵里「少しだけ聞いてますが…私も詳しいことは。居場所もわかってなくて…えっと…連絡、どこにしましたか?とりあえず家には今いないみたいです。」

「やっぱりそうかい…自宅と、あとは携帯にも電話したんだがねぇ…どっちもさっぱり。メールアドレスも知ってはいたんだが…どうも私には使いこなせなくてねえ。」

「あとは緊急連絡先に祖母の電話番号があったから、そっちにも電話したんだが…働いてる時に希ちゃんから、ちょっと呆けてるとは聞いてたけど…話が通じなくてな。」

絵里「………!祖母の……ですか。あの、そのおばあさんの住所とか、わかりますか?私、直接話を聞いてきます。」

「本当かい…?でも、失礼だがあまり話が通じるとは…」

絵里「大丈夫です。お願いします!」

「わかったよ…少し待っててな。」


絵里(……言われるまですっかり忘れていたけど…そういえば前に、都内におばあちゃんがいるという話は、希から聞いたことがあった気がする。)

絵里(…もし話がちゃんと通じれば、九州の親戚と何があったのか…あとは正確な場所もわかるかもしれないわね。)


「ほら、これだよこれ。メモしてってくれ。」

絵里「ありがとうございます…!」カキカキ

「その…希ちゃん、困ってたら助けてあげてくれな。ここの人みんなで心配してたんだ…ほら、べっぴんさんだから、何かに巻き込まれてないかって。」

絵里「………」カキカキ

「…仕事の方は大丈夫だから。またいつでも戻ってきてくれって、伝えてくれるかい?」

絵里「……はい、もちろんです……絶対伝えておきます。」

「ははっ、ありがとう。」

絵里「いえ…こちらこそ、ありがとうございました。」

絵里「希、絶対連れ帰ってくるので…そしたらまた、あの子のこと、よろしくお願いします。」

「もちろんだよ、待ってるから。」

絵里「……!はい!」


---
--

絵里「ここ…かしら。」


ピンポ-ン


「はーい!」


ガチャ

「…っとと……あれ、どなたですか?」

絵里「あ、あの…音ノ木坂学院3年の、絢瀬絵里と申します。希さんの友人なんですが…ここ、東條さんの、お祖母様のお宅で間違いないでしょうか?」

「……!あーはいはい、お孫さんのお友達か…おばあちゃんに何か用かな?あっ、えっと…私はここでお手伝いしてる者です。介護…みたいな?」

絵里「あ…その……、お祖母様に希さんのことで、少し伺いたいことがあって。」

「なるほど…うーん。部屋にいるから一応話はできるんだけど、その…少し呆けちゃっててね」

「おばあちゃんの中では時間が2年前で止まっちゃってるんだけど…それでも大丈夫かな?」

絵里(2年前…となると、希と私が高1の頃のままってことね…)

絵里(……!そっか、希が神田明神でバイトを始めたのが高2に入ってすぐだから…だから話が通じなかったのかしら。)

絵里(…となると、今起きている親戚の揉め事についてのお話は聞けないかもしれないわね…)

絵里「ええと…大丈夫です。」

「わかった!ついてきて。」


「おばあちゃん、聞こえる?あのね、希ちゃんのお友達の…ええと」

絵里「こんばんは、希さんの友人の、絢瀬絵里と申します。こんな時間にすみません。」

「おやおや、希のお友達?随分べっぴんさんが来たもんだねえ…あ、わかった。最近仲良くなったって、話に聞いてたえりちちゃんだろう。」

絵里「……!はい、そうです。少しお話お伺いしたくて、お邪魔しました。今から少しだけ、お時間頂いても大丈夫ですか?」

「かまわないよ。私もとっても話したいと思ってたんだ…希ったら恥ずかしがって、連れてきてくれないものだから。」

絵里「…ふふ、光栄です。あの…」

絵里「…希さんって、九州に親戚がいらっしゃるんですよね、九州のどこに…」

「…九州?いや、いないはずだが……うん、聞いたことがないよ、九州の親戚なんて…どうしてそんなことを聞くんだい?」

絵里(……!)

絵里(九州に…親戚が、いない……?)

絵里「いや…その、希さんが、九州の親戚と揉め事があって、今は九州にいると…そう聞いていたので。」

「九州……いや、どういうことかしら…よくわからないけど、希の親類はびっくりするくらい皆亡くなってしまっていてね…」

「母方の方は希のお母さん含めて皆ガンで亡くなってしまっているはずだし、父方の方ではもう私と、父である息子しかいないんだよ。」

絵里「……!希さんのお母様は…亡くなられていたんですか…」

「そう…だね。希がずいぶん小さな頃に。希は言ってなかったんだねぇ、私から聞いたことは内緒にしてくれるかい?」

絵里「もちろんです。…私こそ失礼なことを聞いてしまって、すみません…」

「いや、いいんだよ。…しかし、希は……」

絵里「……あ、あの!お父様は、今どこに……」

絵里(…2年前の情報にはなるだろうけど、お父様と連絡が取れれば…)

「あ、あぁ…息子は写真を撮るのが好きでね…今は海外で、戦場カメラマンをしているんだよ。」

絵里「海外…っ!?」

絵里(…しかも戦場カメラマンって……それじゃあなかなか連絡がとれないはずよ…)

絵里(でも一人暮らしの女子高生とお祖母様を残して…少し、無責任というか……)

「あぁ…その、…言い訳みたいになってしまうけど、」

「希の母が生きてた頃、息子はカメラマンを目指していたんだけどね…希の母が亡くなって、そんなことを続けていられなくなって」

「それでも希にいい暮らしをさせてあげたくて、息子は転勤の激しいところに就職して…それで希は、転校続きになってしまって。」

「…だけど去年、息子に海外でそういうカメラマンをやらないか、という話がきてね。」

「でもほら、息子にとって一番大切なのは希だから…初めは断っていたんだけど。」

「希はとても…いい子だから。息子がそういう仕事をしたいと、ずっと思っていたことを知っていたから。」

「…去年希がね、高校に入ったら一人暮らしをしたい、という我儘を言い出して…希がそんな我儘を言うのは初めてだったから、何事かと思ったんだけどねぇ…」

「…その後希が、お父さんにも一つ我儘を言ってほしい…って、言いだしてね。夢を追いかけてほしい…って。」

「息子が行きやすくなるようにね、お膳立てしてくれたんだよ。」

絵里「そういう…ことで……」


絵里(……確かに、希が言いだしそうなことね…)

絵里「……そういえば希さんに、お父さんのなんだかすごいカメラを見せてもらったことがあります。」

「ふふっそうかい…その、今話したことは、希には…」

絵里「っ、もちろん黙っておきます。」

「…ありがとうね。希はね、うちに来ると最近えりちちゃんの話ばかりなんだよ。」

「初めは一人暮らしをさせて、不安だったけど…希があんなに楽しそうに友達のことを話すのは、はじめてだったから。」

「今はこうしてよかったな、と…とても思うのよ。」

絵里「そう…ですか……」

絵里(希……)

「ふふ、残り二年間、希のこと、よろしくお願いしますね。」

絵里「…はい、もちろんです!私も希のことが…大好きなので。」

「…それはよかった。孫は可愛いって言うけどね、本当に希は可愛くて…いい子だから。幸せになってほしいんだ。」

絵里「……わかります、私も希には、幸せになってほしい。」

「…ふふっ、こんな年寄りの話し相手をしてくれてありがとうね。もう外も暗いから…気をつけて帰るんだよ。」

絵里「…!はい、お邪魔しました。」



キ-ガチャ

「…ごめんね。おばあちゃん、ちょっと呆けてたでしょ?」

絵里「いえ…素敵なお祖母様でした。」

「ほんと?…なら良かった、気をつけて帰ってね。」

絵里「はい、お邪魔しました。」

「はーい!」


バタン


絵里「………」


絵里(…どういうこと?希に九州に親戚はいない?それならあの連絡は……)

絵里(まさか…え……それなら希は、一体どこにいるっていうの?)

絵里「………っ」ドクン…ドクン…

絵里(まだいなくなって一週間…それとももういなくなって一週間?九州にいなくて、それなら……)

絵里(あのLINEは……希が今いるのは………)

絵里「……にこに連絡して…それから警察に行かなくちゃ…」



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---
--

希「ぁ……あ……かはっ…は………///」ビクビク

希「はぁ…っはぁ……はっ…」ビクビク

理事長「まだまだ…もう1回♪」カチッ

希「ぁぁぁあっ…ぁあ…あっ///」ガチャンッガチャンッ

理事長「ふふ…のたうち回って、まるで死にかけの芋虫みたいね。」

希「あぁぁあっ…ぁ、ぁぁああっ!///」ビク…!

理事長「オフ♪」カチッ

希「あ…っ………っはぁっ、はぁっ///」ビクビク

希(イキたいイキたいイキたいイキたいイキたいイキたいイキたいイキたいイキたい)

理事長「とーじょーさん!ふふ、聞こえてる?」

希「は……っは……っ///」ビクビク

希(イキたいイキたいイキたいイキたいイキたいイキたいイキたいイキたいイキたいイキたい)

理事長「ねー…もう一度押しちゃうわよ?」

希「……っ、!」ブンブン

理事長「ふふ…ねえ、おめでとう。あと30秒で0時になるわよ?2日間…よく頑張ったわね。」

希「………!」

理事長「…9……8……7」

希(やっと……やっとやっとやっとやっと……!)

理事長「…3……2……1……0。」

理事長「ふふっ…おめでとう。見て、東條さんのスマホ…ほら、0時ぴったりよ?」

希「い……か…せて………っ…///」

理事長「そうねぇ………あれ、でもよく見て?」

希「……?は…やく……っ///」

理事長「…ふふっ、せっかちね。そうしたいのは山々なんだけど…ねえ、よく見て。0時は0時でも、…ほら、日曜日って表示されてるのよ。」

希「………っ、??///」

理事長「ふふ…今の東條さんじゃ理解できないかしら。」

理事長「あのねえ…簡単に言うと、私、嘘をついていたのよ。土日に付きっきりになる…って言ったけれど、今週はね、金土日の三連休だったの。つまり東條さんが思ってた土日は、金土だった…というわけ。」

希「え………?///」

理事長「…ふふ、まだわからない?残り2日って言ったあの日。あの日の時点では実は残り3日だったのよ。つまり…」



理事長「…あははっ、あともう1日あるってこと。」



希「え………」

希「………」

希「嘘……でしょ、ねえ………っ」

理事長「…ふふ、嘘なんかじゃないわよ?」

希「………っ」ガタガタ

希「はっ……はっ…はっ………はっ」ガタガタ

理事長「あら……過呼吸?ふふ、大丈夫?」サスサス

希「はっ……はっ……なん…で…っ」ジワ…

希「なん…で…嘘っなんて……っ」ポロポロ

希「はぁっ…はぁっ……は…………」ポロポロ

希「私…頑張ったのに…なんで…なんで……っ」ポロポロ

理事長「なんでって…ふふ、楽しいから…かしらね。」

理事長「東條さんのこんな顔が見れたんだもの。今だって、嘘ついて良かったなって思ってるわよ?」

希「……っ、ねえ、もうやめてくれるよね?この顔みれて、良かったんだよね?」ポロポロ

希「…けほっ…けほっ、ねえ……いかせてくれるよね?ね?」ポロポロ

理事長「駄目よ、約束は約束だもの。」

理事長「元々7日間だったはずが、10日間になったのはほら…東條さんが黙ってバイトなんかするからじゃない?」

理事長「元はと言えば先に嘘をついたのは貴女なのよ。自業自得…って言うんじゃないかしら、ねえ、そう思わない?」

希「…………」ガタガタガタガタ

希「た、すけて……誰か、誰か……!」ガタガタ

理事長「ふふ…追い打ちをかけるようで悪いけど…見て、これ…絢瀬さんからのLINE。学院を出る直前に届いたの。」


『私明日から、希のところに…九州に、行くから。』


希「あ……あ………」ガタガタ

理事長「ふふ…つまりこの三連休、絢瀬さんは九州ってこと。他に助けに来るような人、いないわよね。九州にした理由はそんなにないけど…遠くにして良かったわ。ふふっ…」

希「………」ガタガタ

希「……っ」ガバッ

希「………っ、………っ!」ガシャンッガシャンッ

理事長「…逃げられないわよ?逃げられるわけないでしょう?」

希「嫌……いや、いや…………!」

希「た…たすけてください、たすけてください、たすけてください………っ」

理事長「ねえ……関西弁とれてるわよ?」

希「………っ」ガタガタ

理事長「それにほら…助かる方法なら、一つだけあるじゃない。」


『仲間を売ること。貴女が仲間を裏切ったら、解放してあげる……そうね、『うちを解放して、○○ちゃんを代わりにして!』って言えたら解放してあげるわ。』


希「あ……あ…………」ガタガタ

理事長「…ふふっ、誰にするの………?」

希「だれ………だれ、に………」ガタガタ

希「だれに………っ」ガタガタ

希「だれ………」ガタ…



『希ちゃーん!穂乃果のことも占って~!!』


『希…一緒に山頂アタックです!』


『希ちゃん、衣装の採寸するよー♪』


『べ、別に希のこと、嫌いじゃないけど…っ』


『希ちゃん!今日も練習、いっくにゃー!!』


『希ちゃんっ、一緒におにぎり食べよう!』


『希!しっかりしなさいよねぇー、もー!』


『希…その、あのね…、』



『いつもありがとう。』


希「……あ……ああ…………」ジワ…


『…だから好きにすればいいよ。壊れるまでどうにだってすればいい。ぐちゃぐちゃにしていいよ?その代わり、μ'sの誰にも手は出さないで。』


希「あ………」ポロ…

希「………」ポロポロ

希「………あは……あはは………」ポロポロ

希「…もう…嫌や…………」ポロポロ

希「なんでうち…こんなに……μ'sのこと…」ポロポロ





希「………っ」ポロ…

希「…………ねえ、理事長。もう…言わないよって……言った…やん…」ポロポロ


希「壊れるまでどうにだってすればいい、って………」ポロポロ

希「ぐちゃぐちゃにしていいって、言ったやん………」ポロポロ

希「だからμ'sの誰にも手は出さないでって、言ったやろ……!」ポロポロ


希「…お願いだからもう、絶対聞かないで…それ……」ポロポロ


希「μ'sのみんなのこと…大好きだから…選びたくない……」ポロポロ

希「その条件………無しにして。」ポロ…


理事長「………っ、」

理事長「………」

理事長「……ふふ、ほんと、尊敬しちゃうわ。」

理事長「じゃあ、もう聞かないけど……いいのね?本当に?他に解放する条件は、無いわよ?」

希「…いいから………その条件呑んだりしたら、絶対に後悔する………」

理事長「…ふふっ、わかったわ…でもこのままだと貴女、きっと狂っちゃうでしょ?…それだとつまらないから、いいこと教えてあげる。」

希「………なに、」

理事長「……あのね、刺激を誤魔化せるのは、さらなる刺激だけなのよ……この意味、わかるかしら。」

希「………っ、…?」

理事長「ふふ…少し難しいかしら?それじゃあラスト1日、よーい、スタート♪」カチッ

希「………っんん///」ビクッ


希(………っ、さらなる刺激…?刺激って……)

希(………)

希(……そういう、こと)


希「…う///ぁ…………っ、っぐ」ガブッ


理事長「……っ!」

希「………っう………ぐ…っ」ダラ…

理事長「…………」

理事長「……ふふ…この一瞬で…よくわかったわね、すごいわ。」

理事長「………あははっ、でも、なるほど…そうするのね。少しびっくりしたわよ…」カチッ



理事長「……ふふっ、ねえ、東條さん。」

理事長「…今日、貴女の脚にいくつの噛み跡ができるかしら。…楽しみね?」



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----
---
--







プルルル…


絵里「っ、あ、にこ?!」

絵里「それが…こっちの警察は全然話をまともに受け取ってくれなくて…」

絵里「私が家族じゃないから…とか、あとお祖母様が呆けてるなら参考にならないとか…LINEが来てるなら大丈夫だろう、とか…!」

絵里「なんか届けは出してくれたけど…それだけなのよ…!」

絵里「………にこの方もそうなのね……」

絵里「………っ、ええ、そうね…ごめんなさい…ちょっと落ち着かないとね…」

絵里「…まだわからないって…ネガティヴになりすぎてるのかもしれないって、わかってるんだけど、でも……」

絵里「…もう連休も終わるのに……これしかできないなんて……」

絵里「私達にできることって、もう……」

絵里「ええ、ええ……」

絵里「……そうね、明日学校で、みんなに話して…あとは先生方にも、ちゃんと話したほうがよさそうね。」

絵里「……うん、わかってる。…にこも気をつけて。」

絵里「……ええ、また明日。」カチャッ

絵里「………」


絵里「………お守り…持ってるのに……どうして……」ギユッ


絵里(……ねえ、希………今、どこにいるの?)



----
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--

希「はぁっ……///はぁっ……///」

希「ぅ……けほっ…痛………」

理事長「……あらら、時間的に次でラストかしらね…じゃあラスト、スイッチオン♪」カチッ

希「ぅうっ…///んっ………」カプッ

希「ん………///う………///」ドロ…

希「んん……ぐ……っ///」ボタッ


理事長「3…2…1…0。」カチッ


理事長「……ふふっ、0時ぴったり…これで本当の本当におしまいよ、お疲れ様。」

希「………っけほ、けほっ……///」

希「はぁっ…はぁっ……///」

希「っゔ…痛……」ボタ…ボタ…

理事長「…ふふ、ねえ、聞こえてる?」

理事長「今ならイカせてあげるけど…脚が痛くてそれどころじゃないかしら?」

希「……っ!、いかせて…っ///」

理事長「あはは…そうね、約束だものね。」

理事長「東條さん頑張ってたから…じゃあ、とびっきり気持ちいいことしてあげるわ。」

希「…とびっきり……」

理事長「…そう、とびっきり。残念ながら私は女だから、そういうものはないけど…ほら、これ。」

希「………それって…」

理事長「ふふっ、電源入れると震えるのよ?今日は流石に、東條さんが気をやったらそれっきりにするし…ほら、こっちきて、またがって?」

希「…でも…それしたら……」

理事長「…ねえ、言うこと聞けないの?」

希「………っ」


希「……」スクッ

希「………っ、い、っっ」トテ…トテ…


理事長「ほら、あと3歩、2歩……」


理事長「ふふ、到着。じゃあ貞操帯とローター、外してあげる…」カチャ…カチャ

理事長「…あはは、大洪水ね……ドロッドロ。すごいにおいよ…?ふふ、私は好きだけれど。」

理事長「……はい、それじゃあこれ、持ってるから…ゆっくり腰を下ろして?」

希「………っ、あし、痛くて……曲げらんな…」

理事長「下ろして?」

希「………っ、」


希「う………痛………」

希「う…ぐ……痛…い…………、あっ」ズルッ

希「ぁぁああ"っ」ストン


理事長「…ふふ、その顔かわいいわよ?じゃあ、スイッチ入れてあげる♪」カチッ


ヴヴヴヴヴ…


希「あっ…ぁぁあっ……なに、これ……っ…んんっ///」ビクッ

理事長「ふふっ…痛いの忘れるくらい、気持ちいいでしょう?」

希「あっ…あっ……いく……いっちゃ………///」ビクビク

希「ぁぁぁあああっ////」ビクンビクン

希「ふ…あ……止まんな………っ///」ビクビク

希「…あっ……んんんんんっ////」ビクンビクン

希「ぁあっ…強……強すぎやからぁっ///」ビクビク

希「ふ…ぁ……っ、ぁぁあああっ////」ビクンビクン

希「と…めて……っ一回止め…イクの止まんな………っんんんうっ////」ビクンビクン


理事長「ふふっ、嫌よ…今まで我慢してた分、たくさんあげる………」


希「ぁっあっやだ、やだぁあああっ////」ビクンビクン

希「やめてぇっ、おかしくなるっおかしくなっちゃうっ…やぁぁああっ////」ビクンビクン

希「あっ///あぁあぁっ……///ぁああぁあっ////」ビクンビクン


希「…ふ………あ…………あ…あ……///」カクッ


希「……っ………///」ビク…ビク…


理事長「………あら…」

理事長「……もうおしまい?仕方ないわね……」カチッ

希「………っ///」ビクン

理事長「あら、え、寝てる…?ああでも考えてみれば…ここの所ほとんど寝てなかったようなものだから、当たり前っちゃ当たり前かしらね……」

希「………」

理事長「………」


理事長「………なんだかこういう系は、飽きてきちゃったかもしれないわね。」

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---
--

穂乃果「ふぁーあー…」

穂乃果「ええっと…海未ちゃん、なんで今日の朝練、明神様のとこじゃなくて…部室なんだっけ。」

海未「まったく穂乃果は…まだ寝ぼけているんですか?絵里とにこが話したいことがあると言っていたではないですか。」

ことり「なんだろう…希ちゃんのことかな…」


ガチャ


絵里「…ごめんねみんな、こんなに朝早く。これで全員集まったかしら。」

にこ「くぉらー凛!起きなさい!」

凛「んにゃっ……」

海未「…全く、穂乃果といい凛といい…それで絵里、話したいこととは?」

絵里「ええと…その、希のことなんだけど…」

真姫「…それはわかってるわよ。希がどうしたの?」

絵里「…簡潔に言うと…希が今、本当に九州にいるのかが…わからないのよ。」

穂乃果「あれっ、でも一番はじめのLINEで絵里ちゃんに、親戚のいる九州にいるよーって内容のが、来てたんじゃなかったっけ…」

絵里「ううんと…順を追って説明するわね、」

絵里「まず希のLINEなんだけど…重要な内容には、時々返事が来るじゃない…あれに違和感感じた人、いない?」

凛「あ、こないだ違和感バリバリだったよ!いつものツッコミのキレが全然なかったの。」

海未「リリホワの集会の連絡のときですね…いつもなら凛とふざけるところに、とても真面目に返事が来たのを覚えています。」

絵里「……っ」

花陽「………絵里ちゃん…?大丈夫?」

絵里「……ええ、ありがとう花陽。…そう、私もたまに感じていてね…それからやっぱり、電話がこれだけできないのもおかしいと思うの。」

海未「たしかに…私は文字を打つのが苦手なので電話が良かったんですが、どうしても電話は出ませんでした。」

絵里「…そうよね、私も希がいなくなってから一度も声を聞いてない。ただ、学校には一番はじめに電話が来たらしいけど…」

絵里「…こんな感じの違和感が、たくさんあるのよ。」

絵里「例えば神田明神には連絡がいってなかったこと。あれだけバイト熱心な希が、神田明神に連絡せず、無断欠勤を続けていたのは…」

ことり「…っ、それはなんだか…変だね。」

絵里「…そうよね。あの希が神田明神に連絡し忘れるなんて…おかしいと思うの。」

絵里「それから連休前に、希のお祖母様に会ってきて…少し呆けてるって聞いてたんだけどね、お祖母様の中では時間が2年前で止まってるってだけで、それより前のことは普通に話せたの。」

絵里「それで…お祖母様の話によるとね、希にはお祖母様以外に親戚はいないのよ。だからもちろん、九州にもいるはずがなくて…」

真姫「ええ…それじゃあ初めのメールからおかしいじゃない…」

絵里「…そうなの。おかしいのよ、色々。」

絵里「……ここまで色々おかしいと、LINEの向こう側にいるのが本当に希なのか、希は本当に九州にいるのか…全部怪しく思えてきて…」

海未「……しかし、」

絵里「…?」

海未「…しかし、希が仮に…家出をしてLINEで嘘をついているとか、または何かトラブルに巻き込まれている場合…ご家族が警察に届けて、それこそもっと大事になるものではないですか?」

海未「そもそも希の家族は今、どうしているのでしょうか…」

絵里「それが…私の口から言うのもどうかと思って黙っていたんだけど、希は一人暮らしなのよ。ご両親も今は国内にいないみたいだし…」

真姫「なにそれ…っ」

ことり「…それって、結構やばくないかな?警察には…届けたの?」

にこ「ええ、届けたわよ。私と絵里…それぞれ違う警察署に。」

にこ「…でもね、全然取り合ってくれなかった。まぁ当たり前といえば当たり前かもしれないわね、私達は家族じゃないし、希のおばあさんは軽く呆けてるわけだし、LINEの返事はきてるんだし。」

にこ「こうなると…もう私達二人では、どうしたらいいかわからなかったのよ。だからあんた達にも相談したの。」

にこ「…もちろん、希のおばあさんが本当に呆けてて…普通に九州に希の親戚がいて、LINEに書いてある通りのことが起きているのかもしれない。」

にこ「…でも、それにしても不自然な点が多すぎるのよ。」

穂乃果「探そうよ!もし何か危ないことに巻き込まれてるなら…絶対見つけてあげないと…!」

海未「そうですね…ですが、どこを探したら…」

凛「とにかく聞き込みでもなんでもして、情報を集めて…」

花陽「先生にも話したほうがいいよね…っ」

ことり「…お母さんに頼めば、何かしてくれるかも。」

真姫「海外のご両親にも…連絡ができるなら、早めにしたほうがいいと思うわ。」

絵里「………っ、みんな……!」


にこ「………たーだーし、」


にこ「何をするにも、気をつけた方がいいわ……最悪の場合、もし希が何か事件に巻き込まれていたとして…私達も巻き込まれないという保証はないのよ。」

にこ「聞き込みでもなんでも、本当に気をつけて…できればこの違和感に、気づいていないように振舞って手がかりを探した方がいいわ。」

にこ「…例えばどこかに誘拐されていたとして、犯人はバレたと思ったら、私達もきっと口封じに連れてかれる…もっと悪ければ……」

真姫「にこちゃん…映画の見過ぎじゃない?」

にこ「…んもうっ、それはそうかもしれないけど……それくらい気をつけろってことよ!」

花陽「そうだね…気をつけるに越したことはないもんね…気をつけようね、凛ちゃん。」

凛「…う、うん……」

花陽「……凛ちゃん?」

凛「………」

凛「希ちゃん……大丈夫かな。」

海未「凛……」

凛「…あっ、ごめん……あはは、なんだかにこちゃんの話聞いたら、急に…なんだか……」

凛「………希ちゃん…」ポロ…

海未「……きっと大丈夫です。希はスピリチュアルですから…私達で絶対みつけましょう。」

凛「うん…うん……そうだよ、ね…」ポロポロ

花陽「……っ」ポロ…


絵里「………」ジワ…

絵里「……っ」ゴシゴシ


絵里「とりあえず今から私とにこで、先生方に説明と協力をお願いしに行ってみるから…」

絵里「みんなは教室に戻っていてくれる…?」

穂乃果「…こんな話を聞いた後で、穂乃果達…普通に授業に出るの?」

穂乃果「今から手がかりを探しに行ったほうがいいんじゃ…」

にこ「さっき言ったでしょー、それは危険なのよ。」

にこ「なにが起きているのか明白じゃない以上、変に目立つ行動は控えるべきね。学校の時間は学校にいた方がいいわ。」

穂乃果「そ、そっか………」

穂乃果「…うん、にこちゃんの言う通りだね。」

穂乃果「じゃあ先生達の方は…二人にお願い。」

にこ「ええ、このにこにーにドーンとおまかせよ!」

絵里「ふふ…じゃあ次は放課後集まって…それから手がかりを探しに行きましょう。」

穂乃果「うんっ!」

--ー
-ー


絵里「…とりあえず、うちの担任でいいかしら……」

にこ「いいと思うけど…絵里んとこの担任って、なんていうか単細胞よね…体育の先生だし。」

絵里「単細胞って、ちょっとにこ……あっ。」

理事長「……!絢瀬さん、矢澤さん……おはようございます、最近仲いいわね。」

絵里「おはようございます。…あの、少しお時間よろしいですか?希のことで、少し話しておきたいことが。」

にこ(先に理事長に話すの?)コソコソ

絵里(単細胞体育教師より、話が通じそうでしょ…ことりのお母さんだし、なんだかんだμ'sのこと、気にかけてくれてるし)コソコソ

にこ(単細胞体育教師……まぁ、そうね。)コソコソ

理事長「………」

理事長「別に構わないけど…東條さんのこと?何かあったの?」

絵里「えっと、それが……」





理事長「……なるほど。」

理事長「東條さんには、九州に親戚はいないと…そのお祖母様から伺ったのね?」

絵里「はい、そうなんです。おかしいと思いませんか?」

理事長「…そうねえ、でも、私も東條さんのお祖母様は、その…介護が必要と聞いていたし、覚え違いという可能性も…」

にこ「…それにしたっておかしなところが沢山あると、絵里がさっきから説明してるじゃないですか。」

絵里「ちょ、ちょっとにこ……理事長よ?」

にこ「……っ、すみません……」

理事長「…とりあえず貴女達の話はわかりました。他の先生への伝達は私がしておきます…それから少し、調べてみましょう。」

絵里「……!ありがとうございます!」

理事長「…いいえ。でも二人とも、東條さんには東條さんの事情があるのかもしれないから…あまり深入りしすぎないようにね。」

理事長「それに矢澤さん、貴女、中間テストの結果が……」

にこ「わぁああ絵里!教室戻るわよ!」タッタッ

絵里「っ、にこ!もう……」

絵里「えっと、ありが…」

理事長「あ、ねえ絢瀬さん。」

絵里「…?なんでしょうか。」

理事長「単細胞生物ってね…下等な生き物みたいに思えるかもしれないけれど、実は人間より、色々な面で優れているのよ。」

絵里「………???」

理事長「………ふふっ、変なこと言ってごめんなさいね。矢澤さん、その辺の範囲の生物が赤点だったみたいだから…教えてあげてくれる?」

絵里「あ……は、はい。わかりました。」

絵里「そ、その…色々ありがとうございました。では。」


タッタッタッタ…


理事長「…………」


----
---
--

希「………」パチ

希「……っ…」バサッ…

希(………)

希(なにこれ…脚……ぐちゃぐちゃ)

希「……鉄臭い…」

希「………」ポロ…

希「……!」ゴシゴシ

希(…なんで泣けてくるんやろ)

希(脚が痛いから…?この生活から逃れたくて…?昨日、あんな形で処女、失くしちゃったから…?)

希(全部やん…)

希「はじめては、好きな人と……」

希(………)

希(今更やね……)

希「…早く誰か、助けに………」

希「早く…」


希「………」



----
---
--

絵里「…はっ、…はっ………にこ!」タッタッタ…

絵里「…なにかわかった?」

にこ「いや……絵里は?」

絵里「……」フルフル…

にこ「そう……って、」

にこ「ねえ絵里、顔色悪いけど…大丈夫なの?」

絵里「別に…大丈夫だけど……」

凛「絵里ちゃーん!にこちゃん!」タッタッ…

花陽「…何かわかりました?って、絵里ちゃん顔色悪いよ…大丈夫?」

絵里「…あはは、そんなに悪いかしら……」

花陽「うん…あそこのスーパーでおにぎり買ってきたから、よかったら食べて。」

絵里「………、このおにぎり……」

花陽「ふふ、焼肉おにぎり。希ちゃんが好きそうだよね。」

絵里「ええ…これ、よく食べてたもの。でも花陽ちゃんのが世界で一番美味しいって、いつも言ってたわよ?」

花陽「ほんと?ふふっ…嬉しいな。そのおにぎり、私は最近知ったんだけど…いつもクラスの子と接戦なの。理事長もはまってるみたいだし…今日買えたのは、ラッキーだったんだ。」

絵里「そんなに人気なのね、これ…もらっちゃっていいの?」

花陽「ふふ…うん!今は絵里ちゃんに食べてほしいな。本当に美味しいから、すぐ元気になっちゃうよ。」

絵里「花陽……ありがとう。」モグ…

花陽「どうかな?」

絵里「うん…美味しい…すごく美味しい。ありがとう。」モグモグ

凛「そういえば…」

にこ「……?」

凛「…そういえば希ちゃん、出席日数は大丈夫なのかな。」

にこ「出席日数…?」

凛「ほら、希ちゃんは凛達みたいに、赤点で連発で留年危機ー!ってことはないだろうけど、何日も休んだりしたら…ほら、留年…とか。」

絵里「そういえば……そうよね、留年…」

にこ「……ちょっと急いだ方がいいかもしれないわね…最終予選に間に合うか心配だったけど、それより先に留年が来そうよ…」

絵里「……っ」


穂乃果「絵里ちゃーん!にこちゃんっ!」タッタッタ…

海未「穂乃果、そろそろ時間も遅いですから、そんなに大きな声を出さないでください!」

真姫「そういう海未もちょっと声大きいわよ…」

にこ「あれ…3人だけ?ことりは?」

海未「ことりは以前入れたバイトのシフトが入っていたようで…数時間前に別れました。」

にこ「…ああ、なるほど…メイド喫茶ね。」

絵里「…それで、3人とも、何かわかった?」

穂乃果「うんん…何も。私達だけだと難しいのかな、やっぱり…」

真姫「まぁ、限度はあるだろうけど…でも諦めるわけにはいかないじゃない。本当、どうしたらいいのかしらね…八方塞がりよ。」

絵里「………」

絵里「少し考えましょう…一先ず今日はもう遅いし、解散…っていうことで。」

にこ「そうね……」

---
--

絵里(はぁ…)

絵里(希…どこにいるの?)

絵里(どうして警察はこうも動いてくれないのかしら…明らかにおかしいことばかりなのに…)

絵里「……あ」

絵里(警察が駄目でも…他にもこういうのに対するプロっているわよね…)

絵里「…そうよ、事件を調べるのは警察だけってわけじゃない…」

絵里「確か駅前にあったわよね…そういうとこ。」

絵里「………」

絵里「……っ」ダッ…





絵里「はっ…はっ……あった、秋葉原探偵事務所……」

絵里(怪しい……)

絵里(けど、まぁ…とりあえず話だけなら)

絵里「……」ガチャ

絵里「あの…すみません……!」


----
---
--

理事長「………」ガチャ

希「………っ」ビクッ…


理事長「……東條さん…」

理事長「………」


希(………?)

希(昨日までと雰囲気が、違う…ような……)


理事長「…ねえ、聞いてるの?東條さん。聞こえてるなら返事してくれるかしら?」

希「あ……う、うん……ごめん…」

理事長「………」

理事長「東條さんのせいよ……」

希「……っ、?」

理事長「そう…そうよ……許可なくバイトはするし、祖母は要介護とか言いながら普通に会話できてるし…」

理事長「知ってたら違ったわ…なんで言わなかったの……」

希「……っ」

希(な…なにこれ……微妙に何のことだかよくわからないけど……どうしてこんな、昨日までと…)

理事長「……ねえ、昨日まで。気持ちよかった?」

希「…えっ………」

理事長「気持ちよかったかって聞いてるの。どうなの。気持ちよかったわよね?」

理事長「ねえ?」

希「……っ、うん…気持ちよかった……」

理事長「ふふふ。そう。でも飽きたわよね?そういうの。…私は飽きたわ。」

希「………」

希(飽きた…?それじゃあ、解放して………)


理事長「…ふふっ、あははっ……まぁあんまり考えても仕方ないわね…私と結びつくのはまだ先だろうし。」

理事長「じゃあ東條さん、今日からは昨日までよりもっと、刺激的なことをしましょう?」

希「もっと刺激的なこと…?」

理事長「ふふふふ…」

希「………」ビクッ

希(なんだかよくわからないけど…絶対やばい……)ズル…

理事長「…ふふっ、あのねぇ私、実は理事長になる前は理科の教師をしてたのよ……理科って楽しいわよね、生物が専門だったけど…化学も物理も、全部大好きよ?」

希「な……何言って………」

希「ね…ねえ、その……今日は疲れてるんやない?落ち着いて……」ズル…ズル…

理事長「ふふ…私はいつも落ち着いてるわよ…?ねえ、なんで段々後ろに下がっていくのかしら…私が怖い?悲しいわね…」

理事長「………」ガシッ

希「痛っ!」

理事長「逃がさないわよ。」

希「…っ」ゾクッ

理事長「ふふ…ねえ、脚、痛いでしょう…こんなになって……可哀想に。」サワサワ

希「…っ、痛いから、触らんといて………」

希「っ…!いっ………え、何塗って……っ」

希「痛っ…ぁ………ぁ……やめて…ぁあああ"っ」

理事長「大袈裟ね…少し塩を塗っただけよ?これからもっと痛いことするのに……」ヌリヌリ

希「やめてっ…痛い痛い痛い痛い!やめてえええっ…ぁぁあっああぁあ"っ」

理事長「ふふっ…痛い?しみる?」ヌリ…

理事長「…傷跡に塩を塗るとね、身体より浸透圧の高い塩が、細胞から水を吸い取るの。そうすると細胞は死んでしまう……」

理事長「…その痛みはね、細胞があげてる悲鳴なのよ…ふふ、勉強になったかしら?」

希「はぁっ……はぁっ………は……」ポロポロ

希(狂ってる…ほんとに狂ってる……っ)

理事長「ふふ…今のは浸透圧の計算だから…高校範囲だと、化学かしら、生物かしら……どっちもかしらね。」

理事長「地学は申し訳ないけどあまり精通していないから…じゃあ次は物理にしましょうか。」

希「物理って……」

理事長「ふふ…東條さん、文系だったわよね。それでも物理と言えばわかるんじゃないかしら…何をするのか。」

希(物理…………)

希(……電気)

希「………っ」ガバッ


希(やばい……逃げないと、逃げないと……!)


希「……っ」ガチャンッ

希「……っ!……っ!」ガチャンッガチャンッ

希(足…折れてでも…逃げないと……逃げないと………!)ガチャッガチャ

理事長「あははっ…その脚でもいざとなると走れるのね。でも東條さん、そんなに頑張って足を引いてもその鎖はとれないし、足が折れても抜けないわよ。切断でもしない限りね…」

希「………っ」ピタ…

理事長「ふふ、諦めたの?冷静になれば当たり前のことでしょう?じゃあ、ねえ…ちょっと実験の準備が必要ね。」

理事長「…だから少し、眠っていてくれる?」ガサ

希「……注射器…?」

理事長「あぁ…ただの睡眠薬よ。少し準備に手間がかかるからしっかり眠っていてほしいの。……っと、よし、じゃあ打つわね。」ガシッ

希「や……やだ………嫌っ、打たないで……っ」

理事長「ちょっと…もう。暴れないでくれる?変なところに刺さると大変なことになるわよ?」

希「………っ」

理事長「ふふ…いい子ね、ちょっとチクっとするわよ……」チクッ

希(…あ……あ………透明な液体が入ってく……)

理事長「…はい、おしまい。」

希「………」

希「……?」

理事長「…ふふっ、そんなにすぐには効かないわよ。よくアニメなんかで犯罪者が、口にハンカチを当てて即効眠らす…みたいなことをしてるけど、あれは嘘。」

理事長「今打ったのはロヒプノールっていう薬でね、強力だから長時間効くけど…即効性にはかけるのよ。」

希「………」

理事長「ふふ、勉強になるでしょう?ちなみに東條さんを連れてくるときに飲ませたジュースには、ハルシオンっていうお薬が入ってたの。あれはすぐに効くけど、すぐ切れるのよね…」

希「なんで…」

理事長「…なあに?」

希「…なんでそんなに詳しいん?」

理事長「ふふ…さて、なんでかしらね?まぁいいじゃない。そんなことよりほら、東條さんが眠れるまでお喋りでもしましょう?」

希「………」

理事長「ノリが悪いのね…星空さんや園田さんとは、いつもノリノリで喋ってるじゃない。私とじゃ嫌?」

希「それは……」

理事長「…ふふ、まぁいいわ。ねえ私、東條さんのお話が聞きたいの。思えば私と貴女が話すときって、必ず絢瀬さんがいたじゃない?何かを話すのも絢瀬さんが中心で…」

希(えりち……)

理事長「だからこうやってゆっくり二人で話すのは、初めてだと思うのよ。連れて来たときは東條さん、少し混乱していたしね。」

希「………」

理事長「…ふふ、なんでもいいのよ?と言ったら困るかしら…じゃあ、μ'sのメンバーの話でもしてくれる?」

希「μ's……」

理事長「…そう、まずはじゃあ高坂さんから。私も小さい頃から知ってるけど、東條さんから見た高坂さんがどんな子か、知りたいわ。」

希「………」

希(何、考えて急に世間話なんて……)

希(………)

希(……まぁ、もういっか)

希「穂乃果ちゃんは……」

希「穂乃果ちゃんは、いつも何も考えてないようで、ちょっとお馬鹿さんで……」

希「…だけど、だからこそ…なのかな、人を惹きつける力があるんよ。」

希「どこかちょっと危うい所は手を貸してあげたくなるし、真っ直ぐに走る背中について行きたくなる。そんな子…かな。」


理事長「ふふ…人を惹きつける力、ねえ。……確かに、あの子は昔っから…そんな感じだった気がするわ。」

理事長「…じゃあ園田さんはどんな子?小さい頃からことりと仲良くしてくれているけど、実はあまり知らないの。厳しいってよく耳にするけれど…」


希「海未ちゃんは…確かに自分にも他人にも厳しい所はあるけど、その厳しさは優しさでできてるんよ。」

希「グループがあったら、まとめる人が必要で。目標があったら、叱ってくれる人が必要で…」

希「叱るって言うのは…怒るのとは違って、所謂汚れ役みたいなものやから…うちはやりたくないし、誰もやりたがらない。優しい子ばかりのμ'sでも、これをいつも引き受けてくれるのは海未ちゃんだけ。」

希「…みんながやりたがらないことを進んで引き受けてくれる海未ちゃんは、やっぱりすごく優しい子だと思う。…もちろん真面目で、頑張り屋さんな所も知ってるけど、一番はここかなぁ。」


理事長「へえ…ふふ、よく見てるのね。園田さんを厳しいって言う人は多いけれど、そういう見方もあるのねぇ。」

理事長「じゃあことりはどうかしら?」

希「…ことりちゃんはね、あなたの娘とは思えないほど、すごく…すっごくいい子なんよ。」

希「…9人分もの衣装を、ライブのたびに作って…それはきっと、好きだからでは済まないくらい、大変な作業のはずなのに。」

希「それを当たり前みたいにやって、見返りも何も求めないで…いつも笑顔で。きっと悩んだり困ってることもあるのに、全部楽しそうにやってのけちゃう。」

希「…えりちや真姫ちゃんは大人っぽいけど、そういう意味でμ'sの中で一番大人なのは、ことりちゃんなんやないかな。」

希「それに…鍋にチーズケーキ入れたり…枕を忘れて取りに戻ったり。わけがわからないけど、そういう所、うちすっごく好きなんよ。」

理事長「…私の娘とは思えないほど…ね。ふふっ、確かに私もそう思うわ。私の娘とは思えないほどいい子だなぁって…」

理事長「…じゃあ、西木野さんは?」

希「…真姫ちゃんは……」フワ

希(…なんかフワフワしてきた、薬…効いてきたんかな。)

理事長「ふふ…眠い?そろそろ寝る?」

希「ううん…まだ大丈夫。」ブンブン

希「…真姫ちゃんはね、意地っ張りで、素直じゃなくて…でもそこがすっごくかわいいんよ。」

希「いつもツンツンしてるけど…でも実は、μ'sのことがすごく大好きで…大切に思ってくれてる。それがね、言葉になってなくても、不思議なくらい…すごく伝わってくるんよ。」

希「言葉にしなくてもわかる…って、すごいことだから。それだけ本当に、μ'sのこと、強く思ってくれてるんだと思う。」

希「それがわかるから、うちもみんなも真姫ちゃんのこと…大好きなん。」

理事長「…慕われてるのね、西木野さんは。少し不思議に思ってたの、あんなにツンツンしてる子なのに…って。そういうことだったのね。」

理事長「まだ起きてられる…?次はじゃあ、星空さん。」


希「凛ちゃんはね…この間のライブで…すごく変わったんよ。」

希「元々、すごく明るくて元気で…可愛い子だったけど、どこか自信がなくて。だけどこの間のライブで、みんなの協力があって…真姫ちゃんと花陽ちゃんが背中を押して、変わったん。」

希「もっともっと可愛くなった…背中を押された後の凛ちゃんは、キラキラしてて…すごく元気をもらえるん。」

希「元気がないときにね、凛ちゃんといると…一緒にいるだけで元気になれるん。元気になれるっていうより…元気にしてくれるんよ。実はすごく気が使える子だから。」


理事長「…元気になれる、じゃなくて元気にしてくれる、なのね、ふふ。あんまり気が使える子だとは思ってなかったけど、ちがったのね…」

理事長「次は…あらら、すごく眠そうだけど…もう寝る?我慢しなくてもいいのよ。」


希「大丈夫…大丈夫……次は花陽ちゃん」ウトウト

希(眠い…けど……寝たら…起きたら………)

希「花陽ちゃんはね、すごく優しいイメージで…もちろん、すっごく気が使える子で、優しいんだけどね、」

希「それだけじゃなくて…すごく頑張り屋さんなん…」

希「元々ダンスとか…運動とか…きっと少し苦手で。だけど誰よりも頑張ってて…」

希「単に練習を頑張ってる、ってだけじゃなくて…なんていうのかな、心意気…っていうのかもしれない。」

希「…たくさんアイドルについて研究して、にこっちの…みんながロクに聞かないようなことまで、しっかり耳を傾けて。」

希「えりちの厳しい練習にも、海未ちゃんの厳しすぎる練習にも、正面から真っ向に取り組んで…言い訳もしないで、心の底から頑張ってる。」

希「そんな姿を見てるとね、私達も頑張ろうって、頑張らなきゃ…って、思う…んよ。」ウトウト

理事長「小泉さんって、優しいのは知ってたけど…おどおどしてるイメージも強かったから。そんなに熱意のある子だなんて、知らなかったわ。」

理事長「ふふ…μ'sのみんなのこと、東條さんから聞いて…みんなの知らなかった面を、たくさん知ることができたわ、ありがとう。」

理事長「そろそろ寝ましょうか…東條さん、すっごく眠そうだから。」

希「ううん…まだ……にこっちとえりちが残ってるから…」ウトウト

理事長「でも……」

希「寝たくない……寝たくないの………」ウトウト

希「寝て…起きたら私…うち…どうなってるのか、わからないから…怖いから……」ウトウト

希「にこっちはね……」ウトウト

希「にこっちは…宇宙で一番のアイドルで……」ウトウト

希「本人はかわいいって思われたいって、思ってる…けど、もちろんすごくかわいいんだけどね…」ウトウト

希「かわいいだけじゃなくて…かっこよくて…ヒーローみたいな…」ウトウト

希「何があっても、何が起きても…にこっちがいれば、大丈夫だって。なぜかそんな気にさせてくれる…」ウトウト

希「全部私に任せなさいって言うくせに、あんたならできるわよって背中を押してくれる…」ウトウト

希「矛盾してるみたいだけど、そんなことなくて…いつも心の底から応援してくれて…それが全部建前じゃないの。」ウトウト

希「間違ってることは間違ってるって教えてくれる…大事なことを、教えてくれる……本質的に、すごく…頭がいい人だから…」ウトウト


理事長「………」

希「次…えりち……」ウツラウツラ

希「えりちは……」ウツラウツラ

理事長「…無理しなくていいのよ。もう寝ましょう?きっといい夢がみれるから。」

希「………」ウツラウツラ

希「えりちはね……」フラッ

希「……っう」ドサ

理事長「ふふっ…ほら、もう……眠いでしょう?」

希「や…だ……寝たくないよ……」ポロ…

希「寝て…起きたら……嫌なことばっかだって、わかってるのに……」ポロポロ

希「寝たくないのに……」ポロポロ

希「えりちはね…えりちは……」ポロポロ

希「えりちは…………」ポロ…


希「えり………」



希「………」


理事長「ふふふ、おやすみ…」ナデナデ


---
--


絵里「…ありがとうございました。」ガチャ

絵里「………はぁ」

絵里(探偵の人…思ったより怪しくなかったし、親身に話を聞いてくれて良かったわ。)

絵里(それに今は、家出した娘の居場所を特定するためだったり…浮気調査のために、スマホが最後に電源がついていた地点を特定できるみたい。)

絵里(それがわかれば希に一気に近づける…できれば今すぐ特定してもらいたかった。けど…)

絵里「はぁ…お金……」

絵里(真姫に頼る…?きっと快く出してくれるだろうけど、でも、それって……)

絵里(今月の生活費を使えば頼めるけど…、亜里沙だっているし……)

絵里「…………」

ことり「……あれ、絵里ちゃん?こんな時間に、何してるの…?」

絵里「……っ!ことり…ことりこそ………あ、」

ことり「ことりはほら…お店がすぐそこだから。今バイト終わったところなの。」

絵里「あぁ、そうよね……」

ことり「ここって………」

絵里「ええと…少しだけ、相談してきたの。」

ことり「………」

ことり「駄目だよ絵里ちゃん…こんなとこ、見るからに怪しいのに…一人で行くなんて。次からはことりでもにこちゃんでも、誰でもいいから声かけてほしいな…」

絵里「ことり……そうよね、ごめんなさい。」

ことり「ううん…でも、何事もなくて良かった。何か聞いてみて、わかった?」

絵里「ええとね…きちんと依頼すれば、希のスマホの、最後に電源がついていた時の地点を調べることができるみたいで…」

ことり「それは…それができれば、本当に九州にいるのかどうかはっきりするね。だけど…うーん、」

ことり「少し怪しくないかな…警察でもないのに、そんなこと…」

絵里「…私も始めはそう思ってたんだけど、話を聞いたら結構しっかりしてて…警察と違って真剣に話を聞いてくれたのよね。」

ことり「ううん……あ、でも絵里ちゃんは、どうして今依頼してこなかったの?そういうのがあったら、すぐに依頼しそうだなぁって思ったんだけど…」

絵里「それは……その、恥ずかしいんだけど、手持ちにそんなお金が無くてね…思ったよりも高くて…」

ことり「………」

ことり「…それ、いくらくらい?」

絵里「ええと……これくらい…なんだけど…」

ことり「……ことり、それくらいなら今持ってるよ。本当に希ちゃんの居場所がわかるなら…うん、もう一度一緒にお話聞きに行こう?」

絵里「ええっ、悪いわよ…というかなんでそんな大金を…」

ことり「ふふっ、ことりはミナリンスキーだからねっ♪ほらほら、レッツゴー!」


ガチャッ

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--


理事長「よいしょっと…ふふ、これでいいかしら。思ったよりもはやく準備できたわね、今日は少し眠れそう……」

希「………」

理事長「…東條さんが起きるまであと5時間くらい、仕事はそんなに無いから…午後から行けばすみそうね。」

希「………」

理事長「…ふふっ、可愛い寝顔…ここの所泣き顔ばかり見てたけど、たまにはこういうのもないとね。μ'sの話をさせたのは正解だったわ、すごく穏やかな表情で話すんだもの。」

希「………」

理事長「……あの穏やかな表情を、今度はどれだけ歪めてくれるかしら。ふふ、ふふふ…」

希「………」

理事長「…ふふっ、楽しみだけど、東條さんが起きないことにはね…最近ここに篭ってばかりでことりも心配してるみたいだし…今日はもう帰るわね。」

希「………」

理事長「んん~っ、久しぶりにいい夢が見れそう。おやすみなさい、東條さん。」


ガチャン


希「………」


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--


絵里「ことり…ごめんなさい。」

ことり「もう…絵里ちゃん5回目だよ?謝らなくっていいの。それだけ絵里ちゃんが希ちゃんのために、必死だった…ってことなんだから。」

絵里「でも…ことりがいなかったら私、まんまと騙されていたかもしれないわ…」

絵里「…それにあの探偵、最後には"身内に何か悪いのがいるんじゃないの?"なんて…μ'sのみんながそんなこと、するわけないじゃない…!」

ことり「あはは…でも結果的に騙されずにすんだんだから!ね?それに探偵さんの話、結構タメになったし…」

ことり「…あとあと、それで思い出したこともあるの!少しファミレスでも寄っていかない?お腹も空いちゃったし…」

絵里「…そうね、亜里沙はもう先に食べてるみたいだし、どこか寄って行きましょうか。」

ことり「うん!あっ、ことり、あそこのファミレスのチーズケーキ食べてみたかったの、行こ行こ♪」

絵里「ふふっ、ことりは本当にチーズケーキが好きね…じゃあそこに入りましょうか。」

ことり「やったぁ~!」


カランコロン

イラッシャイマセ- ニメイサマデスネ コチラヘドウゾ


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ことり「ふわぁ~美味しかった♪」

絵里「ふふ、それなら良かった…」

絵里「…それで、思い出したことって?」

ことり「あっそうそう…あのね、多分無理なんだけど…もしかしたらって思って。希ちゃんってiPhoneだったよね?」

絵里「ええ…そうだけど。それがどうかした?」

ことり「…今調べてみてもそうなんだけど、たとえ探偵さんでも、警察を通さずに誰かの携帯の位置を、GPSとかを使って調べることはできないの。」

絵里「…やっぱりそうなのね。危なかったわ……」

ことり「…だけどね、例外的に、自分が無くしたスマホの位置を、他のスマホを使って調べることはできる。」

ことり「…ほら、このアプリを使うと、最後に電源がついてた位置を探すことができるの。」

絵里「iPhoneを探す…あぁ、なんだか知ってるわ、それ。亜里沙が自分のを無くした時に、私ので探していたような…」

ことり「そうそう。それでね、本来このアプリを使うには、IDとパスワードが必要で…だから本人じゃなきゃ使えないんだけどね。」

ことり「…でももしかして、絵里ちゃんなら…希ちゃんと絵里ちゃんの仲なら、知ってるんじゃないかって思って。IDは基本的にメールアドレスだから、私達でもわかるし。」

ことり「だからあとはパスワードだけ…なんだけど…」

絵里「…それがわかれば希のスマホの位置がわかるのね?ちょっと待って…考えてみる。」

ことり「うん…ごめんね、こんな方法しかわからなくて……あっだけど、もしも希ちゃんが普通に九州にいて…普通に生活してたなら、後で一緒に謝ろうね。」

絵里「ええ、もちろん……少し思い当たるのがあるわ、それ、借りてもいい?」

ことり「うん…当たるといいんだけど……」

絵里「……」スッスッ…

絵里「ううん………あっ、」

絵里「……」スッスッ…

絵里「………!、ねえ、ことり、これでいいの…?」

ことり「………!!すごい、当たってるよ、絵里ちゃん…!これで位置情報、検索できるよっ!どうしてわかったの…?」

絵里「希のパスワードって、ほとんどなんでもspiritualなのよ…だけどこれ、英語と数字両方みたいだから…初めはわからなかったんだけど」

絵里「希のスマホのパスワードロックがね、0630だから…それをつけてみたの。そしたら…ね?」

ことり「ふええ…流石絵里ちゃん……でも、どうして0630?」

絵里「0630は…その、μ'sが9人になった日なのよ、穂乃果が正式なμ's決済日だね!って言ってから、希、気に入っちゃったみたいで…」

ことり「…ふふっ、希ちゃんらしいね……」

ことり「絵里ちゃんが入って、希ちゃんが入って。初め希ちゃんが入ってくれるなんて思わなかったから、びっくりしたけど…でも、すっごく嬉しかったなぁ。」

ことり「ふふっ、懐かしい…もうあれから、4ヶ月も経つんだね…ううん、4ヶ月しか経ってないんだ。あっという間だな…」

絵里「……ほんとにね。あっという間よ…」

絵里「希……」

ことり「…あっ、ごめんね、感慨に浸っちゃって……よし、それでは検索してみます!多分九州って、出ると思うけど……」スッ

絵里「………」

ことり「………」

ことり「……っ!でた、ここって……」

絵里「…ここ、秋葉原じゃない………!」

ことり「………」

絵里「どういうこと……ことり、もっとよれる?詳しい位置が知りたいわ。」

ことり「う、うん……」

ことり「………」スッスッ…

絵里「………」

絵里「………ここ、音ノ木坂?」

ことり「……みたい、だね…これ以上はよれないや。どういうことだろう…希ちゃんスマホ、学校に忘れていったとか…?」

絵里「いや、そんなはずないわ…ここに書いてある、最後に電源がついていた日付と時間、私に最後にLINEが送られてきた時間と一致するの…」

絵里「………誰かが音ノ木で、希のスマホを使って……希に成りすましてLINEを送ってる?初めの学校への電話だけ本人にさせて…その後は………っ」

ことり「そんな!それってつまりどういうこと?誰がそんなこと……なんの目的で……っ」

絵里「わからないわよ!わかるのは誰かが希に成りすましてLINEをしているということと…希が消えたってことだけ……」

絵里「………っ」


ことり「絵里ちゃん……」

絵里「……!ごめんなさい、ちょっとカッとなってしまって……」

ことり「ううん…当たり前だよ。」

絵里「…落ち着いて考えたら、希が学院に隠れていてLINEを送ってる…とか、そういう見方もできるのよね……そんなことをする意味はわからないけど。だけど…」

ことり「…うん、そんなことするメリット、何もないよ……警察に行った方がいいと思う。私達がやったことは…下手したらかなり怒られちゃうかもしれないけど。」

絵里「…そうよね、私、帰り道に警察署があるから…もう一度行ってみる。ことりは帰り道逆方向よね?今日はもう遅いから…」

ことり「うん、ごめんね…ありがとう。あ、あと今の話…μ'sのみんなには……」

絵里「…しないほうがいいかもしれないわね。何か希にしている人が学院にいるかもしれない以上、みんなを危険な目には合わせたくない…」

ことり「…そうだよね、じゃあ二人だけの秘密ってことで……」

絵里「ええ…ごめんね、ことり…こんな遅くまで、色々巻き込むようなことしてしまって…」

ことり「ううん、μ'sのメンバーだもん…友達だもん、私だって希ちゃんのこと、大好きだから…力になれたら嬉しいよ、それに早く解決したい…私も希ちゃんに、会いたいから。」

絵里「ことり……」ジワ…

絵里「……」ゴシゴシ

絵里「……ありがとう。」

ことり「……ふふ、お礼なんて…いいんだよ。」

ことり「帰り道、気をつけてね?」

絵里「ことりもね?それじゃあ…」

ことり「うんっ、また明日ね、絵里ちゃん。」



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---
--

ガチャ


ことり「ただいまぁ…」


ことり「……!お母さん、今日はこっちにいるんだ……」

ことり「………」

ことり「……あ、また薬のカラ、散らかしっぱなし………」


ことり(睡眠薬…増えてる)

ことり(眠れないのかな……)


ことり「はぁ、あれ……ゴミ袋、ぱんぱん……」

ことり「………?!」

ことり「………っ」ガサガサ

ことり「…………!」

ことり「これって……音ノ木坂の制服……っ?」

ことり「どうして……」

ことり「…っ?!」

ことり「これ……3年生のリボン………」

ことり(どういうこと…なんで3年生のリボンが……)

ことり(3年生……希ちゃん……?)

ことり(…偶然、だよね?お母さん、理事長だし……)


ことり(………)


『…今日もあの倉庫に行くの?気持ち悪いからやめなよ、もう……』

『ふふっ、私にとっては大好きなモノに囲まれた、パラダイスなのよ…ことりにとってのマカロンみたいにね。』

『ふええ~…きもちわるいよー』

『ことりにはまだ早いのよ、きっと。ふふっ、最近とっても魅力的な生き物が手に入ってね…だから家になかなか戻ってこないかもしれないけど、心配しないで?』

『心配するよぉ、お母さん、夢中になるとちっとも寝ないし…もう、ちゃんと休んでね?』

『わかったわかった、気をつけるわ…ふふっ。』


ことり「………」


『…あれ、お母さん、これ、焼肉おにぎり?珍しいね、こんながっつりしたもの…』

『……っ、ああ、最近ロクにもの食べてないから…たまにはね、いいなと思って。』

『ふふっ、そっか…そうだよ、お母さん痩せすぎなんだから、もうちょっとちゃんと食べなきゃダメだよ?』

『はいはい…ふふっ。』


ことり「………っ」

ことり「違う…よね、違うよね、そんなはず……」

ことり「そんなはず…ないよね。あるわけないよ…あはは。」

『身内に何か悪いのがいるんじゃないの?』

ことり「………っ」

ことり「違う…違う……違うもんっ、お母さんはそんな…そんな変なこと、しないもん……」

ことり「あはは…それになんで、お母さんが希ちゃんを、なんて…そんなの、あるわけないよ、おかしいもん。」

ことり「……ことり、きっと疲れてるんだよね、今日たくさん働いたもん…そうだよね。」

ことり「はやく寝なくちゃ……お母さんの薬、借りちゃおうかな、あはは…」

ことり「…あはは…………」


ことり(普通に考えたら、そんなことあるわけないよね……?)

ことり(…そうだよね、お母さん……)

ことり(………)

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--

希「ん………んん……」パチ

希「…………」




希「なに……これ………」


希(また中に何か入って、ていそうたい…?つけられてる)

希(…そういうの、飽きたんやなかったの……?)


希「…脚…と……腕も、痛い…」ガチャ…

希「………ぐ……」ガチャガチャ


希(天井から降りてる鎖に、手錠……)

希「…ピンと張りすぎやろ……腕曲げられないやん…」

希(身体中に貼られた白いパッド…みたいなやつ、これ、AEDとかについてる、電極パッド…?)


希「あはは……」

希「………」

希「……なんなんよ、ほんと、もう……」ジワ…


希(確認できるのは……手の甲、と、二の腕、頬、胸、お腹、太もも、ふくらはぎ…?)

希(背中にも…たぶん)


希「理事長……どこ行ったんやろ……」

希(……理事長が来る前に逃げれなかったら、昨日よりもっと痛いことに……)


希「……」ゾッ

希(逃げ…れなかったら……)

希「………っ」

希「……だ、れか……」


希「誰か助けてください!!!誰か!!!!」

希「ここ、都内でしょ?!誰かしらいるでしょ!!!」

希「誰かー!!!誰か!!!助けてください!!!!けほっ」


希「……けほっ、コホっ…誰か…………」

希「けほっ、けほっ……誰か!!!いるでしょ!!!助けてください!!!助けて!!!!」

希「ことりちゃん!!!近くにいるんやないっ?!ことりちゃーん!!!!助けて!!!」

希「えりち!!えりちなら探してくれてるでしょ、きっと…きっと……っ、ねえ、うちここにいるよ!!!」

希「お父さんっ……お父さん!!ねえ、お願い助けて!!!お父さん……っ」

希「穂乃果ちゃん!!海未ちゃん!!!」

希「真姫ちゃん!!凛ちゃん!!花陽ちゃん……っ!ねえ、うち、ここにいるよ!!」

希「にこっち………!」

希「………」




希「誰か………」

希「………っ」ジワ…


希「誰か……助けてよ………」ポロポロ

希「……っ、ぐす……誰かぁ………」ポロポロ

希「やだ……痛いのはやだ………」ポロポロ

希「怖い…よ…………」ポロポロ



ガチャ


理事長「…ふふっ、ごめんね?ここ、地下だから……叫んだところで、地上にはほとんど聞こえないわよ。」

希「……っ」ポロポロ

理事長「おはよう、東條さん。」

希「理事長……ねえ、もうやめ……」ポロポロ

理事長「おはよう。」

希「……っ」


希「…………」ポロ…

希「おは、よ……」ポロポロ


理事長「…ふふふ、ねえ、怖い?怖いわよね、ふふ……かわいい。」ペロッ

希「……っ」ポロポロ

理事長「……ん、しょっぱいけど…おいしいわ。ふふ、舐めても舐めても出てくるわね……頬の電極パッドが濡れちゃうじゃない。火花が散るからやめた方がいいわよ?」

希「火、花………」ポロポロ


理事長「…じゃあお話はおしまいね?今からルール説明をするから。ちゃんと聞くのよ?」

希「やっ…!嫌や!ねえお願い、お願いやから!!ほんとに嫌なの、やだ!やだぁ!!!」ガチャッガチャッ

理事長「ふふふ…暴れても意味ないわよ?わかるでしょ、東條さんなら…」

希「わからない!!わからないよ、そんなの…暴れたら手錠が外れるかもしれない、パッドが壊れるかもしれない…時間稼ぎをしたら誰か助けに来てくれるかもしれない!」

希「諦めたら今すぐ痛い目にあうんやろ!何かしたら変わるかもしれないじゃないっ!!」

理事長「ねえ、喋り方混ざってる……じゃあいいわよ、暴れても。好きなだけ暴れて?時間はたくさんあるから。」


希「………っ」ガチャ…

希「……っ!……っ!」ガチャッガチャンッ

希「………っ!……!」ガチャンッ…ガチャ…

希「…っ!……っ!……!」ガチャガチャッガチャ

希「……っは…!……っ…!」ガチャ…ガチャ…


理事長「…ふふ、外れそう?」


希「………っ!………!」ガチャ…ガチャ

理事長「…多分ねえ、残念だけど手錠は外れないわ。」

希「……っ……っ!」ガチャ…ガチャ…

理事長「それに、パッドは壊れても替えがたくさんあるの。」

希「………っ……っ!」ガチャ…ッ

理事長「あとねえ、助けだけど…」


理事長「…東條さんのお父さん、亡くなったらしいわよ?」


希「…は………?」ガチャンッ

理事長「……戦場での撮影だもの、危険は付き物だし…東條さんも、それくらい覚悟してたでしょう?」

希「嘘、言わないで………」ガチャ…

理事長「…残念だけど事実よ。私だって流石にそんな嘘つかないわ。」

希「そんなの信じられるわけ………っ」

理事長「まぁ、信じられないでしょうね…でも、ねえ。」

理事長「…どうしてお父さんを戦地になんて送り出したりしたの?もしかして東條さん、止めなかったの?」

理事長「…ふふ、それとも東條さんが行かせようとしたのかしら?娘を一人置き去りにして、危険なところに自分から行く父親なんて、いないものね…」

理事長「ねえ……」


理事長「お父さんが亡くなったのは、東條さんのせいよ。」


希「………っ」

理事長「危険な戦地に送り出して…ふふ、東條さんが止めてれば、お父さんは死なずにすんだのに。」

希「やめて………」

理事長「ねえ…どうするの?東條さん。お父さんに謝らなきゃいけないわね。ね、東條さん?」

希「……やめてよ…………」

理事長「あははっ、もういないんだから謝りようがないか……でも、ほら、東條さんのせいだから。謝れないなら、どうしましょうねえ…」

理事長「ふふ、東條さんのせいだから。お父さんが亡くなったのは、東條さんのせいだから。」


希「やめてっていってるでしょ?!!」ガチャンッ


希「なんなの……なんでそんなこと言うん?!」

希「お父さん、今までやりたいことずっと我慢してきたんだよ……やっとそれができるようになったんだよ?!」

希「送り出すに決まってる……叶えてあげたいと思うに決まってる、ずっと近くで見てきたんだから!!!」

希「お父さんは死んだりしない!!!変な嘘言って…心まで追い詰めようってことなんでしょ?!」

理事長「………」

理事長「…そう、信じないのね。これ、昨日の新聞だけど……見たい?まぁ見たくないと言っても見せるんだけど……」


チラッ


理事長「ふふ…小さい記事だけど。読める?読んであげましょうか?」

希「……っ嘘…でしょ……」

希「嘘だよ……そんなの………こんな嘘の記事まで作って……」

理事長「嘘じゃないわよ…全く、疑心暗鬼もすぎるとよくないわよ?じゃあほらこっち、ネットでもほら…」チラッ

希「………っ」ジワ…

理事長「ふふ……ね?こんな所にいるときに、運がなかったわね。」

希「うそ………」ポロッ

理事長「嘘じゃないわ。」

希「嘘!!!嘘!!」ガチャンッガチャンッ

希「なんなん!!ほんとに…っ!なんなんよ……っ」ガチャンッガチャンッ

希「お父さんが!!死ぬわけないでしょ!!!」ガチャンッガチャッ

希「嘘…つかないでよっ……!」ポロポロ

理事長「はぁ……なんで信じてくれないのかしら。説明も聞いてくれないし、標準語話すし、一回罰ね?」

希「罰……っ?」ガチャ…

理事長「ふふ……そう、これは罰よ?はーいカチッ」カチッ


ヴ…


希「………っぁ」


ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ


希「ぁぁぁああああ"っ?!あぁああ゙ぁあっっ」ガクガク

希「やめ"っどめで!!!!ぁぁあぁあああ゙あ゙っっ」ガクガクガク


理事長「ふふっ……」


カチッ

希「あ……ああ…………かはっ………」ガクガク


理事長「ふふふ…痛かった?まだたった9mAよ?」コツコツ


希「…あ………あ………」ガクガク

理事長「…ねえ、」クイッ

理事長「……東條さんのお父さんはね、亡くなったの。死んだのよ、どこかの誰かに銃で蜂の巣にされてね?」

理事長「…それでね、それは東條さんのせいなのよ?」

希「そ、んな………」ガクガク

カチッ

希「ぁ"ぁあぁああ"っ」ガクガク

希「ゃ……あ"っ…あぁ"ああ"っ」ガクガク

希「痛い!!痛いい"だい"いだいどめで!!!どめでぇっ!!!」ガクガク

カチッ

希「ぁ……ぁ……けはっ……かはっ……」ガクガク

理事長「……ねえ、」


理事長「東條さんのせいなの。罪から逃げる気?貴女、そんな人だったの?」


希「あ……あぁ………」ガクガク



理事長「東條さんの、せいなの。」



希「ぁ…………」

希「ぁ……ぁ…………」

希「…っ……」ポロッ

希「おと……さん……ほんとに………?」ポロポロ

希「ぁ……あ………っ」ポロポロ

希「わた……わたしの、せいで…………?」ポロポロ

希「わたしのせいで?!ぁあっ…ぁああっ……」ポロポロ

希「私が…そうしたから…だから………っ?」ポロポロ


希「ぁぁあああぁあああっ」ポロポロ


希「ごめ…なさっ……ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ……」ポロポロ

希「ごめんなさい…ごめんなさい……っ」ポロポロ

希「私が…私が間違って……だから……っ」ポロポロ

希「うううううう………」ポロポロ


理事長「…ふふ、謝っても意味がないのよ、だってお父さん、もう亡くなってるんだから。聞こえないんだから。」

希「だって…」ポロポロ

希「だって………」ポロポロ

希「…えぐっ…ぐすっ……うう……」ポロポロ

理事長「…ふふ、罪悪感がつらい?ねえ、罪悪感、私がとってあげましょうか?」

希「そん…なの……………」ポロポロ

理事長「自分で抱えなきゃいけないと思ってる?あのねぇ東條さん。罪悪感なんて抱えたところで罪は消えないのよ。」

希「……うっ……ぐす………ううう」ポロポロ

理事長「…どうしたら罪が消せるか教えてあげましょうか?」

希「…………ぐすっ…けほ……」ポロポロ

希「おし…えて………」ポロポロ


理事長「ふふ……あのね、お父さんは銃で蜂の巣にされたのよ…どれだけ怖かったか、どれだけ痛かったか……」

理事長「…それに比べたら、東條さんのこれくらい、全然軽いものなのよ?」

理事長「…お父さんをそんな目に合わせたんだから、東條さんはもっとつらい目にあわなきゃ、均衡がとれないわ。」

理事長「…わかる?私は東條さんの罪をね、軽くしてあげようとしてるのよ。」


希「そ…んな……そんなの………」


カチッ


希「っぁぁあぁあ"、ああああ"あ"っ」ガクガク

希「けほっかはっ…ぁあぁあ"っぁあ"」ガクガク


カチッ


希「あ…ぁぁ……けほっ…けほっ……」ガクガク

希「………」ガクガク



希「………あ」ガクガク


希「あは……あは…は……」ガクガク

希「そっか……あはは…あは、はは……」ガクガク


理事長「……?東條さん?」


希「あはははははっ………」ポロポロ

希「お父さん…これよりもっと痛かったんだ………」ポロポロ

希「もっと…ずっと……私のせいで。」ポロポロ

希「私のせいだから…これは罰なんだ……」ポロポロ

希「神様が怒ってるんだ……私が勝手なことばっかするから……理事長までおかしくなって、ことりちゃんにもきっと迷惑かかるのに」ポロポロ


理事長「………」


希「ごめんね、私のせいで……理事長にも、たくさん迷惑かけて」ポロポロ

希「私が全部悪いんだよね?」ポロポロ

希「そう…全部私が悪いんだ。」ポロポロ


希「私が…うちが…?悪い…から……」ポロポロ

希「罰を受けなきゃ、均衡がとれないんだよね?」ポロポロ

希「当たり前だよ、そうだよ…あはは……」ポロポロ

希「あは…あはは…………はは……」ポロポロ


理事長「………っ」



パチンッ



希「痛っ………」

理事長「…ねえ、変な風に狂わないでくれる?そういうの面白くないの。狂うことで楽になろうなんて、ずるいんじゃない?」

理事長「私はね、最後まで抵抗して、そんなわけないやんって反抗して、痛みに悶える東條さんが見たいのよ。」

理事長「痛みを受け入れるとこなんて特に見たくないの。 」


理事長「お父さんが死んだ?そんなの嘘に決まってるじゃない。あの記事?手作りよ。ネット?加工よ。」

理事長「そんなこともわからないなんて、馬鹿なのかしら。がっかりよ。」


希「……ぁ………え………」ガタガタ


理事長「…ふふっ、目が覚めた?別に何も東條さんのせいなんかじゃないわ。私のせいよ。私のこと、憎んでくれて構わない。」

理事長「これからもっと痛いことするわね?理不尽に痛いことばっかり東條さんに押し付ける。東條さんはそこから逃れられない。助けも来ない。狂ってもだめ。」

理事長「ふふ…きっとすごくつらいわ。でもそういうのってすごくゾクゾクするじゃない?たくさん泣いていいし、たくさん反抗していいわよ?罰は与えるけどね。」


希「ぁ……あ………っ」ガタガタ


理事長「ふふふ……じゃあルール説明といきましょうか。」


希「ぁ…やだ……やだ……やだぁ………」ポロポロ

理事長「…まず、東條さんの中のバイブをオンにします。」カチッ

希「んんっ……///ふ、あ………っ///」ビクビク


理事長「気持ちいい?でもそれ、束の間の快楽だから。」

希「ぁ……っ///んっ……っ///」ビクビク

希「ぁ……いく………いっちゃ……///」ビクビク

理事長「ふふ…イっていいわよ?」

希「……ぁあああっ////」ビクンビクン


カチッ


希「……っぁ?!」

希「ぁあ"ぁあっ!!!!あぁああああ"ぁあ"っ」ガクガク

希「い"だい"っ!!けほっかはっ…あがっ…ぁぁあ"っぁああ"っっ」ガクガク

希「どめ"で!!!どめでえっ……がっ、げほっ……ぁあぁあ"!!!」ガクガク

希「ぁあ"あぁあ"っ」ガクガク


カチッ


希「あ……あぁ………けはっ、ごほっ……」ガクガク

希「……あ………んっ//う………」ガクガク


理事長「…ふふ、早くきちんと立った方がいいわよ?それとも脚が痛くて立てないかしら。」


希「ぁ……あ………かはっ///」ヨタヨタ

理事長「……今ので大体わかったでしょう?」

理事長「別にイくのはいいのよ、いくらでも。でもそれで足の力が抜けるのはだめ…もちろん気を失うのもね。上の手錠が下に引っ張られると、10秒間電気が流れるわ。」

希「はっ…///はっ……///ぁあぁぁっ////」ビクンビクン

理事長「10秒間流れた後は、30秒立て直す時間が与えられる…その間にきちんと立ち直して?」


カチッ


希「ぁあ"ぁあ"!!!な"ん"で!!!あがっ…うぁああ"ぁああっ」ガクガク

希「だっだでしょ!!!ちゃんど我慢しだでしょ、ぁぁあ"あぁ"っ」ガクガク

希「あ、ぁああ"ぁ"あ"あ"」ガクガク


カチッ


希「あ…あ……かふっ……はっ……はぁ………は………」ガクガク

理事長「…ふふ、ただ立つだけじゃだめよ。手錠ピンと張らせてるんだから…しっかり立って、手を浮かさないと。」

希「あ………あ…………」ヨタヨタ

理事長「あはは…それじゃあ間に合わないわよ?ほら、もうすぐ30秒……」

カチッ


希「あぁ"ああ"っ!!!」ガクガク

希「や"べで!!!い"っがいどめ"でぇ!!!!」ガクカク

希「痛い"の"!!!!いだ……ぁあぁああ"っ?!」ガクガク

希「あぁ"あぁあ"っっ」ガクガク


カチッ/カチッ


希「あ……あが………げほっ………あ……」ガクガク

理事長「…ふふっ、一回止めてあげたわよ。」


希「あ………あ……おねが……い…」ガクガク

希「も、やめて………」ポロポロ

希「お願い……お願いします……なんでもするから………」ポロポロ

希「脚、怪我…してるのに、立てないよ……」ポロポロ


理事長「脚の怪我は知らないわよ、私は噛み付いてなんて頼んでないし…自業自得でしょう?ふふっ。」

理事長「…それから言葉遣い。ちゃんとはじめに言った通りにしてくれる?」


希「ぁ……あ………」ポロポロ

希「お願い…や…から…」ポロポロ

希「言うこと、なんでもきくから…だから……」ポロポロ

理事長「…ふふっ、言うことなんでも聞いてくれるなら、電気を流しても許してくれるでしょう?」

理事長「…本当はなんでもきくつもりなんて、ないくせに。」


希「痛いこと以外なら、なんでもする…から……」ポロポロ

理事長「ふーんじゃあ、ここに絢瀬さん連れてくるから、殺してくれる?」

希「そ…れは………」ポロポロ

理事長「ふふ、できないでしょう?」

希「………」ポロポロ

理事長「嘘つき。」

希「………」ポロポロ


理事長「ふふふ…じゃあ、再開しましょうか?」

希「……っ、…殺して。」ポロポロ

理事長「は……?」


希「今すぐ殺して!!!もう嫌、こんな痛い思いするくらいなら、死んだほうがいい!!」ポロポロ

希「殺して!!殺してよ!!!」ポロポロ


カチッ


希「あ"ぁあ"ぁあ"あ"あ"あ"っ!!」ガクガク

希「あ"ぐ!!あ、あが…が、ぐ……ぁ、ぁあ"あ"あ"」ガクガクガク


カチッ


希「あ………あ…………っ…」ガクガク

希「……げほっ…けほっ………」ガクガク

理事長「ふふ…今のは12mA。5mAから人は電流を苦痛に感じるって言われているの。」

理事長「10mAから体が思うように動かなくなる、口も回らなくなる。耐えられないくらいビリビリ感じる…らしいわ。20mAからは筋肉が収縮、呼吸困難…あまり長時間流すと危険みたい。」

理事長「50mAからは本当に命に関わる…らしいから、ふふ。本当のとこはどうだかわからないけど、今浴びてみた東條さんならわかるんじゃない?」

理事長「でもねぇ、ねえ、死にたいの?ふふ…残念だけど、この機械、50mAも流せないのよ。」

理事長「時間もそんなに流すつもりはないし…うふふ、死ぬってことはまずないわね。良かったじゃない、長生きしましょう?」


希「や…嫌…………」ガタガタ


理事長「…大体、死ぬなんて許さないわよ。死んで楽になろうなんて、最低で最悪。絶対そんなこと、させないし…許さないから。」

希「………」


希「………っ」ガブッ

理事長「…っ、舌噛んだって……ふふ、死ねないわよ?」


カチッ


ヴヴヴヴヴヴヴ

希「………っ……っ……!……」ガクガク

理事長「…頑固ね、じゃあ15mAで。」


カチッ

希「…ゔっ、がはっ……げほっげほっ……ぁ"…が………ぁ"ゔあ"ぁ"あ"あ"っ!!」ガクガク


理事長「あらら…血が飛び散るじゃない……ちょっとまっててね、開口器…どこやったかしら。」ガサガサ


希「あ"…が………がはっ………あ"……あ"ぁ"………」ガクガク

希「ぁ"あ"ぁ"………」ポロポロ


理事長「あったあった……ふふ、泣かないで?はい、か………っい"っ!!!」バチッ

理事長「………っ……」

理事長「……………うふふ、ほんとに痛いのね……間違えちゃったわ。一回止めないとね、」


カチッ


希「けほ……ぁ……かは…っ……は……」ポロポロ

理事長「ふふ…少しは頭冷えたかしら?いや、電気って熱いか…まぁいいわ。はーいカチャっ」カチャ

希「あ……うあ…………」ポロポロ

理事長「…ふふふ、似合ってる。これで自殺なんてできないわよ?それじゃあ再開しましょうか。」

希「あ……あ………」ブンブン

理事長「ふふ…再開、するわよ?いろんな大きさで流して、反応を記録でもしましょうか…なかなかいい実験になりそうじゃない?」

希「………」ポロポロ

理事長「ね?東條さん。」

希「………」ポロポロ

理事長「…ふふ、じゃあ再開スタート。スイッチ…オン♪」



カチッ



----
---
--


絵里「希………」ポロ…

絵里(今日で…希が消えてから、12日……)

絵里(12日も…どこにいるのか、わからない。)

絵里(こんな……こんなの………)


ガチャ


ことり「……絵里、ちゃん。」


絵里「ことり……!」

絵里「っ!………」ゴシゴシ

絵里「ごめんなさい……呼び出したりして。」

ことり「ううん、いいの…みんなは?」

絵里「一年生とにこには先に帰ってもらったわ。ほら、音ノ木に何か悪い人がいるかもしれないわけだし…みんなにまで何かあったら…ね…」

絵里「…みんな初めは探すよって言ってくれたけど、なんとなくわかってくれたみたい。」

ことり「そっ…か……」

絵里「海未と穂乃果は、提出物がどうとかで先生のところに行ってて…そんなに長い話はしないから、ことりは合流して一緒に帰ったほうがいいわ。危ないし。」

ことり「……ありがとう。」

絵里「ううん…こんなことしかできなくて、ごめんなさい。顔色悪いけど…大丈夫?」

ことり「…っ、大丈夫だよ、その……」

ことり「希ちゃんが…心配で……」

絵里「ことり……」


ことり「…ごめんね、ことりは大丈夫だから…その、絵里ちゃんこそ、大丈夫…?絵里ちゃんはここのところずっと、顔色悪いから……」

絵里「……、大丈夫よ………」

ことり「そ…そっか。…ならいいの。」

ことり「…それで、お話ってなぁに?」

絵里「…っ、それが………」

絵里「警察は、だめだったの……」

ことり「えっ……」

絵里「警察はね、事件性がないと、動いてくれないんですって…」

ことり「事件性って…これ、もう十分事件性が……!」

絵里「そうよね。そう言ってるんだけど…わかってくれないのよ…」ジワ…

絵里「…今日でね、希がいなくなってから12日経つの……あと2日で二週間。」ポロッ

絵里「普通に考えたら、おかしいじゃない……なのに担任すら、時々電話きてるからって…でも担任が直接電話に出たことはないって言うのよ?」ポロポロ

絵里「おかしいじゃない…こんなの絶対……」ポロポロ

絵里「希のお父様はどうやっても連絡がとれないし……」ポロポロ

絵里「こんなの……、こんなの………!」ポロポロ


ことり「絵里ちゃん……」


絵里「……っ!、ごめんなさい、こんな……」ポロポロ


ことり「………ううん、当たり前だよ……」

ことり「絵里ちゃんにとって希ちゃんは…やっぱりすごく、大切なんだね。」

絵里「大切よ……」ポロポロ

絵里「ううん、大切って言葉じゃ、片付けられないくらい……大好きなの。」ポロポロ


絵里「…希はね、鋭いナイフみたいに尖ってた私に、声をかけてくれて…友達になってくれて……」ポロポロ

絵里「容姿の物珍しさにひかれて…上辺だけで声をかけてくる人とは明らかに違ってて……」ポロポロ

絵里「はじめて本当の私と、友達になってくれたの…」ポロポロ

絵里「μ'sだって…こんな素敵な居場所にいられるのは、希がいたから。」ポロポロ

絵里「いつだって希は、本当の私を見つけてくれるのに、私は希のこと、ちっとも見つけられない…」ポロポロ

絵里「私なんて……私、なんて………」ポロポロ


ことり「絵里ちゃん………」


ギュッ…


絵里「ことり……?」

ことり「………ごめん、ね……」ジワ…

絵里「…っ、ことりが謝ることじゃないわ……」

絵里「……でも、その………ありがとう。」


ことり「…………ううん。」ポロッ


----
---
--

穂乃果「ねー海未ちゃん、ことりちゃん。」

海未「なんですか?」

穂乃果「希ちゃん…探さなくて、いいのかな……」


ことり「………」

海未「……私も正直、とても心配なんですが………」

海未「……でも、絵里がああ言うということは…何か考えがあるのでしょう。」

ことり「……そう、だね………」

穂乃果「うーん……そっか………」

穂乃果「絵里ちゃんなら…大丈夫だよね、あんなに希ちゃんのこと、大好きなんだもん…きっと見つかるよね。」

海未「ええ……」

ことり「………」


海未「ことりは大丈夫ですか…?」

ことり「えっ…?」

海未「いえ、顔色が悪そうに見えたので……」

ことり「っ、ううん、大丈夫…、希ちゃんのこと…心配で。」

穂乃果「そうだよね!じゃあやっぱりここは3人で…!」

海未「…ダメです。絵里があれだけ強く言うということは…きっと何かあるんです。少し待ちましょう。」

穂乃果「ぶー……」


ことり「……ねえ、穂乃果ちゃん、海未ちゃん。」

海未「…なんですか?」

ことり「………」

穂乃果「ことりちゃん?」


ことり「もし…もし、ね。家族の誰かが悪いこと…犯罪とかに手を染めてたとしたら、味方する?それとも警察につきだす?」

海未「突然ですね……」

ことり「…ごめんね、大した意味はないの。」

海未「いえ…そうですね……やはり、警察に……」

ことり「…………そう…だよね。」

穂乃果「ええー穂乃果はわからない、雪穂がもしそういうことしてたらーってことだよね?」

ことり「う、うん……」

穂乃果「他の人なら警察に行くよ!でも、もしそれが雪穂だったら……」

穂乃果「理由とかによるかもしれないけど、雪穂に味方しちゃうかもしれないなぁ…」

ことり「穂乃果ちゃん……」

穂乃果「ふふっ、だって雪穂がいなくなっちゃったら、穂乃果生きてけないもんー!」

海未「全く…あなたと言う人は。」


海未「……でも、そうかもしれませんね。」

ことり「……?」

海未「…先ほどは警察に、と言いましたが」

海未「いざ本当に家族が犯罪に手を染めていた場合……理由によっては家族の味方をするかもしれません。」

海未「やはり、家族は大切ですから……」

ことり「そう、だよね……」


ことり「…じゃ、じゃあね、もしその家族が苦しめてる相手が、自分の友達だったら…どうする?」

穂乃果「雪穂がことりちゃんに色々するっていうこと?」

ことり「…まぁ、そういうこと…かな。」

穂乃果「うーん…それなら迷っちゃうなぁ。」

海未「難しいですね……」

穂乃果「雪穂は大切だけど…ことりちゃんに何かするのは、許せないよ……」

穂乃果「……でも、雪穂を警察に連れてくのは……」

海未「………」

ことり「あはは…ごめんね、難しいよね、こんな質問。」

海未「ことり……ご家族と何かあったのですか?」

ことり「ううん…なんでもないの。あっ、もうこんな時間…ごめんね、今日も少しシフト入ってて……」

海未「そう、ですか……」

ことり「……う、ん。ごめんね、だから今日はここで………!」

穂乃果「…うん!お仕事、頑張ってね。」

ことり「ありがとう、穂乃果ちゃん…それじゃっ!」

タッタッ…




海未「ことり!」


ことり「……?」

海未「あの…悩みがあるなら、いつでも相談してくださいね。」

海未「……待ってる、ので。」

ことり「海未ちゃん……」

穂乃果「あーっ、海未ちゃんずるーい!」

穂乃果「穂乃果もいつでも待ってるからね!なんでも相談してね!」

ことり「穂乃果ちゃん……」

ことり「……っ、ありがとう、二人とも!」

海未「ええ、…それではお仕事、頑張ってください。」

穂乃果「ファイトだよっ!」


ことり「………うん!」

タッタッタッタ…



海未「………」

穂乃果「…海未ちゃん?帰ろ?」

海未「え、ええ……」


海未(ことりがあんな質問をしたのは、はじめてです…)

海未(………)


海未(何でしょう…この、胸騒ぎは。)


----
---
--

ヴヴヴヴヴヴヴ…

希「あ"……が………」ガクガクガク

希「がはっ………ぁ……ぁ"…」ガクガクガクガク


カチッ


理事長「ほら…またあと30秒よ?早く立って。」


希「…ぁ………はぁっ……はぁっ……」ポロポロ

希「ぅあ……けほっ…げほっ……」ヨタヨタ

希「は……は………ぁっ///」ビクッ

理事長「…感じてる場合じゃないわよ?ほら、あと15秒。」


希「………う……ぅあっ…んんんっ///」トテッ

理事長「あらら…あと5秒よ?ほら、急いで」

希「ぁ……あ………」ポロポロ


カチッ


希「ぁ"あ"ぁ"っ……あ"ぁ"っ……」ガクガクガク

希「がはっ……は………ぁ"…か"…」ガクガクガクガク


カチッ


理事長「うーん……また反応鈍くなってきちゃったわね……一回切りましょうか…」


カチッ/カチッ


希「あ……ぁ…………」ガクガク

希「けはっ…ごほっ……は……は………」ポロポロ

理事長「…咳に血が混じってる。叫びすぎて喉、切れちゃった?」

希「は………は…………」ポロポロ


理事長「うーん……」

希「………」ポロ…

理事長「仕方ないわね…一度開口器外してあげるけど、また噛んだりしちゃだめよ?まぁ噛もうとしても、さっきと同じようにするから…いいけど。」カチャ

希「……けほっ…」

希「…は……は………」

理事長「……とったのに喋らないの?何か言うことは?」

希「………?」


希「……あ、り…がと………?」

理事長「違うわよ、もうやめて、とか、許して…とか、あるでしょう?」

希「………」

理事長「はぁ、つまらないわね。」

希「………ト…レ、い…………」

理事長「…声、小さすぎてよく聞こえないわ。」


希「……っ、ト、イレ…けほっ………」

希「げほっ…ごほっ……っうう……」

理事長「……はぁ。トイレね…さっき連れて行ったばかりじゃない。また行きたいの?」

希「………」コク…

理事長「……これ、取ったりつけたりわりと大変なのよね………」

希「おね…が………」

理事長「……まぁいいわ。汚されて綺麗にするのも面倒だしね。」カチャカチャ

希「あ……が、と………」

理事長「………はい、取れたわよ?」


希「………っ」ヨロヨロ…

理事長「…ふふ、脚、やっぱりまだ痛むの?」

理事長「………えいっ」ゲシッ

希「い"っ……」ドサッ


希「……っ、う………ぐ…」ポロ…

理事長「…はぁ。もう……もっと叫んでほしいのよ。」

理事長「東條さんがもうダメなら…他の子でも………っ?!」ドテンッ


ガシッ


希「……はっ………はっ……」ポロポロ

理事長「………何のつもりかしら?」

希「……ごめんね、もう無理なん…ほんとに。」ポロポロ

希「一緒に死のう?」ギュッ


理事長「…………っ、ぐ」

希「はっ……はっ…………ごめん…ごめんなさい……ごめんなさい……」ギュウウ…


理事長「……っく、う……ぅう!…っ!」ジタバタ


希「………暴れないで、すぐ終わる…から…」ギュウウ

理事長「……っ!ぐ……っ!」ジタバタ


希「あ…っ、く………暴れないでって、言ってるのに…!」ベシッ


理事長「うぐっ…けほっ……はぁっ…あぐっ…」

希「は……は……ごめん…ごめん…なさい…」ギュウウ

希「……大丈夫、うちもどうせすぐ死ぬから…ここには水もないし、すぐ………」ギュウウ

理事長「………っ!ぁあっ!!」ドンッ


ドサッ…


希「ゔっ……」


理事長「はぁっ……は……」ガシッ

理事長「ふふふふ………」

希「……っ」ゾクッ


理事長「……ねえ、こんなおばさん、自分で何とかできると思った…?」ギュッ

希「………うっ」

理事長「ふふふ…ねえそれ、もっと早く気づけばよかったわね…ふふ……」ギュウウ…

希「……ぁ………かは……っ……」

理事長「…もう遅いわよ……こんなおばさんでもね、ここまで衰弱してる東條さんに力で負けるほど、衰えてはいないの。」パッ

希「…っ、けほっ、けほっ…はっ……は…」ジワ…

理事長「罰ゲームしなきゃね……」

希「ぁ……や………やだ………」ポロポロ


理事長「東條さんが悪いのよ?でも…そうね、電気ももう飽きてきたから…ちょうど良かったわね、ね?」

希「……っ」ポロポロ

理事長「…また準備しなくちゃ…次のはそんなに時間かからないと思うけど。私、これから少し仕事もあるから、学院に行かなきゃいけないのよね…」

理事長「最近ことりが心配してるから家にも帰らなきゃいけないし…どうしようかしら。」

希「………」ポロポロ

理事長「…ねえ、だんまりなの?もっと嫌がったら?今までのでわかるでしょう…?段々痛かったり怖かったり、酷くなってくの。」

希「……っや…」ポロポロ

希「ごほっ…げほ………けほっ…」ポロポロ

希「は………は………」ポロポロ


理事長「……はぁ。喉が痛くても叫べるくらいつらくなるように、考えなくちゃね……」

希「……っ」ブンブン

希「や……めて……けほっ…けはっ……」ポロポロ

理事長「…ふふっ、その表情、いいわよ…?…じゃあ拘束して、開口器つけてくから。睡眠薬でもいいけど…眠るまで待つのも億劫だし。いいわね?」

希「………」ポロポロ


理事長「………ふふっ。」

理事長「…………次のはすごいわよ、私の全てだから……ふふふ。」

理事長「どんな反応するか…楽しみにしてるから。」


希「……っ、」ポロポロ


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---
--

絵里「はぁ……」


絵里(学院中探し回ってるのに、何も手がかりが見つからない……)

絵里(希のスマホはここで使われたんだから、何かしら手がかりがあってもおかしくないのに…)


絵里「最終下校時刻から、2時間…か……」


絵里(…流石に元生徒会長と言っても、先生に見つかったら怒られるわね……)

絵里(そろそろ帰らないと……って)


絵里「理事長…?」


理事長「……あっ、え……絢瀬さん?こんな時間に……」


絵里「あっ、ご…ごめんなさい。というか……」

絵里「その、頬と首…どうしたんですか?」


理事長「あ、ああ……少しぼうっとしてたら、自転車で転んでしまってね…ふふ。」

絵里「そうですか……それは、その…災難ですね。」

理事長「ええ、ふふ…この年で恥ずかしいわ。ところで絢瀬さんは、こんな時間に何をしているのかしら?」

絵里「あ、その…すみません、希のことで……」


理事長「………東條さんが、どうかした?」

絵里「……希のスマホの位置情報を調べたら、最後に電源がついていたのがこの学院だったんです。」

理事長「………っ」

絵里「これ…おかしいと思うんです。だから何か手がかりがあるかもしれないと思って、この学院を調べていて……」

理事長「そう……」

絵里「……っあ、あの…希からの電話、全部受けたのが理事長だって…担任が話してたんですけど。」

理事長「…っ」

絵里「その……希、どんな感じでしたか?少し…気になって。」

理事長「…そうね、別に……いつも通りだった、気がするけれど。」

理事長「ここ数日は連絡が来てないの。だから…うーん…わからないわ。」

絵里「…そう、ですか………」


理事長「…ごめんなさいね。私、仕事があるから…もういいかしら?」

絵里「…あっ、はい……すみません………」

理事長「…いいのよ。それより絢瀬さんは早く帰りなさい。最終下校時刻、すぎてるわよ?」

絵里「はい……わかりました……」

タッ…タッ…



理事長「………」

理事長「……っ」

理事長「もうこんな時間……」


理事長「早く仕事終わらせて、帰らないと……」


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---
--


ことり「………」


ことり(……お母さんの好きなものが、たくさん詰まった倉庫……)


ことり「何も…ない、よね……」ガチャ…

ことり「………?」ガチャ…ガチャガチャ


ことり(鍵がかかってる…って、当たり前か。)

ことり(小さい頃にここに入り込んで…怖い思いをしてから、ずっと近寄らなかったから…忘れてた。)


ことり「確か、家にスペアキーがあったような…」

ことり(怖い…海未ちゃん呼んで、ついてきてもらおう……かな……)


ことり「………」ピト…


ことり「……何も、聞こえない………」


ことり(………やっぱり、考えすぎだよね……)

ことり(あ、でも……この倉庫って、確か地下が……)


ことり「………」


理事長「ことり?」

ことり「ピィッ?!」ビクッ

理事長「……何をしてるの?」

ことり「い…いや、あの……あのねっ、久しぶりに、中を見てみたいなぁ、なんて……」

理事長「ことりがこの中を?やめておいた方がいいわよ?」

ことり「あ…あはは……でもほら、お母さんと一緒なら……」


理事長「やめておいた方がいいわよ?」


ことり「………っ」ゾクッ


ことり(……っ)

ことり(久しぶりに見た……お母さんの……)

ことり(………どこか猛禽類を思わせるような、そんな目………っ)


理事長「…ほら、中、ことりが苦手なグロテスクな感じの生き物たくさんいるし……毒がある生き物もいるから。ね?」

ことり「そ…そうだよ……ね……」

理事長「…まぁ別に、それでも見たければ、ことりなら構わないのだけど……」

ことり「う…ううん、やっぱりいいや…あはは……」

ことり「…ごめんね、変なお願いして……お母さん、今日もここで何かするの?」

理事長「……今日は家に帰ることにするわ。お腹も空いたし。」


ことり「……!そっか、よかった………」

理事長「ふふっ、最近あまりお話できないから、寂しくなっちゃった?」

ことり「も、もー…ことりもう高校二年生だよ?」

理事長「ことりはずーっと甘えん坊さんじゃない。」

ことり「それは……否定できないけどぉ…」

理事長「ふふっ…でしょう?」

ことり「もー!別にいいでしょーっ」

理事長「ふふっ…あははっ」


ことり(………)

ことり(…やっぱりお母さんは、お母さんだよね……)

ことり(ちょっと変わったところもあるけど…それはことりもだし、みんなもそう……)

ことり(希ちゃんを…なんて、考えすぎ…だよね、倉庫だって、見たければ見せてくれるって……)


ことり「……ねえお母さん?」

理事長「ふふっ、なぁに?」

ことり「あの…あのね、希ちゃんのこと……」

ことり「……何か、知ってたり……しないよね?」


理事長「………、どうしてそんなこと聞くのかしら?」


ことり「……っ」ゾクッ

ことり(また……っ)

ことり「い…いや……その…最近学校来てないから、心配で……」

ことり「お母さん…理事長だし、何か知らないかなって!」


理事長「あぁ…そういうこと……」

ことり(そういうこと……?)

ことり(そういうこと以外に、何かあるの…?)


ことり「……」ブンブン


ことり(考えすぎ、なんだよね……最近ずっと、色々考えてるから…癖になってきちゃったのかな)

理事長「……絢瀬さんも心配してるわよね。私も気にはなってるんだけど…理事長だからと言って、生徒一人一人の個人的な事情までは把握できないのよ…」

ことり「そ…そっか、そうだよね……」

理事長「ごめんね…ことりは、友達想いね。」

ことり「そんなこと……」

理事長「…ふふっ、そんなことあるわよ。お母さんの子供とは思えないくらい…優しくて、いい子。」

理事長「東條さんのこと、心配かもしれないけど…今日はこれから、お母さんが腕によりをかけてことりの好きなチーズケーキ、食後のデザートに作るから…」

理事長「元気出して…?」ギュッ

ことり(………)


ことり(…お母さんの手、あったかい。)

ことり(こんな優しいお母さんが、何か変なこと…希ちゃんに、するわけないよね。)

ことり(やっぱり…考えすぎなんだよね。)


理事長「…ふふっ、行きましょう?」

ことり「うん……!」


----
---
--

希「は………は………」ポロポロ


希(もう………無理…………)

希(………)

希(身体中…動かない……痛い……)


希「けほっ…げほ……」

希「…………は……は……」ポロポロ



希(はやく…楽になりたいよ……)

希(せめてはやく…楽に……)

希(お母さん……)




『希…いつもありがとう。』

希「………っ」ポロポロ

希(どうして…思い出しちゃうんだろ……)

希(………)


希(死ぬ前に……おかしくなる前に、もう一度だけ……)

希(もう一度だけ……えりちに会いたい……な。)




希「………」ポロッ


----
---
--

絵里「はぁ…はぁ……」


絵里(どうして…何もわからないの。)

絵里(駅前周辺も…希の家の周りも……どうして何も、手がかりが……)


絵里「………っ」


絵里(あ、あのスーパー…)

絵里(………)




アリガトウゴザイマシター


絵里(そこの公園で…食べましょうか。)


『お父さん!離さないでね?絶対離したら嫌だよ!』

『あははっ、わかってるよ。ほらまっすぐ前みて、こいでこいで!』


絵里(…こんな時間でも、まだ子供がいるのね。)


絵里「ふう……」ドサ…

絵里(…一度落ち着いて、状況を整理しましょう。)

絵里「………」ガサガサ


絵里(10月6日…この日初めて希が学校を休む……家には残り物のカレー…遠出するような様子はなし…)

絵里「……」モグ…

絵里(つまりいなくなったのは急に何かがあったということ……)

絵里(そして翌日7日…希からLINEがくる、理事長には学校当てに電話が来たらしい…)


絵里「………」モグ…モグ…


絵里(…その後も何回かLINEが来るも、どこか違和感……)

絵里(そして13日…木曜日、希がいなくなって丁度一週間ね…)

絵里(この日神田明神に連絡が来てないこと…お祖母様からの話で九州に親戚がいないことを知る…)


絵里「……」モグモグ


絵里(…翌日からの金土日の三連休…警察に伝えて色々考えてみるも、わからず……)

絵里(連休明けの月曜日、17日…昨日ね。μ'sのみんなに話して探すも、手がかり見つからず…)

絵里(その後探偵に騙されかけたところを、ことりに助けてもらって…)

絵里(そして希のスマホの位置情報から、最後に電源がついていたのが音ノ木だとわかる…)


絵里「………」モグ…


絵里(そこから考えられるのは…希のスマホが…音ノ木を出入りできる誰かに、勝手に使われて…希自体は……)

絵里(どこかに連れてかれたか……)

絵里(または……)


絵里(または、もういない……?)


絵里「けほっ…こほっ……そんなわけ……!」

絵里(あっ…そうよ、理事長が言ってたじゃない…何回か電話がきてるって…声が確認できたなら、希はまだ……)

絵里(希………)


絵里「希……どこにいるの………」ジワ…

絵里「落ち着いて考えてみても…私には……もう………」ポロ…


ガシャン!!!


絵里「……っ」ビクッ


『痛いー!!!」ワーン

『あはは、大丈夫かー』

『離さないって言ったじゃん!!なんで…なんでえっ……』ポロポロ

『ごめんごめん…あー膝、擦りむいちゃったな…』


絵里(自転車……)

絵里(そう言えば理事長、今日自転車で転んだって……)


絵里「………?」

絵里(…自転車で転んで、頬を擦りむくのはともかく…首をあんな風に包帯で巻くような傷、できるかしら……)

絵里(………)

絵里(……あれ)

絵里(そういえば……希の電話を受けたのって、理事長だけ…なのよね……?)


絵里(………っ?!)


絵里(…ちょっとこれ……なんか…不自然じゃ……)

絵里(……そういえば理事長って希が神田明神でバイトしてたの知らないわよね…なら希のスマホから神田明神に連絡がいってないのも……)

絵里(お祖母様は介護が必要だと聞いてるって、話もあまり信じてくれなかった……信じたく、なかったから?)


絵里(………)

絵里「………考えすぎ、かしら……」


絵里(普通に考えたら…考えすぎだし……)

絵里(そもそもことりのお母さんなのよね…)

絵里(希に何かして、メリットなんて…何も……)


絵里「はぁ…そうよね……」


絵里(ちょっと疑心暗鬼になりすぎかしら…)

絵里(………)


絵里「…帰りましょう。」ガサ…

絵里「あ…おにぎりのゴミ……捨ててかないと……」ガサガサ


『そのおにぎり、私は最近知ったんだけど…いつもクラスの子と接戦なの。』


絵里「………ぁ」


『理事長もはまってるみたいだし…今日買えたのは、ラッキーだったんだ。』


絵里「これ……理事長が………!」

絵里(希が大好きな、焼肉おにぎり……)

絵里(理事長がハマる…?このタイミングで……?)


絵里(………)

絵里(疑いすぎ…よね、わかってる。)

絵里(わかってる……けど)


絵里「………っ」ピッピッ…

絵里「…………」プルルル…


絵里「………」

絵里「出ない………」


絵里(ことり………)

絵里(家まで行ってみる…?)

絵里(…でも、あれだけことりは、助けてくれてるのに……)

絵里(ことりのお母さんを疑ってます!なんて……)

絵里(………)


絵里(明日ことりに、少しだけ理事長について聞いて…そこからは自分で、なんとかしましょうか……)

----
---
--

ことり「………」スー…スー…


理事長「…ふふ、よく眠ってる………」

理事長「……ごめんね、ことり。」

理事長「私…もしかしたら、もうすぐ………」


理事長「……ううん、なんでもないわ。」


ことり「………」スー…スー…

理事長「…朝までゆっくり、眠れるはずだから。」

理事長「ちょっとだけ、行ってくるわね?」



ガチャ



バタン


---
--



ガチャ


理事長「東條さん」


希「………」

理事長「……ねえ、東條さん…起きて?」ユサユサ


希「ん……うう……けほっ……」

理事長「ふふふ…準備、できたから。」

理事長「開口器…外してあげる。少しだけお喋り、しましょう?」カチャ

希「…………」

理事長「……ふふ、ねえ、おはよう?」


希「……おは、よ……?」


理事長「ふふふ、偉い偉い。まぁ今はまだ、おはようって時間ではないのだけど…」

理事長「…まぁいいわ。ねえ、準備出来たの。これね、東條さんを連れてくる前から、少しずつ作ってたのよ…日曜大工ね。」

希「………?」

理事長「ふふ…何に見える?」

希「わか…んな………」

理事長「それじゃあつまらないわ。何か答えて。」


希「………」

希「水…槽……?」

理事長「あぁ…なるほどね、確かに水槽にも見えるかも。大きな透明な箱だし、ガラス製だしね。」

理事長「…ふふっ、でも別に、水を入れるわけではないの。水槽みたいに上が開いてるわけでもないし…蓋付きでしょう?」

理事長「…ここにはね、東條さんを入れるのよ。」


希「……っ」

理事長「…それだけ?って思ってる?ふふ…もちろんそれだけではないわ。でもじゃあとりあえず、入りましょうか。」

希「……」ブンブン

理事長「ダメよ、入るの。拘束具は中に全部くっついてるから、今つけてるのは全部はずしてあげる……」カチャ…カチャ

希「………」

理事長「…ふふ、ここに来てから拘束が全部取れるのは初めてね。…でも逃げようとしちゃダメよ?そんな脚じゃ、すぐ捕まえちゃうから。」カチャ…カチャッ

希「………」


理事長「はい…とれた。じゃあほら、こっちに来て。」

希「……っ」ブンブン


理事長「き、て、?」


希「………」ジワ…

希「……っ、」

希「………」トテ…トテ…

理事長「ふふ…そうそう、一歩…二歩……はい、到着。じゃあ蓋を開けるわね。」カパッ

希「………」


理事長「…そしたらまずは、この箱の底面に……」ガシ…

希「……!、や…っ!」ドサッ

理事長「東條さんの首と、両手首、両肘を固定します…ふふ、ちゃんと東條さんの体のサイズに合うように、枷を埋め込んでおいたの。」カチャ…カチャ

希「や……やめ……っ」ジタバタ

理事長「暴れても無駄よ…今の東條さんを押さえつけるなんて、赤子を押さえつけるようなものだから。…っと」カチャ…

理事長「はい、できた。」

希「ぁ……あ………」ガタガタ

理事長「ふふ…震えてる東條さんって、ほんっとにそそるわよね…かわいい。」


理事長「そしたら次に…よいっしょ……っと……」

理事長「腰を持ち上げてもらって……ほら、箱の側面の…ベルトで腰を固定すると……」カチャ…カチャ

希「………っ」ガタガタ

理事長「ふふ…ほら、東條さんの大事なところが、丁度上向きでよく見えるでしょ?」

希「……っあ、……」ガタガタ

理事長「…ふふ、なんとなくわかったかしら?あとは膝と足首を開いて……蓋の内側に固定……」カチャカチャ

理事長「もう暴れないのね……無駄だと察した?」カチャッ


理事長「そしたら蓋を閉める前に…東條さんにこれを塗ります。」

希「………?」ガタガタ

理事長「ふふ…なんだかわからないでしょうね。胸と…耳と……それからそうね、口の中でしょ…1番感じるところにも、塗っておきましょうか…ふふ…ふふふ……」ヌリ…ヌリ

希「ぁ……やっ……やだ………」ガチャ…ガチャッ

理事長「ふふ…暴れても無駄よ……」ヌリヌリ


理事長「……よしっ、あとは口だけね。開けて?」

希「…………嫌……」ガタガタ

理事長「あーけーて?」

希「……っ」ゾクッ


理事長「……ねえ、開けてくれないの?」

希「………」ガタガタ

希「…………う………、あ……」

理事長「ふふ…いい子いい子。」ヌリヌリ


理事長「…最期に蓋を閉めて……ほら、できた。こんな狭い箱の中で⊂の形に固定なんて、体が柔らかいからできることよね…私なら無理だわ。」

希「ぁ……あっ……」ガチャ…ガチャッ

希「………っ」ガタガタ

希「……ね…ねえ……」

理事長「…なぁに?」

希「これ……だけ……だよ…ね……?」

理事長「ふふ…塗るもの塗ったから、これだけって思ってるの?そんなに甘くないわよ。それから標準語になってる。…次話したらお仕置きよ?」

希「………っ」ガタガタ

理事長「…わかった?」

希「……っ、う……ん………」ガタガタ

理事長「…ふふ、じゃあ次の物、取りに行ってくるから…ちょっと待ってて頂戴?」


ガチャ

バタン

希(………)

希(………?)


希(次の物…物置じゃない……ここの外にあるってこと?)

希(………)

希(わからない……)


希(さっき塗られた何か…なんだろ……)

希(前飲んだ体が熱くなるやつ…とも違うし……塩でもなくて……)

希(何か、においが……する、ような)

希(………)


希「………」ガタガタ


希(体の震えが止まらない……)

希(考えたところで、わかるわけ…ないか。)


希(次はどれだけ怖いんだろ、痛いんだろ、つらいんだろう)

希(……次が終わる時に、私はまだ…こうやって考えるだけの…余裕があるのかな)

希「………」ガタガタ


希「えりち………」ポロ…

希(会いたいよ……)

希「………」ポロポロ



ガチャ

希「……っ」ビクッ

ここからしばらくかなり閲覧注意でお願い

理事長「ふふ、遅くなってごめんね……」

理事長「…泣いていたの?ふふふ……」


希「…その……箱……」

理事長「…この箱ね、私の大切なものがたくさん入っているの。全部で3箱。大きいのが2つと…小さいのが1つよ。」

希「………」

理事長「……ふふ、あのね…東條さんのかわいい顔が見れるなら…これくらい、また集めなおすわ。」

希(集めなおす……?)


理事長「…あははっ……ねえ、気づいてた?この箱ね…蓋に小さい小窓がついてて、開くようになってるの。」

理事長「東條さんの大事なところの真上と…開いた足の間の、丁度東條さんの顔の真上のあたり、合わせて2つ。」

理事長「…ふふっ、全部の位置がぴったり……さすが私ね♪」

希「………っ、?」

理事長「まぁ、どういうことかわからないでしょうから……とりあえず大きいの一箱分、東條さんの顔の真上の小窓から…入れてあげる。ふふ…」ガチャ…



ガサガサガサガサガサ!!!



希「ひっ……」

希「ぁ………あ…………」ガタガタ


希「いや!!!嫌!!やだぁっ!!!」ブンブン


ガサ…ガサガサ……


希「ぁ……あ……あっ………やだ、やだやだ、出して!!!出して!!!!!出してえ!!!」ガチャッガチャッ


ガサ……ガサ………


希「嫌ぁぁぁあああっ」ガチャンッガチャンッ

理事長「ふふ…うふふ……」


希「お願い!!出して!!!出してよ!!!」ガチャッガチャッ

希「ぁ…やだ……やだっ耳…入って………!」ガチャッガチャッ

希「やだ……っ、やだ…やだぁ………」ブンブン


理事長「ふふ…最高よ、東條さん…私の大好きな生き物に囲まれて、とってもいい表情をしてくれる……ふふ、うふふ。」

理事長「これだけでもう…イっちゃいそうよ。透明な箱にしてよかったわ。とてもよく観察できるもの。」

希「だ…して……おねがい……おねがい………」ポロポロ

希「ぁ……やだ……胸ばっか、集まって……!」ガチャッ…ガチャ


理事長「ふふ…あんまり喋ると、口にも入ってくるわよ?ほら一匹、近づいて……」

希「ん…んん!んんん……っんんっ」ブンブン

希「や…だ……やだ、嫌……だして、だして……!」ポロポロ

希「ぁ…やだ……ムカデ、刺される、やだ……やだ………っ」ポロポロ


希「や!こないで…こないで………やだぁっ」ガチャッガチャンッ

希「だして!!!!だしてぇええ!!」ガチャッガチャンッ

理事長「ふふ。いーやーよ。ふふふっ…」


理事長「あのね、今中に入ってるの…小さいのはチャバネゴキブリって言って、大きいのはクロゴキブリって言うのよ。」

理事長「あとたくさんいる多足類の生き物は、ムカデではないわ。ヤスデよ。そもそもムカデは刺すんじゃなくて噛むのだし、ヤスデは無害の生き物よ?」


希「それ…でも……嫌!!なんで…こんな……」ガタガタ

希「けほっ…がはっ……げほっ………」

希「や……やだ…………やだ………」ポロポロ


理事長「……ふふ、どの虫も毒も無いのに、そんなに嫌がることないじゃない。可哀想でしょう?」

理事長「…見た目で判断するのはいけないって、小学校で習わなかったのかしら?」


希「ぅ……えぐっ……ぐす……嫌……嫌……」ポロポロ

希「嫌………」ポロポロ

希「ひっ、耳…入って………」


希「やだっ………ぁっ……」ブンブン

希「やだ!!やだ!!や……や!!」ガチャンッガチャンッ


理事長「ふふ…さっき塗ったのはね、そういう虫が大好きな匂いを、できるだけ近い香りで液状化したものなの。」

理事長「だから塗った場所には近づいてくるし、中に入っていこうとするわ。」

希「ぁ……あ………っ」ブンブン

希「……っ、ぅ……あ……」ポロポロ

理事長「あらら…耳の中入って、出てこなくなっちゃった?ふふ…いま入ったのはね、ゲジゲジってよく呼ばれてる虫…よく花壇とかで、見たことあるでしょ?」


希「ぁ……嫌………嫌………」ポロポロ

理事長「嫌しか言わないのね。もうあまり頭も働かない?ちょっと刺激が必要かしら…次はじゃあ、小さい箱ね?」

希「やめて…もうやめて……」ポロポロ


理事長「…うふふ、やめない。」

希「ぁ………あ………」ポロポロ


理事長「…ねえ、一つ聞かせてほしいの。東條さん、ムカデやハチに刺されたこと、ある?」

希「ム…カデ…?ハチ……」ポロポロ

理事長「…正直に答えて?命に関わることだから。」

希「い…のち……?」ポロポロ

理事長「…そういえば東條さん、死にたいんだったかしら。じゃあいっか。…気にすることもないわね」ガチャ

希「………っ、?」ポロポロ


理事長「……ふふ、今から東條さんの大事なところに、この子…入れるから。」

希「は………?」ポロポロ

理事長「ふふふ、聞こえなかった?この子、入れるから。東條さんの大事なところに。」


希「な…に言って………」ポロポロ

理事長「…この子はね、ヤスデじゃないから。もちろんゲジゲジでもないわよ?ムカデ。普通に毒があるし、人に触れればすぐ噛むわ。ムカデってそういう生き物だから。」

希「や……、え………?」ポロポロ


理事長「ふふ…でも安心して?国内でムカデの毒で亡くなった例はないし、この子、大きいでしょ…?15センチくらいあるかしら。」

理事長「ムカデはほら、小さい方が毒が強いって…よく言うじゃない?」

理事長「もしかしたら赤ちゃんは産めなくなっちゃうかもしれないけど……多分死にはしないわ。」


希「なに…言って………っ」ポロポロ

希「やめて……もう…やめてよ……」ポロポロ


希「や……いや…………」ポロポロ

希「ぅ……ぐすっ…うぁ……うう…」ポロポロ

希「やめて………」ポロポロ

希「おねがい……おねがい………」ポロポロ

理事長「ふふ…」

理事長「ぁははっ…ふふ、うふふ……」


理事長「嫌よ。」


理事長「ふふ…まずは入り口を、開いて……」クパ…

希「や!嫌!!いやぁぁあっっ!!!」ガチャッガチャンッ

希「やめて!!!やめて!!!」ガチャッガチャッ


理事長「ふふ…暴れても無駄って言ってるでしょ?じゃあ、入れるわね…」ソー…


希「たっ…すけて!!!たすけて!!!たすけてえりち!!お父さん!!!誰か!!」


理事長「ふふ…急に入れても入らないでしょうから、1番感じるとこ、触りながら入れてあげる…はーい、ぷしゅっ」クチュ

希「い"………っ!?!!ぁ…あ"………」ガタガタ

理事長「あら…もう噛んじゃった?ふふ…ここから奥に入れてくのに……」


希「あ………ぁ…………」カクッ


理事長「……気絶、ね。まぁそうなるかなとは思ってたけど。途中でされるとさめちゃうからやめてほしいわ…」ガサ…

理事長「…ふふ、気付薬、たくさん準備してあるから。顔の方の小窓から入れるわね…」ガチャ…ピチャ


希「………っ、う……」

理事長「…ふふふ、意識は戻った?じゃあ続きからまたするわね。」

希「ぁ……い"…っ、痛っ……なに…これ……」

理事長「あら…状況飲み込めてないの?しっかりして頂戴。ほらこれ、もう一度ちゃんと、入れてくから…今度は気を失ったりしないでね?」

希「………っ、」

希「あ……ぁあ………」ガタガタ

理事長「ふふ…やっとちゃんと目が覚めた?じゃあもう一度、いくわよ……」クチュ…

希「ぁ"あっ………ぃ"…っあ"ぁ"あ"あっ」ガチャ…ガチャンッ


理事長「あらら…また噛んじゃった?ふふ…いいわよその表情…それじゃあ、奥まで入れてくわね…」クチュ…クチュ…

希「ゃ…やめっ……ひっ……あ"…痛っ…ぁああぁっ」ガチャンッガチャ…

理事長「ふふ…よく噛むわね……」

希「やめ…て……もう、やめて……痛い…痛い……っう………うう……」ポロポロ


理事長「ふふ、やめないわよ?」

理事長「…でも連日慣らしておいたおかげで、少しここ触っただけで濡れて…おかげで結構スムーズに入りそう。良かったじゃない。」


希「はぁ…っ…はぁ……嫌…こんなの……」ポロポロ

理事長「頑張って?もう3センチくらいは入ったから。残り12センチよ。ほらほら、ファイトだよっ!なんて…ね、ふふ。」

希「12センチなんて…入るわけ……」ポロポロ

理事長「大丈夫よ、男の人のそれだって、日本人の平均でそれくらいあるらしいから。じゃ、続きいくわね?」クチュ…

希「う……ぐ………っ」ポロポロ

希「ふ………あ……動いてる……」ポロポロ

理事長「ふふ…中で動いてるの、わかるのね。」クチュ…クチュ…

希「ぁ……あ"っ…ぅ……ぁあ"……っ」ガチャ…!

理事長「あら…また噛んだ?ふふ…中、だいぶ腫れちゃうかもしれないわね……」


希「あ……うぁ……がはっ…けほ……」ガタガタ

希「痛い……痛い……」ガタガタ


理事長「あと半分だから…頑張って?…あっ、目閉じるのはダメ…きちんと現実を直視して。」

希「………っ…」ガタガタ

理事長「ねえ…ちゃんと開けて。もっと酷いことするわよ?」

希「……うう…………」ポロポロ


理事長「ふふ、じゃあもう半分、行ってみましょ。」クチュ…クチュ…

希「ぅ…痛………いたい………ぐすっ……」ポロポロ

理事長「入り口あたり、腫れてきて…だいぶ入れずらくなってきたわね…よいしょ……」クチュ…

希「……っ、ぁ?!」ガチャ…

理事長「あっ……ちょ……暴れて………」


希「ぁ……あぁ……」ガチャ

希「ぁ"ああっ…痛っ……やめ……ぁあ"ぁあ"っ」ガチャンッガチャッ

希「やめ……やめて!!!ひっ…う"ぁ"……ぐ………かはっ……」ガチャンッ…ガチャ

希「やめてえええ!!!やめて!!抜いて!!抜いてぇっ!!!」ガチャンッガチャンッ


理事長「嫌よ…今更抜けないわ。入り口は腫れてるし…」

理事長「ムカデだって必死なのよ。そりゃあのたうち回りたくもなるわ。考えてみたら入れられてる東條さんより、ムカデの方がよっぽどつらいはず。」

理事長「こんな狭いところに入れられて、空気もなくて…命の危機よ、事実このままここに入れられたら、この子確実に死ぬんだから。」


希「じゃあ抜いて!!!抜いてよ!!!!ぃ"……っ、ぁ"ああ"ぁ"っ……けは…げほっ……」ガチャンッガチャッ

理事長「抜くのは面白くないじゃない…まぁあと5センチくらいだから。ね?頑張って。」

理事長「ほら…落ち着いてきたし、ね?」クチュ…

希「はぁ……はぁ……は………」ポロポロ


希「ぐすっ……えぐ………う…ぅう…っ」ポロポロ

希「どうして………」ポロポロ

希「どうしてこんなことに…」ポロポロ

理事長「………」


理事長「ふふっ♪」

理事長「東條さんが悪いのよ?こんないやらしい身体して、あんな飄々とした性格で。」クチュ…

理事長「…そのくせ声は小さな女の子みたいで…こうやって虐めてると、大人の女性にしてるのか…幼い女の子にしてるのか。曖昧になってくるの。そういうのってすごく楽しいのよ。」クチュ

理事長「それにその上一人暮らしなんてして、近くに頼りになる身寄りもいないで。」クチュ…クチュ

理事長「私じゃなくたって、誘拐して好き勝手したくなるわよ、そんなの。」クチュ…


希「そ…んな……っ」ポロポロ


理事長「…ふふ、全部入ったわよ?ムカデも大人しくなったわね…死んじゃったのかしら、可哀想に。」

希「………」ポロポロ

希「……まだ、いきてる………」ポロポロ

理事長「…え………?」


希「動いてるの……中でずっと…動いてるの……!」ポロポロ

希「う……ぐすっ………うう……えぐっ…」ポロポロ

希「もうやめて……やめてよ………」ポロポロ


理事長「ふふふ…やめないって言ってるでしょう?そう、生きてるの……それなら入り口は塞いでおかないとね。」ガサ…

希「なに…する気………」ポロポロ

理事長「別に大したことはしないわよ?ガムテープで入り口を塞ぐだけ……ふふ、単純でしょう?」

希「…………」ポロポロ

理事長「ふふ……はい、ペタっと。これでもうこの子は東條さんの中から出られないわね…ふふ、ずっと仲良しよ?良かったわね。」

希「………っ」ポロポロ


理事長「じゃあ次は大きな箱を……」

希「………っぁ……っ」ガチャ…

理事長「………?どうしたの、東條さ…」

希「ぁあ"あぁ"っ?!!?や…だ…また、暴れ出して……!」ガチャッ…ガチャンッ

希「ぁ…やだ……やだ!!!出して、中から出して!!!」ガチャッガチャッ

希「奥……入ってきちゃ……ぁ、ぁあ"ぁ?!」ガチャンッ

理事長「あら…ふふ、まだそんな元気あったのね…流石私の選んだ子。」

理事長「でも残念ながら…助けてあげられないわ。もう入り口はガムテープで塞いでしまったから。」

理事長「ふふ……ごめんね。」


希「おね…が……っ出…して……っ」ガチャ…ガチャ

希「ぁ……あ………」ポロポロ

希「やだ………」ポロポロ

希「…………中………入っちゃった……」ポロポロ

希「あ……あは…………はは……」ポロポロ

希「入ってくる…どんどん……入って……」ポロポロ


希「痛っ……ぐ………かはっ……あぐ………」ポロポロ

希「痛い……痛い痛い痛い痛い痛い!!!」ポロポロ


希「は……ぁ……や、めて……やめて………」ポロポロ

希「う…あ………中で、動いてる……まだ動くの……?」ポロポロ


理事長「ふふ…私もことりができたときは、中で蹴られたりしたらわかったわね…懐かしいわ。」

希「ことり…ちゃん……?」ポロポロ

理事長「そう…ことりがまだ産まれる前。赤ちゃんだった頃。」

希「赤…ちゃん……」ポロポロ


希「………」ポロポロ

希「そうだよ…本当は…ここ……赤ちゃんが入る場所なのに…大事な、場所なのに……」ポロポロ

希「なんで……こんな………」ポロポロ

希「なんで……」ポロポロ

理事長「ふふ…その表情、素敵よ?東條さん。すっごく素敵。」


希「………」ポロポロ

希「……もうきっと、赤ちゃんなんて…できないね……」ポロポロ

希「ベビちゃんが…たくさんほしいなって……そんな時も、あったのに……」ポロポロ

希「結婚だってきっとできない……」ポロポロ

希「もうきっと、幸せになんて…なれない」ポロポロ

希「何考えても…何をしても…」ポロポロ

希「無駄…なんだよね」ポロポロ

希「…………」ポロポロ

希「あは………はは……」ポロポロ



希「もう……いいや…」ポロッ



希「………っ」カチャ

希「え………?」


理事長「…うふふ、東條さん今、また舌噛もうとしたでしょう。そうはいかないわよ?」

理事長「ふふ…また開口器、つけてあげたから。ふふふ…っ」

希「………」

理事長「その絶望しきった表情も、すっごく素敵よ?でも意識と理性は保っててほしいわね…」

理事長「…最後の箱、今のに比べたら大したことないけど……一応入れるわよ?」


ガサガサガサガサ


希「………」

理事長「もう少し…反応してくれないと、つまらないのだけど。」

希「………っ」

理事長「ふふ…開口器で口が開けっぱなしになっちゃったから、色々入ってくるわよ……」

希「あ……ぅあ……かはっ……は……」ポロポロ

希「けほっ……けはっ……はっ……」ポロポロ


理事長「ふふ…最後に入れたの、ゴキブリの天敵だから……ふふふ、東條さんの口に逃げ込んだゴキちゃんを追いかけて、更に天敵ちゃんが入る…」

理事長「…折角だから東條さんには目の前で虫の捕食を見てもらおうと思ったのだけど…これもなかなかいいわね、面白いわ。」


希「ぁ……かはっ…けほっ…はっ…はっ……」ポロポロ

理事長「ふふ…いい表情。これから朝まで…一緒に楽しみましょうね、東條さん。」



希「………」ポロポロ


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ガサガサガサガサ



希(時間がゆっくり、流れてく)



理事長「ふふ、東條さん……ほら、口の中にたくさん…今、何匹入ってるかしら?」



希(何が何だか、もうよくわかんない)



理事長「耳も大変ね…ふふ、下は大丈夫?ムカデ、もう…流石に死んでしまったかしら」



希(虫たちは耳や口に、無理矢理入ってくる)



ガサガサ


ガサガサ



希(悲鳴をあげるたびに、理事長がガラスの向こうで、嬉しそうに微笑む)



理事長「ふふ…東條さん、その表情、すっごく素敵よ……」



希(まるで、水族館や動物園の動物にでもなったみたい)



ガサガサ…ガサガサ



希(………)


理事長「ほら、もっと反応してくれないと……ね?ふふ、じゃあ今度は虫たちの動きが活発になるように、薄暗くしてみましょうか」



希(……たぶん、μ'sに手を出さないで、壊れるまで好きにして、なんて言ったけど)



ガサガサ…ガサガサガサガサ!



希(ほんとはそんな勇気、どこにもなくて)



理事長「ふふっ…あはははっっ」



希(きっと誰かが助けに来てくれるって)



ガサ……ガサガサ



希(きっと理事長もそこまで酷いことはしないって)



理事長「ほら…もっと…ね?泣いて、泣いていいのよ?ふふ……」



希(どこかできっと…期待してた)



ガサガサ ガサガサ ガサガサ


ガサガサ ガサガサ ガサガサ



希(………でも。何をしても、何を考えても、何を期待しても)



理事長「…なんだか少なくなってきちゃったわね……仕方がないから、追加分取りに行ってくるわ。」


ガチャ



希(痛いのは消えないし)


希(虫は入ってくるのをやめないし)


希(息はどうしたって苦しいし)


希(身体の拘束は解けないし)


希(理事長はやめてくれないし)


希(人生は終わらないし)


希(誰も助けには来ないし)


希(時間は巻き戻せないし)


希(楽しかった時間は戻ってこない)



ガサガサ ガサガサ ガサガサ



希(全部無駄なんだ)



ガチャ


理事長「ふふ……ただいま。」



希(何をしても、何を考えても、無駄なら…)



理事長「じゃあ、入れるわね?」



希(一体どうしたらいいの?)






ガサガサガサガサガサガサ!!!



希(もう…疲れたよ)



理事長「ふふ……あははっあはははっ」



希(みんな…えりち…お父さん…会いたいよ。ねえ、私……うち、ここにいるのに)



ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ



希(でも……もう、だめかも)



理事長「いい!いいわぁっ、ふふ、あははっふふふふっ、あはっ」



希(ごめんね…みんな)



ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ




希(ごめんね…わたし)




----
---
--



希(………)





希(………)






希(………)







希(………)







理事長「う……ぁあ………」

理事長「あらら…ごめんなさいね、寝ちゃってたみたい。」


理事長「…っ、もうこんな時間…学院に行かないと……って、」

理事長「東條さん……その髪………」


希「………」


理事長「ふふ…いつの間に………」ゴソゴソ

理事長「見える?鏡よ。」

希「………」

理事長「あらら…意識はあるわよね?見て…ほら、気づかないうちに真っ白。びっくりよ。」

希「………」

理事長「よく漫画やアニメで、恐怖で髪が真っ白~なんてあるけど、科学的には恐怖で一瞬で髪が白くなるなんて、おかしいし…証明されてないのよ。」

希「………」

理事長「ふふ…でも本当にこんなことって、あるのね。ふふふ……」

希「………」

理事長「ふぁあ…それじゃあ私、学院に行かないと……もう虫も中でだいぶ少なくなってるけど…このままこの中で大人しくしていてね?」

希「………」

理事長「ちょっと仕事が溜まっちゃってるから、少し帰りは遅くなるかもしれないけど…ちゃんと夜に顔だすから。」

希「………」

理事長「ふふ…それまでに正気、取り戻しておいてね?まぁ戻ってなくても無理矢理もどすけど……」

希「………」

理事長「それじゃあ、行ってきます。」


ガチャ




希「………」

----
---
--

絵里「はぁ…っ、はぁ…っ」タッタッタ…


絵里(なんで気づかなかったのかしら…明日にしましょうなんて、そんな呑気なことじゃないわよ、これ…!)

絵里「はっ…はっ……」タッタッタ…


絵里(私…理事長に言っちゃった……九州に希の親戚がいないことも……スマホが最後に電源がついてたのが、音ノ木だってことも……!)

絵里(もし理事長が希に何かしてるなら……私がそれらに気づいたことで、希を別の場所に移すとか…希になにか、してないとも限らない……!)


絵里「はぁ……はあっ……」タッタッタ…


絵里(考えすぎかもしれない……そもそも学院の理事長で、ことりの母親なのにこんな風に疑うなんて、最低よ…!でも、)

絵里「はぁっ……はぁ……」タッタッタ…

絵里(でも…理事長が何かしてるとすれば……一番全ての辻褄が合う…!少しでも可能性があるなら、確認しなくちゃ……)


絵里「はっ……はぁっ……」タッタッタ…

絵里「ついた……けほっ……はぁっ…はっ…」


ピンポーン


『…はーい?』


絵里「こ…ことり!私よ、絵里よ!」


『…ん…んえっ?!絵里ちゃん?ちょっと待ってね』




ガチャッ


ことり「お…おはよう……寝起きでごめんね、どうしたの?」


絵里「寝起きって…そろそろ支度しないと、間に合わなくなるわよ?」

ことり「んえ……ぁあっ、ほんとだ…なんでこんな時間まで……」

ことり「……あっ、急いで支度してくるけど…何の用、かな?」


絵里「えっと…その、理事長、いるかしら?」

ことり「………っ、お母さん?」

ことり「うーん…と……もう学院行っちゃったみたい。」

絵里「そう……」


ことり「あ、えっと…ごめんね。私で何かできることなら…」

絵里「…それならじゃあ、少しだけ聞きたいことがあるのだけど……」

ことり「聞きたいこと?………わかった。海未ちゃんと穂乃果ちゃんには連絡入れておくから、少し待っててもらえたら、支度してくるから…」

ことり「その…二人で行きながら話すんでも、平気かな?ごめんね、寝坊なんてしちゃって。」

絵里「ううん…大丈夫。ありがとう。寝坊ってほどの時間でもないわよ、じゃあここで待ってるから…」

ことり「う、うん!急いで支度してくるねっ」


タッタッタッタ…



絵里「………」


絵里(ことりの家…穂乃果の家から近いから、見たことはあったけど…間近で見てみると、結構大きいわね…)

絵里(庭も広いし……)


絵里「………!」

絵里(あの、倉庫……)

絵里(なんの倉庫かしら……)



ガチャ!


ことり「ごめんね絵里ちゃん!支度できたよーっ」

絵里「ことり…随分早いのね、急いでくれてありがとう。」

ことり「ううん、大丈夫大丈夫……」

ことり「……それで、聞きたいことってなぁに?」

絵里「えっと……その、理事長のこと…なんだけど。」

ことり「……っ、」


絵里「あの…深い意味は無いんだけどね、私…理事長のこと、学院での理事長のことしか知らないから…」

絵里「普段はどんな人で、最近どんな感じなのか…その、大した意味はないのよ?…だけど興味があって。教えてほしいの。」

ことり「………っ、」

絵里「……?」


ことり「……絵里ちゃんはほんと…わかりやすい…な……」ボソッ

絵里「えっ……何?」

ことり「ううん………なんでもない。」

ことり「お母さん………ね。」

ことり「お母さんはね…普段は優しくて、いいお母さんだけど」

ことり「少し変わってる……かな」

絵里「変わってる……?」

ことり「うん……」

ことり「なんていうんだろう…猛禽類、みたいな」

絵里「猛禽類……??」


ことり「ふふ…ごめんね。あの、これ…みんなは知らないことなんだけど、」

ことり「お母さん、私が生まれる前は理科の先生をしてたの…担当は生物だったってきいてるけど」

絵里「理科…生物ね……」

絵里(そういえば一度、単細胞生物についてやけに詳しく語り出したような)

ことり「それでかな…少し変わってて。ムカデとか…その、Gとか、蜘蛛…とか。そういう生き物が、大好きでね。」

ことり「家の倉庫で飼ってるの。気持ち悪いよね。」

絵里「それは……」


絵里「……人の趣味にとやかく言うものではないけど…その、気持ち悪い、わね。」

ことり「ふふ…そうなの、すごく気持ち悪くて。お母さんは、あの子達はことりにとってのマカロンと同じようなものよ!なんて言うけど、ことりには理解不能で。」

絵里「……ふふ、それは私にも理解不能だわ……」

絵里(あの倉庫は…そういう……)

絵里「……………その倉庫って、そういう生き物だけがいるの…?」

ことり「うーん…わからないの。小さい頃にうっかり入っちゃって…怖い思いしてから、一度も入っていないから……」

絵里「そう……」

絵里(………)

絵里(あの倉庫、そんなに大きくはなかったし…特別頑丈って感じもしない、普通の倉庫だった……)

絵里(希がもしいたとしたら…声とかで、気づくわよね……)

絵里(やっぱり考えすぎ…か……他のどこかかしら)


ことり「……あのね、」

ことり「……あの…倉庫ね、地下もあるの。」


絵里「え、地下……?」

ことり「そう…入ったこと、ないんだけどね。だから多分結構広くて…お母さん、最近篭りっぱなしなの。」

ことり「………新しく素敵な生き物が手に入った!とか言っちゃって……」ジワ…

絵里「素敵な…生き物……」

絵里「…ことり、大丈夫?その、目が……」


ことり「……っ、ごめん…ごめんね……なんか埃が、目に入っちゃって……あはは……」ポロ…

絵里「…目薬、あるわよ。」

ことり「ありがとう…でも大丈夫。目薬の貸し借りって、よくないんだよ…?ほらことり、保健委員だから。」


絵里「そ、そうよね……」

絵里(地下……素敵な生き物………)

絵里(考えたくない…考えたくない、けど……)

絵里(気になる……)

絵里(こっそり夜に浸入……なんて、現実的に考えたらできないわよね…鍵もかかってるだろうし)

絵里(そうなると……)

絵里「……ねえ、ことり。」

ことり「………?」


絵里「あの……その倉庫の中、私…少し見てみたいな、なんて……」

ことり「えっ……?」

絵里「あ、えっと……大した意味はないの、その…興味本位で、ね?」

絵里「ほら、そういう生き物って、間近に見ることってないし…ほら私、受験で生物使うから、勉強になるかな、なんて……!」

ことり「………」


絵里「ことり……?」

ことり「勝手に入ったら…怒られちゃうかもしれないから、お母さんに聞いてみるよ。」

ことり「多分絵里ちゃんなら…入れてくれると思う。学院についたら頼んでみるね。」

絵里「ことり……!ありがとう。」

ことり「ううん……あっ、もうこんな時間…少し急がないと。」

絵里「あっ…ほんとね、少し急ぎましょう……」



タッタッタッタ…




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---
--

にこ「おかしい……」


真姫「………?」

凛「にこちゃんがおかしいのは、いつものことにゃー」

にこ「違うわよ…私のことじゃなくて!希のことよ……!」

花陽「に、にこちゃん…」

凛「………」

にこ「………っ、」


真姫「にこちゃん……」

真姫「……私達ね、絵里にはああ言われたけど…実は少し調べていたの。希のこと……凛と、花陽と。」

にこ「あんた達……それで何か、わかった?」

花陽「………」

花陽「何も…何もわかりませんでした。」

真姫「…強いて言うなら、希の家族のこと、調べてみたけど……」

真姫「希って、お母さんは既に亡くなっていて…お父さんは今、海外で戦場カメラマンをしているらしいわ。」

花陽「ま、真姫ちゃん…!」

真姫「…仕方ないじゃない。これは緊急事態よ…それに多分、絵里は既に知っているわ。」

凛「………」

真姫「なかなか危険な地域にいるらしくて…こっちから連絡をとるのは難しいわね。」

にこ「………」

にこ「…大丈夫よ、私も少し調べて…希のおばあちゃんから、その話は聞いてる。」


真姫「にこちゃん……」

にこ「……でも、それだけよ。」

にこ「それだけなのよ……一体今希はどこで、何をしているのか……」


凛「………」

凛「希ちゃん……」ポロ…

にこ「凛……」

にこ「ごめん、さっきは…凛なりに、考えてくれていたのよね。」


凛「ううん…凛こそ、ごめん……ちょっとKYだったよ……」ポロポロ

凛「希ちゃんがいないと…なんか調子でなくて……」ポロポロ

花陽「凛ちゃん……」ポロ…

真姫「………」

にこ「…明日で2週間………」


にこ「絵里が……」

にこ「多分絵里は、私達よりもう少し、何かを掴んでて……」

にこ「だからこそ…一旦目立つ行動はやめるように…言ったのよね、多分。」

真姫「まぁ…そうでしょうね……」

凛「それなら凛達にも、教えてくれたら、もっと……!」

花陽「多分…多分、なにかそれなりの…理由があるんだよ。」

凛「………」

凛「そっ…か……そうだよね……」

にこ「………」


にこ(私達にできるのは…ここまで…なのかしら。)



にこ(………)


---
--


海未「………」

穂乃果「うーみちゃーん」

海未「………」

穂乃果「海未ちゃーん」

海未「………」

穂乃果「海未ちゃんー、ランチパック、一口食べる?」

海未「太りますよ……」

穂乃果「えへへ……」

海未「………」ハァ

穂乃果「………」


穂乃果「………希ちゃんのこと?それとも…ことりちゃんのこと?」

海未「……!」

海未「気づいていたのですか……」

穂乃果「あはは………一応、ね。」

海未「………」


海未「ことりが……」

海未「……ことりが、ああいうことを聞いてくるのは初めてだったので…驚いたんです。」

穂乃果「うん……わかるよ。」

海未「もう2週間になります…希のことも心配ですし……ことりのことも、心配です。」

穂乃果「うん……」

海未「今朝はことりと絵里で登校したみたいです…もしかしたら絵里は何か、知っているのかもしれません。または二人が希のことで、何か掴んだのかもしれません。」

穂乃果「そうだね……」

海未「………」

穂乃果「穂乃果達に話してないってことは…何かきっと、理由があるんだよね。」

海未「そう…だと思います……」

穂乃果「………」

海未「……二人はきっと、私達の身を案じてくれているのだと……」

穂乃果「そっ…か……」


海未「しかしこれ以上、二人が抱え込むようなら」

穂乃果「海未ちゃん……」

穂乃果「うん…わかってる。海未ちゃんは、そういう人だから。」

海未「穂乃果……」

穂乃果「…でもでもっ、ピンチになったら…穂乃果のことも、頼ってね?」

穂乃果「穂乃果だって…みんなの力に、なりたいから。」

海未「………」

海未「ええ…勿論です。」


穂乃果「うん……」


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絵里「明日……?」

ことり「うん…明日なら、仕事も下校時刻までには終わるみたいだから…その後一緒にって。」

絵里「そう……」


絵里(案外あっさり入れてくれるってことは…やっぱり違うの…かしら。)

絵里(ううん……それでも可能性がないわけではないから。確認しないと……)

絵里(……でも明日にしたら、もし本当に希を隠してるとすれば…今日のうちにどこかに移してしまうかもしれない)


絵里「今日じゃ…だめ、かしら?」

ことり「ううん…中とか、散らかってるみたいで……片付けておきたいって。後は今日は仕事も終わるの遅いみたいで……」

絵里「そう…よね……」

絵里「…わかったわ。理事長にお礼、言っておいてくれる?ことりもありがとう。」

ことり「うん……でも絵里ちゃん、大丈夫…?」

絵里「えっと……何が?」

ことり「あ、あの……その、中、多分薄暗いし……気持ち悪いのばっかだろうから。」

絵里「薄暗い……」

絵里(……でも、希がいるかもしれないんだもの、それくらい……)


絵里「だ、大丈夫よ……大丈夫。」

ことり「そっか……ならよかった。」

絵里「ええ……」

絵里(今日のところは…理事長をつけて、見張っておくしかないわね……)


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--

絵里「にこ……」ガチャ

にこ「絵里……まだ残ってたの?」

絵里「にここそ……でも、良かったわ。」

にこ「……?なに、何かあんなら早く言いなさいよ。」

絵里「あはは……にこは話が早いわね…」

絵里「あのね…にこの持ってる変装グッズ、貸して欲しいの。」


にこ「………誰か尾行でもするの?」

絵里「………っ、」

絵里「………」

絵里「ほんと、にこは鋭いわね……」

にこ「まぁ、ね……それで?誰を尾行するのよ?」

絵里「それは……」

にこ「……私には言えない?」


絵里「……っ、いや…そんなことは………」

にこ「ふぅん……」

絵里「………」

絵里「あ、あのね……」

絵里「その………理事長なの。」

にこ「えっ……?」

絵里「だからその……尾行、するのは……」

にこ「………」


絵里「ええと……」

にこ「……」ハァ

にこ「わかったわ……」

絵里「にこ……!」

にこ「何かしら事情があるんでしょ…?みんなやことりにも、秘密なのよね?」

絵里「そう…なの…」

絵里「まだ何の確証もないから……」

にこ「………」

にこ「……ふんっ、まぁいいわ。」

にこ「その代わり…その尾行、にこがするから。」

絵里「えっ……」

にこ「何よ、私じゃ不満?」

絵里「いえ…そんなことはない…けど…」

にこ「…だいたい、あんたの髪は目立つのよ。にこの変装グッズはにこのサイズだし……その、腹立つけど胸のあたりとか!あんたじゃ無理よ。」

絵里「そ…そうなの……」

にこ「そーれーに!ちょっと鏡見た方がいいわよ?今のあんた、アイドルらしからぬ顔、してるんだから……」

にこ「最近眠れてないんでしょ?今日はしっかり寝なさいよ……」

にこ「理事長のことは、にこが責任持って、しっかり見張っとくから……何か変なことがあれば、絵里にすぐ連絡するし。」

絵里「にこ……」

にこ「…だいたい、あんたは一人で抱え込みすぎなのよ……これくらい、にこに任せなさい。」

絵里「………」ジワッ

絵里「……っ」ゴシゴシ

絵里「ありがとう……にこ。」

にこ「……いいのよ。これくらい。」




にこ「久しぶりに…サングラスに……これ、かぶって……よし。」


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--

ガチャ…


ことり「……ただいま。」


バタン


ことり「………」

ことり(お母さん……まだ帰ってない)

ことり(学院か……倉庫か……)


ことり(………)

ことり(確認に………)


ことり「………」

ことり「…………っ」

ことり(行きたく……ないよ)


ことり「はぁ……」バフッ

ことり「明日……絵里ちゃんが………」


ことり(大丈夫…だよね。あそこにいるのは、気持ち悪い生き物だけ…だよね。)

ことり(お母さん、ことりなら入れてもいいって言ってたもん…絵里ちゃんも、入れてくれるって…)

ことり(入れてくれるってことは…やましいことなんて、何もないってことだよね)


ことり「………」ゴロ…

ことり「大丈夫…大丈夫……」


ことり(そもそもあんなに優しいお母さんを疑うなんて、最低…だよね)


ことり「ごめんね……お母さん。」ポロ…

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--

ガチャ


理事長「遅くなっちゃった…ごめんね、東條さん」

希「………」

理事長「だんまり……ね、本当に狂っちゃった?」

希「………」

理事長「ふふ…あれくらいで狂われちゃ、困るんだけど。」

希「………」

理事長「ねえ、聞いてる……?」

希「………」


理事長「仕方ないわね……とりあえず、箱からだして…開口器も外してあげる。」ガチャ…

理事長「あーあ…私の大切な虫たち、ほとんど死んじゃった…」カチャ…カチャ

理事長「食い合って死んじゃったのもいるけど…ほとんどは東條さんが暴れるからよ、潰れて死んじゃったの…どうしてくれるのよ」カチャ…カチャ


希「………」


理事長「無視……するのね、いいわ、お仕置きよ?」カチャン

希「………」

理事長「ふう…とれた。」

希「………」

理事長「じゃあ、だすわね……ふっ」グイッ…

希「………」

理事長「ふふ…こんな大きな胸のわりに、軽いわね……ここに入ってから、痩せたかしら?」

希「………」

理事長「ネットなんかじゃ東條さん、ぽっちゃり扱いされたりしてたんだから…私に感謝したほうがいいわよ?」

希「………」

理事長「よいしょ……っと」

希「………」

理事長「はぁ…本当にだんまりなのね。いいわ。」

希「………」

理事長「電気を流したとき…あのときは、電気パッドを使ったけど」

希「………」

理事長「ふふ…今日はこれ、電気ショック棒。私の手作りよ?」

理事長「これね…難しそうに見えて、結構簡単に作れるの。原理は単純だしね。電圧を変えればスタンガンにもなるわ。」

希「………」

理事長「……ねえ、怖がったりしないの?やめてって叫んだらいいじゃない。」

希「………」

理事長「……そう。じゃあ流すから。まずはお腹ね?」


カチッ


バ……バリバリッ………ジジ………


理事長「ふふ…ほら、近づいてくわよ?ちなみにね、この棒、20mAはあるから……流し続ければ死んじゃうわ。まぁそんなこと、しないけれど。」

希「………」

理事長「つまらないわね……じゃあ、ほんとにやってしまうから。」ソー…


ジジジジ………ッ


希「……っ、ぁ………っ」ガクガクガクガク


理事長「………」

理事長「………っ」スッ


希「はぁ……はぁ………っ」

理事長「ふふ…痩せ我慢しても無駄よ?息、荒れてるし…今声、少し漏れてたでしょう…?」

理事長「ほら…お腹。電流が強すぎて、火傷してるわ……薄っすら赤くなってる、ねえ。」

理事長「跡……残ってしまうかもしれないわね。ほら、やめてって言ったらやめてあげるわよ?」


希「は……は………」


理事長「………そう、じゃあ次ね。次はじゃあ、太ももね。」ソー…


ジ……ジジ………


希「………っ、………はっ…」ガクガクガクガク


理事長「………っ、」

理事長「二の腕……」ソッ


希「ぁ………っ………っ…」ガクガクガクガク


理事長「…………」

理事長「はぁ……」スッ

理事長「じゃあ今度は右手の平…ふふ、これでしばらく、手は使えなくなっちゃうわよ…?」ソッ


ジジジッ………


希「………っ、………っ」ガクガクガクガク


理事長「……っ」

理事長「なんでよ……」



カチッ


理事長「なんで反応しないのよ……痛いでしょう?!ほら、こんな赤くなって……痛いでしょう?!」

理事長「もっとのたうち回って、痛がって、助けてって叫びなさいよ……」

理事長「次、いい加減反応してくれる…?顔にやるから。ふふ…可愛い顔に、跡が残るかもしれないわよ?」


カチッ


希「はっ……は………」

理事長「柔らかそうな頰っぺた……ふふ、うふふ……」

理事長「ほら……段々近づくわよ……3センチ……2センチ……1センチ………」ソー…


バリバリッ……ジジッ


希「………っ………ぁ……」ガクガクガクガク

理事長「………っ」



カチッ


理事長「………」


理事長「なんでよ……」

理事長「ねえ…もしかして本当に正気を失っちゃったの?」

理事長「今日で、最後かもしれないのに……」


希「は……は……」


理事長「………」

理事長「ふふ……あははっ」

理事長「ねえ、じゃあ…サプライズで驚かしてあげようかと思ったけど…教えてあげる。」


理事長「明日ね…この部屋に、絢瀬さんが来るのよ。」

理事長「別に東條さんとの約束を破ったわけじゃないの…来るもの拒まずって言ったでしょう?ふふっ…」

理事長「絢瀬さんにはどんなことしようかしら……東條さんにしたことと同じことをしたら、絢瀬さん、耐えられると思う?」


希「………」


理事長「………っ」

理事長「ねえ…東條さん。」

理事長「わかった…演技でしょう?東條さんならやりかねないものね……」

理事長「痛いので反応しないなら……そうね……」


理事長「ふふ……、ん……」チュ

希「……っ、ふ………」


理事長「んん……ん……ふ……ちゅ……」


希「………っ……」


理事長「………っ」パッ

理事長「………」


理事長「こんな風に無理矢理キス、されても……何も反応しないのね。」

理事長「怒ってるの?流石に昨日のは、やりすぎだった?」

理事長「………」

理事長「……ごめんね?」


希「………」


理事長「はぁ…ねえ。まだこれ、続けるの?」

希「………」

理事長「わかったわよ…じゃあ、一つだけお願い、聞いてあげる。昨日頑張ってたから。」

希「………」

理事長「何も言わないの…?」

希「………」


理事長「じゃあ…そうね、明日絢瀬さん来るし…東條さん、ここに来てから一度もお風呂入れてないでしょ、体…拭いてあげるわよ。」


ガチャ



希「………」


希「………」



希「………」



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---
--

にこ「はーーっくしゅっ」ズビッ

にこ「10月も半ばともなると…夜は冷えるわねぇ。」ブルブル

にこ「まったく…なんで宇宙No.1アイドルのにこにーが、こんなこと……」


にこ(理事長…あの変な倉庫に入ってから、ちっとも出てこないわね……)

にこ「もうそろそろ深夜よ…一体いつまで倉庫なんかに……って」



ガチャッ



にこ(でてきたわ……)

にこ(家の中に入って……もう流石に、寝るのかしら?)


にこ「もうしばらく、様子見ましょうか……」


にこ(絵里が尾行を頼むんだもの、何かしらあるのよね…?)

にこ(あの倉庫…なんなのかしら)


にこ「……っくしゅ、くしゅ……」ズルズル

にこ「寒いわねー」ガタガタ


ガチャ


にこ(…あっ、出てきたわ!)

にこ(洗面器と…タオル?湯気でてるからお湯かしら……)

にこ(え…なに、もしかしてあの倉庫って車庫とか?これから洗うのかしら…向こうにも車あるのに…リッチねぇ)

にこ(理事長ってやっぱり儲かるのかしら……)



ガチャ



にこ(………入って行ったわね…)


にこ「ふぁ……くしゅっ」ズルズル

にこ(全く…一体何時になったら家に帰ってちゃんと寝るのよ……)


にこ「はぁ……」

にこ(絵里は一体…なにを疑ってるのかしら)

にこ(あの倉庫……)

にこ(………)

にこ(まさか……)


にこ「はーーっくしゅっ……」ズビッ


にこ「あーもう、ポケットティッシュたくさん持ってきてよかったわ」チーン

にこ(まさか、ね……ドラマじゃあるまいし……)


にこ「ふぇっくしゅんっ」ズビッ




にこ「くしゅっ……」ズルズル


にこ「はー……寒いわねー」ガタガタ


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---
--


ガチャ

理事長「………」

理事長「………ほら……じゃあ、身体おこして?」


希「………」


理事長「………」

理事長「……仕方ないわね……ほら」グイッ

希「………」

理事長「はぁ……」

理事長「………」ゴシゴシ


理事長「…ふふ、お湯加減は如何ですかー?」ゴシゴシ

希「………」

理事長「……ほんとに返事、してくれないのね。」ゴシゴシ

希「………」


理事長「こうしてると…小さい頃、ことりが風邪を引いてた頃のこと…思い出すわね。」ゴシゴシ

希「………」

理事長「ふう……」

理事長「ねえ、これでもだめなの…?」

希「………」

理事長「そう………」

理事長「…………」


希「………」


理事長「………」


理事長「…………ふふっ、」

理事長「あっはは……うふふ、ふふ………っ」

理事長「アハハハ!!フフ……うふふふ……っ」


理事長「はー……」



理事長「わかった…わかったわよ。東條さん、もう…壊れちゃったのね。」

理事長「どうして壊れちゃったのかしら、昨日のがやっぱりやりすぎだった?それとも連日使いすぎて、劣化してたのかしら……」

理事長「……まぁ、もういいわ。寂しいけど…仕方ないわね、玩具はいつか壊れるし、人はいつか死ぬんだから。」


理事長「じゃあ最後に…そうね、この東條さんを絢瀬さんに見せれば、結構素敵な反応をしてくれそうだし…」

理事長「はたまたもしかしたら、絢瀬さんならこの東條さん、直せるかもしれないわね…」

理事長「うふふ…切り替え早いなぁって思ったかしら?いや……ふふ、もう何も思わないわね。」

理事長「ふふっ…それじゃあ少し、演出…考えましょうか。これで最後かもしれないもの…ふふ…うふふ……」



希「………」



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---
--

亜里沙「お姉ちゃん、なにしてるの?」

絵里「…っ」ビクッ

絵里「あ…亜里沙……まだ起きていたの?」

亜里沙「ん……トイレで、起きて……」

亜里沙「……あれ、お姉ちゃん…包丁もって、どうしたの?」

絵里「あ……え、ええっと……その、ちょっとお腹すいちゃって、何か作ろうかなって……」


亜里沙「………」

亜里沙「ここ……2階だよ?台所……1階なのに……」

絵里「あ、え、えっと…それもそうね……あは、あはは……」

亜里沙「………」

絵里「亜里沙……?」


亜里沙「………」ギュッ


絵里「……!」

亜里沙「……なんか、よく…わからないけど……お姉ちゃん、危ないこと…しちゃ、だめだよ?」

絵里「亜里沙……」

絵里「ごめんね、私……」

亜里沙「………」

亜里沙「ううん……」

絵里「………」


絵里「あ……っ、」

絵里「ねえ……亜里沙、私……明日、ことりの家に行くから。」

亜里沙「ことりさんち……?」

絵里「え、ええ……」

亜里沙「………」

亜里沙「うん……わかった。」


亜里沙「…ふふ、じゃあおやすみ……」

絵里「ええ、おやすみ……」


ガチャン



絵里(亜里沙……)



絵里(…ごめんね、何もないとは思うけど……一応、ね。)

----
---
--


理事長「……んんん、もう…朝なのね………」

理事長「準備に時間かかって、結局眠れなかったけれど……」

理事長「……ふふっ、でもこれで、絢瀬さんを招く準備はバッチリよ?東條さん。」


希「………」


理事長「……それじゃ、行ってくるわね。」

希「………」

理事長「ふふ…今日戻ってくるときは、絢瀬さんも一緒よ?ずっと会いたがっていたでしょ…私、知ってるのよ。」

希「………」

理事長「…楽しみにしていて、ね?」



ガチャ


バタン

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---
--

ピンポーン
ピピピピピーンポーン


『はーい!今でるわ、今でるわよ!』


ガチャッ


絵里「……っ、にこ……!」

にこ「絵里……遅い………」ガタガタ

絵里「ごめんなさい……」


絵里(………ピンク色の帽子?これって……う)

にこ「ソフトクリームよ。」

絵里「え、ええ……」


にこ「………」

にこ「理事長…ずっと見張っといたわよ……」

絵里「えっ……今までずっと?!」

にこ「ええ……」ズルズル

にこ「今さっき学院に行ったから…帰ろうと思って。絵里の家…帰り道だから、報告がてら寄ったのよ。」ズル…

絵里「にこ……ありがとう。ほんとにありがとう…!」

絵里「ごめんなさい…寒かったでしょう……顔が赤いわ、にこ、熱が……」


にこ「………」ブルブル

にこ「……まぁ、これぐらい、寝てりゃ治るわよ……」ズルズル

絵里「にこ……」

にこ「理事長だけど……昨日は学院から帰ったと思ったら、変な倉庫に篭りっぱなしで……一度だけ家に、お湯と洗面器とタオル取りに戻ってたけど…それ以外朝までずっと出てこなかったわ。」

絵里「そう…だったの……」


絵里(お湯と…洗面器と、タオル…?)

絵里(生き物の水槽でも洗うのか、それとも……)

絵里(………)


にこ「ええ……」フラ…

にこ「……じゃあにこは帰って寝るから。みんなによろしく言っといて。」フラフラ

絵里「え、あ、大丈夫?家まで送るわよ…!」

にこ「大丈夫よ…それよりあんたは、みんなのこと…希のこと……」


にこ「………頼んだから。」


にこ「それじゃあね……」フラフラ




絵里「にこ……」


絵里(あんなになるまで、見張ってくれてたのね…)

絵里(あとは私が、なんとかしないと……)

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----
---
--

キーンコーンカーンコーン


穂乃果「帰ろー!海未ちゃんっ、ことりちゃん!」

海未「ええ、帰りましょう。」

ことり「………うん。」

穂乃果「あっ、校庭に凛ちゃん達がいる!おーいっ!凛ちゃーん!花陽ちゃーん!真姫ちゃーん!!」フリフリ



真姫「……??」

花陽「真姫ちゃん、上、上!」

凛「あっ、穂乃果ちゃんー!」フリフリ



穂乃果「3人揃って、どこいくのー!」



凛「にこちゃんが風邪引いたって聞いたから、これから3人でお見舞いに行くにゃー!」

真姫「全く…きっとお腹でも出して寝てたんだわ。」

花陽「あはは……それはないと思うけど…」





穂乃果「えーっ、いいなー!ねえ、海未ちゃん、穂乃果達も…!」

海未「そんなに大勢で行くと、迷惑かもしれませんよ…にこ、結構高熱みたいなので。」

穂乃果「そっか…にこちゃん、大丈夫かなぁ。」

穂乃果「……じゃあ凛ちゃん!花陽ちゃん!真姫ちゃん!穂乃果達の分まで、にこちゃんのこと、頼んだよっ!」



凛「まっかせるにゃー!!」



穂乃果「ふふ……」フリフリ

海未「……?あそこに歩いているのは、絵里と理事長ですか……」

穂乃果「あっ、ほんとだ……ぅ絵里ちゃーん!!」フリフリ



穂乃果「うーん……ちょっと遠いね、気づかないなぁ。」


海未「…ことり、今日、絵里と理事長は……」

ことり「あっ…えっと、その……うちのお母さんが持ってるもので……絵里ちゃんが、受験勉強の参考にしたいって、見せてもらう約束、してるみたい。」

穂乃果「なるほど~流石絵里ちゃん!そういえば三年生って、受験生なんだもんね……にこちゃんみてると、つい忘れちゃって。」

海未「………」

穂乃果「あはは……あれ、海未ちゃん?」

海未「……っ、なんですか?」

穂乃果「えっと……なんでもない、けど……」

穂乃果「…あははっ、帰ろっか。」


ことり「………うん。」

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--

理事長「……という機器が今はあってね、そういう使い方をすると……」

絵里「な…なるほど………」

理事長「ふふっ、そうなの……でもなかなか定電流電源って手に入らないから…難しいとこではあるわね。」

絵里「そうなんですね……生物も物理も受験で使うので、ありがたいです。」

理事長「いいえ…ふふっ、私もこういう話ができて嬉しいわ。ことりは専ら文系だし。」


絵里(理事長とこうして廃校の件以外で話すのって、多分はじめてだけど……)


理事長「それでね、………」


絵里(話の内容はともかくとして……普通、よね。)


理事長「………っと、ついたわよ。私、家から鍵持ってくるから…少し待っていてくれる?」

絵里「はい。」


ガチャ


バタン


絵里(………)

絵里(倉庫……)

絵里(あそこに…希が……)

絵里(……いや、期待はしない方がいいわね…)

絵里(でも……もしあそこにいないとなったら…もう思い当たるところもないし、また話がだいぶ振り出しの方に…)

絵里(………)

絵里(お願い、そこにいて……)



ガチャ


絵里「……!」

理事長「ふふ……取ってきたわよ。それじゃあ…」


理事長「………ふふふ、行きましょうか?」


絵里「……っ」ゾクッ

絵里(なに……いまの………)

絵里「は…はい。」

理事長「ふふ……」


絵里(気のせい…かしら)

理事長「よいしょっと…じゃあ鍵、あげるわね……」カチャカチャ



理事長「………」カチャン


絵里「………!」


理事長「じゃあ…入るけど。絢瀬さん、本当に大丈夫…?」

絵里「……虫なら、生物の教科書にもたくさん載ってますし…大丈夫です。」

理事長「そう……なら、いいのだけど。普通の人にはちょっと、ショックが大きいような生き物が多いのよ…だから心配で。」


絵里「………」

絵里「……大丈夫です。」

理事長「ふふ…頼もしいわ。それならじゃあ、入りましょうか。」ガチャ…


絵里「………」


絵里「おじゃまします……」

理事長「ふふ…」


理事長「いらっしゃい。」




ガチャン

何度荒らされてもラブライブ板でやってほしかった

>>207
ほんとはそうしたかった
でも何度も立て直されるより移動してほしいって意見が多くてさ

ただ、今こうして貼り直してるけどこの作業が想像以上にめんどくてもうどうしようかなと
反感買うかもしれんけど、むこうで完結まで立て直してやりつつこっちで清書してく感じにするかも
あのままだと埋めで読みづらいし

ちょっと考えるわ

ありがとう
そう言ってもらえると気が楽だ
ちょっとまだどうするかわかんないけど、ひとまず考えつつ貼ってく

---
--


コツ…コツ、コツ…

絵里(薄暗い……じめじめしてる……)

絵里「……っ」ガタガタ

絵里「あ…あの、電気はつけないんですか?」

理事長「電気はね…こういう虫って、暗いところの方が安心できるのよ。卓上電気はつけてるし、床も片付けておいたから…転んだりはしないでしょう?」

絵里「そ、う……ですね………」


絵里(確かに綺麗に片付いてる……それにここ、ソファベッドや冷蔵庫まであるのね…)

絵里(にこが朝までここに篭りっぱなしだって言っていたし……ここを朝まで片付けていたのか、またはここで寝たのか……)

絵里(………)


理事長「…ふふっ、それでこっちが多足類で……こっちがクモ類。それからそっちが……」

絵里「へ、へえ……そうなんですね……」ガタガタ

絵里(確かにこれは…普通の人にはショックが大きいわね……)

理事長「このゴキブリがね……」

絵里「あはは……」


絵里(気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い)


理事長「それでこの大きな蜘蛛が、天敵で…」

絵里「お、大きいですね…」


絵里(気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!)


理事長「……なのよ。」

絵里「な……なるほど。勉強になります……」ガタガタ

理事長「大体こんな感じかしらね……」

絵里「………あ…あの!この倉庫、地下もあるんですよね……?」

理事長「あら……よく知ってるわね、ことりから聞いたの?」

絵里「ええ…まぁ……ことりが、最近お母さんが素敵な生き物を手に入れたらしくて、ここに篭りっぱなしだって…言っていて。」

絵里「その生き物……まだ紹介、してもらってないので……もしかして地下にいるのかな……なんて。」

理事長「ふふっ、そうねえ……」

絵里「………」


理事長「……いいわよ、見る?でも、ここにいる生き物より多分…ショックが大きいわよ。」

絵里(ここより、ショックが大きい……)

理事長「あぁ、その……ほら、絢瀬さん、さっきから震えてるから……実はこういうの、結構苦手なんじゃないかって……ね?」

絵里「あ、ああ……そういうことですか。」

絵里「大丈夫です……その、私少し暗いのが苦手で……虫に関しては、それほど……」

理事長「あら、そうだったの…気づかなくてごめんなさい。でもそれなら良かったわ。地下は電気、ちゃんとつけてるから。」

絵里「そ…それならよかったです……」

理事長「ふふ…じゃあ行きましょうか。」

絵里「はい!」




コツ…コツ…コツ…


絵里(結構下るわね……)


コツ…コツ…コツ…


絵里(この先にいるのは…気味の悪い生き物か、それとも希か……)


コツ…コツ…コツ…


絵里(これだけスムーズに入れてくれるあたり…おそらくは前者…なんでしょうけど、でも…)


コツ…コツ…コツ…コツ


絵里(お願い…希、そこにいて……!)


理事長「ふふ…着いたわね。じゃあ、開けるわよ?」

絵里「はい……!」








ガチャ…


















絵里「………えっ」










絵里「………」

絵里「の……ぞみ………?」



絵里「希……っ?!」タッタッタ…



絵里「希………ねえ、希………!」

絵里「希なのよね?ねえ、希!希!!」ユサユサ

絵里「希!!!!のぞみっ!!!!」ユサユサッ


絵里「ねえ、絵里よ!!絵里!!!ねえ………希ったら!!!」

絵里「返事して!!!お願いだからっ!!」

絵里「のぞみっ!!!!」

絵里「のぞ………けほっ、けほ……」




絵里「はぁっ……はぁっ………」ジワ…

絵里「……のぞ……み…………?」ポロ…




絵里「………っ」ポロポロ





絵里「……な……によ…これ…………」ポロポロ

絵里「……………なんで………」ポロポロ

絵里「どうして……こんな………っ」ポロポロ



理事長「………ふふっ、」


絵里「………っ、!!!」ポロポロ


絵里「理事長!これ、理事長が……っ?!」ポロポロ

絵里「どういうこと……、どういうことよ!!!」ポロポロ

絵里「希に何をしたの………っねえっ!!」ポロポロ

絵里「希に何をしたのよ!!!!」ポロポロ


理事長「ふふっ…ふふふ……あははっ……ふふっ………」


理事長「ふふ………いいわ、絢瀬さん。東條さんには劣るけど……その表情、なかなかいいわよ?」

絵里「なに……言って…………っ」ポロポロ

理事長「ふふふ…東條さんとはね、ちょーっと一緒に遊んだだけよ……ふふ。」

絵里「ふざけないで……ふざけないで!!!」ポロポロ

理事長「ふふ…どうしても教えて欲しいなら、教えてあげるわよ?でもそうね…上で見た生き物よりは、かなりショックが大きいでしょうね…ふふっ」


絵里「なに……よ、それ…………」ポロポロ

絵里「………っ、」ポロポロ

絵里「警察に………っ」スッ


理事長「あら…警察に電話する?別にいいけど…できるかしら。」

絵里「圏外……」

絵里「………っ」スクッ


理事長「……上に上がって、助けを呼びに行く?ふふ……東條さんを置いて?」

絵里「貴女をなんとかすればいいんでしょ、それくらい……っ」スッ

理事長「あら…包丁なんて、物騒なもの……」


絵里「………っ、!!!」ヒュッ

理事長「………っく、」スッ

絵里「………っこの!!!」ヒュッ

理事長「…っ、危ないわね……!」クッ



バリバリバリッ!!



絵里「ゔぐっ………っ?!?!」

絵里「…………っ、」フラ…



……キンッ…





ドサッ


理事長「……っ、はぁ……はぁ……」

理事長「ふふ…随分あっさりね………頭に血がのぼった?」

絵里「………っ、………?!」

理事長「あっはは……全く、なんで包丁なんて選んだのよ…馬鹿ね、そういうのは本気で殺すつもりで来ないと当たらないわ。」グイッ


絵里「……っ」


理事長「…ふふ、体が動かない?今のはね、簡易式のスタンガン……」ズル…ズル

理事長「よく小説なんかでスタンガンで意識を飛ばしてるけど、あれは嘘……せいぜい3分程度動きを止められるってだけよ。」ズル…ズル

理事長「…ふふ、でも今は、3分もあれば十分。」ドサッ

理事長「ふふふ……」


カチャッ


絵里「………っ、」

理事長「その足枷……東條さんとお揃いよ。嬉しいでしょう?まぁ絢瀬さんの方がかなり短くて、東條さんの方がかなりお金がかかってるのだけど。」

絵里「……っ、……っ」

理事長「まだ体が動かない…?じゃあスマホが圏外だったネタバラシ。今この部屋はね、妨害電波が流れてるのよ…ふふ。」

絵里「……っう………!」

理事長「…そろそろ動くかしら。妨害電波ってね、よく映画とかで学校丸ごと妨害したり…島を丸ごと妨害したりしてるけど、あれも嘘ね。ある程度密室じゃないと使えないの。」

理事長「…でも、逆に密室限定でならかなり普及してるのよ。映画館とか、中国ではカンニング防止で使われたり……」

理事長「ふふ、ためになるでしょう?受験に出るかもしれないわね?ふふ、うふふ……」


絵里「………っ、そんなこと…どうでもいいわよ……!!」


理事長「ああ…そうね……そうよね、東條さんにしたことを聞きたいんだったかしら。」

絵里「………っ、」グ…

理事長「あら……そろそろ体も動きそうね。それじゃあ少し、離れましょうか……」


絵里(……っ、動く………!)

絵里「……っ」ダッ



ガチャン!


絵里「………っ、く……」ガチャ…ガチャ

理事長「ふふ…言ったでしょ?かなり短いって。でも隣で横になってる東條さんには届く長さよ。親切でしょう?」

絵里「……っ、どうして…こんなこと………!」


絵里「希……のぞみ、ねえ、しっかりして……!!」

絵里「希………っなんで………」ジワ…

絵里「なんで……こんな………酷い………」ポロポロ


絵里「のぞみ……のぞみ………っ」ポロポロ

絵里「なんで……っ、なんでこんな………っ」ポロポロ



理事長「ふふっ……ふふふ、」

理事長「私も困ってるのよ……東條さん、一昨日まではすっごくいい顔してくれてたのに…こんな風に、動かなくなってしまって。」

絵里「貴女がしたんでしょうっ?!!」ポロポロ

理事長「ふふ…ええ、そうね。私がしたの。」

理事長「髪がそんな色になったのも…足がそんなになってるのも、身体中の火傷も……」

理事長「ふふっ、明らかに意識はあるのに、こんな風になってしまってるのも……全部私がやったのよ?」

絵里「………っ、」ポロポロ


絵里「………なんでっ、」ポロポロ

絵里「なんでこんなことするのよ……!」ポロポロ

絵里「希が貴女に……何をしたっていうの!!」ポロポロ


理事長「……、なんでって………」

理事長「……ふふ、別に理由なんてないわよ?東條さんに何かされたわけでもない。むしろ彼女は、いつも喧嘩腰だった貴女と私の間に入ってくれて…助かっていたわ。」

絵里「…っ、そうね……そうよね、じゃあどうして………!」ポロポロ

理事長「……そんなの、私にもよくわからないわ。でも……やりたいからやってみる。本当にやりたいことって、そんな感じに始まるんじゃなかったかしら?うふふ。」

絵里「ふざけないで!!!」ポロポロ

理事長「ふざけてなんかいないわよ。事実そうなんだもの。特に理由なんてない、東條さんの恐怖に歪んだ顔が見たかっただけ。」

絵里「………っ、」ポロポロ


絵里「…………そんな……そんなの………」ポロポロ

絵里「狂ってる………っ」ポロポロ


理事長「ふふ…そうね。狂ってるのかもしれないわね。…でも、今の東條さんほどではないわね?ふふっ」

絵里「………っ」ポロポロ

絵里「希………」ポロポロ


絵里「ごめん……ごめんね……」ギュッ

絵里「もっと早く…来れたはずなのに………」ポロポロ

絵里「今だってもっとちゃんとしてれば……すぐに病院に行けたのに……っ」ポロポロ

絵里「私が…私がこんなだから………」ポロポロ

絵里「……っ、ぐす……ごめんね……」ポロポロ


絵里「ごめん…ね………っ」ポロポロ

絵里「う………っ………ぐ……ぐすっ…」ポロポロ

絵里「希………」ギュ…


理事長「ふふ……でも東條さん…本当に元に戻らないわね。昨日色々試したけど駄目で………絢瀬さんを見たら、もしかしたらって思ったんだけど。」

絵里「………っ」ポロポロ

絵里「すぐ……すぐ病院に連れてくわ。貴女が何をしたのか知らないけど、きちんと診て貰えば、まだ、生きてるんだから………っ」ポロポロ

理事長「ふふ…そうね、そうだといいわね?まぁもう元に戻すのは難しいと思うけれど…でも生きていれば可能性はあるわね。ふふっ。」

理事長「だけど…ねえ、ここから生きて出られるかしら?東條さん。」

絵里「どういうこと……私がこれ以上、希に何もさせないわよ……!!!」ポロポロ

理事長「へえ……それは頼もしいわね?ふふ……本当かしら。」

絵里「………っ、」ポロポロ


絵里「大体…すぐに捕まるわ。私がここに来ていることは、ことりだって知ってる……亜里沙にも伝えてあるわ。諦めて今すぐ……っ」ポロポロ

理事長「あっははっ…絢瀬さんって、本当に絢瀬さんよね。ふふ…面白いわ。」

理事長「あのねぇ…捕まるのを恐れていたら、こんなことするわけないでしょう?そんなの既に想定済みよ。……でも、捕まるまでにはほら…ふふっ、まだ結構時間がありそうね?」

絵里「………っ」ポロポロ


理事長「…まぁ私だって、できれば捕まりたくないの。飛行機のチケットはとってあるわ。」

理事長「それに……ふふっ、ことりはきっと、わかっても通報なんてしないの。むしろもしかしたら、既にわかってるのかもしれない。」

理事長「あの子ね…私のこと、大好きだから。夫とは離婚してるし…私がいなくなったら、独りぼっちになっちゃうもの。」

絵里「……っ、でも、亜里沙が……!」ポロポロ

理事長「そうねえ…亜里沙ちゃんが気づくのはいつかしら?だいぶ遅いでしょうね?警察が来る前に二人で楽しんで……それから、ね?」

理事長「……ふふっ、とりあえず東條さんにしたこと……そうね、そんなに時間はないからゆっくりと…とはいかないけど。教えてあげるわ。」


絵里「………っ、 」ポロポロ

絵里(亜里沙が気づくのは…確かに恐らく深夜とかになって、はじめて)

絵里(あとはことり……)



絵里(ことり………)

絵里(お願い……………)



絵里(ことり………!!)



----
---
--

穂乃果「それじゃっ、ことりちゃん…また明日ね!」

ことり「うん………」

海未「ことり、また明日会いましょう。」

ことり「うん……また明日、ね。」



ガチャン


穂乃果「………」

海未「………」


穂乃果「ことりちゃん……元気ないね。」

海未「そう……ですね、やっぱり……」


穂乃果「………、…ねえ海未ちゃん。穂乃果ね、こないだことりちゃんが聞いてきたこと…ちゃんと考えてみたの。」

海未「穂乃果……」

海未「私もです。私もあれから…ずっと考えて……それで………」

穂乃果「ふふっ、ねえ、海未ちゃん……この後空いてる?」

海未「え、ええ……」

穂乃果「穂乃果のうちで、答え合わせ…しよっか。」

海未「………!穂乃果………」

海未「そう…ですね。何かことりの役に立てるかもしれません……」

穂乃果「…ふふっ、じゃあ行こ!れっつごー!」グイグイ

海未「ほ、穂乃果…もう、走らなくても穂むらはすぐそこですよ。」


タッタッタ……


----
---
--

ガチャン

ことり「………」


ことり(今頃……あの倉庫に、絵里ちゃんが……)

ことり「大丈夫…だよね。」


ことり(これでお母さんが何もしてないって、普通に趣味に没頭してただけだって…わかるんだから)

ことり「大丈夫……大丈夫……」


ことり「そうだ…!」


ことり(お母さん…帰ってきたら、少しでも疑っちゃったこと…ちゃんと謝って)

ことり(それから前みたいに…二人で一緒に、チーズケーキが食べたいな)


ことり「ふふ……そうと決まれば、急いで作らなくちゃ………」

ことり「エプロンエプロン…………あっ、」

ことり(これ………)


ことり「………」スッ

ことり「……懐かしいな、アルバム…………」

ことり「………」ペラッ


ことり(………)

ことり(……5歳、くらいかな)

ことり(穂乃果ちゃんと…穂乃果ちゃんのお母さんと、お父さんと……)

ことり(…それから私と、お母さん……)

ことり「……ふふっ」


ことり(……お父さんが出てっちゃって………それからずっと、一人で育ててくれて……)

ことり「………」ペラッ

ことり(留学の時も……あれだけ大騒ぎしちゃって、結局行かなくて……たくさん迷惑かけたのに)

ことり(もちろん叱られはしたけど……ことりが本当にやりたいことがそれならって、許してくれた。)

ことり「………」ペラッ


ことり(お母さん……)

ことり「………」


ことり「………」ペラッ

ことり「あ、海未ちゃんだ……」


ことり(ふふ、そうそう…海未ちゃんは越してきて……初めは恥ずかしがり屋さんで)

ことり(あれ……それは今もか……なんて言ったら、怒られちゃうかな……)

ことり「ふふ……」バフッ


ことり「………」ペラッ



ことり「………」ペラッ





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---
--


理事長「………まぁ、そんな感じかしら……」

理事長「大変だったのよ?目を離せば死のうとするし。舌は噛むし。」

理事長「おまけに一度なんて、巻き添えみたいに殺されかけたんだから……ほら、包帯とると……まだ跡が残ってる。」スルスル


理事長「………」

理事長「………ねえ、聞いてるの?」



絵里「…………」

理事長「まさか絢瀬さん、話聞いただけで東條さんみたいに………」

絵里「…………」

理事長「……なんて、ふふっ…そんなこと、あるわけないか……」


絵里「…………」ポロ…


絵里「………っ」ポロポロ

理事長「あらら……泣いてるの?ふふふ……」


絵里「……な…………こ………」ポロポロ

理事長「え、何………?」

絵里「なんで……そんなこと…………っ!!」ポロポロ

理事長「ふふ………」

絵里「はっ……はっ……はぁっ、は………」ポロポロ

絵里「……けほっ、ゔ………けほっ、けほっ………」ポロポロ


絵里「じゃあ、このガムテープって………!」ポロポロ


理事長「ああ……そうよ、だってムカデが出てきたら困るじゃない?」

絵里「むか……で………」ポロポロ

絵里「ぅ………げほっ……ゔぅ……かはっ、げほっげほっ……」ポロポロ


理事長「ええ……ちょっと、吐かないでくれる?もう…汚いわね…これ、洗面器とタオル……自分でなんとかしてくれる?」シュッ


絵里「ぅ"………うゔ………かはっ……」ポロポロ

絵里「はぁ………はぁ…………」ポロポロ


理事長「ふふふ……」

絵里「許さない…………」ポロポロ

理事長「うふふ……なあに?」


絵里「許さない………!!」ポロポロ


理事長「ふふ……いいわね、それ。じゃあどうする?」


絵里「絶対……警察に突き出して………」ポロポロ

絵里「罪を償ってもらうから………!!」ポロポロ


理事長「あはは……案外甘いのね?東條さん、もうきっと元には戻らないわよ?殺されたようなものなのに……」

理事長「てっきり東條さんにしたのと同じこと、私にする……くらい言うと思ったわ。」

絵里「本当はそうしてやりたいわよ………!!けど……っ」ポロポロ

絵里「希は優しいから…そんなこときっと望まない……私は貴女みたいにはならない……希はまだ死んでない!!」ポロポロ

絵里「希……………」ポロポロ


絵里「希……私、間違ってるかしら……希なら多分、そう言うかなって………そう思って……」ポロポロ

絵里「ねえ、教えて……貴女の意見が聞きたいの。」ポロポロ

絵里「のぞみ………」ポロポロ



ギュッ…



絵里「ぅ……えぐっ…………う………う……」ポロポロ

絵里「ごめんね……ほん…とに………ぐすっ」ポロポロ

絵里「本当にごめんね………」ポロポロ


絵里「私がもっと早く来てれば……もっと早く…気づいていたら………」ポロポロ

絵里「こんな……こんなことには……っ、…ならなかったのに………」ポロポロ

絵里「う………うう………けほっ……のぞみ…………」ポロポロ


絵里「痛かったよね……怖かったよね、辛かったでしょ………」ポロポロ

絵里「自分で…死のうと……する…なんて………」ポロポロ

絵里「………そんな…こと……しようとするなんて………」ポロポロ

絵里「こんな……こんな…になる、まで………どれだけ怖かったか……どれだけ、痛かったか………」ポロポロ

絵里「う……ぅあ………ぐすっ、ごめん…ね……希だけに、こんなの……押しつけて……ごめん、ね………」ポロポロ

絵里「μ'sのこと……私のこと……守ってくれて、ありがとう………」ポロポロ


絵里「う……ぐすっ………けほ………」ポロポロ

絵里「……っ、う………うう………」ポロポロ


絵里「…けほっ、けほ……でも……でも…ね、μ'sは9人で…μ'sだから………貴女がいないと、ダメなのよ………」ポロポロ

絵里「一人も…欠けちゃ、だめでしょ……?」ポロポロ

絵里「ねえ……そう…、でしょ?ううん…そうなの……!」ポロポロ

絵里「……9人いなきゃ、希がいなきゃ……!だめ…なのよ……」ポロポロ

絵里「ねえ……希…………!」ポロポロ


絵里「う………ぐすっ………う…………」ポロポロ

絵里「お願い……貴女の声が聞きたいの………」ポロポロ

絵里「希………」ポロポロ


絵里「希………!」ポロポロ


絵里「希ったら……ねえ、希………!」ポロポロ

絵里「ぅ……ぐす………お願い……お願い………」ポロポロ

絵里「のぞみ………!」ポロポロ

絵里「返事してよ………希…………」ポロポロ



絵里「う………うう……けほっ……ぐすっ……うううう………」ポロポロ



理事長「ふふふ………」

絵里「………っ、」ポロポロ


理事長「………だめそうね。絢瀬さんなら治せるかなって、思ってたんだけれど。」

絵里「治るわ……ぜったい治るわよ……少し時間が必要なだけ……」ポロポロ

絵里「……私が治すわよ………ここから出て……!!絶対!!!」ポロポロ

理事長「ふふ…強気ね?ここから出る、何か算段でもあるの?」

絵里「………っ、それは………」ポロポロ


理事長「あはは……馬鹿ね。敵陣に乗り込むときに、どうして作戦をきちんと練ってこないのよ……どうしてきちんと覚悟してこないのよ。」

理事長「ふふ…それともアレかしら、なんだかんだ、ここにいるのは全然別の生き物だとでも思ってた?」

絵里「………っ、」ポロポロ


理事長「あはは……そうなのね。まぁ理事長だし…ことりの母親なんだし、そう思うのも当然……か。」

理事長「ふふ…じゃあそろそろ時間もないし……次の段階に行きましょうか?」

絵里「次の段階……?」ポロポロ



カチッ


絵里「い"っ?!?!」パッ


バリバリッ…バリッ……ジジ……ッ


希「………っ、ぁ………っ」ガクガクガクガク

絵里「希!!希?!」ソッ


バチッ


絵里「痛っ!!」

絵里「何……なんで……なんでっ!!」ポロポロ

絵里「何してるのよ!!!止めて!!!」ポロポロ


理事長「ふふ…嫌よ。」

絵里「どういうこと……どこから………!!?」

絵里「……っ、足枷………!」

理事長「ふふふ…気づくのが遅いわよ。東條さんの足枷の方が、お金がかかってるって言ったでしょう…?」

理事長「…ほら、コードが出てて…こっちまで繋がってるんだから。後はどういうことがわかるわね?」

絵里「………っ、」


絵里「……っ、ぐ………っ!」グイ……

理事長「あぁ…確かにコードを切ればいい話よ?でもね、それは切れない……たとえ包丁でも切れないはずよ。そこを切れないように加工して、足枷に細工するので…今日私、寝てないんだから。」

絵里「……っ、く、はぁ…っ、はぁ…っ」


希「……っ、かはっ………」ガクガクガクガク


絵里「希!!希っ!!!」ポロポロ

絵里「お願い止めて!!!なんでもするから……止めて!!!止めてよ!!!!」ポロポロ

理事長「えー…、どうしようかしら?」

絵里「お願いだから!!!」ポロポロ

理事長「ふふっ、仕方ないわね…はじめだから一回だけ、サービスよ?」


カチッ


希「……っ、けはっ……は………」ガクガク

絵里「希………!」

絵里「のぞみ……のぞみ……」ポロポロ

絵里「ごめん……ごめんね……また、私………」ポロポロ

絵里「私………」ポロポロ

絵里「………っ、」ポロポロ


理事長「ふふ……あぁ、そうだ……説明せずに始めちゃったわね。」

絵里「なによ………」ポロポロ

理事長「あのね…東條さんの足枷から流れてる電流、20mAあるの。」

絵里「20mA………?」ポロポロ

理事長「そう……いくら物理の勉強をしていても、これの危険さなんて…わからないかしら。」


理事長「ふふ……あのね、絢瀬さん。人は5mAから痛みを感じて、10mAからは耐え難い引きつけを感じる……それでね、20mAからは筋肉の収縮、呼吸困難………」

理事長「……まぁ簡単に言うとね、20mAって電流は…長く流し続ければ、人が死ぬ大きさの電流なのよ。」

絵里「………っ、それって………」ポロポロ

理事長「ふふ……東條さん、もう壊れちゃってるし……つまらないから、おしまいに…」


絵里「やめて!!!!」ポロポロ


理事長「……っ、うるさいわね……嫌よ、やめないわ。」

絵里「………っ、」ポロポロ

絵里「……なん……で………っ」ポロポロ


理事長「…でも東條さんも可哀想ね?ここまでたくさん痛い思いをしてきたのに…気が確かじゃないとはいえ、最後にそんな殺し方されるんだもの……」

理事長「……絢瀬さん、さっき東條さんに触ったでしょう?あれが一瞬じゃないのよ……ふふ、うふふ。」

絵里「やめて………」ポロポロ

絵里「お願い……お願いだから………」ポロポロ

絵里「なんでもするから……お願いだから………」ポロポロ


絵里「……う……っ、ぐす………うう……」ポロポロ

絵里「希………」ポロポロ

絵里「ねえ、希………っ」ポロポロ

絵里「…のぞみ…………」ポロポロ


理事長「ふふ……ねえ、そろそろ始めてもいいかしら?」

絵里「嫌………っ!」ポロポロ

絵里「なんで……なんでよ………」ポロポロ

絵里「こんなの………酷すぎる……っ」ポロポロ

理事長「ふふふ…その顔、なかなか素敵よ…絢瀬さん。でも、ねえ……」

絵里「………っ」ポロポロ


理事長「……ふふっ、じゃあ再開するわね?」


絵里「待って………!」ポロポロ


理事長「………何かしら。手短に話してちょうだい。」

絵里「………」ポロポロ

絵里「私が………」ポロポロ

絵里「私が代わるわよ………」ポロポロ

理事長「ふふ、代わりたいの?何に?」

絵里「私が希の代わりに、なんでも受けるわよ……!!だから希には………っ」ポロ…

理事長「ふふっ…なるほどねぇ……」



理事長「……駄目よ、そんなの。」



絵里「えっ……」

理事長「ふふ…その要求、通ると思った?今なら自分の方が、東條さんよりいい反応ができるから。」

絵里「………っ、」

理事長「あははっ、甘いわね……悪いけどここはね、そんなに甘いところじゃないの。」

理事長「………でも、私も鬼ではないわ。」シュッ


……キンッ…



絵里「これ………」

理事長「ふふ…貴女が持ってきた包丁よ?ちょうど良かったわ…ふふふ」

理事長「それで東條さんのこと…殺してあげたらいいじゃない。」

絵里「………っ、何……言ってるのよ………!」


理事長「何って、親切で言ってあげてるのよ?ここまでずっと痛い思いをしてきた東條さん…最後まで痛くてつらい中死ぬなんて、可哀想じゃない。」

理事長「ふふ……だから絢瀬さんが殺してあげたらいいと思うの。心臓をひとつきでも、喉を掻っ切るんでも……少なくともこのまま電気で死ぬよりは楽だと思うわよ?」

絵里「そんなこと…っ、そんなこと、私がするわけないじゃない……!!」

理事長「………そう。ふふっ、それならそれでも、いいんだけど………」

理事長「じゃあ、再開するわね?」

絵里「待っ……!」


カチッ


バ……ッバリッ……ジジ………ジッ


希「ぁ………っ、…………っ」ガクガクガクガク

絵里「希!!」

絵里「止めて!!!止めてよ!!!!」ポロポロ

理事長「ふふ……どうしようかしら。それが人に物を頼む態度?」

絵里「………っ、止めてください!!お願いします、止めてください!!!!」ポロポロ

理事長「あっはは……こういうのもなかなかいいわね。じゃあ、そうねえ……」シュッ

絵里「………っ、」パシッ


絵里「なに……これ………」ポロポロ

理事長「ふふ…さっき貴女に流した簡易式スタンガン。これ…自分に10秒間通電するたびに、東條さんの電源…1分間切ってあげる。」

絵里「………っ、10秒間って、体が動かなくなったら……」ポロポロ

理事長「あぁ……その辺は電圧を調整してあるから大丈夫よ。火傷はすると思うけど、体が動かなくなることはないわ。10秒程度なら命に影響もしないはず。」

絵里「………っ、わかったわよ……その代わり、ちゃんとやったら希のを……っ!」ポロポロ

理事長「ええ、約束は守るわよ?ふふっ…」


希「………っ、はっ……ぁ………」ガクガクガクガク

絵里「希っ、すぐ終わらせるから……もう少しだけ……待ってて…!」ポロポロ

絵里「………っ」カチッ


バリバリッバリ………ジジ……ッ


絵里(普通なら目立たない、太ももとか…足の方だけど……)

絵里(……でも、いざというとき足がやられてちゃ、希を連れて逃げれない………っ)

絵里「………っ、」グッ


ジジッ……ジ……ッ

絵里「ぅ"………ぁっ……ぁあっ……あああっ」ジュ…ッ

理事長「ふふ……左腕にしたの…?面白いわね……8……7……」

絵里「ぐ………っく………………」ジジ…ジ…


絵里「ぅ………かはっ」パッ


理事長「5………だめじゃない、ふふ…やっぱり口だけね?」

絵里「はぁっ……はぁっ………」ガタガタ

理事長「……東條さん、死んじゃうわよ?ふふっ」

絵里「待って……!もう一度………!」ポロポロ


カチッ


ジジジ………ッ

絵里「………っ、」グッ


絵里「っく………ぅ"……うう…………」ジュウ……


理事長「5……4………」


絵里「ぅ"……ぁ…………うぐ……っ」ジュ…ジジッ


理事長「2……1……0」


カチッ/カチッ


絵里「………っはぁっ、はぁっ……希!」ポロポロ

希「………っ、は………はっ……けほっ……」


理事長「ふふ…これで1分間ね。」

絵里「………っ、」ポロポロ


絵里(これで……1分………)

絵里(ことりか亜里沙が気づいて行動してくれるまで……あと、どれくらい……?)

絵里(深夜としたら……今はまだ4時か…5時くらいだから………)

絵里「………っ、」ゾクッ


絵里「そ…んなに………」ポロポロ

希「は………はっ………」

絵里「………っ」ブンブン

絵里(希はもっとつらかったんだもの……これくらい……私が耐えなきゃ………)

絵里(私が………)



絵里「のぞみ………」ポロポロ

絵里「希……私………頑張るから、だから……」ポロポロ



絵里「ぜったい……絶対死なないで……!」ポロポロ




----
---
--


花陽「ここ…どこかな……」

凛「うーん……おかしいなぁ…この辺のはずなのに!にこちゃんの家、わかりにくいにゃー!」

真姫「住所が間違ってるんじゃないの?ちょっと見せて。」パシッ

凛「あっ、真姫ちゃん~」


真姫「…………」


真姫「……凛、この地図反対に見てたでしょ?ここ、真逆の位置じゃない、全く……」

花陽「あはは……どうりで………」

凛「えーっ、凛、ちゃんと見てたよ~……この辺入り組んでるんだもん!」


真姫「もう……凛に任せたのが間違いだったわ。ほら、あっちよ。」

花陽「真姫ちゃん……!よかったっ」

凛「初めから真姫ちゃんに任せればよかったにゃー…」



テクテク……


----
---
--

ことり「ふんふんふふーん♪、できたぁ!」

ことり「ふふっ、美味しそう……」


\6時のニュースです。今日未明……/


ことり「……!もう、6時………」

ことり「………」


ことり(まだ、お母さん達……帰ってきてない)

ことり(少し…遅い、ような)

ことり「………」


ことり(見に行く………?)

ことり「………っ、」スクッ

ことり「………」

ことり(でも………)

ことり「………」

ことり「………」ストン


ことり(……ううん。何も問題ないなら、見に行っても…大丈夫、だよね?)

ことり「………っ、」スクッ

ことり「………」ストン


ことり「…………」


ことり(…問題ないなら、見に行かなくても………)


ことり「………」

ことり「お母さんが……絵里ちゃんに話すのに、没頭してる…だけ、だよね。」

ことり「……そうだよ、ね…………」


ことり(……でも、やっぱり……見に行った方が……)

ことり(………)



ことり「………」


----
---
--


カチ/カチッ


絵里「………っ、はぁっ…はぁっ………」ポロポロ

希「……は………は………けほっ………」


理事長「……東條さん、段々呼吸が浅くなってきたわね。元々かなり衰弱してたし…そろそろ」

絵里「………っ、」ポロポロ


絵里(何回……通電したら………っ、)

絵里(……もう左腕、火傷で……………)


理事長「……ふふっ、でも意外だったわ。絢瀬さん…もっとすぐ諦めちゃうのかと思ってたけど、意外と粘るのね。」

理事長「なんだかんだもうすぐ1時間と少したつし……まぁ東條さんが受けてた時間と、私が喋ってた時間を考えても…50回くらいはしたのかしら。……ほんとに東條さんのこと、大切なのね。」

絵里「当たり前でしょ………」ポロポロ

絵里「痛っ………」ポロポロ


理事長「うふふ…左腕、痛む?」

絵里「………っ、」ポロポロ

絵里「ねえ…もう、やめて……!これ以上やっても、もう………っ、!」ポロポロ

理事長「あっはは……これ以上やったら、何があるっていうの?」

絵里「………っ」ポロポロ

理事長「……ああ、そろそろ1分ね。再開するわよ?」

絵里「待っ………」ポロポロ


カチッ


バリバリッ……ジジジ………ッ


希「………はっ、ぁ…………けはっ」ガクガクガクガク

希「げほっ……けほっ…………かはっ」ガクガクガクガク

絵里「希……!」ポロポロ


絵里「………っ、待ってて」カチッ


ジジッ………

絵里「はー……っ、」


グッ


絵里「……っう………ぐ………ぁあ"っ………っく………」ジュ…ッ


理事長「7……6……5……」


絵里「は………ぁ………けはっ………う"………」ジジ……



……カチッ



絵里「…………っ、?!」

絵里「……けほっ、けはっ………何………?」カチ…カチッ

絵里「どういうこと……電流が………っ」カチカチッ


理事長「あらら……電池切れ、みたいね。」

絵里「………っ、何よそれ……どういうことっ!?」

理事長「どういうこと…って、そのままの意味よ、電池が切れたの。」

絵里「……っ、じゃあ、次はどうしたらっ」

絵里「……どうしたらっ、希のを止めてくれるの!!」

理事長「どうしたらって……ふふ、もうおしまいよ。元からそれで時間を稼いで…亜里沙ちゃんが気づくまで頑張れば、東條さん、間に合うかもね……なんて、私、言ってないしね?」

絵里「は…………?」


絵里「………っ、」

絵里「………なによ……それ………」ジワ…

絵里「元から希が助かる道なんて、なかったってこと………?」ポロポロ


理事長「ふふ…そんなことないわよ?絢瀬さんがもっと早く気付いて、絢瀬さんがもっと気が利けば……東條さんは今頃、助かっていたわ。」

理事長「東條さんが死ぬのは、絢瀬さんのせいなのよ。」

絵里「そ……んな……の………っ、」ポロポロ


絵里「そんなの………っ、!!」ポロポロ

理事長「ふふ…そんなことより、いいの?東條さん……そろそろ……」

希「ぁ………かはっ」ガクガクガク

希「がはっ……は………は……げほっ…ごほっ……」ビチャッ…ビチャ…

絵里「希?!!」ポロポロ

希「は……は………けはっ…………は……」ガクガク

絵里「なんで……血なんて………っ、」ポロポロ

絵里「お願い止めて!!!お願いだから……っ」ポロポロ

絵里「希が………希が死んじゃう!!」ポロポロ


理事長「ふふ……そうね、まぁ…電池切れまで頑張ったご褒美に、少し止めるくらいなら…いいかもしれないわね。」


カチッ


絵里「希………っ!」ポロポロ

希「は……は…………」


希「……けはっ…………」ビチャ…

絵里「いや……嫌よっ、死なないで!!」ポロポロ


理事長「ふふ……出血ねえ。少し驚いたわ。電流で臓器がやられたか……それともストレスで胃に穴でも空いたのかしら。ふふっ」


絵里「………っぐ……っ!」ガチャ……!

絵里「………っ、………!」ガチャッ…ガチャンッ


理事長「無駄よ。そんなことしても、鎖は取れないわ。」

絵里「だって………」ポロポロ


絵里「だって………!」ポロポロ


理事長「ふふふ……いい顔。そういえば東條さんも、色々試していたけれど…」

理事長「……ふふ、最後の最後には、"何を考えても、何をしても無駄なんだ。"って呟いて……そこからまともな返事はしなくなったわね。」

絵里「希………」ポロポロ


絵里「そ……んな…こと………」ポロポロ

理事長「もう諦めたら?何を考えても、何をしても無駄なのよ……ふふふ、先にここにきた先輩の言葉は、信じたほうがいいわよ?」

絵里「…………」ポロポロ

絵里「のぞみ………」ポロポロ

絵里(もう…だめなの?どうしようもないの?)

絵里(希………っ)


理事長「……でも、そうね。……やっぱり東條さん、助けてあげてもいいかもしれないわね。」

絵里「………っ、本当に………!」ポロポロ

理事長「…ええ。私…正直ね、絢瀬さんがここまで頑張れるなんて…全然思ってなかったの。ふふ、ごめんなさい。」

絵里「………」ポロポロ

理事長「……だからね、一つ条件をあげるわよ。考えてみたら東條さんだって、μ'sの誰かを売れば助けてあげる…って条件が、はじめにあったんだし。」

絵里「条件って……」ポロポロ


絵里(μ'sの誰かを売る……?それって……)

理事長「ふふ…μ'sの誰かを売ってなんて条件、出さないから安心して?時間的にもそんな余裕は今回はないし……」

理事長「ねえ、そこに落ちてるでしょう、絢瀬さんの包丁。」

絵里「………、っ…ええ……」ポロポロ

理事長「ふふ……あのね、絢瀬さん……その包丁を使って、」



理事長「………自殺してくれる?」




絵里「………っ、」

絵里「自…殺…………?」ポロポロ

理事長「ふふっ、そう……心臓をひとつきでも、喉を掻っ切るんでもいいわよ?ふふふ……絢瀬さんが死んだら急いで空港に向かって、向かいながらここに救急車を呼んであげる。」

絵里「そ……んなの……」ポロポロ

絵里「………っ」ポロポロ

理事長「どうする?あまり時間はないわよ、私もそろそろ急ぎたいし…東條さんだって、そろそろ限界よ。」

絵里「………」ポロポロ

絵里「…そん…なの、できるわけ………」ポロポロ

理事長「…ふふっ、まぁそうよね……じゃあここからは、東條さんが少しずつ弱って死んでくのを指を咥えて見てるか……絢瀬さんが殺してあげるかの、2択になるわね?」

絵里「………っ、待って……!」ポロポロ

理事長「……早く決めて?あんまり待てないわよ。」

絵里「…………っ」ポロポロ


絵里「…………」ポロポロ



絵里「じ…さつ………」ポロポロ


絵里(自殺……なんて、そんなの……)

絵里(……そんなの、亜里沙が悲しむ………)

絵里(おばあさまだって…お母さんも、お父さんも……)

絵里(……簡単に、できるわけないじゃない………!)


絵里(……でも希は……自分からそれを選択するくらい、つらい目にたくさんあって……)

絵里(それなのに私は、最後まで全て希に押し付けるの?)

絵里(そんなこと……)


絵里「………っ」ポロポロ


絵里(…………っ、そんなこと、できない。)

絵里(…だって私にとって、希は……)

絵里(希は………)



絵里(希は………!)



絵里「………っ、」ポロポロ


希「はっ………は…………」


絵里「のぞみ……………」ポロポロ




………ギュッ




『………あのっ、!』


『……あなたは?』


『私………』


『……っ、うち、東條希!』




『あーやせさんっ!』

『…なにかしら?』

『ふふっ、一緒にここのパフェ、食べに行かない?うち、ずーっと気になってるんよ、ここ!』

『…チョコレートパフェ………』

『あっ、絢瀬さん、チョコレートが好きなんっ?ここのチョコパフェ、美味しいって評判なんよ!』

『そうなの……』

『ふふっ…うん、そうなん!』

『………』

『絢瀬さん?やっぱり、駄目……かなぁ?』

『……っ、ううん……そうじゃなくて。』

『………?』

『………その、行くかわりに……かわりにって言ったらなんだけど、希って呼んでもいいかしら?』

『えっ……』

『……やっぱり、嫌?』

『ううん!そんなことない!!嬉しい!!』

『本当?良かった……その、希も私のこと、絢瀬さん、じゃなくて………』

『えりち!』

『えっ……?』

『……ふふっ、"えりち"って、呼んでもいいかな?』

『えりち………ふふっ、いいわね、えりち。そう呼んでくれる?』

『ふふっ……うん!』





『えりちの……えりちの、本当にやりたいことは?』





『希……!』

『…なぁん?』

『その……私、私ね………』

『うん……?』

『………っ、これ、μ'sのアンケート?』

『そうやけど……』

『………』

『えりち…?何か話が……』

『……っ、ううん……なんでもない……』

『………?』

『ふふ、なんでもない…から。それより練習、早く行きましょ?』




『希……何か悩んでるの?』

『んーん、なーんもっ』

『嘘、私にはわかるわよ……もう2年も一緒にいるんだから。』

『……ははっ、そうやね……』

『…これじゃあもう、えりちに隠し事は、できないなぁ。』

『ふふっ、そうよ。ねえ…聞かせて?』

『えっと……その、大したことではないんやけどね?』







『………みんなで、みんなで一つの曲が、作れたらいいなぁって……あはは 』





絵里「………っ、」ポロポロ

絵里「希………」ポロポロ

絵里「のぞみ………」ポロポロ


絵里「う………ぐすっ、ううう………」ギュウウ…


理事長「ふふ、どうするの?」

絵里「………っ、」ポロポロ

絵里「…………、わかった…わよ……」ポロポロ

絵里「死ねばいいんでしょう……やるわよ………!」ポロポロ


………キン……



理事長「………」

理事長「ふふ……本当?」

理事長「ふふっ………うふふっ……」

理事長「あはははっ……ふふっ、うふふ……」

絵里「………っ、」


理事長「はぁ……東條さんの言った通りだったのね、私…絢瀬さんのこと、全然わかってなかったのかも。」

理事長「じゃあ…ほら、そうね……最後の言葉くらい、聞いてあげるわよ?」

絵里「貴女に言うことなんて、何も無いわよ。それより……ねえ、」

絵里「私が死んだら……本当に希のこと………!」

理事長「ええ、助かるかどうかはともかく、さっき言ったように…救急車、呼んであげるわよ。」

理事長「…ふふっ、もしも東條さんが正気に戻った時に、自分のせいで絢瀬さんが死んだ…って知ったら、どうなるかしら……」

理事長「ふふふ、それを考えるのも楽しいし…貴女が死んだ後に、わざわざ東條さんを殺したりはしないわ。」

絵里「そう………」

絵里「………」


絵里「……私、最後は希と話すから……貴女は少し、黙っていてくれる?」

理事長「ふふ……はいはい。」

絵里「………」


絵里(希………)



ギュッ…



絵里(つめたい……)

絵里(希の手、もっと暖かかったはずなのに。)

絵里「………」


絵里「ねえ、希…………」

希「………」

絵里「聞こえてる…?絵里よ、えりち……」ナデ…

希「………」

絵里「ごめんね……」

希「………」

絵里「……あのね、貴女に話したいこと…たくさんあるの。時間はあまりないけど…聞いてくれる?」

希「………」

絵里「………」



絵里「……私ね、」

絵里「高校に入って…毎日とても幸せだった。」

希「………」

絵里「それはきっと…希が私に声をかけてくれたから。えりちって…呼んでくれたから。」

希「………」

絵里「クラスではいつだって隣に希がいて、二人で一緒に生徒会活動もして。」

希「………」

絵里「学校だけじゃない…二人でたくさん、出かけたり、誕生日を祝いあったり…パフェを食べに行ったり。いろんなこと、したわね。」

希「………」

絵里「……私も希も、そういうことするの…初めてだったから。ふふ、上手くいかないこともあったけど……でも、全部とても楽しかった。」

希「………」

絵里「それから勿論…μ'sもそう。」

希「………」

絵里「……希。廃校が決まって…一人で空回りしていた私を、助けてくれてありがとう。」

希「………」

絵里「あの時私は、希を振り切って…穂乃果の手を、とったけれど。でも希がいなかったら、そんなことできなかったわ。」

希「………」

絵里「……μ'sに入って、歌って…踊って。すごく楽しくて…この時間は、私にとって大切な宝物。」

希「………」

絵里「…ふふっ、こんな大切な宝物に出会えたのは…貴女のおかげなの。」

希「………」

希「………」

絵里「それからね、3年も一緒にいて、少しずつ、希が悩んでいたり…困ってるとき、わかるようになって 」

希「………」

絵里「……希は嫌がったけれど、周りの皆が気づかないこと…私だけが気づけるの、なんていうか…誇らしかった。嬉しかったの。」

希「………」

絵里「………」



絵里「……あのね、希。」

希「………」

絵里「希が考えたことも……したことも、無駄なことなんて、一つもなかったわ。」

希「………」

絵里「…希だって不器用なのに、私に声をかけてくれて。結果的に私達は、これだけ仲良くなれた。」

希「………」

絵里「希が裏でたくさん考えて……たくさんのことをしたから、μ'sができたの。」

希「………」

絵里「……今回のこともそう。」

希「………」

絵里「希が理事長の首を絞めたから、理事長を疑うきっかけになったの。」

希「………」

絵里「希が…あのおにぎりを頼んだから、理事長を調べるきっかけになったの。」

希「………」

絵里「きっとそれ……希が考えてしたことだったんでしょう?」

希「………」

絵里「……希が何も考えないで、何もしなかったら………私は今でも希を見つけられなかった。だからね……」

希「………」

絵里「……希が考えたことも、したことも……やっぱり無駄なんかじゃ、なかったのよ。これからもそう……希が考えることも、することも……一つも無駄になんて、ならないわ。」

希「………」

絵里「……だから、」

希「………」

絵里「………だからごめんね。」

絵里「……私がもっと…もっとちゃんと考えて動いていたら、こんな結果には…きっとならなかった。」

希「………」

絵里「やっぱり私って、どこかポンコツなのかもしれないわね。にこにも言われたの、あんた希がいないと、てんでダメね…って。」

希「………」


絵里「………」

希「………」

絵里「……ごめんね、」

希「………」

絵里「…ふふっ、謝ってばっかりだけど…でも、謝っても謝りたりないの。」

希「………」

絵里「………あのね、希。これからすること、希のためとか…希のせいではないの。……私がね、希が死ぬのなんて…見てられないのよ。」

希「………」

絵里「……せっかく希を見つけられたのに、何もできないのが……悔しいの。貴女がすごく頑張ったのに、自分だけ逃げるなんて……そんな後悔を抱えて、生きていける自信がないの。」

希「………」

絵里「希は……強いって、知ってるから。…きっと大丈夫、なんて…無責任だってわかってるけど。でも、一つだけお願いがあるの。」

希「………」

絵里「……時間がかかっても、いいから。ゆっくりで……いいから。いつか立ち直って……元気になって、」

希「………」

絵里「……幸せに、なって。」

希「………」

絵里「………お願い、ね?」ポンポン





理事長「………」



絵里「………」

理事長「……ふふ、もういいの?」

絵里「ええ……」

理事長「…ねえ、他に伝えること…あるんじゃないかしら?」

絵里「いいの。」

理事長「…ふふっ、そう……どうして?」

絵里「……希の幸せの邪魔はしたくないから…だからこれで、いいのよ。」

理事長「そう………」


絵里「………」

理事長「…亜里沙ちゃんのこと、心配?」

絵里「そう……ね……だけど 」

絵里「…隣町に、おばあさまがいるから……大丈夫だと思うわ。」

理事長「そう………」


理事長「……ふふっ、じゃあ、そろそろ……時間ね。」

絵里「………」



絵里「………っ」スッ

絵里(………)


絵里(怖い……)

絵里(……でも、希は死んだ方がましなくらい……たくさん酷いことに、耐えてきたのよね)

絵里(ずっと助けてきてくれた……大好きな希のこと、助けられるんだから……)

絵里(………)


絵里「はー…っ」クッ


絵里(喉……は、やり損ねたら苦しいかしら……)

絵里(………)



絵里(亜里沙……おばあさま、お母さん、お父さん)

絵里(みんな……)

絵里(希………)

絵里「………」






絵里「………ごめん、ね。」グッ





















































……………ガシッ


絵里「………っ、え……?」



希「………っ、」

絵里「希…っ?!」

希「………」

絵里「のぞみ………」

希「………」

絵里「………ふふ、止めてくれるの?」

希「………」

絵里「………ありがとう。でも……」

希「………っ、」グ…

絵里「………、ねえお願い、離し……」

希「……ゃ……………」

絵里「希……!」

希「嫌………」

絵里「のぞ…み………っ」ジワ…

希「………っ、は………」

希「っ………けほっ、げほっ」ビチャ…

絵里「希…!だめ、もう喋らないで…!!」ポロポロ

希「は………は…………」ジワ…

希「死なないで…………」ポロポロ

絵里「………っ、」ポロポロ

希「えりちが……死んだら、やだ……」ポロポロ

絵里「希………」ポロポロ

希「けほっ……はっ……は………」ポロポロ

絵里「のぞみ……!」ポロポロ




理事長「………っ、」

理事長「驚いた……ふふふ、面白い。予想外の展開ね?感動的だし、なんだかドラマみたい…ふふっ…」


絵里「………っ、理事長…………」

理事長「それで…どうするの?絢瀬さん、東條さん。」

理事長「絢瀬さんが死ぬ?…それとも、さっきまでの…東條さんに、続ける?」

絵里「だめよ!!」ポロポロ

絵里「ねえ、お願い……もう……」ポロポロ

理事長「ふふ…だめよ、そんなの。」

絵里「………っ、」ポロポロ



希「え……りち………」

絵里「希…?嫌よ……!」ポロポロ

希「………っ、」

絵里「どうせこの包丁で自分を刺せとか言うんでしょう?!そんなことするくらいなら、私が………!」ポロポロ

希「……め……やめて……っ…」ポロ…

希「…や……嫌………けほっ……」ポロポロ

絵里「………っ、」ポロポロ

希「は………は………っ」ポロポロ


理事長「ふふ……全く、埒があかないわね…」

理事長「……もう、始めるから。そろそろ時間も無いしね?」

絵里「待って……!」

理事長「………ふふっ、いやよ。正気が戻った東條さんに、絢瀬さんがいる前でこうするの……すごく楽しみにしてたんだから。」

絵里「………っ、待っ……」


カチッ


希「ぅ"っ……」ガクッ


バリバリッ……ジジ……ッ

希「ぁ"………ぁあ"ぁっ……あ"………ぁ"っ」ガクガクガクガク

絵里「希っ!!」ポロポロ


理事長「ふふ……正気なんて、取り戻さない方が良かったかもね?」

絵里「……っ、希……ごめん……私……やっぱり…っ」スッ

希「や………っぅ、あ"……がはっ……や……」ガクガクガクガク

希「や…!や………や、め……けはっ……はっ………」ガクガクガク


絵里「……ごめん……ごめん…ね、……っ」


………グッ



カチッ

希「かはっ……………はぁっ………はっ……」ポロポロ


絵里「………っ、!…なんで……止めて………」


理事長「ふふ……」

希「げほっ……けほっ……」ピチャ…

絵里「希……!」ポロポロ


希「え…りち……」

希「は………っ、は………」

希「………おねが………も…楽…に、して………」ポロポロ

絵里「そんなの………っ」ポロポロ

希「お…ねが………い……」ポロポロ

絵里「のぞみ……」ポロポロ

希「は……っ、は………」ポロポロ

希「さ…いごに、えりちに会えて……っ」ポロポロ

希「けほっ…は……無駄じゃ…なかったって……わかって……」ポロポロ

希「こ…やって、喋れたから……っ………もう、いいの。」ポロポロ

絵里「そんなの…っ」ポロポロ

希「おねが…い………」ポロポロ

希「おねがい………」ポロポロ


絵里「希………」ポロポロ


理事長「……ふふっ、絢瀬さん、どうする?」

絵里「理事長………っ」ポロポロ

絵里「……っ、そんな……そんなの………!」



……ギュッ


絵里「のぞ…み………?」ポロポロ


希「え…りち……」ポロポロ

希「おねがい……」ポロポロ

希「も……痛いのは、無理……」ポロポロ

絵里「希……」ポロポロ

絵里「………っ、それなら、私が……!」ポロポロ

希「それはだめ!!」


ギュウウ……


絵里「のぞみ………?」ポロポロ

希「……ねえ、えりちが死ぬのは…痛いのより、つらいよ……?」ポロポロ

絵里「………っ、」ポロポロ


希「お願い、えりち………」ポロポロ

希「もう……眠らせて……?」ポロポロ


絵里「希………」ポロポロ


絵里「いや……いやよ……そんなの……」ポロポロ


絵里「そん……なの………っ」ポロポロ


希「けほっ……げほっ……」ビチャ…

絵里「希!!!」ポロポロ


希「は……は……うぐ………」ビチャ


希「ね……も……つらい……の……」ポロポロ

希「おね、がい………えりち………」ポロポロ


絵里「のぞみ………」ポロポロ


絵里「あ………ああ………あ………」ポロポロ

絵里「う……あ………ぐすっ、う………」ポロポロ

絵里「う……っ、けほっ……希………」ポロポロ


絵里「ごめん……ね………」ポロポロ



………スッ




絵里「……っ、ごめん……ね、希……っ!!」ポロポロ

希「えりち………」ポロポロ



絵里「………っ、」グ…



希「……っ、ありが……」ポロ…
















キン……ッ

…ッ………キンッ……キン……










希「………」



希「……えっ…………」



理事長「………っ、危ないわね……当たるとこだったわよ。」


絵里「希……ごめん………」ポロポロ

絵里「私に希は……刺せないわ………」ポロポロ

希「そ……んな………っ」ポロポロ

絵里「ごめん……ごめんね………でも……!」ポロポロ


理事長「……ふふ、それが絢瀬さんの答え?随分残酷ね……じゃあ、再開するわよ?」

希「嫌!いや………けほっ…は……はっ……」ガタガタ

希「なんで……っ、えりち……なんで……!」ガタガタ

絵里「………っ、ちょっと待って!!」ポロポロ


絵里(何か……何か方法があるはずよ……!)

絵里(無駄なことなんて、一つもない…はずなんだから!!)

絵里(考えなきゃ……考えて………!)

絵里(物理……電気、20mA………)

絵里(…………)



『……でもなかなか定電流電源って手に入らないから……難しいところではあるわね。』



絵里(………っ、!)

絵里(定電流電源………!)

絵里(定電流が手に入らないということは……これは定電圧電源ってこと……!)

絵里(定電圧電源ってことは、つまり……電圧が一定な分、抵抗が増えると……っ)


理事長「…ふふっ、もう待てないわよ……始めるわね?」

希「や、だ……やめて、やっ、嫌!けほっ……げほっ………」ピチャ…

希「嫌………嫌…………もう、痛いのは………」ガタガタ

絵里「………っ、」バッ

理事長「……絢瀬さん?なんで服………」

絵里「……っ、………っ」バッ…バッ

希「え…りち、なにして…………けほっ」ポロポロ

希「は……は………」ポロポロ

理事長「…ふふ、気でも狂った?なんだか知らないけどもう、始めるから……」

絵里「……待って!!」


カチッ


絵里「………っ、」

バリバリッ…バリッ……ジジ…ジ……ッ

希「ぁ"あ"ぁあっ……う……あ……ぁ"あ"っ」ガクガクガクガク

絵里「……希………っ」ポロポロ

絵里「……ごめんね……我儘だって…わかってるの。だけどもう少しだけ…もう少しだけ、頑張って……!」ポロポロ



ギュッ



希「ぁ………ぁ"あ"……っ、かはっ…え"……り……?…ぅ"っ」ガクガク

絵里「ぅ"…………っぐ………うう"……っ」ガクガク

希「…っぐ……ぁ………あ"あっ、ぅ"……なん、で……けほっ…ぁあ"っ」ガクガク


理事長「………っ、」

理事長「ああ…なるほど、そういうことね…」

理事長「ふふっ…やっぱり絢瀬さんは、元生徒会長だけあって……頭はいいのね。」


希「ぁ"……がはっ……ぁあ"っ、あぁ"あ"……っ」ガクガク

絵里「っぐ………げほっ、のぞみ……!!」ガクガク

絵里「…は…んぶん…っ、ぅ"あ"……っぐ……はっ……うけおう…からっ」ガクガク

絵里「も……少し……っうぐ……っ…がんばっで……!」ガクガク


理事長「……確かに、これは定電圧電源だから……抵抗が2倍になれば、一つの物体にかかる電流の大きさは1/2になる……」

理事長「そうなるとおそらく…東條さんの方に行くのが10mAとか…いや、接触することで少し電気が逃げて…9.5mAとかになるのかしら。」

理事長「ふふっ、でも服なんかあったら当然通りが悪くなるから……だから脱いだのね?……賢いわ。」

理事長「ただ……確かに10mA程度なら、普通命に関わることは無いけれど。」

理事長「…だけどそれだけ衰弱してる東條さんだと、ね…?既に出血量もなかなかよ。ふふ…どこまで頑張れるかしら?」


希「けほっ……げほっ………はっ……ぁ"っ」ガクガク

希「え……り………も、無理……っぁあ"っかはっ」ガクガク

絵里「がんばっで……がんばって!!ぅ"……っ」ガクガク

絵里「……がはっ………ぅ"……ぁあ"っは……」ガクガク


絵里(ことり……ことり、お願い……!)


絵里(誰か……早く………!!)



----
---
--


凛「やーっとついたにゃー…」

花陽「ふええ……疲れたよお……」

真姫「にこちゃんちって…結構音ノ木から離れてるのね……」



ピンポーン



まきりんぱな「………」

真姫「……でないわね…」

花陽「うう…病院とか、かなぁ?」

凛「そんなー!!ここまできて、それはないにゃー」ガチャッ


まきりんぱな「あ………」



凛「……あいてる、ね?あはは………」

花陽「勝手に入っちゃ、まずいんじゃ……」

真姫「……緊急事態よ、にこちゃん…中で倒れてるかもしれないしっ」ガチャ

凛「あーっ、真姫ちゃんずるい!凛も凛もー!」ガチャッ

花陽「う、うう……おじゃまします………」ガチャ…



バタン



凛「にこちゃんー?」

真姫「にこちゃん…」

花陽「にこちゃん……ここ、かな?」

真姫「"にこの部屋"……そうね、ここみたいだわ。」ガチャッ



にこ「………」スー…スー…

凛「あっ、にこちゃん!!」

にこ「……っ、う」

真姫「もう…大きな声出しちゃダメじゃない、凛……」

花陽「あはは……ごめんね、起こしちゃったかな?」


にこ「……あんた達……なんで………」ウトウト

凛「…ごめんね、起こしちゃって……凛達、お見舞いに来たの!」

真姫「調子はどう?そこのコンビニで、桃缶とか…買ってきたけど。」

花陽「お母さんとか…出かけてるなら、花陽、おかゆ作るよっ!」

にこ「お見舞い……調子………」ウトウト

にこ「………」


にこ「………っ、」ハッ


にこ「ねえ…今何時?」

花陽「えっと……もうすぐ6時半になるところ…かな」

にこ「6時半……」

にこ「………ねえ、あんた達…絵里が今どうしてるか知ってる?」

凛「絵里ちゃん……?」

真姫「絵里は……そういえば校門前で見かけたわね、なんか理事長と歩いてたけど……」

にこ「理事長と……っ?!」

凛「…どうしたの、にこちゃん?顔が青いよ…まだ寝てた方が」

にこ「ねえ誰か、絵里に電話してみてちょうだい!出ればそれで……それでいいんだけど。」

花陽「わ、わかった……」スッスッ


プルルル……ガチャ



『おかけになった電話は、現在電源が切られているか、電波の届かないところに………』



花陽「……圏外、か……電源が切れてる……?」

真姫「それって………希も………」

にこ「………っ、」ガバッ

凛「にこちゃん?!」


真姫「ちょ……ちょっと、どこいくのよ!まだ寝てないと……っ、」

にこ「寝るのなんて、いつでもできるわ!それより……っ」

にこ「……っ、ここからことりんちまで、か………割と距離があるわね………」パッパッ

花陽「ことりちゃんち……?」

にこ「そう……あんた達も一緒に来てくれる?行きながら話すわ。」

凛「わ……わかった!」

真姫「急ぎなの?車…呼ぶ?」

にこ「………っ、そうしたい……けど、真姫の家って、さらに正反対よね?」

真姫「そう…ね……」


にこ「……走るわよ。」

花陽「にこちゃん……」

にこ「何もなかったら、それでいいの……だけどっ」

にこ(何かしら……この胸騒ぎ………)

にこ(絵里……希………っ)


凛「……わかったにゃ。」

凛「……二人とも、走ろう!」

真姫「え、ええ……」

花陽「うん…わかった!」

にこ「あんた達……」


にこ「……っ、それじゃ…いくわよ!」


----
---
--

コツ…コツ……コツ…

ことり「は………は………」


ことり(結構…深い、な……)

ことり(ちょっと遅すぎるから、見に来たけど……)

ことり(………)

ことり(地下で、何……してるのかな)


コツ……コツ………


ことり(……お母さんが、生き物の紹介に熱くなっちゃって………)

ことり(絵里ちゃん、困ってるのに気づかないで……喋り続けてるのかも)


コツ……コツ…コツ


ことり(…いい加減絵里ちゃん解放してあげてって、帰ったらチーズケーキ食べよって言って……)

ことり(迷惑かけちゃった絵里ちゃんにも、亜里沙ちゃんのお土産に…って、少し渡さなきゃ)


ことり「は……は……」



『ふふっ……あははっ……ふふふふ……』



ことり「……お母さんの、声?」

ことり「扉の、むこう………」


コツ………



ことり「………っ、え……?」






『希!!!のぞみ、がんばって…もう少し、もう少しだから、っぐ……ぁ"……がはっ』


『……ぅ"っ…ぁあ"あ"っ、無理……無理……げほっ、がはっ………かはっ、けほっ……』

『死なせて……!!』





ことり「…………っ、」

ことり「これ………」


ことり「絵里……ちゃん?希ちゃん……?」

ことり「…………」


ことり「ぅ………」



ドクン……ドクン……



ことり「……はっ……は……はっ……、は……」ガタガタ



ドクッ…ドクッ…ドクッ…ドクッ…



ことり「あ………あは、は………」ガタガタガタ


ことり(嘘だ………)


ことり「………っ、」ブン゙ン


ことり(嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ)


ことり「……はっ、はっ……は……はっ……」ガタガタ

ことり「は……はっ……」ガタガタ


ズル……ズ……


ことり「…は……は………」ガタガタ

ことり「………っ、」ダッ



ダッ…ダッ…ダッ…ダッ…


ことり「……はぁっ……は……はっ……」ダッダッ



ことり「………っ、」ガチャッ


バタン



ことり「……っ、」ドサッ


ことり「………」ガタガタ

ことり(嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ)


ことり「………っ」ブンブン


ことり(嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ)


ことり「………っ、」ブンブンッ



ことり「はっ………は………は……はっ……」ガタガタ

ことり「嘘………」ジワ…

ことり「嘘だ………」ポロ…



ことり「嘘だよ………」ポロポロ




『死なせて……!!』




ことり「………っ、」ポロポロ

ことり「………のぞみ…ちゃ………」ポロポロ

ことり「希ちゃん……希…ちゃん………」ポロポロ


ことり「けほっ……は………はっ……」ポロポロ

ことり「希ちゃん………!」ポロポロ


ことり「は………っ、は……はっ……」ポロポロ

ことり「………っ、」ポロポロ

ことり「………ごめん……ごめんね……」ポロポロ


ことり「ごめんね………」ポロポロ


ことり「そうだよ…ね………」ポロポロ




ことり「嘘じゃ…ないよね……」ポロポロ




ことり「嘘じゃ……ない……」ポロポロ



ことり「う……ぐすっ……えぐっ………」ポロポロ


ことり「なんで……なんでえ………」ポロポロ

ことり「はぁっ、は……はっ………」ポロポロ

ことり(私……最低だ……最低だ……)


ことり「…は……っ、は………」ポロポロ


ことり(私…わかってたのに……わかってたのに、目をそらして……自分で確認したくないから、絵里ちゃんに行かせて………)

ことり「最低…だよ……………」ポロポロ

ことり(その上、此の期に及んで…まだ、警察なんて…呼びたくないって、お母さんに捕まってほしくないって……思ってる)

ことり「う……うう…………」ポロポロ

ことり「やだ…よ……お母さん、なんで……」ポロポロ

ことり「なんでえ……」ポロポロ

ことり「ぁ………」ポロポロ



『お母さん、こんな倉庫で…なにしてるの?』

『あら、ことり……入ってきちゃ、ダメじゃない。』

ギギ……ッ

『おか……さん、なに……してっ』

『お母さん!!やめて…っ、虫さん、可哀想だよ、死んじゃうよ………っ』

『あ……ふふ、そうね……死んじゃうわね………』


『ふふ……うふふ………』




ことり「あ………あ…………」ポロポロ

ことり「やだ……、こんなこと……思い出したく……なかったのに………っ」ポロポロ

ことり「やだ……やだあ………」ポロポロ

ことり「け……さつ………」スッ…

ことり「………っ、」ポロポロ

ことり「よべ……ない……よ」ポロポロ

ことり(お母さん…いなくなったら、私……)

ことり「ひとり…ぼっちに………」ポロポロ

ことり「う………うう………」ポロポロ

ことり「うう……げほっ……けほっ……ぐす………」ポロポロ


ことり(絵里ちゃん……希ちゃん………)








ことり(ごめ………)







プルルルル!


ことり「………っ、」ビクッ

ことり「でん…わ……」ポロポロ


ことり「海未……ちゃん………?」ポロポロ


スッ


ことり「………っ、」


ことり「もしもし……」ポロポロ



『ことり…ですか?』

ことり「うん………」ポロポロ

『ことり……泣いているんですか?』

ことり「ううん………」ポロポロ


『…………』

ことり「…………」ポロポロ

『今……少し、大丈夫ですか?』

ことり「うん………」ポロポロ

『…………』

『……私達、先日ことりに聞かれたこと……ちゃんとよく、考えてみたんです。』

ことり「……っ、そっ…か……」ポロポロ

『それで……今、穂乃果と二人で答え合わせをしていたんです。』

ことり「こたえ……あわせ……?」ポロポロ

『はい……それで、』

『……答えが出たので、ことりに報告しようかな、と……』

ことり「………」ポロポロ

ことり「……うん、聞かせて………?」ポロポロ

『………はい。ですがまず前提として…やはり本当のところは、当事者になってみなければわかりません。ですが……』

『もーっ、海未ちゃん!まどろっこしいよーっ』ガチャッ


『ことりちゃん!!』



ことり「穂乃果…ちゃん……?」ポロポロ

『うんっ!穂乃果だよ!』

『穂乃果ね、やっぱりそんなことになったら…雪穂のこと、警察に連れてくよ!』

『だってね…私やっぱり、こんなんだけど…お姉ちゃんだから。間違った道は、正してあげなくちゃいけないと思うんだ。』

『…それにそれにっ、雪穂がことりちゃんに…なんて、知ってて隠していくのは……穂乃果にはきっと、無理だから。』

『…ふふっ、それにそんなの、ことりちゃんが可哀想だもん!穂乃果が絶対、助けてみせるよっ!』

ことり「…穂乃果ちゃん……」ポロポロ

『ねーお姉ちゃん!さっきから雪穂を警察に…って、何話してるのさ!私なにもしないからね?』

『あはは……ごめん………』


ことり「はは……」ポロポロ


ガチャッ

『穂乃果が急に…すみません。海未です。』


ことり「………海未ちゃん……」ポロポロ

『…私もやはり、穂乃果と同じです。』

『私には…妹や弟はいませんが…』

『…やはり、家族が罪を犯したなら、それを正してあげるのも…また家族だと思うんです。』

『私は……そうありたいです。』

ことり「海未ちゃん………」ポロポロ


ことり「……うっ、ぐす………そうだよ、ね……」ポロポロ

ことり「そうだよ……ね………」ポロポロ

ことり「ねえ、二人とも………」ポロポロ


『……なんですか、ことり。』

『ことりちゃん!穂乃果も聞こえてるよっ』


ことり「……二人とも、何があっても…私が、最低でも……ずっと友達でいてくれる…かな……?」ポロポロ

ことり「ふふ…ごめんね、こんなの……重…」

『当たり前です!!』『当たり前だよっ!!』

『ことりはずっと…幼馴染で、一番の親友です。勿論穂乃果も。何かをしたなら、私が叱ります!私達三人は…ずっと一緒です。』

『そうだよことりちゃん!!穂乃果、ことりちゃんと離れるなんて、友達じゃなくなるなんて……ぜったい、絶対嫌だよ!!ずっと一緒だよ!』

ことり「穂乃果ちゃん……海未ちゃん……」ポロポロ


『何かあったんですよね?今からそちらに行きますから!!少し待っていてください!』

『海未ちゃん!!早く早く!!!』


プツッ……


ツー……ツー……ツー……


ことり「ふたりとも………」ポロポロ

ことり「………」ポロポロ

ことり「ありがとう……穂乃果ちゃん。海未ちゃん。」ポロポロ

ことり「そうだよね……こんなの、ダメだよね………」ポロポロ

ことり「ことり……ひとりぼっちなんかじゃないね、二人が……二人が、いるもんね……」ポロポロ

ことり「…………っ」ゴシゴシ


ことり「………」スッ…


ことり「………」スッスッ…


プルルルル……





ガチャ


ことり「あの、すみません………!」



----
---
--


希「は………ぁ………がはっ………」ガクガク


ビチャビチャ…ッピチャ……


絵里「希………!う"……げほっ、ぁあ"っ………」ガクガク

希「は………は………」ガクガク

希「…、…り………」ポロポロ

希「げほっ……けほ………」ガクガク


ピチャピチャ…ッ


絵里「のぞみ!!……っぐ……ぅ"……かはっ、喋ろうと…しないで………無理しないで!!」ギュウッ

絵里「う"……ぁ……ぁあ"っ、お願い…お願い………!」ガクガク

希「は……は………」ポロポロ



希「は………」ポロポロ




希「………」ポロ…





希「………」



絵里「のぞみ!!!!」ポロポロ

絵里「希!!のぞみ!!!しっかりして…ねえっ……っぐ…けほっ……げほっ……のぞみ!!!」ポロポロ

絵里「止めて!!!ねえ、止めてよ!!!!」ポロポロ

理事長「ふふ……そうね。」


カチッ



絵里「のぞみ!!!!」ポロポロ

絵里「ねえ……ねえっ、しっかりして!!」ポロポロ

絵里「やだ……嫌!!ねえ、お願い!!!」ポロポロ

絵里「希………!」ポロポロ

絵里「希!!!!!」ポロポロ

絵里「げほっ……けほっ……ねえ………」ポロポロ


絵里「ねえ…………!」ポロポロ

絵里「のぞみ………なんで…………」ポロポロ



絵里「……いやよ……ねえ………」ポロポロ



絵里「のぞみ…………っ」ポロポロ



絵里「希………」ポロポロ




絵里「……あ………ぁあ………」ポロポロ



絵里「ぁ…………」ポロポロ







絵里「ああああああああっ!!」ポロポロ







理事長「ふふふっ」


絵里「ああああっ、あああっ!!!!」ガチャンッガチャッ

理事長「ふふふ……いいわね、ゾクゾクしちゃう。でも最後は少し…呆気なかったわね。」

絵里「ふざけないで!!!!!」ポロポロ

絵里「貴女が……全部貴女が………!!」ポロポロ

絵里「希は…っ、希は何も悪くないのに!!!」ポロポロ

理事長「ふふ…そうね、東條さんは何も悪くないわ。でも…東條さんがこんな死に方しなきゃいけなくなったのは、貴女のせいよ。」

理事長「早くに死なせてあげれば良かったのに……ふふ、ずっともう無理だって、死なせてって、叫んでたじゃない。」

理事長「つらかったでしょうね…痛かったでしょう。全部貴女のせいね?」

絵里「…………っ、ふざけないでって言ってるでしょう?!!」ポロポロ

絵里「そもそも貴女がこんなことしたのが……っ!!!!」ポロポロ

理事長「それは勿論そうだけど………でも、もっと楽に死ねる道もあったのにって話をしてるのよ。日本語通じないわね。」

理事長「だいたい、貴女がもっと有能だったら二人して助かったのよ。なんでもっと準備してこなかったの?どうしてもっとたくさんの人にここに来ると伝えておかなかったの?」

絵里「………っ、そんなの……!!」ポロポロ


絵里「そんなの………っ、」ポロポロ

理事長「ふふ……」

絵里「のぞみ………」ポロポロ

絵里「希……いや…よ……」ポロポロ

絵里「起きて……ねえ、起きて………」ポロポロ

絵里「ぅ………あ………ぁっ……のぞみ……のぞみ………!!!」ポロポロ

ギュッ……


絵里「希…………」ポロポロ

絵里「ご…めん、ね……っ、」ポロポロ

絵里「……っ、う………っ………ぐす………」ポロポロ


ギュウ……


絵里(………希の、匂いがする……)


絵里「希……」ポロポロ


絵里(まだ…少しだけ、暖かい……)




絵里(希……)



『えーりちっ!』



絵里「………っ、」ポロポロ


『ね、一緒に肉まん食べよ~!』


絵里「…っ……う……」ポロポロ


『今日のラッキーカラー、水色やって!』


絵里「…ぐすっ……」ポロポロ


『あっ、おみくじ大吉。うちな、運だけは生まれつき、すっごくいいんよ!』


絵里「………」ポロポロ

絵里「希………っ」ポロポロ

絵里「う………えぐっ………ぁ……ぁあ………」ポロポロ

絵里「なん…で……なんで………」ポロポロ

絵里「希………!!」ポロポロ

絵里「のぞみ………」ポロポロ

絵里「……ねえっ、起きて……、貴女…運だけはいいって、言ったじゃない……!どうして……どうしてよ……っ…」ポロポロ

絵里「私が…希無しでやってけると思う?無理よ…そんなの、ねえ………」ポロポロ

絵里「また来年も初詣一緒に行こうって、約束したじゃない…!パフェは新作が出るたびに、二人で食べに行こうって……!」ポロポロ

絵里「う……うう……ぐすっ…ううう……」ポロポロ


絵里「…っ…それに…ねえ、希…忘れちゃったの?」ポロポロ

絵里「明日……明日は、私の誕生日なの。来年も再来年もずっとずっと、毎年一番に…祝ってくれるんじゃなかったの?」ポロポロ

絵里「希………!!」ポロポロ

絵里「のぞみ………」ポロポロ

絵里「う……うう………うっ……えぐっ……ぐすっ……」ポロポロ


絵里「希………」ポロポロ




……………………………………ギュッ





絵里「…………っ!?!!」

絵里「………ねえ、貴女………今…………」ポロポロ


理事長「ふふふ…じゃあ私はそろそろ行くわね。亜里沙ちゃんが気づいて、警察が来るまで…どれくらいかしら。ふふ…それまでは、二人っきりにしてあげる。」


絵里「………っ、」サッ

理事長「………ねえ、聞いてるの?絢瀬さん?」

絵里「静かにして!!!」

理事長「………っ、何よ………」

絵里「…………………」

絵里「希…………」




…………………………トク………



絵里「……………っ、!!!!」

絵里「希………!のぞみ………」ポロポロ

絵里「ねえ、息…は……止まってる、けど……貴女………!」ポロポロ

絵里「ちょっと待ってて、今………!!」ポロポロ


理事長「………っ、何して……?」


絵里「………っ」スー

絵里「ん…………っ」


理事長「……、………ああ、ふふ…人口呼吸……?」



絵里「………っ」スー

絵里「ん……………っ」


理事長「無駄よ。そんなことしたって…東條さん、もう死んで……」

理事長「……ああ、もしかしてまだ…ふふ、心臓は動いてたりするのかしら?」

絵里「………っ、」ポロポロ


理事長「……ふふっ、そうなのね。でも……それでもやっぱり無駄よ、息が止まってるのは見てて明らか。心臓が止まるのも時間の問題ね?」

絵里「無駄なんかじゃ…ないわよ……!」ポロポロ

理事長「ふふ…どうしてそう言い切れるのかしら?」

絵里「だって……だって、」ポロポロ

絵里「希は……のぞみはっ!!すごく運がいいのよ?!スピリチュアルなの!!!……私にもわけがわからないくらい、理解できないくらい…すごいんだから!!」ポロポロ

絵里「…そんな希が、こんな…こんなところで、死ぬわけないじゃない!!!」ポロポロ

絵里「希…ごめんね……っ、もう一度……」


絵里「………っ」ス-

絵里「ん…………っ」


理事長「……ふふっ、何よそれ…現実逃避?絢瀬さんにしては、随分賢くない発言ね。」

理事長「どんなに運が良かったとしても…東條さん…もう、間に合わないわよ、もって数分ってところでしょう?」

理事長「……ことりも通報なんてしないし、亜里沙ちゃんだってまだ異変に気付く時間じゃない。」

理事長「警察も救急車もーーー」


絵里「…来るわよ!!!」ポロポロ





「警察も!!救急車も!!!すぐにっ、今すぐ……絶対来るんだからっ!!!!!!」






理事長「………っ、」

理事長「ふふ、何を根拠に言ってるの?そんなわけ………」

























『ーーーおいっ!!こっちの方から今、声が聞こえたぞ!!』

『ほんとか!!』






理事長「………っ、?!?!」

絵里「…………っ、!?」

理事長「……っ、今の声、上から………」



『地下への階段があったぞ!!』

『こっちだ!急げ!!』



理事長「……っ、?!!」


理事長「嘘…でしょ、だって…まだ………っ」





コツ…コツコツコツコツコツコツコツコツッ




理事長「まだ……っ、」




コツ………




理事長「………っ」








ガチャッ!!!







『いたぞ!!!!』



理事長「…………っ、!!!」


絵里「………っ!!」

絵里「………っ…」

絵里「…え………」

絵里「ほん……とに………?」ジワ…

絵里「ほんとに来た………」ポロポロ


理事長「ちょ…ちょっと、ほんとに……っ、?」



『こっちだ!!こっち!!はやくしろ!!』

『被害者2名だ!!!はやく!!!』

『現行犯はーー?』

『………っ、いける、現行犯だ!』




『南ーー、18時46分、現行犯で逮捕する!!』


カチャンッ



理事長「………っ、………」


理事長「……え………」

理事長「…嘘……でしょ……………」

理事長「……なん…で……こんな…急に……」

理事長「…だって………まだ………」


理事長「………………」



理事長「…はは………」

理事長「ふふっ……うふふ……っふふ……」


理事長「アハハハッ面白い……面白いわね。」


理事長「……………そう。現行犯逮捕…ね。いいわよ?」

理事長「……ふふっ。」

理事長「………ふふふふっ……ふふ……」

理事長「すごい…すごいわね、ふふ…あははっ。」

理事長「急展開ね……びっくりよ。」

理事長「まぁ……覚悟はしてたけど……どうしてこんなに早く……」

理事長「…ふふっ…本当に東條さんの、運のチカラとかいうやつかしら…?最後まで驚かせてくれるわね…ふふっ。」

理事長「…でも絢瀬さん、残念なことに…少し遅かったわね。もう東條さん、手遅れよ。肉体的にもそうだろうし…もし仮に助かったとしても、精神的にね。」

理事長「……まぁでも…そうね、あははっ…最後までのぞみを捨てずに…頑張って?」


『----!!』


理事長「……っ、わかったわよ、はいはい、もう行くわよ。」

コツ…コツ、コツ……


絵里「理事長………」



絵里「…っ、…誰か!!誰かっ!!この子のこと、助けてください!!!お願いします!!!!」



『担架もってこい!担架!!早くしろ!!!』





『………っ、酷い…………』

『ちょっと見せてちょうだいね?』



絵里「のぞみ……希…………!」ポロポロ

絵里「お願い……お願いします……!!!」ポロポロ



『…………っ、反応なし、意識なし、呼吸なし、担架急いで!!!』



絵里「………っ、希…………」ポロポロ


『………っ、ちょっと待ってね……』


『…………………………、……っ、この子、まだ脈はあるわね……!』



絵里「…………っ、やっぱり………!」ポロポロ

絵里「のぞみ…………!!」ポロポロ


『でもこのままじゃ心臓の方も時間の問題………担架早く!!人口呼吸器と、一応AED車内に準備しておいて!!!』


絵里「う…………ぐすっ、うう………」ポロポロ

絵里「………っ、きた………」ポロポロ

『急いで!!』

『……っ、これ、拘束具の鍵です!』


カチャッ


絵里「のぞみ……っ、希………!」ポロポロ

絵里「あの!!私も連れてってください…!!付き添わせてください!!!」ポロポロ

『ええ…貴女も病院に。腕が……担架もう一つある?!』

絵里「大丈夫です…歩けます!!これ、外してください……っ」ポロポロ


カチャッ


絵里「………っ!」ポロポロ

『これ、羽織って!』

絵里「………っ、!、はい!」ポロポロ



『……そう、ゆっくり乗せて………ええ、よし、出して!!』



絵里「………っ、」スクッ

絵里「のぞみ……っ、ごめんね、やっと出れるわよ………!」ポロポロ

絵里「希……のぞみ………っ」ポロポロ



絵里「頑張って……あと少し、あと少しだから………っ」ポロポロ



----
---
--


にこ「………っ、はぁっ……はっ……」ダッ…

花陽「なんですか……けほっ、はぁっ……はぁっ……なんでことりちゃんの家に…………っ、こんな、警察が………!」

にこ「……っ、遅かった……………?」

にこ「けほっ……は……はっ……っ、いや、まだよ……!」

凛「………っ、あそこにいるの、ことりちゃん達じゃないっ?!」

真姫「はぁっ……は……っ、けほっ、行くわよ………!」









海未「ことり……っ、これは…………」

ことり「ごめんなさい……ごめんなさいっ」ポロポロ

穂乃果「ことりちゃん………」




にこ「ことり、海未、穂乃果!!」ダッダッダッ…

花陽「はぁっ…はぁっ……」

凛「ことりちゃん……?」



海未「……っ、にこ…花陽、凛、真姫も……どうしてここにっ」

真姫「……ちょっとこれ、けほっ……どういうこと?ほんとに………」


ことり「……ことりが……っことりが悪いの………」ポロポロ

ことり「わかってたのに……私、わかってたのに…………っ」ポロポロ

ことり「う……ぐすっ……ごめんなさい…ごめんなさい…げほっ………」ポロポロ

穂乃果「ことりちゃん……」

海未「何が……どうなって…………」



穂乃果「…………」


穂乃果「………っ、あれ………!」






ガタガタガタガタッ

絵里「………!………っ!」






海未「絵里…ですか………?」


にこ「絵里………?」

にこ「担架にのせられてるのって……」

にこ「……………、…っ!?!!?」

にこ「見ないで!!!!!」ギュッ


凛「んぶ………っ?!」

真姫「わっ、ちょっとにこちゃん……っ?」

花陽「にこちゃ…っ、?!」ドテッ



海未「………っ、担架で運ばれてるのは……!」

ことり「…っ、うう………けほっ、けほっ……」ポロポロ

穂乃果「………のぞみ……ちゃん?」





ガタガタガタガタッ

絵里「希……っ、 希……っ!」ポロポロ

希「………」





穂乃果「希ちゃん……!!!!」

海未「…………っ、絵里!!希!!!」




『早く中いれて!!この子同伴よ!』

『早くーー早く準備して!!!』




穂乃果「希ちゃん……っ、希ちゃん!!」ダッ

海未「穂乃果?!待ってください!!」



ことり「………っ、?」



『ーーーー!』

理事長「ふふ、そんなに引っ張らなくても、逃げも隠れもしないわよ……」



ことり「………っ、あれ……は……お母さん……?」

ことり「お母さん……!!!!」ダッ

海未「ことり……っ?!ああっ、もう…!!」


にこ「………っ、海未はことりをお願い!!私が穂乃果を……穂乃果っ、待ちなさい!!」ダッ

真姫「……っ、待って、私も行くわ!!」ダッ

凛「かよちん……っ、立てる?」

花陽「うん……!」ズルッ










穂乃果「……はっ、はっ……は……」タッタ…

穂乃果「希……ちゃん?」

穂乃果「……中、よく見えない………っ、」




絵里「希…!のぞみ………!」ポロポロ

『……こっちの処置はしたわ!受け入れ先はまだ見つからないの?!』

『それが現在……近くの病院全て混雑してるようで……』

『西木野総合は?!あそこも一杯なの?!』

『それが……』



真姫「うちに運んで!!!」

にこ「はっ……は………真姫………」


穂乃果「………真姫ちゃん、にこちゃん……!」



絵里「………っ、真姫……そこにいるの?!」ポロポロ



真姫「はぁっ……は……ここからじゃよく見えないんだけど、希…怪我してるの?」

真姫「私……私、西木野総合病院の医院長の娘よ!!父には電話を入れるから、はやく!!」


『………っ、どうします?』

絵里「お願いします!!西木野病院に運んでください!!大丈夫です!!!」ポロポロ

『………西木野総合に運んで!!どっちにしろ早くしないと……出してっ!!!』



ガチャンッ

ブ…ブルルルル………ッ



………ピーポーピーポーピーポー



真姫「は……はっ………それじゃあちょっと、電話してくるわね……?」

にこ「真姫ちゃん……ありがとう。」

真姫「ええ………」


タッタッタッタ……



にこ「…………」

にこ「……けほっ……けほ………くしゅっ」

にこ「は………はぁっ………」ドサッ

穂乃果「にこちゃん……!」

穂乃果「……そういえばにこちゃん、熱が………なんでここに……っ」

にこ「別に……これくらい、大丈夫よ……ちょっと疲れただけ。」

穂乃果「にこちゃん………」

にこ「くしゅっ……はっくしゅ……うう…急いでてポケットティッシュ忘れたわね……」ゴソゴソ

穂乃果「………」


穂乃果「………はい、これ。」

にこ「………、あんたにしては気がきくじゃない……ありがと。」

穂乃果「うん………」

にこ「……っくしゅ…はっくしゅ……はぁ…夜は冷えるわね……」チーン

穂乃果「………」

にこ「穂乃果………?」

穂乃果「………ねえ、にこちゃん……」

にこ「なによ………」

穂乃果「希ちゃん……ただの怪我…なのかな……」

にこ「…………っ、」

穂乃果「なんで怪我なんて……それに、どうしてここに………」

にこ「…………」

穂乃果「…ねえ、穂乃果……穂乃果ね……」

穂乃果「……薄暗い…から、よく…わかんなかったけど………」

穂乃果「なんか……なんか、怪我…とは、違うような……」

穂乃果「……その、あのね……髪が…………!」ジワ…

にこ「穂乃果っ」ギュッ

穂乃果「にこちゃん……?」

にこ「大丈夫……大丈夫よ………」

にこ「大丈夫………」

にこ「…………」


にこ(希……絵里………)

にこ(何が…どうなってるの?)

にこ(私も確かに見た……希の髪が、真っ白になってたの……)

にこ(一体……何が………)


にこ「………っ」







ことり「お母さん!!!」タッタッタ…

理事長「ことり……」

ことり「はっ……はぁっ……おか……さん……」ポロポロ

ことり「なんで……なんで………!」ポロポロ

理事長「………」

理事長「ごめん、ね……?」

ことり「う……ぐすっ………ううう……」ポロポロ

理事長「……できるだけ早く戻ってこられるように、頑張るから……」

理事長「…寂しいかもしれないけど…私が戻って来るまで、この家のこと…よろしくね?」

ことり「………っ、」ポロポロ

ことり「なん…で………」ポロポロ

理事長「ことり………?」

ことり「なんでよ……そうじゃないでしょ?!」ポロポロ

理事長「ことり………」


『ーーーーー!!』

理事長「………っ、もう行かないと……ごめんね、ことり。戸締りだけはしっかりして……ご飯もきちんと食べて、ね?」

理事長「…しばらくは会えないかもしれないけど…裁判の時に会えると思う。それに取り調べなんかが終われば、多分面会できるから。寂しくなったらいつでも会いにきて?」

ことり「………っ」

『ーーー!』

理事長「わかった…わかったわよ、乗ればいいんでしょう………それじゃことり、よろしくね?」


……ガチャッ



ブルルル…ブルルッ

ウーウ ウーウ


ことり「…………」ポロポロ

ことり「おか……さん………」ポロポロ

ことり「う……ぐすっ……なん…で………」ポロポロ


…ドサッ


ことり「なんで……」ポロポロ

海未「はっ……はぁっ……ことり……っ!」タッタッタ…

海未「はぁっ……は………大丈夫ですか?」


ことり「う……えぐっ………ぐすっ……ううう………」ポロポロ

海未「ことり……これは、一体……」

海未「今パトカーに乗せられていったのは……」

ことり「う……ぐすっ、…ごめんね、海未ちゃん…………私、最低だよ……」ポロポロ

海未「ことり……」

海未「……落ち着いてからでいいので、ゆっくり聞かせてもらえませんか?何があったのか……」

ことり「う……ん……」ポロポロ

ことり「……っ、ぐす……うう………ううう……」ポロポロ

海未「………」



………ギュッ



ことり「海未…ちゃん……?」ポロポロ

海未「………何があったのか……ことりが何をしてしまったのか、私にはわかりません。ですが……」

海未「……安心してください。私はことりの味方です。」

ことり「海未…ちゃん……」ポロポロ

ことり「う……えぐっ……うう………ううう…」ポロポロ

海未「ことり……」




凛「海未ちゃん!ことりちゃん!」タッタッタ…

海未「凛…花陽……!」

花陽「は……はっ………」タッタ…

海未「……二人とも、どうしたのですか。というか何故、ここに………」

凛「話は後!真姫ちゃんのお家が、車出して…ここまで迎えに来てくれるって。希ちゃんと絵里ちゃん、真姫ちゃんの病院に運ばれたらしくて…それでね、そこまで乗せてってくれるって!」

海未「真姫が……」

花陽「……っ、はい!それで今、状況が全く掴めていなくて……行きながら話を整理しませんか?私達、ここに来る途中…にこちゃんから少しだけ話を聞いてて。それも話すから…だからっ」

花陽「…ことりちゃん、何か…知ってるんだよね?ゆっくりでいいから…聞かせてもらえたら、嬉しいな。」

ことり「花陽、ちゃん……」ポロポロ

ことり「う……うう……ぐすっ、えぐ……っ」ポロポロ

ことり「……っ…正直ね、ことりにもよく…わからないの。でも、知ってることでよかったら……話すよ…」ポロポロ

海未「ことり……」

ことり「……でもねっ、私……すごく、すごく最低で……みんな、きっと私のこと、……」ポロポロ

花陽「……っ、ことりちゃんは、本当に最低なことなんて……しません。絶対しないよ…ことりちゃんは、そんな子じゃないよ。」

凛「そうだよ!何かしちゃったとしても…それには何か理由があったか、どうしても、どうしようもないことだったんだよ……凛にはわかるよ。」

凛「凛達みんな、何があっても…ことりちゃんのこと、大好きだよ!」

花陽「そうだよ、私…ことりちゃんのこと、絶対絶対大好きだよ。何かしてしまったなら、みんなで解決策…考えよう?大丈夫だから…だから…」

ことり「……花陽ちゃん……凛ちゃん……」ポロポロ

海未「……そうです。私達みんな…ことりのことが大好きです。」

ことり「海未ちゃん……」ポロポロ

ことり「……っ、ありがとう……でも…」ポロポロ

ことり「…私ね、やっぱり最低で…ずるいよ、今だってこんな…泣いて、みんなにそんなこと言わせて……まるで被害者みたいな、顔してる。」ポロポロ

海未「ことり……」


ことり「……ごめんね。でも今私は、加害者の家族なの……被害者は私じゃなくて、希ちゃんと…絵里ちゃんなの……」ポロポロ

海未「ことり…それは、どういう……」


凛「…っ、真姫ちゃんちの車きたよ、続きはあっちで話そう!真姫ちゃんとにこちゃんと穂乃果ちゃんも、むこうにいるから!」

ことり「………っ、ごめんね…うん、車でちゃんと、話すね……」ポロポロ

海未「ことり………」

ことり「……行こう?海未ちゃん……」ポロポロ

海未「……ええ…」

海未「………」

ことり「海未ちゃん……?」ポロポロ

海未「……ことり。」

ことり「………?」


海未「……たとえことりが加害者の家族だとしても……ことりはことりですよ。」

ことり「海未ちゃん……」ポロポロ

海未「大丈夫です。だから安心して…あとは向こうで話しましょう。」

ことり「海未、ちゃん……」ポロポロ

ことり「う……ううっ……ぐす………」ポロポロ



ことり「ありがとう………」ポロポロ


-----
----
---
--


絵里「希……」


絵里「お願い……お願い………」




『希!!のぞみっ!!』ポロポロ

『一階の検査室運んで!!オペ室も準備してあるから!!』

『は…っ、は……っ』ポロポロ

『ガタガタガタ…ッ』

『東條さんー!東條さんー!聞こえますか?!』



『これ、検査結果!!脳波は正常!胃から出血、急性胃潰瘍かしら…腹膜炎起こしてるかも。子宮も腫れてる、何か異物が……』

『衰弱が激しいの!両方一気にいける?!』

『輸血続けて!!』

『…っ、医院長が執刀するって!!オペ室連れてって!』

『西木野先生が……っ?』

『同意書は?!』

『医院長が責任持つらしいわよ!!』



『ガタガタガタ…ッガタッ』

『のぞみっ!!希…がんばって!がんばって!!』ポロポロ

『君!ここから先は……!』

『あ……あぁ………あ………』ポロポロ

『あ………真姫の……お父さん……?』ポロポロ

『……っ、ああ。絵里ちゃんだね?真姫から話は聞いてる。希ちゃん、絶対に助けるから……ここで待っててくれるかい?』

『…っ、お願いします!!希のこと……絶対助けてください……!!』ポロポロ

『っ、ああ。君も腕が……入院手続きしておいてもらうから、とりあえず、服をなんとかして……処置も。君!この子のこと……』


『ピピピピッ…ピピピピッ』


『西木野先生!!!急いでください!!』

『ああ…!!』



『ガチャンッ』



『…………っ、』ポロポロ

『……希………』ポロポロ

『……ドサッ』

『希……のぞみ……頑張って………!』ポロポロ

『絢瀬さん…だったかしら、とりあえず服と腕の処置、して……それから東條さんのこと、ここで応援しましょう?』

『……希………』ポロポロ

『絢瀬さん…?ほら、こっち。』

『…………』ポロポロ

『はい……ありがとうございます……』ポロポロ




絵里「………っ」

絵里(希が手術室に入って、もうすぐ1時間……)

絵里(希………)





穂乃果「絵里ちゃん!!!」タッタッタッタ

海未「はっ…はっ……絵里………!」

花陽「はぁっ…はぁっ………」

凛「希ちゃんは?!」

にこ「けほっ……げほっ……うう……」

真姫「ちょ…ちょっと、にこちゃん大丈夫?!」

ことり「はぁっ……は……」ポロポロ

ことり「絵里ちゃん…その腕……」ポロポロ



絵里「……っ、みんな………」

絵里「みんな、どうしてここに………」ジワ…

絵里「………っ、」ゴシッ


凛「真姫ちゃんちが、車出してくれたの!」

真姫「絵里…っ、その腕、どうしたのよ……」

穂乃果「希ちゃんは…どこに……?」

花陽「絵里ちゃん…なにがあったの?」

ことり「絵里ちゃん……私、私……」ポロポロ

にこ「のぞ……けほっ、げほっ」


絵里「え……えっと……」


海未「一旦落ち着いてください!絵里もそんなにいっぺんに聞かれたら困ってしまいますよ。」

絵里「そう…ね………」

絵里「………」


にこ「絵里……?」

絵里「………」

絵里「……私も今、混乱していて……順番に、聞いてくれる?答えられるものは、答えるけど……」

凛「希ちゃんは、今どこにいるの?!」

絵里「凛……」

絵里「希は……」

絵里「希は今、手術…してるわ。真姫のお父さんが執刀してくれてるの。ほら……」スッ

穂乃果「………手術…中……」

にこ「手術…って……!!希、そんなに酷い怪我してるの?!どうして……すぐ治るのよね?!何もないのよね?!」

絵里「にこ……」

絵里「…わからないわ。私は信じてる……真姫のお父さんが、絶対助けてくれるって……そう、言っていたから。」

真姫「パパが……」

花陽「希ちゃんの怪我って、命に別状はないんだよね?ね、絵里ちゃん…そうだよね?」

絵里「………」

絵里「……希はもう、自分で呼吸できてなかった。血もたくさん吐いて……」

花陽「………っ、」ジワ…


凛「そ…んな……」

凛「そんなの…なんで……どうして……っ」ジワッ

凛「どうしてよ!!絵里ちゃん……っ、なんで……!!」ポロポロ

海未「凛……!」ガシッ

海未「落ち着いて……落ち着いてください。」ポロ…

海未「……っ、希………」ポロポロ


絵里「……、…みんなを不安にさせるようなこと言って…ごめんなさい。」

絵里「……でもね、希なら大丈夫だって…私、信じてる。きっと戻ってきてくれる……」

絵里「…だからみんなも、応援してあげて。希ね、すごく頑張ったの……私たちのために、ずっと…ずっと………!」

にこ「それ……どういうことよ……」

にこ「……っ、ねえ、あの倉庫の中で、一体何があったの……?!」

にこ「ことりから話は聞いたわ…でも、ことりの話はあくまで推定。この2週間、希は理事長の倉庫に監禁されてたんじゃないかって……!」

にこ「でもそれだけじゃ、こんな……こんなことには、ならないわよね?!ねえ、何があったの……絵里は知ってるんでしょう?!」

にこ「けほっ…げほっ……は……はぁ……」


真姫「にこちゃん…こっち、座って……」

真姫「絵里……私も知りたいわ。なんでこんな……こんなことに、なっているのか。」

真姫「希は理事長に……何をされていたの?絵里のその腕もそう……一体あの中で、何が起こっていたのよ、」

真姫「ねえ、絵里………!」


絵里「………にこ……、真姫………」

絵里「………」

海未「…すみません……みんな、混乱しているんです。絵里も大変で…希がこんなことになっている以上、一番ショックが大きいのが絵里だということも理解しています……」

海未「…っ、しかし…みんな知りたいんです。私達が知らないところで…何があったのか。どうして、どうしてこんなことに……なってしまったのか。」

絵里「海未……」

絵里「………」


絵里「ことりは……」

ことり「……っ、」ポロポロ

絵里「……ねえ、ことりはどこまで知っていたの?もしかして全て知っていたの?」

ことり「……っ、私は………」ポロポロ

ことり「私…は……」ポロポロ

絵里「………」

ことり「………っ、」ゴシ…


ことり「絵里ちゃん……ごめんなさい!!」


ことり「謝って……許されることじゃないのは、わかってるの……」ジワ…

ことり「私は……全てを知っていたわけじゃない。ただ…一番早くに全てを知れる立場にいたことは、間違いないと思う。」ポロポロ

ことり「私が……っ、私が気づかなきゃいけなかった。3年生の制服がゴミ袋から出てきたり、お母さんがやたらと焼肉おにぎりを買ってくるようになったり……!」ポロポロ

ことり「私…最近ずっと、お母さんのこと…怪しいなって、なんか変だなって…違和感を感じてた。なのにそれをずっと無視して、見ないふりして……っ」ポロポロ

ことり「最終的に、自分で確認するのが怖いから……っ、絵里ちゃんが見に行くように、誘導するようなことまで言って……!!」ポロポロ

ことり「私……最低だよ……ほんとに……ほんとに……ごめんなさい……」ポロポロ

ことり「う……う……ぐすっ……」ポロポロ

ことり「ごめんなさい……ごめんなさい………!」ポロポロ



絵里「ことり……」

絵里「………」

絵里「……ごめんなさい。追い詰めるようなこと言って。」

絵里「…ことりは悪くないわ。悪いのは理事長だけ。ことりは悪くない……だって、警察と救急車を呼んでくれたのも…ことり、なんでしょう?」

ことり「………っ、」ポロポロ

ことり「それは……そうだけど…っ、でも、今更………!」ポロポロ

ことり「……、私ね……っ、見に行ったの、地下室まで。でも、扉の向こうから、絵里ちゃんと希ちゃんの……苦しそうな声…が、聞こえて……!」ポロポロ

ことり「すぐさま助けに入ることだってできたのに……すぐに警察を呼ぶことだってできたのに………」ポロポロ

ことり「…それなのに、それもまた、見なかったふり、しようとして……海未ちゃんと穂乃果ちゃんが電話してくれなかったら、私………!」ポロポロ

絵里「ことり……」

絵里「………」

絵里「……家族、なんだから………当たり前よ、そんなの……」

ことり「でも……でも………っ」ポロポロ

絵里「たしかにね……ことりがもっと早く通報してくれたら、ことりがもっと、早く行動してくれていたら……」

絵里「……そんな気持ちが、ないわけじゃないの。」

絵里「………でも、それは私も同じ。」

絵里「私がもっと上手くやれたら…もっと慎重だったら、もっと早かったら……希はここまで酷いことにはならなかったかもしれない。」

絵里「ことりだけを責めるなんて……できない。」

ことり「……っ、絵里ちゃん………」ポロポロ

絵里「……それにことりは、たくさん手伝ってくれたじゃない……私が騙されそうになったところを助けてくれて、希のスマホが音ノ木にあるのに気づけたのも、ことりのおかげで……」

絵里「……だからあまり、気負わないで。私のことりに対する気持ちは……今までと変わらないから。」

ことり「……っ、絵里…ちゃん………!」ポロポロ

ことり「う…う……うう……ぐすっ、ごめん…ごめんね……っ」ポロポロ

ことり「ありがとう……」ポロポロ

絵里「………ええ。」

絵里「ことりも……ありがとう。ことりが警察を呼んでくれなかったら、希はこうして手術をうけることすら、きっとできなかったから……」

ことり「う…っ、うう……希…ちゃん……」ポロポロ

ことり「希ちゃんにも、私……謝らないと……」ポロポロ

ことり「……っ、ねえ、絵里ちゃん……私のお母さんは、希ちゃんと…絵里ちゃんに、何をしてしまったの?」ポロポロ

ことり「私……ちゃんと知った上で謝らないといけないと思うの、希ちゃんに……!」ポロポ

絵里「ことり……」

絵里「………」

絵里「………」

絵里「希が……されたこと…ね……」

絵里(………)

絵里(みんなになら…話してもいいかしら?希……)


絵里「………」



『……1日目はまず、両手両足拘束して……動けないようにして、オトナのおもちゃで、ずーっといじめたの。気絶しても気付薬を使って、ずっとずっと。』

『ふふっ、合計で8時間くらいかしら…あの頃は東條さんもよく反応してね、楽しかったわ。泣きながら許して、止めてって…ふふふ。そうそう、ファーストキスもこの日にもらったの。』


絵里「……っ、」


『2日目からの10日間は、媚薬漬けにして…ふふっ、絢瀬さん、媚薬なんて知らないかしら。今度は色んな方法でイク直前まで高めて…とことんイカせてあげなかったの。』

『泣いても喚いても…ね、最後の方は気が狂いそうになってたから、正気を保つためにはより強い刺激が必要よって教えてあげたの。』

『……それでできたのがその足の咬み傷。手は後ろに拘束されていたから…ふふ。10日間頑張れたご褒美に、バージンをもらったときの顔…今でも忘れられないわ。』

『あ、あとそうね、この時にμ'sを売ったら…って条件は、無しにしてって東條さんが言うから…ここから東條さんが自力で助かる道は消えたのよ。』

絵里「…っ、は……は………」

「……り………?」

『その後は…そうね、そういうのは少し飽きたから。痛いことするのが増えたわね。足の傷口に塩を塗ったり。』

『…ちょっと準備に時間がかかることが多かったから、睡眠薬で眠らせて…その間に準備したこともあったかしら。』

絵里「は……はぁっ………」

「…り!……りちゃ……!!」

『ふふ……身体中に電気パッドを貼って、下にはオトナのおもちゃを出力MAXで固定して。拘束して立たせて、立てなくなるたびに全身に電流が流れるような仕組みにしたの。』

『東條さん、必死に立とうとするんだけど……イクたびに、うまく立てなくなって、崩れ落ちて……ふふ、あの絶望したような顔も最高だった。』

絵里「はぁ…っ、は……っ、は……っ、」

『最後は、東條さんをあのガラスケースに拘束して、閉じ込めて……中にね、上で見た虫をたくさん入れて。』

絵里「はぁっ…はぁっ…はぁっ…は…っ」

『それでね、東條さんの中にーーー』



「絵里!!!!!!!!」



絵里「………っ!!けほっ……けほっ……」

絵里「は…っ……は……にこ……?、私…………」

にこ「絵里………っ」

にこ「………っ、無理して言わなくていいわ……今はしっかり休んで……」

絵里「………っ、ごめんなさい…ちょっと、嫌なこと…思い出しただけよ……私は大丈夫。」

花陽「絵里ちゃん……無理はしないで。私達、絵里ちゃんに無理させてまで聞きたいわけじゃ……」

絵里「ううん、いいの……大丈夫、大丈夫だから………」


絵里(……今のって………)

絵里(…………)


絵里「………」


絵里「……ごめんなさい、全てを話すことは…私にはできない。そもそも理事長から聞いた話だから真意はわからないし、希も多分全てを話すことは望まないと思うの…」

絵里「……だからざっくりと…でも……いいかしら 」

にこ「……っ、ええ…それでいいわ。」

絵里「にこ……」

絵里「…………」

絵里「希は……希はね………」

絵里「……理事長から、拷問まがいのことを…受けていたのよ。」

海未「……っ、拷問……ですか………」

絵里「ええ…拷問っていうと……少し違うのかしら……でも、身体を拘束されて、動けない状態で、人権を無視したようなことを、ずっと…ずっと………!」

凛「なに……それ………」ポロポロ

凛「どうして理事長は、そんなこと……っ」ポロポロ

絵里「……希の、恐怖に歪む顔が見たかった…って、言っていたわ。」

真姫「………っ、」

真姫「なによ……それ………!」

ことり「………っ」ポロポロ


ことり「……お母さん……なんてこと…を……」ポロポロ

ことり「う……う……ぐすっ……うう………」ポロポロ

ことり「お母さん、ね……私が小さい頃に、あの倉庫の中で…虫を虐めて、ジワジワ殺して……笑ってたことがあるの……」ポロポロ

絵里「……そんな感覚だったんでしょうね。希が苦しんだり血を吐いたりするたびに、嬉しそうにケラケラ笑っていたから……」

にこ「………っ、」

海未「…っ、絵里の…その腕は……?」

絵里「これは……見た目ほど大した傷ではないわ。傷も残らないようにできるって言われたし。」

絵里「…私が自分自身でこの火傷をおうたびに、1分間希への責め苦を止めてくれる…っていうから。時間稼ぎをしていただけ。希、そのまま続けられたら命が危なかったから…」

花陽「絵里ちゃん……」ポロポロ

絵里「…………」

真姫「絵里は…希とは……その、」

真姫「…話すことはできたの?希、絵里が着いたときは……どんな感じだったの?」

絵里「…………」

絵里「……希はね、私が着いた頃にはもう……正気ではなかった。私が何を言っても、何も反応しない状態だったの。」

絵里「最後の最後で正気を取り戻して…少しだけ、話すことができたけれど。」

絵里「…ずっと、死なせて、楽にして、って……そう……言われて。」ジワ…



にこ「………っ、!!」ガタンッ



真姫「にこちゃん……っ、?」

にこ「………」

にこ「………」


にこ「殺す………」

にこ「………」

海未「………っ、」

にこ「……っ、ことりには悪いけど、理事長のこと…許せないわよ………こんなの………!」

にこ「……っ、はぁっ……は………は…」

にこ「…っ絵里がオブラートに包んで話して、それなんでしょ……?」

にこ「死なせてなんて……希が言うなんて、尋常じゃないことされたってことくらい、わかる……っ」

にこ「許せない………許せないわよ、そんなの………!」

にこ「私がしなかったら、誰が理事長に……っ!!!!」


ガシッ


にこ「………っ、海未………っ」

海未「にこ……気持ちはわかります。ですがそれは………!」

にこ「……あんたはそういう奴よね、わかってる。……でも、私は違うのよ!!」

にこ「ねえ絵里……さっき希が、私達のために頑張ってたって言ったわよね……?」

絵里「………っ、ええ……」

にこ「それ……どういう意味?」

絵里「………」

絵里「希は……1つだけ解放するための条件を与えられていたの。理事長から……」

にこ「……っ、それって………」

絵里「……私達μ'sの誰かと代わること。正確にはことりをぬいた7人から、誰か一人を選んで…交代するというもの。」

海未「………っ、」

にこ「ふふ……そんなことだろうと思ったわ。それであいつ、誰にもかわらなかったんでしょ?それどころか、その条件は無くせとでも言ったんじゃないの?」

絵里「……っ、ええ。よくわかるわね……」

にこ「……ふんっ。あいつ、わかりやすいのよ……絶対そういうこと言うと思ったわ。」

凛「……じゃあ、希ちゃんは………凛達のこと、守るために………」ポロポロ

花陽「そん…な……」ポロポロ

絵里「………」

絵里「たぶん…ね……それだけ花陽や凛や、私達のこと……大切に思ってくれてたのよ。」

にこ「……希は私達のこと、体張って守ってくれたんだから……だから今度は、私が……っ」


ガシッ

絵里「だめよ………!!」

にこ「……っ、絵里………」

絵里「希はそんなこと、望まない……にこだってそれは、わかってるでしょう……?」

にこ「それは……!そうだろうけど………!!」

にこ「……っ、じゃあ、絵里は許せるの?!!」

にこ「理事長…私たちが話を聞きに行くたびに、私は何も知りませんって顔して……影でそんな、希の人格を壊すようなことしてたのに…っ!!許せ……」


絵里「許せるわけない!!!!」ポロポロ


にこ「………っ、」

絵里「許せるわけないじゃない……希をあんな風にされて……こんなこと考えたくないけど、希がもしこのまま戻ってこなかったら、私もにこと同じような行動に走るかもしれない……」ポロポロ

絵里「にこの気持ち、痛いほどわかるわ……私も希を見た瞬間は、頭が真っ白になって……理事長に包丁で切りかかったくらいだから。」ポロポロ

絵里「………っ、でも!!!希はまだ……生きてるの。にこがそんなことして捕まったら、希が体を張った意味がなくなっちゃうじゃない………!」ポロポロ

にこ「絵里………」

絵里「お願いだから……にこは、そのままのにこでいて。私ね、希が目が覚めた時に……希のおかげで私達は全員無事で、これからも全部全部今まで通りよ…って、言ってあげたいの……!」ポロポロ

絵里「希が大好きで大切なμ'sを、そのままの形で用意してあげたいの。希がいつでも、戻ってこられるように……!!」ポロポロ

にこ「………っ、」

絵里「…もちろん、完全に元通りには…無理かもしれない。この件…きっとニュースになって報道されるわ。μ'sをそのまま続けられるのか…私にはわからない。」ポロポロ

にこ「…………」

絵里「……っ、でもね……でも、完全に元通りとはいかなくても……希の大好きなこの9人が、揃ってることが……一番大切だと思うの……!」ポロポロ

絵里「にこがいなきゃ……だめなのよ……!!」ポロポロ

にこ「…………っ、」ジワッ

にこ「………」

にこ「絵里………」

にこ「……っ、そう…………よね……」


にこ「ごめん……ちょっと、頭に血がのぼってた。」

にこ「絵里の言う通りね……今は理事長のことより、希のことを一番に考えるべきだし……」

にこ「μ'sは9人いなきゃ……成り立たないものね……」

絵里「そうよ……希もにこもいなきゃ、μ'sじゃない……誰も欠けちゃ、いけないはずでしょ………」ポロポロ

絵里「μ'sの誰かが復讐なんてしたら…希が元通り幸せになれる道が…なくなっちゃう。」ポロポロ

絵里「だからもうそんな危ないこと……考えないで。」ポロポロ

にこ「絵里………」




穂乃果「にこちゃん……絵里ちゃん………」

穂乃果「………」


穂乃果「………っ、」スウ…



穂乃果「希ちゃん!!!がんばれ!!!!」



にこ「……っ、穂乃果!!?」



穂乃果「がんばれ!!!希ちゃん!!がんばれ!!!」



ことり「…っ、穂乃果ちゃん……っ、!?」

穂乃果「……っ、ねえ絵里ちゃん。希ちゃん…穂乃果達のために、たくさんたくさん……頑張ってくれたんだよね。」

絵里「……っ、ええ……」

穂乃果「穂乃果が今、希ちゃんにしてあげられることは…ほとんどないけど。」

穂乃果「……でも、さっき絵里ちゃんが言ったように……応援することは、できるから。」

穂乃果「今はたっくさん応援して……希ちゃんに、絶対戻ってきてもらって 」

穂乃果「穂乃果ね……希ちゃんに、たくさん、たくさん……ありがとうって、言いたいんだ。」

絵里「穂乃果………」

凛「穂乃果ちゃん……」ポロポロ

凛「……ぐすっ、凛も言いたい!!希ちゃんに!!たくさんたくさんっ、ありがとうって……!!」ゴシ…

凛「希ちゃ……むぐっ」


海未「………だめ…です。」

凛「海未ちゃん…っ、なんで……」

海未「……ここは病院ですよ?希の手術にも、影響してしまうかもしれません。穂乃果も。だめ、ですよ……」

穂乃果「海未ちゃん………」

穂乃果「……そっか、そう…だよね……」

穂乃果「ここ……病院だもんね………」


海未「穂乃果………」

海未「……、……何も私は、応援するのがだめだとは言っていませんよ。」

海未「…もちろん大声はだめですが……小声なら、きっと大丈夫です。もちろんテレパシーだっていいはずです。伝わるはずです。なんて言ったって、希はスピリチュアルですから。」

凛「海未ちゃん……!」

にこ「応援しながら…神様に祈るのもアリだと思うわ。あいつ、巫女でしょ……あれだけ毎朝神社の掃除なんかしてたんだもの。神様だって、助けてくれるはずよ。」

凛「……っそっか、そうだよ、希ちゃんには神様がついてるんだもん…!それに凛達の応援が加われば……!」

花陽「そうだよねっ、助かるはず…だよね!」

真姫「それに私のパパが執刀してるんでしょ?助からないはず……ないじゃない。」


絵里「みんな………」ジワ…


にこ「絵里、」

にこ「……さっきはごめん。私…周りが見えてなかった。まるで理事長に…希が殺されてしまったような、そんな気持ちになってた。」

にこ「……でも、絵里の言う通り……希はまだ、生きてるのよね。頑張ってるのよね。」

にこ「………私たちで、応援して……絶対希のこと、取り戻すわよ……!」

絵里「にこ……」

絵里「ええ、絶対取り戻すわよ……!」

穂乃果「よーしっ、それじゃあいくよっ!」









絵里(希……聞こえてる?)

絵里(みんな…みんなたくさん、貴女のこと、応援してるわ。みんな貴女に戻ってきてほしいって思ってる。)

絵里(だからお願い……希………)



絵里「………っ、がんばって………!」ポロポロ


ほんとだ
>>92は"結成日"で

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---
--



………………ガチャッ


絵里「…………!」

にこ「希……っ!」

真姫「パパ!希は……っ?!」


タッタッタッタ…


絵里「希は……!希はどうなりましたかっ!!」

『……大丈夫、手術は成功したよ。』

絵里「ほん……とに………」ジワ…

真姫「じゃあ、希に……!!」

『待って。それはまだ…やめたほうがいい。』

凛「どうして…?凛、希ちゃんの手術が終わったら、頭なでなでしてあげようって、思ってたのに……」

『……今はまだ意識はないし、集中治療室に大勢で入ることはできない。』

『…………それに…その……』

絵里「………っ」


絵里「そう……ね………」

絵里「……っ、みんなごめん……希…たぶん、今の自分を…あまり見られたくないと思う……」

にこ「………」

にこ「……なるほど、ね……」

にこ「……真姫のパパ!希はもう…命の心配はないのよね?」

『それは……すまない、保証はできない。仮にも一時呼吸が止まっていたわけだから……後遺症の心配もあるし、意識が戻るまでは……油断できない。』

『…ただ、元々衰弱していた上に、出血多量であんなことになっていたわけで……原因の穴は塞いだから、意識さえ戻れば…身体的な心配はほぼないよ。』

絵里「意識が……」

にこ「…………」

にこ(…身体的な……ね………)

にこ「絵里……あんた、このまま今日はここに入院なのよね?」

絵里「ええ……」

にこ「………希についててくれる?危なくなったり……意識が戻ったら、私たちに連絡してくれる?」

絵里「それは……もちろんよ………!」

にこ「そう………」

にこ「………」

にこ「……じゃああんた達、帰るわよ。」

凛「えっ、にこちゃん…どうして……!」

花陽「希ちゃんに…会えないの?」

にこ「……例えばあんた達が喧嘩して、顔面殴られたとして……その顔、他の人に見られたい?」

凛「……、それは………」

花陽「…、いや……かも……」

にこ「…、そーゆーこと。まぁ希が顔面殴られたのかどうかは知らないけど……何かあったら絵里が連絡してくれるんだから。なんなら今日はみんなで泊まりっこしてもいいし。」

ことり「泊まりっこ……?」

にこ「ことり……今日から一人なんでしょ?」

ことり「あ………」

ことり「……そっ…か………」


真姫「………」

真姫「まったく……じゃあほら、みんなうちに泊まる?ここから近いし……」クルクル

にこ「真姫………!」

花陽「えっと…真姫ちゃん……いいの?」

『…うちは大丈夫だよ。妻に連絡しておこう。』

真姫「パパ……!ありがとう……」

凛「じゃあ今日は真姫ちゃんちでお泊りにゃー!」

穂乃果「そうだね!真姫ちゃんっ、ありがとう!!」

海未「二人は少し遠慮してください!」

真姫「いいのよ、別に…これくらい。」

ことり「真姫ちゃん……」


ことり「……ありがとう。」

真姫「べ……別にいいって言ってるじゃない。お礼なんか、いいわよ…!」

真姫「じゃあ、ほら……行くならもう行きましょう。時間も結構遅いし……」

にこ「……そうね。じゃあ……」


にこ「……絵里。希のこと…よろしく頼んだわよ。」

絵里「ええ…まかせて。」

にこ「………」

にこ「ありがとう……」ボソッ

絵里「えっ……?」

にこ「……ううん、やっぱりなんでもない。全てがちゃんと終わったら…もう一度改めていうわ。」

にこ「ただ……その、あんたも少し、休みなさいよね?」

にこ「……無理しすぎると……よくないんだから。」

絵里「にこ………」

絵里「……うん。ありがとう。」


にこ「………ふんっ、」

にこ「……それじゃ、あんた達…行くわよ。」

凛「……うんっ!」






…ゲホッ、ゲホッ…ウウ……

アーニコチャンガダウンシタニャ! ダイジョウブ?!ニコチャン!!

カッコツケタコトイイナガラ、ニコチャンガムリシテタノネ…マッタク

アハハ…キョウハミンナデカンビョウダネ!




絵里「………」フリフリ

『……絵里ちゃんに、希ちゃんのことで……少し話があるんだが…いいかな?』

絵里「希のことで……ですか?」

『ああ……』

絵里「………」



絵里「わかりました……」


----
---
--


ガチャ

絵里「のーぞみ!」



ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……

希「………」ヒュー…ヒュー…



絵里「………」

絵里「希………」

絵里「……よいしょっと」ストン

絵里「………ふふ、集中治療室って…入るの結構大変なのね。初めて入ったわ……」


希「………」ヒュー…ヒュー…


絵里「希………」ナデ…


希「………」ヒュー…ヒュー…


絵里「………」

絵里「手術……お疲れ様。」

絵里「たくさん頑張って……偉いわ。」ナデナデ

絵里「ふふ…前にこれやったときは、やめてやー!髪ぼさぼさになるやん!なんて、手を払われたっけ……」

絵里「………」

希「………」ヒュー…ヒュー…

絵里「……私ね、希が起きるまで……ずっとここにいるわ。」

絵里「だから安心して……今は休んで。」

絵里「のぞみ………」


希「………」ヒュー…ヒュー…


絵里「希………」



『………それで話って、なんですか?』

『……本来こういった話は、ご家族にするべきなんだが……未だに親御さんと連絡がとれなくてね…』

『絵里ちゃんには…話しておくべきだと思って。本当はこういうの、よくないんだが……僕は医院長だから。ね。』

『………!ありがとうございます。大丈夫です、他言はしません。できるだけ詳しく教えてください…!』

『…あ、ああ。ありがたいよ。それじゃ……』



ピッ……ピッ……ピッ……

絵里「………」



『……とりあえずさっき言ったように、一先ず原因になっていた胃の穴は塞いだし……呼吸も既に戻ってきてるんだ。衰弱してて弱くなってるから、まだ酸素マスクは必要だけど。』

『…だから感染症さえ防げれば……意識さえ戻れば、一般病棟に写せると思う。絵里ちゃんの隣のベッド…あけてあるから。』

『…ただ、もう少し下の方も…色々、毒が抽出されたり、影が見えてね……その、中にいた物は取り除いて置いたけど…』

『………』

『……まだわからないが、その器官の機能は失われてるかもしれないから…目が覚め次第検査が必要。』



ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……

希「………」ヒュー…ヒュー…



『でも、今一番心配なのは…精神面。』

『何があったのかわからないけど、何か異常なことが起きたのはわかる……その…さっき言った器官の方はもちろんそうだけど、胃の穴の方も。』

『…あれは急性胃潰瘍が腹膜炎を起こしたものだった。強いストレスから引き起こされることが多い病気なんだよ。』

『それに……』

『………』

『………?なんですか?』

『……明日、警察からこっちに話がくるみたいだから、その時に治療については検討するけど……』

『……希ちゃんの脳、脳波に異常があるわけでも、腫れてるわけでもない……んだが』

『ほんの少しだけど……縮んでるんだ。』

『…………っ、』

『……これは戦時中に拷問を受けた人にみられた症状でね…殆どの人はなくなった後の検査で発覚したから、どういう影響があるかわからない。』

『もちろん、脳は回復力の一番強いところだから、すぐに元通りになるかもしれないし、何も影響はないかもしれない…だけど、何も影響がないと断言もできない。』

『…だから目が覚めてからも…注意してあげてほしい。』

『わかり……ました……』



ピッ……ピッ……ピッ……

絵里「希………」ナデ…



『……すまない、絵里ちゃんに気負わせるようなことを言って。』

『……っ、いえ……私が詳しい話が聞きたいと言ったんですから。大丈夫です……これからも何かあれば、お話ししていただけたらありがたいです。』

『ああ……あと、絵里ちゃんも明日、詳しい検査をしたほうがいい……左腕、それ…担当した医師から通電からの火傷だって聞いてる、他にも何か影響がでてるかもしれないから。』

『……多分、大丈夫だと思います……希が目が覚めてからではだめですか?目が覚めたとき、側にいてあげたいので……』

『絵里ちゃんがそれで大丈夫ならそれでも構わないよ。火傷の跡だけど、絵里ちゃんのも…希ちゃんのも、段階があるんだけどね、』

『1度の火傷だったから…時間をかければほぼ元通りにできると思う。いや、してみせるから、安心してほしい。』

『……ありがとうございます。何から何まで。その、治療費は……』

『治療費は大丈夫。』

『……っ、そんなわけには……』

『真姫な、音ノ木に入って…μ'sを始めてから、すごく明るくなったんだ。家でも楽しそうに学校のこと、話すようになって……』

『医者って職業柄、聞く話の大半は不幸話なんだ…だから家に帰ったときに、真姫が楽しそうにμ'sのことを話すのは…すごく、暖かい気持ちになれるんだよ。』

『それに、真姫が言ってたんだ。μ'sのみんなと打ち解けられたのは希と絵里がいたからだって。』

『真姫が……』

『…だからこれは色んな意味でのお礼だと思ってほしい。希ちゃんの親御さんにも連絡がとれたら改めてそう言うつもりだから。』

『……っ、ありがとうございます……!』

『…別に、いいんだよ……これくらい。』クル…

『その…だからこれからも、真姫のこと…よろしく頼むよ、真姫はつんつんしてるけど…なんだかんだ、みんなのこと、大好きなんだ。』

『……それはわかってます。大丈夫です、私も希も、みんなも……真姫のこと、大好きですから。』

『そっか……』

『………なら、よかった。』



ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……

希「………」ヒュー…ヒュー…



絵里「希……」

絵里「……さっき、希が起きるまで、ずっとここにいるって言ったけど……少しだけ訂正するわね、」

絵里「私…希が起きても、ずっと一緒にいるから…だから……」

絵里「………ね、安心して。もう…何の心配もないわ。」



ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……



-----
----
---
--


凛「ふぁー学校疲れたにゃー!」

真姫「凛は寝てただけじゃない……」

花陽「……外、すごい人だったね……」


ガチャ


真姫「ただいま。」

凛「ただいまー!!」

花陽「ただ…っ、お、おじゃまします…」

『はーい、おかえりなさい。花陽ちゃん、ただいまでも全然いいわよ?希ちゃんの意識が戻るまではここがお家だと思ってくれると嬉しいわ。』

『穂乃果ちゃん達、今は二階にいるから。』

凛「はーい!真姫ちゃんっ、かよちん、行こー!!」タタッ…

真姫「あっ、ちょっと凛、待ちなさいよっ」タタッ

花陽「…ありがとうございます、真姫ちゃんのお母さん。凛ちゃーん!真姫ちゃん!待ってえ~」タッタ…



ガチャ!

凛「穂乃果ちゃん!海未ちゃん!ことりちゃん!にこちゃん!ただいまーっ」

海未「…!おかえりなさい、凛、真姫、花陽。」

ことり「おかえりなさい!」

穂乃果「おっかえりー!!」

にこ「くしゅっ……おかえり。」


花陽「ただいま。にこちゃん熱、大丈夫?」

にこ「少し下がったし…もう大丈夫ね。」

海未「そうは言ってもまだ高いんですから…横になっていてください。」

にこ「ええ……」

真姫「絵里から何か希のこと…連絡きた?こっちには何も来てないんだけど…」

海未「今のところは…たまに絵里からLINEはきてますが、まだ目は覚めていないようです。」

真姫「そう……」

穂乃果「学校の方はどうだった?」

凛「今日は小テストで散々だったにゃー…穂乃果ちゃんずるい!凛もお留守番がよかったなぁ~」

穂乃果「ふっふっふ……凛ちゃんはまだ一年生だからね!ちゃんと学校に行かなきゃダメだよっ!」

海未「…ことりはともかく、私達も月曜からは学校に行きますよ。今日は希のことや、にこの看病があったから休みましたが……」

穂乃果「うう……月曜日は穂乃果達も小テストが……」

真姫「もう……」

真姫「……学校だけど、穂乃果が凛に聞いたのはそういう意味ではないんでしょう?」

真姫「マスコミ……たくさん来てたわよ。私達も質問攻めにあって、走って帰ってきたの。」

ことり「真姫ちゃん……」

にこ「まぁ……やっぱり、そうなるでしょうね……」

にこ「テレビもこんなんだし……」



『……現場のーーと中継が取れています、ーーさん!』

『はい、ここが現場の、南容疑者の自宅前です。少しカメラ寄れますか?奥に見えるのが、実際に被害者が監禁されていた倉庫でーー』

『………また、被害者はスクールアイドル活動をしており、容疑者はーー』



プツッーーー



にこ「………っ…」スッ

花陽「にこちゃん……」

花陽「………ネットも結構、すごいことになってるよね……」スッ…



【悲報】μ'sの東條希ちゃん、監禁される

0001名無しで叶える物語(SB-iPhone)
なお犯人は同グループ南ことりの親の模様

0002名無しで叶える物語(庭)
ソースはよ

0003名無しで叶える物語(やわらか銀行)
http//otonokizaka.con
http//news.con
http//Twitter.0000.con
ここのサイトからしてほぼ間違いないやろ

0004名無しで叶える物語(たこやき)
ガチやんけ!

0005名無しで叶える物語(地震なし)
マジかよ南ことり最低だな

0006名無しで叶える物語(おいしい水)
>>5 おいまてことりたそは天使やぞ
まぁもうお日様の下は歩けないやろな

0007名無しで叶える物語(プーアル茶)
μ'sは解散か
ミュータントガールズにでも乗り換えるかなぁ

0008名無しで叶える物語(しまむら)
蛙の子は蛙って言うしな
ことりちゃんはヤンデレくさい

0009名無しで叶える物語(茸)
アフィカスってさあ、生きてる価値ないよな、人に依存して……



花陽「………っ、」

花陽「………」カチッ

ことり「………」

にこ「ことり………」

にこ「…………気にすることないわよ、ことりは何も悪くないんだから。悪いのは理事長だけで……」

ことり「うん……大丈夫。」

ことり「これくらい……覚悟してたから。希ちゃんは…もっとずっとつらかったんだから。」

ことり「……むしろみんなに迷惑かけちゃって……ごめんね。」

花陽「迷惑なんて……!」

『……そうよ、迷惑なんかじゃないわ。』ガチャ

真姫「ママ……」

『ごめんなさいね、いきなり入って……これ、お茶。』

海未「ありがとうございます…」

『…あのね、ことりちゃん。ことりちゃんさえよければ、このままうちにいてもいいのよ。もちろん帰りたければ、お家に帰っても構わないけど……』

ことり「真姫ちゃんのお母さん……」

『……南さんとは、昔からの仲だから。』

真姫「………っ、そうよ!ことり、ずっとここにいて。ことりは何も悪くないんだから……」

ことり「真姫ちゃん……、でも……」

穂乃果「うちのお母さんからも連絡きてるよ、ことりちゃん、よかったらうちで暮らさない?って!穂乃果もことりちゃんと一緒がいいなぁっ」

海未「私の家からも先ほど電話がありましたよ。ことり、私の家でも大丈夫です。」

ことり「二人とも……」

にこ「ことり、何も一人で家に帰ることないわ。ことりの味方は、ここにたくさんいるんだから……」

ことり「にこちゃん………」ジワ…


ことり「………っ、」

海未「ことり……?」


ことり「…………あはは、みんな……おかしいよ。」ポロ…

ことり「ねえ、みんな……私のこと…怖くないの?ニュース、見たでしょ……希ちゃんに、たくさん酷いこと……人とは思えないようなことばかりしてたって……」ポロポロ

ことり「……っ、そんな人の…娘なんだよ?同じ血が……流れてるんだよ………」ポロポロ

ことり「私は……怖いよ………」ポロポロ

海未「ことり……」


穂乃果「ことりちゃんっ!!」



ギュッ



ことり「穂乃果…ちゃん……?」ポロポロ

穂乃果「………」

穂乃果「……穂乃果ね、絵里ちゃんの話聞いて…ニュース見て。確かに理事長のこと…怖いなって、すごく思ったよ。希ちゃん、どんなに怖かったんだろうって……希ちゃんの気持ち考えたら、穂乃果…泣きそうになっちゃう。」

ことり「穂乃果ちゃん……」ポロポロ

穂乃果「だけどね…!いくら同じ血が流れてるって言ったって、ことりちゃんはことりちゃんだよ。理事長とは、絶対違う……!」

穂乃果「穂乃果が保証する!!ことりちゃんは、絶対そんなことしないって…ことりちゃんはそんな子じゃないって!小さい頃から一緒にいるんだもん、わかるよ…!」

ことり「……っ、穂乃果…ちゃん……」ポロポロ

『……そうよ。』


ことり「真姫ちゃんの…お母さん?」ポロポロ

『私ね……南さんが捕まったって、聞いて。そこまで驚かなかったの。逆にもっと目を光らせておくべきだった…もっと気をつけてあげればよかった……って、今すごく後悔してる。』

ことり「………」ポロポロ

『南さんは、昔からどこかかわってた。変な生き物が好きで、研究熱心で……マッドサイエンティスト、みたいなね。ことりちゃんは、正反対じゃない。』

『可愛いものが好きで、性格だって、似てるようで全然違う……小さい頃から見てたから、わかるのよ。』

ことり「うう……」ポロポロ

海未「みんなわかってるんですよ、ことりは理事長とは違うと……だから家にこないかって声をかけるんです。自信を持ってください、ことりは理事長とは違います。」

ことり「海未ちゃん………」ポロポロ

凛「……そうだよ!ことりちゃん、凛が怪我して保健室に行った時……顔を歪めて、痛いよね…って、今絆創膏貼るからって、優しく貼ってくれて……痛いの痛いのとんでけー!って、してくれたよね!」

凛「ことりちゃんは人が痛がってるのを見て、喜ぶような子じゃ…絶対ないもん!」

花陽「そうだよ。アルパカさんのお掃除も、すごく優しい顔でしてくれて……でも、虫が出た時にはきゃー!って。ね?理事長とは、絶対違うよ…ことりちゃんは。」

ことり「凛ちゃん……花陽ちゃん……」ポロポロ

ことり「みんな……ありがとう。」ポロポロ

『……さっ、それじゃあ少し早いけど、みんなでお風呂に入ってきてくれる?夕飯の準備、その間にお手伝いさんがしておいてくれるから…』

にこ「お手伝いさん………」

凛「わーい!凛、いっちばーん!!」

穂乃果「あーっ、凛ちゃんずるーい!穂乃果も穂乃果もー!!」


タッタッタッタ……



海未「まったく、あの二人は……」

海未「お風呂ですが、絵里から連絡が来るかもしれませんし、分かれて……」

にこ「ああ、それなら私、まだお風呂入れそうにないから…あんた達一気に入ってきちゃっていいわよ。」

にこ「絵里から連絡がきたら、急いで報告にいくから。」

海未「にこ……ありがとうございます。」

にこ「ええ……」

海未「それじゃあことり、花陽、真姫、行きましょう。」

タッ…タッ…タッ…


にこ「………」


ヴー ヴー

にこ「………っ、!絵里……?」

にこ「………」スッ


『…ごめん、希はまだ、目が覚めないんだけど……』

『今、警察が話を聞きに来たわ。今夜ことりにも話を聞きに行くって言ってたから……一応伝えとこうと思って。』

『それからマスコミがたくさん騒いでるって聞いて……にこ、みんなのこと、お願いね。』


にこ「絵里……」

にこ(警察が……ね。なんの話かしら。)

にこ(………)

にこ(…それにしても、絵里も希も人のことばっかりなんだから……)


にこ「まったく……」

----
---
--

ピッ……ピッ……ピッ……

希「………」ヒュー…ヒュー…



ガチャ


絵里「ただいま、希。」


絵里「……」ストン

絵里「……ごめんね、少しだけ刑事さんと話してきたの。…それから亜里沙も来てくれて。」

絵里「…理事長ね、やったこと全てを話したみたい……てっきり全てを隠すつもりなのかと思ってた。何か企んでるのかしら……」



ピッ……ピッ……ピッ……

希「………」ヒュー…ヒュー…



絵里「希……」

絵里「……ごめんね、こんな話……楽しくないわね。」

絵里「見て見て、亜里沙がくれたの……誕生日プレゼントにって。マグカップ2つ…希さんと使って!って。ふふ、カップルじゃないんだから……まったくもう。」

絵里「ね、希……あと少しで、今日が終わっちゃう。」



ピッ……ピッ……ピッ……

希「………」ヒュー…ヒュー…



絵里「のぞみ………」

絵里「………」



ピッ……ピッ……ピッ……

希「………」ヒュー…ヒュー…



絵里「希………」



絵里「あ……終わっちゃった。」

絵里「もう……希の馬鹿。μ'sのみんなだって、貴女が言ってくれなきゃ…私の誕生日なんて、知らないんだから。」


ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……



絵里「希……」ギュッ

絵里「手…あったかい。」

絵里「………」

絵里「ふふ……もう、希ってば…お寝坊さんだけど、でも……許してあげる。」

絵里「希が起きてくれることが、一番の誕生日プレゼントだから……私、いくらでも待つわね。」

絵里「のぞみ……」ウト…


ピッ……ピッ……ピッ……


絵里「………」スー…スー…


希「………」ヒュー…ヒュー…



ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……




---
--


ことり「ありがとうございました…」


ガチャ


ことり「………」ズルズル…


ドサッ



ドクン…ドクン…ドクン……



ことり「は……はぁっ……は………」ガタガタ


『南ことりさん、貴女には容疑者の裁判に、情状証人として出てもらわなくてはなりません。』


ことり「……っ、は……は………」ガタガタ


『そのため、現在調べが付いている、被害者が受けた被害について聞いていただくのが普通ですが…もちろん断ってもらっても構いません。』

『大丈夫です、聞かせてください。』


ことり「は……は………はっ……」ガタガタ


『それでは…まず、被害者は6日の木曜日に………』


ことり「は………はぁっ…はぁっ………」ガタガタ

ことり「ぅ……げほっ、うぐ」


タッタッタッタ………ガチャッ


ことり「う……………っ」

ことり「げほっ……けほ………」

ことり「はぁっ……はぁっ………」


ジャー


バタン



ことり「は………」



海未「ことり……?」


ことり「………っ、海未ちゃん………」


海未「刑事さんとのお話は、終わったのですか?」

ことり「う…うん………海未ちゃん、まだ起きてたんだ……」

海未「ええ…他のみんなは寝てしまいましたが。ことり…顔色が悪いようですが、大丈夫ですか……?」

ことり「大丈夫……」

海未「………」

海未「……刑事さんとは、どんなお話をしたんですか?」


ことり「…お話………」

ことり「……、………」

海未「ことり……?」

ことり「……ねえ、海未ちゃん…………」

海未「………?」

ことり「お母さんは……本当に最低な人間だったよ……」

海未「……っ、」

ことり「私ね、お母さんは…私にはすごく優しかったから。希ちゃんに何かしたって聞いても、どこか少し…想像できなかったの。」

海未「………」

ことり「…でもね、刑事さんに、お母さんが何をしたのか……詳しく聞いてね、私今……思わず吐いちゃったよ。」

海未「ことり……」

ことり「お母さん……最低だよ、本当に……生まれてはじめて、こんなに軽蔑した。」ジワ

ことり「希ちゃんが、殺して、楽にしてって言った意味が…わかったよ。私ならあんなことされるくらいなら、殺された方がずっとまし!」ポロポロ

海未「希は……」

海未「希は、何をされたのですか?」

ことり「言えない…言えないよ……!」ポロポロ

ことり「でも…ねえ、海未ちゃん」ポロポロ

ことり「海未ちゃんは……希ちゃんが担架で運ばれて行った時……見てたよね。」ポロポロ

海未「………っ、」

ことり「髪が……っ、真っ白だったの……」ポロポロ

海未「………はい、見ました…」

ことり「すごく…怖かったんだろうね……希ちゃん……」ポロポロ

ことり「ねえ海未ちゃん…もう、私……希ちゃんにどんな顔して会ったらいいのかわからない。どんな顔して謝ればいいのかわからない……」ポロポロ

ことり「私……わたし、どうしたらいいのかな。真姫ちゃんも、穂乃果ちゃんも、海未ちゃんも、みんなみんな……私に優しくしてくれるけど」ポロポロ

ことり「あんなことされた希ちゃんは…きっともう、元通りの生活なんてできない。…私だけこんな、幸せでいいはずがないよ。」ポロポロ

ことり「私…こんな幸せじゃだめだよ、もっと苦しまなきゃ……だめだよ。」ポロポロ

ことり「う……うう………」ポロポロ

海未「ことり……」

海未「…………」



パチン…



ことり「いたっ………」ポロポロ

ことり「……海未、ちゃん…?」ポロポロ

海未「希のこれからを決めるのは……ことりではありません。」

ことり「………」ポロポロ

海未「…ことりにだけ、私達がついているわけではないんです。希にだって、私達がついています。」

海未「希だって……これからもっともっと、幸せになれるはずです。」

ことり「海未ちゃん……」ポロポロ

海未「ことりがしなくてはならないのは……希と同じように苦しむことではありません。少しでも早く、希が元通りの生活に戻れるように…幸せになれるように、お手伝いすることだと…私は思います。」

ことり「………っ、でも、希ちゃんは…私の顔なんてもう……」ポロポロ

海未「……それも、希が決めることです。希が起きてみなければわかりません……」

海未「…それに、希がたとえそう言ったとしても……陰ながら支えることだって、できるはずです。」

海未「それはずっとμ'sの衣装を作っていたことりが、一番得意なことではないですか?」

ことり「海未ちゃん……」ポロポロ

海未「……何も知らずに、偉そうなことを言ってしまって…すみません。」

ことり「ううん……私こそごめん……」ポロポロ

ことり「そう…だよね…希ちゃんが…幸せになれるように、お手伝いすることが……一番大切なんだよね。」ポロポロ

ことり「私、海未ちゃんがいないと…いつもおかしな方向に考えちゃって……ダメダメだ……」ポロポロ

海未「ことり……」


海未「…一先ず希の目が覚め次第……絵里を通して謝りに行ってもいいか聞いてみましょう。」

海未「…それから本来、ことりがそこまで気に病む必要はないんです。罪を償わなければならないのは、理事長なんですから……」

ことり「………お母さん…」ポロポロ

ことり「……そう…だ……お母さんね、死んでも償えないようなこと、希ちゃんにたくさんしたのに……」ポロポロ

ことり「…殺人はしてないから、日本の法律的に……死刑には絶対にならないんだって。」ポロポロ

海未「そう…なんですか……」

ことり「…うん。それにお母さん…ね、自分がやったことは全て話したけど……殺意はなかったって、主張してるんだって。」ポロポロ

海未「殺意…ですか?」

ことり「うん……それに、睡眠薬たくさん飲んでたから、どうして自分があんなことしたのかわからない…とか。」ポロポロ

海未「それは……」

ことり「………精神的におかしいってことを主張して、あわよくば責任能力がなかったってことにしようとしてるのと……」ポロポロ

ことり「……っ、殺意があったと認められれば、殺人未遂として…最高で無期懲役にできるけど、認められないと……長くても7年で出てこられるんだって……!」ポロポロ

海未「7年……ですか。」


ことり「足りない。」ポロポロ


海未「………っ、」

ことり「お母さんが希ちゃんにしたこと……私、死刑でも足りないくらいひどい事だと思ったの。7年なんかじゃ…絶対足りないよ……」ポロポロ

海未「ことり……」

ことり「……お母さんね、あんなんだけど…私のこと、大好きなの。それに本当は、私もお母さんのこと……大好き。軽蔑したって言ったけど…それでも、やっぱり。」

ことり「……お母さんはね、獄中でも私がたまに会いにくるなら、別に平気だって…思ってると思う。」ポロポロ

海未「………」

ことり「……こんな言い方したらおかしいけど…依存し合った親子だったから。」ポロポロ

海未「依存…ですか……」

ことり「……そう、お母さんが死刑にならないなら……多分1番つらいのは、私に一生会えないこと。」ゴシ…



…スクッ



海未「ことり……?」

ことり「私ね、お母さんの裁判に出席するの。情状証人…だったかな。その時にちゃんと説明してくる、お母さんには責任能力があったこと…お母さんは昔から、殺意を持って生き物を殺すことに快感を感じていたこと。」

ことり「……それから、」ジワ…

海未「………?」

ことり「……もう、お母さんとは一生会うつもりはありませんって、伝えてくる。」ポロポロ

海未「ことり………」

海未「…しかし、それでは理事長が出てきたときに……」

ことり「あ……そっか、そう…だね………」ポロポロ

ことり「やけになって、なにするか…わからないね。」ポロポロ

海未「………」

ことり「もう……お母さんは、本当に……手がかかるなぁ……」ポロポロ

ことり「…じゃあこうする。お母さんがこれから一生、私達9人に顔を見せなければ、お母さんが死ぬ間際に……1度だけ、会いに行くって。」ポロポロ

海未「……そう、ですね。それがいいと思います。しかし……」

海未「ことりは……つらくありませんか?」

ことり「……っ、これくらい……いいの。私にできるのは…これくらいしかないから。」ポロポロ

海未「ことり……」

海未「………私も行きます。確か傍受席というのがあったはずです。ことりを一人にはしません。」

ことり「海未ちゃん………」ポロポロ


ことり「……ありがとう。」ポロポロ

-----
----
---
--


にこ「ふっかぁぁつ!!!」


真姫「やっとね……随分長かったじゃない。」

凛「1週間もかかったにゃー。これはあれだね、にこちゃん学校行ったら机がきっと、課題でパンパンに……」

にこ「おおお恐ろしいこと言わないでよね!それにそれは絵里も希も同じでしょう?!」

凛「希ちゃんと絵里ちゃんは被害者だもーん。それに比べてにこちゃんは……」

にこ「むぐぐぐぐぐ………」


花陽「………それにしても……にこちゃんが風邪引いて、もう1週間も経つんだね……」

花陽「希ちゃん………」



真姫「……っ、」

凛「……っ」ジワッ

にこ「花陽………」



花陽「……っ、!」

花陽「ごめん……ごめんね………」

真姫「いや……まぁ、私も少し……思ってたから。」

凛「希ちゃん……いつ目が覚めるのかな……」

花陽「………」

にこ「あんた達……」

にこ「……っ、まったく、希……何してんのかしらね、寝坊もここまでくると困ったもんじゃないわね、起きたらこっちから、遅いわよってワシワシMAXでもお見舞いしてやろうかしら!」

真姫「にこちゃん……」


凛「……っ、ぐす……」ポロ…

にこ「…………」

にこ「………」ハァ

にこ「……明日になっても希が起きないようなら、いつまでも真姫の家にお世話になるわけにもいかないし……」

にこ「絵里に話して……一度私達も、会いに行きましょうか。」

真姫「うちは別にいいけど……でも、そうね、一度私も会いに行きたいわ。」

凛「凛も行きたい!」ポロポロ

花陽「私も……」

にこ「……じゃあ、そうしましょ。」



にこ(希……早く起きないと、あんたきっと、あんな姿……私達には見られたくないでしょ?)

にこ(………早く起きなさいよ。)

----
---
--

絵里「ありがとうございました……」


絵里「………」

『絵里ちゃん。』

絵里「……っ!、真姫のお父さん……」

『刑事さんとの話は終わった?少し…希ちゃんのことで、話したいことがあるんだけど……いいかな?』

絵里「………」

『絵里ちゃん…?』

絵里「……っ、はい…大丈夫です。」





ガチャ



絵里「…それで……話ってなんでしょうか。」

『希ちゃんなんだが…今日で意識が戻らなくて、1週間がたつ』

絵里「………っ、」

『親御さんとも…未だに連絡がつかない。会社によれば、どうやら紛争地域のかなり深部にいるらしい。』

絵里「希のお父さん……」

絵里「………」

絵里「希は……希はいつ起きるんですか?もしかして何か……」

『…それは安心して。脳波は正常だから脳死はあり得ないし、植物状態とも違う……』

絵里「……っ、じゃあ……」

『………』

『……どちらかというと…ただ、眠ってるような、そんな感じ………かな。』

絵里「眠ってる……」

絵里「どうして、希は……」

『……すまない、はっきりとした原因がよくわからないんだ。元々脳死や植物状態になるような脳の兆候は見られなかったから、麻酔が抜ければいずれ眼が覚めるはずだった…』

『…正直今、希ちゃんがいつまで眠り続けるのか…いつ起きるのかがわからない。』

『……こんなこと言いたくないんだが、数年起きない可能性も…ある。』

絵里「………っ、」

絵里「そ…んな………」

『…………』

『……あのね、絵里ちゃんには…絵里ちゃんの人生がある。明日も学校がある。このままここにベッドを1つ多く置いておくのは構わないんだが、それでも………』

絵里「………」

絵里「……何が言いたいんですか?」

『……絵里ちゃんは、そろそろ退院して学校に行った方がいい……火傷の経過も、良好だから。』

『希ちゃんのことは、僕達に……』

絵里「………っ、嫌です。」

『………っ、』

絵里「……我儘だとは、わかってるんです。ごめんなさい。」

絵里「……っ、でも!!私は希が目がさめるまで、一緒にいてあげたいんです。」

絵里「お願いします!!あと少し……あと少しだけ、待ってください。」

『………』

『わかったよ……でも、絵里ちゃんには絵里ちゃんの人生があることも……忘れないで。』

絵里「………っ、」

絵里「ありがとうございました…」


ガチャンッ



『…………』




タッタッタッタ……


絵里「希………っ」



----
---
--

ガチャッ

穂乃果「たっだいまー!」

海未「ただいま帰りました、ことり。」


ことり「おかえり、穂乃果ちゃん。海未ちゃん。一年生のみんなは帰ってきてるよ!それからにこちゃんの風邪も、やっと治って……」

穂乃果「にこちゃんが!良かったぁ。」

海未「随分長い風邪でしたからね、良かったです。」

ことり「あはは……」

ことり「………だからにこちゃん、明日からは学校行くって。私……」

穂乃果「ことりちゃんも行こう!!」

ことり「………っ、穂乃果ちゃん……」

海未「……マスコミなら、だいぶ数が減りました。もちろん私達も一緒に行くので……どうでしょうか。」

ことり「海未ちゃん……」

ことり「私……行っていいのかな、学校のみんな……どう思うかな……」

穂乃果「…っ、大丈夫だよっ!音ノ木のみんなは優しいし……」

穂乃果「……………たぶん……」

海未「穂乃果……」


ことり「………」

『一度行ってみたらいいんじゃないかしら。』ガチャ

ことり「真姫ちゃんのお母さん……」

海未「一度行ってみる…とは、どういうことですか?」

『別に、そのままの意味よ?一度行ってみて、大丈夫そうならそのまま行けばいいし…何かあれば、途中で帰ってきてもいいじゃない。』

『転校とか…苗字を変えるとか、色々あるけど…全部行ってみて、ダメなら考えればいいんじゃないかしら。』

穂乃果「なるほど……」

穂乃果「……そうだよことりちゃん!難しく考えることなんてない、とりあえず行ってみればいいんだよ!」

ことり「穂乃果ちゃん……」

海未「…そうですね。ことりには私達二人も…他のメンバーも、ついてますから。何かあれば私達が何とかします。」

ことり「海未ちゃん……」

ことり「……そう…だね。二人とも…ありがとう。」

『ふふっ、じゃあそろそろご飯みたいだから。一年生のみんなは下でお皿並べたりしてくれてるの。』

穂乃果「わーごはん!穂乃果も手伝いに行くー!」タッタッタッタ…

海未「わっ、穂乃果!走ってはいけませんよ!」

ことり「あはは……」


海未「ことり……」

海未「私達も行きましょうか。」

ことり「うん……」

----
---
--

ガチャ


絵里「希……っ」



ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……

希「………」ヒュー…ヒュー…



絵里「希……」


コツ……コツ…コツ、


絵里「………」ストン

絵里「ねえ、希………」

絵里「………」


絵里「………ねえ、起きて。」ユサ…

絵里「もう…いくらなんでも寝坊が過ぎるわよ?そろそろ起きてよ……希。」ユサユサ



希「………」ヒュー…ヒュー…



絵里「希………」

絵里「………」

絵里「………ごめん…ね。私、いくらでも待つ…って、言ったのに。」

絵里「…けどね、やっぱり私は…希と一緒がいいの。希に…隣にいてほしいの。」

絵里「私だけ先に日常に戻るなんて…嫌なのよ。貴女が一緒じゃないと……」

絵里「ねえ、希………」ユサ…



希「………」ヒュー…ヒュー…



絵里「………っ」ジワッ

絵里「希……希が起きたくないの、なんとなくわかるわ……もう、嫌になっちゃったのよね、一人でつらいことや…痛いことばっかりで。」

絵里「……ごめんね、私が……私が無理矢理、希のこと、生かしたから……希はずっと、もう無理だって……言っていたのに。」



希「………」ヒュー…ヒュー…



絵里「ごめんね………」


絵里「……っ、でも……私が責任、とるから。」

絵里「絶対もう…希が一人でつらい目になんてあわないように、私がずっと…一緒にいるから。守ってみせるから……だから、」

絵里「……ねえ、お願い………起きて。」ポロポロ



希「………」ヒュー…ヒュー…

ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……



絵里「のぞみ………」ポロポロ


絵里「…………」ポロポロ

絵里「………っ、ごめん、ね。急かすようなこと言って。希はまだ少し……眠いのよね。」ポロポロ

絵里「っ…ぐす……」ゴシ…

絵里「希………」


絵里「………」

絵里「…今日はね、夕方にメールが来てたんだけど…にこ、やっと風邪が治ったみたい。」

絵里「随分長引いてて、心配してたから…良かったわ。」

絵里「それからね、隣町でお店をやってるおばあさまが、うちで暮らしてくれることになって…亜里沙、すごく喜んでる。」

絵里「毎日おばあさまの料理が食べられるー!って。ふふ、おばあさまの料理は、本当に美味しくて……」

絵里「…一度、おばあさまのお店に……希と食べに行ったことも、あったわね…懐かしい。」

絵里「また今度、一緒に食べに行きましょう?」



希「………」ヒュー…ヒュー…



絵里「希………」

絵里「…あっ、あと、さっき刑事さんが……私のスクールバック、持ってきてくれて……」

絵里「……ほら、これ。あそこに置きっぱなしになってたのね…すっかり忘れてた。」

絵里「私のスマホと…希のスマホも。戻ってきたわ。やっと真姫に代用機返せるわね……」

絵里「…ね、希……」



希「………」ヒュー…ヒュー…



絵里「……ほら、ここじゃ使えないけど…希のスマホのロック番号、私知ってるんだから……」

絵里「……ふふ、早く起きないと、検索履歴とか…色々。見ちゃうわよ~?」



希「………」ヒュー…ヒュー…


絵里「………」

絵里「希………」

絵里「………ふふ、冗談よ。安心して、そんなこと…しないから。希が起きるか…希のお父さんがここに来るまで、私…大切に預かっておくから。」


希「………」ヒュー…ヒュー…


絵里「………」

絵里「…それから、他には……」ゴソゴソ

絵里「………」ゴソ…

絵里「………、これ………」

絵里「にこから借りてた……希の、お守りね。」

絵里「ふふ…かわいい。希の手作りなんでしょう?結構年季が入ってるけど……」

絵里「………あら?中……何か入ってる。」


……………ピラッ


絵里「ぁ………」




『これを持ったあなたに、幸せがぎょーさん、訪れますように♡』




絵里「のぞみ………」ジワ…

絵里「……っ、…………」ポロポロ

絵里「う………ぐすっ………」ポロポロ

絵里「も………馬鹿………」ポロポロ

絵里「いつも……そうやって……!」ポロポロ

絵里「人のこと…ばっかりなんだから……っ」ポロポロ

絵里「う………っ、うう………でも、ねえ…それなら……!」ポロポロ

絵里「ねえっ、私にも、叶えてよ……これ、貴女が作ったお守りでしょう?」ポロポロ

絵里「ねえ………、ねえ………っ」ポロポロ

絵里「お願い………!」ポロポロ


ギュッ………


絵里「お願い…………」ポロポロ











ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……

希「………」ヒュー…ヒュー…











絵里「…………」ポロ…

絵里「………、そう……よね………」

絵里「希、今までずーっと私のこと、幸せにしてくれてたんだもの……」

絵里「これ以上なんて……欲張り、よね………」






………………………………ギュ


絵里「…………っ、希………?」

絵里「希!!!のぞみっ!!」


希「……、う…………」

絵里「…っ!!!!」

絵里「だれか……っ、だれか………っ!!」

絵里「のぞみ………!希っ…………!!」

希「ん……う……」


ガチャッ


絵里「真姫のお父さん!!」

『…ここは集中治療室だからね、すぐ駆けつけられるようになってるんだよ。』

『東條さんー東條さんーわかりますか?』


希「……ん………え……?」

絵里「希……!のぞみ、わかる……?私よ、絵里よ!」

希「………え…………えり、ち………?」

絵里「希………!」ジワッ

絵里「よかった……よかった…………!」ポロポロ

『………!良かった……』


希「…あ…れ………うち、なんで………」

絵里「大丈夫……もう、大丈夫だから……安心して………」ポロポロ

希「…えりち……?どうして泣いて………」

希「ど…して…………」

希「……………」

絵里「希………?」ポロポロ

希「……………」


希「………」







希「………っ、ぁ………」ビクッ

絵里「希!!大丈夫……大丈夫だから……」

希「はっ……はぁっ……はぁっ………」ガタガタ

希「…あ…………ああ……」ガタガタ


……ギュッ


絵里「大丈夫……もう、大丈夫だから……!」

希「やだ……や……あ………あ………」ガタガタ

希「けほっ……げほっ……はぁっ……あ……」ガタガタ

絵里「希……大丈夫、大丈夫………」

希「…っ、なん……で………」ガタガタ

希「…あ………、え………ここって……」ガタガタ

希「…………っ、」ガタガタ

絵里「希………?」



希「……………だし、て……」ポロ…


絵里「え………?」

希「ここからだして!!だしてよ!!や……っ、やだ………虫はもう嫌……っ」ポロポロ

希「だして!!だしてぇえっ!!!」ジタバタ

『……っ、鎮静剤!はやく!!!』

絵里「希?!もう、ここは、虫なんて……っ」ギュ…

希「やだ……やだ……っ、はぁっ……はっ……」ガタガタ

希「嫌!!いる……いるよ、たくさん……」ポロポロ


希「水槽…閉じ込めて……また………」ポロポロ

希「も…無理だって……言ってるのに………」ポロポロ

希「やだ……やだっ、もう嫌……嫌………」ポロポロ

希「死なせて……嫌………やだ……」ガタガタ

絵里「水槽……?」

絵里「どうして………」

絵里「………っ、この部屋……!」

『絵里ちゃんちょっと抑えててもらえる?鎮静剤、打つから……』

絵里「……っ、!はいっ」ギュ…

希「や、やめて……!?何して………っ」ジタバタ

『ごめんね希ちゃん、少し待ってね……』

希「や…だ……やだ、あ………あ………」ポロポロ

絵里「希……大丈夫、大丈夫だから……」

絵里「……真姫のお父さん!!希、ここから出せませんか?!」

『ここから……?』

絵里「この部屋、一部ガラス張りで…外から見えるようになってるのが、多分希は、ガラスケースに虫と閉じ込められた時と被って…!」

『………っ、なるほど。希ちゃん………』

希「はぁっ……は………」ガタガタ

『………わかった。酸素マスクももう大丈夫そうだから、外して……』

『…っ、誰か!急いで運ぶ準備して!!』

絵里「希……大丈夫、大丈夫………」ギュ…

希「は………は…………」ポロポロ

『……効いてきたかな。』

『西木野先生、準備できました!!』

『よし、じゃあ出して!!』




ガチャッ

ガタガタッガタ……



希「は………は…………」ポロポロ

絵里「ほら、希……もう、出れたから。大丈夫でしょう……?」

希「は………は………」

希「……あ………、」

希「……………」

希「あ…れ………わたし、」


希「………っ、」

絵里「………希?」

希「あ……ああ………」

希「…っ、ごめん……ごめん、なさい……なんで……今…………」

希「なんで………」ポロ…

『大丈夫。絵里ちゃんと隣のベッド…用意してあるから。今日はゆっくり寝て、また明日考えよう?』

希「………」

絵里「そうよ、希……大丈夫。ちょっと寝起きで、気が動転しただけよ……」

希「えりち………」

希「………」



ガタガタガタッガタ……


『……よし、ついた。絵里ちゃん、担架抑えててもらえるかな?…ありがとう。』



『せーのっ、よっ!』

ドサ…


希「…っ、ありがとうございます……」

希「………ごめん…なさい……訳わからない我儘言って……」

『…っ、大丈夫だよ、元々もうすぐここに移す予定だったんだから……』

『……少し、落ち着いたかな?』

希「えっと……はい………」ウト…

希「あの……でも、何が何だか……よくわからなくて……」ウトウト

絵里「…大丈夫、ここは病院よ。西木野総合病院。この人は真姫のお父さん。」

希「真姫ちゃんの…お父さん?」ウトウト

『…そう、だから安心して。今日はもう遅いし……明日、きちんと説明するから。』

希「……、わかりました……」ウトウト

絵里「希……?眠いの?」

希「う…ん……ちょっとだけ、」ウトウト

希「…、えりち……さっきはごめん…なぁ、変なとこ…見せちゃった……」ウトウト

絵里「希……別に、そんなのいいのよ。」ナデ…

希「…………」ウトウト

希「ありが…とう……」



……コテッ


希「………」スー…スー…


絵里「希……?希……!」

『寝かせてあげて。ごめんね、説明してなかったけど…さっきの鎮静剤、かなり強い催眠作用があるんだ。』

絵里「そう…だったんですか。」

『個人差はあるけど8時間くらいでまた目が覚めると思う。もう今日は遅いし…明日の朝、もう一度…できたら落ち着いた状態で、ちゃんと説明しよう?』

絵里「はい……」

絵里「………あの、希の…今のって………」

『…………』

『………すまない、思い当たる病気がないわけじゃないんだが……精神分野は専門ではないから、明日か明後日にも…専門の医師に診てもらえるようにお願いしておくよ。』

絵里「……っ、わかりました……」

『…すまないね。今日は絵里ちゃんももう寝て……明日、希ちゃんも一緒にきちんと話そう。僕もこの後仕事があるから……』

絵里「あ…すみません。引き止めてしまって…」

『いや、いいんだよ。それじゃあ、おやすみ。』

絵里「おやすみなさい……」



ガチャン


絵里「…………」

絵里「希………」

希「………」スー…スー…

絵里「………」

絵里「大丈夫……大丈夫よ、きっと寝起きで混乱してただけ……」

絵里「……もし何か病気でも、大丈夫。こんなに大きな病院だもの…絶対治るわ。私もずっと、そばにいるから……」

希「………」スー…スー…

絵里「希………」

絵里「………とりあえず…にこに連絡しておきましょうか。希の意識が戻ったわよ…って。」

絵里「ね、希……みんな貴女に会いたがってる。少し落ち着いたら、お見舞い…来てもらいましょうね。」


----
---
--

にこ「じゃーあんた達!そろそろ寝るわよ~っ」

穂乃果「あーんにこちゃん待って!まだ宿題があっ」

海未「だからあれだけ早くやるように言ったんです、全く穂乃果は……」


ヴー ヴー ヴー


にこ「……!、絵里からLINEね。」スッ

にこ「………」スッ…スッ…


にこ「……、…っ!!!!」


にこ「………っ、」ジワッ



花陽「にこちゃん……?」

にこ「………」



にこ「……………ど……って。」ゴシ…

凛「えっ……?何かあったの……っ?!」




にこ「……っ、希!!!意識戻ったって!!!」




真姫「…っ、!ほんとにっ?!」

にこ「ええ…ほんとよ、今はまた眠ってるみたいだけど…もう集中治療室も出たって。希………」

ことり「ほん……とに………」ジワ…

ことり「よかった……よかった……!」ポロポロ

花陽「希ちゃん……」ポロポロ

花陽「………よかった。」ポロポロ

凛「もーっにこちゃんが深刻そうな顔するからっ何事かと思ったにゃ!!」ポロポロ

凛「よかった……よかったぁ……!」ポロポロ

海未「よかったです…本当に……!」ジワ…

海未「この1週間、生きた心地がしませんでしたよ……希………」ポロポロ

穂乃果「希ちゃん……ぐすっ、」ゴシゴシ

穂乃果「…ねえっ!!会いに行こうよ!明日!!お見舞いに行こうよ!希ちゃんの!!」

凛「凛も凛も!!病院で焼肉は難しそうだけど、桃とかりんごとかっ!買って行きたいにゃ~っ」


にこ「………」

穂乃果「にこちゃん……?」

にこ「……それなんだけど………お見舞いは、もう少し先になりそうよ。」

穂乃果「ふええっ、なんで……」

にこ「希……まだ混乱してて、何が何だかよくわかってないみたい。もうしばらく待ってって…絵里が。」

花陽「……そっか。でも……そうだよね、目が覚めたら1週間も経ってて、集中治療室なんかで寝てたら…私だったら目が回っちゃうもん。」

凛「………ううん……そっか。早く希ちゃんに会いたかったなぁ…絵里ちゃん、ずるいにゃ。」

花陽「あはは…凛ちゃん。」

凛「……でも、もう意識が戻ったんだから…心配はいらないんだよね、いつでも…会えるよね!」

真姫「それは……そうだと思うけど。」

にこ「………」


ことり「………ねえ、にこちゃん。」

にこ「……?なによ。」

ことり「えっと……その、私ね、希ちゃんにも……謝りたいの。ちゃんと……」

ことり「……だけど希ちゃんが嫌だったら、もちろん自重するし…待ってってことなら、いくらでも待つから。だからえっと……絵里ちゃんに、聞いてもらえない…かな?」

にこ「ことり……」

にこ「……わかった。聞いておくわ。」

海未「…あの、希の意識が戻ったなら……もう急に、病院に呼ばれることもないんですよね。」

真姫「そうだと思うけど……」

海未「…それなら、これ以上真姫の家にお世話になり続けるわけにもいきませんし……そろそろ。」

にこ「…っ、そうね……明日からは、それぞれ自分の家に帰ったほうがよさそうね。」

にこ「ことりは……」

真姫「…ことりはひとまず、海未の家に移動するみたいよ。」

海未「あ、はい…最近姉が家を出たので、部屋もあいてますし……ことりの家も、近いので。」

にこ「なるほどね…」

穂乃果「海未ちゃんずるーい!ことりちゃんがいたら、毎日一緒に宿題ができたのにい……」

海未「穂乃果はことりをあてにしすぎです!そもそも宿題というのは自分の力でやらなければ……」

ことり「あはは……」

にこ「……まぁ、わかったわ。真姫ちゃん…今日まで本当にありがとう。真姫ちゃんのママにも、明日の朝改めてお礼を言わないと……」

真姫「別に…お礼なんて……」クルクル

凛「真姫ちゃんのお母さんすっごく優しくて、すっごくいい人で…凛もたっくさんお礼言いたいにゃ!」

穂乃果「穂乃果も!真姫ちゃんのお母さん、ほんっとに優しいよね!」

花陽「私も言いたいです!私のご飯、いつもとても美味しそうに食べてくれて……」




アハハッ…フフ……エヘヘッ

にこ(…………)

にこ(…希の意識が戻ったことで、随分雰囲気が明るくなったわね……)

にこ(なんだかんだ全員、この1週間はそれが頭から離れなくて…どこかいつも、泣き出しそうな顔、してたから。)

にこ(……本当によかった。)

にこ「希………」

『意識さえ戻れば、身体的な心配は…ほぼないよ。』

にこ「………っ、」

にこ(……希なら、大丈夫……よね)


にこ(………)



アーモウ リンチャンヤッタナー!
ホノカ! リン! マクラヲナゲナイデクダサイ!
アハハッ フフ…ヘヘヘッ!

----
---
--


絵里「ん………んん………っ」ググッ


チュン…チュンチュン


絵里「もう朝……」



ガララ……


絵里「…ふふっ、秋の匂いがするわね…空も晴れて。いい天気。」

絵里(この1週間…ずっと気持ちが重かったけど……希の意識が戻って、ずっと軽くなった気がする……)

絵里(もちろん、まだまだ心配事はたくさんあるけれど……)


絵里「希……」


絵里(………)

絵里(……明るいここで見ると、希の髪………)

絵里(…できるだけ早く、元の色に染めてあげたい。)

絵里(頬や腕にあてたガーゼも…痛々しいわね…)

絵里(……でも、それでも少しずつ、治って…)

絵里(時間はかかるかもしれないけど…いつか全部元通りに)

希「……んん…………」

絵里「………!、ごめん…起こしちゃった?」

希「う…………」


希「………え…りち……?」

絵里「おはよう。」



希「……おは、よ……」

希「………?」

希「……あれ、ここ………」バサッ

希「痛っ…!」

絵里「あ、だめよ……まだ横になってて。」

絵里「……ここは西木野総合病院よ。」

希「西木野総合………」

希「………」


希「………あっ」

絵里「……ふふ、思い出した?」

希「う、ん………」

希「そっか……病院…………」

希「……っ、…昨日は本当、ごめん…なぁ……」


絵里「……気にしないで。起きたらいきなり病院だもの…混乱もするわ。」

希「うん………」

希「………でも昨日…どうしてうち……あんなこ…っ?!」

希「………っ、」キョロキョロ

絵里「希…?どうしたの?」

希「……いや……………」

絵里「………??」

希「……っ、なんでも…ないんよ……」

希「あはは……ごめんなぁ。」

希「う、いたた……」

絵里「だめよ、無理して笑おうとしないで……頬、火傷してるんだから…痛いでしょう。」

希「…火傷………」


希「……うん……わかった。」

希「…それで、その……うち、どうしてここに……今日って、何日……?」

絵里「……今日は2016年10月28日の金曜日。希がここに運ばれたのは20日の夜だから…1週間くらい、意識がなかったのよ。」

希「1週間も……」

絵里「ええ、すごく心配してたの…私だけじゃない、μ'sのメンバーも、みんな………」

絵里「………」

希「えりち……?」


絵里「……っ、希が起きて、本当によかった。」

絵里「今こうやって話せて……すごく、すごく嬉しいの。」ジワ…

希「えりち………」

希「………」


希「……はっきり、思い出せないんやけど……」

希「えりちが、助けてくれたん…よね……」

希「……少しだけ、覚えてる。ねえ、その腕の包帯、うちのせいで……」

絵里「…っ、希のせいじゃない……希のせいじゃ、ないわ。悪いのは理事長だけよ。」

希「…っ、理事長………」ビク…

絵里「希……?」



希「………っ、う……」ギュ

絵里「……っ、ごめん!思い出したくないこと、」

希「……大丈夫………大丈夫。」

希「…っ、………っ」ギュ…

希「……っごめん…ね、えりち。」

希「それから…ありがとう。」

絵里「…っ、いいのよ。希がいない人生なんて…私、考えられないんだから。」ポロ…

絵里「生きててくれてよかった…こうして喋れて、本当に……本当によかった。」ポロポロ

絵里「希………っ」ポロポロ



………ギュッ



希「えりち………」

希「………」

希「………」ギュ…



希「……ほんとに、ありがとう……」

希「うち、もう……全部、全部……諦めてたから……」

希「………えりちの、おかげ。」

絵里「う……ぐすっ、希………のぞみ………!」ポロポロ

絵里「よかった……よかった………!!」ポロポロ

絵里「私……希が死んじゃったら、どうしようって……」ポロポロ

絵里「ずっと……ずっと、すごく不安で……!」ポロポロ

希「えりち………」ポロ…




ガチャッ


『おはよう、東條さんもそろそーー?!』

『…っ、失礼………』


ガチャ…



絵里「………っ、///」


希「………//」


絵里「…ぐすっ………ごめん。すっかり忘れてた…真姫のお父さんが、色々治療のこと…説明してくれるから……」

絵里「ごほっ…ごほ、すみません……真姫のお父さん、もう大丈夫です。」


ガチャッ


『えっと……その、おはよう。』

絵里「おはようございます。」

希「…おはようございます、昨日はすみませんでした。」

『ああ、大丈夫大丈夫……気にしないで。』

『調子はどうかな?希ちゃん。』

希「えっと……」

絵里「………?」

希「…っ、……大丈夫です。」

『…そうか、なら良かった。一応軽く質問させてもらうね?』

希「あ……はい。」

希「…っ、」キョロ…

絵里「希……?」

希「あ…ええと…なんでもない、入院するの、初めてなんよ…だからちょっと緊張しちゃって。あはは…、痛っ」

絵里「ああ、そういうこと……ね、さっきも言ったでしょう?無理して笑わないで。」

希「うん……」

『…それじゃあ質問するね、まず、自分の名前を言ってもらえる?』

希「名前…ですか?」

希「東條希です。」

『誕生日は?』

希「………?6月9日ですけど……」

『好きな食べ物と嫌いな食べ物、教えてくれる?』

希「…好きな食べ物は焼肉で、嫌いなのはキャラメルです。」

『32に2をかけて3を足すと?』

希「………っ、」キョロ…

希「………あ、えっと………」

絵里「希……?」

希「……、ごめんなさい、ちょっとぼうっとしてて……もう一度お願いできますか?」

『…32かける2たす3は?』

希「……64たす3だから……67です。」

『うん…じゃあ、子供の頃の夢は何かな?』

希「……っ、サンタさん…ですけど……//」

希「…っあの、この質問……なんの意味が……」

『…ごめんね、1週間気を失ってたわけだから……一応ね。』

『…でも問題無さそうだ。絵里ちゃん、一応確認だけど…今聞いた答えに違和感、あったかな?例えば好きな食べ物が違ってるとか…』

絵里「いえ…私が知っている限りでは、全く問題なかったです。」

『そっか…なら良かった。思ったより調子が良さそうで安心したよ…これなら大丈夫そうだ。』

絵里「本当ですか…!よかった……」ジワ…

絵里「…っ、良かったわね…希!」

希「………」

絵里「希……?」

希「……、っ…あ、うん…よかった………」

『まだ少しぼうっとするのは仕方がないことだよ、1週間も横になっていたんだから……』

『…焦らずゆっくり治していこう。それで、身体の治療の方だけどーーー』


----
---
--

ガラララ……

穂乃果「おっはよー!ヒデコ!ミカ!フミコ!」

海未「おはようございます、3人とも。」

ヒデコ「あーおっはよう!穂乃果、海未ちゃん、……それに、」



ヒデコ「ことりちゃん!」



ことり「…っ、ヒデコちゃん……」

フミコ「おっはよ~穂乃果!海未ちゃん!ことりちゃん!」

ミカ「おっはー穂乃果、海未ちゃん、ことりちゃん!」

ことり「フミコちゃん…ミカちゃん……!」

フミコ「ふふっ、ことりちゃん、休みすぎだよー。プリントたまってるから、頑張らないとね!」

ミカ「ノート私の写すー??ほら、こないだことりちゃんにチーズケーキもらったし…お返しに!」

ヒデコ「ミカってばなかなかことりちゃんにお返しできないから…これだ!って慌てて、いつも寝てる授業までバッチリ起きてたの。」

ミカ「あーヒデコ!それは言わないお約束でしょーっ!!」


アハハッ…ハハッ……



ことり「みんな………」




ガララララッ……


『はいはいみんな、席についてー!』

『お、南は今日は出席……っと。』

『じゃあ今日のHRだけど…っとその前に、これ、前から配ってー!』



ペラッ……ペラッ……



『…はい、ことりちゃん。』

ことり「…っ、ありがとう。」

クルッ

ことり「……はい、どうぞ。」

『んあ、ありがとーことりちゃん。』



ことり「………!」



『よーし行き渡ったか。じゃあ今日の1時間目だけど………』



ことり(みんな……)

ことり(…………)


ことり(……みんな、何も変わらず接してくれる。)

ことり(全部…いつも通りに戻ったみたいに。)

ことり(音ノ木のみんなは確かに優しくて、いい子ばかりだけど……)

ことり(でも、それでも一体どうして………)



ヒデコ「ーーー!」コソコソ

ミカ「~!」ピース

フミコ「ーーー」コソコソ


ことり(三人とも……何を、)

ことり「…………っ、!」



ヒデコ「……ふふ、うまくいってよかったね。」コソコソ

ミカ「なんだかんだみーんな、ことりちゃんのこと、大好きだからね。」コソコソ

フミコ「事件はあまりにも酷いし、希先輩のことはもちろん心配だけど……」コソコソ

フミコ「……ことりちゃんがいい子だってことは、みんな知ってるからね。」コソコソ



ことり「………」

ことり(三人が……)

ことり(……三人が、みんなに…何か言ってくれたんだ。)


ことり(……ありがとう、ヒデコちゃん、フミコちゃん、ミカちゃん……)

----
---
--


『ーーーっと、大体こんな感じかな。』

希「……、あ、えっと……」

『…ごめんね、少し長い話だったけど……大事なことだけもう一度。』

『…歩いたりのリハビリの前に、衰弱が激しいから……今は少しずつ栄養あるもの食べて、まずは体力を回復させることが大事。』

『何事も少しずつ…ね。全部少しずつ…良くなっていくから。』

『それから明日の晩に専門の先生がくるのと、体力が戻り次第検査が必要ってことだけ、覚えておいてくれればいいから。』


希「……はい。」

希「…えっと…その、専門の先生って……なんの専門ですか?」

『えっとね……』

『……もしかしたら少し抵抗があるかもしれないけど…心のケア、だよ。』

『もちろん必要ないかもしれないけど……でも、あんな事件の後だから…一応、ね。』

希「………」


希「わかり…ました……」

『うん!それじゃあ僕はそろそろ戻ろうかな。』

『ああそれから絵里ちゃんは、この後検査があるよ。希ちゃんの意識が戻ったら…って、約束だっただろう?』

絵里「あっ、でも…希が……」

希「………大丈夫。うちな…えりちのことも心配なん。だから行ってきて?」

絵里「希……」

絵里「……わかった。できるだけ早く終わらせて戻ってくるから……」

希「……ふふ、……っ、いてて………子供じゃないんやから、大丈夫よ。」

絵里「希……」

絵里「……そうね、じゃあ行ってくる。」

『…希ちゃんも、無理はしないでね。何かあったらいつでもそこのナースコール押して。』

希「……はい、わかりました。」

絵里「………じゃあ、行ってくるわね。」

希「あ………っ、ちょっと待って。」

絵里「………?」


希「えりち……誕生日、おめでとう。」


絵里「希………」ジワ…

希「……遅れちゃって、ごめんなぁ。」

希「…その、絶対、お祝い…するから。少しだけ、待ってほしいなぁって。」

絵里「もちろんよ……大体、そんなのいいの。私にとって、一番のプレゼントは…希が生きててくれたことなんだから。」

希「えりち………でも、それじゃあ……」

絵里「……ふふっ、いいのよ。……でも、じゃあ…約束してくれる?」

希「………?」

絵里「少しずつ……ゆっくりで、いいから。私も一緒にいるから……希、元気になって。」

絵里「…私ね、希が元通り元気になってくれたら……それが一番、嬉しいから。だからお願い。」

希「えりち………」

希「………」

希「………うん、わかった。」


絵里「……ふふ、ありがとう。」

絵里「じゃあ…私、行ってくる。」


希「うん……いってらっしゃい。」フリフリ



『……じゃあ、行こうか。』

絵里「はい…!」



ガチャン


希「………」フリフリ


希「………」




希「………」




希「………」



『ガサガサガサガサッ』



希「………っ、」




『ガサガサ……ガサガサ……』


希「う…………」


『ガサガサガサ……ガサ……』


希「や、やだ………」ガタガタ


希(…さっきから聞こえるこの音……えりちにも、真姫ちゃんのお父さんにも聞こえてなかった。)

希(………)

希(……幻聴?)



『ガサガサガサガサ!!!ガサガサ!!』

希「ひっ………」ビクッ

希「う………あ、手に………」スッ

『……………』

希「…………いない……?」

希(……確かに、そんな感覚が……したのに)


『…ガサ…………ガサ………』


希「…………っ、」ガタガタ

希「……っは………は…………」ガタガタ

希「髪、に………」ス…

希「……っ、いない………」


希「…………、えっ…………」


希「…あれ、……なんで…………」

希「髪…………」


『ガサガサ!!ガサッ!!』


希「ひっ…や、だ……やだ、っ……」ガタガタ

希「う……うう………」ギュ…

希(……背中、に、何かが………)

希「………っ」ガタガタ


希(幻聴…なんよね、感覚も……本当はいなくて………)

希(………っ、まだ……時間が経ってないから……目が覚めたばかりだから……)

希(…明日専門のお医者さんも見てくれるって…言ってたし……)

希(真姫ちゃんのお父さんも、少しずつ良くなるって……つまり段々…聞こえなく、なるよね)

希(髪…は、染めればいいんだから………)


『ガサガサガサッ…!!』


希「う………」ギュ…

希「……っ、………っ」ガタガタ


希「…………っや、……」ガタガタ




希「うう………」ギュウ…




----
---
--


にこ「ねえ……これ、ちょっと…どういうこと?」

『え…いや、だから……その手紙、東條に渡してくれないか?絢瀬が今いないから……矢澤なら、渡せると思ってさ。』

にこ「違うわよ……渡すのはいいけど、私が言ってるのは手紙の内容よ……!!」

にこ「何よ、留年って……あんた、ニュース見たでしょ?希は好きで休んでるわけじゃ……っ」

『……っ、そんなの俺だってわかってる。ちゃんと読んだのか?留年は決まったわけじゃない。』


『……でも既に3週間も休んでるわけだから……規定だと、あともう20日も休んだら留年なんだよ。』

『…事件の内容からして、あと20日でって……なかなか厳しいと思ってさ。」

『…でも、それじゃあんまりだから会議を開くことになってな。できる限りなんとかしてやりたいし…教育委員会とかもくるかもしれん。』

『まぁ詳しいことはまだ決まってないけど、その手紙は一応留年したくないかどうかの確認みたいなもんだよ。』

『……ただ、事件を踏まえてもルールはルールだから、厳しいのはあるかもしれん…前もって一応、そういうことは説明しておかないと。』

にこ「そんなの……っ、そんなの……!」

にこ「………っ」カキカキ

にこ「…っ、ほら、これでいいでしょ……留年なんて、するわけないじゃない!」

『ちょ、なんで矢澤が丸するんだよ……ああもう、もう一枚刷り直しじゃねえか。』ピッピッ

にこ「希を留年にするなんて、許さない……大体、私じゃあるまいし。希は成績だって普通だし、元副会長じゃない!」

『それはわかってるさ……俺だってつらいんだ。でもそれは、俺じゃなくて新理事長と教育委員会が最終的に決めることだから……』


ウィー ガチャ ガチャ


にこ「……新理事長と、教育委員会……ね。」

『……よし、できた。ほら、今度はちゃんと渡してくれよな……頼んだぞ、矢澤。』

にこ「………」


にこ「ふん……わかったわよ……」

----
---
--


希「はぁっ……はぁっ………」ギュ…


『ガサガサガサッガサ……』


希「う………」ガタガタ

希(いないいないいない…本当はいない、いないんやから……!)


『ガサガサッ!!ガサ……』


希(…っ、今度は腕に……感覚が…)

希「………っ」ガタガタ

希(どうせいないんやから……何も怖いことなんて……ないんやから……)

希「……」チラッ

希「え…………」



ヨタ……ヨタ………ガサガサ



希「ひっ?!?!」ベシッ


ドサッ


希「~~~~っ、っ痛た……」



ガチャ!!

絵里「ちょっと今、大きな音がしたけど……って、」

絵里「希……どうしてベッドから……」

希「……っ、……えりち………?」


絵里「もう……どうしたのよ、何があったの?よいしょ……」

希「……っ、?!、ちょ、ちょっと待って……」

絵里「………?」

希「あ、れ………」


希(いない……)

希(…確かにヤスデが、腕を這ってるのが…見えたのに。)

希(…幻覚……?)


絵里「希……?大丈夫?」

希「大丈夫……ごめん、自分で登れるから……よいしょ、」


ドサッ……


希「…………」


希(やっぱりいない……)

希(それに……)


絵里「…………?」



『ガサ…………ガサ…』



希(えりちがいると……あんまり聞こえなくなる、のかな…)

絵里「希……?」

希「あ……うん、検査…終わったん?」

絵里「…ええ。何も問題なかったわ。腕の火傷もちゃんと治ってきてるって……」

希「そっか……良かった。」

絵里「それで…どうしてベッドから落ちたのよ、何か取りたいものでもあった?」

希「えっと……」

希(………)

希(……えりちに、話したほうがいいんかな…)



『希……!のぞみ、良かった………!』ポロポロ

『私、ずっと……ずっと、すごく不安で……!』ポロポロ



希(………)

絵里「希……?」

希(えりちの目の下…すごい隈になってる。)

希(きっと、毎日心配してくれたんよね……)


希(………)


希(……これ以上心配なんて、かけられない……)


希「…別に、大したことじゃないんよ…えっと…」

絵里「………?」

希「…えっと…ほら、そこにうちのスマホがあったから……取ろうとしただけ。」

絵里「……ほんとに?」

希「うん……」

絵里「……そう、ならいいんだけど…ごめんね、これ、私が預かってて…朝渡そうと思ってたんだけど、忘れちゃったみたい。」

絵里「はい……これ。」

希「…ありがとう。」

絵里「………」



希「えりち……?」



………ギュッ



希「……っ、どうしたん……?」

絵里「………」

絵里「……さっき、途中…だったから。」

希「えりち……」

希「……ふふ、ってて……えりちは甘えん坊さんやなぁ。」

絵里「希にだけよ…?それに、無理して笑わないでって言ってるでしょう…もう……」

希「別に無理なんて……」

絵里「嘘つかないの。希が無理してるのくらい…わかるんだから。」

希「………」

希「……それなら、えりちも無理しちゃだめやん…目の下、隈できてるよ?」

絵里「ええっ」ガバッ



ゴソゴソ


絵里「……、…ほんとね、隈ができてる…全然気がつかなかったわ。」

希「えりちは色白さんやから……」

絵里「…でも大丈夫よ。希の目が覚めたから…昨日はぐっすり眠れたの。時期にとれるわ。」

希「…そっか。なら、いいんやけど…」

希「あ、ねえ…鏡、うちにもかーしーて。」

絵里「………っ、それは……」

希「………?」

絵里「………、ええ、いいわよ、はい。」

希「ありがとう。」スッ



希「……っ、」

希(………これ……)


絵里「希………」

絵里「……大丈夫。ちゃんと栄養あるもの食べて…髪は染めればいいし、火傷もすぐ目立たなくなるわ。コンシーラー使えば隠せるし……」

希「……そう、やね………」

希(髪、真っ白で……頬もこれだけこけてて、右頬にはでっかいガーゼ、か…)

希(やつれてるし……これじゃ、無理してるって思われても……仕方ない、かな。)

希「……うん、大丈夫。これくらい仕方ない…仕方ない…」

絵里「………」


希「……っ、そういえばもうすぐ夕飯の時間やけど…うち、胃の手術したんよね?食べて平気なんかなぁ…」

絵里「ああ、それなら今日からお粥くらいなら平気だろうって……あ、」


ガチャ


『夕食の時間ですよ。絢瀬さんのがこっちで…東條さんのがこっちです。熱いので気をつけて食べてくださいね。』


……ガチャ


絵里「…ふふ、希は今日が初めてだけど……病院食って、結構美味しいのよ。」

希「…そうなんや。確かにあったかくて……美味しそう。」

絵里「ふふっ、火傷しないように気をつけて食べてね?それじゃあいただきます。」

希「いただきます…っ?!」

絵里「希……?」

希「…っ、うんん、なんでもない……」

絵里「………!」

絵里「……わかったわ。ちょっと待って。」



カチャ…

希「………?、えりち、なにして……」



絵里「…ふー、ふー。」

絵里「はい、あーん。」

希「え…っ///」

絵里「…ごめんね、忘れてたの…希、右手の平も火傷してるのよね。動かすの痛いんでしょう?」

希「…そ、うやけど……でも、その……早く食べないと、えりちの方だって冷めちゃうし……」

絵里「ふふ、いいから。はい、あーん。」

希「………っ//」

絵里「ほら、早くしないと冷めちゃうわ。」

希「も、もう………///」パクッ

希「……っ、」

絵里「希……?熱かった?」

希「ううん…そんなことない、美味しい……」モグ…

絵里「………」

絵里「……ちょっとそれ、飲み込んだら…口の中、見せて?」

希「え、でも……」

絵里「いいから。」

希「………」

絵里「希……?」

希「……ごめん、ちょっと噛んだ跡が…痛かっただけなん。」

希「自分でも、食べるまで気づかなかったぐらい……ほとんどもう治ってるんよ。だから気にしないで?」

絵里「……そうだったの。気付かなくてごめんね…、食べられる?看護師さん呼んできましょうか…」

希「っ、ううん、大丈夫。大丈夫やから……その、もう一度食べさせてもらえたら…嬉しいなぁって。」

希「………///」

絵里「希………」

絵里「…ふふ、もちろんよ。じゃあ……はい、あーん。」

希「……///」パク

絵里「……どう?痛む?」

希「………ううん、美味しい。」

希「…ふふ、まともなもの、久しぶりに食べたから……だからすっごく美味しい。」

絵里「希……」

絵里「…ふふ、それならよかった。」ナデ…

絵里「………」ナデナデ

希「……っ///、けほっ、こほっ…ちょ、それやめて//ほ…ほら、髪の毛ぼさぼさになるやん?ね?」

絵里「……、それ…懐かしいわね。」

希「………?何が…?」

絵里「…ふふっ、希、前にもこうやって撫でたら、全くおんなじ反応したから…だから懐かしいなぁって。」

希「そ…そうやったっけ……覚えてないなぁ。」

希「…というかあれやね、もうずっと寝てたから既に髪、ぼさぼさやった……」

絵里「ふふ、食べ終わったら梳かして結んであげるわ、その方が希らしいし。」

希「………」

絵里「希……?」

希「えっと……その……」


希「…………ありがとう、えりち。」

絵里「…ふふ、いいのよ、これくらい……あ、そうそう……」

希「………?」

絵里「……あのね、その…いくらでも待つって言っていたし、勿論希が嫌だったら素直にそう言って欲しいんだけど……」

希「……?なぁん?」

絵里「…ことりがね、希に直接謝りたいって言ってるの。」

希「ことりちゃんが……」

絵里「…その、みんなもお見舞いに来たいって言ってるんだけど、それは希がまだ嫌かな…って思って、待ってもらってるんだけど…」

希「………」

希「……みんなの方は、確かにもう少し…待ってほしい……かな。」

絵里「そう…よね、」

希「うん…ちょっとまだ……せめて髪を染めてからじゃないと……」

絵里「…ええ、わかってる。」

希「うん…ありがとう。それでことりちゃんの方は……」

絵里「……みんなと同じタイミングにする?」



希「うーん……」



『私が捕まったりしたら…ことりはどうなるの?』



希「……っ」

希「………」

希(ことりちゃん…きっと今、すごくつらい…よね…)

希(きっと、罪悪感とか…周りの反応とか…色々…)

希「………」

希「……少しだけ、考えてもいい…かなぁ?」

絵里「…もちろんよ。ゆっくり考えて。」

希「……でも、ことりちゃんは、何も悪くないから……本当は謝る必要なんて、ないんよ。」

絵里「………ええ、そうね。」

希「…だけど、気持ちはなんとなく……わかるから…」

希「………」

絵里「希……?」

希「…何も怒ったりしてないよってことだけ、先に伝えてもらえる?」

絵里「ええ…わかったわ。」

希「…ありがとう。」


絵里「ええ………」

絵里「………」


希「………?えりち?」

絵里「……あのね、希がそう言ってくれて…良かった。希の立場なら、普通はもっと…」

希「………」

希「ことりちゃんがいい子なのは、知ってるから……」

絵里「……ええ、そうね。」

希「……だからね、あんなにいい子で、大好きな友達なのに…恨んだり、できるわけないんよ。」

絵里「希……」



希「……ふふっ、えりちの方も、冷めちゃうから……次のひとくち、ちょうだいっ」

絵里「……ええ。はい、あーん。」

希「あーんっ」パクッ

絵里「あら…さっきまでの照れてる希も可愛かったのに…もう慣れちゃったの?」

希「…っ、けほっ、ごほっ、急に何いって……///」

希「別にうち、照れてなんか……っ///」

絵里「ふふ…痩せ我慢してもだめよ?顔、赤いの、バレバレなんだから……」

希「も…もう、えりちが意地悪やー!///」

絵里「うーん、でもほら…その顔色の方が健康的でいいと思うわよ?」

希「もう…っ、そういう問題とちがうんよっ!次のひとくちちょうだいっ」

絵里「はいはい、あーん。」



アーン パクッ
フフ…ノゾミ、アハハッ
モー ワラワントイテ!


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---
--

にこ「こころーここあーこたーもう寝なさいー!」

ここあ「えーまだ遊びたいー!」

こころ「ここあ、行けませんよお姉さまを困らせては…ほら、こたもこっち。さあ寝ましょう。」



こころ「それではお姉さま、おやすみなさい。」

ここあ「もーっ、おやすみー!」

こたろう「おやすみー」

にこ「はいはい、おやすみ。」


ガチャン



にこ「ふー。」

にこ「……あら、絵里からLINEきてる。」スッ

にこ「……」スッスッ

にこ「……!」


にこ(希……まぁそうよね。すぐにことりに会うのは難しい…か。)

にこ(あ、この手紙……)

にこ(………)

にこ(……ひとまず絵里にだけ、見せておきましょうか……)

にこ「………」パシャッ…スッ


ヴー ヴー


にこ「……!」スッ


『にこ、ちょっとこの手紙…どういうこと?』


にこ「……」スッスッ

「私もどういうことかって、あんたんとこの担任に問い詰めたんだけど…まだ決まったわけじゃない、会議で決める…の一点張りなのよ。」

『…でも、こんなの………』


にこ「………」

にこ「……」スッスッ


「私が絶対なんとかするわ。もちろん絵里の方も。手紙は出しとくし。だからあんたは心配しないで、希の面倒見てやって。…せめて父親が、戻ってくるまでは。」

『それはもちろんよ。むしろ希のお父さんが戻ってきても…私、希が学校行けるようになるまでは、一緒にいるつもりだから。』


にこ「絵里……」

にこ「……」スッスッ


「あんたって本当希大好きよね…まぁとにかく、こっちのことはなんとかするから…お願いね。」

『ええ…ありがとう、にこ。にこがそう言ってくれると心強いわ。希にはこのことは…』

「…まだ言わなくていいと思うわ。あいつ勘が鋭いから、そのうち自分から切り出してくるかもしれないけど。」

『そう、ね……ありがとう、にこ。』

「いいのよ。」

『それじゃ、おやすみなさい(-_-)zzz』

「ええ、おやすみ。」


にこ「………」カチッ

にこ「………」

にこ「………」ハァ


にこ「………」


にこ「言ったからには、なんとかしないとね……」

---
--


絵里「…それじゃあ希。おやすみなさい。」

希「うん、おやすみ……」


カチッ


絵里「………っ」

希「えりち…暗いけど平気?」

絵里「へ……平気よ、希が起きるまでは、毎日暗いとこで寝てたんだから……」

希「………、そっか。」

絵里「ええ……おやすみ。」

希「うん……」

絵里「………」

希「………」




『ガサガサガサッ』


希「………っ」



『ガサ…ガサガサ』



希(いない…本当はいないんやから……えりちが近くにいるんだから、大丈夫……大丈夫。)



『ヨジ……ヨジ………ガサガサ』



希「………」ガタガタ


希(お腹…登ってくる……)

希(いないいないいない……聞こえても感じても見えても、本当はいない………!)



『ガサガサ!!!』


希「ひっ………」ガタガタ

希「う………うう……」ガタガタ



『ウネ……ウネ………ガサガサ』



希(背中…に、たくさん………)

希(枕元にも、たくさんいる…気がする……)

希「え…り………」ガタガタ


絵里「………」スー…スー…

希(寝てる……)

希(起こせないよ……こんなん……)

希「………」ガタガタ


『ガサ…ガサガサ』


希(……何か、気分転換…しないと、眠れな……)

希(………そうだ、今…世の中、どうなって……)


希「………っ」スッ



Yahee!News!!

20日木曜日に発覚した監禁事件で、被害者の女性(18)が………



希(………)

希(……流石に、ぼかすところはぼかしてあるんやね。よかった…)

希「………」


希「………」スッスッ

希「え………」


【南ことりを】希ちゃん監禁事件スレpart37【許すな!】

0023名無しで叶える物語(やわらか銀行)
南ことりきもすぎやろ
ワイの希ちゃんを返せ

0034名無しで叶える物語(庭)
親が親なら子も子だかんな
もうまともな人生は歩めないわな
まぁそれは希ちゃんもだが

0124名無しで叶える物語(もんじゃ)
こいつ本当どうなってんだよ
親子揃ってあの髪型とかキモすぎ

0537名無しで叶える物語(もんじゃ)
ワイもことりちゃんに監禁されたいンゴ!

0632名無しで叶える物語(おいしい水)
ミナリンスキー()とか
ふざけてんなほんと
お前がふざけてる間にのんたんがどんな目にあったと思ってんだ


希「………っ」

希(な…んで……うちのこととか、ことりちゃんのこととか…われて……)

希(……ううん、それよりこれ……)


希(酷い……)

希(……こんなの、酷すぎる…)

希(ことりちゃんは、何も悪くないのに)

希(えりちが言ってた…ことりちゃんが通報してくれたんだって、だから助かったんだって。)

希(なのに………)


『ガサガサ!!!』


希「……っ、」ガタガタ

希(………)

希(ことりちゃん…やっぱり一度、会わないと……)

希(こんなん、うちだったら…耐えられない)



『ガサガサ……ガサガサ』



希「……っ、」ガタガタ


希「………」スッ…スッ…

希「……っ、」

希「………」スッ


希「………」ウトウト



『ガサ……ガサガサ』




希「………」スー…スー…



----
---
--

希「ん……うう……」


理事長「ふふ、東條さん、おはよう。」

希「……っ、?!理事長……なんで……」

希「えっ……あれ……」

希「…うち…助かったんじゃ………」

理事長「ふふふ、何を寝ぼけたこと言ってるの?随分都合のいい夢見てたみたいね…そんな後に、悪いんだけど。もう始めるわね?」

希「…っ、や……嫌………何を………」ガチャ…


希「………っ、動けない……」ガチャンッガチャッ


理事長「ふふ、当たり前でしょう?それじゃあ、あははっ……ザクッといくわよー……せーのっ、」



ザシュッ



希「ぁあ"あ"あ"っ?!!?!」


ポタ……ボタボタ


ピチャピチャッ…ビチャ……



希「ぁ……あ…………」ポロポロ

希「げほっ……けほっ…けほっ……」ポロポロ

希「あ…あ………やめ…て………」ポロポロ


理事長「ふふ、嫌よ…やめないわ。次は左腕。四股全部切り落としても、正しい処置をすれば死なずに済むのよ……ふふ、私だけのお人形にしてあげる。」

希「嫌……嫌………」ポロポロ

理事長「…うふふ、もうダンスは一生踊れなくなるわね。でも大丈夫…その後は舌をぬいて、歌も歌えなくしてあげるから。」

理事長「あははっ、楽しみね…目も邪魔だから繰り抜いちゃいましょうか?耳も熱湯でも入れれば聞こえなくなるかしらね…ふふ、うふふ………」

希「や…だ……そんなの絶対嫌…お願い……お願いやから……やめて………」ポロポロ

希「お願い………お願い………」ポロポロ

理事長「ふふ、嫌っていってるでしょう。じゃあ、左腕、いくわね?ふふふ……」

希「やっ……嫌!!やだ、やめて……っ」ガチャンッガチャンッ

理事長「…せーのっ!!」




ガバッ




希「はっ……はぁっ……はぁっ………」

希「………夢…………?」ポロ…

希「はぁっ……はっ………」ポロポロ


絵里「………」スー…スー…


希「えりち………」ポロポロ

希「よか…った……」ポロポロ

希「………」ポロポロ


希「あれ……うち、泣いて………」ゴシ…

希「………っ」ゴシゴシ


希「………」

希「……夢で泣くなんて、いつぶりやろ……」

希「………、」


『ガサガサ……ガサッ!!』


希「………っ、」ビク…

希「今……まだ、0時、か……」

希(寝ないと……)

希(……でも、寝るの……怖い………)


希(………)


『ガサガサ……ガサガサ』


希「………っ」


バタッ…


希(寝ないと……えりちに心配かけちゃう)

希(………)


希(寝ないと……寝ないと……)

希(怖い………)

希「………」ギュッ



『ガサガサ……ガサッ』



希「…………っ」ガタガタ


希「う………」ギュ…





希「うう……」ガタガタ

----
---
--


チュンチュン……チュン

絵里「ん…んん………」


希「………!」ガタガタ


バサッ

絵里「んん……希…起きてる……?」



『ガサ………ガサ』



希(………!やっぱり、えりちがいると聞こえなくなってく……)

絵里「希……?」

希「あ、うん………おはよ、えりち。」

絵里「………」

絵里「希、隈できてるわよ……眠れなかったの?」

絵里「…っ、ごめんね、私……考えてみればそうよね、怖い夢とか…見なかった?大丈夫?」

希「…っ、大丈夫……ほら、1週間も寝てたから…眠くなかったんよ。」

絵里「そう…なのね、」スタッ

絵里「………なら、いいんだけど…」スタスタ



ガチャ…


絵里「……?あら、窓開けっ放しだったのね……寒くなかった?閉める?」

希「…っ、ううん、大丈夫。開けておいて……」

絵里「……?ええ……」

希「………」


希(確かに、少し肌寒い……けど、)

希(でもなんか…なんでやろ、閉めちゃいけない気がする……)



……ガチャ


『おはようございます。』


絵里「……?看護師さん、おはようございます。」

希「おはようございます。」

『はい、おはようございます。あの、今日なんですが…朝食の前に、東條さん、採血してもよろしいですか?西木野先生からお願いされていて…』

希「採血ですか?……はい、大丈夫、ですけど……」

『…それじゃあ少し準備してきますね。待っていてください。』


……ガチャン

絵里「希、大丈夫…?」

希「子供じゃないんやから、大丈夫やけど……でも、血とるのなんて久しぶりやなぁ…」

絵里「………」



ガチャ




『…準備ができたので、それではまず、脱脂綿で消毒しますね……』フキフキ

希「………」

『……これでよし。』

『…それじゃあ失礼しますね、ちょっとチクっとしますよー………』ソー…





ーーーーードクンッ





希「…っ?!!」



『『ふふ…いい子ね、ちょっとチクっとするわよ……』』



希「ぁ……あ………」ガタガタ

『………東條さん?』

希「………っ、や、やだ…っ!!」ドンッ



『………いたっ?!』ドサッ

絵里「希…っ?!」






希「あ………」



『いたた……』


絵里「ご、ごめんなさい…大丈夫ですか?」

希「……っ、ごめんなさい!!」

『いや、大丈夫ですけど……えっと……』

『……もしかして、お注射苦手ですか?』

希「いや……えっと、その………」

『………』

『……じゃあ絢瀬さん、抑えててもらえますか?東條さんのこと。』

絵里「えっ……でも、あの……」

『……っ、いけない、そろそろ次の患者さんにいかないと……すみません、お願いできますか?』

絵里「……っ、でも………」

希「………」


希「………、ごめん、えりち……お願い。」

絵里「希………」

絵里「でも……」

希「……後で真姫ちゃんのお父さんには、ちゃんと説明するから…今回は………」

絵里「………」

絵里「…わかったわ。」ギュッ

希「……看護師さん、ごめんなさい……もう1度お願いできますか?今度はちゃんとしとくので……」

『…はい、じゃあ落ち着いて…リラックスしてくださいね……はーい、刺しますよ……』


ドクン ドクン ドクン


『『ふふ…いい子ね、ちょっとチクっとするわよ……』』



ドクンッドクンッドクンッ



希「ぁ……っ、」ガタガタ


『………絢瀬さん、腕、もう少し強めに抑えてもらってもいいかな?』

絵里「は、はい……」ギュ…


希「…っ、………」ガタガタ



『『ちょっと…もう。暴れないでくれる?変なところに刺さると大変なことになるわよ?』』




チク…


希「う………」ビクビク


『『……ふふ、うふふ……』』

『『すぐには効かないわよ』』

『『ねえ、東條さん、眠い?』』

『『ふふ、起きるまでに、準備しておくから』』


『『ふふっ、あはは…つぎは物理。起きたら痛いわよ、痛いの、ふふふふーーー』』



『ーーーはい、打ち終わりましたよ。』




希「……っ、はぁっ…はぁっ……」ガタガタ



『…じゃあ、もう少ししたら朝食なので……私は行きますね。』


絵里「……はい、ありがとうございました。」



……ガチャン



絵里「……っ、希!!大丈夫?」

希「………大丈夫、大丈夫……」ガタガタ

絵里「希………」

希「大丈夫…だから……」ガタガタ

希「はっ……は………は……」ガタガタ



……ギュッ



希「……っ、えりち………」

絵里「………」

希「…大丈夫、だって………」

希「だって、ほら、子供じゃ…ないんだから」

希「ね……?」

絵里「希……震えてる。喋り方も……」

希「………っ、」

絵里「……ね、無理しないでって…言ったじゃない…」

絵里「理事長が…睡眠薬、注射器で入れたって言ってたから……だからでしょう?」

希「………っ、…………」

絵里「……仕方ないわよ、私だってそんな目にあったら、絶対注射なんて打てなくなる……」

絵里「希は偉かったわ…偉かったわよ……」ポンポン

希「えりち……」

希「………」

希「……ごめん、また変なとこ……見せちゃって…迷惑かけて……」

絵里「……いいの。ねえ、気にしないでって、言ったでしょう。」

希「でも………」

希「………ごめん、」

絵里「もう……謝らないで。」ギュウ…

絵里「希はえらいんだから…私達のために、頑張ってくれたんだから……」

絵里「ね……?」

希「……っでも……」

絵里「でももだってもないの。」ギュー

希「えりち……」

希「………」

希「……うん、ありがとう。」

絵里「……ふふっ、ええ。」ポンポン



----
---
--

にこ「よし…全員揃ったわね……」


花陽「にこちゃん、それで話ってなあに?」

穂乃果「…そういえばこうやって放課後部室に集まるのって、なんだか久しぶりだね!」

にこ「……たしかにね。で、話なんだけど……」

にこ「……希の担任から、こんな手紙を渡されたのよ。」ピラッ



海未「………っ、これは……」

凛「なになに、海未ちゃん、凛にも貸して!」ピラッ

凛「……、これ………」

花陽「…希ちゃんが留年?そんなのおかしいよ…」

ことり「………っ、」

にこ「…そうよね。それで、その手紙と担任の話によれば、教育委員会だかを呼んで近いうちに会議するみたいなのよ。だから…」

海未「……私達でなんとか説得する…、そういうことですか?」

にこ「ええ。話が早くて助かるわ。私達で絶対なんとかしてやりたいのよ、希も……あと、希と一緒に休んでる絵里も、留年するようなことにはなってほしくない。」

穂乃果「そうだね、そうだよ…二人とも、ずっと生徒会やって、この学校を支えて…なのにそんなの、あんまりだもん。穂乃果たちで絶対なんとかしよう!」

真姫「それは勿論そうしたいけど……具体的にどうするのよ。何か策略があるの?」

にこ「ぐぬぬ……それがわかれば苦労しないのよ、あんた達…なんでもいいから案だしてちょうだい!」


凛「はい!!」

にこ「はい凛!」


凛「とりあえず勢いで押す!とにかく押す!押して押して押しまくれば教育委員会だって新理事長だってきっとわかってくれるにゃー!」

にこ「はぁ……まぁそれも1つの案よね。最終的にはそれもアリだと思うわ。」


ことり「……はいっ」

にこ「はいことり!」


ことり「著名を集める……とか?希ちゃんと絵里ちゃんの留年に反対してる人が多ければ、説得する1つの要素にはなるんじゃないかな。」

にこ「なるほどね…確かにそれはアリだわ。早速今日から集めることにして……」


海未「……」スッ

にこ「はい海未!」


海未「…会議の前にできるだけ多くの教員にきちんと説明して、味方になってもらっておくというのはどうでしょうか。」

海未「敵対してる教員がいれば注意するに越したことはないですし、とりあえず先生方一人一人に話に回るべきだと思います。」

にこ「な、なるほどね…確かにそれはそうね。それも今日から周ることにして……はい、花陽!」

花陽「いつもうじうじしてる私が言うのもおかしいけど…こちらの主張は、はっきりさせておいたほうがいいんじゃないかな。」

花陽「例えば私としては…留年を、~日までって日にちで伸ばすだけじゃ、ダメだと思うの。それじゃ希ちゃんだって、治すのに焦っちゃうと思うから…」

花陽「だからできれば卒業までに来られなくても、留年…なんてことには、してほしくない。そこは譲りたくないの。」

花陽「…元々3年生は、3学期の登校日ってほとんどないから…たくさん日にちを伸ばすなら、最後までにしても変わらないと思うから。」

花陽「そういうこととか…希ちゃんが副会長としてやってきてくれたことの実績とかも。全部紙にまとめて、読んで貰えばわかってもらいやすいんじゃないかな。」


にこ「なるほど…確かに日にちを伸ばすだけじゃだめね、私もそれは思ってたの。」

にこ「……わかった。とりあえず今日からみんなで著名を集めて、先生を説得。まとめるのは…そうね、私だけじゃ不安だから…花陽、手伝ってもらえる?」

花陽「もちろんです!」


にこ「うん……じゃあ、そんな感じかしらね。」

にこ「あと……その、あんた達…ありがと。私だけじゃここまで思いつかなかったと思うから…」

凛「ふふっ、にこちゃんが照れてるにゃー!」

にこ「うっさいわねー!たまにはいいでしょー!」

穂乃果「よーしっ、そうと決まれば早速集めに行くよっ!」

海未「説得は、そういうのが上手いことりや真姫に行ってもらいましょう。」

真姫「ええ、わかったわ。」

にこ「ああ…あと、」

穂乃果「……?」

にこ「………その、ラブライブと…この部活の、ことなんだけど。」

にこ「それについては……」

穂乃果「待って、にこちゃん。」

にこ「穂乃果……?」

穂乃果「それについては……少し、考えてることがあるんだ。」

穂乃果「だからもう少しだけ……待ってもらえないかな?」

にこ「穂乃果………」

にこ「…そうね、私も少し、考えてることがあんのよ。」

穂乃果「…ふふ、多分ね、にこちゃんとおんなじこと、穂乃果も考えてるんだと思う!」

穂乃果「でも今は…著名を集めたり、そっちのほうが…大事だから。」

にこ「………」

にこ「……たしかにね。じゃあ、この話はまた後日。」

穂乃果「ふふっ……うん!」

穂乃果「じゃあみんな!頑張って著名集めよー!!」


ガチャ!


タッタッタッタ……



マッテクダサイホノカ!
ロウカハハシッチャダメダヨッ
イックニャー!!!


にこ「………」

にこ(希……絵里………)

にこ(やると言ったからには…やってみせるわ。このメンバーなら、できる!)

にこ「…それじゃ花陽、うまいことまとめてやるわよ!」

花陽「はいっ!!」

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---
--


希「………」

絵里「希~?」

希「………」

絵里「のーぞみっ、」

希「………」

絵里「希っ!!」ユサユサ

希「…っ、えりち…?なぁん?」

絵里「………ねえ、まだ朝のこと…気にしてるの?」

希「…ううん、そんなことは……ないんやけど……」

希「………」


絵里「希……」

絵里「…希って、英語得意だったわよね……ここ、訳せる?なんだか長くてよくわからないのよ。」

希「んん…ちょっと貸して、」バサッ

希「うーん……」

希「…ああ、これはほら、ここが関係代名詞になってて……こっちが使役やから……」



希「……うん、こんな訳し方でいいんやないかな。」

絵里「なるほど……なかなか難しいわね。でもありがとう、おかげで助かったわ。」

希「えりちは偉いなぁ、こんな時にも勉強して………って、」

希「………」

絵里「…希?」

希「…そういえば、えりちはもう……本当は、退院…できるんよね?」

絵里「………」

希「学校だって……」

希「ねえ、無理してうちに合わせな…」

絵里「無理なんてしてないわ。」

希「……っ、」

絵里「希……」


絵里「…あのね、私が…希と一緒にいたいのよ。希と一緒に戻りたいの……だから、これは私の我儘。」

希「でも……」

絵里「でももだってもない…って、朝言ったでしょう?」

絵里「希はそんなこと、心配しなくていいの。今はゆっくり、元気になってくれれば…それでいいんだから。」

希「えりち……」

希「………、……ごめんね。」

絵里「もう…だから謝らないの。私の我儘だって…言っているでしょう?」

希「そう…やね……」

希「………」

絵里「希……」

希「…あ、そうだ 」

絵里「………?」

希「あの…ことりちゃんの、ことなんやけど。」

絵里「ああ……えっ、もう決めたの?」

希「うん……あんなぁ、ことりちゃん、会いに来て…いいよ。」

絵里「えっ……」

希「会いに来ていいよ、なんて…上からみたいな言い方になっちゃって嫌なんやけど…でも、会いに来ていいよ、って…伝えてくれる?」

希「……それか、うちが直接LINEしてもいいんやけど……」

絵里「いえ、伝えるのは全然いいんだけど…希は本当にそれでいいの?……大丈夫?」

希「………」

希「ことりちゃん…きっと罪悪感とか、感じてると思うんよ……だから早く会いたいん。」

絵里「希……」

希「ああ、でも……」

希「今朝みたいな…迷惑を、もしかしたらかけちゃうかもしれないってことも…添えといてもらえると、嬉しいかな…」

絵里「………、わかった…けど……」

希「……?」

絵里「……希。あのね……無理することないの。希は被害者で、私達のこと、助けてくれて……だからね、気なんて使わなくていいのよ。今は自分のことだけ…考えて。」

希「でも……」

絵里「………」


絵里「……じゃあ、これだけでも…少しはかわる…かしら。」

希「………?」

絵里「…あのね、連想して、怖いこと思い出しちゃうようなもの……教えてくれる?その方が希もいいかなって……」

希「えりち……」

希「ごめん、うちにもよく…わからないんよ。」

希「今朝のでとりあえず注射が無理だっていうことと…あと、集中治療室みたいな構造の部屋が苦手だっていうのは、わかるけど…」

希「……ごめんなぁ。」

絵里「もう…謝らないでって言ってるでしょう。それならじゃあ、少しずつ見つかるたびにメモしていくことにしましょう。そしたら少しずつ、そういうもの、避けていけるから…」

希「……そう、やね。ありがとう。」

絵里「ええ……」



ガチャッ


『東條さん、西木野先生に頼まれて、精神科からきたんですが……今から診察、大丈夫ですかねぇ…?』

希「………!あ、はい…大丈夫ですけど…」

絵里「………」



『ぃよいしょっと…歳をとると歩くだけで身体中バキバキいってね……あぁ、絢瀬さんは…暫くの間、席を外してほしいんですがねぇ。』

絵里「え、ええ……でも、あの…」

絵里「……ここにいては、いけませんか?」

『…こういう診察は、一対一の方がいいのですよ。だからお願いしますね。』

絵里「………」

絵里「……わかりました。じゃあ希、売店にいるから…終わり次第、LINEしてくれる?」

希「う…うん……わかった。」


ガチャン



『…ふう。はじめまして。精神科のーーです。希ちゃんより随分歳はとってるけど、心は若いままのつもりだからねえ、まぁお母さんとでも思って、気兼ねなくなんでも話しておくれ。』

希「は、はい……」

『ふぉっふぉっ…実は私は希ちゃんの大ファンでねぇ……今回こうやって診察できて嬉しいよ。それで……』

『一体どんな目にあったんだい?』

希「えっ……」

『事件だよ、ほら…初日から、一体どんな目にあったのか…詳しく聞かせてくれるかい?』

希「…っ、あ、えっと……」

希「…それについては、真姫ちゃんのおと…西木野先生から、きいてませんか?」

『そうだねぇ…でも、私は希ちゃんの口から聞きたいんだよ……できないかい?』

希「………っ」

希(この人……なんか………)

希(………)

希「……ごめ…なさい、あんまり思い出したくないんです……刑事さんにも、遠慮してもらってて……」

『………ケッ、そうかい。』

希「………っ、」

希(…今、舌打ちした……?)

希(気のせい…かな……)

『…じゃあ症状について。今聞いてるのは、事件に関連性のあるものを見ると、パニックになる……大方フラッシュバック現象だと思うが。これ以外に、何かあるかい?』

希「…えっと………」

希「……虫の這う音が、聞こえるんです。ずっと……」

『ほう……幻聴か。他には?』

希「幻聴っていうか……いるように感じたり、たまに見えたりもするんです。」

『幻聴、幻覚……ふんふん、まぁおそらくそうかとは思っていたが。』

希「………?」

『…ふぉっふぉ、希ちゃん、それはね……恐らくPTSDという病気だよ。』

希「PTSD……それ、どんな病気なんですか?」

『日本語にすれば、心的外傷後ストレス障害。』

『事故や災害、事件に巻き込まれた後にね…関連した物をみるとフラッシュバック…その時の場面が鮮明に思い出されたり、あたかもその場にいるような気持ちになったり』

『……あとはそうさね、夜眠れなくなったり、悪夢に襲われるのが大きな特徴かねぇ……』

希「………!そう…ですね、確かに夜、眠れないんです……あの、それ…」

希「………治り…ますよね?」

『ふぉっふぉっ…そうさね……幻聴や幻覚まで出ているとなると、PTSDにしてもかなりの重度だねぇ……』

希「………」

『…だがまぁ、何人もの治療をしてきた私なら、治せるだろうね。』

希「……っ、ほんとですか!」

『ああ、もちろんだとも。』

希「あの……じゃあお願いします。どうすれば…お薬とかですか?」

『そうさね……薬よりも、怖かったことを誰かに話したり…愚痴をこぼしたり。あとは人に頼ったり、甘えたり……人の暖かみを感じることが、大事だと言われているねえ。』

希「……っ、人の暖かみ………」

『ふぉっふぉっ……だが希ちゃん…家族が今、いないんだろう?親御さんも連絡がとれないとかで……』

希「………っ、そうです…けど……」


『誰か頼れる人、いるのかい……?』

希「………」

希(えりち………)


『ふぉっふぉっ、ねえ……』



『……まさか絵里ちゃんに頼ろうとか、考えていないかい?』



希「……っ、」

『だめさね、それは……絵里ちゃんには、絵里ちゃんの人生があるんだから……希ちゃんが邪魔をしてはいけないだろう?』

希「邪魔……」

『…そうさね。今朝も絵里ちゃんに、迷惑かけたんだろう?これ以上はよくない……希ちゃんと一緒にここにいてくれてるだけで、十分だと思わないかい?』

希「………っ」

希「……そう……です…よね………」



『ガサガサガサッ!!!ガサッ!!』



希「ひっ……」ビクッ

『ふぉっふぉっ……幻聴でも、聞こえたのかい?ねぇ、希ちゃん……』

希「………?」ビクビク

『……私を頼ればいいのだよ。仕事帰りに、毎日ここによってあげる…母親だと思って、甘えてくれていいんだよ?ほら……ねえ?』ナデナデ

希「……っ、」ゾワッ

希「いや…あの、結構で……」

『絵里ちゃんに、迷惑かけるつもりかい?』

希「………っ」

『ふぉっふぉっ……ほら、おいで?』

希「………」

『……おいで?』

希「……っ、」ゾクッ

希「………」ソロ…ソロ…

『ふぉっふぉ……よしよし。』ナデナデ

希「……っ、」ガタガタ

『…幻聴が怖いのかい?可哀想に……』ギュッ

希「あ、あの……やめ……」ガタガタ

『あぁ、そうだ…薬を処方しないとねえ。』ガサガサ

希「……っ、………?」

『……はい、これ。眠れないんだろう?そればっかりは、薬を使ったほうがいいからねぇ…はい、こっちが毎晩飲む用で……こっちが本当に辛くて眠りたいときに飲んでおくれ。』

希「は、はあ………」

希「………っ、」

希「この薬………」


『ハルシオン』


希「ひっ……」ガタガタ

『『ちなみに東條さんを連れてくるときに飲ませたジュースには、ハルシオンっていうお薬が入ってたの。』』

希「はっ……はぁっ……は……」ガタガタ

『ふふ、どうしたんだい?虫でも見えるのか……安心しなさい、それは幻覚だからね……』ギュウ…

希「ち、ちが……っ」ガタガタ

希「あ、あの……!毎日飲む方の薬…これ、他のに変えていただけませんか?お願いします……!」

『ふぉっふぉ……こーら、薬の飲まず嫌いはダメだろう?のぞみ。』

希「………っ、」ゾクッ

『……ふぉっ、ふぉっ、…とりあえず今日は帰るとするかね……いいかい、絵里ちゃんに頼りすぎてはいけないよ?頼るなら私を頼りなさい…』

『それじゃあ、また明日ねえ…』フリフリ



ガチャン



希「また……明日………?」ガタガタ

希「………っ」ガタガタ



----
---
--

海未「ことり、それでは私はお風呂に入ってきますね。」

ことり「うん!いってらっしゃい~!」


ヴー ヴー


ことり「……LINE……絵里ちゃんから?」スッ


『夜遅くにごめんなさい、にこからことりが希に謝りたいって言ってる…って、聞いてて。直接ことりに話したほうが早いと思って。』

『希はことりが謝りに来るの、いいって言ってるわ。いつでも好きなときに来ていいって。』

『…だけど希、今はまだ……事件に関連した物を見たりすると、怖かったこと、思い出しちゃうみたいで……パニックになっちゃうことがあるの。』

『それでね…ことりを見て、そういうことが起こるかもしれないけど…驚かないでほしいの。希はことりのこと、怒ったりはしてないから。ことりちゃんは何も悪くないって、言ってるから。』


ことり「希ちゃん……」ジワ…

ことり「………っ」ポロポロ

ことり「なんで…なんでそんなに、優しいの。」ポロポロ

ことり「みんな……みんな、ことりに優しすぎるよ……」ポロポロ

ことり「………っ」ポロポロ


スッスッ


『伝達ありがとう、絵里ちゃん。希ちゃんにも、ありがとうって…伝えてくれるかな?希ちゃん、優しすぎるよ…絵里ちゃんもだけど、みんなみんな……』

『……本当に、ありがとう。近いうちに行くね、できるだけお母さんのこと、思い起こさないですむように…少し考えてみるね。』


ことり「………」スッ


ことり「私……やっぱりお母さんと、似てるん…だよね……」

ことり(希ちゃん、私のことなんてみたら、きっと怖いこと、思い出しちゃう……)

ことり「……できるだけ、なんとか……なにか………」

ことり「………!」

ことり「そうだ……」


----
---
--

絵里「………」スッ

絵里(ことり……)

絵里「……あら、もうすぐ消灯の時間……」


絵里「……希、いくらなんでも遅すぎる…ような。」

絵里(何か……あったのかしら…)

絵里「…………っ」

ダッ


タッタッタッタ……



ガチャッ


絵里「希……っ?!」

希「………」ガタガタ

絵里「希……?どうしたの…何が……」

希「……っ、あ…えりち……」

絵里「大丈夫?何かあった?LINE来なかったから…心配したのよ……?」

希「あ…ああ、忘れてた……ごめんなぁ。」

絵里「ねえ、希……大丈夫?震えて…」

希「……っ、大丈夫……震えてなんか、ないよ…」

希「……お薬ももらったし…病名?も、わかったから……うん、もう大丈夫……」

絵里「そう……」

絵里「……なら、いいんだけど…なんていう病気だったの?」

希「えっと………、…PTSD…やって。事故にあったり、震災にあった人がよくなるみたい……」

絵里「そうなの……」

絵里(…今度すこし、調べてみましょう。)


絵里「…っ、あ、希……時間、もう、消灯時間だから……」

希「あっ、そう…やね、寝ようか。」

絵里「薬は…?飲まなくて平気?」

希「えっと……うん…今日は平気。」

絵里「そう……じゃあ電気、消すわね。」


カチッ


希「………それじゃあ、おやすみ……」

絵里「ええ……あっ、」

絵里「ことりに伝えておいたわ。そしたらことりが希に、ありがとうって伝えてって…それから近いうちに、ここに来るって……」

希「ことりちゃん……そっか、うん…えりちも、伝えてくれて…ありがとう。」

絵里「ええ……」


絵里「…それじゃあ、おやすみなさい……」

希「おやすみ……」



希「………」



『ガサガサ……ガサガサ』



希「………っ」ガタガタ


希「う………」ギュ…



『ノソ……ノソ……ガサガサ』



希「う……あ………」ギュウ…

希(足にいる…登ってくる、入ってくる……っ)

希「………」ガタガタ

希(怖い……)


『ガサガサガサ!!ガサッ!!』

希「ひっ………」ギュ……

希(怖くない、怖くない、本当はいない、いない………)

希(………)


希(嘘だよ…怖いよ………)


絵里「希………?」


希「………っ、えりち……?」

絵里「………、……大丈夫?怖くない?」

希「えりち………」

希「………っ」

希(本当は………)


『いいかい、絵里ちゃんに頼りすぎてはいけないよ?』


希「………っ」ガタガタ

絵里「希……?」

希「……、大丈夫………」ガタガタ

絵里「……本当に?」

希「うん……大丈夫、大丈夫、やから………」ガタガタ

絵里「そう……」

絵里「………なら、いいんだけど……」


希(えりち………)

希(……ごめん、ごめん、なぁ……)


『ガサガサガサ!!ガサッ!!ガサガサ!!』


希「………っ」ギュウ…


希「………」ガタガタ





希「……っ…」ガタガタ



----
---
--


理事長「……ねえ、ちょっと。」

『なんだぁ??』

理事長「私の娘…面会に来たり、手紙をよこしたりしてない?」

『何も来てないぞ』

理事長「そう……おかしいわね………」


理事長(私が捕まって、10日が経つけど……)

理事長(未だにことりが寂しがって来ないなんて…どうなってるの。)

理事長(あの子は一人で生きていけるほど強くない…一人になるくらいなら、たとえ監禁事件の犯人だとしても縋りに来るはず……)

理事長(………)


理事長「……なるほどね。」


理事長(そうなると…誰かがことりのこと、匿ってくれてるわけ…ね。)

理事長(西木野さんのとこか…高坂さんちか、園田さんちかしらね。)


理事長「ふふ……」


理事長(まぁ…いいわ。それにしたってことりは私のこと、大好きだもの……いつか耐えられなくなって会いに来るはず。)

理事長(それに裁判では…情状証人として、私の肩をもつようなことを言ってくれるはずよね。)

理事長(たかだか半年程度一緒に過ごした先輩よりも…私の方が、よっぽど大切なはずだもの。)


理事長「ふふ…あはは。」


理事長(東條さんは…どうなったかしら。殺人罪で問われそうじゃないところから、生きてはいるんでしょうけど。)

理事長(目は覚めたかしら……でももう、まともには生きていけないでしょうね。ふふ。どうせなら絢瀬さんの足を引っ張って…二人して依存して落ちていけば、おもしろいわね。)

理事長(いい弁護士も雇ったし……殺人未遂にはならないはず。精神鑑定で責任能力なし、となってくれたら一番ありがたいけれど…)

理事長(まぁとにかく、死刑には絶対ならないんだから…いつか釈放されたら、もう一度東條さんに会いに行きましょう。ふふ、どんな顔するかしら…今からとっても楽しみね。)


理事長(それからことり……)

理事長(…ふふ、釈放されたら、ことりとチーズケーキでも作って…また食べましょう。東條さんはぐちゃぐちゃに歪んだ顔が最高に似合うけど、ことりは朗らかな笑顔が最高に似合うのよ…)

理事長(ああもう、今から楽しみだわ…ふふ、うふふ……)

ほんとだラ板でも指摘されたのに直し忘れた
>>438 著名→署名で

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ダッダッダッダッダッ…



ガチャ!!



にこ「はぁっ、はぁっ……日にち!決まったわよ!!会議の!!!」

凛「ほんと!!?いついつ?!」

にこ「来週の金曜日…今日から丁度一週間後ね。花陽のおかげで配るプリントはもう作れたけど…先生の説得と署名の方はどう?」

真姫「教員はほとんど説得できたけど……頭のかっちこちな教頭だけは味方してくれそうにないわね。ルールはルール!ってうるさいのよ。」

ことり「あはは…うちの教頭先生、昔からそうだからね…でも一人くらいなら初めに凛ちゃんが言ったように、勢いで丸め込めるんじゃないかな。」

にこ「なるほどね…まぁたしかに、教頭にだけ注意しておけばいいなら…なんとかなりそうね。」

穂乃果「署名の方は、みてみて…ほら!こんなにたまったよ! 120個はあるから…音ノ木の全校生徒、240人くらいだよね!半分は超えたんじゃないかなっ」

にこ「すごいじゃない!たった6日でよくそんなに集めたわね…今日からは私達も手伝うわ。」

真姫「私達ももう先生は全員まわったし…そっち、手伝うわよ。2/3もたまれば御の字ってとこじゃない?」

穂乃果「ふふっ、みんなで集めれば2/3なんてすぐいっちゃうよ!」

にこ「あったりまえよ!この宇宙No.1にこにーがぁ、署名ください~♡って言って、署名しない生徒なんて……」

真姫「キモチワルーイ。」

にこ「むぐぐぐ!いいからほらっじゃあ…」


ことり「ああっ!!」


にこ「……っ、何よことり、突然大きな声出して……」

ことり「来週の金曜日って…11月11日、だよね…?」

にこ「そうだけど……」

ことり「………ごめん、ごめんね…その日私、お母さんの裁判があって……」

海未「………っ、その日だったんですか……」

ことり「…ごめんね、今さっき刑事さんから連絡来たところで……これが終わったら海未ちゃんにも言うつもりだったんだけど……」

海未「ことり……」

海未「………」

海未「にこ、すみません、その日私とことりは………」

ことり「ううん。」


海未「…っ、ことり……?」

ことり「海未ちゃんは…にこちゃん達の方に行って。裁判の方は…私一人で、大丈夫だから。」

海未「ことり……しかし、」

ことり「いいの。」

海未「………っ、」

ことり「……今は希ちゃんが、今まで通りの生活を取り戻せるようにお手伝いすることが、一番大切だ…って、海未ちゃん言ってたでしょ。」

ことり「私もね…その通りだと思うから。それなら海未ちゃんは、こっちじゃなくて…にこちゃん達と先生方の説得をしたほうがいいと思うの。」

海未「ことりは……」

海未「………ことりは、それで大丈夫なのですか。」

ことり「うん…大丈夫だよ。」

ことり「だってその場にいなくたって…私には海未ちゃんが、穂乃果ちゃんが……それにμ'sのみんながいるんだもん。優しくって、大好きなみんながいて…私には帰る場所があるんだから…」

ことり「……それだけで十分。頑張れるよ!」

海未「ことり……」


海未「……わかりました。私はここでにこ達と最善を尽くします。お互い頑張りましょう。」

ことり「うんっ!」


にこ「……なんだかよくわからないけど、ことりはその日裁判があって…海未はこっちに来るんでいいのね?」

ことり「うん、それで大丈夫だよ。」

ことり「あと……私ね、今日このあと、希ちゃんに…謝りに行ってくるから、だから…」

にこ「ええ、それは絵里から聞いてるわ。希の様子…しっかり見てきて。それで謝るよりも…元気付けてやって。希はきっとことりのこと、恨んだりはしてないと思うから。」

ことり「にこちゃん……」

ことり「……うん、わかった。」

にこ「じゃあほら、いったいった!」トンッ



タッ…タタ


ことり「うん……ありがとう。いってくるね!」


ガチャッ


タッタッタッタ……



凛「ことりちゃんいいなぁ、凛も早く希ちゃんに会いたいにゃー。」

花陽「そうだね…」

にこ「きっともうすぐ会えるわよ、希だもの…大丈夫、絵里がついてるんだから。」

花陽「にこちゃん…」

にこ「…あの希に、あの絵里がついてるんだから……大丈夫。私たちは私たちにできること、やってやりましょ。」

にこ「…ってことだから…じゃーあんた達!署名集め、いっくわよー!!」


穂乃果「おー!!」



----
---
--


絵里「希……?」

希「…………なぁん?」

絵里「…ねえ、体調悪い?」

希「………、べつに、平気やけど…」

絵里「………本当に?」

絵里「隈、酷いわよ…眠れてないんじゃない?」

希「………大丈夫。」

絵里「でも……ねえ、じゃあ薬が合わないんじゃない?私があの先生に言って…」

希「……っ、大丈夫、大丈夫やから……」

希「……何もしなくて、いいから……」

絵里「でも……」


絵里「………ねえ、お願いよ…何かあるなら言って?私ね、ここ最近…希がどんどん酷くなっていってるように見えるのよ……」

希「……さっき看護師さんが、体はもう大丈夫って、体力も少しずつ付いてきてるから明日検査しましょうって、言ったばっかりやん……それって良くなってるんとちがう?」

絵里「体はね……でも、その……」

絵里「………っ」

希「………」


希「……ごめん、当たるようなこと言って……」

希「でも、大丈夫やから……」

希「……っ、………」ギュ…

絵里「希……」

希「……っ、ほら、今日はことりちゃんが来るんよね?大して物もないけど、歩く練習がてら、少し片付けようか…」スタッ

希「………っ、たた…」

絵里「ちょ、大丈夫!?」

絵里「……まだ、無理しちゃだめよ…ね、片付けなら私がするから。希は座ってて?」


希「………」

希「……でも…もううち、ここに運ばれてから16日も経ってるんよね……」

希「…あの倉庫にいた時間よりも長い時間が過ぎてるのに…いつまでもえりちに頼ってたら……」

絵里「いいのよ。真姫のお父さんも言ってたでしょう、少しずつ良くなってくからって。ね?」

希「でも……うち、えりちに頼りっぱなしで、」

絵里「そんなことないわよ…むしろ私は、もっと頼ってほしいって思ってるんだから。」

希「………」



コン コン



絵里「………っ、はいー?」

ことり「…ことりです、入っても平気かな?」

絵里「…希、大丈夫?」

希「っ……」


希(ことりちゃん……)

希(ことりちゃんと理事長は、そっくり…だけど)

希(……ことりちゃんは、ことりちゃんだから…)

希(大丈夫……大丈夫……)


希「………」スー…ハー…


希「ええよー、入って入って。」


ガチャ…



ことり「…久しぶり、絵里ちゃん、のぞ……、っ」

ことり「のぞみちゃん……っ」ジワ…

希「………っ、」

希(やっぱり……似てる………)


『ガサガサガサ……ガサガサガサ』


希「……っ」ブンブン


希(でも、違う……違う……だって……っ)


希「………っ、ことりちゃん……その髪、どうしたん…?」

希「凛ちゃんより…短いんじゃ、それに…トレードマークのあの髪が…」


ことり「…来る途中に切ってきたの。でも、そんなことより、ねえ……っ」ポロ…

ことり「希ちゃん………っ」ポロポロ

ことり「ごめ……ごめんね、希ちゃん……ごめんね」ポロポロ

ことり「う………ぐすっ、ううう……」ポロポロ

希「ことりちゃん……」

ことり「ううううっ、ごめんね、希ちゃん……!!」ポロポロ


タッタッタッ


ギュッ

希「おおっと……」

ことり「ごめん……ごめんなさい……希ちゃん、希ちゃん………!」ポロポロ

ことり「髪………頬っぺたも、体もそんなに痩せて………っ」ポロポロ

ことり「こんな……酷い………」ポロポロ

ことり「……見えないだけで、他にもたくさん……たくさんお母さんが………っ」ポロポロ

ことり「ううっ、ぐすっ、ううう……」ポロポロ


ことり「ううう、ごめん……ごめんなさい……っ」ポロポロ

希「ことりちゃん………」

絵里「………」

希「えりち………」コク…

絵里「希……でも、大丈夫?」

希「大丈夫……」

希「…やっぱりことりちゃんは、ことりちゃんやね……理事長とは、違うよ……」ナデ…

希「髪、うちのために…切ってきてくれたんよね、そんなに短かく………」

希「………ごめん、ね…」

ことり「なんで希ちゃんが謝るのっ、希ちゃんは、何も謝らなくていいんだよ……」ポロポロ

ことり「…私のこと、どうしてもっと早く気付かなかったんだって、どうしてもっと早く通報しなかったんだって…怒っていいのに……」ポロポロ

希「ことりちゃん………」



絵里「………じゃあ、私……下で待ってるわね。」

希「うん……ありがとう。」



ガチャン

絵里「………」



コツ…コツ…


絵里(………希に、ことりが来て…大丈夫そうだったら二人で話すからって言われて、出てきちゃったけど……)

絵里(……大丈夫、かしら。)


コツ……コツ……


絵里(……まぁ、大丈夫…よね。ことりには希のこと、話してあるし……ことり、ばっさり髪切って…がらりと雰囲気変わっていたし…)


『ことりちゃん……』ナデ…


絵里「………っ」

絵里「………」ブンブン


絵里(なんで思い出してるのよ……もう……)

絵里(…まさか嫉妬?そんなわけ……)

絵里(……だって、この気持ちは………)


絵里「………」

絵里「はぁ……」


絵里(希……起きてからずっと、調子が悪そうでは…あったけど……)

絵里(注射を怖がったあの日から、日に日に悪くなっていってるような気がする)

絵里(希は隠してるつもりなんだろうけど…時折見せる、何かに怯えてるような…じっと耐えているような、あの表情)

絵里(原因がわからない…聞いても教えてくれない、希は私を頼ってくれない)

絵里(……起きてからの何日かは、あんなに頑なではなかったのに、どうして……)


絵里「………」

絵里「わからない…わね……」


絵里(PTSDについても…調べてみたけれど、治療としては最終的には専門医に任せること、というのが多くて…私にできることは少ない)

絵里(どうしたら……)

絵里(………)


絵里「………あ、」



『……ずっとずっと、ありがとうございました!先生のおかげで、無事社会復帰できるまでになって……』

『ふぉっふぉっ、それは良かった……しかしこれからも薬はしばらく飲み続けるようにねぇ、頑張りすぎないで、楽しくやれるのが一番だから。』

『……はい!あ、車が来たみたいなので、行きますね。それじゃ!』

『はいはい、また辛くなったらいつでもおいで~』フリフリ



絵里「あれって……希の……」

絵里「………っ」


タッタッタ……


絵里「…あのっ!」

『……おおー絢瀬さんじゃないか。どうしたんだい?東條さんは?』

絵里「あ、えっと…今は友達がお見舞いに来てるので…病室にいます。」

『ほおほお、なるほどねえ…』

絵里「あの、希のことで…少し聞きたいんですけど。」

『ふぉっふぉ、なんなりと。』

絵里「えっと………」


絵里「……希の治療の方ですが…どうですか?良くなってますか?」

絵里「……私には、日に日に悪くなっていっているように見えて……」

絵里「…時々、酷く辛そうな表情をするんです。何かに怯えてるみたいな……」

絵里「………何か知ってたら教えていただけませんか?」

『…ふぉっふぉっ、そうさね……』

『まぁまず1つ言えるのは、こういう病気は前進と後退を繰り返して少しずつ良くなっていくものだということかねえ。』

『それから何に怯えているか……それについては、私はしっているけれど……』

絵里「本当ですか!教えてください!!」

『……教えるのは簡単だがねぇ、でも絢瀬さん、東條さんは絢瀬さんに言わないんだろう?それって知られたくないということじゃないかい?』

絵里「………っ」

『ふぉっふぉっ……悪い言い方をしてすまないね、だが…東條さんの治療に関しては、私に任せてくれないかね?』

絵里「それは…そうですが、でも…私にも……」

『実は私は、μ'sの、特に東條さんの大ファンでねえ……東條さんには、他の患者さん以上に、特別たくさん世話を焼いてあげているつもりだよ…』

絵里「そう…だったんですか…」

『ふぉっふぉ、毎晩専門医が寄ってくれるなんて、こんな幸運なかなかないと思うね…私は東條さんに、母親代わりにしていいとまで言ってるんだ。』

『もちろんあんなに酷い事件の後だからねぇ……すぐに良くなるのは難しい、後退もするだろう。』

『…しかしここは、私に任せてくれないかい?絢瀬さんには絢瀬さんの人生だってあるだろう…それに東條さんが今頼っているのは、私、なんだからねえ…』

絵里「………っ」

絵里「………」

絵里「……わかり…ました……」

絵里「…でも、私には私のできることがあると思うので…少し、考えてみます。」

『ふぉっふぉっ、考えるのはいいことだよ。こんなべっぴんさんに世話を焼いてもらえるなんて、東條さんも幸せ者だねえ…』

『あ、それじゃあ私はそろそろ行かないと……』

絵里「……っ、はい…ありがとうございました……」


絵里「………」

絵里(………なんだか……あの先生………)


絵里(………)

絵里(………考えすぎ、かしら……)



絵里「………」


----
---
--


「……え…ちゃ………りちゃん……」


絵里「ん、うう……」


ことり「絵里ちゃん…?」


絵里「ことり……?」

絵里「……っ、ごめん、ちょっとうとうとしてたみたい……希との話は終わったの?」

ことり「うん……」

絵里「そう……って、ことり…目が真っ赤じゃない…大丈夫?」

ことり「大丈夫。ねえ、絵里ちゃん……」

絵里「……?」

ことり「希ちゃん……大丈夫、なのかな……」

絵里「………っ」

ことり「…私ね、にこちゃんに言われて…謝るのももちろんそうだけど、希ちゃんを少しでも元気付けられたらって、そう思ってたんだけど…」

ことり「…希ちゃん、元気そうにはしてくれるんだけどね、けど……」

ことり「………だけど…その……」

絵里「……ええ、わかってるわ。」

絵里「私が……私がなんとかするから。」

ことり「絵里ちゃん………」

ことり「………ごめんね。」

絵里「ことりが謝ることじゃないわ…髪もそんなに切って、ねえ…ことりも自分を責めすぎないでね?」

絵里「ネットとか……心無い発言が飛び交っているけど、それはことりのことを知らない人たちの戯言なんだから……」

ことり「うん…大丈夫、ありがとう。」

ことり「あのね、実は11日に、お母さんの裁判があって……」

絵里「………っ、理事長の………」ギリ…

ことり「……私、そこで少し発言する機会があるんだけど…お母さんの刑、できるだけ重くできるように…言ってくるから。」

ことり「……人を殺したわけではないから…死刑にはできないけど、一番重くて無期懲役には、できるはずだから……!」

絵里「ことり……」

絵里「……ありがとう。あんまり軽い刑になったりしたら…私、自分を抑えられるか……わからないから……」

絵里「ことり頼みになってしまって、ごめんね…ことりも辛いでしょう、家族なんだもの……」

ことり「……ううん、大丈夫。私にできること、これくらいしかないから……それに今日希ちゃんに会って、私もますます…お母さんのこと、許せないなって、思ったから…」

絵里「ことり……」

ことり「……っ、あ、ごめんね、引き止めちゃって……希ちゃんのところ、行ってあげて。絵里ちゃん。」

絵里「ええ、今日はありがとう、また今度…今度はみんなで会えるといいわね。」

ことり「うん……それじゃあ、」

絵里「ええ……」


タッタッタッタ…



ことり「………」フリフリ

ことり「………」

ことり(……希ちゃんも、絵里ちゃんも…私にすごく優しくしてくれる、けど……)

ことり(…でも、お母さんのこと……心の底から許せないこと…怒ってること、それだけはすごく…伝わってきた)

ことり(あんな希ちゃんを見たら…私だって、許せないよ……)

ことり「お母さん……」


ことり(……絶対、軽い刑になんか…させないからね…)


---
--



ガチャッ


絵里「希……」

希「…っ、えりち……」

希「……おかえり。外で待っててーなんて、我儘言って…ごめんなぁ。大丈夫だった?」

絵里「私は別に……大丈夫よ。ことりとは話せた?」

希「うん…ことりちゃん、なかなか泣き止まなかったんやけど…一通りお話した後はにこっちの話とかも聞かせてくれて、楽しかったよ。」

希「あ、あとこれ…チーズケーキ。手作りだからなるべく早めに食べて~って、ふふ、美味しそう。楽しみやなぁ。」

絵里「希……」

絵里「…ふふ、それなら良かった。チーズケーキは冷蔵庫に入れておきましょうか。あら……?」

希「………?」

絵里「雨…降ってきたみたい。窓閉めるわね。」

希「……っ、うん……」

絵里「………」カチャ


ザー


絵里「雨なんて…なんだか久しぶりね……」

希「そうやね……」



ヴー ヴー


絵里「…っ、あら…私?何かしら、」スッ

絵里「………」スッスッ…

絵里「……!」

絵里「……ごめん希、おばあさまが下に服とか持ってきてくれたみたいだから…もう一度下に行ってくるわね、すぐ戻ってくるから。」

希「……わかった、いってらっしゃい。」


ガチャ


タッタッタッタ……



…バタン


ザー


希「………っ」

希(雨……かぁ………)

希(確かに久しぶり……)

希(………今日は窓、開けられない…な……)

希(あ、ドアも閉まってる…なぁ……)

希(なんだか…空気がこもって……)


『ガサガサガサ………ガサガサガサガサ』



希「………っ、」



『ガサガサガサガサ!!!ガサガサガサガサガサガサガサ!!!』



希「……っ、な……なに………こんなに……」




ーーーーーーードクンッ




希「…っ、………?!」


ドクッドクッドクッドクッ


『ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ』


希「うっ……けほっ……」


『ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ』


希「けほっ、はっ………はぁっ……」ガタガタ

希「う………うう……はぁっ、はっ……」ガタガタ


『ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ!!!ガサガサガサ!!!』


ドクンッドクンッドクンッ



希「な…に……これ………けほっ、はっ…はっ………」ガタガタ

希「や…だ……なに………けほっ、げほっ……」ガタガタ


ノソ……ノソ………ヨジヨジ………ウネ……


希「ひっ…嫌………やだ、やだぁっ……」ポロポロ

希「う……うう…………やだ……やだ……」ポロポロ

希「こないで……こないで……!!!」バシッバシッ

希「はぁっはぁっ………」ガタガタ


希(なんで……っ、こんな急に………)

希(本当はいない……いないから、消えて、消えて………!)

希「だれ…か…………えり………」ポロポロ



『いいかい、絵里ちゃんに頼りすぎてはいけないよ?』



希「う………」ギュ…

希「でも……でも………!」ポロポロ

『ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ』

希「ひっ………やだ………う……うう………」ポロポロ

希「はぁっ……はっ………けほ………」ガタガタ


『『ふふ……』』


希「………っ、」ポロポロ

希「………理事…長…………?」ポロポロ


『『…これからもっと痛いことするわね?理不尽に痛いことばっかり東條さんに押し付ける。東條さんはそこから逃れられない。助けも来ない。狂ってもだめ。』』


希「う……あ…………」ギュウ…

希「ぁ………あ…………」ポロポロ

希「やだ……ここ………出られない……?」ポロポロ


希「はっ……はっ……はぁっ………」ポロポロ


希「雨だから…外には出れなくて……全部閉まってるから…だめで………え、あれ……」ポロポロ

希「………っ、げほっ、けほっ……うあ……」ポロポロ

『ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ』

ドクンッドクンッドクンッドクンッ

ウネ……ウネウネ………ヨジ…………ヨジヨジ


希「う……嫌…ぁ………けほっ、げほっ……」ガタガタ

希「はぁっ…はぁっ…はぁっ……」ポロポロ


ウネウネウネウネッ


希「ぁ……や…だ………やだ……耳に………っ」ポロポロ

希「はぁっ…はぁっ、やだ…入って……こないでよ………っ」グ…

希「う……うう………いや……嫌………」ポロポロ


……ポロッ


希「………っ」

希「え…………」ポロポロ


希「あ……え………?」ポロポロ



希「……いや…これ、幻覚……あれ………?」ポロポロ



『『あらら…耳の中入って、出てこなくなっちゃった?ふふ…いま入ったのはね、ゲジゲジってよく呼ばれてる虫…よく花壇とかで、見たことあるでしょ?』』



希「ぁ…………」ポロポロ



希「ぁ………あ………」ポロポロ




希「嫌ああああああああああっ!!!!」ポロポロ




絵里「希っ?!!?」ガチャッ


希「やだっ……やだぁっ、嫌………!!」ブンブン

絵里「ど、どうしたの……えっ、」

希「やだ……やだ………」ポロポロ

希「う……けほっ………ううう………」ガタガタ

絵里「これ……なに、なんの虫よ……」

絵里「死んでる……?」

希「はっ……はぁっ………けほっ………」ポロポロ

絵里「……っ、希……!」

希「やめてっ、やだ、やだ………」ブンブン

絵里「希……のぞみ!!私よ、絵里よ……!!」ギュッ

希「………っ、やだ…やだ……はっ……はぁっ……やだ………」ポロポロ

絵里「希………」

希「やめて!!ここから出して…やだ……やだぁ………」ポロポロ

絵里「……っ、ナースコール、しないと…!」ピッ

『どうされましたか?』

絵里「希が!!パニック起こしてて…すぐ来てください!!!」

『、西木野先…『………っ、すぐ行くよ!』ガチャ




タッタッタッタ……ガチャッ

『……っ、大丈夫?!』


絵里「希……っ、のぞみ………!」

希「はぁっ……はぁっ………う……うう」ポロポロ

『…………っ、何があったんだい?』

絵里「それが……よくわからないんですけど、多分この虫が………」

『……なんでこんな虫が………っ』

希「もう……やだ…………やだ……っ」ガタガタ

希「もう……………っ」ポロポロ

絵里「………っ、噛んじゃだめ!!!」ギュッ

希「うっ………けほっ………絵里……?」ポロポロ

絵里「………!そう、そうよ、絵里よ…ねえ、希………っ!!」

希「………っ、けほ……けはっ…」ポロポロ

希「…、やだ……やだ…………」ガタガタ

絵里「希………」ジワ…

『…っ、ごめんね、絵里ちゃん……また、希ちゃんのこと、抑えててもらえる?』

絵里「………っ、はい………!」

『…ごめんね、希ちゃん…………』

希「やだ……やだよ…こんな………っ」ポロポロ

絵里「希…ごめんね、ごめんね………」



『…………、…はい、打てたよ。』

絵里「希………のぞみ、大丈夫…もう大丈夫だから……」ポンポン

希「はぁっ………はぁっ………」ポロポロ

絵里「大丈夫………」ポンポン

希「は………は………」ポロポロ



希「う………」カクッ




希「………」スー…スー…


絵里「希……もう、寝ちゃった。」

『……寝不足だったのかな、薬の効きが普通より早いみたいだ。』

絵里「真姫のお父さん………」

『………?』

絵里「あの……」

絵里「希……よくなりますよね、今はまた少し悪くなってるけど、段々…また、よくなりますよね。」

『あ、ああ………』

『…………』

『……精神科の先生と、少し話してみるよ。とりあえず今日は…このまま寝かせてあげて。』

絵里「はい…わかりました。」

絵里「希のこと……よろしくお願いします……」

『ああ……』


絵里「………」

----
---
--

チュンチュン……チュン…


絵里「………」バサ…


絵里「んん……ん………」

絵里「晴れてる………」

絵里「…………」


希「……おはよ、えりち。」

絵里「……っ、希……起きてたのね……」

絵里「……おはよう。」

希「うん……」

希「………」


絵里「希…?」


希「あのね……昨日の、……ごめん。」

絵里「……っ、いいのよ。全然気にしてないから。」

希「ありがとう……ごめんね……」

絵里「謝らないで。希は何も悪くないでしょう?」

希「……、そうやね……」

絵里「…でも……何があったの?虫がいたから?」

希「……それも、そうなんやけど……」

希「自分でもよく…わからないんよ。」

希「…なんだか、雨が降ってたから……ここから出られない気がして。」

絵里「えっ…?」

希「あはは……よくわかんないよね……」

希「………」

希「……、どうしたらいいんやろうね……」

絵里「希………」

希「…、ふふっ……そんなん言われても、困っちゃうよね。」

希「うーん…とりあえず雨の日は…扉を少し、開けておいてもらえると…なんだか安心できるかも。」

絵里「………」

絵里「…わかったわ。」

希「……ごめんね、」

希「早く…良くなりたいんやけど、やっぱりなかなか…難しくて……」

希「…ごめん………」

絵里「……だから、謝らないで。そんなの当たり前よ…ゆっくり治していきましょう?」

絵里「焦らなくていいから……ね?」

希「うん……」

希「……でも、その……あのね……」

希「………もう、申し訳なくて。」

絵里「えっ……?」

希「えりちに迷惑かけるの…申し訳なくて……」

希「……うち、多分もう…音ノ木、卒業できないと思うんよ…このままだと、少なくとも留年は免れない…」

希「…でも、えりちはまだ、間に合うと思うから……」

希「だから……」

絵里「大丈夫よ、それは。」

希「えっ…?」

絵里「…希の留年については、会議が開かれることになっていて…にこがそこで、絶対説得してくれる。希を留年になんて…させないって、言ってくれたから。」

絵里「…私のことも、ついでになんとかしてくれるって。」

希「にこっちが……」

希「でも………」

絵里「…もう……希、そんなこと、気にしないで?」

絵里「大丈夫よ。全部なんとかなるから…これからは、全部良いようになっていくから。」

絵里「ね……?」


希「………」

希「うん………」


絵里「希………」


絵里「……ねえ、これ…希が持っていた方がいいわね。」ガサ…

希「………?」

希「あ、それ………」

絵里「…ふふ、希のお守り……これね、すごいのよ。にこが貸してくれたんだけどね…」

絵里「…これをもって色々調べていたら、大事なことが…色々判明して、」

絵里「これをもって倉庫に行ったら、希と一緒に出ることができて。」

絵里「これをもって…希が起きるように願ったら、希の目が覚めたのよ。」

絵里「ふふっ…ね、すごいでしょう?」

希「えりち……」

希「………」

希「………そりゃあ、うちの手作りのお守りやからね…効果は抜群に、決まってるやん…?」

絵里「ふふ…考えてみればそうね、」

絵里「これ…無くさないように、よいしょっと………ふふ、こうやって、希のスマホに…つけておきましょ。」

希「自分のスマホに自作のお守りつけるって、なんだか変な人みたいやなぁ…」

絵里「…ふふっ、希は前から、変わってるじゃない。」

希「えりち…ちょっとそれ、どういう意味~?」

絵里「ふふっ、うふふ…」

希「もー……」


コン コン …ガチャ


『希ちゃん?』


希「あ、真姫ちゃんのお父さん…」

『…おはよう。顔色、少しだけ良くなったね。』

『……今日、検査の予定だったけど…予定通りやるんで大丈夫かな?変えようと思えば変えられるんだけど……』

希「……大丈夫です、お願いします。」

絵里「希……大丈夫?」

希「うん…もう平気。昨日はあんなんやったけど……なんだか、よく眠れたから…」

『……そっか。じゃあこれからやるんで大丈夫かな?1日がかりになるけど…頑張ろっか。絵里ちゃん、今日1日…希ちゃん、借りてくね。』

絵里「あ、はい……希、行ってらっしゃい。」

希「うん……行ってくるなぁ。」



ガチャン


絵里「………」

絵里「検査…か……」


『…ただ、もう少し下の方も…色々、毒が抽出されたり、影が見えてね……その、中にいた物は取り除いておいたけど…』


絵里「………っ」


『……まだわからないが、その器官の機能は失われてるかもしれないから…目が覚め次第、検査が必要。』


絵里(……その器官って……)

絵里(…そういう、ことよね……)


絵里「………」




『希……!』

『…なぁん?』

『その……私、私ね………』

『うん……?』

『………っ、これ、μ'sのアンケート?』

『そうやけど……』

『………』


<将来の夢を教えてください。>

[巫女さんか幼稚園の先生!ちっちゃい子が結構好きなん♡将来はたーくさんベビちゃんがほしいですっ!]


『えりち…?何か話が……』

『……っ、ううん……なんでもない……』

『………?』

『ふふ、なんでもない…から。それより練習、早く行きましょ?』



絵里「希………」

絵里「………」

絵里「…そう、希は、ちっちゃい子が大好きで……子供がほしいって、ベビちゃんがほしいって、だから……」

絵里「……だから私は、諦めたんだから……全部、全部………」

絵里「………」


絵里(……神様、お願いします。)

絵里(私は……いいから。私はいらないから、だから……)



絵里(希のことーーー)


----
---
--



コツ…コツ…コツ、

シャシャッシャ……


希「うう…やっと終わった……」

『はは…長くなってしまってごめんね。今日はもう疲れたろう。精神科の先生にも今日は診察は断っておくから、ゆっくり休んでね。』

希「……っ、すみません、つい……私、車椅子押してもらって、至れり尽くせりだったのに……」

『いやいや、いいんだよ、全身の検査をしたんだから、当たり前さ……っと、ついたついた。』

『…じゃあ、また何かあれば気兼ねなく呼んでね、忙しくて難しいときもあるけど、できるだけ駆けつけるから…』

希「…、ありがとうございます。」


希「………っ、あ、あの、精神科の先生のこと、なんですけど……」

『ああ、あの先生…あの先生がどうかした?』

希「……えっと、あの………」

希「えっと……」

『………?』


『……あの先生ね、ずっと前からμ'sの、特に希ちゃんのファンだって言ってて…事件が起きた時は大変心配していてね……』

『…精神科の先生の中でも、特に評判が良くて…経験も、僕よりずっとあるから……こちらからお願いしたんだよ。希ちゃんのこと…ピッタリだと思って。そしたら快く引き受けてくれてね…』

希「……っ、そう…だったんですか……」

『ああ。僕も何度かつらい時期に助けてもらって、とてもいい先生だと思ったんだが……何かあった?』

希「……っ、……」

希「………、いえ……なんでも…ない、です………」

『………?そっか………』

『…あ、じゃあ絵里ちゃんも待ってると思うし、僕も仕事があるから…今日はここまでで。お疲れ様。ゆっくり休んでね。』

希「あ、はい……」



ガチャ


絵里「……!希、おかえり。」

希「………ただいま、えりち。」

絵里「疲れたでしょう?ちょっと待ってね、今紅茶淹れるから……」



トクトクトクトク………


絵里「ふふ、このマグカップね、亜里沙が誕生日にってくれて……希とお揃いなの。」

希「そう…なんや……嬉しいなぁ。」

希「………っ」



トクトクトク……



希(……なんやろ、これ…なんだか………)

希(前にも………)


絵里「……っと、ふふ、いい匂い。」

絵里「…はい、希。これ…飲んで?」


『『はい、東條さん。これ…飲んで?』』


希「………っ、ぁ………」

絵里「希……?大丈夫……?」

希「うっ……えりち、ちょっと、待っ………」

ドクッ ドクッ ドクッ ドクッ


『『ここに水を入れてっ…と。あらら、手が滑って………さっき東條さんに飲ませた物も混ぜちゃった。…ふふ、わざとじゃないのよ?』』


希「う………あ………」

絵里「希……?」



『『いいからのみなさい。』』




ドクンッ




希「ぅ………」

希「……っ、いや…っ」ドンッ



ガチャンッッ



絵里「う………っ、つ、痛た………」

絵里「あ………」


希「………っ、あ………」

希「ーーっ!!?!」

希「ごめんっ、ごめん……!!ごめんなさい…っ、怪我してない?どうしよう……折角亜里沙ちゃんが、誕生日に………っ」

絵里「…っ、触っちゃだめ!!!」

希「…っ、」



絵里「…っ、あ………」

絵里「…えっと、ごめん……危ないから、触っちゃだめよ……」

絵里「…大きな声出して、ごめんね……怪我は…お互いなさそうね。今、ちりとり……持ってくるから。」

希「えりち………」

希「ごめん……ごめんね……折角、もらったものなのに………」ジワ…

絵里「希………」

絵里「……仕方ないわよ、ごめんね…何か怖かった?」ポンポン

絵里「ちょっと片付けるから……もうすぐ消灯時間だし、先に寝てても…いいからね。」


ガチャ


希「………っ」ポロ…

希「う…………ぐすっ、」ポロポロ


希「…なんで………」ポロポロ


希「なんでよ………!」ポロポロ

希「なんなんよ……これ………」ポロポロ

希「もう理事長はいないのに……ここは倉庫じゃ…ないのに。」ポロポロ

希「助かったのに………いつまでこんな…」ポロポロ



『ガサガサガサガサガサガサガサ!!ガサッ!!!』



希「………うっ、」ポロポロ

希「はぁっ……はっ………」ポロポロ

希「………っ」ブンブン


『ガサガサ……ガサガサガサガサ!!!』

ヨタ…ヨタ………ノソノソ


希「う……あ………」

希「……なん…でっ」ブンブン

希「こんな………」ポロポロ

希「ぁ……這ってる……う、ぐ………」ポロポロ


希(もう、やだ……)

希(気持ち悪い…気持ち悪いよ……)

希(つらい………)


『ガサガサガサガサ!!!ガサガサ!!!』


希(些細なことでこんな風になって)

希(えりちに迷惑かけてばっかりで)

希(こんな迷惑…かけたくないのに……っ)



ヨジ……ヨジ………ウネウネ

『ガサガサガサガサッガサガサ!!!』


希「はぁっ、はっ……うう……」ポロポロ

希「やだ……もうやだ………」ブンブン


『ガサガサ………ガサガサ』


希(段々良くなるって、いつ………?)

希(……大体、あんな事件があったのに…元通りになんて、戻れるわけない)

希(楽しかった、あの頃には………)

希「………っ」ブンブン


『ガサガサガサガサガサガサガサガサ!!!ガサガサガサガサ!!!』


希「けほっ……げほっ、うう………」ポロポロ

希「はぁっ……はぁっ……」ポロポロ



『ガサガサ』 『ガサガサ』 『ガサガサ』



希(えりちが戻ってくるまでに、元通りにならないと…謝らないと、また…迷惑、かけちゃうのに……)

希「うう………う……けほっ、」ポロポロ


『ガサガサガサガサ』

『ガサガサガサガサ』

ウネウネ!!ソロソロ………ッ


希「や…だ………はいってこないで……」ガタガタ

希「う………うう………はっ、はっ…」ポロポロ

希「やだ………もう、やだぁ……」ポロポロ


希「………っ、そう、だ……」ポロポロ

希「つらいときの薬……」ポロポロ


ガサ…


希「………」ポロポロ

希(えりち…ごめん、ごめんなさい……私が…うちが、悪いのに………)

希(明日……ちゃんと、謝るから…だから……)

希(今だけ……)



希「水………」

希「………、…いっか……」



希「………っ」ゴクッ

希「…………」



『ガサガサ………ガサガサガサガサ!!!ガサガサガサガサガサガサ』







グニャ



希「……うっ、」フラ…


希「う…あ………」フラッ



希(何…これ……気持ち悪………)






バタッ……





希「………」スー…スー…




---
--


絵里「ちりとり……ちりとり、」


絵里(どこかしら…受付で言えば貸してもらえる…?)

絵里(早く戻らないと……きっと希、ショックを受けてる……)

絵里(…それから亜里沙にも、謝らないと………)


絵里「え、…あれって………」




亜里沙「あっお姉ちゃんー!!」


タッタッタッタ…

絵里「亜里沙……?なんでここに……」

亜里沙「えへへ、雪穂と遊んでた場所が、ここの近くで…寄っちゃった。もうすぐ消灯時間だとはわかってたんだけど、会えてよかったあ。」

絵里「そうだったの…」

亜里沙「そうそう…あっ、お姉ちゃん、腕の火傷…大丈夫?それから希さんも、体調良くなった?亜里沙すごい心配で……早くお見舞い、したいなぁ。」

絵里「腕はもうほとんど大丈夫よ。希は……」


絵里「………、希は………」


亜里沙「……お姉ちゃん…?」

絵里「……っ、大丈夫…希も少しずつ、良くなってるから……」

絵里「あ、あと……亜里沙、…あのね、」

絵里「亜里沙がくれた、マグカップ……片方、割れてしまったの……ごめんなさい。」

亜里沙「マグカップ……ああ、誕生日にあげた、希さんとお揃いの……」

亜里沙「………そっか。少し残念だけど…物はいつか壊れちゃうから、仕方ないね……」

絵里「………そうね…」

絵里「………、」


亜里沙「お姉ちゃん……」


亜里沙「………」

亜里沙「……ふふっ、もう……お姉ちゃんって、素直すぎるよ。」

絵里「えっ……?」

亜里沙「えへへ…亜里沙だったら、貰い物が壊れちゃったら…謝る前に、お店に行って…同じものがないか、探しちゃうなぁ。」

亜里沙「ふふ、ほら…あげたときに、袋にはいっていたでしょ?あれにお店の名前も書いてあるし……なんなら、はい!」

絵里「これは……?」

亜里沙「ふふっ、そのお店のクーポン。二個買ったらくれたの!次買うときは10%オフですよーって!でも亜里沙は使わないから…お姉ちゃんにあげる。」

絵里「亜里沙……」

亜里沙「えへへ、今のは聞かなかったことにするから…今度、こっそり買ってきたらどうかなっ。希さんも、その方がきっと喜ぶよ!」

絵里「……っ」ジワッ

絵里「亜里沙……」

絵里「………、…ありがとう。」

亜里沙「ふふっ…うん!」

亜里沙「あ、そろそろ帰らないと遅くなっちゃう…じゃあ亜里沙は、もう行くね!」

絵里「ええ…またいつでも来て。待ってるから。」

亜里沙「うん!希さんにもよろしく言っておいてね!それじゃっ」


タッタッタッタ……




絵里「亜里沙……」ポロ…

絵里「………っ」ゴシ




絵里「…っあ、もうこんな時間……はやくちりとり借りて、希のところに戻らないと……」

絵里「受付…まだやってるわね。」


絵里「すみませーん!」


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-----
----
---
--







真姫「…とうとう今日の放課後、ね………」

花陽「うう…緊張する……」ガタガタ

凛「にゃあ………」ガタガタ

にこ「……っ、だ、大丈夫よ…!」

にこ「花陽の案の通り、きちんと主張をまとめて、かつわかりやすく!こうやって資料として…プリントにもまとめたし…!」

にこ「署名なんか……穂乃果!見せてちょうだい!」

穂乃果「うんっ!はいっ、にこちゃん!」

にこ「ほらっ、こんなに…ええっと、いくつ溜まったんだっけ?」

穂乃果「えっとね…238個!」

にこ「ほら見なさい、238個…って、ええ!?それって希と絵里を抜いた全校生徒分じゃないの!!」

穂乃果「ふふっ…うん!!ヒデコとフミコとミカが、手伝ってくれて…あの3人、すごいんだよ!あっという間に全員分……」

海未「あの3人は…流石ですね……」

にこ「流石っていうか…怖いわもう……味方で良かったけど……」




真姫「じゃあほら、昼休みのうちにもう一度一から確認しときましょ…とりあえず会議のはじまりは15時だから……」

にこ「ええ………そうね、じゃあまず……」



真姫「……………はどうかしら。」



にこ「………難しいわね、でもそうきたらその返しでいいと思うわ。」



凛「うーん……そこはもう押し切るにゃ。」



花陽「そこは……」



海未(………)

海未(……これだけ準備してるんです、こちらの方は、みんなで押し切れば、きっと………)

海未「……っ、もう13時ですか……」

海未(……確か裁判が始まるのは、14時だったはず……)

海未(………あと1時間後、ですか……)

海未(………)



海未(ことり………)

海未(……大丈夫、でしょうか………)



『私、海未ちゃんがいないと…いつもおかしな方向に考えちゃって……ダメダメだ……』



海未「………っ」

海未(…、大丈夫……ですよね、これは私の、傲慢で……ことりは、ことりなら………)



海未「………」


----
---
--



『それでは次に、情状証人としてーーー』


ことり「はい……」ガタ



コツ…コツ…コツ



ことり「………」

ことり「………」スー…ハー…


ことり(大丈夫……大丈夫。)


『それでは2つ質問させて頂きます。まずはじめに…貴方にとって、被告がどんな存在だったか、どんな人物だったかを教えてください。』

ことり「はい……」

ことり「………っ」


ことり(……緊張して、声が震える……)

ことり(…お母さん………)


理事長「………」

理事長「………」ニコ…


ことり「………っ、」

ことり(今……一瞬………)

ことり(……ううん、ちゃんとやらなきゃ……)

ことり(………この質問は、まだ……)



ことり「……お母さん、は……」

ことり「……お母さんは、私にとって…理想の母親でした。」

ことり「私が随分小さな頃に、お父さんが出て行って…」

ことり「それからは女手一つで、優しく、かつ厳しく…育ててくれました。」

ことり「学院の理事長としてしっかり仕事をこなしながら…私のこともしっかり育ててくれて…なんでもできる、自慢の母でした。」

ことり「愛情も…たくさん、注いでもらったと思っています。」

ことり「気持ち悪い虫が好きだったり……夢中になりすぎると、周りが見えなくなるようなことはあったけど……」

ことり「……でも、それでも少し変わってるなぁ、くらいで…私が何かされたことはなかったし、誰かに迷惑をかけるようなことも…なかったと思います。」



理事長「………」

理事長「ふふ………」



ことり「ーーー、ーーーー」


理事長(…弁護士が、ここでのやりとりは…あらかじめことりと決めていると言っていたけど…)

理事長(うふふ…今の回答は、初めに聞いていた通り。上出来よ、ことり。)


ことり「ーー、ーーー。」


理事長(きっと寂しい思いをしてたでしょう…髪、そんなに短く切って……周囲からの圧力が酷かったのかしら……)

理事長(……でも大丈夫。私が…私だけは、ことりとずっと一緒に…いてあげるから。)



『ふむ……じゃあ次です。次で最後ですが……』

『被告の処罰に関して、どのような配慮を望みますか?』

『責任能力の有無など…思うところを聞かせてください。』


ことり「…………っ」

理事長「………」


ことり(お母さん……)

ことり(……弁護士さんとは…お母さんは最近精神的におかしな部分があった…とか、殺意を持ってしていた訳では絶対ないとか…)

ことり(……なんだか少し忘れちゃったけど、そういうことを話す手筈に…なっていたはず。)

ことり(…きっと、お母さんも………)


理事長「………」コク…

ことり「…………っ」


ことり「…………」

ことり(でも、だめだよ……そんなの。お母さんは、ちゃんと償わなくちゃ…希ちゃんをあれだけ苦しめたんだもん、ちゃんと……)

ことり(それが私にできる、唯一の………)

ことり「………」

ことり「……お母さんには、せーーー」



『ふふ…ことり。よしよし、高い高ーい!』



ことり「………、……っ」

ことり(お母さん……)

ことり(……っ、だめだめ、言わなきゃ……)

ことり(言わなきゃ、言わなきゃ………!)



ドクッ…ドクッ…ドクッ…


ことり「………っ、」




『ねえねえ、お母さん!』

『ふふ、なあに?』

『どうしてことりには…お父さんがいないの?』

『海未ちゃんにも、穂乃果ちゃんにも…お母さんだけじゃなくて、お父さんもいるのに。』

『どうしてことりには、お母さんだけなの?』

『ことり……』

『………』

『………ふふ…実はね、お母さんは…お母さんだけど、お父さんでもあるの。』

『えっ……?』

『お母さん、毎日お仕事に出かけるでしょう?もちろん穂乃果ちゃんのお母さんも仕事はしてるけど、それはお饅頭屋さんだから。』

『普通のお父さんはほら…お外に仕事に行くものじゃない?それでお母さんは、子供と遊んだり…家事をしたり。』

『ふふっ、ねえ…考えてみて?お母さん、どっちもしてるでしょう?』

『ほんとだ……!』

『そう…だからね、ことりにはお母さんがいれば大丈夫なの。お母さんはすごいから、お父さんみたいに仕事もできるし……ほら!』

『わぁっ、ふふ、高い高い!』

『ふふっ、穂乃果ちゃんのおうちが、お母さんとお父さんと…2人分のだいすきをあげるなら…』

『…ふふ、ことりのお母さんは……1人で2人分、だいすきをあげるからね。』

『………だから、大丈夫よ。』

『お母さん…』

『えへへっ………うん!お母さんはすごいなぁっ、2人分なんて!』

『ことりも大人になったら、お母さんみたいになりたいなぁっ!』

『ふふ…なれるわよ。だって……』





『………だってことりは、お母さんの子だもの。』



ことり「………っ」ジワ…

ことり「ぅ…………っ…」ポロ…


理事長「ことり……?」


ことり「…………」ポロポロ

ことり「おかあ…さん……」ポロポロ

ことり「………っ」ブンブン

ことり(だめだよ……言わなきゃ、言わなきゃ………!)

ことり「………っ、おかあ…さん…にはっ、せ………っ」ポロポロ

ことり「せ………」ポロポロ


ドクンッ ドクンッ ドクンッ


ことり「うう………っ、ぐすっ……」ポロポロ


『南さん?南ことりさん?あの………』


ザワザワ……



ことり「………………っ」ポロポロ

ことり「…っ、ちょっと、待ってくださ……」ポロポロ

ことり「お母さんには!!せ………っ」ポロポロ

ことり「………」ポロポロ


ことり「………っ、」ポロポロ

ことり「なん…で………」ポロポロ

ことり(言えない………)

ことり(言わなきゃいけないのに、なのに………っ)

ことり(なんで…………)

ことり「う………ぐすっ、う……うう………」ポロポロ


理事長「………、」


ことり(希ちゃん……絵里ちゃん………みんな………)

ことり(やっぱり……私…………言えないよ……)

ことり(ごめんね………)

ことり「………っ、ごめん、ね………」ポロポロ

ことり「うう………」ポロポロ


ザワザワ……



ことり「………」ポロポロ


『え、ええ…と、それでは次に………』





「ーーーーちょっと待ってください!!」





ことり「…………っ、えっ……?」ポロポロ


「…はぁっ……はぁっ………」


『ちょっと君、傍聴席でのーーー』


「………っ、すみません……わかっています。……でも、ことりは待ってくださいと言っていたので……」

「…もう、声は出しません…失礼しました。」


ドサ……



ことり「うみ、ちゃん………?」ポロポロ

ことり(海未ちゃんがいる………)

ことり(来てくれたんだ…私のこと、きっと、しんぱい、して………)

ことり(でも……私……やっぱり最低で………言えな…)


海未「………」ニコ…


ことり「…………っ、あ………」ポロポロ

ことり(………海未ちゃんの、笑顔……)

ことり(さっき見たお母さんの笑顔より、ずっと…ずっと………)

ことり(…なんでだろう。)

ことり(安心……できる………)


ドクン ドクン ドクン



海未「………」


ことり(海未ちゃん………)



ドク ドク ドク


ことり「………」ポロポロ

ことり「…………っ」ゴシ…



ことり「………」スー…


ことり「………」ハー…



…………トク……トク……トク……



ことり「………」

ことり「……取り乱して…ごめんなさい。」

ことり「…お母さんには…責任能力がありました。それは間違いありません。」


理事長「………っ、?!」


ことり(…………っ、言える………!)


海未「………」コク…


ことり(海未ちゃん…………)

ことり(海未ちゃんが、いるから…かな……)

ことり(……1人で大丈夫だって、思ってたけど…やっぱり、駄目だったんだ……)

ことり(それを海未ちゃんは、わかってて……)


ことり「………」


ことり(言わなきゃ……)



ことり(もっと、ちゃんと……最後まで………!)



ことり「……確かに、睡眠薬は度々飲んでいました。だけどそれは、先に言ったように…お母さんには、夢中になると周りが見えなくなるところがあって…」

ことり「そういう時に、睡眠そっちのけになってしまうことが、多々あったので…昔からよく飲んでいたんです。最近特別何かあったわけではありません。」


理事長「………っ」


理事長「……なん…で………」ボソッ


ことり「……それからお母さんは…間違いなく、…被害者に、殺意を持っていたと思います。」

ことり「見たことがあるんです。お母さんが…虫をじわじわ殺して……笑っているのを。」

ことり「お母さんは……生き物を苦しめて殺すことに、快感を覚えていたのだと思います。」

ことり「私は、少しだけ…お母さんと被害者とのやりとりを耳にしましたが、」

ことり「その時聞こえたお母さんの笑い声は………」




『ふふっ……あははっ……ふふふふ……』



『希!!!のぞみ、がんばって…もう少し、もう少しだから、っぐ……ぁ"……がはっ』


『……ぅ"っ…ぁあ"あ"っ、無理……無理……げほっ、がはっ………かはっ、けほっ……』

『死なせて……!!』




ことり「……っ、」

ことり「………」

ことり「笑い声、は………」

ことり(……っ、口が…震えて………うまく言えない……)

ことり「………っ」

ことり(……っ、だめだめ、みんなも今きっと…頑張ってるんだから……)

ことり(……だから私も、頑張らなくちゃ………)

ことり「………」


ことり「…………わらい、ごえ、は……まさに、虫を殺そうとしていたときの声……そのものでした。」


ことり「だから……」


理事長「………ちょっとまって。」



ザワ……


ことり「………なあに、お母さん。」


理事長「…もういいわ。ことり、寂しい思いをさせてごめんね?疲れているんでしょう。」

『被告、証人の言葉を遮るのはーーー』

ことり「ううん、私…寂しい思いなんて、してないよ。」

ことり「だって私には…μ'sのみんながいるから。だから大丈夫。心配しないで。」

理事長「でもーーっ」

ことり「あのね、お母さん。」

ことり「………皆さんも、聞いてください。」

ことり「情状証人である私の意見が、どこまで裁判に影響するのか…私にはわかりません。だけど……」


ことり「…ねえ、お母さん。お母さんがしたことは…死刑でも足りないくらい、酷いこと…だよ。」

ことり「たった7年なんかの懲役で、足りるわけがないの。」

ことり「だって、考えてもみてよ…自分がしたこと。電気を流して…傷口に塩を塗って……ムカデを大切なところに捩じ込んで………っ、」

ことり「……それも、抵抗できないように拘束してだよ!!」

ことり「自分の欲求のために、そんなことするの…人がやることじゃ、ないよ……」

ことり「…検事さん、裁判員さん、裁判長さん、傍聴席の皆さん……それに、弁護士さん。」

ことり「それがどんなに恐ろしいことか…想像したらわかるはずです。お母さんに弁護の余地なんて無いこと…7年なんかで足りるわけがないってこと…!」

理事長「………っ、なんで……」

ことり「ごめんね、お母さん。だけど私、許せないの。大切な友達に、そんなことをした…お母さんのこと。」

ことり「……それから気付く機会はたくさんあったはずなのに、ずっと見ないふりをして……行動を起こさなかった自分自身のこと。」


理事長「…っ、ことり………」


ことり「……私ね、お母さんのこと…大好きだったよ。ううん…本当は今でも大好き。」

ことり「…でもね、」


ことり「………おかした罪は…償わないと、ダメだよ……」

理事長「………っ」

理事長「ことり……」

理事長「…………」

理事長「…はぁ……いいわ、続けて?」


理事長(…これは最悪のパターンね、まさかことりがこんなことを言い出すとは思わなかった。)

理事長(大方、さっき傍聴席から声を上げた園田海未に唆されたんだろうけど…)

理事長(……でも、もういいわ。割り切るのも大切なこと。ここは反省してるように見せて、無期懲役になろうがなんだろうが、なるべく早くここから出てみせる。)

理事長(それに刑務所暮らしも無しではないわね、理事長という仕事に終われることもないし…楽しい思い出はたくさん作ったんだから)

理事長(定期的にことりは会いに来るだろうし…ね。)

ことり「……ねえ、お母さん。」

理事長「……なにかしら?」

ことり「お母さんは1つ…勘違いしてる。」

理事長「え…?」


ことり「……、あのね…お母さんを通報して、警察に突き出したのは……私、なんだよ。」

理事長「………っ、」

理事長「………うふふ…まさか。ことりにそんなこと……」

ことり「できるよ。」

理事長「……っ」

ことり「…お母さん、お母さんは多分、気づいてないんだろうなぁって、ずっと思ってたけど……やっぱりそうなんだね。」

理事長「気づいてない…?私が?」

ことり「………、………そうだよ。だから私が、教えてあげる……」

『…あの、南さん、そろそろ……』

ことり「…ごめんなさい、これだけ。」

理事長「………」

ことり「…あのね、お母さん。私は確かに…お母さんのことが大好きで、甘えん坊で、依存してた…と思う。」

ことり「だけどね、」

ことり「……本当に私のことが大好きで、依存してたのは…お母さんの方なんだよ?」

理事長「………っ、え……?」

ことり「…私達、依存しあった親子だったね。…でもね、それはもうおしまい。希ちゃんにあんなことしたんだもん。…こんなことで、私達がしたこと、償えるわけ、ないけど…でも、やっぱり……」ジワ…

ことり「………っ」ポロッ

ことり「………」ポロポロ

理事長「ことり……?」

ことり「う……ぐすっ…………」ポロポロ

『あの、南さん、もう………』

ことり「…っ、ごめんなさい……あと少しだけ………!」ポロポロ

ことり(…はやく、言わないと……たくさんの人に、迷惑が……)

ことり「………っ」ポロポロ



海未「……、…!」

ことり(……っ、海未、ちゃん………?)

ことり(何して………)


ことり「…………、!!」ポロポロ


海未「…、…、…、…、…、…」

ことり(わ、…、し、た、い、が…)

海未「…、…、…、…、……!」

ことり(つ、い、え、ま、す……?)


ことり(……っ、私達が、ついてます……)

ことり「海未、ちゃん……」ポロポロ

ことり「………」ポロポロ

ことり「………ふふ、」ポロポロ

ことり(…そう…だよね、そうなんだよね、私……何回もそうやって、みんなが言ってくれてるのに……こうやって泣いてばっかりで)

ことり(本当に、ずるいな……)

ことり(………)




ことり(………私ができること…ちゃんと果たさなくちゃ)




ことり「………っ」ゴシ…

ことり「………」


ことり「…お母さん、お母さんが心の底から反省して、二度と私達9人の前に現れないようにしない限り……」




ことり「私達が会って会話をするのは……今日で最後。これでおしまいです。」




理事長「………っ、」

理事長「………、…え………?」


理事長「ちょっとそれ…、どういう………」

ことり「そのままの意味だよ、私は服役中のお母さんに会いには来ないし、お母さんが出所しても会うつもりはないの。」

理事長「何言って……ことりがそんなの耐えられるはずっ…」

『被告、私語は慎むように。南さんも、そろそろ…』

理事長「……っ、うるさいわね………ねえ、ことり!!」

理事長「貴女が会いに来ないなら…私から会いに行くわ。貴女が私と話してくれないなら…私は貴女の大切な人達に……っ」

ことり「………っ、それはだめ。」

理事長「……っ、」

ことり「最低だよ…お母さん。そんなことしたら、ますます私は…もう二度と、お母さんとお話はしないよ、笑い会うことも…二度とないよ。」

ことり「…今はまだギリギリ、お母さんのことが好きだと言えるけど……お母さんが反省しないなら…また同じことを繰り返したりしたら、」

ことりあ「私…お母さんのこと、大っ嫌いになるからね。」

理事長「…………っ、」

理事長「………」


理事長「……ど…う、して………」

理事長「……っ、どうしてそんなこと言うのよ!!ことりは私の娘で、貴女にとって私は親で、だからそんなの……っ」

理事長「……、冗談で言ってるなら…そんなのはもう、やめてちょうだい!!」

ことり「…冗談なんかじゃ、ないよ。それにもう決めたことだから……やめないよ。」

理事長「ことり………」

理事長「………っ、なん…で………」

理事長「はぁっ、はっ……はっ………」

理事長「なんで……なんでよ………」


ことり「…………」

理事長「どうしてよ!!!やめなさいよ、そういうことを言うのは!!」

ことり「お母さん………」

理事長「ことりっ!!!!」

ことり「………」

ことり「…以上で私の話を終わります。長くなり…裁判の進行を滞らせるようなことをしてしまい、すみませんでした。」



コツ……コツ、コツ……



『…………っ』

『つ……次、検察官側からーーー』



ことり(……これで………良かったんだよね、海未ちゃん。)

ことり(後は最後の手紙を、渡して………)


理事長「はぁっ……はあっ、はっ………」

理事長「何よ…どういうことなの、なんなのよ……」

理事長「………っ、はっ、はぁっ……」

ことり(お母さん……)

ことり(ごめ…………、ううん。)

ことり(謝らないよ…私。お母さんは、これでも全然、全然足りないくらい、酷いこと…したんだから。)

ことり(…これでお母さんを見るのも…最後になるかも、しれないんだね…)



コツ……コツ、コツ…

理事長「………っ、はっ……はぁっ……」



コツ……


ことり(お母さん………)

ことり(ううん、最後なんて…ならないよね、お母さんがちゃんと反省すれば…もう一度だけ、会えるんだから。)

ことり(信じてるからね……お母さん。)

ことり(だからその日まで……)



『ふふっ、ことり。』

『ことりはね…私の自慢の娘なの。』



ことり「……っ」ジワッ


ことり「………」



ことり「……さよう、なら……お母さん。」ポロ…




----
---
--


にこ「……ちょっと、いくらなんでも話通じなさすぎじゃない?この堅物教頭……」

真姫「しっ、にこちゃん、聞こえるわよ……」



花陽「ーーーー、ーーーー!」



にこ「………」

にこ(参ったわね…絵里、希、海未、ことり…説得に強いこの四人がいないだけで、こんなに難しくなるなんて……)

にこ(…っ、それに穂乃果は、こんな時に…どこに行ったのかしら……)



『にこちゃんごめん!穂乃果、少しここ、あけるね……』

『説得を続けて、無理そうなら…とにかく時間を稼いでほしいの。絶対…ぜったい、なんとかするから!』



にこ「………」

にこ(…そう言い残して行ったけど……そろそろ穂乃果がいなくなって1時間。会議全体としては…始まってからそろそろ3時間が経つ。)

にこ(教頭も、もう苛々があからさまになってきてるし………)


花陽「ーーー、ーーー!」


にこ「………っ、」

にこ(私と真姫で説明して、凛がそこを押してもだめで…)

にこ(…それで花陽がさっきからずっと、下手にでて、1から10まで説明して、こんなに頑張ってくれてるのに…)

にこ(……あの教頭、話、ちゃんと聞いてるのかしら……)

にこ「ほんっと、腹立たしいわね…」ボソッ


『あーはいはい、もうわかった、わかったよ、君たちの主張は。』

『私だって可哀想だとは思っておる。だがな、決まりは決まりだ。病欠が続いた人のために、数日伸ばした前例はあるが…丸ごと留年なしになんて、できるわけがないだろう。』


花陽「………っ、でも、希ちゃんは……!」


『東條さんは確かに気の毒だった。それは私だって心から思っておるよ。』

『…だがしかし、新理事長も言っているだろう。ここにいる教員全員が納得しない限り、そんな特例は認められないと……そうですよね、新理事長?』

『……っ、私は別に………ここに来たばかりの私が決めるのでは、よくないと思ったからそう言ったのです。しかし……』

『あーはいはいはいはい、とにかくだな、私がこの音ノ木では一番古くから教員をやっているんだ。全てを決める権利は私にある。だから……』

『…っ、しかし教頭先生、それではあまりにも……』

『そっちの新米教師は黙っておれ!』


花陽「………っ」ジワッ

凛「かよちん……」

真姫「………」

にこ「……っ、ねえちょっと、いい加減にして。いくらなんでも横暴すぎよ、そんなの!自分の思い通りに全ていかせたいだけじゃないの!!」


『……っ、ふはは…とうとう本性を現したな?教師にむかってタメ口とは……大体、職員会議に乗り込んでくるような輩の話なんて、まともに聞いたところで時間の無駄だ。』

『さぁ新理事長、そろそろ時間も遅いですし……』

『ちょ、ちょっと待って……やっぱりいくらなんでも………』

『え?なんですって…?』

『………っ、』

『…おわかりでしょう、新理事長。特例なんて出してみなさい……この先留年がかかった生徒が出るたびに、やれあの時はどうだった、やれこの時はどうだった…と、面倒なことになるだけですよ。』ボソボソ

『しかし………』

『幸い今回の生徒にはまともな身寄りがないのだから、ここは穏便にーーー』



ガラララッ



穂乃果「待って!!やっぱりそんなのおかしいよっ!!!!」


『な、なんだね君は……いきなり大声を出して……』

穂乃果「はぁっ……はぁっ……」


にこ「穂乃果!!」

穂乃果「にこちゃん、時間かかってごめんね…ここまで繋いでくれて、ありがとう!!」

穂乃果「教頭先生。先生がいくら署名を見せて説得しても納得してくれないから、穂乃果ね…みんなのこと、連れてきたよっ!」

穂乃果「ねえにこちゃん!穂乃果達だけでだめなら……みんなも一緒に、ね!」

にこ「ちょっとそれ…どういう……」

穂乃果「みんな!校庭見てみて、すごいからっ!」

真姫「校庭って………ええっ?!」

花陽「な、なにあれ……っ」

凛「にゃぁあっすごい数だよっ!」




ワー ワー

『………っ、な、なんだあれは!!!』



ヒデコ「教頭~~~!!!希先輩を留年になんて、私達が許さないぞ~~~!!!!」

ミカ「そうだよ!!!ついでに絵里先輩も留年免除にしてくれなかったら、私達生徒全員で、デモを起こしてやるんだからっ!!」

フミコ「全員で200人はいるんじゃないかな……ねえ教頭!!言う通りにしないとこの人数で授業ストライキだってしてやるんだからね!」

「そうだそうだ!!廃校待ったなし!!!」

「大体、μ'sのおかげで廃校免れたのに、どういうつもりよっ!!」

「2人は生徒会だってずっと支えてくれて…教頭の仕事だって相当手伝ってたはずよ!!」

「2人を留年にするくらいなら~~教頭がやめろ~~~!!!!」

ワー ワー



凛「ちょ、ちょっと待って……よく見たら生徒だけじゃない、凛達のお母さんもいるよ!」

穂乃果「えへへ…全員に穂乃果が声をかけたわけじゃないんだけど、いつの間にか広がってて……」

真姫「ちょっと…あのタスキかけてるの……ママじゃないの!」



『真姫ちゃん~~安心して、希ちゃんや絵里ちゃんを留年になんてさせないわ!』

『ちょっと教頭先生、貴方がそういう出方をするなら、こちらにも考えがありますよ。西木野を相手にするつもりですか?』



『…………っ、』



「教頭!あんないい子にそんな仕打ちをするなんて、神様が黙っていませんよ!」

「まったく、私よりまだまだ青いのに、既にカチコチに頭が固まってしまっとるのか……!」

「音ノ木とは古くから関わりがありますが…神田明神としても、少し考えねばなりませんね……」



花陽「すごい……神田明神の人まで……」


『………っ、西木野の御夫人に…神田明神の神主まで……一体どうなっているんだ…っ』ボソッ

『……しかしですねみなさん!東條さんや絢瀬さんだけ特別に、というわけにはいかんのですよ……』

『それを言い出したら、病気で泣く泣く留年した子供達にどう説明するのです?何も留年した人全員が、非行を働いたり、留年になるような行動を自らとっていたわけでは……』




ツバサ「ちょっとその理屈はおかしいんじゃないかしら。ねえ、そう思わない?英玲奈、あんじゅ。」

英玲奈「ああ、まったくその通りだ、何もかもおかしい。」



『………っ、今度はなんだ、誰だあいつらは……!あの制服…UTXの生徒か!』


にこ「ちょ、ちょっと!!A-RISEまでいるなんて…穂乃果、一体どうやって……」

穂乃果「あはは…走ってたら偶然会ったから、声をかけたら…来てくれて。すごいよね、みんな嫌な顔一つせずに、こうやって集まってくれて……」



あんじゅ「病気の人なら、たとえどこの学校に通ったとしても、悲しいけれど最終的にそういう運命にあるわ……だけど、」

あんじゅ「希さんや絵里さんは、この学院に通わなければ……UTXに通ってさえいれば、あんな事件に巻き込まれることは無かったのよ。」

英玲奈「そうだ。そもそもあの事件はこの学院の元理事長によるものなのに、病気の人と一緒にするところから間違ってる。」

ツバサ「それについてはどうお考えで?教頭。」



『………っ、く………』


凛「教頭先生!それについてはどうお考えですか!?」

穂乃果「……っ、凛ちゃん……そっか。そうだよ、教頭先生!それについてはどうお考えなんですかっ?!」

にこ「そうよっ、あんたの考えをちゃんとわかるように教えてくれる?」

『く………ぐむむ………』

にこ「はやく!はやく言いなさいよ!」

凛「そうにゃ!あれだけ言ったんだもん、これぐらい、考えてたはずだよね?」

穂乃果「はーやーく!はーやーくう!」


『ちょ、ちょっと待て……ああ、もう……!どうしてこんな………!!』

『なんだっていうんだ!お前達は!!』






真姫「………終わりね。」

花陽「そう、だね……大体、真姫ちゃんちを相手にして……ただの教頭先生が、勝てるわけが……」

『そうね。』

花陽「新理事長……?」

『危ないところだったわ。何が正しいか、どうするべきかなんて明らかなのに……教頭の勢いと、大人の面倒臭い考え方のせいで……間違った選択をするところだった。』

『……ありがとうね、あなた達。』

花陽「………っ、新理事長………!」




パンッ パンッ


『……っ、新理事長?!』

『一旦落ち着いてください。ねえ教頭先生、私……こんなに立地がよくて、こんなに素敵な生徒達がたくさんいるのに……この学院が廃校危機に面した理由が、今わかった気がするわ。』

『………っ、新理事長……それはつまり、どういうことで………?』

『古い考えは捨てるべきです。もっと全てのことに柔軟に対応していかなければ、時代の流れについていけませんよ、教頭。今日はもうお帰りください。』

『なっ………!』



『………っ、く………っ、くそが!私はどうなっても知らんからな!!!』ダッ



バタンッ


凛「…ふふっ、ざまぁみやがれにゃ!」

にこ「ほんとね、意地悪ばっか言ってるからああなるのよ。ざまぁないわ。」

花陽「あはは…二人とも、口が悪いよお……」

『そうですよ、腐っても先生ですから…目上の人に対してその口の利き方はよくありませんね。二人には特別に課題を……』

にこ「ひいいっ」

凛「あわわわっ、ごめんなさい!つい…」

『ふふ……冗談ですよ、しかし次からは気をつけるように。…それでは、』

『東條さんと……絢瀬さんについてですが……』

にこ「………っ」

『全てを決める権利は教頭ではなく…私と、それから教育委員会にあります。』

『教育委員会は今回この会議に出席できませんでしたが…私の決定が教育委員会の決定でいいと言われましたので。いいですか、』


『音ノ木の生徒2名……東條希と絢瀬絵里については、特例として…出席日数が足りなくとも、留年扱いにはしません。必ず卒業します。』


穂乃果「新理事長………!」

にこ「ほ、本当に……っ?!」

『ええ、本当です。ただし……いくらか課題は出しますよ、二人は成績もこの資料を見る限り優秀ですし、協力すれば卒業までにはこなせる量で。』

凛「絵里ちゃんがいれば、そんなのなんとかなるにゃー!!」

真姫「いざとなれば私だって…高3くらいまでの内容なら教えられるわよ?」クルクル

花陽「よかった、よかったぁ……!」ポロポロ



穂乃果「新理事長先生!!!」


『はい、なんでしょう?高坂さん。』



穂乃果「ありがとうございます!!!」

にこ「……っ、ありがとうございます!!」

凛「ありがとうございます!!!」

花陽「えぐっ……ありがとう、ございます…!」ポロポロ

真姫「ありがとうございます。」


『………っ、ふふ。ええ……』

『いえ……こちらこそ…ありがとうございます。』

『校庭にいる方達も、ありがとうございます。こうしてわざわざ来ていただき…おかげで私も決断を下すことができました。』

真姫「新理事長……」


穂乃果「そうだっ!穂乃果もみんなに、お礼、言わなくちゃ……!」タタタッ



穂乃果「みんなー!!!!助けてくれて、ありがとう!!!ありがとうございます!!!」




ワーー!!!!



ヒデコ「そんなの生徒なんだし、希先輩と絵里先輩のためなら、ねっ!」

ミカ「当たり前だよ!」

フミコ「よかったよかった…ほんとに良かった!!」ポロポロ

『真姫ちゃん、また何かあったら言うのよ~~!!』

「まぁ希ちゃんは、高校なんか出なくたって…うちでいくらでも就職できますがねっ!もちろん永久就職だって…!」

「何言ってんだおめえ、とうとうボケたのか。希ちゃんがこんなおっさん相手にするわけねえだろおっ」

「しかしよかったですね、よかったぁ、よかった……!」

あんじゅ「ふふっ、かんっぜんにフルハウスね♪」

ツバサ「よかったぁぁ!!これでμ'sともう一度対決できるかどうかはともかく…もう一度お茶をするくらいなら、いつか、できるかもしれないわね!」

英玲奈「できるに決まってるさ。なんたってあの東條希と絢瀬絵里だ。絶対乗り越えてくれるに決まっている。」


ワー ワー



穂乃果「みんな……」ウルッ

にこ「何よこれ……なによ、なによなによなによ………!ほんと、安っぽい青春ドラマじゃないんだからぁ……っ」ポロポロポロポロ

凛「あはは……にこちゃんは泣きすぎにゃー。」

真姫「ちょっともう…ほら、ハンカチ。」


花陽「ふふ…よかった、本当に良かったよお……」ポロポロ


ヴー ヴー


花陽「ん……っ?なんだろう………」スッ


花陽「っ!!!!!」

花陽「みんな……っ、みんな、聞いて………!!」

にこ「あによ…どうじだのよ、はなよ……」グスッグスッ

花陽「理事長……!無期懲役って判決が出たって!!!」

真姫「……っ、ちょっとそれ、本当に!?」

花陽「うん…まだ第一審だから、理事長にとってはあと二回チャンスがあるわけだけど…でも、それでも…!第一審は、無期懲役だって………!」

穂乃果「それでもすごいことだよ!ことりちゃんと海未ちゃんが…きっと頑張ったんだよね、これで希ちゃんも、少し安心できるよね……!」

真姫「そうね…ひとまずこれで安心よ。良かった……!」

凛「こうも良い事続きだと、逆に怖くなってくるけど…でも、良かったにゃー!!」

にこ「ちょっと凛、怖いこと言うんじゃないわよお………っ」グスッグスッ

にこ「でも…本当に良かった、本当に……!」ポロポロ


にこ(絵里……!私達、ちゃんとやったわよ、私が言った通りに、やり遂げたわよ………!)

にこ(希!あとは時間がかかっても…あんたが元気になるだけなんだから……!希にはにこ達だけじゃない、こんなにたくさんの人が……ついてるんだからっ)

にこ「………っ、のぞみ……!」ポロポロ


にこ(これだけ全部上手くいって……それにたくさんの人の協力があるんだから。あとは全部、良くなるだけよね…!)

にこ(時間はかかるかもしれないけど、きっとまたこの9人で、笑い会える時がくる……!)



にこ(いつかきっと、全部全部、元通りに………!)



----
---
--

ガチャ!!!

絵里「希っ!!!のぞみ!!!」

希「………っ」ビクッ

希「……な、なぁん、えりち…?急に大声ださんといて、びっくりするやん……」

絵里「……っ、そうよね…ごめんなさいっ、でも、あのね、すごいのよ!えっと……っにこが、ことりがね…っ」

希「………?ちょ、ちょっと、一回落ち着いて……」

絵里「…そ、そうね………っ、えっと…あの………」

希「………、ほら、深呼吸して……すーはーすーはー……」ナデナデ

絵里「………」スー…ハー…


絵里「………ふう。」

希「………えりちがそんなに取り乱すなんて、珍しいなぁ。何があったん?」ナデナデ

絵里「……ふふ、ごめんなさい、希に早く伝えたくって…あのね、2つ、いい知らせがあるんだけど……」

希「うん……?」ナデ…

絵里「…1つ目はね、にこ達が学校の先生を説得して……私も希も、留年しないようにしてくれたの。私達、たとえ卒業まで授業に出られなくても…卒業させてもらえるんですって!」

希「そう…なんや……それはすごいなぁ。にこっちとみんなに、お礼言わんと……」

希「………っ」

絵里「ふふ、みんなって、相当大変よ…?だってね…ほら、あの私以上に堅物だって言われてた教頭、覚えてる…?」

希「…ああ、いたなぁ…頭かちこちの……」

絵里「そうそう。あの教頭だけが、頑なに説得に応じてくれなかったみたいで…だけどね、」

絵里「にこ達の他にも、生徒200人以上と……それから真姫のお母さん、穂乃果のお母さん、凛や花陽のお母さん……それに神田明神の神主さん達やA-RISEまで……」

絵里「……みんなが校庭に集まって、教頭のこと、説得してくれたそうよ…!」

希「そ、そんなに……っ?」

希「すごい………なんや、申し訳ないなぁ……」

絵里「…ふふ、何言ってるのよ……」


絵里「…それだけみんな、希のことが心配で…希の力になりたいって、希に元通り元気になってほしいって、思ってるのよ。」

希「……そっ…か………」

希「あはは……すごいなぁ。」

希「………、…みんな………あったかいなぁ…」

絵里「ふふふ。希が良くなったら…少しずつでも、みんなにありがとうって…言いに行きましょう?」

希「………、うん……そう…やね、みんなにお礼、言わないと……」

絵里「ええ…私も言いたいわ。あと、それからもう1つの方なんだけど……」

希「………?」

絵里「……理事長、無期懲役が決まったみたいよ。」

希「………っ、理事…長が………」

希「………………っ」ギュ…

絵里「……っごめんね、思い出したくないのは、わかってるんだけど……でも、これで心配ないってこと、伝えておきたくて…」

希「………うん、わかってる……、ありがとう…」

絵里「………」

絵里「…あのね、ことりが……ことりが頑張ってくれたみたいなの。」

希「ことりちゃんが…?」

絵里「ええ……ことり、理事長の弁護の役割として…情状証人を任されていたみたいなんだけど、」

絵里「逆に理事長の罪が重くなるように……裁判で言ってくれたみたいなの。ニュースにもなってるみたい。こんなの前代未聞だって…」

希「ことりちゃん……」

希「………、そっか………」

希「………」


絵里「希……?ごめんね、やっぱりこの話は……」

希「……っ、ううん…大丈夫……えっと、ほら……安心したから…ぼうっとしちゃって……」

希「あはは………」

絵里「希………」


絵里「………ふふ、それならよかった。」

希「………っ、うん……でもことりちゃん、きっと…つらかったよね……」

絵里「それは……」

希「………」

希「…ことりちゃんにも、お礼…言わな、あかんなぁ。」

絵里「……ええ、そうね。」


絵里「…ねえ、そろそろみんなに……お見舞い、来てもらう?」

希「………っ」

絵里「みんなも貴女にすごく会いたがってて……」

絵里「…あのね、私明日…少し足りないものとか、買ってこようと思ってるの。その時に希の髪染めも、買ってこようかなって……」

希「………」

絵里「………」


絵里「……ごめん、やっぱりそうよね……まだ、みんなとは………」

希「……っ、ううん、そんなわけ…ないやん、うちもみんなに会いたいよ?」

希「………髪染め……買ってきてもらえる?」

絵里「希………!」

絵里「…ふふっ、ええ。他に欲しい物があったらなんでも言って?買ってくるから……って、あっ」

希「……?」

絵里「すっかり忘れてた…今日お風呂予約してたじゃない…どっちが先に行く?」

希「あ、ああ……じゃあうち、先行ってくる。」

絵里「そう…大丈夫?ついてくわよ。」

希「……ゆっくりならもう歩けるから、大丈夫。えりちはここで待ってて?」スタ…

絵里「…、でも………」

希「ふふ…えりちは心配性やね、大丈夫やから……じゃあ、行ってくるなぁ。」



ガチャ、バタンッ



絵里「のぞみ………」



---
--


バタンッ



ドクンッ ドクンッ

希「けほっ……けほっ……う……」ズル…


ガサガサ……ガサガサガサ……


希「は………は………」ギュ…


希(なんでやろ……最近どんどん、悪くなってる………)

希(幻覚…は、たまに…だったはず…なのに、ずっと………)

希「…………っ」


希(………でも…ちょっと休んだら…行かないと……)

希「はっ……は………」ガタガタ

希(………)

希(留年が無くなって……理事長の無期懲役が決まって……)

希(普通なら…嬉しいはずなのに、安心するはず…なのに。どうして……)


ガサガサガサ………スルスル……ヨジ……



希(……どうしてこんなに、不安になるんやろ……)



ガサガサガサ…ガサ………


希「………っ」

希(……留年を免れたって、卒業したあと…うち、どうしたらいいんよ……)

希(無期懲役って、終身刑とは違う……いい子にしてればいつか出てくる、ってこと…やから…… )

希(そうしたら、また………!)


希(また………)



ガサガサガサ!!!ガサッ!!!!!

希「………っ、」ビクッ


希「はぁっ……はぁっ………」ガタガタ

希「……、予約した時間…すぎちゃう、行かなきゃ………」ヨロ…


コツ………コツ……


希「………」

希(……ネガティブすぎ、なのかな………)

希(うちって…事件が起こる前はもっと、前向きで…ポジティブで……)

希(細かいことは気にしないタイプだった…はず、なのに………)


コツ………


希「………っ、?」



『検査結果が、ーーーでーーーてくださーー』

『これだとーーー』

『しかしーーー東條さんーーー』

『ーーー』



希(向こうの……部屋の中から……)

希(今…東條さんって………)

希(…………)



希「………」ソロ…ソロ…

希「………」ピタ…


『……待ってくれ。その検査結果…本当に確かなのかい?』

『ええ…十中八九確かかと。残念ですが検査をやり直したところで、結果は変わらないと思います…』

『………っ』

『…子宮にムカデを捩じ込むなんて……そんなことをされて、命があっただけ良かったと思うべきですよ、これは……』

『それはそうだが……しかし、』

『西木野先生の気持ちはわかりますが…しかしこればっかりは…どうしようも……』

『…子宮がこれだけダメージを受ければ、妊娠できなくなるのも……致し方ないかと。』


ドクンッ


希「……っ、う………」

希「はぁっ……はぁっ………」


ドクンッ ドクンッ ドクンッ


希「はぁっ………はぁっ………」ギュ…

希「………っ」ギュウ……


『…摘出手術の時は本当に度肝を抜かれましたよ、まさかそんなものが出て来るなんて思いもしませんでしたから。』

『そりゃあ、普通は思いませんよ…』


『それから西木野先生、こっちの脳の方の検査結果なんですけど……』

『………?……っ、これは………』

『……ここに運び込まれた時より、さらに少し萎縮しています。』

『原因は…?』

『わかりません。考えられるのはストレスやフラッシュバックによる恐怖心ですかね……しかし、当たり前といえば当たり前かもしれません。』

『…いくら精神科の先生に診て頂いでも、限界がありますよ。あの事件を思えば、正気を保ってるだけ…東條さんは頑張っています。』

『…っ、それはそうだよ、希ちゃんは頑張ってる。しかし……』

『…、……いや…なんでもない。ここから考えられる影響として、君は何があると思う?』

『そうですね…何が起きてもおかしくないですし、逆に何も起きない可能性ももちろんありますが…』

『……記憶障害だったり、人格が変わったりっていうのは、起こりやすい症状かもしれません。』

『……、そうか………』

『西木野先生…?あの、このことは東條さんには……?』

『……っ、……落ち着くまでは、伝えない方が良いだろうね……』


『まぁ…そうでしょうね……』

『…しかし、希ちゃんのお父さんには伝えなければならない…さっきやっと連絡がついたんだ。一週間以内にはこちらに着くそうだよ。』

『そうですか……、……私が検査結果の資料、作っておきますよ。』

『ああ、よろしく頼む。助かるよ。』

『それじゃあ次に、こっちのことなんですがーーー』


ズル……ズル……



希「はぁっ…は……っ」ガタガタ

希「……」ガタガタ

希「………っ」ダッ



コツ、コツ…ッ、コツ、コツ……ッ



ガタッ

ガチャンッ

バタッ



希「………っ」バサッ……バサッ

希「………」バサ……



ガチャン



………ジャー


希「はぁっ……はぁっ………」

希「は………っ」



希「…………」



希「……あった、かい…………」




ジャー


希「ふふ…お風呂、病院ってお願いしないと入れないから…2日ぶりやなぁ………」

希「えへへ……お父さん、帰ってくるんやね、久しぶり……嬉しいなぁ。」

希「うれしい、な………」

希「あはは………」ポロ…

希「…」ポロポロ


希「………」ポロポロ



希「………っ」ブンブンッ

希「仕方ない………仕方ない………!」ポロポロ



ガサガサガサガサガサガサガサガサ!!!!



希「………っ、うるさい……」ポロポロ

希「うるさい、うるさい、うるさいよ………」ポロポロ


ガサガサガサ!!!!



希「うるさいったら!!!」ガンッ








………ジャー


希「ぐす………」ポロポロ



希「仕方ないやん……仕方ない、よ……」ポロポロ


希「生きてただけ……良かったって……!」ポロポロ

希「正気を保ってるだけ、頑張ってるって………」ポロポロ


希「ふふ…今日はいいことが3つもあったなぁ…みんなが…うち…のために、頑張ってくれて……おかげで音ノ木、卒業できるんよ……?」ポロポロ

希「理事長だって、ことりちゃんのおかげで、きっと何年も、出てこない…し……」ポロポロ

希「お父さんにも…もうすぐ会えるんやから……」ポロポロ

希「いいことばっか……いいことばっかり…なんや…から………」ポロポロ

希「う……っ、ぐす………」



ガサガサガサッ!!!


希「ひっ……」ガタガタ

希「うう………ううう…………」ポロポロ

希「幻覚……幻覚やから………!」ポロポロ


希「はっ……はぁっ………」ポロポロ



ジャー………



希「…………」ポロポロ


希「消えない………本物、みたい………」ポロポロ

希「なん…で………」ポロポロ


希「なんで…………」ポロポロ



ゾワゾワッ ウネウネ………



希「………………っ、」ポロポロ



希「………、」ポロポロ




希「はは…………」ポロポロ


希「………こんなん……本当はいなくたって、おんなじやん……」ポロポロ

希「聞こえて、感じて、見えるなら……」ポロポロ

希「あはは……そんなのもう、本当にいるのと…なんも変わんないやん………」ポロポロ




ガサガサ……ウネ………ウネウネ



ジャー………


希「…はは………は………」ポロポロ

希「もう……やだ、やだ……きもちわるい………」ポロポロ




希「もう……無理だよ………」ポロポロ



『のーぞーみ?』



希「……っ、」ゾクッ



『ふぉっふぉっ……』


希「せ、先生……っ、?」

希「なんで……ここに………っ」


希(幻聴………?)


『ふふ、幻聴ではないさ。ちゃあんとここにいるよ。安心おし?ふぉっふぉっ……』

『扉は開けないから……シャワー浴びながら少し、お話ししようか……』

希「………っ、なん…で………」

『さっきここに駆け込むのが見えてねえ、声をかけるか…悩んだんだが、やっぱり心配でね……』

『何かあった…?いや、もしかして……西木野先生達の会議、時間的に…聞いてしまったんではないかい?』

希「………っ」




ジャー……


『………ふふ、やっぱりそうかい。』

『私は事前に結果だけ聞いてたんだが…気の毒にねえ。でもそんなに気にすることないさ、子供が欲しければ今は養子だってなんだってあるのだから……』

希「…………」

希「別、に……大丈夫です…から……」



ジャー……


『ふぉっふぉっ、そちらはそんなに気にしてないのかい……じゃあ脳の方かな?』

『そっちは確かに……難しい問題さね、私が思うに……既に希の人格は、少し変わり始めてるようだよ。』

希「えっ………」

『ふぉっふぉ……思い当たる節があるんじゃないかい?誰かに当たったり……考え方が変わったり。』

『事件前の自分と違うなと思うところが、何か………』

希「………っ」



希(………、)




『……っ、大丈夫、大丈夫やから……』

『……何もしなくて、いいから……』


『……さっき看護師さんが、体はもう大丈夫って、体力も少しずつ付いてきてるから明日検査しましょうって、言ったばっかりやん……それって良くなってるんとちがう?』



希「………っ」

希(……確かに…心配してくれてるえりちに、当たるようなこと…言った……)

希(性格も……きっと………)


希「……っ、でも……!」


『ふぉっふぉ…図星だろう?』

希「…………っ」

『ねえ希……周りのみんなは変わった希に戸惑うかもしれない、もしかしたらこの先、愛想を尽かされるようなこともあるかもしれないねえ。』

希「そん、な…こと………」

『……特に"元通り元気になってね"、なんて言う子は危険さね……希に"元通り"を望んでるってことなんだから……』

希「……っ、元通り………」




『……ふふっ、いいのよ。……でも、じゃあ…約束してくれる?』

『少しずつ……ゆっくりで、いいから。私も一緒にいるから……希、元気になって。』

『…私ね、希が"元通り"元気になってくれたら……それが一番、嬉しいから。だからお願い。』




『…それだけみんな、希のことが心配で…希の力になりたいって、希に"元通り"元気になってほしいって、思ってるのよ。』




希「…………っ」

『ふぉっふぉっ…絵里ちゃんや周りのみんなは……希に元通りを望んでるんじゃないかい?』

希「やめて………」

『まぁ無理もないさ…希だって大切な友達が変わってしまったらつらいだろう?このまま一緒に居続ければ……』

希「…………っ、や、めて……もう、やめて………!」ガタガタ

『ふぉっふぉ…人の話は最後まで聞くものだよ、希……あのねぇ、他のみんなが希に元通りを望んでも……私は望まないからねぇ。』

『なんて言ったって母親代わりになるんだから、家族っていうのはね、どんな希でもーーー』


希「いらない!!!!」


『…………っ』

希「いらない……いらないよ……母親代わりなんていらない、貴女なんていらない……」ポロ…

希「帰って!!もう、帰ってよ………っ」ポロポロ

『………ふぉっふぉ…まだ混乱してるんだね、可哀想に……また明日、落ち着いたら会おうね……』


コツ…コツ、


ガチャン




ジャー………




希「……っ、う……うう………」ポロポロ

希「…げほっ、けほっ、けほっ………」ポロポロ


希「…きもち…わるい………」ポロポロ

希「かはっ………げほっ、けほっ……」ポロポロ

希「…はぁっ…は……っ、」ポロポロ


ジャー……


希「けほっ……けほっ……」ポロポロ

希「はぁ……はっ……う………うう…」ポロポロ

希「………っ、」ポロポロ



ジャー…………



希「は……は……」ポロポロ



希「…………」ポロポロ





希「……、でも………あの人の言う通りだ……」ポロポロ


希(みんなが好きなのは……わざわざ校庭に駆けつけてまで助けてあげたい東條希は、今の私じゃない……)

希(お見舞いに来て、話をしたい東條希も、今の私じゃない……)

希(……1ヶ月前までの、あの頃の私だ………)


希「……っ、う……ぐすっ………」ポロポロ


希(……ここに来て、目を覚まして…初めのうちは、少しずつでも…いつか、全部全部元通りになれるって、思ってた。でも……)

希「………無理、だ……」ポロポロ

希「無理だよ……そんなの………」ポロポロ

希「元通りに戻れるのは…見た目だけ。体はもうシャワーだって染みない。どんどん治ってく。だけど………っ」ポロポロ

希「だけど………」ポロポロ

希「………っ、うう……えぐっ、………ううう……」ポロポロ


希「…っ、元通りになんて、戻れるわけない……あの頃にはもう、戻れない………!」ポロポロ


希(えりちは優しいから…たとえ私が変わっていっても、元に戻れなくても、きっとずっと一緒にいてくれようとする)

希(私がもっともっと壊れていって、迷惑をたくさんかけたって…えりちは優しいから、すごく優しいから……きっとなんだって許してくれる)

希「でも……そんなの、だめだ……」ポロポロ

希(ただえさえ迷惑かけ続けて…大切なマグカップを割って、未だにどこに行くにもついてきてもらって……)

希(私のせいでえりちは学校にだって行けてないのに…受験だってどうなるかわからないのに)


希(……これ以上、えりちの人生を奪えない)



希「………っ、………」ポロポロ


希(お父さんが一週間以内に帰ってくる…それだって、)

希(それだって…だめだよ、お父さん、こんな私を見たら……絶対に後悔する、もう二度と夢なんて追えなくなる)


希(……たくさんの人の人生を奪って、迷惑をかけて、虫だらけの現実を生きていくくらいなら………)

希「………、ぐすっ………」ポロポロ




希「いっそ死んだほうが……いいのかな……」ポロポロ




希「ふふ、……っ、」ポロポロ

希「…………」ポロポロ




希「………、あはは………」ポロポロ


希「そう…だよ……そうだよね、」ポロポロ

希(ここにいたら真姫ちゃんのお父さんにだって迷惑がかかる…こんな私を見たら、みんなだってびっくりする、悲しくなっちゃう……)

希(死んじゃえば悲しむ人もいるけど……そんなの一瞬。時間が経てば、みんな前を向いて生きていける、えりちは私から解放される、お父さんは夢を追える)

希(これ以上こんな自分を見られなくてすむ。みんなの中の私は…あの頃の優しいうちのままでいられる)

希(虫からも解放される!運が良ければお母さんにも会えるかもしれない…!)


希「ふふ……あはは………」ポロポロ

希「………っ」ポロポロ



希「…っ、いいことばっかり………ううん、いいことしかない……なんでもっと早く気付かなかったんだろう、あはは、はは……」ポロポロ

希「……はは………」ポロポロ

希「………っ」ゴシ…




希「明日……」

希「明日でいっか、えりちもいないし……ふふ、すごいタイミング。うちってやっぱりラッキーガールなんやね!あはは…」

希「そうと決まれば、早く洗ってでないと…そろそろえりちだって心配しちゃうし……ふふ、うふふ……っ」

希「…ええっと、ボディソープはっと………」ガタガタ



希「………っ」ギュッ


希「…………」


希「…………震えないでよ……」

希「……今更怖くなんてないやん、だって理事長のあれに比べたら……死ぬのなんて簡単で…一瞬よ?」

希「ね、ほら……ふふ………大丈夫、大丈夫……」ゴシ…


ゴシ…ゴシ



希「大丈夫……大丈夫、大丈夫……」ゴシ…ゴシ…



---
--


ガチャ


絵里「希……!」

希「あ、えりち……ただいまぁ。」

絵里「遅いから心配してたのよ、よかった…」

絵里「………じゃあ次は私が……って、えっ、!?」

絵里「ちょっと希、目真っ赤じゃない…っ!何かあった?大丈夫?」

希「あ、あはは……ちょっとリンスが目に入っちゃって。大丈夫、大丈夫。」

絵里「……っ、本当に………?」

希「本当よ?そんな嘘ついたって、なんの得もないやん!ふふっ」

絵里「希………」


絵里「……もう。どんな洗い方したのよ、まったく…心配するじゃない。」

希「……、えへへ、ごめんなぁ。」

絵里「…まぁいいわ。じゃあ次お風呂入る時は私が洗ってあげる。」

希「えー…そんなの恥ずかしいやん~うち子供じゃないんよ?」

絵里「いいから。わかった?」


希「………もう、しょうがないえりちやなぁ。」

希「でも…じゃあ、お願いしようかなっ」

絵里「………本当?じゃあ明日も入りましょう。帰りがけにお願いしてくるから……」

希「……明日、なぁ………」

希「……うん、わかった。じゃあえりちもはよ入っておいで?久しぶりのお風呂、あったかくてすっごく気持ちよかったよ!」

絵里「え、ええ…じゃあ入ってくるけど……」

絵里「………」

絵里「……、希……なんだかちょっと、元気すぎない…?」

希「………っ、だってほら…留年のこととか、理事長のこととか……今日は嬉しいことばっかりやから。」

絵里「………」


希「えりち………」

希「………元気だと、何か悪いんかな…?」

絵里「そんなこと…ないけど………」

希「ふふっ、ならいいやん!あっ、ほら…早く行かないと遅れるよ?」

絵里「………っ、本当ね…じゃあ行ってくる。」

希「いってらっしゃーい。」フリフリ



ガチャ バタン




希「………」フリフリ


希「………」


希「……明日、かぁ………」


希「……っ」バフッ





希「………ごめんね、えりち。」



ガサガサ……ガサガサガサガサ………


ガサガサ……ガサガサガサ……………



希「…………っ」ガタガタ

希「………」ギュ…




希「寝るのって、もう…最後、かな……」

希「最後くらい、楽しい夢が見たい、な……」


ガサ…


希「………っ、薬……最後の一錠……」

希「………」


希(そういえばここのところ、毎日飲んでた、ような……)

希(………)



希「………ふふ、一錠残ってるなんて…ラッキーやねっ流石うち!」



ガサガサ ガサガサ ガサガサ

ガサガサ ガサガサ ガサガサ


…………ゴクッ




グニャ



希「…………っ」

希「う……げほっ、けほ………うう……」ガタガタ

希「ふ………う………あれ………」ガタガタ


希(眠れない……?)

希「なん…で………」ガタガタ

希「………っ」ガタガタ


希「し…かた、ない……こっち………」ガサ…

希(ハルシオン……)

希「………っ、やっぱり、嫌……」ガタガタ



ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ!!!



希「ひっ………やだ、う………うう……」ガタガタ

希「うう………う、嫌……嫌………」ガタガタ

希「だめ、だ…飲まな…いと……」ガタガタ


ゴクッ


希「………っ」ガタガタ

希(効かない………)


ガサガサッ ガサガサガサガサッ

『『ふふ、勉強になるでしょう?ちなみに東條さんを連れてくるときに飲ませたジュースには、ハルシオンっていうお薬が入ってたの。』』

『『ふふっ、あはは……目が覚めたら……目が覚めたら、次は……!』』


希「………っ、う……あ………」ガタガタ

希「や……っ、嫌……っ!!」ブンブン


希「はっ…はぁっ……はぁっ………」ガタガタ



希「………もう一錠、ううん、あと三錠くらい、飲めば………」ガタガタ


ゴクッ




グニャ




希「ーーーっ、う………」クラッ


希「………っ、かはっ……あ……う……」クラクラ


希(……、薬のゴミ、捨てておかないと………っ)


ポイッ………ポイ、



希「う……うう………ぐっ、けほ………」ガタガタ

希(苦しい……)

希「はぁっ、はっ……は………」ガタガタ


希「う………あ………」フラ…







希「………っ、」ドサッ




希「………」スー…スー…




---
--



ガチャッ


絵里「希!のぞみ聞いて!!真姫のお父さんから聞いたんだけど、希のお父さん……」


希「………」スー…スー…

絵里「………、寝てる………」

絵里「………」


絵里(ここ最近……気づくとほとんど寝てる……ような………)

絵里「………薬が効いてるのかしら。…にしても効きすぎじゃない?」


絵里「……、あら……」ガサ…

絵里「…っ、ゴミ箱、薬のからだらけ……」

絵里「………」

絵里「袋の中は………」ガサガサ

絵里「………こっちの薬は殆ど残ってるけど……こっちは全部無くなってるわね……」


ピラッ…


絵里「………?何かしら……」



絵里「……………っ、」

[この薬は作用が強いから、本当に辛いときだけ飲むこと。]


絵里「希………」

絵里「………」

絵里「無くなってるの……辛いときに飲む方…よね……」

絵里「どうして………」


絵里「………」


絵里(私が気づかなかっただけで……希、もしかして……ずっと………)

絵里(………)

絵里「希……」


絵里「希、ねえ…私じゃやっぱり……だめだった……?」ナデ…

希「………」スー…スー…

絵里「希………」

絵里「………」

絵里「…でも、そうよね……考えてみれば、当たり前よね…私、家族でも、なんでもなくて……希にとっては、」

絵里「…ただの親友、なんだから……」

絵里「………っ」


絵里「………」

絵里「…でもね、希……安心して。真姫のお父さんに聞いたんだけど…希のお父さん、一週間以内に帰ってくるみたいよ。」

絵里「ふふ…そしたら希も少しは…安心できるでしょう?」

絵里「…それに、私ってほら、堅物で、つまらない人間だけど……」

絵里「髪を染めて…みんなに来てもらえば、μ'sはほら…にことか、凛とか…楽しい子達ばかりだから。」

絵里「希も私と二人でいるよりは、楽しい気持ちになれると思うの……」

絵里「……それにね、マグカップのこと、まだ気にしてるみたいだけど……それだって、気にしなくていいのよ?」

絵里「私明日…おんなじの、買ってくるから。ね、ふふっ……」

絵里「希………」ナデ…

絵里「のぞみ………」


絵里(寝顔……なんだか少し、苦しそう。)

絵里(………)

絵里「………、」ポロ…

絵里「………」ポロポロ


絵里「………っ、」ゴシ…


絵里「希………」

絵里「……っ、……私ね、悔しい、の……もっと力になってあげたいのに……できることなんだって、してあげたいのに………」

絵里「のぞみ………」


絵里「私…無力で、頼りなくて……何もしてあげられなくて、ごめんね……」


絵里「……、せめて希が……いい夢が、見られますように。」


絵里「………、」ナデ…




絵里「………おやすみ、希。」



----
---
--



理事長「はぁっ、はっ………」


理事長「なんっ…で………どうして………」


理事長「ことり……ことり………」



『………南、手紙だ。』


理事長「手紙っ、?!誰から………っ」


『…娘さんからみたいだぞ。』


理事長「ことり?!…っ、はやく、貸して!!!」バシッ


ビリッ ビリッ ビリ………


理事長「………っ、ことり………」ペラッ

理事長「………」


『お母さんへ』

『これは私からお母さんへ送る、おそらく最後の手紙です。』

『…唐突だけど……まずはじめに、お母さんに聞きたいことがあります。』

『……ねえお母さん、お母さんはこの先どんなにやめてと、許してと、そこから出たいと思っても…刑期が終わるまで、絶対にそれは許されません。』

『私と会いたいと、私とお話したいと思っても
…それも絶対に許されません。お母さんが死ぬ直前まで……どんなに泣いても、何をしても、絶対に。』


理事長「………っ、」ジワッ

理事長「こ…とり……?」

理事長「……っ、どう…して………」ポロ…

理事長「どうしてそんなこと……言うのよ……っ」ポロポロ

理事長「ことり………」ポロポロ



『…それを知った今、どんな気持ちがしましたか?多分…とっても苦しいんじゃないかな、私だってこれを書いてる今…とっても苦しいから………だけどね、』

『希ちゃんは…もっとずーっと、苦しかったんだよ……。お母さん、希ちゃんがどんなにやめてって、泣いて、縋っても……ヘラヘラ笑って、絶対にそれを許さなかったんだから…』

『だからお母さんのそんなのは、希ちゃんのつらさの……1億分の1にも満たないだろうけど、でも、少しはわかったかな…自分がどんなに恐ろしいことをしたのか。』



理事長「……っ、」ポロポロ

理事長「…………」ポロポロ


ペラッ



『やくそくその1。自分がされて嫌なことは、人にしないこと。』

『やくそくその2。悪いことをしちゃった時は…きちんと反省すること。』

『この2つの約束…わかるよね、お母さんが私が幼い頃、悪さをしたときに…いつも言っていたこと。生きてく上で…当たり前のこと。常識。』

『お母さんはきちんと、心の底から…自分がしたことを後悔して、心の底から希ちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱいになって、反省して、それをずっと背中に背負って、償いの気持ちを持たなくてはいけません。』

『人生が終わるまで…ずっと。』

『…もしお母さんが本当にそうできたなら、二度と私達の前に現れようなんて…間違っても、思わないはずだよ。』



理事長「ことり………」ポロポロ

理事長「…………っ、でも……!」ポロポロ


『ねえお母さん。今、"でも"って言ったでしょ?わかるんだよ…?ことりには。だって私…お母さんの娘だから。』

『私もね……あんなことを平気でやったお母さんが、自分のしたこと…すぐに反省できるとは、思っていません……後悔と反省は、別物だから。』

『あんなことをしたお母さんに残されたものは、考える時間だけです。だからこれから長い時間…自分がしたこと、きちんと振り返って…反省してください。2つのやくそくを守れる人になってください。』

『もしお母さんが反省せずに…同じようなことを繰り返したら、ことりはもう二度と、お母さんと会うことも…お母さんと笑い合うことも、ありません。』


理事長「…………っ、」


『だけど、』


『もしお母さんが本当に心の底から反省できたなら……私達の前に、二度と姿を現さなかったなら。』

『そのときはお母さんが死ぬ直前に、一度だけ……ことりから会いに行ってあげます。』


理事長「……っ、ことり……!」ポロポロ

理事長「反省…するわ、私……反省する。」ポロポロ

理事長「だから………!」ポロポロ


理事長「だから……」ポロポロ


理事長「ことり………」ポロポロ


理事長「………」ポロポロ





理事長「………、反省、か…………」ポロポロ


理事長(……たとえことりの言うようにできなくても……私なら、出所さえできれば……)

理事長(いい子を演じきれば……)


『……これを読んで……反省してる演技や振り、しようと思ったでしょう?お母さん。』


理事長「………っ、え………」ポロポロ


『…そんなの、お見通しだからね、ことりには…わかるんだから。』

『お母さんが心の底から反省することを、心の底から願っています。もう一度再開できることを、本当に本当に願っています。』


『お願いだよ……?お母さん。』



『ことりより。』


理事長「………っ、え、終わり……?これだけ……?」ポロポロ

理事長「ことり…ねえっ、これだけなの……?ねえっ………」ポロポロ

理事長「ねえ…っ!!!!」ポロポロ


ピラッ


理事長「…………っ、これは……っ?」ピラッ



『追伸 これだけ?って思った?お母さん。お母さんへの感謝の気持ちや、他のお話、思い出は…全部もう一度会えたときに、お話しすることだよ。だから今は…これだけです。』

『だからその日までは……』




『さようなら。お母さん。』








理事長「ことり………」ポロポロ

理事長「その日って……いつよ、それ………」ポロポロ


理事長「…もしかして、何年も……何十年も、ずっと…………?」ポロポロ

理事長「ことりの言う"反省"ができなかったら、もう二度と………」ポロポロ


理事長「……っ、」


理事長「ぁ………あ………」ガタガタ

理事長「嫌……、嫌よ、そんなの………!」ガタガタ


理事長「ことり…っ、ことり………!!!」ガタガタ



理事長「なん…で………どうして、ねえ、ことり………ことりだって寂しいでしょう?!なのにねえ、なんで………なんでなのよ!!!」ガタガタ



理事長「嫌………っ、嫌よ!!!!」ガタガタ




理事長「嫌………嫌………」ガタガタ







『ぁ……嫌………嫌………』ポロポロ

『嫌しか言わないのね。もうあまり頭も働かない?ちょっと刺激が必要かしら…次はじゃあ、小さい箱ね?』

『やめて…もうやめて……』ポロポロ

『…うふふ、やめない。』

『ぁ………あ………』ポロポロ





理事長「…………っ、あ…………」ガタガタ


理事長「あ……ぁ………あぁ………」ガタガタ


理事長「わた…し………っ」ガタガタ

理事長「私……東條さん、に………っ」ガタガタ


理事長「それって………っ」ガタガタ




理事長(………私もこれから…東條さんの苦しみの、ほんの少しでも……それでもそれを、味わわなければならないってこと?)



理事長「………っ、」ガタガタ



理事長「………嫌、そんなの…、嫌よ!!!ことりに会いたい…ことりがいないと……私っ」ガタガタ

理事長「大体なんで私が……っ、なんで……どうして………っ」ガタガタ

理事長「どうして私がこんな目にあわなきゃいけないのよ!!!」ガタガタ

理事長「ことり………どうして……どうしてよ………」ガタガタ

理事長「ずっと愛情込めて育ててきたじゃない………!!なんでことりが、そんな、そんなの………っ」ガタガタ


理事長「あ…あぁ………あ………っ」ガタガタ



理事長「どうしてこんなことに…」ガタガタ




理事長「…………っ、ことり………」ガタガタ


理事長「あぁぁあ………あぁあああっ……」ガタガタ




理事長「嫌あああああ!!!!」ガタガタガタガタ


『…………っ、なんだ………?!』


理事長「ちょっとあなた、ここから出しなさいよ!!!!!」ガチャッガチャッ

理事長「私はことりに会いたいの!!!どうしたって会わなきゃいけないの!!!」ガチャッガチャ


『………っ、抑えろ!』

『はっ…』


理事長「ちょ、やめ…やめなさいよ!!ねえ!!!」ガチャガチャ


理事長「ことりに会わせて!!!今すぐことりに会わせなさい!!!」ガチャッガチャッ


理事長「ねえ!!ねええええええ!!!!」ガチャッガチャッ


理事長「ことり!!ことりぃ!!!!」ガチャッガチャッ



理事長「ことりいいいい!!!!」ガチャンッ






----
---
--


ことり「………」ピラッ

海未「ことり……そろそろ電気を消しま……、」

海未「……、それ………」


ことり「……っ、あはは……ごめんね、未練がましい、よね………」

ことり「お母さんにああ言ったんだから、私だって……お母さん離れ、しなきゃいけないのに…こんな、写真…なんて………」

海未「ことり……」


ギュッ


ことり「海未ちゃん……?」

海未「……それくらい、いいじゃないですか。当たり前です。本来私たちはまだ、親離れするような歳ではないんです。」

海未「それにことりはとても…頑張ったんですから……」

海未「実の母に、それもあれだけ大切にしていた母に…あんなことを言うのは、とても勇気のいることです。」

海未「私は見ていましたよ、ことりが勇気を出して、頑張っていたところ……最後まで。」

ことり「海未、ちゃん………」

海未「……長かった髪も、これだけ切って……ネットやマスコミの誹謗中傷にも耐えて、」

海未「ことりは偉いです、本当に……」

ことり「………」

ことり「そんなこと……当たり前だよ、希ちゃんのためだもん……当たり前だよ……」

海未「ことり……」

海未「……でも、もういいんです。これ以上我慢しないでください……無理、しないでください。」

海未「希のことは……これからみんなで支えて行きましょう。ことりは自分ができること、ちゃんと果たしたんですから……もう、一人で抱え込むこと…ないんです。」

ことり「海未ちゃん……ありがとう。」

海未「ええ……」

海未「………、………だからほら、えっと……」

ことり「………?」


海未「……っ、その……泣いてください、ことり。裁判が終わってから…にこ達と合流した後も、ずっと我慢してたこと……私、知ってるんです。」

ことり「海未ちゃん………」



ことり「………っ、」ジワッ




ことり「もう……本当に海未ちゃんには、敵わないなぁ……っ」ポロ…


ことり「…どうしてわかったの?そんな風に言われたら…もう、私……っ、う………うう………」ポロポロ

海未「ことり………」ポンポン


ことり「……っ、海未ちゃんは…すごいよ、私のこと…なんでもお見通しで………っ」ポロポロ

ことり「私ね、一人でもなんとかなるって、大丈夫だって…思ってたけど……全然そんなことなかった……!」ポロポロ

ことり「あのねっ、私が勇気を出せたのも……お母さんにああ言えたのも、全部全部、海未ちゃんがいたからなんだよ……っ?」ポロポロ

ことり「海未ちゃんがいたから……海未ちゃんのおかげなの。」ポロポロ


海未「そんなことは……それはことりが頑張ったからで、私は何も……」


ことり「ううん、そんなことない…絶対海未ちゃんのおかげなの。だからね、海未ちゃん……」ポロポロ



ことり「………っ、ありがとう!」ポロポロ



海未「……っ、ことり……」ポロ…

海未「…っ、……はい……どう、いたしまして。」ポロポロ



ことり「う…うう………ぐすっ、…海未ちゃん、海未ちゃん……っ」ポロポロ


海未「ことり………」ポロポロ


ことり「ううう………ぐすっ、うう……」ポロポロ


海未「………」ポンポン


ことり「……っ、うう………」ポロポロ


海未「………」ポンポン


ことり「ぐすっ……」ポロポロ



海未「………」ポン、ポン




ことり「………っ、」ポロポロ






海未「………」ポン、ポン…




ちょっと受験がやばいから更新めっちゃ亀になるか続きが受験後とかになるかも、ごめんな
落ちないように定期的に保守はしにくる

ほしゅ
ここほしゅいらんのかな?よくわからん

ちょいちょい書き溜めてたのがたまってるから完結し次第投下するかも
わからんけど、年末年始とか時間があれば

ごめやっぱ大学受験完全に終わるまで更新むずそう
多分2月末に終わるから、それまで待っててほしい

すまん受験三月までかかるわ多分…
まぁのんびりでも完結はさせるつもりだから

受験終わりました待たせてごめんな
でも今度は朝から晩まで派遣だらけになっちまって
もうちょい待っててな、ちゃんと終わらせるから

生存報告
大学生ほんと忙しいのな…時間できたら続きやりたいとは思ってる
待たせてすまんな

想像以上に時間がとれない、すまんな
今ちょっと自分でも読み返してる
夏休み中に完結させるつもり

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---
--



チュン…チュン、チュン……



絵里「…それじゃあ行ってくるけど……希、本当に一人で大丈夫…?」

絵里「薬も切れてるみたいだし……」

希「もー、さっきから大丈夫って言ってるやん。」

絵里「……、でも………」


希「………もう、いざとなればここにはお医者さんも看護師さんも、たくさんいるんやから……心配しないで?ふふっ、大丈夫よ。」

希「それにお父さんが帰ってくるなら、荷物とかも整理しておきたいし…」

絵里「そう……」


絵里「……じゃあ、行ってくるけど…無理はしちゃだめよ?お土産買ってくるから…いい子で待っててね?」

希「ふふっ、もー子供じゃないんやから…大丈夫。でも…うん、お土産、楽しみにしてるなぁ。」

絵里「ええ。それじゃあ行ってきます。」


希「………、いってらっしゃい。」





ガチャ………


絵里「………」



希「………、えりち………?」

希「どうしたん…?」



絵里「なんでも…ないんだけど、」

絵里「……っ、なんだか病院の外に出るのって…久しぶりで。」

絵里「……少し、一人だと緊張するなって……ふふ、変よね?」

希「えりち………」

希「………」




…………ギュッ




絵里「………っ、希……///?どうし……」

希「大丈夫。」

希「えりちは……外でも大丈夫。それに、一人じゃないよ、寂しくなったら…みんながいるんやから。7人もいれば、誰かに連絡すれば…絶対誰かが駆けつけてくれるから。」

希「……だから、大丈夫。」


絵里「希………」




パッ


希「………ふふっ、それじゃあいってらっしゃ……」

絵里「希は?」

希「………っ、?」


絵里「希は……私に何かあったら……駆けつけてくれる?」

希「えりち……」

希「……、…………」


絵里「……、ごめんなさい…無理を言ったのは、わかってるんだけど……」

希「……っ、」

希「……、ううん…無理なんかじゃ…ないよ、もちろん…駆けつける。」

希「だってうち…えりちのこと、大好きやから。ふふっ…えりちに何かあったら…一番に、とんでいきたいよ…?」

絵里「………、希………」


絵里「……っ、私も希のこと、大好き。私も希に何かあったら…一番に駆けつけるから!」

絵里「だから希は……何かあったら、一番に私のこと……頼ってほしいの。」


希「………」

希「えりち………」

絵里「…………、………//」

絵里「……、あ、はは……///こういうのってなんだか…照れるわね。変な意味じゃないのよ?希は私にとって…一番の親友だから…ね?」

絵里「……、それじゃあ今度こそ…行ってきます。」


希「………っ、うん……いってらっしゃい。」




ガチャッ バタン




希「………」

希「えりち………」


希「…….……」



ガサガサ………ガサガサガサ………

ガサガサガサ………ガサガサ



希「………っ」

希(……ごめん、ね……)

希(これ以上えりちに頼って迷惑をかけるわけには、いかないよ…)



希「支度……しないと。」

----
---
--

カランコロン

イラッシャイマセー


絵里「………ふう、」

絵里(とりあえず…売り切れてたときに他の店舗もまわりたいから、亜里沙のマグカップのお店に来たけれど…)


絵里「ハラショー……」


絵里(すごくかわいいお店……亜里沙がこんなお店を知ってたなんて……)

絵里(……ああ、でも…納得かしら。あの子私よりよっぽど社交的だし……こういういまどきのお店を知ってる友達の1人や2人、いても不思議じゃないもの。)

『何かお探しですか?』

絵里「……あっ、えっと………」

絵里「………実はここのマグカップを割ってしまって……気に入っていたので、同じ柄のがほしいんです。」

『あーなるほど!そういうお客さん、よくいらっしゃるんですよ~!』

『よろしければ柄の特徴、教えていただけますか?』

絵里「えっと……紫色で、取っ手がその…こんな感じで、部分的にチェック柄で………」

『ふむふむ……』

『………もしかしてこちらの商品ですか?水色と対になるようになってるんですけど……』

絵里「………!これです、これ…たくさんあるんですね。よかった……」

『……ふふ、こちら…人気商品なので、たくさん売れてしまうんですが…その分在庫もたくさんあるんです。』

『通年生産してますし、もしまた割れてしまっても、……ほら、たくさんあるので。安心してお使い頂けますよ♪』

絵里「そう…なんですか……」

『ええ。こちら、お一つで大丈夫ですか?水色の方も一緒に買うと、クーポンをお配りしてるんですが…』

絵里「いえ…水色の方は、もう持ってるんです。実は2つセットで、プレゼントで貰ったもので……クーポンもあります。」ピラッ

『……!これは失礼いたしました。それではこちらの商品で……クーポンを使って……』


ピッピッ


『………』ジー…

絵里「………?」

『…………、あの……もしかして妹さんいらっしゃいますか?先日お客様によく似た素敵な髪の女の子が、セットで買いに来ていたので……』

絵里「………!はい、実はそのプレゼント…妹に貰ったものなんです。」

『…!やっぱりですか!いや~姉妹揃って美人さんで、羨ましいです。』

絵里「あはは……そんなことは、」

『そうなると…割れてしまった紫は、お客様のものか……彼氏さんのものですか?』

絵里「へ……っ?」

『ふふっ、このマグカップ、ペアで使うと幸せになれるって言われてるんですよ。ほら、お客様の後ろにも、書いて……』

絵里「………っ、」ガバッ


<彼と一緒に使いたい♡寒い冬はお揃いのカップでホットな気分に!当店おすすめのペアマグカップは、今年20周……>


絵里「…っ、////?!?!」

絵里「けほっ、けほ……亜里沙……なんで……」

絵里(もしかしてあの子、私の気持ちに気づいて……)

絵里(いやいやいや、それにしたって私達は付き合ってなんていないし……)

絵里(きっとあれよね、ペアとかまだよくわからないんだわ……希は私にとって初めてできた親友だし、だから少し特別だって思われてて……)

『あの……お客様?』

絵里「は…っ、はい?!なんでしょうか……」

『お会計……』

絵里「あ、ああ!はい、ちょっと待ってください……!」

ガチャガチャ


絵里「……っ、それじゃあこれで………」

『………、ふふっ』

絵里「………?」


『あ、いえ……ごめんなさい、』

『妹さん、そう言えば買うときに……お姉ちゃんと、お姉ちゃんの一番大切な人にあげるんだぁって、』

『ふふ、本当はお姉ちゃんの誕生日だけど、お姉ちゃん、その方が絶対喜ぶんです!って…笑顔で言ってたの、思い出して……』

『…いい妹さんですね。彼氏さんと…寒い冬も、きっとこれで温かく過ごせます。』

トスッ

『ふふ…っ、ありがとうございました。』

絵里「………」

絵里「ありがとう…ございます。」



ウィーン アリガトウゴザイマシター!



絵里「………」テクテク


絵里「………亜里沙……」

絵里(一番大切な人、か……)


絵里「ふふ……亜里沙にこうしてやられるなんて……思ってもみなかった。」

絵里(今日は帰ったら…希にこのカップを渡して、あったかいココアでも注いで…二人で飲みましょう。)

絵里(希、喜んでくれるかしら……?)



絵里「………」テクテク

---
--



希「はぁっ、はっ………」テクテク

希(病院で自殺なんてしたら、真姫ちゃんのお父さんにも…他の患者さんにも、迷惑がかかる…から)

希(とりあえず、なんとか出てきたけど……、)


希(外って………)



ガヤガヤ


『はい…はい……申し訳ありません。いや、しかし……』

『はい……大変申し訳ありません……』


『あっはは、それでそれで?そのキモヲタ彼氏どーしたのよ。』

『知らないわよあんなやつ!ちょっと顔がいいから付き合ってみたら、スクールアイドルが好きぃっとか言っちゃって…全然私のこと見てくれないし……!』


『ママ!パパ!帰りにアイス買って帰ろ~!』

『ええっ、もう11月よ?アイスなんて寒いわ…』

『お父さんはわかるぞ、寒いからこそ暖かい部屋で食べるアイスが美味いんだよなぁ。』

『そうそう!もーっ、ママはわかってないなぁっ』


『ちょ、まじミュータントガールズの時代きたな!!くっそかわいい~~』

『お前はそうやってすぐ乗り換えやがって。俺はずーっとA-RISE一筋だかんな!えれなん最高!!』


ワイワイガヤガヤ



希「…………っ、」テク…テク…

希(今日……土曜日だから、かな……大通り、人が多くて………)


『『ふふ…私じゃなくたって、誘拐して好き勝手したくなるわよ、そんなの。』』


希「…………っ、」ガタガタ

希「はぁっ……はぁっ………」ガタガタ


希(大丈夫……大丈夫………)

希(こんなん…自意識過剰な考えなんやから…)

ガサガサガサ………ガサガサガサガサ…ッ

ヨジ…ヨジ……ウネウネッ


ガサガサガサガサ!!!!ガサガサッ!!ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ


希「う…………」ガタガタ


希「………っ」ガタガタ

希(…………、ちょっとでも気をぬくと………頭がおかしくなりそう……)

希「………っ、あと…ちょっと………」ガタガタ

希(あそこで小道に曲がれば…大通りから離れる…し……家が、見えるはず………)


……テクテク

希(お父さんが……一人だと心配だからって、大きな病院の近くに部屋を借りようって、言ってくれて良かった…)

希「………!家、が…見える………」

希(すごい……久しぶり………)



ガサガサガサガサッ ガサガサッ!!!!

希「………っ」ビクッ


希「……はぁっ、はっ………」ギュッ

希「………」ガタガタ


希「……、あ…れ………」


希(ここって………)


『『プップッ!!』』


希「………っ?!」ビクッ


『『東條さん、東條さんー!』』


希「え………っ、え………?」ガタガタ

『…っ!…理事長、おはようございます。』

『『ええ、おはよう。ちょっと話したいことがあるのだけど…車、乗ってくれる?』』

『……?今…ですか?でももうすぐ学校が……』

『『ああ、それなら大丈夫よ、担任には伝えてあるから……』』

『『……その、絢瀬さんのことでね…?少し話したいことがあって。』』

『えりちのこと……ですか?』

『『ええ、だから乗ってくれる?』』

『は、はい……』


ガチャン

ブウウン………



希「…………っ、はぁっ、はぁっ……」ガタガタ

希「う……あ………うう………」ガタガタ


ドサッ フワッ


希「はぁっ……はぁっ……」ガタガタ

希「なん…で……車、乗って………」ガタガタ

希「だ…め………なのに、だめなのに………」ガタガタ

希「だめ………だめ………」ガタガタ

希「はぁっ、はぁっ………っ」ガタガタ


『………のん、ちゃん?』


希「………っ、」ビクッ

希「あ………えっ、あ………」ガタガタ

希「…………」ガタガタ

希「…っ、大家さん………?」ガタガタ


『ちょ、ちょっと……その髪、どうしたの?もしかしてあの事件で…』


希「…………っ、!!」

希(フード……いつの間に、とれて………)


『というか!体調も悪そうだし……、』

『ちょっとまっててちょうだい!今、救急車、呼ぶから………』


希「………っ、ま、待ってください!!」トテッ

希「はっ……は……えっ…と………」

希「だいじょうぶ…です、から……救急車、呼ばなくて……平気です……」


『でも………』


希「大丈夫……大丈夫、です……」

希「あはは…もう、おうち……帰るので。大丈夫です……」


『……、そう……?なら、いいんだけど………』


希「………っ、」フラッ


『…っ、!!』ガシッ

『……っとと、ちょっと…本当に大丈夫なの?』

希「あはは……すみません……」

希「……大丈夫、です……」


トテ…トテ……


希「………」フラフラ


『のんちゃん………』


『…………』





ガチャン


希「はぁっ……はぁっ………」ガタガタ

ズル……ズルズル

希「……、………っ」ドサッ

希「………」ギュ…


希「…………」


希「ただ、いま………」



シーン



希「………っ、………」


希「………」

希「……、はは……埃、すごい、な………」スス…

希「………」

希(…家族がいたら、1ヶ月いなかっただけで…こうは、ならないんだろうな……)



ドクンッ ドクンッ ドクンッ



希「………っ」

希「けほっ、けほっ………う……」ガタガタ

希「な、に………」ガタガタ

希「………、あ………っ」ガタガタ


希「………っ」スクッ



タタタッ

ガラララッ



希「……っ、はぁっ、はぁっ………」ガタガタ


希(やっぱり……密室は…だめなんだ……)



チュン…チュン




希「………」

希(……ここから…飛び降りたら、[ピーーー]る……かな…)

希「あ……大家さん………」

希「………」


希(ここで…自殺なんてしたら、この部屋、借り手…つかなくなっちゃうのかな)

希(大家さんに……迷惑、かかっちゃう)


希「………」ズル…ズル


ストン

希「はは……」

希「……死ぬのも、簡単じゃないなぁ……」

希(……とりあえず、えりちが貸してくれてるこの服は、返さないといけないし…着替えて、)

希(それから、お父さんとみんなに…手紙を書いて、)

希「そのあと…考えよっか」

希(えりちは今日は夕方まで帰らないみたいだし…大丈夫、よね)


希「………」スクッ

久しぶり、めちゃくちゃ待たせてすまん!
実はスマホ壊れて書き溜めがパーになって、やる気なくなってエタろうとしてた
…んだけど、免許合宿暇すぎる&こんな内容なのに待っててくれる人がいたことが嬉しいからまたやってこうと思う
当初予定してた内容だいぶ忘れちゃったから、色々おかしかったらごめんな

長文すまんな
ちょっとずつ更新してくよ

>>743 訂正

希(……ここから…飛び降りたら、死ねる……かな…)

希「あ……大家さん………」

希「………」


希(ここで…自殺なんてしたら、この部屋、借り手…つかなくなっちゃうのかな)

希(大家さんに……迷惑、かかっちゃう)


希「………」ズル…ズル


ストン

希「はは……」

希「……死ぬのも、簡単じゃないなぁ……」

希(……とりあえず、えりちが貸してくれてるこの服は、返さないといけないし…着替えて、)

希(それから、お父さんとみんなに…手紙を書いて、)

希「そのあと…考えよっか」

希(えりちは今日は夕方まで帰らないみたいだし…大丈夫、よね)


希「………」スクッ

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---
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絵里「よいしょっと………」

絵里(もうこんな時間……そろそろ帰らないと、)

絵里(必要なものは大体買えたし…あとはそこのおっきなドラッグストアで、髪染めを買えば……)

絵里「あら……」


絵里(こんなとこに…書店コーナーが……)

絵里(………、最近できたのかしら…)

絵里「……!」

絵里(そういえば物理の参考書、買わないと…随分ご無沙汰だもの、受験に響いちゃう……)


タタタッ



絵里「えーっと……この辺かしら……」

絵里「……!、このあたりね。」



絵里「………」ペラ…ペラッ



<万有引力とはーーであり、宇宙はーーー>


絵里「………」

絵里「………」ペラッ


<音の伝わる速さはーーー>

絵里「………」ペラッ


<エネルギーとはーーー>


絵里「………」ペラッ


<電力はAで表し、コンデンサーを繋ぐとーーー>


『『ふふ……あのね、絢瀬さん。人は5mAから痛みを感じて、10mAからは耐え難い引きつけを感じる……それでね、20mAからは筋肉の収縮、呼吸困難………』』


絵里「………っ、え………っ?」

絵里「なに…どこから………」キョロ…


ドクンッ


絵里「…っ、?!、はぁっ、はっ………」ガタガタ


『『……まぁ簡単に言うとね、20mAって電流は…長く流し続ければ、人が死ぬ大きさの電流なのよ。』』


絵里「はっ………はぁっ、はっ………」ガタガタ

絵里(なに…これ………)

『『バリバリバリッ、バリ……ジジッ……』』


絵里「ひ………っ、う…うう……嫌…っ!!、嫌………」ガタガタ


『『ふふ…さっき貴女に流した簡易式スタンガン。これ…自分に10秒間通電するたびに、東條さんの電源…1分間切ってあげる。』』


絵里「あ……あ………やめて……や、め………」ガタガタ


『お客様…?お客様っ?!大丈夫ですか?』


絵里「ぁ……あ…………っ」ガタガタ



「……?今、向こうの騒ぎから絵里の声が……」

「絵里ちゃん?参考書コーナーの方かな……」


タタタッ

絵里「………っ、!!?にこっ!!ことりっ!!!」ガタガタ



タタッ………ギュッ


にこ「んぐっ……絵里……?ちょ、ちょっと、何が………」

絵里「はぁっ、はっ……理事長が、声が………!」

ことり「………っ、お母さんが……?」

ことり「………、この参考書………」

絵里「はぁっ…はっ……はぁっ……」

にこ「……っ、絵里、落ち着いて、落ち着い……ことりっ、一旦この店出るわよ!」


ことり「…っ、う、うん……!!」

---
--



絵里「ん……ん……」ゴク…ゴク…


絵里「………、ふう。」


ことり「落ち着いた……?」ナデナデ

絵里「……ええ、迷惑かけてごめんなさい…」

ことり「迷惑なんて……」

にこ「…そうよ、私もことりも迷惑だなんて思ってないわ。」

絵里「……ありがとう。」

にこ「それで……何があったのよ。」

絵里「…、それが……私にもよくわからないの。物理の参考書を読んでたら、突然理事長の声が聞こえて……、」

絵里「………!」

ことり「お母さんの……?」


絵里「……っ、これ……多分、希と同じの……」

にこ「……希と同じのって…PTSDとかいう……?」

ことり「そういえば絵里ちゃん、私達に…希ちゃんがお母さんにされたこと、言おうとした時も……」

絵里「………」

絵里「……でも、私のは…多分希のよりは、よっぽど軽いから……大丈夫。」

ことり「…っでも……」

絵里「私のは……それこそ物理とか、事件の全貌を話すとか…直接それに関わるようなことまで触れなければ、出ない程度だと思うの。」

絵里「だからそれらを避ければ……多分、何の問題もないから。」

ことり「絵里ちゃん……」

絵里「ごめんなさい。それより私…急いで帰らないと。」


絵里(さっきの…一瞬だったけど、心の中が恐怖心みたいのでいっぱいになって…不安で不安で、すごく怖かった)

絵里(偶然二人が来てくれたから良かったけど…一人だったら、あのままどうなっていたかわからない)

絵里(希は私と違って、もっと些細なことでも、あの発作みたいなものが起こるから……)


絵里「……っ、一人置いてきたのは、間違いだったかもしれない……」スクッ

にこ「…っ、ちょ、ちょっと、待ちなさいよ。」ゴソゴソ…

絵里「にこ……?」


にこ「……、はいっ、これ…希の髪染め。渡してやって。」

絵里「これ………にこと、ことりが…?」

絵里「3つもあるけど……」

ことり「えへへ…希ちゃんの髪って…黒髪だけど、少し紫がかってて…普通じゃ買えないの。だけどできるだけ希ちゃんの、元の色に近い色を選びたくて…」

にこ「だからそれ、1:2:3くらいの割合で混ぜてみて。多分かなり近い色になると思うわ。」

にこ「ほら、あんたはこういうの疎そうだから……私とことりで、選んでおいてあげたってわけ。」

絵里「にこ……ことり………」

絵里「……っ、ありがとう。希…きっと喜ぶわ。」

ことり「ふふ…うん!」

にこ「…さぁさっ、それじゃあ行くわよ…っと。」グイッ

絵里「…!それ、私の荷物……」

にこ「いいのよ。あんたさっきまで息ぜえぜえしてたんだから…私達に任せなさい。」

ことり「ふふっ、そうそう!私達に任せて!」グイッ

絵里「二人とも……」

絵里「……、ありがとう。」

にこ「じゃあほら、行くわよ。」

ことり「真姫ちゃんちの病院まで、れっつご~♪」

---
--


ガタンゴトン

希「………」



ガサガサガサガサガサガサガサ


ガサガサガサガサガサガサガサガサ



キャハハッフフッ


『……でさ、この間ね………』

『なにそれめっちゃうける~』


ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ


『『ふふ、残念だけどここから出るのは不可能よ。だってここは…地下だから。』』


ノソ…ノソ…


<<次は~新橋、新橋~~>>


フフフッアハハッ


『やっぱ女は人間扱いしちゃだめよ、犬かなんかだと思ってしつけねえと…』

『まぁ俺くらいにもなれば…』

『やっぱ先輩は流石っすねー!!』

ギャハハハッ

ガサガサガサガサ ガサガサガサ
ガサガサガサガサ ガサガサガサガ


希「は………っ」ガタガタ

希「けほっ……げほ………う……」ガタガタ

希「はぁっ……はぁっ……」ギュ…

希「…………っ」


希(……電車を選んだのは、間違いだったかな………)

希(…できるだけ遠くの、海とか…山とかで死んだ方が、人に迷惑かけないかなって…思ったんだけど……)

希(……、想像以上に、しんどい………)


希「っ、………うう………」ギュウ…


『…あの、大丈夫ですか?』

希「………っ、ぁ、いや………」

『次の駅で…駅員さん、呼びましょうか?なんなら救急車でも……』

希「……っ、大丈夫、です………」

希「あ、えと……あは、は……次の駅で、降りるので……」


『でも……』

ガタンッ


<<新橋、新橋~!御降りのお客様はーー>>


希「あ、ついたので…降りますね、心配ありがとうございました。」

タタッ…

『あっ……』


<<扉が閉まります。>>

ガタンッ


ガタンゴトン……ガタンゴトン……


希「はぁっ……はぁっ………」ガタガタ


フラ……フラッ

ストン


希「は………は………」

希(電車…急行、だったからかな……人が多くて、扉もなかなか開かなくて……つらかった…)

希(ちょっとだけ……休憩。)


希「ん……ん……」ゴク…ゴク


希「………」



希(……そろそろえりちが、気づく時間…かな……)

希(書き置きを残してる以上、警察がわざわざ動いたりはしないだろうし……)

希(ある程度遠くに行ってしまえば、見つかることもない…はず。)

希「けほっ…けほっ……はぁっ……」

希「………」ガタガタ



希「………っ」ギュ…

希「………、っはは…次、どれに乗り換えたら、いいかなぁ……」

----
---
--



絵里「はぁっ、はぁっ、にこ!!ことり!!」

タッタッタッタ……


ことり「絵里ちゃん?」

にこ「ちょ……どうしたのよ、希は?」


絵里「けほっ…けほっ、それが………!」

絵里「病室に行ったら…っ、希、いなくて……!」

絵里「けほっ、看護師さんに聞いたら、さっきから姿が見えなくて、探してるって………!」

にこ「ええっ!?ちょっとそれ…っ、どういうことよ……っ」

絵里「わからないの…ただ、病院にはいないみたいで……」

絵里「何か用があって外に出たのか…それとも………っ」

絵里「ど…どうしたら……なんで、どうして………っ」

にこ「…っ、ちょっと絵里は一旦、落ち着いて………!」

ことり「ね、ねえ……希ちゃんって、外に出られる状態なの…?」

ことり「その…体とか………」

絵里「……っ、体はともかく……無理よ、まだ外に出られる状態じゃない……」

絵里「希………」ジワ…


にこ「………っ、探すわよ……!」

絵里「にこ……」

ことり「……そうだね、みんなにも手伝ってもらおう!」

絵里「…っ、ことり………」

ことり「……、大丈夫。みんなで探せば…すぐに見つかるよ、希ちゃん。」

にこ「…そうよ。こんなこと言いたくはないけど…あの髪色なら、目立つはずだし……」

絵里「………」

絵里「そう、ね……そうよね。」

絵里「私…希の家、見てくるから……だから二人は他の場所、お願い……!」

にこ「ええ、わかった。とりあえず希がいたかいなかったか、着いたら連絡してくれる?…それからことり、二年組に連絡おねがい。私は一年生に連絡回すからっ」

ことり「うんっ、わかった!学院集合でいいかな?」

にこ「大丈夫。じゃあことり、行くわよっ!」

ことり「うんっ!」


タッタッタッタ……


絵里「にこ……ことり……」

絵里「希の家…ここからならすぐ、よね…」

絵里(希……もしかしたら家に何か取りに行って、そのまま出られなくなってるのかもしれない)

絵里(またはあの発作でつらい思いをしていて…何が何だかわかっていないのかも……)

絵里「…………っ」


絵里「希………」

絵里(……ごめんね、一人で置いていったりして……でも、)


絵里(待ってて……今、行くから!)


タッタッタッタ……

書くの久々すぎて書き溜めに時間かかってるから気長に待ってくれな
すでに散々待たせすぎてるが
夏休み中に完結できたらいいなあと思ってるけどどうなることやらって感じだ

あと支援ありがとうな
嬉しい

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年09月05日 (水) 12:26:45   ID: xvOCXjvN

初コメです。楽しみにしています!

気長に頑張って下さい!

2 :  SS好きの774さん   2019年07月01日 (月) 21:35:01   ID: rkN3qbEt

私生活、大変とは存じますが続きをお待ちしております。お身体にお気をつけて、気長に頑張ってください!

3 :  SS好きの774さん   2020年03月17日 (火) 04:02:50   ID: _kfNx9n_

楽しみに待ってます!!

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