こども広場――
おじさん「はいっ、それじゃ今日のラジオ体操はおしまい!」
おじさん「みんな、小学校に行ってらっしゃーい!」
「はーいっ!」 「いってきまーす!」 「ありがとうございました!」
おじさん「ふふふ……みんないい子たちだ」
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午後――
子供「おじさん、おじさん!」
おじさん「ん?」
子供「広場にね、怖いお兄さんたちが集まって遊べないんだ!」
おじさん「ふむ、それはいけないな」
おじさん「よろしい、おじさんが追い払ってあげよう」
こども広場――
ヴォンヴォンヴォン… ブォォォォォン… ブォォォォォン…
「ヒャッハーッ!」 「なかなかいい広さだな!」 「今度からここを溜まり場にしようぜ!」
おじさん「……やれやれ、暴走族ですか」
おじさん「君たち」
暴走族A「あ? ンだよ、おっさん」
暴走族B「あ、こいつ知ってる。たしかにいつもラジオ体操やってるジジイだぜ」
暴走族A「ラジオ体操とかウケるわ~!」
おじさん「ここは子供の遊び場です。出ていってもらえませんか」
暴走族A「ハァ~? 出てくわけねーだろ?」
暴走族B「つうか、オレらも子供だし? 未成年だし? ここ使う権利あるし?」
暴走族A「ギャハハハ! それいえてる!」
おじさん「……」
おじさん「ならば力ずくで出ていってもらうしかなさそうですね」
暴走族A「あぁん? やってみろよ」
おじさん「深呼吸~!」
おじさん「すぅ~はぁ~……」ビュオオオッ
暴走族A「うおおっ! なんだこの風ぇっ!?」
おじさん「いかがです?」
暴走族A「てんめぇ……やりやがったな!」
暴走族A「オレらのモットーは喧嘩を売ってきた奴は全殺し、なんだ」
暴走族A「仲間全員集めて、八つ裂きにしてやるよ!」
おじさん「では私は集まるまで準備体操でもしていましょう」
暴走族A「ナメやがって……!」
ズラッ……
暴走族A「へへへ、どうだぁ? この数! 総勢100人! ビビったろ!?」
暴走族B「今さら命乞いしたって遅いぜぇ?」
おじさん「するわけないでしょう、そんなこと」
おじさん「では始めましょうか」
おじさん「ラジオ体操の恐ろしさ……思い知らせてあげましょう」
暴走族A「かかれーっ!」
ワァァァッ!
おじさん「ラジオ体操第一、始めっ!」
おじさん「両手を上に伸ばし、背伸びをしてから、下ろします」
おじさん「いち、に、さん、し」ドカッバキッ
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」ガスッドガッ
グギャァァァ グエエッ ゲボォッ グハァッ
暴走族A「振り上げた両手を、ものすごい勢いで振り下ろしてやがる!」
暴走族B「まるで空手チョップだ!」
おじさん「握った両手を、足を曲げながら、横に振ります」
おじさん「いち、に、さん、し」バキッドガッ
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」ボゴッグシャッ
おじさん「いち、に、さん、し」ドカッボカッ
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」ドゴッドガッ
グエッ グハッ ウギャァァァ グオオッ
暴走族A「左右に振りかざされる両拳が、左右から近づく敵を倒していくぜ!」
暴走族B「足を曲げることで、下半身のバネを極限まで生かしてやがる!」
おじさん「腕を外側と内側に大きく回します」
おじさん「いち、に、さん、し」ブンブン
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」ドガバキッ
おじさん「いち、に、さん、し」ブンブン
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」ドゴッバキッ
グハァッ グゲェェッ イデェッ ガハッ
暴走族A「これは遠心力……遠心力だ!」
暴走族B「腕を振り回すだけで、あんなに威力が出るものなのか……!」
おじさん「足をやや開き、腕を左右に振りながら、胸を反らします」
おじさん「いち、に、さん、し」ドカッバキッ
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」キンッキンッ
おじさん「いち、に、さん、し」ドゴベキッ
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」キンッキンッ
グハァァ ヒィィィッ ウギャァァッ グハァッ
暴走族A「胸を反らす時の手の振り、恐るべき威力だぜ!」
暴走族B「しかも、胸を反っている時は無防備に見えるが、胸筋が固められ鉄壁の防御だ!」
おじさん「片手を上げて、体を左右に曲げます」
おじさん「いち、に、さん、し」バキグシャッ
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」ドカッバキッ
おじさん「いち、に、さん、し」ガシュッメキッ
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」ベキッバゴッ
グホッ ギャァァァァ タスケテェェ ガハァッ
暴走族A「体を横に曲げつつ、その方向にいる敵に的確に攻撃してやがる!」
暴走族B「ち、ちくしょう! まるでスキがねぇぜ!」
おじさん「体を前と後ろに曲げます」
おじさん「いち、に、さん、し」ドゴッ
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」ガツンッ
おじさん「いち、に、さん、し」ドゴッ
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」ガツンッ
オブッ グギャッ イデェェ グハァッ
暴走族A「体を前に曲げる時、頭突きしてやがる!」
暴走族B「しかも、背後から攻撃されても、すかさず後頭部で頭突きしてノックアウトかよ!」
おじさん「体を左右にねじります」
おじさん「いち、に、さん、し」ググッ…
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」ブオンッ ドゴォォォンッ
おじさん「いち、に、さん、し」ググッ…
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」ブオンッ ズギャァァッ
グギャァァァァァッ グワァァァァァッ
暴走族A「体をねじったエネルギーを利用したパンチ!」
暴走族B「まるで紙切れのようにオレらの仲間が吹っ飛んでやがる……!」
おじさん「足を開きながら、手を肩につけ上に伸ばします」
おじさん「いち、に、さん、し」カクッカクッ
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」カクッカクッ
おじさん「いち、に、さん、し」カクッカクッ
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」カクッカクッ
オォォ… スゲー… カックイー… パチパチパチ…
暴走族A「このロボットダンスっぽい運動、ダサイと思ってたけど、よく見るとかっこいいな……」
暴走族B「くそっ、見とれちまった! おい、てめえら攻撃再開だ!」
おじさん「体を斜め下に曲げてから、胸を反らします」
おじさん「いち、に、さん、し」ドカッバキッ
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」キンッキンッ
おじさん「いち、に、さん、し」ドゴッベキッ
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」キンッキンッ
グヘェッ アギャッ グボッ ギャァァッ
暴走族A「斜め下に体を曲げる時の打撃、やっぱりとんでもねえ威力だ!」
暴走族B「胸を反らしてる時は相変わらず無敵状態だしよ! くそぉっ!」
おじさん「両手を伸ばし、体全体を回します」
おじさん「いち、に、さん、し」グオオオン
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」ビュオオオオオッ
おじさん「いち、に、さん、し」グオオオン
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」ビュオオオオオッ
ウワァーッ タスケテーッ トバサレルーッ ヒェェェッ
暴走族A「ウソだろ!? 回転で竜巻を発生させてやがる!」
暴走族B「オレ、生で竜巻見るの初めてだよ……」
おじさん「飛び跳ねながら、両手を開きます」
おじさん「いち、に、さん、し」ピョンピョン
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」ドカバキッ
おじさん「いち、に、さん、し」ピョンピョン
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」ドゴベキッ
グハッ ギャフッ グワァッ ゲバァッ
暴走族A「なんて跳躍力だ……! まるで……蝶(バタフライ)!」
暴走族B「このおっさん、空中戦もイケるのかよ……!」
おじさん「握った両手を、足を曲げながら、横に振ります」
おじさん「いち、に、さん、し」ドカッバキッ
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」ドゴッベキッ
おじさん「いち、に、さん、し」ボゴッグシャッ
おじさん「ごぉ、ろく、しち、はち」ガスッボゴッ
グボォッ ゴハァッ ギャピィッ グゲェェェ
暴走族A「序盤にやった運動と同じ運動だけど……威力が上がってねえか!?」
暴走族B「きっとラジオ体操で体がほぐれたからだろうぜ……!」
おじさん「ではラスト」
おじさん「深呼吸でーす」
おじさん「大きく息を吸い込んでーっ!」スゥー…
おじさん「吐きまーす」ビュゴォォォォォッ
ビュオォォォォォォォォォォッ
暴走族A「と、飛ばされっ……!」
暴走族B「なんて吐息だっ!」
暴走族AB「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……っ!!!」
おじさん「……おや?」
シーン…
おじさん「もう全滅してしまったのですか」
おじさん「やれやれ……どうやら第二の出番はないようですね」
おわり
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