晶葉「新発明が出来たぞ!」モバP「…ミラーボール?」 (18)

晶葉「む、確かにミラーボールに形状は似ているが、そんな単純なものじゃないぞ!」

P「まあ晶葉の発明だからな、違うとは思ってたよ。今回はどんな物なんだ?」

晶葉「そうだな、折角だからこのメカを使って説明をするとしようか。座標はこの部屋…効果時間はそうだな、二分程度でいいか。それ、ぽちっとな」

そう言って取り出したリモコンを晶葉が操作すると、ミラーボール状のメカから深夜のテレビで聞いたことがあるようなBGMが流れ出した。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1479706257

P「HEY晶葉!今日はいったいどんなマシンを紹介してくれるんだい?」

晶葉「OKこいつを見てくれ、何に見える?」

P「うーん、ラブホで見たことがあるね、こういうの」

(どこからともなく響く笑い声)

晶葉「ノンノン。こいつは『ムーディーメイカー』といって、指定したエリアの人たちが設定された条件に沿った反応をしてしまう機械なんだ。ちなみに今この部屋は【深夜の通信番組】に設定されているぞ」

P「Oh、そいつは凄いな!そいつがあれば難しい演技だってちょちょいのちょい☆じゃないか!」

晶葉「その通りさ!」

ちひろ「でも、お高いんでしょう?」

晶葉「今なら予備のリモコンもおまけして、なんとこの価格!」

(空中に映される価格表示、どこからともなく響く感嘆の声)

P「ヒュー!この機会を逃すわけにはいかないぜ!」

ちひろ「お申し込みはこちらの番号まで!」

メカから歌うように電話番号が読み上げられ、そして音楽が途絶えた。

P「…なんだこれ。なんだこれ!」

晶葉「ふふふ、お分かりいただけただろうか」

P「分からんわ!あとちひろさん、いつの間に!」

ちひろ「Pさんの部屋から急に妙な音楽が流れてきたので…ちゃんとノックしましたよ?返事がないから入ってみたら、なんだか急にああ言わないといけない気がして…」

晶葉「効果範囲をこの部屋に設定していたからな。うむ、座標指定もバッチリのようだ」

P「…すまん、もう一回普通に説明をしてくれ」

晶葉「仕方ないな。こいつは『ムーディーメイカー』といってだな、音響や照明などを用いて指定した範囲に特殊な雰囲気の空間を作り出し、そこに居る人達の反応を誘導するメカだ。先程はこの部屋を【深夜の通信番組風】に設定したわけだな」

P「なるほど、それで急にさっきみたいな喋り方になったわけか…これ洗脳じゃないのか?」

晶葉「ハハハ、洗脳とは違うさ。雰囲気に流される、という言葉もあるだろう?それを少し強めただけだよ」

ちひろ「だけ、というには謎の強制力を感じましたけど…」

晶葉「大丈夫、ちゃんと実験も済ませてある。今日は事務所で効果の確認をしたくて持ってきたんだ」

P「うーん…設定次第ではアイドル達には演技の練習にもなるかもしれないし、やってみるか」

晶葉「流石は助手、その物分かりの良さは好きだぞ」

ちひろ「Pさんがそう言うのでしたら…私はこれから少し外回りに出てきますけど、注意して使ってくださいね?」

P「気を付けます。ところで晶葉、他にはどんな設定があるんだ?」

晶葉「完成している設定はまだ少なくてな、これから増やしていこうとは思っている。今の所実装しているのは【某美食アニメ風】【昼ドラ風】と言ったところか」

P「ふむ、それじゃあ早速事務所にいるアイドル達に説明を…」

晶葉「待った、出来れば自然な条件での反応を見たい」

P「うーん…まあ害は無いだろうし、あとで説明という形にするか」

晶葉「そうと決まれば、早速行くぞ!」

Pと晶葉が事務所を覗くと、レンジの前で茜がうろうろしているところであった。

茜「うーん、まだでしょうか…待ち遠しいです!」

晶葉「よし、ちょうど茜がレンジで何か温めているぞ。この臭いは…カレーか」

P「茜には食レポの仕事を増やそうかと思っているから、いい勉強になるかもしれないな」

晶葉「では準備しておこう。設定は美食アニメ風、食事用のテーブル周囲に座標を指定して…時間はそうだな、彼女の食事速度なら3分もあればいいか…よし、あとは茜が席に着いたらボタンを押すだけだ」

P「しかし美食アニメ風か…美食アニメ?もしかして…」

その時Pの脳裏をよぎったのは、何故か美味しいものを食べると服が破れるアニメだった。

P「晶葉、ちょっと待った…」

茜「それでは!いただき!ます!」

晶葉「さすがは茜、席に着いてから食べ出すまでも早い!それ、ぽちっとな!」

P「遅かったか…」

せめて服がはだけたら隠してやろうと上着を脱ぐPであったが、その心配は杞憂であった。

茜「もぐもぐ…ぅ、ぅう、うーまーいーぞー!!!」

眼と口から飛び出す怪光線、何故か背景は宇宙になっていた

P「あー…美食アニメって、そっちか」

晶葉「この前ウサミンにビデオデッキの修理を頼まれてな。直した後に一緒に見たアニメが面白かったから、参考にしてみたんだ」

P「何年前だっけな、これが放送されてたの…」

茜「もぐもぐ!これはなんというか…美味しいですね!とても美味しいです!例えるならば…そう、美味しいカレーです!」

P「…茜の語彙力が相変わらずなんだが?」

晶葉「あくまで雰囲気を高めるものだからな、語彙力を補うような効果は無い」

P「うーむ、リアクション芸の訓練にはなるかもしれないが、求めていたものとはちょっと違うな…」

茜「おかわりです!!」

P「気を取り直して次に行くか。次は昼ドラ風、だったか?」

晶葉「ああ、しかしご飯時だからか人が居ないな」

そんな話をしていると、タイミング良く肇と周子が事務所に戻ってきた。

二人はカフェスペースで食後のお茶を楽しむようだ。

晶葉「よし、ではカフェスペースを範囲にして昼ドラ風いってみるか。これは私にもイマイチどうなるのか予想が出来なくてな…設定時間は10分くらいにしておこう」

スイッチが押されるとともに、和やかなメロディが流れ始めた。

周子「久しぶりにラーメンなんて食べたけど、美味しかったねー」

肇「そうですね。ただ、服や髪に臭いが付いていないか少し心配です」

周子「んー、ちょっと失礼…フンフン、大丈夫大丈夫、いい香りだよ。それにしても前から思ってたけど、肇ちゃんの髪って綺麗だよねー」

肇の髪を手に取り、軽く撫で付ける周子。

思わず赤くなる肇だが、満更でもない様子であった。

肇「あ、その、ありがとうございます…」

周子「ふふ、照れちゃった? かいらしいなぁ」

周子の視線に耐えられず、赤く染まった顔を伏せてしまう肇。

ロマンティックなBGMが雰囲気を盛り上げる。

しかし、そんな二人を見つめる一対の視線があった。

紗枝「あらあら、なんや周子はん、えらい楽しそうどすなぁ」

紗枝の登場とともにカフェスペースの照明が落とされ、三人はピンスポで照らされる。

急に不穏さを醸し出したBGMも相まって、観客へ与える不安感はうなぎ登りだ。

紗枝「うちの髪もよう褒めてくれはりますけど、周子はんは誰にでもそういうこと言わしますんやなぁ…がっかりやわ」

周子「あ、あはは、誤解だって紗枝ちゃ…」

ソファーから立ち上がろうとする周子。

それを引き留めたのは、俯いたまま周子の服をしっかと掴んだ肇の手であった。

周子「あれ、は、肇ちゃん…?」

肇からの返事はないが、強く握られたその手が離されることは無かった。

そんな二人の姿を見て、紗枝の瞳がさらに細められる。

紗枝「ほー…誤解、誤解なぁ…うちにはそうは見えへんけどなぁ…」

周子「いや、その、違うんだって」

紗枝「周子はんは黙っとり。何か言ったらどうどすか、この…泥棒猫」

顔を上げ、涙目で紗枝を睨み返す肇。

どこからか聞こえる雷鳴、鳴り響く不協和音交じりのBGM。

昼下がりの奥様を夢中にさせる修羅場がそこにあった。

晶葉「ほほう、これが痴情のもつれの三角関係というやつか…興味深い」

P「ちょ、落ち着いて見てる場合か!いつ刃傷沙汰になってもおかしくない雰囲気だぞ!?紗枝なんか懐に手を入れてるし!止めろ、今すぐ!」

晶葉「すまん、中断機能はつけていなくてな。設定した終了時間までは…あと5分ほどか」

P「長すぎる!こうなったら直接…」

晶葉「あの空間に踏み込んだら、Pも昼ドラ世界に取り込まれるぞ」

P「う、そうだった、下手したら俺が刺す側になりかねない…そうだ、電源を落とせば!」

晶葉「強制終了は今の状況ではお勧めできないな。一応緊急手段は用意してあるが…」

P「対策があるなら早く!ああ、紗枝も肇もハイライトが仕事してない!?」

晶葉「ふむ、了解だ」

そう言って耳栓を装着し、リモコンを操作する晶葉。

「設定は事務所全域、緊急手段発動!」

その掛け声とともに【I・N・D】と書かれたボタンが押しこまれた。

(エ~ナ~デ~ ヴェ~ナ~ディ~ラ~ ハ~ラ~ テラヴィンチャ~ラ~ ナンチャ~ラ~)

思わず踊りだしたくなるようなBGMが流れ出す。

カレー屋などでお馴染みのボリウッド音楽と呼ばれるメロディーである。

最初に動いたのはPであった。

満面の笑みでキレのあるダンスを披露するP。

踊りながらPの横に並ぶ肇、周子、紗枝、そして茜も同様の笑顔である。

タイミングよく事務所に戻ってきたアイドル達も次々とバックダンサーとして加わっていく。

もうお分かりだろう。【I・N・D】…インド映画である。

5人を中心にダンスはどこまでも盛り上がっていく。

音楽が止まった時、事務所は謎の一体感に包まれていた。

耳栓で影響を逃れていた晶葉はその完成度にご満悦だった。

晶葉「うむ、これにて一件落着!」

こうしてムーディーメイカーは封印された。

余談だが、翌日から事務所にレトルトカレーとチャーイが常備されるようになったという。

以上です。読んでいただきありがとうございました。

池袋博士の発明シリーズ書いてて本当に楽しい。

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