川島瑞樹「絶対に許さない」 (34)

P×瑞樹さん

サマカニ、川島さんについて一部独自設定があります。

※川島瑞樹
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――他の人なら、何言われても、大人ですもの、こらえます。

――貴方はダメよ。そんな言葉は、我慢ならない。許せない。

――取り消しなさい、今すぐに。




「プロデューサー君、グラスが来たから、乾杯の音頭をお願いね」
「それでは、サマカニ・サマプリの成功を祝しまして……乾杯っ」

静かな夜のバーカウンターで、
川島瑞樹と彼女の担当プロデューサーはグラスを軽く合わせた。



二人の所属するプロダクションの夏イベントで、
新曲『サマカニ』を引っさげて登場した臨時ユニット・サマプリは、
川島瑞樹をリーダーとして、ほかに日野茜、堀裕子、上田鈴帆、難波笑美の5人で組まれていた。

「今回は本当に……アイドルになってから一番キラキラしたかも知れないわ。
 これもプロデューサー君が、私の好き勝手やらせてくれたおかげねっ」

サマプリはイベントでファンから大好評を博し、
ユニットの5人――特にリーダーを務め上げた川島瑞樹の評価は大きく上がっていた。

「好き勝手……というか、ほとんど川島さんが内容を詰めてましたよね」
「私が見たときの企画書には『夏』『海』『正統派アイドルユニット』としか書かれてなかったわね。
 あれがウワサの3行企画書ってものかしら? 見た瞬間、胸が高鳴ったわ。
 つい4行目に『リーダー:川島瑞樹』って勝手に書き加えちゃうぐらい」



数ヶ月前、夏に向けて企画を練っていたプロデューサーは、頭を抱えていた。
彼はアイドルのプロデューサーではあったが、通せる企画がバラエティ方面に偏っていた。

しかしこの夏は、正統派アイドルの仕事を瑞樹へ回したい、と考えていた。



「あの時は、企画が全然煮詰まらなくて……長いこと、あの3行で止まってたんですよ」
「でも、私がビビビッと来るにはあの3行で十分だったわ!
 それからは……私のワガママをプロデューサー君に聞いてもらっちゃって……。
 今更だけどごめんね。貴方の企画なのに、私がいじりまわしちゃって」

サマプリは、曲『サマプリ』や衣装のイメージ・発注、ユニットのメンバー選定など、
かなり基本的な段階から瑞樹が関わることとなった。



「もし瑞樹さんが動いてくれなかったら、あの企画は成り立ちませんでした。
 まず瑞樹さん以外の面子が僕の担当じゃなかったので、瑞樹さんが一緒じゃなかったら、
 彼女らの担当プロデューサーを口説き落とせなくて、メンバー集められませんでしたよ」

サマプリのメンバーのうち、このプロデューサーの担当アイドルは瑞樹だけだった。
メンバー候補は同じ事務所から瑞樹が選定し、候補とその担当プロデューサーを説得するのも二人で行った。

「私は『普段バラエティ寄りな子で正統派』ってコンセプトに沿って考えただけよ」
「プロデューサーはたいてい『自分の担当が一番』だと思ってるので、
 臨時と言えど、担当の子を貸し借りしてユニット組むという発想が出ないんです」

サマプリが大きな評価を得たのは、ファンの反響もさることながら、
『別々の担当プロデューサーを持つアイドル同士を組ませて成功例を作った』ということで、
他のプロデューサーへ大いに刺激を与えた点が大きかった。



「それに……企画が動きだしてからも、メンバーの引率とか、瑞樹さんに投げてしまって……」
「うふふ、私は一番のお姉さんだったし、それに私って仕切りたがりでしょう。
 プロデューサー君は、私のそういうところ察して任せてくれたんだと思ってたけど」

サマプリがパフォーマンスを仕上げる合宿は、施設の手配はプロデューサーが行ったものの、
メンバー同士をまとめてライブまで持っていく役目は、リーダーの瑞樹が担った。

「……プロデューサーって、担当への『うちの子』意識があるんで、
 同じ立場の僕が口を出すと角が立つんですよ。そこがスムーズに行ったのも瑞樹さんのおかげです」
「そうなの? プロデューサーの視点って、アイドルではわからないものね……」



何気なく漏れた言葉に、瑞樹の本音が混じっていた。

(サマプリ、他のみんなは文句なしに成功だって言ってくれてるのに、
 プロデューサー君だけは、あまり喜んでくれてない気がするのよね)

瑞樹はプロデューサーに何かあるのではないかと思い、
それを探るべくサマプリの打ち上げという名目で、二人きりの時間を作った。

(『ライブ帰りの打ち上げはみんなと賑やかに過ごしたけど、
 今度は大人だけの落ち着いた雰囲気で振り返りたいのよね』
 ……とかなんとか。我ながら強引な理屈だわ)



「んーでも、改めて考えてみると……プロデューサーのように、色んな人の間を調整して、
 制作進行の大きな流れを仕切る立場にとっては、横から口出されるのってやり辛いのかしらね。
 ……あー、うわぁ……」
「どうしたんですか、瑞樹さん」

不意にオーバーアクションで額を抑えた瑞樹を、プロデューサーは訝しんだ。

「……いや、局アナ時代を思い出して。アイタタタって思っちゃったのよ。
 あの頃の私、良かれと思って――自分が目立ちたいって願望もあったけど――番組に口出してたわ……。
 今思えば、他の人に煙たがられてただろうなぁ、って」

額を抑えたまま、瑞樹は横目でプロデューサーに視線を投げた。

「もしかしてプロデューサー君も『川島はいつも好き勝手言って』とか思ってたり……」
「まさか、そんなことは」

「ホント? ホントにホント?」
「本当ですってば」

「私、元アナウンサーだから、言葉には厳しいわよ?」
「そんなに気になりますか」
「ごめんね、しつこい聞き方したわ」



(うーん、ハズレかしらね……)

プロデューサーの声音から怒りも苛立ちも感じ取れなかったので、瑞樹は追及を引っ込めた。

(私が仕事で、アレやりたいコレやりたいってうるさいから、
 プロデューサー君はそれを煙たがって、喜んでくれないのかと思ったのだけど)



二人はとりとめのない話に戻り、
グラスの中身を遅めのペースで減らしていた。

しかし瑞樹の心中は焦り気味だった。

(え、えーい、ミズキ! 何で時間を浪費してるのよ、私らしくないっ)

瑞樹は、二人でつかんだはずのサマプリの成功を、
プロデューサーがどこか他人事のように捉えている気がしてならなかった。

(そんなに気になるなら、直に聞けばいいじゃないの)



瑞樹は話術に自信を持っていた。

アナウンサーは与えられた原稿を読むだけの人間ではない。
機転と見識で番組・トークの舵取りをしなければならないこともある。

それらを含めた話の訓練など、
アナウンス学校時代を含めれば他アイドルの百倍はやった、と瑞樹は自負している。

(それが……スムーズにできなくて、スッキリさせられない……。
 そもそも何で私は、プロデューサー君に成功を喜んでいて欲しいのかしら)

口が回らないのは頭が回っていないから――瑞樹は思考に立ち戻る。
軽く酩酊した目で、プロデューサーをじっと見つめる。

「……どうかしましたか?」
「いいえ、別に。お姉さんに見つめられて、照れちゃった?」

瑞樹の年季を感じさせる洒落に、プロデューサーは声もなく苦笑した。



「しっかし、これで川島瑞樹もいっぱしのアイドルかしら!」
「そりゃあもう。今回で瑞樹さんはイメージの幅が広がりましたから、
 正統派はもちろん、しっとりしたお姉さん路線も入ってくるでしょうね」

瑞樹は、またプロデューサーの言い方に引っかかるものを感じた。

「隔世の感があるわね……局アナから転職するって言った時は、色々言われたの。
 『せっかくアナウンサーとして上手く行ってるのにもったいない』なんてのはマシなほうで、
 『頭がおかしくなった』とか『質の悪い詐欺に騙されてる』なんて陰口とか言われたり、
 『川島はアイドルには向いてない』なんて直球で思いとどまるよう説得されたりしたものだけど」

(あの時は、表面では流してたけど、内心はハラワタが煮え返ってたものよね……)



「でも、アイドルを選んだことは一度も後悔していないわ」

プロデューサーは苦笑のまま、眩しそうに目を細めて瑞樹を見た。

「……んもう、そこはノッてよプロデューサーくーん。
 『ミズキみたいなアイドルをプロデュースできて果報者だぜ!』とか勢いで言う場面でしょうが」



こんな時に限って、プロデューサーの歯切れが悪かった。

瑞樹は、その歯切れ悪さに――自分でも予想外なほど――心が苛立つのを感じた。


「ねぇプロデューサー君……私、しつこく聞いてるのは承知なんだけど……
 ホントに『川島は好き勝手やりやがって』とか思ってない?」
「まさか。瑞樹さんが好きにやったおかげで成功できたのに」

瑞樹は、プロデューサーの機嫌を損ねるのを覚悟で話を蒸し返した。
しかしプロデューサーは、声を荒らげるどころかむしろ平坦な声音を返した。



「貴方は、さっき私に『プロデューサーは担当の子へ、うちの子意識を持ってる』って教えてくれたわよね。
 その基準に照らしてみると、勝手に動き回る私は、とんでもないじゃじゃ馬じゃないの?」
「それで上手く行ってるんだから、いいじゃないですか」

その言葉が口から出切った瞬間、プロデューサーは狼狽した。
瑞樹は何かを噛み殺すように露骨に奥歯へ力を入れた。

彼が自分の失言に気付いたのは、ほんの少し遅かった。



「プロデューサー君。私、怒っているわ。とても、とても、怒っているわ。
 大人になってから、これ以上の怒りを感じたこと、ないわ」

瑞樹はプロデューサーの狼狽を察して、それを見つめてしばし黙ったが、
おもむろに口を開いた。瑞樹とは思えないほど、ぎこちない滑舌だった。

「けれどね、これは、きっと単なる言葉不足のスレ違いなのよ。トレンディドラマでありがちの。
 分かる? 私、ああいう回り道を他人のストーリーとして見るのは好きだけど、自分が演じるのはイヤ」
「……瑞樹さん」



「客観的な評価さえ貰えていればソレでよし?
 そんな理屈を通すぐらいなら、私、局アナ辞めてないわ。
 ましてや、今ここでアイドルしてることもなかった」

瑞樹は怒っていた。
周りから『上手く行ってるんだから、いいじゃないですか』と言われ、
瑞樹はその言葉を振り切ってアイドルになった。

その言葉を、他の誰かならいざ知らず、
自分をアイドルに仕立てたプロデューサーから聞かされるとは。

その態度は瑞樹に、局アナ時代に鬱屈していたかつての彼女自身を思い起こさせた。



「私は、貴方が担当プロデューサーで良かったと思ってる……けど、
 貴方は、私が担当アイドルで良かったと思ってはくれないの?」
「そんなことはないです――ただ」
「ただ?」



「今回みたいに、瑞樹さんが自分で自分のやりたい仕事を取ってきて、そのほうがうまくいくなら、
 僕はプロデューサーとして何もしないほうがいいのか……
 むしろ僕が居ないほうがいいんじゃないか、なんて思っただけです」



プロデューサーの態度は、手厳しく評すれば子供じみていた。
彼がどう思おうと、瑞樹の成功を喜んで見せるのがマナーだった。

対してプロデューサーの言葉は、潔癖なまでに純粋だった。
自分が寝てても実績を持ってきてくれるアイドル万々歳――と割り切れるずるさがなかった。



「取り消しなさい。プロデューサー君」
「何を、ですか」

そして純粋さにかけては、瑞樹も似たようなものだった。

「貴方が、私のプロデューサーじゃないほうがいいなんて言葉、取り消しなさい」
「駟(し)も舌に及ばず、と言いますが」

「いいから取り消しなさい。私には貴方が必要なの。
 だいたい、私をアイドルにしておいて無責任じゃない」

瑞樹は、自分をアイドルの世界へ導いたこのプロデューサーと、
限界まで突っ走るものだと思い込むぐらいには純粋だった。



「もし、僕よりもっと実績とコネのあるプロデューサーが、
 瑞樹さんを欲しがっている、と言ったら?」
「……は?」

予想外の返しに、瑞樹は――本当に何年かぶりに――声と思考が同時に止まった。

「そうだとしたら、瑞樹さんに僕と遊んでる時間がおありですか」



凍りついた瑞樹の声と思考のうち、先に動きだしたのは声だった。

「……ダメ、よ、いや、私、貴方じゃなきゃ」
「今の瑞樹さんなら、誰とでもうまくやっていけますよ」



すぐあとに、瑞樹の思考が追いついた。
瑞樹の思考は、プロデューサーを丸め込む筋書きを整えた。

(『誰とでもうまくやっていける』って、どの口がそんなことを。
 私は、プロデューサーの企画は勝手にいじくり回すし、
 他にもアイドル運動会では新人アイドルのくせにディレクターに噛み付いたりして……
 あの時に貴方が止めてくれなかったら、私はどうなっていたことか)

プロデューサーの直前の言葉を、過去を持ち出してひっくり返す。
あとはプロデューサーにしゃべらせず、ひたすら畳みかける。

(私は無鉄砲なのよ。貴方が止めてくれなきゃ、イヤ)

あとは、そう言ってとどめを刺してやればいい。

(理屈を固めて逃げ道を塞いでから『貴方じゃなきゃダメ』と言えば、押し切れる。
 きっと、プロデューサー君だって、私に未練ぐらい持ってくれてる、はず)




けれど、瑞樹の口はそう言わなかった。
もっと伝えたい言葉が、舌を衝き動かした。



「私は……貴方のために、貴方に一番に喜んで欲しくて、頑張ってたのに」

「……担当を外れても、僕は瑞樹さんの最初のファンですから」



瑞樹は、プロデューサーをこれ以上ないほど憎たらしいと思った。

(憎たらしい、憎たらしい――隠し切れないほど未練タラタラなクセに、
 私のキャリアのためと信じ込んで突き放す、その分かってなさが憎たらしい)



「ねぇ、プロデューサー君」

(でも、私は分かってる。プロデューサー君がこんなに憎たらしいのは、
 プロデューサー君に限って我慢がならないのは、箍が外れそうなのは……
 ……私がそれだけプロデューサー君に多くを求めているせい)



「アナウンス学校時代から、よく言われた言葉があるの……『言葉は心の使い』って。
 心は自然に言葉に現れるの。だから、やり方さえ間違わなければ、言葉は心を余すこと無く伝えられるんだって」
「言葉、難しいですけどね」
「少なくとも、アナウンサーはみんなそういう言葉の力を信じていると思うわ。
 じゃなきゃ、毎日何時間も喋りの練習をやる気になれないはず」

唐突に昔語りを始めた瑞樹を、プロデューサーは言葉少なに眺めていた。

「でも私は、アナウンサーとして半端者だったせいか、言葉の力が足りないみたい。
 私が貴方をどんなに思っているか、言葉じゃ伝えきれない。
 だから……実力行使、するわ」



瑞樹はカウンターの上に乗せられたプロデューサーの手に、
自分の手を延ばして握った。

「瑞樹さ――」
「ここで拒まれたら、流石に女として傷つくわ」

瑞樹の手は震えていた。
それが随意か不随意かは、瑞樹自身にも分からなかった。




瑞樹が住むマンションは、バーから20分ほど歩いたところだった。
二人は初秋の夜風に吹かれて歩みを進め、オートロックをくぐって瑞樹の部屋に入った。

「まぁ、くつろいでよ。片付いてるでしょ?」
「それでは遠慮なく……酔い覚ましには、ちょうどいい散歩でしたね」
「なーに、飲み直す?」
「いいえ、今お酒の勢いは要りません。あ、でもマッサージチェア使っていいですか」
「我が家みたいなくつろぎ方するわね貴方」
「冗談ですよ」

趣味を『掃除、洗濯』とプロフィールに書いた通り、
瑞樹の部屋は独身の一人暮らしとは思えないほど整理整頓が行き届いていた。



(私、ずるい言い方した)

冷蔵庫からペットボトルのお茶を出してコップに注ぎ終えると、瑞樹は心中で独り言ちた。

(シていいって言い訳を与えて、家に連れ込んで……質の悪いナンパ男みたい)



「浮かない顔、してますね」
「ふえっ!? ぷ、プロデューサー君っ」

すぐ背後から声とともに腕を回され、瑞樹は思わず素の声を上げた。

「さっきまでアイドル・ミズキの将来のためにご高説ぶってくれたくせに、
 人の家の敷居をまたいだ途端に、これ?」
「……濡れぬ先こそ露をも厭え、って感じですか」
「ふふっ、毒を喰らわば……と言われなくて安心したわ」



プロデューサーは、瑞樹に回した腕の力を強めた。

「バーを選んでくれたの、瑞樹さんでしたよね。こうなること、想定の範囲だったでしょう」
「この人だけは大丈夫なんて、うっかり信じたら~♪ なんて、ふふっ」
「瑞樹さんに女の意地があるなら、僕にも男の意地があります。任せっぱなしにはしません」



(さっき……プロデューサー君が、局アナ時代の私と重なって思えたけど……
 あの時の私も、決断までは散々迷ったけど、一度腹をくくったら開き直ったっけ)

瑞樹はアイドル活動において、まず瑞樹が先行して突っ走り、
それをプロデューサーが方向修正するというのが常であった。

(私は、自分がムチャクチャやってプロデューサー君を振り回してると思ってたけど……
 最初の一番高い『28歳の局アナがアイドル転向』ってハードルは、
 プロデューサー君がスカウトして私が応じてって……二人で飛び越えたのよね)

「私たち……けっこう似た者同士、かもね」
「自分で色々やりたがるところとか、ですか」

(と思えば……プロデューサー君が拗ねてたのは、
 私がアイドル運動会で司会役振られて怒ったのと、同じかしら)



「……誰にでもこうじゃ、ないんだからね」
「キュンとするところですね」

瑞樹が笑ったのが、彼女の背後のプロデューサーにも察せられた。


服も着替えず、シャワーも浴びず、
ベッドの上で慌ただしく重ねたくちびるは乾き気味。
二人最初のキスは、夜風が拭わなかった酒精のにおいがした。

(腕、回されたり……軽くキスされるのが、何だから、キちゃう……)

プロデューサーは瑞樹のすぐ横に体を横たえ、
両腕で彼女の肩を抱いて引き寄せる。
回した手でゆっくりと背中を撫でる。

「私の背中が、どうかした……?」
「瑞樹さんが、いつも先を走るから、僕はいつも瑞樹さんの背中を見てるんですよ。
 今日まで、触れられませんでしたけどね」
「ちょっと気恥ずかしいわね……でも、悪い気はしないわ」



瑞樹は背骨あたりの肌をプロデューサーの感触が行き来する度に、
それが自分の背筋をうろうろする感覚と溶け合っていく気がした。

(胸とか、お尻とか、脚とか……そういう分かりやすいところは、
 アイドルとして気を遣ってきたつもりだけど……)

瑞樹はプロデューサーに張り合うように、
自分の腕を彼の首に回して、さらに顔を首筋に埋めた。
少し荒くなった呼吸が、二人の顔のそばに漂う。

(背中なんて、完全に無防備なところ撫でられてると、
 なんだか、私の気持ちまで触られてる気がする……)



今度は瑞樹からキス。
触れ合うくちびるの間から、そろそろと舌が顔を出す。
挨拶のように舌先同士をつつき合う。
粘膜からじわり、熱と痺れの混ざった感覚が広がっていく。

(キス……少しずつ、深く……広がって……ドキドキ、しちゃう)

瑞樹はもっと深く触れ合いたくなって、
プロデューサーの歯列を舌でこじ開け、その中に侵入する。
ぴちゃぴちゃと音が漏れ、溢れた唾液が顎を伝う。
ざらついた味蕾、つるつるした口蓋に吸い付く。

勢い余って、歯と歯がまともに擦れ合ってしまう。

「――っつ、あっ……ご、ごめんねっ」
「……瑞樹さんって、情熱的ですね。受けに回っちゃいました」
「実は……こういうことも、慣れてないし……普段お姉さんぶってるのにね」

目を伏せた瑞樹は、不意に髪と頭をさらりと触れるものを感じて、
ほんの少しだけ息を乱した。

「ふぁ――っ、んんっ……、プロデューサー君……?」
「瑞樹さんの頭、撫でたくなったんですよ。お嫌ですか」

プロデューサーは返事より前に、瑞樹の頭をあやすように撫でた。



「頭、こうやって撫でられるのなんて……子供の時以来よ」
「ご気分は?」
「悪くないわ……なんだか、すごく甘やかされてて、恥ずかしい気もするけど」

(プロデューサー君……私のワガママに付き合ったりとか、甘やかすの好きなタイプなのかしら)



「……私だって、甘えたい時があるの……分かる?」
「ふふっ、瑞樹さん、可愛いなぁ」
「――あっ――んんっ、ぷ、プロデューサー君……っ」

プロデューサーから笑いながら『可愛い』と聞かされた瞬間、
瑞樹はかすかに、しかし反射的に体の奥が震えたのを感じた。

(今の……プロデューサー君の、声……でっ)



「可愛い、瑞樹さん可愛い……顔が真っ赤になってて、可愛い」
「ん、んん……っ、か、可愛いって、そんな近くで言われたらっ」

プロデューサーも瑞樹の反応の良さを察したのか、口舌と手で瑞樹を煽り始めた。
可愛い、とささやかれる度に、瑞樹は自分の体温が上がって、幸福感で目眩を起こすほどだった。

「ほっぺた、触ってもいいですか。きっと、すごく熱いから」
「あっ……ん、んんっ……だ、だめ、貴方の手、感じたら……」

(頭とか撫でられて、可愛いって言われて、それだけなのに、
 なんだか体がふわふわして、イヤらしい気分になっちゃう……)

「手……貴方の手で触られると……私、おかしく、なっちゃいそう……」
「瑞樹さんの声、とっても可愛いから、もっと……聞きたくなっちゃいます」



いつも結ばれている瑞樹のセミロングを、プロデューサーの手がほどいた。
髪に残ったクセをプロデューサーの手櫛で軽く直され、瑞樹はついに両肩と背中をびくつかせた。

「瑞樹さんの髪、いつも落ち着いたコンサバ系にまとめてけど……
 いつかツインとかポニーも見たいですね。絶対可愛いですから」

瑞樹は髪の一本一本が自分をくすぐってくる錯覚に襲われた。
いつも手入れしている時は何も感じないのに、今はまるで別の感覚器官が乗り移っている気さえした。



「そんなに褒めちゃ、ダメ……私、私……っ」
「瑞樹さんは、褒められれば褒められるほどキラキラする人ですよね。
 ずっと褒めてたら、眩し過ぎて目が潰れちゃうかも知れません」

プロデューサーは瑞樹を強く胸元にかき抱いた。

「そうしたら、目を閉じてても触れられる僕が、瑞樹さんを独り占めですね」

(熱い……あつい……自分の体温に、飲み込まれちゃいそう……)



プロデューサーが、瑞樹のパンツスーツを締めるベルトに手をかけたとき、
瑞樹は露骨に動揺した。

(え――う、うそっ……わ、私……絶対、おかしいでしょっ)

「瑞樹さん……?」
「あ……ふ、ふふっ、そうね……するのよ、ね」

瑞樹の女陰は、まだ迎え入れてもいないペニスを想像してぎゅうとむずかった。
反射的な緊張と、尾を引くように広がるじりじりとした熱さは、瑞樹も未経験の感覚だった。

(キスしたり、背中とか頭を撫でられただけなのに)

瑞樹は、自分の性器が既に潤んでいて、
目前の男を迎え入れる状態になっていると気づいた。

「貴方に触れられただけで……私、先走っちゃってるかも」
「えっちな瑞樹さんも可愛いですよ。おかげで、こっちも興奮しちゃって」

一時でも体を離すのが惜しくて、二人はボトムスも下着を脚から抜かないまま、
性器だけを露出してつながろうとした。
瑞樹の部屋での交情なのに、野外にいるような慌ただしさだった。



「……入れますよ」

プロデューサーは瑞樹の腰に手を延ばし、位置を測る。

「プロデューサー君。なんでそこで、私の顔を見てるのかしらね」
「見たいからです。入れる時の瑞樹さんを」
「下を見ないで、入るの? 慣れてる感、出しちゃうんだ」
「いえいえ、僕は瑞樹さんのアシストあてにしてますので」

瑞樹は、その台詞が無性におかしく聞こえて笑ってしまった

(さっきまでは中学生みたいに、触れ合うだけでドキドキしてたのが、
 いきなりこのやり取りの落差よ……なんだか、力が抜けるわ)

二人が互いの距離を微調整しながらそろそろと動く。
衣擦れに混じって、バックルがカチンとぶつかる金属音が立った。

「服、汚れちゃうわよ。私はいいけど」
「プロデューサー業は突然の泊まりとかよくあるんで、一着は持ち歩いています」
「どうだか。貴方も、それが必要になる事態を期待してたんじゃなくって?」

プロデューサーの困り顔で、瑞樹は大いに機嫌を良くした。

「いいわ……いつでも、来て」
「瑞樹さんっ」

プロデューサーは瑞樹を横抱きにしながら、
彼女の中に自分のペニスを沈み込ませていった。


「んんっ、あっ、うぁ……プロデューサー、くんっ」
「う……ちょ、ちょっとゆっくりにしていいですか……?」

瑞樹の中は、無数の襞を痙攣とともに押し付けて、
プロデューサーのペニスを愛撫していた。

プロデューサーは、直接の愛撫無しでもペニスを固く勃起させていたが、
予想を遥かに超えた急激な射精感に襲われ、半ばほどで侵入を止めた。

(あ……これ、これダメ、私、きっと、ダメになる……)

一方瑞樹も、女の部分を押し広げられる感覚に酔い痴れ、
プロデューサーの肩の匂いを嗅ぎながら息を吐いた。

(プロデューサー君が、興奮して、私の中、ぐいって……)

二人は性器から胸まで体をつなげて動かないまま、意識だけはどんどん情交に没入する。
動きのないことが、かえってすぐ近くにいるお互いを濃く鮮明に焼き付けてくる。



「……瑞樹さん?」
「なぁに、プロデューサー君」

「これ、瑞樹さんとすごく近くにいられるのはいいんですけど、顔が見られないのが惜しいですね」
「……堪忍してちょうだい。私、今、見られちゃいけない顔してる」
「なら、こうします」

プロデューサーは、また瑞樹の頭からうなじにかけての曲線に手を這わせた。

「こうして、イヤらしいことしてても瑞樹さんが可愛いって……知ってるの、僕だけですか」
「あっ……う、ふぁっ……っ――」



瑞樹は、体の奥底がきゅうと靡(なび)いて、自分の情動に悶絶した。

(下では、大人みたいにえっちなことして、上では、子供みたいに頭撫でられて……)

瑞樹は声を漏らさなかったが、プロデューサーの腕の中で体を熱く喘がせていた。

(こんなの続けられたら、私――っ)

上の口が静かな分、プロデューサーのペニスを咥え込んだ女口はかしましく、
執拗に彼のペニスをこすり、脱ぎかけの服やベッドシーツを汚すほどの愛液を漏らす。

「瑞樹さん、かわいい、かわいすぎますっ」

プロデューサーの屈託ない賛辞が、瑞樹を肉体も意識も溶かしていく、
腕だけでなく、脚までプロデューサーの身体にすがりつかせる。

(ダメ、もう、なにか、されるだけで……わたしっ……)



そして瑞樹の静かな高ぶりは、粘膜や肌や体温や呼気と混ざってプロデューサーに伝染し、
抽送するまでもなく彼を限界まで追い込んでいった。

「……み、瑞樹さん……あの、僕……中に、出しちゃいそうなんですけど……」

瑞樹は何も答えない。
ただ、プロデューサーが瑞樹を感じて、声と体を動揺させていることだけ辛うじて認識した。

「プロデューサー、くんっ」

そう言ったきり瑞樹は、結合部に腰を押し付けて軽く擦った。



「あっ――瑞樹、さんっ――僕、はっ――」

プロデューサーは断末魔の代わりに呻きをこぼし、瑞樹の中に射精してしまった。
瑞樹はそれを察したのか、ぎゅうと力を込めてプロデューサーの身体に手足を絡め直し、
彼の首元で深い息を長く長く吐いていた。



初秋の空が白む朝方、プロデューサーは情交の痕跡も生々しい自分の衣服を畳んでいた。

「着替えがあるなら、シャツや下着は置いていきなさい。洗っておくから」
「ええ、せっかくの瑞樹さんの残り香が」

瑞樹はプロデューサーが畳んでいた衣服を奪い取って洗濯カゴに放り込んだ。
瑞樹が脱いだ衣服の上にそれが無造作に重ねられた。
プロデューサーはそれを見て、なぜか郷愁に囚われた。



「僕、瑞樹さんの中に出しましたよね」
「私がCDデビューしたとき、この曲は私たちの子供みたいなもの……
 って言った覚えがあるけど、今度は本物の赤ちゃんができちゃうかも」

「僕は……事務所クビになっても、どうにかして別の仕事のクチを見つけるつもりですが。
 瑞樹さんは、アイドルを続けられなくなるでしょう」
「そうね、どうしましょうか」

瑞樹もプロデューサーも、話題に対して奇妙なほど口調が淡々としていた。



「夢を見させるだけ見させて、それを僕がぶち壊しにしました。
 謝っても謝り切れることではありませんが、申し訳ありません」
「……プロデューサー君」

瑞樹は、頭を下げたプロデューサーを見つめてしばらく黙っていたが、
やがて手を延ばし彼の頭を上げさせ、目を見つめた。

「貴方、昨日は私にさりげなくひどいことを言ったわよね」
「……いくつも思い当たりますが」

「ほら、他のプロデューサーが私を担当したがってるとかうんぬんって時の……
 『瑞樹さんに僕と遊んでる時間がおありですか』とかなんとか。
 なーに、アイドル・ミズキは賞味期限が間近ですか、そうですか」
「そこまでいくと自虐が過ぎて嫌味になってますよ」


瑞樹はこれ見よがしにため息をついた。

「私のプロデュース、投げ出したくなった? 年甲斐もなくはしゃぐキャラのせい?
 でも私の歳で真剣さを出したら、それはそれで重苦しいわよ」
「僕は、瑞樹さんがやりたいと思ってる仕事も、なかなか取ってこれないんです。
 瑞樹さんが望むようなアイドル活動をするなら、もっとふさわしいプロデューサーが――」

プロデューサーの口が、瑞樹の手で塞がれた。



「――そうだとしても、私は、貴方じゃなきゃダメよ。
 だって私、ワガママを貴方が許してくれるのに慣れちゃった。
 私がやりたいことは任せてくれる。私の頭に血が上ったときは止めてくれる。
 貴方じゃなきゃ、私は思い切って突っ走れない」

「……瑞樹さん」
「何かしら、プロデューサー君」

「瑞樹さんは、ズルい。
 瑞樹さんに『貴方じゃなきゃダメ』なんて本気で言われたら、男は落ちます」
「あら、私はアイドルですもの。
 そして私をそんな女に変身させたのは貴方よ、プロデューサー君。
 貴方がその報いを受けるのは当然じゃないの」

瑞樹は、自分のアイドル生命が終わるかも知れないと考えても、
彼女自身が思ったよりも心穏やかだった。

(アイドルになってから、やれることは全力でやってきた――だから後悔しなくて済むのかしら。
 それなら、私にやりたいことをやらせてくれたプロデューサーのおかげとも言える)



「もし私がアイドルを辞めて、貴方がプロデューサーを辞めることになったら……
 私にとっては第三の人生、新しい夢を二人で見て、アイドルの時以上の勢いで突っ走るの。
 そう約束してくれるなら、許してあげるわ」



(前編終了)



なんかえっちが物足りないので後編は川島さんとコスプレえっちの予定です
突然ですが川島さんに着て欲しい衣装を募集します
先着1名とそれ以上は私の力の及ぶ限りで川島さんの誕生日を目標に書きます
ではまた

チェーンがジャラジャラした飛鳥とかが好きそうな首輪付きの服

イメージが湧かないけど
飛鳥ってことは↓こういうの?
http://i.imgur.com/rLslkEi.jpg

瑞樹さん誕生日おめでとう!

たくさんお題を出していただきながら恐縮ですが
私の筆力不足につき先着の>>17しか間に合いませんでした

(以下本文)



――これは、さすがに……。

――貴方じゃなきゃ、絶対に許さないわよ。





「ねぇ、プロデューサー君。私は、確かに言ったわ……
 『たまには、貴方の好きな衣装を着せてみなさい♪』って。だから、着るわよ。
 ……ただ、何でこの衣装にしたか、意図は聞いてもいいわよね?」

二人きりの部屋で、瑞樹はプロデューサーに問いを投げた。
彼女が着込んでいる衣装は、露出度の高い黒いレザーに、
白いベルトと銀色の鎖を幾重も手足や首や肩や腰に巻きつけたパンキッシュファッションだった。

「これ、まるで飛鳥ちゃんの衣装よ」
「好きな……と言われたので、せっかくだから、
 瑞樹さんの今までの衣装とかけ離れたものを着てもらおうと思ったんですよ」



川島瑞樹の着こなす衣装といえば、まず第一にデビュー直後の『ブルーナポレオン』。
本人が好んでたびたび着る『永遠のプリンセス』などの正統派アイドル衣装が、ファンにはおなじみだ。

※ブルーナポレオン
http://i.imgur.com/WGgynUI.jpg
※永遠のプリンセス
http://i.imgur.com/MxJI1lS.jpg

ほかに『タイムゴーズバイ』のようなコンサバ系の衣装も年相応に着こなしている。
思い切ってフレンチメイドにロリータ路線を足した『ラグジュアリーメモリー』なども評判だった。

※タイムゴーズバイ
http://i.imgur.com/e4ucYMg.jpg
※ラグジュアリーメモリー
http://i.imgur.com/fboVTbo.jpg

「この衣装、飛鳥が原案考えたんですけど、ベルトや鎖や首輪は束縛のメタファーで、
 黒い色は『セカイの色に染まらない』という反逆の意思なんだそうです」
「その束縛を自ら身につけるのは、もしかして『自縄自縛』ってことかしら」

瑞樹は座りが悪そうに、肌を締め付けるレザーを指で撫でた。

「つまり、ワルい子になっちゃえってコト?」
「新鮮じゃありませんか」
「まぁ、自分で言うのもなんだけど、私は比較的いい子だったしね。
 羽目をはずし切れなかったとも言えるけど」



瑞樹は鎖の一端を外して、その先をプロデューサーに向けた。

「貴方は、私の反逆を飼い馴らせるかしら?」






瑞樹は立ったまま、密室の壁に手を突かされ、喘ぎで両手の間をくもらせた。
黒皮とベルトに戒められたアイドルの曲線美がびくついて、鎖が冷たい音を散らす。

「ほら、瑞樹さん。そんなヤワな足腰してないでしょう?
 それとも、ワルい瑞樹さんは、ちょっと指でいじられただけで腰砕けになる変態さんですか」

瑞樹は首を振って、抗議するように背後のプロデューサーを睨もうとしたが、
すぐさまプロデューサーの指虐が黒皮の隙間をこじ開け、
既に濡れそぼった瑞樹の女陰を再びこねだすと、彼女の目はぎゅっと閉じられた。

「目を閉じても、ムダですって。ホラ、聞こえますでしょう? 瑞樹さんのえっちな音が」



プロデューサーは、既に指がふやけるほど瑞樹を責め立てていた。
快楽で瑞樹の反逆を屈服させよう、という魂胆だったのか……
少なくとも瑞樹はそう察して、敢えて嬌声を押しとどめていた。

ただ、プロデューサーの言う『えっちな音』は、瑞樹の嬌声よりあっけなく場に漏れ出た。

「体が、気持ちいいって言うと、鎖が……鳴りますよねぇ? ちりんちりんって」

立ったままプロデューサーの責めを受ける瑞樹は、ほんの少しの快楽でも、
体のバランスが崩れて壁に手を突き直し、その度に衣装の鎖が音を立てる。
咎めるような音を繰り返されるとまるで、快楽そのものが増幅させられている錯覚に陥る。



「こんなの、なんてコトない、わ」

けれど瑞樹は、纏う黒のごとく、まだプロデューサーの意には染まらない。

「それなら、これでどうですか」

プロデューサーは、瑞樹の黒皮のショートパンツに手をかけた。

「結局、脱がしちゃうんだ」
「重要なのは、中の瑞樹さんでしょう」
「……もう」

と言いつつ、プロデューサーは瑞樹の下衣を中途半端にずり下げて、
立ったまま後ろからの挿入に及ぶ。無遠慮な侵入に、
しかし馴らされていた瑞樹の中は十分な潤いでプロデューサーを迎え入れる。

「首輪も、息苦しければ外しましょうか」
「あら、アイドルはそう簡単に衣装で妥協はしないわ」

プロデューサーが、後ろから瑞樹の紅い首輪をつまむと、
瑞樹は声を上げて笑った。

「それとも、外さなきゃ死んじゃうくらい追い詰めてくれるの?」


瑞樹の挑発に、プロデューサーは抽送で答えた。

「あっ……! くっ、ううっ……これ、こんなところにまで、キちゃう……っ」
「舌を噛んだら危ないですから、衣装をくわえてもいいですよ」

立ったまま後ろから突かれる、といういつもとまったく異なる姿勢で、
瑞樹は深く乱暴な感触に身を悶えさせる。

「いやよ。アイドル・ミズキ、この程度では動じないわ」
「そう張り合われると、エスカレートするのが男の常です」

プロデューサーも慣れない姿勢で、探り探り瑞樹の中をうがつ。
鎖の奏でるさらさらと乾いた音に、次第にひたひたと温い水音が交じる。



「んっ……あっ、んんんっ……」

抽送はスピードを抑えているが、着実に瑞樹の性感を盛り上げていく。
プロデューサーは慣れない体位で安定感を得るため、瑞樹の腰を手でしっかりとホールドしているが、
それさえ瑞樹には『腰が砕けても支えてあげますよ』と無言で主張されているようで、

(小面憎いわ……でも、それに甘えたくな――あっ――!)

「ああぅああっ――!」

プロデューサーのペニスが、立ったままの瑞樹の膣内の、
さらに背中側の奥を押し込んだ瞬間、瑞樹はついに明らかな嬌声を上げた。

「いま……一気に絞められて、僕は危なかったんですが……瑞樹さんも、キました?」

瑞樹は意味のある言葉を発せなかった。
ただ代わりに、鎖がかちんと甲高い音を立てた。

「衣装のせいか、いつもより強情で……そんな瑞樹さんも、素敵ですよ」

プロデューサーの言葉が、瑞樹の意地を削り理性を揺るがせる。

「……ここ、もっといじめちゃいますよ。僕だけに、声、聞かせて下さい」

プロデューサーの宣告だけで、瑞樹の体は期待に先走り燃え立つ。

(――ダメ、声、出て、立って、られなく――っ!)



プロデューサーの律動で、瑞樹の声は乱高下する。

「んっ……! は、あっ……!」

肌と肌がぶつかり合い弾ける音が、高く部屋を満たす。
いつしか二人の衣服も――瑞樹が纏う衣装も――汗や愛液でぐしゃぐしゃの台無しになる。
戒めの鎖もベルトも、抽送に合わせてくらくら揺らぐだけの飾りになっている。

「あっ……わ、私……も、う――っ!」

弱点を撞かれた瑞樹の陥落はプロデューサーより早く、
瑞樹は長く尾を引く吐息と細かい痙攣で絶頂を告げる。

プロデューサーはその様に満足すると、瑞樹の腰を抑えながらペニスを引き抜いて、
そのまま暴発半分に射精した。プロデューサーの白濁は瑞樹の震える背中から、
べっとりと垂れ落ちて黒皮の衣装まで白く穢した。



(おしまい)


瑞樹さん誕生日おめでとう! おめでとう!

瑞樹さんにデレステでラブレターとかミツボシとかましゅまろキッスとかアップルパイ・プリンセスとか踊らせてると
明日も生きてていいんだ……って気分になれますよね
ではまた

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