インコ「エサ箱の底が見えてるんだが」人間「はい」 (27)


インコ「いやはいじゃねえよ」

人間「はあ」

インコ「はあでもねえよ」

人間「わびしいですね」

インコ「コメントもいらん」

人間「私の食卓もです」

インコ「んなこた知らん」


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人間「足しました」

インコ「ご苦労」

人間「こっちの食卓はわびしいまま……」

インコ「知らんて」

人間「タンパク質欲しい」

インコ「タンパク質なあ。あれどうよ」

人間「あれとは」

インコ「虫」

人間「却下」

インコ「うまいぞ? アリとか」

人間「ひえっ」


インコ「じゃああわ玉分けるよ少しくらいはあるだろタンパク質」

人間「いりません」

インコ「そんなこと言うなって」

人間「吐き戻しはちょっと……」

インコ「仕方ねえなエサ箱から持ってけ」

人間「いりませんてば」


人間「鳥肉食べたい……」

インコ「俺の前で言うかそれ」

人間「鳥肉の唐揚げ食べたい……」

インコ「やめろって」

人間「ころっと丸くてじゅわっとおいしい唐揚げ……」

インコ「……」

人間「……」

インコ「見られてもよ」


人間「インコって英語でバジャリガーっていうらしいですね」

インコ「へえ」

人間「オーストラリアの原住民アボリジニの言葉が元になっていて、おいしい物という意味だとか」

インコ「……へえ」

人間「あーあ」

インコ「そのあーあの意味は聞かない方がいいんだろうな」


人間「ねえ非常食」

インコ「噛むぞ」

人間「前に動物番組で野生のセキセイインコ特集があったんですが」

インコ「ああ」

人間「可愛かったです」

インコ「だろうな」

人間「でも集団で植物の種子を食い荒らす姿は若干イナゴでした」

インコ「……」

人間「佃煮ー」

インコ「誰が佃煮か」


人間「ひなも映ってたけど可愛かったです」

インコ「!」

人間「今度一緒に見ましょう佃煮」

インコ「佃煮はやめろ。や、それよりも、まさかつがいが映ってたのか?」

人間「ええ」

インコ「ふむ」

人間「何か?」

インコ「俺もそろそろ嫁さ」

人間「却下」

インコ「言わせろよ」


インコ「嫁ほしい」

人間「駄目です」

インコ「なんでだよ」

人間「高いので」

インコ「俺の買値を言ってみろ」

人間「1890円」

1890円インコ「ほほう……」


インコ「それは相場で言うとどれくらいだ?」

人間「まあ比較的安い方かと」

インコ「でも高いと」

人間「ええ。心のハードルが」

インコ「心のハードルぅ……っ?」

人間「くちばしすごいぎょりぎょりいってる」

インコ「言ってみろよ心のハードル」

人間「世話の手間」

インコ「だけか?」

人間「ペットに先越されるのがいや」

インコ「あ゛?」


インコ「もう一度言ってみろ」

人間「自分に相手がいないのに何が悲しくてペットに相方を与えねばならぬのか」

インコ「このてめこの……っ!」

人間「噛まれると痛い」

インコ「さっさと嫁さんよこせオラァ!」

人間「いいんですか?」

インコ「は?」

人間「絶対尻に敷かれますよ?」

インコ「何言ってんだ?」

人間「むしろ踏まれます」

インコ「そんなわけねえだろ」


人間「むしろ幸せにゴールインなんてことあるはずないじゃないですか」

インコ「喧嘩売ってんのか?」

人間「もうだいぶ歳いってますよね」

インコ「それは」

人間「それに体は若干小さめ。脚も血行が悪くて色つやがない」

インコ「……そうなのか?」

人間「これが健康な一般セキセイです」

インコ「マジかよおい」

人間「これで強気なお嫁さんが来たら圧殺ぺちゃんこコースですよ?」

インコ「ぐ」


インコ「そ、それでも俺は嫁がほしい!」

人間「なるほど、意志は折れないということですね」

インコ「その通りだ。俺は諦めない」

人間「負けました。あなたの粘り勝ちです」

インコ「さあこいや嫁さん」

人間「そのうちね」

インコ「はあああああああ!?」


インコ「今のは!? なあなんだ今のは!?」

人間「期待でもしてたんですか? よりによって私に」

インコ「するわ! すがるもんが他にねえんだからするわそりゃ!」

人間「怒ってる。かーわい」

インコ「そんなんでごまかされるか馬鹿! このエアーズロック級馬鹿野郎がああああああああ!」

人間「ウルル級キャッチ」

インコ「おうっ!?」

人間「さあ爪切りしましょうねえ」

インコ「おのれぃ……っ」


人間「はい終わり。おとなしくてくれてて助かりました」

インコ「なあ、少し考えてたんだが」

人間「なにか」

インコ「さっきのはお前がつがいになれば俺にも嫁さんが来るってことなのか?」

人間「どうでしょう」

インコ「誰かイイヤツいねえのかよ。さっさとつがって俺にも嫁さん買ってくれよー」

人間「無理じゃないですかね」

インコ「だろうな」

人間「否定しなさい」

インコ「った!? 生意気に怒ってんじゃねえぞ!」


人間「なぜか私の周りには人が寄らないので」

インコ「ペットと会話しちゃう痛い奴だし仕方ないんじゃねえの」

人間「そんなことは」

インコ「行け逆ナン」

人間「嫌です」

インコ「いらんプライドは捨てろ。何しろいらんからな」

人間「だって絶対成功しちゃいますし」

インコ「……あ?」

人間「面白味がないです。それであなたにお嫁さんを買い与えるなんて、なんとなく屈辱?」

インコ「おおぅ……」


人間「何ですか可哀想なものを見る目で人を」

インコ「いや……言わないでおく」

人間「ありがとうございます」

インコ「せめて健やかに生きろよ」

人間「努力します」

インコ「あークソ、嫁さんどっかから降ってこねえかなあ」

人間「カラスならよく飛んでますが」

インコ「もっとおとなしくてインコな奴だよ」


……


人間「ただいま」

インコ「おう」

人間「あげる」

インコ「おう!? なんだこれ!」

人間「二千円分のインコおもちゃセットです」

インコ「多いな」

人間「そうですか?」

インコ「何があった」

人間「別に。大したことじゃありません」

インコ「まあ言えよ」

人間「フラれました」

インコ「大事じゃねえか!」


インコ「それでヤケ買いか? どうせなら嫁さん買ってこいよ!」

人間「お嫁さんダヨー」

インコ「無駄に精巧なインコ人形だなクソが!」

人間「……同じ学部の男の子が、やめることになりまして」

インコ「ん?」

人間「実家の方で就職するって」

インコ「ふうん?」

人間「たまに話するだけの仲だったんですけどね」

インコ「好きなのか?」

人間「……その時そうかもって思いました」

インコ「よし行ってこい。帰りに嫁さん買って来い」

人間「嫌です」

インコ「あ?」


インコ「何がだよ」

人間「なんか嫌です」

インコ「すねてんのか?」

人間「別に」

インコ「自信がないとか?」

人間「いいえ」

インコ「ふうむ。よくわからんがダメージが深いのはわかった」

人間「……」

インコ「ペットの務めだ。泣きたいなら胸貸してやるぞ、ほれ」

人間「えい」

インコ「ぎぇ!?」


インコ「いきなり指突っ込むな!」

人間「ふふ」

インコ「聞いてんのか!」

人間「おもちゃですよー」

インコ「だからおま……うひょひょひょひょ!」

人間「こっちこっちー」

インコ「おひょりひょろひょろおおおおおおお!」

人間「若干引く」


人間「……よし、充電完了」

インコ「ん?」

人間「これで明日からも頑張れます」

インコ「そうか?」

人間「はい。ありがとう」

インコ「そうか。ならよかった」

人間「これからもよろしく」

インコ「あいよ。早く相手見つけろよ」

人間「はい。そのうち」

インコ「早くな」

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