【ミリマスSS】可愛い娘へのお説教とお祝い (47)


こちらのSSの続きものとなってますよー(◯・▽・◯)

【ミリマス】可愛い姪の家出奮闘記
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1471015667


というわけで、申し訳ないですがこれ単体で読むと少しわけわかめなとこがあるかもしれません。

あと、一部『リコッタ』のエピソードが含まれています。

あとオリキャラ注意報です。





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1478358018



桃子「桃子もう決めたの!じゃあね!」




そう言って、家出した娘が憎かった。

桃子のためを思い、桃子を役者にするために自分の人生の全てを捧げた。

しかし桃子は役者を辞め、私の人生を捨て、アイドルに転向すると言った。

あまりの怒りに卒倒しそうになったことを、今でも鮮明に思い出せる。



ただ、その怒りは一週間ももたなかった。


「失って初めて気がつく」


何回演劇でこういう類のセリフを喋ったかわからないのに、やっぱり失うまで気がつかなかった。

怒りが冷めると、酷い喪失感に侵された。


桃子の話を聞いて、私の思いを告げて、きちんと娘と向き合うべきだ。

何度かそう思った。でもできなかった。




気がついてしまったからだ。

私は今まで桃子ときちんと向き合い、話し合ったことがあっただろうか?

私は今まで桃子の言葉に、真剣に耳を傾けたことがあっただろうか?

私は『母親』らしいことを、桃子にしてあげたことがあっただろうか?


私は自分の娘を、一人の人間としてみてはいなかったのかもしれない。

よく言えば自分の夢の身代わり、悪く言えば自分の夢の傀儡。

私は桃子を『自分の夢を叶えてくれる過去の自分の分身』としか見ていなかったのだろう。



背筋が凍った、体が震えた。

私はどんなに酷い母親だったのだろう?

後悔や罪悪感は身体を心を蝕み、やがて私は思考を感情を遮断することでしか平静を取り戻せなくなっていた。

そしてまた、娘との距離は遠くなっていった。



私たちはずっとすれ違い続けて。

私たちはずっと失い続けた。



私たちの間には、きっと普通の親子が紡ぐべき絆なんてなくて。

それに今更気がついても、もう取り戻すことなんてできないのだろう。



そう思ってしまうと、もうこの先の未来が真っ暗に閉ざされてしまい。

ますます私は動けなくなった。


しかし、そう感じていたのは私だけだった。



私がずっと桃子に見向きもしなかった時も、ずっと桃子は私を見ていてくれていた。

私がずっと桃子の言葉に耳を傾けなかった時も、ずっと言葉を届けてくれていた。

私がずっと『母親』らしくいない時も、ずっと私を母親だと思ってくれていた。



桃子のソロステージを見た時、それにやっと気がついた。

ステージを目にして、桃子の心の叫びがようやく耳に届いた。




『お母さん、桃子。ここだよ!桃子はここにいるよ!見て!』





自分は『周防桃子』であなたは『その母親』。



そのどうしようもない事実を叩きつけて、

自分を取り戻し、そして母親を取り戻すために、

彼女はアイドルになると決めたのだろう。





すれ違って失ったものを諦めた私と。

すれ違って失ったものを取り戻そうとした桃子。



桃子は強い意志をもって、私が閉ざしてしまった未来の扉をこじ開けてくれた。

桃子は強い意志をもって、扉の奥の暗闇の中うずくまる私を引きずり出してくれた。



周防桃子はこんなにも強く、優しく、誇らしい娘だった。



満面の笑みで、ファンに向かって手を振る桃子。

それは私が見たことのない、幸せに満ちた表情だった。

だから、思わず口をついて言葉が出てきた。



「桃子は、あんな顔で笑うのね...」



その言葉を隣で聞いた妹は、安堵の笑顔を見せた。


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そして、終演後。

数ヶ月の家出をした娘と、久しぶりの再会の時間がやってくる。


桃子叔母「さぁ、姉さん。桃子が待ってるよ。楽屋に行こう」


桃子母「わかってるわ。案内よろしく」


自然と足取りは重くなかった。

それよりも、早く桃子に会いたくて仕方がなかった。


ガチャリ。

応接室の扉を開けると、桃子とプロデューサーさんが待っていた。



少し不安そうに俯き加減の桃子。

目と目が合った瞬間、プツンと何かを繋ぎとめていた糸が切れる音がした。

ずっとずっと溜まっていた感情が溢れ出し、それに背中を押されるように、私は桃子のもとへ走った。

桃子母「桃子......ごめんなさい...」

無我夢中で娘を抱きしめる。

祈るように謝罪の言葉を紡ぐ。

伝わる体温が暖かい。

桃子母「本当に...ごめんなさい...」

山ほど伝えたい言葉はあるのに、うまく言葉にすることができない。


桃子「...桃子も、ごめんなさい...」

ぎゅっと背中を握る小さな手。

伝わる温もりが、私を優しく赦してくれている気がした。

桃子「.....見に来てくれて....ありがとう...」

少しぎこちない、感謝の言葉。

桃子「......お母さん...ありがとう...」

『お母さん』と呼ばれることが、こんなにも嬉しいなんて知らなかった。


私も桃子もそれ以上言葉を交わさなかった。

私も桃子も大粒の涙を流し、ただただ強く抱きしめ合った。

言葉はいらなかった。

無理に思いを口にする必要はなかった。

何より抱きしめ合った身体の暖かさが、心を繋いでくれる気がしたから。


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桃子の家出が終わって、初めはぎこちなかった私と桃子。

なぜか初めの1日くらいは、2人とも敬語で話していた。



桃子「おはよう...ございます...」


桃子母「おはよう、ご飯できて...います」



初めて思いと思いをぶつけ合い、急に距離が縮まったのが照れ臭くて仕方がなかったのだ。


そんな関係は次第に元どおりになっていった。

ある日の夜、桃子が顔を真っ赤にしながら枕を抱えてそろりと寝室に入ってきた。


桃子「あのね...眠れないから...一緒に寝ていい?」


桃子が1人で寝るのが怖い日があるなんて、これまで知らなかったからとても驚いた。


桃子母「ええ、いいわよ。こっちにいらっしゃい」

桃子「...怖いとかじゃないから...」

桃子母「あら?じゃあ、この手離してくれる?」

桃子「......やだ」


やがて、隣で静かな寝息が聞こえてきた。

繋いだ手は小さく、寝顔は年相応に幼くて、どんなに愛くるしい存在か改めて認識した。



しかし、変わらないものもあった。

仕事に対する姿勢は依然として厳しかった。

今となっては、そのストイックさは心配で仕方がなかった。

一言二言言いたいことはあったのだが、これは私が背負わせてしまった荷物だと思い、言葉に出して伝えることは憚られた。



###############

そして幾分たったある日、桃子が仕事中に足に怪我をしてしまった。

不幸中の幸いか、症状は軽い捻挫で、安静にしておけばすぐに治る程度のものだった。

しかし桃子は痛む足を引きずり、レッスンに行こうとしていた。

桃子の仕事に口を挟むのを躊躇っていた私だったが、こればかりは見過ごすわけにはいかなかった。



桃子「...どいて。桃子、レッスンに行くの...」

桃子母「あなた、その足じゃまともにレッスンできないでしょ。お医者さんも言ってたように、安静にしておけばすぐに復帰できるのよ」

桃子「でも、ユニットの仕事があるの!みんなまだまだ上手くいってなくて、桃子がいないとダメなの!」

そう頑なに言い張る桃子。

桃子母「でも、みんなだって頑張ってるんでしょ?きっと大丈夫よ」

桃子「大丈夫じゃないから言ってるんでしょ!お母さんは黙っててよ!」


桃子母「ダメと言ったダメ!今は、ゆっくり足を治すことに専念しなさい!」

桃子「そんなことしてたら、間に合わなくなっちゃう!前のライブより絶対にいいライブにしないとダメなの!」

桃子母「なら、尚更早く足を治さないといけないじゃない!レッスンには行かせられないわ!」

桃子「なんで桃子のこと邪魔するの!?お母さん桃子のこと嫌いなの!?」


こめかみの辺りでブチっと音がなった。その合図とともに、一気に頭に血がのぼる。

桃子母「桃子が心配でたまらないから言ってるんでしょ!!無理して大事になったらどうするの!?」

こうやって怒鳴るのは確か桃子が家出する前以来だなと、頭の片隅で冷静な自分が思う。



桃子「心配なんていらない!自分の体くらい自分で管理できるもん!!」

少しも怯まず反論する桃子。さすがは私の娘だ。

桃子母「管理できなかったから怪我したんでしょ!?バカなこと言わないで!!」

桃子「!!」

カーッと顔が真っ赤になる桃子。さすがに図星を突れると反論はできないようだ。

目にウルウルと涙がたまる。少しダメージが強すぎただろうか。


そんな桃子の顔を見ると頭が少し冷えた。でも、お説教は緩めない。

桃子にはきちんと言わないといけないことがある。



桃子母「自分の身体を大事にしなさい!取り返しのつかないことになってからじゃ遅いのよ!」

桃子母「それに、痛がってる、苦しんでいるあなたを見るのは辛いの!」

涙をこぼさないよう、耐える桃子。

桃子母「もっと周りの人を信頼しなさい!あなたの仲間を信じなさい!」

桃子母「人を信じるって、とても大事なことよ」



お説教はおしまいという合図に、ひとつ深呼吸して桃子の出方を伺う。

桃子「でも...絶対に桃子は...必要なんだもん...」

桃子が涙声で訴える。

その言葉は、私を通り抜けてあてもなく空気中に霧散した。


なるほど。溜息がひとつ溢れる。

これはもう私の範疇ではない。

私の言うべきことは言った。なら、あとは彼女たちに託すしかないのだろう。


桃子母「...わかったわ。そこまで言うなら連れてってあげる。車に乗りなさい」


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劇場についた後、桃子に肩を貸してレッスンスタジオの前まで連れて行った。

そこからは彼女たちに任せ、私は1人駐車場で桃子を待っていた。

青空を眺めていると、一台の車がやってきた。乗っていたのはプロデューサーさんだ。


桃子母「こんにちは」

ミリP「こんにちは。もしかして桃子...」

私がここにいる理由を察して、苦い顔をするプロデューサーさん。

桃子母「言っても聞かないもので、仕方がないので連れてきました」

ミリP「あはは、光景が浮かびます...」

そう言って、プロデューサーさんは苦笑いをする。

これはあの子、普段からプロデューサーさんに相当迷惑かけてそうだわ。


でも、それは桃子からの信頼の裏返しなのだろう。だから、私も彼を信頼しよう。


桃子母「桃子と、喧嘩しました。久しぶりに怒鳴りあって」

ミリP「けっ、喧嘩ですか!?」

青ざめて驚いた顔をするプロデューサーさん。

桃子母「あぁ、心配しないでください。以前のような喧嘩とは違います」

ミリP「あっ、そうですか。それはよかった」

プロデューサーさんの顔が、心から安堵した顔に変わる。


やはり、プロデューサーさんは桃子のことをよく考えてくれる人だ。

だからもう一歩踏み出す。


桃子母「客観的に考えれば、私は桃子を叱る資格なんてないのかもしれません」

11年も偽りの母親だった身だ。当然だ。

桃子母「でも私は叱ります。やっぱり、母親だから」

今なら心からそう思える。

桃子母「私のせいで、たくさん荷物を桃子に背負わせてしまいました。それをひとつひとつ降ろしてあげたいんです」

桃子母「でもきっと、私だけではそれは無理なのだと思います」

桃子母「だから...」


プロデューサーさんの目を見る。

プロデューサーさんも真っ直ぐ私の目を見てくれる。

桃子母「これからも、桃子をよろしくお願いします」

そう言って頭を下げる。心からの願い。

ミリP「はい、こちらこそよろしくお願いします」

顔を上げてプロデューサーさんを見ると、心の底から嬉しそうな笑顔だった。

きっと彼は、桃子を良い方向に導いてくれるに違いない。

その笑顔を見て、そう確信した。


プロデューサーさんが業務に戻り、数十分たったくらいに目をパンパンに腫らした桃子が、劇場から出てきた。

金色の短髪の子とショートカットのリボンの子が、桃子に肩を貸してくれていた。

サイドテールの茶髪の子と、ツインテールの子も後ろから心配そうについて来てくれていた。


桃子母「みなさん、ありがとう。それと、ご迷惑をかけてごめんなさい」

ツインテールの女の子「いえいえ、桃子ちゃんセンパイは迷惑なんてかけてません!」

サイドテールの女の子「むしろ、もっと迷惑かけてもええみたいな?」

金髪の子「うん!桃子は、大事な仲間ですから!」

リボンの子「仲間。うん。仲間だし、むしろ家族みたいだなって思ってます!...少し大げさで、すみません」

桃子母「いいえ、頼りがいがあるわ。桃子は良い仲間に巡り会えて幸せです。これからもよろしくお願いします」


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みなさんと別れ、帰りの車内。

ずっと黙っている可愛い娘に問いかける。


桃子母「どうだった?あなたの仲間は?」

桃子「......怒られた...自分を大事にして...仲間を信じて...って...」

桃子「お母さんの...言う通りだった...」

桃子母「そう。桃子。さっきも言ったけど、良い仲間に巡り会えたわね。絶対に大事にしなさい」

桃子「...うん...」


桃子はずっと1人で頑張ってきた。

時には支えてくれる人もいたかもしれないが、それは支えるだけだ。

同じ目線で桃子の側を一緒に走って、時には引っ張ったり背中を押したり、そういう仲間はいなかった。

これは、私が桃子に背負わせてしまった荷物のひとつ。

桃子は仲間の作り方を知らなかった。だから不安だったのだ。

それは私の言葉でどうこうできる範疇ではなかった。




でも、きっと安心だ。

妹の言うように、劇場には素敵なプロデューサーさんと素晴らしい仲間たちがいる。

きっと私に届かない桃子の荷物を、降ろしてくれるに違いない。

桃子はそこで良い経験を積んでいけるだろう。


そのようなことを考えていると、隣でか細い声がした。


桃子「...お母さん...ありがとう...」

桃子「怒ってくれて...実はね...少し嬉しかった...」


じわっと心に暖かい熱が染み渡る。

桃子母「...桃子、ありがとう...受け止めてくれて...」

ハンドルを握りながら、涙で視界が歪まないよう堪えるのに必死だった。


 


################

そうして私たちは、元通り以上の絆を得た。

今日は桃子の特別な日。

ご馳走を用意していると、ガチャっと玄関の開く音がした。


桃子「ただいま」


可愛い娘のお帰りだ。

 


火を止めて玄関まで迎えに行く。

桃子母「あら、おかえり。早かったのね。もっと遅くなると思ってたわ」


今日は桃子の誕生日だ。劇場ではお誕生会があるらしいから、帰りはもう少し遅くなると思っていた。

桃子「早い時間からお誕生会やってくれたの。気を使ってくれたみたい」

桃子「みんな『気を使ってないです』みたいな顔してたけどね。演技が下手すぎたからすぐわかっちゃった」

そう言って、少し悪戯な笑顔を見せる桃子。

劇場の話をするときの桃子は、たいてい笑顔だ。

役者のときには、桃子はこんな顔で職場の話をしたことなんてなかった。

 


桃子母「桃子。お誕生日おめでとう!」

桃子「ありがと。...って、それ朝も言ったじゃん...」

桃子母「あら、何回だって言っていいでしょ。おめでたいんだもの」

桃子「もー...」


ぷくっと少し頰を膨らます桃子。

でも、微妙に鼻をヒクヒクさせて、なんだかんだ言って嬉しそうだ。

こんな他愛もないやり取り全てが愛おしい。

こんな幸福を11年も見過ごしていた自分は、本当にもったいないなと思う。

だから愛情過剰だったりくらいで、ちょうどいい。

 


桃子母「そう言えば、あなたの叔母さんからプレゼントを預かってるわよ」

桃子「うえっ...ホントに?」

心底嫌そうなリアクションをする桃子。

数ヶ月も家出娘の面倒を見てくれた恩人になんと冷たい態度。親の顔が見て見たいものだわ。


桃子母「あなた...あの子が今の反応見たら傷つくわよ...」

桃子「だって...叔母さんなんか亜利沙さんみたいなアイドルオタクみたいになってきて、ちょっと近寄りにくいんだもん...」

アイドルオタクというよりは、姪っ子オタクなのだけれど...。

あぁでもこの前あの子、如月千早って子の歌を聴いて『優勝』って呟きながら号泣してたっけ?


桃子母「まぁまぁ、貰ったものはありがたく受け取りなさい」

そう言って大きな紙包みを桃子に渡す。

桃子「うえー...おっきー...何入ってるの?」

悪態をつきながらも、やっぱり嬉しそうに鼻をヒクヒクさせる桃子。

桃子がビリビリと紙包みを開けると、羽やらフリルがたくさんついたヒラヒラの洋服がでてきた。




桃子「...ナニコレ?」

桃子母「あら知らないの?ゴシックロリータっていうスタイルの洋服よ」

桃子「そんなの知ってるもん!なんで叔母さんはこんな服をくれたのって!?」

桃子母「この前、桃子がそんな感じの服着て撮影したじゃない?」

桃子「うん、確かにしたけど」

桃子母「あの子、その雑誌5冊買ってたわよ。それで察しなさい」

桃子「...うわ...」

あぁ、これは本当に引いてる顔だわ。


 


せっかくのお誕生日に、桃子がこれ以上ブルーになってはいけない。

なので、私もプレゼントを渡すことにする。

あの子には悪いけど、いい引き立て役になってくれたわ。



桃子母「はい。じゃあ私からも、プレゼント」

桃子「......変な模様の傘とかじゃないよね...?」

無駄に警戒する桃子。まったく、失礼な娘だわ。

桃子母「違うわよ。開けてみなさい」

桃子「はーい」

ビリビリと紙包みを破る桃子。

中身が見えた瞬間、ぱぁぁぁぁっと笑顔の花が咲いた。

桃子「うわぁ、クマさん!可愛い!大きい!」

大きなクマのぬいぐるみを抱っこして、ぴょんぴょんと跳ねんばかりに喜んでいる桃子。

桃子「あ!クマさんがシール持ってる!これも可愛い!」

そう言って、踊り出しそうなくらいにはしゃぐ。

これだけ喜んでくれれば、プレゼントを贈ったかいもあるというものだ。

 


桃子「お母さん...ありがとう///」

はしゃいだ姿を見られたのが恥ずかしいのか、耳を赤くしてお礼を言う桃子。

桃子母「いえいえ、どういたしまして。あとでお父さんにもお礼言うのよ。本当に、おめでとう」

桃子「うん!」

桃子母「じゃあ、部屋に荷物置いて着替えて来なさい。ホットケーキ作ってあげるから」

桃子「ホットケーキ!?わかった。すぐ着替えて来る!」

そう言って、桃子はドタドタと部屋に走って行った。

よほど嬉しかったのかしら?いつもの大人ぶったおすましが、嘘のように何処かに消えていた。

 


ホットケーキが出来上がった頃、桃子がリビングにやって来た。

桃子母「あら丁度いいわ。出来たから座りなさい」

桃子「うん」

ちょこんと椅子に座る桃子。

桃子母「はいどうぞ。晩御飯はご馳走だから、少しだけれど」

桃子「いただきます!」

そう言って、桃子はモグモグと美味しそうにホットケーキを食べる。



本当に幸せそうで嬉しくて、ついつい言葉がでてしまう。

桃子母「本当におめでとう、桃子」

桃子「もー、これで何回目?しつこいよ、お母さん」

桃子母「本当に嬉しいの。だって...」

『今まで、きちんと言えなかったから』と喉まで出かかった言葉を慌てて飲み込む。

この言葉は、今日という日にとってあまりにも不粋だ。

桃子は私が何を言いかけたか察したようで、それ以上は何も聞かなかった。

 


------------足りない過去を探すのは簡単だ。


------------私たちはそれを少しは取り戻したけれど、


------------まだまだ失ったものは多すぎる。


------------でも、そういうものを悔やむより、


------------これからの小さな喜びを、小さな幸せをたくさん重ねていきたい。


 





桃子母「桃子。産まれてきてくれて、ありがとう」





E N D


 


終わりだよー(◯・▽・◯)

御察しの通り、桃子のお母さんにラストの台詞を言わせたいだけのSSでした。



周防桃子様、お誕生日おめでとうございます。

あなたの未来に、こういう幸せなお誕生日が訪れますようにと祈るばかりです。

ではでは、そんな日が一日でも早く訪れるように、願掛けとして踏み台になる練習をしてこようと思います。


 

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