暁「お酒は飲んでも飲まれるな!なんだからっ」 (107)

・基本台本書き、書き溜です
・設定やキャラなど違和感があればゴメンナサイ
・間違った知識を披露していたら笑ってください
・お酒は二十歳になってから(艦娘はほら、みんな80歳とから大丈夫)

暁「以上、注意してよね!」


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一九〇〇 鎮守府 居酒屋『鳳翔』

多摩「まったく、提督の電コンプレックスもどうにかならんもんかにゃあ」プハ

球磨「加えてロリコンで六駆コンだからどうしようもないクマ。あ、生中おかわりクマー」プハー

多摩「カルーアミルクも追加でお願いするにゃ!」ドンッ

伊19「鳳翔さーん、こっちはおつまみが欲しいのねー!」

卯月「おつまみうーちゃんもー!」

鳳翔「はぁい、少し待っててくださいね。瑞鳳ちゃん、おつまみの方お願い出来るかしら」

瑞鳳「はい、任せてください!イク、卯月ちゃん。卵焼きで良いかなぁ?」

伊19「瑞鳳の卵焼きなら、何百個でも歓迎なの!」

卯月「ぴょん♪」

多摩「いつもいつも人前で惚気て……見せつけられる多摩の身にもなって欲しいにゃ」グチグチ

伊19「多摩はお酒が入ると愚痴っぽくなるのね」イヒヒ

球磨「察してあげて欲しいクマ。多摩も古株なのにケッコンしてるのは第六駆逐隊だけで、実質おあずけを喰らってる状態だから仕方がないクマ」ヒソ

伊19「んー……。着任順というか練度順で言えば次は多摩だろうし、もし多摩が指輪を貰えたらイクにも希望はあるんだけど……。でもてーとく、ロリコンだしこの身体だと不利かもなの」ユサユサ

瑞鳳「……」キキミミピクピク

卯月(司令官、ちっちゃい子が好きなら卯月にもチャンスがあるのかなぁ)

伊19「それに提督、第六駆逐隊とはケッコンどころか、電だけでなく四人全員と『結婚』しそうな勢いだし」

球磨「それはさすがに……。……いや、あり得る話クマ。そう言えば以前霧島が、『艦娘との重婚は法律で搏られていない』とか何とか」

伊19「色々と危ないハーレムなのね」

ガララララ

鳳翔「いらっしゃいませ、空いているお席に……あら?」

暁「」オドオド

多摩「暁?」

伊19「うん?おー!珍しいお客さんが来たのね」

球磨「寧ろ噂をすれば、かも知れないクマ」

瑞鳳「いらっしゃい、暁ちゃん。一人?」

暁「う、うん。えっと……どこに座っても良いの?」

瑞鳳「ええ、空いているところならどこでも大丈夫よ」

伊19「暁ー、せっかくだから隣に座るのね!」

暁「じーっ」

伊19「そんな目で見なくたって、変なこと何てしないの!多分」

暁「じゃあ……」トテトテ、ポスッ

卯月「ふぇ?うーちゃんの隣ぃ?」

多摩「妥当なところにゃ」クスクス

伊19「むー、信頼がないのね」

瑞鳳「今ね、イクと卯月ちゃん用におつまみを作ってるんだけど、暁ちゃんも食べる?」

暁「食べr」

伊19「食べりゅうううううううううう!」

瑞鳳「あなたには聞いていないわよ」ポコッ

伊19「いてっ。えへへへ」テヘペロ

瑞鳳「もう、すっかりできあがってるんだから」

多摩(あれは割と普段からのようにゃ気が……)

卯月「暁ちゃんもぉ、卵焼き。一諸に食べるぴょん」

暁「じゃ、じゃあ暁もいただくわ」

瑞鳳「はーい!」

鳳翔「はい、球磨さん、多摩さん。ビールとカルーアミルクです」

球磨「クマー!」

多摩「にゃー」

鳳翔「暁ちゃん、はい。お水失礼しますね」

暁「あ、うん……ありがとう」

伊19「でも暁、本当に珍しいのね。いつも晩ご飯は間宮で食べてたのに」

球磨「確かに、少なくとも夜にここで見たことはなかったクマ」

鳳翔「昼は定食なんかもやっていますけど、夜は完全に居酒屋モードに入っちゃいますから……」

卯月「でも、夜でも鳳翔さんの料理はとっても美味しいぴょん!お酒にも良く合うしぃ~」

多摩「なんだかんだで卯月も、すっかり常連さんにゃあ」

伊19「常連って言っても、那智や準鷹には及ばないのね」

球磨「あの辺りは生粋の酒飲みだから別次元クマ」

瑞鳳「確かにね」クス

暁「……」ソワソワ

鳳翔「暁ちゃん、食べたいものがあれば言ってくださいね。メニューに載っていない料理でも、お出しできますから」

瑞鳳(チキンライスと旗の用意、しておこうかな)ゴソゴソ

暁「…………さぃ」

鳳翔「うん?」

暁「れ、レディに合うお酒を、くださいっ!」

瑞鳳「」ポカン

球磨多摩「」ポカン

卯19「」ポカン

鳳翔「え……えぇっと……。少し、待ってくださいね」ニコ

暁「え、ええ!」ドキドキ

伊19(これはまた……)

多摩(何かあったのかにゃあ……)

鳳翔「瑞鳳ちゃん、少し、良いかしら」コソッ

瑞鳳「は、はい」コソッ

暁「そわそわ……」ドキドキ

鳳翔「瑞鳳ちゃん。暁ちゃんって……お酒、飲めるの?」

瑞鳳「うーん、と……あまり飲んでいるイメージはないですね……」

鳳翔「どうしましょう……何を出したら、暁ちゃんは喜んでくれて、満足できるのかしら……」

瑞鳳「そうですね……」チラ

暁「……」ジーッ

瑞鳳「さすがにジュースで誤魔化すのは、かわいそうですし……」

鳳翔「艦娘だからアルコールも問題はないのでしょうけれど……卯月ちゃんも飲んでいるし。でも普段お子様ランチを美味しそうに食べている姿を見てると、何とも……」

瑞鳳「実は体質的に酒飲みだった、とかなら良いですけど。もし下戸なら、それも嫌な思いさせちゃうだろうし……」

鳳翔「鎮守府カウンターバーでもジュースしか飲んでないものね……」

暁「……」

鳳翔「取り敢えず、カクテル辺りはどうかしら。あれなら甘くて飲みやすいでしょうし」

瑞鳳「やっぱり、そこが無難ですね。飲み過ぎないようにだけ注意してあげれば」

鳳翔「丁度多摩さんにカルーアミルクを出していますから、それにしましょう。きっと気に入ってくれるはずです」

瑞鳳「……」

鳳翔「瑞鳳ちゃん?」

瑞鳳「その、思ったんですけど……。暁ちゃん、『レディに合うお酒を』ってオーダーだったから、甘すぎると逆に子供扱いされてるって思っちゃうかも……」

鳳翔「……なるほど、そうね」

暁「……」

瑞鳳「そうだわ、梅酒なんてどうですか?お酒への入り口としては敷居も低いし、カクテルに比べれば甘すぎない」

鳳翔「梅酒なら、水割りやソーダ割りで濃さも味も変えやすいし、良いかもしれませんね」

瑞鳳「レディに似合うお酒……梅酒は老若男女、どの世代が飲んでも周囲の目から違和感を覚えにくいお酒ですし、それに卵焼きにも合う!」

鳳翔「確かに、少なくとも甘いカクテルよりは卵焼きに合いそうね……」

瑞鳳「梅酒で決定ですね。長年つけ込んだ、鳳翔さん特性の梅酒もあるわけだし。よーし、そうと決まったら早速」

鳳翔「……」

瑞鳳「鳳翔さん?」

鳳翔「瑞鳳ちゃん……一つだけ引っかかることがあるのだけれど。暁ちゃん……梅がダメって事、ないわよね?」

瑞鳳「……あー……」

鳳翔「梅酒はお酒の中でもさらりとしていて飲みやすくはあるけれど、あの癖のある味がダメだって人も少なからずいるから……」

瑞鳳「もう、直接本人に聞いてみます?」

鳳翔「それも一つの手なんだけれど……。……わざわざ居酒屋に来てまでお酒を頼む彼女のプライドに対して、どうなのかと……」

瑞鳳「最早どこに地雷があるか分からないですね……」

鳳翔「……」

瑞鳳「……」

二人「はぁ……」

鳳翔「難しく考えるのは、やめにしましょうか」ニコ

瑞鳳「そうですね。そうしましょう」クス

暁「……。……」

二一〇〇 鎮守府 司令官の部屋

司令官「それで、結局出てきたのが甘酒だったと」

暁「……」グスッ

司令官(ダメだ、笑っちゃいけない雰囲気だけど超面白い。というか可愛い)

暁「甘酒が、お酒じゃないことくらい暁だって知ってるんだから……」

暁「二人ともひそひそ話してたけど、暁には全部聞こえてたし……」

暁「でも、そこで怒るのはレディじゃないし……ちゃんと出された物は飲まなきゃって、泣きそうだったのも我慢だってして……」グスグス

司令官「……偉いな、その態度は立派なレディだよ」

暁「当然よっ、暁は一人前のレディなんだから!」グス

暁「最終的におとそか甘酒かって話になった時もじっと口をつぐんでいたんだから……」

司令官「は?お屠蘇?」

暁「おとそ」

司令官「」

――
――――
――――――――

鳳翔『正月じゃないけれど、屠蘇散を使ってお屠蘇を振る舞いましょう』

瑞鳳『屠蘇なら砂糖で甘みも加えられますしね』

鳳翔『あ、でも日本酒を入れるのは危険だから本みりんだけで溶かしましょうか……』

瑞鳳『でも、最早それってお酒じゃないですよね』

鳳翔『……せめて名前に酒と付いているこっちにしますか』

瑞鳳『そうですね、そうしましょう』

暁『……』

――――――――
――――
――

暁「……」ウルウル

司令官「」

司令官「」

司令官「……っふ!」ブフッ

暁「!!!!!」

司令官「はっ!しまった!違うんだ暁、今のは微笑ましすぎてつい!!」

暁「っ、司令官なんか……もう、知らないんだからぁっ!!」ダッ

司令官「ま、待て!待ってくれ暁!」グイッ

暁「やぁ!はーなーしーてぇ!」ジタバタ

司令官「悪かったって……吹き出したりなんかして、ごめんよ」ギュウ

暁「うー、うぅー……」ポロ

司令官「……」ナデナデ

暁「そう、やって……みんな私を、っ……子供扱いするんだもん……」グスグス

司令官「……これは子供扱いなんかじゃないさ」ナデ

暁「うそ……」クルッ

司令官(う……振りむいた暁の顔がすがりつくようで……、目元は今にも決壊しそうだ)

司令官(全く……)ポム

司令官「ほら……良くドラマなんかでもあるだろう?大人の女性でも、こうやって彼氏に頭撫でられたりさ」

暁「!」カァ

司令官「あー、だからな……安心しろ、僕は今暁を一人のレディとして、慰めてるつもりだから」ナデナデ

暁「っ……。……」ボスッ

暁「ひくっ……うぅ、ぐす……っ」

司令官「よしよし……」ナデナデ

司令官(目を見開いたかと思えば胸元に顔を埋めて肩をふるわせる様子はまごう事無き天使)ナデ

司令官「落ち着いた?」

暁「うん……」

司令官「良かった。まぁお酒に関しては大人でも飲めない人だって居るんだ。そんな無理して飲もうとする必要はないさ」

暁「……」

暁「……」シュン

司令官「……どうした、もしかして何かあったか?」ナデ

暁「もっ、もう撫でなくて良いから!それに、大したことじゃないから……」

司令官「泣くくらいに思い詰めることが、大したことじゃないって?」

暁「……ぅー……。……いぢわる」

司令官「ごめんな、意地悪司令官で」クス

司令官「……話してごらん」

暁「……」

暁「暁は、お姉さんなのに……」

司令官「うん」

暁「妹達は、お酒が飲めるのに……私一人だけ、飲んだことがなくて……」

司令官「うん」

暁「響は、ウォッカとか、そういうの、良く飲んでるし。出撃中も気付けだーって言って、飲んでるし」

暁「一回、半ば無理矢理渡されたことがあったけど、喉が焼けるかと思ったわ」

司令官(想像が付くな)

暁「雷は、良く飲むって訳じゃないけれど。パーティとか、みんなで騒いでいるときに、カクテル?もなんだか色々種類を知っているし、ビールだって普通に飲んでるわ」

暁「もちろんジュースがメインだけど、それでも……あんなに苦いのに、美味しそうに飲むんだもの……」

司令官(まぁ雷には僕も良くビール注いで貰ってるな)

暁「電は……」

司令官「うん」

暁「……、普段は飲まないけれど、司令官と一諸には、良く、飲んでるでしょ?」

司令官「……まぁ、そうだね」

暁「しかも、大抵夜は司令官も電も互いにべったりだから……毎晩いっぱい、飲んでるんでしょ?」

司令官「……否定はしない」

暁「……」

暁「司令官が日本酒好きだから、電も付き合って飲むようになったって」

暁「私も一口飲んでみたけど、胸は焼けて痛いし頭は熱いしで気持ち悪くなっちゃって……」

暁「三人ともそれぞれお酒が飲めるのに、暁だけ飲めないのが、その……レディとしては……」

司令官「なるほどな……事情は分かったよ」

司令官「けどさ。さっきも言ったけれど、お酒は見栄や無理して飲むものじゃあないし、飲めなくたってレディはレディだろ」

暁「……」

暁「……でも……」

司令官(む……これはまだ何か理由があるな)

司令官「そう言えば、今こうして僕の所へ来ているわけだけど。他の人には相談しに行ったのか?ほら、熊野とか戦艦のお姉様方とか」

暁「当然よ、熊野さんにも戦艦の人達にも、聞いてみたんだから」

司令官(暁がレディとして慕っている艦娘達にはもう相談済みか)

司令官「ちなみに、どうだった?」

暁「えっと……熊野さんは……」

――
――――
――――――――

熊野『飲酒……それも今時のレディの嗜みの一つでありますわ』

暁『熊野さん……!』キラキラ

熊野『私が愛飲してるのは……こちらですわ!』ドン

暁『おっきな瓶!えっと……あれ?でもこれ、霧島さんの名前が入ってるわ』

熊野『ふふ、霧島という銘柄ですのよ。分類としてはそう。焼酎ですわね』

暁『しょうちゅう……』

熊野『さぁ、暁ちゃんもどうぞ。今夜はレディとして、芋焼酎で華を咲かせますわよ!』

暁『はいっ、熊野さん!』キラキラ

――――――――
――――
――

暁「でも、全然お芋の味がしなくて……結局、飲めなかったの……」

司令官(熊野よ、おおレディよ芋焼酎と来るか)

暁「次はね、戦艦さん達の部屋に行ったんだけれど……」

――
――――
――――――――

山城『お酒が飲みたい?』

暁『ええっ!』キラキラ

山城『比叡……』

比叡『ちょ、私に丸投げ?もー……。えぇと、お酒は暁ちゃんにはちょっと早いんじゃないかなー』

暁『そんなことないわ!妹達は飲んでるし、睦月型の子達だって!』

長門『まぁ、駆逐艦でも嗜む娘がいるのは事実だが……。そもそも暁はなぜ、お酒を飲みたいんだ?』

暁『もちろん、一人前のレディとしてはお酒を嗜めなきゃ』ドヤッ

長門『お酒が飲めることがレディの条件だと。ふむ、それは少々おかしな話だな』

暁『え?』

長門『暁。自負するわけではないが、こうして私達に相談を持ちかけてくると言うことは、少なくとも暁目線では私達を一人前のレディとしてみてくれているわけだろう?』

暁『ええ!戦艦のみんなは、素敵なレディなんだもの』

長門『そうかそうか。しかしな、この長門は、そんなレディでありながら下戸なんだ』

暁『げこ?』

長門『下戸とはお酒が飲めない、と言うことだよ。執務室にカウンターバーが置かれたときも、私はジュースしか飲んでいない』

暁『……』

比叡(長門さんって、お酒ダメだったんだ……そう言えば確かにジュースを飲んでる所しか見ない……)

山城(でも、暁ちゃんを説得するために自分の短所をさらけ出せるのは、さすがだわ)

長門『ほら、だから酒など飲めなくとも暁は既に立派な――』

暁『長門さん、どうして嘘をつくの……?』

長門『む?私は嘘など、』

暁『だってクリスマスの時、今夜ばかりは飲ませて貰おうって、飲んでいたじゃない!』

長門『いやっ!?あ、あれはだな……そ、そうだ。あれはシャンメリーと言って、』アセアセ

暁『暁は、陸奥さんから聞いてるんだから!長門さんはお酒が飲めないんじゃなくって、普段は何があっても動けるように自粛しているんだって!』

長門『なっ、陸奥……あいつあれだけ誰にも言うなと』

暁『うぅ……長門さんも暁を子供扱いするんだ……』

長門『違う、そんなことは』

暁『いいもん!暁は一人で居酒屋にだって行ける、レディなんだから!』ダッ

長門『待っ……暁、暁ーっ!』

――――――――
――――
――

司令官「それで居酒屋に繋る訳か……」

暁「……」

司令官(後で長門にフォローいれといてやらないとな)

暁「誰に相談しても、暁を子供扱いするわ……」

暁「何より、みんなが飲めるお酒が私には飲めなくて……」ウルウル

司令官「……暁。何度も繰り返すけど、お酒が飲めない大人なんてたくさん――」

暁「でもっ!暁はお酒を飲みたいの!飲めるようになりたいの!」ツゥ

司令官「……そこまでこだわる理由は、なぜ?」

暁「私は……っ。っ……」ポロポロ

司令官「……」

司令官「……、……」フゥ

司令官「分かったよ。そこまで言うのなら、僕がお酒を飲ませてやろう」

暁「えっ……?」グス

司令官「ただし、二つ条件がある」

暁「う、うん」クシクシ

司令官「まず一つ。酒が飲めるかどうかは体質によっても変わるんだ。暁に害が出ると判断した場合は、即刻中断させるし今後無理してお酒を飲もうとしないと誓うこと」

司令官「これは絶対に守って貰うからな?君の身体のためにも」

暁「……」コクン

司令官「二つ目。もしお酒が飲めると分かったら……今夜は暁を、トコトンまで一人の大人として扱うから。泣き言言っても容赦はしないよ?もちろん、傷つけるようなことはしないけどね」

暁「当然よっ……、魂の年齢だけなら、司令官の何倍も大人なんだから」

司令官「……よし。じゃあ、今から準備するから。少し待っていて」


司令官「えぇと……茄子がある、ズッキーニにパプリカとベーコン……」ゴソゴソ

暁(お酒を飲ませてくれるって言ったのに、料理してる……)

暁(ううん、きっとこれも必要なことなんだ。暁がお酒を飲むために)

暁(司令官はどんなお酒を飲ませてくれるのかな……)

暁(暁は、ちゃんとお酒、飲めるかな……)

暁(あれだけ啖呵を切っておいて、でも、お酒の味はどれも苦手で)

暁(でも、暁だって本当は……)

司令官「暁」

暁「ふぇっ?あ、な、何?」ワタワタ

司令官「お待たせ、できたよ」

暁「そ、そう。えっと……」

暁(机の上に、ちょっとした料理となんだかおつまみみたいな物。それに……)

暁「ワイングラス……?」

司令官「白があれば良かったんだけれど、普段は赤しか飲まないからさ。ただ、ロゼはあったから……これでかんべんな」

暁「?う、うん」

暁(ワイン……確かに、ワインって大人っぽいかも。しんししゅくじょ?の飲み物って感じがするし)

暁(司令官、本当にちゃんと考えてくれたんだ……でも)

暁(でも私……この、お酒も飲めなかったら……)キュ

司令官「……注ぐね」

暁(あ――)

暁(なんだろう、すごく綺麗な色)

暁(淡いピンクが、静かにかさを増していって――)

司令官「さて。じゃあ、暁」スッ

暁(グラス……司令官と同じように持たなきゃ)スッ

司令官「――乾杯」

暁「か、乾杯」ススス

司令官「……」コク

暁(え、え?乾杯……って今の?グラスをこつん、ってするんじゃないの?)アセアセ

暁(と、とにかく暁も飲まなきゃ!覚悟を決めて、一気に……)ジッ

司令官「待った」

暁「えっ?」ピタ

司令官「暁。先ずは本当にほんの一口。軽く口に含んで?」

暁(……これくらい、かな)コク

司令官「そのまま、舌上で転がすように味わって……ゆっくりと喉へ通していくんだ」

暁「ん、ん……」

暁「ん――」コク、ン

暁(う……この感覚、アルコールが喉を通るときのこの感覚が……)

暁(苦手、だけど……)

司令官「……どう?」

暁「よく、分からないけど……思ったよりは、飲み辛くなかった、かも……?」

暁(口の中に僅かに残ってる香は、不思議と嫌いじゃない)

司令官「そっか。じゃあ、ほら。これでも食べな」

暁「チーズ?」

司令官「良く噛んで食べるんだぞ」

暁「そ、それくらい分かってるわよ」モグ

暁「……」モグモグ

暁(この味、コショウが入ってるんだ……なんでかな、このチーズ)

暁「すごく美味しい……」

司令官「……」クス

司令官「口の中チーズの味でいっぱいで、喉、乾かない?」

暁「少し……」

司令官「じゃあ……さっきと同じようにそのワイン。飲んでごらん」

暁「う、うん」

暁「……」コク、ン

暁「……!」

暁(あ、あれ?なんで)

暁(喉を通る感覚が、違和感はまだ少しあるけれど嫌じゃない)

暁(むしろ、チーズの味がワインに一転したせいかさっき感じた香がもっと広がって)

暁「おい、しい……?」

司令官「そっか、美味しいか」クスクス

暁(!私、今美味しいって……?)

暁(お酒を、美味しいって思えたの?)ジッ

司令官「焦るなよ、暁。もう一口飲んだら、そうだね……次はこれを」スッ

暁「わ、分かったわ」コク

暁(ん――。……今度は正直、さっきみたく美味しいとは感じないような……違和感もまだあるし、飲めなくはないって感じで)

暁(でも不思議。どこか嫌いになれないというか、いや、それよりも)チラ

司令官「どうぞ?」

暁(チーズの味が流れたからかしら。司令官が差し出してくれた、生ハムを胃が……。ううん、香に包まれた喉が口が、いやに欲しがっている)ゴク

暁「いただくわ」パク、ン

暁(ああ、この程よい塩辛さがワインの香りに溶けてゆく……)モグ

暁(むしろ生ハムの方が主張が強くなってきて、飲み込んでも、やけに肉の味が喉にこべりついて)ゴクン

暁(何故だろう。違和感しか覚えなかった、あの、アルコールで喉を洗浄したい。咥内の塩気ごと、香りで上書きしたい――)コク

暁(あ、あれ?私、自然とワインをもう一口……)ン

暁「……!」

暁(今度は、香りがハッキリと分かるわ。まるで、口の中に薔薇が花開いたようで、さっぱりとしている)

暁(そして何よりも。塩気が、肉の味が流れる瞬間の違和感がたまらなくて、脳を犯すアルコールのふわふわが妙にやみつきになって)

暁(ああ、そっか……この違和感が)

暁(ううん。これが――)

暁「お酒の、おいしさ……」

司令官「……」ニコ

暁「……」

暁「!」ハッ

暁「し、司令官!飲めてる……暁、お酒が飲めてる!」パアァ

司令官「そうだね、暁。……ちゃんと飲めたじゃないか、良かったよ」

暁「うん……うんっ!」キラキラ

司令官(今日一番の子供らしい笑顔だ、本当に嬉しいんだなぁ)

司令官「ロゼワインは食事に良く合うんだ。少しだけどつまみと、ラタトゥイユも作ったし、ゆっくりと。食べながら飲もう」

暁「うんっ!飲みましょ、司令官!……あ」

暁「こほん。……付き合ってくれるかしら?司令官」スッ

司令官「喜んで。マドモアゼル」スッ

二三三〇 鎮守府 司令官の部屋

暁「――ん……ぅ」

暁「……?ふえ……」モゾ

司令官「暁」

暁「あ、れ……?司令官?私……」

暁「!?も、もしかして、寝ちゃってた!?」

司令官「うむ、いびきもかいてたぞ」

暁「ぴっ!?うぅ~……」ジッ

司令官(毛布で口元を隠しながらこちらを睨むな色々やばいから)

暁「……あの後、なんだかふわふわして、心地よくなって……。そっかぁ……寝ちゃってたんだ」シュン

司令官「まぁ、昼は出撃に精を出して、帰ってから騒いで。その上あれだけ泣いたら、体力も使うさ。そんな状態で酒を入れれば僕だってすぐトロンだよ」

暁「……」ジトー

司令官「……なにさ?」

暁「司令官に泣き顔も寝顔も見られた……レディとして失格だわ」ボスッ

司令官「そこは隠さずに照れ顔も見せてくれよ」

暁「司令官のいぢわる……絶対見せてあげないから、というか照れてないし!」!カスンプ

司令官「そっか」クスクス

司令官「暁、お前さんまだ風呂に入ってないだろ?取り敢えず入って来なよ」

暁「そうね……そうするわ」

司令官「何気に、もうすぐ日付も変わるからなぁ……。電達ももう寝る時間じゃないか?まぁ、暁は中途半端に寝たからすぐに寝れないかもだけど」

暁「うーん……。確かに、寝起きで少しだるいけど、お風呂に入ったら冴えちゃうかも」

司令官「あ、長風呂はするなよ?身体にアルコールが入った状態で風呂に入ると、すごい勢いで回るから。見た感じ、少し入るくらいなら良さそうだけど」

暁「そうなの?それなら、そうするね。じゃあ、行ってくるわ」

司令官「ん。行ってらっしゃい」

暁「……司令官」

司令官「ん?」

暁「今日は、もう寝ちゃう?」

司令官「いや、もう少しは起きてるかなー。なんで?」

暁「べ、別にっ、深い意味はないけど。じゃ、じゃあね」パタパタ

司令官「おー」

司令官「……」

〇〇一五 鎮守府 司令官の部屋

コンコン

司令官「入ってまーす」

暁「もう、トイレじゃないんだから……」ガチャ

司令官「はは。来るだろうなーとは思ってたけど、改めてどうした、暁」

暁「え、えーと、その……」

暁「司令官は、まだ起きてるんでしょ?」

司令官「いや、そろそろ寝ようかなぁと」

暁「えっ!?そ、そうなの……」

司令官「何て、冗談冗談。まだ起きてるさ」

暁「むーっ。もう、司令官のばかっ」!カスンプ

司令官「ふふん、大人なレディなら言いたいことはハッキリ言わなきゃ。今夜は、促してあげないよ?お嬢さん」

暁「!……、う……。えっと、えっとね、その……」

暁「し、司令官が起きてるならっ、このレディな私とお酒で付き合ってくれても良いのかしらっ?しし、仕方なく何だからねっ?」ドヤガオチラチラ

司令官(暁よ、お前が目指すレディはどこにある)

司令官(しかし……)ジッ

暁「な、なに?」ドキドキ

司令官「暁。酒がまだ残ってる感覚とか、フワフワふらふらする感覚はある?」

暁「え?……うーん……。お風呂に入ったからだと思うけど、むしろすっきりしてるような……」

司令官(ふむ)

司令官「よし。分かった、レディの誘いを断るなんて紳士じゃないからな」

司令官「是非。お付き合いさせてください」ニコ

暁「!」パアァ

司令官「それじゃ、またロゼを……」

暁「あ!待って、司令官」

司令官「うん?」

暁「司令官、さっき、普段は赤しか飲まないって言ったわよね?だったらその……暁にも、司令官が普段飲むワインを振る舞ってくれないかしら?」

司令官「赤か。赤はロゼに比べると少し渋みが強いが……」

暁「……」

司令官「……ま、試してみるか。」

暁「!」

司令官「もう遅い時間だし、つまみはさっきの残りを少しにして……と」セッセ

司令官「そしてこの秘蔵のワインを、注ぐ」トク

暁「わぁ……真っ赤と言うより、暗い赤?なのね」

司令官「さぁ、飲もうか」スッ

暁「ええっ」スッ

二人「……」

二人「乾杯」

司令官「ん……」コク

暁「……」ドキドキ

暁「ん――」コク

暁「……」

司令官「どうかな?」

暁「……確かに、さっきのよりは渋み?が強くて飲みにくいけど……」

暁「でも、美味しいって。そう感じるわ」

司令官(無理は、してなさそうだな。そっか……)

司令官「暁には、ワインが合うんだな」

暁「そう?暁に、ワイン、似合う?」

司令官(そっちの合うって意味じゃないんだけど)

司令官「ああ、絵になっているよ」

暁「……えへへ」ニヘラ

司令官(天使)

司令官(一杯目を飲み終えた時点で、既に顔がほんのりと紅くなってたけど)

暁「チーズに生ハムを巻いても、美味しいわ」モグ

司令官(悪酔いもしてなければ、少しトロンとしてるくらいで朦朧ともしていない)

暁「司令官。おかわりを、貰えるかしら?」

司令官(間違いない、暁は酒が飲める体質だな。それに――)

司令官「暁は、酔いが回るのは早いがすぐに醒めるタイプだね」

暁「?そうなの?」

司令官「一度寝たとは言え、最初の酔いもほとんど残ってなかったみたいだし」

司令官「きっと、こうしてゆっくり飲んでいれば無理せず長く、量もそれなりに飲めると思うよ」

暁「……そっか。えへへ」

司令官(しかしまぁ、酒の影響か良く笑うな。笑うというか、微笑みを絶やさないというか)モグモグ

暁「……ねぇ、司令官」

司令官「んー?」コク

暁「暁がお酒、飲めるって事は……これからも、司令官と一諸に飲めるのかな……?」

司令官「そうだな。いつでも付き合うぞ、大歓迎だ」

暁「――嬉しい」フワ

司令官「」ドキッ

司令官(な、なんだろ。僕も酔ってるのかな。何か、暁が妙に大人っぽくと言うか、艶やかに見えるというか……)クシクシ

暁「……ずっと、司令官と一諸に、お酒が飲みたかったの」

司令官「む……」

暁「妹達がね、お酒が飲めて。でも、私は飲めなくて。それもね、嫌だったんだけど」

暁「何よりね……暁だけ、司令官とのこうした特別な時を過ごせないって言うのが、とっても、とっても、悲しかったの……」

暁「だからね。私、今とっても、……幸せよ、司令官」ニコ

司令官「あ、暁……?どうした、いつもの暁らしく……」

暁「?」

司令官(……いや、違う。そうか、暁は)

司令官(酒を飲むと、素直になるのか!)

暁「どうしたの?司令官」

司令官(つまり……今なら?)スッ

司令官「暁」ナデナデ

暁「んっ……ふふ。心地良いわ、司令官……」ピト

司令官(ふうぅおおおおおおぉぉぉぉおおおお!!!いつもの暁じゃないけどこれはこれでやばいいいいいぃぃぃ!!!)

暁「もう……エレファントなレディの頭は、安くないんだからね?」ニコニコ

司令官(でも根は変わってねえぇぇえ!やふううぅぅ!)

司令官「っと、もうすぐ〇二〇〇か……。さすがに、今日はこの辺りで切り上げた方が良いな」

司令官「暁、部屋まで送るよ。鎮守府内とは言え、一応な」ヨッコイセ

暁「……」

司令官「暁?」

司令官(飲ませすぎたかな……おんぶして運ぶか?)

暁「司令官」

司令官「う、はい?」

司令官(あれ、目が座ってないな、割と意識はしっかりしてそう……じゃなくて)

司令官(つ、ついひるんで敬語になってしまった。なんだかさっきから、暁の雰囲気がどうも慣れなくて……)

暁「……」ジッ

司令官「えー、っと……」

司令官(ダメだ、暁が何を考えているのか分からない。それより、酒のせいだろうが熱に浮かされた表情で見つめられるのが何とも……)フイ

暁「……」

ここまで書いておいてようやっと、スレタイ間違えてたことに気付く。本当は

暁「レディは飲んでも飲まれるな!なんだからっ」

とするつもりでした……orz
お酒は飲んでも飲まれるなって普通のタイトルじゃん(´・ω・)

暁「……司令官にとって暁は、魅力……ない?」

司令官「えっ?」

暁「……」クス

司令官(う、そんな悲しそうな笑み向けられたら)

司令官「そ、そんなわけないだろ。十分魅力的だよ、何たって一人前のレディなんだからな!」

暁「……。……」

暁「だったら……っ」グイッ

司令官「おわっ、あかつ――」

司令官(一瞬、何が起きたか分からなかった)

司令官(暁に無理矢理引き寄せられた身体は、彼女に覆い被さるようにして倒れ込んで)

司令官(潤んだ彼女の瞳が、至近距離で、宝石のように綺麗に光っていて)

司令官(そして――)

暁「――は」

司令官「っ……」

暁「……、レディの方から、こんなコトさせるなんて……し、紳士じゃないんだから……」

司令官(顔が紅いな。照れているのかな、酔っているのかな)

司令官(なんて、どこか間の抜けた思考が脳内を走りながらも)

司令官(胸の高鳴りが止まない。幼い容姿の彼女はどこに“女の子”を置いてきてしまったのか)

司令官(今。僕の頬へ掌を当てはにかむ一人の“女性”から、目を離すことができない――)

暁「部屋に、戻りたくない」

司令官(理性が揺らぐ)

暁「今夜は、司令官と一諸にいたい」

司令官(彼女が求めていることが、何となく分かるから)

暁「私――」

司令官(僕は――)

司令官「……ダメじゃないか、暁。お酒は、飲んでも飲まれるものじゃあない」

暁「ぁ……」

司令官(彼女を一撫でし、ゆっくりと身体を起こす)

司令官(お互い、酒による気の迷いが生じているのだと。そう、自分自身に言い聞かせて)

司令官「さ、いい加減もう戻らないとな。この時間だし、明日午前は非番にしてあげるから」

司令官(明日になれば冷静になった彼女はきっと。このことを思い出して取り乱した後、ホッと胸をなで下ろすに違いないから)

司令官(部屋まで送ってお休みと声をかけて、今夜は、それで終わりだ。最早暁が何を言おうと、やんわり受け流してあげよう)






暁「電なら……どうしていたの……?」

司令官(そう、決めたはずだったのに)

暁「もし、電と同じ状況になっていても……あの子を、そのまま部屋へ帰したの?」

司令官(『そうだよ』。その一言で、充分なはずなのに)

暁「いつも、電と晩酌をしてるとき……ただ、お酒を飲むだけなの?」

司令官(こちらをまっすぐに捉えた暁の瞳が。僕に、嘘を吐けなくさせる)

暁「司令官にとっての一番があの子だって事くらい、知ってる。でも、それでも暁は」

暁「司令官と一諸に、お酒が飲みたかった。お酒だけじゃない、暁も電と同じように司令官と……、あの子に敵わなくても、司令官に暁を求めて欲しかった」

司令官(ああ、違う。暁、君は……僕は)

暁「司令官……、私、私を……っ」

司令官(これ以上は――)

司令官「暁……お酒の力に任せて――お酒に飲まれて、身体を重ねるなんて。それは、酒飲みが一番やっちゃいけないことだ」

司令官「自分の想いを、酒なんかに塗りつぶされるようじゃ……飲む資格なんて、ない」

暁「!……、……」

司令官「……暁。君のためにも……」

暁「……何よ、それ」

暁「司令官は……っ、司令官は、何も分かってないわ……!」キッ

司令官「……」

暁「……確かに、お酒を飲むとふわふわして……自分が、大胆なことをしてるのも、普段とちょっぴり感覚が違うのも、自覚してる」

司令官「……」

暁「でも……っ、暁の想いは……私の、この、想いは」

暁「司令官の事が、こんなにも好きなのはっ……お酒のせいなんかじゃ、ないんだから!」ツゥ

司令官「!暁……」

暁「っ……」クシクシ

暁「……司令官が、電を誰より大切に想っている事は知ってるから……。だから、『あの子のために』、『あなたのために』、暁を選べないならそれはそれで良いの」

暁「暁は、一人前のレディで、お姉ちゃんなんだから……我が侭は、言わないんだから」

暁「でも……っ。『暁のために』だなんて……、暁の、司令官が好きだって想いを拒まれるのは……耐えきれない……っ」ポロ

司令官「暁……」

暁「こんなにも……っ、すき、なのに……すきだからっ……。私の気持ちまで、否定……しないで、よぉ……!」ポロポロ

司令官「暁……っ」ギュ

暁「ふえ、ぇ……。きり、霧島さん、が……っ!艦娘なら重婚、できるだなんて、言うっから……ぁ!期待する気持ちが、出ちゃって……ずっと好きの気持ち、消せ、なくて……」グスグス

暁「だから……だからっ。『暁のため』って言ってくれるなら……っ。電のために、司令官自身のために!私の想いを、拒否……っしてよぉ」ボロボロ

司令官「僕は……」

暁「そうでないなら……っ。それが、できないなら……」グスッ



暁「――暁とも、結婚してください。司令官……っ」

司令官「……」

暁「っ……」ゴシ‥

司令官「……、……」

司令官「……暁」

暁「」ビクッ

司令官「僕の気持ちを、ハッキリと言うのは……君にとって、酷かもしれない。それでも……」

暁「ううん……良いよ、司令官。暁は……もう、子供じゃないんだから」

司令官「そっか……」クス

司令官「……。僕は」

司令官「艦娘は、皆等しく、平等に愛しているよ。みんな良い子達で、それぞれに優劣なんて付けられないし……みんな大切な存在だよ」

暁「うん……」

司令官「けれど……一人の女性として見たときに。やっぱりどうしても、自分の中で贔屓は生まれてしまう」

暁「……」

司令官「僕も人間だ。心から好きだと想う子がいて……きっと、男女の愛情という意味では彼女を越える子はいないんだろうな」

暁「そっ……か。そう、よね。司令官はやっぱり、電だけを――」

司令官「だから、……重婚、したとしても。奥さん同士比べるな、何て無理だろうし、自分の中で順位付けだってしちゃうだろう」

司令官「暁はさ。そんなでも良いのかい?」

暁「……ふえ?あ……良いも何も、それも覚悟の上で告白したんだし……」

暁「で、でもそもそも、電以外は選べないって話に繋るのよね……?だったらそんな事聞かれても……」

司令官「……僕はさ。聖人君子なんかじゃあないんだ。いや、それどころか」

司令官「電という一番が居ながら、暁にも気移りしてしまうような……俗っぽい人間なんだよ」

暁「!それって……」

司令官「君が、真剣な告白をしてくれたから。……僕も、真面目に返さないとね」

司令官「提督として着任し、初めての秘書艦として電と出会い、……そして電に恋をした」

司令官「一目惚れ、ってわけじゃなかった。長い時間が、お互いの絆を育んだんだよ」

司令官「けれど……そうして絆を育んできたのは電だけじゃない」

暁「……」

司令官「実はケッコンカッコカリを皆に説明したあの日。暁と同じように、霧島から『人と艦娘のジュウコンならぬ重婚』について話を聞いたとき」

司令官「僕もね。期待する気持ちというか、何人か頭に浮かんでしまって。一夫多妻なんか、憧れるなぁなんて思ったりもして」

司令官「あはは……きっと、ゲームや漫画なんかの主人公なら、僕は読者に嫌われるタイプなんだろうな……」

司令官「でも……だからといって。誰かを悲しませることはしたくなかったから……そして何より、電が好きだから。僕が結婚を申し込むとしたら、やっぱり電だけだなって。そう、決めてたんだ」

暁「……」

司令官「ただ、まぁ、さすがは長く一諸にいた秘書艦というか。電には、色々お見通しで」タハハ


――
――――
――――――――

電『司令官は……、暁ちゃんとか、他の人達との、その……結婚も、考えているのですか?』

司令官『ん?何言ってるのさ。僕には電だけ――』

電『……』ジッ

司令官『……、あー……。……まぁ、ハーレムに憧れないと言えば嘘になる』

電『……司令官らしいのです』クス

司令官『だけど、電が居てくれればそれで良いと思っているよ。……この気持ちは嘘なんかじゃない』

電『はわ……うぅ、照れるのです……』

電『でも……その気持ちが嘘じゃないことは、分かっているのです。それだけで、電は幸せなのです――』ピト

司令官『電……』ナデ

電『だから……、司令官なら、きっとみんな幸せになれると思うから』

電『もし司令官が望むなら、電は、大丈夫なのです』

電『その時は……。あなたが恋をし、あなたに恋をした人全員……大切に、してあげてください』

司令官『……、……その時がきたら、な』

電『……なのです』

――――――――
――――
――


暁「電は……すごいね」

司令官「だな。そして対する夫は、酷いダメ男だよ」

暁「そんなこと……」

司令官「ま……女たらしになるつもりも、一時の感情で動くつもりはないけどさ。それでも……僕が恋した人は一人に収まらなくて、あわよくばその全員を娶りたいなんて考えているわけだから」

司令官「暁。君の告白に応えるなら、僕は……君のことが好きだ」

司令官「電に次いでここに着任し、今まで僕を支えてきてくれた君のことを……愛しているよ」

暁「しれい、かん……」ツゥ

司令官「だけど……きっと、僕の中で君を一番にしてあげることはできない……」

暁「……」フルフル

暁「良いの。それでも……例え司令官の一番でなくても構わない……っ、司令官と一諸に、いたいの」ツゥ

司令官「こんな最低な僕でも……暁は、好きだと、言ってくれるんだね」

暁「うん……っ、うんっ。大好きなの、司令官……」グスグス

司令官「――分かった。結婚しよう、暁。必ず幸せにするから」ギュ

暁「うぅ……ううぅ……司令官……司令官……」ギュゥ

暁「私……叶わないと思ってた……私の想いはっ、ぜったい、届かない……って」グス

暁「だから……だからっ……っ」ボロボロ

司令官「……」ナデナデ

暁「……」

司令官「落ち着いた?」ナデナデ

暁「うん……。なんだか今日は、泣いてばっかりだわ……」

司令官「泣き顔も可愛いから個人的には嬉しいんだけど」

暁「本当、司令官はレディの扱いが為っていないんだから」プイ

司令官「ごめんごめん」クスクス

暁「……」コク

司令官「……結局、二人で一本空けちゃったね、ボトル。美味しかった?」

暁「うん……美味しかったし、あまり酔っ払わなかったから良かったわ」

司令官(今僕のかいたあぐらの上に収まりながら頭撫でられてるのに何も言わない当たり、まだ酔いは回ってるんだろうけど)

司令官「もうすっかり夜ふけ……というか〇三〇〇じゃないか。こりゃ、明日は僕も起きれないな」

暁「大丈夫なの?」

司令官「ま、電に一報入れておいたし大丈夫だろう」

暁(いつの間に)

司令官「さて……そろそろマジで寝ないと。暁は……」

暁「……」ギュ

司令官「……ここで一諸に寝るか」

暁「……一諸に、寝るだけ?」ジッ

司令官「……」

暁「司令官……暁は、司令官のお嫁さんに……なるのよね?」

司令官「ま、まぁそうだな」

暁「さっき、暁に魅力があるって……言ってくれたわよね?」

司令官「た、確かに暁は魅力的だよ、うん。でも、君が考えているようなことはもう少し、何て言うか、その……」

暁「……」

司令官「レディを磨いてからでも、遅くはないというか……」

暁「……、ねぇ、司令官?」ギュ

司令官「っ……はい」

暁「今夜は暁のこと……トコトンまで、大人扱いしてくれるんだよね?」

司令官「あ……」

暁「……」クス

暁「暁のこと――大人にしてくれる?」

司令官「!」ドキッ

司令官「……、……。……はぁ」

司令官「後で泣き言言っても……知らないからね?」ギシッ

暁「……へっちゃらだし」クス




\マチニマッタヤセンダァ!/

〇八〇〇 鎮守府 司令官の部屋

暁「ぅ……うん……」モゾ

暁「ぅ~……。……」ボンヤリ

暁(眠くて、ふらふらする……。あれ、ここ暁達の部屋じゃない……)ボー

暁(司令官?……寝てる。そっか、暁は昨日司令官と……)

暁(一諸に、寝……)

暁「あれ……?」サワ

暁「暁、はだかんぼ――」

司令官「ん……おぁよ、あかつき……」パチ

暁「ぴっ……!?」

暁「やぁ!」バサッ

司令官「ちょ、布団剥ぐな寒いから」

暁「!!!!」

ぴいいぃぃぃぃいいいいい!!

暁「司令官もはだかんぼおおぉぉ!」

司令官「……あー……」

暁「ふえぇ……ふえぇぇ……」

司令官(掛け布団に丸まってこっち見ないように隠れてる……)

司令官「取り敢えず、布団は没収」グイッ

暁「きゃっ!?」

司令官「すかさず暁を抱き寄せる」ギュッ

暁「やぁ!ばかぁ!えっちぃ!!」

司令官「おとなしくしてろって……まだ眠いし寝たり無いんだから……。ほら、布団被れば見えないだろ」

暁「ふぇ……み、見えないけど、見られないけど……」

暁(うぅ……裸どうしなのに抱き締められて、こんなの……)ドキドキ

暁「うー……うぅ~……」

司令官「そのうーうー言うのを止めなさい」

暁「だってぇ……」ウルウル

司令官「全く……」ナデナデ

暁「やっ……も、もうっ!なでなでしないでよっ」

司令官「えー、昨晩はあんなに撫でられて喜んでたのに」

暁「き、昨日は酔ってたから……し、仕方ないの!」

司令官「んー……残念。じゃあせめて抱き枕になって貰うか……」ギュー

暁「し、ししししれいかん……っ!せ、せめて服を……」

司令官「今更何を……昨日はあんなに」

暁「わ、わーっ、わーっ!あ、あれも酔ってたから!酔ってたからなのぉ!」ブンブン

司令官「あの告白も、酔っていたから?」

暁「っ……」

司令官「暁が僕のこと、好きだって気持ちは……」

暁「……そ……それは、……本心、だけど……」ボソボソ

司令官「暁」

暁「ひゃいっ!?」

司令官「もう、酔っては居ないけどさ。それでも……」スッ

暁「っ」ビクッ

司令官「……ダメ?」

暁「……、……」ドキドキ

暁「……司令官の、えっち」フイ

司令官「……」

暁「……ぁ」

一二三〇 鎮守府 廊下

暁「もうお昼時じゃない……お腹もぺこぺこだし。司令官は、もっとレディの扱いの何たるかを知るべきだわ」

暁「よくよく考えてみたら、朝からあ、あんなこと求めるのは紳士じゃないんだから!」

司令官「ごめんごめん。暁が可愛いかったから、つい」

暁「う……ま、まぁたくさん求められるのは大人としてみられてる証拠として、良いんだけれどっ」ツーン

暁(でも、こんなに腰に来るとは思ってなかったわ……)ズーン

暁(言い換えれば、この痛みも大人の証、なのかしら……)ムムム

暁(そうよね、こんなの子供じゃできないもの。一人前のレディの証だわ!)パアァ

暁(……司令官は、暁を一人前のレディとしてみてくれてるんだ……えへへ)ニヤニヤ

司令官(めまぐるしく動く表情だなぁ)

司令官「さーて、今日の昼はどっちにしようかな。間宮か鳳翔か」

司令官「どうせなら昼は間宮で食べて。夜は鳳翔で飲むのもいいなぁ」フーム

暁「司令官、今夜も飲むの?」

司令官「うん?まぁ、割と毎日飲んではいるからね。言っても普段は少しだけれど」

暁「そっか」

暁(今なら、暁も司令官と一諸に鳳翔さんの居酒屋で飲めるかしら……きっと、居酒屋だからワインもあるだろうし)

暁(みんなでわいわい飲めたら、楽しそう!)

暁(でも……)チラ

司令官「~♪」

暁(……)

暁「し、司令官!」

司令官「ん?」

暁「司令官……も、もし良ければ今夜も、暁と――」

電「あれ?司令官さん、暁ちゃん」

暁「い、電?」

司令官「おー、電。今日はごめんな、突然に非番にしちゃって」

電「ううん、大丈夫なのです!暁ちゃん、昨日は大丈夫でしたか?」

暁「ふぇっ?きき、昨日?大丈夫って?」ドキドキ

電「?お酒の飲み方を遅くまで教えていたって、司令官さんから聞いたのです。気持ち悪くなったりとか、してなかったかなって……」

暁「あ、あー……。も、もちろん!ちゃんと飲めたわ!暁は一人前のレディなんだもの、お酒だってへっちゃらよ」エヘン

電「」チラ

司令官「」ニコ

電「それは良かったのです!電は最初の頃、あまり飲めないのに飲み過ぎて酔いつぶれちゃったりもしたから……」

暁「そ、そうなの?……暁なんか、昨日は司令官と二人でボトルを一本空けちゃったんだから!」ドヤ

司令官「こーら、暁。それは何の自慢にもならないよ。お酒が飲めることを自分の売りにするのはレディのすることじゃないぞ」

暁「ふぇ?そ、そうなんだ」

司令官「ま、でも二人とも飲めるってのは分かったし。どうせなら今夜、三人で居酒屋鳳翔に行くか?」

暁「!」

電「わぁ、楽しそうなのです!」

司令官「暁はどうだ?」

暁「……、……司令官」

司令官「うん?」

暁「どうせなら響や雷も誘って、みんなで行きましょ」ニコ

司令官「おー、そうだな。よし、そうしよう!」

電「なのです!」

暁「……」

司令官「……今度、また二人で飲もうな」ボソッ

暁「!……ええっ」

司令官「さーて、そうと決まったら間宮に……」

電「あ……もしかして、今から間宮さんでお昼、ですか?」

司令官「そのつもりだけど」

電「えっと……今はその、行かない方が良いかもしれないのです……」

司令官「?何で――」

ガシャアッン!

暁「!?今、間宮の方で何か割れる音が……」

司令官「何だ、何かあったか!?」ダッ

電「あっ!司令官さん!」

同時刻 鎮守府 甘味所間宮

司令官「おい、今何があっ……た?」

ポーラ「うぇへへへ~……あ~、提督が見えますよぉ~?」

隼鷹「あっはっはっは!ぽーらぁ、大分酔ってんなぁ!提督は今日休みらしいし、こーんなとこ来ないってぇ」

ポーラ「でーすねぇ!ちょっと飲み過ぎちゃったみたい~……水~、水~」

隼鷹「水ならほら、この日本酒水みたいなもんだからよぉ!のめのめぇ!」

ポーラ「いただきますぅ~♪」グビグビ

司令官「……、……」

暁「う……何これ、お酒クサイ……」

電「電がここへ来たときは既にこんな事に……どうやら今日は間宮さんも居ないみたいで……」

隼鷹「あはははははー!」ガシャアン

司令官「……、……」ブチッ

司令官「隼鷹ぉ!!ポーラぁ!!」

ポーラ「あ、あれれぇ~……ほ、本物、本物っぽいですよぅ~!」アセアセ

隼鷹「て、提督っ!これはちが……あ~」フラフラ

ポーラ「ご、ごめんなさ……うぇっぷ」

暁(た、戦ってるときはかっこいいのに、お酒でこんなになるなんて……)

暁(レディとはかけ離れた姿だわ……)ドンビキ

電「お酒は美味しいかも知れないし、楽しいかも知れないけれど……」

<ああぁ隼鷹置いていかないでぇ~!
<ポーラよ、お前のことは忘れないぜぇ!……うっぷ
<二人とも逃がすかぁ!

暁「……」

暁「……レディは飲んでも飲まれるな、ね……よく分かったわ」ハァ





艦!

一応これで終わり。
ちょっと風呂ってからおまけと後日談を蛇足的に投下しまする。

【おまけ壱:響の場合】

とある夜 鎮守府 司令官の部屋

響「司令官、来たよ」ガチャ

司令官「ん、待ってた。北方任務お疲れ、響」

響「司令官もね。身体、冷えなかったかい?」

司令官「何、督戦とは言え甲板に常に出ている訳じゃないし、寧ろそれは僕の台詞だよ」

響「私達は、帰ってすぐお風呂に入ったからね。大丈夫さ」

響「それよりも……」

司令官「ああ、心配するな。準備はできてる」

響「ハラショー」

司令官「響はロックでいいか?」

響「問題ない」

司令官「んじゃ……」トクトク

響「司令官の分は私が注ぐよ」

司令官「ん、さんきゅ」

司令官「それじゃあ」

響「ああ」

二人「乾杯」

司令官「ん……」チビ

響「んく……」ゴキュ

司令官「ふは……響は相変わらず、あおるねぇ」

響「司令官は相変わらず、少しずつだね」クス

司令官「ウォッカはなぁ、得意ではないからな。美味いけど」

響「ああ……でも、良いとろみが出ているね」

司令官「ま、この方が個人的に飲みやすいしなー。付き合わせちゃって悪いけど」

響「いや、普段氷らせたウォッカを飲まない分、こうしていつもと違う味わいが楽しめるのは嬉しいよ」ゴク

響「司令官、今日はニシンとピクルスを用意したんだ」

司令官「おっ、いいねぇ。遠慮なくいただくぜ」

響「どうぞ」

司令官「じゃあ先ずはニシンから……」モグッ

司令官「んぅ、うまい!酢に良く漬け込んであって、酸味と塩気が濃いから――」ゴク

司令官「っんー!味や匂いがない分、つまみの香が広がりながら流されてウォッカの純粋なアルコールが染みるぅ!」

響「ふー……リセットされたはずの口の中だけど、水と違って濃いアルコールが残っているせいで、二口目がより美味しく引き立つんだよね」ポリポリ

司令官「うむ、あぁピクルスすっぺぇうめぇ」ポリポリ

司令官「あ、そうそう。そいや今日のために間宮さんからこれを貰っておいたんだ」

響「これって……キャビアじゃないか。奮発したんだね」

司令官「おうよ。ウォッカに合うって聞いたからさ、試しに取り寄せてみたんだ。ささ、食え食え」

響「じゃあ、折角だから……」パクッ

司令官「どう?どう?」

響「……驚いたな、このキャビア――」ゴク

響「っふ……ああ、これは良い。魚の卵くさくないのは当然なんだけれど、塩辛くなく、それでいて海の香が広がるんだ」

司令官「……」パク

司令官「……はぁ~……。すげぇ、ウォッカに包まれた舌上でなめらかに溶けるこの感覚がたまらん……。これは良い買い物をした……」ポワワ

響「早くも顔が赤いよ、司令官」クスクス

司令官「響は白いなぁ……」

二人「ふぅ……」

響「……あれ、もう飲まないのかい?司令官」

司令官「そういう響は、もう食べないの?」

響「もともと、肴を無しにお酒を飲むのも好きだからね。つまみはもう充分に楽しんだから」

司令官「そっか。んー……ウォッカというか蒸留酒全般なんだけど、弱くて。僕は逆に何か食べながらじゃないと飲めないからなぁ。でもキャビアをこれ以上食べるのは何か勿体なくて……」

司令官「何もなくとも、ウォッカだけ飲めれば良いんだが……」

響「……例えば、レモンやライムなんかで香り付けをしてみるのはどうかな」

司令官「あー……それはやったことがあるけれど、ダメだったんだよ」

響「なら……」スッ

司令官「塩?」

響「これをね、手の甲へ乗せて。舐めながら飲むのも一つの飲み方にはあるんだよ。挑戦してみるのもありかも知れない」

司令官「なるほどねぇ。んじゃ、塩貸して」

響「ん、どうぞ」スッ

司令官「……」ガシ

響「……司令官?どうして手を握るんだい?」

司令官「手の甲に、乗せるんだよな」パラパラ

響「し、司令官。乗せるのは私じゃなくて、司令官の手で……」

司令官「んで、舐めると……」

響「!」ドキッ

司令官「……」

響「ぅ……」

司令官「……、……。やっぱり、冷えてるじゃないか」

響「……司令官の、は……暖かいな……」カァッ

司令官「早くも顔が赤いよ、響。……なんて」

響「司令官は……。司令官も、赤いね……」ポポポ

【おまけ弐:雷の場合】

またとある夜 鎮守府 司令官の部屋

雷「司令官!今日も一日お疲れさまっ!」パアァ

司令官「ありがとう、雷の笑顔を見ると癒されるよ」

雷「えへへっ。ねぇ司令官。お風呂にする?ご飯にする?そ、れ、と、も……」

雷「先ずはおビールかしらっ?」キュポン

司令官「おう、仕事終わりの一杯。貰おうかな」

雷「はーいっ♪」トクトク

司令官「雷はビール注ぐのうまくなったよなぁ。泡と黄金色の見事な比率!」

雷「雷、司令官のために頑張って一杯練習したんだから!」

司令官「偉い偉い」ナデナデ

雷「えへへ~♪」

司令官「それじゃあ、いっただきます!」スッ

雷(えっと、私のグラスを司令官のより少し下げながら……)ススッ

雷「かんぱーい!」カチン

司令官「んぐ、んっ、ん」ゴクゴク

司令官「っぷはぁー!のどごしが、最高!」

雷「相変わらず良い飲みっぷりね、司令官」クスクス

司令官「汗を流し、体力を消耗した空きっ腹に流し込むこの一杯がたまらんのよ!」

司令官「程よい辛口が舌の奥を、喉を刺激し!空腹な胃はアルコールを早く回す!」

司令官「うぅ~ん、良い感じにフワフワしてくるぜ~」ポワワ

雷「確かに、最初は苦いだけだなって思ったけれど」

雷「水にもジュースにも醸し出せないこののどごしが、慣れるとやみつきになるのよね~」プハ

雷「ところで司令官。はい、今日のおかずよ」

司令官「お、どれどれ……。先ずは鉄板のからあげに枝豆か!」

雷「たくさん作ったから、いーっぱい食べてね!」

司令官「うむ!」モグモグ

司令官「ん~!この肉厚ジューシーなからあげが、この脂っこさが腹にたまる咥内を肉一色に染めていく!」

司令官「だからこそ、こののどごしはたまらない!」ゴクゴク

雷「枝豆も丁度良い塩加減で、一粒一粒が良いサイズな割に歯ごたえもあるから」モグモグ

雷「止まらなくなるのよね~」ンー

司令官「それと、これは……たたきキュウリか」

司令官「枝豆より食感が良く、ごま油とコチュジャンの味付けは最高なんだよなぁ」ポリポリ

司令官「これも止められない止まらない」ポリポリ

雷「そうだわ司令官、見て見て!」

司令官「んー?」モグモグ

雷「じゃーん!なんだかおもしろいお酒を見つけたの!」

司令官「男梅?へぇ、飴は見たことあるけれど、これは初めて見るな」

雷「ビールの次はこれ、飲んでみない?」

司令官「良いね、ものは試しで飲んでみようか」

雷「じゃあ、早速注いじゃうねっ。……わぁ、結構濃い色をしてるのね」

司令官「味の方は……。……なるほど、甘い男梅だなこれは。ソーダ割りとかあいそうだ」

雷「ソーダで割るとジュースみたいに結構気楽に飲めるけれど……少し塩みが欲しいかしら」

司令官「それならこうしよう。まず、グラスの周りを軽く濡らす」

雷「うんうん」

司令官「グラスの淵を塩へダイブ!」

雷「淵周りに塩が付いたわ!」

司令官「ここに氷、男梅、炭酸水を入れて……」

司令官「さ、召し上がれ」

雷「いただきまーす!……あ」

雷「お、美味しいっ!グラスに口を付けて塩が唇や舌を犯した状態で流れ込む男梅が、丁度良い塩梅に仕上がっているわ!」

司令官(塩梅とかうまいこと言ったな)

司令官「飲む際に塩は自分で調節できるのもポイントかな」

雷「でも、これ美味しいからって飲み過ぎると危険かも……塩分過多になりそうね、糖分で中和しないと」

司令官「へ?……雷、塩分は糖分で中和できないぜ?」クスクス

雷「じゃあ、試してみましょ?」ススッ

司令官「え?」

雷「司令官の唇、今塩味だけど……甘さで、元に戻るかも。ね?」ギュ

司令官「ちょ、ちょっといかず――」

雷「――」

雷「……どう?中和された?」

司令官「……分からない」

雷「えへへ……じゃあ……」

雷「もっともーっと、チューわ。してあげるね?」ニコ

【おまけ参:電の場合】

またまたとある夜 鎮守府 司令官の部屋

電「今日もお疲れ様なのです、司令官さん!」

司令官「電。仕事モードは終わりだよ?」

電「あ……」

電「……司令官、今日もお疲れっ。なのです!」

司令官「お疲れ、電」クスクス

電「えへへ……。今日は、どうしますか?」

司令官「そうだなぁ。寒くなってきたし燗で」

電「了解なのです♪」

電「お待たせなのです、司令官」

司令官「おー。電も隣に」

電「あ……でも、まだお料理が……」

司令官「良いから。最初の一杯くらいは一諸に飲もう」

電「……はい、なのです」ニコ

司令官「じゃあ、いただきます」

電「いただきます、なのです」

司令官「……」クイ

電「……」クイ

二人「ふー……っ」

司令官「うまい、良い酒だ。これは?」

電「丁度、越乃寒梅の金無垢を初春さんから貰ったのです」

司令官「へぇ、寒梅か。なるほどそりゃ美味いはずだ、だからぬる燗にしたんだね」クイ

電「ふふっ。電は、料理の続きをしてきますね」

司令官「ん、ありがとう」

TV<秋刀魚漁なら断然!探照灯に四式ソナー!

司令官「秋刀魚か……そんな季節だもんなぁ。うまいよなぁ、秋刀魚も」

司令官「鎮守府で集めた秋刀魚はもう全部缶詰にしちゃったけど……」ハァ

電「ごめんなさい、司令官……今日は秋刀魚じゃないのです……」

司令官「わわっ!ち、違うぞ電。別に秋刀魚じゃなくても良いんだ、ただテレビでやってただけだし」

司令官「おほん……。改めて今日は、何を出してくれるのかな」

電「はい、今日は……これなのですっ」ドーン

司令官「こっ、これは!」

司令官「ブリかまの塩焼きか!」

電「ブリは出始めですが、この時期でも充分美味しいのです」

電「あと、こちらも……」スッ

司令官「お、おっ?これはもしかしてタラの芽か?あと……」

電「はい。山菜の、天ぷらなのです」

司令官「くぅ~、いいねぇ!塩焼きも天ぷらも、香りの良い吟醸酒には良く合うんだよ!」

電「喜んで貰えて、良かったのです!」

司令官「よっしゃ、電、食べよう食べよう!」ワクワク

電「では、失礼しますね」スッ

司令官「じゃあ、先ずはブリかまから……」モクモク

司令官「……うん!良いほくほく加減だ。塩も主張が柔らかくて、素朴な良い感じを醸し出している」

司令官「確かに、一番乗る時期ではないかも知れないが脂もしっかり乗っている」

司令官「これを、よぉく味わった後咥内を寒梅で洗うと……」クイ

司令官「っっ~……!」←声にならない声

電「あはは……。じゃあ、電は天ぷらから」サク

電「衣がふんわりサクサクで、しっかりと揚げれて良かったのです」ホ

電「山菜はそのわずかな苦みがおいしさの秘訣で、青臭くないから食べやすいのです」モグモグ

電「程よく、油分と苦みが咥内へたまったところで日本酒を含むと――」クイ

電「……はわわぁ」ポヤン

司令官「淡麗で辛口な味が、料理の味と喧嘩せずに溶け合ってゆく」

電「それでいてさらりとした口当たりは、不快感だけを取り除いて香りを残すのです」

二人「美味しい/のです~」

司令官「ともすればぐいぐい行けちゃいそうだけど、お猪口が空く度に飲むんじゃなくて」

電「その都度、しっかり料理を味わいながら、またゆっくりとお酒を流し込む。このバランスが大切で、至高なのです」

司令官「電もすっかり酒飲みのコメントだね」クスクス

電「司令官の……おかげなのです。と言っても、司令官と以外はあまり飲まないのです」アハハ

電「ふぅ……」ポヤン

司令官「……電、結構キてるだろ。こっち、おいで」

電「は、はい……失礼します」スス

電「ん……」ポスッ

司令官「……」ナデナデ

TV<ワルイナカチャンハカイタイヨー! ワハハハ!ナンデヤネン!

電(……昔は、何事にもおどおどとして)

電(司令官と……異性の人と少し手が触れただけでも、恥ずかしかったのに)

電(今こうして、彼の大きな身体にもたれ掛かって、撫でられて)

電(ああ……この、のんびりとした時間が。司令官と居る空間が)

電「こうやって……何もない、平和な時間も」

電「とっても好きなのです……」

司令官「……僕もだよ」

司令官「みんながいて、電がいて……。いつまでもこうして、居られると良いよな……」ナデ

電「……なのです」ニコ

司令官「……」ホッペナデナデ

電「ふふっ……くすぐったいのです、司令官」

司令官「……電」

電「ぁ……。……」

電「司令官……。はい……っ」コクン

電(いつまでも……続きますように――)

【後日談】

一一〇〇 コンビニエンスストア ローソン

加賀「いらっしゃいませ……あら?」

暁「」キョロキョロ

暁(お部屋のおやつがなくなっちゃったから買いに来たわ!)フフン

暁(チョコレート、いっぱい買って帰ろうっと)ワクワク

加賀「……」

加賀「……」コソコソ

鹿島「加賀さん、知り合いが来る度奥へ引っ込むの止めて下さい……」

暁「えーっと、おかしコーナーはこっちに……あれ?」

暁(普段は意識しなかったけど、コンビニってお酒もいっぱい置いてあるんだ)

暁(あ、ワインもあるわ。えーっと何々、ボジョレー・ヌーヴォー解禁……?)

暁(見た感じ赤ワインっぽいけれど、美味しいのかしら……)

暁(解禁、って言うくらいだから限定品?とかなのかな……)

暁「……」

二一〇〇 鎮守府 司令官の部屋

司令官「それで、気になって買ってきたと」

暁「うんっ」ワクワク

電「解禁……もうそんな時期なのですね」

司令官(うーむ……まぁ気になる気持ちも分かるが、買った場所がコンビニか。コンビニのボジョレーってどうなんだろ。しかし……)

司令官「ボジョレー・ヌーヴォーか……」

暁「ええ、ボジョレーぬーぼー!」

司令官「……なんて?」

暁「え?ボジョレーぬーぼー」

司電(かわいい/のです)ホッコリ

電「ワインのことはあまり良く分からないのですが、これも赤ワインだったら、お肉に合うのでしょうか」

司令官「まぁ、肉料理には合うかな。といってもボジョレーは渋みの少ない甘いワインだから、あまりこってりした料理じゃない方が良いかもしれないが」

暁「そうなの?」

電「あ、それならサッと焼いたお肉にはうってつけかも知れませんね」

暁「へぇ~……」

司令官「んー……あとは今の時期だし、焼き芋なんかも良いかもなぁ」

暁「え、焼き芋?」

電「おいもとワインにあまり結びつくイメージがないのです……」

司令官「ところがな、ボジョレーなんかは日本食にも合うんだぞ。焼き芋、というかサツマイモなら甘煮にしても合うかもな」

暁「なんか、想像したら……」ゴク

電「美味しそうなのです……」ゴク

司令官「……よし。じゃあ折角だし、今夜は三人で飲むか」

電「はわ」

暁「ふえ」

司令官「電も暁も確か明日は出撃も演習もなかったはずだし、少しくらい遅くなっても構わないだろう」

二人「……」ジーッ

司令官「あ、もちろん二人が良ければだぞ?……あの、電ちゃん?暁さん?」

暁「……電。司令官と一諸に飲んで、その……飲んだだけで終わった事って有った?」

電「え、っと……。思い返してみれば、ないかも、なのです」

暁「つつつまり、さ、三人で飲むって言うことは……」

電「……!」ボンッ

司令官「お、お前ら待て待て!別にいつだって下心で誘ってる訳じゃないぞ!」

電「そ、それは分かっているのです。でも」

暁「何だかんだ言って、いつもお酒の最後は、その……」モニョモニョ

司令官「ば、ばかっ!お酒云々じゃなくて、お前らだから、えっと……我慢できないというか何というか……」

電「……」

暁「……」

司令官「……」アセアセ

電「……暁ちゃん」

暁「なぁに、電」

電「私達の旦那様は、困ったさんなのです」クス

暁「そうね、本当、レディには不釣り合いなんだから」ハァ

司令官「あ、あはは……」

暁「分かったわ、司令官。三人で飲みましょ?その代わり――」ギュ

司令官「む……」ドキ

電「たくさんたくさん、酔わせてくださいね?電達のこと、司令官に――」ギュ

司令官「あ、ああ……」ドキドキ

電「えへっ」ニコ

暁「えへへっ」ニコ




暁「レディは飲んでも……飲まれちゃダメなんだからね?司令官♪」




今度こそおしまい!

というわけでお目汚し失礼しました、依頼出してきます。

また会う日まで。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年11月05日 (土) 10:25:50   ID: -l7Sh71x

お酒自戒してたけど、また飲みたくなってきた!いいなぁ

2 :  SS好きの774さん   2017年06月05日 (月) 02:42:31   ID: mn2wB6mT

個人的ですが、ウイスキーも乙なものかと。

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