高木社長「全員に休みを与えたいと思う」 (91)

ヤマなしオチなしイミなしを突き進む上に長い




律子「休み‥‥オフって事ですか?」

社長「うむ。アイドル諸君の活躍で、我が社の業績は鰻上り。まさに、飛ぶ鳥を落とす勢いと言えるだろう」

P「そうですね。今や、ホワイトボードも手帳も真っ黒。最近では、仕事の話をこちらから断らせてもらう事も増えてるくらいですね」

律子「少し前までは考えられなかった状況ですね」

社長「そうだろう。だが、その分、皆に負担を強いてしまっていると、常々思っていてね」

律子「負担‥‥それはまあ‥‥」

小鳥「確かに、アイドルの子達も最近疲れが見えているかも知れませんね」

P「そうですね‥‥なるべく無理はさせないでいるつもりではいるんですが、ここが勝負どころだと考えると、どうしても‥‥」

社長「ああ、いやいや。私が言っているのは、アイドル達だけではないよ。例えば‥‥君の前回の休みは、いつだったかな」

P「俺ですか? そうですね。かれこれ、ひいふうみい‥‥1ヶ月くらい前ですね」

社長「律子君は?」

律子「えーと‥‥うん、私も同じくらいですね。まあ、竜宮について地方イベントに行く時なんかは、合間合間で休めてますけど」

社長「音無君」

小鳥「ええっと‥‥あの時は結局出勤で、あの日は徹夜明けにそのまま勤務で、あの日は‥‥あっ。多分、半年前くらいになります」

P「半年!?」

律子「ちょちょちょ、ちょっと! 本気ですか!?」

小鳥「うーん‥‥皆のアイドル活動が軌道に乗った頃くらいからだから、大体合ってると思いますけど‥‥」

P「た、確かに‥‥ちょっと大きなイベントに参加しただけで、うんざりするくらい書類が溜まるわけで‥‥」

律子「それを基本、1人で処理してるわけですよね‥‥そりゃ、時間がいくらあっても‥‥」

小鳥「で、でも、私はこれくらいへっちゃらですよ! 私が忙しいのは、アイドル達が頑張って活躍してる証拠ですから!」

P「あ、やばい」

律子「ちょっと泣きそう」

社長「ううむ‥‥私も、君達のやる気の上に胡坐をかき過ぎていたようだ。そこで、ここらで全員まとめてリフレッシュ! ゆっくり充電して欲しいと思ったのだよ」

律子「そ、それは確かにいい考えだとは思いますけど、現実的じゃないですよ。現に今週だって、予定がみっちりと‥‥あ、あれ? これは!?」

P「ん? どうした律子」

律子「これ! 手帳のここのところ、見てください! 自分のも!」

P「どれどれ? ‥‥げーっ!? アイドル全員揃って、綺麗に真っ白な日がある!?」

社長「うむ。昔取った杵柄というやつでね。勝手ながら、少しばかり調整させてもらったよ」

P「マジか‥‥この人、一体何者なんだ‥‥?」

律子「で、でもやっぱり、この踏ん張りどころで、空白の日を作るのは‥‥せめて私だけでも事務所に残って‥‥」

社長「君も強情だねえ。では、こうしてみたらどうかな?」

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春香「それで、結局どうなったんですか?」

P「うん。その件で、皆の意見を聞きたいんだが‥‥完全なオフじゃなくなっても、いいだろうか」

真「完全なオフじゃ、なくなる?」

やよい「うー、ごめんなさい。ちょっと、どういう事かわからないかなーって‥‥」

P「ああ、すまんすまん。つまりだな、社長の意見と律子の意見、それぞれの間を取って、休みながらアイドル活動をして欲しいって事だ」

亜美「うあうあー! それじゃ、全然説明になってないっしょー!」

P「人の話は最後まで聞いてくれよ。アイドル活動と言っても、撮影やインタビューじゃあない。お互いの、親睦を深めてほしいんだ」

真美「神木を崇める? 真美達、神主さんにでもなるの?」

響「かしこみかしこみ、物申す?」

伊織「どんな耳してんのよ。あんたも乗るんじゃないわよ」

貴音「親睦を深める‥‥簡単に言えば、互いをよく知り、絆を深める、とでも言ったところでしょうか」

美希「でも、それって変だって思うな。ミキ達、もう仲良しなの。ねっ?」

あずさ「ふふっ、そうねぇ」

P「うん、それは俺も知ってる。でもまあ、あれだよ。それで律子が気持ちよく休めるなら、そういう建前にしてくれれば助かるって話だ」

千早「そういう事ですか。ふふっ、確かに、律子は少々ワーカホリック気味なところがあるから、そうでもしないと納得できないかも知れませんね」

律子「‥‥この中で、千早にだけは言われたくなかったわ」

P「それに、今後の活動にも多少いい影響が出るかもしれないしな。例えばテレビで、前のオフには何をしてましたかって聞かれて、同じ事務所のメンバーと一緒に遊んだ、なんて言えれば」

雪歩「あっ、すっごくいい雰囲気の事務所だって、ファンの方達にも知ってもらえますぅ」

P「そういう事だな。勿論、皆にもそれぞれ、やりたい事があったり、遊びたい友達なんかがいるだろうし、どうしてもってわけじゃないが」

真「でも、いい機会だよね。最近、他のメンバーと一緒に休める機会なんて、すっごく減ってたし」

伊織「そうね。それどころか、竜宮以外の誰かと会ったのも、今日が久しぶりかも知れないわ」

P「という話が出てるが‥‥どうだ? 誰か、都合のつかない者がいれば、正直に言って欲しい。いないなら、そういう事で話を進めたいと思うんだけど」

アイドル「異議なし!」

P「そうか。それじゃ、後はそれぞれに任せる。存分にオフを楽しんでくれ!」

春香「あ、ところで、この話を提案してくれたっていう、社長の姿が見えないんですけど‥‥」

千早「そうね。また出かけているのかしら」

P「ああ、うん。しずかーに、社長室を覗いてみろ」

春香「へ? は、はい」カチャ

社長「ええ、はい。その件に関しましては‥‥もしもし! 765プロの高木ですが!」ズバババババ

春香「わっ!?」

やよい「両肩に受話器を2個ずつ挟んで電話をしながら、右手では書類を整理して、左手では凄い速さでパソコンを操作してますー!」

真「その上、右足で雑誌を捲って新人アイドルと流行のチェック! 左足ではそろばんを弾いてる!」

伊織「社長が1人いれば、事務所は回るんじゃないの? 実は」

律子「馬鹿言わないで。あんな事続けたら、3日で全身がズタズタになって弾け飛ぶわよ」

響「こっわい」

P「それはともかく! こうして社長が頑張ってくれてるんだ。俺達は、お言葉に甘えて、思いっ切り楽しもうじゃないか」

一同「はーい!」

響「休みかー。言われてみれば久し振りだし、たまにはゆっくり皆の散歩でも‥‥あ、でも、他のメンバーと一緒か。うー、どうしよっかなぁ。適当に誰か誘って‥‥」

千早「我那覇さん、ちょっといい?」

響「ん? 何?」

千早「その‥‥我那覇さんって、家事が得意だと聞いたんだけれど‥‥」

響「得意って程ではないけど、まあそれなりに、一通りは出来るぞ?」

千早「そう‥‥あの、今度の休み、もしも予定が決まらないようならでいいんだけれど‥‥私に、料理を教えてくれないかしら」

響「料理? あれ、千早って前に春香と一緒に、お菓子作ってきてなかった?」

千早「そうなんだけどね、春香が言うには、お菓子作りと食事作りは要領が違うらしくて‥‥だから、もしもよかったら、教えて欲しいのよ」

響「ええ? お菓子作りの方が、断然難しいと思うけどなあ。まあ、別にいいぞ」

千早「本当? ありがとう、我那覇さん!」

響「でも、なんで急に? っていうか、今まではどうしてたんだ?」

千早「今までは、コンビニで買って帰ったり、テイクアウト出来るファミレスを利用したり‥‥」

響「うわ」

千早「ご飯くらいは炊けるから、レトルトや缶詰なんかも生命線ね」

響「よくそれで、その体型維持できてるなあ。で、何で自炊しようと思ったの?」

千早「あの‥‥最近私、皆のお陰で、少しずつだけど変われ始めたと思っているの。それで‥‥少しは女らしい事も出来るようになった方が、アイドルらしいかなって‥‥」

響「ふーん‥‥」ポリポリ

千早「なんでそんなに興味なさそうにしているの!?」

響「冗談冗談。うん、じゃあ次のオフは、2人で料理教室だな」

伊織「2人じゃないわ! 3人よ!」

響「伊織!? ま、まさか!」

伊織「ふふ‥‥あなた達にだけ、いいカッコはさせないわ!」

響「伊織、お前って奴は!‥‥で、何? 伊織も一緒に教えて欲しいの?」

伊織「まあね。私は別に不得意ってわけではないんだけれど、もう少しこう‥‥家庭料理的なレパートリーくらい持っててもいいかなと思うわけよ。女子として」

千早「え、さっきの寸劇は何?」

響「じゃあ、オフには3人で‥‥」

真美「3人じゃねえ! 4人さ!」

伊織「こ、この声は!」

響「この声は!‥‥この声は‥‥どっちだ!?」

真美「真美だ! って、それはひどいっしょ!」

響「まあまあまあ」

伊織「まあまあまあまあ」

響「で、何? 真美も参加するの?」

真美「うん! ほら、やっぱお姉ちゃんとしては、妹に家事スキルで差を付けておきたいところっしょ?」

響「ああ、亜美はよく出来た妹だしね」

真美「よく出来た妹~!? 姉より優れた妹なぞ存在しねえ!」

千早「真美! そんな言い方はよくないわ! 我那覇さんも、なんでそんな、2人を比較するような事を‥‥」

響真美「え?」

千早「え?‥‥え?」

伊織「千早。今のは2人が、漫画のマネをして遊んでただけよ」

千早「へ!? そ、そうなの?」

響「うん」

真美「そうだよー」

伊織「ったく、しょーもないんだから‥‥」

響「そういう伊織も、モノマネしてるじゃないかー」

真美「そうだそうだ!」

伊織「はあ? 誰のよ」

響「牙大王」

真美「華山獄握爪の人」

伊織「張り倒すわよ」

美希「ゆーきほ!」ガバッ

雪歩「ひゃっ!? びっくりしたあ‥‥どうしたの?」

美希「ねえねえ! さっきの話! オフの予定って、もう決まったの?」

雪歩「え? 私はまだ‥‥美希ちゃんは決まったの?」

美希「うん! 今決まったの!」

雪歩「へ?」

美希「雪歩! 今度のお休みは、ミキと一緒にショッピングしてほしいの!」

雪歩「ショ、ショッピング? 私と?」

美希「うん! ミキね、新しい服買いに行きたいと思ってたの! だから、もし雪歩がよかったら、選びっことかしたいなーって!」

雪歩「わ、私はいいけど‥‥でも、私でいいの? ほら、美希ちゃん、前に私が生っすかで真ちゃんの服選ぶの、羨ましがってたし‥‥真ちゃんを誘った方がいいんじゃ‥‥」

美希「真君? 真君‥‥うーん‥‥」

雪歩「ど、どうしたの?」

美希「ここだけの話ね? 絶対言っちゃダメなの」

雪歩「うん」

美希「真君と一緒に服を買いに行くのは‥‥正直、ちょっと勇気が必要かなって思うの」

雪歩「え?」

美希「だってほら‥‥真君が選ぶ服って‥‥どうかと思うのばっかりでしょ?」

雪歩「う‥‥」

美希「ぷふっ!」

雪歩「どうしたの?」

美希「ちょ、ちょっと、思い出しちゃったの。前に、撮影で真君と一緒になったんだけどね?」

雪歩「うん」

美希「撮影が早く進んだから、最後に好きな衣装で撮ろうかって話になったのね?」

雪歩「うんうん」

美希「で、美希が服選んでたら‥‥真君が走ってくるの。なんか、凄い嬉しそうに」

雪歩「うん」

美希「それでね? 『見て! ふわふわヒラヒラで、すっごい可愛い服あったよ!』って言うから、真君の大事に抱えてるそれ、見てみたの。そしたら‥‥」

雪歩「うん」

美希「それ、衣装掛けの端っこに引っ掛けてあった、カーテンだったの!」

雪歩「くふぉ!」

美希「もう、地獄だったの。真君はすっごいニコニコしてるし、スタッフは咳き込みながら逃げていくし」

雪歩「そ、それで、どうしたの?」

美希「顔の血管が切れそうになりながら、なんとか『そんなに気に入ったなら、試着してみたらいいの』って言って」

雪歩「頑張ったね」

美希「したら少し経って‥‥更衣室から、すっごい叫び声が聞こえたの」

雪歩「ど、どんな?」

美希「くふ‥‥! 『カーテンじゃないか! これ、カーテンじゃないかああ!』って‥‥」

雪歩「ちょ、ちょっと美希ちゃん! やめて! 苦しいよお!」

美希「でね!でね! そのまま更衣室から飛び出してきて『美希! これ、カーテンだった! カーテンだったよお!』って、謎の報告をしてきて‥‥」

雪歩「そ、それで、何て答えたの?」

美希「もうミキ、貧血寸前みたいになって、頭真っ白でわかんなくなっちゃって‥‥『え! カーテンだったんですか!』って」

雪歩「な、なんで!? なんで敬語なの!?」

美希「その点、雪歩はセンスもいいし、色んな服似合いそうだし、一緒に買い物したら、絶対楽しいって思ってたの!」

雪歩「うう‥‥でも、私なんかが、美希ちゃんに似合う服、選べるかなあ‥‥大人っぽい服も似合いそうだし‥‥」

美希「もー! 雪歩はもっと自信を持つべきなの! あっ! ひょ、ひょっとして‥‥」

雪歩「え?」

美希「雪歩は‥‥雪歩は、ミキが嫌いなの? だから、一緒に出かけるのが嫌なの?」ウルッ

雪歩「えええ!? ち、違うよお!」

美希「本当? じゃあ、証明して欲しいの」

雪歩「しょ、証明って‥‥何すればいいの?」

美希「買い物だけじゃなくって、カフェでお茶したり、ご飯食べたり、ゲーセンで遊んだり、全部ぜーんぶ付き合うの!」

雪歩「そ、それで、本当に信じてくれる?」

美希「うん!‥‥でも、ミキも鬼じゃないの。もし付き合ってくれるなら、譲歩の余地はあるの」

雪歩「譲歩?」

美希「雪歩がそんなに自信が持てないなら、他の人も呼ぶの。皆で選び合ったら、もし雪歩がいい服を選べなくても、困らないでしょ?」

雪歩「あ、うん。それなら‥‥でも、誰に声をかけるの?」

美希「うーん‥‥普通なら、春香とか、でこちゃんを選ぶところだけど‥‥今回は、大人の休日を楽しむのもいいって思うな!」

雪歩「大人の? わあ、ちょっといい響きかも」

美希「でしょでしょ? と、いうわけでー‥‥あずさー! 小鳥ー! ちょっと話があるのー!」パタパタ

あずさ「あら? 何かしら?」

小鳥「さあ‥‥美希ちゃん。どうしたの?」

美希「あ、ちょうど一緒にいたんだね! 何話してたの?」

あずさ「今度もらった休みに、2人でお酒でも、って話をしていたんだけど‥‥」

美希「雪歩! 聞いた?」

雪歩「うん。やっぱり大人の女の人だぁ‥‥」

小鳥「ちょ、ちょっと話が見えないんだけど‥‥」

美希「かくかく」

雪歩「しかじか」

あずさ「まるまる」

小鳥「うまうま、って事ね」

美希「うん。ねえ、どうかな?」

あずさ「そうねえ‥‥まさか、昼間っからずっとお酒を飲んでいるわけでもないし、私は別にいいわよ?」

小鳥「私も大丈夫だけど‥‥でも、いいの? もっと他の子を誘った方が、皆は楽しいんじゃ‥‥」

美希「むー! 小鳥も雪歩と同じ事言ってるの! ミキは、ミキが一番いいなって思った相手を誘ってるんだよ?」

小鳥「そう? それじゃ‥‥ご一緒しちゃおうかしら」

美希「それじゃあ、決まりだね。えへへ、楽しみなの!」

真「休みかあ‥‥嬉しいけど、どうしようかなあ。いきなりだから、何の予定も入ってないや」

春香「ねえねえ真。それ、本当?」

真「うわっ、ビックリした。うん、本当だよ」

春香「ちょっと相談なんだけど、私と一緒にどこか行かない? 律子さんも誘って」

真「律子? 別に構わないけど、どうしたの?」

春香「ほら、さっきの律子さん、休みに抵抗ありそうだったじゃない?」

真「ああ、うん。なんとなくそんな感じだったかな。抵抗どころか、ちょっと罪悪感とか感じてそうなレベルだったよね。休む事に対して」

春香「そうそう! だからね? 私達が律子さんを連れ出して、そういう事を考えられる暇も無いくらい、ずーっと遊んでれば‥‥」

真「ああ、律子も気兼ねなくリフレッシュ出来る、って事? うん、いいんじゃない?」

春香「問題は、まだ律子さんの都合聞いてない事なんだけどね。まあ、ダメだったらその時は普通に2人で遊びに‥‥」

真「大丈夫だと思うよ? ほら、律子ってああ見えて押しに弱いっていうか、言い方は悪いけど、案外ちょろそうっていうか」

春香「ちょ、ちょっと真‥‥」

真「だってほら、普段もさ」

春香「いや、そうじゃなくて、後ろ」

律子「人がいないところで、随分好き勝手言ってくれてるわね?」

真「」

春香「あのー‥‥ちなみに、どこから聞いてたんですか?」

律子「律子は押しに弱くてちょろそうってところ」

春香「わっ、最悪の部分」

律子「そういう風に見られてるなら、もっと所属アイドルに厳しく接する必要があるわね」

真「違う違う違う! そういうんじゃなくて! そういうんじゃなくて! 違う違う!」

春香「焦りすぎでしょ」

律子「で、何の悪巧みしてたのよ?」

春香「そうそう! 律子さん、さっきプロデューサーさんが言ってたお休み、何か用事あります?」

律子「用事? うーん、これと言って特に無いわね。急な事だったし」

春香「そうですか! じゃあ、もしよかったら、私達とどこか遊びに行きません? 私も真も、同じような感じで、時間を持て余しそうなんですよ」

律子「‥‥やっぱり何か企んでる?」

春香「ええ!? なんでそうなるんですか!」

律子「なんてね。春香はともかく、真はそんな内緒事とかなんて、出来そうにないし」

真「ちょっと」

律子「いいわよ。行き先とか集合場所は?」

春香「こないだ買った雑誌に、色々書いてありましたよ。映画とかも結構面白そうなのやってるみたいだし、あっちこっちでイベントとかもやってるみたいだし‥‥」

律子「そう。ま、今のシーズン何かしらやってるでしょ。暇があったら色々調べてみるけど」

春香「はい! それじゃあ、私もよさそうなところ調べておきますね」

律子「よろしくね。それじゃ、私は残ってる細かい仕事済ませるから、行くわ。あなた達も、あんまり今から気を緩めすぎないように!」

春香真「はーい」

亜美「なんかさ」

貴音「何でしょう?」

亜美「ちょっと雑談してる間に、次々グループが出来上がっちゃったみたいだね」

やよい「グループ?‥‥はわっ! ほんとだ! どうしよう?」

亜美「どうしようって言われても‥‥どうする?」

貴音「はて、これは困りましたね‥‥どうしましょう?」

やよい「ううー‥‥どうしよう?」

亜美「一周しちゃったよ!」

貴音「ふふっ」

やよい「今の、テレビに出てる時みたいだったね!」

貴音「お約束、というものでしょうか」

亜美「腕上げたっしょ? それで、話を戻すけど‥‥どしよっか?」

貴音「そうですね‥‥どうしましょうか?」

やよい「うーん‥‥どうしよう?」

亜美「二周目! F1かよ!」

貴音「ふふふっ! あ、亜美。このままでは何も決まりませんよ」

亜美「とりあえず、やっぱ3人でどっか行く? ランチとか」

貴音「らんちですか。‥‥そういえば、やよいは兄弟の面倒を見なくていいのでしょうか? それこそ、昼食の準備などは‥‥」

やよい「それなら大丈夫です! 元々はお仕事があるって思ってたから、お母さんも家にいますし!」

貴音「そうですか。それでは亜美の提案通り、皆で昼食でも‥‥」

亜美「でも、大丈夫かな」

貴音「はて、何がでしょう?」

亜美「ほら、アポ取っておかないと、お姫ちんが店にあるもの全部食べちゃうんじゃ」

やよい「はわっ! それじゃあ、他のお客さんが何も食べられなくなっちゃいます!」

貴音「2人は私を、そこにある食料を食らい尽くす妖怪か何かだと思っているのですか」

亜美「妖怪、お食べちん」

やよい「ちょっと可愛いかも!」

貴音「いやいや」

亜美「‥‥ちょっと、思いついた事言っていい? 割と最低だけど」

貴音「‥‥何でしょう?」

亜美「おちん食べ」

貴音「亜美!」

亜美「ごめんごめんごめん! 今のはちょっと、無いね。流石に」

やよい「???」

貴音「やよい。やよいは気にしなくていいのですよ。忘れるのです」

やよい「よくわからないけど、わかりましたー!」

亜美「それはそうと、どうしよっか? 何か食べたい物とかある?」

貴音「らあめん‥‥と言いたいところですが、女子が3人で食べに行くには、少々色気がありませんね」

亜美「だよねー。もうちょっとこう‥‥レジャー感が欲しいよね。スイーツの食べ放題とか?」

やよい「ご飯の代わりに甘い物?」

亜美「ちょっち辛いね。そういえばさ、甘い物食べた後って、しょっぱい物で締めたくならない?」

やよい「わかるかも! ラーメンの汁飲みたくなっちゃったり!」

亜美「そうそう! でも、いおりんが「コースなんかでは最後がデザートじゃない。だから、最後は甘い物で終わるのが正式なのよ」って」

やよい「順番に出てくるご飯って、食べた事ないからわからないよお」

貴音「‥‥亜美、やよい。また話が逸れていますよ」

亜美「あ、ごめんごめん。でもさ、ご飯くらい自由に食べたいよね。ルール通りじゃなくって。家でもさぁ‥‥「こら! 肉ばっかりじゃなくて野菜も食べなさい!」って」

貴音「ご両親も、亜美のためを思って言っているのですよ」

亜美「知らない人が」

貴音「警察を呼びなさい。そして早急に鍵を付けなさい」

やよい「それ、いいかも!」

亜美「いや、そんな全力で言われても、今のは冗談だし、ちゃんと鍵くらい‥‥」

やよい「そうじゃないよ! お肉とか野菜とか‥‥ほら、前にみんなで海行った時、晩ご飯に‥‥」

亜美「ああ、バーベキュー的な?」

やよい「うん! あの時、すっごく楽しかったから、またやりたいなーって思ってて」

貴音「確かに、いいかも知れませんね。それに幸い、今は暖かくて、良い季節です」

亜美「たしか、この辺りに道具とかレンタルしてくれる公園あったよね。そうしよっか!」

貴音「では、食材を持ち寄って現地に集合、という事にしましょうか」

亜美「うん! あ、お姫ちん」

貴音「はい?」

亜美「牛一頭とか持ってこないでね」

やよい「うわー! それ、捌くの大変かなーって!」

貴音「いやいや、ですから」

-当日-

765プロ事務所



伊織「おはよう」

千早「おはよう、水瀬さん」

真美「おっはよー」

伊織「あら? 響は?」

真美「まだ来てないよー」

伊織「ふーん。ねえ、今日って、事務所に集合って言われたから来たけど、ここで色々作るの?」

千早「まさか。我那覇さんが来たら、家に連れて行ってもらう予定になってるわよ」

伊織「あら、そういう事。じゃ、響が来るまでは待ちぼうけってわけね」

真美「そだね。‥‥なんか、こうやって事務所でぼーっとしてるとさ、仕事が無かった時の事思い出さない?」

伊織「言われてみれば、そうね。あんまり思い出したくないけど」

真美「あの頃は、暇つぶしに色々遊んだよね。十回クイズとか」

伊織「ああ、あれね。やったやった」

千早「十回クイズ?」

真美「え?‥‥ああ、ちょっと前までの千早お姉ちゃんは、事務所でも音楽聞いたりして、ぜーんぜん話に参加してなかったからねー」

千早「う‥‥」

真美「じゃ、久しぶりにやろっか。いおりん、ピザって十回言って」

伊織「ピザピザピザ‥‥」

真美「ここは?」

伊織「膝」

真美「ざんねん! 肘でした!」

伊織「きーっ!‥‥っていう遊びよ」

千早「ああ、何となく聞いた事があるわね」

真美「じゃあ次は千早お姉ちゃんね。シカって十回言って」

千早「シカシカシカ‥‥」

真美「アルメニア共和国の首都は?」

千早「トナカ‥‥ええ!?」

真美「後10秒! きゅー、はーち、ななー‥‥」

千早「え? シカ関係な‥‥ちょっと待ってちょっと待って‥‥えー、えー‥‥に、ニューアルメニア?」

真美「ぶーっ、残念でしたー」

千早「ちょ、ちょっと真美! こんなのずるいじゃない! わかるわけがないわ!」

真美「えー? いおりんは?」

伊織「エレバン」

真美「せいかーい!」

千早「」

伊織「甘いわね、千早」

響「はいさーい」

伊織「あら、やっと来たわね」

真美「おっはよー」

千早「お、おはよう我那覇さん」

響「何か千早の声が聞こえたけど、何してたんだ?」

千早「‥‥そうだわ。真美、我那覇さんにも問題を出して。とびきり難しいのを」

真美「うん、いいよー」

響「問題?」

真美「じゃあひびきん。桃太郎って十回言って」

響「え? 桃太郎桃太郎‥‥」

真美「近代オリンピックが初めて開催されたのはアテネですが、では、開催された年は?」

響「えーと‥‥1896年?」

真美「正解!」

伊織「やるじゃない」

千早「」

響「自分、完璧だか‥‥千早? どうしたんだ?」

千早「‥‥もういいわよ。負けで。そろそろ出発しましょうか」

伊織「そうね。じゃ、案内してちょうだい」

響「あ、それなんだけどさ、別の誰かの家にしない?」

真美「え?」

千早「どうして? 何か、都合悪くなったのかしら」

響「都合っていうか‥‥うちだと、動物達がたくさんいるし」

伊織「今更じゃない。事務所にまで連れてきておいて」

真美「慣れてるから大丈夫っしょー? ゆきぴょんもいないし」

響「いや、そうじゃなくてさ。単純に、狭くない? 人間4人が過ごすには」

伊織「あ」

千早「確かに‥‥」

響「でしょ? だから、誰か別の家で‥‥」

伊織「タイミングが悪かったわねぇ‥‥うち、今日両親のお客が来てるのよ」

真美「真美んちもちょっとなあ‥‥部屋もそこまで広くないし、台所とか占領して使ったら、叱られそう」

伊織真美響「‥‥‥‥」チラッ

千早「‥‥え? うち?」

響「千早って1人暮らしだよね?」

千早「そ、そうだけど‥‥何も無いわよ? 退屈するんじゃ‥‥」

真美「だいじょぶだいじょぶ!」

伊織「そうね。千早がいいなら、それしかないんじゃない?」

千早「わ、わかったわ。じゃ、案内するわね。買い物はどこでして行けばいいかしら」

響「あ、食材なら自分が持ってきたぞ」

伊織「それでそんな大きなリュック背負ってるのね」

千早「じゃあ、真っ直ぐ向かうわね」

千早「何も無いけど、上がってちょうだい」

真美「おっじゃましまーす!」

響「おー、何か、思ってたのとちょっと違うぞ」

千早「そう? 確かに、前ほど殺風景ではなくなったかも知れないけど‥‥」

響「もっとこう、魔法陣とか蝋燭とか」

伊織「水晶で出来た頭蓋骨とか」

千早「私は何をしてるのよ。自宅で」

真美「ねえねえ。もう、料理習い始めるの?」

響「まだちょっと早くないか? あ、材料だけ冷蔵庫に入れておきたいな。開けていい?」

千早「どうぞ」

伊織「見れば見るほど大きいリュックね。何そんなに持ってきたのよ」

響「ほら、今日のうちに保存効く物色々作っとけば、ちょっと安心だし。ええと、卵に大根に‥‥」

真美「田舎から上京してきたお母さんみたい」

響「後は、メインに使いやすそうな豚肉、と」

伊織「やっぱりお肉が使いやすいのね」

響「‥‥ごめん、ごめんな‥‥」

千早「え?」

響「ごめんね、ブタ太。事務所の仲間のためだから‥‥許しておくれ‥‥」

千早伊織真美「」

真美「え? ちょ‥‥え?」

伊織「嘘でしょ? ブタ太って‥‥え?」

響「‥‥なーんちゃって! スーパーで買った豚肉でした! ブタ太は家で留守番して痛たたたた! 痛い痛い! 折れる折れる!」

伊織「バカじゃないの! バカじゃないの!」

千早「そういう笑えないジョークはよしなさい!」

真美「この! この!」

響「痛い痛い! ギブギブギブ! ごめんなさいごめんなさい!」

伊織「ったく‥‥」

響「はあ‥‥もう少しで、腕がドラゴンガンダムみたいになるところだったぞ」

真美「いいじゃん、強そうで」

伊織「手の先から火が出るアイドルとか、新しいわね」

千早「それはそうと、我那覇さんって普通に豚肉食べるのね。飼ってるから、敬遠するのかと勝手に思ってたわ」

伊織「うん、私もそう思ってたわ」

響「だってほら‥‥別に生前からの知り合いだったわけじゃないし。そもそもそんな事言ってたら、酪農やってる人は皆ベジタリアンになっちゃうぞ」

真美「まあ‥‥そうなるのかな?」

伊織「その辺りは、人によるんじゃないの? それはそうと、この後はどうするのよ? どうやって時間潰すの?」

真美「どっか出かける?」

響「あ、ごめん。自分、今月ちょっとピンチなんだ」

千早「何か買ったの?」

響「今まで使ってたエアコン壊れちゃってさ。ほら、自分だけなら我慢するけど、色んな動物いると、文字通りの死活問題だから」

伊織「文字通りの死活問題って、日常であんまり聞かない言葉よね。こっわい」

真美「んじゃ、どうするー?」

千早「だから退屈するって言ったじゃ‥‥あ、実家から持ってきた荷物の中に、ファミコンがあったかも‥‥」

伊織「テレビゲームの事、全部ファミコンって言うのやめなさいよ。ババ臭いわよ」

真美「ああ、真美んちのママも言うよ。ソフトの事を未だにカセットって言ったりねー」

伊織「そうそう」

千早「確かこの箱に‥‥ああ、やっぱりあったわ」ガシャガシャ

響「わっ」

真美「ホントにファミコンじゃん!」

千早「父が持っていたものよ。昔はたまに弟と遊んだわ。お互い小さくて、ルールもよくわからなかったけれど」

伊織「へえ‥‥あら、このカセット、裏に名前が書いてあるわ。これがあんたの弟の名ま‥‥ちょっと!『たむら ゆうさく』って書いてあるじゃない! どこの子よ! ちゃんと返しなさいよ!」

真美「あるある。逆に、貸したまんま、どうでもよくなっちゃったり」

響「せっかく出してくれたし、何かやる? あ、自分アーバンチャンピオンやりたい」

真美「じゃあ、負けたら交代で対戦しよっか。ふーっ」ガシャ カチッ

響「‥‥‥‥」カチャカチャ

〈タッタッタッタ ボイーン トゥン〉

真美「‥‥‥‥」カチャカチャ

〈タッタッタ シュッ シュッ タッタッ ヒューー ボゴッ〉

千早「‥‥‥‥」

伊織「‥‥‥‥」

響「‥‥‥‥」カチャカチャ

千早「‥‥何か飲み物出しましょうか。何がいい?」

真美「何あんの?」カチャカチャ

千早「アイスコーヒーか牛乳‥‥確かお茶もあったわ。緑茶だけど」

響「あ、自分ジュース買って来たぞ。リンゴとグレープとオレンジ」カチャカチャ

真美「じゃあオレンジがいい」カチャカチャ

伊織「私も」

響「やっすい奴だぞ。ベトベトした甘さの」カチャカチャ

伊織「わざわざ言うんじゃないわよ。そういう事を」

千早「じゃあ、用意するわね。荷物開けてもいいかしら」

響「んー」カチャカチャ

真美「‥‥‥‥」カチャカチャ

千早「‥‥‥‥」コポコポコポ

伊織「‥‥あら? そこにある本、マンガ?」

千早「ええ」

伊織「千早もこういうの読むのね。読んでいい?」

千早「どうぞ」

響「‥‥あっ」カチャカチャ

真美「むむ‥‥」カチャカチャ

千早「はい、ジュース」

真美響「ありがとー」カチャカチャ

千早「水瀬さん、ここ置いとくわね」

伊織「ありがと」ペラッ

千早「‥‥どっちが左?」

真美「真美だよー」カチャカチャ

千早「そう」

響「‥‥‥‥」カチャカチャ

伊織「‥‥‥‥」ペラッ

真美「‥‥何この時間!」

千早「んふっ」

伊織「なっがい溜めだったわね」

真美「夏休みの小学生じゃん」

響「あははは! 休み終わり間際の?」

真美「もう、ゲームくらいしかやる事なくなっちゃって。なのに集まるっていう、謎の空間」

響「またよりによって、地味ーなゲームやってるし」

真美「せめて、他のやろうよ」

響「じゃあ自分交代するから、千早か伊織‥‥」

伊織「マンガ読んでるから、後でいいわ」

真美「じゃあ千早お姉ちゃん、何やる?」

千早「2人同時に遊べるのって、他にどれだったかしら?」

真美「ロードランナーって2人でできたっけ」

響「あ、デビルワールドあるぞ。これいいんじゃない?」

真美「おっ」

千早「どんなだったかしら‥‥まあいいわ」

伊織「上で踊ってる魔王みたいの、なんなのかしらね」ペラッ

真美「あれって踊ってんの?」カチッ

千早「‥‥‥‥」

真美「‥‥あり?」カチッ カチッ

千早「つかない?」

真美「ん、ちょっと待って。ふーっ」ガチャ カチッ

千早「‥‥だめそうね。まあ、保管もよくなかったし、仕方ないわ」

真美「ひびきん、何か他にあるっぽい?」

響「クルクルランドあったぞ」

真美「お! いいじゃん!」

響「で、伊織は何読んでるんだ?」

伊織「仮面ライダー」

真美「え? 千早お姉ちゃん、そういうの好きなんだっけ?」カチャカチャ

千早「ええ、まあ‥‥最近になって少しね。仕事の関係で」カチャカチャ

響「ああ、特撮物の主題歌歌ったんだっけ」ペラッ

伊織「‥‥怪人って、やっぱり当たり外れとかあるのかしら」ペラッ

真美「どゆこと?」カチャカチャ

伊織「例えば‥‥キノコの怪人とトカゲの怪人じゃ、トカゲの方が上っぽいじゃない」

真美「あー‥‥「クソッ、なんであいつはライオンなのに、俺はミミズなんだよ!」みたいな?」カチャカチャ

伊織「んふっ、そうそう」

響「脳も改造されてるから、そういう不満みたいなのも感じないようになってるんじゃないか?」

千早「そうね。そういう意味では、ライダーが変なのに改造されてたら、更に悲劇的な物語だったのかしら」カチャカチャ

真美「ピンチになってもなかなか変身したがらな‥‥あ、死んだ」

響「もし改造されるなら、どんなのがいい?」ペラッ

千早「組織は?」カチャカチャ

響「好きなとこでいいよ」

真美「ゆきぴょんはすぐ思い付くね。スコップモグラとか」カチャカチャ

伊織「でも、モグラにスコップじゃ能力が過剰すぎない?」

真美「あー‥‥」

響「‥‥あ、自分、春香は思い付いた」

伊織「何?」

響「アマミジャガー」

千早「ふふっ。あっ、もう。やられちゃったじゃない」

伊織「音の響きだけじゃない。アマミの部分はなんなのよ」

響「いやほら、どっかの組織にいたでしょ? 悪人怪人だっけ。それ風に、アイドル怪人とかでいいんじゃない?」

千早「Xライダーね」カチャカチャ

真美「じゃあ、皆その路線で行く?」カチャカチャ

伊織「うーん‥‥タカネオオカミとか?」

響「お、それっぽい」

千早「じゃあ‥‥キクチタイガー。タイガーマコとかの方が名前っぽいかしら」カチャカチャ

真美「あはは、ぽいぽい」カチャカチャ

響「実際いたよね、そんな感じの」

真美「いおりんは、ウサギ?」カチャカチャ

伊織「可愛すぎない? どうせならもっと怪人っぽい方がいいわ」

響「んー‥‥コウモリとか?」

伊織「あ、いいわね。コウモイオリとか言って」

千早「プロデューサー陣や音無さんは、やはり幹部かしら」カチャカチャ

伊織「そうねえ」

響「‥‥首領、タカギング」

千早「ふふっ! ああっ」

真美「あはは! あ、死んだ」

伊織「もう、動物とか入ってないじゃない」

響「社長はもう、別格みたいな。高木という生物」

伊織「高木という概念」

真美「何その言葉!」

千早「言いたい放題ね。そういえば、ライダー役は?」

真美「やっぱ、ひびきんか、まこちん?」

響「自分だったら、あれみたいのがいいな。割と新しい方の‥‥メダルのやつ」

真美「あー、色んな動物の力を使う感じ?」

響「そうそう。ガマガエル! ナメクジ! ハエ! ガ・ナ・ハ! ガナハ、ガ・ナ・ハ!」

伊織「気色悪っ! なんでそんなチョイスなのよ」

千早「完全に悪役じゃない」

響「じゃあ、ガマガエル! ナメクジ! ハブ!で、1人三すくみ」

千早「勝手に動けなくなる正義のヒーロー?」

伊織「あ、この際、千早にしましょうよ。千早と、響か真」

真美「なんで?」

響「あ、歌の1号ダンスの2号とか?」

伊織「そうそう」

千早「ちょっと恥ずかしいわね」

真美「名前は?」

伊織「仮面ライダー‥‥スレンダー」

千早「ちょっと」

伊織「いいじゃない。ストロンガーみたいで」

真美「真美も思い付いた」

響「何?」

真美「仮面ライダー! フラット!」

響「んはははは!」

千早「スレンダーでいいわ」

響「うーん、じゃあ‥‥仮面ライダーハミング、如月千早は改造人間である!」

真美「お、ちょっと綺麗な響きになった」

響「彼女を改造した765プロは、世界征服を企む悪のアイドル事務所である!」

千早「ふふっ、何? 悪のアイドル事務所って‥‥」

響「765プロにスカウトされた彼女は脳改造の寸前に脱出し、765プロの野望を打ち砕くために、今日も戦い続けるのである!」

千早「‥‥‥‥」

真美「ん? どったの?」

千早「どうせなら、胸ももっと改造してくれればよかったのに」

響「くっふぁ!」

伊織「けほっけほっ! ちょ、ちょっと千は‥‥ごほっ、ごほっ! ジュースが変なとこに入っ‥‥!」

響「じゃ、じゃあさ、こういうのは? 物語後半で強化のためにわざと捕まって‥‥」

千早「再改造?」

響「そうそう。で、CM明けたら、なんか、あずささんになってんの」

伊織「ふふっ! それも、何の説明も無しで」

真美「あははははは!」

千早「怒るわよ」

響「自分で言い出したんじゃないかー」

真美「これさ、一応兄ちゃんとか、りっちゃんに話してみようよ。目指せ映像化!」

千早「ふふっ、通るわけないでしょ?」

伊織「はー‥‥私達今、とんでもなく下らない時間過ごしてるわよね」

響「他の皆も、似たようなもんなんじゃないか?」

千早「そうかしら」

真美「どうする? みんな、すっごい有意義に時間使ってたら」

伊織「ないない。どうせ私達以上にどうでもいい時間の使い方してるわよ」

響「この空間以上にって、それもう、寝たきりとかだよね」

真美「あはははは!」

前半と後半で微妙に辻褄が合わなくなる場所に気付いたんで、ちょっと手直し

きりもいいし、とりあえず中断

一個気になると、他の部分も変に見えてきて困る

次にきりのいい場所まで書いて、修正アンド睡眠アンド修正する

大型ショッピングセンター


美希「‥‥あ、もしもし、雪歩? ミキ、待ち合わせ場所に着いたけど、雪歩ももう‥‥あ! いたいた! 見付けたの! ‥‥やっほー!」

雪歩「おはよう、美希ちゃん」

美希「ねえねえ、あずさと小鳥はまだなの?」

雪歩「あ、もう来てるよ。今さっき、ちょうどトイレに‥‥」

アナウンス『ご来店中のお客様に、お知らせです。音無小鳥様。音無小鳥様。お連れ様がお待ちです。いらっしゃいましたら、2階、総合案内センターに‥‥』

美希雪歩「」




小鳥「あの‥‥先ほどの放送の、音無と申しますが、こちらに‥‥」

警備員「あ、はいはい。三浦さん、三浦さーん。迎えの方が来ましたよー」

あずさ「お、音無さぁん」

小鳥「もう、あずささん‥‥どうして手を乾かすために目を離した数秒間でいなくなれるんですか‥‥」

美希「実にあずさらしいの」

小鳥「あ、美希ちゃん」

あずさ「みんな、ごめんなさいね」

雪歩「で、でも、無事でよかったですぅ」

警備員「では、私はこれで。応援してますんで、頑張ってください」

あずさ「ご迷惑おかけしました~」

美希「それじゃ、そろそろどっかに移動するの!」

小鳥「美希ちゃん、張り切ってるわね」

雪歩「どこのお店に行くか、決めてあるの?」

美希「ぶーっ! 雪歩はわかってないの!」

雪歩「へ?」

美希「ミキが勝手に色んな事決めるんじゃなくて、みんなで決めないと意味ないの! せっかく一緒に遊びにきたんだよ?」

雪歩「あ、そ、そっか。ごめんね?」

美希「んー‥‥じゃあペナルティとして、お昼をどこで食べるか、雪歩に決めてほしいな」

あずさ「あら~、いいわねぇ。私も美希ちゃんに賛成するわぁ」

雪歩「え? え?‥‥えええ!?」

小鳥「いや、そこまで驚かなくても」

雪歩「うぅ、どうしよう‥‥美味しいもの選ばなくちゃ‥‥」ブツブツ

美希「‥‥あれ? これ、決めるのに時間かかりすぎて、お昼ご飯食べ逃すって説が出てきたカンジ?」

あずさ「まあまあ。お休みなんだし、ゆっくりしましょう」

小鳥「雪歩ちゃんは慎重になりすぎて時間かかりそうだけど、別の意味で時間かかりそうな子達のグループもいるわよね」

美希「あ、なんとなく想像つくの。こんなカンジ?」

~~~~~~~~~~~~~

響「ねえねえ。お昼、どうする?」

千早「なんでもいいわよ。水瀬さん決めたら?」

伊織「本当になんでもいいの?」

真美「いいよー」

伊織「じゃあ‥‥カレー」

響「ええ? カレーかあ‥‥」

伊織「それじゃあ、ハンバーグとか」

千早「お肉はちょっと‥‥」

伊織「オムライス」

真美「ないない。オムライスはないっしょ」

伊織「じゃあ‥‥なんでもよくない!」

真美「あははははは」

響「地下行く? 地下」

千早「レストラン街でもあるの?」

響「試食」

千早「んふっ」

伊織「明日の朝刊に載るわね。試食を食べ尽くすアイドル集団」

響「新ジャンル、イナゴ系アイドル」

真美「ありだね」

千早「イナゴなのにアリ?」

伊織「うっさいわよ」

響「コンチュウの週刊誌にも掲載されるぞ」

千早「くふっ!」

伊織「うっさいわよ。次言っても、ムシするわよ」

千早「ふふふ!」

真美「‥‥ありだね!」

伊織「ぷふっ! い、一回言ったやつじゃないのそれ」

真美「何も思い付かなかったから」

響「んふふふ」

ウヒャヒャハハハ ゲラゲラゲラ

~~~~~~~~~~~

美希「的な」

小鳥「アイドルとしては致命的よ!? そんなイメージ!」

雪歩「そ、そうだよ美希ちゃん。流石にそこまで‥‥」

美希「そうかなー‥‥」

あずさ「ところで雪歩ちゃん、何か決まった?」

雪歩「あ、はい。メニューが色々あるし、洋食屋さんなんていいかなと思うんですけど‥‥」

あずさ「そういえばここ、有名なレストランが入ってるってテレビで見たわ」

小鳥「あ、それあたしも見ました。イタリアで10年修行した、イケメンシェフの店!」

美希「イケメン? それって、永田さんみたいな?」

あずさ「そうだったらいいわねぇ」

小鳥「食事したのをきっかけに、その後2人は‥‥なんて。くふふふ」

雪歩「‥‥あ、あれ? 私がおかしいのかな‥‥」

美希「じゃあ、雪歩の中でのイケメンってどんなの?」

雪歩「え? うーん‥‥TAKAみちのくさん?」

美希あずさ小鳥「え」

雪歩「あれ?」

美希「と、とりあえずそこのお店に行くの。お腹すいてきちゃった!」

雪歩「ええと、レストラン街があるのは‥‥」

小鳥「あ、あずささん! どこに行くんですか!」

あずさ「案内図を探そうと~‥‥」

小鳥「大丈夫ですから! 先陣を切ろうとしないでください!」

あずさ「はい~」

美希「ミキね、今、小鳥を誘っといて本当によかったって思ってるの」

雪歩「だね」

レストラン イタリアンコネクション


小鳥「あ、この店だわ」

美希「へえ! なんか、よさそうな店だね」

雪歩「うん。お洒落だね」

店員「いらっしゃいませ。ただ今、全席禁煙となっておりますが、よろしいでしょうか?」

雪歩「はい」

店員「では、お席にご案内します。‥‥こちら、メニューでございます」

あずさ「どうも~」

店員「本日ランチコースのSecondo Piatt、肉料理はBistecca alla Fiorentin 魚料理はTagliata di pesce spad となっております」

美希雪歩あずさ小鳥「」

店員「お決まりになりましたら、お呼びください」

美希「‥‥今の、何?」

雪歩「‥‥魔法?」

あずさ「だ、大丈夫よ。メニューにはきっと写真と日本語訳が‥‥」チラッ

小鳥「‥‥載ってた! セーフ!」

あずさ「ランチコース‥‥5500円」

美希「うえっ!?」

小鳥「それでも‥‥うん、この内容でなら、割と安い方だと思うわよ?‥‥きっと」

美希「なんとかセット、みたいなのは無さそう?」

あずさ「あるみたいよ~。ほら」

美希「うーん‥‥全部美味しそうに見えてくるの」

小鳥「それじゃあ、別々の物頼んで少し交換しましょうか」

雪歩「あ、私も」

あずさ「私も仲間に入れてちょうだい」

美希「じゃあね、じゃあね、ミキはー‥‥Bセットにするの」

雪歩「私、子羊のローストとライス、サラダのセットにしようかなぁ」

小鳥「じゃあ‥‥うーん、どうしようかしら」

美希「刺身御膳?」

小鳥「なんで洋食屋でわざわざ!?」

あずさ「私は‥‥あっ、イカ墨のスパゲティ美味しそうね~」

小鳥「スパゲティかぁ‥‥むむむ‥‥じゃあ、白身魚と夏野菜のスパゲティで!」

美希「店員さん呼ぶね」

店員「お待たせいたしました。ご注文はお決まりですか?」

美希「えーと、これとこれと、あと、これとこれとこれ」

店員「かしこまりました。ただ今ランチタイムで、お飲み物とケーキがついております。こちらからお選びください」

美希「じゃあミキ、飲み物はアイスティーで‥‥ケーキも分けっこする?」

雪歩「うん、いいよ。あ、飲み物は‥‥私も同じで」

あずさ「私は、アイスコーヒーを」

小鳥「私もコーヒーを。あと、ケーキは1種類ずつお願いします」

店員「かしこまりました。それでは‥‥あ、申し訳ございません。追加料金200円で、お飲み物がアルコールに変更できますが、いかがいたしましょう」

あずさ小鳥「!」ピクッ

小鳥「‥‥わ、私は、今の注文通りで」

あずさ「私も大丈夫です~」

店員「かしこまりました。それでは少々お待ちください」

美希「よかったの? お酒。2人共好きなのに」

あずさ「ええ。流石にこんな時間からはアイドルがお酒飲んでるのは‥‥」

美希「小鳥は?」

小鳥「もしファンに気付かれた時、アイドルが酔っ払った女と一緒に歩いてたら、イメージよくないでしょう?」

美希「そうかなあ」

小鳥「それより美希ちゃん。さっきから思ってたけど‥‥美希ちゃんて、出かける時変装とかしないの? 気付かれない?」

雪歩「あ、そういえばさっきの警備員さんには、私達がアイドルってばれちゃってるみたいでしたぁ」

美希「あ、うん。いつもは一応帽子とか被ってるけど、今日のコーデには合わないなーって」

雪歩「大丈夫かなぁ‥‥」

美希「大丈夫なの。それにほら、いざとなったら‥‥」

雪歩「?」

美希「ふぉれらら、ひじゅかれらいろ(これなら気付かれないの)」クイッ

小鳥「ぶーーーっ!」

あずさ「ふくっ!‥‥み、美希ちゃ‥‥ふふふ!」

美希「どう? 誰かと目が合う度に、しゃくれるっていう」

雪歩「気付かれるとかじゃなくて、女の子としてアウトだよぉ!」

美希「‥‥ねえねえ」

雪歩「な、何?」

美希「あたくひ、ひじょうたかねと申ひます」クイッ

小鳥「くっふ!」

美希「えーと‥‥あ」

あずさ「美希ちゃ‥‥も、もうやめ‥‥」

美希「諸君! 仲よきことは、美しきかな!」クイッ

雪歩「ふくく‥‥」

美希「迷わずいけよ! いけばわかるさ!」クイッ

小鳥「混ざってる! 別の偉い人混ざってる!」

美希「いくぞ! いーち、にぃ、さん!」

店員「お待たせいたしました」

美希「」

雪歩「ふっ‥‥くふふ‥‥っ!」

小鳥「ふく、くく‥‥!」

あずさ「けほっ! けほっ! んっ、んー‥‥」

美希「‥‥あの」

店員「ごゆっくりどうぞ」

美希「‥‥はい」

店員「‥‥ダー」

雪歩「くっふ!」

小鳥「ふぎっ! ふふ、んふふふ‥‥!」

あずさ「ふ、っくく‥‥」ピクピク

美希「泣きそう」

小鳥「ま、まあまあ。でもこれで、変な顔して変装するのは、やめといた方がいいってわかったでしょう?」

美希「お昼食べたら、すぐ帽子買うの」

雪歩「帽子かあ。どんなのが欲しい?」

美希「うーん‥‥あ、もういっそパンスト被るとか」

雪歩「美希ちゃんは自分の顔面をどうしたいの?」

美希「えへへ、冗談冗談。ほら、食べようよ!」

小鳥「そうね。いただきまーす」

あずさ「いただきます。‥‥あら、おいしい~」

美希「んん! これも美味しいの! 雪歩のは?」

雪歩「うん、美味しいよ。はい、ちょっと分けてあげ‥‥」

美希「あーん」

雪歩「ええ? み、美希ちゃん、ちょっと恥ずかしいよぉ‥‥」

美希「あーん!」

雪歩「うう‥‥じゃあ‥‥はい、あーん」

美希「はむっ。えへへー」モグモグ

雪歩「美味しい?」

美希「うん! はい、おかえし。あーんして」

雪歩「う、やっぱり‥‥あーん」

美希「と、見せかけて激写!」カシャッ

雪歩「ふええ!?」

美希「雪歩の貴重な1枚、ゲットなの!」

雪歩「ちょ、ちょっと美希ちゃん!」

美希「早速送信を‥‥」

雪歩「ええ!? やめてよぉ! どこに送る気なの!?」

美希「素材スレ」

雪歩「やめて」

美希「はい」

雪歩「もう‥‥美希ちゃんのいじわる」

美希「あ、でも可愛かったから、事務所のみんなには送っちゃった」

雪歩「ええ!?」

小鳥「あ」ピロリロリン

あずさ「あら」ピロリロリン

美希「ね? かわいいでしょ!」

雪歩「」

小鳥「ホントねえ。あ、これをこうして‥‥」ポチポチ

あずさ「音無さん? 何を‥‥」

小鳥「はい、これ」サッ

あずさ「ぷふっ!?」

美希「え? 何なの‥‥やーん! 何これ!」

雪歩「な、何? 一体何を‥‥こ、小鳥さぁん!」

美希「小鳥ってひょっとして、仕事中もそういう画像作って遊んだりしてるの?」

小鳥「し、してないわよ!」

美希「ほんとー? あ、そっちも美味しそう。もらっていい?」

あずさ「いいわよー。はい」

美希「もぐもぐ‥‥うん、美味しいの! ミキ、イカ墨ってあんまり食べた事ないかも」

小鳥「その辺に売ってるパスタソースとかでも、案外バカにできない味よ?」

美希「そうなんだあ。今度作ってもらおっと。‥‥ねえ雪歩、ちょっとこっち見て」

雪歩「え? なあに?」

美希「お歯黒」イーッ

雪歩「ぷふっ!」

小鳥「美希ちゃんて、可愛いアイドルよね? 他の売れ方とか目指してないわよね?」

美希「うん、もちろんなの」

小鳥「ならいいけど‥‥」

美希「マイクタイソン」イッ

小鳥「ぷーっ!」

響「そこで、自分は言ってやったのさ」

千早「なんて?」

響「ごめん!」

真美「あははは! 素直! いおりんも、そういう素直なところ見習えば?」

伊織「うん! わかったわ!」

真美「あはははは! 素直!」

千早「はぁ、お腹痛い‥‥」

響「結局さっきから、ペチャクチャ喋ってるだけだね」

伊織「まあ、いいんじゃない? それより、そろそろお昼食べてもいい時間じゃない?」

千早「そうね。それじゃあ我那覇さん、お願いしていい?」

響「ん、そうだね。何食べたい?」

真美「ひびきんに任せるよー」

響「んじゃ、ピザでも取ろうか」

伊織「そうね。千早、チラシを‥‥出前!」

真美「何のために集まったのさー!」

響「あははは。よし、昼だから手軽に、スパゲチーでも作ろっか」

千早「いいわね。スパゲチー」

伊織「作るの簡単なの? スパゲチー」

響「まあ、ものにもよるけど、単純なスパゲチーならすっごい簡単だぞ」

真美「値段も安いみたいだよね。スパゲチー」

千早「んふっ」

真美「みんな言いたくなっちゃうっていう」

響「んじゃ、台所借りるぞー」

千早「30分100円でいいかしら?」

響「おー、お得だね。‥‥教えに来てレンタル料!」

伊織「ふふっ。もう、いいから早くしなさいよ。また無駄に時間が過ぎるわよ」

響「ナポリタンでいい?」

千早「ええ」

響「そんじゃ、ピーマンにタマネギに‥‥ウィンナー派? ベーコン派?」

千早「私はどちらでも‥‥」

伊織「どっちかと言うとウィンナーかしら」

真美「うちではベーコンが多いかなあ」

響「じゃ、両方入れよっか。えーと‥‥」

千早「そんなに適当でいいの?」

響「うん。別に、店で出すような物作るわけじゃないんだし。お湯沸かしといてもらえる?」

千早「わかったわ」

響「伊織は野菜刻んでおいて」

伊織「いいわよ」

響「真美は、適当な大きさにウィンナーとベーコン切って」

真美「アイアイサー!」

響「そんじゃ自分、ゲームやってるから、出来たら呼んで」

千早伊織真美「はーい。‥‥ストップ!」

響「あっはは、嘘嘘。タマネギ切るから、ちょっと詰めて」

伊織「どのくらいにすればいいの?」

響「小さめにしてくれれば、適当でいいよ」

真美「こっちも?」

響「うん。好みで切っちゃって」

千早「お湯はどれくらい沸かせばいいのかしら」

響「870cc! 寸分の違いも許されないぞ!」

真美「んふっ。そこだけ細かい」

伊織「ていうか、870ccって少なすぎるでしょ」

響「ごめん、思い付いた数字言った。お湯も適当でいいよ。多めでね。あと、塩入れといて」

千早「どのくらい?」

響「1500粒」

千早「適当でいいのね」

響「うん」

伊織「できたわよ」

真美「こっちもー」

響「お、早いね。じゃあまず、熱したフライパンに油を入れます」

真美「ふむふむ」

響「バターとか使えば美味しいぞ。焦げやすくなるから、もし使う時は気を付けてね」

千早「バターは焦げに注意、と‥‥」メモメモ

響「次に、タマネギを入れて、弱火で炒めます。この工程が一番めんどくさいので、なんだったら入れなくてもいいでしょう」

伊織「え?」

響「いやあ、茶色くなるまでじっくり炒めたら、美味しいんだけどさ、面倒なんだよね。今日はやってるけど」

真美「そうなの?」

響「炒めタマネギペーストみたいなのも売ってるから、そういうの使ってもいいかもね」

伊織「手抜きね」

響「だって、自分が食べるだけだしさ。タマネギがいい感じになったら、残った材料を入れます。順番とかは別に考えなくてもいいでしょう」

千早「いい香りがしてきたわね」

響「慣れてきたら、この間に麺を茹でちゃった方が待たなくて済むぞ。今日は入門って事で、別にやってるけど」

伊織「確かに、同時進行はテンパリそうね」

響「茹で時間は、袋に書いてある通りでいいぞ。やすーい店で買うと、たまに時間書いてなくて困るけど」

千早「そういう時はどれくらい茹でれば?」

響「麺の太さによるけど、大体7、8分くらいが多いんじゃないかな。途中で何本か試食すればOKだぞ」

千早「なるほど」

響「麺が茹だったら、水を切ってさっきのフライパンに入れ、具と混ぜ合わせます」ジュワー

真美「おー、いい音」

響「いい感じに合わさったら、いよいよ味付けです」

伊織「シンプルな料理だけに、ここが重要ね」

響「自分の場合、使うのは主に2種類。ケチャップとソースです。これを麺に」

千早「ごめんなさい。分量を教えてもらっていいかしら」

響「ん? んー‥‥じゃあ、見ててね」

千早「ええ」

響「ビュッとやって」ピュル

真美「うん」

響「ピューっと出して」トプトプ

伊織「ふむふむ」

響「ぬぇえええい!!」ドバドバドバ

千早伊織真美「ええええ!?」

響「と、大体こんな‥‥」

真美「いやいやいやいや」

伊織「「こんな」じゃないわよ」

千早「ひとっつも参考にならなかったわ」

響「えー?」

伊織「もっとこう、よくあるじゃない。大さじ2杯とか、ゴルフボール大くらいとか」

響「いや、だって‥‥特別な記念日に! とかならともかく、毎日作るご飯に、そんなに手間かけたくないでしょ」

真美「そりゃそうかもだけど‥‥」

響「あ、砂糖とか味醂とか、甘い物使う時は入れすぎたら危険だから気をつけてね」

伊織「たしかに、甘ったるいおかずとか嫌ね」

響「で、具と調味料をいい感じに絡ませたら完成だぞ」

千早「これなら私でもなんとか‥‥」

伊織「まさに入門編って感じね」

響「大きいお皿に盛って、みんなでつつこうか。洗い物増やすのもあれだし」

真美「そだね」

千早「たしかここに貰い物の皿が‥‥あったあった。これでいいかしら」

響「うん。じゃ、食べようか」

千早伊織響真美「いただきまーす」

響「‥‥どう?」

伊織「うん、美味しいわ」

千早「流石、我那覇さんね」

真美「シンプルで、飽きがこない‥‥私が求めていたのは、こういう味だったのだよ!」

伊織「誰よそれ。グルメマンガのキャラ?」

真美「社長」

千早「ぷふっ! 聞いた事無いわよ、そんな事言ってるの」

響「まあ、大体こんな感じでさ、自炊を続けるなら、このくらい雑に作れるものを色々覚えたほうがいいと思うぞ」

千早「そうね‥‥たしかに、あまり凝ったものを作ろうとしても、すぐに続かなくなってしまいそう」

響「その点、お菓子作りは雑な作業が許されにくいからな。春香なんか、凄いと思うぞ」

伊織「春香といえば、今日の朝ブログ更新してたわね。「お出かけします!」って」

真美「へー。あ、真美も書こうっと。ひびきんにご飯作ってもらったよーって」カシャ

千早「みんな、結構やってるのね。私なんて、事務所の公式ブログで自分の回が回ってくるのにもヒヤヒヤしているのに」

響「最初の千早の回、ひどかったよね」

千早「そ、そうだったかしら?」

真美「えーっと‥‥あ、あったあった。これだよね」

『私も書くことになりました。これからよろしくお願いします。今日から新曲のレッスンが始まりました。ご期待に沿えるよう頑張ります。ここまで書くのに1時間かかっています。帰って寝ます。またお会いsimasyou.nihonngoga,utenakunarimasita』

響「あははは! これこれ!」

伊織「家で読んで1人で笑っちゃったわ。なんで作文調なのよ! って」

真美「「日本語が打てなくなりました」が可愛いよね」

千早「‥‥は、春香と言えば、真や律子と一緒なのよね?」

響「話の変え方が下手すぎるぞ」

伊織「春香に真に律子って、あれよね。無難なっていうか、何の事件も起こらなさそうな組み合わせよね」

真美「まあ、真美達も事件なんてひとっつも起こってないけどね」

響「バカな話してゲームしてご飯食べてるだけっていう」

千早「きっとそんなものよ。みんな」

春香「よし、ブログ更新完了! 帰ってきたらまた書こうっと。あ、もうこんな時間。おはよー」ガチャ

春香母「おはよう」

春香父「おう、おはよう。今日は休みなのか?」

春香「うん。最近忙しかったからって、社長が」

父「そうかそうか。あ、だったら一緒に‥‥」

春香「あ、ごめんね! お父さん! 今日は事務所の友達とお出かけする約束だから‥‥」

父「そうか、残念だなぁ。せっかく一緒にフリークライミングにでも行こうと思ったのに」

春香「何その競技!? 暇だったとしてもあんまり行きたくないよ!」

母「春香。今日、夕飯は?」

春香「うーん‥‥多分、みんなで食べてくるんじゃないかな。真や律子さんと相談して、決まったらメールするね」

父「何! 真ちゃんと遊びに行くのか! 羨ましい奴だな!」

春香「‥‥前から言いたかったんだけどさ、娘のグッズより他のアイドルのグッズの方がたくさんあるって、どうなの?」

父「ははははは」←真ファン

母「ほほほほほ」←竜宮ファン

春香「笑ってるし。あ、いっけない。もう出るね! 行ってきまーす!」

母「いってらっしゃーい」

父「気をつけてなー」


ガチャ バタン


春香「わあ、いい天気。楽しい一日になりそうな予感!‥‥あ、電話だ」ピッ

真『もしもーし。おはよう春香』

春香「おはよー」

真『そろそろ着くから、家の前に出ておいてね』

春香「うん、もう出てるよ」

真『りょうかーい。それじゃね』

春香「‥‥あ」

ブロロロロロ‥‥

律子「おはよう。さ、どうぞ」

春香「おはようございまーす。今日はお世話になります」

律子「いいのよ。たまには仕事以外でドライブも楽しそうだしね」

真「おっはよ」

春香「おはよう真。そうだ、真と言えばさ、聞いてよ。うちのお父さんたらさー‥‥」

真「‥‥春香のお父さんって、男だよね?」

春香「そりゃそうだよ」

真「僕、ちょっとご挨拶に‥‥」イソイソ

春香「ちょちょちょちょちょっと!」

律子「まーこーと。よしなさいよ」

春香「そうだよ。ただでさえ、うちでは私より真や竜宮の方が話題になるんだから、もっとひどくなっちゃうよ」

律子「‥‥ちょっとご挨拶に」ガチャ

春香「律子さーん!?」


真「いやー、いいお父さんだったなー。うちの父さんにも見習わせたいよ」デレデレ

律子「お母さんも見る目があって‥‥ほんと、素敵なご両親ね。春香」ホクホク

春香「うう‥‥まさか本当に寄っていくとは‥‥」

律子「まあまあ。ファンの声と直接向き合えるなんて、いい機会じゃない。今後のプロデュースの参考になるわ」

真「そうだよ! 可愛い路線の僕にも、ちゃんと需要があるってわかったんだし!」

春香「お父さんとお母さんが取られちゃうよう‥‥」

律子「さて、それじゃあ気を取り直して、出発しましょうか」

春香「どこに行きます?」

律子「そうねえ。せっかく車を持ち出して機動力があるんだから、普段なかなか行かないところがいいわよね」

真「ねえ律子。どこかに向かう前に、コンビニでも寄ってもらっていい? 僕、お腹空いちゃって」

律子「せっかくなら、コンビニなんかで済まさないで何か美味しい物食べましょうよ」

春香「あ、それならここから少し離れたところに、雑誌に載ったハンバーガー屋さんがありますよ。線路沿いからも離れてて、行きたくても今までなかなか行けなかったんですけど」

真「ハンバーガーか‥‥いいねえ」

律子「そうね。よし、それじゃあそこに向かってみましょうか。春香、案内頼んでいい?」

春香「はい! あ、携帯でナビ出せるようにしときますね」

律子「それでは」

真「出発」

春香「しんこー!」

真「‥‥じーんわりこんがりバンズをー」

春香「きちんとケチャップで塗ればー」

真「具にはレタスとビーフパティ」

春香「大好き好きハンバーガー」

春香真「ステキ、アイライクハンバーガー♪」

春香「ふふっ」

真「えっへへー」

律子「2人共、ご機嫌ね」

春香「よく考えたら、こうやって事務所のメンバーと仕事以外で車に乗って出かけるのって、今まで無かったかなーって思って」

真「そうそう! なんか、ワクワクするよね!」

律子「あー、言われてみればそうなるわよね。みんな免許も持ってないし」

真「そりゃ歌も歌いたくなるってもんだよ!」

春香「歌と言えば、律子さんの前に歌った曲、こういう時にこそ似合うんじゃないですか?」

律子「私の? んー‥‥ああ、あれ?」

真「折角だし、歌ってよ!」

律子「何が折角なのよ?」

真「歌って歌ってー」

春香「お願いお願ーい」

律子「もう‥‥本当にテンションあがってるわね。ゴホン‥‥せーかいじゅうーをー 僕の涙で埋め尽くしてー」

春香「やり切れないーこんなおもいがー今日の雨をふらせてーもー」

真「新しいー朝がいつものようにはじまーるー」

春香真律子「そんな風に そんな風に ぼーくはー生ーきたいんだー」

春香真「イエーイ!」

真「なんだか、ほんとにドライブに合う曲だね」

律子「そりゃそうよ。何せ、旅番組の曲なんだもの」

春香「へえ、旅番組ですか?」

律子「そうよ。風景や名所はほとんど映さず、車内で出演者とスタッフが罵り合う‥‥」

真「‥‥それ、旅番組?」

律子「そうだ。車の免許だとハードル高いけど、原付の免許くらいとっておけば?」

春香「なんだか嫌な予感がするのでお断りします」

律子「残念ね」

真「そういう変なのは嫌だけど、旅番組自体はやってみたいね」

春香「うん! グルメに温泉、癒されパワースポットとか!」

真「そういう仕事って入らないの?」

律子「そうねえ。入ったとしても、765プロメインというよりは、レギュラーメンバーの中に何人かゲストに、って感じになるわね。きっと」

真「えー。みんなで旅行番組撮ろうよー」

律子「うちの事務所だと、どうしても雰囲気が賑やかになりすぎるのよ。ライブDVDの特典映像とかにはいいかも知れないけど、旅をメインに据えてる番組にはちょっとね」

春香「もしゲストで呼ばれるとしたら、誰ですかね」

律子「そうねえ‥‥メイン出演者が大御所俳優さんとかの本格旅番組なら、春香とか雪歩、後は貴音とか、少し気を遣える子かしら」

真「少しバラエティよりだったら?」

律子「うーん、その場合は亜美と真美とか‥‥伊織や響なんかもいいかもね。他の出演者とワイワイやったり、芸人さんに少しいじられても面白い感じの」

真「僕は?」

律子「真はねえ‥‥温泉とかより、キャンプ場やレジャー施設なんかで使いたいわね」

春香「あれ? あずささんは入らないんですか? のんびりした番組、すごく似合いそうなのに」

律子「いや、そりゃ一番似合いそうだけど‥‥もし迷子になられたら、確実にスケジュールが破綻するじゃない。それにそういう番組のゲストって、多少場を仕切ったりもしなきゃいけないし、その辺りもちょっとねえ」

真「あ、そっか。うーん、色々考えてるんだなあ」

律子「そりゃそうよ。ま、実際に話が来たら、プロデューサー殿と相談して、もっと煮詰めていくわよ」

春香「あ、その時は社長にお願いして、実際に接待させてもらうテスト受けたり!」

真「いいかもね。誰に案内されるのが一番よかったか、感想聞いてさ」

律子「うーん‥‥きっとだめね」

真「どうして?」

律子「ちょっと想像してみなさいよ。わかるから」



社長『いやはや、流石は天海君だ! とても気分よく楽しめたよ!』

社長『うんうん! 菊地君を見ていると、私まで元気になれるようだ』

社長『如月君との旅、とても落ち着いていて、ゆっくり楽しめたよ』

社長『やよい君と一緒にいると、まるで孫を持った気分になるねえ』






社長『うんうん、我が社のアイドルは、やはりどの子も素晴らしいね! 結構結構! はははは』

真「あー‥‥」

春香「多分、こうなりますよね‥‥」

律子「ね? 社長は、平等すぎるのよ。誰か1人だけ選ぶなんて、期待できないわ」

春香「失敗しても、それすら褒めてくれそうですよね」

真「ま、そういう人にスカウトされたから、僕らも765プロに入ろうって決めたんだけどね」

律子「親ばか‥‥社長バカっていうのかしら?」

真「社長バカ一代。なんつってね」

律子「何言ってんの? あ、春香。そろそろじゃない?」

春香「え? わわわっ、本当だ。えと、次の青看を右に曲がって、すぐ左ですね」

律子「はいはい。‥‥よし、到着ー」

真「えーと‥‥ハッピークラウン、か」

律子「混んでる? 混んでるようなら、私が行ってテイクアウトしてくるけど」

春香「まだ開店したばかりで、お客さんはそんなにいないみたいですね」

真「せっかくだし、出来立てを店で食べようよ。ちゃんと変装すれば大丈夫だよ!」

律子「そうねえ‥‥うん、まずは行ってみましょうか」



店員「いらっしゃいませ。店内でお召し上がりですか?」

真「はい! えーと‥‥あっ、これが一番人気みたいだよ」

春香「じゃあ私、それにしようかな」

律子「私は‥‥わっ、何これ。すっごい大きさ」

真「それにするの?」

律子「無理よ、無理。私はこっちにしようかしら。なんだか珍しいし」

春香「ポテトも食べる?」

真「そうだね。じゃあ、僕はこれ!」

店員「チャイニーズチキンバーガー、ホタテバーガー、ハッピーエッグバーガー、以上お一つずつと、フレンチポテトが三つでよろし‥‥」

真「あとー、これと、これと‥‥サイドメニューのこっちもください!」

店員「あ、はい。‥‥あの、お客様。当店の商品は他と比べ、多少大きめになっていますが‥‥大丈夫でしょうか?」

真「はい!」

店員「かしこまりました。てりやきバーガー、酢豚バーガー、スプリングロール(春巻き)ですね。お時間少々頂きますが、よろしいでしょうか」

真「はい!」

律子「ちょっと真、大丈夫なの? 3つも食べて」

春香「写真見たら、本当に結構大きいよ?」

真「大丈夫だってば。お腹ペコペコだし!」

律子「ならいいけど‥‥車なんだし、酔ったりしないでよ?」

真「わかってるよー。それで、この後はどうする?」

春香「せっかくこっち方面に来たし、普段行かないようなところに‥‥」

律子「一応、何かイベントとか見所がありそうなところは調べておいたわよ」

真「わっ、さっすが律子!」

春香「じゃあ、その中からいくつか周る感じで‥‥」

店員「お待たせ致しました。ご注文の商品をお持ちいたしました」

真「わあ! きたきた!」

春香「おいしそー!」

律子「では、冷めないうちに‥‥」

春香真律子「いただきます!」

真「‥‥うん! おっいしーい!」

律子「本当。ハンバーガーの中では、一歩抜きん出てるわね」

春香「もっと近くにあったら、絶対通っちゃう!」

律子「そういえば真。こないだの新曲の売れ行き、なかなか好ちょ‥‥」

真「ん?」ペロッ

律子「はやっ! もう2つ目!?」

真「だって、お腹空いてたんだよ。あ、これもおいしー!」

律子「よく食べ、よく動き‥‥まあ、健康的ではあるのかしらね」

春香「真が羨ましいなあ。私だってレッスンで動いてるのに、最近またお腹周りが‥‥」

律子「私も、デスクワーク中心の日が続くと‥‥」

真「あ、だったら2人も朝のランニングとかすれば? 春香なんて、電車通勤やめて自転車で事務所まで通えば相当‥‥」

春香「死んじゃうよ」

律子「春香の場合、お菓子をもう少し控えればどうとでもなりそうだけどね」

春香「う‥‥努力はします‥‥」

真「あれ? 2人共、もう食べ終わっちゃうの? ちょっと待ってね」ハグハグハグ

春香「そんなに慌てなくても」

律子「そうよ。時間はまだ、たっぷりあるんだから」

真「いや、でも本当に美味しかったなあ。‥‥あれ? あそこのところに貼ってあるの‥‥」

律子「へ?‥‥ああ、やっぱり有名人が結構来てるみたいね」

春香「そうみたいですね。あ、そういえば、CLAYさんがメジャーデビュー前に通ってたって、聞いた事あります」

真「あ、本当だ。飾ってある。僕たちもサイン頼まれちゃったりするかな?」

律子「どうかしらね。変装してるのに頼まれたら、ちょっと問題な気もするけど。それじゃ、行きましょうか」

真「そうだね。ごちそうさまでしたー!」

店員「ありがとうございました。‥‥あ、あの、お客様」

律子「はい? 私ですか?」

店員「りっちゃ‥‥秋月律子さん、ですよね? 私、前からファンでして! デビューも引退も、見に行ったんです!」

律子「ええ!? ありがとうございます!」

店員「765プロライブで2回も復活したって聞いて、チケット取れなかったのが悔しくって! また復活してくださいね!」

律子「あはは‥‥ぜ、善処します」

店員「それでは、ありがとうございまし‥‥」

春香「ふ、ふんふんふーん♪」メガネトリ

真「いやー、それにしても、これだけ美味しいお店だとやっぱり有名人も来るんですねぇ」ボウシトリ

店員「‥‥ええ!? 春香ちゃんに真ちゃ‥‥ええ!?」

律子「何やってるのよ‥‥」

春香「本当! サインとか写真飾ってあるね!」

真「サインと言えば、僕、サインとか頼まれたら断れないんだよね。なんだか」チラッチラッ

春香「私も。なんだか、悪い気がして」チラッ

律子「‥‥すみません。サイン、させてやってもらえませんか?」

店員「え? え? い、いいんですか? プライベートみたいだし、悪いかなと‥‥」

律子「すみません‥‥」




真「いやー、バレちゃったなあ」

春香「ねー。今日はお休みだけど、気付かれちゃったら仕方ないよね!」

律子「よく言うわよ‥‥」

春香「それで、最初はどこ行きます?」

律子「そうね。国道から離れてるけど、フラワーガーデンみたいなのやってるらしいわよ?」

真「いいね! そこ行こうよ!」

律子「わかったわ。結構道が悪いらしいから、気をつけてね」

春香「はーい」

真「わかってまーす」

真「‥‥ぎぼぢわるい‥‥」

律子「あーあーあー‥‥」

春香「だ、大丈夫?」

真「だいじょばない‥‥」

律子「だっから食べすぎじゃないのって言ったじゃない」

真「だっで~‥‥うぷっ」

春香「ちょ、真!?」

律子「‥‥近くに道の駅があるみたいだから、そこで少し休憩しましょうか」

春香「そうですね‥‥ほら真。もう少し我慢してね」

真「うん‥‥」

律子「もう‥‥他の子も、羽目を外し過ぎてなきゃいいけど」

亜美「あ! お姫ちん! こっちこっちー!」

やよい「貴音さーん!」

貴音「ここでしたか。遅れてしまって、申し訳ありません。ああ、今日の食材を持って参りました」

やよい「あ、私も‥‥じゃじゃーん! これ、うちで取れたお野菜です! おイモさんが、たーっくさん取れました!‥‥ところで、亜美。亜美の荷物、随分おっきいね」

亜美「あ、これ? いやー、ママがさ、貴音ちゃんがいるなら、これも持っていきなさい。あれも持っていきなさいって」

貴音「な、なぜそのような‥‥?」

亜美「んー、ひょっとしてあれかな。お姫ちんの食生活を、話に尾ひれと背びれと、おまけに手足や羽までくっつけて話したりしてるせいかな。普段から」テヘペロ

貴音「」

やよい「もー! ダメだよ亜美!」

亜美「めんごめんご! でもその分、こうやって色々ゲットできたわけだし! お肉もいっぱいあるよー」

やよい「‥‥次から気をつけるんだよ!」

亜美「あーい」

貴音「解せません‥‥」

亜美「よし! それじゃあ早速、始めよう! えーっと‥‥」

やよい「まずは、炭をおこすんでしたよね?」

貴音「そうでしたね。では‥‥はて? この、茶色い物はなんでしょう?」

亜美「どれどれ? ‥‥くさっ! なんか、灯油の匂いするよー」

やよい「灯油? じゃあ、食べ物には関係ないかも!」

貴音「そうですね。施設の方が、間違えて入れたのでしょう」

亜美「これ、炭って全部入れていいのかな」

やよい「うわわ! 亜美、こぼれてるよ!」

貴音「はて‥‥火種になるような物がありませんね。新聞紙などは入っていませんか?」

亜美「あーでもない」

やよい「こーでもない」

貴音「むっしゅめらめら」

1時間後

亜美「はあ、はあ‥‥なかなか手ごわいぜぃ」

やよい「これじゃ、いつまで経っても始められないよぉ‥‥」

貴音「困りましたね‥‥ここは恥を忍んで、人に聞くしかないのでしょうが‥‥」

やよい「周りに誰もいません‥‥」

貴音「人の目を気にしなくてもよい場所を選んだのが、仇になりましたね」

亜美「あれ? あそこ‥‥1グループだけいるみたいだよ! 都合のいい事に!」

やよい「え? 本当だ! 私、聞いてきますね!」

貴音「では、お願いしましょう。‥‥亜美、どうしました?」

亜美「なーんか、見覚えがあるような‥‥」

やよい「すみませーん! ちょっといいですかー!?」

???「ん?」

やよい「実は‥‥はわっ! あなたは!」

冬馬「あれ? お前は765プロの‥‥」

やよい「天ヶ瀬冬馬さん!」

冬馬「誰が天ヶ瀬‥‥いや、あってた。わりぃ」

北斗「やあエンジェルちゃん。こんな場所で会うなんて、奇遇だね。神様の思し召しかな?」

翔太「765プロのアイドルがここにいるって事は‥‥撮影?」

やよい「いえ! 実は、かくかくしかじかで」

冬馬「まるまるうまうま、ってわけか」

やよい「あの‥‥ダメでしょうか?」

冬馬「ったく‥‥こういうのは、口で説明しても分かりにくいんだよ。お前ら、手伝え」

北斗「勿論。お腹を空かせた雛鳥ちゃん達を、見過ごしてはおけないからね」

翔太「ま、仕方ないか」

やよい「うっうー! ありがとうございまーっす!」

冬馬「よう」

亜美「あ、やっぱあまとう達だった。はろはろー」

貴音「お久しぶりです」

冬馬「あれ? おい。炭と一緒に、文化焚き付け‥‥茶色い木片みたいの、入ってなかったか?」

貴音「はて‥‥もしや、これの事でしょうか?」

翔太「そうそう。なんで使ってないの?」

冬馬「大体、炭も入れすぎなんだよ。こんなに近くちゃ、火力が強すぎるだろ」ガシャガシャ

亜美「へえ~。なかなかやるもんですなあ」

貴音「流石は殿方ですね」

冬馬「‥‥よし。後は、火が回るのを待て。じゃあな」

やよい「はい! ありがとうございます!‥‥あの!」

冬馬「なんだよ?」

やよい「よかったら、一緒に食べませんか?」

亜美「お、やよいっち、ナイスアイディア!その方が楽しそうじゃん」

貴音「そうですね。やはりこういう催しは、大人数でこそ楽しめるというもの」

冬馬「‥‥はあ。お前ら、何言ってんだよ」

北斗「そうだね‥‥とても残念だけど、それはよしておいた方がよさそうだね」

亜美「えー? なんでさー」

冬馬「アイドルが男女で一緒に遊んでたなんて、週刊誌のいいネタだろうが。お前ら、ただでさえ黒井のおっさんに狙われてんだろ?」

翔太「だよねー。僕らはともかく、765プロは今やトップを狙える位置にいるんだし、変な噂が立ったらまずいよ。やっぱ」

やよい「あうー‥‥どうしてもダメですかぁ‥‥?」

冬馬「うぐっ!」グサッ

北斗「ううっ!」グサッ

翔太「ぐはっ!」グサッ

冬馬「くうっ、な、なんだこの罪悪感は‥‥と、とにかく、もっと売れっ子としての自覚を持てよ」

北斗「そういうわけで、気持ちだけありがたく受け取っておくよ。チャオ☆」

翔太「心が痛い‥‥」

やよい「‥‥行っちゃいました‥‥」

亜美「やよいっちの上目遣いでのお願いに耐え切るとは‥‥敵ながら天晴れな猛者よのう」

貴音「ですが、ジュピターの言う事にも一理あります。無理に誘う事は出来ませんね」

亜美「よーし! 気持ちを切り替えて、ジャンジャン食べようぜぃ!」

やよい「うー‥‥うん! そうだね!」

亜美「これ、もう焼けてるかなぁ?」

貴音「少々早いのでは?」

やよい「うっうー! このお肉、柔らかくって美味しいですー!」

亜美「そういや、こないだ社長がさ」

やよい「うん」

亜美「脂の乗ったお肉がたくさん食べられるのは、若者の特権だって言ってた」

やよい「そうなの?」

亜美「うん。なんか、大人になるにつれて、赤身の多い肉の方が有り難く感じ始めるんだってさ」

やよい「へええ」

貴音「では、私も年齢を重ねる内に、背脂のたっぷり浮いたらぁめんに、今ほど魅力を感じなくなっていくのでしょうか」

亜美「どうなんだろ。あ、これもう行けそう。‥‥んー! うみゃーい!」

やよい「あ、そうだ! もやし炒めていいですか? 私、特製のソース作ってきたんです!」

貴音「それは、響と伊織が前に言っていた‥‥」

亜美「おー! 亜美、めっちゃ気になってたんだー!」

やよい「えへへ‥‥それじゃあ、出張もやし祭り開催でーす!」




冬馬「‥‥なんか、すげえ盛り上がってんな」

北斗「やっぱり、惜しい事をしたかな?」

翔太「まあ、仕方ないよね」

冬馬「それはさて置き、俺らの今後の活動についてなんだけどよ‥‥ん?」

やよい「あのー‥‥」

北斗「あれ? やよいちゃん。また何か困り事かな?」

やよい「そうじゃなくて‥‥もしよかったら、これ、食べませんか?」

冬馬「なんだこれ。もやし?」

やよい「はい! 私の得意料理なんです! 亜美も貴音さんも、美味しいって言ってくれました!」

翔太「得意料理って‥‥これ、もやししか入ってないみたいだけど」

北斗「まあまあ。せっかくだし、お言葉に甘えさせてもらおうよ。‥‥んん!?」

翔太「へ? なになに?‥‥うわっ!」

冬馬「なんだよ。‥‥な、なんだこれ! めちゃくちゃうめーぞ!」

やよい「えへへ! 気に入ってもらえたなら、よかったですー!」

冬馬「これ、もやしだけ‥‥だよな?」

北斗「うん、何も入ってないみたいだけど‥‥」

翔太「へえ‥‥こんなの初めて食べた」

やよい「あのあの! これ、ソース作りすぎちゃったから、ペットボトルに入れてきました! よかったら、使ってください!」

冬馬「あ、ああ。悪いな」

やよい「いえ! せめてものお礼です! それじゃあ、失礼しまーっす!」

冬馬「あ、待て。ちょっと待てよ」

やよい「はい?」

冬馬「これ、やるよ。持ってって食え」

やよい「へ? わあ! アイス! い、いいんですか!?」

冬馬「余り物だけどな。溶けかけてるかも知れないから、早めに食えよ」

やよい「うっうー! ありがとうございますー! 亜美ー! 貴音さーん!」

北斗「‥‥かわいい」

翔太「異議なし」

冬馬「‥‥それにしても、これマジでうめえな」モシャモシャ





亜美「へー、あまとうがねえ」ペロペロ

やよい「うん! 私本当を言うと、ジュピターの3人ってもっと怖い人かもって思ってたけど‥‥すっごくいい人でした!」

貴音「そうですね‥‥今まではそれぞれの立場ゆえに敵対する事も多かったですが、これからは、よき好敵手になる相手やも知れません」

亜美「あまとう‥‥俺にはあなたが、最大の強敵だった‥‥」

やよい「それ、何?」

亜美「んっふっふー、知らんのかね? まあ、無理もあるまい‥‥幼子には過激すぎる物語よ‥‥」

貴音「はて、私も存じませんね」

亜美「ふふふ‥‥では、その身を以って知るがよい! ほあた!」

貴音「いたっ」

亜美「お姫ちんの命は、この指を抜いてから3秒後まで‥‥」

貴音「なんと!?」

やよい「た、貴音さん! 亜美、なんて事するの!」

亜美「てぃっ!」ズボッ

貴音「あ、ああああ‥‥」

やよい「貴音さん! 貴音さーん!」

亜美「‥‥それにしても、ご飯の途中でアイスが食べられるなんて、自由極まりないよね」

やよい「うん。家だったら、ぜーったい叱られるよね」

貴音「ああ‥‥振り返れば、短い人生でした‥‥私はまだ、何も成し遂げていないというのに‥‥」

亜美「‥‥お姫ちーん。もう、40秒くらい経ってるよー。いつまでやってるのー?」

やよい「もう、亜美! せっかく付き合ってくれてるのに、そんな言い方したらダメだよ」

貴音「え?‥‥え?」

亜美「え? お姫ちん‥‥まさか本気で」

貴音「‥‥な、何を言っているのですか亜美。そんなわけはないでしょう? 私とて、そのくらいの常識は弁えておりますとも」

亜美「あ」

やよい「はい」

貴音「‥‥二人共、いけずです」

亜美「でも、お姫ちんて案外怖がりだよねー」

貴音「そ、そんな事はありません」

亜美「ほんとー?‥‥これは、いおりんに聞いた話なんだけどさ」

やよい「え?」

貴音「あ、亜美‥‥?」

亜美「この話に出てくるのは、女の子‥‥それも、今の亜美達と同じく、3人の女の子なんだ。でさ、その状況も似てて、友達同士で、キャンプ場に来てる時の話なんだよね」

やよい「3人でキャンプ場‥‥」

貴音「う、うう‥‥」




亜美「‥‥でね? 今までの騒ぎが嘘だったみたいに、周りはシーンと静まり返ってる‥‥」

やよい「ごくり‥‥」

貴音「‥‥‥‥」

亜美「なんだったんだろう‥‥その子が、顔を上げた。その瞬間、背後から」

冬馬「おい」

亜美「ぴゃあああああ!」

やよい「わあああああああ!」

貴音「ああああああ!」

冬馬「うわっ!? な、なんだよ! ビックリすんじゃねえか!」

亜美「あ、あまとう!? もう! タイミング悪すぎっしょー!」

やよい「うう‥‥心臓が飛び出るかと思いましたぁ‥‥」

貴音「ぜえ、はあ‥‥ぜえ、はあ‥‥」

やよい「た、貴音さん!? 大丈夫ですか!?」

貴音「や、やよい‥‥申し訳ありませんが‥‥水を‥‥」

冬馬「な、なんだか知らねえけど‥‥悪かったな‥‥」

亜美「で、どしたの?」

冬馬「いや、俺ら帰るからよ。一応、礼言っとこうと思って」

亜美「え、もう帰るの? まだこんな時間だよ?」

北斗「明日、地方で営業なんだよ。で、今夜中に移動しなきゃならないってわけなのさ」

やよい「そうなんですか!? 頑張ってくださいね!」

翔太「そっちもね。忙しいんでしょ?」

冬馬「俺達が追いつくまで‥‥その位置から落っこちるんじゃねえぞ」

亜美「んっふっふー。落っこちるどころか、トップまで上りきっちゃってるかもねー」

貴音「ふふ‥‥出来る事なら、頂上決戦といきたいところですね」

やよい「あ、もう大丈夫なんですか?」

冬馬「ふん、言うじゃねえか。それじゃあな」

やよい「はい! 今日は色々ありがとうございましたー!」

冬馬「‥‥そうだ。一つ忠告しておいてやる。ここ‥‥マジで出るらしいから、気をつけろよな」

貴音「」

北斗「じゃあエンジェルちゃん達。チャ」

貴音「嘘です! 嘘だと言ってください、天ヶ瀬冬馬!」

冬馬「わああ! なんだよ! お前の方がこええよ! 嘘だよ! 冗談だっての!」

北斗「オ☆」

翔太「早く行こうよー」





貴音「ふう‥‥私とした事が、少々取り乱してしまいました」

亜美「完全に引かれてたよね」

貴音「不覚です‥‥」

やよい「た、貴音さん! いーっぱい食べて、元気出しましょう!」

亜美「そうそう。おっ、このホルモンなんぞ、いい焼き加減ですぜー」

貴音「そ、そうですね。頂きましょう」

亜美「ホルモンってさ、焼いても美味しいけど、汁物がまた美味しいよね」

やよい「うん! 昔っから、お肉屋さんが特売の時に、お母さんが作ってくれてたんだー」

貴音「なるほど。やよいの料理上手は、お母上譲りのものなのですね」

やよい「えへへ‥‥でも、私はどんどん料理が下手になっちゃうかもです」

貴音「はて。それはまたどうして」

やよい「最近は私のお仕事も増えたし、お父さんもいい仕事が見付かったから、お母さんが家にいて、ご飯作ってくれる事が多くなったんです!」

亜美「へえ。よかったじゃん!」

貴音「それも、やよいがよく頑張ったからでしょう」

やよい「えへへ‥‥」

亜美「じゃあこれからは、今までよりやよいっちを遊びに誘っても大丈夫そうだね!」

やよい「うん! 今日も、家の事は気にしないで楽しんでおいでーって!」

貴音「では、やよいが精一杯楽しめるようにしなければなりませんね。さあ、やよい」

やよい「へ? あ、あーん‥‥んー、おいひいれすぅ!」

亜美「あ、ずるーい! お姫ちん、亜美も亜美もー」

貴音「ふふ、しょうがありませんね。どうぞ」

亜美「あむっ! んふふー」

貴音「何やら、親鳥にでもなった気分ですね」

亜美「いけないわ! ダメよ小鳥!」

貴音「‥‥そんなに大きな子は、遠慮したいところです」

やよい「貴音さん、お返しです。どうぞ!」

貴音「これは‥‥自分がされる立場だと、少し気恥ずかしくなりますね」

やよい「えへへ、貴音さんのお姉さんになった気分です!」

亜美「微笑ましいですなぁ‥‥あ、そうだ! そろそろ、これも焼こうよ!」

やよい「それは! 北海道江別市に本社がある、北海道を‥‥いや、日本を代表するブランド、トンデンファームの骨付きソーセージ!」

貴音「なんと! そーせーじの本場、ドイツにも認められた味でお馴染みのとんでんふぁーむ! その人気商品、べーこんもあるではないですか!」

亜美「行者にんにく、通称アイヌネギがふんだんに使用された嬉しい一品、ピルカウィンナーもあるよ!」

やよい「もしも北海道で仕事があったら、絶対に買って帰りたいお土産だね!」

貴音「最近は便利な世の中になったものでして、通信販売で手に入れる事も可能だそうですよ!」

亜美「さあ2人共! トンデンファームの大人気商品が焼けたよ!」

貴音やよい亜美「おいしい!」

真美「でさー、その時ちょうど千早お姉ちゃんが後ろに立ってて」

響「あははは」

千早「そんな事もあったかしら‥‥ところで真美」

真美「んー?」

千早「前から気になっていたのだけれど‥‥どうして、私はあだ名で呼ばないのかしら」

真美「え? 別に深い理由はないけど‥‥ただ、なんとなーく呼びにくい雰囲気が‥‥特に昔は」

千早「そう‥‥」

伊織「何? あんた、あだ名で呼ばれたいの?」

千早「そういうわけではないけれど‥‥ただ、もし私があだ名で呼ばれるとしたら、どうなるかは気になるかも知れないわ」

響「そんな気になる事かー? 結構単純だぞ」

真美「うん。多分、ちはやんとかそういう風に呼ぶんじゃないかな」

千早「ちはやん‥‥」

真美「ていうか、千早お姉ちゃんて、あだ名で呼ばれる事とかあるの?」

千早「そうね‥‥ああ、昔は呼ばれてたわ。小学校の低学年くらいに」

伊織「うっそ。なんか意外ね」

響「どんなどんな?」

千早「私、昔から声が大きめだったのよ」

真美「うん」

千早「それで、髪型も今とそう変わりなく、長かったの」

響「うん」

千早「その特徴を元に、ある日1人の男子が私をこう呼んだわ」

伊織「なんて?」

千早「ジェロニモ」

真美「ぷはははは!」

響「ひっどいな! よりにもよってアパッチ!」

伊織「ウララー!」

響「ゲーッ! ネプチューンマン!」

伊織「誰がよ! 張り倒すわよ!」

千早「これが噂のマスク狩り予告ね」

伊織「きーっ!」

響「まずい! このままじゃ体からアイアンスエットが出始めるぞ!」

伊織「ところで、小学生の頃と言えば」

響「うん」

伊織「皆の学校って、7不思議とか都市伝説とかあった? 今通ってるとこでもいいけど」

真美「いおりん、そういうの本当好きだよねー。真美の学校は、夜になると血だらけの看護婦さんが追いかけてくるってのがあるよ。学校なのに」

響「あー、あるある。謎だよね。自分が行ってる学校は、7不思議あるみたいだぞ。で、7つ全部知るとヤバイ事が起きるんだって」

伊織「例えば?」

響「えーっとね、校門の辺りを、人がウロウロしてるんだって。それで、近付いてみたら、胸の大きな女の人で‥‥「あの~、ここはどこでしょうか~?」って」

伊織「あずさじゃないの!」

響「あはは。変わったところで言うと‥‥夜中に学校に忍び込んで、遊んでたグループがいたんだって。ちょっと不良みたいな」

千早「え、話し出すの? ちょっと、やめてよ」

伊織「いいじゃない。聞きましょうよ」

響「いざ忍び込んだはいいけど、別に変わった物があるわけでもなく、つまらなかったらしいんだよね」

真美「うん」

響「それで、メンバーの1人が、せっかく上手く入れたんだし、このまま帰るのは勿体無い。かくれんぼでもしようぜ、って言い出したらしいんさ」

千早「‥‥‥‥」

響「で、みんな賛成してね。鬼を決めて、校内に散らばったんだ。でも、みんないい歳だし、そんなに真剣に隠れるわけじゃなくて‥‥結構あっさり見付かっていったんだって。で、10分か15分か‥‥そのくらいで、ほとんどのメンバーが見付かって、全員で残る1人を探し始めたんだ。
 でも、その1人だけがどうしても見付からない。30分もしたら、もうみんな面倒くさくなっちゃって、大きい声で「もう終わりでいいから出てこいよー」って呼びかけ始めたらしいんだ。けど、そのタイミングで、誰かが気付いたんだ」

真美「‥‥何に?」

響「俺達‥‥誰を探してるんだ? って」

千早「へ‥‥?」

響「そのグループは、いつも6人で行動してて、その日も6人で学校に忍び込んでたんだ。でも今この場に‥‥残る1人を探してる筈のこの場に、6人全員いるんだって」

千早「!!」

響「それで、皆不思議に思ってさ。不思議にっていうか、気味が悪くなっちゃって。そうだよね。全員が全員、後1人いると何の疑いもなく思ってたんだから。で、もう帰ろうかって話してたらね‥‥廊下の奥、曲がり角の先から「終わったの~? 今行くよ~」って」

千早「っ‥‥!」

伊織「千早、痛い。腕が折れるわ」

響「で、全員窓から飛び出して、脱兎の如く逃げ出しましたとさ、って話。一説によると、その後も同じ事をして、同じ目に遭ってる人が何人もいるとか、それに捕まると帰ってこれないだとか、色々付け足しっぽく言われてるぞ。だから、最初がどんな話だったのかはわからないんだよね」

伊織「ふーん。気持ち悪くはあるわね。あと痛い。千早。痛い」

千早「あっ、ご、ごめんなさい」

真美「千早お姉ちゃんは何か‥‥あっても、知らなさそうだね」

千早「し、知ってるわよ。私だって怪談の1つや2つくらいは」

響「いや、別にそこはむきにならなくても」

伊織「まあいいわ。話してみなさいよ」

千早「この話は、そう‥‥ちょっと待ってね。思い出すから」

響「あ、これ多分、今作ってるぞ」

真美「もう、ルール無用じゃん」

千早「出来たわ」

響「あ、出来たわって言ったぞ。完全に今作ったぞ」

千早「間違えたわ。思い出したの」

伊織「どっちでもいいわよ」

千早「この話は、私の通っていた小学校にあった話よ。下校の時刻になると、校門のところに、1人のお爺さんが立っている事があるの。少なくとも、ここまでは噂ではなくて本当。私も見た事があるわ」

伊織「へえ、ちょっとリアルね」

千早「そのお爺さんは、いつも少し俯き気味に立っているの。生徒の中には、挨拶をする子もいたんだそうだけど、それにも全く反応を見せなかったらしいわ。私は、なんだか気味が悪くて声をかけられなかったけど」

真美「うんうん」

千早「それで、ここからが噂の域ね。小学校の頃って、割と全員の帰る時間が決まっているでしょう? 居残りや部活の自主練も少ないし。けど、たまにはその集団に乗り遅れて、1人で学校を出る子もいる。そういうタイミングでお爺さんを見つけると‥‥顔を上げている事があるそうなのよ」

響「うん」

千早「ここまでは、まだセーフ。問題は、目が合ってしまった時。お爺さんと目が合うと、追いかけてくるんですって」

真美「おっ」

千早「けれど‥‥こう言い方はよくないのかも知れないけど、相手はヨボヨボで、低学年の子でも余裕で逃げ切れるそうなの。ただし、慌てて転んでしまったり、うっかり行き止まりに逃げ込んでしまったりで‥‥追い付かれてしまうとね」

伊織「‥‥どうなるの?」

千早「‥‥顔に思い切り膝を叩き込まれるんですって」

響「‥‥はぁー?」

千早「これが私の学校にあった都市伝説。通称、顔面膝蹴りジジイという‥‥」

真美「怖くない! ラストでいきなり怖くなくなったよー!」

響「いやまあ、別の意味では怖いけど! そういう物理的な怖さは求めてないさー!」

千早「この話が私の作り話かどうか‥‥信じるか信じないかは、あなた次第です」

真美「そのセリフ、そういう使い方じゃないよ!」

伊織「ったく、しょうもないわね。私がお手本を聞かせてあげるわ」

響「お、真打登場」

真美「待ってました!」

伊織「この話は、とある学校に通う、高校生の話でね。その子は‥‥仮にAさんとしておきましょうか。Aさんは、高校生ながら、1人暮らしをしていた。自分で言い出した事だから、仕送りも期待できない。それでAさん、働きながら学校に通ってたんですって」

千早「‥‥‥‥」

伊織「学校や仕事で、家にはほとんど、寝に帰るだけみたいな状況になっていたそうよ。その日もAさんは、疲れて夜遅くに帰宅した。Aさんの部屋は、マンションの角部屋でね。‥‥そう、ちょうど、この部屋みたいにね」

千早「ちょ、ちょっと‥‥」

伊織「それで、このAさん、ある時部屋に入ったらね、妙~に違和感があったんですって。なんだか、自分は今帰って来たのに、ちょっと前まで誰かが部屋にいたような‥‥そんな違和感。

 けれどAさん、疲れててね、お風呂に入ってベッドに潜る頃には、すっかり忘れちゃって。でも、その後も、家に帰るとなんだか嫌な気分になって、けれど、寝る頃には気にならなくなる。そういう生活が続いてた。

 そんなある日、Aさんは職場の都合でね。普段は働きに出ている日に、休みを貰える事になったの。Aさん、これはチャンスって事でね、家にこもって、溜まっていた洗濯物を片付けたり、読みたかった本を読んだり‥‥久しぶりの休みを満喫していた。

 そんなこんなしている内に、段々と日も傾いてきてね、そろそろご飯でもーなんて考えてたら、玄関から物音がする。なんだろう、宅配便か何かかしら。そう思って、Aさん、玄関に向かったんですって。

 Aさんっていうのは、昔からの癖でね、家にいる時には、必ず鍵の他に、チェーンロックもかけていた。その日も、しっかりチェーンがかけてあってね。

 で、やっぱり自分の部屋のドアから音がするってんで、これはもう、届け物だろうって思って。チェーンを外そうとした。次の瞬間。

 ガチャガチャ、ガチャガチャガチャ‥‥カチッ‥‥Aさんの目の前で、鍵が開いたんですって。

 Aさん、もうビックリしちゃって。誰にも、家族にだって、合鍵なんて渡してない。そのままの体勢でもってジーッと固まってたら、キィーイ‥‥ドアが、ゆっくり開いていく。Aさんはまだ動けない。視線はドアに向いたまま。だまーって見てたら、ガチン! チェーンが伸び切って、ドアが止まった。

 次の瞬間。開いたドアの隙間から見知らぬ女の顔がグッ! と覗き込んで。

 「なんで、もう家にいるの?」

 Aさん、そこから先の記憶が無いんですって。目が覚めたら、もう次の日になってて、慌てて警察と管理人に電話してね。すぐに引っ越したそうよ.

 伊織ちゃん、こういう事ってあるんだよねぇって、Aさん、言ってたわねぇ‥‥」

響「気持ちわる‥‥」

伊織「‥‥ねえ千早。あなた、家に帰ってきて、変な気分になった事はない? 今って、あなたが普段仕事に行ってる時間よね? あと‥‥私達がここに来た時、チェーンロックって、かけたかしら?」

千早「っ!」ガタッ

バタバタバタ ガタン ガチャガチャ

響「なあ伊織ー。今の話って、本当?」

伊織「まさか。別の話を、千早用にアレンジしたのよ」

真美「だよねー」

千早「はあ、はあ‥‥」

伊織「おかえり」

響「あれ? 千早、一緒に入ってきた人、誰だ? 知り合い?」

千早「~~~~~っ!?」グルン

響「なんつって。‥‥痛い痛い! 千早! ごめん! ごめんって!」

千早「もう! もう!」ポカポカ

真美「‥‥‥‥」

伊織「何してるの?」

真美「ムービー」

伊織「あら、いいわね。私にも送っといてちょうだい」

千早「真美!」

真美「わあ! メイデイ! メイデイ! 敵に捕捉された! 戦線を離脱する!」バタバタバタ

千早「待ちなさい!」ドタドタドタ

伊織「よしなさいよ2人とも。あっ! 千早の後ろに霊が!」

千早「もう引っかからないわよ! それに元はと言えば水瀬さんが!」

響「落ち着けジェロニモ! そんな事じゃ自分のタッグパートナー失格だぞ!」

千早「なんでタッグ‥‥沖縄出身なだけにアメリカ代表のテリーマン!? わかりにくいわよ!」

ワーワーワー ギャーギャーギャー

隣人「」ドン!

4人「あっ‥‥」

美希「雪歩雪歩ー、これなんてどうかな?」

雪歩「うーん‥‥それだったら、思い切ってこっちと合わせてみたらどうかな?」

美希「あ! その発想は無かったの! じゃあじゃあ、これをこうしてー」

雪歩「涼しい日には、これなんて羽織ると美希ちゃんに似合うかも‥‥」

美希「あはっ! 冴えてるの! あ、この色は雪歩に合いそう。色違いでオソロにしようよ!」

雪歩「え? そ、そうかな‥‥似合う?」

美希「ばっちりなの!」

キャッキャ キャッキャ

小鳥「この光景は、普段頑張っているしがない事務員に神が与えたもうたご褒美であらせられるか」

あずさ「音無さんは、何か買わないんですか? このお店、結構なんでも揃ってるみたいですよ~」

小鳥「うーん‥‥でも私、今シーズンは去年買った夏物で済まそうかなーなんて‥‥」

美希「そんなんじゃダメなの!」

小鳥「み、美希ちゃん?」

美希「お姉ちゃんは言っていた‥‥お洒落に興味を無くした女の子は、老けちゃうの!」

小鳥「ごふう!」グサッ

雪歩「み、美希ちゃん!」

美希「え? あ、ち、違うの! 違う違う違う! そういうんじゃないの! ていうかむしろ逆なの! 老けちゃうって事は今はまだ老けてないって事なわけだから、全然そういうんじゃないの!」

小鳥「な、なんだかよくわからないけど、何となくわかったわ‥‥」

美希「ほっ‥‥」

小鳥「喧嘩ね? 私と喧嘩する気ね?」

美希「ちーがーうーのぉー!」

小鳥雪歩あずさ(あ、かわいい)

美希「と、いうわけで! こっちに来るの!」ガシッ

小鳥「え? あ、ちょっと美希ちゃ‥‥あーれー」ズルズルズル

あずさ「‥‥あ、雪歩ちゃん。これ、何にでも合いそうねえ」

雪歩「あ、本当ですね」

小鳥「うう‥‥明日から節約しなくちゃ‥‥」

美希「元気出すの。絶っ対いい買い物だったって思うな!」

小鳥「そうね‥‥まあ考えてみたら、最近忙しくてお金を使う時間もなかったし‥‥たまには贅沢しちゃっていいのかも」

雪歩「ねえ美希ちゃん、この後はどうするの? どこか行きたいお店とか‥‥」

美希「うーん、服も靴も見たし、ミキの行きたかったところは全部周ったかな」

雪歩「そっか。私も、こんなものかな‥‥あずささんと音無さんは‥‥」

あずさ「私も、もう大満足よ~」

小鳥「同じく」

美希「じゃあ、そろそろどこかに晩ご飯行く?」

雪歩「あっ、でも2人は、お酒を飲みに行く約束だったんですよね?」

あずさ「そうだけど‥‥でも‥‥」

小鳥「ねえ‥‥? うん。今日は、このまま最後まで付き合っちゃうわ。今更分かれるのも寂しいし」

美希「え? 別に、お酒の飲めるところに皆で行けばいいって思うな。そういうところって、ご飯も食べられるんでしょ? ゴローさんのドラマでやってたの」

雪歩「そうだね! 今日は私達にずっと付き合ってもらったし、次は私達が合わせますぅ」

あずさ「ええ?」

小鳥「けど、やっぱりそういうお店より、もっとお洒落な食べ物が出てくるところの方が‥‥」

美希「‥‥雪歩雪歩」ヒソ

雪歩「なぁに?」ヒソヒソ

美希「このままじゃ、へーこーせんなの。ここは1つ‥‥」ヒソヒソ

雪歩「うん‥‥うん‥‥うん、わかった」ヒソヒソ

小鳥「2人とも、どうしたの?」

美希「古今東西、おつまみ! 枝豆!」

あずさ「え?」

雪歩「お、お刺身!」

小鳥「な、何? どうしたの、急に」

美希「生牡蠣!」

小鳥「ちょっと美希ちゃん‥‥牡蠣かあ、最近食べてないなあ‥‥こう、ちょっとポン酢を垂らして、日本酒できゅっと‥‥はっ!」

雪歩「焼き鳥!」

あずさ「ゆ、雪歩ちゃん?‥‥焼き立てだと、格別に美味しいのよねぇ。なんにでも合うけれど、やっぱりよく冷えたビールかしら‥‥って、あ、あら」

美希「たこわさ」

雪歩「砂肝」

美希「さえずり」

雪歩「たちポン」

小鳥「あーん! もうやめてえ!」

あずさ「ひどいわひどいわ~!」

美希「その様子じゃ、どこでご飯食べても結局お酒頼んじゃいそうだし、だったら最初から好きなお店に行った方がいいと思うけどな~」

雪歩「それにお父さんが、美味しいおつまみは、おかずとして食べても美味しいのが多いって言ってましたぁ」

小鳥「うー‥‥あずささん?」

あずさ「そうですね‥‥ここはお言葉に甘えちゃって‥‥」


小鳥「結局、未成年を居酒屋に連れ込んでしまったわ‥‥」

美希「大丈夫大丈夫! 小学生がいる家族連れとかも来てるみたいだし」

雪歩「そうだね。そういえば、キッズメニューなんかもあるみたい」

あずさ「うーん‥‥たしかに、別に悪い事をしてるわけではないけど‥‥」

美希「ミキ、こういう店初めてかも! 前に小鳥が歌ってた店もオトナーって感じだったけど、こういう雰囲気もオトナっぽいの」

おっさんA「大体な! 俺は昔から専務のやり方は気にいらなかったんだよ!」

おっさんB「わかる! わかるよ! 飲め! まあ飲め! な!」

美希「おお‥‥」キラキラ

小鳥「いや、美希ちゃん? 世の中には、見本にしない方がいい大人もたくさんいるのよ?」

店員「お飲み物お先お伺いしゃす!」

美希「とりあえず生4つで!」

小鳥「美希ちゃん!?」

美希「えへへ、言ってみたかっただけなの。ミキ、パインジュースにでも‥‥あ! ねえねえ! これって、ミキが飲んでも平気?」

小鳥「ん? ああ、ノンアルコールビールね。最近流行ってるわよねえ。大丈夫よ」

美希「じゃあ、これにするの! ふふふ、今日は、大人の階段を駆け上ってるの。雪歩は?」

雪歩「うーん‥‥じゃあ、私も挑戦してみようかな‥‥」

小鳥「私は‥‥いいの? 本当にいいのね?‥‥中ジョッキで!」

あずさ「私もそれでお願いします」

店員「ありゃとざぃやす! すぐにお持ちしゃす!」

美希「ふーん‥‥結構たくさんメニューがあるんだね」

雪歩「デザートもたくさんあるね。あ、パフェなんかもあるんだ」

小鳥「飲み物が来る前に、いくつか頼む物を決めちゃいましょうか」

美希「うん! あ、おにぎりがあるの!」

雪歩「種類もたくさんあるみたいだね」

美希「ここは悩みどころなの‥‥焼きおにぎりは外せないとして‥‥」

雪歩「私もおにぎり食べようかなぁ」

あずさ「おつまみはどうしましょうか?」

小鳥「うーん‥‥とりあえず串物を多めと、さっきの古今東西に出てきた中からいくつか‥‥」

店員「お待たせしゃあしたー! お飲み物お持ちしやした! ご注文お伺いしやーす!‥‥はい! 少々お待ちください!」

小鳥「では‥‥えっと、3人とも、いつもアイドル活動お疲れ様です!」

あずさ「音無さんも、いつもありがとうございます~」

美希「お世話になってまーす!」

雪歩「今日も、付き合ってもらってありがとうございましたぁ」

4人「かんぱーい!」

小鳥「んぐ、んっ、んっ‥‥くはーっ! んまーい‥‥」

あずさ「これだけで、夏が何倍も楽しめる気がしちゃうわ~」

美希「‥‥うええ! に、苦いのー!」

雪歩「本当だ‥‥でも、私は大丈夫かも」

美希「うう、大人の階段は、ミキにはまだ高かったの‥‥今日のところは、大人しくジュースで我慢しておこうっと」

店員「お待たせいたしやした!」

美希「あ! おにぎり! はむっ‥‥むむ、この塩加減に握りの力加減‥‥なかなか侮れないの」

雪歩「なんでもそうだけど、初めてタコとか食べた人って、偉いと思うなぁ‥‥」

小鳥「あ! すみませーん! えーと‥‥男山を冷やでお願いします」

あずさ「あ、私も中ジョッキをお代わりで~」

美希「雪歩、今食べてるおにぎり、具は何?」

雪歩「岩のりだよ。一口食べる?」

美希「いいの? わーい!」

ワイワイガヤガヤ

小鳥「でも、こうやって皆でご飯に来れるとは思わなかったわぁ。事務所の全員で打ち上げ、とかならともかく、オフの日に」

雪歩「そうですよね‥‥そもそも私達のお休みが合う事も多くないですし、音無さんは私達以上にお休みが少ないですし‥‥」

あずさ「律子さんやプロデューサーさんが私達に付いて出ている時は、事務仕事を全部やってくださってるんですものねぇ」

美希「人ってもっと増やせないの? アイドルと事務員のバランスがおかしいって、ミキでもわかるの」

小鳥「うーん‥‥社長の直感に訴えかける人がいないと、難しいわねぇ」

雪歩「ひょっとして、ピーンっていう、アレですか?」

美希「あ、雪歩も言われたの? ピーンときた!」

あずさ「私も言われたわ~」

小鳥「で、その結果が今の大成功でしょう? やっぱり、人を見る目というか、何か特別なものがあるのよ。きっと」

あずさ「そういえば、私ちょっと驚いちゃいました。社長があんなに仕事の出来る方だったなんて」

小鳥「私もちょっと驚きました。まさか、3人でどうにかこなせる仕事を‥‥」

美希「まだ頑張ってるのかな?」

あずさ「律子さんが言うには、昨日の驚異的なペースで続けたとしても、今日の夜まではかかる計算だって‥‥」

雪歩「ちゃんと、ご飯とか食べてるんでしょうか‥‥」

4人「‥‥‥‥」

真「そのままそのまま!‥‥よーし!」

春香「わっ! すごーい! これで5連続ストライクだよ!」

律子「あら? また今日の記録更新じゃない」

真「本当!? へへっ、やーりぃ!」

春香「真って、スポーツならなんでも得意なんだね」

真「まあ、大体はね! ねえねえ、もう1ゲームやろうよ!」

律子「またあ!? あんた、元気ねー。今日はお昼を食べた後に、牧場行ってトリックアート展行って水族館行って‥‥それでも遊び足りないからって、複合レジャー施設に来て‥‥」

春香「体力、少し分けてほしいよ」

真「えー? 律子はともかく、春香まで? レッスン不足なんじゃないのー?」

律子「あら、それは聞き捨てなら無いわね。そうなの?」

春香「うええ!? あ、天海春香、まだまだ元気です!」

真「でしょ? じゃあ平気だよね!」

律子「あ、しまった」

春香「律子さーん‥‥」

真「まあまあ」

春香「せめて、他の遊びにしようよ」

真「え~?」

律子「そうね。せっかく色々あるところに来たんだし」

真「しょうがないなあ‥‥じゃあ、何する?」

春香「うーん‥‥あ、なんだろう、これ」

真「ゴルゴ13? へー、こういうのもあるんだ。律子、やってみてよ」

律子「なんで私?」

真「だって律子、元殺し屋だったんでしょ?」

律子「あー‥‥言っとくけど、それ選んだら5人ライブに私呼べなくなるわよ」

春香「へ?」

律子「こっちの話。ま、いいわ。えーと‥‥」チャリン

春香「そういえば、私ゴルゴって読んだ事ないなあ」

真「僕も。ラーメン屋さんとかによく置いてあるけど」

春香「でも、ゲームになるって事は人気あるんだよね?」

律子「ゴルゴのゲームといえば、あれよね。ファミコンの」

真「飛び蹴りで戦うやつ?」

律子「そうそう。地下迷路で詰まって‥‥あ、始まったわ。‥‥あ、あら? 敵はどこに‥‥」

春香「律子さん! 制限時間が!」

律子「え? え? 全然見付からない!」

真「いた! 律子! 左左!」

律子「左!? あ、やっと見付け‥‥」

春香「あ」

真「ゲームオーバー‥‥」

春香「一発も撃たずに‥‥」

律子「‥‥次、何しましょうか」

真「あ。あれなんだろう。でっかい機械」

春香「ガンダムのゲームみたい」

律子「男の人って好きよねー。ああいうの」

真「そうだ。ねえねえ、プリクラ撮ろうよ」

春香「あ、いいかも」

律子「今って、物凄く進化してるんですってね」

真「うん。画像を編集して、ちょっとしたプチ整形みたいな事も出来たり」

律子「へえ。で、どれで撮るの?」

春香「置いてある場所的に、これが最新機種ですかね?」

真「じゃあ、これでいいんじゃない? さ、入って入って」

律子「フレームを選んでください、ですって。どうする?」

真「こういう時は‥‥とりゃー!」バシバシバシバシ

春香「運任せ?」

真「これだ! てい!」

律子「‥‥ぶふっ!」

春香「無地! よりにもよって!」

真「えー!?‥‥ま、まあ仕方ないか‥‥」

律子「けど、アイドルが2人もいれば、下手なフレームより華はあるんじゃない?」

春香「あ、これなんだろう。目のサイズを‥‥わっ!」

真「あははは! きもちわるー!」

律子「妖怪だわ、妖怪!」

春香「じゃあ、目はこのままで光を調整、色はセピアに‥‥」

真「こわっ!」

律子「玄関開けてこんなのが立ってたら、気絶するわね」

春香「こ、これで1枚撮る?」

真「事務所のさ、戸棚の裏とかに貼っとこうよ」

律子「何かの呪い?」

春香「はい、笑って笑ってー」

律子「くふっ‥‥わ、笑うと更に不気味ね」

真「あ、撮れた。じゃあ、次はペンでー‥‥」

春香「何て書いてるの?」

律子「ええと?「こんや、あなたのいえにいきます」? こっわい!」

真「よし、じゃあ次は普通に撮ろうか」

春香「うん。あ、律子さん、真ん中に」

律子「ええ?」

真「ほらほら」

律子「ちょ、ちょっと、近い近い」

春香「えへへ、いい感じですね。‥‥あれ、真。何か書くの?」

律子「まーた変な事書くんでしょ」

真「違うよー。今日の日付と、ちょっと一言でも‥‥ほら、2人も書いて」

春香「あ、それならいいかも。えっと‥‥はい、次どうぞ」

律子「んー‥‥こんな感じかしら」

真「じゃ、これも印刷、と」

律子「印刷できたら、そろそろ出ましょうか。割といい時間よ」

真「うーん、そうだね。プリクラ撮れたから、もう満足かな」

春香「夕飯、どうします?」

律子「夕飯って言っても、途中途中に色々買い食いしたし‥‥それほどお腹空いてないのよね」

真「峠で食べたおイモ、美味しかったよねー」

律子「私は、復活してそうそうジャガイモ2つも平らげるあんたに愕然としたけどね」

春香「あ、夕飯とは関係ないけど、駅前に新しいケーキ屋さんオープンしたんですって。美味しいらしいですよ」

律子「ケーキ? じゃあ、ちょっと寄ってみましょうか」

真「あ、写真できたみたい」

律子「それじゃ、移動するわよー」

春香「はーい」





真「ねえ律子」

律子「何ー?」

真「今日って、楽しかった?」

律子「へ? いきなり何よ」

真「んー、結構色々連れ回しちゃってさ、逆に疲れてたりしないかなって」

春香「運転までさせちゃって‥‥」

律子「そうねえ‥‥たしかに、体力的には少し疲れたかもね」

春香「うう‥‥すみません」

律子「けど、精神的には十分な休息になったわ。私、ただゴロゴロしてるより、何かしてる方が性に合ってるみたいね」

真「本当? へへっ」

律子「あなた達こそ、よかったの? 折角の休みを、人のために過ごして」

春香「えっ?」

真「やっぱり、あの時の話全部聞いてたの?」

律子「聞かなくてもわかるわよ。ったく、お人よしなんだから‥‥ごめんなさいね?」

春香「ええ!? な、なんで謝るんですか! 確かに誘った理由はありましたけど、それとは関係なく、今日1日楽しかったですよ!」

真「そうだよ。それに、律子が竜宮小町をプロデュースし始めてから、なんとなーく距離があったっていうかさ‥‥だから、今日一緒に遊べて、嬉しかったよ」

律子「そ、そう? それならいいんだけど‥‥なんか、こっぱずかしいわね」

真「次もさ、こういう日があったら一緒に遊ぼうよ」

春香「あ、それいいかも。うーん、待ち遠しいなあ」

律子「そうねえ‥‥これからは、もう少し計画的に、無理の無いスケジュールを立てないとね。社長にも迷惑をかけちゃったわ」

春香「‥‥社長、大丈夫ですかね」

真「どうする? 事務所行ったら、こう‥‥泣きながら仕事してるの」

春香「や、やめてよ‥‥」

律子「‥‥あ、春香の言ってた店、ここ?」

春香「あ、はい。そうです!」




店員「いらっしゃいませ~」

真「なんか、可愛い店だね」

律子「春香の作ってくるのも美味しいけど、やっぱりプロが作ると見た目が違うわよねぇ」

春香「ですよね。これなんか、すごく綺麗」

真「どうしようかなあ。うーん‥‥」

律子「こういう時って、幸せな悩みよね‥‥」

春香「どれも美味しそう‥‥あ、そうだ」

春香「あの」真「あのさ」律子「ねえ」

律子「え? 2人とも、どうしたのよ」

春香「えっと‥‥この後、寄って欲しい場所があるんですけど」

真「あれ? 僕も今、そう言おうと思ってたんだ」

律子「‥‥ふふっ、なーに? 気持ち悪いわねえ。3人が3人、同じ事考えてるなんて」

春香「律子さんも? えへへ‥‥」

真「それじゃ、行き先もきっと同じだね」

律子「そうね。あ、すみません。これと」

春香「こっちと」

真「これを」

春香真律子「ホールでください」

やよい「えー? 亜美、そんな事したらダメだよー」

亜美「もう時効っしょー」

貴音「ふふ‥‥たしかに、今更咎める事はできないかも知れませんね」

亜美「でしょでしょー? って、うわっ。喋ってたら、なんか周り暗くなってきてるよ」

やよい「はわっ! 本当だ!」

貴音「秋の日は釣瓶落とし、などという言葉もありますが、友人との語らいの中で過ぎ去る時の早さは、その非ではありませんね」

亜美「お姫ちん、何か今の、落語の出だしみたいだったね」

貴音「はて、そうでしたか? 私としては、割といい事を言ったと思ったのですが。つい、どや顔なるものをしたくなる程度に」

やよい「どやがお、って、なんですかー?」

亜美「ドヤ顔は‥‥なんていうんだろ。得意気な顔?」

貴音「そうですね‥‥勝ち誇った顔、とも言えますか」

やよい「ちょっと亜美、やってみてよ」

亜美「え、何その無茶振り。まあいいけど」ドヤッ

やよい「ああ! そういう顔の事を言うんだ!」

亜美「ひびきんとか、結構やるよね」

やよい「ねえねえ、こんな感じかな!」クイッ

貴音「ふくっ‥‥!」

亜美「や、やよいっち! それじゃドヤ顔じゃなくて、ジャック・ニコルソンだよ!」

やよい「じゃっく‥‥? よくわかんないけど、なんだか難しいかなーって」

貴音「そうですね‥‥ではやよい。両手を腰に置いて「えっへん!」と言ってみてください」

やよい「はい! いきますよー‥‥えっへん!」キリッ

貴音「かわいい」

亜美「こりゃかわいい」

やよい「どうでしたか!? どや顔、できてました!?」

貴音「出来ていたかどうかはともかく、非常に愛らしい姿を見る事が出来ました。満点です」

やよい「満点ですか!? うっうー! 私、学校のテストでも満点ってなかなか取れないから、すっごく嬉しいかも! ありがとうございまーっす!」

亜美「あーっと、これは疑惑の審査です。審査員が買収されている可能性がありますねー」

貴音「はて。では、亜美が審査をやり直しますか?」

亜美「ふふふーん。この辛口審査員、亜美の厳しい目にかかれば‥‥ふむ、ふむふむ‥‥満点です!」グッ

貴音「そうですか」グッ

やよい「???」

貴音「‥‥っと、そうこうしている間に、ますます日が傾いてきましたね」

亜美「日の落ちた人気の無いキャンプ場‥‥そこにいる3人の美少女‥‥何やら、怪事件の匂いがしますなあ」

貴音「あ、亜美。およしなさい。不吉な事を言うものではありませんよ」

亜美「おわかりになっただろうか‥‥彼女達の背後に佇む、もう1人の少女の姿が‥‥」

貴音「!?」ビクッ

やよい「わあ! 今の貴音さん、かわいかったです! 満点ですー!」グッ

貴音「え? い、いや、今のはその‥‥違‥‥あ、ありがとうございます‥‥」

亜美「また1つ、隠れた魅力を引き出してしまった‥‥自分の才能がこわいぜぃ」

貴音「ただ面白がっているだけでしょう」

亜美「えへっ」テヘペロ

やよい「えへへ、なんだか今日は、貴音さんといーっぱいお喋りできて、楽しかったですー!」

貴音「そうですね‥‥考えてみれば、やよいとは同じ番組の収録に呼ばれる事も少なく、事務所でも、ここまで話す事はなかったかも知れません」

亜美「亜美とやよいっちはよく話すし、亜美とお姫ちんも結構話すのに、なんだか不思議だね」

貴音「ですが、今日のようにこうして居心地のいい空間が作れるという事は、やはり芯の部分では深く繋がっていると言えるのでしょう」

やよい「そういえば、お父さんが言ってました! 人間、1時間も一緒に過ごせば、誰とでも仲良くなれるもんだーって! って事は、今日は貴音さんと亜美と、もっともーっと仲良くなれたって事ですよね!」

亜美「ほうほう。やよいっちのポジティブさは、パパン譲りなんだね」

貴音「そうですね‥‥そして、私達はこれから先も、長きに渡って共に歩み続ける‥‥ふふっ、どれだけ仲良くなれるのか、楽しみで仕方がありませんね」

亜美「だね!」

やよい「はい!」

亜美「‥‥っと、こうしてなんとなーく締めくくろうとしてるし、さっきから誰も触れないけどさ」

貴音「はて」

亜美「これ、どうする?」

やよい「うう、お肉がこーんなに残ってます‥‥」

亜美「ちょっち持って来すぎたね。お姫ちん、食べれる?」

貴音「可能か不可能かで言えば、勿論可能ですが‥‥2人をよそに、延々と食べ続けるというのも、何か間違っている気がしますね」

亜美「うーん‥‥あ、やよいっち、持って帰る? 弟くん達にお土産」

やよい「うー、今日はみんなで、入場料を払えば牛の丸焼きが食べ放題のお祭りに行ってるから、ちょっと‥‥それにこのお肉、解凍されちゃってるから、あまり長持ちもさせられないし‥‥」

亜美「マジでか。これは痛恨のミスですなあ」

貴音「時間の問題もありますね。あまり遅くなってしまっては‥‥」

亜美「ちょっち物騒かもね。可憐な美女だけで帰るには」

貴音「それに‥‥も、物の怪が出ないとも限りません‥‥」

亜美「いや‥‥うん、まあいいけど。でも、困ったね」

やよい「捨てるなんて絶対ダメだし‥‥」

亜美「普段なら、何か余ったら事務所に持ってけば、誰かしらが食べてくれるんだけど‥‥あ」

貴音「あ」

やよい「そういえば‥‥」

亜美「そうだよ! 今日もいるじゃん!」

貴音「それに、あの様子ですと、何かを口にする余裕もないかも知れません」

やよい「で、でも、余った物を押し付けるみたいで、なんだか悪いかも」

亜美「ちっちっち‥‥甘いよやよいっち。これは、余り物なんかじゃないよ」

貴音「そうですよ、やよい」

亜美「これは、余ったんじゃなくて、取っておいたの!」

貴音「その通りです! 高木殿のために、わざと! あえて!」

やよい「そ、そうなんだ‥‥2人とも、偉いです! 私なんて、お喋りが楽しすぎて、頑張ってる社長の事、ちょっと忘れちゃってました‥‥うう、ごめんなさい社長‥‥」

亜美「‥‥お姫ちん」

貴音「なんでしょう」

亜美「良心の呵責って、こういう時に使うんだね」

貴音「ええ。真、絶妙な使い時ですね」

やよい「どうしたんですかー?」

貴音「いえ、なんでも」

亜美「じゃあ、パパッと焼いちゃおうか」

やよい「喜んでくれるかなぁ」

亜美「大丈夫だよ。「おお! 私は、バーベキューに目が無いのだよ! 毎週末は、マイホームに友人を招いてスペアリブを焼いているよ! HAHAHAHA!」なんて」

やよい「そうなの!?」

亜美「いや、多分やってないけど。なんとなく社長って、アメリカンな声してない?」

貴音「言われてみれば。娘が3人程いそうですね」

やよい「手にスペードの紋章がありそうかも!」

亜美「だよね。やはり只者ではないな‥‥っと、亜美、地下鉄の時間調べておくね」

やよい「うん。じゃあ私、お肉焼いてアルミに包んでおくね」

貴音「では私は、片付けをしておきましょう。ゴミは、指定の場所に纏めておけば回収してもらえるのでしたね」




亜美「切符買ってきたよーん」

やよい「ありがとう!」

貴音「ありがとうございます」

亜美「なんのなんn‥‥ん?」

やよい「どうしたの?」

亜美「ちょっとやよいっち、いい?」ギュッ

やよい「はわ!?」

亜美「むむ‥‥お姫ちんも」ギュッ

貴音「ど、どうしたのですか、亜美。こんな場所で‥‥」

亜美「‥‥肉くさー」

やよい「えっ!?」

貴音「なんと」

亜美「って事は亜美も‥‥」クンクン

貴音「まあ、ずっと煙を浴びていましたし、当然といえば当然ですが‥‥」

亜美「うあうあー! やっぱ肉の匂いが凄いよ! 年頃の乙女なのにー!」

やよい「そんなに?」クンクン

貴音「仕方がありません。他の乗客には迷惑をかけますが、事務所までなんとか‥‥」

亜美「これもう、周りに気付かれたらファンが減るレベルだよー」

満員電車「やあ」

女「あれ? あそこにいるのって、765プロの‥‥」

男「え? うわ、マジだ! ん? なんか、肉臭くねえ?」

亜美やよい貴音「」

響「千早ー。トイレの紙、無くなったから勝手に取り替えちゃったぞー」

千早「あら、ありがとう我那覇さん」

真美「いおりーん」

伊織「何ー?」

真美「今日、どんなパンツ履いてんのー?」

伊織「誰にも言わない?」

真美「言わなーい」

伊織「風神雷神」

真美「マジで。激シブ」

伊織「シルクの」

響「んふっ、流石セレブ。‥‥なんて会話してるんさ」

千早「人を招いておいて、こんな事言うのもあれだけど‥‥暇ね」

伊織「だって、怖い話しようとしたら千早が渋るじゃない」

真美「暇潰しの選択肢で怪談が出てくる時点で、結構末期だよね」

千早「‥‥私ね」

真美「お、千早お姉ちゃんが話題を提供してくれる」

響「否応にも期待が高まって参ります」

千早「そういうのやめて。で、私ね‥‥何か、口癖とかあった方がいいのかしらって最近思って」

伊織「はあ?」

真美「どゆこと?」

千早「何かこう、この言葉といえば私、みたいなのがあった方がいいのかしらって。アイドルとして」

響「アイドル関係あるの?」

伊織「ていうか、あんたもう、あるじゃない。「くっ」って」

真美「そうだよ。映画でも使われたくらいだし」

千早「でも、何だか分かりづらいじゃない。例えば我那覇さんだと、うぎゃー! とか、水瀬さんだと、きーっ! とか、真美だと、んっふっふーとか‥‥集団の中にいても、目立って聞こえるでしょう?」

伊織「あー‥‥たしかに、くっだと短いかも知れないわね」

真美「雪ぴょんとか、いいよね」

響「やよいとか真もいいよね。あ、こいつ喜んでるなーって感じで」

伊織「で、何? 私らで考えちゃっていいわけ?」

千早「ええ。結果を踏まえて、前向きに検討するわ」

真美「どうでもいいけど、口癖ってそういうもんじゃない気がする」

響「あ、思い付いた。はい」

千早「我那覇さん」

響「言い方も指定していい?」

千早「ええ」

響「自分と似たような感じだけど‥‥「ぎょえー!」」

伊織「んふっ!」

響「こう‥‥床に大の字になって。手足バタつかせながら」

千早「ふふっ‥‥」

真美「千早! 仕事が決まったぞ!」

伊織「あ、何か始まったわ」

響「はい。それで、内容は‥‥」

真美「あずささんとコンビで、水着グラビア撮影だ!」

響「ぎょえー!」バタバタ

真美「あははははは!」

伊織「何かの病気じゃないの」

千早「それより、嫌な仕事の代表で水着撮影がパッと出てくるのに、悪意を感じたわ」

伊織「あ、私も思い付いた」

千早「どうぞ」

伊織「私は、やよいとか真タイプで、嬉しい時のセリフで‥‥「そーれっそれそれーぃ」」

真美「あっは」

伊織「両手を顔の横で、交互に前後させながらね」

響「千早! でっかい仕事を取ってきたぞ!」

伊織「それは一体どんな‥‥」

響「なんと、ハリウッド映画の主題歌だ!」

伊織「ええ!? まさか‥‥本当ですか!?」

響「ああ! それも、向こうの監督からのご指名だ! やったな! 頑張ろう!」

伊織「はい! そーれっ、それそれー」

千早「さっきの後だと、まともに見えるわね」

真美「いや、相当おかしいけどね。酔っ払いの動作だよ」

響「ごめん千早! やっぱりグラビアに変更になった!」

伊織「ぎょえー!」ジタバタ

真美「あっはっはっはっは!」

千早「やっぱり、これが強烈すぎるわね」

伊織「こんな奴、テレビに出したらいけないわよね」

千早「119番呼ばれるわよ」

響「あっ」

真美「ん? どったのひびきん」

響「‥‥ひぃっきし!」

真美「ちょ‥‥もー! おっさんじゃん、おっさん」

響「あうあー‥‥ティッシュ取ってティッシュ」

伊織「朝から薄々思ってたんだけど‥‥こんな集まり、もし見られたら、確実にファンが減るわよね。軽く5万人くらいは」

響「油断しすぎだよね」

千早「もしこの集まりを何回も繰り返したら、最終的に全員下着とかで過ごし始めるんじゃないかしら」

伊織「あー‥‥じゃあ次からは、上等なので来なきゃだめね」

真美「風神雷神は上等じゃないんだ。シルクなのに」

伊織「擦り切れてペラッペラだから」

響「あっはっは! 全然セレブじゃなかった!」

千早「ちなみに、上はどんなのを付けているの?」

伊織「上? そりゃあんた、あれよ‥‥ホタテ」

真美「あっははは! まさかの!」

響「ホタテと風神雷神て。お供え物か何かか」

伊織「今日暑かったから乾いてきちゃって。きっとダシとか取れるわよ」

千早「中身!? 食べる方をへばりつけてるの!?」

真美「絶対かゆくなるじゃん。ホタテの汁的なもので」

伊織「もう、真っ赤よ。かぶれちゃって」

響「あははは! はーっ‥‥くっだらなー」

千早「何よ、この集団」

伊織「男子小学生でも、もっと身のある会話してるわよ」

真美「ほんと、ひとっつもないよね。中身が」

響「もう、脊髄反射で喋るのやめようね」

千早「そうね。今日の流れをこのまま続けてたら、確実に頭が悪くなるわ」

響「頭が悪くなる代わりに胸が大きくなる魔法があったら、どうする?」

千早「使うわ」

伊織「使う」

真美「あっははは! 言ったそばから!」

千早「少しでも場の流れを変えるために、音楽‥‥クラシックでもかけましょうか?」

伊織「高尚な音楽をバックに、頭の悪い会話をする未来が見えるわ」

千早「そうね。余計意味のわからない空間になるわね」

響「っていうかさー‥‥」

千早「何?」

響「ご飯支度、スーパーめんどくさくなってきたんだけど」

千早「ふふっ」

真美「これ、あれじゃん。だらけ過ぎて、全てにやる気を失くすパターン」

響「でもまあ‥‥それくらいしないと、本気で今日何しに来たかわからなくなるからな。ぼちぼちやるかー」

千早「そうね」

真美「りょうかーい」

伊織「テレビ付けていい?」

千早「いいわよ」

響「おお、まさかの展開。これには流石の我那覇選手も虚をつかれております」

伊織「嘘よ。始めましょ」

千早「夕飯は、何を教えてくれるの?」

響「そうだなー‥‥やっぱり基本は、適当に作っても失敗のしようが無かったり、失敗しても食べられなくはない物にした方がいいと思うさー」

千早「そうね。その方が助かるわ」

響「と、いうわけでー‥‥まず、豚の生姜焼きでも作ろうか。これは、本気で簡単だぞ」

伊織「そうなの? 結構人気のあるメニューだから、作れるとよさそうね」

響「まずこう、フライパンを温めて、肉を焼き始めるだろ?」

千早「ええ」

響「で、生姜と醤油をドババーっと入れるだろ?」

真美「うん」

響「肉に火が通って、汁が多少煮詰まって、いい感じに絡んだら完成さー」

伊織「はやっ!」

響「ね? 失敗する要素がないでしょ? じゃあ次は‥‥肉じゃがでも行ってみる?」

真美「肉じゃがって言ったら、おふくろの味の王者じゃん。大丈夫なの?」

響「不味くない物を作るだけなら簡単だぞ。まず、あれをこうしてこれをああして‥‥で、後は煮込んで、美味しそうになったら完成だぞ。冬ならストーブの上に置いとくといいぞ。あと、煮えた後に一回冷やすと、味が染みるぞ」

伊織「あら? そういえば、テレビなんかでよく見る、煮崩れしない秘訣みたいなの、教えてもらってないけど」

響「え? あー‥‥自分、肉じゃがは多少煮崩れてた方が好きなんだ。ご飯に合うでしょ」

真美「ちょっとわかるかも」

響「なんならもう、固形物が一切ない状態でも美味しく頂けるぞ。次は、そうだなあ、ちょっとお洒落気取りな物でも作る?」

千早「お洒落って?」

響「ムニエル的な」

伊織「あら、いいじゃない。私、好きよ」

響「じゃあやるか。魚は、刺身用のやつが骨を処理してくれてるから便利だぞ。これに塩コショウを多めに振って、小麦粉まぶして、フライパンでバターを使って焼きます! そして完成です!」

真美「なんかもう、絵描き歌より簡単だね」

千早「火が通ってるかどうかって、どうやって判断すればいいのかしら。中の具合と表面の焼き具合をちょうどよくするのが、少し難しそうね」

響「まあ‥‥刺身用を使うと、こういう時にも便利だよね! って事で。表面さえカリッとすれば、後は多少どうなっててもなんくるないさー。最悪、レンジ使えばいいし」

千早「レンジ、いいわよね。私の唯一使いこなせる調理器具だわ」

響「そんじゃ、次はホイコーローもどきでも‥‥」


響「手羽先の煮込みを‥‥」


響「ナスの炒め物とか作ってみるかー」


響「イカとアスパラをバター醤油で‥‥」






響「と、いうわけで‥‥ね? 思ってたより、ずっと簡単でしょ?」

千早「ええ。私でも出来そうな物が、結構あったわ」

伊織「そうね。始めに言ってた通り、多少失敗してもなんとかなりそうだったし」

真美「焦げとかにさえ気をつければ、大丈夫そうだね」

響「欠点はあれだな。シンプルな味付けだけに、ぜーんぶ何となく似たような味になっちゃうっていう」

伊織「たしかに‥‥あと、全体に茶色いわね」

響「そこはもう、トマトとかでカバーすればなんくるないさー。各自でなんとかしてよ」

真美「トマトっていえば、野菜が少ないね。圧倒的に」

響「それは‥‥サラダとか買ってよ。コンビニのサラダもなかなかバカにできない味さー」

千早「我那覇さん、今日はありがとう。勉強になったわ」

響「うん、いいよいいよ。もし料理続けて、もうちょっと別の物が作りたくなったら、また呼んでよ。ちょっと凝った物とか、揚げ物とか教えるから」

千早「ええ。その時はよろしくね」

伊織「私も付き合ってあげていいわよ」

真美「真美も真美もー」

千早「さて、後は‥‥」

伊織「そろそろ出る? あんまり遅くなると、帰っちゃうかも知れないから」

真美「そうだね。それにしてもひびきん、材料を多く買ってたのは、このためでもあったんだね」

響「まあね。自分達のために頑張ってくれてるんだし、ご飯くらいさ」

千早「普段からお世話になっているわけだしね」

伊織「私は別に、死ぬほど暇だから一緒に行くだけよ」

真美「あれ? これ、ツンデレなのか本音なのか、わかりにくい」

千早「それじゃ、行きましょう。鍵閉めるから、先に出てちょうだい」


社長「ふう‥‥む? もうこんな時間か。道理でお腹が空くわけだ。仕事も粗方片付いたし‥‥うーむ。天丼にするか、麺類にするか。それとも、少しハイカラにピザでもとって見るか‥‥おや? こんな時間に‥‥来客の予定は無かった筈だが。まさか、空き巣という事も無いだろうし‥‥」

千早「失礼します」

響「はいさーい!」

伊織「よかった。まだいたのね」

真美「はろはろー」

社長「き、君達‥‥一体、どうしたのかね? 今日は、休みの筈だろう?」

千早「ええ。お陰様で、充実した休日を‥‥のんびりした休日を過ごせています」

響「今、言いなおしたよな?」

千早「それで‥‥お礼というわけではないのですが、夕飯がまだでしたら、ご一緒出来ないかと」

真美「ひびきんの手作りだよーん」

響「自分で食べる用のレシピだから、味はちょっと保障出来ないけどね」

伊織「たまには、所属アイドルと夕飯くらい食べたって罰は当たらないでしょ?」

社長「お、おお。そうかね! いやあ、今ちょうど何か出前でもと思っていたところなんだよ。ささ、座りたまえ」

千早「はい。‥‥あら?」

小鳥「お疲れ様です。社長、食べ物と美味しいお酒を‥‥え? ど、どうして?」

美希「千早さん、どうしたの!?」

雪歩「響ちゃんやみんなも‥‥」

あずさ「あらあら~? 変ねぇ」

春香「お疲れ様でーす! 社長! 甘い物を差し入れ‥‥あれ!?」

真「み、みんな、何してるの?」

律子「一体どうなって‥‥あらやだ。まだ来るわ」

やよい「はわっ! なんだか、人がいっぱいいます!」

貴音「はて‥‥不思議な事もあるものですね」

亜美「おー、真美もいるじゃーん。何してんのー?」

社長「君達‥‥はは、はははは。今夜は、なんて贅沢な夕飯なんだ。さあさあ、中に入りたまえ。何か飲み物でも入れよう」

雪歩「あ、お手伝いしますぅ」

社長「‥‥諸君、この機会に、皆に言っておきたい事がある」

一同「???」

社長「こんなに素晴らしい子達が我が社に集ってくれて、私は幸せ者だよ。どうもありがとう」




JUNJIRO END

投下に半日くらいかかるかと思ったら、あっさり終わった。規制が無いと、こんなにもスムーズなのか

というわけで、読んでくれた人がいたらありがとうございました


社長慕われてるな
てかPは一日なにしてたんだ?

よかった、スレまだ残ってた。

>>56>>57の間に抜けてる文章あったから、一応補足。なくても運よく成立してたけど




美希「雪歩ー、あずさー。こっちこっちー。出来たよー」

小鳥「ちょ、ちょっと美希ちゃん‥‥これはちょっと若者向け過ぎるって言うか‥‥」

美希「大丈夫なの! いけるよ!」

小鳥(大丈夫じゃない‥‥これは大丈夫じゃないわ‥‥そうだ! ここは真ちゃんに習って、ジェノサイド戦法を!)

美希「いい? 開けるよ? それっ!」シャッ

小鳥「キャッピピピピーン! こっとことりーん♪」キャルルーン

雪歩「あ、可愛い」

あずさ「流石美希ちゃんねぇ。音無さんに、よく似合ってるわ~」

美希「でしょでしょ? えへんぷい!」

小鳥「あれぇー!?」

美希「ミキ、これなら明日からデビューしてもおかしくないって思うな」

雪歩「うん。歌も上手だし、私なんかよりよっぽど人気出ると思いますぅ!」

あずさ「社長に相談してみましょうか~」

小鳥「ひええ! それだけは、それだけはご勘弁を~!」

美希「ぷぅー。かわいいのに」

小鳥「‥‥でも、そんなに褒めてくれるなら、とりあえず買ってみようかしら。事務所にこれで通うかは別として」

美希「そうこなくちゃなの!」

小鳥「じゃ、じゃあ少し待っててね」

店員「お会計、4万8千円でございます」

小鳥「ぎょへー!?」

>>77
Pって、俺じゃん?そしてお前でもあるじゃん?
つまり、お前の休日を思い出せば、それがPの過ごし方になるんだよ

よかった落ちてなかった!とか言ってたけど、ここって自分で申請しなきゃ落ちないのか

Pの休暇に関して、需要がある感じだから書こうと思ったけど、俺Pの前回の休日は、

友人と酒飲みに行って、キン肉マンとGガンダムと仮面ライダーの話ばっかりして、カラオケ行って、翌日は30分ごとに吐きながらツーリングしただけだったのを思い出してやっぱやめた


友人「技巧チームと飛翔チームだと、どっち強いと思う?」

P「飛翔じゃね。ミスターVTRがやばい」

友人「あいつ補欠か何かにしてずっとサポートさせればよかったのにね」

店員「Pさん、キン肉マン好きなんすよね。俺も最近全部読んだんすよ」

P「マジで」

店員「メインキャラ以外にもかっこいいの多いんすね。そういう中で誰好きっすか?」

P「スニゲーター。いや、でもプラネットマンも‥‥」

友人「ジャンクマン」



みたいなのを延々繰り返すだけになるから

ところで千早が特撮の歌歌ったって
この前本家とモバマス絡ませてた人?

>>88
モバは書いた事ない。今のところアイマス関係で書いたのは『春香「ドッキリ番組」』ってやつだけ

別に続編とかではないんだけど、1回適当にキャラ付けしたら、それが頭から離れなくなっちゃって。千早達には申し訳ないと思っている

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