国王「……いやいや。イタズラってレベルじゃないでしょおたく」
魔王「テヘペロ」
国王「いやいやいやいや。テヘペロで済む範囲超えるじゃないですか、国土侵略するとか人民捉えて無体するとか」
魔王「というかお菓子くれるのかくれないのか。我が軍は既に城門前に控えておるが」
国王「あのさ、お菓子に対してのその構え絶対おかしいから」
魔王「お菓子だけに」
国王「誰が上手いこと言えと」
魔王「お菓子だけにその2」
国王「味覚的な美味いまずいじゃないから」
国王「ていうか飴ちゃんで引っ込むのか?本当に」
魔王「全員分な」
国王「……はい?」
魔王「我が国民全員分」
国王「ざけんな、コラ。勇者!勇者を呼べ!」
側近「恐れながら、陛下。勇者は魔王側に寝返りました」
国王「何っ?」
魔王「イチゴショートケーキワンホールまま食べ放題で手を打ったぞ」
国王「うそーん」
側近「ちなみに勇者と同行予定であった僧侶、戦士、魔法使いも既に彼方へ転向済みです」
国王「ええー……」
側近「更に申し上げますと、勇者選出ご担当の女神様も……」
魔王「甘いもの好きであったよ、今やスイーツ巡りを共にする仲だ」
国王「もうやだ、この国」
魔王「さあ、我らに菓子を供するか?それとも国ごとイタズラされるか?己の運命を選ぶがよい!」
国王「何か緊張感欠く……だがしかし緊張感満載の選択肢……」
魔王「お菓子だけにその3」
国王「いやもうそういうのいいから。つか、側近よ。城の菓子職人を呼べ」
側近「は、只今!」
魔王「菓子職人だと?」
職人「お呼びでしょうか、陛下」
国王「うむ。そなた、魔国へ出向せよ」
おお、面白そう。早めの投下を希望しますよイチ=サン
>>4
その呼び方されると20年待ちこがれている勇者サマ思い出して切なくなるw
遅筆ですが、よろしくお付き合いの程をm(_ _)m
職人「出向、ですか……魔国へ?」
国王「うむ。ほれ、そこに居られるのは当代の魔王にあらせられるが」
魔王「」ハーイ
職人「何と」
国王「菓子を所望されておる」
職人「菓子……で、ございますか?」
国王「如何にも。出来れば魔国民に遍く行き渡る程の飴をご所望だ」
職人「それはまた……」
魔王「まあ、飴ちゃんとは限らぬよ。ケーキ、焼き菓子、氷菓……人界にて食する事のできる菓子ならば」
国王「聞き入れられなければ、この城を今すぐ攻めるという」
職人「ははあ、何やら外が騒がしいのはそれでしたか……」
国王「我が王家……いや、我が国を守るためだ。菓子職人よ、魔国へ赴いてはくれぬか」
職人「……畏まりました、参りましょう」
国王「おお!行ってくれるか!」
職人「ただ、私ひとりというのは些か心許なく存じます」
国王「よいぞ。僧侶、戦士、魔法使いは国内最高位のものたちを随行させよう」
職人「いえ、その方たちのご同行には及びません。私と共に来ていただきたいのは……」
パン職人「……魔界でパン作り?マジでか、菓子職人よ」
バリスタ「魔界の水で淹れるコーヒーや紅茶ですか、興味はありますね」
バーテンダー「あちらの酒は大分強いらしいからな、前々から飲んでみたかったんだよ!」
国王「……ホントにこのメンバーでよいの?」アセダラダラ
職人「魔王様のこの度のご興味はどうやら我々の食。ことに嗜好品のご様子ですので」
魔王「お菓子である!」ドン
職人「承っております。更に菓子を美味しくする飲み物や菓子とは違いますが菓子のように食べられるパンなどご紹介出来ればと」
魔王「おお、それはよい!」
職人「ですのでこの度は戦闘に関するご心配は無用です、陛下。あちらの空気は体に障るとは伺っておりますので、精々瘴気除けの護符を頂戴できますと幸いです」
魔王「ならばすぐ発つぞ!」
職人「お待ち下さい、魔王様。菓子作りなどに用います道具など揃えたく存じます。少々お時間を下さいませ」
パン職人「あー、そうだな。麦粉とパン種くらいは用意しないとならんかぁ。種、あっちでちゃんと育つかな」ウーン
バリスタ「私も、茶器や当面のコーヒー豆などご用意致しますので」フカブカ
バーテンダー「俺も道具取ってくるか。土産変わりにこっちの酒も持ってってやるからな!」ニッ
国王「ではその間に護符の用意をさせよう。彼等の出立はそれからでよろしいか、魔王殿?」
魔王「無駄な引き延ばしは無意味だぞ?」ムッ
職人「……では、お待ち頂く間、お茶と焼き菓子をご用意致しますので召し上がりながらお寛ぎ下さいませ」
魔王「!」キラキラ
側近「では、応接の間に茶菓のお支度出来次第ご案内いたしましょう。魔王様はあちらの控えの間でお待ち下さいませ。さ、こちらへ」
職人「ボウルに泡立て器、のし棒とのし板と計量カップ、計り……」
コンコン
国王「菓子職人よ、おるか?」
職人「これは、陛下」フカブカ
国王「ああ、頭を上げよ。……この度は唐突な事で、申し訳ない」ヘコリ
職人「!何を仰いますか、頭をお上げ下さいませ陛下」アセアセ
国王「しかし……本来であれば現勇者がするべき討伐であるのに」
職人「……今の勇者様はお幾つの方でしたか。お仲間も菓子で籠絡できるお年頃でしたかな」ハッハッハ
国王「返す言葉が見つからぬ。しかも女神様まで甘味につられるなど。我らは何を崇めていたのだか」ハアアアア
職人「……おそらくあの魔王様は見た目よりお若い。というより幼い方なのではないかと。魔王と名乗るには覇気と邪気が大分足りないようにお見受けいたしました。女神様もそこに油断されている……あるいはご心配されておられるやもしれません」
国王「……そうみたか」
職人「魔王軍も『王』の命により動いてはいるが、やらされている事はおもちゃでやる『兵隊ごっこ』レベルかと。やれやれ仕方なしと、パレード気分での進軍でしょう」
国王「国に摂政役がいるとすればよく許したものだな」
職人「幼い魔王様をすっかり傀儡として扱い己が国の実権を掌握しながら幼い王の突飛な政策にはある程度目を瞑り、機を見て「あれは愚王よ」と失脚させる魂胆か、さもなくば溺愛して止まないかのどちらかでしょうか」
国王「ふむ……どちらにせよ我が国へ害を為すつもりがあるならば」
職人「そのあたりも見極めて参ります」
国王「頼む。……しかし、なあ」フゥ
国王「このような事態となって、頼りにするのがそなたとは何と申せばよいやら」
職人「私も、再びかの地に赴く事になろうとは思いもよりませんでしたが」フッ
国王「思えば……余が即位して直ぐに、そなたに当時の魔王討伐を命じたのだったな……元『勇者』」
職人「お止め下さいませ、今はその任にありません。それに元『勇者一行』は国の手厚い庇護の元、
国外れの森の中に建てられたら塔の中で隠居している、ではありませんでしたか?」クス
国王「……そうであったな。今城内で仕えている菓子職人とパン職人、バリスタと
バーテンダーは勇者一行に似た他人の空似……であったか」クスクス
職人「現魔王様は当然知る由も無いことでありましょうな。それより我らと
和議を結ばれた『あの』魔王様の消息が気掛かりです……」
国王「現魔王がおる、ということは当然ながら退位をされたということであろうが……」
職人「魔族の王座は血縁によって引き継がれるものではない、と聞き及んでおります。
しかし、現魔王様にあの魔王様を倒すことは至難かと」
国王「……であろうな。いったい何があったのか。それに前魔王との和議は反故にされるのか……」
職人「……菓子の振る舞いを人間に断られたら軍勢を仕掛けるなどと
戯言をいうような者を王と崇める程、彼等魔族も手緩くはありますまい。何か、ある筈です。」
国王「菓子職人であるそなた達に託す任ではないと分かってはおるが……魔国の動向、探ってまいれ」
職人「御意」フカブカ
………………
……
…
職人「……というわけだ」
パン「おいおい、本当に穏やかじゃないなぁ」アセ
バリスタ「そもそも今の勇者様方はホントに甘いもので懐柔されたのですか?」ミナサンコーヒードゾー
バーテンダー「若い連中も何か考え有ってのコトじゃねぇの?」ア、イタダキマス
職人「うん、彼らの様子や考えも知りたいところだ」ア、スマナイネ
パン「何にせよあちらに行ってみてからの話か……昔の得物は持って行く?」オ、アリガタイ
職人「まさか。隠し持っているのを見つかったら生きて帰れないだろう。何より触らなくなって
久しいんだ、使いこなせる訳がなかろうよ。ペティナイフで相対した方がまだましに戦えそうだ」
パン「……俺はたまに剣の素振りしてたぞ。パン仕込むのも腕力要るからな、体力作りがてらに」ズズー
バリスタ「君らしいですよ」クス
バーテンダー「酒は持ってっても大丈夫なんだよな?」コーヒーウマー
職人「当然。ある意味お前が今、自在に扱える武器だからな」
バーテンダー「任せろ」ニヤリ
コンコン
側近「皆様こちらにお揃いでしたか。教会より皆様へ瘴気除けの護符が届いてございます」
職人「ありがとうございます」
側近「それと、バーテンダー様のご指示通り、皆様が持ち込まれます食材などを
梱包後、荷箱も瘴気除けの祝福を受けてございます。只今外で
待機中の魔王軍と我々とで荷役作業を行っております」
バーテンダー「よっしゃ。これで持ち込んだモンがいきなり向こうの空気に
あてられて変質するこたないだろ」ウンウン
側近「それと……こちらの手提げを持って行かれるようにと、司教様よりお預かりいたして参りました。
『神のご加護の在らんことを』とお言伝をお預かりいたしております」スッ
バーテンダー「ん?」カパ
バーテンダー「……て。聖水やら聖油やら香やらてんこ盛りじゃん
……俺もう僧侶じゃねぇのにどうしろってのかね」ハァ
職人「良いじゃないか、司教様の『親心』だよ」
バーテンダー「けどこんなん持たされも、使い様がさぁ」
バリスタ「……我々の護符を補助するものという考え方は如何ですか?
彼方での滞在がどれ位になるかは分かりませんが、逗留先の
空気清浄にでも使わせていただきましょう?」ニコリ
バーテンダー「……まあそういうコトなら使わない事もないか……」ヤレヤレ
パン職人「向こうの荷台に荷物引き渡し済んだら、出発か。あとどれ位かかりそうなんだ?」
側近「まもなく完了いたします」
パン職人「ん。魔王は今どうしている?」
側近「応接の間にて陛下とご歓談中です」
パン職人「ご歓談、ねぇ……菓子食ってご機嫌とは暢気な魔王様だ」
職人「……何か、特にお気に召しているものはありそうですか?」
側近「……お見受けいたしましたところ、飴はもちろん、硬めに焼き上げたクッキーや
ローストした木の実を用いた焼き菓子によく手を伸ばされているかと」
職人「歯ごたえのあるものがお口にあうのか」
側近「ですが見た目の美しいケーキなども物珍しいとお喜びです。
一緒にお飲み物もご用意いたしましたが、コーヒーもより深炒りのものを濃い目にして、
砂糖とミルクを少々足したものが甘味に合うと申されておいでです。」
バリスタ「成る程。考慮しておきます」
コンコン
近衛兵「失礼いたします。荷役作業完了との報告がありました」
側近「ご苦労、下がってよろしい……皆さま、応接の間にご同行いただきます」
職人「かしこまりました…じゃあ、久しぶりに行きますか」
パン職人「久々かぁ、腕が鳴るなぁ」フフン
バリスタ「パン作りの、ですよね?」クスクス
バーテンダー「なんか俺だけ手荷物多いんですけどー」ガサガサ
側近「では、こちらへ……」
《応接の間》
魔王「……王よ、やはりこの魔王に民ごと国を譲らぬか?悪いようにはせぬぞ」モグモグ
国王「魔王殿、茶菓がお気に召したのは何よりだが幾らなんでも大雑把すぎるだろうに」
魔王「そんなことはないと思うぞ、我が庇護の下に入れば……」
コンコン
側近「ご歓談中、失礼いたします。陛下、四名出立の支度が整いましてございます」
国王「おお、そうか……だそうだ、魔王殿。我が国と魔国との国交についてはいずれまた」
魔王「……相分かった。いずれ、必ず。馳走になったな」
国王「遣わす彼らを、くれぐれも大切に扱っていただきたい」ヘコリ
魔王「承知。彼らは我への人質でも人身御供でもないことは我が重々わかっておる
……して、彼らは?」
側近「こちらに……さぁ、中にお入りください」
職人「お待たせいたしました、魔王様……菓子はお気に召されましたか?」ニコ
魔王「うむ、どれも美味いぞ!やはり人の世界の物はこちらに来て見てみないとわからないものばかりだ!」ニコニコ
職人「……生菓子は初めてお召し上がりになられたのですか?」
魔王「生菓子……ああ、この美しいこれか?そうだな、我が口にしたことがあるのは飴や焼き菓子と呼ばれるものが多かったようだ」
魔王「……ちなみに、菓子類はどのようにして手に入れられておりましたか?」
魔王「それはこちらの間者や内通者が手土産として」アッサリ
国王「いや、ちょ、待てよ内通とか間者とか」ナンデスト
職人「……それに関しては残られる皆様でご解決を」ナンテコッタ
魔王「では参ろうか……とりあえず門前の我が軍勢の元へ」
城門前》
魔王「皆、待たせた!これより客人を伴い帰還する!」
魔将軍「……陛下、本当にこのまま帰還して宜しいのですか?見たところ今の
人界に我らと戦える人間はおりませぬ、人界に攻め入るならば今が」
魔王「よいのだ、今日は。菓子を手に入れようとしたら菓子を作る者たちが手に入った。我は満足だ」ハッハッハ
魔将軍「……」チッ
魔王「ささ、客人たち。我の近くへ……」ミギノウデワヒトツハズシテ
職人「?」
バリスタ「!魔力が増した…」
魔王「ほう?そなたは魔力が感知できるのか?」ヒダリノウデワヒトツハズシテ
バリスタ「!!……い、いささか魔法の真似事を学んでいたことがございまして、あのその」ドキドキ
魔王「真似事か……どの程度使えるか知らぬが我らには及ばぬだろうよ」フフン…ヒタイノカザリイッコハズシテ
パン職人「っ、城内で見たのと全然圧が違う」ジリ
魔王「当然だろう。我が我のままあの中に居ては、瘴気とやらにあてられてしまうのだろう?だから態々我自らの力を封じておいてやったのだ、感謝するがよい」コンナモノカ
職人「しかし、魔界への道中も人界を通ります、どうか今しばらくお力を封じて下さいませ」アセアセ
魔王「?何を言っておる。我らはここから今すぐ立ち退く、寄り道などする気はないぞ」ブゥン
バーテンダー「ま、まさか一気に」
魔王「そなた、察しが良いな…『ここより魔王城城門前』へ帰還する!」
ズバッ!
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