京太郎「源氏物語ですか?」 (33)


ハギヨシ「はい。読書をしてみたい、というならおすすめしますよ」

京太郎「でも源氏物語って古文ですよね。苦手ではないですけどいざ趣味で読むってなるとちょっと……」

ハギヨシ「京太郎君は確か高校卒業後は大学進学志望でしたよね?だとすれば多少なりとも予習にもなるかもしれませんね」

京太郎「はあ……でも本当に俺でも楽しめる内容なのかな?」

ハギヨシ「漫画で解説されている本もありますから、自分に合う本を見つけてみては如何ですか?」

京太郎「そうですね……W杯の付き添いの間は暇な時間も多そうですし、せっかくだから読んでみますね」

ハギヨシ「はい。もし読み終わった際には衣様の話のお相手になっていただけると助かります。龍門渕には古典に強い人間がいないもので」

京太郎「本来の目的はソッチっすか……まあ、俺が継続してそれを読めたらの話ですけどね」

ハギヨシ「よろしくお願いしますね」




※非安価京太郎スレ
※キャラ崩壊注意
※京太郎は全国大会終了後のU-18日本代表に付き添っています。そこ、ご都合主義とか言わない

所々飛ばしながら源氏物語について女子キャラ(一部男子キャラ)と京太郎が語っていくだけのお話です
>>1も今やっと薄雲まで読み終わったところなので、少しずつ進めていきます。悪しからず

できるだけわかりやすいように表現は多少変更しております



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1477500394




W杯予選会会場


藤田「おー受験勉強か少年」

京太郎「あ、藤田プロ、引率お疲れ様です」

藤田「にしても……源氏物語とはな。しかも古文のまま……髪型に似合わず随分とお堅いものを読むんだな」

京太郎「あ、いえ、最初は漫画で解説していたものを読んでいたんですけど、読んでいくうちにハマっちゃって、原文ではどういう表現がされていたのか気になってしまって」

藤田「その学習意欲を久や蒲原に分けてやってくれ………ふむ、帚木(ほうきぎ)か」

京太郎「藤田プロ知ってるんですか?」

藤田「ああ、私も一時期読んでいたからな。……それにしてもあまり読み進めてないようだが?」

京太郎「えっと、漫画の方では取り上げられてなかったもので内容がいまいち理解できなくてですね……。電子辞書も使って何とか読もうとしてるところです」

藤田「ほう、ならば私が少しばかり解説してやろう」

京太郎「いいんですか?」

藤田「ああ、次の試合までは暇だしな。私もいい時間つぶしになる」



藤田「須賀もわかっているとは思うが第一巻にあたる桐壺の巻では光源氏誕生とマザコン化、それによる義母への許されない愛情と12歳での葵との政略結婚が書かれていたわけだ」

京太郎「えらくざっくりとしてるけど大体あってます」

藤田「そして次の巻、帚木の巻で有名なのは『雨夜の品定め』だな。光源氏17歳の時のことだ」

京太郎「あ、それは少しだけ漫画にも載ってました。雨の夜に同年代の男4人集まって『どんな女が良い女か』ってテーマで話したってやつですよね」

藤田「そうだ。男子高校生が週刊誌を見ながらどのグラドルがいいか議論するのと同じか」

京太郎「文学作品がすごく安っぽくなりますね」

藤田「ここでは藤式部丞や左馬頭、それに嫁の兄である頭中将がそれぞれの女性経験を話したわけだ。元カノ自慢ってやつだな」

京太郎「だから安っぽくなるんでやめてください」

藤田「嫉妬のあまり噛みついてきた女の話とか、愛人を愛しすぎて嫁が怒ってしまった話とかが繰り広げられる中で、光源氏はずっと聞き役に徹していた。一番若かった光源氏には語れるほどの女性経験がなかったわけだな」

京太郎「まあ17歳じゃ仕方ないでしょう」

藤田「唯一できる話が嫁との初夜の話とか、義兄の前でするにはハードルが高すぎるしな」

京太郎「それは話せない」

藤田「そして夜も更け、中流の女が最高という結論をもって『雨夜の品定め』はお開きになったわけだが、ここが光源氏のゲスエピソードの原点になったといっても過言ではないかもしれない」

京太郎「割と序盤で方向性は決定づけられたんですね」

藤田「ここから始まる不倫NTR未亡人幼女現地妻といった光源氏の壮大なストーリーが源氏物語ってわけだ」

京太郎「まあ、あながち間違っちゃいないですけど……」

藤田「よし、そろそろ次の試合の抽選だな。私は行くとするよ」

京太郎「あ、はい。ありがとうございました」

藤田「私も楽しかったからお互い様さ。中流の女を紹介してほしかったら私に言いな。紹介してあげる」

京太郎「あはは……もし、その機会があれば」

藤田(中流っつか中年一歩手前なら知り合いにもいっぱいいるしね)


??「くしゅんっ。あれ?風邪ひいちゃったかな?☆」

 


こんな感じで進めていきます。

京太郎の会話の相手は毎回違う人の予定ですが……再登場もあるかも


書き溜めが溜まり次第更新します


書くことが多すぎてメモ帳がフリーズする話と逆に一レスですべて完結してしまう話が混在してて書き溜めするのが意外に苦しい


本編透華
本日は帚木後編から……


控室


京太郎「ありゃ帚木ってまだ続きあったのか。それに次の話も漫画では描いてなかった話だし……」

春「……男子の癖に恋愛小説なんか読んでるの」

京太郎「あ、滝見さん。いらしてたんですか」

春「うん。姫様、今試合中だから私のお仕事ないし」

京太郎「あー、そういえば滝見さんも付き添いでしたね」

春「ん、春でいい。それに同い年だから敬語もいらない。京太郎」

京太郎「あ、そう?じゃあ遠慮なく……おいそれはまだ読んでないやつで」

春「空蝉は帚木の後半と併せて読むといい。内容としては続いてるから」

京太郎「へえ……そうなのか」

春「わかってなさそう。少し内容教えてあげようか?」

京太郎「いいのか?」

春「構わない」



春「前半の『雨夜の品定め』を受けて源氏がそれを真に受けて行動に移すのが帚木の後半のお話」

京太郎「光源氏が行動に移すってだけで嫌な予感しかしないな」

春「端的に言うと、人妻とヤった」

京太郎「端的スギィ!」

春「もう少し詳しく説明すると、方違えで訪れた家がたまたま中流階級の家だった」

京太郎「方違えって?」

春「自分で調べて」

京太郎「お、おう……」

春「そこの夫婦の夫の方は結構な年寄りで割と若い後妻を貰ってたの。若いって言っても源氏よりは年上なんだけど」

京太郎「へえ……嫌な予感しかしないな」

春「もしバレても自分のような身分の高い人間に中流風情の男が何か言ってくることはないだろう、という考えのもと、源氏は念願の中流の女と契りを交わした」

京太郎「クズ源氏初のお披露目ってところか」

春「ちなみにこの時、抱かれた妻の方は年老いた夫にはない若く魅力的な源氏に求められたことに幾分かの優越感や高揚感を抱いていたらしい。まあ政略結婚だったしそう考えるのもしょうがないのかも」

京太郎「夫からしたらたまったもんじゃねえな」

春「でも夫が出○の20代の妻が手○君に言い寄られたらホイホイついていくでしょうに」

京太郎「そうだとしたらイ○テQ乱れまくってるなー」

春「ゲスのk「それ以上いけない」

春「ん………源氏の方は達成感がすごかった。自分の嫁とは違う他人妻の反応に『中流女最高!』ってなってた」

京太郎「うーんこのクズ」

春「でも中流女の方は違った。身分の違いもそうだし何より私には夫がいる、ということで罪悪感に苛まれた。その後何度も光源氏は誘ってきたけど鋼の意思で断り続けた」

京太郎「過ちを犯してから周りを見渡せるようになったんだな」

春「ここまでが帚木の巻。源氏の思い通りに事は進む場面はよく入試問題にも使われやすいの。みんなの源氏物語のイメージと近いからね」

京太郎「まあ大半の人は『光源氏が栄華を極める物語』だと思っているからな」

春「本当は『光源氏(とその周辺の人々)の恋物語』が命題みたいなものだからもちろん苦い経験、思い通りに行かないこともあった」

 


春「そしてここからが空蝉の巻。源氏の思惑の通りに女がなびいてくれない。ある日、源氏は我慢できなくなって中流女の家に忍び込んで夜這いを仕掛ける。けど女はそれを察知して自分の上着と義理の娘を置いて逃げたわ。もう二度と過ちは犯さないために」

京太郎「意志の強い人だな………娘?」

春「源氏はその娘を女と間違えて契った」

京太郎「ちょい、ちょい待ち」

春「人違いだと気づいた源氏はそばに落ちていた女の上着を見つけると『蝉の抜け殻(空蝉)』のようだと歌を詠んでその場を去った」

京太郎「ヤリ逃げ去れた娘が一番悲惨じゃないかそれ?」

春「こんなエピソードから今話した中流女は『空蝉』と呼ばれることが多い。登場人物の中でも竹のように芯の通った女だと言われている」

春「……一度は思いっきり浮気してるけど」

京太郎「確かに」

春「ま、こんなところ。空蝉の巻は内容は少ないものの、はっきりと源氏が恋敗れたことが書かれている。読者によっては『源氏振られてやんのw』っていう人もいるかもしれない」

京太郎「少数派だろうがな」

春「この前にも藤壺っていう義理の母に発情してた描写はあったけど一応関係性とか父親関連の問題も相まって源氏も思いは本物でも行動に移すほど本気ではなかったの」

京太郎「発情て」

春「……そろそろ姫様の試合も終わりそうだから」

京太郎「おう、ありがとな春」

春「話し相手が必要だったらいつでも呼んで。暇なら相手してあげる」

京太郎「はは、ありがとな」

春「それと、今夜私の部屋、鍵開けとくから」

京太郎「………上着だけ残して逃げるのはなしな」

春「ちぇー…………」


 


いったん休憩、しばらくしたら夕顔の巻もうpします
しばしご歓談ください


次の書き溜め作ろうと若紫読み返してみたけどこの辺から光源氏のゲスさ加減がやばいことになってる


そろそろ夕顔の巻いきます


再び控室にて


京太郎「おっ……この巻は読んだことあるな。うーん、夕顔か……」

憧「何読んでるのよ京太郎」

京太郎「お、憧じゃん。どうした?」

憧「和から『自分たちの付き添いでやってきたはずの男がずっと本ばかり読んでいて相手をしてくれなくてつまらない』って聞いて様子を見にね」

京太郎「いや、以外に面白いんだよこれ。現代じゃ許されそうにないことこの時代だと割と許されてたりするんだなって考えながら読むと笑えたり考えさせられたりするからさ」

憧「ふうん……源氏物語ねえ………これ読むのすごく難しいのよ?尊敬語に謙譲語のオンパレードだし、天皇も出てくるから二重謙譲とか文法的にも他の古典文学とは難易度がケタ違いだし」

京太郎「まあそうだな。結構時間かかっちゃってまだ四巻目だよ」

憧「四巻目ってことは夕顔の巻ね。もう読み切ったの?」

京太郎「ああ。今ちょうど死んだところだ」

憧「さらっとエグいこというわねアンタ…」

京太郎「でも正直いまいちピンとこないんだよなー」

憧「何が?」

京太郎「ほら、夕顔を呪い殺した六条御息所って今まで全く出てきてないじゃん?突然に出てきた割にはいきなりヒロインを呪い殺すってトンデモキャラだし」

憧「まあそうなるわね」

京太郎「これがジャンプ漫画だったら打ち切り寸前のテコ入れみたいな感じだよな」

憧「……ごめん、少年漫画はあまり読まないからわからないわ」

京太郎「あー………(確かに、少女漫画読んで顔真っ赤にしてる方が似合いそう)」

憧「なんか言った?」

京太郎「いえ!なんでもないであります!」

玄「あれ?憧ちゃんに京太郎くん?どうしたのこんなところで」

憧「玄!」

京太郎「玄さん、ちょうどいいところに。玄さんも源氏物語読んだことあるって言ってましたよね」

玄「うん。一回だけだけどね」

憧「(漫画化されたやつでおもち目当てだったくせに)」

玄「(憧ちゃんそれは言っちゃダメ)」

京太郎「俺ちょっとわからないところがあって……六条御息所についてのお話って分かります?」

玄「六条御息所………」

憧「(ほら、作中一のおもちもちだった…)」

玄「おまかせあれ!」

京太郎「よ、よろしくお願いします……(いきなり元気になったぞこの人…)」

 

玄「六条御息所と源氏の君の出会いは実は描かれてないのです」

京太郎「そうなんですか。どおりで突然出てきたなと感じたわけだ」

玄「一説には桐壺と帚木の間。もしくは空蝉と夕顔の間に御息所との恋愛を描いたお話があったとされているのです」

憧「それは知らなかったわ」

京太郎「それで、どんな女性だったのですか?」

玄「その後の御息所の説明文から推測するに、もともとは東宮、今でいう皇太子のお嫁さんだったのです。でもその東宮は早くにお亡くなりになってしまい、御息所は未亡人となってしまいました」

京太郎「いきなり人生ハードモードですね」

玄「そこに現れたのが天皇の一族、源氏の君だったのです。御息所、源氏の君共に並外れた容姿、教養、器量を併せ持ったいわばスーパーカップルでした」

京太郎「リア充爆発しろとか言われないくらいレベルの高いカップルだったわけですね」

憧「神木○之介と志田○来カップルみたいなものね」

京太郎「あれは裏付けのない噂話だから……もし本当だったら応援するけど」

玄「でも源氏の君にはハイスペックすぎる彼女、御息所は重い存在になってしまったのです」

京太郎「あー、自分とは釣り合ってないんじゃないか、みたいな感じですかね」

憧「たぶん違うわね。平安時代は男尊女卑の世だし、女性にとっての教養はなくてはならないものではあってもありすぎるとそれはそれで夫である男性のプライドを傷つけてしまう、というものだったのよ……きっと」

京太郎「きっと…………」

玄「当時の恋愛は男性が女性の家に通うもの。源氏の君の心が離れていき、通う回数が次第に減っていったとしても御息所は待つことしか許されなかったのです」

京太郎「それは……気の毒ですね………」

憧「男がそんな言い方するとちょっとムカつくかも」

玄「そんな中、御息所は源氏の君が今熱を上げている女性のことを知ってしまう。それが……」

京太郎「夕顔ってわけですね」

憧「そ。夕顔と源氏との出会いはすごくシンプルだったの」

京太郎「たまたま家の前を通りかかったんだろ?」

憧「うーん、50点ね。若紫とごっちゃになっちゃってるわ」

玄「正確には、乳母のお見舞いの途中、花の名前を尋ねた源氏の君に突然夕顔が歌を贈ったんだ」

京太郎「風流ですよね。『あなたは光源氏ですか?』と直接聞くのではなく、歌に乗せて尋ねるなんて」

憧「まあ言わば逆ナンよね」

玄「常套手段だね」

京太郎「奈良県民に風流を楽しむ心はないのか」

憧「その突然の歌にメロメロになった源氏は夕顔と逢瀬を続けることになったのよ」

春「ちなみにその頃、空蝉は夫の仕事に付き添う形で伊予国、今でいう愛媛県に行くことになったの。夕顔にメロメロだったはずの光源氏は『もう一度会いたい』と空蝉の弟を介してお願いしたけど、とうとう空蝉は会ってはくれなかったわ」

京太郎「おわ!いたのか春」

春「それじゃ、私は姫様の付き添いの仕事があるからこの辺で……」

憧「……話が逸れちゃったわね………。続き行くわよ」

京太郎「……おう」

憧「源氏はその後も夕顔と逢瀬を重ねた。いつも場所は五条だったわ」

玄「通りだけで言えば御息所の家の三本隣だね」

京太郎「光源氏も度胸あるなあ」

憧「ある日、源氏は夜中に夕顔を五条の家から連れ出したの。連れて行ったのは夕顔とその側近の右近って人だけ。自分のお連れも信用できる部下でもある惟光含む数人の身。行先は無人の館。モデルになった場所は五条の河原にあった屋敷だそうよ」

玄「弁慶で有名な五条大橋の近くだね」

京太郎「秘密の逢瀬が刀狩に浸食されていくわ」

憧「ちなみに御息所の家は六条の河原院がモデルだから、直線距離にしておよそ300メートルくらいね」

京太郎「いやホント何考えてるんだ光源氏」

憧「それが当時の常識だったのかもね……。無人の屋敷は建物こそ綺麗にはしてあったけどトータルで見ればお化け屋敷みたいだったの。それを怖がる年上の夕顔を見て『なんてかわいらしい人』みたいなこと考えてたみたいよ」

京太郎「イチャイチャしやがって……」

憧「そんでヤって」

京太郎「言葉を選ぼうや女子高生」

憧「眠りについたら夢枕に美女が現れたの。その美女は夕顔に襲い掛かったわ。源氏が夕顔を助けるために刀を抜くとその美女は消えていったわ」

玄「でも夕顔は死んじゃったんだよね」

憧「源氏にはその美女はわからなかった。でも御息所は夕顔を殺したのは自分の生霊だとわかったそうよ」

京太郎「誰も報われない、悲しい話ですね」

憧「その後、右近から話を聞き、夕顔の正体が雨夜の品定めで頭中将が語っていた『常夏の女』であることが分かったの。夕顔に頭中将との子供がいることもその時に知ったわ」

玄「源氏の君は義兄と穴兄弟になったわけだね」

京太郎「だから言葉を選べってェ!」

憧「源氏は忘れ形見でもあるその娘を探したけど結局見つからず。そしてこのことは大事にしないようにひっそりと納められたのよ」

京太郎「なんだか後味の悪い終わり方だな……」

玄「でも、私は御息所の味方でありたいのです。この先も悪霊、生霊としての出番が多く悪役的に書かれることが多いけど、元をただせば源氏の君に会いたいと思いを募らせて待っていた時間の多さがこの一連の出来事を起こしてしまったと思うのです」

京太郎「へえ……意外ですね」

玄「私も、待ってるだけの時間があったから………………その辛さはすっごくよくわかるんだ」

京太郎「………そうなんですね」

憧「私は逆に夕顔が羨ましいかなー」

京太郎「どうして?」

憧「だってさ、他のヒロインと違って夕顔は出会ってから死ぬまで源氏はほぼずっと夕顔一筋だったわけじゃん。ってことは他の女のところに行っている源氏に嫉妬することもなかったし、最後は自分のために生霊と戦おうとしてくれて、死ぬときは愛する男の腕の中、って結構ロマンチックじゃない?源氏にも頭中将にも深く愛されるなんて、たぶんトータルで考えたら登場人物の中でも一番幸せなんじゃない?」

京太郎「そういう考え方もあるのか」

玄「……それもすべて、御息所のように我慢して待ち続けた女性の存在の上にある幸せにすぎないと思うの」

憧「そうかもしれないけどさ。結局終わってみたら夕顔が幸せだったって訳じゃん。私はその話をしたかっただけなんだけど…」

玄「苦労した人間が馬鹿にされるのはあまり好きじゃないのです」

憧「いやだから馬鹿になんかしてないって………あれ?京太郎?」

玄「いないね……どこいったんだろ」




京太郎「いやあ、助かったぜ」

??「絶対にどっちの意見に賛成するかって質問されただろうね」

京太郎「ああ。正直そこまで感情移入して読んでないから意見なんか求められても答えられないよ」

??「そうだね………そうだ」

京太郎「ん?どうした?」

??「京ちゃんが最近読みだした源氏物語の主人公光源氏が夜な夜な恋人の家に行きすることといえば?そう!セ――――――」


次回、若紫の巻へ続く


咏「突然だけどここまでのおさらいすんぞー」

京太郎「本当に突然ですか」

咏「外出先でぽちぽちやってるからIDが違うけどカンベンな。あとトリップもうろ覚えだから間違ってるかもしれないねぃ」



咏「まずは桐壺の巻。これはほとんどみんなが知ってそうな話だから割愛させてもらったねぃ」

京太郎「冒頭の『いづれの御時にかーー』は教科書にもよく載っている内容ですね」

咏「桐壺の巻は

①源氏の誕生と実の母、桐壺の女御の苦悩と死。
②それに伴って現れた藤壺への家族愛が恋心に変わっていく経緯。
③源氏の成人。葵の上との結婚と藤壺への実らぬ恋心。


の3つが重要だぜぃ」

京太郎「よく試験に出やすいのは①ですね」

咏「有名どころだし、倫理的にも問題のない内容だからねぃ。②と③には義母への恋って今現在許されない内容が含まれちゃってるからしゃーない」

京太郎「日本では義姉義妹との恋なら許されることもありますけど義母は許されませんからね」

咏「まあメッチャ好みの5歳上のねーちゃんと一緒に暮らすことになったら確かにそう言う気持ちも持っちゃうかもねぃ。知らんけど」

京太郎「5歳しか違わない義母ってところも現代だと中々ないところですよね」

智紀「おねショタ」

京太郎「黙ってろ」




咏「箒木、空蝉、夕顔の三巻をまとめて『箒木三帖』って言ったりもするぜぃ。箒木三帖の特徴は、源氏の恋が一度は実るものの巻の最後はビターかバッドなエンディングだってところだねぃ」

京太郎「箒木では一度限りで振り向いてくれない、空蝉では衣のみ抜け殻のように残されて避けられる、夕顔は死ぬ。確かにいずれもハッピーエンドとは言えませんね」

咏「覚えておくべきものの1つとしては六条御息所だねぃ。このあと随分と長く物語に関わってくる上に、その娘も後々キーパーソンとなる。それと嫉妬深くプライド高い性格も併せて覚えとけー」

京太郎「夕顔以外で御息所に呪われたのはみんな正妻格って覚えると更に分かりやすいかも知れませんね」

咏「それと、箒木三帖のヤマは2つだな。まず1つは『雨夜の品定め』だ。内容さえ覚えておけば現代語訳も簡単だしねぃ」

京太郎「もう1つは夕顔の死の場面ですかね。多少のファンタジー要素含んでますし、オチもきちんと付いてます。出題者側としては使い易い場面ではないですか?」

咏「確かに。ちなみに江戸時代の読者には夕顔に恋してポケットマネーで慰霊碑建てちゃうひともいたそうだよ。そしてそこが所謂聖地巡礼スポットにもなってたらしいねぃ。知らんけど」

京太郎「いつの時代も日本は日本ですね」

咏「成長しないねぃ」


今度こそ若紫へ続く


咲「遅かったね京ちゃん」

京太郎「ああ、ちょっと野暮用でな……」

咲「女の子とイチャイチャおしゃべりすることが野暮用とは幸せな人だね」

京太郎「それは先週の話だろ。本当に野暮用があったんだよ……」

咲「へえ、それって私を待たせる理由になるものなのかな?」

京太郎「そういわれると何も返す言葉もないっていうか……てか一方的な約束をしてきたのは咲の方だろ」

咲「京ちゃん!」

健夜「ちょ、二人とも落ち着いてよ!目の前でケンカとかされたら私どうすればいいかわからないよ!」

京太郎「あ、小鍛治プロちわっす」

咲「いたんですね」

健夜「最初からいたよ!なにその反応!」

京太郎「ところでなんで小鍛治プロを呼んだんだ?若紫の解説なんて咲一人でもできるだろうに」

咲「私、紫の上とか藤壺の君の話になると感情移入しちゃって公平な立場の解説ができないんだよね。だから源氏物語マスターの小鍛治プロを呼んだんだ」

健夜「何!?私いつの間にそんな呼び名で呼ばれてるの!?」

恒子『すこやんが源氏物語を何度も読み直して光源氏的男子にあこがれているのはリサーチ済みだよ!』

健夜「え!こーこちゃん!?どこにいるの!?出てきて一から説明して!」

咲「えー、っと。じゃあ紫の上との出会いから始めようか」

京太郎「ああ、よろしく頼むよ」



咲「若紫は大きく3つの場面に分けられるよ」

京太郎「源氏物語って一つの巻に3つのエピソードを入れるの好きだよな」

咲「まずは教科書にも載っている『光源氏と紫の上の出会い』だね。有名どころ過ぎて最近は試験にも出にくいみたい」

京太郎「教科書に載ってるレベルだもんな。ここが若紫の巻のスタートなんだな」

健夜「そうだね。泣き声がするからと覗いた垣根の奥の10歳の幼女に思春期の光源氏が一目惚れするところからこの物語はスタートだよ」

咲「薄い本の導入みたいですよね」

京太郎「よーし年齢的な問題も踏まえて後で話し合おうか」

咲「まあそれは光源氏の義理の母で初恋の相手、藤壺の姪だったという理由付けがされているね」

健夜「それでも『若』紫に一目惚れしたって事実は変わらないけどね……はあ」

京太郎(どうして『若』を強調したんだろう)

咲(それは触れちゃいけないことだよ)

京太郎(直接脳内に…!)

咲「光源氏は紫の上の保護者である尼君、の兄の僧都に紫の上を引き取りたいと懇願するんだよ」

健夜「『お宅の10歳の孫娘に一目惚れしました。(私の妻にしたいので)引き取らせてください』って感じだね」

京太郎「時代が時代なら通報者ですね」

咲「僧都は冗談だろうと笑って話を逸らすの。でも光源氏は真剣だった。真剣に幼女を自分のもとに置きたいと考えてたの」

京太郎「なんなの?最近の女子高生は言葉を選ぶってことを知らないの?」

咲「でもこのお話は御破談になっちゃったの。そして話は次の展開へと移っていくの」

 


健夜「続きは私が話すね。藤壺の姪を引き取れなかった光源氏は、やっぱり藤壺は美しいと考えるようになるの」

京太郎「同じ血を引く幼女に見惚れるくらいですから、相当好みに合ったんでしょうね」

健夜「ある日、光源氏は我慢ならなくなって藤壺を襲うの」

京太郎「襲う……えっと、殴ったりとか………」

健夜「今時の言葉で言うなられいp「それは流石にダメです」

咲「義理の母との禁断の愛ってやつだね!」

京太郎「禁断過ぎる!」

咲「当時は叔父姪婚をはじめとした近親婚は普通にあり得たんだよ」

健夜「藤原道長の三女の夫である後一条天皇は一条天皇と道長の長女の子供だしね」

咲「なんなら一条天皇も道長の姉の子供ですよね」


健夜「こんな感じだね

   ┏━━┓
   姉  道
 天┳上  長
 皇┃   ┃
  ┃   ┣┳┳┓
  ┃   ┃┃┃┃
  一   ┃┃┃┃
  条━┳━長次┃四
  天 ┃ 女女┃女
  皇 ┃   ┃
    後   ┃
    一━━━三
    条   女
    天  
    皇
                」


咲「ちなみに四女の夫も次女の娘だったりするよ」
 
京太郎「日本でもハプスブルグ家的な近親婚があったんですね」

健夜「話を戻して……藤壺はいけないことと知りながらも若く魅力的な光源氏を拒み切れなかった」

咲「空蝉は拒むことができたけど、藤壺には彼女ほどの強い意志はなかったんだね」

健夜「そして、ついには二人の間に子供ができてしまうよ」

咲「本妻の葵上とはまだなのにね」

京太郎「それは言っちゃいけない」

健夜「ここからは若紫の続きの巻の話になるんだけど、次……は飛ばしてその次の紅葉賀の巻で藤壺は臨月を迎えるの」

京太郎「おおういきなり」

健夜「まあ世間に公表した妊娠日としては臨月だったけど、実際は光源氏との子だということを誤魔化すために一ヶ月早く妊娠した日を報告したせいで本当はまだまだ生まれるはずがなかったの」

京太郎「ドロドロし始めましたね」

健夜「紅葉賀では光源氏の父、桐壺帝の50歳の誕生日会的なものが開かれていたの。そのリハーサルを出産を間近(実際はもう少し後)に控えた藤壺をねぎらう会として行った」

京太郎「藤壺の気持ちを考えたらいたたまれなくなるシチュエーションですねそれ」

健夜「この時、源氏は親友の頭中将と共に青海波を舞った。美青年二人のその舞には、二人のことが大嫌いな弘徽殿女御ですら『美しすぎて神にさらわれそう』とかいう嫌味になっているのかわからない嫌味を言うくらいしかできないほど素晴らしかったの。藤壺はそれを見て光源氏の魅力を再確認するとともに自分の犯した罪について改めて考えることになった」

(きゅふっ)

京太郎(なんだ今の声)

健夜「そしてその後、ついに藤壺の第一子が産まれる。その子は、やっぱりというべきか光源氏そっくりだった」

京太郎「バレなかったんですか」

健夜「『兄(源氏)に似て美しい』的なことを言って喜ぶ桐壺帝を見て、藤壺はバレないかドキドキしっぱなしだったみたい」

京太郎「でしょうね」

健夜「そしてその後、光源氏は少し出世したところで紅葉賀のお話はおしまい」

 


咲「少し話は戻して若紫のラストの話だよ」

京太郎「おーまだ続くのか」

咲「さっき話してた若紫の保護者である北山の尼君が死んでしまう。それを聞いて紫の父である兵部卿宮(藤壺の兄)が紫を引き取ろうとするの」

健夜「まさかちょうど自分の妹が義理の息子と不倫してるとは兵部卿宮も思わなかっただろうね」

京太郎「小鍛治プロまでボケに回らないでください」

咲「光源氏は兵部卿の妻が紫のことを嫌っていることを聞いていた。紫がその女にいじめられるというあくまで予想をしたことを理由に紫を強引に引き取ってしまう」

京太郎「もはや一種の拉致だな」

咲「紫は突然引き取られたことで最初は怖がっていたけど、優しく接してくれる光源氏にだんだん心を開いて源氏を兄のように慕うようになっていったの」

京太郎「へえ………この前までの帚木三帖と比べるとずいぶんさっぱりと、ほぼハッピーエンドで終わるんだな」

健夜「紅葉賀だって光源氏はほとんどノーダメージだからね。若紫、紅葉賀とその次の花宴は光源氏の思いのままにことが進むの。……まあそのあとはあの人が再登場しちゃうんだけど」

咲「末摘花なんてなかった。いいね?」

京太郎「お、おう………ところでなんで咲は紫にや藤壺に感情移入するんだ?」

咲「え…………それは………き、京ちゃんには関係ないでしょもう!」

京太郎「あっ、こら待て咲!お前が走り出すと道に迷うこと間違いないんだから!ここ海外だからさすがに俺でも見つけられねえってば!」

健夜「えっと……終わり、でいいのかな?」


つづく!



     












             

というわけで若紫(+紅葉賀)でした
書くことが多すぎてなかなかまとまらず遅くなりました。。


今回はおまけの小ネタをひとつ

今後も気が向いたら書いていこうと思います。それでは



光源氏

玉のように光る美しさを持つ、源氏という名の男性
その光は少しまぶしくて……


「宮永ーお前も一緒に来いよ」


陰にいた私に光を照らした人
最初はなじめなさそうで、怖かった。けど、


「うーん、じゃあ『咲』で。これからは名前で呼ぶことにするわ。その方が親近感でるだろ」


優しくて、接するうちに安心できるようになって
もっと近づきたくなって


「ほら、はやく来いよ咲」


あなたの隣、この位置だけは誰にもわたしたくないなあ……



「待ってよ、京ちゃん!」


3年一緒にいる、私だけの……


 

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