エリカ「入れ替わってる……!?」 みほ「貴女の名は」 (1000)
エリカ「――――――っ!」 ガバッ
エリカ「……」
エリカ「夢……」
エリカ「……」
エリカ「もう、1年にもなるっていうのに……」
エリカ「……」
エリカ(……もう、1年にもなるのね)
エリカ(下段ベッドの主がいなくなって、下が無人になってから)
エリカ「…………」
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【注意】
・映画『君の名は。』のネタバレがほんのりあるかもしれません
・地の文も少しですがあります
・戦車は火砕流の中だって突き進むように、多少の矛盾点があってもこのスレは突き進みます
また、彼女の夢を見た。
どこか苛つくのに放っておけなくて
いつもは頼りないのに、ここぞという時頼りになって
妬んで、憧れて、羨んで、追い掛けて――
色々な感情が混ざっていたせいで、結局、どんな関係だったのか、どう想っていたのかも分からない、彼女の夢。
分かる前に、私の前から消えてしまった。
もう1年も経つと言うのに、行き場のない感情だけが、ずうっと残り続けている。
まるで、主を失い空っぽになっても、次の主がやってこないこの下段ベッドのようだ。
代わりも現れず空っぽになったはずなのに、心の中の場所だけを取って邪魔くさいほどに居座っていた。
エリカ「……」
エリカ(結局……) ギシッ
エリカ(ここの下段は、新入部員にも割り振られなかった……) ギシッ
エリカ(それでも足りたから、というのはあるだろうけど……) ギシッ
エリカ(もしかしたら隊長は、まだあの子が戻ると期待しているんじゃ……) ギシッ
小梅「ん……」
小梅「あ、おはよう、逸見さん」
エリカ「ああ、ごめんなさい、起こしちゃったかしら」
小梅「んー……まあ、でも、練習休みだからってお昼まで寝るのも何だし、丁度よかったかも」
エリカ「丁度良くないときに起こさないためにも、そろそろベッドの梯子は取り替えて貰った方が良さそうね」 ギシッ
小梅「……いいの?」
エリカ「……何が?」
小梅「いや、てっきり、そういう部品一つとっても思い出があるから、ちょっと軋んでも敢えて換えてないのかなーって思ってたんだけど……」
エリカ「っ……馬鹿馬鹿しい」
エリカ「たかだか寝具に思い出なんてあるわけないでしょ」 ギシッ……トン
エリカ(そう、思い出なんてあるはずない)
エリカ(それこそ、あの子の寝ていた下段ベッドだって、私はなくなったって問題ないとすら思って――――)
エリカ「……」
エリカ「……」
エリカ「ちょっと」
小梅「?」
エリカ「なにこれ」
小梅「?」
エリカ「空っぽであるべき下段ベッドに、何故かサーキット会場が出来上がっているのだけど」
小梅「ああ、それ……」
小梅「逸見さんが昨日寝た後、明日は戦車道の練習も学校も休みだってことで、皆でちょっと夜更かしをしちゃって……」
小梅「それで直下さんの提案で、皆でミニ四駆をしようってなって」
エリカ「なんでまた……」
小梅「ミニ四駆は火砕流の中だってかっとべマグナムをするし、戦車道に通じるものがあるって直下さんが」
エリカ「正気?」
小梅「それでコースを組み立てたんだけど、普通に歩くのに邪魔だからってことで、一旦そこに置いておこうってなって……」
小梅「あ、でも近いうちに皆でやるミニ四駆大会が終わったら、きちんと片付けるから安心してね」
エリカ「もっと大事な大会があると思うのだけれど」
小梅「でも、ほら、息抜きって大事だし……」
小梅「直下さんも、『ミニ四駆はパーツの交換が死ぬほど楽だし軽くて泣ける』って言ってたし……」
エリカ「いや、まあ、そりゃあ、息抜きの範囲なら咎めはしないけど……」
小梅「……」
小梅「やっぱり、みほさんのベッドに物を置かれると、不満?」
エリカ「ハァ!?」
エリカ「何でそこであの子が出てくるのよ!」
小梅「だって、そりゃあ……」
エリカ「あの子は関係ない」
エリカ「ええ、関係ないわ」
エリカ「何も言わずに一人で抱えて、勝手に潰れて、戦車道から逃げ出した子なんか……!」
小梅「……」
小梅「でも、逃げちゃう気持ちも分かるかなあ……」
エリカ「はぁ!?」
小梅「私も……」
小梅「去年の大会以降、あんまり、戦車道の時間に居場所はなかったし」
エリカ「……」
エリカ「くだらない」
エリカ「誰にだってミスはあるし、それがたまたま大舞台で出ただけでしょ」
エリカ「それを大舞台に上がれもしない有象無象や普段のミスを棚上げしている奴らが好きに言ってるだけじゃない」
エリカ「もしも批難して許される人間がいるとすれば、それは一度もミスなんてしたことのない西住隊長だけよ」
エリカ「あの時がたまたまカバー出来るレベルを越えていただけ」
エリカ「敗戦は私も含めて全員が重く受け止めなくちゃいけないし、誰かのせいにだけすればいいわけじゃないわよ」
エリカ「だから、そんなくだらない罵倒や陰湿な嫌がらせなんて、気にもとめなければいいの」
エリカ「西住隊長だって、気にするなっておっしゃってたんだから」
小梅「……逸見さん、顔とか雰囲気に似合わず意外とちょっと優しいよね」
エリカ「当然のことを言ったまd……今しれっと小馬鹿にしなかった?」
小梅「気のせいだと思う」
エリカ「……まあ、いいわ」
エリカ「……そりゃあ確かに小梅はミスを、あの子は自分の選んだ選択肢と勝利を両立できなかったことを責められても仕方がないわよ」
エリカ「無責任で八つ当たりみたいな批判の言葉は無視していいけど、実力が足りなかったことは受け止めなくちゃいけない」
エリカ「……そのうえで、成長して黒森峰に恩返しをするのが、連覇の歴史に土をつけた者の責任でしょ」
小梅「……」
エリカ「なのにあの子は、逃げ出したのよ」
エリカ「一人で勝手に抱えて、潰れて……」
エリカ「逃げ出したのよ!」
小梅「……逸見さんは、強いよね」
エリカ「……はあ?」
エリカ「別に、強くは……」
小梅「私は……頭で分かってても、無理だった」
小梅「同じ車両に乗ってて一緒に戦犯扱いされた仲間と固まって、ずっと泣いてるだけだった」
小梅「……」
小梅「それで……ありがとうすら、言えなかった……」
小梅「同じ車両の人達からも責められてたみほさんは、きっと私よりも、孤独だったはずなのにね」
エリカ「……」
小梅「だから私は……みほさんを、責める気には、なれないかな……」
小梅「それにほら、私は何だかんだで成長できたなーって思うし、みほさんも、転校を切っ掛けに何か成長するかもだし……」
エリカ「そんなこと、あるわけないじゃない」
エリカ「……道っていうのは、前に向かう者にだけ開かれているのよ」
エリカ「あの子の気持ちなんて、理解できるわけないでしょ」
小梅「確かに、本人か、本人に近い存在にでもならなきゃ分からないのかも」
エリカ「……」
エリカ「ふん」
エリカ(何よ、それだとまるで私が近い存在じゃなかったみたいに……)
エリカ「……」
小梅「?」
小梅「あれ、どうかしたの?」
エリカ「……いいえ、なにかちょっと寝起きで思考が迷走しただけ」
エリカ「朝は弱いのよ」
小梅「でも夜もあんまり強くなかったような……」
小梅「一日通して最弱なんじゃない?」
エリカ「ちょっと」
小梅「強い時間帯とかあるの?」
エリカ「あるわよランチタイムとか」
エリカ「……っていうか、もしかして私のこと嫌いなの?」
小梅「そんなことないけど」
エリカ「どこか辛辣だし」
小梅「愛情表現だよ」
エリカ「……」
小梅「疑ってる?」
エリカ「……」
小梅「針の筵だった私達が戦車道の時間を何とかやれてたのは逸見さんのおかげなんだよ」
小梅「あの時から、逸見さんのことは大好き」
小梅「私、多分、逸見さんで、その……頑張ればヌけr」
エリカ「言わないで」
小梅「それに、証拠になるか分からないけど、味方についてもらった当時は逸見さんをオカz」
エリカ「聞きたくなかった!!」
小梅「何なら証拠としてこの場でヌk」
エリカ「そんな側面は知りたくなかったし出来ることなら夢であって欲しいほどなんだけれど」
小梅「まあ、それは冗談として……」
エリカ「その冗談は笑えないわよ」
小梅「逸見さんの恋愛遍歴ほどじゃないよ」
エリカ「……は?」
小梅「初恋の顛末とか」
エリカ「は?」
小梅「まあ、それは置いておくとして……」
小梅「実際、私は本当に逸見さんには感謝してるの」
エリカ「いや、ていうか恋愛遍……は?」
小梅「逸見さん、すごくひたむきで、だからこそ逃げるような子が駄目なんだろうけど……」
エリカ「っていうか恋愛トークとか黒森峰で誰かに話した覚えないんだけど誰から聞いたのそれ」
小梅「きっと、ゆっくり話し合えれば、みほさんとも、また昔みたいに仲良くなれると思う」
エリカ「いや今はその話はいいから」
小梅「いつか……みほさんの心も、分かるようになるといいね」
エリカ「今分かるべきはソレよりもどこから恋愛遍歴探ったのかと広めてる奴は誰なのかだからいやほんと教えなさい」
ピンポーン
小梅「あれ、誰だろ」 パタパタ
エリカ「ちょ、誤魔化s――」
小梅「あ、隊長」 ガチャ
エリカ「!?」
小梅「どうかされましたか?」
まほ「ああ、いや、エリカと約束がな」
エリカ「……」
エリカ「!?」
エリカ「ちょ、も、もうこんな時間……!?」
エリカ(し、しまった……赤星と戯れすぎた……!)
エリカ「す、すみません隊長、今急いで準備します!」
エリカ「化粧と着替えに20……いえ、10分だけ! 10分だけ頂けますか!?」
まほ「構わんが……」
小梅「あ、これ使う?」
小梅「化粧の手間が一気に削減できる――」
エリカ「えっ、何だか分からないけど助か――」
小梅「――目出し帽とサングラス」
エリカ「――らないわよ! いらないし、時間ないんだから冗談なら枕にでも言ってて!!」
エリカ「ええと、下着下着……」 バタバタ
エリカ(どうせ誰かに見せるでもないし……)
エリカ(とりあえず近くにあるやつを……!)
小梅「ねえ枕ちゃん、私ね、立派な車長になりたいの」
小梅「そうなんだ、じゃあ私操縦手やるから車長やってみなよ」 ウラゴエ
小梅「わあ、ありがとう」
小梅「ウィン」
小梅「なんで自動ドアなんだよ」 ウラゴエ
エリカ(本当に枕相手に冗談言ってるっ……!)
エリカ(っていうか枕と漫才やろうとしてる……!)
小梅「自動ドアだと弾飛んできたらウィンと開いて操縦席にダイレクトアタックするじゃねえかよ」 ウラゴエ
エリカ(突っ込んだら負け突っ込んだら負け……)
まほ「ふふっ、赤星はなかなかにユニークだな」
エリカ(嗚呼そいつを甘やかさないで下さいでもその優しさがマジキュートあんどリスペクトっ……!)
小梅「去年の大会の直後は、しばらく枕しか会話相手がいませんでしたから……」
エリカ「重ーーーーーーーーーいッ!」
エリカ(って、あの二人に意識を割いてる場合じゃあないッ!)
エリカ(とりあえず最低限の化粧だけでも……) バタバタ
エリカ「お待たせしました!」
まほ「ん、そんなに慌てなくてもよかったが……」
エリカ「いえ、隊長をお待たせすることなど……!」
まほ「赤星の枕との冗談のおかげであまり待たされたという気はしないがな」 フフ
エリカ「は、はあ……」
まほ「ちなみに最終的にあの枕は今日からシュトゥットガルトと名乗ることになった」
エリカ「……?????」
まほ「聖グロリアーナは紅茶の名前、アンツィオは料理の名前と、校風の元となった国にちなんだ名前を名乗る学校は少なくない」
まほ「そこで我々も見習って、ドイツにちなんだ単語をつけようという話になってな」
エリカ「いや、あの、本当にこんなこと言っていいか分からないし何なら恐れ多いんですけど、その」
エリカ「枕ですよ?」
小梅「名前がつくと愛着がわきやすいって聞くし……」
小梅「それに、物にだって魂はあると思うから」
小梅「心と心を通わせれば、ヒトとモノとの友情だって……」
エリカ「へえそうよかったわね、隊長行きましょうか」
小梅「ひどい」
<神社>
まほ「悪いな、付き合わせて」
エリカ「いえ!」
エリカ「お供をさせて頂けて、光栄です」
まほ「……」
まほ「戦車道にまぐれ無し」
まほ「とはいえ去年のような不幸な事態が起こることもある」
まほ「勿論、そうなってももう同じ轍を踏まぬよう努力はした」
まほ「……だが、それでも……」
まほ「怪我をしないためにも、あんなこと、もう起こらないに越したことはないからな」 チャリーン
まほ「……」 パンパン
まほ「……」
まほ「気休め程度の神頼みと、気持ちを高める必勝祈願だ」
まほ「……神などという不確定なものに逃げるなんて失望した、とエリカに言われてしまうかもしれながな」 フフ
エリカ「そ、そんなこと言いませんよ!」
エリカ「隊長が逃げるなんてこと、ありえないのは私が一番良く知ってますし!」
エリカ「隊長は強い方ですから!!」
まほ「…………ああ」
まほ「折角だ、エリカも何かを願ったらどうだ?」
エリカ「私の願いも、隊長と同じくですが……」
エリカ「そうですね、折角ですので、私も自分でお賽銭をして、黒森峰の必勝祈願をしたいと思います」
まほ「……いや……」
まほ「黒森峰の戦車道のことは一旦忘れて、自分自身のことを願ってほしい」
エリカ「え?」
まほ「エリカには……来年、本格的に黒森峰を背負ってもらうことになるだろう」
エリカ「はい。その器があると、判断して頂けたのなら、是非とも」
まほ「3年のときは、嫌でも黒森峰全体のことしか考えることが出来なくなる」
まほ「そうなる前、今の間は、自分のやりたいことをして、自分だけの戦車道を積み重ねてほしい」
まほ「長い目で見れば――きっとその方が、黒森峰のためになる」
エリカ「隊長……」
エリカ「わかりました!」
エリカ「では不肖逸見エリカ、進言頂いた通り、戦車道に関する個人的望みを――」 バリバリ
まほ「……」
エリカ「……」
まほ「……見事なまでに小銭がないな」
エリカ「……」
エリカ(すっかり忘れてた……)
エリカ(後でオシャレなカフェでも行くだろうと思って、そこで財布に小銭ジャラジャラしてると格好悪いからって全部出したんだ……)
エリカ「えーい、こうなったらもう奮発して1万円よ!」
まほ「!?」
ヒラッ
パンパン
エリカ「……」
エリカ(誰よりも『戦車』というものを身近に感じられる存在になりたい……)
エリカ(そして『生ける戦車道』なんて呼ばれるくらいの存在になって、隊長達に肩を並べたい……!)
シーン
???『その願い、叶えてしんぜよう』
エリカ「え?」
まほ「どうかしたのか?」
エリカ「いえ、何か今聞こえたような……」
まほ「何か……?」
▼筋力があがった! ピローン
▼技術があがった! ピローン
▼敏捷があがった! ピローン
エリカ「なんというか、こう、パワプロチックというか、ミートカーソル上げられそうというか……」
まほ「……???」
エリカ「いえ、すみません忘れて下さい多分疲れてるんです私」
<自室>
エリカ(……その後も散々すぎて、思い返すだけで泣けてくるわ)
エリカ(もう内容も思い出せない変な夢のせいで寝不足だったし……)
エリカ(喫茶店でもさほど会話を盛り上げられずに終わった)
エリカ「……」
エリカ(ああ、余計な会話なんてしなくても落ち着けるような人間関係が欲s……)
エリカ「……」
エリカ(だめだめ、そんな非現実的な夢ばっか見ててもしょうがないわ)
エリカ(とりあえずさっさと寝ないと……寝不足の不味さは、自ら証明してしまったし)
☆ ★ ☆ ★ ☆
エリカ「……」 zz...
エリカ「……」 zz...
エリカ「……」 モゾモゾ
エリカ「んっ……」 ピクン
エリカ(やだ、誰かに触られ――――!?)
エリカ「……」
エリカ「……」
エリカ「……ん?」
エリカ(誰かしら、これ……)
エリカ(少なくとも、黒森峰の戦車道メンバーじゃあない……)
エリカ(っていうか、体も全然動かないし……)
エリカ「……」
エリカ「……夢?」
エリカ(明晰夢ってやつかしら……初めて見るわね……)
エリカ(それにしても……) ピクン
エリカ「んっ……」
エリカ「ちょ、なんでさっきから体を弄られっ……!」 ビビクン
エリカ(明晰夢でこんな夢を見るなんて、も、もしかして欲求不満だとでも言うの……?) カァァァァ
???「んー。奥までよく見てみないとなあ」
エリカ「!?」
エリカ(ちょ、いくら夢でもソレは――――)
???「鏡ー」
???「はいよー」
エリカ(鏡ねえ……)
エリカ「…………」
エリカ「!?」
エリカ「う、嘘……この姿……」
エリカ「わ、私――――」
,___、
,_}=n==n{______、
/-/ /l_l| } =(二iニニO
,/-/ ,/ヘ__lノ----ノ フ
,---i-←'―‐'―‐‐`--.l-----`------、
__←―i='=====i=i__iニ1l|,ol[i==・|;;;;|llニニl_|_,o__、
'-ィ'''''"(,)'''''"(,)'''''"(,)'''''"(,)''''t''ヽ‐→――――→-==、
(大)_、,_、_、,_、_、,_、,_、,_ (><)==),,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,/))==)
ヽ'_i_,),i_,),i_,)i_,),i_,),i_,),i_,),i_,)>ノ==ノ ̄ ̄ ̄ ̄'ノ==ノ
` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´
エリカ「私、IV号戦車になってる――――!?」
そういえば注意書きに載せ忘れましたが書き溜めなしです
それでもさっさと終わらせたいとは思ってます
が、先程から眠気が限界なので、一旦区切りのいいここで投下を中断したいと思います
再開します
戦車知識はガバガバなので、エリカIN大洗とかによくある本格戦車戦とかはないです
エリカ「……」 ポカーン
???「うん、この子は、これで大丈夫そうかな」
エリカ「……」 ポカーン
エリカ「……はっ!」
エリカ「そっか、私、戦車になって整備されてる夢を見てるのね……」
???「意外となんとかなりそうだね」
???「一晩で壊れた戦車五台修理って聞いた時はどうなることかと思ったけど」
エリカ「夢じゃなきゃ、そんなワタミも驚くブラック業務委託があるわけないものね……」
???「もうこんな時間か」
???「仮眠は終わってからにして、総仕上げにかかるか!」
エリカ「……」
エリカ「よく見たら、窓からうっすら陽が……」
エリカ「明け方まで作業して五台も直したのね……」
エリカ「私が人間としてこの夢を見ていたら、お疲れ様でご飯くらい奢るのだけど」
???「あー、さすがに授業休みたいなあ」
エリカ「!?」
エリカ「学生!?」
エリカ「このブラック労働従事者の娘達、若々しいと思ったら学生なの!?」
エリカ「労基は何をやっているのかしら……」
エリカ「いや夢にそんなこと言ってもしょうがないんだけど……」
???「よし、完璧!」
???「これなら生徒会も納得するよね」
エリカ「生徒会が依頼主なのね……」
エリカ「……下請けイジメ、みたいなもの?」
エリカ「別にウチの生徒会に不満はないはずなんだけど……深層心理じゃ生徒会ってものをこんな風に思っているのかしら……」
エリカ「私が動けたら、生徒会にドカンと一発ぶち込んでやるんだけど……」
エリカ「……」 グググ
エリカ「うーん……」 グググ
エリカ「駄目ね」
エリカ「やっぱりそもそも動けないわ……」
エリカ「そもそも体のどこに力を入れたら砲撃できるかも分からないし……」
エリカ「戦車は単独じゃ動けないってことね」
エリカ「喋っても誰にも通じてなかったし、戦車は会話出来ないとか、変なとこだけリアルな夢ね……」
<数時間後>
エリカ「……」
エリカ「ひ、暇ね……」
エリカ「倉庫の中の景色はさっぱり変わらないし、やることないし……」
エリカ「夢ならもうちょっと色々起きてくれるか、私が起きてくれたらいいのに……」
エリカ「時間をあまりに持て余すわ……」
エリカ「……」
エリカ「歌でも歌おうかしら」
エリカ「……」
エリカ「やーってやるやーってやーるやーってやるぜ」
エリカ「……」
エリカ「……やっぱり駄目ね」
エリカ「これじゃ、まるで……」
エリカ「……」
<さらに数時間後>
エリカ「……暇すぎる……」
エリカ「夢の中だからか眠るってことも出来ないし……」
エリカ「なんだかやることがなくて枕と喋っていた赤星の気持ちが少し分かってきたわ……」
エリカ「うろ覚えの歌を頭で再生してみるのも大分飽きたし……」
エリカ「結局デイドリームビリーバー、ラストどうやって終わるのか思い出せず頭の中で15分ぐらいずっと流れてたわ……」
エリカ「ずっと夢を見てるけどそろそろ覚めてくれないかしらほんと……」
エリカ「もしくはいっそ荒唐無稽な展開でもしてくれないと、夢の中で退屈に殺されそう……」
ガラガラガラガラガラ
エリカ「!?」
エリカ(誰か来た……?)
ワイワイガヤガヤ
エリカ「結構大所帯ね」
エリカ「まあ、五台あるっていうし、そりゃ大勢なんだろうけど」
エリカ「それにしても他の戦車って何なのかしら」
エリカ「首も振れないから確認できないわね……」
???「うーん、皆結構乗り気だねえ……」
???「初陣ですからねえ。むしろ武部殿のテンションの下がり具合がおかしいのでは……」
沙織「だってぇ! てっきり東京からイケメン高校生講師くらい来るかと思ってたのに!」
エリカ「うーん、この頭のネジも股も緩そうなのが私の車長なのかしら」
パンパン
エリカ「ん?」
エリカ「あれは確か……西住師範の元に何度か来ていた、西住流の1等陸尉……」
亜美「はい、皆乗り込んで!」
エリカ「あの人が率いるチームの夢を見る、ね……」
エリカ「師事でもしろってお告げかしら」
エリカ「それにしても、私に乗り込むのは誰なのかしら」
エリカ「さっき見かけたロングのゆるふわとショートのゆるふわとストレートの三人でやるには難しいんじゃあ……」
エリカ「……っと」
エリカ「重みが加わった……あの三人はまだ視界にいる……」
エリカ「どうやら死角にまだメンバーがいたようね」
エリカ「見た目のバランス的に、ショートのストレートかしら」
???「あの、これ、どうやって登るんでしょう……?」
沙織「えっ、分かんない、見てなかった……!」
沙織「あっ、生徒会の人達、踏み台を使ってる」
???「踏み台? でしたら次借り――」
???「どうやら踏み台と言っても人間踏み台みたいですねえ……」
沙織「でも華は私の親友だし、踏み台になんて出来ないよ……」
華「そもそもやるとは言ってないんですけど……」
???「しかも自分が乗る方になる前提なんですね」
エリカ「何やってんのよこの子達……」
???「ええと、Ⅳ号の場合は、こちら側から足をかけて――」
エリカ「――――!?」
エリカ(この声……)
エリカ(気のせい!?)
エリカ(いや、そんな……)
エリカ(でも、あの子が戦車道をしてるはずなんて……)
沙織「あ、ほんとだ」
沙織「ここからだと登りやすいかも」
華「スカートですので、どこからでも少し躊躇ってしまいますけどね」
エリカ「……」
エリカ「いや……」
エリカ「聞き間違えるはずがないわ……」
エリカ(ずっと隣で鎬を削ってきたのよ)
エリカ(夢に見るほどに)
エリカ(今回だって、夢に見てもおかしくない)
沙織「でも、さすがみぽりんだよね」
沙織「知識が豊富っていうか」
みほ「え、そ、そんなこと……」 アワアワ
エリカ「みほ――――!」
亜美「じゃ、各チーム役割を決めてくれる?」
亜美「3名のチームは、車長と砲手、装填手」
亜美「4名はそれに加えて装填手、5名は通信手ね」
???「あの、うち6名なんですけど、どうすれば……」
亜美「あら? 貴女は――」
???「あ、ええと、澤梓です。1年の」
亜美「そう。6名チームもいるのね」
エリカ「6人で運用する戦車でも持って無きゃ、無駄な人員ね」
亜美「問題ないわ、役割は色々あるの」
亜美「囮とか」
梓「囮」
亜美「捕虜要員とか」
梓「捕虜要員」
亜美「南斗人間砲弾とか」
梓「ごめんなさいそれはよくわかりません」
エリカ「多分大人しく自分達の乗る戦車名と6人って単語でググった方が早いわよ」
エリカ「……いや聞こえてないでしょうけど」
沙織「何とかチョウとか何とかシュとか、何が何だか分かんないよお!」
華「もっと私達にも分かりやすい呼び名だといいんですが……」
エリカ「そのくらい理解しなさいよ……」
沙織「だよねー。運転手とかさあ」
華「隊長とか……」
沙織「狙撃手とか」
華「会長とか……」
沙織「養命酒とか」
華「モンシロチョウとか……」
エリカ「ふざけてないで早く決めなさいよ」
???「アレがオチも笑いどころもないのにダラダラ喋るガールズトークというやつなのでありましょうか?」
みほ「わ、私に聞かれても……」 アハハ・・・
沙織「でも実際どうしましょう?」
沙織「私達のチーム、四人しかいないですし……」
みほ「じゃあ、装填手は通信手と兼任ね」
???「勿論、西住殿がコマンダーですよね」
みほ「ええ!?」
エリカ「そうなるに決まってるじゃない」
みほ「無理無理!!」
エリカ「!?」
???「……」
エリカ「何よそれ……」
エリカ「昔っから自信なさそうで癇に障る所はあったけど……」
エリカ「他の連中に任せられないことくらい、分かるでしょう!?」
エリカ「渋々でもちゃんと適所に収まって働く程度の責任感はあったじゃない……!」
エリカ「それなのに……」
エリカ「こんな脳みそにカニ味噌詰め込まれてるみたいな脳みそゆるふわ女子に命を預けようって言うわけ!?」
沙織「なんだろう、どこかで見ず知らずの人にすっごく馬鹿にされてる気がする」
華「では、秋山さんは……」
優花里「うーん、私は――」
エリカ「この子犬みたいな方のゆるふわは秋山、ねえ」
エリカ「夢の人物って、初見でも何故か名前を知ってるか、もしくはずっと名無しなものかと思ってたけど……」
エリカ「案外細かく設定されてるのね、この夢」
沙織「もお、くじ引きでいいよお」 ゴソッ
華「私は……なんでしょうこれ……」
華「あおてんあか……でしょうか?」
沙織「そうてんしゅ!」
沙織「さっきみぽりんが言ってたやつ!」
沙織「漢字はちょっと間違ってるかもしれないけど」
みほ「蒼天朱……」 ウワァ
優花里「また随分よりにもよってなチョイスをしましたね……」
エリカ「一昔前の魔法のiらんどか00ホームページで見かけたハンドルネームみたいね」
優花里「西住殿、お先にどうぞ!」
みほ「私は……っと」
みほ「……」
沙織「どれどれ……」
沙織「あ、どうしよう、みぽりんコマンドー引いちゃったんだ……!」
沙織「コマンドー嫌なんだったよね?」
優花里「私が言ったのはコマンドーじゃなくてコマンダーですよ」
沙織「似たようなもんじゃないの?」
優花里「いやでも、コマンドーって言うと、もっと全然別のものが頭に……」
みほ「そうだね……」
みほ「武器なんか……」
みほ「戦車なんていう武器なんか捨てて、かかっていきたかったのにね」
優花里「西住殿!?」
沙織「重い! 重いよみぽりん!?」
華「お、およそ戦車道の試合直前にする発言と表情じゃないですけど大丈夫ですか!?」
エリカ「その諦めたような笑顔が怖いわ……」
優花里「ま、まあ、何にせよこれで二席は埋まったわけですし……」
優花里「では私はこれで」 ヒョイ
優花里「」
みほ「?」
華「また変な誤字でも?」
優花里「南斗人間砲弾って書かれてるのですが」
沙織「あと1個なんだっけと思ってたら、さっき教官が言ってたのを思い出して」
エリカ「思い出さなくてよかったやつよそれ」
優花里「あの、南斗人間砲弾が何かご存知で?」
沙織「ううん」
優花里「人間を弾代わりに射出するんですよ」
沙織「!?」
華「!?」
沙織「それ、死んじゃうんじゃあ……」
優花里「死ぬでしょうね」
沙織「ひえっ……」 サーッ
華「なんて残酷な……」 サーッ
エリカ「実在しないからそんなポジション」
優花里「それに、装填手とは弾を文字通り装填する人のことなんです」
優花里「つまり……」
華「私が……秋山さんを死地に追いやる……?」 トゥンク
優花里「あれ!? 何かちょっとトキメイてません!?」
エリカ「ちょ、ヤバイわよこの女!!」
華「でも、これどうしましょう……」
エリカ「あの脳みそゆるふわの結果を見て、余った一個をそのストレートにやらせたらいいじゃない」
みほ「とりあえず、最後の一つが何なのかを見てみないことには……」
沙織「あ、そっか」
沙織「私のあまりものは――」
沙織「わっ、余り物に福がある!」
沙織「私社長だって!」
優花里「字が違いますよ……!」
沙織「そーなの?」
優花里「そんな移動に手間取ると貧乏神に取り憑かれそうな名前の役職はありません!」
エリカ「そのうえコマンダーとかぶってるわよ」
みほ「あ、あはは……くじ、私が作り直しますね……」
エリカ「よくよく考えれば、何とか長とか言ってた無知の人間にクジ作らせたらそりゃこうなるわ……」
沙織「じゃあ、改めて決まったことだし、乗り込もっか」
エリカ「……」
エリカ「ん?」
沙織「誰から入るとかあるの?」
エリカ「ちょ、待ちなさい!」
エリカ「あんたらから見ればただのⅣ号かもしれないけど、こっちは人間なのよ!?」
エリカ「人間の中に人間が入るって、出来るわけが――」
華「それでは、お邪魔します」
エリカ「無理無理無理無理!」
エリカ「そんなに入らないから!」
エリカ「ああああああああっ、入ってる! 入ってきてるぅ!!」
エリカ「戦車の搭乗口ガバガバだから痛みとかはないけれども!!」
エリカ「でもっ……でもなんか確実に体の中に何かが入ってきてるぅぅぅぅぅぅ!!」
エリカ「……」 ビクンビクン
エリカ「は、早く起きなさいよ私……」
エリカ「こ、これ、人として大事な何かが失くなりそう……」 ビビクン
華「……少し、鉄臭いです」
沙織「狭いうえに暑苦しい……」
エリカ「文句言うなら出ていきなさいよっ……!」
エリカ「最悪だわっ……!」
エリカ「おへそより下から体の中に固形物入れたことなんて座薬しかなかったのに……!」
エリカ「感覚的には完全に処女喪失じゃないっ……!」
エリカ「こんな感動もヘッタクレもない……!」
エリカ「……」
エリカ「私にもう少し才能があって、もっとゆとりがあれば、今頃恋人くらい作っていて既に終わらせていたのかしら……」
エリカ「鉄臭い血を股から流して、狭くてあったかいとか言われて……」
エリカ「……」
エリカ「考えたら気が滅入ってきたわ……」
エリカ「この最低な夢といい、欲求たまりまくってるのかしら……」
沙織「こんなんでドライブするの?」
亜美『それでは、全戦車、パンツァーフォー!』
優花里「へへ、いよいよ戦車を動かすときが……!」
エリカ「い、いよいよ動かされるのね……」 ゲッソリ
華「あの~……どうやって動かせば……」
エリカ「本ッ当に何も知らないのね」
エリカ「……黒森峰にも多少はいたとは言え……」
エリカ「こうも素人集団とはね」
みほ「まず、イグニッションを入れて」
華「これですか?」 ポチッ
エリカ「ひぎっ!?」 ブブブブブ
優花里「いやっほーう、最高だぜーーーっ!」
エリカ「け、痙攣っ痙攣しゅりゅっ!!」 ビクンビクン
沙織「ひ、人が変わった……」
エリカ「人から人よりっ……人から戦車に変わる方がやばっ……た、助けっ……」 ビクンビクンビクンビクン
みほ「パンツァーハイ……」
エリカ「たす……」 ビクンビクン
華「あの~それからどうすれば……」
エリカ「もういいから!!」 ビクンビクン
エリカ「もうそのままじいっとしてなさい!!!」 ビクンビクン
みほ「アクセルを踏んだら前進」
みほ「前のレバーが操縦桿で、右がシフトレバー」
華「ん……」
エリカ「ちょまっ……」
エリカ「人間として生きてるときは決して味わわない場所に触れるんじゃあないわよ!!」
華「んんんん……」 ギギギギギ
エリカ「~~~~~~~~~~っ!?」
エリカ「だめだめだめだめだめ、そんな風に人の体は出来ては――」
華「重いです……!」
エリカ「やめ――――――――――」
ガコン
エリカ「」 ビクッビク
みほ「よろしくお願いします」
エリカ「――――――――はっ!」
エリカ「あまりのことに何も考えられずにいたわ……」
エリカ「ならいっそ目が覚めるか、気絶でもしたらよかったのに……」
エリカ「……」
エリカ「さすが戦車……意識がほとんどなくても、操縦されたら動くのね……」
エリカ「自分の意志以外で体が動かされるのって気持ち悪いわ……」
優花里「いよいよ攻撃開始ですねえ」
優花里「とりあえず撃ってみます?」
みほ「闇蜘蛛に撃っても……」
エリカ「5台で演習ってことは、殲滅戦よね」
エリカ「下手にこちらの場所を知らせるだけの砲撃をする意味なんてないわね」
エリカ「どこかと組めれば作戦の幅が広がるけど、そもそも地形が……」
エリカ「……」
エリカ「って、会話も出来ないのに、たかが夢の戦車戦にマジになってどうするのかしら」
沙織「ねえ、真っ先に生徒会潰さない?」
エリカ「あ、それは賛成ね」
エリカ「粉微塵にして許される枠でしょアレは」
沙織「教官、女の人だったんだもん」
華「まだ言ってるんですか?」
優花里「ある意味イケメンって言われて女子ウケしててもおかしくない人だったじゃないですか」
沙織「私にそっちのケはないの!」
華「……」
エリカ「何でそんなちょっぴり残念そうなのよ……」
エリカ「私にしか見えないからってそういう表情されるとちょっとマジっぽくてツッコミにくいからやめなさいよ……」
沙織「私が決めていいんでしょ、車長なんだから!」
みほ「え、うん……」
エリカ「ちょっと、こんなのに本当に車長やらせる気!?」
沙織「じゃあ、生徒会チームがいる方へ、前進!」
沙織「……」
沙織「で、どっち?」
ズドーーーーーン
エリカ「!?」
沙織「何!?」
沙織「何が起こったの!?」
エリカ「……不思議な感覚だけど……」
エリカ「車内の状況も、見ることが出来る」
エリカ「戦車の体に馴染んできたってことかしら」
エリカ「外の景色と同時には見られないけど、任意で切り替えはできるのね」
エリカ「外の様子はどうなってるのかしら」
エリカ「……」
エリカ「なんだろう、どんどん戦車に馴染んでいくというか……」
エリカ「戦車としての生き方が分かってきたというか……」
エリカ「首を動かすと考えるから駄目だったのね」
エリカ「目玉をぐるりと回すイメージ」
エリカ「そうすれば目玉は360度自由に動く」
エリカ「正面部に目がついてるから180度回すと車内が見えるのね」
エリカ「後ろ側の外は死角だけど……」
沙織「怖い、逃げよう!!」
エリカ「そこは中の人間がどうにかしてくれるでしょう」
エリカ「……」
エリカ「やっぱり不思議な感じだし、良くはないけど……」
エリカ「運転されるのも、そういうもんだとちょっと慣れてきちゃったわね……」 ゲッソリ
沙織「挟まれた!」
エリカ「へえ、初心者軍団だと思ったけど、普通の作戦を立てる程度の能力がある者はいるのね」
沙織「あっちに逃げよう!」
華「聞こえません!」
沙織「右斜前!!!」
ドグシャァ
エリカ「ちょっとこっちまで痛いからあまり叩き付けないでよ!」
みほ「っ!」
みほ「危ないっ!」
エリカ「え?」
キキィーーーーーーーーーッ
エリカ「あっっっっっぶなかったわ……」 プハー
エリカ「危うく人を轢き殺すところだったわ……」
エリカ「自分の肉体で人間轢き殺すとか、夢であっても最悪よ……」
エリカ「……」
エリカ(体をどう動かしたのかは分からない)
エリカ(でも……)
エリカ(気のせいじゃなければ、車体が少し言うことを聞いたような気がする……)
エリカ「よく考えると、動かすなと思ったときは操縦桿が硬かったようだし……」
エリカ「基本は操縦される存在だけど、全く介入できないわけじゃないのかしら」
エリカ「操縦手は手元の機械を使い小さな力で大きな戦車を動かす」
エリカ「逆に、戦車は大きな力を持ってすれば、逆に向こうに影響を及ぼせるのかしら」
エリカ「最初は操縦桿を固くしたように、今回は素人でも回避できるように回避行動がとりやすいように動いたみたいだし……」
エリカ「ということは、こちらの誘導次第でⅣ号の動きは劇的に変わるんじゃないかしら……」
エリカ「ただ、さっきのは無意識だったのよね」
エリカ「ボールが飛んできたらとっさに腕で顔をかばうのと同じ」
エリカ「戦車の体でつい反応したらああなった」
エリカ「……でも、ああなったということは、あの動きをどうにかすれば再現できるはず」
エリカ「アレをまたやれるかどうかで、この車輌の勝利の可能性が大きく変わるわね」
エリカ「……」
エリカ「まあ、夢なんだからどうだっていいと言えばどうだっていいんだけど……」
エリカ「……」
エリカ「でもまあ、例え夢でも戦車道」
エリカ「負けて終わるつもりなんてないわよ……!」
ちょっと疲れたので、休憩します
昼寝するので寝過ごしたら普通に明日まで投下ありませんが、起きれたらまた投下します
あと、今気づいたけど、>>48だと装填手が各車両二人いますね……
細かなミスは脳内補完して頂ければと思います
起きました
エリカサイドの描写は後々あります
ボガーーーン
沙織「っとと!?」
エリカ「止まってお喋りしてる場合じゃなさそうね」
華「あの、人を保護したから中断してもらうよう頼むのは……」
沙織「やり方わからないよ!」
みほ「と、とりあえず中へ!」
エリカ「そうよ、さすがに人があんなの受けたら死ぬわよ!?」
沙織「ほら、麻子も!」
麻子「……」
エリカ「……」
エリカ「ん?」
エリカ「私、今、戦車だけど……」
エリカ「さっきから夢なのに痛みは妙にリアルにあるし……」
エリカ「これ、直撃されたら、下手すると痛みをモロに受けるんじゃ……」
エリカ「……」
エリカ「に、逃げるわよ! 全速前進っ!!」
麻子「うっ……酸素が少ない……」
エリカ「文句言うと叩き出すわよ」
優花里「大丈夫ですか……?」
沙織「麻子は低血圧で……」
みほ「今朝も辛そうだったもんね」
エリカ「はぁ!? 今朝ァ!?」
エリカ「ちょ……あ、あんたらまさか……!」
沙織「え、麻子と会っ――」
ドゴーン
沙織「きゃあっ!」
華「ど、どうしましょう、急に操縦桿が固く……!」
沙織「自動車部の整備は完璧だったんじゃないのお!?」
エリカ「あんたまさか、この女のためにまた戦車道始めたとか言うんじゃないでしょうね!!」
沙織「もうやだあ!」
みほ「……」
みほ「停車してください!」
エリカ「はぁ!?」
華「ぐっ……上手く止まらな……」
エリカ「ああもう、わかったわよ!」 ガクン
華「止まった……!」
エリカ「ほら、止めたんだから、全員きっちりさっきの問題発言に言及しなさいよ」
みほ「……」 ガチャ
エリカ「ちょ、逃げるんじゃないわよ!」
優花里「い、今出たら危ないです!」
みほ「二発目までは多分時間があるから大丈夫!」
沙織「た、多分って……!」
エリカ「いや……」
エリカ「おそらく実際まだ来ないわ……」
エリカ「さっきまでの砲撃の感覚からいっても、外に出るならば今……」
エリカ「それにしても、戻り損ねて全滅しかねない行動だけど……」
エリカ「……」
エリカ「なによ、あんた……根っこのところ、全然変わってないじゃない」
エリカ「臆病なくせにどこか大胆で」
エリカ「そのくせ的確に勝利に結びつける」
エリカ「ほんと……腹立たしいわね……」
みほ「ゆっくり前へ!」
エリカ「ふうん……ここを渡るってわけね」
エリカ「いいわ、協力してあげる」
エリカ「大分動き方が分かってきたし、踏み外さないよう手を貸してあげるわ」
エリカ「その代わり――絶対勝ちなさいよ」
ブチブチッ
沙織「きゃあ!?」
みほ「ひゃあ!?」
エリカ「ちょっ、ちゃんと真っ直ぐ進みなさいよ!」
エリカ「このままだと、川に――――」
みほ「……っ!」
エリカ「……」
エリカ「川に落ちそう、か……」
エリカ「やっぱり、深層心理では、まだあのこと、私も引きずってるのかしら……」
ギャーギャー
ワー
エリカ「……ま、まずい!」
ズドーーーーーン
沙織「きゃあああああああああ!!」
エリカ「いっ……」
エリカ「だああああああああああああ!!!!!」
エリカ「な、何よコレいっっっっっっっったい!」
エリカ「か、体がっ! 体がバラバラになるっ!」
優花里「操縦手失神! 行動不能!!」
エリカ「わだっ……私もいっそ……気絶させて……」 ゼハー・・・ゼハー・・・
みほ「……」
みほ「操縦は苦手だけど、私がやるしか……」
ブロロロロロロ
麻子「……」
沙織「麻子運転できたんだ!?」
エリカ「よ、よし、ヤバイくらい痛いし、次貰ったら本当にまずいし、さっさと終わらせるわよっ……!」
麻子「今覚えた」
優花里「今ァ!?」
沙織「さすが学年主席」
エリカ「ええい、どうせ夢、なんだっていいわ!」
エリカ「この際シロートでもなんでもいいから、早く勝つわよ!!!」
そこからは、あんまり覚えてない。
酷い痛みの中、必死に動こうとしていたように思う。
結局自分の思い通りに動けていたのか、動かされていただけなのかは分からない。
けど――
あの子の声を、指示を、その耳に受けたことだけは、よく覚えている。
簡単な指示だったけど、それでも。
それでもそれは、あの頃の黒森峰にあった、そして今も未来もあり続けると思っていた、
頼りになる車長・西住みほの姿だった。
☆ ★ ☆ ★ ☆
エリカ「ん……」
エリカ「朝……」
エリカ「ここ……寮の部屋よね……」
エリカ(って、当たり前よね……)
エリカ「……」
エリカ(また、あの子の夢を……)
エリカ(それも、何だか変にリアルな……)
エリカ「……」
エリカ(夢だから、どんどん朧気になるけど……)
エリカ(でも、夢の中で、私、あの子の指揮で――――)
小梅「あっ、逸見さん!」
小梅「おはよう、目をさましたの?」
エリカ「ん……」
エリカ「おはよう」
エリカ「早起きね」
小梅「あ、うん……」
小梅「その……」
エリカ「何よ、歯切れ悪いわね」
小梅「逸見さんが心配で……」
エリカ「……はあ?」
エリカ「昨日って……」
エリカ「……」
エリカ「ああ、隊長に何か聞いたの?」
エリカ「確かに寝不足で少し変なことを隊長には言ったかもしれないけど……」
小梅「……」
小梅「そっか、逸見さん的には、それは“昨日”のことなんだ……」
エリカ「はあ?」
小梅「その……」 スッ
エリカ「そのスマホがどうしたのよ」
小梅「日付。よく見て」
エリカ「……」
エリカ「えっ……」
エリカ「一日、飛んでる……!?」
エリカ「まさか、私……」
小梅「うん……一日中寝ていたの」
エリカ「うそ……」
小梅「本当だよ」
小梅「それも、息もして無くて……」
エリカ「待って」
小梅「試しに口元に紙切れ当ててみたら微塵も揺れないし……」
小梅「死んじゃってたらどうしようかと……」
エリカ「え、待って本当に」
小梅「動転して救急車を呼びそうになったけど、呼ばなくてよかったあ……」
小梅「直下さんが『救急車を呼ぶって重いんだぞ』って言ってくれてよかったよ」
エリカ「いや見捨てて死人を出すことの方が重いと思うのだけど」
エリカ「いや、っていうかおかしいでしょ息してないって」
小梅「ほ、本当だよ!」
小梅「直下さんとか、同じ戦車のメンバーとか、色んな人に確認して貰ったもん!」
エリカ「だったらもうちょっと騒ぎになってても……」
小梅「ほら、エリカさんってストレス溜まってそうだし、睡眠時無呼吸症候群ってやつなのかなって」
エリカ「ストレス溜めてそうって思ってくれてるならもう少し手間をかけさせないでくれると有り難いんだけどね」
小梅「もう、そんなこと言わないでよお」
小梅「睡眠時無呼吸症候群って眠りが浅くて大変っていうし、たまにはゆっくり休ませてあげようと、先輩たちにもお願いしたんだから」
エリカ「それは……まあ、感謝しないこともないけど……」
小梅「安らかに眠れるようにって、お花も備えたし……」
エリカ「亡き者にしようとしてない?」
小梅「そんなことないよ、むしろニュー逸見さんに生まれてほしいと思ってるほどだよ!」
小梅「だから快眠できるよう、近所のフリマで買ってきた、赤ちゃん用のぐるぐる回るやつを天井に取り付けておいたし」
エリカ「はずせ」
小梅「でも、本当に昨日の逸見さんはおかしかったんだよ」
エリカ「今現在進行形で頭上でぐるぐる周り続けてるおもちゃのせいでおかしなことになってるのだけど」
小梅「そんなの目じゃなかったっていうか……」
エリカ「……」
小梅「学校終わりに皆でミニ四駆を整備しようってなったの」
小梅「それで、どうせだから、ガチで戦車みたいなメンテやカラーリングをしようってなって……」
小梅「戦車メンテ用のワックスだったり塗装液だったり、いろんなものを用意したんだけど……」
小梅「そしたらその臭いが部屋に充満して……」
エリカ「だからこんなに臭いのねこの部屋……」
エリカ「まあ戦車道を嗜む者として、慣れてはいるし、別に不快ではないけど……」
小梅「そうだよね」
小梅「普通戦車道をしてる子なら、そういう反応だよね」
小梅「でもね、昨日の逸見さん、寝ていたはずなのに、臭いがした途端何だか幸せそうな笑顔になってたの」
エリカ「……はあ?」
小梅「さらにね、直下さんがワックスをうっかり逸見さんにこぼしちゃって……」
エリカ「は?」
小梅「逸見さんがそれはもうローション相撲の大関みたいな風貌になっちゃったんだけど……」
エリカ「待って」
小梅「そしたら、本当にこの世の幸せ全てをその身に受けたみたいな表情になって……」
エリカ「本当に待って何一つ言ってることが理解できないのだけど」
小梅「ええとね、まず直下さんっていうのは」
エリカ「そこはさすがに分かるわよ!!」
エリカ「っていうか、冗談にも程があるでしょ?」
小梅「ほ、ほんとだよ!」
小梅「直下さん、写メに撮ってラインで拡散してたはずだから、多分頼めば証拠写真送ってくれるし……」
エリカ「あの野郎」
小梅「それから――」
エリカ「まだ何かあるわけ!?」
ドンドン
エリカ「……?」
エリカ「こんな朝っぱらから、一体――」
「赤星、起きているか?」
エリカ「た、隊長!?」
「その声……エリカか?」
「目を覚ましたんだな!!」
エリカ「うっ……」
エリカ(隊長まで冗談を……?)
エリカ(いや、とてもそうとは思えない……!)
小梅「隊長、すごく心配してたんですよ」
小梅「ずっと『睡眠時無呼吸症候群、そういう病気ではないんじゃないか』って言い続けていたし」
エリカ「良心」
エリカ(本当は化粧をしてからお会いしたいけど……)
エリカ(そこまで心配かけてしまったのならっ……!)
エリカ「隊長っ!」 ガチャ
まほ「」 ビクッ
まほ「エリカか……」
エリカ「はい」
エリカ「その……ご心配おかけしました」
まほ「……ああ」
まほ「心配した」
まほ「私が連れ回したせいだとしたら、すまないことをした」
エリカ「あ、頭を上げて下さい隊長!」
エリカ「あれ、本当に楽しかったですし、感謝してるんですから!」
エリカ「隊長のせいなんかじゃありませんし、仮に昨日のことが一昨日隊長と神社に行ったことが原因だとしても!」
エリカ「私は隊長に謝ってほしいなんて思いませんから」
まほ「そうか……そう言ってくれるなら、助かるよ」
まほ「だが……隊長として少しだけお小言を言わせてもらえるなら……」
まほ「体調管理は大事だぞ」
まほ「別に、体調管理は出来てて当然なので甘えずに無理して出てこい、なんて無茶なことを言うつもりはない」
まほ「休むなとも言わない」
まほ「日頃からきちんと休めるときには休み、不調を感じたら回復に全力を注ぐ」
まほ「病気になれば病院を頼り時間をかけてでも完治させる」
まほ「健康的でなくては、戦車道なんて成し得ないんだ」
まほ「努力家なのはいいが、あまり無理だけはしないでくれ」
まほ「……お前まで、失うわけにはいかないんだ」
エリカ「隊長……」
小梅「隊長が……体調のことを……」
小梅(あ、やばい、ちょっとツボ……だめ、堪えないと……) プフッ
エリカ「ちょっと、隊長が素晴らしい話をしてくれてるのよ!」
まほ「ああ、いや、いい、いい、大丈夫だ」
まほ「それより、その、あと、なんだ、朝起きたら鏡を見る癖を……」
エリカ「はい?」
まほ「……」
まほ「いや、なんでもない」
まほ「それじゃあ。今日はちゃんと授業に出るんだぞ」
エリカ「は、はい! ありがとうございました!!」
エリカ「ああ、なんて幸せ……」
エリカ「隊長が私を心配して下さって、しかも訪問してくれるなんて……!」
エリカ「でも鏡って……どういうことかしら」
エリカ「スッピンはよくないってことかしら……」
小梅「……」
小梅「とりあえず……」
小梅「洗面所に行って、アドバイス通り鏡に向かってみて顔でも洗うとか」
エリカ「……?」
エリカ「鏡って、何が――――」
『バカ』『犬』『誰だお前は』その他、諸々
エリカ「な、ななななによこの文字の数々は!?」
小梅「その、さっき話そうとしてたんだけど……」
小梅「色々あったのに全然起きないから、逸見さんの顔をキャンバスに落書き大会が始まって……」
エリカ「あ、あの馬鹿……!」 バタバタ
エリカ「いないっ……もうベッドが空っ……!」
エリカ「直下のバカはどこ!?」 ガルルルル
小梅「ええと、朝から学園艦の最北端までパウワウ捕まえに行きました」
エリカ「かえんほうしゃで焼き尽くしてやろうかしら」
眠気の限界が来てますし、そこそこキリもいいので一旦中断します
予定より進行ペースが遅いですが、頑張って勧めます
<夜>
エリカ「はあ……今日は散々だったわね……」
エリカ「何よ、オイル拭おうとしたら瞼開けちゃって、そのまま閉じずに眠り続けたって……」
エリカ「私がそんなことしてたっていうの……?」 グギギ
エリカ「それにしてもファラオって!!」
エリカ「ファラオって!!!!」
エリカ「悪口みたいなあだ名付けるなら本人の耳に届かないよう徹底しなさいよ!」
エリカ「はあ……」
エリカ「やっぱりボクササイズは落ち着くわね……」
エリカ「あとは布団でネットサーフィンでもしましょう」
エリカ「……」
エリカ(やっぱり……)
エリカ(睡眠時無呼吸症候群って、そーいう病気じゃないわよね……)
エリカ(むしろイビキというか、変な音は出すみたいだし……)
エリカ(でも私はそういうのもなく、ずうっと静かだったっていうけど……)
エリカ(……)
エリカ(あれは本当になんだったのかしら……)
エリカ「……」
エリカ(あとは何ググろうかしら)
エリカ「……」
カコカコカコ
検索窓『西住みほ 現在』
エリカ「……」
エリカ「アホくさ」 カコカコカコ
エリカ「さっさと寝ましょ」
エリカ「きっと疲れがたまっているんだわ」
☆ ★ ☆ ★ ☆
エリカ「ん……」
エリカ「はっ!」
エリカ「不味い、寝すぎt――――」
エリカ「……」
エリカ「これ……」
エリカ「起きた瞬間感覚で寝坊を理解するやつだと思ったけど……」
エリカ「この体の動かなさといい、この景色といい、まだ夢を見てるみたいね」
エリカ「前に見たのと、同じ夢だわ……」
エリカ「意外と……」
エリカ「夢に入るとすんなり前の夢を思い出せるものね」
エリカ「……」
エリカ「確か、視界を変えるには目玉を動かす感覚だったわね」
エリカ「よいしょっと」 グリン
エリカ「……」
エリカ「!?」
エリカ「ちょ、何やってんのよこれ!?」
エリカ「こんな真っピン……うわっ、三突に旗生えてる……」
エリカ「え、何よあの悪趣味な成金みたいなゴールドは……秀吉でも乗ってるの……?」
エリカ「最悪だわ……戦車を何だと思ってるのかしら……」
エリカ「ま、まさか私も……」
エリカ「……」
エリカ「うげっ、少なくとも中はガーリーに……」
エリカ「何よこのクッションやミラーは……」
エリカ「戦車道に不要でしょ……」
エリカ「大体こんなの転倒した時危ないでしょうに」
エリカ「私の体をこんなにしちゃって……」
エリカ「……」
エリカ「いや違う違う、私の体じゃない!」
エリカ「Ⅳ号をこんなにしちゃって、の言い間違いよ!」
エリカ「いくら夢とはいえ、Ⅳ号を自分と完全に認識するだなんてそんな」
エリカ「……」
エリカ「しっかし暇ね……」
エリカ「戦車道の時間くらいさっさと来てくれればいいのに、夢なんだし」
エリカ「……」
ガラガラガラ
エリカ「!」
エリカ「誰か来――――」
みほ「……」 コツコツコツ
エリカ「あんた……」
みほ「……」 カンカンカン
ガチャ
ストン
みほ「……」
みほ「ふう……」
エリカ「……」
エリカ「なんて顔してンのよアンタは」
みほ「……」
みほ「おかしいな……」
みほ「落ち着く……」
エリカ「ちょっ、何寄りかかってきてるのよ!!」
みほ「……」
みほ「そういえば……」
みほ「昔も、何かあったら、こうして戦車の中で過ごしてたっけ……」
みほ「……」
みほ「私ね……」
エリカ「……なによ」
みほ「……」
みほ「戦車道、嫌いなんだ……」
エリカ「はぁ!?」
みほ「昔は、楽しくやってたような気はするのに……」
みほ「もう、それも思い出せなくて……」
みほ「……」
みほ「色々と、責任とかも、あったのに」
みほ「逃げ出してきちゃった……」
エリカ「何よ……」
エリカ「アンタには才能もあって、環境もあって……」
エリカ「私には逆立ちしたって手に入らないものを持ってるくせに、逃げ出して……」
エリカ「なのに……」
みほ「なのに……」
エリカ「なのにアンタは……」
みほ「この前ね……」
みほ「楽しかったんだ……」
みほ「みんなで、下手くそだけど、頑張って……」
みほ「戦車道、嫌だったのに……」
エリカ「何よそれ……ッ」
みほ「みんな……優しいんだ……」
みほ「一緒に居ると、気楽で、すっごく楽しくて……」
エリカ「何よ……」
エリカ「私だって……あんたの……ッ」 ギリッ
沙織「あれ、みぽりん早いねー」
みほ「あっ、ええと、ちょっと……」 アハハ
沙織「練習試合、近いもんねー」
華「やっぱり、勝ちたいですものね」
優花里「確かに相手は超名門校!」
優花里「ですが、西住殿が率いてさえくれれば!」
麻子「……」
沙織「麻子も何か言いなよー」
麻子「眠い……」
みほ「ふふ……」 クスクス
エリカ「何よ……」
エリカ「戦車道嫌いです、なんて言っておいて……」
エリカ「楽しそうじゃないの……」
エリカ「アンタが嫌だったのは……戦車道じゃなかったんじゃない……」
エリカ「……」
エリカ「何でそれを……」
エリカ「黒森峰から居なくなる前に、言ってくれなかったのよっ……!」
エリカ「貴女のそういう所が、私はっ……」 ギリッ
エリカ「……」
エリカ「楽しそうに、しちゃって……」
みほ「シュトリヒというのは――」
エリカ「……」
エリカ「こんなところで……」
エリカ「こんな素人に、初歩的なことを教えて……」
エリカ「貴女はもっと、レベルの高い所で、上を目指せる存在じゃないっ……」
エリカ「私は……」
エリカ「私は、まだ、アンタに勝ってないのに……」
エリカ「何で、こんなところで――ッ」
☆ ★ ☆ ★ ☆
エリカ「……」 パチ
エリカ「……」
エリカ「最悪の目覚めだわ……」
エリカ「リアリティがあるし……」
エリカ「あれが夢で私の深層心理だとしたら、本当に最悪よ」
エリカ「……」
エリカ「確か……」
エリカ「くそやかましい片眼鏡が、我々大洗女子とか言ってたっけ……」
エリカ「……」
ポチポチポチ
検索窓『大洗女子 戦車道』
エリカ「……」
エリカ「戦車道廃止の記事ばかりね……」
エリカ「……」
エリカ「そりゃそうよね」
エリカ「あんな夢に影響を受けるなんて、とんだ間抜けだわ」
エリカ「……」
小梅「あっ、い、逸見さん……!!」
小梅「その、だ、大丈夫!?」
エリカ「……は?」
小梅「その……」
小梅「昨日、また久しぶりに呼吸が止まってたっていうか……」
エリカ「えっ」
小梅「さすがにそれは睡眠時無呼吸症候群とは違うんじゃないかって、隊長前も言ってたから……」
小梅「隊長、必死で心臓マッサージをしようとして……」
エリカ(隊長ほんと良心すぎて有り難い……)
小梅「胸と胸の間を押した瞬間、逸見さんの口からハンバーグが」
エリカ「は?」
小梅「胸と胸の間を押した瞬間、逸見さんの口からハンバーグが」
エリカ「二度言われてもやっぱり理解できないんだけど」
小梅「私達も何がなんだかよくわからなかったんだけどね……」
小梅「胸と胸の間を押すと、まるで砲撃のように、口から昨日食べてたハンバーグが発射されて……」
小梅「ほら、あの天井のシミ、昨日発射されたハンバーグが着弾したあとだよ」
エリカ「ええっと、うん、ちょっと待って」
エリカ「ハンバーグって着弾って単語を使うものじゃあないと思うのだけど」
エリカ「ようするに、その、口から吐いたっていうことなの?」
小梅「うん……」
小梅「でも吐瀉物って感じじゃなくて、ちゃんと固形だったよ」
小梅「あと、これ以上部屋が汚れると困るからって、途中で窓をあけて……」
小梅「外のゴミ捨て場に飛んでいくように、直下さんが上半身を持ち上げて調整したんだけどね」
小梅「なんていうか、こう、割りと性格に真っ直ぐハンバーグが飛んでいったの」
エリカ「頭が痛くなってきたわ……」
小梅「とりあえず、隊長も含めて皆いっぱい心配してたんだよ」
エリカ「皆……って……」
エリカ「私のその痴態はどこまで広まったのかしら」
小梅「さあ……」
小梅「とりあえず、この前直下さんがラインで拡散してたけど」
エリカ「あの野郎、SNSに流出するってことはとっても重いのよっ!!」
小梅「あと、隊長もやっぱりすごく心配していて……」
小梅「最初はこの部屋に泊まって看病するって言ってたんだけど……」
エリカ「ええ!?」
エリカ「そ、そんな恐れ多い……!」
小梅「うん」
小梅「その事実知ったら、息吹き替えした逸見さんがそのままハンバーグ喉につまらせて自害しそうだったから……」
小梅「ちゃんと止めておいたよ」
エリカ「ちょっと」
小梅「逸見さん、隊長の通り道に置いてある小石をどけることに命を賭けてるとこあるもんね」
エリカ「私を何だと」
小梅「そう言ったら隊長、何か微妙な苦笑いを浮かべて納得してくれたよ」
エリカ「なに、あんたは羞恥で私を死に追いやりたいの???」
エリカ「……」
エリカ「ちゃんとお礼と謝罪に行ってこい、なんて言われなくても分かってるけど……」
エリカ「戦車道の授業、今日ないのよね……」
エリカ「まあ、居残り自主練はどうせ出るんだけど……」
エリカ「ああああああ気不味い……」
エリカ「何よハンバーグ射出って!」
エリカ「真っ直ぐ正面に射出って!!!」
エリカ「これじゃまるで……」
エリカ「……」
エリカ「まるで、人間戦車よね……」
エリカ「……」
エリカ「……」 ギュッギュッ
エリカ「……うん、やっぱり射出なんてされないわね……」
まほ「今されても困るがな」
エリカ「わひゃあああああ?!」 ピョイン
まほ「どうやら少々愉快な動きを出来る程度には元に戻ったようだな」
エリカ「た、たたたたた隊長っ!」
まほ「心配したぞ」
エリカ「す、すみません! すみません!」
まほ「いや、いい。エリカが無事ならば、それで」
エリカ「隊長……」 ジュン
まほ「それにしても、変な嘔吐をもうしなくなったようで安心した」
まほ「今のトライで射出されていたら、ハンバーグが通行人に直撃していただろうからな」
エリカ「すみません、無思慮でした……」
まほ「ああ」
まほ「次からは気を付けてくれ」 ポン
エリカ「はい……」
エリカ「……」
エリカ(締める所は締める厳しさがあり、それでいて優しさも感じる……)
エリカ(少し、不器用な所はあるけど、それでも、私より……)
エリカ「……」
エリカ(私にも……これだけの器があれば……)
まほ「……」
まほ「あの病気の症状だが……」
まほ「私でも分かる範囲で調べようとは思ったのだが……」
まほ「どうにも特殊すぎて、なかなかな……」
エリカ「そ、そんな! わざわざ隊長のお手を煩わせるようなことじゃあ……」
まほ「いいんだ、させてくれ」
まほ「エリカには、未来の黒森峰を背負って貰わなくちゃならないんだ」
まほ「……」
まほ「終わってからでは、何もしてやれないからな」
エリカ「隊長……」
まほ「まあ、エリカは私と違ってインターネットを使いこなしているから」
まほ「エリカの方が、こういうのは早く調べられるのかもしれないが……」
エリカ「い、いえ、そんな使いこなしているわけじゃ……」
エリカ「……」
エリカ「それに……」
エリカ「……」
まほ「それに……なんだ?」
エリカ「あ、いえ……」
エリカ「……」
まほ「何かあるなら、言ってみてくれ」
まほ「言ってみて――その後後悔したなら、そう言ってくれれば、私はその内容を忘れることを約束しよう」
エリカ「隊長……」
エリカ「……」 ギュッ
エリカ「ネットでも、調べきれなかったことがあって、その……」
エリカ「私の病気とは、あんまり関係ないと言えばないのですが……」
まほ「?」
エリカ「その……」
エリカ「あの子の……転校先っていうのは……」
まほ「あの子……ああ、みほのことか……」
まほ「そういえば二人は、友人だったな」
エリカ「……」
エリカ(友人、か……)
エリカ(正直――本当にそうだったのか、大分怪しいけどね……)
まほ「……そうだな」
まほ「エリカには教えておこう」
まほ「みほは――」
まほ「今、大洗女子にいる」
エリカ「――――――っ!」
まほ「……大洗女子は、遠い昔に戦車道をやめた学校だ」
まほ「みほとはもう、戦車道で見えることはないだろ」
エリカ(う、そ……)
まほ「……」
まほ「私は立場上、もう、みほの傍に居続けることは出来ない」
まほ「だから……」
エリカ(大洗って、あの夢の……)
まほ「エリカは、せめて……」
まほ「戦車道以外の道ででも、みほの傍にいてやってくれ」
エリカ(いや、でもまさか……)
まほ「……」
まほ「エリカ?」
エリカ「あ、はい!」
まほ「聞いているか?」
エリカ「も、勿論です!」
まほ「そうか、ならいいんだ」
まほ「……それじゃ、私は授業があるから」
まほ「放課後の訓練には顔を出すか?」
まほ「今日は大事を取って休んでいても構わないが」
エリカ「……」
エリカ「そう、ですね」
エリカ「少しばかり気分が優れないので、今日も休めたらと」
まほ「わかった。伝えておこう」
まほ「……」
まほ「さっき、言ったこと……」
まほ「頼んだぞ、エリカ」
エリカ「はい!」 パァァァァァ
まほ「じゃあな、お大事に」 スタスタスタ
エリカ「ありがとうございました!!」 ペッコリン
エリカ「……」
エリカ「頼むと言われて思わず笑顔で応えたけど……」
エリカ「何を頼まれたのか、全く聞いていなかった……」 ズーン
エリカ「今更聞けないし、どうしたら……」
エリカ「今日は休んでもいいって言ってたし、私の身を案じてくれていたし……」
エリカ「とりあえず、急がないとまずいような内容じゃないだろうけど……」
エリカ「ああ、どうしよう……」
エリカ「……」
エリカ「いや、どうしようは、それよりも……」
エリカ「昨日の夢と、記憶にない昨日の私のことよね……」
エリカ「ありえない……」
エリカ「ありえないはずだけど……」
エリカ「でも、でも……」
エリカ「あの子の転校先は当たっていたし……」
エリカ「ネットにない情報だから、どこかで無意識に目にしていたり耳にしていた情報じゃない……」
エリカ「それに、あの夢を見た日は、私の意識がなくて、まるで人間戦車みたいになっている……」
エリカ「た、多分、間違いない……」
エリカ「そんなの、信じられないけど……」
エリカ「でも、隊長すら知らない大洗戦車道復活が、本当のことだとしたら……」
エリカ「私はリアルな夢を見ていたんじゃあない……」
エリカ「Ⅳ号戦車に憑依していたんでもない……」
エリカ「私……私……Ⅳ号戦車と――――」
エリカ「今更聞けないし、どうしたら……」
エリカ「今日は休んでもいいって言ってたし、私の身を案じてくれていたし……」
エリカ「とりあえず、急がないとまずいような内容じゃないだろうけど……」
エリカ「ああ、どうしよう……」
エリカ「……」
エリカ「いや、どうしようは、それよりも……」
エリカ「昨日の夢と、記憶にない昨日の私のことよね……」
エリカ「ありえない……」
エリカ「ありえないはずだけど……」
エリカ「でも、でも……」
エリカ「あの子の転校先は当たっていたし……」
エリカ「ネットにない情報だから、どこかで無意識に目にしていたり耳にしていた情報じゃない……」
エリカ「それに、あの夢を見た日は、私の意識がなくて、まるで人間戦車みたいになっている……」
エリカ「た、多分、間違いない……」
エリカ「そんなの、信じられないけど……」
エリカ「でも、隊長すら知らない大洗戦車道復活が、本当のことだとしたら……」
エリカ「私はリアルな夢を見ていたんじゃあない……」
エリカ「Ⅳ号戦車に憑依していたんでもない……」
エリカ「私……私……Ⅳ号戦車と――――」
エリカ「入れ替わってる……!?」
サーバエラーなのか重複もしてるし、中断します
眠たいので早く終わりそうですが、そんな何日にも渡ってやるようなネタでもないので、サクサクやりたいと思います
(ここで2度目くらいのオープニング曲がスタート)
エリカ「……」 ポチポチポチポチ
メール『メモ』
メール『今まで起きた入れ替わりは二回』
メール『相手はいずれも大洗女子のⅣ号戦車』
メール『車長はあの西住みほ』
メール『操縦手や、みほと寝たというナルコレプシー』
エリカ「……何って名前だったかしら……」
エリカ「まあいいわ」
エリカ「夢のように記憶が薄れきる前に、メモを取らないと……」
メール『通信手は脳味噌ゆるふわタケベサオリ』
メール『装填手は小型犬ゆるふわアキヤマユカリ』
メール『砲手はトリガーハッピー黒髪ハナ』
エリカ「……」
エリカ「前、あれだけ練習してたのよね……」
エリカ「……」
エリカ「あの子が、大洗で戦車道を続けてるのは、やっぱり納得いかない……」
エリカ「私は……戦車として、どうしたら……」
エリカ「……」
エリカ「……」
エリカ「いやいやいや、何よ戦車としてって、落ち着きなさい私」
エリカ「とにかく、情報がいるわね……」
エリカ「特に、入れ替わってた時の“私”の情報」
エリカ「……」
エリカ「今のところ、動き回ったって報告は聞いてないのよね」
エリカ「……赤星が言うとおり、物にも魂はあった」
エリカ「でも自我まではない、植物みたいなものってことかしら」
エリカ「問題は、胸の間を押したらハンバーグが射出されるやつよね……」
エリカ「おそらく砲撃スイッチってことなんだろうけど……」
エリカ「心臓マッサージ不要って皆に伝えるとはいえ、初見の人間にされたら押されるのは間違いない」
エリカ「……ハンバーグ以外吐いてたかきいて、ハンバーグだけなら夕飯以外は弾にならないってことかもしれないし……」
エリカ「これから毎日、夕食はウィダーインにでもしようかしら……」
エリカ「赤星」
小梅「どうしたの、逸見さん」
小梅「ハンバーグ吐きそうなら、ポリバケツか的を用意するけど」
エリカ「水洗便所でもう一度水難遭ってみる?」
小梅「それで、どうしたの逸見さん」
エリカ「ちょっと、長文のメール送ったから」
小梅「メール?」
エリカ「……昨日とか、この前とか、おかしくなったことがあったでしょ」
エリカ「私なりに、そのときの情報をまとめて、対策を書いておいたわ」
エリカ「まあ基本は放置してってことなんだけど……」
エリカ「またああならないとは限らないし」
エリカ「またああなったら、その時どうだったか、貴女に観察と報告を頼みたいの」
小梅「ふえ、私でいいの?」
エリカ「……ま。ルームメイトだしね」
小梅「ルームメイトなら、直下さんもだけど」
エリカ「あの子は、まあ」
エリカ(まあ、これで少しでも傷を浅くするとして……)
エリカ(実際これからどうするかよね)
エリカ(そんなに頻繁に入れ替わらないといいんだけど、でも……)
エリカ(この感じの頻度だと、きっと、また――)
エリカ(……)
エリカ(眠れないわね……) パカ
エリカ「……」 カチカチカチ
『西住みほ』
エリカ(……)
エリカ(載ってる情報は、どれを見ても、私も知ってるものばかりね)
エリカ(西住流の後継者である西住隊長の右腕として、最高のパフォーマンスをする、史上最強のナンバー2……)
エリカ(……)
エリカ(あの子は……)
エリカ(私がどうしても欲しかったソレを、欲してなんてなかったのね……)
エリカ(そんなこと書いてる記事、どこにもないけど……)
カチカチカチ
エリカ(あ、水着グラビア)
小梅「あ、ごめん逸見さんそういうことするならお手洗いを使ってほし――」
エリカ「わざわざベッドを登ってきてまで何出歯亀してるのかしら」
小梅「ぼ、ボクササイズでキレを身に着けた右ストレートで梯子から落とすの普通に危ないよ逸見さん」 イテテ
直下「どうしたの、何かすごい音したけど」
エリカ「なんでもないわよ、アホがちょっと落下しただけ」
小梅「あのね、逸見さんが眠れぬ夜は君の名をググるよ的なロマンチックな行為を」
エリカ「赤星」
直下「え、誰の名前誰の名前?」
小梅「それがね、みほさんだったの」
エリカ「赤星!!!!」
直下「あー……やっぱり、逸見さんってそうなんだ」
小梅「さっき昔戦車道雑誌でいやいや撮ったっていうグラビア画像を……」
エリカ「バカ星!!!!!!!!!!!!!」
直下「まあまあ、思春期ならそういうことも」
エリカ「ちょっと!」
小梅「ツンデレってやつだったんだね」
エリカ「ここぞとばかりに死ぬまでマウント取ろうとしてくるんじゃないわよ!」
直下「バイブもローターも持ち込み禁止だからないけど……」
直下「代わりにプラズマダッシュモーター使うか?」
エリカ「使うわけないでしょそんなもん!!」
直下「じゃあ、スタビライザーポール」
エリカ「使わないってーの!」
エリカ「大体実際使われたらアンタちょっと困るでしょうが!」
エリカ「はあ……」
エリカ「まったく頭が痛いわ……」
エリカ(天下の黒森峰とはいえ、やはり所詮は女子高校生ね……)
エリカ(マリオカートに夢中でミーティングに来ないような子もいるし)
エリカ(やはり戦車道の授業程度だと、練度はあれど、意識の面で一流なのは極わずか、か)
小梅「あ、それと逸見さん」
エリカ「なによ、私はもう寝るわよ」
小梅「夕食、食べてなかったみたいだけど……」
小梅「食べても大丈夫だよ」
エリカ「……はあ?」
小梅「そりゃあ、また病気かなにかで発射されちゃうかもしれないけど……」
小梅「お部屋が汚れるだけなら、一緒に片付ければいいだけだから」
小梅「ご飯を抜いて、逸見さんが隊長崩しちゃう方が、その、嫌だなって」
エリカ「……」
エリカ「ふん」
エリカ「私のこと気にかけてる暇があるなら、早く寝なさい」
エリカ「明日は朝早くから練習あるでしょ」
小梅「ふふ……そうだね」
小梅「おやすみ、逸見さん」
エリカ「……おやすみなさい」
直下「布団に潜って指挿れたあとはちゃんと洗ってから寝るんだよ」
エリカ「出来ればそのまま眠りから覚めてこないで」
☆ ★ ☆ ★ ☆
エリカ「ん……」
エリカ「くあ……」
エリカ「……」
エリカ「ああ、またこの景色」
エリカ「ということは……」
ガラガラガラ
みほ「……」
華「いよいよですね」
みほ「うん……」
エリカ「やっぱり、今日はⅣ号になってるってことね」
エリカ「……ん?」
エリカ「人数が少ないような……」
エリカ「秋山と武部、あとあのナルコレプシーはどこに……」
華「本当に、大丈夫なのでしょうか」
みほ「うん」
みほ「冷泉さん、朝、思ったよりも弱いみたいで……」
みほ「迎えにいかないと……」
エリカ「……」
エリカ「はあ!?」
エリカ「あ、あの女を朝から私で迎えに行く気なわけ!?」
エリカ「さすがに甘やかしすぎというか、何、あんたアイツの寝起き知ってるくらい、その……!」
華「あ、あら?」
みほ「どうか、しましたか?」
華「いえ……なんだか、全然上手くエンジンがかからなくて……」
エリカ「そんな舐めた理由で戦車を動かそうなんてねぇ」 ガミガミクドクド
みほ「ちょっと見せて下さい」
エリカ「あっ、ちょ、バカどこ触って……!」
みほ「朝早くからごめんね」
みほ「まだ眠いかもしれないけど……」
みほ「動いてくれると嬉しいかな、なんて」 サワッ
エリカ「ひゃうっ」
華「……?」
華「こういうときは、話しかけると効果が……?」
みほ「あ、ううん」
みほ「ええと、なんていうか……」
みほ「小さい頃、上手く動かないときは、こうしてたんだ」
みほ「訓練では、お姉ちゃんの補佐をするため車長に専念させられたけど……」
みほ「それでもよく、お姉ちゃんと一緒に戦車を動かすのが好きで」
みほ「でも上手く動かない度、こうしてお願いすると、不思議と、ちょっと動いたりしたんだ」 アハハ
エリカ「ばっかじゃないの」
エリカ「そんなオカルト、効果あるわけないでしょ」
エリカ「……まあ、今の私がオカルトの極みみたいなものではあるけどさ」
華「ふふ……とても素敵だと思います」
華「お花だって、言葉をかけて育てると綺麗になると言いますし」
華「きっとそういう戦車への愛情が、上手く動かすコツなんですね」
エリカ「……」
エリカ「愛情、ね……」
エリカ「まったく、特別に力を貸してあげるんだから感謝しなさいよ」 キュラキュラキュラ
華「ええと、次右でしたっけ」
みほ「はい、そこで止めて下さい」
華「空砲というのは……」
みほ「これを」
エリカ「……空砲ってまさか」
みほ「目覚まし作戦、開始します!」
華「照準はどこに合わせればいいんでしょう」
華「空砲ですし、あそこを歩いているおじいちゃんの頭とかでも……」
エリカ「ねえこの娘マジで砲手やらせて大丈夫? いつか人殺さない?」
ズドン
華「はぁ……」 ウットリ
エリカ「ううん……」
エリカ「やっぱり自分の体で砲撃されるって変な感じね……」
エリカ「人間ポンプってこんな感じなのかしら……」
おじさん「なんだ!?」
おばさん「どうしたの!?」
みほ「すみません、空砲です」
おじいさん「大変じゃあ、空襲警報だそうじゃ!」
みほ「あ、ええと、そうじゃなくて、その、音だけを出すための」 ワタワタ
おじいさん「防空壕じゃあ、防空壕に駆け込むんじゃあ!」
華「どうしましょう、やはり撃っておきましょうか……?」
エリカ「やはり、じゃないわよ何狙いを定めてんのよ」
優花里「予想より大事になってしまいましたねえ」
沙織「もうっ、麻子のせいだからね」
麻子「私じゃなくて、こんな時間に練習試合を組んだやつのせいだろう……」 グゥ
エリカ「まったく、朝っぱらから……」
エリカ「……」
エリカ「って、今日が練習試合だったのね」
エリカ「……」
おばさん「あらⅣ号、久しぶりに動いてるとこ見たわねえ」
エリカ「まあ、戦車道が注目されるのは、悪くないことではあるし……」
エリカ「大人しく動いてはあげようかしら」
エリカ「……それで素直に叩き潰されて、戦車道の奥深さと難しさを痛感したらいいんだわ」
エリカ「しかしまあ……」 キュラキュラキュラ
エリカ「意外と声かけられるものなのねえ」 キュラキュラキュラ
エリカ「コンビニもあったし、ググったら関東って書いてあったし、てっきりもっと都会で冷たいみたいなのを想像してたけど……」 キュラキュラキュラ
エリカ「……」
優花里「歯ァ磨いて下さい」
麻子「……ん……」
華「顔も洗ってくださいね」
エリカ「しかし本当に戦車の中とは思えないほど日用品持ち込んでやがるわね……」
エリカ「こんなにたくさんいらないでしょ……」
麻子「……」 シャコシャコシャコ
エリカ「歯ブラシとか、戦車に置きっぱなしにするものじゃないんだからね」
エリカ「聞いてる、そこの問題児」
麻子「……」 グチュグチュグチュ
エリカ「……って、聞こえてないのよね、私の声って」
麻子「ぶえっ」 ペッ
エリカ「ちょっ、おまっ、何口ゆすいだ水普通に吐き出してるのよ!!!!!!」
沙織「きゃあっ、ちょ、麻子!」
優花里「わわっ、外! 外に吐いて下さい!!」
麻子「……悪い、つい……」
エリカ「つい、じゃないわよ!!!!」
エリカ「あんた人の体の中を何だと思ってるわけ!?」
エリカ「ああもうやっぱりこの女大っ嫌いだわほんと!!!」
華「あわわ、また上手く動かなく……」
みほ「ええ!?」
優花里「試合前なのに!?」
沙織「もう、精密機器っぽいのに水なんてかけるから!」
麻子「問題ない……あとでちゃんと操縦してやる……」
エリカ「あああああ……確かに心地よく動けるテクニックはあるけど、歯向かってやりたくなるわ……」
杏『よっすー西住ちゃん』
みほ「おはようございます」
桂里奈『合流ー!』
梓『おはようございます』
エリカ「続々集まってるけど……」
エリカ「集まれば集まるほど異質になるというか……」
エリカ「やっぱりこのカラーリングはおかしいというか……」
エリカ「幼稚園児に塗り絵させました、みたいな目に悪いカラーリング、もうちょっと何とかならなかったのかしら……」
ボボォーーーッ
沙織「でかっ!」
華「あれが聖グロリアーナの戦車ですか……」
エリカ「……」
エリカ「はあ!?」
エリカ「聖グロリアーナ!?」
エリカ「あんたらあの練度で聖グロリアーナに挑もうっていうわけ!?」
エリカ「いや、馬鹿でしょ」
エリカ「勝てるわけないし、ボッコボコにされればいいわ」
エリカ「戦車道を舐めたら駄目ってことを痛感したらいいのよ」
沙織「強そう~……」
沙織「でも、絶対勝とうね、みぽりん!」
エリカ「あのねえ」
エリカ「貴女達程度がそう易易と勝てるほど、四強の壁っていうのは――」
優花里「西住殿が指揮を取ってくれるなら、百人力ですよ!」
エリカ「……」
みほ「あはは……頑張るね」
沙織「あんこう踊り、絶対回避しなくちゃだもんね!」
エリカ「……」
エリカ(確かに、どうしようもない素人集団だし、痛い目を見て然るべき連中)
エリカ(でも……)
エリカ(この子なら……もしかして、そんな連中を使ってでも勝てる……?)
エリカ(少なくとも隊長なら)
エリカ(隊長なら、たったお一人で、聖グロ5両に対して五角以上に立ち回れる)
エリカ(……)
エリカ「私だって、隊長の背中を追い掛けて、横に並ぼうと思ってきた身」
エリカ「そして……」
エリカ「ムカつくけど、その私より、隊長の近くにいたのが、この子なのよね……」
エリカ(……)
エリカ(聖グロ相手にどこまで通用するのか……)
エリカ(見たい気持ちがないわけじゃあない)
エリカ(痛い目見ろとは思うのに……)
エリカ(強い姿を、見たいとも思ってしまう……)
エリカ「はあ……」
エリカ「我ながら面倒臭いやつよね……」
エリカ「ふむ……」
エリカ「車長が整列してるけど……」
エリカ「こうしてみると、Ⅳ号の狭い視界だと把握してなかった子がちらほらいるわね」
エリカ「よく分からない目立った軍服の金髪は嫌でも覚えるからまあいいとして……」
エリカ「あれが一年チームの車長で、そっちにいるのがバレー部ね……」
エリカ「生徒会の連中も比較的分かりやすいし、覚えるのはそこまで労せず行けそうね」
エリカ「まあ、覚えたからって何があるわけじゃないけど……」
エリカ「っと、来たようね」
ガチャ
スタッ
???「ふふ……」
エリカ「……相変わらず腹立たしツラねえ」
エリカ「ダージリン」
ダージリン「……」
エリカ「……」
エリカ(こいつ、優雅に飛び降りたはいいけど、存外痛くて足しびれてるわね……遠くを無言で見つめることで誤魔化そうとしてやがる……)
桃「本日は急な申込みにも関わらず、試合を受けて頂き感謝する」
ダージリン「構いませんことよ?」
ダージリン「それにしても……」
ダージリン「個性的な戦車ですわねぇ」 ブフーッ
桃「うぐっ……」
ダージリン「ですが――」
ダージリン「私達はどんな相手でも全力を尽くしますの」 フフ
エリカ「ふん」
エリカ「そんなこと、戦車道を真剣にやる以上当然のことでしょ」
エリカ「さも自分達は特別みたいに語っちゃって」
ダージリン「サンダースやプラウダみたいに下品な戦い方はいたしませんわ」 ハン
ダージリン「騎士道精神でお互いがんばりましょう」
エリカ「……」 イラッ
エリカ「お得意の格言ジョークはどうしたのかしら、少々ディスが露骨じゃないかしら?」
エリカ「って煽っても、聞こえてないのよねえ……」 チッ
エリカ「……」
エリカ「ダージリン……」
エリカ「聞こえてないからこそ、はっきりと言ってあげるわ」
エリカ「私はねェ、アンタのことが嫌いなのよ」
エリカ「黒森峰に勝ったこともないくせに、自分達は最強みたいに澄ましちゃって……」
エリカ「それに、毎回、いい所まで隊長を追い詰めるからって、終生のライバルみたいな顔をして!」
エリカ「車長として、西住まほのライバルはこのダージリン、みたいなことを思ってるんでしょうけど……」
エリカ「私はそんなの認めないッ」
審判「それではこれより、大洗女子学園と、聖グロリアーナ女学院との試合を始める!」
エリカ「アンタがどう思っていようと、私は知ってる」
エリカ「隊長を最も輝かせていたのは、腹立たしいけどあの子だってことを」
エリカ「そして隊長が、あの子の才を誰より認め、いつか越えられるだろうと嬉しそうに語っていたことを!」
審判「一同、例!」
エリカ「そんなあの子を、いつか越えるのよ、私は!」
エリカ「だから、隊長と肩を並べる役は、アンタじゃあないわ、ダージリン……!」
エリカ「私か、あの子ッ」
エリカ「それを証明してやるッ……!」
エリカ「勿論ダージリンは強い……」
エリカ「あのやかましいスピードスターは留守番みたいだけど、甘く見れる相手は一両たりともいない」
エリカ「それでも」
桃『用意はいいか、隊長?』
みほ「あ、はい」
エリカ「こっちの指揮は、あの黒森峰最強と言われた西住姉妹の一角」
エリカ「それに、経験豊富で意思を持った戦車と化した私がいるッ」
桃『全ては貴様にかかっている』
桃『しっかり頼むぞ』
みほ「……っ」
エリカ「今までずうっと隊長との一騎打ちに持ち込まれていて直接やりあえてなかったんだもの」
エリカ「この機会に、私達二人なら、あのダージリンだろうが越えられることを証明するわよ!」
エリカ「あの人と肩を並べ、対等でいられるのは私だってこと、教えてあげるッ!」
『試合開始ッ!!』
エリカ「いくわよ――――」
エリカ「パンツァー・フォーッ!」
うわもうごじ
寝ます
クソ眠いし明日朝早いので今日は戦車と入れ替わって休もうかと思いましたが、
鬼しかいないので飯の合間にちょろちょろとだけ進めていきます
優花里「いよいよ始まりましたねえ」
みほ「うん……」
エリカ「まったく、お遊び気分でいるんじゃあないわよ」
優季『あのお~、それでどうするんでしたっけえ~?』
みほ「先程説明したとおり、今回は殲滅戦ルールが適用されますので……」
みほ「どちらかが全部やられたら負けになります」
あや『そーなんだー』
エリカ「え、そのレベルなわけ?」
エリカ「いやよしんばそうだとしても、事前に頭に叩き込んだりしないの?」
エリカ「……相変わらず、ほのぼのお遊び同好会みたいなことしてるわねえ」
みほ「まずは我々Aチームが偵察に向かいますので」
みほ「各チームは100メートルほど前進した所で待機して下さい」
『わかりました!』
『はーい』
『御意!』
杏『なんか作戦名とかないの?』
みほ「作戦名は……えーっと……」
みほ「こそこそ作戦です」
みほ「こそこそ隠れてこそこそ相手の様子を見て、こそこそ攻撃を仕掛けたいと思います」
エリカ「相変わらずセンスないわねえ……」
エリカ「黒森峰でもそう言われてたのに」
エリカ「もっとこう、サイレント・アサシン作戦とか、そういうセンスを磨きなさいよ」
エリカ「字面で書くと静かなる暗殺者的なやつを書いてカタカナで読む、これがネーミングのコツよ」 フフン
麻子「……なんだ……今日のエンジン音はどこか不快だ……」
桃『姑息な作戦だな』
柚子『桃ちゃんが考えたんじゃない』
エリカ「はあ!?」
エリカ「アンタが隊長なんじゃないわけ?」
エリカ「仮にも隊長なのに、何であんな片眼鏡に指示仰いでるのよ!」
エリカ「アイツ絶対文句だけは一人前のタイプよ!?」
エリカ「調子乗ると高圧的になるし、ああいうタイプは図に乗らせたら駄目」
エリカ「一回ボッコボコにならないと学習しないタイプなんだから」
エリカ「絶対調子乗った挙句読みを外して無様な地団駄ダンスを踏みまくるはめになるわよああいうやつは」
エリカ「……」
エリカ「暇ねえ……」
エリカ「偵察に出られないのが戦車の体の難点ね……」
エリカ「まあ普段は下級生とかに行かせるけど……」
杏「暇だねー待ってる間」
沙織「すぐ戻ってきて移動するみたいだから、外にも出られないしねー」
麻子「私達は囮だから後も暇はないけどな……」
典子「スクワットなら、すぐに中断も出来て体も鍛えられる!」
あや「誰か何か持ってきた?」
優季「トランプならあるけど、あとでやる?」
左衛門佐「近藤勇」
エルヴィン「ぶんぶん」
おりょう「14人」
カエサル「ぶんぶん」
おりょう「土方歳三」
左衛門佐「ぶんぶん」
エルヴィン「15人」
カエサル「ぶんぶん」
エルヴィン「五稜郭」
おりょう「ぶんぶん」
カエサル「五稜……え!?」
エルヴィン「ふっ、アウトー」
エリカ「うるさすぎるのよアンタら! ちょっとは黙って待てないわけ!?」
エリカ「あ、戻ってきた」
みほ「麻子さん起きて」
みほ「エンジン音が響かないように注意しつつ、展開してください」
麻子「ん……」
エリカ「ったく、もっと迅速に戻って来られないわけ?」
麻子「……」
麻子「たまに、こちらが予期せぬ音をエンジンが出すのだが……」
みほ「まさか……」
麻子「今日がそれだ」
エリカ「何!? 私のせいって言いたいわけ!?」
みほ「敵、前方より接近中!」
エリカ「はん、来たわね」
麻子「本当に今日のエンジンはうるさいな……」
みほ「砲撃準備」
優花里「装填完了ッ」
華「ええと、チャーチルの幅が……」
みほ「3.5メートル」
華「4シュトリヒだから……距離、810メートル……」 キリキリ
沙織「!」
沙織「待機中の車輌から通信!」
みほ「!?」
みほ「繋いで下さい!」
エルヴィン『あ、すまない隊長。今、いいか』
エリカ「電話じゃないんだから、今駄目なら改められるような内容ならかけてくるんじゃないわよ!」
みほ「どうかしましたか?」
エルヴィン『いや、ちょっとこちらで揉めていて……』
エルヴィン『他のチームに聞いても終息しないどころか悪化してきたから、ここはもう隊長にビシっと言ってもらおうかと……』
エリカ「はあ!? 何やってるのよ」
沙織「ええと……どうしよう、この通信」
華「私は私で集中して調整しますから、その間に答えてあげてください」
華「そういう些細な悩みに一緒に悩んで答えてあげるところが、みほさんのいいところですから」 フフ
エリカ「……」
エリカ「なによ、こんな短期間で信頼されちゃって」 ムゥ
みほ「それで、どうかしたんですか?」
エルヴィン『いや、五稜郭ってどう数えるのが正解なのかなと』
エリカ「あ゙?」
エリカ「試合中に何アホな通信してきてんのよこのバカ!!」
みほ「五稜郭……」 ウーン
沙織「五稜郭って、あれだっけ、北海道の観光地」
優花里「あんまり数えるものではありませんよねえ」
華(集中、集中……) キリキリキリキリ
エルヴィン『いや、さっき数取団をしていて揉めてな』
エルヴィン『こっちでも1箇所派とか色々いて……』
みほ「数取団……?」
優花里「ご存知、ないのですか?」
エリカ「まあ、小さい頃から厳格な家庭で戦車道ばかりさせられてたんだしね」
エリカ「……まあ私も、知ったのは最近赤星達に教えられてだけど」
優花里「直前に言った名前の物を、数える遊びなんですよ」
エリカ「説明下手か!」
優花里「手軽に友達と出来るので、小学校で流行ってたんですよねえ」
優花里「まあ私は一緒にやる友達なんていなくてやったことないんですけれど」
沙織(重っ……)
エリカ「ああ……ルール説明する機会もなかったのねこの子……」
みほ「えーっと、分かったような……わからないような……」
エルヴィン『まあ、あれだ』
エルヴィン『例えば目の前に五稜郭が複数あるとして……』
エリカ「前提からして大分無茶なことを言ってる自覚ある?」
エルヴィン『それをどうやって数える?』
みほ「え?」
みほ「ええと……」
エルヴィン『例えば、それが6なら?』
みほ「え、ろ、六稜郭」
エルヴィン『ふふっ』
優花里「ぶふっ」
華「ふふっ」 カチッ
華「…………あっ」
ドーン
エリカ「ちょ、何勝手に発射して……し、しかも外れてるじゃないのよ!!」
華「す、すみません……」
みほ「だ、大丈夫、目的は撃破じゃないから」
エルヴィン『な、なんというか……』
エルヴィン『すまん……』
沙織「う、ううん」
沙織「とりあえず逃げるから切るね?」
エルヴィン『あ、ああ』
エルヴィン『他の班には、西住隊長によって五稜郭は○稜郭と数えるのが正解に決まったことをこちらで共有しておこう』
みほ「そ、それはやめてくださいっ!」
エリカ「ホラ、遊んでないで逃げるわよ!!」
明日早いので、早いけど中断します
原作と同じ展開の所はザクザクカットしていきたい
少しだけですが、投下します
みほ「なるべくジグザグに走行して下さい!」
エリカ「訓練された黒森峰の操縦手ならともかく、素人がいきなりそんな……」
麻子「……」 グイッガキン
エリカ「……」
エリカ「やるじゃないの……」
みほ「こっちは装甲が薄いから、まともに喰らったら終わりです!」
エリカ「……」
エリカ「まともに食らって白旗飛び出す威力って、多分、前のより……」
エリカ「……」
エリカ「ま、まともに食らったら私の体が終わるじゃないのよ!」
エリカ「ほ、ほら、逃げるわよ!」
エリカ「どんなエグいジグザグだろうが、私も一緒に駆け抜けてあげるからっ!」
エリカ「ああああああああっ」
エリカ「カーボンなしで聖グロ相手にするのがこんなに不安だなんてっ……」
エリカ「ひっ」 ズドン
エリカ「伊達に四強扱いされてないわね……結構射撃が正確だわ……」
エリカ「何とか、何とか逃げなくちゃ……」
エリカ「あのスピードバカがいなくて本当によかったわっ……!」
ダージリン「思っていたよりやるわね……」
ダージリン「追うわよ」
ダージリン「どんな走りをしようとも、我が校の戦車は一滴たりとも紅茶をこぼしたりしないわ」
エリカ「――とか言って調子こいてそうでムカつくけど、逃げしかまだ出来ないのよね……」
ヒュドンッ
エリカ「ああ、くそっ!」
エリカ「射撃訓練の時間を削ってでもロデオマシーンで紅茶を飲む練習をしてる奴らの砲撃なんて、食らってなんかやらないんだからっ!」
ガチャ
みほ「ふう……」
沙織「みぽりん危ないって!!」
みほ「ふえ?」
エリカ「素人は黙ってなさいよ、今こっちは切羽詰まってるのよ!」
みほ「ああ、戦車の車内はカーボンでコーティングされてるから大丈夫だよ」
沙織「そういうんじゃなくて!!!」
沙織「そんなに身を乗り出して当たったらどうすんの!?」
みほ「まあ、めったに当たるものじゃないし……」
みほ「こうしていた方が、状況が分かりやすいから」
エリカ「一定以上のレベルの車長ならこんなの当然よ」
エリカ「……素人が車長をやるのが難しいとされる一因ではあるし、怯えるのも分からなくはないけど……」
エリカ「でも幼い頃から戦車道をしてきて、車長をしているものなら、こんなくらい、怯えるにも値しないわ」
沙織「でも、みぽりんにもしものことがあったら大変でしょ!?」
みほ「でも、そんなときのために死亡保険にはちゃんと入ってるし……」
エリカ「あんたらも入っておいた方がいいわよ、学校側で入るの以外にも保険入っておくと何かと安心だから」
みほ「それに、戦車道の時間に最初に書かれた誓約書で、死亡時や欠損事故の際のことはきっちり決められてたから……」
沙織「万が一が起きたときのことじゃなくて、万が一を起こさないことを考えようよ!?」
沙織「もっと中に入って!」
みほ「心配してくれてありがとね……」
エリカ「ちょ、人が必死に逃げてるのに、ナカにイれるとか何話してるのよ!?」
エリカ「何なの、この戦車はレズの淫売によるハーレムでも目指してるの!?」
麻子「うっ、急にコントロールが……」
ヒュドンッヒュドンッ
沙織「ほら、早く中に!」
みほ「え、ええと、じゃあお言葉に甘えて……」
みほ「Aチーム、敵をひきつけつつ、待機地点にあと3分で到着します」
エリカ「……ここで上手くやれればいいんだけど……」
エリカ「話を聞く限り素人集団」
エリカ「しかもわずかな空き時間で遊び出すような連中」
エリカ「本当に大丈夫なのかしら……」
みほ「あと600メートルで、敵車輌射程内です!」
エリカ「自分じゃ動けないし、他の連中の情報が全然無いのが不安要素よね……」
エリカ「他の戦車と会話が出来れば違うんでしょうけど……」
エリカ「……」
エリカ「って、何を考えているのかしら私は……」
エリカ「大洗のことなんてどうでもいいし、そもそも戦車と会話とか阿呆極まる発想なのに」
エリカ「やっぱり戦車になると駄目ね、頭がドンドン悪くなるわ……」
エリカ「はあ……早く体に帰りたい……」
エリカ「黒森峰なら、もっと知的に立ち回れるし、周りのレベルだって高いのに……」
直下「今日も持病で心臓止まってるんだ?」
小梅「うん」
小梅「心臓ってそうホイホイ止まっていいものじゃないと思うんだけどね」
直下「大変だよなあ……」
ギャンッ
小梅「ひゃ!?」
小梅「な、なに!?」
直下「うわっ、コースアウトしたサイクロンマグナム……」
ギャリギャリギャリ
小梅「ああっ、逸見さんの端正な顔がホイールで……!」
直下「やばいやばい!!」
小梅「ああっ、なんか逸見さんが変な風に振動してる!?」
直下「ど、どうしよう……」
直下「とりあえず、逆の方も同じことしたらバランス取れるかな……」
小梅「ええ!?」
ギャリギャリギャリ
直下「あ、収まった」
小梅「どうなってるんだろう、逸見さんの体……」
直下「副隊長がこれで大丈夫なのかな」
小梅「そ、それは言っちゃ駄目だよ……!」
直下「いや、でも、多分黒森峰の歴史で最も阿呆な副隊長なんじゃ……」
小梅「びょ、病気なんだからしょうがないよ! ハンバーグ発射したのもしょうがないんだよ!」
小梅「逸見さん、自分じゃ知的な補佐だと思ってるんだから、起きてるときに言ったら駄目だよ……?」
直下「実際は、歴代最高に恥的なのになあ……」
桃「撃て撃てェェーーーーーーっ!!」
エリカ「はァァァーーーーーーーーーーーーーー!?」
ズドーン
ズドーン
みほ「あ、待って下さい……!」
ズドーン
ズドーン
エリカ「こんのバカども、私達よ!!」
麻子「ちっ……敵と味方の区別もつかないのか……」
華「わ、私達ですよ皆さん!」
沙織「味方を撃ってどうすんのよぉ!?」
ズドーン
ズドーン
エリカ「ああ、もう! なんなのよこいつら!」
エリカ「黒森峰じゃ上下関係は絶対、隊長格にフレンドリーファイアーしようものなら処刑モンよ!?」
エリカ「尊敬とか厳格さとかが欠けすぎじゃないの!?」
エリカ「ああもう、やっぱりさっさと黒森峰の体に戻りたいわっ……!」
エリカ「黒森峰なら隊長や副隊長に手を上げるようなバカはいないのにっ……!」
直下「たわわチャレーーーーンジ!」
ガチャン
脇にヘッツァーがいるぞ子「瞬時に落下した……」
直下「わ、私のブロッケンギガントが……!」
脇にヘッツァーがいるぞ子「ブロッケンに胸を整地されるから……」
小梅「悲しくなるから、そーいうのやらない方がいいんじゃ」
直下「ぐう……」
直下「……」
直下「そういえば……」
直下「露出を全然しない聖グロはさておき、アメリカンなサンダースはナイスバディの集団だよな」
小梅「確かに」
直下「にくきプラウダのブリザードやロシア人も、スタイルはいい」
直下「……あまり薄着をしてくれないが、うちの隊長や副隊長って、そこに食い込めるボディをしているのだろうか」
脇にヘッツァーがいるぞ子「そんなに大きいイメージはないけど」
小梅「でも、プールの時間とか、逸見さん結構あったような……」
直下「……盛ってるの?」
脇にヘッツァーがいるぞ子「プライド高いし、あるかも……」
小梅「……」
直下「……」
直下「剥いて確かめてみようか」
小梅「!?」
脇にヘッツァーがいるぞ子「確かにやるなら、病気で意識がないっぽい今かも……」
小梅「えええええ!?」
小梅「駄目だよそんな寝込みを襲うような真似!」
小梅「ちゃんと起きてるときに、面と向かっておっぱい見せてって言わなくちゃ!」
直下「それやる方がなんか変態的だし、普通にぶっ飛ばされそう」
脇にヘッツァーがいるぞ子「それじゃ、脱がすよー」
小梅「え、ええ~~~!?」
桃「撃て撃て撃てェ!!」
ズドンズドンズドン
みほ「そ、そんなバラバラに攻撃しても……」
みほ「履帯を狙ってくださいっ」
エリカ「そもそもこんなバレバレな囮作戦が効いたら苦労しないわ」
エリカ「相手は脳味噌茹だりまくって頭蓋骨で紅茶を蒸らせるような連中とはいえ、腐っても超名門」
エリカ「戦車道の腕前だけは、ムカつくけど一級品なのよ!」
桃「もっと撃てェ!」
ドーンドーン
華「くっ……なかなか当たらな……」
エリカ「予想より、連発されると反動で体が痛いわねっ……」
桃「次々撃てェ!!」
ドーンドーン
エリカ「あまり補正をかけてやれそうにないっ……」
華「やはり動く相手だと、勝手が……!」
桃「見えるもの全て撃てェ!!」
ドーンドーン
沙織「見えるもの全て撃っていいんだって!!」
エリカ「へえ、丁度あの片眼鏡の乗った生徒会の金ピカ戦車が見えてるわね」
華「……」 キリキリキリ
麻子「……なんだか良くない方向で意見がシンクロしようとしてないか?」
ダージリン「攻撃」
ドーンドーン
典子「す、すごいアタック……!」
あや「ありえない……!」
みほ「落ち着いて下さい、砲撃やめないで……!」
エリカ「ちっ、まるで戦車道デビューしたての小学生ね……!」
あゆみ「無理ですう、もう嫌あ!」
梓「待って!」
エリカ「ちょ、バカ、あの子達外に――!」
梓「逃げちゃダメだってばあ!」
ズドン
シャコッ
エリカ「撃墜……は、もういいとして……」
エリカ「こんな激しい戦闘地帯で飛び出すなんて、何考えてるのあの子達は!」
エリカ「……」
エリカ「とりあえず木の上に避難できたみたいだけど……」
エリカ「戦車として広い視野を持つ私以外、気付けてもいない……」
エリカ「とにかく戦場を移さないと、シャレにならないわよ……!」
エリカ「勝利と天秤にかかってるならいざしらず、こんなアホみたいな負け戦で死人なんて出してたまるものですか!」
ズドン
ズドーン
沙織「ど、どうしたらいいのみぽりん!」
華「どの車輌を狙えばいいんですか!?」
麻子「どうするんだ。逃げるのか、このままなのか」
優花里「に、西住どのぉ!」
みほ「落ち着いてください、まずは冷静に――」
エリカ「無駄よ」
エリカ「パニックになってる連中に言葉は届かないわ」
エリカ「本当なら派手に一発ドカンとやって気付けにでもしたいのだけど」
エリカ「これだけメンバーの気持ちがバラバラだと、まともに射撃をするのは困難ね」
エリカ「でも――」
沙織「どうしよう、とりあえずやられちゃう前に生徒会に一矢報いる!?」
みほ「えっ」
華「あまり動いてませんし、目立ってますから、それなりに狙えるとは思いますが……」
みほ「ちょ」
優花里「確かに気持ちはわかりますがそれは……」
優花里「いや、でもここは敢えて囮として負傷兵を……?」
みほ「あの」
エリカ「ふっ……」
エリカ「どうやら心を一つに出来る相手がいるみたいじゃない」
エリカ「安心しなさい、白旗が出ないよう調整はしてあげるわ!」
麻子「落ち着いて履帯を狙って撃て――と、さっき言っていたぞ」
華「分かりました、履帯ですね!」
みほ「え、ええと……」
桃『いいから撃てェ! 目に見えるものは全て撃てェ!』
華「了解!」
沙織「生徒会のお偉方からの指示だもんね!」
麻子「生徒会の戦車を視界に捉えたぞ」
優花里「さすがに目立ってますねぇ」
みほ「お、落ち着いて……」
エリカ「くたばりなさいッ!!!」
ズドーーーーーーーーーン
華「ごめんなさい外れましたっ……!」
みほ「いや、いいんですよ味方なんですから!」
みほ「皆落ち着いて!」
エリカ「ええ、敢えてああやって外したのよ……!」
エリカ「これなら!」
柚子「あれ?」
柚子「あれれ???」
杏「ああ、外れちゃったね履帯」
杏「38Tは外れやすいからなあ」
エリカ「さ、これで鬱憤も晴れて囮も出来たし、さっさと撤退するわよ」
エリカ「あんまりここでドンパチ続けると、生身で外に出た馬鹿に怪我人が出かねないわ」
もうこんな時間なので寝ます
次くらいには聖グロ終わらせたいです
多分聖グロ戦終わらないけどちょっとだけ進めます
みほ「武部さん、各車状況を確認して下さい」
沙織「あ、うん」
沙織「えっと、Bチーム、どうですか?!」
妙子『何とか大丈夫です』
沙織「Cチーム!」
エルヴィン『言うに及ばず!』
沙織「Dチーム!」
エリカ「あいつらなら今木の上よ」
エリカ「さっさと戦場を移さないと不味いって」
沙織「Eチーム!」
杏「駄目っぽいねえ」
エリカ「まあこっちがやっといてなんだけど、ここは元から駄目っぽかったからいいでしょ」
桃「無事な車輌はとことん撃ち返せ!!」
エリカ「あの位置なら逃げたバカ達に当たる心配もないし、移動までの時間を稼ぐ砲台でもやっててくれないかしら」
典子「私達どうしたら!?」
エルヴィン「隊長どの、指示を!」
桃「撃って撃って撃ちまくれぇ!」
エリカ「やっぱりもう指示できないよう通信機器まるっとぶち壊す勢いでぶつけたらよかったかしら」
みほ「このままいってもやられるだけ……」
エリカ「なによ」
エリカ「あんたは別に、隊長の指示を聞くしか出来ないカカシだったわけじゃないでしょ」
エリカ「あんたなら……ムカつくけど、この程度――」
華「隊長は、西住さんです」
沙織「私達、みほの言う通りにする!」
麻子「どこへだって行ってやる」
優花里「西住殿、命令して下さい!」
みほ「……!」
エリカ「……」
エリカ「なによ」
エリカ「慕われてるじゃない」
エリカ「……」
エリカ「言っておくけど……」
エリカ「アンタのことを認めてない連中だけじゃなくて、アンタを認めていた奴らは、黒森峰にだって……」
エリカ「……」
みほ「B・Cチーム、私達の後についてきてください」
みほ「移動します!」
典子「わかりました!」
エルヴィン「心得た!」
桃「何ぃ、許さんぞ!」
エリカ「許さん、とかじゃあないでしょうに」
エリカ「何なのよあの片眼鏡は」
エリカ「隊長の言うことは絶対」
エリカ「部隊というのは、しっかりとした隊長と、その指示を徹底できる部下あってこそ」
エリカ「隊長の言葉は絶対なのよ」
エリカ「……」
エリカ(絶対と言えば……)
エリカ(赤星は、私の言うとおり、きちんと体を管理していてくれてるかしら?)
エリカ(元々気が弱いうえに去年の負い目もあるし、副隊長である私の言うことなら素直に従ってくれてるとは思うけど……)
エリカ(どうにも胸騒ぎがするのよね……)
直下「おお……」
脇にヘッツァーがいるぞ子「意外とある……」
小梅「どちらかというと、サイズよりも形がすごいっていうか……」
小梅「ボクササイズしてるだけあって引き締まってるし、艶もいいよね」
直下「何だかんだで楽しそうだよね、小梅」
小梅「ええ!?」
小梅「そ、そんなことは……」
脇にヘッツァーがいるぞ子「んじゃ、さっそくたわわチャレーンジ」
直下「上半身起こして」
小梅「もう……」 ヨッコラセ
直下(素直にやるのか……)
脇にヘッツァーがいるぞ子「で、どれ乗せる?」
直下「うっかり走らないやつ買っちゃったビークスパイダーでいいんじゃない」
脇にヘッツァーがいるぞ子「それじゃさっそく――」
小梅「ビーチクスパイダー……」 ボソ
直下「ブフッ」
脇にヘッツァーがいるぞ子「もお~~、普段そーいうの言わない子が急に言うのは反則だって」 ゲラゲラゲラゲラ
エリカ「ドゥルン」
直下「!?」
エリカ「ドゥルルルルルルルル」
小梅「わっ、ど、どうしよう、逸見さんが……」
小梅「逸見さんが何かすごい振動し出した!!」
エリカ「もっとこそこそ作戦を開始します!」
エリカ「なんて言うから、どんな作戦かと思ったら」
エリカ「地の利を活かして待ち伏せ、ねえ」
エリカ「王者の戦いじゃあないけど……」
エリカ「ま、雑兵にはそれが妥当な戦い方じゃないの」
エルヴィン『こちらCチーム、1輌撃破!』
典子『Bチーム、1輌撃破!』
優花里「やりましたねえ!」
エリカ「地の利を取るのも、ま、基本戦術と言えば基本戦術だけど……」
エリカ「素人集団でも、ラッキーパンチは当たるものね」
エリカ「一度も紅茶こぼしたことがないって言いながら、予想外の自体で頻繁にカップを割ってるって噂だけど……」
エリカ「既に叩き割ってくれてたりしないかしら」 クク
麻子「何だか悪役のようなエンジン音がしている……」
沙織「?」
ダージリン「おやりになるわね……」
オレンジペコ「あの……」
オレンジペコ「カップ……」
アッサム「オレンジペコ」
オレンジペコ「はい」
アッサム「あれはカップが割れたんです」
オレンジペコ「はあ」
アッサム「カップが割れてしまっただけのこと」
オレンジペコ「わかりますが……」
アッサム「こぼれたわけじゃないので、こぼしたとか広めないように」
オレンジペコ「えっ」
オレンジペコ「いいんですか、そんなガバガバ判定で」
アッサム「紅茶をこぼさない優雅さの強調が目的なのだから、負けた時や衝撃を受けたときにカップが割れるのはセーフなの」
オレンジペコ「いいんですね」
エルヴィン『Cチーム、走行不能ッ!』
典子『Bチーム、敵撃破失敗!』
典子『及び走行不能、すみません!!』
みほ「……っ」
優花里「残ってるのは我々だけです……」
沙織「向こうは何輌!?」
華「4輌です……」
エリカ「正念場ね」
エリカ「名門と言えど、優雅さだかに拘っているような連中」
エリカ「黒森峰で揉まれたのよ、目じゃないわ」
エリカ「とはいえ、数は絶対」
エリカ「真正面から4輌相手に1輌で挑むなんて愚行、西住隊長でもない限り生還は絶望的」
エリカ「ましてや相手には頭はアレでも戦術や車長の技量は一級品のダージリンがいる……」
エリカ「車長としての、アンタの腕の見せどころ」
エリカ「……」
エリカ「見せてみなさい」
エリカ「隊長抜きで、アンタがどこまでやれるのかを」
一旦投下を終了します、スローペースで申し訳ない
また、概ね3日くらいおやすみします
エタらせず、今月中にはたたみたいと思います
復帰します
またよければお付き合い下さい
みほ「来た……」
みほ「囲まれたら不味い……」
麻子「どうする?」
みほ「とにかく敵を振り切って……!」
麻子「ほい」 ガシャコン
エリカ「……」
エリカ「この子、素人丸出しだったくせに、時間とともにどんどん上手くなっていくわね……」
エリカ「……」
エリカ「そして私もどんどん乗り物として動かされるのに慣れてきてるわね……」 ゲッソリ
小梅「ど、どうしよう」
小梅「逸見さん、さっきからすごく痙攣してるけど……」
直下「あんたのせいよ!?」
脇にヘッツァーがいるぞ子「わ、私ぃ!?」
直下「だって、乳首にビークスパイダーを乗せたあたりで振動し始めたし……」
小梅「……」
小梅「それが事実だとすると……」
脇にヘッツァーがいるぞ子「ちょ、赤星まで私のせいに――」
小梅「そうじゃありません」
直下「?」
小梅「もしかすると、ですけど……」
小梅「乳首が逸見さんの振動スイッチみたいなものだとしたら……」
小梅「もう一度、乳首を押せば止まるのかも」
小梅「それか、逆の乳首が停止ボタンとか……」
直下「ボタンて」
脇にヘッツァーがいるぞ子「そんな機械じゃないんだから……」
小梅「私もそう思うけど……」
小梅「でも、ほうっておくわけにはいかないし……」
直下「言いたいことは分かったし、確かにまあ駄目元で試してもいいかもしれない」
直下「でもさあ……」
直下「効果の保証もなく副隊長様の乳首をプッシュするなんて行為、誰がやるの?」
小梅「……」
脇にヘッツァーがいるぞ子「……」
直下「……」
小梅「やっぱりみんな、したくないよね……」
直下「後が怖すぎるもん……」
エリカ「……」
エリカ(相変わらず指示は的確ね……)
エリカ(素人丸出しの連中だっていうのに、きちんと動けている……)
エリカ(誰がどこまで出来るのか、きちんと把握したうえで、キャパオーバーにならないように指示をする……)
エリカ「衰えてないわね……」
エリカ「やっぱり、アンタは……隊長の右腕であるべき存在だったのよ……」
エリカ「ムカつくけど……」
エリカ「それで……いつか私が抜くべき目標であってほしかったのに……」
エリカ「……」
エリカ「工事中、ね」
エリカ「これが、黒森峰や西住隊長を捨てて逃げ出した人間の限界、ってことかしら」
ダージリン「こんな格言を知ってる?」
ダージリン「イギリス人は恋愛と戦争では――」
ダージリン「手段を選ばない」 キリッ
華「何がいいたいのでしょう……?」
エリカ「アンタ前それサンダースで言って戦車道と戦争は違うって言われたばかりでしょ」
沙織「えっ、お姉さん恋愛マスターなの!?」
麻子「そうは見えんな……」
優花里「聖グロ隊長の恋愛ともなればそれなりにスクープになりどうですけど、聞いたことはないですね」
麻子「手段は選ばないくせに相手はやたらと選んでいるんじゃないか?」
沙織「あー、そういう」
ダージリン「…………」
オレンジペコ「わ、私は今のダージリン様格好いいしその内いい人が現れると思ってますよっ!!」
アッサム「恋愛に手段を選ばない恋愛マスターことダージリン、指示を」
オレンジペコ「ちょ、駄目ですよこれ以上メンタルを傷つけちゃ!」
キュラキュラキュラ
杏「惨状~」
エリカ「まあ惨状だわね」
華「生徒会チーム!」
優花里「履帯直したんですね……!」
エリカ「まだ生きてるなんてね」
エリカ「……私達がいい囮になったのかしら」
エリカ「それともトリガーハッピーが撃ってこなくなったから勘違いしてくれたのか……」
エリカ「いずれにせよ、大チャンスね」
エリカ「これで2輛は落としておきたいけど……」
桃「発射ッ!!」 ズドン
杏「あっ」
柚子「桃ちゃんここで外すぅ~~!?」
ズドドドドン
杏「やーらーれーたー」
エリカ「ちっ、片眼鏡のウスノロ野郎……」
エリカ「指示もお粗末だし、西住隊長を見習ってほしいものだわ」
エリカ「あの人の命令だったら、安心して動けるのに……」
直下「じゃあこうしない?」
直下「全員で同時に乳首を押す」
直下「そうすれば、誰が副隊長を起こしたのかは有耶無耶に……」
脇にヘッツァーがいるぞ子「確かにそれなら罪悪感とか責任は分散される……」
小梅「そんな死刑執行じゃないんだから……」
小梅「大体両乳首を1人ずつ押すとしても、まだ1人押す場所がない人が出ちゃうんだけど……」
直下「そこは、ほら……股間とか……」
小梅「乳首がスイッチみたいって話だったのに!?」
脇にヘッツァーがいるぞ子「いや、でも、ほら、ちょびっツって前例があるし……」
小梅「だとしても、寝てる間に股間に指突っ込みましたとか、バレたら本当に殺されるって」
直下「確かに……血とかついたら最悪だもんね……」
直下「と、なると……」
直下「そういうことやっても問題ない人間を連れてくる必要が」
小梅「ないと思う……」
小梅「連れてきても多分意味ないし、そもそも生理以外で股間から血を流されるとか、問題の塊だし……」
脇にヘッツァーがいるぞ子「確かに、そこまでしてなお激怒されない人物なんて――」
コンコン
ガチャ
まほ「この部屋が騒がしいと苦情が入ったそうだが……」
直下「あっ」
小梅「……」
脇にヘッツァーがいるぞ子「……」
小梅「絶対服従しそうな相手、いましたね……そういえば……」
まほ「?」
みほ「一撃で離脱して、路地左折!」
ドゴン
キュラキュラキュラ
エリカ「確かにやるにはやる」
エリカ「でも周囲のレベルがそこまで追いついていない」
エリカ「この環境にいたら、その内腐るわよ」
みほ「大通りに出て、先に路地を押さえます」
みほ「急いで下さいっ」
キュラキュラキュラ
みほ「右折したら、壁に沿って進んで急停止っ」
麻子「はい」
ズドン
キュポッ
エリカ「……」
エリカ「私を……いいえ、Ⅳ号を、随分理解してきたわね……」
エリカ「速度やらを理解してなきゃ出来ない動きだわ」
エリカ「さすが、腐りつつ会っても西住流の系譜」
エリカ「でもそれじゃあ、凄みある西住流の系譜たる西住隊長には勝てない」
エリカ「隊長だって、未知の戦車のことを理解するまでにかかる時間は非常に短い」
エリカ「あの人なら、もっと私を上手く乗りこなして的確な指示で相手を追い込んでるわ」
まほ「なるほど、そういうことか」
小梅「はい……」
まほ「わかった、引き受けよう」
直下「えっ!?」
脇にヘッツァーがいるぞ子「まさか本当にそうなるとは……」
まほ「ただし触るのはこうなった原因という乳首からだ」
まほ「それに、船頭多くして登山することもない」
まほ「実際に触れるのは私が引き受ける」
小梅(かっこいい……) キュン
エリカ「ドゥルルルルルルルルン!」
脇にヘッツァーがいるぞ子「なっ!?」
小梅「逸見さんが……」
直下「え、エクソシストみたいに移動し始めた!?」
まほ「ふむ……」
まほ「うっかり胸を揉んだら移動し始めるとは……」
小梅「す、すごい!」
小梅「突然逸見さんが動き始めたのに、平然と覆いかぶさり続けてる……ッ」
直下「振り落とされてないのもすごいし、冷静でいられるのもまた凄いッ!」
まほ「何か法則性があるのか……?」
まほ「……」
まほ「試してみる価値はあるな」 モミモミ
キュポッ
エリカ「これで3体……」
エリカ「他のチームが倒したやつも入れれば、これで残るはダージリンのみ……」
みほ「……」
ズドン
エリカ「一発で仕留め損なった、か……」
みほ「後退して下さい、ジグザグに!」
エリカ「悪いけど、その複雑な動きに助力はしてやれないわよ」
エリカ「何せこっちは、間もなく来るであろう砲弾の痛みに耐えられるよう、覚悟を決めて全身に力込めてなきゃ駄目なのよっ……!!」
エリカ「あああああああ撃たれてる撃たれてる……」
エリカ「ぐっと堪えられる痛みなんでしょうねえ!?」
麻子「路地行く?」
みほ「いや……ここで決着をつけますっ!」
みほ「回り込んで下さい」
みほ「そのまま突撃します……っ!」
エリカ「なんでもいいから早くしなさいよっ」
エリカ「後ろ向きにジグザグされたりぐるぐる動かれたりで、ちょっと気分悪くなってきたじゃないの!」
エリカ「ああ、無駄にテクニカルなナルコレプシーのせいで酔ってくるわ……」 ゲッソリ
エリカ「後ろ向きにジグザグ走行なんて普通に生きてたらしないのもあって、体中が違和感を発してくる……」
まほ「なるほど」
まほ「どうやら両胸で移動方向をコントロール出来るらしい」
小梅「す、すごい!」
小梅「こんな短時間で逸見さんを理解するなんて……!」
直下「これが西住流……!」
脇にヘッツァーがいるぞ子「なんて綺麗なジグザグバック走……!」
まほ「いや、不思議な話なんだが、どうにもエリカの乗り心地が戦車みたいでな……」
小梅「は、はあ……」
まほ「さて……」
まほ「停止は、こうかな」 モミモミ
エリカ「ブォン!!」
直下「ゲェーッ、加速した!?」
脇にヘッツァーがいるぞ子「っていうか、勢い余って扉を破って廊下に出た!!!」
小梅「た、たたたたた隊長~~~~っ」
直下「弘法も筆の誤り、かあ……」
脇にヘッツァーがいるぞ子「筆の誤りというより、筆のない人間の性交渉みたいなドライビングだったよね」
小梅「確かにちょっとエッチだったけど……」
小梅「だからこそ、アレを外に出しちゃ不味いんじゃ……!」
直下「た、確かに!!」
脇にヘッツァーがいるぞ子「と、止めろーーーーーーっ!!」
みほ「……と、見せかけて、合図で敵の右側部に回り込みます」
エリカ「ちょ、待……」
エリカ「そんな無茶な動きに神経持って行かれた直後に砲撃なんて食らったら……」
キュラキュラキュラキュラキュラキュラ
エリカ「待ちなさいって!」
エリカ「あああああああ」
エリカ「絶対、絶対勝ちなさいよ!!!」
エリカ「っていうか、この際負けてもいいから、白旗出すレベルのダメージだけは許さないわよ!!」
エリカ「前のであれだけ痛かったのに、白旗飛び出すレベルの砲撃なんて受けたら――」
ギュララララ
エリカ「ひっ!」
エリカ「ちょ、これ、向こう気付いて――――」
ズドン
エリカ「あっ……」
エリカ「ぎゃあああああああああああああああああああ!?!?」
エリカ「あ、ぅ……」
エリカ(か、体がバラバラになる……)
エリカ(物凄く痛い、のに激痛じゃない……)
エリカ(ち、力が抜ける……)
キュポッ
エリカ(ああ……)
エリカ(しろはた、でてる……)
『大洗女子学園チーム、全車両、走行不能――』
エリカ(ああ……)
エリカ(やっぱり、まけ……)
エリカ(いしきが……)
エリカ(こ、これが……し……?)
エリカ(やだ……こわ……い…………)
☆ ★ ☆ ★ ☆
エリカ(ああ……) チョロチョロチョロ
エリカ(漏れ出てる……) チョロチョロチョロ
エリカ(オイルと一緒に、私の命が……) チョロチョロチョロ
エリカ(し、死にたく……)
エリカ「死にたくないッッ」 ガバッ
エリカ「……」 ハァ・・・ハァ・・・
エリカ「ゆ、夢……?」
エリカ「……」
エリカ(じゃ、ないわよね……)
エリカ(まだあの痛みが、リアルに記憶に刻まれてる……)
エリカ(やっぱり、入れ替わりが行われてる……)
エリカ「体の方にはダメージはなさそ……」
エリカ「……」
エリカ「…………うっ」 グッショリ
エリカ「う、嘘でしょ……」
エリカ「この歳で!? 寮暮らしで……!?」 サーーーーッ
小梅「ん……」
小梅「どうしたの逸見さん……こんな時間に騒いで……」
エリカ「な、ななななんでもないわよ!」
エリカ「いいから寝なさい!」
エリカ(一体いつから濡れてるのか分からないけど……)
エリカ(多分あの一撃で体に激痛が走って、全身弛緩したからよね……)
エリカ(何にせよ、バレないように布団とズボンとぱんつを乾かさないと……!)
小梅「……」
小梅「よくわかんないけど……」
小梅「よかった……いつもの逸見さんだ……」
エリカ「……」
小梅「心配したんだよ……」
小梅「昨日も、やっぱり変だったから……」
エリカ「……」
エリカ「心配かけて、悪かったわ」
エリカ「明日また……起きてから、報告、聞かせて頂戴」
小梅「うん……」
小梅「心配してたから、度々起きちゃってたし……」
小梅「今日は、ギリギリまで寝るね」
エリカ「ええ……」
エリカ「ちゃんと学校に間に合うようには起こしてあげるわ」
小梅「ありがとう……」
小梅「やっぱり……」
小梅「ちょっと厳しくて怖いけど、優しいよね、逸見さん」
エリカ「……馬鹿なこと言ってないで早く寝なさい」
小梅「……照れてる?」
エリカ「照れてないわよ」
小梅「そっか」
小梅「……」
小梅「本当に、実は優しいって思ってるんだ」
小梅「半裸でブリッジしながら校内駆け回る逸見さんより、そうやって素直じゃない逸見さんの方が、私、好きだよ」
エリカ「待って今サラッと凄いこと言った」
小梅「……?」
エリカ「え、ちょ、半裸って何」
エリカ「っていうか校内!? え?」
エリカ「あ、あんた止めてくれなかったっていうの!?」
小梅「眠いし、それは明日また話すね……」
エリカ「ちょ、気になるじゃないの!」
エリカ「っていうか、そんなこと言われたら気になって私が眠れないわよ!」
小梅「おやすみなさい……」
エリカ「お休むな!」
エリカ「何勝手に会話を打ち切ろうとしてるのよ!!」 ユサユサ
小梅「んん……」 スンスン
小梅「あれ……」
小梅「何かアンモニア臭くない……?」
エリカ「おやすみ赤星ゆっくり爆睡していいのよ」
小梅「どうしたの逸見さん笑顔が過去最高で普通に怖い」
眠気のせいで細かいミスしてそうだし、普通にしんどくなってきたし、聖グロは追われたので今日はもう寝ます
めちゃ眠たいので少しだけですが更新します
エリカ「……」
エリカ(それにしても……)
エリカ(普通に最悪ね……)
エリカ(赤星の残したメモのおかげで、Ⅳ号が私の体に入っているときの操縦方法は理解したけど……)
エリカ(既にどうしようもないくらい醜態を晒している……)
エリカ「はあああ…………」
エリカ(幸い目撃者はそこまで多くなかったみたいだし、隊長達がもみ消ししてくれてるみたいだけど……)
エリカ(普通に死にたい……)
エリカ(私、まだうら若き乙女なのに……) ズーン
エリカ「……」
エリカ(まあ、でも……)
エリカ(へこんでてもしょうがないわよね……)
エリカ(それより、これからどうするか考えないと……)
エリカ「……」
エリカ「……どうにもならない過去を引きずって、耐えきれなくなって逃げるなんて、一番したくないもの」 ボソ
エリカ「……」
エリカ(とりあえず、右乳首がイグニッションだったわね)
エリカ(勝手に入れられないように、寝るときは常にブラをしておいた方がいいかしら)
エリカ(そのうえで、絶対に寝ている私の乳首をいじらないよう通達を……)
エリカ「……」
エリカ「寝てる人間の乳首を弄るなって通達、普通に考えて頭おかしいわよね……」
エリカ「っていうか、通達するまでもなく弄るなって話だわ……」
まほ「エリカ」
エリカ「ひゃあっ!」
エリカ「た、隊長……」
まほ「……」
まほ「どうやら、今日は普通のようだな……」
エリカ「え、あ、はい……」
まほ「……」
まほ「どうやら、今までの流れからすると、あのおかしな症状は一日で治るらしいな……」
エリカ「何故か再発はしてますけどね……」 ハハ
まほ「……」
まほ「今日は、そのことで、少し話をしにきた」
エリカ「えっ」
エリカ「わ、私何かしましたか……!?」
まほ「……」
まほ「まあ……してなくはないか……」
エリカ(本当だあ~~~~~~~~~~)
エリカ(半裸でブリッジ走行ってよく考えたら結構な“何かした”だったぁ~~~~~~!!)
エリカ(しかも隊長の貴重な練習時間を奪い、戦車の代わりに自分に乗せるだなんて……!!)
エリカ(かなりの重罪なんじゃあ……!?)
まほ「どうした、そんな頭を抱えて頭を振って」
エリカ「あああああ……いっそ殺してえ……!」
まほ「よくわからないが、死なれては困る」
まほ「例え持病持ちだとしても、決してエリカを追放しないし、副隊長から下ろす気もない」
エリカ「…………え?」
まほ「エリカ」
まほ「誰が何と言おうと、エリカがどう思っていようと――」
まほ「私の右腕はお前だからな、お前だからな」
エリカ「隊長……」 ジーン
まほ「エリカは筋がいいし、西住流の教えも継いでいる」
まほ「今回も、来年も、必要な存在だ」
まほ「例え珍妙な病気を持っていたとしても、な」
エリカ「……」
まほ「……」
まほ「私は、西住流の後継者だ」
まほ「そのせいで、してやれないことは多い」
まほ「去年も……私では、何もできなかった」
まほ「西住流として、何かをすることなどできなかった」
まほ「出来ることがあったとしたら、やるべきことがあったとしたら、それは勝利することに他ならなかったのに」
まほ「……フラッグ車を守り抜けなかった」
まほ「あんな想いはもうたくさんだ」
まほ「我々は、同じ轍を踏まぬよう、努力してきた」
まほ「例えフラッグ車が孤立しようとも、予想外の事態に副隊長が戦線離脱したとしても、きちんと勝ち抜く」
まほ「それだけの努力をしてきたんだ」
まほ「……仮にエリカが持病で当日駄目だとしても、それだけが理由で負けることなどありえない」
まほ「だから、エリカ」
まほ「大会でも、副隊長として、頼んだぞ」
エリカ「……っ」
エリカ「はい!」
まほ「それに――」
まほ「赤星達も、全員今大会に出てもらおうと思っている」
エリカ「赤星達も……」
まほ「去年のことを、誰より引きずっていたのは彼女達だ」
まほ「贖罪のためか自らをいじめ抜き、メキメキと技量を上げてきているからな」
まほ「もっとも、一部の人間は、いい顔をしていないがな」
エリカ「……」
まほ「だから……」
まほ「二人で、助け合ってくれ」
まほ「副隊長の立場から、客観的に赤星を評価し動かしてやってくれ」
まほ「そして――例の病気になったときは、赤星を頼っていい」
まほ「彼女の方から、エリカについてあれこれ聞いてきたほどだ、見捨てはしないだろう」
まほ「……今大会、お前達二人が万全で挑めるかどうかが鍵だ」
まほ「頼んだぞ」
エリカ「はいっ……!」
エリカ(よかったっ……クビとかじゃなくて本当によかった……!)
まほ「勿論、こちらでも分かる範囲で色々調べてはおく」
まほ「……」
まほ「辛いだろうが――」
まほ「頑張ってくれ」
エリカ「はいっ!」
エリカ(ああ、嬉しい……)
エリカ(西住隊長に、そこまで言ってもらえるなんて……) キュン
エリカ(まあ……)
エリカ(病気というより、ただの入れ替わりだから、調べても簡単にはわからないだろうけ)
エリカ(でも、もう何も怖くない!)
エリカ「隊長を信じて――全国、とるわよ……っ!」
☆ ★ ☆ ★ ☆
エリカ「……」
エリカ「痛みには慣れないけど、この体にはいい加減慣れてきたわね……」
エリカ「自分の柔軟性に正直ちょっと引くわ」
みほ「かばさんチームの皆さんは――」
エリカ「……」
エリカ「それにしても、酷いネーミングセンスねえ」
エリカ「適当すぎるでしょ……」
エリカ「何かチームメンバーも適当に仲良しこよしで組んだみたいだし……」
エリカ「相変わらず戦車道ごっこねえ」
エリカ「そんな適当な組分けやネーミングで何とかなるほど、全国は甘くないわよ」
エリカ「……」
エリカ「ほんと、大会に縁がない弱小校は羨ましいわ」
エリカ「気軽にお遊びのように訓練してればいいものね」
エリカ「こっちは隊長が味方とはいえ、今後の身の振り方とか、色々考えなくちゃいけないっていうのに」
エリカ「……」
エリカ「実際、大事な試合で入れ替わる可能性も普通にあるのよね……」
エリカ「うーむ……どうすれば……」
???「やあやあ、お招きありがとう」
まほ「ああ、よく来てくれた」
???「大会直前だと、なかなか試合をしてくれる所なんてないからな」
???「正直、助かってるよ」
まほ「何、気にするな」
まほ「こちらとしても得るものはある」
???「そうか、それならいいんだ」
まほ「……」
まほ「ひとつ、聞いてもいいか?」
???「ん?」
まほ「後輩との人間関係についてなんだが……」
???「へえ、意外だな…・…」
???「でもま、なんでも聞いてくれたら、分かる範囲で答えるぞ」
まほ「そうか……」
まほ「恩に着るぞ、安斎」
アンチョビ「アンチョビと呼べ!」
眠気で朦朧としてきたので投下終了島sう
右乳首よりも心臓部に近い左乳首の方がイグニッションに相応しかったことをお詫びし、反省します
やはり寝不足だと脇が甘くなるので、今日は比較的短めに早い時間に終わらせます
アンチョビ「それにしても……」
アンチョビ「そちらから呼び出してくれるなんてな」
アンチョビ「顔を売るために練習試合の後の打ち上げで名刺配りしてよかったあ~」
まほ「……」
まほ「私はそういう活動はしたことないな」
アンチョビ「まあ、西住のところはなあ」
アンチョビ「既に名前が売れてるし、練習試合の申込みとかも困らないだろ」
まほ「……いや、そうでもない」
まほ「打倒黒森峰を真剣にかかげる所は、奥の手の温存のため大会が近づくとこちらとコンタクトを取らなくなる」
まほ「更にあまり戦車道に力を入れてないところでは予算の都合でそうそう練習試合も組めない」
まほ「……全車要修理にされかねないうちとの試合は断られることが大半だ」
まほ「4強でも、いつでもホイホイ試合を受けてくれるのはサンダースくらいだしな」
アンチョビ「ふーん、王者は王者で大変なんだなあ」
まほ「……もう王者ではないがな」
アンチョビ「あ、いや、その……」 アタフタ
まほ「まあ何にせよ、紅白戦だけではマンネリする」
まほ「受けてもらえるのは有り難い」
まほ「軽戦車だらけのチームとは練習の機会も少ないしな」
アンチョビ「紅白戦をぶん回せる規模なのが凄いな……」
まほ「そこにあの戦車の数で挑んでくるアンツィオも、十二分に凄いさ」
アンチョビ「やる度ボコボコにされるけど、うちの連中は巨大な敵との試合になると楽しそうにノリ出すからなあ」
アンチョビ「……そのエネルギーが変に真っ直ぐにしか向かわないせいで、まだ一矢も報いれてないけど」
アンチョビ「まあでも実際助かってるよ」
アンチョビ「さすが名門、ゆとりがあるというかなんというか……」
アンチョビ「屋台が驚くほど売上を叩き出す」
まほ「今日イチの真顔だな」
アンチョビ「そりゃあもう、驚くくらい売れるんだよ」
アンチョビ「これでも黒森峰産のウインナーやポテトを使った黒森峰限定ピッツァ作ったりと、黒森峰にも貢献はしているんだぞっ」
アンチョビ「やっぱり黒森峰のはピザにも合うんだよな」
アンチョビ「いや、むしろ我々アンツィオのピザが何にでも合うんだッ!」
アンチョビ「どうだ、いっそのこと黒森峰ピザを各学園艦に売りにいかないか!?」
アンチョビ「戦車道の資金も入り、練習試合も出来て、一石二鳥では効かないぞっ!」
アンチョビ「1+1が2どころじゃなく200になれるやつだぞ!」
アンチョビ「一石二百鳥だ!」
まほ(二百兆?)
アンチョビ「10倍だぞ10倍!」
まほ「そうかよかったな」
アンチョビ「どうだ、黒森峰ピザで本当に天下を取りにいかないか!?」
まほ「いや、うちは色々間に合っているから……」
まほ「それに全国大会間際にそこまで色々歩き回る時間もないし、受けてくれるところなんてほぼ皆無だろう」
アンチョビ「まあ、そうだよな……」
アンチョビ「この土壇場にもう少し費用がないとヤバイのって、うちくらいだろうしなあ」
まほ「安心しろ、継続高校も費用がなくてプラウダで盗みを働いたと聞く」
アンチョビ「全然安心できないし、盗人と一緒にはされたくないぞ!?」
アンチョビ「しかしまあ、そこまで困ってないっていうのに、何でわざわざアンツィオを呼び出したんだ?」
アンチョビ「こっちとしては売上がガンガン入ってありがたいし、皆も楽しそうだからいいが……」
まほ「……」
まほ「こちらも、大会でのレギュラー構想の参考に出来て助かった」
アンチョビ「……」
アンチョビ「まあ、本当にそれだけって言うなら、深くは聞かないぞ」
アンチョビ「アンツィオとしては弱みの一個ぐらい見せてもらった方が嬉しかったけどな」 ハハハ
まほ「……」
まほ「弱み、か」
まほ「そうだな」
アンチョビ「ん?」
まほ「散々付き合ってもらった礼だ、弱みを一つ教えておこう」
アンチョビ「お、おいおい、いいのか?」
アンチョビ「もしぶつかったら容赦なくそこを攻めちゃうぞ?」
まほ「ああ」
アンチョビ「本当に後悔しないんだな?」
まほ「承知の上だ」
アンチョビ「本っ当~~~~~にいいんだな?」
まほ「ああ」
アンチョビ「後からやっぱりなしって言っても無理だからな?」
まほ「分かっている」
アンチョビ「そこを攻めて卑怯者呼ばわりとか無しだからな!?」
まほ「くどい」
アンチョビ「そ、それじゃあマジで聞いちゃうからな!?」
まほ「データを消される間際のスーファミソフトかお前は」
アンチョビ「で、実際何なんだ」
アンチョビ「……別に、ただボーナスで教えてやろうって話じゃあないんだろ?」
まほ「……ああ」
まほ「……」
まほ「安斎」
アンチョビ「アンチョビ」
まほ「安斎は、口がかたい方か?」
アンチョビ「まあ、そりゃ約束とかは守る方だと思っているが……」
まほ「……」
まほ「一つ、聞きたいことが――」
まほ「というより、相談したいことがあるんだが」
まほ「口外しないと約束してくれるか?」
アンチョビ「あ、ああ、かまわないぞ」
まほ「その……なんというんだろうな」
まほ「副隊長のことなんだが……」
アンチョビ「副隊長……」
アンチョビ「ああ、あの『馬鹿な!?』みたいなセリフが似合う感じのあの子か」
まほ「多分それで合っているが結構酷いな」
アンチョビ「どうした、喧嘩でもしたのか?」
アンチョビ「それとも何か問題でも?」
まほ「……」
まほ「いや、喧嘩したわけではないが……」
アンチョビ「ってことは、何か問題があるのか?」
まほ「問題と言えば問題なんだが……」
まほ「まあ、それは私にどこうできるレベルの問題じゃないというかだな」
アンチョビ「?」
まほ「とにかく、今エリカは精神的に大変な時期なんだと思っている」
まほ「だから、その、私はどうしたらいいのか分からないというかだな……」
まほ「私にはどうしようもないのだが、それでも何かしてやりたいし、でもそれが却って迷惑なのではないかと思ってな」
まほ「私が下手に首を突っ込むことで、エリカの自尊心を傷つけたりしまいかと不安なんだ」
まほ「大会も近いし、何だかんだでエリカも多感な女の子……何がきっかけで、私と口も聞かずに去ってしまうかわからない」
まほ「それだけは避けたいが……しかし放っておいていいものか」
まほ「いっそノータッチを貫くべきだったのだろうが、こちらからアレコレ首を突っ込んでしまったことはバレているからな」
まほ「ここで下手に距離を取って、私が引いただの見捨てただの思われても困るんだ……」
まほ「一度しっかり話し合うべきなのだろうが、どうも少々気まずくてな」
まほ「上手く話題を切り出すこともできないし、一体どうしたものかと……」
アンチョビ「思春期になったばかりの娘を持ったパパか」
アンチョビ「まあ、要するに……」
アンチョビ「上手くやりたい相手がいて、でも今は上手くいってるとまでは言えず……」
アンチョビ「破局しないで今後上手くやるにはどうしたらいいか、ってことだな」
まほ「ああ」
まほ「……割りと荒くれ者集団だったアンツィオを単身まとめ、慕われるようになった
まほ「そんな安斎にだから聞きたいんだ」
アンチョビ「アンチョビだ!」
アンチョビ「……まあ、とはいえ相手の子が分からないからなんとも言えないが……」
アンチョビ「基本は、相手の子の気持ちになること、かなあ」
まほ「相手の……」
アンチョビ「こちらが一方的にしたいことや聞きたいことを攻め込んでも、向こうは困っちゃうだろうしな」
アンチョビ「相手の気持ちになって、共感する」
アンチョビ「そこから始めたら、少しは選択肢とかが見えてくるんじゃないか?」
まほ「なるほど……」
アンチョビ「まあ、本当にふわっとしたアドバイスで役に立つのかは分からないが……」
まほ「いや、助かる。何もないより、全然いい」
アンチョビ「それはよかった」
アンチョビ「何なら練習するか?」
アンチョビ「私の気持ちになってみろ!」
まほ「……」
まほ「す、スパゲッティが食べたいんだな」
アンチョビ「アドバイスもらっておいて小馬鹿にしてないか?」
まほ「気のせいだ」
まほ「……で、結局スパゲッティが食べたい気持ちなのか?」
アンチョビ「……」
アンチョビ「それは、まぁ」
アンチョビ「まあ、何にせよ相手の気持ちを理解しようとするところからだな」
アンチョビ「理解出来ないと思ったら、理解するために色々してみることだ」
アンチョビ「例えば実際に自分も同じようなことをしてみるとかな」
アンチョビ「そうすると、また色々な発見があるものだ」
まほ「なるほど……」
ワーワー
アンチョビ「ん?」
アンチョビ「騒がしいな……」
アンチョビ「うちの連中がまた何かやったのk――」
エリカ「ブロロロロロロロロロ」 ブロロロロ
アンチョビ「」
小梅「待って逸見さん!!」
アンチョビ「なんだ今の……」
まほ「今の上半身下着だけでブリッジ体勢で微振動しながら水平移動をしていたのが、副隊長の逸見エリカだ」
アンチョビ「!?」
まほ「確かに、私はエリカをきちんと理解しようとしていなかったのかもしれないな」
アンチョビ「うんごめん、謝るからさっきまでの発言全部忘れてもらっていいかな」
まほ「同じことをし、同じ目線に立つことで、見えてくるものもある、か――」
アンチョビ「やめろ!!」
アンチョビ「そんな悟ったような目で脱ぎ出すな!!!」
エリカ「……ふぅん、やっぱり弱小校ね」
エリカ「演習もお遊びみたいなものじゃない」
エリカ「黒森峰はあらゆる実戦を想定して練習してるわよ」
エリカ「ただ漫然とするのでなく、あらゆるケースを想定してきちんとシチュエーションに入り込む」
エリカ「そうして密度の濃い練習に没入するのよ」
エリカ「きっと今頃は黒森峰で激しい大会前の追い込み中だっていうのに……」
エリカ「まったく、何で私はこんなところで戦車なんてやってるのかしら」
エリカ「……」
エリカ「ほら、ノロノロ追いかけっこしてないで、ちゃんと狙いなさいよ!」
エリカ「……」
エリカ「戦車としてあんこうチームとかいうふざけたチームの一員になりつつあるの、本当によくないわ……」
エリカ「私は誇り高き黒森峰の一員なんだから、大会が始まったらきちんとしないと……」
ペパロニ「あれ、ドゥーチェ、どうしたんですか?」
アンチョビ「ああペパロニ」
アンチョビ「こっちに半裸でブリッジしながら高速水平移動をする変な女が来なかったか?」
ペパロニ「頭どうかしちゃったんすか……?」
アンチョビ「その真顔やめろせめて笑え」
まほ「こちらには来てないようだな」
ペパロニ「あ、いらっしゃ――」
ペパロニ「何で半裸?」
ペパロニ「いやもう暑くて女子校だけど、さすがにそれは……」
まほ「……一人に非難や責任が集中すると、如何にしたたかに見える者も心が折れてしまう」
まほ「それを、私は学んだからな」
ペパロニ「はあ……」
ペパロニ「しっかし、さすが黒森峰は余裕っすねえ」
ペパロニ「大会前だっていうのに、練習しなくていいんすか?」
アンチョビ「ナポリタン作りながら言うセリフじゃないけどな……」 ハハ・・・
まほ「問題ない」
まほ「練習は量より質だ」
まほ「それにこの無駄にした時間の分は自主練で補う」
まほ「今はエリカの捜索が先だ」
まほ「……下手に練習場に乱入されても困るしな」
ペパロニ「……?」
アンチョビ「本当にやばくなったら病院とかも頼らなきゃ駄目だぞ……?」
☆ ★ ☆ ★ ☆
エリカ「ん……」
エリカ「……」
エリカ「体が痛い……」
エリカ「筋肉痛かしら……」
エリカ「……」
エリカ「最近ここまで酷い筋肉痛なんてなかったし、っていうか普段とは違う部分が痛い……」
エリカ「……」
エリカ「赤星」
小梅「あ、おはよう逸見さん……」
エリカ「……その顔……」
エリカ「ひょっとして、また……」
小梅「……強く生きてね?」
小梅「死んじゃったら、なんにもならないよ……」
エリカ「え、やだ死ぬかもしれないレベルのことしたの私」
エリカ「今回はブラでイグニッション入らないようにしてあったでしょう!?」
エリカ「前回までもそうだけど、もしかして、あんたら余計なボディタッチを――」
小梅「こ、今回は違うよ!」
エリカ「……」
エリカ「今回“は”?」
小梅「……」
エリカ「……」
小梅「とにかく違うよ!」
小梅「これ以上奇行をさせられないから、ちゃんと誰にも触れさせなかったもん!」
エリカ「分かっちゃいたけど改めて奇行って言われると少し傷つくわね……」
小梅「隊長達と追いかけっこして何とか捕まえて調査したんだけど……」
小梅「どうやら、ブラで乳首を保護したことが原因みたい」
エリカ「は……?」
小梅「こう、ブラで乳首が押されっぱなしになってたらしくて……」
小梅「あと逸見さん、意外と寄せて上げるタイプなんだね……」
小梅「そこでおっぱいが変形してブラに収められてたみたいでさ……」
小梅「まるでおっぱいハンドルが操縦されているかのように、それはもう逸見さんがブインブインと縦横無尽に」
エリカ「普通に生きてたらおよそ聞かないフレーズばんばん飛び出してきてて正直理解が追いつかない」
小梅「ザックリ言うと、ブラしてると不味いことになるし、今回もまた大変でアンツィオの人達に手伝ってもらったんだよ」
エリカ「……は?」
エリカ「アンツィオ???」
小梅「アンツィオの屋台の方に突っ込んでいったみたいだから……」
エリカ「なるほど今確かにちょっと死にたい気分」
こんな時間だし眠気きてるので中断します
ちなみに注意書きに書いてませんでしたが、このスレはコメディ要素やや多めの百合ラブコメディです
もう今月中に終わるの無理ではないかと薄々気付いてきましたがマイペースに投下します
エリカ「あー……死にたい……」
エリカ「休みたいわ学校……」
小梅「事情が事情だし、別に休んでもいいとは思うけど……」
小梅「でもそうすると、明日が行きづらくなるんじゃ……」
エリカ「……?」
小梅「ほら、何だかんだで、まだ1年の頃からポストについてた逸見さんにいい顔しない先輩っているし……」
小梅「練習は出ないのに明日行ったりしたら、またチクチク言われるんじゃないかな遭って」
エリカ「……ああ」
エリカ「そういえば、明日だったわね」
エリカ「大会の、組み合わせ抽選会……」
エリカ「はあ……出るしかない、わね……」
小梅「……」
エリカ「何よ、その顔」
小梅「いや、参ってる逸見さんって新鮮だなーって」
エリカ「はあ?」
小梅「いつでも余裕ぶって上から目線というかなんというか……」
小梅「怒ってるか驕ってるか、みたいなところあるじゃない」
エリカ「最近私に辛辣じゃない?」
小梅「そんなことないよ」
小梅「ただ、逸見さんの色々な側面をしれて、こういうことが言えるようになっただけ」
エリカ「……それはどう受け取ればいいのかしら」
小梅「いいことだと思うな、私は」
小梅「特に一年生の時なんて、弱みを見せずに強がって背伸びしてたけどさ」
小梅「人気のない体育倉庫裏でハンバーグ弁当食べてるような弱い部分も、私は好きだし」
エリカ「え、ちょ、何で知ってるのよ」
小梅「あの時ハンバーグを一口食べただけで落として、マジ凹みからのマジ泣きしてたのが、私が最後に見た参ってる逸見さんかも」
エリカ「わ、忘れなさいよそんなことは!!!」
小梅「散々悔やんで、悩んで、最終的に地面についてない上半分を削って食べちゃうような可愛い所をもっと前面に出した方が」
エリカ「忘れろ!!!!!!!!!!!」
小梅「……でも、本当に、逸見さんの色々な面が見られたのはよかったかな」
小梅「最初は、いつもカリカリしてるし、上昇志向が強いんだろうけど怖い人だなーって思ってたし」
エリカ「なによそれ」
小梅「まあ、今でもその印象は変わってないんだけどね」 フフ
エリカ「ほんと、なによそれ」 フフ
小梅「それでも、それだけじゃなくなったっていうかさ」
小梅「人間って、色んな面があって、素敵だなあって」
小梅「同じ側面を見ても、他の側面を知ったあとだと、見方も変わるし」
エリカ「……私も、あんたはただオドオドしてるだけの奴かと思ってたわ」
小梅「それは今もだよ」
小梅「結局まだ――去年のお礼も言えてないし」
エリカ「……」
エリカ(あの子、今、大洗にいるのよね……)
エリカ(でも、教えようがないし……)
小梅「そーいうのもあって、今では結構、逸見さん、人気あるんだよ」
エリカ「はぁ!?」
小梅「みほさんに突っかかるだけのまほ隊長の犬じゃないんだなーって」 クス
エリカ「絶対バカにしてるでしょ」
小梅「そんなことないよ」
小梅「逸見さんなりに、譲れないものがあって、そーなってるんだなーって」
小梅「でもそういうの、話さないと分からないし」
エリカ「いいわよそういうの」
エリカ「馴れ合いとかキャラじゃないし……」
小梅「そう言わないで」
小梅「隊長も、逸見さんのこと、少し知りたいって思ってるよ」
エリカ「ええ!? 嘘でしょ?」
小梅「本当だよー」
小梅「最近変な行動よく取ってるし、気になるのも普通じゃないかな」
エリカ「パワーボム並に持ち上げてからエグい角度で落としてきたわね」
小梅「それで、皆で逸見さんと仲良くなろうって話になったんだ」
小梅「よく分からない病気的なので大変だろうし」
エリカ「皆で仲良くやりましょうとか、誰かの提案でわざわざやるものじゃないでしょ……」
エリカ「小学校の帰りの会みたいで、なんか、こう……」
小梅「まあ、確かに、逸見さんは居心地悪く感じちゃうかもしれないけど……」
小梅「でも、今回のは、本当に逸見さんと仲良くなろうって思ってる人だけだから、強制的な仲良しごっことかとは違うから!」
エリカ「……で、その仲良くなろうって人達は何をしてるのよ」
小梅「えっとね、とりあえず、逸見さんのためのライングループを作ったの」
小梅「逸見さんの気持ちになったり、あの症状が出たらフォローできるようにしたり……」
エリカ「……前者はともかく、後者はちょっと有り難いわね」
小梅「逸見さんはスマホにしないの?」
エリカ「そんなお金ないわよ……戦車道、ただでさえお金かかるのに」
小梅「西住隊長もそう言ってたんだよね……」
エリカ「特に隊長レベルだとガンガン戦車を動かすから、試合の度にスマホ割れそうだしね」
小梅「だから代わりに私が運営してるんだ、ライングループ『逸見の森』」
エリカ「ネーミングセンス」
完全に寝落ちしてました、申し訳ない
続きは夜に
エリカ「クソみたいな名前はともかく……」
エリカ「ラインって、どーやるのよ」
小梅「あ、興味あるの?」
エリカ「……」
エリカ「一応、後学のためにね」
エリカ(大洗の連中もやってたし、もしかしたらあの子も……)
エリカ「……」
エリカ(いや! 関係ないけどあの子は!!!!!)
小梅「えっとね、ここで発言するの」
小梅「見てて」
逸見エリカ { 逸見エリカさんがスタンプを送信しました
小梅「こうやってスタンプで会話するのが主流なんだー」
小梅「ほら、皆もおはようスタンプ送ってきてる」
逸見工リカ { 逸見工リカさんがスタンプを送信しました
逸見エリ力 { 逸見エリ力さんがスタンプを送信しました
逸見えりか { 逸見えりかさんがスタンプを送信しました
小梅「スタンプにはいっぱい種類があってね、中には有料のも」
エリカ「うん待って、まず聞きたいのはそこじゃない」
小梅「どうかしたの?」
小梅「あ、フリック入力理解できない?」
エリカ「そこじゃない」
小梅「ああ、これはスマートフォンって言ってね」
エリカ「そこまで馬鹿じゃないわよ!!」
エリカ「何で発言者全員が逸見エリカを名乗ってるのかってことよ!」
小梅「よく見て逸見さん、イツミクリカさんとかイツミエリチカラさんとかだよ」
エリカ「ああなるほどでもそこは全然本質じゃない」
小梅「ああ、ラインは自分で好きな名前を決められるんだよ」
エリカ「へえそう、で、何で全員揃って私の名前なのよ」
小梅「……?」
小梅「逸見さんの気持ちになるための逸見の森なんだから、逸見さんになるに決まってると思うけど……」
エリカ「今日イチのマジかこいつフェイスやめなさい」
エリカ「っていうかアイコンも全員余すところなく私の写真だし、こんなの撮らせた覚えないんだけど!?」
小梅「意外と人気あるから皆写メ持ってるんだよ」
小梅「もしくは逸見さんがテレビカメラを見かけた中学生ばりに写りたがりなのかのどっちかだよ」
エリカ「別に写りたがりじゃないわよ!!」
小梅「でもこの前隊長のインタビューで逸見さん喋らないのに、静止画で無意味に後ろに写り込んでたよね」
エリカ「この話やめましょうか」
小梅「本当に意味なく斜めの角度でバッチリ後ろに」
エリカ「やめましょうか」
小梅「でも、わずか1日でここまでになるって、すごいんだよ」
エリカ「そりゃそうかもだけど、その凄さが腹立つ方向に特化しすぎなのよ」
小梅「でも皆で一生懸命逸見さんらしさを追求したんだよ」
小梅「発言も逸見さんっぽくなるようにしたり……」
エリカ「うわログきもっ」
小梅「こうやって皆が逸見さんを理解することで、きっと連携もスムーズにいくようになるよ」
小梅「来年逸見さんが隊長になったときとかも、ね」
エリカ「……」
エリカ「いや一瞬いい気分になりかけたけど、隊長になったときまで続けさせないわよこの森
小梅「えー」
小梅「皆でワイワイ挨拶とかも考えたのにー」
エリカ「挨拶ぅ?」
小梅「うん、帰ってきたら『ただいまほ隊長』って言って、他の皆は『おかエリカ』って言ったり」
エリカ「私を理解云々の名目どこ行ったの」
小梅「眠るときは『おやすみほ』って」
エリカ「ねぇひょっとしてアンタ達の中の私はそんな脳味噌茹だったような発言しそうなイメージなの?」
小梅「でも、こうしてみると、なんていうか、ちょっと親しまれるようになってきたよ逸見さん」
エリカ「嬉しくないわよ……」
小梅「まぁまぁ」
小梅「あ、それよりそろそろ準備しないと、遅れちゃう」
エリカ「うわ、こんな時間じゃないの!」
エリカ「……っと」 カクン
エリカ(入れ替わった翌日、意味の分からない筋肉痛がやってくるわねえ……)
小梅「っと、皆にラインしておかなくちゃ」
小梅「いってきまほーっと」
エリカ「私の名前でそういう頭のネジが全部はずれて代わりに米粒で頭とめましたみたいな発言やめてほしいんだけど」
<放課後>
エリカ「どっと疲れたわ……」
エリカ(やっぱり入れ替わりって負担大きいわね……)
小梅「お疲れ様」
エリカ「ええ疲れたわ、半分くらいはアンタのせいで」
小梅「?」
エリカ「キョトンとしないでよ……」 ハァ
エリカ「まあいいわ」
エリカ「私はこれから大会抽選のため隊長と飛行船で移動するから」
エリカ(はあ、久々に隊長と二人っきり……)
エリカ(入れ替わらないと信じて精一杯楽しまないと……) ウフフ
小梅「うん、ちゃんと私も荷造りしてあるよ」
エリカ「戸締まりしとけっつってんのよ何しれっとついてこようとしてるのよ」
小梅「?」
小梅「今回は私達もついていくんだよ?」
エリカ「はあ!?」
エリカ「私と隊長の二人っきりじゃ……」
小梅「あ、もしかして二人っきりがよかったの……?」 アラアラウフフ
小梅「悪いことしちゃったかなあ」
エリカ「そ、そーいうわけじゃないけど……!」
エリカ「……」
エリカ「ん?」
エリカ「私、達……?」
小梅「うん、私のとこのチームメンバーが一緒に行くんだ」
エリカ「何でまた」
小梅「……去年色々あって、まだその影響が消えたわけじゃないから、気を使ってくれたのかも」
エリカ「……なるほど」
ペパロニ「へえ、そんなことがあったんっすねー」
ペパロニ「名門校も大変だ」
エリカ「誰!?」
アンチョビ「おいおい、ペパロニ。ちゃんと自己紹介はしておけよー」
アンチョビ「来年は隊長同士として会うことになるかもしれないんだから」
エリカ「あ、あんた……」
エリカ(の、そのクソ邪魔そうなツインテール)
エリカ「……は、確かアンツィオの!」
ペパロニ「お邪魔しまーす」
アンチョビ「私達も一緒に乗せてもらうことになっててな」
エリカ「はぁ!?」
アンチョビ「いやー、これで経費浮かせればギリ二回戦には間に合いそうっすねえ!」
アンチョビ「ああ!」
アンチョビ「詳細は、さすがに口には出せないがな!」
小梅「大会直前の仕上げに付き合ってくれたお礼に、ついでだから送っていくんだって」
エリカ(二人っきりの旅路が……) ゲッソリ
アンチョビ「と、いうわけで、我々アンツィオ一同も世話になるぞ」
エリカ「想定の10倍位の大所帯」
ペパロニ「何せ屋台4つ分の人員っすからねえ~」
アンチョビ「道中の食事なら任せておけ!」
小梅「向こうでもよろしくお願いしますね」
アンチョビ「ああ!」
アンチョビ「向こうで黒森峰ピザを売れれば、ついに念願の……」
アンチョビ「っと、ここから先は秘密だったな」
エリカ「大会抽選直前だって言うのに、緊張感のない連中ねえ……」
まほ「いいんじゃないか」
まほ「大会が始まれば、嫌でも緊張の連続になるんだ」
まほ「たまにはゆっくりしても許されるだろう」
エリカ「まあ、隊長がそうおっしゃるなら……」
エリカ「しっかし、アンタらの所、色々雑すぎない?」
ペパロニ「えー、そーっすかあ?」
小梅「結局どこにいっても戦車道の話になっちゃうんだなあ」 フフ
アンチョビ「まあ、その代わりウチは勢いがあるからな!」
エリカ「勢いだけの戦車が多すぎるのよ」
エリカ「同じようなアホのペアとか多いんじゃないの?」
エリカ「二人乗りなんだから、もうちょっと視野が広がるような組み合わせとかさあ」
カルパッチョ「でも、船頭を多くすると船が登山しちゃうんじゃあ」
エリカ「そりゃ4人とか5人とかが全然違うタイプだったらそーだろうけど……」
エリカ「2人くらいならすり合わせも簡単じゃない」
アンチョビ「まあ、そうかもしれないが……」
アンチョビ「今更ペアを変えるわけにもなあ」
エリカ「そりゃそーだろうけど」
エリカ「次の新入生からはペア決め吟味した方がいいんじゃあないの?」
アンチョビ「うーん、そうかもなあ」
アンチョビ「適当に二人組作らせたもんなあ、うち」
エリカ「建て直しする気があるとは思えない方法来た」
ペパロニ「そこでペアが作れずノリについてこれない子をふるい落とす効果はあったんすよ!」
アンチョビ「何組か決まった後揉めるところもあって、途中からトランプで決めたりもしたよな」
カルパッチョ「来年はねるとんパーティー形式とか」
小梅「それ面白そう!」
エリカ(エンタメばっかり追求してるからいつまで経っても弱いんじゃないかしらこいつら)
エリカ「ちゃんと得意分野とか苦手分野とか考慮して、戦略上有用な組み合わせを考えなさいよ……」
エリカ(適当に仲良し同士で組みっぱなしの大洗と言い、ナメてるのかしら……)
アンチョビ「まあ、ウチはそういうの出来るほど経験者豊富じゃないからなあ」
まほ「それに、黒森峰だって、そういうのは一部しかやれてないからな」
エリカ「え!?」
まほ「エリカを含め、一部の成績上位者のチームだけだ、そうやって決めてたのは」
アンチョビ「まあ、そりゃああれだけ人数いればなあ」
ペパロニ「やーばいっすよねあの人数。さすが名門」
小梅「厳しさに耐えかねて選択科目変える娘も少なくないですもんねえ」
エリカ「知らなかった……」
エリカ「てっきり全チームそうやって真剣に決めてたのかと……」
小梅「そんなことないよー」
小梅「私のとこだって、名前に星がついてる連中集めとけって感じで組まれたらしいし」
エリカ「知らなかったし知りたくなかった」
小梅「私が車長なのも、皆と話し合ったらやっぱりリーダーは赤色だよねってなったからだし」
エリカ「本当に知りたくなかったし、夢が壊れていく音がする」
まほ「エリカはうちに幻想を見ているようだからな」
アンチョビ「理想を持つ――いいことだとは思うけどな」
まほ「ああ」
まほ「だが、いずれ黒森峰を背負ってもらうんだ、ある程度現実というのも知っておいてもらわねば」
エリカ「うう……」
まほ「大事なのは、現実を受け入れて、それからどこをどう改善するか考えることだからな」
エリカ「はい……」
まほ「それに、それだけ適当なアンツィオだって、かなりの成長を遂げたんだ」
まほ「何かヒントを掴んで帰れるといいな……二人共・・・・…」
アンチョビ「私もバンバン何かをつかむ気でいるからな、遠慮なく盗んでくれ!」
まほ「……安斎は私にはないものを持っているから、私個人としても盗みたいものはいっぱいあるしな」
アンチョビ「そう言ってもらえると嬉しいね」
アンチョビ「よーし、野郎ども、オトナのぶどうジュースを用意だ!」
ペパロニ「さっすが姉さん話がわかるう!」
アンチョビ「よーし、まずは皆でコイツを――」
アンチョビ「あれ?」
アンチョビ「そういえば、さっき言ってた赤星車のチームは……?」
アンチョビ「明日黒森峰ピザを売るときも世話になるし、挨拶したかったんだが……」
アンチョビ「見る限り、ウチの連中以外は西住達三人しかいないような……」
小梅「あ、他の子達なら今飛行船操縦してるけど……」
小梅「呼んでこようか?」
エリカ「呼んできて、代わりの運転どうするのよ」
カルパッチョ「あ、よければ私が」
エリカ「……出来るっていうわけ?」
ペパロニ「あ、疑ってやがんな!」
ペパロニ「カルパッチョはなァ、うちで一番スターフォックスが上手いんだぞ!」
カルパッチョ「得意なのは宙返り」
エリカ「振りでもなんでもなく宙返りしたら殺すわよ」
小梅「パンター星組のメンバーを連れてきたよ」
エリカ「あー……だから俗称星組……あー……」
アンチョビ「合点がいったわりには信じたくなさそうな浮かない顔だな」
エリカ「……っていうか操縦は?」
小梅「えーっと、名前知らないんだけど、ラインのHNがSi子ってなってる子が変わってくれた」
アンチョビ「ああ、彼女なら普通に任せて大丈夫だろうな」
エリカ「……」
まほ「ふっ、まあ大丈夫だ」
まほ「そうそうおかしなことにはならないようになっているし、万が一そうなったら私が責任を持って軌道修正しよう」
エリカ「まあ、隊長がそうおっしゃるなら……」
小梅「逸見さん、隊長にはすこぶる甘いの」
ペパロニ「へえ、うちと一緒っすねえ」
アンチョビ「わ、私は別に甘やかされてはいないぞ!?」
カルパッチョ「皆ドゥーチェが大好きってことですよ」 ウフフ
小梅「そんなわけで、改めてパンター星組のメンバーを連れてきたよ」
アンチョビ「よろしくなー」
小梅「砲撃の専門家、白星」
白星「うっす、よろしく」
アンチョビ「おー、無骨な感じだな。まさに名門って感じだ」
ペパロニ「うちに欲しい人材っすねえ」
カルパッチョ「でも白ってつくわりに悪役っぽい雰囲気なような」
ペパロニ「黒森峰自体ヒールっぽいし?」
エリカ「ちょっと」
小梅「装填の専門家、黒星」
黒星「がんばります、よろしく」
ペパロニ「戦隊っぽく緑とかじゃないんっすねえ」
アンチョビ「カクレンジャーは白と黒だったぞ」
ペパロニ「カクレンジャー?」
カルパッチョ「あ、ケイン・コスギですよね」
小梅「ドリフト、急停止など操縦の専門家、どどめ色星」
どどめ色星「よっす、どうもー」
アンチョビ「ほう、パンターでドリフトするのか」
ペパロニ「そのドライビングについて聞いておくべきっすかねえ」
エリカ「待ってもっと触れるべきっていうかツッコむべき所がある」
小梅「手刀の専門家、ブロッケンJr」
ブロッケンJr「やるっつぇブロッケン」
エリカ「もっとツッコむ所が多いやつが来た!!!!」
アンチョビ「そっかー、皆星なんだなー」
ペパロニ「星だけで五人揃うなんて、やっぱり黒森峰は巨大っすねえ~~~」
エリカ「いやいやいやいやいや!!!」
エリカ「明らかにおかしいやつが一人いるでしょうが!」
ブロッケンJr「確かに白がヒールっぽい性格で黒が真面目っぽいというのはアベコベに見えるかもな」
エリカ「アンタよアンタ!」
エリカ「何かもうどどめ色とかいうやつがまともに思えるくらい星でもなんでもないじゃないの!!」
アンチョビ「……!」
ペパロニ「た、確かに……!」
エリカ「何でそんな世紀の大発見みたいな衝撃顔晒してるのよ!!」
まほ「…………!」
エリカ「隊長!?」
エリカ「嘘か冗談ですよね隊長!?」
小梅「確かにジュニアちゃんに直接星の要素はないかもしれない」
エリカ(ジュニアちゃんて……)
小梅「でもね、これには理由があるの」
小梅「このチームが決められたのは、最初の授業でいきなり実戦テストさせられた、その結果を参考にチーム分けをしてた時なんだって」
まほ「当時の三年が、主にチームを振り分けていてな」
エリカ「あ、隊長がしていたわけではないのですね」
エリカ(少しホッとした……)
まほ「ああ……」
まほ「隊長であったとはいえ、まだ二年生だったからな」
まほ「色々なしがらみもあって、そういった部分は上級生に一任することになっていたんだ」
小梅「で、その最初の試験のときに、ジュニアちゃんは方に大きなスターエンブレムをつけてたから……」
ブロッケンJr「フッ……サンダースに通う俺の仲間が、いい結果を残すためのお守りだって言って寄越してくれてな」
ペパロニ「うう、いい話っすねえ!」
エリカ「正気で言ってるのか」
エリカ「っていうか何か自然に受け入れられてるけど絶対おかしいでしょうよ!」
エリカ「いやドドメ色も本当ならツッコミたいけど、それをさせないくらいおかしいって!」
まほ「どうしたエリカ、人を指しておかしいなんて言うものじゃないぞ」
エリカ「うっ、そ、そうかもしれませんけど……」
小梅「でもそれが逸見さんの平常運転って感じがするよね」 フフ
エリカ「フフじゃないから。私を何だと思ってるのよ」
白星「酸素を吸って嫌味を吐き出す新人類かなにかかと」
エリカ「初対面よね? 仮に副隊長って立場で殴らないとしても私達って初対面よね???」
黒星「確かに仲良しならジュニアちゃんでなくブロッケンちゃんと呼ぶべきかもしれない」
エリカ「そこじゃないしどうでもいいわ!」
ドドメ色「でも三年生にブロッケン先輩がいるから、それだとややこしいでガンス」
エリカ「おかしなキャラ付けをこれ以上増やすな!!!!」
まほ「彼女には世話になった……当時新入生で隊長となった私への反発は大きかったからな……」
エリカ「わぁそうなんですね超感動出来ればこいつら居ない所でじっくりゆっくり聞きたいんですが」
ブロッケンJr「ふっ……アネキはもう戦車道は引退してラーメン屋になっちまったからな……」
まほ「惜しい人物を亡くしたものだ……今まであそこまで苦戦した相手はいなかったというのに……」
エリカ「ええ!? 隊長を……!? コレの姉が!?」
まほ「ああ」
まほ「戦車道で戦う機会がなかったので一度タンカスロンをしたのだが、彼女の毒ガス攻撃にはそれはもう苦しめられた」
エリカ「バーリトゥードにも程がありますねそいつ」
小梅「もう、さっきから否定ばかりはよくないよ逸見さん」
小梅「大体おかしい度合いで行けばここ数日の逸見さんが頭一つ抜けてるんだからね」
エリカ「そういう反論不能で一撃死するポイントを的確に突くのはやめて」
あまりに眠いので寝ます
言い忘れてましたが、人数足りないし黒森峰のモブはオリキャラがまじりますので、オリキャラ駄目な人はごめんなさい
ブロッケンちゃんは最初から出す気だったのに、アメトークより早く投下ができなかった
もう10月中の完結も無理なのでマイペースにやります、よければお付き合いお願いします
ちなみにアメトーク見て取り入れたくなったのはレオパルドンとカレクックとミキサー大帝です
投下します
アンチョビ「しっかし……」
アンチョビ「結構名門になると、そーいうのあるんだなー」
小梅「毒ガス攻撃はそうそうないと思いますけど……」
アンチョビ「いや、そこじゃなくて」
アンチョビ「派閥争いというか、そーいうのが」
まほ「ああ……」
まほ「そこは大人数の所だとどうしてもな」
黒星「うち、比較的縦社会で年功序列の側面もありましたからね」
まほ「どうしても一年が突然出てくると揉め事が起きるからな」
小梅「マジノでも革命が起きたって噂ですからねえ」
アンチョビ「え、そーなのか?」
ブロッケンJr「ああ」
ブロッケンJr「戦車道からラーメン道に選択科目を変更したアネキが、マジノでそういう情報を仕入れてきたからな」
アンチョビ「うーん、ウチも移動屋台をもうちょっと情報収集で有効活用してみるか……」
まほ「当時は七光と呼ばれたし、反発し離反した者も少なくはなかったよ」
アンチョビ「大変だったんだなあ……」
エリカ「ふん、隊長の実力も見抜けないなんて」
エリカ「おかげで今は結束もバッチリよ」
小梅「でも去年は逸見さんが結構みほさんに突っかかってたよね」
エリカ「うぐっ……」
ペパロニ「サンダースとかピザが売れるからたまに行くけど、あそこはそんなに闇っぽくなかったけどなあ~」
エリカ「あそこの連中全員バカだから」
まほ「まあ、巨大な派閥が勝利したあと、みたいなところあるからなあそこは」
まほ「そもそもあのノリに馴染めない人間は最初からあそこを選ばない」
カルパッチョ「なるほど」
白星「プラウダもアンチの鎮圧に余念がないよなあ」
小梅「派閥が複数しっかり残ってるの、四強だと聖グロくらいかも」
アンチョビ「そ、そうなのか?」
アンチョビ「雰囲気的にあんまり屋台を置いてくれないからあんまり行けてないんだが……」
アンチョビ「そんな殺伐としたイメージなかったけどなあ」
まほ「まあ、殺伐とはしていないな」
まほ「ダージリンのアレを真剣に格好いいと思っている派閥とギャグとして好きな派閥との争いだしな」
小梅「紅茶以外にもお菓子のあだ名も欲しい派閥と保守派の争いもあるとか聞きましたよ、ラインで」
白星「幹部になりたいけどあだ名は勘弁派も少数ながらいるとか」
アンチョビ「平和だなー聖グロ……」
ペパロニ「っていうか、あだ名嫌な人もいるんすねえ」
ペパロニ「うちなんて自己申告制だから色々いすぎて統一感すら最近なくなってきたのに」
アンチョビ「本当にある日突然カルパッチョになったもんなあ」
カルパッチョ「最近増えたのはピザポテトと輪切りのソルベでしたっけ」
アンチョビ「そうそう、それに合わせてエビピラフのやつがジェラートに変わりたいって言ってきて、ジェラートが2人になったんだよ」
アンチョビ「元ジェラートはジェラートは自分だって言うし、よく分からないことで揉めるんだよなーウチの連中」
ペパロニ「あれマジどーすりゃ丸く収まるんすかねえ」
エリカ「無秩序すぎて意味分からなくなってるじゃない」
アンチョビ「どこも苦労はあるんだなあ」
まほ「揉め事のタネを根絶やしにしようとしても、きりなんてないしな」
小梅「ある程度アンチが居なくなって安定したって点じゃ、うちも同じようなものですけど、それでも火種は0じゃないですからねえ」
ペパロニ「まあ半裸ブリッジで全力疾走する奴もいるくらいじゃあなあ~~」
エリカ「それはともかく!!」
エリカ「隊長の凄さが理解できず無意味な反発をした連中が消えて、黒森峰は盤石よ」
エリカ「今年は優勝頂きだわ」
まほ「あまり過大評価してくれるな」
まほ「……連覇を逃したのは事実だ」
まほ「伝統を残しつつ、何かを変えねば奪還は出来まい」
アンチョビ「真面目だなー……」
ペパロニ「すごいっすねえ」
まほ「もう王者でなく挑戦者だからな」
アンチョビ「私達もその姿勢、見習わないとな!」
ペパロニ「確かに、あそこで屋台出すの初めてっすもんねえ~」
アンチョビ「初心に戻って価格でも見直すか?」
エリカ「戦車道が完全にオマケみたいになってるけど大丈夫なのアンタら」
ペパロニ「あとはライバル企業を知る、とかっすね」
アンチョビ「ああ、黒森峰ラーメンな」
ペパロニ「意外とどこでもありますからねえ」
エリカ「え、そんな有名なの?」
小梅「うん」
小梅「実は私達最初六人組だったんだけど、一人辞めちゃって……」
小梅「その虹星さんもラーメン道に行ったんだって」
アンチョビ「レインボシ……」
ペパロニ「およそ現代日本とは思えない名前っすねえ」
エリカ「……」
小梅(あ、ツッコんでいいかちょっと悩んでる……)
小梅「でもブロッケンさんと2人で作ってるラーメンは本当に美味しいんだって」
アンチョビ「なんでも虹が見えるラーメンという噂は聞いたな」
エリカ「はあ?」
エリカ「ラーメン食べてそんなことになるわけないでしょ」
小梅「あと食べたら衝撃で全裸になったって報告も」
エリカ「馬鹿馬鹿しい」
エリカ「でもそこまで美味しいなら食べてみたいですよね隊長」
まほ「目がちょっと怖いぞエリカ」
まほ「とりあえず、もうそろそろ眠るか」
まほ「明日も早いしな」
小梅「私達は交代で運転しておきます」
まほ「すまないな」
エリカ「……」
エリカ(他校の情報、最低限の戦車道関係は抑えていたけど……)
エリカ(意外と、知らないことがあったわね……)
エリカ(……隊長を補佐するためにも、必要な情報はもっと集めていかないと……)
アンチョビ「……」
小梅「それじゃあ皆さん、おやすみほ~」
エリカ「ちょ」
まほ「?」
アンチョビ「何だ今の挨拶」
小梅「あ、これはオリジナルの挨拶で……」
エリカ「赤星」
小梅「逸見の森では皆寝る前にこの言葉を」
エリカ「赤星!!!!!!!!!!」
<翌朝>
アンチョビ「うー……眠い……」
カルパッチョ「はしゃぎすぎましたね……」 クァァ
まほ「大丈夫か?」
アンチョビ「ああ……」
アンチョビ「一緒に来ててよかったよ」
アンチョビ「じゃなきゃ多分寝過ごしてたしな……」
アンチョビ「っと、起きろペパロニ!」
アンチョビ「私達は行くし、そっちも仕込みがあるだろ!」
エリカ「大変ね、アンツィオのトップも……」
まほ「ああ……」
まほ「うちにはない苦労だ」
エリカ「なくていいですよ、あんな苦労」
まほ「そうだな」
まほ「だが――」
まほ「あの姿勢は、少し、見習いたいな」
まほ「ああやって世話を焼くことも、皆を引っ張り鼓舞することも、私には出来ない」
エリカ「隊長……」
まほ「……いや、すまない、忘れてくれ」
まほ「早朝で、少し、寝ぼけたんだ」
<移動中>
エリカ「……」 スタスタ
アンチョビ「なあ」 コソ
エリカ「?」
アンチョビ「……チームメイト、あんまり覚えてないんだな」
エリカ「……ああ、昨日のことですか」
エリカ「そりゃ、ウチは名門で練習厳しいのもあって、どんどん人がやめますから」
エリカ「それに、やらなきゃいけないことが多すぎて、そこまで覚えていられないんですよ」
アンチョビ「まあそうだよな」
アンチョビ「それが普通だと思うよ」
エリカ「……」
エリカ「何か言いたそうな顔ですね」
アンチョビ「なに、普通じゃない黒森峰の隊長様は、それでも全員覚えてるんだよなって思ってさ」
エリカ「……!?」
アンチョビ「……立場もあるし、ゆとりがあるほど完璧じゃないのが当然だし、全員をケアするなんて無理だろうけどさ」
アンチョビ「でもアンタのとこの隊長は、別に下を無碍にしてるわけじゃあないんだ」
エリカ「……」
アンチョビ「……上を見るのはいいことだし、ゆとりがないのはしょうがないことだけどさ」
アンチョビ「もうちょっと、足元の存在をしっかり見てやっても、バチは当たらないんじゃないか?」
エリカ「……」
エリカ「肝に銘じておきます」
エリカ(それでも……私が隊長の横にいようとしたら、辞めるかもしれないレギュラーになるかもわからない子達と馴れ合う暇なんて……)
エリカ「……」
エリカ(こんな考えだから……あの子は、ここを去ったのかしら……)
エリカ(大洗、大会なんて出られないだろうけど、それでも、メンバーの距離は近そうだったし)
エリカ「……」
エリカ(あのお遊戯みたいな空間が、あの子の理想、だったっていうの……?) ギリッ
アンチョビ「ま、最上学年になるまでは、大いに悩むがいいさ」
アンチョビ「何かあったら相談に乗るぞ?」
アンチョビ「自分のとこの連中に言いづらいことを相談し合う仲って大事だしな」
エリカ「……何でそんなこと」
アンチョビ「まぁまぁ」
アンチョビ「来年以降ペパロニ達が世話になるしな」
アンチョビ「恩を売っておこうかなって」 ハハハ
アンチョビ「ほら、これ、私のメアドだ」
アンチョビ「何かあったら連絡してくれ」
エリカ「……一応、ありがたく受け取っておきます」
アンチョビ「あとこれがラインのID」
アンチョビ「こっちが逸見の森用に昨日フェイスブックで作ったサブ垢の方」
エリカ「ちょ、なんでそれ……」
小梅「私が教えといたんだ」 ニュッ
エリカ「うわっ……びっくりした……」
エリカ「っていうか、何広めてるのよ赤星!!!」
小梅「森をどんどん大きくしようと思って……おいでよ!逸見の森!」
エリカ「焼き払えそんな森」
小梅「あ、じゃあ私達屋台班はこっちだから!」
エリカ「逃げたわね……」
アンチョビ「そんじゃ、私達も一旦分かれるか」
まほ「別に一緒に入ってもいいんじゃあ」
アンチョビ「いや、やめておくよ」
アンチョビ「ここから先は、ライバルだしな」
まほ「……そうか」
アンチョビ「それに抽選の結果にビクビクするとこ見られたくないしな」 アハハ
エリカ「まったく……」
エリカ「どんな抽選結果であろうとドンと構えているのが王者」
エリカ「私達は例え相手がどこであろうと動じないっていうのに」
ペパロニ「プラウダや聖グロと初戦でも?」
エリカ「当然よ」
エリカ「もし私が抽選会で動揺するようなことがあったら、虹が見えるラーメンとやらを右の鼻の穴から食べて左の穴からハイブリッドレインボウ出してあげるわよ」 ハン
司会『続いて、大洗女子――――』
エリカ「!?!?!?!?!?!?!?」
まほ「みほ……?」
エリカ「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
アンチョビ「ペパロニが屋台班でよかったなー多分マジでラーメンやらされてたくらいに凄い顔しているぞ今」
もうこんな時間なので寝ます
カルパッチョ「彼女は……」
アンチョビ「西住みほ」
アンチョビ「……あの黒森峰隊長様の妹君だよ」
カルパッチョ「と、いうことは西住流の……」
まほ「……」
アンチョビ「しかし、あんな子だったんだなー」
カルパッチョ「ドゥーチェはご存知なかったんですか?」
アンチョビ「まあ、去年はうちの戦力もガタガタで向こうは強すぎるわで顔見る前に負けたからなー」
アンチョビ「何回か試合してもらったけど、一度もツラを拝めてなかった」
まほ「色々とあって、挨拶は私と三年生で行っていたからな」
エリカ「……」
エリカ(何で……何でここに……!?)
エリカ(大会とは無縁だけど戦車でのんびりやる、優雅な隠居ドロップアウト生活を送っていたんじゃあないの……!?)
エリカ「……」
アンチョビ「な、なあ、お前ンとこの副隊長とんでもない顔してるけど大丈夫なのか?」
まほ「ああ」
まほ「みほが絡むと大体ああだ、気にしなくていい」
アンチョビ「いや、あれが平常運転なのもどうかと思うが……」
アンチョビ「まあ、いいか」
アンチョビ「気にはなるが、私は私でペパロニ達の所に行かなきゃならないしな」
カルパッチョ「今回はありがとうございました」 ペコリ
アンチョビ「おかげで大会に向けた資金が少し稼げたよ」
まほ「そうか、それはよかった」
まほ「……もっとも、大会で当たれば容赦はしないし、再び資金難になる程度には叩き潰させてもらうがな」 フッ
アンチョビ「ぐう……上等だ!」
アンチョビ「黒森峰だろうがアンツィオはただで負けはしない……いや、勝つ!」
まほ「……エリカ」
エリカ「……はい」
まほ「相手は今後も付き合うことになるであろう学校の隊長格だ」
まほ「副隊長として、挨拶だけはきちんとしなくちゃいけない」
エリカ「……申し訳ありません」
アンチョビ「まあ、なんだ」
アンチョビ「昔の仲間が敵になるって、複雑だと思うが……」
カルパッチョ「まるで漫画か映画みたい……」 ウフフ
アンチョビ「確かに、黒森峰が主人公だとしたら、完全に漫画の展開だ」
アンチョビ「だがしかーし! そうはならない!」
アンチョビ「何せ西住みほは、一回戦がサンダース!」
アンチョビ「更に二回戦はこのアンツィオ高校が相手なんだ」
アンツィオ「悪いが大洗と黒森峰が戦うことはない!」 キリッ
エリカ「……」
エリカ「まあ、そうよね」
エリカ「戦車道はそんなに甘くはない」
エリカ「順当に考えれば、決勝でぶつかるのはプラウダかサンダースだわ」
エリカ「他はさほど苦戦しそうな学校ばかりだし」
アンチョビ「おーい、目の前目の前」
アンチョビ「あまり見くびるなよ?」
アンチョビ「序盤から大物であるマジノと当たり、2回戦はサンダース校を撃破」
アンチョビ「そしてプラウダときて、黒森峰か聖グロ……」
アンチョビ「どうだ、私達こそまさにザ・主人公だろう!」
エリカ「なっ、私達黒森峰が聖グロに遅れを取るとでも!?」
アンチョビ「はは、去年も接戦だったんだ、今年はどうなるかわからないぞ」
エリカ「どうかしてたまるもんですかっ」
エリカ「あんな練習試合のあと、大洗なんかには贈り物するのに私には何もくれないような連中なんかにッ」
アンチョビ「突然私怨を前面打ち出してきたな」
まほ「まあだが、聖グロは厳しい審査基準を越えた相手にしか贈らないという有名な話もある」
アンチョビ「自分の腕を見直せってことか……」
エリカ「あいつら、面白かったとか、そういう部分で判断してるよの!?」
エリカ「勝った試合の方が負けた試合より面白いに決まってるんだから、そりゃ貰えないでしょうよ!」
エリカ「大洗との練習試合のあと、私達より面白いみたいなこと言ってたの、聞いてるんだから……!」 ギリィ
エリカ「今度こそ絶対、隊長の好敵手に相応しい人物は誰か決着をつけてやるわ……!」
アンチョビ(この子も大概スイッチ入ると周りを置いて話し出すよなあ)
まほ(聞いたって、いつどこで誰に聞いたんだろう)
アンチョビ「ま、いずれにせよ互いに決勝まで行かなきゃ戦えないんだ」
アンチョビ「お互い頑張ろう」
まほ「ああ」
アンチョビ「それじゃ、決勝戦で会おう!」
エリカ「また分かりやすくフラグ立てたわね……」
カルパッチョ「さすがにそれは……」
アンチョビ「なに、フラグ!? どこかに恋愛の切っ掛けが――」
エリカ「いや、そーいうのじゃなくて……」
エリカ「如何にも強敵の噛ませ犬になりそうなポジションだなあって」
アンチョビ「何をぅ!?」
まほ「サンダースやマジノの噛ませ犬と言うには戦力差が……」
エリカ「確かに順当すぎますし、アンツィオを破ってもボス感は出ませんよね」
まほ「2回戦あたりで戦う敵に初戦で負けてくれるなら、次の敵の強さが引き立つのだが……」
エリカ「その場合でも2回戦の相手はあまり強そうに見えないんじゃないですか」
エリカ「あまりに戦車がアレなうえにほぼ一芸ですし……」
まほ「噛ませ犬もできないとすると……」
エリカ「強くはないけど何かインパクトに残る枠じゃないですか?」
エリカ「戦車道界のワッパツヨシ的な……」
アンチョビ「お前らなー!」
アンチョビ「切り札見て絶ッッッ対ビビらせてやるかんなー!!」
アンチョビ「おぼえてろよー!」
アンチョビ「行くぞカルパッチョ!」 トテトテトテ
カルパッチョ「おしおきだべー」 トテトテトテ
エリカ「……それはまた別ジャンルじゃない?」
まほ「……最後までコミカルな連中だったな」
エリカ「ええ……」
まほ「……」
まほ「よかったよ、アンツィオと一緒に来て」
エリカ「え?」
まほ「……私と2人だったら、みほを見て以降、ずっと張り詰めた表情でギクシャクしただろうしな」
エリカ「うっ……」
まほ「……っと、赤星からか」 ブルルルル
まほ「どうやら、屋台が繁盛していてしばらく離れられないらしい」
エリカ「はあ?」
エリカ「何やってんのよあの馬k――」 ブルルルル
メール『夕方まで二人っきりにしてあげるから、ファイト(^_-)-☆』
エリカ「……」
エリカ(何の気遣いよこれ……っ)
まほ「ふむ……」
まほ「ならばどこかで少々時間でも潰すか……」
まほ「まるで不慣れなのに手伝いに行くと、むしろ邪魔をしかねないからな」
エリカ「ですよねえ……」
エリカ「……」
エリカ「あ、あの……」
まほ「?」
エリカ「よ、よければなんですけど、その……」
エリカ「戦車喫茶、行ってみませんか!?」
エリカ「ネットで話題で、行ってみたかったんです……!」
エリカ「……だめ、でしょうか」
まほ「……ふっ」
まほ「駄目な理由が見当たらないな」
まほ「息抜きも大事だ。そこに行って楽しもう」
エリカ「…………!」 パァァァァ
エリカ「はいっ!」
おもったよりコンディションがたがたなので中断しますもすいわけない
鯖復活した?
復活したみたいなので少しだけ進めます
エリカ「ここです!」
まほ「ほう、なかなか洒落た外観じゃないか」
エリカ「いつもは長蛇の列ですが、今日は時間が時間なので比較的すぐ入れそうですね」
まほ「いつもはもっと混んでいるのか……」
エリカ「そうなんですよ」
エリカ「それこそ、あそこの細い路地まで列が続くくらい――」
???「ねっ、ここには新鮮で美味なスイーツがたくさん置いてあるのさ」
???「おお……た、確かにほとんど手がつけられてないものまである……」
???「で、でもゴミ箱の中のって汚いんじゃ……」
???「ここのポリバケツは毎日新鮮な袋に変えられている」
???「それに袋と接していない上部のケーキならば――」
???「確かに、たらふく食べてもいい気がしてくる……」
???「ええ、でも人としてどうなの……?」
???「人としての尊厳――それはそんなに大切なことなのかな?」
???「多分無視しすぎると色んな人が怒り出す程度には大切だと思うけど」
エリカ「……」
まほ「どうしたエリカ」
エリカ「いえ、ちょっと路地裏に見ちゃいけないものが……」
まほ「?」
エリカ「なんでもないです、方々から怒られる前に早く入りましょう……」
まほ「?」
まほ「なかなか凝っているな……」
エリカ「ディテールの凄さに関しては全国屈指だそうです」
エリカ「戦車道Walkerにも載ってましたし」
まほ「アンツィオの連中も、ここを見ておけばよかったのにな」
エリカ「う、まあ、商売のうえではそうかもしれませんね……」
エリカ(折角隊長と2人っきりだってーのに、邪魔させるなんて絶対御免……!)
ドーーーーン
まほ「この音は……」
エリカ「ああ、ここは呼び鈴の音も凝っていて――」
華「ケーキセットで、チョコレートケーキ2つといちごタルト、レモンパイと、ニューヨークチーズケーキを1つずつお願いします」
エリカ「」
店員さん「承りました、少々お待ち下さい」 バッ
エリカ(気のせいじゃなければ知ってる顔がいる……)
華「あ、今のは私用ですので……他の皆さんはどうされます?」
店員「!?」
エリカ(知らない顔を覗かせてるけど、あれって、あれって――――!)
沙織「このボタン、主砲の音になってるんだ」
優花里「この音は、九丸式ですね」
エリカ(ぐうっ……)
エリカ(分かっちゃあいたけど、Ⅳ号戦車になってるときに見かける顔ぶれそのまんまっ……!)
エリカ(やっぱりただの夢じゃなくて入れ替わってたッ……)
エリカ(出来ることなら、遠くの席に座って、顔を合わせず――)
まほ「どうした、エリカ」
まほ「そっちに何かあるのか?」
エリカ「うっ、いえ、そんなことは――」
ブロロロロロロ
まほ「ほう……」
まほ「ドラゴンワゴンか、凝っているな」
エリカ「あっ」
まほ「?」
エリカ(そ、そっちに視線を持っていかれると――――)
まほ「あれは……」
エリカ(不味い不味い不味い)
エリカ(ええい、こうなったら、下手に絡んで変な空気になる前に、いっそのこと――)
エリカ「副隊長?」
エリカ(こちらから絡むっ――)
エリカ(これなら予期せぬ話題とかで変なことを答える心配はないっ……)
エリカ(さすがに入れ替わりで得た情報を漏らしでもしたら、変態ストーカー扱いは免れないもの……)
エリカ(なんとしても早々に切り上げるっ!)
エリカ「……ああ、元でしたね」 ハン
まほ「お姉ちゃん……」
沙織「この人が、みぽりんの……」 ゴクリ
みほ「あ、その、そっちの人じゃなくて……」
エリカ「姉が妹をうっかり副隊長なんて言うわけないでしょ頭使いなさいよ」
沙織「うう、そこまで言わなくても……」
華「ということは、こちらの方が、元お姉さん――!」
みほ「ええと、そっちに関しては元じゃなくて……」
まほ「現役だ」
エリカ(こーいう所があるから絡みたくないのよコイツら……!)
まほ「まだ戦車道をやっているとは思わなかった」
みほ「……」
エリカ(うっ……)
エリカ(隊長が、割りと怒っていらっしゃる……)
エリカ(無理もない……)
エリカ(目をかけていた妹が、黒森峰を捨て逃げるように学園艦を降りた……)
エリカ(その時、あの子の側に密かにつき、転校できるよう方々に頭を下げたと聞く……)
エリカ(隊長自身、辛い想いだっただろうに、あの子の幸せを思って、送り出したのに……)
エリカ(この子はのうのうと、他校でまた戦車道をしている……)
エリカ(やっぱり……隊長のためにも、私はこの子を許すわけにはいかないっ……!)
まほ(戦車道始めたならメールで教えてくれてもいいのに……(´・ω・`)サミシイ)
優花里「お言葉ですが、あの試合でのみほさんの判断は、間違ってませんでした――!」 ガタッ
みほ「……っ」
エリカ「……部外者が口を出さないでほしいわね」
優花里「すみません……」
まほ「……行こう」
エリカ「はい、隊長」
エリカ「……一回戦はサンダース付属と戦うんでしょう?」
エリカ「無様な戦い方をして、西住流の名を汚さないことね」
みほ「……」
エリカ(そして私のボディも色々と汚さないで欲しいから入れ替わってないタイミングでさっさと負けなさいよホント……!)
沙織「何よその言い方!」
華「あまりにも失礼じゃ……!」
エリカ「貴女達こそ戦車道に対して失礼じゃない?」
エリカ(まあ大洗の連中の中じゃマシな方ではあるけども)
エリカ(でもあのカラーリングといい、絶対おかしいわよコイツら)
エリカ「……無名校のくせに」
華「……っ」
エリカ「……この大会はねェ」
エリカ「戦車道のイメージダウンになるような学校は、参加しないのが暗黙のルールよ」
エリカ(そこに入るために、皆がどれほど苦労してきたか……)
エリカ(後追いだったアンツィオんとこの連中が、どれだけ努力と練習を積み重ねて舞台に参加出来るようになったか……)
エリカ(私だって、あんたの背中に追いつくために、どれだけっ……!)
エリカ(それなのに、気軽に遊び半分で、アンタたちは……っ!)
麻子「強豪校が有利になるよう示し合わせて作った暗黙のルールとやらで負けたら恥ずかしいな」
エリカ「……っ!」
沙織「もし、アンタ達と戦ったら、絶対負けないから……!」
エリカ「ふん、頑張ってね」
エリカ(当たるとしたら決勝、そこまで来るなんてありえないわよ)
エリカ(戦車道をなめるんじゃないわよ) チッ
沙織「べーーーっ」
華「嫌な感じですわ」
麻子「女の腐ったようなやつだったな」
優花里「羊水が腐っている、というやつでしょうか」
沙織「絶対彼氏いないよアレ」
華「まるで生理中みたいでしたし、腐っているとはいえある意味女性の体現者なのかもしれませんね、悪い意味で」
エリカ「聞こえてるわよクソ弱小」
華「クソだなんてお下品な……」 ヒソヒソ
沙織「自分こそ、金魚のクソなのにね」 ヒソヒソ
麻子「女の要素にクソを加えて『うん子』か、最悪だな」 ヒソヒソ
優花里「少々引きますね……」 ヒソヒソ
エリカ(Uターンして今すぐドロップキックしてきちゃ駄目かしら)
まほ「……」
エリカ「ええと、注文どうしますか?」
まほ「……エリカに任せよう」
エリカ「そ、そうですか……」
エリカ「ええと、では、ケーキセットのガトーショコラを2つ……」
店員さん「承りました、少々お待ち下さい!」 ババッ
エリカ「……隊長……」
まほ「……」
まほ「みほは……」
まほ「まだ、戦車道を続けていたんだな」
エリカ「……」
エリカ(私ですら、あれだけショックだったんだもの……)
エリカ(隊長は、もっとショックのはず……)
エリカ(ましてや私は戦車道をしてること知った後、大会参加を知ったのに対し――)
エリカ(隊長は、いきなり戦車道を続けていることを知った上大会参加というサプライズまで受けている……)
エリカ(ショックじゃないはずがない、わよね……)
まほ「……」
まほ「エリカは……」
まほ「みほが戦車道を続けていると知って、どう思った?」
エリカ「え……」
エリカ「……」
エリカ「私は……」
まほ「……」
まほ「正直な気持ちを、聞かせてくれ」
エリカ「……」
エリカ「ショックでした」
エリカ「あの子が逃げたときでも、裏切られたような気持ちになって、失望したっていうのに……」
エリカ「戦車道から逃げ出して、そのくせ喉元過ぎた熱さを忘れて、のうのうと戦車道を続けている……」
エリカ「そんなに戦車道が好きなら、黒森峰で去年のことを挽回すればよかったじゃないっ……」
エリカ「なのに、あの子は――っ!」
エリカ「だから……だから私は!」
エリカ「あの子を認めたくないっ」
エリカ「黒森峰から逃げ出したあの子を!」
エリカ「私は……」
エリカ「あそこからでも、這い上がって来てほしかったのに……っ」 ギリッ
まほ「エリカ……」
まほ(そう、だよな)
まほ(お前は――みほの、一番の、友人だったものな……)
まほ(エリカは否定するだろうし、みほも素直に首を縦には振らないだろうが――)
まほ(それでも私は、お前達を親友だと思っていたし、そうであってほしかった)
まほ(黒森峰を支える、二本の柱であってほしかったよ……)
まほ(……私は……)
まほ(あの子のために、色々してきたつもりだった……)
まほ(あの子のため、西住流のため、黒森峰のため――)
まほ(色々なもののため、尽くしてきたつもりだった――)
まほ(だが――)
まほ「……」
『何よその言い方!』
『あまりにも失礼じゃ……!』
まほ(守るものが、多くなりすぎていたんだな……)
まほ(自分では、上手く立ち回っていたつもりだったし、失敗したとも思っていないが――)
まほ(それでも……)
まほ(いつしか私は、みほのため、感情のままに怒り何かに立ち向かうことができなくなっていたんだ……)
まほ「エリカ」
エリカ「……はい」
まほ「……」
店員さん「おまたせしました~、ケーキセットでございます!」
まほ「……ありがとう」
まほ「……」
まほ「食べよう」
まほ「この息抜きが終わったら――大会に向けて、本腰を入れなくてはならない」
エリカ「はいっ!」
まほ(……お前は、みほに対して真っ直ぐでいてやってくれ)
まほ(お前も私も、黒森峰や西住流、戦車道に縛られてしまっているが――)
まほ(私と違って、お前はそのしがらみから抜け出せる)
まほ(私の分まで、どうか――)
エリカ「勝ちましょう、隊長」
エリカ「ここを出たら、赤星達を回収して、特訓しましょう」
エリカ「今年こそ、王座を奪還しましょう、絶対っ……!」
まほ「ああ」
まほ「……でもあまり食べながら喋らない方がいいと思うぞ」
エリカ「……失礼しました」 ゴックン
エリカ「こほん。まあ、あの子達と直接対決はないでしょうが……」
エリカ「あの子たちは、どうせサンダースに叩き潰されるでしょうし」
エリカ「でも、圧倒的強さで優勝して、あの戦車道をナメきった連中に、私達黒森峰の凄さを教えてやりましょう!!」
エリカ(そうよ、あのヌルい連中がサンダースに勝てるわけないじゃない!)
エリカ(私の見てないところで早々に負ければいいのよ!)
エリカ(黒森峰の試合や練習に集中するから他校の試合分析はベンチの連中に任せてるから、どんな戦いぶりかは分からないけど……)
エリカ(どうせ負けるんだもの、関係ないわ)
エリカ(せいぜい、私の預かり知らぬところで無様な敗北を喫するといいわっ)
☆ ★ ☆ ★ ☆
桃「整備終わったかーーーー!?」
うわぎさん「「「「はーーーーい」」」」
カエサル「準備完了」
典子「私達もです」
みほ「Ⅳ号も完了です」
エリカ「」
桃「じゃ、試合開始まで待機!」
エリカ「ああああああああ預かり知る所になってるううううううううう」
うわもうごじ
寝ます
深夜に更新すると誤字やら多発するからよくない
できるだけサクサクやってさっさと寝る方向でやりたいと思います
エリカ「最悪だわ……」
エリカ「よりにもよってサンダース戦で……」
エリカ「絶対あのいけ好かないファイアフライにキッツイのもらうじゃない……!」
???「のんきなものね」
???「それでよくノコノコ全国大会に出てこれたわね」
エリカ「まったく同感――って、噂をすれば……」
桃「貴様ら何しにきた!」
ナオミ「試合前の交流も兼ねて、食事でもどうかと思いまして」
エリカ「戦車の中じゃあクールぶってるくせに、こうやって煽りに来るあたり性格悪いわね……」
エリカ「嫌味を言うためだけにご足労とは大したものだわ」
エリカ「こまめに毒を吐かないと落ち着かない病気なのかしら、人間性を疑うわね」 ハン
麻子「……」
沙織「どうしたの?」
麻子「いや、なんだか無性に突っ込みをいれないといけないような気がしてな……」
沙織「?」
沙織「寝ぼけてるんじゃないの?」
沙織「すごっ……!」
優花里「救護車にシャワー車、それにヘアサロン車まで……!」
エリカ「全然戦車道関係ないし、ヘアサロンとか使う人間いるのかしら……」
エリカ「選手ならヘアサロン行ってる場合じゃないし、客も試合見ないでヘアサロンとか行かないでしょうに……」
華「本当にリッチな学校なんですね……」
エリカ「ふん、いけ好かない金持ちなだけよ」
エリカ「戦車保有台数しか売りがないようじゃ、私達黒森峰の敵じゃないわ」
エリカ「それに料理も大きいだけで味は大味、スイーツも人口甘味料や着色料の塊」
エリカ「これなら有料でもアンツィオの屋台の方が数倍マシだわ」
沙織「わあ、熱々ハンバーグがある……!」
華「本場アメリカンのサイズで、とてもジューシーそうですね」
優花里「鉄板でジュウジュウ言われると、お腹が空いてきますよねえ」
エリカ「はあ!?」
エリカ「ちょ、ずるいわよ、ウチとやるときはハンバーグ屋なんてなかったじゃない!!!!」
ケイ「アンジー!」
エリカ「出たわね、能天気女……」
エリカ「下手したらダージリン以上に理解できないのよね、この女は……」
ケイ「なんでも好きなもの食べて行って」
エリカ「そういうのは!!人間フォルムのときに!!!ハンバーグ屋引き連れていいなさいよ!!」 ムッキー!
杏「オーケイオーケイ」
杏「おケイだけに」
ケイ「HAHAHAHAHA!!」
エリカ「ほんっと、四強はどいつもこいつも四強の自覚がないようなやつが多すぎるわ……!」
エリカ「人間性は底辺だけど、プラウダの連中がマシに思えるわ……」
エリカ「全く隊長を見習ってほしいものね」
エリカ「代表格の言動一つで学校の印象が決まるっていう自覚はないのかしら」
麻子「……」
優花里「どうかしたんですか?」
麻子「いや、今日はエンジン音がどことなく蹴飛ばしたくなる感じでな……」
優花里「……あー」
沙織「分かるんだ!?」
まほ「……始まったな」
まほ「……」
まほ「いつもなら、エリカの方から『始まりましたね』なんて言って、私は静かに試合を見守るのにな」
まほ「……」
まほ「前日に移動なんてしてくるんじゃなかったな……」
まほ「この症状、おそらく――」
ポチ
エリカ「ドゥルンドルルルルルルル」
まほ「ああ……乳首でエンジンがかかっている……」
まほ「どうしよう……」 ズーン
みほ「3輌……囲まれたッ!」
エリカ「ふん、早くもバッタバタしてるわね」
エリカ「ま、5台しかない素人集団じゃ当然の結果かしら」
エリカ「このまま現実を思い知って、(私が)痛い目に遭う前にさっさとフラッグ車が落とされればいいのよ」 フン
優花里「北東から6輌……南南西から3輌……」
優花里「すごい、全10輌中9輌この森に投入ですか!」
華「随分大胆な戦術ですね」
エリカ「こいつら、たまに何考えてるんだか王道を外してギャンブルに出ることがあるのよね」
エリカ「スポーツマンシップなのかエンターテイメントなのか知らないけど……」
エリカ「ま、所詮は小手先だけの奇策、大したことはないわ」
エリカ「黒森峰なら真っ向から普段通りの連携で叩き潰してるところよ」 フン
エリカ「ま、ここは黒森峰じゃなくて大洗」
エリカ「残念ながらアンタたちの全国大会はこれで終わり――」
みほ「このまま全力で進んで下さい」
みほ「敵戦車と混ざって!」
エリカ「はあ!?」
典子「リベロ並のフットワークで……」
エリカ「そんな無茶な……」
エリカ「……」
エリカ「少なくとも、黒森峰の重戦車部隊でやるようなものじゃないわよね……」
エリカ「まあうちならそもそもこんな事態に陥らないわけだけど」
エリカ「……」
エリカ「慣れない事態に、変な指揮でも始めたの?」
エリカ「それとも……」
エリカ「そこまで日も経っていないのに、今の保有戦車の特徴を把握しきって、有効な戦術を編み出したとでも……?」
みほ「ふう……」
華「危なかったですね……」
エリカ「……」
エリカ「相変わらず、ドライビングテクニックだけは異常に高いわね……」
みほ「うん……」
みほ「まるで私達を待ち構えていたみたい……」
エリカ「偶然に決まってるでしょ」
エリカ「サンダースの隊長は確かに隊長としての能力が高いけど、最近は後進育成のためか、作戦指揮を2年にさせてるみたいだし」
エリカ「相手の幸運に一々動揺しているようじゃあ、まだまだね」 フフン
みほ「はっ……!」
みほ「……」 ガチャン
エリカ「何よ、急に身を乗り出して」
華「みほさん? どうしたんですか?」
みほ「通信傍受機が打ち上げられてる……」
エリカ「はあ!?」
エリカ「何よソレ、反則じゃないの!」
エリカ「いや、その、あれよ、気が付かなかったのは、私自身の意思じゃ動けないしアンタらの味方をする気もないから気を張ってなかったからで……」
エリカ「こ、これが黒森峰との試合だったら当然そんな狡っ辛い手、すぐに気付いていたわよ!!」
優花里「確かに……」
優花里「ルールブックには傍受機を打ち上げちゃいけない、なんて書いてないですね」
沙織「酷い!」
エリカ「本当よ!」
エリカ「戦車道の品位を落とすような行為だわ!」
エリカ「大体ルールブックに記載がなければ問題ないなら、うちらは毒ガスをぶち込んでるわよ!!」
沙織「いくらお金があるからって……!」
華「抗議しましょう!」
エリカ「そうよ、こうなったら徹底的に叩いて2ちゃんにもスレを立ててやればいいんだわ!」
エリカ「ついでにあの傍受機を写メっておいてTwitterにあげれば炎上間違いなしよ!」
エリカ「そうなったら持ってるアカウント総動員してRTしてやるんだから……!」
エリカ「いや、でもこれが黒森峰ならそんな格好悪いことは出来ないわよね……」
エリカ「まあ大洗は恥も外聞もなく抗議して失格に追い込めばいいと思うけども」
エリカ「それが無理でもあれの撤回ぐらい求めないとどうにもならないわよ」
エリカ「黒森峰だとしても、通信傍受機が相手じゃ苦しい戦いを余儀なくされるのよ?」
エリカ「それでも冷静に、いつもどおりの戦いで押しつぶすしかないのだけど……」
エリカ「我らが黒森峰や西住流に、後退の文字はないもの」
エリカ「まあ、西住流から逃げ出したアンタなら、平気で逃げるでしょうけど」
みほ「……だったら……」
みほ「前者、0985の道路を南進!」
みほ「ジャンクションまで移動して!」
みほ「敵はジャンクションを北上してくるはずなので、通り過ぎた所を左右から狙って!」
エリカ「はあ!?」
エリカ「相手に作戦は筒抜けになってるのよ!?」
エリカ「一体何を――――」
沙織「無線じゃなくてケータイで連絡してたんだもーん♪」
優花里「やったあ、作戦成功です!」
エリカ「大洗女子が1輌撃破……それもサンダースより先に……」
エリカ「相手の通信傍受を逆手に取った戦略で……」
エリカ(もし、私が通信傍受をされたとして――)
エリカ(こんな作戦を取ることができた……?)
エリカ(いや――)
エリカ(隊長だとしても、おそらくはこんな策戦は……)
エリカ(勿論、こんな作戦を取らずとも真っ向から叩き潰せるからだけど、でも――)
エリカ「腹立たしいほど、隊長としての資質は衰えてないみたいね……!」 ギリッ
まほ「……」
まほ「もし、エリカが奇病に侵されていなければ……」
まほ「大洗女子が1輌撃破!?なんて驚いていたんだろうな」
まほ「……」
まほ「もしそうなら、そのようだな、なんて応えたのだろうが……」
エリカ「ドルルルルルルルル」
まほ「会話にならないからな、今……」
まほ「次からは他の奴も連れてきておくか……」
まほ「とりあえず、アイドリングストップしておくか……」 チクビポチー
アリサ「いい気になるなよ……!」 ギリギリ
みほ『戦車、128高知に集合して下さい』
みほ『ファイアフライが居る限り、こちらに勝ち目はありません』
エリカ『戦力差が分かる程度の脳味噌はあるみたいね』
エリカ『でも勝ち目がない理由はファイアフライ以外にもあると思うのだけど』
エリカ『大体5輌って何よ5輌って』
エリカ『1輌倒してもまだ5対9よ』
エリカ『バスケチームで野球チームに挑むくらいのバランスの悪さよ、分かってるわけ?』
アリサ「……」
みほ『危険ではありますが、128高知に陣取って、上からファイアフライを一気に叩きます!』
アリサ「くくく……」
アリサ「あーーーーっはっはっは、捨て身の作戦に出たわねェ!」
エリカ『無能片眼鏡の射撃とかあてにならないけど、大丈夫なんでしょうね』
エリカ『基本的にこのチーム、コスプレ色物集団と私しか攻撃面でまともな戦力にならない状態なのよ?』
エリカ『バカ食いロン毛の腕は信用できるんでしょうね?』
アリサ「……」
アリサ「どことなく他人事で五月蝿いだけのやつが乗ってるみたいね……」
アリサ「わざわざ通信で文句を言ってるみたいだけど、無視されてるし哀れだわ」 ククククク
アリサ「その点私は信頼を得ているッ……!」
アリサ「多少不自然でも隊長は私の提案に従ってくれる……」
アリサ「くく、このまま大勝利の立役者になってやるわ!」
エリカ「……認めたくはないけど……」
エリカ「多少は頭が冴えてるじゃない」
エリカ「ま、相手が威張り散らしてデカイ態度を取るしか出来ない無能というのも大きいでしょうけど!」
エリカ「有能ぶって大きな口を叩くやつに限って、思惑が外れたら脆いものなのよね」 フン
麻子「…………」
沙織「どうしたの?」
麻子「いや、なんだろうな、無性に戦車の中を蹴飛ばしたく――」
沙織「もう、集中しなよお!」
沙織「ほら、来るよ――!」
エリカ「クク、囮につられて間抜けなフラッグ車が来たようね」
エリカ「ある意味予想通りの展開――」
エリカ「このまま追い回してやるわ!!」
エリカ「……」
エリカ「策がハマって相手を叩き潰す――」
エリカ「やっぱり、勝つと気持ちいいものね」
エリカ「それも、策がピタリとハマると」
エリカ「……」
エリカ「黒森峰のときから、アンタはそうだったわよね……」
エリカ「隊長の指揮に忠実でいながら、臨機応変に指示を出し、ハプニングに対処する」
エリカ「……」
エリカ「アンタのそーいう所が、なんか気に入らなかったけど……」
エリカ「同じチームで、隊長の背中を追いかける同士だと思っていたから、少し、尊敬していたのに……」
エリカ「……」
エリカ「まさか、こんな形で、アンタの指揮で気持ちよく相手を追い込む日が来るなんてね……」
華「なにか、喚きながら逃げてます……」
エリカ「ふん」
エリカ「予想外のことに取り乱して叫び始めるのは二流の証ね」
麻子「……折角追い風が吹いているのに、今日のエンジン音は本当に蹴ってやりたくなるな……」
ズドオオオオオオオン
エリカ「!?」
みほ「今のは――」
優花里「ファイアフライ、17ポンド砲です……!」
沙織「なんか、凄い音だったよ……!?」
エリカ「こ、こんなの体に喰らったら死ぬ、死ぬわよ!?」
みほ「……」
みほ「4輌だけ……?」
優花里「距離、約5000メートル!」
みほ「ファイアフライの有効射程は3000メートル……」
みほ「まだ大丈夫です!」
エリカ「ちょ、大丈夫じゃあないわよ!」
エリカ「こっちは掠るだけでも大激痛待ったなしなのよ1?」
エリカ「っていうか、案の定さっぱり砲撃が当たらないし、このままだと時間の問題じゃない!」
エリカ「どうするつもりなのよ!?」
みほ「うさぎさん、アヒルさんは後方をお願いします」
みほ「カバさんと我々あんこうチームは、引き続きフラッグ車を攻撃します!」
梓「今度は、逃げないから……!」
うさぎさんチーム「「「「「うん!」」」」」
エリカ「……」
エリカ「素人集団ではあるけど……」
エリカ「少しだけ、マシになっている……?」
エリカ「……まあ、マイナスがゼロに近づいただけではあるけど……」
エリカ「この短期間で、車体の色を普通にしただけでなく、本当に基礎の部分と心構えは修正してきたってことかしら……」
みほ「アヒルチーム、怪我人は!?」
典子「大丈夫です!」
エリカ「……ま、変わってないところも、あるいたいだけど」
エリカ「M3もファイアフライにやられたか……」
エリカ「もう時間の問題ね」
エリカ「……」
エリカ「諦めムードも漂っている」
エリカ「諦めた者に勝利など無い」
エリカ「さりとて、戦車道にまぐれなし」
エリカ「確かにちょっと健闘したのは褒めてあげてもいいけど、現実は厳しいのよ」
エリカ「……」
エリカ「だからさっさとやられなさいフラッグ車!!」
エリカ「あんなのにぶち当てられたら絶対ヤバイから!」
エリカ「車内で出火するレベルの砲撃とか受けるわけにはいかないんだからね!!」
まほ「……」
まほ「エリカなら……」
まほ「もう時間の問題だなんて思うかもしれないな……」
エリカ「……」
ヒソヒソ
アノコ、ドウコウヒライテナイ?
ヒソヒソ
ッテイウカ、サッキ、オッパイモンデタワヨ
ヒソヒソ
まほ「……」
まほ(色んな意味で、この観戦ももう時間の問題だな……)
まほ(無用なトラブルになる前に、試合が終わればいいのだが……)
みほ「みんな落ち着いて!」
みほ「落ち着いて攻撃を続けて下さい!」
みほ「敵も走りながら撃ってきますから、当たる確率は低いです!」
みほ「フラッグ車を叩くことに集中して下さい!」
エリカ「そうよ、とにかく先に撃墜するしかないわよ!」
エリカ「何せ相手はあのファイアフライのナオミよ!?」
エリカ「っていうかさっきから立て続けに2輌撃破されてるのよ!?」
エリカ「楽観視してたら私の体がバラバラに吹き飛ぶんだからね!」
みほ「今がチャンスなんです!」
みほ「当てさえすれば勝てるんです……!」
エルヴィン「諦めたら……」
柚子「負け……」
桃「いやもう駄目だよ柚子ちゃあん」 ビエーン
エリカ「ちっ、指揮を下げるようなネガティブな発言なんてするもんじゃないわよ」
麻子「……」 ガイン
エリカ「え、ちょ、今何!? 蹴った!? 今蹴った!?!?」
優花里「西住殿の言うとおりです!」
沙織「そうだよね……諦めたら負けなんだよね……!」
麻子「うん……」
沙織「華!」
沙織「撃って撃って撃ちまくって!」
エリカ「そうよ、それしかないわ!」
沙織「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるって!」
エリカ「そうよ、いいこと言ったわ!」
エリカ「下手な鉄砲が当たらなきゃ、私は終わりなんだから!!」
沙織「恋愛だってそうだもん!」
華「……いいえ、一発でいいはずです」
エリカ「そりゃあ当たればそうだけども……やれるわけ?」
華「冷泉さん、丘の上へ」
エリカ「待って」
華「上から狙います」
エリカ「待ちなさい」
みほ「稜線射撃は危険だけど、有利に立てる……」
エリカ「聞こえてないのを承知で言うけどホント待って」
みほ「賭けてみましょう」
華「はい」
エリカ「被弾可能性アホほど上がるからホント待ってお願い待って!!!!!」
エリカ「ああああ、ほら!」
エリカ「こっち狙ってるわよ!!」
エリカ「そりゃそうなるわよ!」
エリカ「ちょっと聞いてるの!?」
みほ「――っ!」
みほ「停車!!」
エリカ「こっちは最初からそうやって体を動かしてるつもりよっ!」
キキーーーーッ
ズドオオオオオオオン
エリカ「っぶな……」
エリカ「急停止できるよう出来る限り体を動かしてなければ死んでたわね……」
みほ「ファイアフライが次の弾を撃ってくるまでが勝負!」
エリカ「その通り、車長の言うことは絶対よ!」
エリカ「なんとしても早急にフラッグ車を撃破しなさい!」
華「わかりました……!」
華「花を活けるときのように集中して……」
エリカ「ちょ、集中は大事だけど早くしなさいよ!」
エリカ「つ、次が来るわよ!?」
みほ「華さん、お願い――!」
華「発射――!」
エリカ「よし行k――」
ズドオオオオオオオン
エリカ「ひぎいいいいいいいいいい!?」
『大洗女子学園の勝利!』
エリカ「おぎゃぐおぅえあぐ」
エリカ「お尻が……お尻がああああああああ!!」
エリカ「自由にのたうちまわれないのがこんなにつらいなんてええええええ……!」
エリカ「いっそ気絶してええええええええええ……!」
エリカ「ああああ……」
エリカ「いい話風に青春してやがるぅ……」
エリカ「何泣ける話みたいなことしてンのよ畜生!」
エリカ「こちとら裂ける穴痔みたいなことになりそうよ!」
エリカ「あああああああ……お嫁にいけない……」
ケイ「エキサイティーーーーング!」
ケイ「こんな試合が出来るなんて思わなかったわ!」 ガバッ
みほ「あ、あの……」
ケイ「なに?」
みほ「4輌しか来なかったのは……」
ケイ「貴方達と同じ車輌数だけ使ったの」
エリカ「じゃあ撃破された分差し引いて3輌で来なさいよ!」
エリカ「っていうかファイアフライさえいなければ! いなければ……!」
エリカ「ああああ……お尻が2つどころかアスタリスクの形に割れそうっ……!」 ヒギィ
みほ「どうして……」
ケイ「ザッツ戦車道!」
ケイ「これは戦争じゃない」
ケイ「道を外れたら戦車が泣くでしょ」
エリカ「……」
エリカ「戦車道は戦争じゃない、か……」
エリカ「分かってるし、だからこそ、卑怯な手なんて使わないわよ……」
エリカ「……」
エリカ(何でだろう……胸が少し痛いのは……)
エリカ(勝つために落下した仲間を見捨てる行為を、暗に責められている気がしたから……?)
エリカ(それとも――単にファイアフライ浣腸アタックの余波……?)
アリサ「うう……」
アリサ(とりあえず、運営本部にアレコレ言われるとまずいだろうし、傍受機の回収だけしておかないと……)
ガガー
ピピピ
エリカ『甘っちょろいこと言って……』
アリサ「!?」
アリサ「え……」
アリサ「もう誰も通信してないはずなのに……」
アリサ「誰かが通信をONにしっぱなしに……?」
アリサ「いや、だとしても戦車にもう人はいないはずだし、目に見える範囲でそんな発言してるやつは――」
エリカ『そんなことだから初戦で消えるのよ、ったく……』
エリカ『それにしても五体バラバラになりそうで最悪の気分だわ……』
エリカ『慣れたのか防御力が向上したのか知らないけど、いっそ意識を奪ってくれたらよかったのに』
アリサ「……」
アリサ「そういえば、向こうの隊長車、この声の人間いなかったような……」
アリサ「っていうか、今思うと、傍受機で聞こえた声の数と人数が合わな――」
アリサ「え?」
アリサ「ええええええ!?」
エリカ『絶対許さないし、恨み続けてやるわ……』
エリカ『ファイアフライの弾を直撃させてくれたことは……!』
アリサ「ゆ、ゆゆゆゆゆ」
アリサ「幽霊……!?」 ヘナヘナヘナ
アリサ「ば、バチが当たったの……?」
アリサ「ぼ、傍受なんてしたから……」 チョロチョロチョロ
ナオミ「?」
ナオミ「どうしたの、そんなトイレの花子さんを見た立野広みたいな顔して」
アリサ「」 ジョロジョロジョロ
ナオミ「……ウップス」
ケイ「反省会するから」
アリサ「ひぃっ」
ケイ「……」
ケイ「……想定より顔面蒼白だけど、何かあったの?」
ナオミ「さあ……」
アリサ「」 ガタガタ
時間が時間ですし投下を終了します
少しだけやります
エリカ「……」
エリカ「全身痛い……」
エリカ「でも意識飛ばせないって最悪ね……」
エリカ「しかも私達は一足先に回収されて壁見るしか出来なくなるし……」
エリカ「はあ……」
ガラガラガラ
エリカ「……ああ、整備部隊が来たのね」
エリカ「まあ、これだけボロボロなのだから当然――」
ピクン
エリカ「んっ……」
エリカ「な、なんてこと……」
エリカ「痛みが和らぎ、むしろ心地のよさすら感じてくるっ……」
エリカ「こ、これが戦車視点の整備……」
エリカ「まるで至高のマッサージと最新医療技術による怪我の治療を同時に受けているような感覚だわっ!」
エリカ「……」
エリカ「……たまには、整備の連中のこともねぎらってやろうかしら」
麻子「……おばあが倒れて、病院に……」
あんこうチーム「「「「ええ!?」」」」
沙織「麻子、大丈夫!?」
華「早く病院へ――」
沙織「でも、大洗までどうやって……」
みほ「学園艦に寄港してもらうしか……」
優花里「撤収まで時間がかかります……!」
麻子「……っ!」 ヌギヌギ
みほ「麻子さん!?」
沙織「何やってるのよ麻子!?」
麻子「泳いで行く……!」
あんこうチーム「「「「ええええええ!?」」」」
華「待って下さい冷泉さん!」
まほ「話は聞かせてもらった、人類は滅亡する」
みほ「お姉ちゃん!?」
沙織「何やってるのよこの人!?」
まほ「すまない、ヒートアップしているときは小粋なジョークを混ぜてクールダウンを図るよう、最近読んだ自己啓発書に書いてあってな」
まほ「それより、大洗なら私達が乗ってきたヘリを使って」
エリカ「ドゥルン!? ドゥルルルルルルルン」
沙織(いや、それよりも何であの嫌味な人におんぶされながらおっぱい揉んでるかの方が気になるんだけど……)
華(何であの人瞳孔開いてあんな微振動しているんでしょう……)
みほ(お姉ちゃん、相変わらず理想の上司になる方法とか慕われる先輩になるとかそういう本読んでるんだ……)
優花里(色々他にツッコミたいところはあるんですが……)
あんこうチーム((((まともな申し出された直後でツッコミを入れられない……))))
まほ「急いで」
まほ「ぼんやりしている暇はないはずよ」
みほ「え、あ、うん……」
沙織「そ、そーだよね!」
優花里「でも、一体どうして……」
まほ「……」
まほ「隊長、こんな子達にヘリを貸すなんて……!」
まほ「――なんてことを、エリカなら言うのかもしれないな」
まほ「だが、これもまた戦車道だ」
まほ「施しでもなければ、見返りを求めているものでもない」
まほ「何の気兼ねもなく、ヘリに乗っていけばいい」
みほ「お姉ちゃん……」
まほ「……私とて、救いたいという気持ちがないわけじゃないんだ」 ポソ
みほ「いやお姉ちゃん、何か如何にも逸見さん不在みたいな顔して発言してるけど今まさに乳弄られて振動してるの逸見さん本人だよね?」
沙織(あ、ツッコんだ……)
優花里(我慢出来なかったんですね……)
まほ「……まあ、そうなんだが、今のエリカはエリカであってエリカじゃないというか……」
まほ「赤星たちのデータによると……」
まほ「この状態の逸見は乳首でイグニッションを入れ操縦することで――」
まほ「ペースをほとんど落とさず、人を抱えて長距離移動が可能だという」
まほ「エリカをここまで連れてきたことにも何か意味がないと色々とキツかったからな、その辺を確かめるべく少しドライブをしていたんだ」
華「ど、ドライブですか……」
優花里「自分の副官にまたがることをドライブとは言わないのでは……」
まほ「今のエリカがどうなっているかを教えて、何ならみほのアドバイスが欲しいところだったが――」
まほ「やめておこう」
まほ「今はそれどころではないし、それに多分今は何を言ってもみほがまともに聞いてくれるとは思えないからな」
みほ「お姉ちゃん疲れてるなら親身になってくれる心療内科の先生紹介しようか……?」
優花里(何で紹介できるんでしょう……)
華(親身になってくれるとか、外部から分かるようなものなんでしょうか……?)
沙織(しれっと聞いちゃいけない実体験を聞いちゃった気がする…・…)
まほ「ところで……」
まほ「君達の中で、ヘリを運転出来る者は――」 チラ
沙織「ええ!? 無理無理無理無理無理!!」
華「私もさっぱり……」
みほ「私も、いつもお姉ちゃんにやってもらっちゃってたから全然……」
優花里「ヘリの操縦はヘリの操縦で求められるスキルっていうのがありますもんねえ」
沙織「麻子だって出来ないよねえ!?」
麻子「え、あ、ああ」
まほ「だよな……」
まほ「いつもなら、ここでエリカに操縦をさせるんだが……」
まほ「さすがにこの状況でヘリの操縦を任せるのはな・……」
エリカ「ドゥルルルルルルルン」
沙織(なんだろう、確かにヘリを任せちゃいけないような顔してる……)
まほ「乗員制限もあるし、エリカは置いていこうと思う」
まほ「……他に付き添いの子はいないな?」
沙織「あっ、私行く……!」
まほ「それがいいだろう」
まほ「……みほ」
まほ「そんな風になっていても、エリカはエリカだ」
まほ「しばしの間、エリカを預けるぞ」
まほ「それじゃあ、出発――!」
みほ「お姉ちゃん……」
みほ「……」
みほ(完全に道具扱いだったけど、この状況の逸見さんを預けられてもただただ気まずいよお姉ちゃん……)
優花里「行ってしまいましたね……」
華「色々強烈な方でしたね……」
優花里「でもヘリを出してくれるあたり、いい人かもしれませんね」
華「言われて思い出してみれば、嫌味を言っていたのは主に……」 チラリ
エリカ「ドゥルルルルルルルン」
華「……なのに、倒すべき相手として、ついお姉さんの名前をあげてしまってましたんですよね私達……」
みほ「しょうがないよ……多分、そういうものだもん……」
優花里「どうしても、強いやらかしを誰かがやると、集団全体がそのやらかしが代名詞みたくなっちゃいますからねえ」
華「確かに、戦車喫茶の一件で、黒森峰自体に少しよくない印象がつきましたね」
優花里「更に、西住殿のお姉さんというインパクトが強いせいで、ついついその集団の代表として名前挙げちゃうんですよね」
優花里「結果として、ご本人は違うのに、逸見?殿がこしらえた悪いイメージを押し付けられる形になったと……」
華「確かに、今回物凄く感謝はしているのに、変な微振動する少女に跨って胸を揉んでた印象ばかり残りそうで……」
優花里「ちょっとこの微振動のインパクトが強すぎるんですよねえ……何か胸を揉むと操縦できるとか言ってましたし……」
華「今度は変態のレッテルを黒森峰全体に貼り付けて、危うくお姉さんまで変態扱いしてしまうところでしたね……」
みほ「……」
実際乳は揉んでたし、エリカの印象に引きずられるまでもなく変態認定でいいとは思うのだが、
それはそれとしてそんな変態と血が繋がってるというのも恥ずかしい話なので、みほはただ曖昧な笑みを浮かべるしかできなかった。
眠くて文章定まらなくなってきたので寝ます
せめて毎日更新したい・・・
仕事はするな、いいSSの敵だ
って色んな豚が言ってるけど現実は厳しいので、頭がハッキリしてる内は投下します
☆ ★ ☆ ★ ☆
エリカ「――――――はっ!」
エリカ「……」 モゾモゾ
エリカ「……」 モゾモゾ
エリカ「……よし、漏れてない……」 ホッ
小梅「なにが?」
エリカ「うわああああああああああっ!」
エリカ「ちょ、ま、驚かせるんじゃないわよ!」
小梅「そんな、音もなく背後に立っただけなのに……」
エリカ「それを驚かせるって言うのよバカ
エリカ「……」
エリカ「?」
小梅「どうかしたの?」
エリカ「珍しいわね……」
エリカ「いつもなら、この時間まだパジャマなのに」
小梅「」
エリカ「?」
エリカ「何よその顔」
小梅「あ、ううん」
小梅「そーいうの、覚えててくれたのが驚きで」
小梅「逸見さん、てっきり私のことになんて興味ないものかと……」
エリカ「……興味はないわよ」
エリカ「ただ――」
エリカ「ただ、なんとなく、最近になって、覚えただけよ」
小梅「……!」 パァァァァ
小梅「嬉しいっ……ついにそこまで心を開いてくれたんだ……!」
エリカ「はあ!?」
エリカ「何勘違いしてンのよ!」
エリカ「そーいうわけじゃあ――」
小梅「早速森の仲間達にも報告しなくちゃ!」 シュッシュッシュッ
エリカ「はあ? 森?」
エリカ「……ラインのアレかぁぁぁぁぁ!」
ガバッ
小梅「ひゃあ!?」
エリカ「あんな大規模に私が心開いたなんていう意味分からないこと言わせるわけにはいかないわよ!」
ドタンバタン
コンコン
ドタンバタン
小梅「残念もう送っちゃいましたー!」
まほ「赤星、エリカは今日も無事に目を覚まs――――」
小梅「」
エリカ「」
まほ「……」
まほ「朝から元気なのはいいことだが、あまり音を立てると直下も困るだろうから静かにしてやれ」
エリカ「ち、違います! そーいう行為をしていたわけじゃあないですからね隊長!?」
小梅「すみません、逸見の森のことでちょっと揉めちゃって……」
まほ「何をやっているんだ……」
まほ「仲良くやるためのツールで仲違いしてどうする」
小梅「すみません……」
まほ「……だが、いい傾向かもな」
エリカ「へ?」
まほ「仲良く喧嘩する、というのも、友人間では必要なことなのだろう」
まほ「……そういうのが、みほは誰ともできなかったし、私も、そういう相手はいないからな」
エリカ「隊長……」
エリカ「でもそれはそれとして逸見の森は黒森峰の沽券に関わるから潰すべきだと思うのですが……」
小梅「えー……」
小梅「でも正直逸見さんももう慣れてきたでしょ、逸見の森があることに」
エリカ「ええそうね、そのクソフレーズを何の躊躇いもなく口にできた自分にちょっと引いてるくらいにね」
エリカ「だからこそ今すぐ叩き潰してゴルフ場にでもしたい気分よ」
小梅「でも、もうゲストさんだって来てるんだよ?」 スッ
アンチョ見エリカ { おおーっ、本当に逸見ばかりなんだな!
逸見エリ力 { いらっしゃいまほー
逸見工リカ { いらっしゃいまほー
It's me エリカ { こんにちわにー
いつみえりか { いらっしゃいまほ隊長ー
まほ「ほう、私の名前が挨拶に使われているのか」
エリカ「怒っていいですよ隊長」
まほ「……まあ、そうすることで隊員達の距離が近付くなら、いいとしよう」
エリカ「ええ!?」
小梅「さすが隊長話がわかりますね!」
まほ「このアンチョ見というのは……」
小梅「はい、アンチョビさんです」
まほ「ほう」
小梅「ゆくゆくは逸見の森とアンツィオ屋台でキャラコラボとかありかなーって話もしました」
まほ「なるほど」
エリカ「待って」
小梅「今は逸見さんの2Dキャラでラインスタンプの申請してるんですよ」
エリカ「待てって言ってるでしょ」
まほ「ああ、エリカの言うとおり、一旦待ってもいいかもな」
まほ「このままでは、エリカに関する情報が全て出ていってしまう」
エリカ「肖像権もあったもんじゃないですよホント」
まほ「そうなると、情報漏えいになり、色々と不利になるかもしれない」
小梅「確かに、逸見さんの人間性という大きな弱点が露見するかもしれませんが……」
エリカ「おい赤星」
小梅「でもそれはもう周知の事実なのでは?」
エリカ「赤星」
小梅「じゃあ、アンチョビさんとペパロニさんとカルパッチョさんはゲストということで……」
小梅「一日で部屋から退室させて、入りたいって連絡があったら入れる方式で……」
まほ「それなら、まあ」
エリカ「隊長!?」
エリカ「っていうか、三人全員この意味の分からない森に招待したわけ?」
小梅「そうだよー」
小梅「ほら」
逸見エリカルパッチョ { 逸見エリカルパッチョさんがスタンプを送信しました
逸見☆ハンバーグ☆エリカ { 逸見☆ハンバーグ☆エリカさんがスタンプを送信しました
逸見えりか { ようこそいらっしゃいまほ、アンツィオの皆さん!
林家ペーパー { うへえ、本当に同じ人間の顔写真まみれっすねェ~~
逸見エリ力 { それが自慢……(ニッコリ
小梅「ねっ」
小梅「初めての逸見の森に戸惑ってるから、皆で優しく歓迎してあげてるんだよ」
エリカ「いや、っていうか今しれっと私でもなんでもないやついたわよ」
小梅「そもそもこの逸見の森は、逸見さんを招待したくて作ったの」
エリカ「はあ?」
小梅「皆で逸見さんを知ろうっていうのが目的だけど、やっぱりそれには本物の逸見さんと触れ合うのが一番だから」
小梅「でも、いきなり本物を前にするとお互い色々気まずいかもなーって」
小梅「そこで皆、名前を匿名で逸見さんにすることにしたの」
エリカ「最後一言で数段飛ばしで理論が飛躍したわね」
小梅「それに、逸見さんも本物の逸見さんってバレてるよりも、誰が本物か分からない中での方が、自由に発言出来るかなあって」
小梅「木を隠すなら森の中、ってね」
エリカ「死体を隠すために大量殺人で死体を増やすくらいに無茶な理屈を押し通そうとしてくるわね……」
小梅「それで逸見の森って名前なんだけど、まあ木が多ければいいかってことで林もオーケーにしたの」
小梅「この場合木の葉=逸見さんだし、林=逸見さんの集合体だから、林を名乗れば実質逸見さんを名乗ることになるし」
エリカ「へえ、すごいわね。バカじゃないの」
小梅「あ、でもちゃんと外部から人を呼んだのにも意味はあるんだよ!?」
エリカ「ほーう、言ってみなさい」
小梅「逸見さんに関する外部から見た意見が必要かなって」
エリカ「それが必要になる日なんて永久に来ないしなんで必要だと思ったのよ」
小梅「それが、この前逸見さんの解釈について森の仲間達が揉めちゃって……」
エリカ「森の仲間達」
小梅「解釈違いで揉めた以上、相手陣営の言うことは冷静に聞けないだろうし……」
エリカ「解釈違い」
小梅「ここは中立の立場から意見を貰おうかなって!」
エリカ「争わせたまま滅びるまで好きにやったら?」
エリカ「そしてそのまま両者滅んで」
小梅「駄目だよぉ!」
小梅「逸見の森は皆で仲良くするためのものだもん、バトルロワイアルなんて絶対駄目!」
小梅「孤独だけに蠱毒とか、そういうネタはいらないから!」
エリカ「なっ、別にそういうのじゃないわよ!」
まほ(孤独は否定しないのか……)
小梅「だから、平和的解決をしようとしてるの!」
小梅「逸見の森はシルバニアファミリーが住めるくらい平和で友好的な森にしたいから!」
エリカ「知らないわよ!」
エリカ「……っていうか、外部に恥晒すくらいなら、私に聞けば答えるわよ」
小梅「え、いいの?」
小梅「てっきり一蹴されるかと……」
エリカ「一蹴したいわよ」
エリカ「……でもま、それはそれで面倒臭いことになるし」
エリカ「病気の時の借りは返さなくちゃいけないもの」 テレッ
小梅「逸見さん……」
小梅「じゃあ近いうちに、逸見さんに聞いた情報を共有するためのイベント開くね!」
まほ(すっかり蚊帳の外になってしまったな)
まほ(だが、後輩に慕われる理想の上司とは、建設的な意見をきちんと言う人らしいし、何か言っておくか……)
まほ「それならば、深く皆の記憶に残るよう、エリカにまつわる情報はクイズ大会という形で提供してみるのはどうだろう」
小梅「なるほど」
エリカ「なるほどじゃない」
エリカ「大会前なんだから、そんな無駄に手間隙かかることは辞めときなさい」
小梅「うー……」
小梅「絶対おもしろいのになあ、クイズ逸見リオネア……」
エリカ「面白くないわよ」
小梅「絶対おもしろいよ!」
小梅「私、頑張って正解を引っ張る司会者・逸見のもんたになるよ!」
エリカ「ならんでいい!」
まほ「……ふふ」
エリカ「た、隊長……?」
まほ「ああ、すまない」
まほ「……エリカがそうやって友人とふざけあっている姿を見れたのが、少しうれしくてな」
エリカ「え……?」
まほ「……」
まほ「いや、なんでもないさ」
まほ「それより、大会前だし気合を入れないといけないのは事実だ」
まほ「……赤星も、朝から自主練習してくれていたようだが……」
まほ「今日の放課後は、早起きして練習した者だろうと無関係にしごいていくからな!」
小梅「はい!」
エリカ「はい!」
<数日後>
まほ「エリカ」
エリカ「はい」
まほ「明日は試合を観戦に行きたいと思う」
エリカ「かしこまりました」
エリカ「副隊長として、ヘリの操縦手として、是非お供させて下さい!」
エリカ(隊長と2人でお出かけ……)
エリカ(前回はちょっと嫌な気分になったりしたし、今度こそ楽しく……!)
まほ「もとよりそのつもりだ」
まほ「エリカには黒森峰の未来を任せるつもりだ」
まほ「……逸見の森以外でも、外部とつながりを持ち、外の情報を仕入れる必要はあるだろう」
エリカ「そうですよねただその森でも別に私は外部と繋がってませんけど」
まほ「……エリカのいいところは、真面目でストイックなところだ」
まほ「自信が努力に裏打ちされているところもだな」
エリカ「な、なんですか急に///」 アワアワ
まほ「……しかしだからこそ、自信より弱いとみなした相手を侮りがちだ」
まほ「努力不足と断じてしまうことも多い」
エリカ「そ、そんなことは……」
まほ「……」
まほ「今大会の日程、他校がいつどこで試合をするか、覚えているか?」
エリカ「え、あ、えーっと、その……」
まほ「……目の前に集中するのは悪いことではない」
まほ「向こうのブロックに至っては、当たるのはどうせ一校だし、無駄に全てを完璧に把握しようとまではしなくていい」
まほ「だが――」
まほ「何も知ろうとしなくては、足元をすくわれる」
まほ「捲土重来のためにも――その可能性は減らさなくてはならないと、思ったんだ」
まほ「ま、いずれ分かるさ」
まほ「とりあえず今夜は交互に操縦しよう」
エリカ「はい!」
エリカ「では、先に運転させていただきますので、隊長はおやすみください!」
まほ「……ではお言葉に甘えるとしよう」
エリカ「はい!」
エリカ「……」
エリカ(確かに、誰であろうと変わらず叩き潰すってなってるせいで、他所の所の情報全然仕入れてなかったわね…・・)
エリカ(偵察とかは、試合に出られない子達がよくやってくれてたし、これまでは必要なかったけど……)
エリカ(来年までには、そのへんも把握できるようにしなくちゃ)
エリカ「……ま、今年は焦らなくても大丈夫でしょう。隊長もいずれとおっしゃっていたし」
エリカ「それにもう、向こうのブロックがサンダースに負け姿を消した」
エリカ「どうせプラウダに決まってるわ、そうなったら」
エリカ「アンツィオの作戦が通用するタイプでもないし、決まりでしょ」
エリカ「……」
エリカ(大洗は……ありえないわね)
エリカ(あのアホ高校こそ、アンツィオの策に引っかかるはず)
エリカ「何にせよ、憂いはほとんどなくなったわね」
エリカ「装備的にもアンツィオに勝てそうにないし、終わりを見届けてはあげられないけれど、さよならよ、大洗ッ――!」
☆ ★ ☆ ★ ☆
ツチヤ「うん、こんなもんかな」
エリカ「」
桃「どうだ、整備の方は」
桃「順調か?」
エリカ「」
桃「とうとう今日は二回戦だ」
桃「絶対に勝つぞ!」
エリカ「またなのおおおおおおおお!?」
思ったより眠たくなってきたので寝ます
アンツィオ編は1日か2日で終わらせたい……
時間が時間なので、本当に少しだけ投下します
エリカ「最悪だわ……」
エリカ「ヘリ、墜落してないでしょうね……」
エリカ「……」
エリカ「……ハン!」
エリカ「一瞬、決勝でぶつかったときに入れ替わったらどうしよう、なんて思っちゃったけど……」
エリカ「奇跡はそうそう起こらない」
エリカ「大体この貧弱な戦車で勝ち上がろうって方がおこがましいのよ」
エリカ「変なところで真っ向勝負をしたがるサンダースならともかく――」
エリカ「抜け目のないアンツィオや、どうせ勝ち上がってくる圧倒的戦力を誇るプラウダに勝てるわけないじゃない」
エリカ「心配しなくても、あいつらの大会は今日で終わりだわ」
エリカ「まあ戦力だけならアンツィオも大概だけど……」
エリカ「戦術に関しては、そこそこ評価されてるようだし、さすがにアンツィオでしょう」
エリカ「隊長と同世代でさえなければ、黒森峰に入っていたかもしれないという逸材車長――」
エリカ「練習時代、この私や黒森峰の戦車チームですら何度も騙されそうになったものよ」
エリカ「私たちには冷静な隊長がいたし、奇襲を真っ向から受けきって反撃できるだけの武力もある」
エリカ「でもあの子達には武力もなければ知識も経験もないッ」
エリカ「精々奇襲に慌てふためき、浮足立つといいわ」
エリカ「予想外の事態を前に、まともに思考することも出来ず、大騒ぎしたまま自滅していく姿を見ることができそうね」
エリカ「まっ、精々西住流の名を地に落とさないような負け方をすることね……!」
エリカ「それにしても、相手が貧弱装備のアンツィオで助かったわ」
エリカ「これなら撃破されるにしてもファイアフライほど痛くはないでしょ」
エリカ「痛みのあまり漏らす心配ももうないとはいえ、あの痛みはもう御免よ……」
エリカ「五体バラバラになるかと思ったし、整備で癒やされても痛みはちょっと尾を引くのがね……」
エリカ「結局昨日までなんとなく体が痛い気がして筋肉痛みたいに体が上手く動かせなかったし」
エリカ「特にファイアフライのやつ、お尻ばかり必要に打ってきたせいで、お尻の穴がずっとヒリヒリしてたのよね……」
エリカ「トイレで大きい方する時地獄のような痛みが襲ってきたし……」
エリカ「おかげで痔とかいう噂が広まったの思い出して腹立ってきたわ」
エリカ「そういう噂の存在に気がついて否定できるって点じゃ、逸見の森も役には立つのよね……」
エリカ「……」
エリカ「いやそれでも認められないけどねあの森の存在は」
エリカ「頭もキレるしケツも切れてるしまさに黒森峰のキレ芸人だぜHAHAHAHAHAとか抜かしやがったヤツもいるし」
エリカ「……」
エリカ「あれマジ誰だったのかしら一遍マジでグーで殴りたい……」
エリカ「まあ問題は秘密兵器とやらだけど……」
エリカ「ま、なんとかなるでしょ」
エリカ「少なくともファイアフライにお尻を狙われるよりやばくなることはないでしょうし」
エリカ「……勢い重視のアンツィオが万が一プラウダに勝った時のことも考えると、ここでじっくり見ておきたいわね」
エリカ「っと、ようやく来たわね」
麻子「眠い……寝ていいか」
沙織「まぁまぁ」
みほ「あはは……」
エリカ「ま、どうせ言わずとも無様な負け方するでしょうから、毒は吐かないでおいてあげるわ」
エリカ「せめて私が秘密兵器とやらを見て理解することが出来るくらいは持ちなさいよね!」
エリカ「ほら、行くわよ!」
エリカ「パンツァー――――」
みほ「――フォー!」
「l ̄!i| |! i! |
_ __i!| |!_ L__!i__i|
i!| _ _ __|i|! __i| ̄|i_ |!´i!゙`|
 ̄ ̄`゙!|i i! i!| ̄ ̄ _ ̄L__!i__i|
/`゙≫|i! !|<´\  ̄`゙i!| |i ̄i! !|i!
< / |i!_i| ヾ__≫ i  ̄ ̄ |i! i|
! |i! |  ̄
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iヽ _ _ノ从メ#ヾ'人ヾ:;:ー- ...、
\ ヽ __ノ;;;ヾ=二三 :;:;: :;:;:;;・ ,`゙ヾ:;:;:;:;::;:;:ヾ
`丶 》:;:;;#ノ彡三二三 」── 二=≡≡=ヾ:;:;:.,ゝ ── ─ i!二二二`7
\丶 ヾ,:;'゙´'人i从'※'iミ彡∠゙´ `ヾ:;:; ;:;:レ' /7∠/
\ヾ人'゙´;:'´川彡/r-三゙´ `゙ヾ;:; ;:/ 〈_/
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.:i!|'゙´ ,イ'゙´ : .;: ::. i|!i《:;:;:/
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川//` ゙!|i!i|ヾゝi!二二二`7
─ = 二 て:.》 |i:;:#i!`i'|!i /7∠/
!i゙´i!| \' 人゙-─∠ ゙` 〈_/
\ `i!゙´ .,人-ーノ:;i|!ヾ >ヾ'゙´ ::::::::::::;;;:#i|! i|ヾ
ヾ、 ゞ'゙´ `゙ ::;:;´ ヾ》:: ::;:;ヾ .r'゙´;;;;;;《'ミ゙´i三二=ヾ ゙ヾ
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\ヾミミi!#゙─<#i!`|゙´三二=─-.,.、\ ;:;!ii .::'゙` ゙::.、 i|!ミ /
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─=二て 人从#ヾ|\/人从/ / \ヾ // #i∧ノ/《ヾノ! ノ/人从/
ズドォォォォォォォン
キュポッ
エリカ「ん?」
ワァァァァァァァァァ
審判『大洗女子学園の、勝利ッ!』
エリカ「んんんんんんん??????」
エリカ「早くないかしら?????????????」
眠いので寝ます
ちょっとだけ投下します。朝が早いから切り悪くても終わります、申し訳ない。
エリカ「何だったのかしらこの試合……」
エリカ「まあでも、アンツィオの秘密兵器が分かったのは収穫、かしら……」
エリカ「練習試合とはいえ、黒森峰は遅れを取れないものね」
エリカ「今後、アンツィオとの試合の際はP40対策を徹底させなくちゃ」
アンチョビ(修理費すごいことになりそうだなあ……)
アンチョビ(また屋台で稼がないとだが……)
アンチョビ「今日は豪勢に食べるぞーーーーっ!」
アンチョビ「当然! アンツィオ持ちだぁ!」
ワァァァァァァァァァ
エリカ「相変わらずこの馬鹿騒ぎはやるのね……」
エリカ「……」
エリカ「うちでやるより楽しそうにしてるじゃないの」 ムッ
エリカ「まあそりゃ、厳格な黒森峰としては、あまり馬鹿騒ぎをさせるわけにはいかないけども」
アンチョビ「お、食べてるか~?」
みほ「はい!」
華「本当に美味しいですねえ~」
アンチョビ「お、おお、すごい食べっぷりだな……」
エリカ「バカなのよそいつ、胃も頭も」
エリカ「……」
みほ「えへへ……」
エリカ「……」
エリカ「楽しそうに笑っちゃって……」
エリカ「……所詮戦車は輪の外」
エリカ「あの子が遠いわね」
エリカ「……」
エリカ「ああ、でも……」
エリカ「隣に居たはずなのに、あの時と、遠さは変わらない、わね……」
ペパロニ「お嬢ちゃん、いい食いっぷりだねえ!」
ペパロニ「もっと茹でちゃうよお~?」
沙織「ええ!?」
沙織「さすがに華もお腹いっぱいじゃ……」
華「もちろん頂きます」
沙織「ええ!?」
麻子「まるでブラックホールだな……」
ペパロニ「山ほどあるぞお!」
麻子「予算もないのにか」
ペパロニ「ケチケチしたら負けなんだよ!」
ペパロニ「ほーら、アラビアータにゴルゴンゾーラ、更にはトマトと生ハムのペンネパスタだ!」
優花里「おお、本当に山盛り……」
沙織「パット見色んなのが混ざってて綺麗だけど、食べ進めると融合してグロくなりそう……」
ペパロニ「この山盛りのペンペンペンネを食べきれるかなァ!?」
華「ええ」
華「どか食いは淑女らしからぬと、顔をしかめられてきましたが――」
華「私は力強い女性でありたい」
沙織「真顔で何言ってんの!?」
華「もう迷いません……また1から食べはじめます」
沙織「前菜から!?」
華「むしろ0から、胃袋という宇宙を始めてみます」
ペパロニ「くっ……こりゃあ一口食べたら宇宙を見ながら脱衣するレベルのモンを作らなきゃ勝てないかもな」
沙織「これなに!? ねえなんなのこれ!?」
みほ「あはは……」
アンチョビ「ノリと勢いは暴走するとこうなるという見本だな」
アンチョビ「……それより……」
アンチョビ「ちょっといいか?」
みほ「え?」
アンチョビ「いや、ちょっとした、与太話をしようと思ってな」
エリカ「……」
エリカ「ん、なによあの2人、近付いてくるわね」
みほ「ええと、与太話って……」
アンチョビ「あー……」
アンチョビ「いや、本当に与太話さ」
アンチョビ「大事なシリアスな話なんかじゃないよ」
みほ「はあ……」
アンチョビ「……いや、そーいうのも大事かなって、思うんだ」
アンチョビ「黒森峰だと、こういうの、なかっただろう?」
みほ「……っ!」
アンチョビ「杏のやつ、あれでいて、ちょっぴり強引なところとかあるからなあ」
アンチョビ「やりたくないのに戦車道をさせられてるなら、力くらい貸そうかと思っていたが……」
みほ「アンチョビさん……」
みほ「……」
みほ「お気遣い、ありがとうございます」
みほ「でも――大丈夫です」
みほ「私、今は、戦車道が楽しいですから」 ニコ
エリカ「……」
アンチョビ「……そっか」
アンチョビ「そんな感じの顔してたけど、それが聞けてよかったよ」
アンチョビ「アレでいて、お前の姉も気にはしているだろうからな」
みほ「ええ、そうですか?」
アンチョビ「ああ」
アンチョビ「あいつもアレでいて大変なんだよ、立場とか」
アンチョビ「戦車道を嫌になって転校したなら自分が連絡しない方がいいだろうって言ってたしな」
みほ「お姉ちゃん……」
エリカ「……ふん」
エリカ「そこまで心配されて愛されてたのに裏切って大洗で戦車道してるんだから、大したタマよアンタは」
アンチョビ「たまには連絡くらいしてやってくれ」
アンチョビ「メアドは変わってないし、知ってるだろ?」
みほ「はい」
アンチョビ「あとこれがラインIDで、こっちが逸見の森のIDだ」
エリカ「おいちょっと待ちなさいおいコラおい」
アンチョビ「なんだ、スマホじゃないのか」
みほ「あ、はい」
みほ「転校で一人暮らしまでさせてもらってるから……」
アンチョビ「そりゃそうか……」
アンチョビ「高いもんなあ、スマホ……」
アンチョビ「私も屋台の宣伝やらで使うから安いの持ってるけど、負担すごいもんなー」
みほ「黒森峰の人は、結構持ってましたけど」
アンチョビ「あいつら金持ってるもんなー」
アンチョビ「森作れる程度には」
みほ「森……?」
アンチョビ「ああ」
アンチョビ「西住流マニアの集まる森だし、私たちは『しほマニアファミリー森の雑貨屋さん』みたいな扱いしてる」
エリカ「野郎」
寝ます、すまんな
ちょっとだけ投下します
アンチョビ「ああ、それと――」
アンチョビ「ほら、これ」
みほ「?」
みほ「なんですか、これ……?」
アンチョビ「いや、詳細は教えてもらえなかったんだが……」
アンチョビ「サンダースの娘で、一人やたらとⅣ号に怯えてる子がいるらしくてな」
みほ「ふえ?」
アンチョビ「よほどのトラウマがあるのか、その、名誉に関わるから秘匿って言われるような状態になっているらしい」
みほ「はあ……」
アンチョビ「なんでも、幽霊の声が聞こえたとか」
みほ「幽霊……?」
アンチョビ「ああ」
アンチョビ「何でも、通信を傍受していたら、ファイアフライに撃たれて痛い~~って声が入ったんだとか」
エリカ「!?」
みほ「それって……」
アンチョビ「まあ、イタズラか、何かの影響で違う所の音声が入っただけだとは思うんだけどさ」
アンチョビ「一応、渡しておこうかと思ってな」
みほ「ふえ?」
アンチョビ「その傍受機」
アンチョビ「それを介せば戦車の声が聞けるかもしれないぞ?」
みほ「あ、それはちょっとロマンチックかも……」
エリカ「そお? あんた趣味どうかしてるんじゃないの」
アンチョビ「こってり絞られて傍受なんてしないって誓わされたうえに、呪われた傍受機なんて要らないんだってさ」
アンチョビ「確かに渡したからな」
アンチョビ「まあ、それをくれた奴を安心させてあげるためにも、それを使って愛車と会話しているといいさ」
アンチョビ「……ツモる話もあるだろうから、私はパスタでも茹でてくるし」
アンチョビ「好きに話しなよ」
みほ「あ、えっと……」
みほ「ありがとうございます!」
アンチョビ「いいっていいって」
アンチョビ「……戦車道を1から立て直すのって、辛いもんな」
アンチョビ「たまには愛車にくらい」
アンチョビ「そんでもって、気がついたら仲間に」
アンチョビ「それも無理なら、他校の人間にくらい、愚痴っちゃってもいいんだからな!」
みほ「……」
みほ「本当に、ありがとうございます……!」
みほ「……」
みほ「いい人だったなあ……」
エリカ「そう?」
エリカ「甘ちゃんなだけよ」
みほ「……」
みほ「これ、どうしよう……」
みほ「……」
スッ
みほ「あー……」
みほ「あーあー」
みほ「聞こえますかー、なんちゃって……」
みほ「……」
エリカ「いや、通信機じゃなくて傍受機なんだから、ヘッドホンに向けて喋っても意味ないでしょ」
みほ「え!?」
みほ「い、今の声……」
エリカ(しまった――――っ!)
気づけば3時半
来週は明日くらいからあんまり投下できなくなりますので12月まで終わらなさそうですが、
年内完結目指してがんばりますのでお付き合い頂ければ幸いです
今日は寝ます、申し訳ない
あんまり投下出来ませんが、またしばらく投下できそうにないので、少しでも進めたいと思います
みほ(なんだろう……)
みほ(エンジン音のようだったけど、でも、言葉になっていた……)
みほ(エンジン音をつなぎ合わせて歌わせるMADみたいな感じではあるけど――)
みほ(でもそもそも、今はエンジンは切っているはず)
みほ(それに、傍受機越しにしか、その音は聞こえなかった)
みほ(つまり――――)
みほ「本当に……」
みほ「貴女は、Ⅳ号戦車なんですか?」
エリカ「……」
みほ「……」
エリカ「……」
みほ「……」
みほ「そう、だよね……」
みほ「返事なんて、あるわけ、ない、よね……」
エリカ「……」
エリカ(仕方ないじゃない……)
エリカ(普通、戦車なんてしゃべらないのよ)
エリカ(私が喋っちゃうことで、どうにかなっても困るし……)
エリカ(意識ある時バラされたら最悪だし)
エリカ(喋るわけにはいかないわ)
エリカ(それに、普通戦車なんて喋らないんだもの)
エリカ(すぐに納得するでしょ)
みほ「Ⅳ号、なんて呼び方失礼だよね」
みほ「初対面の人に、貴女人間ですかって言うようなものだし」
みほ「ごめんね、なんて呼べばいいのかな。あんこうさん?Ⅳちゃん?」
みほ「それとも、お母さん戦車につけられた名前でもあるのかな」
エリカ「そういうことじゃないわよ天然なのあんた!?」
みほ「……!」 パァァァァ
エリカ(しまった……!)
みほ「やっぱり、偶然じゃない……!?」
みほ「こんなことって……」
エリカ「……」
エリカ(ああああああ……)
エリカ(どうする、どうするのよ私!?)
エリカ(続きはウェブに回せないわよ!?)
エリカ(どうすれば……)
みほ「嬉しい……」
みほ「小さい頃、ずっと戦車が友達だったから……」
みほ「嫌なことがあったら、いつも戦車に逃げ込んで……」
みほ「お家の中で、いつでも味方してくれた戦車に、命があるなんて……」
エリカ(無いわよ!)
エリカ(……いや、まあ、私がこんなことになってるし、絶対ないとは確かに言い切れないけども!!)
みほ「いっぱい、お話したいな……」
みほ「お友達なんだし、私のことは『みほ』って呼んで!」
みほ「その、私は、なんて呼んだらいいかな?」
みほ「教えて?」
みほ「貴女の名は?」
めちゃ短くて申し訳ありませんが、寝ないと不味いので投下を終了します
次は最速で金曜、下手したら月曜まで投下無いです
申し訳ありません
お久しぶりです
相変わらずスローペースで申し訳ない
いけるところまでは投下したいと思います
エリカ「……」
エリカ(名前、か……)
エリカ(そういえば――)
エリカ(自己紹介、したこと、なかったっけ……)
エリカ(初めて会話したときにはもう、私は隊長の右腕候補として知られていて……)
エリカ(同時に、あの子もそうだったから……)
エリカ「……」
エリカ(いや、でもさすがに今『はじめまして逸見エリカです』なんて言うわけにはいかないわよねえ……)
みほ「……」
みほ「あ、もしかして……」
みほ「日本語じゃなくて、外国語じゃないと伝わらないのかな……」
みほ「私、英語くらいしか出来ないけど……」
みほ「えっと、わっちゅあねーむ?」
エリカ「そーいう問題じゃないしさっきまで日本語で喋ってたでしょうが!!」
みほ「……!」 パァァァァ
エリカ「しまった……」
エリカ(うう、だめだ、今の状態のこの子相手だと調子が狂う……!)
みほ「……」 ドキドキ
エリカ「……」 ドキドキ
みほ「……」 ドキドキ
エリカ(……この子の期待に満ちたソレとは違う意味でドキドキするし心臓に悪いわね……)
みほ「名前は……教えてもらえないんだね……」
エリカ「……」
エリカ(なによ、そんな顔して……)
エリカ(戦車が名乗らないなんて、普通じゃない……)
みほ「じゃあ、ちょっと、お話、しない?」
エリカ「……は?」
みほ「私、ね」
みほ「その、ちょっと、変わったお家で育ったっていうのもあって、お友達の作り方、よくわからなくて……」
みほ「今までだったら、こうやって拒まれちゃうと、その、迷惑だったかなって、怖くて距離を取っちゃってたけど……」
みほ「……」
みほ「でもね、こんな私にも、友達ができたんだ……」
みほ「一人オドオドしてた私に、優しく声をかけてくれたんだ……」
みほ「それで、思ったの」
みほ「私、こうなりたかったんだなあって」
みほ「……こんな風に誰かと接することが出来る女の子になって、きっと、皆と仲良くしたかったんだなあ、なんて」
エリカ「……」
みほ「だから……」
みほ「今更、遅いかもしれないけど……」
みほ「私からも、少し、踏み出してみようかな、なんて」 エヘヘ
みほ「……そうやって、思えたから」
みほ「この学校に来て、そういう風に変われたから」
みほ「戦車さんが、ちょっと、心を閉ざしても――」
みほ「友達になりたい私から、少しづつ、歩み寄らなくちゃ」
エリカ「……」
エリカ(ほんと、変わったわね……)
エリカ(……)
エリカ(あの連中が、あんたを変えた、か――)
みほ「だから、その」
みほ「仲良くなるには、まず自分を見せることだって聞いたから……」
みほ「私のこと、お話しようかなって」
みほ「それで――」
みほ「もし、友達になろうって思ってくれたら、その……」
みほ「私のことを『みほ』って呼んでほしいなって」
みほ「その、下の名前で呼ぶのって、お友達ーって感じがするから……」 エヘヘ
みほ「それに、そのときは、お名前、教えてくださいね!」
エリカ「……」
エリカ(なによ)
エリカ(名前くらい――何度だって、呼んであげたのに)
エリカ(そりゃあ、厳しい環境だったし、私もライバルを求めていたから、アンタの望む環境じゃなかったかも、しれないけどさ……)
☆ ★ ☆ ★ ☆
エリカ「……」 パチ
エリカ「……」
あの後、2人でダラダラと喋った。
勿論、こっちはほとんど口を開かなかったけど……。
それでも、時折、思わず声を漏らしてしまった。
エリカ(……どうして、こんなに、もやもやするのかしら)
戦車であるからこそ、あの空気を共に出来たことは分かっている。
でも、あの時見せた、私の知らないあの子の顔が、愛おしくて、それ故に憎くて。
あの関係に心地よさを感じていた自分も含めて、如何ともし難い苛立ちを覚えた。
エリカ(……)
エリカ「って、どこよここ……」
エリカ「あの子の顔は知ってる要素があるにはあったけど、この天井120%知らない要素しかないんだけど……」
小梅「あ、起きた?」 カパッ
エリカ「わ゙ーーーーーーーーーーーっ!」
小梅「あはは、逸見さんでもそんなコミカルな悲鳴あげられるんだね」
エリカ「いや、アハハじゃないわよ!!」
エリカ「何急にゼロ距離で――」
エリカ「って、ちょぉわああああああああ!?」
小梅「もー、二度目はしつこいよー?」
小梅「そこまで取り乱す姿、確かに貴重だけども」 パシャコーン
エリカ「ちょ、何撮ってンのよ!」
エリカ「っていうか、なんでアンタ天井隅から生えてンのよ!?」
小梅「人間は天井からは生えないよ?」
エリカ「わかったうえでだから何なのって聞いてるのよ。マジトーンでアホを見るような視線やめろ」
小梅「ここ、通気口になってるの」
小梅「だからこうして忍び込めたんだ」
エリカ「ああそ……忍び? え?」
小梅「大変だったんだよー」
小梅「逸見さん、とうとうおまわりさんの前でも暴れたらしくって」
エリカ「!?」
小梅「なんでもおまわりさん相手にハンバーグを射出したとか……」
エリカ「な、なななななな……!」
小梅「その後偶然居合わせた人が乳首のイグニッションを切ってくれたみたいだけど……」
小梅「大騒ぎになって、でもなんとか収集がついて、こうして病室で寝かされてたんだよ」
小梅「その一報を受けて、こうして駆けつけてきたんだから」
エリカ「そ、そう……そこはありがとう……」
エリカ「でも今の話を聞いても、通気口からわざわざ来た理由がわからないのだけど……」
小梅「ああ、それ?」
小梅「最近勉強した忍道を使ってみたくて……」
エリカ「居ても立ってもいられなくて入り口以外から入るのやめなさい」
エリカ「っていうか、変な学校かマンモス校くらいしか扱ってないそんな変な選択科目をなんでまた」
小梅「なんで、って――」
小梅「10連覇未達の戦犯として居場所を失って戦車道やめようか迷ってたことがあったから」
エリカ(ふ、触れづらッッ)
エリカ(ただでさえ滅茶苦茶デリケートな話題なのに、そんなハイライトのない瞳で言われたら触れられないわよっ)
小梅「それにほら、日本有数のニンジャの土地じゃない、黒森峰」
エリカ「え?」
小梅「今でこそ履修者少なくてほとんど潰れてるけど、やっぱり地元の伝統は絶やしたくないなーって」
エリカ「ちょっと何言ってるか分からないんだけど」
小梅「こう、ドイツといえばゲルマンニンジャみたいなところあるし……」
小梅「特産品は畳返しに使えるい草だし」
小梅「あんころ餅みたいなの売ってるだけの忍者の里よりよっぽど忍者の系譜だよ黒森峰」
エリカ「伊賀と甲賀と熊本県に謝りなさいよ……あとドイツにも……」
小梅「それはさておき……」
小梅「本当に心配したんだよ?」
小梅「偵察にいって、持病で倒れたんだもん」
小梅「持病のせいでギャグっぽいけどさ……」
エリカ「……」
エリカ「悪かったわ」
小梅「……」
エリカ「なによその顔」
小梅「いや、その……」
小梅「やっぱり最近、逸見さん丸くなったよなーって」
エリカ「はァ?」
小梅「うん。上手く言葉に出来ないけど……」
エリカ「……」
エリカ「別に、変わらないわよ」
エリカ「何か劇的なことがあったわけじゃあるまいし」
気づけばこんな時間なので寝ます、申し訳ない
次の更新ではプラウダ戦に行けるように頑張ります
プラウダまで行けそうにない時間ですが、少しでも進めます
年を越してしまう……
エリカ「それより……」
エリカ「隊長は?」
エリカ「……確か、隊長と偵察に出てたはずなんだけど」
小梅「詳しいことは分からないんだけど、何かトラブルがあったらしくて……」
小梅「個別で帰還するから、私達は私達で帰れってさ」
エリカ「そう……」
小梅「残念?」
エリカ「別に、そーいうわけじゃ……!」
小梅「うふふふふ」
エリカ「何よその笑みは」
小梅「なんでもー」
エリカ「ムカつくわね……」
小梅「なんでもないよ」 パシャコーン
エリカ「だから撮らないでよ」
小梅「でも逸見の森にあげないと……」
エリカ「ゴルフ場にでもしろっての」
小梅「でもほら、皆で逸見さんのことを知るためにはやっぱり不可欠だよ」
エリカ「いや要らないわよ」
小梅「最近では逸見さんらしさの判定のための評議会も出来たし……」
小梅「このまま集合知で逸見さんを分析して」
エリカ「しなくていいし、何組織だってやろうとしてるのよ」
小梅「ちゃんと最終ジャッジを下すエリ神さまの席は用意してるんだよ」
小梅「ちなみに問題を起こしてエリ神さまのクビがはねられると、でーだらぼっちになるの」
小梅「クビでぼっち……まるで私やみほさんみたいだよね」
エリカ「ツッコミ辛いわっ」
小梅「皆が逸見さんを理解する時まで、逸見の森は続くんだよ!」
エリカ「焼き払いなさいよ!」
エリカ「毎回毎回言ってるけど、無許可で顔写真アイコンとか普通に訴えたら勝てるやつよ!?」
小梅「えー」
小梅「じゃあこの動く逸見さんスタンプも……?」
エリカ「ダメっていうか何技術的にちょっと進化したことやってんのよ」
エリカ「普通そういうのは本人に許可とってから販売するものでしょうが!」
小梅「でも許可貰おうとしたら絶対くれないし……」
エリカ「わかってるなら売るなって言ってンのよ」
ミカ「許可――それは本当に必要なことなのかな?」 ポロローン
エリカ「」
ミカ「権利主義には賛同しかねるね」
エリカ「え、なにこの人……」 ヒソヒソ
エリカ「隣のベッドの患者さん? 頭の」 ヒソヒソ
小梅「ああ、この人は、継続高校のミカさん」
小梅「逸見さんのバタバタの際、乳首のイグニッションを切ってくれた人なの」
エリカ「え、あ、ああ、ありがとうございました……」
ミカ「なに、お礼を言われるようなことじゃないよ」
ミカ「ただ、風に呼ばれるがままに動いただけさ……」 ポロローン
エリカ「ねえ、この人なんだかよくわからないけど大丈夫?」 ヒソヒソ
小梅「初対面の人間の乳首をいきなり触ったってことだし、ヤバイ人だとは思う」 ヒソヒソ
ミカ「でも、よかったよ」
ミカ「わざわざ来て正解だったかもしれないね」
エリカ「はあ……」
ミカ「試合でも面白いものが見れたし、何より――」
ミカ「人生観を変えられたよ」 ポロローン
エリカ「はあ……」
ミカ「あの理解不能な振動と、未来を捨ててなくては出来ぬ警察官へのハンバーグ砲撃」
ミカ「常識という檻に縛られていた私の心を解き放てくれたよ」
ミカ「常識という檻は、決して人生にとって大切なものじゃない」
ミカ「本当に大切なものは何か――それを考えるいい機会を貰ったと言ってもいいんじゃないかな」 ポロローン
小梅「…………」
エリカ「な、何よ!? この面倒くさそうな変な奴を作ったのは私だって言うの!?」
小梅「……」
エリカ「その白い目やめなさいよ!」
小梅「はぁ……」
エリカ「露骨にため息を吐――」
小梅「……」 チッ
エリカ「チッ!? チッって言った!? 今舌打ちしたでしょ!? ねえ!?」
小梅「気のせいか空耳かシャブでもやってるんじゃないですか?」
エリカ「やってないわよ! つーかその白い目を辞めろって言ってるでしょ!」
エリカ「こじらせてる時の佐藤寿也じゃないんだから!!」
ミカ「どんな瞳の色をしていても『白い目』、か――」 フフ
ミカ「不思議だよね」 ポロローン
エリカ「だから何よ」
ミカ「実にふざけた言葉と言えるんじゃないかな」
ミカ「超ムカつく、というやつかもしれないね」 クソックソッ
小梅「突然キレ始めた……」
エリカ「何アンタそれ始めたばかりでキャラまだ固まってないの?」
ミカ「とはいえ、目に見えるものが全てとは限らないんじゃないかな?」
エリカ「はあ……」
ミカ「それに、知ってるかい?」
ミカ「ルビーとサファイアは、同じ材料で作られているんだよ」 キリッ
エリカ「……」
小梅「……」
ミカ「……」
エリカ「え!? 終わり!?」
小梅「完全に宴会でも滑るタイプのよく分からない雑学だったね……」
ミカ「まあ、何にせよ――」
ミカ「今日は改めて挨拶を、と思ってね」 ポロローン
エリカ「はあ……」
小梅「ご丁寧にまた……」
エリカ「っと、まあ、お礼はこちらから言いにいかなきゃいけなかったとは思うけど……」
ミカ「いや、そのことはもういいよ」
ミカ「私が言う挨拶とは、戦車道のことさ」
エリカ「!」
小梅「!」
ミカ「継続高校代表・ミカ」
ミカ「今度2回戦で見えるね」 ポロローン
エリカ(そうか、こいつが……!)
エリカ(去年、継続には練習試合で苦しめられた……)
エリカ(タイミング的に、西住姉妹に全権が与えられた直後だったのもある)
エリカ(不満に思った当時の3年がボイコットし、違う選択科目に移ったりと、大混乱があったタイミング)
エリカ(こちらの戦力は、未熟な1・2年中心だったというのはある)
エリカ(それでも黒森峰の、そんじょそこらの3年生よりよっぽど強いッ)
エリカ(継続の連中は、間違いなく強かった……)
エリカ(辛勝とはいえ、あの試合に勝ったことが、西住姉妹への信頼に繋がったくらいだもの)
エリカ(継続高校は、そのくらいの力がある)
エリカ「……」
エリカ「継続高校……」
エリカ「去年の練習試合ぶり、ね……」
エリカ(その継続高校に、挑む……)
エリカ(半数近いメンバーが、去年の練習試合と同じ)
エリカ(……それでいて、あの子がいない)
エリカ(あの子という右腕が、私に差し替わっている)
エリカ「……悪いけど、貴女たちには絶対に負けないわ」
エリカ(……負けるわけにはいかない)
エリカ(他のメンバーは、1年の練習で練度が上がっているんだもの)
エリカ(あの子がやったより、迅速に少ない被害で倒さないと、あの子に負けたことになるっ……!)
ミカ「絶対か。そんなもの、本当にあるのかな」 ポロローン
ミカ「それに、そこまで恨まれる理由もないと思うけど」
エリカ「……そうね」
エリカ「別に恨みなんかじゃないわ」
エリカ「ただ、個人的に、絶対負けられないってだけよ」
エリカ(継続高校、じゃあない)
エリカ(あの子にだけは――――)
ミカ「……いいね」
ミカ「その眼は別の存在を映してそうだけど」
ミカ「全力でお相手するよ」
ミカ「今日は挨拶にきてよかったよ」
ミカ「試合を楽しみにしてるよ」
ブロロロロロロロロ
ミカ「迎えが来たようだね」
ミカ「それじゃあ――今度は、戦場で」
ミカー!
ハヤクノレー!
エリカ「…………」 ギリッ
小梅「賑やかな人……ううん、人達だったね」
エリカ「……そうね」
小梅「……」
小梅「あっ、御見舞のメロン盗られた!」
エリカ「……いいわよ別に」
小梅「一緒にハンバーグも入れてあったのに……」
エリカ「何その組み合わs――ばか! さっさと追うわよ!」
小梅「もう見えないよ……?」
エリカ「ちっ……ハンバーグの恨みも、試合で晴らさなくちゃ……」
小梅「……」
小梅「逸見さん、継続高校には、負けたくないんだ」
エリカ「当然よ」
エリカ「黒森峰は、もう負けることは許されないわ」
エリカ「……」
エリカ「ううん」
エリカ「それだけじゃない」
エリカ「認めるわ、私は個人的な事情で、継続には絶対勝ちたい」
エリカ「逸見の森とかいうふざけた森も、今だけは見逃してあげるわ」
エリカ「共有してもいいわよ」
エリカ「逸見エリカは、継続高校に勝ちたがってる」
エリカ「何が何でも絶対勝て――――ってね」 ギリッ
エリカ「ほら、そうと決まれば、さっさと帰るわよ!」
小梅「ええー」
小梅「観光……」
エリカ「いつでも出来るでしょう!?」
エリカ「いつでも飛行船で連れてきてあげるわよ!」
小梅「……本当?」 パァァァァ
エリカ「ええ」
エリカ「だから、帰って特訓するわよ」
エリカ「もう二度と、不運な敗北は許されないわっ」
エリカ(そして――証明するのよ)
エリカ(あの子より、私の方が、優れているって――――!)
☆ ★ ☆ ★ ☆
小梅「ついに待ちに待ったプラウダ戦だね逸見さん!」
小梅「今日の日のために特訓した成果、見せてあげようね!」
エリカ「」
小梅「…………」
小梅「逸見さん?」
エリカ「」
小梅「…………」
小梅「ま、まさか……」 チクビポチー
エリカ「どぅるん」
エリカ「ドゥルルルルルルルル」
小梅「うわぁ……ここで……」
逸見ボディのほのぼのギャグパート、尺の都合でカットしまくってなんとかプラウダまでいけましたので今日は終了します
サクサクやって、できればこのスレで年内完結したいと思います
ただまあ埋まったら埋まったで次スレ立てるだけなので、感想とか頂けるなら遠慮なくやってもらえればと思います
こんな時間なので触りだけですが、進められるところまで進めたいと思います
あと今見たら>>522で継続とプラウダを間違えてました、申し訳ない
深夜ってやはりダメかもしれない
各自脳内補完お願い致します
エリカ「ああ、雪」
エリカ「決戦の日にふさわしい、皮肉のきい たロマンチックさじゃない」 ハン
エリカ「あれから鍛え上げて生まれ変わったニュー逸見エリカを見せつけてやるわ」
エリカ「そう、この見違えるような新しい砲塔……」
エリカ「そして去年と変わらぬオドオドしたあの子の姿……」
エリカ「Ⅳ号になってるじゃないのよ!!!」
エリカ「ええ!?」
エリカ「このタイミングで!? ウッソでしょ!?」
エリカ「ちょ、継続相手に戦わせなさいよ!?」
エリカ「こーいう形でプラウダと闘うなんて想定してないんだけど!?」
ツチヤ「あれ、何かエンジン音がおかしいな」
麻子「ああ……試合の時はいつもそんなんだ……」
沙織「寒さでやられちゃったのかなあ」
エリカ「最悪だわ……本当に最悪……」
エリカ「あーーーーもお!」
エリカ「いくら黒森峰が副隊長不在でも戦えるチームづくりをしたとはいえ、所詮はやって一年の特訓」
エリカ「知波単レベルならともかく、継続相手には厳しい戦いになる……」
エリカ「どうする、さっさと気絶する……?」
エリカ「今までの法則性からいって、意識を手放せば戻れそうだけど……」
ビュオオオオオオオ
エリカ「……さ、寒い……」
エリカ「戦車なのに寒さを感じる……」
エリカ「眠る、っていうのは現実的じゃない寒さだわ……」
エリカ「眠ってられない寒さだし、やっぱり試合で早々に負けてもらうしかなさそうね……」
ボフッ
エリカ「わぷっ!?」
エリカ「……雪玉……?」
キャッキャキャイキャイ
エリカ「あ、遊んでるーーーーーっ」 ガビーン
エリカ「準決勝よ!? この子達自覚ないの!? ええ!?」
エリカ「いや、もう、この際いいわ……さっさと負けなさい!!」
ブロロロロロロ
優花里「あっ」
沙織「だれ?」
みほ「あれは……」
エリカ「げっ」
カチューシャ「……」 フフーン
みほ「プラウダ高校の、隊長と副隊長……」
優花里「“地吹雪”のカチューシャと、“ブリザード”のノンナですね」
華「地吹雪野カチューシャさん……代わった名字をされているんですね」
沙織「異名じゃないの?」
エリカ「この黒髪どか食いロングヘア、ダージリンとかも本名だと思ってたんじゃないでしょうね……」
華「異名ですか……」
華「と、いうことは――」
沙織「それに見合った強さってことなんだろうなあ」
梓「でも地吹雪って、どういうことなんだろう?」
あや「ブリザードはあれかな、冷酷の象徴とか」
エリカ「それはあながち間違っちゃいないわね」
優花里「プラウダの恐ろしいところは、異名が決して通称じゃないところにあるんです」
エルヴィン「と、いうと?」
優花里「聖グロリアーナなんかだと、見た目とか語感の響きで身内が名付けますが……」
カエサル「ソウルネームみたいなものか」
エリカ「ハンドルネームみたいなものでしょ」
優花里「プラウダの異名は、むしろ外部の人達がその強さを恐れるままに名付けたものが浸透したとされています」
優花里「それほど恐ろしい相手なのです……!」
エリカ「……ま、うちは真摯に戦車道をしてるからあだ名なんて用いないし、黒森峰という集団で最強だから異名なんていらないんだけど」
エリカ「でもああ見えて、腕は一流」
エリカ「さすがにアンタも年貢の納め時じゃない?」
みほ「……」
カチューシャ「ぷっ……」
カチューシャ「クク……」
エリカ「?」
カチューシャ「あははははははははははは!!」
カチューシャ「このカチューシャを笑わせるためにそんな戦車を用意したのね!?」
あや「あのパンタローネ様ばりに心底楽しそうに人を煽る笑い方してる子供が……」
エリカ「ええそうよ」
エリカ「……といっても、傍受機もないみたいだし、私が解説しても伝わらないのだけれど」
杏「やあやあカチューシャ」
杏「よろしく、会長の角谷だ」
エリカ「まあ伝わらないと分かったうえで言うけど、そのお子ちゃまにその角度から握手求めたら――」
カチューシャ「……」
カチューシャ「ノンナ!」
エリカ「ほら、面倒くさいことになった」
カチューシャ「貴方達はね、全てカチューシャより下なの!」
カチューシャ「戦車も技術も身長もね!」
エリカ「まーたはじまった」
カチューシャ「聞こえたわよ!」
カチューシャ「人の話を遮るように突然エンジン音が大きくなるなんて、とんだポンコツね!」
エリカ「むっ……」 イラッ
カチューシャ「この中じゃマシな戦車みたいだけど、精々が中の上」
カチューシャ「弱い相手に活躍できても、一流相手には通用しないのよ!」
エリカ「……」
エリカ「Ⅳ号に向けて言ってるんだろうけど……」
カチューシャ「井の中の蛙にバイカル湖の凄さを教えてあげるわ!」
エリカ「私が一番言われてムカつくことを言ってくれるわね……」 ビキビキ
カチューシャ「所詮強者を気取った二流であることを教えてあげるわ!」
エリカ「西住流こそ一流、そして黒森峰こそが一流ッ」
エリカ「身長と違って本当に高い鼻っ柱、へし折ってやる……!」
桃「そもそも肩車してるじゃないか……」
カチューシャ「アンタも聞こえたわよ!」
カチューシャ「よくもカチューシャを侮辱したわね、粛清してやる!!」
カチューシャ「行くわよノンナ!!」
エリカ「フン、やれるものならやってみなさい」
エリカ「今年こそ、私達2人でアンタを――」
エリカ「……」
エリカ「……何言おうとしてるのよ、私」
エリカ「これじゃあまるで、私があの子と2人でリベンジしたかったみたいじゃない」 チッ
カチューシャ「あら、西住流の」
みほ「あ……」
カチューシャ「去年はありがとう」 ニタァ
カチューシャ「貴女のおかげで、去年は私達優勝できたわ!」
みほ「……っ」
エリカ「まったくね」
エリカ「この子が余計なことしてなければ、勝ってたのは私達だった……」
エリカ「余計なことをされただけで負けた自分の不甲斐なさも腹が立つけど、でも……」
エリカ「自分の行いに胸を張って、アンタみたいなやつの嫌味に反論できないこの子にも苛立つわ……」
エリカ「何とか言ってやりなさいよ……っ」
エリカ「アンタ、友達が出来て変わったんでしょう!?」
エリカ「黒森峰に居たときみたいに、ただ黙って困ったような顔をしている気!?」
カチューシャ「今年もよろしくね、家元さん」
エリカ「……はあ!?」
エリカ「西住流の後継者は隊長!!!!!!」
エリカ「この子じゃな――こら聞け! 聞きなさい豆粒ドチビ!!!」
カチューシャ「本当に何かあのⅣ号にむかっ腹立つんだけど、クラーラにでも破壊させようかしら」
ノンナ「さすがに破壊工作をするには試合直前すぎるかと」
沙織「直前じゃなきゃやるんだ!?」
カチューシャ「まあいいわ」
カチューシャ「じゃあね、ピロシキ~」
ノンナ「ダスビダーニャ」
あゆみ「ロシア語……?」
あや「うわ、どうしようロシア語わからないよ?」
梓「とりあえず、知ってるロシア語を返しておけばいいんだよ!」
桂里奈「ぼ、ボルシチー」
典子「ええと、キャービアー!」
おりょう「ザンギエフ」
華「アスタラビスタベイベー」
沙織「それ違うくない?」
エルヴィン「それにしても、あれが“地吹雪”と“ブリザード”か……」
カエサル「ブリザードにふさわしい、凍てつくような視線だったな……」
あや「地吹雪はやっぱりよくわからなかったけどね」
梓「確かに」
優花里「昔は小さな巨人ってフレーズもあったみたいですけど、本人が怒り狂うから地吹雪に落ち着いたらしいですよ」
左衛門佐「ほう」
沙織「そうなんだ」
優花里「ちなみに先程ちらっと出たクラーラ選手はロシアの人で、特殊部隊の親御さんに仕込まれた工作技術も有してるんですよ」
エルヴィン「詳しいな」
沙織「……もしかして、また?」
優花里「いや、今回は潜入まではできなかったので、ネットを駆使して調べました」
優花里「戦車道は好きなんですけど、主に戦車にばかり目が行っていて、選手の知識はそこまで膨大なわけでもないので」
沙織「それでも私達より全然詳しい気がするけど」
優花里「はは、光栄であります」
エルヴィン「ちなみに、どれがクラーラとやらなんだ?」
カエサル「あ、双眼鏡」
優花里「ええっと、あの金髪の方です」
優花里「通称・ロシアの核弾頭ですね」
エルヴィン「結構留学生が多いんだな」
優花里「国際色豊かなんですよね。クラーラさんの傍にいるのがクラーラさんの車輌の砲手ですね」
優花里「彼女の異名は、ロシアのプラスチック爆弾です」
沙織「あっという間に異名が被ってきた」
エルヴィン「その奥の少女は?」
優花里「操縦手で、通称・ロシアの爆竹ですね」
沙織「そんでどんどんショボくなってきた」
優花里「何だかんだで昨年度優勝校」
優花里「その前から四強の一角でしたからね」
優花里「異名がつく程度の実力差はゴロゴロしています」
カエサル「そうなのか」
桃「だからあんなに態度がデカイんだな」
エリカ「チームの強さを自分の強さと勘違いしてるフシがあるわね」
桃「まったく、無駄に威圧的で自分を偉いと勘違いしているやつはこれだから」
麻子「どの口が言うんだ……」
桃「あんな奴らに負けてられないぞ、西住!」
エリカ「そうね」
エリカ「いや私としてはさっさと気絶させられたいんだけど、でもあんなのに黙って負けるなんて御免だわ」
エリカ「ベストはカチューシャをさっさとボコボコにして、でもプラウダのフラッグ車は潰せないまま負けることね」
杏「んで、どーすんの」
みほ「とにかく、相手の車輌の数に飲まれないで、冷静に行動して下さい」
みほ「フラッグ車を守りながら、ゆっくりと前進して、まずは相手の動きを見ましょう」
カエサル「……ゆっくりもいいが、ここは一気に攻めてたらどうだろう?」
みほ「ええ!?」
エリカ「あーあー、見事な突撃希望の嵐ね」
エリカ「……もしかして、これをさせるために、わざわざ煽りにきたのかしら」
エリカ「まあだとしても、そのうえで叩き潰すのが強者なんだけど」
エリカ「……でもコレは、あまりにも素人集団特有のソレね」
エリカ「黒森峰なら、隊長の言葉は絶対だし、こんな時でも一喝で収めて自分達のスタイルを貫かせるけど――」
みほ「……」
みほ「わかりました」
みほ「一気に攻めます」
エリカ「……アンタは、隊長とは違って、やっぱりそうするのね」
寝たいので投下を終了します
逸見はアーナル弱そう
少しだけ投下します
エリカ「昔っから、アンタは隊長の考えをすぐに理解した」
エリカ「……でも、決して隊長と同じ考えではなかった」
エリカ「だから互いに高めあってたし、隊長を追いかけてるだけの私じゃ勝てなかった……」
エリカ「……」
エリカ「早く、負けちゃいなさいよ」
エリカ「アンタが負けて、そのプラウダに私達がリベンジすることで、ようやく私はアンタを越えられるんだかr」
エリカ「……」
エリカ「そのためには、まずは継続戦だけど……」
エリカ「……早急に戻れたとして、私の出る幕あるのかしら……」
エリカ「……」
エリカ「もしかすると……」
エリカ「病気で倒れてると思われてる私の席なんて、とっくに、補欠に――――」
まほ「…………」
小梅「今回も、例の病気みたいですね……」
まほ「前回でわかったんだが、こうなると、一人じゃ歩くのが困難らしい」
直下「まるでバイクですね」
小梅「スクーターかも」
まほ「まあ、概ねそんな感じだな……」
まほ「胸を揉めば移動するが――」
直下「以前、エクソシストブリッジしたまま学園中を走行してましたよね」
まほ「あれをやるのはさすがにまずい」
まほ「初戦敗退の数十倍は各方面から恥さらしとして怒られる」
小梅「慎重に肩を担ごうとしても、変な所を触ると……」
まほ「ああ、変なことになる可能性がある」
直下「うーん……」
まほ「試合会場までは運搬出来るし、戦車に乗せてしまえば後は何とかなるんだが……」
小梅「最悪、逸見さんの車輌は動きが鈍ってる前提で指揮を執ればいいですもんね」
まほ「問題は、試合前の挨拶だ」
まほ「エリカは副隊長」
まほ「出ないわけにはいかない」
まほ「黙っているとしても、立ち会わないわけにはいくまい」
まほ「……問題は、その顔合わせをどうするかなんだ」
小梅「うーん……」
直下「サラシでおっぱいを固定して、自動で歩かせるとか……」
小梅「それだと止まれないから問題じゃ」
直下「あ、そうか」
まほ「それにドルンドルン言うしな」
直下「乳首を押さなければどこを触っても何も起こらない、なんてことは……」
まほ「あまり期待できないな」
まほ「自動車のエンジンを切っていても手動で窓が開くように」
まほ「また、戦車でもイグニッションを入れずとも稼働してしまう場所があるように」
まほ「全ての機能がオフになるとは言い切れない」
小梅「確かに……」
小梅「戦車の搭乗口がパカリと開く感覚で、いきなり大股開きされても困りますもんね……」
まほ「ああ」
まほ「一応黒森峰には報道カメラマンもたくさん来るから、本当にシャレにならないことになる」
直下「そっかー……」
直下「そういえばハンバーグ射出したりもあるもんなあ」
小梅「うーん……」
まほ「いっそのこと、全ての機能が停止するようなスイッチがあればいいのだが……」
小梅「まるでロボットですね」
まほ「……ああ」
まほ「実際は人間の奇病だし、期待は出来ないな……」
まほ「だが、現に乳首でイグニッションが入ったり、様々な動作が確認されている」
まほ「何か特定の動作をするツボのようなものがあるのかもしれない」
小梅「これまで判明した中にはありませんでしたけど……」
まほ「安静にさせておこうと、あまり触ってこなかったのが裏目に出たな……」
まほ「……」
まほ「一応――穏便に終わらせる方法が無いこともない」
小梅「え?」
まほ「エリカを、病欠させる」
まほ「実際に病気なんだ、問題はないだろう」
直下「……それしかない、ですよね……」
まほ「……」
まほ「だが――」
まほ「何があろうと前に進むのが西住流」
まほ「例えどんな病気であろうと、戦えるのなら当然戦車前進だ」
直下「ええ……?」
小梅「……」
小梅「それ、本気で言ってるんですか……?」
まほ「……ああ」
まほ「西住流後継者として、一度決めたベストメンバーを気軽に変えるようなバタついた采配は許されない」
まほ「何があっても動じず、己を貫き、前進するのが西住流だ」
まほ「責められるべきは、自己管理が出来ないエリカだ」
まほ「それで無様に敵前逃亡を行ったり、足を引っ張るようならば、容赦なく見限らなくてはならない」
小梅「……」
まほ「……それが、西住流後継者としての、口にしなくてはならない意見だ」
まほ「西住流の後を継ぐ以上、ここをブらすわけにはいかない」
まほ「それに――」
まほ「エリカ車の皆に、罪はない」
まほ「彼女達は暴走しがちなエリカの指示についていけるだけの鍛錬を積んできた」
まほ「エリカとは決して理解し合える友人ではないようだが、それでもチームワークは黒森峰でも指折りだ」
まほ「エリカを欠いたら大きく戦力が落ちると分かって、それでもなおエリカの不在をカバーするとも言っている」
まほ「……そんな彼女達を、試合前挨拶で恥をかくのを避けたいからと、下げることなんて、したくはない」
小梅「隊長……」
まほ「それに、黒森峰の副隊長は、エリカなんだ」
まほ「……ワガママかも知れないが、このメンバーで戦い、勝利する時は、エリカに隣に居て欲しい」
まほ「そうして何かを感じ取ってほしいから、私はあの子を、副隊長にしたんだから」
まほ「……」
まほ「それが、西住まほとしての、ワガママ極まりない意見だ」
直下「……まあ、確かに」
小梅「大洗の一件から、明らかに気迫が違ったもんね」
直下「……負けたくないんだろうなあって、逸見の森でも皆で言ってたし……」
小梅「誰より一回戦で奮闘してたのも逸見さんだった……」
直下「……」
小梅「……」
直下「しょうがないかあ」
小梅「やっぱり逸見さんが居ないと、しまらないもんね」
まほ「……すまないな、私のワガママに巻き込んで」
小梅「ううん、いいんです」
小梅「私も逸見さんと一緒に試合、出たいですから!」
直下「そうなると、どうやって穏便に挨拶させるかですけど……」
まほ「……」
まほ「考えながら、電源OFFのような、全ての機能を止めるスイッチを探すのが、やはり一番だと思う」
小梅「……ですよね」
直下「隊長でもパッと対策思い浮かばない時点で、既存のものだけじゃ厳しい、ですもんね」
まほ「かといって、闇蜘蛛には試せない」
まほ「下手なのを引いて大惨事になったら困るからな」
まほ「試合まで時間もないし、試せても1つか2つ」
小梅「……」
まほ「……どうを、どうするのがいいと思う?」
直下「えーっと……」
まほ「……正直、異例のことすぎて、私には検討も付かない」
まほ「だが――幸か不幸か、これは戦車道ではない」
まほ「普段の上下関係などなく、フラットに、意見を出し合いたいと思う」
小梅「隊長……」
直下「……」
直下「電源ボタンのようなもの、か……」
直下「……」
小梅「?」
まほ「どうかしたのか」
直下「ああ、いえ……」
まほ「……言ってみてくれ」
直下「いや、でも、その……」
まほ「……私は、黒森峰の伝統は尊重していきたいと思っている」
まほ「全てを変えてしまうようなら、最初から他校に入っているしな」
まほ「だが、同時に伝統を重んじながら改善の余地があれば改善したいと思っている」
まほ「そのうちの一つが、厳しい年功序列の排除だ」
まほ「私は、下からの意見には、上から見ただけでは分からない意見があると思っている」
まほ「だから――何の気兼ねもなく、話して欲しい」
まほ「私と、エリカと、そして黒森峰のためにも」
直下「……」
直下「はい、分かりました……」
まほ「すまないな……ありがとう」
直下「いえ……」
直下「……」
直下「……」
直下「あの……」
まほ「ん?」
直下「ちょびっツって――知ってますか?」
まほ「いや……知らないな……」
まほ「何かの機械の名前か……?」
直下「惜しいけど、違います」
小梅「漫画じゃなかったっけ、カードキャプターさくらの人の」
直下「そう」
直下「人形パソコンの漫画です」
直下「ある意味今の逸見さんにそっくりですし、参考になるかもしれません」
まほ「パソコン……」
小梅「ってことは、電源スイッチも?!」
直下「……あります」
まほ「なるほど……」
まほ「確かに闇蜘蛛にやるより、『人が機械になったらこうなる』という想定をされているであろう箇所から探る方がいいだろう」
まほ「それで、その漫画で電源スイッチはどこに?」
直下「……」
直下「いきなり言うと驚かれると思うんで、手順を段階踏んで説明しますね」
まほ「驚く……?」
まほ「まあいい、続けてくれ」
直下「はい」
直下「まずパンティーを脱がします」
まほ「ちょっと待て」
まほ「いきなりおかしくないか?」
小梅「そうだよ……」
小梅「花の女子高生がパンティーなんて言い方するなんてどうかと思うよ?」
まほ「いやそこではなく」
小梅「え?」
まほ「ゆっくり段階を踏むはずが、一段目からキノコ食べてるマリオも即死出来るレベルの高さがあったが」
まほ「もはや段階というより、死まっしぐらの断崖絶壁じゃないか?」
直下「まあ、確かに、まずはベルトを外すところからでしたよね」
まほ「そういうことが言いたいんじゃない」
直下「まあでも実際、確かに断崖絶壁に突き落とすレベルのファイナル感はありますけど、この先がありますからね」
まほ「まさか……」
直下「そうです、子宮の奥まで指を突っ込んでもらいます」
まほ「せめてオブラートを……」
小梅「電源ボタンじゃなくて電源コカンだったってこと?」
まほ「オブラートになってない」
まほ「いや、さすがにダメだろ……」
まほ「病人の、その、股間に、指……って……///」 カァァ
小梅(可愛い……)
直下(シコれる……)
まほ「だ、大体、そういうのは愛し合う2人が、告白やキスを経て合意の上でだな……」
小梅「逸見さんなら大丈夫ですよ、多分」
小梅「おそらく問題なく完璧にことが運びますよ」
直下「そうですよ、75%パーフェクトです」
まほ「それ完璧って言わないだろ」
小梅「それに逸見さん、陵辱されて堕ちそうな顔してますから」
まほ「とんでもないこと言ってるうえに堕ちたらダメだしそもそも陵辱したらダメだろ」
まほ「だ、大体なんで私が挿れる前提に……」
直下「いやいや、それは隊長しか居ませんって」
小梅「そうですよ!」
小梅「それに、隊長が相手なら、逸見さんは拒みませんって!」
小梅「っていうか多分むしろウェルカムですから!」
直下「ソースは逸見の森の第四回アンケート結果です」
まほ「何を言ってるんだお前ら」
まほ「そんなの拒むに決まっているだろ」
まほ「……」
まほ「ウェルカムされたら、それはそれで少し引くし……」
小梅(あ、隊長マジトーンで困ってそう……不憫な逸見さん……)
直下(隊長こういう話ダメなのか……)
直下「いやでも意外ですね、隊長こういうのダメなタイプなんですね」
まほ「当たり前だろ……」
まほ「そういうのは、オトナになるまでやったらダメなんだぞ」 マッタク
小梅(処女なんだ……)
直下(最悪彼氏もいないぞこれ……)
まほ「そもそも、こういうのが得意なわけがないだろう」
小梅「え、そーですか?」
小梅「何か隊長、みほさんでそういうの慣れてそうというか……」
直下「家族の日課で毎晩お風呂で子宮の中まで洗いっ子してそうというか……」
小梅「みほさんが初潮を迎えてから毎回タンポン挿入してそうというか……」
まほ「待ってくれ、お前達の中の私のイメージどうなってるんだ?」
まほ「そりゃ一時期怖い扱いされて改善したいとは思っていたが、何か別の意味で怖すぎることになってないか、おい」
小梅「まあ、確かに、隊長が本当にウブなら、怖がるのも無理はありません」
まほ「いや、怖いとかじゃなくてだな……」
小梅「でもそんな深く考えずに、タンポンとか、徹甲弾とか、そういうのを挿れる感覚で気軽にやれば大丈夫です」
まほ「え、ちょ、徹甲だ……え?」
まほ「おかしくないか?」
小梅「?」
直下「?」
まほ「え、それとも私がちょっとおかしいのか?」
まほ「確かにお母様は厳しくてそういう知識は……」
まほ「いや、でも……えええ……?」
小梅「撃てば必中」
まほ「……?」
小梅「守りは固く」
小梅「進む姿は乱れなし」
小梅「……西住流を表す言葉です」
小梅「なのに、今の隊長はどうですか?」
まほ「……っ!」
小梅「乱れっぱしの心で、そもそも撃とうともしていないじゃないですか!」
まほ「だ、だが、ここで撃つのは、心にも風紀にも乱れが……」
小梅「そうやって、変なところだけ固いのは、隊長が脱却しようとしていた部分なんじゃないですか!?」
まほ「……っ!」
小梅「去年の隊長、元祖である西住流を受け継ぐご自身と、柔軟なみほさんとをかけ合わせて、新たな黒森峰を作ろうとしていたじゃないですか!」
小梅「年功序列に逆らって、敵を作ってでも、みほさんやエリカさんを重要視して……」
小梅「そんな隊長が、こんなことで日和るんですか!?」
小梅「隊長にとって、鉄の掟って、なんですか……?」
小梅「……」
小梅「逸見さんにとって、守るべき掟とは、隊長のお言葉なんだと思います」
小梅「私も逸見さんと同じで、自分の戦車道と呼べるほど立派な信念を持てていないから分かります」
小梅「今はまだ、誰かの道をなぞるだけかもしれないけど……」
小梅「それでも、誰より真摯に道をなぞってきたのは、他ならぬ逸見さんです!」
小梅「逸見さんは、隊長の鋼の心に惹かれて、その道をなぞろうとしたんですよ!」
小梅「なのに……なのに隊長が、弱い心で逃げてどうするんですか!」
小梅「逸見さんのためにも……」
小梅「逸見さんが憧れた姿で、堂々と、前に進んでください……!」
小梅「逃げないで、どうか……」
小梅「真っ直ぐに、逸見さんの膣実さんにパンツァー・フォーしてあげてください……!」
まほ「赤星……」
まほ(……)
まほ(どうしよう……何言ってるのか全然理解できない……)
小梅「……っ」 ハッ
小梅「すみません……出過ぎた真似を……」
まほ「……いや、いい」
まほ「気持ちが、十分伝わった
まほ(内容はいまいちわからなかったが……)
まほ「……嬉しいよ」
まほ「エリカのことを、そこまで見てくれていたんだな」
小梅「……はい」
小梅「私と一緒で、逸見さんも、去年に縛られている人ですから……」
まほ「……」
まほ(縛られている、か……)
まほ(私も、その一人なのかもしれないな……)
まほ「……わかった。やろう」
小梅「!」
まほ「指を清めてくる。準備を、進めておいてくれ」
まほ(……あの日……)
まほ(みほのため、西住流に全てを捧げると決めた日、誓ったじゃないか)
まほ(私は私の大切な人のため、西住流に生命を捧げると)
まほ(そして、全身全霊で、西住流を体現し、そしてその根底を覆さぬままより良いものに変えていこうと……)
まほ(その結果、例え周りから、嫌われることになったとしても――)
まほ「……準備完了だ」
小梅「こっちも、しっかり脱がしておきました」
直下「時間も大分使っちゃいましたし、あまり長くは時間をかけられません」
直下「ローション、使いますか?」
まほ「……いや、大丈夫だ」
まほ「戦車は火砕流の中だって突き進むんだ」
まほ「ひたすら前へと向かう西住流の体現者たる私も、同様だ」
まほ(エリカ……)
まほ(許してくれとは言わない)
まほ(私は、お前と共にこの大会を制するためなら、鬼にだってなれる)
まほ(恨んでくれてもいい)
まほ(だから――)
まほ(私の隣で、私の西住流を見届けてくれ)
まほ(そして、縛られた私では見い出せないであろう新たな西住流のあり方を、お前が――――)
まほ「パンツァー・フォー!!」
ズップゥ!!
エリカ「~~~~~~~っ」 ビビクン
エリカ「な、なにこの感覚ぅ!?」
沙織「う~、寒い寒い……」
みほ「こうやって足踏みをすると、少しは温まりますよ」 トントン
優花里「短期決戦予定ですから、すぐにそれどころじゃなくなるかもしれませんけどね」 フミフミ
沙織「うう、でもちょっとでもやる!」 パタパタ
エリカ「ちょっ、らめっ、どこリズミカルに踏みつけてるのよっ……ひゃうん!」
エリカ「ううううう」
エリカ「久々に自分の全神経が戦車にあることを痛感――ひゃあんっ!」
エリカ「ああああああもう!」
エリカ「こんな疑似セックスみたいなことで感じるわけないし、こんなのノーカンよノーカン!」
エリカ「私の初めては夜景の見えるホテルのスイートで、心地よい痛みと相手の愛を感じながら散らすってもう決まってるんだから!」
エリカ「こんなギャグみたいな疑似的なのはノーカ……ちょっ、ほんとそこはっ……」 ビクンビクン
数レスで終わると思ったら思ったより長引いてしまったので寝ます
今日は早寝予定なので少しだけですが、投下します
アキ「遅いね、黒森峰の人達」
ミッコ「巌流島ってか」
ミカ「開始時間……」
ミカ「それは本当に大切なことなのかな?」
アキ「大切すぎて超過しすぎると負けになるんだよ」
アキ「……そりゃあ、黒森峰には勝ちたいけど……」
アキ「こんな勝ち方で勝っても嬉しくないよ」
ミカ「過程や方法……」
ミカ「それは勝利に本当に必要なものなのかな?」 ポロロン
アキ「必要だよ!」
アキ「そこはせめて『勝つことだけが全てなのかな?』とかにしてよ!」
アキ「一瞬にしてゲス系の敵みたいになっちゃってるよ!?」
ブロロロロロロ
まほ「お、遅れてすまない……」
ミッコ「お、間に合っ――」
エリカ「ブロロロロロロ」
アキ「な、なんかオンブでやってきてるーーーーーーっ」 ガビーン
ミッコ「しかも何か変な音出してる……」
まほ「何とか間に合ったようでよかったよ」 モミモミ
アキ「何か揉んでる……」
まほ「少し、トラブルがあってな……」 キュッ
アキ「服に手を突っ込んでるぅぅ!?」
ミッコ「い、今、つまんだよな……!?」 ゴクリ
ミカ「ふっ……」
ミカ「人の目――それはそんなに」
アキ「大切だよ!!!」
小梅「結局駄目でしたね……」
直下「子宮は電源スイッチじゃないということか……」
小梅「よく考えたらそれだと色々不便ですもんね」
まほ「冷静に考えるべきだったな……」
直下「あ、でも、子宮の右がオンのスイッチで左がオフとかいう分かれ方なのかも……」
小梅「隊長、左右両方に指を」
まほ「していないしもうやらんぞ!」
まほ「さすがに中をほじくるのは人としてだな……!」
直下「……と、なると、もう諦めるしかありませんよね……」
小梅「もういっそ堂々と乗っていけばいいのでは?」
まほ「え」
小梅「ほら、さも当然のように堂々としていれば意外と皆そういうものと思い込むって、よくありますし……」
直下「確かに、堂々されれば違和感ないかもしれない……」
まほ「なるほど」
まほ「確かに、堂々たる態度は立派なブラフになるな」
まほ「あまり黒森峰のやり口ではないが――そうも言ってられまい」
まほ「黒森峰におけるブラフの歴史をここから刻もう」
まほ「行くぞ、エリカ!」 キュッ
エリカ「ブロロロロロロン!!」
まほ(――なんて勢いで出てきたが……)
アキ「……」 ウワァ
ミッコ「……」 ウヘェ
まほ「……」
まほ(やはり付け焼き刃のブラフなんてするものではなかったか……)
ミカ「ふふ……」
ミカ「どうやら伝統に縛られた王者かと思っていたけど……認識を改めた方がいいかもしれないね」 ポロロン
アキ「なんでそんなに嬉しそうなの」
ミカ「去年まではありえなかった行い」
ミカ「それが、敗戦から学んだことなのかな?」
まほ「……」
まほ(全然違うけど、どう反論したらいいか分からないし、とりあえず真顔でいよう)
ミカ「戦車道には人生の大切なものが詰まっている」
ミカ「……何が大切なものなのか、果たして定義が出来るものなのかな?」
まほ「……」
ミカ「まるでバイクかのように乗ってきたけど、言うならば君の副官は戦車というところかな」
ミカ「自分自身を戦車にしている、か――」
ミカ「果たしてどんな戦車道の末にその形に行き着いたのか、楽しみにしているよ」 フフ
まほ「…………ああ」
まほ(勝手に納得してくれそう……)
全然進めませんでしたが、こんな時間なので寝ます。申し訳ない。
沙織「冷える……」 カタカタ
エリカ「しっかり防寒しないからでしょ」
エリカ「雪原エリアでの戦いは毛糸のパンツに何重もヒートテックのタイツを履いておくべきよ」
エリカ「どうせ戦車の中にはカメラは入らないんだから、暑くなったら脱げばいいんだから」
華「一気に決着をつけるのは、正解かもしれませんね」
優花里「黒森峰では、どうやって対策してたんですか?」
優花里「プラウダは雪上戦を得意としてますし、対策、取ってなかったわけじゃないんですよね」
みほ「うん、演習とか、様々な条件でやったから……」
みほ「黒森峰では、カイロたくさん貼ったり、重ね着をしたりが主流だったけど……」
みほ「基本は、各々の裁量に任せる、って感じだったかな」
華「意外ですね」
沙織「てっきりそういうのにも、何かしら決まりがあるのかと思ったよー」
みほ「うん……昔は、黒森峰も西住流も、重ね着で対策してたんだけど……」
みほ「当時はホッカイロみたいに気軽に手に入る道具がなかったってこともあるし、自由になったの」
みほ「それに、激しい戦闘で暑くなったら脱げばいいのはメリットだけど……」
みほ「外に捨てるのは問題になるし、中に捨てると、その……」
みほ「汗まみれの服がたくさん打ち捨てられて臭いの問題とかが……」
優花里「あー……」
沙織「いくら華の女子高生の汗の臭いっていっても、女子高生にはクサいだけだもんねー」
華「確かに、前戦車喫茶でお会いした方、腋臭臭そうなお顔をされてましたしね……」
エリカ「はァァァ~~~~~~~~!?」
エリカ「隊長の体臭は臭くありませんーーーーーーーー!!」
エリカ「むしろちょっぴりフローラルな香りですぅーーーーーーーーーーーーー!!!!」
みほ「あと、重ね着は他にも問題があって……」
みほ「車内が集団ストリップショーみたいになって、絵面がちょっと酷いっていう……」
華「ああ……」
優花里「戦車によっては、普通にしていても車長のスカートの中が見えそうになりますもんねえ……」
麻子「……見ているんだな」
優花里「べ、別に私は西住殿の下着を見てなんて……///!!」 アワワワワ
みほ「とにかく、セクハラやパワハラになりかねないから、やめようってなったの」
みほ「……」
みほ「あくまで噂話なんだけど、脱ぎ散らかしたタイツを寒くなってもう一回履こうとして、他の人のを履いちゃうって事件があって」
沙織「確かに、適当に置いたらそうなるかも」
華「そこまでは広くないですもんね」
みほ「敢えて他人のタイツを履いて欲情する生徒が出たり、その、おまたの病気を移される生徒が出たんだって」
優花里「うわあ……どうりで西住殿は雪上戦の経験があるのに生足なわけですね……」
優花里「パンツもいつもと変わらない綿のやつですし……」
みほ「え?」
優花里「あー! まあ、あれです、そういうの、確かにあるかもしれませんからねっ!」
沙織「あ、あはは……そうだねえ」
華「確かに、以前戦車喫茶でお会いした黒森峰の方なんか、他人のタイツに欲情したり病気持ったりしてそうですもんね……」
エリカ「ちょっとアンタ達いい加減にしなさいよ!」
エリカ「隊長は欲情なんてしないの!」
エリカ「ユニコーンだってキツツキ走法し始めるくらい清らかさの塊なんだから!」
優花里「確かに、あれは想い人のタイツを履いたら我慢出来ずに指とか挿れて発情するタイプと見ましたね」
みほ「ええ……///」
沙織「もー、みぽりん困ってるじゃーん、シモネタはよくないってー」
華「そういう割には楽しそうですね」
沙織「わかる?」
沙織「女の子だって、そーいう話したいもーん」
エリカ「もーん、じゃないわよ脳味噌ゆるふわ女!」
エリカ「隊長はそんなことしないったらしないの!!」
エリカ「隊長の指は綺麗だし、その指はどんな穴にも挿れられたことのない神聖なものなんだから!」
エリカ「勝手なイメージで隊長を語るんじゃないわよ!!」
麻子「……」
沙織「どうしたの?」
麻子「いや、なんだろうな……何だか無性にツッコミたい気持ちに……」
沙織「???」
麻子「すまない、忘れてくれ……自分でもよくわからないんだ」
麻子(お前のことじゃないのか、なんて言葉、咄嗟に呟きたくなるものじゃないのにな……)
チョロチョロチョロ
麻子「何の音だ……」
麻子「誰か寒さのあまりに失禁でもしたのか」
沙織「ええ!?」
優花里「ちがっ……違います!」
優花里「ポットにココアを入れてきました!」
優花里「よかったら、どうぞ」
みほ「ありがとう……」
華「じゃあ私もアイスココアを……」
優花里「ありませんよ!?」
優花里「この状況でホットじゃないものを持ってくる人間なんていませんからね!?」
みほ「……」
みほ「前の学校で、エリ……逸見さんが、温めるの忘れて冷たいお茶を持ってきてたことがあったなあ」
エリカ「なっ!?」
沙織「それって、あの戦車喫茶の感じ悪い子?」
みほ「うん……」
エリカ「ちょっと! 肯定してないでフォローしなさいよ!」
みほ「寒いだろうから、私が持ってきたホットレモネードをあげようとしたら……」
みほ「ふん! アンタの施しなんてウケないわよ! それに私は自分が飲みたくて冷たくしてきたの!」
みほ「なんて言って、ガチガチ震えながら冷たいお茶を……」
優花里「いやー。見栄っ張りなんですねぇ」
エリカ「だあああああ! もう! なんでそんなどうでもいいことを覚えているのよアンタは!」
優花里「でも、覚えているものなんですねえ、そんな細かいことまで」
みほ「え?」
優花里「何だかんだで、黒森峰の日々も思い出深いものなんですねえ」
みほ「……!」
エリカ「……!」
沙織「ちょ、ゆかりん!」
優花里「あっ、もしかして失言でしたか!?」
優花里「す、すみません西住殿ぉ!」
みほ「……ううん、いいの」
みほ「確かに……こっちに来てすぐの時は、思い出したくもなかったけど……」
みほ「今でも、思い出したくないことはいっぱいあるけど……」
エリカ「……」
みほ「でも……」
みほ「楽しかった時間も、少しだけど、あったことは事実だから」
優花里「西住殿……」
エリカ「……」
みほ「っと、カモさんチームが……」
みほ「カモさんチーム、一旦交代して下さい!」
エリカ「……」
エリカ(私だって……ムカつくことは多かったけど、楽しくなかったわけじゃ……)
エリカ「……」
エリカ「素人丸出しの新戦車の面々……」
エリカ「本ッ当に層が薄いのね……」
エリカ「榴弾で雪なんて撃たなくても黒森峰の精鋭なら」 ブツブツ
エリカ「っていうか、呑気にリスなんて愛でてるし、不吉な言葉もインカムで配信されてるし」
エリカ「本当に、なんなのよこの子達は……」
エリカ「……」
エリカ「慣れてきて、そこまで激しく叫ばなくなったのが悲しいわね……」
みほ「11時に敵戦車、各車警戒!」
エリカ「ほら、おでましよ」
みほ「三輌だけ……外郭防衛戦かな?」
ドーン
みほ「気付かれた……!」
みほ「長砲身になったのを活かすのは今かも……」
エリカ「さ、私のこのニューボディのお披露目みたいね」
エリカ「……」
エリカ「私の、って自然に口にしてしまうのが頭痛の種ね」
みほ「砲撃翌用意して下さい! カバさんチーム、射撃!」
ズドーン
みほ「あんこうチームも砲撃します!」
エリカ「ふん!」
エリカ「さっさと終わらせるわよ!」
ズドーン
優花里「命中しました!」
沙織「すごーい、一気に二輌も!」
エリカ「このくらい普通よ」 フン
うわもう三時
一旦投下終了します
来年まではバタついてるので作業と同時並行の投下になるのでスローペースになりますが、よろしければ気長にお付き合いください
そういやsage進行じゃない方がええんかな、ということを思い出したからあげておこう
マナー的にageない方がよかったらすまんな
世間ではコミケらしいので人いなさそうですが、コミケ行けなくて腹立たしいので久々に投下します
みほ「……」
沙織「どうしたの?」
みほ「上手く行き過ぎる……」
エリカ「出たわね、アンタの心配性……」
エリカ「隊長の慎重さと比べても、アンタは過剰すぎるのよ」
エリカ「まあ、黒森峰と違って、上手くいくわけなんてない戦力だから仕方ないと言えば仕方がないけど」
エリカ「戦車道ってのは、射撃の腕や操縦の腕だけでなく、戦略が大きく影響するのよ」
エリカ「だからこそ隊長や車長が大事なわけ」
エリカ「……アンタは腐っても元黒森峰の副隊長」
エリカ「策がカチッとハマって、あとは他の連中が無能晒さなきゃ、上手くいくことくらいあるわよ」
エリカ「アンツィオなんて、何かこう、何が起きたか分からないくらい瞬殺だったじゃない」
みほ「……」
ズドン
みほ「……!」
エリカ「ちょっと、無駄にネガティブになってる間に逃げるわよ!」
みほ「全車輌前進、追撃します!」
沙織「何で逃げてるの?」
優花里「こっちが全車輌で追いかけてるからじゃないですか?」
エリカ「基本的に数は正義なのよ」
エリカ「この物量差で足を止めて撃つ阿呆はいないわ」
沙織「そうだよねえ」
沙織「何故か追うと逃げるよねえ、男って」
エリカ「!?」
エリカ「何この脳味噌ゆるふわ女……まだそんな股緩そうなこと言って……」
エリカ「そーやって色濃いに現を抜かしておいて準決勝まで来てるのは腹立たしいわ……」
エリカ「私達なんてクリスマスもバレンタインも時間外練習だったのに……」 ギリ
エリカ「……」
エリカ「まあ、隊長達と過ごすのは、悪くはなかったけれど……」
梓『フラッグ車、発見しました!』
エリカ「ホントはさっさと負けてもらうつもりだったけど、どうやらさっさと勝って終わりそうね」
桃「千載一遇のチャンス……よし、突撃!」
エリカ「何でアンタが指示してんのよ!」
イケエエエエエエ
アターーーーック!
エリカ「ほら、下にナメられてるからこーなるのよ」
エリカ「隊長だって最初は上級生に歯向かわれたけど、実力を見せてきっちり統率できるようにしたっていうのに」
エリカ「……その過程で辞めた人もいるけど、でもおかげで統率の取れた強いチームになった」
エリカ「アンタにはそれが足りてないのよ」
エリカ「少なくとのあの頭の中にカニ味噌しか入ってなさそうな片眼鏡は何喋っても否定して口きけなくするくらいじゃないと駄目よ」
エリカ「余計なことを喋る指揮したがりの無能なんて生かしておくメリット0なんだから」
麻子「……」
ガン!
沙織「ちょ、いきなりどうしたの!? キックなんかして……」
麻子「いや、なんとなく」
沙織「もー! 麻子は上手いからそういう余裕あるのかもしれないけど、今すっごく大事なとこなんだからね!」
イケー!
ブッコロセー!
ストレートガチシテヤル!
みほ「ちょっと待って下さい……!」
エリカ「アンタが悠長にしすぎなんでしょ」
エリカ「置いていかれるわよ」
みほ「……追ってください」
麻子「……ああ」
ズドンズドン
桃「フラッグ車さえ倒せば……」
左衛門佐「勝てるっ……!」
みほ「……っ!」
エリカ「ちっ、ここまで追い込んだならしっかりと当てなs――――」
エリカ「!?」
みほ「東に移動してください、急いで!」
エリカ「囲まれている――ッ!?」
エリカ(チームのレベルの低さを侮ったッ)
エリカ(これが黒森峰ならば、こんなズルズル誘き出されずに撃墜していたっていうのに……!)
みほ「南南西に方向転換ッ」
キュラキュラキュラ
みほ「っ!」
エリカ「くっ……!」
みほ「囲まれてる……」
沙織「周り全部敵だよ!?」
桃「罠だったのか……」
梓「ええ!?」
エリカ「くっ……」
エリカ(速攻すると決めてたのにそれに失敗、そしてプラウダ得意の形……)
エリカ(雪上戦だし、これは、もう――)
値落ちしてました、申し訳ない
みほ「全車、南西の大きな建物に移動してください!」
みほ「あそこに立てこもります!」
エリカ「あそこに行くのも想定内だろうけど、他に手はなし、か……」
エリカ「投了するのが潔いのか、最後まで抵抗するのがいいのか、難しいところだけど……」
エリカ「ま、いずれにせよ、これまでのようね」
『履帯と前輪をやられました!』
『砲塔故障!!』
エリカ「見事なまでの集中砲火ね……」
エリカ「……」
エリカ(そういえば、そのわりに全然痛くないわね……)
麻子「……」
エリカ(こいつ……もしかして相当の操縦技術なんじゃあ……)
エリカ「……」
エリカ「はっ、そんなわけないわよね」
エリカ「私が無意識に避けようとしてるからってことかしら」
エリカ「無意識にコイツらに力を貸しているかと思うと腹立たしいわ~」
エリカ「……ん?」
みほ「砲撃が止んだ……?」
ザッザッザッ
沙織「見て、あれ……!」
優花里「あの制服、プラウダの……」
華「脱走兵、でしょうか……?」
エリカ「んなわけないでしょ」
華「撃った方がよろしいでしょうか?」
みほ「よろしくないです落ち着いてください」
エリカ「相当テンパってるわね……ったく……」
プラウダ大使「カチューシャ隊長の伝令を持って参りました」
プラウダ大使「降伏しなさい。全員土下座すれば許してやる」
プラウダ大使「……だそうです」
みほ「え……」
桃「なんだと」
エリカ「ちっ……ナメきってるわね……」
エリカ「格下相手にしかイキれないあたり小者なのに、自覚ないのかしら」
麻子「……」
沙織「麻子?」
麻子「……いや、なんでもない」
プラウダ大使「隊長は心が広いので3時間は待ってやる、とおっしゃっています」
プラウダ大使「……では」
エリカ「……はぁぁぁぁぁぁ!?」
エリカ「3時間!?」
エリカ「そんなの待ってたら黒森峰の試合が終わっちゃうじゃない!」
エリカ「冗談じゃないわよ、さっさとトドメをさしにきなさい!」
エリカ「あ、こら、行くな! ちょっと聞いてるの!?」
エリカ「……あ、聞こえてないのか」
エリカ「ほら誰かあのナメまくった連中を止めなさい!」
エリカ「そんで宣戦布告の一発でもカマしてさっさと負けなさい!」
まほ「くっ……」
まほ「戦力の差のおかげで、なんとか競ってはいるが……」
まほ「やはり貴重な戦力の一角が機能していないのは辛いな……」
小梅『本来なら軽くはねのけられる奇策が、全部逸見さんの穴を突かれて成功させられちゃってますもんね……』
まほ「見た目にはこちらが圧勝しているし、戦力差を考えればそれは事実だろうが――」
まほ「内容としては後手に回らされているし、決して良いとは言い難いな」
まほ(一人欠けても問題ないチームづくりをしていたはずだが……)
まほ(やはり一朝一夕でどうにかなるものではなかったか……)
小梅『大変です隊長!』
小梅『逸見さんの不在を気取られないようにいつもどおり上半身だけ戦車から出させていた逸見さんですけど……』
小梅『木に引っかかって車外に転落したそうです!』
小梅『大幅に遅れてます!』
直下『戦車に押し込めるのも操縦苦労したし、復帰かなりかかるんじゃ……』
まほ「……やむをえまい」
まほ「一旦別行動という形を取る」
まほ「逸見車は後から追ってきて、後に履帯損傷で戦列を離れた者の補佐などを頼む」
逸見車通信手『で、ですが……』
逸見車通信手『逸見さんを乗せたあとだと、出入り口を逸見さんが塞ぐから、後方支援は難しいかと』
まほ「…………」
まほ(こういう場面、欠片も想定していなかったもんな……)
まほ(やはり応用力が課題か……)
典子「誰が土下座なんか!」
桃「全員自分より身長低くしたいんだな」
エリカ「嫉妬で無駄なことするなんて、まったく戦車道を何だと思ってるのかしら」
エルヴィン「徹底抗戦だ!」
梓「戦い抜きましょう!」
エリカ「ま、そうね」
エリカ「ただでさえこんな弱小校で大会に出て暗黙のルールをぶち壊したっていうのに」
エリカ「案の定一方的にやられた挙句土下座してリタイアしました、なんてしてみなさい」
エリカ「戦車道大会そのものに傷がつくし、 西住流の名だって地に落ちる恐れがあるわ」
エリカ「せめて少ない希望に縋った顔をして突撃してパーッと死になさい!」
エリカ「出場してここまで来られた以上、知波単レベルにはなってもらっておかないと周りにも迷惑がかかるのよ!」
みほ「でも……」
エリカ「デモもストもない!」
みほ「こんなに囲まれていては……」
エリカ「勝ち目なんて当然ないわよ」
エリカ「ならさっさと実力で負けるしかないしょうが!」
エリカ「そもそも降伏したところでフラッグ車は落とされるのよ!?」
エリカ「土下座して一体何を許されようって言うのよ!」
みほ「怪我人が出るかも……」
エリカ「はァ!?」
エリカ「そんなの当然じゃない」
エリカ「カーボンで守られてるとは言え、戦車に乗って実弾撃ち合っているのよ!?」
エリカ「大体アンタだって、怪我する可能性を理解して戦車に乗って、上半身を車外に出したりしてるじゃない」
エリカ「何今更そんな――」
華「みほさんの指示に従います」
エリカ「なっ……!」
沙織「私もっ……」
沙織「土下座くらいしたっていいよ!?」
優花里「私もですっ」
エリカ「ちょっ……本気で言ってるの!?」
エリカ「腐っても準決勝で、かなりの人が見ているのよ!?」
エリカ「戦車道大会の歴史でも見かけないとんでもない行為なのよ!?」
エリカ「アンタ達が思ってるより、ずっと無様でみっともないのよ!?」
麻子「準決勝まで来ただけでも上出来だ、無理はするな」
エリカ「そりゃアンタら程度で準決勝まで来たら上出来よ」
エリカ「だからって、無様に土下座することないじゃない」
エリカ「……怪我するかも、なんてリスク気にしないで、さっさとやられればいいだけなのに」
エリカ「たかが、その子の感情的な理由に、どうしてそこまで従えるのよ……」
桃「駄目だ!」
桃「絶対に……」
桃「絶対に負けるわけにはいかん!」
桃「徹底抗戦だ!」
エリカ「今回ばかりは賛同だけど……」
エリカ「相変わらず偉そうなのが癪に障るわね」
エリカ「黒森峰なら――」 ハッ
エリカ「……」
エリカ「黒森峰なら、隊長の意見に逆らうような子はいない……」
エリカ「隊長を、信じているから」
エリカ「……隊長の言葉には間違いがないから……」
エリカ「……」
エリカ(隊長の考えは正しいと思っているし、共感もしていた……)
エリカ(だから、それとは違う意見を持ってるアンタのことが信じられなかった……)
エリカ(才能があるだけに、隊長みたいに考えを改めて、西住流後継者にして黒森峰の将来の隊長に相応しくなってほしかったのに……)
エリカ「……とうとうムカつくくらいに甘っちょろいまま、アンタは“隊長”になったのよね……」
エリカ「見なさいよ、みんな、片眼鏡じゃなくてアンタの味方って顔してるわよ」
エリカ「……私には、アンタを信じるなんて信じがたいけど……」
エリカ「……隊長みたいに、チームから、信用されてるのね……」
エリカ「……」
エリカ(私は……)
エリカ(隊長やこの子みたいに、信じてもらえるような選手に、なれてるのかしら……)
エリカ「…………」
逸見車砲手「あった、逸見さんの体!」
逸見車装填手「うわっ、血が出てる……」
逸見車通信手「え、大丈夫?」
逸見車通信手「どうしよう……」
逸見車通信手「このままじゃどうせ役に立てないし、リタイアした方がいいのかな……」
逸見車砲手「なんだかんだで、逸見さんの指示が正確だから、上手くやれてたんだもんね……」
逸見車装填手「逸見さん抜きで統率取れずに動いて、フレンドリーファイアーなんてことになったら不味いもんね」
逸見車操縦手「……」
逸見車操縦手「ちょっと怖いけど、やっぱり、逸見さんがいないと、私達は成り立たないのよね」
逸見車通信手「……だね」
逸見車砲手「この戦いが終わったら、もう少し逸見さんと、いろいろな話をして、もうちょっと仲良くなってみようかな……」
逸見車砲手「私達、逸見さんがこうなったのも、よく分からない病気としか教えてもらえてないし」
逸見車操縦手「うん、そうだね。そうしよう!」
逸見車装填手「あ、私逸見さんについて語らうライングループ知ってるよ、入る?」
逸見車砲手「あ、うん。最近スマホにしたし、折角だし招待してよ」
逸見車装填手「そうだ、どうせ私達リタイアするんだろうし、逸見の森で何かこういう時の対策載ってないか見てみよっと」
逸見車砲手「逸見の森?」
逸見車装填手「そうそう、ライングループの名前で――」
逸見車通信手「わっ、危ない!」
ガシッ
逸見車通信手「セーフ……!」
逸見車装填手「ご、ごめん、大丈夫だった!?」
逸見車操縦手「もう、気をつけてよ! 逸見さん、この体格で結構重いんだから!」
逸見車装填手「そういえばボクササイズで痩せたはいいけど本格的なトレーニングしたら筋肉ついて重たくなっちゃったんだっけ……」
逸見車砲手「え、そうなの」
逸見車装填手「逸見の森情報だから、本人が教えてくれたわけじゃないんだけどね」
逸見車操縦手「……あっ、ちょ!」
逸見車通信手「え?」
フヨン
逸見車通信手「わわ、ごめん逸見さん!」
逸見車砲手「なるほどこれがラッキースケベ……」
逸見車通信手「と、とりあえず支え続けなきゃいけないけど、手は胸から離さないとだし……」
逸見車通信手「このまま手をゆっくりスライドさせて、胸から腰のあたりに……」 ススス
逸見車砲手(私達が支えたらなんとかなると思うけど、面白いから黙っていよう)
ポチ
逸見車通信手「あ、やば、変なとこ触っちゃった」
逸見車装填手「もう、お硬い副隊長様だし、あんま変なことすると怒られるよ?」
エリカ「ドゥルン」
逸見車通信手「!?」
エリカ「ドゥルルルルルルルル」
逸見車通信手「ど、どうしたの逸見さん!?」
エリカ「ドゥルルルルルルルル」
逸見車砲手「突然どうかしたの!?」
逸見車装填手「も、もしかして、打ちどころが悪かったんじゃあ……」
逸見車通信手「ええ!?」
逸見車砲手「ど、どどどうしよう、とりあえず試合を中断して貰って――」
逸見車操縦手「……待って!」
逸見車操縦手「あの逸見さんが、そんなことを望むとは思えない」
逸見車通信手「そ、そりゃあそうだけど……」
逸見車操縦手「それに――」
逸見車操縦手「あの戦車道に対しては面倒なくらいこだわりを持ってた逸見さんが、こんな場面でふざけると思う?」
逸見車砲手「た、確かに……」
逸見車通信手「言われてみれば、病気で意識がないとかはともかく、病気でドゥルンドゥルン言い出すわけないもんね……」
逸見車操縦手「うん……」
逸見車操縦手「きっとこの言動にも、何か意味があるんだよ……!」
逸見車砲手「そうだよね……」
逸見車砲手「昔から逸見さん、言葉足らずだし、嫌な奴って思うくらい口も悪かったけど……」
逸見車砲手「でも、いつだってそこには意味があった」
逸見車装填手「素直になればこじれないのに、なんて思うこともあったけど……」
逸見車装填手「逸見さんなりの戦車道愛が、いつだって根底にはあったんだよね……」
逸見車操縦手「逸見さんは、こんな私達を、ずっと同じ戦車の仲間に選んでくれた」
逸見車操縦手「このままだと、私達が、来年は隊長車を支えるメンバーになる」
逸見車操縦手「今、逸見さんを信じられなくてどうするの!」
逸見車通信手「そうだよね……」
逸見車通信手「気持ちと意図を組んであげるのが、仲間である私達の役目……」
逸見車砲手「昔は、あまりに嫌な子だからって筆記具全部チョークにすり替えたりしたこともあったけど……」
逸見車砲手「でも、色々あって、今は逸見さんを信じてる……」
逸見車装填手「逸見さんの意図を理解し、私達の車長が望むことを、私達で成し遂げよう!」
逸見車メンバー「「「おおーーーっ!!」」」
エリカ「ドゥルン」
エリカ「……」
エリカ(やっぱり、私なんかじゃ誰もついてきてないわよね……)
エリカ(余裕がないことが多いってくらい、自分でも分かってる)
エリカ(隊長になってから、最低限の人望を得るしかないと思ってた)
エリカ(……隊長がいる以上、隊長以上に人望を得られるわけがないもの)
エリカ「……」
エリカ(隊長には、実力も人望も遠く及ばないのは分かってる)
エリカ(でも……)
エリカ「アンタにだけは……」 ギリッ
桃「勝つんだ、絶対勝つんだ!」
桃「勝たないと駄目なんだ!」
エリカ「……」
エリカ「勝たないと駄目、か……」
エリカ「そこに関してだけは同意だわ」
エリカ「……」
エリカ「実力も策もなく喚くだけだとこうなる、って例ね……」
エリカ「……」
エリカ「私も、明日は我が身にならないようにしないと……」
みほ「どうしてそんなに……」
みほ「初めて出場してここまで来ただけでも凄いと思います」
みほ「戦車道は戦争じゃありません」
沙織(あ、サンダースの人が言ってたやつだ)
華(しれっとパクりましたね)
優花里(影響を受けたんですねえ……)
みほ「勝ち負けより大事なものがあるはずです」
エリカ「……フン」
エリカ「勝つ以外の――」
桃「勝つ以外の何が大事なんだ!!」
エリカ「……」
みほ「私……この学校にきて皆と出会って、はじめて戦車道の楽しさを知りました」
エリカ「ッ!」
みほ「この学校も、戦車道も大好きになりました!」
エリカ「……」
エリカ「なによ……」
エリカ「分かっちゃいたわよ、アンタがこのヌルい環境とアホ面下げた連中に、入れ込んできてるってことくらい」
エリカ「分かっちゃいたわよ……」
エリカ「アンタの居場所は、もう、ここなんだってことくらい……」
エリカ「でも……」
みほ「だからその気持ちを大事にしたまま、この大会を終わりたいんです」
エリカ「黒森峰の日々だって、少しくらいは、アンタの中にあると思っていたのにっ……」
エリカ「去年私が大事にしていた気持ちをアンタのせいで台無しにされて、それでもっ……」
エリカ「毒づきながらでも、それでも仲間がしたことだからって、過去のことにしようとしてたのに……!」
桃「何を言っている……」
麻子(こっちの台詞だろ……)
桃「負けたら我が校はなくなるんだぞ!」
みほ「え……?」
エリカ「……は?」
みほ「学校が……なくなる……?」
杏「河嶋の言うとおりだ」
杏「この全国大会で優勝しなければ――」
杏「我が校は、廃校となる」
みほ「――っ!」
エリカ「……っ」
区切りついたので、投下を終了します
年内にプラウダ戦すら終わりませんでしたが、エたらせるつもりはないので、よければ来年もよろしくお願いします
あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします
落ちても困るので少しだけ透過します
優花里「な、ななななななななな……!?」
梓「い、今、なんて……」
エルヴィン「ほら、あれだろう、より強くすべく、色々なものを我が校に混ぜ合わせてより良い物を……」
杏「それは配合だ」
ソド子「きっと、それでも果敢に戦った功績を認められて、何かのルールの大本になったりするのよ!」
杏「えーっと、それは大綱だな」
おりょう「幾度か辛酸を経て、志初めて堅し――」
杏「…………」
柚「……あっ、西郷?」
おりょう「うむ、それだ!」
桃「お前ら現実逃避をするんじゃないっ、本当に廃校なんだァ!」 ウワァーン
エリカ「廃校……」
エリカ「なによそれ……」
あや「あれだよ、負けたら野良仕事をやらされるんだよ」
優季「しっごーとがっすっきー」
あゆみ「てれてんてんてんてれてんてんてん」
桂利奈「ハイホーハイホーハイホー」
桃「廃校!!」
エリカ「……」
エリカ「もし、ここが廃校になったら……」
麻子「……ぽぅ」
桃「マイコーじゃない! 廃校だ!!」
杏「やる気ないなら無理矢理入ってこないで聞いてくれる方が有り難いんだけどな」
エリカ「……」
エリカ「このまま負ければ……」
エリカ「……あの子は、また、黒森峰に……?」
典子「きっと敗戦のショックで3日くらい失踪を……」
忍「失踪……一体何が……」
妙子「実は温泉旅行とか……」
あけび「温泉にならいいけど、ロッテには行きたくありません」
桃「ええいそんな1勝もしない投手なんて関係ない! 廃校なんだよ!!」
エリカ「……」
エリカ「実質部外者の私じゃなくてアンタらがもっと焦りなさいよ!」
エリカ「おちおち頭を悩ませれもしないじゃない!!」
沙織「き、きっと負けたら戦車を売られちゃうんだよ……」
沙織「しかも二束三文で、よりにもよって中古戦車のお店でなく中古バイクのお店に……」
桃「バイク王でもない! どんどん離れていくな!」
カエサル「超感動した」
華「圧倒的な世界観」
ゴモヨ「もう三回見ました」
左衛門佐「絶対泣ける」
パゾミ「友情っていいなあ、って思いますよね」
優花里「せーのっ」
「「「「ほにゃらら(お好きな映画タイトルをお入れください。例:実写咲-Saki-)、サイコーーーーー!」」」」
桃「ハイコーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
杏「あんまり現実逃避されても困るし、勝手に回想入っちゃうよ?」
エリカ「私の意思一つで発砲できたらこいつら全員粉微塵にしてやるのに」
エリカ「……はぁ……」
エリカ「ま、空元気も已む無し、か」
エリカ「相手はプラウダ」
エリカ「こう囲まれたら勝機はないわ」
エリカ「ここから逆転できたら、全裸でパンを尻にはさんで右手の指を鼻の穴に入れて左手でボクササイズをしながら「いぼぢをだいじに」と叫んでもいいわ」
エリカ「そのくらい、廃校は明白」
エリカ「……」
エリカ「つまり……」
エリカ「おそらく、あの子は……」
エリカ「いえ、黒森峰を拒否して、もしや他校に……?」
エリカ「……」
エリカ(何よ、このもやもやは……)
エリカ(私は一体、あの子にどうなってほしいの……?)
エリカ「……」
エリカ「それにしても……」
エリカ「早く諦めてもらわないと、もう試合は間に合いそうもないわね……」
エリカ「私の手で、継続相手に勝利したかったのに……」
エリカ「今頃、隊長達は相手を包囲し圧勝し終えたところかしら……」
エリカ「はあ……」
エリカ「そりゃそうよね……」
エリカ「なにせ隊長は優秀なうえ、あのチビと違って変な油断も傲りもない」
エリカ「遊ばずに終わっているはず……」
エリカ「……」
エリカ「私なんていなくても、きっと、問題なく、勝ってるのよね……」
小梅『……以上が、こちらの被害状況ですっ……』
まほ「そうか……」
直下『すみません、私達のせいで……』
まほ「いや、気にするな」
まほ「向こうが一枚上手だったんだ」
まほ「……包囲したあとの、フラッグ車の動き」
まほ「あの車輌だけ、頭ひとつどころでなく飛び抜けていた」
まほ「自らが逃走すべく奇策に徹されたのも、こちらとしては苦しかったな」
まほ(アクシデントで指揮系統が麻痺した時のため、ある程度各自で考え臨機応変に対応するよう指導していたが……)
まほ(それが完全に裏目に出たな)
まほ(まだ始めたばかりの方針であるため、各々が最適解を分からぬまま好き勝手に動き自滅してしまった)
まほ(……とはいえ、仕方のないことだ)
まほ(何のリスクもないのなら、とうの昔から取り入れている)
まほ(これらのリスクを踏まえたうえで、去年のようなことを繰り返さぬために、決めた方針だ)
まほ(来年・再来年のメンバーの底上げのためと考えれば、そこはもう割り切るしか無い)
まほ(それより、今は――)
まほ「この歯抜けになった軍団で、どうするか、だな……」
まほ(向こうは、基本的に奇襲をしかけてくる)
まほ(厄介なのは、フラッグ車を狙ってこない点)
まほ(削れる周囲を確実に削り取り、また逃走していく)
まほ(サシでの勝負で負けるつもりはないが…・…)
まほ(この段階で一人を相手に撃墜され続ければ、後のメンタル面に大きく影響する)
まほ(ここは早期に決着をつけねばなるまい)
まほ(とはいえ、この歯抜け状態で西住流の王道を行ってもさほど脅威たり得ない)
まほ(されど、西住流に泥を塗るような奇襲も出来ない
まほ「…………」
まほ(みほ……)
まほ(この局面、お前ならどう切り抜ける……?)
まほ(それに……)
まほ「……」
まほ「エリカ……」
まほ(エリカ、お前なら、どうするんだろうな……)
短いですが、眠気が来たので中断します
また少しだけ透過します
エリカ「よーやく種明かしが終わったわね」
エリカ「まあ、私は所々しか関わってないから、そんなに思う所はないんだけど」
エリカ(……思うところがあるとしたら、やっぱり、この子が廃校になった時どうするか、よね……) チラリ
みほ「……それで戦車道を復活させたんですか」
杏「戦車道やれば助成金も出るって聞いてたし」
杏「それに学園運営費にも回せるしね」
麻子「その割に戦車の購入どころかパーツの購入すら出来てないじゃないか……」
杏「極力使わず、生徒会室に空気清浄機と全自動卵割り機を導入するのに使わせて貰った」
麻子「この建物、カメラ入らないんじゃないか?」
華「なるほど、いつでも撃てますよ」
杏「まあ待て」
みほ「皆さん気持ちはわかりますけど落ち着いて!」
梓「じゃあ、世界大会というのは嘘だったんですか!?」
桃「それは本当だ」
エリカ「いきなり優勝なんて無理だし、世界大会なんてもってのほかよ」 ケッ
杏「いやー昔盛んだったならもっといい戦車が眠っているかと思ったんだけど……」
麻子「いい戦車抱えこんでたら辞めるわけないだろ」
エリカ「アホね」
エルヴィン「浅慮だな……」
杏「うわーボロクソ」
杏「ちなみにここにあるのは全部売れ残ったやつ」
麻子「で、その売上金は」
杏「先輩たちが運営費に当て、そして切り詰めて生徒会室の設備充実に当てた」
優花里「装填完了です、五十鈴殿!」
華「みほさん、いつでも撃てます」
みほ「……気持ちはわかりますが、冷静になりましょう」
杏「あれ、ちょっと擁護まで間がなかった?」
桃「……他に考えつかなかったんだ」
桃「古いだけで何も特徴のない学校が生き残るには……」
優花里「あんこう踊りがあるのでは」
カエサル「確かにアレは強烈だな……」
梓「思わず記憶しちゃうインパクトですよね……」
おりょう「となると、あんこう踊りで町おこし……?」
あや「それが出来るなら、とっくに栄えてるんじゃあ」
典子「そこは、根性で!」
麻子「衣装をあのピッチリしたスーツ義務にすればいいんじゃないか」
エルヴィン「なるほど、それを雇った美人にやらせて人目を引くと言うわけだな」
杏「……無謀だったかもしれないけどさあ」
杏「あと1年、泣いて学校生活を送るより――希望を持ちたかったんだよ」
みほ「会長……」
エリカ「いい話っぽくしてるけど、あいつらあんまり聞いてないわよ」
柚子「黙っていて、ごめんなさい……」
優花里「で、でもまだ、あんこう踊りで何とかなりますよ!」
あや「そうですよ、セクスィースーツで踊るイベントで、観光客がウッハウハです!」
桃「あんこう踊りじゃ無理だ」
桃「大体セクスィーなスーツ云々で客を釣り始めたら、恐らく禁止処分を受ける」
杏「大洗としても、あんこう踊りまで失うわけにはいかないんだよねー」
桃「大体、誰が着たがるんだあんなもん!」
梓「た、確かに……」
典子「根性があっても、あればっかりは……」
カエサル「と、いうことは……」
みほ「本当に、廃校……!?」
桃「だからそう言っているだろう!!」
典子「バレー部復活どころか、学校がなくなるなんて……」
おりょう「無条件降伏……」
優花里「そんな事情があったなんて……」
華「この学校がなくなったら、皆バラバラになるんでしょうか……」
沙織「そんなのやだよお!」
エリカ「……」
麻子「単位習得は、夢のまた夢か……」
うさぎさんチーム「うううううう……」
エリカ「……すっかり葬式ムードね」
エリカ「……」
エリカ「同情は、してあげないわよ……」
みほ「……」
みほ「まだ試合は終わってません」
エリカ「……!?」
みほ「まだ、負けたわけじゃありませんから」
優花里「西住殿……」
杏「西住ちゃん……?」
エリカ「ちょっ……あんた本気で言ってるわけ!?」
みほ「……頑張るしかないんです」
みほ「だって――」
みほ「来年もこの学校で、戦車道をやりたいから……」
みほ「……みんなと」
エリカ「……」
エリカ「なーによ、たった数ヶ月がいいとこの奴ら相手に、そこまで……」
優花里「私も、西住殿と同じ気持ちです!」
エリカ「なっ、ちょ、どんだけ単純なのよアンタは!」
沙織「そうだよ、とことんやろうよ!!」
沙織「諦めたら終わりじゃん、戦車も恋も!」
華「まだ戦えます……!」
麻子「……」 コクリ
エリカ「何よ……こいつら揃いも揃って感化されすぎじゃないの……」
みほ「降伏はしません」
みほ「最後まで戦い抜きます」
エリカ「……」
みほ「ただし、皆が怪我しないように、冷静に判断しながら」
エリカ「……」
エリカ「相変わらず、クソ甘いままなのね」
エリカ「立派に隊長として支持を出してるけど……そんなんじゃ、黒森峰では通用しないわよ」
エリカ「……」
エリカ「……」
エリカ「アンタの居場所は、もう、黒森峰にはないんだから」
エリカ「別に、寂しくなんてないし――」
エリカ「――いいわ、私も、手ぇくらい貸してあげる」
エリカ「精々、圧倒的戦力差と現実を知って、あのクソ生意気なちびっ子に一矢報いてから死になさい」
エリカ「……整備も、気付いたら手慣れてきてるじゃない」
エリカ「当然、私達黒森峰の方が上として――」
エリカ「この上達スピード……」
エリカ「ポッと出のわりには、努力してるんじゃない」
エリカ「……ま、このくらいは当然だけど」
桃「問題は、この包囲網をどうやって突破するのかだな」
エリカ「そう」
エリカ「闇蜘蛛に突っ込んでも、待っているのは知波単のような総玉砕」
エリカ「さりとて黒森峰のように乗り手も戦車も地力不足」
エリカ「さあ、どう指揮をとるつもりなのか、見せてもらうわ」
眠気が襲ってきたので寝ます
ドゥルン(既にめちゃ眠たいので本当に少しだけですがやります)
桃「問題は、この包囲網をどう突破するかだが……」
柚子「敵の正確な配置が分かればいいんだけど……」
みほ「偵察を出しましょう」
エリカ「ま、それしかないでしょうね」
エリカ「戦車戦は情報がものを言う」
エリカ「それを元に作戦指揮を執る隊長の能力も求められるし、目まぐるしく移り変わる戦況を把握できる手足もが王者には求められるものよ」
沙織「それにしても、なんで麻子達なの?」
沙織「寒がって引きこもりそうなイメージすらあるのに」
みほ「冷泉さん達のコンビは、視力がいいから……」
みほ「二人一組が基本になりますし……」
カエサル「では、エルヴィン達のコンビは……?」
みほ「……二人共、行きたいって志願を……」
沙織「うええ、元気すぎでしょ二人共……」
左衛門佐「庭駆け回る……」
エリカ「アホなんでしょ」
エリカ「しかしまあ、二人一組で人間を偵察に出す、ねえ」
エリカ「黒森峰じゃありえないスタイルだわ」
エリカ「偵察で情報収集は当然必要とはいえ、戦車を降りてコソコソやるなんて弱者のやる邪道そのもの」
エリカ「偵察隊を戦車チームで組み、威力偵察をすることこそ、戦車道の本懐」
エリカ「……試合中に戦車から降りることすら、西住流では恥とされているというのに」
エリカ「ほんっと、そーいうのに全然縛られなくなっちゃって」
エリカ「……昔は、もうちょっと、ビクビクしながらだったくせに」
エリカ「……」
エリカ「黒森峰でそんなことしようものなら切腹よ切腹」
逸見車操縦手「きゃああああ!?」
逸見車通信手「ちょ、どうしたの逸見さん!?」
逸見車砲手「突然走り出すなんて!!」
逸見車装填手「人一人背負ってあの速さ……ボクササイズの成果?」
逸見車通信手「やっぱり、『おっぱい触ったら喋ってくれたし、もっと揉めばいいんじゃ』なんてすべきじゃなかったんだよ!」
逸見車砲手「いや、だって、あまりに気持ちよさそうだったから……」
逸見車砲手「揉ミュニケーション……」
逸見車操縦手「そ、それより止めてえ! っていうか止まってえ!」
逸見車通信手「そ、そうだよ逸見さん! そのまま行くと戦場に――」
逸見車砲手「はっ……!」
逸見車砲手「まさか逸見さん、このまま生身で乗り込もうっていうの!?」
逸見車操縦手「え!?」
エリカ「ドルルルルルルン」
逸見車装填手「でもそれ、逸見さんの敬愛する西住流の精神に反するんじゃ……」
逸見車砲手「確かにそうかもしれない」
逸見車砲手「普段なら、私だってそう思っていた」
逸見車砲手「でも、今こうして、生身で突っ込もうとしているのは、動かせない事実なんだよ」
逸見車操縦手「うっ、た、確かに……」
逸見車砲手「それに、逸見さんは、隊長だけでなく、元副隊長の西住さんのことも、ずっと意識してる風だった」
逸見車砲手「西住さんは、自分が守りたい者のためなら、規律だって捨てられる強さを持っていた……」
逸見車操縦手「……それは、確かに」
逸見車砲手「私たちは今、追い込まれている」
逸見車砲手「敵隊長の予想以上の無双を前に、下手をしたらこんなところで姿を消すはめになるわ」
逸見車通信手「ふ、ふたりとも、よく走りながら喋れるね……」 ゼヒーッ
逸見車砲手「作戦を立てよう」
逸見車砲手「逸見さんの意思を尊重した、生身の偵察を活かした作戦を」
逸見車砲手「王道じゃないかもしれない。怒られるかもしれない。それでも!」
逸見車砲手「私達の大好きなチームと、車長のために……!」
エリカ「ドゥルン……」
みほ「戦車が冷えるので、素手で」
あや「わあ、ほんとだー」 ヒヤ
みほ「最後まで聞いてほしかったかな……」
あや「あれ!? 張り付いた……!?」
桃「悲劇を繰り返さないためにも、西住、言ってやれ」
みほ「え、あ、はい……」
みほ「ええと、戦車が冷えるので、素手で触らないようにしてください」
おりょう「となると、素足で……」
みほ「ええと、それもちょっと……」
あけび「ほっぺスリスリとか……」
みほ「ほっぺ持って行かれますよ……?」
杏「もういっそ生乳で触って話題にだけでもなってみるか」
エリカ「やれるもんならやってみなさいよ乳首もげるわよ」
桃「手の空いたものは暖を取れ」
柚子「スープ配りまーす!」
杏「干し芋たっぷりで美味いぞー」
みほ「こんなに天気が荒れていたら、偵察に出た皆は……」
エリカ「割りと洒落にならない可能性はあるけど、でも――」
優花里&エルヴィン「「どーおせ生きては帰らぬつもりー」」
エリカ「不吉な歌を口ずさみながら帰ってきたわよ」
優花里「ただいま帰還しました」
ソド子「こちらも偵察終わりました!」
沙織「ちょ、どうしたの、そこかしこ濡れて……!」
麻子「途中でソド子のせいで敵に見付かってな」
麻子「さすがに特殊カーボンで守られていない生身の人間を撃つのは気が引けるらしくてな」
麻子「砲弾の代わりに雪玉が飛んできた」
エリカ「そりゃそうよ、そんな一生消えない十字架を誰が高校生の選択授業ごときで背負いたっつーのよ」
エリカ「でもそれを逆手に取るようなのは邪道だし、人間流の面汚しって感じだし、私は絶対やらないけど」 フフン
ガサガサッ
ミカ「!」
ミカ「アキ、ミッコ」
アキ「うん」
逸見車操縦手「さっきの偵察で、敵の隊長がここに潜伏しているのは知っている!」
逸見車操縦手「うおおおおおおお!」
バッ
逸見車操縦手「ってえええええええええええ!!」
ズドム
ミッコ「はっずれー!」
ミッコ「つっても、ドリフトしなくても全然当たってなさそうだけどな!」
アキ「黒森峰なのに、そんなことってあるのかな……」
ミカ「アキ。迷いという名の森の中に入りこむのは、あとでいいんじゃないかな?」
ミカ「今はただ、風に身を委ねるだけさ」 ポロロン
ミカ「――トゥータ」
ズドム
ヒョコッ
逸見車装填手「ぎゃあ、やられたー!」
逸見車通信手「!」
逸見車通信手(白旗が上がった……!)
逸見車通信手「今!!」
ガサッ
ミカ「!」
ミッコ「そっちか!?」
アキ「ま、待って! あれただの人だよ! 偵察っぽい!」
ガサッ
ミカ「本命は、後ろ、だね」
ミカ「予想外とは、常に背後からやってくるものなのさ」
ミカ「トゥー――――」
アキ「駄目!」
アキ「こ、こっちも生身の人間だよ!」
ミカ「!?」
エリカ「ドゥルン!!」
逸見車砲手(逸見車操縦手が、逸見さんの体の仕組みを幾つか解明してくれた……)
逸見車砲手(料理上手な逸見車装填手が、さっとありあわせの材料でハンバーグを作ってくれた)
逸見車砲手(その二人が、戦車を操縦し、敵の隙を作ってくれた)
逸見車砲手(そして、逸見車通信手が、二段階の不意打ちの中で最も危険な一の矢になって、タイミングを教えてくれたんだ!)
逸見車砲手(これは、逸見車全員の力が合わさった、初めての邪道っ)
逸見車砲手(邪道に落ちてでも、落とせない星を取るという決意の現れッッ)
逸見車砲手「こいつは――――」
ミカ「アキ!」
アキ「……!」
ミカ(まいったな……さすがに、戦車を囮に生身で挑んでくるだなんて……)
ミカ(なんて……自由……!)
逸見車砲手「外さないッッ」 ギュムッ
エリカ「ボシュッ」 ハンバァァァァァァグ
ビチャッ
アキ「ひゃっ」
ボムギッ
アキ「ええっ、そんな……!」
ミッコ「くそっ、まさか口から何か出てきて砲身に詰まるだなんて……」
ミカ「砲身がやられたら、高確率で白旗が上がる」
ミカ「もちろん、口から吐き出せる物質である以上、整備すれば何とかなったはずさ」
ミカ「でも――」
アキ「あ……私が、つい反射的に撃っちゃったから……」
シュポッ
アキ「砲身が暴発して、旗が……」
ミカ「……そうじゃない」
ミカ「戦車道には、人の心が詰まっている」
ミカ「何より風を感じ、空気を読むのは戦車自身さ」
ミカ「そして――白旗を出さないと、と戦車に思わせる空気を、向こうが作っただけのことさ」
シアイシュウリョウ! クロモリミネジョガクエンノショウリ!!
まほ「えっ」
しほ「…………???????????」
眠たいので寝ます
予想を越える亀更新ですがよければ今後もよろしくお願いします
めっちゃ眠たいので少しだけやります
エリカ「それにしても、さすがにもう試合は終わっちゃってるわよね……」
エリカ「以前の練習試合では、相手の隊長車が強敵だったけど……」
エリカ「それでも黒森峰と、西住流は王道にして最強」
エリカ「真っ向から小細工なんて叩き潰してるわよね」
エリカ「……はあ」
エリカ「まあ、いいわ」
エリカ「今回は――あのチビに、リベンジを果たしてやる」
エリカ「もし、万が一、大洗の試合に合わせて入れ替わりが起こるのだとしても――」
エリカ「もう準決勝を終える大洗の試合と、次が準決勝のうちはバッティングしないはず」
エリカ「次で鬱憤を晴らすようにいけ好かないグロリアーナを倒してやるわ」
しほ「…………」
しほ(……あの子は切腹ね)
エリカ「…………」
風「びゅおおおおおおおおおおおwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
エリカ「さっむ……」
エリカ「めちゃくちゃ吹雪いてきたわね……」
エリカ「……いっそ、中止になればいいんだけど……」
エリカ「……でも、これだけ優位を取ってるプラウダが、それをすんなり受け入れるわけがないし……」
エリカ「学校の貢献度とかから鑑みても、まあ、まずプラウダ側に媚びるように、中止しない方向で検討されてるでしょうね」
エリカ「そうなると、士気の維持が問題だけど……」
エリカ「……」
エリカ「いや中止になられたら困るんだった、再試合の時入れ替わりで聖グロ戦出られないなんて絶対ごめんよ」
エリカ「えーい、やみなさい吹雪!」
エリカ「ほら、さっさとしなさいよ!!」
エリカ「ちっ……もう完全にお通夜ムードね」
優花里「さっき偵察中、プラウダ高校はボルシチとか食べてました……」
エリカ「いっそウォッカでも飲んでたら、辞退に追い込めたものを……」
麻子「美味しそうだな……」
華「それに、暖かそうです……」
優花里「やっぱり、あれだけの戦車を揃えている学校ですからね」
沙織「……」
沙織「学校、なくなっちゃうのかな」
エリカ「なくなるわよ」
エリカ「ここで勝っても、私は容赦なくアンタ達を叩き潰すんだから」
優花里「そんなの、嫌です……」
優花里「私は、ずっとこの学校にいたい!」
優花里「皆と一緒にいたいです!!」
エリカ「……ふん」
エリカ「いつまでもこのままでいられたらいい、なんて……」
エリカ「卒業だってするんだから、叶うわけないじゃない」
エリカ「……」
エリカ(でも……)
エリカ(叶うはずもないのに、心のどこかで、私も……)
華「どうして廃校になってしまうんでしょうね……」
エリカ「知らないわよ」
エリカ「アンタラのとこの無能運営にでも聞きなさいよ」
エリカ「あのアンツィオや継続だって解体されてないんだし、あんたらよっぽど採算取れてないのよ」
エリカ「なんだっけ、あんこう踊りとかいう、伝統芸能的なのあるんでしょ?」
エリカ「そっちでなんとか人を呼ぶほうが現実的だったのよ」
エリカ「戦車道をナメたのが敗因よ」
華「ここでしか咲けない花もあるのに……」
エリカ「……」
エリカ「ここじゃ咲けない花もあるでしょ」
エリカ「……そこでしか咲けないと思っていた花が、違う場所で、もっと生き生きと咲くなんてことも、あるのよ」
みほ「みんなどうしたの!?」
みほ「元気出していきましょう!」
エリカ「……無理よ」
エリカ「元々絶望しかけてた心を、無理やり奮い立たせてたのよ」
エリカ「それが吹雪で冷水をかけられたらこんなもん、よ」
みほ「さっきみんなで決めたじゃないですか、降伏しないで最後まで頑張ろって!」
一同「「「はーい……」」」
エリカ「わかってまーす、なんてのも、嘘じゃあないでしょうね」
エリカ「分かってても、一度冷めた熱は簡単には戻らない」
エリカ「窮鼠が猫を噛むのも、追い込まれて生まれた熱が生きてるから」
エリカ「……反撃に出るための熱量を[ピーーー]つもりで、こんな時間を設けたのかしら?」
桃「お、おい! もっと士気を高めないと!」
エリカ「元々、おどおどしてて士気高翌揚には向いてなかったのよね、アンタ」
エリカ「……この場面で、そんなアンタがどうするのか、見させてもらうわよ」
桃「このままじゃ戦えんだろ」
みほ「え……」
桃「なんとかしろ、隊長だろ!?」
みほ「は、はい……」
みほ「……」
みほ「っ!」 キリッ
みほ「あああんあん!」 ヒョイッ
みほ「あああんあん!」 ピョコピョコ
エリカ「!?!?!?!」
沙織「みぽりん!?」
華「どうしたんですか……?」
エリカ「え、なに、あまりの絶望にネジでも飛んだの?」
みほ「みんなも歌ってください!」
エリカ「!?」
みほ「私が踊りますから!!」
エリカ「ほんとどうしたのよあんた……」
エリカ「さすがに驚きすぎて引くし、みんなも歌って、他の連中もこの意味の分からない曲を歌える前提なわけ……?」
華「あの恥ずかしがりのみほさんが……」
優花里「皆を盛り上げようと……」
麻子「微妙に間違ってるけどな」
エリカ「微妙で済まないレベルで間違ってるんじゃないこれ???」
優花里「私も踊ります!」
エリカ「はあ!?」
華「やりましょう」
沙織「みんな、いくよー!」
麻子「仕方あるまい」
エリカ「え、なに、私なの? 私だけがおかしいの?」
ピーッカピカー
エリカ「……」
エリカ「……」
エリカ「あっ、これがあんこう踊りってやつ!?」
エリカ「いや、そりゃだめだわ……そりゃこれ前面に押すのはないわ……」
エリカ「上級者向けすぎでしょ……」
エリカ「まだ戦車道をナメて参戦してくる方が理解できるレベルの踊りね……」
エリカ「ソレを試合中にやるなんて、家元が見たら卒倒するわよ」
エリカ「しかもこの人数でそんな狂気の洗脳ダンスを踊るなんて……」
エリカ「戦車道の歴史においても指折りの恥さらし」
エリカ「ボジョレーヌーボーと違って、本物の近年トップクラスの恥さらしね……」
エリカ「まったく、うちの試合と重なっていて家元が見に来てないことを感謝しなさいよね」
しほ「……」
まほ「あの……」
しほ「切腹用の刃はこれでいいかしら」
まほ「エリカのことを、許して頂けは……」
しほ「戦車道とは、心を育てるもの」
しほ「あれほどまでに心がやましく、西住流にも反する者を、手元に置いておく必要はありません」
しほ「ボジョレーヌーボーと違って、本物の近年トップクラスの恥さらし」
しほ「試合中ハンバーグを食べてそれを吐き出して勝利するなど、あまりにも言語道断」
しほ「戦車道の歴史においても指折りの害悪です」
しほ「それならまだ試合中に奇妙な踊りでも踊られる方が奥倍マシ」
まほ「それは、まあ、そうでしょうが……」
まほ「さすがに切腹というのは、些か時代錯誤かと……」
まほ「西住誕生直後の文化をそのまま現代にも適用するのでなく、そのあたりはフレキシブルに……」
しほ「分かっています。冗談です」
まほ「ほっ……」
しほ「今の時代、切腹はあまりに非人道的」
しほ「今の時代は無痛ですぐ終わる電気椅子です」
まほ「!?!?!?!?」
しほ「何でも揃うアマゾンとやらで注文したから、近日中に届くでしょう」
まほ「何でも揃うにも限度というものがあります」
まほ(頼むからKONOZAMAになってくれ……)
予定の半分くらいしか進んでませんが、眠気がひどくて判断力がていk割いてるので寝ます、申し訳ない
めっちゃ眠いのですが、やれるところまではまったりやります
プラウダの使者「あの!」
エリカ「うわ、見てたんだ……」
プラウダの使者「もうすぐタイムリミットです」
プラウダの使者「降伏は?」
みほ「しません」 スッパリ
みほ「最後まで戦います」
プラウダの使者「……」
プラウダの使者(まあ、あの踊りを全員で踊った挙句降伏しますと言われてもちょっと困るもんね……)
プラウダの使者(人の心を壊すくらい追い込んでしまった、ってトラウマにならないように、抵抗してもらわなきゃ……)
杏「小山、行くぞ」
柚子「はいっ……!」
杏「突撃!」
エリカ「……」
エリカ「確かに、あの薄さは罠の匂いがするけど……」
エリカ「西住流は、真正面から多少の困難をねじ伏せるパワーだってあるけれども!」
カチューシャ「はあ!? こっちぃ!?」
エリカ「何でわざわざあんな分厚い所を……!」
杏「西住ちゃん、いいから展開して」
みほ「気をつけて……!」
エリカ「ちっ、あいつらムカつくからやられてほしいけど、そうも言ってられないわね」
エリカ「ただでさえ人数が不利なのに敢えて茨の道を行こうっていうアンタの手腕、見せてもらうわ」
杏『いやー、ごめーん』
杏『2輌しかやっつけられてないのにやられちゃった』
杏『……あと、よろしくね』
みほ「わかりました」
みほ「ありがとうございます」
桃『頼んだぞ、西住っ!』
柚子『お願いねっ!』
エリカ「……」
みほ「この窪地を脱出します!」
みほ「全車あんこうについてきてください!!」
エリカ「……アンタが黒森峰よりこっちを取ったことは、まあ、こう、受け入れるとしてもよ」
エリカ「明らかに悪役だったはずのアイツら相手に、なんでそんな表情出来るのよ」
エリカ「……アンタ、そんな風に想いを背負ってくれたこと、黒森峰ではなかったじゃない」
エリカ「……」
エリカ(それとも……私に見えてなかっただけとでもいいたいの……?)
エリカ「……ちっ」
エリカ「やっぱり、この環境はいらつくわね」
エリカ「さっさと終わらせるわよ!」
エリカ「ああ、もうっ!」
エリカ「フェイント入るしブンブン振られるし、最悪の気分だわっ!」
麻子「……」
エリカ「……」
エリカ(でも、いつの間にか、私が助力して慣性に抵抗しなくてもフェイントを完全に使いこなすようになってる……)
エリカ(それに、他の連中も、全員ついてきてる……)
エリカ(才能? 士気の高さ? それとも、あの子の指導が上手いっていうの……?)
バババババババ
エリカ「……」
エリカ「人の怪我には人一倍五月蝿いくせに、自分は機銃が飛び交ってても平然と上半身を出す所は変わらないのね」
みほ「この暗さに紛れるため、出来るだけ撃ち返さないで!」
エリカ「西住流にあるまじき邪道な奇手を思いつくのも変わらず、か」
エリカ(……違うとすれば、その奇手を周りが受け入れるかどうか、か……)
沙織「それにしても、予想以上にあっさりと抜け出せたね」
沙織「まるで両思いの合コンみたい……」
エリカ「あのチビッ子、戦術家としては有能だけど、前線に立つのに向いてないのよ」
エリカ「圧倒的優位ですぐに慢心するわ、ツメが甘く得物を前に舌舐めずりするわ、現場に出るには二流と言わざるを得ないわね」
エリカ「一流というのは、隊長のように常に油断せず、驕らず、勝利が決定する瞬間まで勝利を確信し気を緩めない人のことを言うのよ」 フフン
麻子「……」
優花里「さっき偵察に行っていて知ったんですけど、どうやら今年のプラウダには優秀な偵察兵がいるようでして……」
優花里「こちらの人数や場所を的確に把握し、隊長達に伝達していたらしいんです」
沙織「そっか、だからさっきもあんなに的確に追い込まれてたんだ……」
華「でも、それならば、何故今はこうも容易く……?」
優花里「どうやらファインディング・コンピューターの異名を持つその人は、高度な計算の末に相手の居場所を割り出すため……」
優花里「30分以上試合をすると知恵熱を出しポンコツ化するんだそうです」
エリカ「なによそのMe以下の低スペックコンピューターは」
沙織「でも大丈夫なのかなー、こんな寒いのに熱まで出すなんて」
優花里「まあ、元々車外活動メインだったから彼女がいなくても戦車の運用は出来るんでしょうし、大人しく医務室に行ってると思いますよ」
優花里「おかげでこうして戦線を離れてフラッグ車を叩きにいけますし、今は同情ばかりしていられませんっ」
エリカ「しかしまあ、そんなやつを抱えてるのに猶予与えるとか、いよいよ持って舐めプの極地ね……」
エリカ「後悔させてやらなくちゃいけなんじゃないの?」
みほ「……」
みほ「相手の居場所、か……」
みほ「……」
みほ「ゆかりさん、もう一度偵察に出てくれる?」
優花里「……!」
優花里「はいっ喜んで!」
優花里「はあーーーーっ!」 シュバッ
エリカ「うおっ、いつもの2倍のジャンプと3倍の回転ッッ」
優花里「どこか高い所は……っと」 トテトテ
優花里「あっ!」
優花里「発見しました!」
優花里「あちらの角で、冬のナマズのようにおとなしくしています!」
エリカ「わかってるとは思うけど……」
エリカ「問題はここからよ」
エリカ「あのチビっ子大好きなスナイパーをはじめ、向こうは伊達で四強をしてるわけじゃあない」
エリカ「腐っても黒森峰にラッキーパンチを当てるだけの戦車と技量を持っている」
エリカ「そんな相手に、こっちはとっくにフラッグ車を見付かってるのよ」
エリカ「……こっからが正念場ね」
梓『うさぎチーム、走行不能!』
エリカ「!」
みほ「!」
沙織「みんな大丈夫!?」
ウサギさんチーム『大丈夫でーす』
あや『メガネ割れちゃったけど大丈夫でーす』
梓『カモさん、アヒルさんをお願いします!!』
ソド子『了解!』
エリカ「……」
エリカ「最初はあれだけ戦車道をナメてるとしか思えなかった、あの連中が……」
エリカ「この短期間で、人は変わるものね……」
エリカ「……」
エリカ(もしかしたら、私も――――)
エリカ「……」
エリカ「ふん、くだらないことを考えたわ」
エリカ「ほら、加速するわよ!」
エリカ「あと盾は一枚だけ」
エリカ「さっさと落として終わらせるわ!」
Ⅳ号戦車になったことで、見えてきたことがある。
……ずっとあの子にムカついてて、隊長に並び立てる存在だと分かっていたけど受け入れることが出来なかった。
はっきり言って、今のあの子を見下してる。
でも――
見下すようになって、初めて分かったことがある。
見上げていると認めたくなくて、目を背けていたから気付けなかったことが。
エリカ「やっぱり――――アンタは強いし、上手いわよ。癪だけど」
でもそれは、“黒森峰の強さ”でも、“西住流の強さ”でも無い。
優花里『近付いてきます!』
見下せるようになった今だから言える。
アンタは確かに黒森峰に必要だったし、隊長の右腕に相応しかったんだと思う。
でも、それは、アンタが黒森峰や西住流とは違う強さを持っていたから。
隊長が体現する強い西住流は、100の力を持つ選手を束ね、そして100の力を発揮できるよう纏め上げて指示を出す。
でもあの子は、そうじゃない。
10のポテンシャルの子を、20や30に引き上げるのを得意としている。
だからこそ、隊長の右腕だったんだ。
隊長にないスキルを持っていたから。
足りない所を補い合える相棒だったから。
隊長と同じ道を選び、そしてまだ背中に追いつけていない私では、敵わないのも当然だろう。
だが――――
エリカ「それがどうしたっていうのよッッ」
ああ、ああ、認めるさ。認めてやるとも。
あの子は強い。私にはなく、隊長にすら無い力を持っている。
認めたくない事実だけど。認めたくない力だけど。
でも確実に、彼女には理解しがたいほどのカリスマ性があるのだ。
優花里『来ました!』
さっき、KV2を撃破する直前、砲手に声をかけたように。
粘って負けた車輌の面々と交わした言葉のように。
あんな優しく気遣いのためのやり取りは、私には無理だ。
いや、きっと、黒森峰の全員に無理だ。
出来て当たり前のことなんて、失敗したら責めこそすれど、それをやるためのアドバイスなんてないし、失敗してもフォローなんてしない。
脱落者を労うくらいなら眼の前の敵を叩き潰すことに集中する。
あの子の行動では、黒森峰の副隊長も西住流の後継者も務まるまい。
みほ「撃ち方用意!」
それに、勝利の瞬間を自らの引き金で、というエゴがないのも強い。
そうなれるとは、思わないけど。
でも、もしその生っちょろいスタイルで、プラウダに勝つようなことがあれば。
あのエゴ丸出しで、全て一人で仕切り、圧倒的なパワーを誇る連中を上手く使役するカチューシャが、真逆の存在であるあの子に敗れるようなら。
あの子が――西住流の対局の存在として、決勝の場に、現れてくれるなら。
エリカ「……変ね、まったく」
エリカ「あの子は嫌いだし、ナメてるところなんて嫌悪すらしているはずなのに」
ズドォォォォォォン
エリカ「どうしてこんなに――――胸が高鳴るのよ」
眠くて何書いてるのかわからなくなってるので寝ます
朝早いので少しだけですが、君の名はの上映が終わる前に終わりたいので頑張って更新します
エリカ「着弾は……同時?」
エリカ「勝敗は――――」
『……大洗女学園の勝利!』
ワァァァァァァァァ
エリカ「……よっし」 グッ
エリカ「……」
エリカ「……いやいやいや、そんな大喜びするもんじゃあないっての」
華「やりましたね!」
沙織「すごーい!」
エリカ「まったく、いちいち大はしゃぎしちゃって」
エリカ「ま、常勝である私達は優勝の瞬間までもあくまでクールに振る舞うのだけれど」 フフン
優花里「すごいです西住殿!」
沙織「やったあ!」 ガバッ
エリカ「ちょ、ば、何抱きついてるのよ!」
エリカ「戦車道は淑女の嗜みなのよ!?」
エリカ「な、なにをそんなベタベタと!!!」
杏「よくやったぞ!」
エリカ「アンタは何なのよもう!」
エリカ「あーいらいらするわ」
カチューシャ「折角方位の一部を薄くして、そこに惹きつけてぶっ叩くつもりだったのに」
カチューシャ「まさか突破できるなんて思わなかったわ」
みほ「私もです」
カチューシャ「は?」
エリカ「ま、あの素人集団で出来るなんて思わなかったでしょうよ」
エリカ「……そのくせに平然と仲間を信じて突破しようとするなんてね……」
エリカ「邪道だけど――認めるわ」
エリカ「あんたのそういうとこを、きっと、隊長は評価していた」
エリカ「あの人は誰より真面目で誰より西住流に忠実に生きているけど、それでも他流派を客観的に評価できる人だったから」
エリカ「多分、見てたら、アンタのことを評価してたと想うわ」
エリカ「でも――」
エリカ「アンタの腕は認めてあげても、絶対に、アンタのことは認めない」
エリカ「私は――――否! 黒森峰は、西住流派は、そんなの絶対認めないッ」
エリカ「決勝戦で、私がアンタを否定してあげるわ」
エリカ「認めたくないから逃げるように払いのけるんじゃあない」
エリカ「認めたうえで、上をいくために、あんたを叩き潰すのよッ」
エリカ「……受け入れちゃえば少しだけスッキリするけど、でもやっぱりまだモヤモヤはするわね」
エリカ「それでもいいわ」
エリカ「やりたいことが出来たんですもの」
エリカ「隊長という背中に追いつきたい」
エリカ「その道程に、越えなきゃいけない大きな壁として、あんたがいるって認めたくなかった」
エリカ「でも、今は」
エリカ「敵に回ってくれたおかげで、認めることが出来る」
エリカ「……楽しみだわ」
エリカ「アンタを、決勝戦で叩き潰すのが」
エリカ「そのために、あのいけ好かない聖グロの連中を叩き潰すのが!」
みほ「たまたま上手くいっただけにすぎません」
みほ「次にやったら――多分勝てません」
カチューシャ「?」
エリカ「そうやって、無自覚に煽るところも、ムカつくだけの謙遜も、相変わらずみたいね」
エリカ「ほんと、心の底から嫌いだわ、あんたのことが」
エリカ「……」
エリカ(だけど、それ以上に――)
エリカ「……」
エリカ「あんたのこと、好きだったのかもしれないわね……」
エリカ「私に無いものを持っていて」
エリカ「隊長の横が誰よりも相応しくて」
エリカ「……アンタがもうちょっと、私の敬愛する西住流の後継者に相応しいヤツだったら、きっと仲良くなれてたでしょうね」
エリカ「いや……」
エリカ「ひょっとすると、少しは、仲が良かったのかもね」
エリカ「私がアンタに、似合ってもいない理想を求めてさえいなければ、今頃は、まだ――」
エリカ「……」
エリカ「さようなら。私が敬愛した隊長の妹さん」
エリカ「さようなら。私が目指した隊長のパートナー」
エリカ「さようなら。親友になれたかもしれなかった人」
エリカ「……さようなら」
エリカ「アンタはもう、この世には実在しない」
エリカ「受け入れたわ」
エリカ「居るのは、認めたくない才能に満ち溢れ、共に歩みたかった道に唾を吐きかけた最大の敵」
エリカ「ナメてかかれるような雑魚なんかじゃない、本気で倒さねばならない宿敵ッ」
エリカ「それでも私は、アンタを認めてなおも認めたくない」
エリカ「私は私の信念のために、アンタを、アンタ達を、見下し続けてやるわッ……」
エリカ「そのためにも――」
エリカ「決勝戦では、圧倒的戦車のスペック差を用いて、情け容赦なく磨り潰すッ」
エリカ「誰より強いアンタを見下すためにッ!」
エリカ「決勝の舞台を、西住みほの公開処刑の場に変えてやるわッ!!」
☆ ★ ☆ ★ ☆
しほ「これより、逸見エリカの公開処刑を始める」
エリカ「えっ」
ワァァァァァァァァ
エリカ「えっ」
しほ「何か、言い残すことはある?」
エリカ「待ってくださ……えっ」
エリカ「何か起きて動かないと思ったら後手に縛られ正座させられ……え???」
しほ「そうね、腹を切るにはロープを切らないといけないわよね」
エリカ「いやその」
しほ「安心しなさい、上手く斬れなくても、きちんと解釈してあげます」
エリカ「お願いします待ってくだs」
しほ「学校中の生徒が観客席から見ているんですよ」
しほ「せめて恥ずかしくのない最期を迎えることを期待しています」
エリカ「話を聞いて」
あまりにも朝が早いのを思い出したので寝ます、申し訳ない……
このペースだと2スレ目行く可能性全然あるし、誰か居ると分かると頑張る可能性が上がるので、スレ埋まるとか気にせず書き込んでくださっていいですよろしくお願いします
逸見エリカさんお誕生日おめでとうございます
ちょっと遅れたけど
投下します
エリカ「あ、あの!」
エリカ「本当に何でこんなことになるか分からないんですけど」
しほ「この期に及んで、何がいけないのかすらわからないとは……」 ハァ
エリカ「ていうか、現代日本で切腹に至ることなんてほぼほぼ0ですよ!?」
しほ「戦車道は、古来より伝わる乙女の道」
しほ「その道には当然、由緒正しき責任のとり方というものがあるのです」
エリカ(くっ……なんて時代錯誤な……)
エリカ(まあ、時代錯誤なほどの伝統が好きで入学したんだけど……)
エリカ(……だから、簡単に伝統を覆せないのは分かっている)
エリカ(それならば!)
エリカ「確かに戦車道という観点から見ればそうかもしれません」
エリカ「ですが!」
エリカ「偉大なる黒森峰にはゲルマンの魂が宿っています!」
エリカ「我が校に眠る魂に背き、日本の伝統にのみ従ってもよいものでしょうか!」
エリカ「ここはドイツの戦車道の文化を参考に……」
しほ「逸見エリカ副隊長」 ギロリ
エリカ「ひっ」 ビクッ
エリカ「は、はい……」
しほ「ここは日本であって、ドイツではありませんよ」
エリカ「分かってますよド畜生」
しほ「ド畜生……?」
エリカ「しまっ……!」
エリカ「ち、ちがうんですこれは……」 アワアワ
エリカ(戦車の時に独り言喋るくせがついちゃったせいで……!)
しほ「……まあいいでしょう」
しほ「我が黒森峰がドイツの文化を取り入れているのは確かです」
しほ「マナーや文化も、一部を取り入れる動きが、過去にもありました」
エリカ「そ、それじゃあ……!」
エリカ(士道不覚悟だかで切腹なんてのは、当時の狂った日本でしかやってなかったはず……!)
しほ「切腹を廃止する流れにも、30年ほど前になったと聞きます」
エリカ(よしッ生き残ったッ)
しほ「代わりにガス室が作られるも、国際大会を出入り禁止にされかけて、慌てて切腹に戻したと聞きます」
エリカ「OG連中アホなんですか?」
しほ「兎に角、そんな理由で切腹に戻ったのです」
しほ「きちんとガス室とかカラーのベンチとかを撤廃しましたアピールのためにバンバン切腹を推奨したともされています」
エリカ「知りたくなかったそんな暗部……」
しほ「本当ならば、貴方には切腹すら生ぬるい」
しほ「それでもこれまでの貢献度を評価して、切腹させてやろうというのです」
しほ「黒森峰の伝統や作法に唾をはきかけ、そして対戦校のフラッグ車にハンバーグをはきかけるような貴女には、本来なら打ち首が――」
エリカ「知りたくなかったそんな暗部」
エリカ「暗部っていうか恥部……」
エリカ(薄々嫌な予感はしてたけど……)
エリカ(この私が……全国大会の場で、そんな失態を……) クラァ
しほ「恥部で言うなら、試合中に胸を始めとする恥部を散々弄ばれていたことも、はっきり言って死に値する蛮行です」
エリカ「うわあなにそれ死にたい」
しほ「普通の神経なら首をつってもおかしくないことをしたと、ようやく自覚したようですね」
エリカ「穴があったら入りたいです……」
しほ「安心しなさい。せめてもの情け」
しほ「肯定に、貴女が入る大きな穴と、名前を刻める石を用意してあります」
しほ「そして、死にたいという願いを叶えられる道具も」
エリカ「……ありがとうございます」
エリカ「割りと本当に、死にたい気分です」
エリカ「こんな戦車道関係者に生き恥を振りまいて……」
エリカ「……プライドが高い方だという自覚もあります」
しほ「……」
しほ(高い“方”程度の認識なのか……)
エリカ「それでもやっぱり――死ねません」
しほ「……死ぬのが怖いのですか?」
エリカ「違います」
エリカ「死ぬのは、そりゃあ、怖くないわけじゃないですけど……」
エリカ「でも」
エリカ「死ぬことなんかより――このまま終わることの方が、ずっと怖い」
しほ「……」
エリカ「私は……」
エリカ「私はまだ、あの子と決着をつけていないッ……!」
しほ「……」
しほ「みほ、ですか」
エリカ「……はい」
エリカ「あの子が逃げ出したからこそ、今私は副隊長の座にいます」
エリカ「……決して実力で就けた地位じゃない」
エリカ「だから、私は勝ちたいんです」
エリカ「一度でいい」
エリカ「あの子に、勝ちたい」
しほ「……」
しほ「その想いの行き着く先が、ハンバーグ嘔吐砲と?」
エリカ「眉間の皺がとんでもないことになってますし全然違います」
しほ「そもそも、いつの間にか戦車道に復帰し、あの子を認めるわけではありません」
しほ「むしろ、あの西住流と掛け離れた試合運びには、失望すらします」
しほ「そんなあの子の影響を受けたというのなら、破門お已む無しでしょう」
エリカ「……ッ」
エリカ(普段の厳格で恐ろしい師範とは違う……)
エリカ(時折見せる、厳しい中にも優しさがある師範とも違う……)
エリカ(愛する門下生に、身内に向けるものとは違う、余所行きの顔……)
エリカ(冷徹で他人行儀な、縁を切るべき相手に向けられる言葉……)
エリカ(見も毛もよだつ。ぞっとする。吐きそうだわ)
エリカ(でも)
エリカ「お言葉ですが……」
エリカ「あの子に負けたくない、という意味では、確かに意識をしています」
エリカ「きっと、出会った時からそうだと思います」
エリカ「でも……」
エリカ「私が西住流を捨て、邪道に走ることなんてありません」
エリカ(ああ。そうよ)
エリカ(実力じゃあ、遠く及ばなくても9
エリカ(血がつながっていなくとも)
エリカ(例え、周りになんと言われようとも)
エリカ「私は、黒森峰の副隊長にして、誇り高き西住流の門下生」
エリカ「私の道は、後にも先にも、この道だけですッ……!」
しほ「……」
しほ「西住流の看板を背負い、黒森峰のパンツァージャケットを着る以上、伝統からは逃れられない」
しほ「腹を切らずに終わりにはなりません」
しほ「……しかし」
しほ「もしも、パンツァージャケットを脱ぎ捨て、黒森峰の戦車道と関わりを絶つというのなら、特別に許すつもりでした」
エリカ「……」
しほ「腹を切るか、黒森峰の戦車道を諦めるか」
しほ「2つに1つ」
エリカ「……」
エリカ「……腹を切るか、戦車道をやめるかすれば、許していただけるんですね?」
しほ「ええ」
しほ「戦車乗りに二言なし」
しほ「素直に戦車を降りるのなら、醜態を全て水に流し、学内で会っても微笑みくらい浮かべましょう」
エリカ「分かりました」
エリカ「……このお腹、切らせて頂きます」
しほ「なっ……!」
エリカ「よかったです……“腹を切って死ぬ”ことが条件じゃなくて」
エリカ「腹を切りさえすれば、許してもらえるんですよね」
しほ「……」
しほ「これだけの観客がいるのです、軽く先端を刺す程度では、収まりませんょ」
エリカ「……でしょうね」
エリカ「それでも――」
エリカ「お腹を切っても、生き残る可能性はあります」
しほ「……戦車を降りれば、その確率は100%」
しほ「それでもなお、腹を切ると?」
エリカ「……死にますよ」
エリカ「西住流を追い出され、戦車に乗れなくなった日には、“逸見エリカ”は死んでしまいます」
エリカ「西住流も戦車道も、そして黒森峰も、“逸見エリカ”が生きていくのには必要不可欠なんです」
エリカ「だから――切ります」
エリカ「“生きる”ためにッ」
マッターーー!!
しほ「!?」
観客「あれは……」
まほ「黒森峰戦車道チーム、西住まほ」
小梅「同じく、赤星小梅!」
まほ「逸見エリカの助命の単願に参りました」
しほ「……」
まほ「本当は分かっていらっしゃるのでしょう?」
まほ「エリカが、誰よりも――」
まほ「下手をすれば、すでに指導の立場にいるような西住流の者よりも、西住流を体現しようとしていることを」
まほ「そして、彼女の力が、黒森峰の捲土重来には必要であるということを」
しほ「……」
しほ「物事には、責任が生じるものよ」
しほ「そして、それは誰かが取らねばならない」
しほ「……副隊長を失うのが痛手だからと、隊長を失うような愚行を犯させるつもりはないわ」
まほ「……そうでしょうね」
まほ「誰かが責任を取らねばならない」
まほ「とはいえ、私が責任を取るわけにもいかないでしょう」
まほ「かといって、誰かに責任を取れと言うことは、出来ませんでした」
まほ「だから、到着が遅れました」
小梅「……私でよければ、いつでも身代わりになります」
小梅「元より、最初に黒森峰に泥を塗ったのは私ですから」
小梅「それと――」
逸見車装填手「逸見さん!」
逸見車通信手「こうなったのは、私達のせいだもの……」
逸見車砲手「貴女一人に責任をおっかぶせるわけにはいかないわよね!」
逸見車操縦手「責任なら、私達が」
エリカ「貴女達……」
まほ「それに、これには已むを得ない事情があります」
まほ「本来なら、隠したかったかもしれないが――全員揃って戦うためだ」
まほ「……話してしまってもいいか?」
エリカ「……」
エリカ「はい」
まほ「……すまないな」
しほ「……その事情とやらを、一応、聞いてあげましょう」
まほ「ありがとうございます」
まほ「聞いて下さい。エリカの、病気についてを――」
エリカの処刑までは終わらせたかったんですが、眠気がピークなのともうちょっとかかりそうなので、おとなしく投下を終わります
申し訳ない
寝るまでですが投下します
まほ「……と、いうことなのです」
しほ「なるほど」
しほ「何かの病気なのか、ある日突然、意識を失ってしまうことがあると」
まほ「はい」
しほ「その際は呼吸も止まり、自らの意思では動けなくなると」
まほ「はい」
しほ「そして、そのときに体を弄られると、それに沿って行動してしまう……と」
まほ「はい」
まほ「恐らく体に刺激が加わることで、特定の反射行動に至るものかと」
しほ「……」
しほ「正気……?」
エリカ(かつて見たことがないくらい困ったような顔をしているし、素で困ってる……)
まほ「ええ、我々は本気です」
まほ「……私が、こんな場面でくだらない嘘を吐いたりはしないことを、ご存知でしょう」
しほ「……そうね」
しほ「そもそもこんな意味の分からないことを言い出すようでもなかったのだけれど……」
エリカ(未だかつて見たことないくらい弱々しくなってる……)
まほ「それに、嘘をつくならもう少しマシな嘘をつきます」
まほ「それこそが、この信じがたい話が本当だという根拠です」
しほ「なるほ……うーん…………?」
エリカ(めちゃくちゃ困ってる……)
まほ「……それでも信用出来ないというのなら、時間を下さい」
まほ「また発症したときに、その姿をお見せいたします」
エリカ「えっ」
しほ「……」
しほ(見せられても困る……)
しほ「まあいいでしょう」
しほ「切腹は文化とはいえ、大事な準決勝前に流血を見て気分を悪くする選手に出られても困る」
しほ「電気椅子が届かなかったが故に、何らかの処分が必要と考え切腹と戦車道をやめるとで二択を迫るつもりでしたが……」
しほ「真偽が分かるまでの謹慎とします」
まほ「よかった……」
エリカ「……」
エリカ「隊長、ありがとうございます」
エリカ「……」
エリカ「ですが――」
エリカ「謹慎を食らうくらいならば、やっぱり、腹を切ります」
まほ「なっ!?」
しほ「!?」
エリカ「私はまだ、泥を塗った汚名を挽回していません」
エリカ「何も、この大会で役に立てていない」
エリカ「次の聖グロリアーナとの戦いは、私にとって、隊長の横で戦うためには避けては通れないんですッ……」
エリカ「意地でも、その試合から降ろされるわけにはいきませんッ」
しほ「……」
逸見車砲手「き、謹慎なら、代わりに私達が!」
逸見車操縦手「そうですよ!」
逸見車操縦手「結果的に邪道をしてしまったのは、私達のせいなんですし……」
エリカ「あ、あんたたち……」
逸見車通信手「私達が乳首のイグニッションを入れなければこんなことにはなってなかったんです……」
逸見車装填手「責任をおうべきは、乳首ッションを入れた私達です!」
逸見車砲手「乳首を攻められた逸見さんは、むしろ被害者なんです!」
逸見操縦手「乳首ッションの責任は、私達が!」
エリカ「あ、あんたたち……」
まほ「一瞬にして同じ言葉に込められるニュアンスが変わったな……」
しほ(頭が痛くなってきた……)
小梅「そういうことなら、責任は私にもあります」
小梅「情報を隠していました」
まほ「それに、エリカ抜きで早々に決着をつけられなかったことも、恥という点では同じ」
エリカ「赤星……隊長……」
逸見車砲手「謹慎が必要なら、私がやります」
逸見車操縦手「足りないなら、車の他のメンバーが謹慎をします!!」
逸見車通信手「私達だって、同じ戦車に乗って、命を預けあってるんです」
逸見車通信手「このくらいは……!」
逸見車装填手「その代わり、逸見さんは、試合に出してあげてください」
逸見車装填手「人間性は最低だけど、その指示の的確さは誰もが認めるところです」
逸見車装填手「きっと、他の戦車で指示を出すだけでも、役に立ってご覧に入れます!」
エリカ「みんな……」
しほ「……」
小梅「折角だし、一緒に乗る?」
黒星「うちならいつでも歓迎しますよ」
ブロッケン「お前らばかりにいい格好させるかよ」
まほ「これが友情パワーか……」
まほ「何もしない、というわけにはいかないことは分かります」
まほ「ですが、彼女達はこう言っています」
まほ「それならば、黒森峰のためにも、提案を受け入れるべきではないでしょうか」
しほ「……」
しほ「分かりました」
しほ「その代わり、次の聖グロリアーナ戦で無様を晒した日には――」
エリカ「……分かっています」
エリカ「そのときには、戦車道であろうと命であろうと、棄てられるもの全てを棄てて償います……!」
まほ「エリカ……」
小梅「よかったね、逸見さん」
直下「同乗メンバーが処分を受けたことで、観客たちもさほど文句や野次を飛ばしてこなかったしね」
エリカ「ええ」
エリカ「……」
エリカ(あまり普段口を効かない連中だけど……)
エリカ(いい子たち、なのかもしれないわね……)
まほ「しかし……大丈夫なのか?」
エリカ「あれほど大口を叩いて……ということですか?」
エリカ「大丈夫です」
エリカ「……勿論、100%の保証なんてありません」
エリカ「でも私は、120%役に立てると豪語できる私でありたい」
エリカ「安定して勝利する、強い黒森峰の一員でありたいッ」
まほ「エリカ……」
エリカ「だから隊長も、見ていて下さい!」
エリカ「普段と違うチームの戦車に混ざっても、絶対、役に立って見せますから!」
まほ「……」
まほ「そうじゃなくて、病気が発症しないのか?ということなんだが……」
エリカ「…………」
エリカ「!!!!!」
まほ「失念していたのか……」
寝落ちしそうなので中断します
すでに眠たいのですが、エタりたくないのでちょっとでも投下します
エリカ「そ、それは、その、だ、大丈夫ですよ!」
エリカ「ほら、その、なんていうか……」
エリカ「絶対にならないぞー的な、そういう、気合的なやつで、こう、ほら!!」
小梅「わぁ、ふわっふわした対策」
まほ「それだと今までは病気にならないように気合を入れてなかったように聞こえるが……」
エリカ「そ、そんなことは……」 アタフタ
エリカ「と、とにかく、なんとかします」
エリカ「それだけは……絶対に」
エリカ「命にかえてもッ……」
ブロッケンJr「はっはー、よく言った!」 バシバシ
直下「最近アレだったけど、やっぱり副隊長様は根拠がなくても偉そうに自信満々じゃないと調子でないもんねぇ」
小梅「うん、みんなでサポートするし、聖グロ戦、絶対に勝とうね!!」
エリカ「」
小梅「……?」
小梅「逸見さん?」
エリカ「……った」
まほ「ん?」
エリカ「刺さった……」
まほ「????????」
エリカ「どこかのアホが背中叩いた時に、さ、刺さったあああああああああナイフぁああああああああああ!!!」
小梅「うえええええええええええええええええええ!!???」
まほ「な、なんでずっと腹につきつけてたんだ!!!」
エリカ「だ、だだだだって、覚悟示す場面だし、こう、見栄えっていうか見えっていうか……」
直下「痛くないの、それ……?」
エリカ「ちょ、言われたら痛くなってきたじゃないの!!」
まほ「ああ待てエリカ、抜くな、抜いたら血が出るかもしれない!」
まほ「ど、どうすればいいのか、ここはこういう場に慣れているであろう責任者に指示を――」
しほ「……」
まほ「うわぁマジで刺すのかよ引くわみたいな顔してるーーーーーーーーーーーっ」 ガビーン
エリカ「うおおおおおお……」
エリカ「あ、あの、お腹ちょっと切れたし、やっぱりさっきの処分はなしには……」
しほ「……」
しほ「もうちょっと潔かったならともかく、そこまで喚かれたうえに自ら無様に嘆願をされても……」
エリカ「ううううう……」
エリカ(こ、こんな理不尽な痛みに襲われるなら、いっそ草や木に生まれたかった……!)
エリカ(特殊カーボンのコーティングが恋しいっ……!)
☆ ★ ☆ ★ ☆
エリカ「……確かに、ナイフじゃ傷つかない特殊カーボンを羨んだけど……」
エリカ「別にまた入れ替わりたいってわけじゃなかったのに……」
エリカ「……はあ」
エリカ「当然試合なんてあるわけないし、授業か放課後まで暇そうね……」
エリカ「朝練とかしてるのかしら……」
エリカ「……」
エリカ「うう、今は傷なんてない体なのに、お腹がじんじんする気がする……」
ガラガラガラガラ
エリカ「……っと、自動車部の連中かしら?」
みほ「……おはようございます」
エリカ「……っ!」
沙織「ほんとに毎朝挨拶してるんだ!」
みほ「うん……そうすれば、またお話出来るかもって」
エリカ「……」
エリカ(あれ……アンツィオん時に使ってた盗聴用の……)
優花里「うう、私もⅣ号とお喋りしてみたかったです……」
エリカ(願い下げだわ)
みほ「……」
みほ「本当は、ちょとだけ、自分一人の秘密にしようかな、なんて思っちゃったりもしたんだ」
みほ「だけど……」
みほ「私にとって戦車は、嫌いになったはずなのにやっぱりどこか傍にいると安心しちゃう、大切な存在だから……」
みほ「同じくらい大切な友達にも、紹介したいなって」
麻子「いい話風にしてるけど、字面だけ聞くとホラーだな」
沙織「もう、麻子!」
麻子「……まあ、聞こえないだけで、何か喋っていてもおかしくはないと思うけどな」
麻子「無性に蹴りを入れたくことがあるしな」
沙織「なにそれこわい」
みほ「……これからもきっと、戦車に語りかけちゃったりするんだろうな、なんて思うんだけど、でも……」
みほ「前を向くために、一旦お別れ」
みほ「うつむいて、戦車を見ることしかできなかった昔とは違うから……」
みほ「顔をあげて、みんなのことを見ながら、お姉ちゃんたちに、勝たなくちゃいけないから……」
みほ「もう、聞こえるかも分からない声に固執したりしない」
みほ「そんなことで、あれこれ考えて泥沼にハマったりもしない」
みほ「聞こえなくたって、傍にいてくれるだから」
みほ「だから――」
みほ「集中して、決勝戦――そこに、全てを賭けますッ」
沙織「……うん! そうだね、みぽりん!」
華「お話に拘らなくても、絆は深まっていきますしね」
麻子「……寝るか、今から。全員戦車で」
沙織「もー麻子!」
優花里「戦車を愛する気持ち、よくわかります!!」
優花里「でもだからこそ、愛しているからこそ、少し距離を取ることも大事ですもんねえ」
突然眠気がマシましなので寝ます。遅筆で申し訳ない
ちまちまいきます
エリカ「……」
エリカ(ほーんと、ムカつくくらい、いい顔するようになっちゃって)
エリカ「……」
エリカ(……アンタが前向きになって能動的に動くようになったら凄いことは、誰より肌で感じていた)
エリカ(ついぞその姿を見ることはなかったけど)
エリカ「……」
エリカ(西住流を捨て、アンタだけの力を得た……)
エリカ(きっと、みんな驚くだろうけど……)
エリカ(それも試合が始まってからすぐだけことッ)
エリカ(所詮西住流の敵ではないことは、私が証明してあげるわっ……!)
小梅「あのー」
しほ「っ!」 ビクゥ
しほ「……何か」
小梅「ああ、その……」
小梅「昨日色々あって、大事を取って保健室で寝ていた逸見さんですけど……」
しほ「……彼女が目を?」
小梅「ああ、いえ」
小梅「心臓が止まりました」
しほ「…………」
しほ「?????????????????」
小梅「驚かれているでしょうが、最初だけです。すぐに慣れますよ」
しほ「いや、心臓……え?」
小梅「例の病気の最中の逸見さんをお見せしようと想いまして……」
しほ「……」
しほ「わかりました。では今すぐ保健室に……」
小梅「ああ、いえ、お手を煩わせるまでもありません」
小梅「隊長がここに乗ってきてます」
しほ「そう……」
しほ「しかし仮にも腹部に傷を負ったモノを連れてくるのは――――」
しほ「……」
しほ「“乗って”きて……?」
小梅「はい。“乗って”きてます」
まほ「失礼します」 ガラッ
エリカ「ドゥルン」
しほ「」
しほ「何を遊んで……」
まほ「……触ってください」
フヨン
しほ「……意外とある……」
しほ「ではなく!」
しほ「ほ、本当に止まっている……!?」
しほ「し、心臓マッサージ……いやでもこうして立って……!?」
まほ「これが、かつて私達が心臓マッサージをしようとした結果判明したエリカの症状です」
小梅「胸をこうやって押すと……」 グッ
エリカ「ズドォォォォォォン」 ハンバァァァァァァグ
まほ「ハンバーグが射出されます」
しほ「ハンバーグという名詞に射出という動詞を使う日がくるなんて……」 クラクラ
まほ「まだまだあります」
しほ「え……」
まほ「……ここまで来て、中途半端に隠し立てをしても、逆効果です」
まほ「全てをお伝えします」
しほ「……」
しほ(頭が痛くなってきた……)
沙織「みぽりんも、戦車とばっかイチャイチャしてないで、ちゃんと男の子とイチャイチャしなくちゃだめだよー?」
エリカ「んなっ……!」
エリカ(しまった、思わず声が……)
みほ「あはは……でも、今は、戦車道が楽しいから」
エリカ「……」
エリカ「ほっ……脳味噌ゆるふわ達と話すためヘッドホン外してくれてたのね……」
沙織「たまには趣味以外にも目を向けないと、男の子だって寂しがっちゃうんだよ!」
華「とても彼氏がおらず無線の勉強に打ち込んでる人間の言葉とは――」
沙織「も、もー!」
優花里「大体欲しくもないのに無理して作るものじゃありませんよ!」
麻子「まったくだ。いい加減諦めたらどうだ」
沙織「やーだー! あーきーらーめーなーいー!」 プップクプー
麻子「まったく……」
沙織「ぜーったい、いい男振り向かせちゃうんだから!」
みほ「あはは……」
優花里「……」
優花里「西住殿は……」
優花里「男性よりも、お母様とお姉さん、ですよね」
みほ「えっ」
優花里「振り向かせたいのは」
エリカ「何言ってんのよこのモジャ毛!」
エリカ「そいつは……その家族や私達を捨てて、ここに居るのよ」
小梅「こうやって一口ハンバーグを食べさせることによって、逸見砲の装填が可能です」
しほ「…………」
しほ「一つ、言わせてもらうわ」
まほ「……はい」
しほ「正気???????????」
しほ「貴女達、正気??????????????????????」
小梅「……はい」
まほ「勿論です」
エリカ「ドゥルン」
しほ「どうしても、おちょくられているんじゃないかという気持ちになるのだけれど」
小梅「そ、そんなことはありません!」
小梅「それに……」
小梅「それに逸見さんは、誰よりも“西住”を敬愛し、拘っています!」
小梅「認めてもらいたい人の前で、認めてもらいたい人を相手にバカにするはずがありません」
しほ「……」
しほ(バカにしてるわけじゃない方が問題よね、ドゥルンドゥルン言いながらハンバーグを吐き出すって……)
みほ「……」
優花里「……すみません出過ぎた真似をしました」
みほ「……ううん」
みほ「多分、それは……その通りだから」
エリカ「あんた……」
みほ「でも……」
みほ「それは無理って……分かってて」
みほ「お母さんもお姉ちゃんも、立派な“西住流”だから」
みほ「今の私じゃ、きっと――振り向いてなんて貰えないし、認められるわけがない」
エリカ「……」
エリカ「何よ、分かってるんじゃない……」
エリカ(それなのに、それでも、あんたは――)
まほ「生物とは、何らかの力をその身に受けると、反射という動作を行います」
まほ「例えばボールが顔めがけて飛んできたら目をつぶったり」
まほ「頬を叩かれたあとは思わずそこを抑えたり」
まほ「熱いものを触ると、反射的に手を引っ込めるのもそうでしょう」
しほ「……それは分かります」
まほ「エリカのも、それと同じだと想われます」
まほ「乳首を触れると、反射的にイグニッションが入る」
まほ「胸部を押すと、口からハンバーグを射出する」
まほ「これらは、そんな反射と一緒です」
しほ「もうわからない」
しほ「意識がないのでしょう?」
まほ「はい。ですがエリカの場合、肉体に直接触れられています」
まほ「一箇所に力が加われば、それにつられて体全体が動いてしまうものですし、それも一種の反射ではないでしょうか」
しほ「……」
しほ(分からない……)
しほ(言っていることもだけど、それ以上に自分の娘が分からない……)
しほ(一体どうしちゃったというの……)
しほ(反抗期にしてもアクロバティックすぎるわ……)
しほ(なんか今だと相対的にマシなみほを笑って許せてしまいそうだわ……)
しほ(厳格な組織の長として非情な決断を貫くためにも、試合を目の当たりにして破門の意思をもう一回固めないとマズイ……マズイわこれ……)
しほ(っていうか誰か助けて……)
みほ「でも……」
みほ「せめて、見てほしいなって」
エリカ「……え?」
みほ「私はきっと、お母さんが望んでた通りに育つことができなかったから……」
みほ「期待を、裏切っちゃったから」
みほ「だから、認めてなんてこと、言えないけど……」
みほ「でも……」
みほ「せめて、見てほしい」
エリカ「……」
みほ「お母さんの期待に添えなかった私だけど……」
みほ「それでも、私が選んだ戦車道を、見てほしい」
みほ「そんな私を、認めてくれたみんなのことを見てほしい」
みほ「その結果認められないのは、悲しいけど……でも……」
みほ「せめて……私はここで自分の戦車道を見つけて、幸せだよってことを言いたい……」
優花里「西住殿……」
しほ「貴女の主張はよくわかったわ」
しほ「ですが――信じるのは無理」
しほ「いやさすがに無理無理意味わからないって」
まほ「厳しくも礼儀正しい外面崩れてきてますよ」
しほ「…………コホン」
しほ「まあ、設定の壮大さはプロレベル。しかし話は人をバカにしているとしか思えない」
しほ「一言で言うなら、ありえない――ね」
まほ「……」
しほ「常識で考えて、人間が心停止して乳首でイグニッションするなんて、ありえない」
小梅「お、お言葉ですがっ!」
小梅「信じがたい現実にも目を向け、認めることも必要ではないでしょうかっ!」
しほ「……」
しほ「私が意固地になって現実を見ていないとでも?」 ギロリ
小梅「うっ……」 ビクッ
まほ「……」
まほ「よく考えて下さい」
まほ「さほどメリットもないのに、心停止したフリをして乳首を弄らせ振動しながらハンバーグを吐き出すというのも、大概ありえないことです」
しほ「……たしかに」
まほ「嘘でも真でも、どちらもありえないこと」
しほ「……なるほど」
まほ「で、あれば、実際に脈拍が確認できない“真”であるという方が、微差ですが可能性が高いのでは?」
しほ「一理あるわね……」
小梅(……鋼の心にヒビ入ってきてる……)
みほ「それに……」
みほ「前の学校には、みんなみたいな友達はいなかったけど」
みほ「でも――」
みほ「みんなみたいな友達になりたかった人なら、いたから」
みほ「私は、求められてる姿になれなくて、ぶつけられた感情に曖昧な笑みでしか答えられなかったけど……」
みほ「今ならきっと、まっすぐに想いを伝えられるから」
みほ「だから――」
みほ「勝ちたい」
みほ「みんなのおかげで見つけられた、私の戦車道で」
エリカ「……」
沙織「うん、そうだよね、勝とう!」
麻子「当然だ」
華「あの喫茶店にいた目つきの悪い方にも、謝りたくなるくらいの実力を見せてあげなくては」
優花里「我々は、西住殿にどこまでもついていきますよ!」
みほ「ありがとう、みんな……」
みほ「それに……」 ナデッ
エリカ「んっ……」
みほ「大切な、私のパートナー」
優花里「私たちにとっても大切な、6人目のあんこうチームですね!」
沙織「そんな道具なんかなくったって、Ⅳ号のことならもうあらかた分かっちゃったり」
華「恋愛と絡めなくてもいいですからね?」
沙織「あーっ、まだ言ってないのにー!」
麻子「……次で最後だ」
麻子「悔いのないように、コイツも動かしてやる」
みほ「はい! お願いしますっ!」
エリカ「……」
しほ「……未だに釈然とはしませんが、いいでしょう」
しほ「処分は。逸見車メンバーの準決勝謹慎のみに留めるよう、話を進めます」
まほ「ありがとうございます」
しほ「……ここからは、厳格な指導者でなく、貴女の母として言うわ」
まほ「……はい」
しほ「貴女がそこまでするなんて、正直思ってもみなかったわ」
まほ「……」
しほ「……何か病気に対抗する策がないか調べておくわ」
しほ「だから――きちんと準決勝で、その子の有能さをサイドアピールしなさい」
しほ「彼女が貴女を生かすように、貴女もまた彼女を生かすのよ」
まほ「……はい」
しほ「……特定の誰かを贔屓して采配を振るえなんて、指導者としては当然言わない」
しほ「その子の魅力を殺してでも絶対に勝て、と言いたいわ」
しほ「でも――」
しほ「その子が誰より西住流に真摯なことは、私だって知っているもの」
しほ「……そんな子の今回の大会を、無様な邪道の記憶だけにしてはだめよ」
しほ「貴女を慕う、次期隊長なのだから」
まほ「……ええ」
エリカ「……」
エリカ「不思議ね」
エリカ「色々と満足したからか、敵に回ると決めたからか……」
エリカ「ホント、素直に自分の気持ちを認める事ができる」
エリカ「……」
エリカ「私も、アンタや隊長に――西住流に“私”を見てほしかった」
エリカ「とうとう最後まで、アンタには見て貰えなかったけど」
エリカ「でも……」
エリカ「私もアンタを見て来てなかったのよね……」
エリカ「……」
エリカ「……このクソムカつく入れ替わりのおかげで……」
エリカ「あんたのこと、少し理解できた気がする……」
エリカ「やっぱり、相容れないとは思うけど」
エリカ「それでも――――知れてよかったわ」
エリカ「Ⅳ号としての偽りのチームメイトだったけど、それでも楽しかった」
エリカ「けれども、それはただの夢よ」
エリカ「私はⅣ号戦車じゃない」
エリカ「例え精神が入れ替わろうと、私はⅣ号戦車じゃない」
エリカ「私は“逸見エリカ”なの」
エリカ「だから……」
エリカ「……」
エリカ「Ⅳ号の中、折角慣れてきた所だけど――」
エリカ「サヨナラね」
エリカ「今度は――逸見エリカとして、アンタの前に立ちはだかるから」
エリカ「アンタはせいぜい、本来の仲間である“Ⅳ号戦車”と絆を深めるといいわ」
エリカ「……」
エリカ「さよなら」
☆ ★ ☆ ★ ☆
エリカ「ん……」
エリカ「ここは……」
エリカ(保健室?)
エリカ(そっか、お腹切ったから、一応寝かせられたのね……)
ガラ
まほ「む、起きていたか」
エリカ「あ、お早うございます隊長」
エリカ「今丁度起きたところです」
まほ「ふむ……」
まほ「いいニュースと悪いニュースとめざましテレビのニュースがある」
まほ「どれから聞きたい?」
エリカ「最後のやつ選択肢にいります?」
まほ「希望がないなら適当にこちらで順番を決めるが」
エリカ「あ、ちょっと待って下さい」
エリカ「まあ、こういう時、相手に決めさせるとどっちも碌でもないニュースってオチ見えてますから……」
まほ「あー、悪いニュースかと思っていいニュースを聞いたら『今のがいいニュースだ』と言われるやつか」
まほ「安心しろ、ちゃんと片方は朗報だ」
エリカ「それでも悪いニュースからお願いします」
エリカ「いいニュースを覆すような嫌な話かもしれませんし、嫌なことは最初に処理しておきたいので」
まほ「そうか」
まほ「じゃあまず悪いニュースだが、お母様がエリカの病気の姿を見た」
エリカ「まあ、でしょうね」
まほ「ドン引きしていた」
エリカ「あまりにも簡潔でただただ恐怖を掻き立てられる表現恐ろしすぎるんですけど」
まほ「乳首ッションいじりすぎて色々暴走したのか、こう、排水までしはじめたからな……」
エリカ「はァ!?」
エリカ「うわっ、今気付いたけどノーパ……ええええええええ!?」
まほ「新機能の判明だな、おめでとう……」
エリカ「隊長じゃなくて赤星だったら何が目出度いって言いながら掴みかかったような内容ですけどありがとうございます」
まほ「まあだが、その新機能も使う機会はないだろうがな」
エリカ「まあ、条件がわかったなら二度としないでもらえればいいですしね」
まほ「それもあるが……」
まほ「いいニュースを発表しよう」
まほ「お母様が、色々なコネを使い医師に聞いてくれたんだ」
まほ「やはり、その症状そのままの病気というのはないそうだ」
エリカ「でしょうね……」
まほ「だから――こう言われた」
まほ「何か精神的なものじゃないか、と」
エリカ「……」
エリカ「何だか分からないやつ全部にそう言ってそうなコメントでなんですけど……」
エリカ「でも――ひょっとすると、そうかもしれないですね」
エリカ(戦車の気持ちが分かりたいと、たしかに願った)
エリカ(戦車道を知りたいと、誰よりずっと思っていた)
エリカ(……あの子の本音が聞きたいと、再起してほしいと、ぶつかり合いたいと思ったことだってある)
まほ「……何か心当たりでもあるのか?」
エリカ「いえ……ただ……」
エリカ(もしも私の願いが原因ならば)
エリカ(その願いは、もう、十分叶ったから)
エリカ(もう――満足)
エリカ(だから)
エリカ「それならきっと、もう、あの病気になることはないと思います」
区切りついたので寝ます
戦車戦を描写出来る気しないので聖グロ戦はあっさり進めたいところ
久しぶりに進めます
なんか半年くらい経ちそうですが1周年だけは避けたい
まほ「それは頼もしいな」
まほ「……信頼しているぞ」
エリカ(隊長の期待に、どれだけ応えられているのか分からないけど)
エリカ(でも……)
エリカ(隊長と一緒に戦える最後の夏)
エリカ(受けた恩を隊長に、そして黒森峰に返すためにも、負けられない)
エリカ(ましてや戦車になってましたで意識のないまま参戦するなんて真似は出来ないわっ!) ギリッ
まほ「ああ、それと、もう一つ」
まほ「うちのワンコが、めざましテレビに出たんだ」
まほ「すごいだろう?」
エリカ「は、はあ……」
エリカ(めっっっちゃ嬉しそうな顔……ツッコミづらい……)
まほ「こう、電波に乗って全国に広まるというのは、なんというか、気恥ずかしさやら何やらがあるな」
エリカ「隊長本人はさんざん電波に乗ってるじゃないですか」
まほ「まあそうだが……」
まほ「こう、な?」
まほ「自分と愛犬は違うじゃないか」
小梅「確かに、隊長がニュースに出てインタビュー受けてるのと、逸見さんが喋るわけでもないのに隊長の守護霊いたいな顔してテレビに出てるのとじゃ違いますもんね」
エリカ「……」 チッ
小梅「顔見ただけで舌打ちされた!」 ガーン
エリカ「ここ最近の行いのせいでしょうが」
小梅「でも実際、何で自分のインタビューでもないのに、あんな格好つけて画面には映ってたの?」
エリカ「なっ、いいでしょ別に!」
小梅「いや、気になるなーって」
エリカ「どうだっていいでしょう!」
エリカ「そ、それより隊長の犬の話でしたよね!?」
まほ「む、そうやって話を変えられると、乗ってしまいそうになるな……」
小梅「隊長、わんちゃん飼ってるんですね」
エリカ「わんちゃんて」
まほ「ああ」
まほ「今度見に来るか」
エリカ「!?」
小梅「ええ、いいんですか?」
まほ「ああ」
まほ「可愛らしいし是非見てほしいというのもあるが……」
まほ「私としては、もう少し、我が家に対する敷居を下げてもいいと思っているしな」
エリカ「で、でも、西住流といえば……」
まほ「勿論、“西住流”の厳格さを軽んじるつもりはないさ」
まほ「だが――」
まほ「“ただの西住まほ”として、我が家に友人を呼びたいし、“黒森峰の隊長”としてもっと気軽に西住流に触れてほしいとも思うんだ」
小梅「そういうことなら今度暇なときにでも」
エリカ「ちょ、赤星!」
エリカ「西住流の総本山をそんな近所付き合い感覚で……!」
まほ「……エリカは、来たくないのか」 ショボーン
エリカ「そ、そんなことは!」 アワアワ
エリカ「西住流の、というか隊長のお宅に伺いたいとかそういうことはなくてですね!」 アタフタ
まほ「……」
エリカ「む、むしろ住みたいくらいです!!!」
まほ「それはどうかと思う」
小梅(めっちゃテンパってる……)
エリカ「う、で、でも、そりゃあ、私だって呼んでいただけるなら、その……」 モヂモヂ
小梅「大型犬を学校でも飼ってるだなんて、さすが西住流」
エリカ「おい」
まほ「そうだな」
まほ「たまに他所様に噛み付くが、実は素直でカワイイ犬だ」
エリカ「ちょっ、隊長まで!」
エリカ「……」
エリカ「ちなみにご自宅の犬と学校の犬はどっちの方が……」
まほ「え?」
エリカ「あ、いや、なんでもありません……」
小梅「え、逸見さん、もしかして犬に嫉妬……」
エリカ「だあああああああ! そんなわけないでしょうが!」
エリカ「ほら! 保健室で騒ぐと迷惑だから帰りなさいアンタは!」
小梅「ええー、一番騒がしいのは逸見さんだよ?」
まほ「……ふふ」
エリカ「た、隊長~」
エリカ「笑ってないでコイツになんとか言ってあげてくださいよお」
まほ「……変わったな、二人共」
エリカ「へ?」
まほ「互いに、踏み込めるようになったじゃないか」
まほ「……プライドだったり、自信がなかったり……」
まほ「理由は様々だろうが、どうしても、うちは連携部分が弱いからな」
エリカ「……馴れ合いでは、勝てません」
まほ「当然だ」
まほ「だが――連携なくして、勝てるようなものでもない」
まほ「戦車道は、単なるスポーツでもなければ野蛮な戦争ゲームでもない」
まほ「“人”を作る、華道や茶道に並ぶ“道”だ」
まほ「人を蔑ろにしていいわけがない」
小梅「……」
まほ「……言いたいことは分かるさ」
まほ「許せとも言わない」
まほ「勝たなければ意味がない、という理念を掲げているのは事実だ」
まほ「黒森峰のレギュラーは、レギュラーやレギュラーになれなかった多くの“人”で形成されている」
まほ「勝利という形で応えねばならないし、勝利を蔑ろにするのもまた人を蔑ろにすることに繋がる」
まほ「昨年のことは、何が正しかったのか、明確な答えなんてないだろうし、私だって思うがままに答えられるかはわからない」
まほ「……勝利よりも人を優先する、なんてことに急に方針転換するのも現実的じゃないだろう」
まほ「それでも少しずつでも、変わっていけたらと思う」
まほ「だから――二人が少しでも歩み寄ってくれるのは、とてもうれしい」
エリカ「隊長……」
まほ「それに、黒森峰の生徒とはいえ普通の女子高生だからな」
まほ「気持ちよく戦車道をするには、楽しく日常を送ってもらわねばいけないだろう」
エリカ「私は戦車道があれば毎日気持ちよく過ごせますけど」
小梅「え、でもネットサーフィンとかもしてるし、戦車道だけじゃないよね」
エリカ「まあ、そりゃそうだけど」
小梅「逸見さんのパソコン借りた時ブックマークや履歴見ちゃったけど、結構すごいアレなサイトに入り浸ってるみたいだし」
エリカ「待って」
まほ「ふっ……どうやら私が思っていた以上に仲良くやってくれてるようだな」
エリカ「待って下さい」
小梅「はい。今では逸見さんの夜のオカズが何かも把握してる程です」
エリカ「待てっつってんでしょ黙れバカ星!!!!」
まほ「駄目な馴れ合いにならなければ、心の距離が近いのはいいことだ。これからも、二人で仲良くやってくれ」
エリカ「今の会話で心の距離が過去最長記録を更新してるんですが」
小梅「でも、こう、軽口が叩けるようになると、ちょっとうれしくなるかなーって」
エリカ「何言ってんだか……」
エリカ「私は別にどーでもいーし、これでも一応病み上がりなんだから、用事がないなら帰りなさいよ」
小梅「あ、そうそう、用事あるんだ」
小梅「ええっと、逸見さんに関するいいニュースと、逸見さんに関する悪いニュースと、逸見さんに関するはちまのニュースがあるんだけど……」
まほ「ああ、それを選ばせる流れならさっきもうやってしまったな……」
小梅「あ、そうなんですか?」
小梅「じゃあ良いニュースから順番でいいかな……」
まほ「いや、エリカは悪いニュースから聞きたい派らしい」
エリカ「恐らくそのニュースよりヤバそうなやつが選択肢に入ってそうなんですけどそれは」
小梅「まず悪いニュースだけど……」
小梅「逸見さん、思ったより人望がなかったよ……」
小梅「副隊長としては信用してるけど、自分のところの小隊長だと色々しんどい、みたいな声が……」
まほ「む、そうなのか」
小梅「ええ、まあ……」
小梅「一応フォローもしてるんですけど、どうしても萎縮しちゃうみたいで……」
小梅「その、ちょっと言葉が乱暴なのもあるし……」
まほ「聖グロ戦で、果たしてどこに編入できるのかだな……」
エリカ「マジトーンで言われると結構傷つくわね……」
まほ「それでも、導き方は人によるし、どんな風に導かれるのがいいのかも千差万別」
まほ「エリカの厳しく接するスタンスも、全否定するつもりはない」
小梅「私も、逸見さんのことは大好きだよ?」
エリカ「マジのフォローやめてください心が痛いから!!」
まほ「しかし、それは信頼できる情報なのか?」
小梅「ええ」
小梅「逸見の森の匿名アンケートを元にしていますし、逸見さんに比較的有効的な人物のみで集計してアレだったので……」
小梅「下手したら予想の数倍ヤバいかもしれません」
エリカ「だーっ、もう!」
エリカ「逸見の森とかいう巫山戯たワードが出てきて悪ふざけ感出てきたことに安堵してる場合じゃないんだっての!」
エリカ「さっさといいニュースを教えなさい!」
小梅「いいニュースだけど……」
小梅「聖グロ戦で、逸見さんがどこの小隊に入るのか決まったよ」
エリカ「!」
小梅「私が小隊長を務める、赤組が引き取ることになったんだ」
エリカ「引き取るって言い方」
まほ「よかったな、エリカ」
エリカ「ありがとうございます」
エリカ「……去年の敗戦の原因が指揮してるってのが不安ですけどね」
小梅「あ、ひどい!」
小梅「でも――酷い敗戦を知ってるからこそ、私達赤組は強いんだよ!」
エリカ「あーはいはい」
エリカ「……っていうか、赤組って……」
小梅「チーム名というか、小隊名だよ」
小梅「ほら、1年生の時に相性いい相手と組んでいいって、自由に小隊組まされたけど……」
小梅「私みたいな“ちょっと人より戦車道が上手い”ってレベルの人間じゃ、どんな人材が必要かまで全然わからなかったから……」
小梅「偶然で赤が名字に入る人間が手を取り合った後、面倒になって名字が赤の人を探し倒してさ」
エリカ「名門のイメージが! 私の黒森峰のイメージが!!」
小梅「所詮ただの女子高生だから……」
エリカ「大体赤組って何よカッコ悪い」
まほ「例のアレだ」
小梅「ほら、去年の敗戦以降、何が黒森峰に足りないのか他の名門と比べたこと、あったじゃない」
エリカ「あったわね、そんなこと……」
まほ「他校が小隊に名前をつけているのを見て、我が校に足りないのはそれかもしれないと思ってな」
まほ「その時“赤組”と名付けられて以来、そこそこ安定して成績を出してるのもあって、存続し続けているんだ」
エリカ「はあ……」
小梅「っていうか、ネーミングセンスなら、逸見さんも人のことは言えないんじゃあ……」
エリカ「なっ!」
まほ「確かに、割りと不評でエリカの小隊は速攻で名前無しに戻ったな……」
エリカ「そ、そんなに駄目でしたか!?」
エリカ「でも、ほら、あれですよ!」
エリカ「シュヴァルツ・フォレストって名前、黒森峰だからなんですよ!」
エリカ「まさに象徴って感じの名前だし、こう、ほら!」
小梅「小学生みたい……」
まほ「更に言うと、『シュヴァルツ』はドイツ語で、『フォレスト』は英語だ」
エリカ「そんな……」
エリカ「私のネーミングセンスがそんなになかっただなんて……」
エリカ「だから私の立てるスレはあんなにも……?」 ブツブツ
まほ「まあなんにせよ、エリカも快方したようだし、明日からまた練習に合流してくれ」
小梅「今のやりとりでメンタルの方は病んだっぽいんですけど」
まほ「……可哀想だが、あまりゆっくりさせてもやれないスケジュールだからな」
エリカ「承知してます」
エリカ「それに――聖グロとの準決勝、絶対に勝ちたいんです」
エリカ「一刻も早く、戦車に乗って感覚を取り戻したい……」
まほ「そうか」
まほ「しかし今日は大事を取っておいた方がいいだろう」
まほ「今日は帰ってゆっくり休め」
まほ「明日からは甘く出来ないからな」
エリカ「はいっ……!」
小梅「それじゃあ、また明日」 スタスタスタ
まほ「休むのも仕事の内だ、今日はしっかり休むんだぞ」 スタスタスタ
エリカ「……」
エリカ「……」
エリカ「しまった、一番気になるはずのハチマのやつ聞きそびれた……」
意識とんできたので寝ます申し訳ありません
投下します
エリカ「……」
エリカ(あれから数日)
エリカ(準決勝に備えて練習に打ち込んだけど……)
エリカ「……」
ピトッ
エリカ「ほわぁーーーーーっ!?」
小梅「浮かない顔だね」
エリカ「何!? 何今の!?」
小梅「え?」
エリカ「何か今、首にぴとって!」
小梅「ほら、差し入れのジュースとかでカップルとかがやるイタズラ的なの、やってみたいなーって」
小梅「逸見さん、そういうタイプじゃなかったかな……ごめんね?」
エリカ「ジュースの感触じゃあなかったわよ!? なんかこう、ねばって! ネチャって!」
小梅「まあそれは置いておいて……」
エリカ「大丈夫なのよね? 置いておいて大丈夫なものをくっつけてきたのよね!?」
小梅「うん。ほんのり臭うだけだから大丈夫だよ」
エリカ「どの面下げて大丈夫と」
小梅「それより……どうかした?」
エリカ「いや……」
エリカ「……」
小梅「何かあったなら、その、話してくれたら嬉しいかなって」
小梅「これでも、ちょっと仲良く慣れたかなーって思うし」
小梅「ほら、逸見の森の管理人として知っておきたいし……」
エリカ「若干近づきかけた心が一瞬で離れたんだけど」
小梅「まあまあ」
エリカ「はあ……」
エリカ「……」
小梅「本当にどうしたの?」
エリカ「ん……」
エリカ「練習をしてて、なんかこう、しっくりこなかったというか……」
エリカ「決して悪くないし、全員の技量は高いはずなのに、ピンとこないというか……」
エリカ(……)
エリカ(間違いなく技量は高いはずなのに、“あの子達”みたいに、一点特化の強みみたいなものを感じづらい……)
エリカ(勿論安定した強さで王者の戦いをする黒森峰としてはそれでいいかもしれないけど……)
エリカ(あの大洗を見たあとだと、不安が残る……)
小梅「……なるほど」
小梅「逸見さん、次の試合が不安なんだね」
エリカ「は?」
エリカ「何で……」
小梅「エスパーですから」 フンス
エリカ「……」
小梅「わぁ冷たい目」
小梅「……まあ、エスパーじゃなくても、逸見さんの悩みなんて大体分かるんだけどね」
エリカ「何よ、人をシンプルな単細胞みたいに言って……」
小梅「いや、ほら、逸見さんって、戦車道バカって感じだから」
エリカ「はァ?」
小梅「私や他の皆も勿論戦車道は大好きだし、きっと他の学校より戦車に乗ってる時間も長いんだけど……」
小梅「そんなの比較じゃないくらい、逸見さんって戦車で頭がいっぱいって感じだしさ」
小梅「逸見さんの悩みといえば、戦車道のことしかないなーって」
エリカ「……」
エリカ「まあ、否定はしないけど」
小梅「もうちょっとしたら恋の悩みとかハンバーグの悩みとか持ち出すかもしれないけど、まだ逸見さんの自我はそこまで育ってないもんね」
エリカ「あのねェ、私だって……」
小梅「えっ、恋の悩みとかあるの!?」
エリカ「……」
エリカ「に、人間関係の悩みくらいなら、なくはないわよ」
小梅「逸見さんも人間関係で悩んだりするんだね」
エリカ「……まあ、そういうこともあるわよ」
小梅「まあ、得意じゃなさそうだもんね」
エリカ「うぐっ」
エリカ「言ってくれるじゃない……」
小梅「うん、じゃあ、皆でファミレスでもいこう!」
小梅「明後日の準決勝で一緒に小隊組む人達に声かけておくからさ!」
エリカ「はぁ?」
エリカ「いや、今は人間関係じゃなくて、戦車道の方を……」
小梅「一朝一夕で伸ばせるものなんて、限られてる」
小梅「ましてや、うちの戦車道チームって、それなりに技量は高いだけに、素人さんほど伸び率が高くないし」
小梅「……そんな私達が一朝一夕で伸ばせるとしたら、これはもうチームワークなんじゃないかな」
エリカ「急造のチームワークぅ?」
小梅「一応1年以上一緒にやってきてる子も多いし、全くの0からってわけじゃないし……」
小梅「それに、相手のことを少しでも理解していた方が、連携だって取れるんじゃないかな?」
エリカ「ふん」
エリカ「相手がどんな人間か分からなくとも、それぞれがきちんと己の役目をこなして適切な行動を取れば自ずと連携は取れるわよ」
小梅「……うん、そうだね」
小梅「全盛期の黒森峰も、そうだったみたいだし」
小梅「でもさ」
小梅「史上最強と名高かった隊長とみほさんのコンビは、どうだったと思う?」
エリカ「……」
小梅「私のせいで、伝統に泥を塗っちゃってさ」
小梅「今、黒森峰って、大変な時期なんだと思う」
小梅「伝統を重んじながらも、何かテコ入れ求められてるんだろうし」
小梅「ちょっと今、大変だし、浮足立っちゃってるしさ」
小梅「だからこそ、こう、結束のパワーみたいなやつをさ!」
エリカ「……はぁ」
エリカ「わかったわよ」
エリカ「私は、そんなの、認めない派だけど……」
エリカ「モチベーション管理も副隊長の仕事といえば仕事だし」
エリカ「どうせ直前の整備で遅くまで乗り回せないんだから、今日くらいは良しとしてあげる」
小梅「わあ、やった!」
小梅「じゃあ皆に連絡回して、寮の方にもちょっと帰りが遅くなるって連絡入れておくね!」
エリカ「はいはい……」
エリカ「……」
エリカ(あの子は……大洗で、こういうこと、してたらしいけど……)
エリカ(別に、そういうのじゃあ、ないわよ)
エリカ(私はあの子のやり方じゃなく、隊長と共に西住流のやりかたを貫くんだからっ)
小梅「思ったより皆集まってくれたよ」
エリカ「アンタんとこの小隊のメンバーだっけ」
小梅「うん」
小梅「……去年の事件以来冷や飯を食べてたし、私達のせいだから、私達の小隊って言い辛いんだけどね」
黒星「落ちたの自体は事故だし、リカバリー出来なかった負い目とかもあるってことで、まだ小隊のリーダー格ヅラさせてもらってますけどね」
エリカ「まあ、技量でいえばそれが妥当でしょ」
エリカ「なんだかんだでトラウマにもならずまだ戦車に乗れてるメンタルの強さもあるし」
小梅「そういう話はテーブルで、ドリンクバーでも飲みながらゆっくりやろ?」
黒星「じゃあ店員さん呼ぶね」
小梅「とりあえず全員ドリンクバーとして……」
白星「デザート何か食べようかな」
小梅「うん。パフェとか食べたいよね」
エリカ「寮で夕飯は食べたっていうのに……太るわよ?」
小梅「う、運動はしてるし……」
エリカ「まったく……」
店員「ご注文をお伺いいたします!」
エリカ「チーズインハンバーグとドリンクバーです」
小梅「晩御飯もりもり食べたあとだよね?」
エリカ「ハンバーグは別腹だし、肉は筋肉になるからいいのよ」
エリカ「……しかしまあ……」
エリカ「こうしてみると、普段の厳格な黒森峰戦車道チームの面影はないわね……」
小梅「普通の女子高生だもんね」
小梅「戦車道以外の遊びだってするし、こうしてお喋りに興じたりもするんだよ」
小梅「名門だって、マリオカートに夢中でミーティングをサボっちゃったりするんだよ」
エリカ「するんだよ、じゃあないわよそれは」
エリカ「……何か調子狂うわねえ」
小梅「逸見さんは、戦車を降りても“黒森峰戦車道チーム”って感じだもんねえ」
エリカ「当然よ」
エリカ「私にとっては――それが全てなんだから」
小梅「……そっか」
エリカ「なによ?」
小梅「ううん」
小梅「やっぱり逸見さんは凄いよな~って」
エリカ「何よソレ」
小梅「私も、戦車道は、相当好きな自信があったんだよ」
小梅「……あんなことになっても、辞められなかったくらいだしね」
小梅「私にとって、戦車道は人生のほとんどだったけど……」
小梅「逸見さんにとっては、きっと全てなんだね」
エリカ「……当然でしょ」
小梅「それを当然と言えちゃうのが、逸見さんの凄さなんだよ」
逸見車装填手「うん。おかげでちょっと近寄りがたいと思ってたけど」
エリカ「はあ?」
どどめ色星「常にピリピリしてたしー」
逸見車通信手「こうして一緒にファミレス来る日が来るなんて、夢にも思わなかったもん」
エリカ「そんな大げさな」
黒星「正直一生友達になれないと思ってた……」
直下「関わると面倒くさそうだなーって」
白星「意識の高い隊長の腰巾着で、友達も当時の隊長と副隊長だけな印象だったし……」
小梅「絶対友達できず孤立すると思ってた時期があったなあ」
エリカ「あんたら」
小梅「まあ、これを機に、いろんな人と仲良くなったらいいんじゃないかな」
黒星「人数多いから、どうしても一緒の小隊メンバーかルームメイトとつるみがちだし……」
直下「下手したら、今日名前覚えてない人もいるんじゃあ」
エリカ「うぐぐっ・・」
小梅「まあ、今回はある程度覚えやすいはずだし、頑張って覚えよう?」
小梅「私達も覚えやすいしってことで、なんとなーく赤色の集団を作ったわけだし」
エリカ「またそういうわけのわからないことを……」
小梅「ただのジェーケーだから、そういうノリみたいなのもあるんだよ」
小梅「私たちにとって、戦車道は人生のほとんどだったけど、でも全部には、できなかったから」
エリカ「……」
小梅「まあ、それでも戦車道大好きで黒森峰のレギュラーらしく、皆ちゃんと強いんだけどね!」
小梅「例えばあそこのドリンクバーで輸血してるアカギさんとか何が起きても冷静沈着な切れ者って感じだし、赤土さんもデータの使い方が上手い」
小梅「赤井さんは真面目にやってきてるし、ジェイドさんはビーフケークハマーが強い」
エリカ「緑混じってるぞオイ」
小梅「ジェイドさんはブロッケンさんの妹分で、ベルリンが真っ赤に染まるかのようなフェイバリットを持ってるんだよ!」
エリカ「わざわざ特殊カーボンしてるんだからそんな色で染めようとするんじゃないわよ」
小梅「通称緑の矢って呼ばれてて、かなりの腕前なんだから」
エリカ「緑なんじゃない!」
エリカ「はーーー……叫びすぎて喉が痛いわ……」
エリカ「頭も痛いし」
エリカ「……ちょっと前じゃ考えられないくらい、ウチの戦車道チームへの印象が変わったわね」
小梅「あはは」
小梅「人間って、多角的だからね」
小梅「私達にも、こういう側面はあるよ」
小梅「……ううん。隊長や逸見さんと比べれば、こういう側面の方が多いかもしれない」
小梅「でも――」
小梅「隊長や逸見さんみたいに、真剣な黒森峰戦車道チームとしての面だって、私も皆もちゃんと持ってるんだからね!」 フフ
エリカ「……はん」
エリカ「そんな当たり前のこと、わざわざ言われなくてもわかってるわよ」
小梅「ふふ……」
小梅「……」
小梅「明日、絶対勝って、去年のリベンジ、果たそうね」
エリカ「……当然よ」
エリカ「絶対に――私達が、優勝するのよ」
☆ ★ ☆ ★ ☆
エリカ「……」
エリカ「ん……」
エリカ「とうとう、聖グロ戦の日ね……」
エリカ「……」
エリカ「見慣れた天井……」
エリカ「背中にあたる、ふかふかのベッドの感触……」
エリカ「ちょっと泣きそうになってぼやける視界っ……!」 グスッ
エリカ「ああっ、手を伸ばせば、視界に手が映り込んでくるっ!」
エリカ「ああ、ああ……」 グッパーグッパー
エリカ「動く……ちゃんと動く……」 グッパーグッパー
エリカ「入れ替わって……ないっ……!」
眠気が限界なので寝ます
聖グロ戦もダイジェストです
投下します
小梅「おはよー」
エリカ「」 ジーン
小梅「……」
小梅「せいっ」 モニュッ
エリカ「わひゃあ!?」
エリカ「な、なにすンのよ!」
小梅「あ、おはよう」
小梅「いやほら、最近試合の時おかしくなること多かったから……」
小梅「イグニッション入ったりしないかの確認を……」 コリコリ
エリカ「いつもこんなことして確かめてたの……」 ドンビキ
小梅「これが一番確実かなーって」
エリカ「……そこは百歩譲るとして、そろそろ離してくれないかしら」
小梅「意外と癖になる触感で……」
エリカ「グーで殴るわよ」
小梅(ハンバーグ吐き出されるより全然マシだよねえ……) モニュモニュ
まほ「……」
小梅「おはようございます」
まほ「その頭のコブは……」
小梅「まあ、色々ありまして……」
小梅「それより、朗報です隊長!」
小梅「正直、前のタンカが前フリに終わると思われていた逸見さんですが――」
エリカ「え、何それ」
小梅「ご覧の通り、ちゃんと普通の状態で今日を迎えられました!」
エリカ「ていうか、え、アンタ私を何だと」
まほ「そうか……よかった……本当に……」
まほ(私も正直病気の状態で来られて頭を抱える可能性が高いと思っていたしな……)
小梅「ごめん、ちょっとそっちもうちょっと詰めて」
エリカ「……」
小梅「ごめんねー、狭くて」
エリカ「それは別にいいわよ」
エリカ「こっちは乗せてもらってる身だもの」
エリカ「……」
小梅「……」
小梅「さっき挨拶で何かあった?」
エリカ「え?」
小梅「いや、なんか様子が変かなーって」
小梅「これでも、最近はちょっと分かるようになったんだよ」
小梅「……昔は分かっても聞けなかっただけだけどね」
エリカ「そういう謙虚な姿勢は貫いてくれてもよかったのに」
小梅「逸見の森のおかげで、大分逸見さんへのアレコレも薄れたから」
エリカ「ったく……」
エリカ「……」
エリカ「さっきの挨拶……」
エリカ「ダージリンは、うちの隊長を意識しているようだった」
小梅「……」
エリカ「それに……」
エリカ「あの子――大洗の、隊長のことも」
エリカ「……」 ギリッ
小梅「……」
小梅「よし、勝とう!」
エリカ「……はあ?」
小梅「だって――悔しいもんね」
小梅「隊長だけが凄いって風に思われるのも」
小梅「私達をすっ飛ばして、先ばっかり見られるのも」
エリカ「……」
ブロッケンJr「そうだーーーっ、その意見に賛成だーーーーっ!」
ブロッケンJr「この世に生をうけて、あいつのようなやつらになめられっぱなしじゃ、生きてる甲斐がねえんだよーっ!!」
黒星「まるでサンダース大みたいなセリフだけど、確かにそのとおりですよね」
白星「まあ、副隊長自身そういうことするトコあるし、因果応報?的なやつかもしれないけど」
白星「でもだからこそ、やられっぱなしではいられないよね」
ドドメ色星「王者として、相手を舐める不遜な存在であり続けるなら、ナメてきた相手はボコボコにしてやらないと立場がないでガンス」
エリカ「……ふん」
エリカ「勝手に心中察した気分になられても腹が立つけど、まあ、いいわ」
エリカ「なんだっていい」
エリカ「今はただ――目の前の紅茶軍団を、叩き潰すのみッ」
赤星「Yah!」
赤星「私は車長だけど――この小隊の長は逸見さんだよ」
赤星「号令を!」
エリカ「――戦車、前進ッ」
アッサム「……」
ダージリン「何か言いたそうね、アッサム」
アッサム「……」
アッサム「あの娘の投入は、まだ早いんじゃ……」
オレンジペコ「ローズヒップさんですか……」
ダージリン「あら、貴女は特別彼女を可愛がっていたように思うけど?」
アッサム「……でも、あの娘は」
ダージリン「こんな格言を知っている?」
ダージリン「恐れを抱いた心では、小さいことしか出来ないでしょう」
オレンジペコ「フローレンス・ナイチンゲールですね」
ダージリン「ローズヒップには、聖グロリアーナの淑女として欠けているものが確かに多い」
ダージリン「ここに来るまで、試合に出されない程に」
ダージリン「でも――」
ダージリン「”あの”黒森峰や西住まほを恐れずに、誰より果敢に突っ込んでいけるのは、マナー以上に恐れを知らないあの娘だわ」
アッサム「それは、まあ……」
ダージリン「……」
ダージリン「私はね、勝ちたいのよ」
ダージリン「気品あふれる立ち振舞で尊敬を集めてはいるし、世間に実力を認めてももらっているわ」
オレンジペコ「自分で言っちゃうんですね……」
ダージリン「だけど――」
ダージリン「この3年間、”西住まほ”には勝てていないわ」
ダージリン「たとえ万の評論家が私を評価することがあっても、その事実だけは覆せない」
ダージリン「だから――これは、私の我儘」
ダージリン「一度くらい、どんな手を使ってでも、あの人に勝ちたいのよ」
ダージリン「……みほさんが私達に見せてくれたように」
ダージリン「泥臭い高貴さというのも、あるんじゃなくって?」
オレンジペコ「……」
ダージリン「呆れたかしら?」
オレンジペコ「いいえ」
オレンジペコ「突然理解できないことをするのも、我儘なのも、慣れっこですし、とうに分かってましたから」
シュポッ
ブロッケンJr「ジェイドーーーーーーーっ!」
白星「どーすンの、副隊長!?」
黒星「あのスピード……装填が追いつかない!」
白星「全然当たらねーし、何とか立て直さないとヤバイよこれ!」
エリカ「ええい、何とかするわよ!」
エリカ「ここで私達から綻んでやられました、なんて日には、今後二度と戦車に乗れなくなるわ!」
小梅「それは同感!」
小梅「皆、二年連続で戦犯扱いされないよう、頑張るよ!」
白星「おう!」
黒星「うん!」
ドドメ色星「いくでガンス!」
ローズヒップ「んっふっふ」
ローズヒップ「こんな格言を知っている?」
ローズヒップ「巧遅は拙速に如かず!」
ローズヒップ「まーダージリン様が仰ってただけですし、あんまり意味は分かってないんですけどねー!」 バシュンバシュン
エリカ「ええい、鬱陶しいちょこまかと!」
ローズヒップ「この世の理はすなわち速さでしてよ!」
ローズヒップ「物事を速くなしとげればそのぶん時間が有効に使えましてよ!」
エリカ「おわっ」
エリカ「っつ~~~!!」
小梅「本来予定してない搭乗数なのに無理に詰め込んでるから、小刻みに車体揺らされると危ないねこれ……」
ドドメ色「でも、あんだけちょこまかされたら、こっちも嫌でも――」
ローズヒップ「遅いことなら誰でも出来る……」
ローズヒップ「20年かければバカでも傑作小説が書けるとアッサム様も言ってましたわ!」
ローズヒップ「アッサム様のポエムノートは速攻で書きなぐったのにあのクオリティだからこそ凄いんですのよ!」
アッサム「……」 ゾクッ
オレンジペコ「どうかしたんですか?」
アッサム「いや……何か、こう、うーん……」
ダージリン「こんな格言を知ってる?」
ダージリン「速さこそが文化である」
アッサム「……?」
ダージリン「あの娘は、貴女が思っているより軽いフットワークで何にでも触れているし、その速さで何でも吸収している」
ダージリン「スタート地点こそ聖グロリアーナの生徒の理想から遠かったけど――」
ダージリン「その理想に近付く速度なら、誰よりも上」
ダージリン「最初こそ近かったけど、それでもずっと足踏みをしているようでは、あの娘に勝つことは出来ない」
ダージリン「……来年のキーマン同士の対決の結果にも、期待しておきましょう」
ダージリン「こちらはこちらで、隊長首を取りにいくわよ」 フフフ
眠たいので寝ます
また少し更新します
エリカ「こんの……!」
黒星「あっ、外れた……!」
白星「うわあ、うわあ……!」
ドドメ色星「ひーっ、このままじゃ壊滅でガンス!」
ブロッケンJr「うっおー! くっあー! ざけんなーっ!」
エリカ「ええい落ち着きなさいアンタら!」
小梅「……はいドーン!」 ズリッ
エリカ「ほあーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」
エリカ「ちょ、おまっ、何すンのよ!」
小梅「うーん、意外と抵抗なくぱんつって引きずり下ろせるものなんだ……」
小梅「もっと摩擦抵抗とかあるかと思ったけど、まあ、大事なのはぱんつが引きずり下ろせるかどうかだもんね、うん」
エリカ「うんじゃないわよ!」
エリカ「このヤバイ時に何やってんのよ!」
小梅「ヤバイ時だからだよ」
小梅「……これで少しは皆頭冷えた?」
エリカ「……っ」
小梅「完全に大混乱してたよ、逸見さん」
小梅「トップが混乱すると、一気に広まっちゃうんだよ」
小梅「……去年、水に落ちたときに学んだことだし、偉そうには言えないんだけどさ」
小梅「黒森峰は強いよ」
小梅「普通にやったら完勝できる」
小梅「でもだからこそ、普通じゃない方法で一発入れられたら、崩れちゃうんだよ」
小梅「……あの日、溺れた私達は勿論、誰もあの混乱の中まともに動けなかったよね」
小梅「それでも隊長と、みほさんだけは、結果に結びつかなかったけど動いたんだよ」
エリカ「……」
小梅「私達は凡人っていうか」
小梅「高校生の中じゃ戦車道が上手いけど、どこにでもいる普通の女の子なんだよ」
小梅「プロでもなければ、戦車道に全てを捧げた西住流マシーンでもない」
小梅「たった一年じゃ、激しい基礎能力の向上と、土壇場の対応力を並行して鍛えるなんて、無茶なんだよ」
小梅「基礎能力や戦車スペックが底上げされたらそんなに対応力使う場面なんて訪れないから、皆無意識に手を抜いちゃってただろうしね」
小梅「……逸見さんは、どう?」
小梅「私達凡人と同じで、去年から何も変わってない?」
小梅「それとも――」
エリカ「……ふん」
エリカ「バカにするのも大概にしなさいよ」
ドドメ色星「お、おしゃべりはそのへんにしてほしいでガンス~!」
白星「なんとか同士討ちにならないようしてるけど、これ以上は持たないって!」
ブロッケンJr「あのスバシッコイのを何とかしないとなーーーーっ!」
エリカ(とはいえ……)
エリカ(どうする……)
エリカ(奇策を打つ? あの子みたいに?)
エリカ「……」
エリカ(それだけはダメっ……!)
エリカ(そんなことをしたら、西住流や今までの私を否定することになるっ)
エリカ(そんなことをして勝っても、何の意味もないっ……!)
エリカ(あくまでも王道、黒森峰が尊ぶ西住流の基本のやり方で勝たなきゃ意味がないッ)
エリカ(それなら……)
エリカ(西住流の戦車道で挑んで、私の技量不足で負ける方が……)
エリカ「……」
ローズヒップ「相手さん大混乱してますわ!」
ローズヒップ「逃げ惑っても逃しませんことよー!」
ローズヒップ「……っと、深追いしすぎもダメだとアッサム様に言われてましたわね!」
ローズヒップ「とりあえずクランベリーやマテ茶が到着するまでに削れるだけ削ってさしあげますことよ!」 フフン
ブロッケンJr「くそーっ、このままじゃマジで全滅だぜ!」
ブロッケンJr「どうするよ、毒霧でも吐くか!?」
エリカ「吐かないわよ! 何特上の変化球投げようとしてるのよ!」
白星「ていうか、吐けるんだ……」
小梅「まあ世の中ハンバーグを吐いて勝利する人もいるくらいだから……」
エリカ「何か言った?」
小梅「ん? 別に?」
エリカ「……」
エリカ「私の指揮じゃ、悔しいけど、混乱から立ち直らせることは出来そうにない」
エリカ「出来るのは被害を減らすことだけ」
ローズヒップ「このまま押し切ってやりますわよ!」
ローズヒップ「そーすれば、圧倒的に有利に――」
エリカ「ここの攻防じゃ勝てそうにないうえに、本丸の壊滅だって早々容易くはないでしょうね」
エリカ「やりあえば負ける気はしないけど、でも瞬殺が出来るような相手じゃあない」
エリカ「だけど」
ローズヒップ「……え?」
ローズヒップ「そ、それマジですの!?」
エリカ「外殻部分に一撃を入れるくらい、隊長ならしてくださる」
エリカ「本当は、忌々しいダージリンとの戦いに専念させるのが私の仕事だったけど……」
エリカ「事情を話せば、私の願いを聞き入れてくださる度量が、あの人にはある」
ローズヒップ「やっばいんじゃないですの!?」
ローズヒップ「相手のエースが本陣に雪崩込んでくる前に援護を――」
エリカ「そうよねえ、そうなるわよねえ」 ニタァ
エリカ「どこかが切り崩されて隊長が危険となったら、忠実なシモベなら助けに行かざるを得ないわよねえ」
エリカ「単身突っ込んでくるくらい実力に自信があって、駆けつけられる技量があるなら尚更」
エリカ「……所詮外殻一枚削った程度で、ここから隊長は長々やりあう羽目になる」
エリカ「でも――たった一言、襲われた部隊が壊滅しそうな胸を全体に通信してくれればいい」
エリカ「そこそこの脳みそと行動力と忠誠心があるなら、隊長の指示が来る前に、そこを目指そうとする――」
ズドム
ローズヒップ「うぎゃあ!?」 シュポ
エリカ「……自力じゃどーにもできなくても、隊長が道を切り開いてくれる」
エリカ「隊長なら、奇策に出ずとも、真っ向から切り崩してくれる」
エリカ「私は隊長の勝利を、揺るがぬ心で信じていればいい」
小梅「奇策に片足突っ込んでるような気もするけど……でも、うん、いいんじゃないかな」
エリカ「アンタに言われたくないわよ」
エリカ「……自力で倒すのを諦めるなんて逃げみたいな真似、したくはなかったのだけど」
小梅「現実から目を背けるより、自分に出来ることを受け入れた今の方が、”逃げてない”って感じがするけど」
エリカ「……何言ってんだか」
小梅「溺れて死にかけて以降、ちょっとポエミーなのです」 フフ
エリカ「いいから行くわよ」
エリカ「こっちも犠牲が出たけど、相手の小隊長格は潰したし」
エリカ「コイツの速度にやや遅れているであろう連中から順繰り叩き潰して、隊長の援護に行くわよ!」
戦車分からなさ過ぎるので、各々納得がいく展開に脳内で差し替えておいて下さい
寝ます
また少し投下します
エリカ「……」 ギリッ
エリカ「クソッ!」 ガン
白星「戦車に当たるのよくないよー?」
小梅「いやー……さっくりやられたねぇ」
ドドメ色星「不甲斐なくて申し訳ないでがんす……」
小梅「まあでも、役に立てたし、チームとしてはプラスに終われたんじゃないかな」
エリカ「……わかってるわよ」
エリカ「でも……悔しいの」 ギリッ
エリカ「チームが勝つことが大事。そんなの当然わかってる」
エリカ「ダージリンは隊長に食らいつける数少ない人間だし、客観的に見て私より格上なのだってわかってるわよ」
エリカ「でも……」
エリカ「直接対決して負けるだなんて思ったことはなかったし、隊長のお役に立ってダージリンを仕留めるのは私でありたかったっ……!」
小梅「……」
小梅「やっぱりすごいな、逸見さんは……」
白星「私達も……戦車道には入れ込んでるつもりだったけど」
小梅「それだけ悔しがれるなら、きっと次はもっと役に立てるよ」
エリカ「……」
エリカ「アンタに慰められると、なんかムカつくわね」
小梅「ええ~、なにそれー」
ボシュッ
黒星「わあ……!」
小梅「勝った! 勝ったよ逸見さん!」
エリカ「当然よ」
エリカ「隊長が負けるはずなんてないわ」
エリカ「……」
エリカ(そう、負けるわけがない)
エリカ(私がいなくても……)
エリカ「……」
エリカ(何弱気になってるのよ) ブンブン
エリカ(例え負けなくても大変に決まってる)
エリカ(隊長の負担を少しでも減らすべく、私が役に立たずにどうする!)
小梅「これで今年も決勝戦には進出、かあ」
エリカ「ふん、当然でしょ」
エリカ「むしろここからよ」
エリカ「王座を脱して捲土重来」
エリカ「それが当然とされるんだもの」
エリカ「……足元をすくわれるわけにはいかないわ」
エリカ「……」
エリカ「例え、相手が――」
エリカ「隊長のことを誰よりよく知り、私達の手の内を知る、あの子でも……!」
小梅「……」
小梅「やっぱり逸見さんは、みほさんのこと――」
エリカ「……は?」 ギロリ
小梅「ま、まだ何も言ってないよ?」
エリカ「……つい」
小梅「まあ言おうとしたんだけど」
エリカ「おい」
小梅「……」
小梅「いやでも、ホント、すごいよね」
小梅「誰よりみほさんの実力を信じているっていうか……」
小梅「大会が始まってから、ずっと注目して意識してたの、バレバレだったよ」
エリカ「うぐっ……!」
エリカ(まあ、そりゃ、嫌でも傍で快進撃を見てたから仕方ないのよ……)
小梅「それに、なんかずーっと、決勝戦では大洗と当たるって信じてたみたいだし」
エリカ「うっ……」
エリカ「別にそんなことはないわよ」
エリカ「……さすがに、プラウダが来るって、ずっと思ってたわよ」
エリカ「……」
エリカ(それなのに……)
エリカ(あの子はそんな常識的な予想を覆してきた)
エリカ(私も助力したけど、でも、それだけじゃない)
エリカ「とにかく!」
エリカ「今回は、役には立てたかもしれないけど、最後まで援護することは出来なかった」
エリカ「次は……次こそは!」
エリカ「絶対に、最後までお傍にいてみせるわ!」
小梅「おお燃えてる~」
エリカ(それからは、あっという間だった)
エリカ(決勝戦は元々のチームで戦車に乗れることが決まって……)
エリカ(それからはずっと真摯に戦車にばかり乗り続けた)
エリカ(いつしか校内は、あの子が決勝にあがってきたことの話題で持ちきりになって……)
エリカ(今更、なんて思いながらも、何とか周囲にも気合を入れ直させた)
エリカ(……あと、なんか、いつしか逸見の森でバンバンオリジナルスタンプが飛んでると思ったら)
エリカ(クリエイターズスタンプで5段くらい勝手にリリースされていたからぶん殴っておいた)
エリカ(……この大会が終わったら、何とか停止させないといけない)
エリカ(それでもあのクソのようなチャットを放置する程度には、戦車のことだけを考えた)
エリカ(朝から晩まで……あの子の何倍、何十倍、いや何千倍努力をした)
エリカ(そして――――)
エリカ(運命の、決勝戦の日を迎える)
寝ます。牛歩ですがようやく決勝戦です。
長期放置申し訳ありません
また地道に勧めていきます
エリカ「……ん……」
エリカ「……」 モゾ
エリカ(見知った天井……)
エリカ(見知った部屋……)
エリカ(手を伸ばせば、ちゃんと自分の手が視界に入る……)
エリカ「……よし」
エリカ(どういう理屈なのか本当にわからないけど、やっぱりもう入れ替わらないみたいね)
エリカ(……これで心置きなく、黒森峰の選手として、あの子とやり合えるっ……!)
小梅「あれ、逸見さん早いね」
エリカ「まあね」
エリカ「……いやまあアンタに言われたくはないけど」
エリカ「少し昂ぶってるし、散歩でもしてこようかと思っただけよ」
小梅「……あ、じゃあ、私も行っていい?」
エリカ「……」
小梅「露骨に嫌そうな顔してるけど、返事がないってことは行ってもいいってことだとみなすね」
エリカ「……図太くなったわよね、あんた」
小梅「おかげさまで」
小梅「まあ、でも逸見さんの丸くなりように比べたら、ね」
エリカ「……あのねえ」
エリカ「何度か言ってくるけど、私は別に丸くなんてなってないわよ」
エリカ「……黒森峰の生徒ともあろう連中が、思ったよりアホ揃いだったことにも舌打ちが止まらないしね」
小梅「えー……私達が普通なんだけどなあ」
エリカ「アンタみたいなのが標準的戦車道履修者だったら舌打ちのしすぎて上顎弾け飛んでるわ」
小梅「アンツィオ」
エリカ「……あそこは例外」
小梅「サンダースも大概」
エリカ「……まあ、あそこは下品な所も含めての強さというかなんというか……」
小梅「ある意味聖グロ」
エリカ「……アホと言えばアホね」
小梅「プラウダは……」
エリカ「……アホもいるわ。よく知ってる」
エリカ(スパイの天パにペラペラ情報漏らすヤツもいたみたいだし)
小梅「やっぱり強豪校でも大体アレだよ」
エリカ「否定しづらい箇条書きマジック使ってきたわね」
小梅「逸見さんは戦車道履修者に夢を見てるんだもんね」
エリカ「別にそんなつもりじゃないわよ」
エリカ「ただ名門黒森峰のメンバーとして、名誉ある西住流の門下生として、恥ずかしくない行いを――」
小梅「ちゃんと授業中はしてるよ」
エリカ「……最低限は、でしょ」
エリカ「戦車道っていうのは、健全な乙女の精神を作る武芸なのよ」
エリカ「戦車に乗ってるときのみならず、普段からその心構えを持って健全な精神を宿さなくてどうするのよ」
小梅「あー。だから西住流に染まった健全な精神じゃない生徒には風当たりが厳しいんだ」
エリカ「……まあ、そうね。正直に言うと、そういう連中はムカついたし嫌いだったわ」
小梅「……“だった”?」
エリカ「……」
エリカ「こんな私でも、来年になれば指導者だもの」
エリカ「出来てない人間に苛ついて、その指導を放棄するようじゃ、上に立つ者として失格だわ」
エリカ「……だから別に丸くなったとかじゃなくて、なんていうか、西住流の門下生として、上に立つ自覚を持ったというかなんというか」
エリカ「あんた達の駄目な所を認めて、全否定せずに受け入れて、そのうえで黒森峰に相応しい戦車乗りになるよう指導してやるってだけよ」
小梅「……」 ポカーン
エリカ「……なによ」
小梅「いやあ、なんていうか……」
小梅「逸見さんがそういう風に思っていたのも驚いたし……」
エリカ「なによそれ、私を何だと思ってたのよ」
小梅「自分を健全な精神だと想い込めてるのも相当だなって……」
エリカ「なによそれ、私を何だと思ってたのよコラ赤星おい赤星」
エリカ「……まあでも、認めるわ」
エリカ「昔の私は、たしかに健全ではなかったかもね」
小梅「安心して、間違いなく不健全だったから断言しても大丈夫だよ」
エリカ「……」
エリカ「まあ、不健全というか、自分が見えてなかったわ」
エリカ「ただ意地を張るのに必死で、自分すらまともに理解できてなかったわ」
エリカ「……今なら分かる」
エリカ「あの子に対して苛ついてた理由も、抱いている感情も」
エリカ「……なんで負けたくないのかも、私がどうありたかったのかも」
エリカ「だから、少しでも憧れた隊長に近付けるように、ちょっとだけ他の仲間のことを考えることにしたのよ」
エリカ「それだけだから、別に甘やかすようになったとか、そんなわけじゃないんだからね」
エリカ「特に赤星、アンタはライン云々のことを除いても、去年のあれこれがあるんだから」
小梅「うう、わかってるよ……」
小梅「去年あれこれ言われて軽く引きこもってた時に、散々悩んで、自己分析して……」
小梅「私に足りなかったことも、駄目だったとこも、全部、分かってはいるの」
小梅「……前に進むために、必要なこともね」
エリカ「……それは一緒よ」
エリカ「私やアンタだけじゃない」
エリカ「黒森峰が前に進むには、絶対に、また優勝旗を持ち帰らないといけない」
エリカ「そうしないと――私達の誇りや自信は、永遠にあの雨の中に置き去りのままだわ」
まほ「そのとおりだ」
エリカ「た、隊長!」
まほ「最初はプラウダ相手に雪辱を果たす展開を想定していたが――しかし、結果として決勝の相手はみほ率いる大洗だ」
小梅「逸見さんだけは、大洗が来るって信じてたみたいですけどね」
エリカ「……まあ、あの子の強さは、誰より分かっているつもりだったから……」
まほ「何にせよ、みほが相手でよかったのかもしれないな」
小梅「え?」
まほ「……みほは、昨年の敗戦の代名詞になっている」
まほ「だが、私は、みほが最も黒森峰を将来率いるに相応しい人物だと思っていた」
エリカ「……」
まほ「だからこそ、乗り越えねばならない」
まほ「そうすることで、泥を塗った過去を越えるだけではなく、“みほが副隊長として率いていた黒森峰”をも越えられる」
まほ「あの日の自分たちより成長していたことを実感できるようになるだろうし、“みほが残っていたら”などという甘えた幻想を打ち消せる」
まほ「……エリカ」
エリカ「はい」
まほ「今では、来年の黒森峰を率いるのは、エリカしかいないと思っている」
まほ「だから――みほと比較されても堂々と自分の方が上だと言えるような成績を叩き出そう」
エリカ「はいっ、勿論です!」
まほ「それに――西住流として、勝って終わらせねばならない」
小梅「ええ! 勝ちましょう、絶対!」
まほ「ああ」
まほ「……下船の準備をしろ。早めに到着しそうだ」
まほ「コンディションを高め、しっかりと緻密な作戦会議を行い、王者の戦いぶりを見せ付け――」
まほ「そして、また、あの優勝旗を持ち帰るぞ」
エリカ「はいっ!」
エリカ「そういえば、少し散歩をしていたらお腹減りましたね」
エリカ「その、ご飯をどうするか決めてないのでしたら、よければこのあと一緒にご飯でも行きませんか?」
エリカ「おしゃれなお店を調べてあるんです!」
小梅「わあ、楽しそう」
エリカ「……」
小梅「逸見さん顔こわい顔殺意があまりにも漏れてる」
まほ「いや――すまない」
まほ「予定というわけではないのだが、食事はもう決めているんだ」
エリカ「え、そうなんですか?」 ショボーン
まほ「……誘ってもらえたことは素直に嬉しいし、またの機会に行こう」
エリカ「……!」
エリカ「はい!」
小梅「ところで何を食べる予定なんですか?」
まほ「ああ……アンツィオのところのナポリタンをな」
エリカ「アンツィオ?」
まほ「決勝戦を見に来るらしい」
まほ「……判官贔屓なのか、自分たちと重なるからか、はたまた直接自分たちを破った相手だからか分からないが――」
まほ「どうやら、大洗の応援に来る予定らしい」
エリカ「はあ!?」
エリカ「この前あんだけ世話になっておいて!?」
まほ「……まあ、無理もあるまい」
まほ「突然決勝に出た大洗では、地元からの応援団もさほど数に期待は出来まい」
まほ「応援部隊が十分用意できるうちではなく大洗につくことを選んでも、責めることなど出来ない」
まほ「……それに、律儀にもメールで連絡を貰ったしな」
まほ「私達へのエールはメールにびっしり書かれている」
まほ「お詫びに、格安で好きなものを食べさせてくれるそうだ」
まほ「……折角だから、少しでも売上に貢献してやりたいしな」
エリカ「……そういうことなら、私もお付き合いさせていただきます!」
エリカ「お腹も減ってるし、更にお腹をグーグーにした状態で店に行って、泣いて謝るくらいバカスカ格安で食べてやるんだから!」
まほ「ふふ……そうか」
小梅(私も行きたいけど普通に睨まれそうだし、ウインナーでも食べていこ)
眠気が来たので中断します。
とりあえずエタらせず完結はさせますのでおつきあい頂ければ幸いです。
久々に投下します
ケイ「またエキサイティングでクレイジーな戦いを期待してるからね」
みほ「ありがとうございます」
カチューシャ「このカチューシャ様が見に来てあげたわよ」
みほ「あ、はい……」
ダージリン「……貴女は不思議な人ね」
ダージリン「戦った相手みんなと仲良くなるなんて」
みほ「それは……皆さんが素敵な人達だから」
ダージリン「……貴女にイギリスの言葉を送るわ」
みほ(でも……アンチョビさん達は来てないみたい……)
みほ(仕方がないけど、少しさみしい、かな……)
みほ(色々お世話になったし……)
みほ(……お世話になったって言えば……)
みほ(アンチョビさんのおかげでちょっとだけお喋りできたⅣ号と、またお話がしたいな……)
ダージリン「――永遠じゃないわ」
みほ(……はっ!)
みほ(いけない、折角ダージリンさんが有難そうなお話してくれてたのに、聞いてなかった……)
みほ「……はいっ」
みほ「……」
みほ(き、聞いてなかったって言えず、曖昧な笑みと微妙な応えを返しちゃった……) ズーン
グキュルルルルルルルル
小梅「うわあ、すごい音……」
直下「え、どうしたの……?」
エリカ「……アンツィオのバカども、どこ探してもいないじゃないの」 ギリリ
エリカ「こんなことならサンダースハンバーグでも食べたらよかった……っ!」
小梅「えっ、アンチョビさん達来てないの?」
ブロッケンJr「おかしい……確かにこちらに向かっていると、連絡があったんだが……」
まほ「……まあ、寝坊か何かだろうか」
まほ「そういう連中だ」
エリカ「ううう……」 ギュルルルルルルル
小梅「大丈夫、逸見さん」
小梅「何か食べる?」 スッ
エリカ「パンの一つでも差し出したかと思ったら何ボイレコ差し出してンのよ」
小梅「あまりにいい音出してるから、つい」
小梅「冗談はおいておいて……」
小梅「はい」
エリカ「……」
小梅「あ、あれ?」
小梅「今度は本当に何も冗談とかじゃない、そこで売ってたハンバーガーだけど……」
小梅「あ、ハンバーガーは嫌いだった?」
エリカ「……いや、そうじゃないけど……」
小梅「じゃあ――食べて。よかったら」
小梅「お腹空いてイライラしたままだと、みほさんに会った時、掴みかかったりしそうだし」 フフ
エリカ「……馬鹿ね」 クスッ
エリカ「そんなことしないわよ」
直下「まあでも暴れん坊副隊長サマなら有りえないことじゃないもんねー」
直下「しょうがない、食べ残しみたいで悪いけど、たこ焼きがまだ3つくらい残ってたし、あげるよ」
白星「温め直しておこうか?」
ブロッケンJr「ドイツ人ならソーセージだろ? ほら、分けてやるよ」
どどめ色星「魚肉のソーセージもドイツでゴンスか……?」
黒星「あ、この焼きそばも……」
ジェイド「パンでよければありますよ」
エリカ「あーもうっ、わかったからそんな一気によこさないでよ!」
エリカ「地蔵の備えものみたいになってるじゃないの!」
まほ「……ふっ」
エリカ「……何笑ってるんですか隊長?」
まほ「いや……」
まほ(あれほど周囲と距離があったのに、いつの間にか、周りに人が出来るようになったんだな……)
蝶野「両チーム、隊長、副隊長、前へ!」
みほ「……」 ザッ
桃「……」 ザッ
エリカ「……」 ザッ
まほ「……」 ザッ
エリカ(そういえば誰が副隊長なのかと思っていたけれど……)
エリカ(よりにもよってこのビッグマウスのカスが副隊長……?)
エリカ(こんな奴を副隊長に据えるなんて、おしまいね) ハン
エリカ「……お久しぶり」
エリカ「弱小チームだと、貴女でも隊長になれるのね」 ハン
エリカ(そんでもって、このカスでも副隊長になれるのね)
エリカ(まあ、Ⅳ号のときしか見てないせいで、こっちは口に出せないけど)
桃「……」 ビキビキビキ
エリカ(んで口に出してないのになんかめっちゃマガジンのヤンキー漫画みたいな顔してるし……)
杏「煽り耐性低いからなー河嶋」 ケラケラ
柚「やっぱり副隊長にしたのは失敗だったんじゃあ……」
まほ「……」
まほ(一応強豪校では副隊長張っていたし、エリカよりも上の地位だったんだけど、言わない方がいいよな……)
まほ(とりあえず黙っておこう……)
蝶野「本日の審判長、蝶野亜美です。よろしくお願いします」
蝶野「両校、挨拶!」
エリカ「……」 ハン
桃「……」 ガルルルルルル
まほ「……」
まほ(なんだこのギスギスしすぎな空気……)
みほ「え、ええと……」
みほ「よろしくお願いします!」
一同「よろしくお願いします!!」
蝶野「では、試合開始位置に移動!」
蝶野「お互いの健闘を祈るわ」
まほ「……」
まほ(みほには悪いが――西住流のため、勝たなくちゃいけない)
まほ(私が“西住流後継者”としての勝利を捧げることが、ひいてはみほの自由にも繋がるんだ……)
まほ「行くぞ」
エリカ「……はい」
エリカ「……」
エリカ(あの子が西住流を捨てて、なお強いのは分かっている)
エリカ(でもだからこそ、負けられないし、負けたくない)
エリカ「……たまたまここまで来れたからって、いい気にならないで」
エリカ(Ⅳ号じゃない“私”は、アンタらを見くびってもおかしくないでしょうね)
エリカ(……まあ、いずれにせよ)
エリカ「見ていなさい」
エリカ「邪道は叩き潰してやるわ」
みほ「……」
エリカ「……」 ザッザッ
まほ「……」 ザッザッ
小梅「……」
小梅(さすが、西住流後継者と、心酔して全てを捧げてる逸見さん……)
小梅(試合モードのスイッチが入ったら、声をかけるのも憚られる迫力……) ゴクリ
エリカ「……何呆けてんのよ、らしくない」
小梅「え、あ、その……」
まほ「……」
まほ「エリカ。作戦の最終確認をする。ついてこい」 ザッザッ
エリカ「はい」
エリカ「……」
小梅「……」
エリカ「……私と隊長は、これから作戦の最終確認でテントに戻るわ」
小梅「え、あ、うん……」
エリカ「……十分くらい、二人共出て来られないから」
エリカ「……もし私達が居たらやりづらいことがあるのなら、さっさと済ませておきなさい」
小梅「……!」
エリカ「……ふん」 ザッザッ
みほ「……」
小梅「待ってくださいみほさん!」
みほ「あ……」
小梅「あの時はありがとう……!」
小梅「あのあと、みほさんが居なくなって、ずっと気になってたんです……」
小梅「私達が、迷惑かけちゃってたから……」
小梅「……」
小梅(それなのに……)
小梅(みほさんに、救いの手を差し伸べられなかったから……)
小梅「でも、みほさんが戦車道辞めないでよかった……」
みほ「……」
みほ「私は、やめないよ」
優花里「……」 フッ
みほ(本当は、とっくに辞めそうになったけど、でも――)
沙織「みぽりーん!」
華「行きましょう」
みほ「うん!」
小梅「……そっか……」
小梅(私達ではなれなかった存在になってくれる人が、見つかったんだ……)
みほ「それじゃあ」
小梅「……うん」
小梅(振り返らない、かあ)
小梅(逸見さんが変わったように、みほさんも変わっているんだ……)
小梅(私も、変われてるのかなぁ……)
まほ『これより決勝戦だ』
まほ『相手は初めて対するチームだが、決して油断はするな』
エリカ「……」
エリカ(そう、油断のならない一芸集団)
エリカ(でも隊長に油断はない)
エリカ(まさに兎を狩るのに核ミサイルを持ち込むライオンのような絶対無敵の王者)
エリカ(みほの甘さという弱点がなくなった今、負けるわけがない)
エリカ(……みほを弱点と見なした西住流が、そしてその西住流で在ろうとする私が、負けるわけがない)
エリカ(負けるわけにはいかないッ)
まほ『まずは迅速に行動せよ』
まほ『グデーリアンは言った』
まほ『厚い皮膚より早い足、と……』
エリカ「……」
エリカ(いいこと言ってるはずなのに、どこぞの紅茶馬鹿が頭をよぎってくる……)
まほ『……行くぞッ!』
エリカ(……Ⅳ号と戦うなんて変な気持ちだわ)
エリカ(でも、なんだろうと関係ないッ)
エリカ「隊長のお言葉どおり、迅速に終わらせるわよ!」
エリカ「パンツァー・フォーッ!」
きりもいいので投下を終わります
円盤発売が迫ってるので透華します
エリカ(赤星が、あの子の重荷を軽くしたはず)
エリカ(多分あの子に、もう迷いはない)
エリカ(本気で首を取りにいかないと、プラウダのチビやサンダースの馬鹿みたいに返り討ちにあうッ)
エリカ(一撃で仕留めるッ)
小梅「撃てー!」
ズドーンズドーン
逸見車装填手「おー、敵さんうろたえてる」
エリカ「当たり前でしょ」
エリカ「この電撃戦が出来るのは、黒森峰の練度があってのものよ」
エリカ(……私の理想や隊長ほど、他のみんなは戦車道だけに全てを賭けられるわけじゃない)
エリカ(それでも確かに、名門に恥じない努力を積み重ねてきた)
エリカ(一人一人は目立たぬかもしれないが、完璧なまでの基礎技術を駆使した陣形全体はまさに無類ッ)
エリカ「全車輌、一斉攻撃ッ!」
エリカ(奴らは無駄な一芸持ちが多い)
エリカ(さすがにもう逃げ出すような愚図は残ってないようだけど、追われるとひたすら逃げるので手一杯のはず)
エリカ(例えみほの指示で逃げ切れても、反撃に転じられる程の技量はない)
エリカ(……私が見たことのないチームもいる)
エリカ(大洗で得た情報から察するに、新しく入った未経験者ッ)
エリカ(ならば、初陣の時の連中みたく、テンパって落ちる可能性が高いッ)
エリカ(勢いをつけるためにも、まずはここで雑魚を狩るッ)
逸見車装填手「なんか露骨に動きが怪しいのいるけど、私達は――」
エリカ「無視よ無視」
エリカ「あんなのは、赤星にでもくれてやればいいわ」
エリカ「私達が狙うのは、あの子の――大将の首のみッ」
逸見車砲手「前方2時方向にフラッグ車を確認」
エリカ「よし、照準を合わせろ」
エリカ(アンタのことはⅣ号で見ててよーく分かってる)
エリカ(ここで下手を打つと、逃げ延びたアンタは油断した私達にカウンターを食らわせてくる)
エリカ(猫を噛み殺す窮鼠――そんなシーンを何度もⅣ号として経験してきた)
逸見車砲手「照準よし、フラッグ車に合わせました……!」
エリカ(だからこそ、対処法は分かる)
エリカ(あの子は毎回スロースターター)
エリカ(結果してやられたプラウダ戦も入れると、立ち上がりは毎回今ひとつ)
エリカ(そこで悠長にするせいで、あの子に奇策を思いつかせてしまうッ)
エリカ(だから――)
エリカ「一発で終わらせてあげるわ」 ニタァ
逸見車装填手「装填完了ッ」
エリカ「よし……」
エリカ「撃てぇぇぇぇぇ!」 クワッ
ズドォォォォォォン
シュポッ
蝶野『大洗女子学園三式、走行不能!』
エリカ「~~~~~~~っ!?」
エリカ「三式ぃ!?」
エリカ「あんな放っておいても赤星とか直下が潰しそうな三式とかいう三下ァ!?」
逸見車砲手「いや、そんなこと言われましても……」
逸見車装填手「向こうが急速に割り込んできたし、その勘を褒めるしかないんじゃあ」
エリカ「えーい五月蝿い!」
エリカ「とにかくフラグ車を逃がすな!」
エリカ「この場で息の根を止めるのよ!」
逸見車砲手「殺すって……」
逸見車装填手(やっぱり戦車に乗ってる時の逸見さんこわーい……)
逸見車通信手(ハンバーグバズーカ逸見とか言われてる時とはまた異なる怖さ……)
エリカ「撃て! 撃ってなんとしてもここで仕留め――」
モクモクモク
エリカ「煙ぃ?」
エリカ「ニンジャじゃあるまいし、小賢しい真似を!」
赤星『ニンジャ……島田流を思い出すね……』
ブロッケンJr『へっ、カラスまでは騙せない程度の忍術じゃあ虎を騙すことなんて出来ないって教えてやるぜ!』
エリカ「島田流……」
エリカ(いくら西住流を捨てたあの子とはいえ、島田流に身を染めるとは思えないけど……)
エリカ(でも、あの子の戦法が島田流のような搦手が多いのは事実)
エリカ(このまま調子に乗らせるのは不味いッ)
エリカ「全車撃ち方用意!」
まほ『……全車撃ち方やめ!』
エリカ「!?」
エリカ「一気に叩き潰さなくていいんですか!?」
まほ『下手に向こうの作戦に乗るな』
ブロッケンJr『へっ……ロビンもそんなことを言っていたっけな……!』
まほ『無駄弾を使わせるつもりだろう』
まほ『弾には限りがある、次の手を見極めてからでも遅くない』
エリカ「……」
エリカ(隊長の言うことは、正しい)
エリカ(下手に策に乗るのは危険だし、無駄弾をあまり使えないのも事実)
エリカ(でも……)
エリカ(今までの経験からすると、おそらく向こうの策の真の狙いは無駄弾消費じゃあない……)
エリカ(あの子の搦手は、搦手はのくせに一発一発は甚大なダメージをもたらしてくる)
エリカ(世間一般の搦手が手足を攻撃し動きを封じてからとどめを刺す、といったものだとすれば――)
エリカ(あの子の搦手は、手足を一撃で切り落とす、しかも猛毒が塗られたような一撃)
エリカ(無駄弾を撃たせるためなんてアバウトかつローリターンな搦手を安売りするヤツじゃあないっ……)
エリカ(ここで見極めようとしたら、手遅れになる可能性が……)
エリカ「……クソッ!」
エリカ(でも言えないッ……)
エリカ(一般的に考えれば隊長が正しい。そうでなくとも隊長はいつも正しい)
エリカ(私が嫌な予感を覚えるのも、全部Ⅳ号と入れ替わった記憶ゆえのもの)
エリカ(それを上手く説明も出来ない以上、従う以外の選択肢はないッ……!)
エリカ「バルカン砲撃てェ!」
逸見車砲手「ええ!?」
エリカ「こっちなら問題はないはずだし、撃ち方やめにも反しない!」
エリカ「何にせよぶち当てて、ダメージと共にすぐそこに迫っているという威圧を与えるッ」
エリカ「絶対……逃がすもんですかっ……ッ!」 ギリィ
エリカ「敵、11時方向に確認ッ」
まほ『あの先は坂道だ』
まほ『向こうにはポルシェティーガーがいる』
まほ『足が遅いからそう簡単には登れまい』
まほ『十分に時間はあるはずだ』
ダージリン「恋と戦争はあらゆるものが正当化されるのよ」 キリッ
オレンジペコ「通信傍受もですか?」
ダージリン「……」
ダージリン「……うーん……?」
オレンジペコ(あ、マジトーンで悩みだした……どうしよう……)
オレンジペコ「あっ、え、煙幕晴れてきましたッ!」
エリカ「んなっ……」
エリカ「もうあんなところに!?」
エリカ(そうか、全員がポルシェティーガーを引っ張って……ッ)
エリカ(クソッ、何故気付かなかった……!)
エリカ(大洗女子で、奴らがワンフォーオールの仲良しこよしごっこをよくすると学んでいたはずじゃないかっ……!)
エリカ「くそっ……!」
エリカ「広範囲に煙幕を張られてるせいでまだ追撃が――」
ボシュンッ
ボシュンッ
エリカ「!?」
エリカ「今度は何!?」
逸見車通信手「奇襲です!」
エリカ「やられたの!?」
逸見車通信手「ええと……」
逸見車通信手「誰も旗は上がってないけど、2輌履帯がやられました!」
エリカ「くっ……!」
エリカ(自分が追い込まれたときをチャンスに変える……)
エリカ(平気で自分を囮にして、追う者を背後から刺すスタイル……!)
エリカ(誰よりそれを見てきた私が気付かなくてどうするんだ、くそっ……!)
まほ『深追いはするな』
エリカ(不味い不味い不味い……!)
エリカ(これ以上好き勝手されると、私の印象云々以前に、普通に不味いッ!)
エリカ(勝つのは黒森峰、そして伝統ある西住流じゃなくなちゃならないのよっ!)
エリカ(何とかして……なんとかして主導権を握らないと……!)
まほ「……想定より早く陣地を構築したな」
エリカ(……さすが隊長は落ち着いていらっしゃる)
エリカ(そうだ……私がきちんとどうにかできずとも、隊長がいる……)
エリカ(万が一私がダメでも、隊長ならば――)
まほ「囲め」
エリカ「はい!」
ズドォォォォォォン
ズドムズドムズドム
エリカ「ちぃぃぃぃっ!」
エリカ「クソッ、なまじしっかり陣地を作ってるせいで犠牲が……!」
エリカ「私のパーフェクトゲーム構想が……!」
エリカ「優勝の瞬間がニュースになる度、史上最悪の負け方をした大洗の恥ずかしいシーンが流されるという私の野望があ!」
逸見車操縦手(人間が小さいなあ……)
眠気がピークなので中断します
「せんしゃ、つおい」くらいの認識で当スレは進行しております、脳内補完してね(すまんな)
円盤も出ちゃったしさっさと書き進めます
まほ(……囲まれても冷静に捌いてくるか)
まほ(伊達にここまで残ってはいないな)
まほ(みほのみならず、他の者も一定の技量を持っている前提で指揮を取るべきか)
まほ「……ヤークトティーガー、正面へ」
まほ(あの戦力では易易とヤークトティーガーを貫けまい)
エリカ「これが王者の戦いよ」 フッフーン
エリカ「策を弄し奇策に頼るのは凡夫の証!」
エリカ「真の王者とは優雅に美しく、どんと構えて真っ向から相手を踏み潰すものなのよ!」
エリカ(勝てる!)
エリカ(大洗で見てきた戦力では、やはり黒森峰を倒すなんて不可能ッ)
エリカ「邪道に付け入るスキを与えたサンダースやプラウダのように、満身も舐めプも我々黒森峰には無いッ」
エリカ「このまま叩き潰してやるわ!!」
逸見車通信手(割りと普段から慢心の塊のような……)
ズドーン
直下「あああああああああああああ!!」
直下「直したばっかりなのにィ!」
直下「うちの履帯は重いんだぞ!」
キュラキュラキュラ
小梅「……あれ?」
ブロッケンJr「どうした?」
小梅「いや、なんか向こうで上半身出した直下さんが発狂したみたいに踊ってるんだけど……」
白星「踊ってる……?」
小梅「あ、いや、違う」
小梅「あれ、なんか腹立てて暴れてるんだ!」
小梅「ヘッツァーがこっちに向かって――!?」
黒星「え!?」
ドドメ色「何も通信は入ってきてないでガンスよ!?」
小梅「直下さん、腹を立てると業務連絡とかそういうのスコーンと忘れて当たり散らすところあるからなあ……」
ブロッケンJr「今からでも隊長に報告するか?」
小梅「いや、多分……その前にこの感じだと――」
ズドーンズドーン
小梅「やっぱりヘッツァーを見つけて撃ち合いになった!」
ジェイド『うっおー! くっあー! ざけんなーーーー!!』 ドーンドーン
小梅「あーっ、同士討ちになる!」
小梅「みほさん、これを狙ってたの!?」
小梅「み、みんな落ち着いてえ!」
エリカ「ちょ、あんたら何やってんのよ!」
エリカ「無様に混乱なんてしてないでさっさと立て直しなさい!」
小梅『逸見さん、パニックガールの代名詞みたいに浮足立ってるよ!』
エリカ「わざわざンな通信寄越すんじゃないわよ!」
逸見車砲手「あ、大洗、撤退はじめました」
エリカ「ええい撃て、ここを奴らの墓場にするのよ!」
ワーキャー
小梅『ごめん逸見さん、こっちダメそう!!』
小梅『ああっ、混乱してブンブン振り回してたジェイドが落とされた!』
エリカ「はあ!?」
小梅『ああダメ、何とかしようにも他の味方の車体が――』
脇にヘッツァーがいるぞ子「すみません逃げられました!!」
エリカ「何やってるの!」
まほ「体勢を立て直して追え。こちらもすぐ向かう」
エリカ「私が行きます!」
エリカ(他の連中は宛に出来ない……)
エリカ(隊列を組み、決められた動きをすることに関しては同世代最強の集団だけど……)
エリカ(あの子は“それ”をさせないことに長けすぎているッ……)
エリカ(こっちの手の内も全部わかってるわけだし……ここは私が決めるしかないッ)
エリカ(アンタがこっちの手の内を知ってるように、私だってアンタの手の内は知ってるってこと、思い知らせてやるわ!)
逸見車装填手「それにしても……」
逸見車装填手「そろそろポルシェティーガーがだめになって向こうも戦力分散されて良い頃だと思うんですけどねえ」
エリカ「……それはあまり期待しない方がいいと思うわよ」
逸見車通信手「?」
逸見車車砲手「ふぁっ!?」
逸見車装填手「どうしたの?」
逸見車砲手「向こうのポルシェティーガー、走りながらなんか直してる……」
逸見車装填手「ええええええええ!?」
エリカ「……」
エリカ(まあ、そうでしょうね)
エリカ(私が知ってる範囲では、大洗に戦車に乗れる人材はほとんど残ってなかったはずだし)
エリカ(乗せるとしたら自動車部は有力候補)
エリカ(……一晩であれだけの無茶な修理が出来る連中よ)
エリカ(応急処置くらいなら、走りながらやってきても驚かないわ)
エリカ「……驚きはしないけど、是非とも黒森峰に欲しい人材ね」
逸見車砲手「驚かないんだ……」
逸見車装填手「すご……」
エリカ「一々相手に合わせて驚いてペースを乱してやる必要なんて無いわ」
エリカ「冷静にここで決めるわよ!」
逸見車装填手「はいっ!」
逸見車砲手「おまかせあれっ!」
エリカ「逃さないわ……」
エリカ「目標、1時フラッグ車!」
エリカ(ここで決めて、私は完全にアンタを超えるっ……!)
エリカ(奇策に翻弄されず冷静に仕留められる人間が黒森峰にもいるってことを、思い知るがいいわ!)
ガガガガ
エリカ「ちょっと、どこ行く気なのよ!?」
ガッコン
エリカ「何やってんの!!!」
逸見車操縦手「左動力系に異常!」
逸見車操縦手「すみません、操縦不能です!!」
エリカ「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」
エリカ「あーもう、早く直しなさい!!」
エリカ「隊長に大見得切ってるのよ、走りながら直しなさい!!」
逸見車装填手「ひい~っ」
逸見車操縦手(やっぱり逸見さん怖い~っ)
エリカ「ああもう、はやくしなさいよ!!」 ムッキー
逸見車砲手(リズミカルに踊ってないで手伝ってほしい……)
逸見車通信手(逸見ステップ……)
エリカ「……」
小梅「不機嫌だね、逸見さん」
エリカ「うっさいわね」
小梅「直すの手伝ってあげたのに」
エリカ「ふん」
エリカ「自信満々に追撃に出て交戦すらせず逃げられるなんて醜態晒した直後なのよ」
エリカ「上機嫌でいられるわけないじゃない」
小梅「あんまりすぎたことを引きずってもしょうがないよ」
小梅「すぎたことを引きずりすぎると、混ぜる勇気がなくて封を切れない塩素系洗剤をずっと引き出しに入れ続けることになっちゃうよ」
エリカ「洒落にならないことをネタにできようになったメンタル面の成長は認めてあげるけど、別にまだ去年のこと風化したわけじゃないからね?」
直下『あっ、大洗の車輌を発見!』
エリカ「どれどれ……」
エリカ「……」
エリカ「何やってンのよ、あれ」
小梅「……」
小梅「川で立ち往生したのを助けてる、のかな……」
エリカ「……」
ズドーン
ズドーン
エリカ「……撃ってきたわね」
小梅「でも全然当たってないというか、今までに比べて狙いが粗いね」
直下「焦ってるせいで精度が落ちてるとか?」
エリカ「……あの子の救出作戦を援護してるつもりなんでしょ」
エリカ「正確に狙えないなら砲弾を節約しておけばいいものを」
小梅「……そうだね」
エリカ「……」
小梅「……」
エリカ「何よ」
小梅「あ、ううん、ごめん……なんでもない」
エリカ「……」
エリカ(残弾数も気にせず、当たるかどうかでなくて、守りたいから撃っている――)
エリカ(去年の私達にできなかった、ある種敗因の一つ)
エリカ(それをチーム一丸となりやっている、か……)
エリカ「……ふん」
エリカ「相変わらず甘いわね」
エリカ「その甘さが命取りなのよ」
エリカ「戦車前進用意!」
エリカ「丘を越えたら川に沈めてやるわ!」
まほ「……後方7時敵」
まほ「11号車、やれ」
ズドムズドム
杏「さすがに三度目はないかあ~!」 スタコラサッサー
エリカ「ちっ、何外してンのよ!」
まほ「深追いはするな」
エリカ「は、はい……」
エリカ(くっ、あのヘッツァーの運転手はあのクソいけ好かない生徒会長)
エリカ(さっさと沈めておきたいのに――!)
小梅「逸見さん」
エリカ「――っと、砲撃用意!」
エリカ「撃てーっ!」
ズドムズドム
エリカ「ぐっ……!」
小梅「ギリギリで逃げられちゃったね……」
エリカ「何処に向かう気……?」
まほ「……」
まほ「恐らく、市街地」
エリカ「橋ぃ?」
エリカ「戦ってるより逃げてる方が多いじゃないの」
エリカ(まあ、この戦力差ならそれも已む無しといったところかしら)
エリカ(でも放っておくと打開策を見つけてくるのが西住みほという女)
エリカ(無策で無様に逃げ回ってるスキに叩くッ)
エリカ「……落ちた?」
エリカ「橋がァ!?」
エリカ「……分かった」
エリカ「橋は迂回して追う、お前は先回りしろ!」
エリカ「……」
エリカ(まさかこんな策を用意してるなんて……!) ギリッ
エリカ「……」
エリカ(無策で逃げてる今の内に、とか口に出してなくてよかった……)
逸見車通信手「あ、逸見さん、マウスから通信!」
逸見車通信手「二輌撃破したそうです!!」
エリカ「……ッシ!」 ガッツポ
エリカ「……」
エリカ「こほん」
エリカ「迂回してる間に終わってしまうかもしれないわね」
エリカ「所詮弱小チームなんてこんなものよ」
逸見車通信手(今ガッツポーズしてたよね……)
逸見車砲手(めっちゃ嬉しいんじゃん……)
逸見車装填手(ごまかせてるつもりなのかな……)
逸見車操縦手(普段怖いのにたまに可愛いよね、逸見さん……)
エリカ「隊長、2輌撃破しました」 フフン
まほ「あと5輌」
エリカ「こちらはまだ16輌残っています」
まほ「フラッグ車を潰さねば意味はない」
エリカ「……」
エリカ(確かに、これまでサンダースもプラウダも、車両数では圧倒しながらも最後にはフラッグ車を潰されて敗北した……)
エリカ(でも、今回に関してはそんなこと起こり得ないッ)
エリカ(向こうのポイントゲッターである三突は潰した)
エリカ(ポルシェティーガーのチートメカニックどもが未知とはいえ、戦車に乗ること自体は未知のはず)
エリカ(ヘッツァーは鬱陶しいことこの上ないが、二度に渡りやられたのもあり、すでに十分に警戒出来ている)
エリカ(練度の高い八九式はそもそもこちらの装甲を抜けるとも思えないので放置でオーケイ)
エリカ(ただでさえ低火力のM3に乗ってるのは例の頼りない一年どもだからこれも論外)
エリカ(そうなると残る強敵はあの子のⅣ号のみ)
エリカ(……そのⅣ号はフラッグ車だし、マウスだって最優先で狙うはず)
エリカ(万が一マウスをどうにかできるとすればⅣ号だけど、そう易易とやられるはずがないわ)
エリカ(直々に手を下す前に負けられることだけが心残りだけど……)
エリカ「もうここから負けようがないわね」
マウス車長『すみません撃破されました!』
エリカ「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」
エリカ「何をどうしたらそんなことになるのよ!」
マウス車長『そ、それが――』
エリカ「はあ!?」
エリカ「ヘッツァーが潜り込んで来て動けなくなったうえに、乗り込んできた八九式に砲塔を抑え込まれたァ!?」
エリカ「そんなアホみたいな手で……!」
逸見車砲手「あ、でも、意外とそういう奇策って防げないし……」
逸見車通信手「私達、圧倒的なことが多いせいで、そこ崩されると結構浮足立っちゃうって言われてるもんね……」
エリカ「だからって、天下の黒森峰があのヘッツァーに三度も撹乱されて足元をすくわれたなんて許せるわけないじゃない!」
逸見車操縦手「そうかもしれませんけど……」
逸見車砲手「でも何事にも動じないと噂される継続の隊長ですら、逸見さんが生身で乗り込んでハンバーグ吐いたら動揺したんですよ」
逸見車通信手「生身でハンバーグ砲撃する人間と比べたら、ヘッツァーはまだ常識的……なのかな……」
逸見車装填手「どっちにしても動揺するよね、それ……」
エリカ「ああああああ、終わった話は終了! おしまい!」
エリカ「そんなことより我々も間もなく市街地、直接奴らに手を下せることに歓喜しながら戦闘に意識を切り替えなさいっっ!」
逸見車操縦手(やっぱり軽い黒歴史になってるんだ……)
眠気で意識がトビかけてきたので寝ます
体をぶっ壊してました。流行病には皆さんもご注意下さい。ちょっとだけでも投下します。
逸見車通信手「敵発見とのことです!」
エリカ「よし、このまま私達の手で落とすわよ!」
キュラキュラキュラキュラ
逸見車砲手「うーん」
逸見車装填手「小回り活かされてるねえ」
逸見車砲手「これだけ頻繁に曲がられると気安く撃てませんけどどーしましょ」
逸見車通信手「フレンドリーファイア怖いもんねえ」
エリカ「くっ……」
エリカ(互いの戦車の強み・弱みを的確に把握したうえでの立ち回り……)
エリカ(本来総合力で圧倒的に劣るにも関わらず撃墜されぬよう策を弄してくる……)
エリカ(何回見ても気にいらないけど、でも――)
エリカ「鮮やかすぎてムカつくわね……」
エリカ「絶ッッ対! 叩き潰すわよ!」 ゲシゲシ
逸見車操縦手「痛い痛い、蹴りすぎですって!」
エリカ「ええい邪魔よ!」
逸見車砲手「隊列を乱さないよう言われてたし、柔軟に道をあけたり、なんてのは出来ないですって」
逸見車装填手「順番は守らないと……」
エリカ「むっきー!」 ジタバタ
エレファント車長『こちらエレファント、M3にやられました!』
エリカ「何やってんのよ!!」
逸見車砲手(本当にどうやったんだろう……?)
エリカ「黒森峰が……西住流は最強なのよ!」
エリカ「こんな……こんなところで、こんなことで負けていいはずがないのよっ……!」
逸見車通信手「あっ」
エリカ「今度は何!?」
逸見車通信手「ヤークトティーガーやられたみたいです……」
エリカ「はあ!?」
エリカ「何やってんのよ!」
エリカ「相手にはもうまともな火力は残ってないのよ!」
エリカ「いやまあ最初からまともな戦車なんてなかったようなものだけれども!」
逸見車通信手「よりにもよってM3と刺し違えたみたいです!」
エリカ「だから! 何をどうすれば! そんなことになるのよ!」
エリカ「ああもう!」
エリカ(分かっていてもイライラするし、わけがわからずモヤッとくるわね……)
エリカ(今のあの子を知らなかったら、多分もっとやばかったわ……)
エリカ「もういいわ、考えたってわけがわからないものは無視!」
エリカ「このまま隊長とフラッグを落とせば問題ないわ!」
エリカ(普通にやれば隊長が負けるわけがない)
エリカ(だけどあの子は……普通にやらせないことにかけては天才的ッ)
エリカ(最悪自分を盾にしてでも、あの子の作戦は叩き潰すッ)
エリカ(無駄弾もバンバン使えるわけじゃないし、あのボケ娘の運転技術は腹立たしいけど一流)
エリカ(下手に打って隊長車に当てるわけにもいかないし……)
エリカ(何とか包囲して援護したいけど、そう簡単にさせてはくれない……)
エリカ「……このまま進めば、開けたところに出る……?」
逸見車砲手「あー、そこまで追い込めたらあとは包囲できるんじゃないですか?」
エリカ(いや……)
エリカ(それに気付いていないはずがない……)
エリカ(地形や有利不利を把握し、それを使って策を弄するのがあの子のやり方……)
エリカ(絶対に何かが……)
エリカ「他の2輌はどこ!?」
逸見車装填手「他の2輌……?」
エリカ「大洗のよ!」
逸見車通信手「ええと、ちょっと待って下さい確認しますっ」
小梅『あ、もしもし逸見さん?』
エリカ「何よ、こっちは今忙しいんだけど!」
小梅『奇遇だね、こっちも今忙しいよ』
エリカ「はあ?」
小梅『こちらロート小隊、現在八九式を発見し追撃中』
小梅『……逸見さん、すごく大洗の戦略を気にしてたしさ』
小梅『一応、向こうの行動報告しておこうかと思って』
小梅『座標と向こうの行動、そっちの通信手さんに細かく連絡させとくね』
エリカ「……」
エリカ「やるじゃない、感謝してあげるわ」
小梅『あはは』
小梅『そういうときはもっとシンプルに「ありがとう」でいいのに』
小梅『もしくは「愛しているよ」で』
エリカ「忙しいから切るわよ」
エリカ「ポルシェティーガーは誰か目撃してないか確認して」
エリカ「もし誰も目撃していないようなら、待ち伏せの可能性が――」
逸見車操縦手「あっ」
エリカ「どうしたの」
逸見車操縦手「……目撃しました」
エリカ「は?」
逸見車操縦手「ポルシェティーガー」
逸見車砲手「……っていうか、また上半身出して前見たらすぐ見ること出来る位置に」
エリカ「ッ!」 ガコン
エリカ「しまったっ……!」
エリカ(ただの待ち伏せによる砲撃なら、隊長だって警戒しないはずがない……)
エリカ(射程や潜伏出来る場所は頭に入っているだろうし、遮蔽物などのチェックも怠っていない)
エリカ(撃って一撃で仕留めるなんて芸当、あのブリザードのノンナかサンダースのナオミでもなければ不可能)
エリカ(なのにこいつらっ……)
エリカ(撃っても仕留められないからって、敢えて砲撃を度外視することで、隊長の警戒を潜り抜けるなんてっ……!)
逸見車操縦手「ど、どうしましょう! 道を塞がれたんですけど!」
エリカ(分断されたッ……!)
エリカ(あの子の狙いは最初から、タイマンっ……!)
ズドムッ
逸見車操縦手「撃ってきたぁ!」
逸見車装填手「ってそりゃそうだ!」
エリカ「ええい撃ち返して!」
エリカ「あんな失敗兵器、さっさとスクラップにしなさい!」
逸見車砲手「え?」
エリカ「何よ!」
逸見車砲手「あ、いや……」
逸見車砲手(最近親しみやすくなったとはいえ、やっぱまだ怖いっていうか何ていうか……)
逸見車砲手(まあ、うちは上下関係厳しくて、車長の言うことだもんね……)
逸見車砲手「了解でーす」
ズドムッ ズドムッ
エリカ「何やってるの、失敗兵器相手に!」
逸見車操縦手「あっっぶ!」
逸見車通信手「失敗兵器のわりにめちゃくちゃしっかりしてないあれ!?」
エリカ「あんのクソチートメカニックどもめ……!」 ギリッ
エリカ(砲手や戦車乗りの技量は凡骨そのものでよかったけど……)
エリカ(あのメカニック能力は脅威だし、不気味)
エリカ(さっさと落として駆けつけないと……)
エリカ(あの子のこと、まだ何か策を弄してくるかもしれないっ……!)
エリカ「隊長、我々が行くまで待っていて下さい!」
エリカ(隊長が不覚を取るはずなんてない……ないけど……)
エリカ(でも……二人で戦わせるなんてことはできないっ!)
エリカ「撃て!」
エリカ「総攻撃であの失敗兵器をただの鉄屑に変えてやるのよ!」
ズドンズドン
シュポッ
『大洗女子学園、ポルシェティーガー、八九式中戦車、走行不能!』
エリカ「!」
エリカ(よし、赤星も上手くやってる!)
エリカ(これで仲間を使った戦術はもう使えない)
エリカ(フラッグ車を囮にして策にはめる常套手段は封じたわよ!)
エリカ(あとは策を弄す暇がないよう、物量で押し切るッ!)
エリカ「突撃ッ!」
エリカ「中央広場へ急げ!」
逸見車操縦手「ポルシェティーガーが邪魔で通れません!」
エリカ「ッ!」
逸見車砲手「……」
エリカ(この顔……この娘、まさか気付いて……)
エリカ(じゃあ何で言わな――)
エリカ(いや……仕方がない……車長の言うことは本来は絶対)
エリカ(車内であんなに意見がバンバン出されて採用される大洗こそ異常なのよ)
エリカ(これは気付けなかった私の失態ッ……!) ギリッ
エリカ(あんな馬鹿でかい鉄屑、邪魔になるって分かっていたはずなのにっ……!)
エリカ「回収車急いで!」
レオポンさんチーム「「ゆっくりでいいよ~」」
エリカ「……ッ」 ギリィ
エリカ(不味い不味い不味い)
エリカ(こうしている間にも、あの子と隊長が一騎打ちをしてしまっているっ……!)
エリカ(何とかしないと……何とか……)
小梅『逸見さん』
エリカ「切るわよ」
小梅『わーっ、待って待って』
小梅『状況を聞いてて、大丈夫かなって心配してるんだから』
エリカ「るっさいわね!」
エリカ「ちっとも大丈夫なんかじゃないわよ!」
エリカ「回収車まだなの!?」
逸見車通信手「わ、わかりません~」
逸見車砲手(うー、めちゃくちゃカリカリしてる……)
逸見車操縦手(何でそんなに追い込まれてるんだろ、隊長なら大丈夫だろうに……)
逸見車通信手(赤星さんに助け求めてよかったかもしれない……矛先こっち来なくなるし……)
小梅『何だかすごく焦ってるみたいだけど……』
小梅『そんなに隊長が心配?』
エリカ「当たり前でしょ!」
エリカ「アンタとあの子のせいで10連覇が途絶えて、隊長や私達の肩にどれほどのものが乗っかってると思ってるのよ!」
小梅『……』
エリカ「あっ……」
エリカ「その……」
エリカ「……」
エリカ「でも事実じゃない」
エリカ「万が一でも負けるわけにはいかないの!」
エリカ「隊長のため、黒森峰のため!」
エリカ「それに、私自身のためにも!」
小梅『……素直に謝るのも大事だと思うけど』 ポソ
エリカ「……何よ」
小梅『まあいっか、これからまた怒られるかもしれないこと言うし』
エリカ「は?」
小梅『……そんなに想ってるならさ』
小梅『そんなに焦っているなら――手段、選んでる場合じゃないんじゃないかな』
エリカ「……そりゃあ、わかってるわよ」
エリカ「でも、回収車を待つ以外に手段が――」
小梅『私達はそっちに行けないから何も手助けできないけど、そっちはポルシェティーガーに落とされず全車輌無事なんだよね』
エリカ「当然よ」
小梅『じゃあさ、出来るんじゃないかな』
エリカ「?」
小梅『ほら、マウスがやられたっていう』
小梅『味方の戦車を足場にして、相手の戦車に乗り上げるやつ』
エリカ「……!」
エリカ「……」
エリカ(確かに……大分キツイけど、できなくはない)
エリカ(アイツを乗り越えて先に進めば、回収車を待たずとも……)
小梅『どうするかは、逸見さん次第だよ』
小梅『……何を重んじたいのか、自分の心に従ったほうがいいとは思うけどね』
小梅『……私はそれが出来ず、学校の方針だとか、常識だとか世間の目だとか、そういう物差しで色々考えちゃったから』
小梅『だからさ』
小梅『どうせどっちを選んでも引きずる可能性があるなら』
小梅『自分がいちばん信じたい道を、一番やりたいことをやるのがいいんじゃないかな』
エリカ「……」
エリカ「ふん、そんなこと、言われるまでもないわよ」
小梅『もう、素直じゃないなあ』
エリカ「……」
エリカ「ありがと……」 ポソ…
小梅『え、なに? 聞こえなかったけど』
エリカ「なんでもないわ」
小梅『待ってもう一回言って! 録音するから』
エリカ「聞こえてンじゃないの!」
エリカ「ったく、切るわよ!」
エリカ「……」
エリカ(私は西住流が大事)
エリカ(でも……それ以上に隊長が大事)
エリカ(私にとっての西住流は、あの人そのものだ)
エリカ(例え私が何をしてしまおうと、あの人さえ無事で勝利を飾れたなら、それでいい)
エリカ(それで西住流の名は守れるし、この学校だって復権できる)
エリカ「戦車前進!」
逸見車操縦手「え!?」
エリカ「味方を踏み台に奴を踏み越える!」
エリカ「隊長の元に馳せ参じるわよ!」
ギャリギャリギャリ
逸見車通信手「アンタ達強引だって、ってクレーム来てますけど」
エリカ「無視!」
エリカ「学園艦単位で鏡でも送ってあげなさい!」
逸見車操縦手「やった、乗り越えた!」
逸見車通信手「あ、逸見さん、狭いから中に入らないと危な――」
エリカ「かまわないわ!」
エリカ「戦車内は特殊カーボンで守られてるのよ、気にせず全力疾走よ!!」
逸見車通信手「戦車内だけなんだけどな……」
逸見車操縦手「ああもう、どうなっても知りませんよ!」 ブロロロロロロロ
エリカ(急げ急げ急げ急げ急げ!)
エリカ(あの子が奇策で万に一つの奇跡を呼び寄せる前にっ……!)
逸見車装填手(どうして逸見さん、あんなに必死な顔なんだろう……隊長なら私達抜きでも負けないだろうに……)
エリカ「今行きます、待って下さい隊長ッ!」
逸見車通信手(天井ギリギリすぎて下手に盛り上がりとかあったら逸見さんの頭がすりりんごみたいになりそう……)
エリカ「……っ!」
出来るだけ飛ばしてきた。
もっと早く、赤星に言われる前に気付けたら、或いは間に合えたのかもしれなかったけど。
エリカ「隊……長……」
でも――そんな仮定は、無意味である。
分かっていても、思わずにはいられない。
きっと赤星も、あの滑落について何度も何日も無意味な仮定を思い描いたのだろう。
『黒森峰フラッグ車、走行不能』
着いたときには、全てが終わっていた。
文字通り、終わっていたのだ。
試合も、黒森峰の栄華も。
土煙が晴れ白旗が見えると同時に、耳障りなアナウンスが聞こえてきた。
『よって、大洗女子学園の勝利!』
時間が時間なので一旦終わります。1周年を迎えることだけは避けたい。
こういうスレって、一区切りついたら一旦スレ落として劇場版の方は2スレ目としてやるのがメジャーなのだろうか
それとも行けるとこまで行って埋まってから次スレにするのがメジャーなのだろうか
投下します
エリカ「……」
まほ「……」 カツカツカツ
エリカ(何を、言えば……)
エリカ(謝罪? あの子とタイマンにさせたことへの?)
エリカ(それを隊長は受け入れるか?)
エリカ(いや、でも、実際に私が不甲斐ないせいで、黄金時代になるはずが、二年連続のV逸……)
まほ「……」 スッ
エリカ「あ……」
エリカ(何も……言えなかった……)
エリカ(涙も流さず、しっかりと前を見ているその姿……)
エリカ(きっと、私には想像もつかないレベルで反省と次を見据えた思考をしているんだろう……)
エリカ(あの人達に追いつくには、それが必要……)
エリカ(泣いてる場合じゃない……)
エリカ(他の子達みたいに無様に下を向いて、泣いてる場合じゃ……) ジワッ
小梅「残念だったね」 チーーーーーン
エリカ「おわーーーーーっ!」 ドゴッ
小梅「ふ、振り向きザマにナイスエルボぅ……」 ハナヂダバー
エリカ「うっ、わ、悪かったわよ……つい……」
エリカ「つーか何よさっきの」
小梅「えーっと、万が一負けたときのためにと思って」
小梅「仏具店で、チーンって鳴らすやつと、ポクポク叩くやつを」
エリカ「何でそんな飛び切り不吉かつ不要なモンを準備してんのよ」
小梅「負けた時しんみりした空気が和むかなーって」 チーンチーンチーン
エリカ「やかましいわ!」
小梅「でもトライアングルの音色とか、こういう音色ってちょっと心が穏やかになるらしいよ」 チーンチーンチーンポクポクチーンポクチーンポチーンポク
エリカ「木魚を混ぜてリズミカルに叩くんじゃないわよ」
小梅「でもこう、買ったあと皆で遊んでたら、難しいレベルの太鼓の達人『夏祭り』なら木魚で叩けるようになったんだよ」 ポクポクポクポクポクポクチチチン
エリカ「何バカみたいな努力に時間費やしてンのよ!」
逸見車装填手「……」 プルプル
エリカ「ほら! さっきまで泣いてたアホがちょっと笑いこらえ始めてるじゃない!!」
エリカ「ったく……アンタまじここ最近で急に変なことになってきてるわね……」
エリカ「こういう時、真っ先に泣いてトイレに篭りそうな子だったのに」
小梅「あはは……」
小梅「まあ、最近急に変になった度合いなら逸見さんの方が上だし……」
エリカ「ぐっ」
小梅「それに、今年は負けて悲しいのも、きっと逸見さんの方が上だと思うから」
エリカ「……」
小梅「なんだかんだで私は逃げ回っちゃった時期も長いけど、逸見さんは去年負けてからすぐ未来を見据えてたでしょ」
小梅「それに、私達の中で誰よりも優勝旗奪還への情熱を持っていたから」
小梅「……だから、放っておくと、まともに悲しんだり怒ったり出来ないんかもって」
エリカ「……何よソレ」
小梅「去年さ」
小梅「……いつまでも私とみほさんの失態に拘って、終わったことに縛られ続けて皆が前に進めなくなっていた時期、あったじゃない」
小梅「でも逸見さんは、隊長の背中を追いかけて、未来を見ていて」
小梅「……ものすごーく厳しいし、誤解されそうな形だったけど、私やみほさんのお尻を叩いてくれたよね」
エリカ「……別に。リベンジのためにも、いつまでもウジウジされてたら目障りだっただけよ」
小梅「誤解されてもしょうがないどころか恨んだとしても逆恨みじゃなく正当な恨みだよなってくらい厳しかったけど」
小梅「その結果みほさんは黒森峰を辞めちゃったみたいなところもあるけど」
エリカ「な、なによ、それはあの子が弱かったからでしょ!!」
小梅「まあ、でも、逸見さんなりに励ましてくれてたわけだし」
小梅「おかげで皆同じ所にウジウジとどまらずに済んだのは事実だもん」
小梅「私は逃げてたところからちょっとだけ前に踏み出せたし」
エリカ「今思うと一生閉じこもってもらうべきだったわ」 ハァ
小梅「みほさんも、逃げ出しちゃったけど」
小梅「……でも、閉じこもって足踏みせずに逃げたからこそ、今のみほさんが居るんだもんね」
小梅「やっぱり、逸見さんのおかげっていうのも、ちょっとくらいあると思うよ」
小梅「ポカリスエットの果汁くらいは」
エリカ「分かりにくいけど少なそうってことは理解したわ」
小梅「まあ、そんなわけで、間違ってるかもしれないけど、私は私なりに今年は逸見さんに恩を返そうかなって」
エリカ「受取拒否で返品したいわ」
小梅「それにほら、今年は私戦犯じゃないっていうか、私自身は良かったし」 フンス
エリカ「アンタそれを私の前で言うか」
小梅「うん。去年はそれを言われるサイドを一身に背負ってたから」 フフ
エリカ「ったく……」
小梅「……泣くでも腹立つでも呆れるでもさ」
小梅「なんでもいいから、その、想った気持ちを受け入れて、発散するって、大事なことだと思うよ」
小梅「隊長みたいにすぐ切り替えて前を向きたいのは分かるけどさ」
小梅「逸見さんは隊長じゃないんだし……」
エリカ「……そんなこと、わかってるわよ」
小梅「憧れの背中を追い続ける所、私は好きだよ」
小梅「でも――」
小梅「無理をして気持ちを押し込めて、整理も出来てないのに出来てる顔して追いかけてたら、いつか躓いちゃうよ」
エリカ「……そうね」
エリカ「それは、そうかもしれないわ」
エリカ(まだ……やっぱり、色々思うことはあるものね……)
小梅「だから、泣いてもいいし、怒ってもいいんだよ」
小梅「ハンバーグを吐いてもいいし」
エリカ「2・3発殴ってもいい?」
小梅「それはだめ」
エリカ「ふん、じゃあいいわ」
小梅「……泣きたくなったら言ってくれたら、直下さん達とどこか出かけるくらいするからね」
エリカ「……はいはい」
エリカ「……」
エリカ「ま、一応感謝はするし、頭の片隅にくらい置いておいてあげるわ」
エリカ「さ、皆顔を上げて」 パンパン
エリカ「泣くなら黒森峰に帰る途中か、帰ってから泣きなさい」
エリカ「……会場には、今年の黒森峰を支援してくれた人達もいる」
エリカ「せめて最後まで格好つけて、強豪らしくここを去るわよ」
逸見車砲撃手「……うん」 グスッ
ドドメ色星「記念に土を持って帰ろう」 グスッ
黒星「うう……この土を見る度に、これからこの大会を思い出すんですね……」 グスッ
小梅「あ、記念に地面スレスレのローアングルから土集めてる写真撮ろうか?」
エリカ「やめなさい」
エリカ「ほらさっさと乗り込んだ乗り込んだ」
小梅「もうすっかり復活しちゃって」
エリカ「……泣くのは自室でって決めてンのよ」
小梅「へー」 ニヤニヤ
エリカ「……大体運転するのは私の役目なんだから、涙で視界をぼやかせるわけにもいかないでしょ」
小梅「確かに」
小梅「ぼやけた視界で川に落ちて事故か自殺かなんて言われたら最悪だもんね」
白星「そして助けに来る元副隊長」
直下「しかしそれは現隊長・逸見エリカの狡猾な罠だった」
エリカ「置いてくわよアンタら」
ブロッケンJr「まあそうカリカリするなよ」
ブロッケンJr「一本吸うか?」
エリカ「ちょ、何問題になりかねないモンを――」
ブロッケンjr「毒ガス」
エリカ「吸わないわよ! 想定より数倍ヤバいもんだし何歳になっても吸ったらダメなヤツよそれ!」
ブロッケンjr「はっはっは、ちょっとしたジャーマニージョークさ」
エリカ「アンタまじ鉤十字のアイコンといい、いつか退学させられるわよ」
まほ「待たせたな」
エリカ「いえ!」
エリカ「隊長でしたら何年でもお待ちできます!」
まほ「はは」
まほ「私もエリカならどのくらいでも待っていられるよ」
エリカ「えっ……」 トゥンク
まほ「まあ、さっきは待てずにみほと戦り合って、無様に負けてしまったんだけどな」 ハハ
エリカ「え、あ、はは……」 ズーン
まほ(……しまった、失言だったか)
まほ(引退した後じゃ何もしてやれないし、何とかこの敗戦を引きずりすぎないよう小粋なジョークで和ませようと想ったのだが……)
まほ「あー」
まほ「こうして荷台に人が敷き詰められていると、まるで捕虜か人身売買のようだな」
まほ「これが戦車道でなく戦争だったら、このまま奴隷市場に運ばれていたのかもな」 ハハ
エリカ「は、はあ……」
まほ「……」
まほ(あまり笑いに詳しくない私にでも分かる。これはドン引きの空気というやつだ)
まほ(助けてくれ安斎。お前どうやって毎回毎回もりあげてたんだ。お前すごかったんだな安斎……)
まほ(誰か助けて……)
エリカ(ど、どうしよう、空気が完全に凍りついた……)
みほ「お姉ちゃん」
まほ「!」
エリカ「!」
みほ「……」 トテトテ
まほ(救世主だ……)
エリカ(助かった……)
まほ「優勝おめでとう」
まほ「……」
まほ「完敗だな」
エリカ「……」
エリカ(そう、完敗)
エリカ(あれだけ戦力差があったのに、あと1輌まで追い詰めたのに)
エリカ(まんまと策にハマって分断されて、フラッグ車とタイマンに持ち込まれて)
エリカ(そして――誰より強い隊長が負けて、試合が終わった)
エリカ(言い訳不能なくらいの完敗)
まほ「……」 スッ
みほ「……!」 パァァァァ
エリカ(握手、か……)
エリカ(不思議な気持ちだわ……)
エリカ(かつて夢見た光景のはずなのに、どうしてこう、胸がざわつくのかしら)
エリカ(……あの場に、私は混ざれないからかな)
エリカ(まだ、実力面でも、人間としても、あそこに混ざるに相応しい存在になれてない)
小梅(……)
小梅(地上最強の姉妹喧嘩、ここに終結ッ!!)
小梅(とか言う空気じゃないよね、これ……黙って見ておこ……)
まほ「……」
まほ(掌にメッセージでも書こうと思ってやったんだが、なるほど握手か……)
まほ「……」 ニギニギ
まほ(大きくなったな……)
まほ(私の見ぬ、ほんの数ヶ月で……)
まほ「みほらしい戦いだったな」
まほ「……西住流とはまるで違うが」
エリカ(……そう、西住流とはまるで違う)
エリカ(でも――強かった。隊長が、認めるくらい)
みほ「そうかな?」
まほ「そうだよ」
エリカ「……」
エリカ(本来は色々思うべき所があるはずなのに、余計なものが頭をよぎるし、ネットサーフィンのしすぎも考えものね……)
エリカ(日常会話にしれっと潜むネットスラングやAAネタみたいなので笑いそうになるし、そりゃ口数も少なくムスッとするしかなくなるわよ……)
みほ「……あ」
優花里「……」
エリカ「……」
エリカ(最初はただのオタクだったのに、気付いたらあの子の信頼を誰より得ていた……)
エリカ(黒森峰とは毛色が違うけど、確かに戦車の知識は豊富だった)
エリカ(……もっと、あの天パにも警戒すべきだったわ)
華「……」
エリカ(……あのそこそこ突っかかってきたバカ食いロング)
エリカ(意味の分からない発言も多いくせに、射撃能力だけは高かった)
エリカ(アイツさえいなければ、隊長だって落とされなかったかもしれないのに)
エリカ(……射撃の腕ならウチの平均も相当高いけど、無茶な状況で撃たされ慣れてるから、動じないしどんな場面でも安定してるのよね)
エリカ(ムカつくけど……学ぶことはあるわ)
麻子「……」
エリカ(眠そうなカチューシャ女……)
エリカ(あの子のドライビングテクニックは天性のものだし、変な勘は鋭いし、ムカつくけど天才だわ)
エリカ(……うちにだって、あそこまでの者はいない)
エリカ(でもそれだけに、あれだけ突出してたら足並みは揃えにくいはず)
エリカ(……動転せず、高いレベルで統率された隊列を維持できていれば、あるいは……)
沙織「……」
エリカ(ゆるふわスイーツ脳ビッチ……)
エリカ(私個人としては大嫌いだけど、でも、あんなヤツがあの子の心を解きほぐしたのよね……)
エリカ(……)
エリカ(私も、ああなれていたら、何かが変わっていたのかもしれない)
エリカ(でも……)
エリカ「私は、ああはなれないし、なりたいとも、思えなかったものね……」 ボソ
みほ「……じゃあ、行くね」
まほ「……ああ」
小梅「……」 チラ
エリカ「……」
エリカ(そんな目されなくても、わかってるわよ……)
みほ「……お姉ちゃん」
まほ「ん?」
みほ「やっと見つけたよ」
みほ「……私の戦車道!」
エリカ「……!」
エリカ(戦車道、か……)
エリカ(あの子の戦車道は、黒森峰にはなかった……)
エリカ(……分かってたけど、あの子は大洗で、見つけたのよね……)
エリカ(……Ⅳ号として傍にいたから、そんなこと分かっていたはずなのに)
エリカ「……」
エリカ(何にどうして、こんなにチクリと胸が痛むのかしら)
エリカ(傍にいれなかったから? 道を違えたから?)
エリカ(……置いて行かれたような気がするから?)
エリカ「……」
エリカ(黒森峰の、西住流の戦車道こそが、最強だって思っているのに)
エリカ(なのに、なんで、遅れを取っているかのように思えるんだろう)
エリカ「……ああ」
エリカ(そうか――)
エリカ(私はただ、黒森峰と西住流に憧れているだけだからだ)
エリカ(私は、まだ――あの子と違って、自分の戦車道というものを、見つけられていないんだ……)
まほ「……うん」
エリカ(ああ、クソ……)
エリカ(どんどん思い知らされる)
エリカ(自分が、決して特別な強者じゃないことを)
エリカ(まったく、穴があったら入るどころか、世界中の人間を穴に埋めてやりたい気分だわ……)
エリカ「……次は、負けないわよ」
エリカ(でも――)
エリカ(こんなところで、くじけてなんてやるもんか)
エリカ(私だって……ちっぽけな意地はある)
エリカ(あの人に、アンタに、並び立ちたいんだ)
エリカ(まだ、ふわっとしたものしかないけど)
エリカ(でも――)
みほ「……はいっ!」 ニコッ
エリカ(いつの日か、その背中に追いつきたい)
エリカ(あの日、Ⅳ号として共に歩いたときのように)
エリカ(今度は――“逸見エリカ”として、並び立ちたいっ……!)
しほ「……」
しほ「……」
しほ「……ふっ」
しほ「……」 パチパチパチ
しほ「……」 パチパチパチ
しほ(今なら、素直にみほに拍手を送れる)
しほ(誰も見ていないから、というのもあるけれど)
しほ(……そういう意味じゃ、今は一人でよかったのかもしれない)
しほ(でも、それはそれとして……)
しほ「……完全に置いて行かれたわね、私……」
朝早いのを思い出したので、もうちょいでテレビ編終わるとこですが切り上げて一旦投下を終えます
結局どっちにするのがええんや……
とりあえずもう数レスでテレビ編は終わりなのでそれだけ投下して寝ます
ブロロロロロ
エリカ「隊長」
エリカ「……よかったんですか、置いてきてしまって」
まほ「ああ」
まほ「お母様は、まだ当分戻ってこられないだろうしな」
エリカ「そうなんですか?」
まほ「……あれだけの期待がかかっていたのに、2年連続で優勝を逃した」
まほ「鳴り物入りで早期に隊長職についた、実の娘が、だ」
まほ「……様々な批判も出ている頃だろうし、頭を下げ、またしっかりと弁明するのに追われるだろう」
小梅「……2位だって、十分凄いのになあ」 ポソ
エリカ「あんたね、聞こえたわよ」
小梅「え、あ、ごめんなさい……」
まほ「いや、いいさ」
まほ「……実際、二位になれただけ、胸を張ってもいい」
まほ「それだけ、周りのレベルも上がってきている」
エリカ「……」
まほ「だが……それでも……」
まほ「私達は、王者であることを、求められていたんだよ」
エリカ「……」
エリカ「隊長、その……」
エリカ「本当にすみませんでした……」
エリカ「誰より黒森峰が強くなくちゃいけないって思っていたはずなのに、ちっともお役に立てず……」
まほ「そんなことはない……」
まほ「が、もし、本当にそう思っているなら」
まほ「……来年は、こうならないように頑張ってくれ」
まほ「来年はみほ達のチームも健在なようだから、難しいだろうが」
エリカ「いえ……」
エリカ「絶対に……来年こそはっ……!」
キキーッ
ボフン
エリカ「……」
小梅「わあ、見事に顔面から……」
直下「エアバッグってすごい……」
逸見車装填手「折角格好つけて決意表明してたのに……」
小梅「でも、まあ、締まりきらないのが、また逸見さんらしいというか……」
エリカ「どーいうことよ……ってて……」
小梅「なんかこう、丸に囲まれた画面で『もう戦車道なんて懲り懲りよ~』なんて言って、そのまま円が小さくなって画面が真っ黒になって終わり、みたいな」
エリカ「あんたねえ」
直下「ところでどうしたんですか、急に止まったりして」
まほ「いや……お母様から連絡があって……」
まほ「弁明あいさつ回りしなきゃいけないところが多すぎて無理だから一旦一緒に戻るそうだ」
エリカ「あまり知りたくなかった裏の事情ですね……」
小梅「大丈夫? やめたくなっちゃったりしてない? もう戦車道なんて懲り懲りだよ~みたいな」
エリカ「ならないわよ!」
エリカ「っていうか、そんな意味不明なフレーズにハマるのやめなさいよ……ったく……」
小梅「ダメかな」
エリカ「ダメよ」
小梅「しょうがないかあ……」
小梅「じゃあ右隣に置いておいて」
直下「右隣の私がそれを拾い上げて再利用すると」
エリカ「こういうときだけ謎の連携プレーするのやめなさい」
直下「怒られたから更に右隣に置いて、と」
逸見車装填手「わあ、私の番だ」
逸見車装填手「さっさと次に回しちゃおう」
エリカ「何でちょっと爆弾ゲームみたいになってるのよ!」
まほ「ははは……」
エリカ「た、隊長……?」
まほ「まあ……たまにはいいんじゃないか?」
まほ「毎日このノリをされると正直困るが……」
まほ「たまにはいいだろう」
まほ「……私は、そういうノリを呼び寄せる隊長じゃなかったし、その結果がコレだからな」
まほ「違うやり方だって、色々試していけばいい」
エリカ「……」
エリカ(そりゃあ、隊長が隊長になってから、2年連続でアレだったけど……)
エリカ(それでも、私が目指したい背中は――)
小梅「こうして、逸見さんの戦いは幕を閉じるのでした――完」
エリカ「何勝手に終わらせてンのよ」
小梅「えー、でもこう、エンディングって感じの空気だったし」
エリカ「……全国が終わったって、終わりじゃないのよ」
エリカ「あくまでこれは小休止」
エリカ「学校に戻ったら、隊長に残り少ない指導をみっちりつけてもらわなくちゃいけないんだからね」
小梅「はーい」
小梅「……」
小梅「今の笑顔で、こう、映画とかならイントロが流れて主題歌ドーンみたいなやつだよね」
エリカ「知らないわよそんなの」
ブロロロロロ
キキーーーーッ
小梅「あれ、あのジープって……」
アンチョビ「お、おおっ、お前たち!」
やっとー目をー覚まーしたかいー
エリカ「あんたら……屋台もせずに今まで何を……」
アンチョビ「えーっと、その……」 ゴニョゴニョ
エリカ「……」
エリカ「は?」
エリカ「宴会したせいで寝過ごしたあ!?」
こーれーでも出来るだけ飛ばしてきたんだよおー
小梅「過去の友好相手との遭遇、なんていうかエンディングって感じがしてしんみりするよねえ」
エリカ「この馬鹿と馬鹿が集まった結果生まれてしまった馬鹿のお子様ランチみたいな連中を前にどうすればしんみりできるのよアンタは」
小梅「……まあ、でもあれだよ」
小梅「しんみりするかとか、エンディングとかそういうのはともかく……」
小梅「実際全国大会は終わっちゃったんだし、何かコメントとかってないの?」
エリカ「無いわ」 キッパリ
エリカ「……今は何を言おうとしても恨み節か後悔だけだろうし」
小梅「んー……」
小梅「せめて、こう、『這い上がろう。負けたことがあるということが、いつか大きな財産になる』みたいなさ」
エリカ「……そんなわけないでしょ」
エリカ「そういうセリフは所詮は詭弁」
エリカ「負けなんて、財産になるわけないでしょ」
エリカ「そんなのは、負ける余地がある弱者だからこそ、弱点が分かって成長できてよかったねってだけの話」
エリカ「私達レベルにもなると、負けなんて負債でしかないわ」
小梅「……」
小梅「隊長はともかく、逸見さんは改善の余地がいっぱいあるんじゃ」
エリカ「そこの馬鹿が沸かしてるお湯にパスタの代わりにぶちこむわよ」
小梅「でも実際、去年の負けから、逸見さん、だいぶ変わったかなあって思うし……」
エリカ「……」
エリカ「ま、まあ、あのときは、確かにまだ未熟だったから……」
小梅「あ、そこは認めるんだ」
小梅「実際あのときの影響か、ここ数ヶ月の逸見さん、すごく変わったなあって思うしさ」
小梅「今回の負けでも、だいぶ柔らかくなったと思うけど……」
エリカ「……ないない」
エリカ「別に負けたら柔らかくなるなんてことないわよ」
小梅「そうかなあ」
小梅「意識無い時に揉みしだいてみた逸見さんのおっぱいばりに柔らかくなってると思ったけど……」
エリカ「今固くなったわ主に握った拳が」
小梅「うーん、柔らかくはなったと思うんだけどなあ」
アンチョビ「ああ、それは私も思ったな」
エリカ「はあ?」
エリカ「……ったく、変なとこで会話に入ってこないでさっさとパスタ茹でなさいよ」
エリカ「大洗激励に使う予定だった麺とかいうフザケたシロモノだけど、お腹は減ってきてるし食べてあげるわ」
アンチョビ「これでもうちょっと素直になってくれたらなー」
小梅「でもそうなると逸見さんの魅力が……」
直下「確かに半減だよね」
エリカ「全員パスタの代わりにゆでダコにするわよ」
アンチョビ「しかしまあ、敗北を知ったからじゃないなら、何でそこまで丸くなれたんだ?」
アンチョビ「うちは結構気性荒い子もいるし、ドぎつい跳ねっ返りも多いからさ」
アンチョビ「自分のためにも、来年を任すペパロニやカルパッチョのためにも、そういう情報は聞いておきたいなあって」
エリカ「恥も外聞もなく情報ねだってくるなんて……」
アンチョビ「まあまあ、こっちは明日さえ知らない身」
アンチョビ「腐っても9連覇の偉業をなしとげた超名門の絶対王者」
アンチョビ「まさか相手を強化したくないから、なんてみみっちいことは言わないだろー?」
アンチョビ「頼む、このとーり!」
アンチョビ「ペパロニとカルパッチョじゃお前みたいな跳ねっ返りを扱えなさそうだし、割りとマジで聞いておきたいんだって!」
小梅「こんなに頭下げてるし、教えてあげた方がいいんじゃないかな。全裸」
エリカ「はいはい分か――らないわよ! 服は着るわ!!」
小梅「残念……」
エリカ「ったく……ドア・イン・ザ・フェイスにしてももうちょっと上手くやりなさいよ……」
まほ「……良ければ教えてやってくれ」
まほ「安斎には世話になっているし、ライバルは強い方がいいだろう、エリカも」
エリカ「わかりました」
エリカ「っていっても、丸くなんてなったつもりないですし、どうして丸くなったのかみたいに言われても――」
エリカ「……」
エリカ「あ」
アンチョビ「お、どうした? 何か心当りでもあったのか?」
エリカ「……」
エリカ「まあ、そうですね」
アンチョビ「へえ、それで、それで?」
エリカ「……」
エリカ「自分自身が戦車になる」
エリカ「そうすれば、丸くもなるし、色々なことが分かるようになりますよ」
アンチョビ「……」 ポカーン
小梅「……」 ポカーン
まほ「自分自身が……? それは何かの比喩か……?」 キョトン
エリカ「……」
エリカ「ふふ……」
エリカ「冗談ですよ」
アンチョビ「な、なんだよー! 一瞬マジかと思っただろ!」
小梅「目がマジっぽかったですもん」
エリカ「狙いを悟らせない、なんてのは戦車戦の基本だもの」
キャイキャイキャイ
まほ「……」
まほ(自覚はないのかもしれないけど……やっぱり丸くなったよ、エリカ……)
まほ(そんな風に笑うようになってくれて、とてもうれしい)
眠気が限界だし、もうこれでテレビ編は終わり時間飛ばそうと思います
バシッとテレビ編でも区切り!みたいな感じで追われなかったし、このままこのスレで続き投下していきます
どうせ次スレは必須なので、埋まるからとか気にせず書きたいことがあれば書いてもらえたらと思います
待ってもらってるようなので投下します
エリカ(あれから時は流れて……)
エリカ(練習の中心は、徐々に徐々に1・2年生へと移ってきていた……)
エリカ(残された時間を使って、3年性が培ったものを後輩達に伝えるためかのように……)
エリカ(私はとしては、まだまだ第一線で活躍する隊長の傍にいたかったのだけれど)
エリカ(隊長が後輩の育成より勝利を優先する試合など、もう早々訪れないのは分かっていた)
エリカ(……あれから入れ替わりも起こっていない)
エリカ(今はただ、残り少ない時間を、隊長に自分を魅せるのに使うだけだ)
エリカ(少しでも、後継者に相応しい姿を――)
小梅「それでは続きまして逸見さんによる大爆笑一発ギャグです」
エリカ「……」
エリカ(隊長の道は間違っていないという証明を……)
直下「上下関係の厳しさはすぐには変えられない……しかし宴会によって距離を詰めることはできる……」
直下「なるほどこれが大洗から学んだ、新たな黒森峰の形……!」
小梅「ほら逸見さん、最上級生様のグラスが空だよ!」
小梅「いつもみたいにアツアツの鉄板ジョークを言いながらお酌して!」
エリカ「……」
直下「ああもう、笑顔でやらなきゃ! これだって一応カリキュラムの一つなんだし、ちゃんとしないと成績に響くよ!」
まほ「……」
まほ(なんだろう、思っていたのと全然違う光景が繰り広げられている気がする……)
まほ「あー……」
まほ「今日は久々にアンツィオの面々が来てくれた」
アンチョビ「やあやあやあ、ノリと勢いとパスタの国からドゥーチェ参上だあ!」
ペパロニ「黒森峰のポテトやウインナーを使ったピザに加えて、今回は新作ピッツァもあるっすよ!」
カルパッチョ「お安くなってるし、お昼ごはんに是非♪」
エリカ「第一声でいきなり商魂逞しいわね」
まほ「まあ、そう言うな」
まほ「今回はこちらが無理して来てもらっているんだ」
まほ「少しくらい貢献してやろう」
エリカ「はあ……」
エリカ「まあ確かに、そろそろ紅白戦もマンネリしてきてますし、決勝じゃ小兵相手にしてやられましたから、交通費払ってこいつら呼ぶのは分かるんですけど……」
エリカ(……勝てるようになるまで、大洗とはやりたくないし)
ペパロニ「いやーマジ助かるっすわ」
カルパッチョ「どんな戦車より優先して屋台の整備をしてきてよかったですね」
アンチョビ「だな! 勿論戦車も手入れしなくちゃだめだけどな!」
エリカ「……こいつらかあ……」 ボソ
まほ「エリカ」
エリカ「……すみません」
エリカ「でも、その、継続高校とかの方がよかったのではないかと」
まほ「……そう言うな」
まほ「色々と事情があるんだ」
まほ(……アンツィオの楽しそうな雰囲気のコツとかこっそり聞きたいし……)
まほ(継続はエリカのアレがあるせいで何か招待しづらいしな……)
アンチョビ「まあまあ、そう冷たくしないでくれ」
アンチョビ「うちも財政難でな……」
アンチョビ「引退前に、せめてP40の修理費くらい稼いでおいてやりたいんだ」
エリカ「は?」
エリカ「……修理費も確保してないのに大会に導入したと?」
アンチョビ「ああ、いや、一応最低限の修理費は勿論速攻確保したんだ」
ペパロニ「なんだかんだで一番の戦力っすもんね」
アンチョビ「でもなー、最低限直した所で、ダージリンに壊されちゃって……」
エリカ「?」
アンチョビ「いや、何か乗ってみたいっていうから乗せてやったら、こう、ボカーンって」 シクシク
エリカ「???」
まほ「……それなら、聖グロリアーナに賠償請求でも出来るんじゃないのか?」
アンチョビ「そ、それが……」
ペパロニ「全員揃って、なーんか言いくるめられちゃったんすよねー」
カルパッチョ「確かに非はこちらにあるかも、って思わされちゃったんですよね」
エリカ「本ッ当に何やってンのよアンタ達は……」
エリカ「大体P40って秘密兵器みたいなもんだったんじゃないわけ?」
エリカ「どうしてソレにホイホイ他校の隊長を乗せちゃったのよ」
アンチョビ「そ、それが私にもわからないんだ……ダージリンのやつにそそのかされて……」
エリカ「ったく……あんな紅茶馬鹿を信用するからそんなことになるのよ」
アンチョビ「うう……」
アンチョビ「でもほら、疑うよりは、信用する方がいいかなーって」
エリカ「はあ?」
アンチョビ「ほら、戦車道もだけどさ、何事も一人でやれることって限界があるだろ?」
アンチョビ「だけど、誰かと手を取り合えば、一人じゃ出来ないことだって出来る」
アンチョビ「だから、誰かのお願いとかは、突っぱねるより、出来るだけ受け入れた方が、後々自分のためにもなるかなって」
エリカ「……ふん」
エリカ(私は……誰かと馴れ合った力なんかに頼らず、自分だけの力で……)
エリカ(……そう、私は自分の力をこれからも伸ばしていく)
エリカ(もう以前ほどのわだかまりはないけど、それでもあの子に負けっぱなしじゃいられないから)
エリカ(あの子が甘っちょろい馴れ合いのチームで勝とうとするなら、私は西住流の築き上げた厳しく統率されたチームで勝ってみせる)
小梅「どうしたの逸見さん、眉間に皺をよせて」
直下「いつものことじゃない?」
小梅「確かにそうだけど」
直下「どうせまた何か一人であれこれ考えてるんだよ」
エリカ(……アホの赤星達のおかげで、天下の黒森峰とて異常に戦車道に賭けているのは一部だけだと分かった)
エリカ(それでも厳しくしていかないと、捲土重来は夢のまた夢)
エリカ(下級生が楽しめているかはともかく、厳しい訓練のガス抜きで宴会を導入したのは隊長のファインプレー)
エリカ(これからもガス抜きはさせつつ、ビシビシ鍛え上げていくッ)
エリカ(次こそは、絶対に優勝旗を取り戻すッ)
エリカ(あの子のせいで暗黒期になるだなんて、絶対に御免だわッ)
エリカ(あの子が変わったように、私も変わった)
エリカ(……変われなかったところだって沢山あるけど)
エリカ(あの子とは、とうとうしっかり仲直りもできなかったけど)
エリカ(でも、今は満足している)
エリカ(あの日Ⅳ号戦車と入れ替わったことも、今ではいい思い出)
エリカ(きっともう、二度とあんなことはないけど)
エリカ(あの経験を活かして、絶対に来年こそはあの子を追い抜いてみせる――!!)
☆ ★ ☆ ★ ☆
エリカ「ん……」
エリカ「……」
エリカ「あれ……?」
エリカ「目をこすろうとしても、手が動かない……」
エリカ「……」
エリカ「金縛り……?」
エリカ「……」
エリカ「顔すら動かない……」
エリカ「……」
エリカ「……」
エリカ「待って……何この逆に慣れ親しんじゃったかのような感覚……」
エリカ「ま、まさか……」
エリカ「ひっ、“あのやり方”で視界が動く……」
エリカ「こ、これって……これってぇ……」
,___、
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/-/ /l_l| } =(二iニニO
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(大)_、,_、_、,_、_、,_、,_、,_ (><)==),,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,/))==)
ヽ'_i_,),i_,),i_,)i_,),i_,),i_,),i_,),i_,)>ノ==ノ ̄ ̄ ̄ ̄'ノ==ノ
` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´
エリカ「また入れ替わってる――――!?」 ズガビーン
エリカ「ど、どうして……」
エリカ「あれが精神的なものに起因していて、私の願いに呼応したものだとしたら……」
エリカ「もう、前ので終わったはずなのに……」
エリカ「……」
エリカ「と、とにかく、状況を整理しないと……」
エリカ「ええっと、またⅣ号よね私」
エリカ「視線移動の方法とか完全にあの時と同じだし……」
エリカ「……」
エリカ「でも……大洗の車庫、こんな見た目だったかしら……?」
エリカ「……」
エリカ「ああ、最近何もなかったから”私の身体“に対策施してないっ……!」
エリカ「いやああああああお願い私の身体、変なことしてないでえ~~~~!!」
エリカ「……」
エリカ「……」
エリカ「……」
エリカ「うう……」
エリカ「誰も来ないせいで嫌な予想ばかり膨らんでいくわね……」
エリカ「何やってんのよ大洗の連中は! 戦車の様子を見もしないで!」
エリカ「優勝したからって気を抜きすぎでしょ……」 ブツブツ
エリカ「……」
エリカ「それにしても、何だか揺れるわね……」
エリカ「……」
ガッコン
エリカ「ひゃっ」
エリカ「な、なに!?」
エリカ「一体何が――」
バシュウッ
エリカ「何か開――」
エリカ「壁が開いた……」
エリカ「光のおかげであたりが見渡しやすくなったけど、もしかして、これって……」
ケイ「よっと……」
ケイ「うん、どうやら全車輌無事に運べたようね」
エリカ「サンダースのスーパーギャラクシーの中……!?」
ナオミ「大洗の車輌、どうします?」
ケイ「うーん、サンダースの車庫には入れない方がいいわよねえ」
アリサ「まあ、どこから情報が漏れるかわかりませんしね」
ケイ「オッドボール三等軍曹の件もあったものね」
ナオミ「じゃあこのままスーパーギャラクシーに格納しておく、ってことにしておきますか」
ケイ「そうね」
ケイ「念のため、この機体は故障中ってことにして人払いもしておこうかしら」
アリサ「まったく……こんなことバレたら大事ですよ」
ナオミ「そう言いながらも協力するんだ?」 クク
アリサ「……あのまま放っておくのも気分が悪かっただけよ」
ナオミ「まあ、グレーゾーンの行いは得意だもんね」
アリサ「もうっ」
ケイ「HAHA……まあでも、今回は100%政府の方が不義理だし、力も貸したくなるわよ」
ケイ「……あそこまで頑張った大洗が、まさか改めて廃校だなんて」
エリカ「…………」
エリカ「……………………は?」
スローペースですが寝ます
投下レス数多くない分サクサク回していきたひ
投下します
エリカ「廃校……?」
エリカ「大洗が……!?」
エリカ「ちょっと、どういうことなのよ!」
エリカ「あの子達はそれを撤回させるために戦ってたんじゃないの!?」
エリカ「っていうか、優勝校が廃校ってなによ!」
エリカ「勝ち逃げされちゃうじゃない!」
エリカ「あ、こら行くんじゃないわよ! 待って!」
エリカ「ああ~~聞こえてないんだ!」
エリカ「ちょっと待ちなさ、こら!」
バタン
エリカ「……」
エリカ「くっ……」
エリカ「……」
エリカ「……」
エリカ「廃校になって、私――というかⅣ号がスーパーギャラクシーに居る……」
エリカ「……戦車の没収を避けるため?」
エリカ「……」
エリカ「あーもう、考えても埒が明かないわ」
エリカ「明日には元の身体に戻れるだろうし、少しそっちで調べてみようかしら……」
エリカ「まあ、その前に今日の私が何かやらかしてないかのチェックが最優先だけど……」
エリカ「……」
エリカ「それにしても……」
エリカ「この感じだと様子見に来てもくれなさそうだし、やることないのが難点ね……」
エリカ「……」
エリカ「72時間何もない所に閉じ込めると発狂するって聞いたけど、あと何時間あるのかしらこれ……」
アンチョビ「はいよ、パスタお待ち」
まほ「すまない、ありがとう」
アンチョビ「いやいや、こっちこそ金を落としてくれることに有難うだ」
まほ「学食も悪くはないのだが、どうしても食べるものが定番化してしまうからな……」
アンチョビ「あー、好きなのばかり選んじゃったりするもんなー」
まほ「一応、バランスも考えて、様々なカレーを日替わりで頼んでいるのだが……」
アンチョビ「え、毎日カレー? まじで?」
まほ「お前たちだって毎日パスタなんだし似たようなものだろ?」
アンチョビ「いやいや、毎日ちゃんといろんなもの食べてるし」
アンチョビ「それに売り物こそイタリアンオンリーだけど、自炊じゃ色々作ってるからな?」
まほ「そうだったのか……」
アンチョビ「お前も戦車だけじゃなくて、料理とか色々趣味を持った方がいいぞー?」
アンチョビ「まあ名門跡取りだから忙しいのかもしれないけどさ」
アンチョビ「一つしか熱中しているものがないと、そこに行き詰まった時にしんどいぞー?」
まほ「……オペラなんかは好きだが……」
アンチョビ「おお、いいんじゃないかー?」
アンチョビ「まあ私はオペラはさっぱりだけどな」
アンチョビ「戦車道で行き詰まる度に息抜きで楽しめるものがあるっていいよなー」
まほ「私は行き詰まったことなどないが」
アンチョビ「うえー、マジかー」
バタン
小梅「大変です隊長、逸見さんが久々に全裸でブリッジ進行した挙句アンツィオの戦車とレースを始めてます!!」
まほ「すまん前言を撤回する進行形で色々行き詰ったかもしれない」
エリカ「……」
エリカ「ふああ……」
エリカ「いつの間にか寝てたみたいね……」
エリカ「戦車になってると横になるってことができないからきっついわあ……」
エリカ「……」
エリカ「……」
エリカ「え、ちょ、待って……」
エリカ「身体が動かない……」
エリカ「私――元の身体に戻ってない……!?」
エリカ「日付が変わっていない……?」
エリカ「いやそんなはずはない」
エリカ「身動きが取れなくて暇すぎて、ひたすら頭の中で音楽を流したりしてたけど……」
エリカ「寝落ちてなお日付が変わってないなんてことはないはず……」
エリカ「それどころかこの感覚、寝すぎた時のソレと同じだわ」
エリカ「一体どうなってるのかしら……」
エリカ「……」
エリカ「クソッ、外はどうなってるのよ」
エリカ「ここを開けて外を見せなさい外を!!」
ガコン
エリカ「!」
エリカ「開いた……って……」
エリカ「ちょ、ま」
エリカ「誰も入ってこないどころか、この景色って……」
ビュオオオオオオオオオオ
エリカ「空!?」
エリカ「ちょ、待って、まさかスーパーギャラクシー飛行中なの!?」
エリカ「なのになんで扉を開け――」
ガコン
エリカ「え、ちょ、ま、ウソでしょ!?」
エリカ「ここから私達を落とす気!?」
エリカ「ま、待ちなさい馬鹿!」
エリカ「こんな高さから人間が落ちて助かるわけが……!」
エリカ「い、いや、今は戦車かもしれないけど!」
エリカ「無理無理、さすがにこれは無理だってば!」
エリカ「やめ――」
エリカ「ひぃえあああああああああああああああああああああ!!」
エリカ「ひ、ひぬ……」 ガクガク
エリカ「ひぬかとほもっは……」 ガクガク
エリカ(な、なによあの高さから放り捨てるって……)
エリカ(そ、そりゃあれからグッと地面に近づいたとはいえ……)
エリカ(本当にそのままポーンと放り出すなんて!)
エリカ「せ、戦車じゃなきゃ死んでたわよほんと……」
エリカ「うう……あんなの人間の状態でやってたら間違いなく漏らしてたわ……」
エリカ「っていうか今も足がじんじんしてるし……」
ケイ「ちゃんと届けたわよ!」
エリカ「何がちゃんとよ!」
エリカ「ちゃんとって言うなら丁寧に下ろしなさいよね!」 ムッキー
みほ「……!」
エリカ「……チッ」
エリカ「Ⅳ号に向けてるって分かってても、どうもこのキラキラした目には慣れないわね……」
エリカ「……」
エリカ(それにしてもこの状況……)
エリカ(本当に廃校になったみたいね……)
エリカ「……」
エリカ「……」
エリカ「じゃあ、何で私はⅣ号と入れ替わったのかしら……」
エリカ「……」
エリカ「てっきり、この入れ替わりにも、意味があると思ってたのだけど……」
エリカ「……あの時の願い事が、結果的に叶った形になったし……」
エリカ「蓋を開けてみたら、私が戦車道をするうえで、必要な入れ替わりだったようにも思える……」
エリカ「……」
エリカ「いやまあ、失ったものを考えると、なくてよかった入れ替わりなのに違いはないけど……」
エリカ「でも……」
エリカ「結局あれ以降何もなかったことも含めて、そういうものだと思ってた……」
エリカ「呪いの類にしろ、精神疾患にしろ……」
エリカ「私の内面に、入れ替わりの原因やきっかけがあるのだとばかり……」
エリカ「……」
エリカ「確かに、あの決勝戦で吹っ切れたものもあれば、新たな道を探して迷ったりもしてるけど……」
エリカ「でも、廃校になった大洗にきて、何が得られるというのかしら」
エリカ「……あの子との確執に関することなら、それこそスーパーギャラクシーに詰め込まれた後でなく、詰め込まれる前よね」
エリカ「どうせ今生の別れみたいな顔で一夜を共にしたりしたんだろうし」
エリカ「……謎ね……」
アンチョビ「……なあ、大丈夫か?」
まほ「……ああ……」
ペパロニ「見るからにゲッソリっすねえ」
カルパッチョ「まるで絶食してるみたいね」
アンチョビ「いやまあ、信頼してた副官がアレなことになってたらそりゃそうなるだろうけどさー」
ペパロニ「いやー、頼りない副官だと大変っすね」
アンチョビ「ちなみにお前もなかなかになかなかで来年を思うと私も胃はキリキリ痛み続けてるからなー?」
ペパロニ「へー、消化に優しいもの作りましょうか?」
アンチョビ「おまえなー」
まほ「……」
まほ(完治したと思ったのに、また再発とはな……)
まほ(ひとまず何とか収めたし、アンツィオの連中も丁重にもてなしていればエリカのことを忘れてくれるだろ……)
まほ(一日でひとまず治まってくれることだけが救いだな……)
バーン
小梅「た、大変です隊長!」
まほ「どうした赤星」
小梅「い、逸見さんが……」
まほ「どうした、昨日の痴態を苦に手首でも切ったか?」
小梅「そ、それが……」
小梅「壊れたコントローラーでやるゴールデンアイの如く、ひたすら壁に向かってゴツンゴツンと前進を続けていて……」
まほ「」
小梅「直前に乳首のイグニッションに触れたせいだとは思うんですけど……」
まほ「」
アンチョビ「ど、どうした西住、世界の終わりみたいな顔をして……」
ペパロニ「ホラゲナイトって感じっすね」
小梅「……考えにくいんですけど……」
小梅「多分、今日も“例のアレ”です……」
まほ「」
エリカ「……」
エリカ「やっぱり、今日も元に戻ってない……」
エリカ「周囲の明るさから言っても、日付は絶対変わってるのに……」
エリカ「これにも何か意味が……?」
エリカ「いや、それとも、意味があると思ってたのが間違いだった……?」
エリカ「今までのはただの予兆で、これが本番……?」
エリカ「……」
エリカ「ダメね……考えてもさっぱり答えが出ないわ……」
沙織「まさかコンビニに戦車で行くことになるなんて……」
エリカ「私だってまさかコンビニに戦車で行くことになるなんて思わなかったわよ」
エリカ「……“戦車で”のニュアンスが大きく違うけども」 ハァ
エリカ「……」
エリカ「それにしても、本当に廃校で、この子達もそれを受け入れたなんてね……」
エリカ「……」
エリカ「どこに転校してくるのかしら」
エリカ「ひょっとして……うち……?」
エリカ「転校手続きには保護者の印鑑がいるし、黒森峰以外の転校で判を押すわけが……」
華「……みほさんは?」
沙織「一緒に行こうか?」
エリカ「はあ? 小学生じゃないんだから……」
エリカ「……」
エリカ「アンタの親友の座、気付けばすっかりこのアホどもがしっくりくるようになったわね……」
優花里「西住流家元も見てみたいですし……」
エリカ「はァ~~???」
エリカ「何言ってンのよアンタは!」
エリカ「あの人は黒森峰の指導や西住流の指導で多忙なのよ!?」
エリカ「娘の友人ってだけでアンタみたいな小汚いマルチーズみたいな奴に会うわけないでしょ!」
みほ「……ううん。大丈夫。一人で帰れる」
エリカ「よーしよく言ったわ!」
優花里「そうですか……」
エリカ「そうよそうよ、ほらもっと言ってやんなさい!」
みほ「また今度遊びに来てね」
優花里「……はいっ!」 パァァァ
エリカ「はぁぁぁぁ!?」
エリカ「何甘やかしてンのよ!」
エリカ「大体アンタ、まだ西住家に許されきったわけじゃないでしょうが!」
華「私は明日、家に帰ります」
沙織「私もそうしようかなあ」
みほ「私も……」
エリカ「!?」
エリカ「ちょ、待ちなさい!」
エリカ「アンタ明日帰ってくるわけ!?」
エリカ「だ、ダメよそんなの!」
エリカ「それってつまり、その、暴走してる私の身体に会っちゃうってことでしょ!?」
エリカ「ダメダメ絶対、そんなのダメ!!!」
エリカ「ちょっとポンコツ戦車!」
エリカ「いい加減私の身体に戻しなさいよ!」
みほ「!」
みほ「止まって下さいっ!」
キキーーーーッ
エリカ「どわっぷ!」
エリカ「な、何よいきなりっ!」
エリカ「急停止されるとこっちは結構苦しいんだからね!?」
みほ「そのままバックして!」
キュラキュラキュラ
優花里「どうしたんですか……?」
みほ「わあ~!」
エリカ「げっ……この看板に書かれたボコって……確か……」
みほ「知らなかった!」
みほ「こんなとこがあるなんて!!!」
沙織「今までで一番テンション上がってるよ……」
エリカ「はん」
エリカ「ファンとか言ってる割に情報収集がおろそかなのね」
エリカ「私はネットサーフィンのついでに調べたことがあるから知ってたけど?」 ハン
エリカ「……あ、べ、別にアンタといつか行く気だったとかそういうんじゃ――」
ワイワイガヤガヤ
エリカ「……」 ポツーン
エリカ「……そりゃそうよね……」
エリカ「私は戦車で、声も聞こえてないんだから、そりゃ私は駐車場で留守番よね……」
エリカ「……」
エリカ「ふん、別にいいわよ、あんな子供だましみたいなキャラクターのミュージアムなんてハナっから興味ないし」
エリカ「ほんっと、待ってる間は暇ねえ……」
エリカ「……」
エリカ「それにしても、あの子はマジで全然変わってないわね……」 ハァ
エリカ「……」
エリカ「やっぱり、こういう交流が目的なら、スーパーギャラクシーに幽閉されてるタイミングで入れ替わる理由がないのよねえ」
エリカ「ってことは、本当に意味も法則性もなく入れ替わってるのかしら」
エリカ「……」
エリカ「……入れ替わり……」
エリカ「向こうの私は乳首のイグニッションで動いている……」
エリカ「つまり、言うならば、Ⅳ号戦車の魂は、私の魂と入れ替わるようにして私の身体に入っている……」
エリカ「……」
エリカ「もし……」
エリカ「Ⅳ号戦車にも魂みたいなものがあるといたら……」
エリカ「いつか赤星が言っていたように、物にも魂が宿るとしたら……」
エリカ「廃校が決まって、スーパーギャラクシー収納前にあの子達と何かの交流をして……」
エリカ「それで、あの子達や大洗を救おうと考えるかもしれない……」
エリカ「……」
エリカ「考えづらいけど……元々考えづらい意味不明な事態だものね……」
エリカ「ありえるのかもしれない……」
エリカ「これまでが、私の方の我儘でホイホイ入れ替わっていたのだとしたら……」
エリカ「今回のコレは、Ⅳ号戦車の方の意思――」
エリカ「Ⅳ号戦車が私に、何かをさせようとしている――――?」
スレも1000行きそうですし、もう朝なので投下を終わります
次の更新の時に新スレ建てよう
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