アニ「どちらにもなれなかった私の話」(269)



※ネタばれ、ねつ造あり
※アルアニ


ガサガサ

ザザッ

アニ「……ここだけ草が倒れて人が通った跡がある」

アニ「この先に何か……?」

ガサガサ…バッ


アニ(休日がやってきた)

アニ(日々の過酷な訓練で疲れた身体を癒す、安息の日)

アニ(とてもいい天気で、寮に籠もってるのももったいないから散歩に出かけたら)



アニ(見慣れない場所を見つけた)


アニ「こんな所が、……訓練所に…?」

アニ(綺麗な場所だった)

アニ(一見すると木々に囲まれていてそこがあることすらわからない)

アニ(辺りから隔絶された秘密の花園)

アニ(まるでここだけどこか別の世界にきてしまったみたい)




アニ「……きれい…」キラキラ


アニ(ふ、と顔をあげると、鮮やかな花を咲かせている大木の枝に)

アニ(見覚えのある人がいる)

アニ「あれって……」




ドサッ






アルミン「あ、本が」グラッ

アニ(あいつは落ちた本に気を取られてるみたいだけど)

アニ(そんなに身を乗り出したら落ちるんじゃ?)

アニ「危な……」

アルミン「うわああああっ!?」ドサドサ




アニ(あれは痛そう)


アルミン「いたたた……」ヨロヨロ

アニ(見覚えがあると思ったらやっぱりそうだ)

アニ(きらきら輝く金糸に碧眼、女みたいな顔)

アニ(いつも目立つ二人と一緒にいる、貧弱そうな男だ)

アニ(名前は……アルミン、だっけ?)

アニ「……大丈夫?」

アルミン「わ!!」ビクッ

アニ「」ビクッ

アルミン「え、あ、あれ……君いつからそこに…!?」

アニ「今さっき。そしたらあんたが木から落ちてきた」

アルミン「あ、あはは……。恥ずかしいとこ見られちゃったな」ハァ

アニ「……何でそんなとこに?」



アルミン「うーん、……たまには別の視点で物事を考えてみたいなあと思って」


アニ「それで、よりにもよって木に登ったの?」

アルミン「うん……」


アニ「あんた、バカでしょ」

アルミン「……そうはっきりと言われると傷つくなあ」アハハ

アルミン「まあ、結局いつも通り読書するだけになっちゃったし」

アルミン「落ちるし、見られるし」

アルミン「その通りなんだけどね」ズーン

アルミン「あーあ、本も汚れちゃった」パンパン



アニ(アルミンが拾い上げた本の表紙には、いばらに巻きつかれて苦しそうな表情をした少女の画が描かれていて)

アニ(なぜかわからないけれど惹かれるものがあった)

アニ「……いばら姫?」

アルミン「……あ、ああこれ」

アニ「どんな本なの?」

アルミン「んー、童話だよ」

アニ「童話……」

アルミン「簡略的に言ってしまえば、悪い魔法使いによって100年の眠りについたお姫様が、」

アルミン「王子様のキスで目覚めるっていうよくある話さ」

アニ「ふーん。……あんたって見かけ通り少女趣味な奴だね」

アニ「この年でそんな乙女な童話を読んでるなんて」


アルミン「そうかな……?童話に限ったことではないけど物語ってただ読むんじゃなくて、」

アルミン「書かれた背景や表現の意味を考察して、現実の事象に当てはめたり、」

アルミン「自分なりの解釈をまとめた話として改めて読むと違う世界が見えたりして」

アルミン「色々楽しいよ。まあ、本来の読み方からは大きく外れてるんだけど……」ハハハ

アニ「楽しいの?」

アルミン「すっごく」キラキラ

アニ「ふーん」

アニ(眩しい瞳。きっと心のそこから楽しんでいるんだ)

アニ(私とは大違いで、羨ましい)

アニ「……ねえ、」

アルミン「ん?」

アニ「……ちょっと聞かせてみてよ」

アニ(最初はほんのちょっとの羨望が混じった、気まぐれな好奇心だった)

アニ(暇つぶしぐらいになればいいや、つまらなかったら鼻で笑ってやろうって)



アニ(けど、すぐに覆されて話に惹き込まれた)

アニ(私にはどうやったって思いつかないような奇抜、独創的、かつ筋が通った発想)

アニ(頭が良い、ってのは本来こういうやつのことを言うんだろうね)

アニ(壁の中の人類なんて皆馬鹿ばかりだと思っていたから)

アニ(心底驚いて、少し嬉しかった)


アルミン「―――……、こんな感じ」

アニ「……」

アルミン「……ごめんね、つまらない話を長々と聞かせてしまって」

アルミン「いつも話が長いって言われるんだ。でも話し出すと止まらなくて…」シュン

アニ「……す」

アルミン「す?」

アニ「すごい」

アルミン「え」


アニ「すごい、面白かった」キラキラ

アルミン「!」

アルミン「あ、ありがとう」テレテレ

アニ「もっと……あるの?」

アニ「面白い、話」

アルミン「……っ、あ、あるよ!」

アニ「聞きたい」

アルミン「もちろんさ!」



アニ(こうして、私とアルミンの不思議な時間は始まった)

アニ(休日や、訓練の合間に落ち合わせてここに来て、私は彼から様々な話を聞いた)

アニ(波長があってたのか、ただ単に話し上手なのか)

アニ(私にはわからなかったけれど)

アニ(アルミンの話は私を夢中にさせた)

アニ(訓練の疲れや、自分の置かれた立場、…何もかも忘れそうになるくらいに)


~~~~~~~~~~~~~~~~


アニ「今日も楽しかった」

アルミン「僕も。……でもいつも一方的に話してしまって」

アニ「それでいいんだよ。私はあんまり話が得意じゃないから聞いてるほうが楽しい」

アルミン「そうかな……。でもよかった。アニがいてくれて」

アルミン「ここに来てからエレンもミカサも手一杯って感じで」

アルミン「なかなか楽しく話すって雰囲気じゃなかったからさ」


アニ「……アルミンはあの二人とは幼馴染なんだっけ」

アルミン「うん。シガンシナにいるときからずっと一緒だ」



アニ「へえ」



アニ「……、いいな」

アルミン「?どうして」

アニ「だって二人は今までずっとアルミンの話を独占してきたわけでしょ」

アニ「ずるい」


アルミン「……、アニって案外子供っぽいこと言うんだね」クスクス

アルミン「お気に入りのおもちゃ取られたみたいな顔してたよ」フフ

アニ「私だってまだ子供だよ」ムッ

アルミン「あはは、そうだったね。普段が大人びてるから忘れてた」

アルミン「でもほら、今はアニが独占してるから。安心して」

アニ「……、そ」






アニ(アルミンがお気に入りのおもちゃ、か)

アニ(あながち間違っちゃいないと思うんだけど)

アニ(なんかしっくりこない)

アニ(なんだろうねこれは)

アニ(アルミンが……、ぬいぐるみ…)

アルミン「アニ、どうかした?」



アニ「アルミンは……、リスっぽいかな」

アルミン「ごめん何の話?」



~~~~~~~~~~~~~~~~



メガネ教官「本日はここまで。解散」

ワイワイガヤガヤ


モブ子A「ねえアルミン!ここを教えて!」

アルミン「僕なんかに聞くより教官に聞いた方がいいよ」

モブ子B「えー、アルミンがいいなあ」

アルミン「ご、ごめんね」アセアセ

モブA「いいじゃんー」

アルミン「ええと……」


ミカサ「見てエレン」

ミカサ「女子に囲まれててんてこまいるミン可愛い」

エレン「お前は何を言ってるんだ?助けてやらなくていいのか」

ミカサ「大丈夫、アルミンには私がエールを送るッ!」ギン

エレン「おいこらやめなさい!人を殺しそうな目でエール送るのは」

トーマス「あぶぶぶぶb」ブクブク

エレン「ほら見ろ、直視したトーマスが泡吹いてたおれたぞ!」

ワーワー



アニ「……」




アニ「ねえ」クイクイ

アルミン「ん?あ、アニ。どうしたの?」

アニ「ちょっと用事あるから」

モブ「は?まだ私たちが…」

アニ「…何」ジッ

モブ「あ、…こ、今度にしよっかなあ」ソソクサ



アニ「はあ」

アルミン「……た、助かったよアニ」

アニ「あんた対処ヘタすぎ」

アルミン「いやあ、碌に話したことない女の子たちってどうも苦手で……」

アニ「今度から座学の時間はさ、一緒に座ってあげるよ」

アニ「そうすれば今みたいに助け舟だせるし」

アルミン「でも、アニに悪いよ」

アニ「いいよ。その代わりあんたに分かんないとこ教えてもらえばチャラになるでしょ」

アルミン「でも僕なんかが教えてもチャラにはならないよ……」

アニ(あ、……また言ってる)

アニ「私がなるって言ってるんだからいいのさ」

アニ「それともそんなに私の隣がいやなの?」

アルミン「ちがうよ!寧ろ嬉しいけど……」




アニ(最近気づいたことがある)

アニ(アルミンは良いところも沢山あるのに)

アニ(兵士としては運動能力が低いせいか、生まれ持った性格なのか)

アニ(自信が果てしなくない)

アニ(アルミン自身よりその辺のミーハー女のがよっぽどアルミンの長所わかってるレベル)ムス

アニ(なんとか……してあげたいね)


アニ(でも、どう言えばいいんだか……)



アニ「あのさあ、」

アルミン「うん……」

アニ「……アルミンは脳みそどうなってるの?」

アルミン「は?」

アニ「……あ」

アルミン「……えっと…」シュン

アニ(しまった。直接的に褒めるのが恥ずかしくてつい回りくどくなってしまった)

アニ(いや、回りくどいどころか完全にバカにしたと思われてる)

アニ「…ごめん、今のは褒めたつもりなんだけど…」ハァ

アルミン「今のが!?わかりづらいよ…」

アニ「取りあえずありがとう?」

アニ「うん。今の時間も突拍子もないこと言ったかと思ったら教官にすごく褒められてたし」

アルミン「え、あれ突拍子なかった?」

アニ「はあ?もしかして自覚なかったの?」

アルミン「みんな思ってても言わないだけなのかと」

アニ「……」


アルミン「確かに昔から人とずれてるって言われることもあったけど……」

アニ「ていうかずれてるんだよ」

アルミン「……そっかあ」ズーン


アニ(あ、あれ。うまくいかない)

アニ(褒めたいのに、落ち込ませてしまった)




アニ「あ、だ、だから貶してるんじゃなくて」

アニ「ずれてるって言うと悪い方へ取っちゃうかもしれないけどアルミンのは寧ろ誇れることだから……」

アニ「だから僕なんかとか言わないでほしいっていうか……」


アルミン「……」

アニ「……~~ッ、要するにもっと自信持てってこと!」

アルミン「……ああ、なるほど!

アニ「わかってくれた?」

アルミン「励ましてくれてありがとう」

アニ「ちがう!」

アルミン「?」

アニ「だから……っ」





アニ(思ったよりアルミンの卑屈さは強敵だった)

~~~~~~~~~~~~~~~~

アルミン側のおまけ


アルミン「ふんふんふ~ん」ルンルン

エレミカ「<●><●>」

アルミン「う、わあああああ!」

アルミン「二人して何!?いつから見てたの!?」

ミカサ「アルミンがぐれんの~~を鼻歌しだしたあたりから」

アルミン「随分前だね!声かけろよ!!」

ミカサ「アルミン最近楽しそう。何か私たちに隠してる」ジッ

エレン「ミカサ。男にはなあ、人には言えない娯楽があるんだ」

エレン「だが俺は男だし、隠さなくってもいいんだぞ」ポンポン

アルミン「は?エレンなんか勘違いして……」

ミカサ「なるほど。けどアルミン大丈夫、私はアルミンが自慰行i「ミカサああああ!!」」

アルミン「違うから!そういうんじゃない!!エレンも適当にいわないでよおお!!」



エレン「何だよせっかく持ってきてやったのに」

アルミン「何をとは聞かないからね」

ミカサ「アルミン、恥ずかしがらなくてもいい。エレンだって私にどうどうと言ってくれた」

アルミン「君は僕の大切な幼馴染に何を言ってるのかなあエレン」

エレン「ああ、家族だからな」

ミカサ「冗談はここまでにして。本当にどうかしたの?アルミン」

アルミン「ええー今の冗談だったの」

アルミン「……どうかしたっていうかね」

アルミン「なんてことない。ただようやく君たち以外の友達が増えたってだけだよ」

ミカサ「!」ピコン

エレン「!」キュイーン

アルミン「顔怖いよ」

ミカサ「どこのどいつ?」ギン

アルミン「そんな戦闘民族みたいな顔してる子には教えられないよ」

エレン「アルミンにも春が……」

アルミン「よからぬ詮索するやつにもね」

エレミカ「ごめんなさい」

アルミン「まったく。悪乗りしすぎなんだよ君らは」

アルミン「……、アニだよ」

ミカサ「……アニ?」

エレン「あーあの怖い顔の女か」

ミカサ「……」

アルミン「ミカサ?」

ミカサ「あの女は、駄目」


アルミン「どうして?」

ミカサ「……何となく」

アルミン「ミカサってアニと仲悪かったっけ?」

ミカサ「時々話す程度だけど……」

アルミン「よく知りもしない人のことを悪く言うなんて、らしくないね」

ミカサ「……ごめんなさい。ただ今、なんとなく反射的に出てしまった」

エレン「落ちつけよミカサ。オレはいいと思うぜアルミン」

エレン「オレら以外にも仲良しが出来るってのは良い傾向だ」

アルミン「エレン……」

エレン「まああれだ、(本番に辿りつけるように)がんばれよッ」パチコーン

ミカサ「エレン、ウインクがとても上手」パチパチ

アルミン「眼つぶしされたいの?」イラッ


アルミン(楽しそう、か……)

アルミン(言われてみればアニと仲良くなってから機嫌がいい)

アルミン(浮かれ気味だけど、訓練の調子も良い……気がする)

アルミン(良いことづくめだね)

アルミン(なぜかアニは執拗に僕のことを褒めて自信を持たせたいきらいがあるみたいだけど)

アルミン(おかげで自分の短所ばかりに目がいかなくなった)



アルミン(僕はアニのこと)

アルミン(思ってたよりもお気にいってるみたいだなあ)

アルミン「……」フフ

エレン「お」

アルミン「……」

エレン「人差し指構えるのやめろよ」ゾッ

~~~~~~~~~~~~~~~~

アニ(あれから一週間ほどの私の渾身の説得の甲斐あって前よりは自信持ってくれたみたいだけど)

アニ(まだまだだ。体力面がどうしてもネックみたいで)ウーム

アニ(でもこればっかりはアルミンの問題だから何とも行かないね)




ミーナ「アニ?」

アニ「ん?」

ミーナ「さっきからやけに深刻そうにしてたから」



アニ「ちょっと、…行き詰ってて」ムウウ

ミーナ「行き詰る?」



ミーナ「ああ、もしかしてあの課題のこと?あれは私も相当苦労したわ……」

アニ「課題?」

ミーナ「あれ、違った?」

アニ「課題…カダイ……かだい…、っっ!」ハッ



アニ(すっかり忘れてた!)ガーーーン






カリカリカリ……ピタッ

ウーンウーン…

アニ(忘れてた課題が全然進まない。レポート用紙三枚分ほどしか埋まらないよ)

アニ(提出期限が近いのに、困ったね)モンモン

アニ(今回は自分が悪いんだけど、これはもっと時間があったとして出来てたか疑わしいかもしれない)

アニ(ミーナも苦戦して最終的にはアルミンに助言をしてもらったらしい)

アニ(人にアドバイスするようになったのはきっと私のおかげだね)フフン


アニ(アルミンをあんまり頼ったりしたくはないんだけど、仕方ないから夕食後に頼んでみようかな)

アニ(……仕方ないからね、うん)



アニ「……、ふふ」

ミーナ「どうしたの?嬉しそうに」

アニ「!な、ん、で、もない…よ」

ミーナ「?」


……





ポンポン



アルミン「…?」

アニ「こっち」

アルミン「アニ!」

アニ「実は、課題が煮詰まっててさ」

アニ「時間があったらでいいんだけど、少し添削とかアドバイスしてくれない?」

アルミン「珍しいね?」

アニ「今回は苦手なとこだったから」


アルミン「ふふ、大丈夫だよ。今からでいい?」

アニ「うん。ここだとあれだから資料室に」

アルミン「わかった。移動しようか」








ミーナ「ははーん」ニヤリ

エレン「ははーん」ニヤリ






スタスタ

ペチャクチャ…

アルミン「それでさ、ついでに寄ってみた古い本屋ですごい本を見つけたんだ」

アニ「すごい本?」

アルミン「そう!」

アニ「アルミン、楽しそうだね」クス

アルミン「だって楽しいよ」

アニ「どんな本なの?」

アルミン「……」キョロキョロ

アニ「……?」




アルミン「きっとアニは誰にも言わないだろうから、話すけど……絶対内緒だよ」ボソッ

アニ「……わかったよ」

アルミン「…あのね、その本って実は禁書なんだ」

アニ「禁書?」

アルミン「うん。政府から読むのを禁止されてる」

アルミン「外の世界のことが書かれてるから」




アニ「外の……?」


アルミン「そうなんだ!」

アルミン「シガンシナの家でも祖父が外の世界の本をもっていたんだけど」

アルミン「持って来れなかったから、ずっと探してたんだ」

アルミン「で、やっと見つけた!」

アルミン「それも祖父の持ってたものよりずっと詳しいやつだ!」

アルミン「今は寝台に隠してあるから見せられないけど、今度アニにも見せてあげるよ!」キラキラ



アニ「……、うん」


アルミン「あ、……、ご、ごめん。勝手に盛り上がっちゃって。そんなの興味ないよね……」シュン

アニ「違うよ。ただ、少し……」

アニ「…、なんでもない。楽しみにしてるから」




アニ(少し、怖くなっただけ)



ガラガラ

アルミン「結構遠かった」

アニ「うん。……相変わらず大きいね、ここは」

アルミン「ね。訓練兵のために沢山の蔵書って必要なのかな」

アニ「ないね。……でもこれだけあれば、あんたの好きな外の世界の本も、置いてあるんじゃない?」

アルミン「……残念。それが置いてないんだよ」

アニ「どうしてわかるの?」



アルミン「……、それは僕がここに来て最初の一か月で蔵書を全部調べちゃったからさ」



アニ「…」



アルミン「あー、何て言うか、言わんとすることはわかるよ。でも……」

アニ「呆れた。兵士になって初めの一か月であんたそんなことしてたの?」

アルミン「あはは」

アニ「笑い事じゃないよ」ペチ

アルミン「あたっ!でも訓練に支障が出るほどではなかったし…」

アニ「まったく。その熱意をもう少し他のことの回せないの」

アルミン「は、はは。さ、アニあんまりおしゃべりしてると時間なくなるよ」

アニ(逃げた)ジッ




アルミン「で、ここの表現を変えればもう少し掘り下げれるだろ?」

アニ「なるほどね」

アルミン「あとは……、……あ」カタン

アニ「何?」チラ

アルミン「……いつも思ってたんだけどさ」ジッ

アニ「な、何さ」フィ

アルミン「アニの目って僕と同じ色してるよね」ジー

アニ「は?……た、確かにそうだけど…それがなんなの?」マゴマゴ

アルミン「特に、意味はないんだけど……、ほら僕らって髪も似たような金髪だし」

アルミン「話も合うし、…結構似てるんじゃないかなと思ってさ」

アニ「!」


アニ「……、性格は全然違うけど」

アルミン「ああ、そうだった。僕は臆病者だし…」

アニ(そうじゃない。寧ろ逆だよ)





アニ「でも、あんたと話が合うってのは…その通りかもね」

アルミン「ふふ」



アルミン「……ってしまった、また話が脱線しちゃった!」ハッ

アルミン「くっそぉ、アニとだと何でか話がそれるなぁ」ガシガシ

アニ「大方アルミンのせいじゃない?」

アルミン「うぐ。よし、もう脱線しないでさっさと終わらせよう!」

アニ(この調子だと後三回は脱線するかな)クス



アルミン「ずいぶん遅くなってしまった」

アニ「誰かさんが寄り道ばっかりするから」

アルミン「うぐ」

アニ「……何てね。助けてもらったし、楽しかったし、本当にありがとう」

アルミン「こちらこそ。女子寮までは外歩かなくても行けるけど、遠いし気をつけてね」

アニ「……、うん。じゃあ、おやすみ」フリフリ

アルミン「おやすみ」フリフリ

アニ「……」

アルミン「……」

アニ「……」

アルミン「……」




アニ「ねえ、早く行けば?」


アルミン「いや……僕はアニが行ってから行こうと」

アニ「私もそのつもりなんだけど」

アルミン「え」

アニ「……」

アルミン「……僕は大丈夫だから早く行きなよ」

アニ「そっちこそ」

アルミン「アニからどうぞ」ジッ

アニ「アルミンから行って」ジッ



アルアニ「……」


アニガーアルミンガー
ワイワイワーワー


~10分後~

アルミン「はあ……はあ……」ゼーハー

アニ「この、……頑固っ……」ゼーハー

アルミン「それはお互い様だろ?」

アニ「……アルミンがさっさと行けば済む話だよ」プン

アルミン「……」

アルミン「あーもーこのままじゃ埒が明かない!」



アルミン「よしわかったこうしよう。僕がアニを女子寮まで送る!」

アルミン「そしたら僕はさっさと立ち去るからお互いに変な意地をはらなくていい」

アルミン「これでいいね!」

アニ「は?いいわけ…」

アルミン「い い ね!」ガンリキ

アニ「……はい」





アニ(女子寮までは遠いし、……これでもうちょっと一緒に)ヨシ

アニ(って、何喜んでるのさ私は)モンモン

アニ(寧ろ付いてこられて面倒だと思うのが普通でしょ)

アニ(でもアルミンと一緒だと楽しいし喜ぶのが普通なの?)ウーン

アニ(ここで喜ぶとまるで……)

アニ(ちがう!そんなんじゃない、そんな……)

アルミン「行くよ、アニ」

アルミン「あれ?おーい、アニ。聞いてる?」ヒョイ

アニ「」ビクッ…ガン

アルミン「痛い!何で蹴られ、いたたたッ痛いアニ痛い!」


書きためてたの全部投下したんで今日はここでおしまい
見てくれた人ありがとうございました


今日はあんまり書きためしてないのでのんびり投下します


~~~~~~~~~~~~~~~

モブ男A「うわっ。こっわー」

モブ男B「さすが氷の女……」

モブ男C「なんでいつも怒ってんだよ、あの男女は」

ヒソヒソ

アニ「……」

アニ(別に、これぐらいなんてことないけど)

アニ(言ってることに間違いはないし)

アニ(バカどもにどう思われようが関係ない)

アニ(毎回通るたびに言われるのは鬱陶しいけどね)

『アニ!』

アニ(……あいつは、…なんで…こんな私を…)



アニ「あ、そうだ。今日は午後から約束してたんだった」

テテテテ…


……




アニ「今日はぽかぽかするね」

アルミン「うん、気持ちいい」

アニ「……気持…いい…」ウトウト

アルミン「……このままお昼寝するのもいいかもね」

アニ「うん……」ウトウト

アルミン「……」フフ

アルミン「あ!!」

アニ「」ビックゥ

アルミン「忘れてた……っ」

アニ「な、何??」

アルミン「あああ、……ご、ごめん。いきなり大声だして」

アニ「どうかしたの?」

アルミン「いや、何でもないよ……寝て?」

アニ「正直今ので眠気飛んだ」

アルミン「本当にごめん」

アニ「いいから。どうしたの?」

アルミン「大したことじゃないんだけど……」


アルミン「これ」ズイ

アニ「?」

アニ「なにこれ、……布?」

アルミン「うん。僕らってさ、いつも座って話すだろ?」

アルミン「さすがに女の子にいつまでも地べたに座らせちゃだめだと思って」

アルミン「今日からこれ使って?」


アニ「……ずいぶん可愛らしい柄の布だね」

アルミン「アニは、そっちのが好きでしょ」

アニ「もしかして買ったの?」

アルミン「あーまあ」


アニ「今日午前中出かけてたのも……」

アルミン「そんなとこかな」

アニ(私も連れてってくれれば一緒に選べたのに)

アニ(……でも嬉しい)キュ

アルミン「!」

アルミン「……買ってきた甲斐があった、かな」ボソ

アニ「え?」

アルミン「なんでもないさ。ほら敷いてみてよ」


バサッ

アルミン「……」

アニ「……この布さ、どう見ても一人で座るんじゃ大きいんだけど」

アルミン「みたいだね」ハハハ

アニ「アルミンも座れば?」

アルミン「ええ!?い、いやでも二人で一つの布に座るとかちょっと緊ちょ」

アニ「いやなの?」

アルミン「……いいえ」

アニ「なら座る」

アルミン「はい……」


ストン

アルミン「……」ドキドキ

アニ「……」ススス

アルミン「……さ、すがに近くないかなあ、あはは…は」ドキドキ

アニ「……」ジー

アルミン「うぅ……」ドキドキ


アニ「ずっと疑問だったんだけど」

アニ「あんたは、何で私のこと“女の子”扱いするわけ?」

アルミン「え?」


アニ「この訓練所で私のこと“女の子”何て言う男あんたぐらいだよ」

アニ「ほとんどの奴は氷の女とか、男みたいとか暴力女とか言うのに」

アルミン「何でって…言われてもなあ……」ポリポリ

アルミン「そんなもんはアニが僕の目には“女の子”にしか見えないから、としか言いようがないよ」

アニ「……」

アルミン「アニは確かに強いね。僕なんかよりもずっと」

アルミン「でもその強さに反して、ずっと女の子らしい一面をもってる」

アルミン「例えば、可愛いものが好きだったり、私服に気を使ってたり、……優しかったり」

アルミン「気をつけて見てないとわからないものかもしれないけど」

アルミン「やっぱり僕にはアニが女の子にしか見えないよ」

アルミン「だから君を“女の子”扱いするのは当たり前じゃないかな」

アニ「……」

アルミン「ごめん、気に障った?」

アニ「……」フルフル

アルミン「そう」ホッ

アニ「アルミンはやっぱり変な奴、だね」

アルミン「その変な奴の話を聞きたがるアニも大概さ」

アニ「……それもそうだね」クスクス


アルミン「じゃあ、今日は何の話をしようか」

アニ「いばら姫のお話聞きたい」

アルミン「え、また?いつもただストーリー話すだけだけど……」

アニ「あんたがこの話してるの聞くと落ち着く」

アルミン「……よくわからないなあ」ハハハ


アニ(アルミンは周りのバカな男たちと違って私を“女の子”として扱ってくれた)

アニ(それは幼いころから殺戮兵器として育てられた私にはとても新鮮だった)

アニ(だから、アルミンといるときは、……この時だけは)

アニ(まるで自分が普通の“女の子”なのではないかと)

アニ(錯覚してしまいそうになった)

アニ(これ以上仲良くなったらダメ)

アニ(私の中の戦士が警告している)

アニ(後で辛い思いをするのは他ならぬ自分なんだと)

アニ(私は決して“女の子”なんかにはなれないんだと)

アニ(でもその度に、わかってる、…大丈夫だと言い聞かせて)

アニ(目を背けた)



アニ(まだ……きっと大丈夫…だから)

~~~~~~~~~~~~~~~

おまけ

アルミン(今日はアニのために下に敷く布的なものを買いに来たんだけど……)

アルミン「入りづらい……」

アルミン(アニはああ見えて可愛らしいものが好きだから)

アルミン(可愛い布を買いたい)

アルミン(そうすると必然的に女の子用の店に入らなきゃいけないわけで)

アルミン(いくら外見が女っぽいとはいえ)

アルミン(思春期の男にこれはきつい)


アルミン「うー、どうしよう…」ウロウロ

アルミン「……」

アルミン「いけ、アルレルト!男だろ!」

アルミン(アニのためアニのためアニのため…)ブツブツ

カランカラン

『いらっしゃいませー』

アルミン(うっわあ、思ったよりメルヘンだあ)

アルミン(……帰りたい)

アルミン(布ってどこだろう)キョロキョロ



店員「何かお探しですか?」

アルミン「うわ!!」

アルミン「あ、すすすいません」

アルミン「あの…布ってどこにありますか?」

店員「こちらにありますよ」

アルミン「ありがとうございます」

アルミン(びっくりした…。でも思ったより変な目で見られなかった)

アルミン(……やっぱり僕って女みたいなのかな)ズーン



アルミン「……アニは…どれがいいだろう」ウーン

店員「もしかして、彼女さんにプレゼントですか?」

アルミン「ええ!?そ、そんなんじゃないです!」

アルミン「か、彼女ではないんですけど……大切な友達、に」カアァ

店員「そうなんですかあ。でしたらこの辺の柄とかお勧めですよ」

アルミン「かさねがさねすみません…」

店員「なんなら選びましょうか?」

アルミン「……いや、大丈夫です。後は自分で選びます」

店員「……」

店員「がんばってくださいね」ホッコリ

アルミン「……?」


『ありがとうございましたあ』

カランカラン

アルミン(なんとか買えてよかった)

アルミン(後はアニに渡すだけだ)

アルミン(……それにしても驚いたな)

アルミン(彼女、か。そうだよね、普通に考えたら男がこういう店に入るのって)

アルミン(彼女のプレゼントとか、…だもんね)

アルミン(アニが僕の彼女だったら……)モワモワーン



アルミン(いい……な)


アルミン「え、…あれ?僕今…」



アルミン「ッッ!!」カアアア

アルミン(あ、……やばい。自覚なかったけど……これは誤魔化しきれない…)ドキドキ

アルミン(…いつからだ?わからない程前?)

アルミン(うわあああ、エレンには散々否定してたのに…)

アルミン(最悪だ…。どうしよう)

アルミン「この後会うのになあ…」ドキドキ


おまけおしまい
少しお風呂行ってきます



~~~~~~~~~~~~~~~

アニミナ「いただきます」

モグモグ

ミーナ「昨日ナック達が言ってたんだけどさ」

ミーナ「男って普段髪あげてる子が下すと、キュンとするらしいよ」

アニ「へー」

アニ(興味な…)

ミーナ「……」ニヤ


ミーナ「アルミンもそうだねって言ってた」

アニ「!」

アニ「へ、へえ…そうなの」ソワソワ

アニ「あいつが…意外だね。どうでもいいけど」ソワソワ

ミーナ「……」クスクス




アニ「……」モグモグ…カチャン

ミーナ「ねえ、アニってさ」

アニ(なんかミーナがいつもよりニヤニヤしてる)ゴクゴク…

ミーナ「アルミンに恋してるでしょ」

アニ「」ブブーッ

ミーナ「……」ポタポタ

アニ「あ…ごめん」フキフキ


アニ「でも、…それは違う、と思うよ」フキフキ

ミーナ「どうして?」

アニ「だって、私は周りから氷の女なんて呼ばれてるし」

アニ「恋なんて…」

ミーナ「それって何の関係もないじゃん」

アニ「あるよ」

ミーナ「ないよ。だってアニがアルミンをどう思ってるかと」

ミーナ「周りがアニをどう評価するかは全く無関係だよ」

アニ「……それでも」

アニ「私はミーナみたいな普通の…女の子には…」

ミーナ「……ふふ、そんな顔して言われてもねえ」ニヤ


ミーナ「大体アニ、この前アルミンがアニのこと女の子にしか見えないって言ってくれたって話してたじゃない」

アニ「あれは…確かにそう言ってたけど」

ミーナ「うん、ならいいよね。そこにこだわらなくても」

アニ「……とにかく、私はアルミンに恋なんてしてないよ」

ミーナ「はいはい、そういうことにしといてあげる」

アニ「ミーナ」ギロ

ミーナ「あ、噂をすればアルミン」

アニ「っ」カチ

ミーナ「もうご飯食べ終えたみたいねー」


アニ「……」ジ…

アルミン「……?」チラ

アニ「!」

アルミン「…」ニコニコフリフリ

アニ「…」フリフリ

ミーナ「あ、行っちゃった」

アニ「……」カアア

ミーナ「仲いいね」ニヤニヤ

アニ「その顔やめてよ」ペチ

ミーナ「あいた」



アニ「……」ムスッ

アルミン「今日はまた随分とふくれてるね?」

アルミン「さっきはミーナと楽しそうに話してたのに」

アニ「別に、楽しくなんか……ないよ」ムス

アルミン「喧嘩でもしたの?」

アニ「違うけど…」

アルミン「ならそんなふうに言わない」

アニ「…うん」

アルミン「素直でよろしい」ニコニコ



アルミン「そう言えば…髪、珍しく下してるね」

アニ「っ、……」

アニ(違う別にさっきのミーナの話は全然関係なくて)

アニ(たまたまゴムが切れて、そのまま来ただけだから)

アニ「おかしい?」

アルミン「ううん」ニコニコ

アルミン「下してると印象違うねえ」ジー

アルミン「こう……なんか付けたくな……あ!」ピコン


アルミン「そうだ」スクッ

アニ「いきなり何?」

アルミン「アニはここの木の花好きって言ってたね」

アニ「……?うん、だけどそれが?」

アルミン「アニは花にアレルギーはない?」

アニ「ないけどそれが何なの?」

アルミン「きっと似合うな…」ブツブツ

アニ(駄目だ完全に自分の世界に入ってる)

アルミン「ちょっと待っててね」


アニ(嬉しそうに木の方に行って)

プチ

アニ(あ、花を取って帰ってきた)

アニ「??」

アルミン「この花の名前、アニは知ってる?」

アニ「…知らない」

アルミン「***っていうんだ」

アニ「へえ。可愛らしい名前だね」

アルミン「…君みたいだよね」ボソ

アニ「?」


アルミン「ちょっとごめんね」ス

アニ「え」

アニ(アルミンの手が…髪に)

アニ(ていうか近い!)カアアア

ゴソゴソ

アルミン「僕の思った通りだ」ポリポリ

アルミン「アニは…その、きれいだから、花がよく似合う」ナデナデ

アニ「…」ソ…カサ

アニ(ああ、髪に花を…)


アルミン「***の花言葉に、『はにかむ乙女』ってのがあるんだ」

アルミン「それを知ったとき一番にアニの顔が浮かんだよ」テレテレ

アニ「……っ」ドキ

アニ(目を背けていた。自分の気持ちにふたをしていた)

アニ(否定して、嘘をついて、知らんぷりして)

アニ(だけど気づいてしまった)

アニ(取り返しのつかない所まできてしまっていたことに)

アニ「…ぁ…」プイ

アニ(顔が熱くて上げられない)

アニ(今アルミンを見たら…きっと気づかれる)


アルミン「笑って、アニ」

アルミン「アニの笑顔は君が思ってるよりずっと素敵だよ」

アニ「……」キュン

アルミン「もちろんふくれてても可愛らしいと思うけど僕は笑顔のが好きだな」

アニ「……ぁ、ありが…と」ニコ

アルミン「……」キュウン


ドキドキ



……


スタスタスタ


アニ(また遅くなっちゃった)

アニ(あんまり遅いとまたミーナにからかわれる)

『アニはきれいだから……』

『…ずっと素敵だよ』

アニ「……」ボン

アニ(思い出してないで早くかえろ)ワタワタ

アニ(誰かに見られたらはずか死ぬよ今の顔…)カアアア

ドンッ


アニ「っ」ヨロ

アニ「ごめんなさ……、あ」

ベルトルト「何してたの?アニ」

アニ「……ベルトルト…、ライナーも」

ライナー「おう」

ベルトルト「何、その花」

アニ「…」ササ

ベルトルト「髪に花なんかつけて、前も見ずに浮かれて歩いて…誰と何してたの?」

アニ「あんたらには…関係ないから」

ライナー「いや、関係なくはないだろう…」


ベルトルト「アニさ、……何を勘違いしてるの?」

アニ「…は?」

ベルトルト「君は…女の子になんてなれないよ?」

ライナー「おいベルトルト」

ベルトルト「ライナーは少し黙ってて」

アニ「わかってるよ…」

ベルトルト「わかってないから人に見られるリスクを冒してまで言いに来たんだよ」

アニ「……」ギリ


ベルトルト「アルミン、が君をそう扱ってくれるのはね」

ベルトルト「何も知らないからだよ」

ベルトルト「彼らにとって僕らは殺戮者で」

ベルトルト「ただの倒すべき敵だ」

アニ「そ…んなの…」

ベルトルト「もし君が“受け入れられるかも”何て幻想じみたことを思ってるなら…」

アニ「…わかってる…」

ベルトルト「アルミンにはもう近づかない方がいい」

アニ「……っ!」

アニ「だから!」

アニ「あんたに!……あんたにご親切に言われなくても」

アニ「ちゃんとわかってるよ!」ドン

タタタタタ…


ベルトルト「……」ハァ

ライナー「お前な、落ち込むんなら初めからあんなきつい言い方するな」

ベルトルト「…良いんだ」ズーン

ライナー「とても良いようには見えんがな」

ベルトルト「僕がアニに嫌われるぐらいでアニを救ってあげれるなら」

ベルトルト「なんてことはない」

ライナー「……お前も大概不器用な奴だな」

ライナー「だが安心しろ」

ライナー「アニの奴はぶっきらぼうだが」

ライナー「そう簡単にお前のことを嫌ったりはしない」

ベルトルト「……」

ベルトルト「嫌われてもいいんだ。でもアニが泣く所は、……見たくないよ」

ライナー「……俺も、だな」


きりがいいのでここまでにします
見てくれた方ありがとうございました

17話は神回

~~~~~~~~~~~~~~~

忘れてたので最後におまけ投下


ミーナ(最近アニがよくアルミンの話をする)

ミーナ(最初は普通に仲の良い友達なのかなって思ってたんだけど)

ミーナ(どうも違うらしい)

ミーナ(自称アニの親友として、恋を応援してあげたい所なんだけど)

ミーナ(どうしようかなあ)

ナック「おいミーナ聞いてんのか」

ミーナ「え、何だっけ」

ミリウス「だから、キュンとするのはどんな時って話だよ」

ミーナ「ああ、それで?」


ナック「俺はやっぱり、…普段髪をしばってる子が下すとぐっとくるな」

ミーナ「やだ私のこと?」

ナック「ちげーよ」

ミリウス「それ俺もわかるなあ」

ミーナ「へえー私にはよくわかんない」

ナック「お前もそう思うだろ?アルミン!」

アルミン「え、何?」

ミーナ(!)

ミリウス「普段髪結んでる子が下してるとキュンとくるよねって話」

アルミン「……ああ……」

アルミン「……」

アルミン「……確かに、…良いかもね」


ミーナ「アルミン今誰か思い浮かべたでしょ」

アルミン「え!?」

ミーナ「言いなさいよー」

アルミン「い、いや僕は…」

一同「はやくう」ニヤニヤ

アルミン「あ、……アニとか…」ボソボソ

ミーナ(ビンゴ!)

ミーナ「……」

アルミン「あ、アニには言わないでよ?」

ミーナ「言わないよー」

ミーナ(半分はね)


ミーナ(両想いだったかー。おめでとうアニ)

ミーナ(そりゃ若い男女が毎日のように一緒にきゃっきゃうふふしてれば)

ミーナ(恋に落ちないのがおかしいってもんよね)

ミーナ(でもきっとアニはリードどころか奥手も奥手だろうし…)

ミーナ「アルミンに良いこと教えてあげる」ボソ

アルミン「ん?」

ミーナ「女の子はね、男の子がリードしてくれるのを待ってるものだから」

ミーナ「ちゃんと引っ張ってあげないと駄目よ」

アルミン「……今のはどういう…」

ミーナ「賢いアルミンならすぐわかるんじゃない?」クスクス


アルミン「…君はなんだか僕のおせっかいな親友に似てるよ」

ミーナ「ふふ、がんばってね」

アルミン「ああ、もうありがとう!」

アルミン「それじゃあね!」タタタ

ミーナ「……青春だなあ」




エレン「はっ」

ミカサ「どうしたの?」

エレン「今呼ばれた気がした」

ミカサ「きっと呼んだのは私」

エレン「なるほど」


こんどこそおしまい
また明日きます

乙!
***の花言葉は疑い?



>>107
はい。ただ花言葉の意味オンリーで選んでその他諸々の設定とかは考慮してなかったので
念のために伏字にさせていただきました
矛盾点とかは脳内変換で補充していただけると助かります

あと、これアニメ派の人も見てるのかな
冒頭にも書いたけど、ネタバレあるんで注意です
では再開

~~~~~~~~~~~~~~~

アニ(考え込んでしまって寝れなかった)

アニ(今日の訓練がハードなものじゃないのがせめてもの救いだね)ハァ



アニ(……ベルトルトが私のためを思って言ってくれたのはわかってる)コト

アニ(やっぱりもうアルミンと関わらない方がいいのかな)チャプン

ミーナ「に……アニ…アニ!」ガシ

アニ「!」


アニ「ミーナ…何?」

ミーナ「何じゃないよ。どうしたの?」

ミーナ「呼んでも全然反応しないし」

ミーナ「さっきからずっと固まって一体何を見て……」



ミーナ「…花?」

アニ「これは…」

ミーナ「取ってきたの?」

アニ「そう…。えっと、この花好きだからね」

ミーナ「ふうん…」



ミーナ「でもそんな風にコップの水に浮かべてるだけじゃすぐ枯れちゃうよ」

アニ「!?」


アニ「うそ…」

ミーナ「本当だよ」

アニ「……どうしよう」

ミーナ「まあ枯れたら別のを取ってくれば「駄目!」」



アニ「これは…この花じゃなきゃ……」シュン

ミーナ「……」

アニ「……」

ミーナ「しょうがないなあ」

ミーナ「そんなに枯らしたくないんなら、私がアニに良い方法を教えてあげる」






アニ「ありがとう、ミーナ」

ミーナ「ううん、それじゃあ私先行ってるね」

アニ「わかった。支度してすぐ行くよ」

ミーナ「うん!早く来ないとサシャに朝ごはん取られちゃうからね」

バタン…



アニ(珍しくからかわれなかった)

アニ(気を使わせちゃったね)

アニ(でも良かった。せっかくの花が枯れずに済む)




アニ「…」ハッ


アニ「……私は…」

アニ「何をしてるんだろう…ね」



アニ(アルミンとこれ以上関わらない方が良いとわかってながら)

アニ(もらった花一つで取り乱して…)


アニ「周りを散々バカだと思ってきたけど」

アニ「結局一番バカだったのは私だったってこと…」フッ





アニ(それでも、もう少し…)

アニ(あと少しだけ…)

アニ(せめて、アルミンが私の気持ちに気付くまでは)

アニ(……今のままでいたい)



……





スタスタ


アニ「ごめん遅くなったね」

アルミン「いいよ。でも夕飯でも見かけなかったから」

アルミン「今日は来ないのかと思った」

アニ「…ちょっと考え事してて…」



『君は女の子にはなれないよ』

アニ「!」

『アルミンが君をそういう風に扱うのは……』

『もう近づかない方がいい』



アニ「……」



アルミン「…」フム…




アルミン「アニ、もう少し近くにおいで」クイクイ

アニ「…?」トト

アルミン「えっとね、僕はアニが話したくないことは無理に聞くつもりはないから」ポン

アルミン「これくらいしかできないけど」ポンポン



アルミン「あんまり溜めこんじゃ駄目だよ」ナデナデ


アニ「……!」




アニ(あ、やばい……)ジワ




アニ「アルミン…」

アルミン「ん?」


アニ「肩、貸して」ボソ



アルミン「どうぞ」ス


アニ「…」ポス



アルミン「……」ナデナデ

アニ「……ぅ…」ジワァ

アルミン「……」ヨシヨシ

アニ「…っ、…ふ…」グス

アルミン「……アニ、」


アルミン「今だけ抱きしめてもいい?」


アニ「……」コク

アルミン「……」ギュ






アニ「……ミーナがね」

アルミン「うん」

アニ「昨日アルミンにもらった花を枯らさないようにって」

アニ「押し花ってのを教えてくれた」

アルミン「うん」

アニ「嬉しかった…」キュ

アルミン「……そっか」ギュウ



アルミン「アニ、今度僕にも教えてよ。押し花をさ」

アニ「アルミンに?」

アルミン「そう。僕も……ここの花を取っておきたいから」

アニ「……いいよ」


アニ「私よりあんたのが似合いそうだしね、押し花」


アルミン「こら」ペチ


アニ「……」クス

アルミン「……」フフ


ちょっと中断


おまけ
~~~~~~~~~~~~~~~


アルミン「これでよし」ニコニコ

ジャン「おーいアルミン」

アルミン「うわっ!!??」ササ

アルミン「な、な、に、ジャン!」

ジャン「…いや、お前本好きだったろ」

ジャン「この本前街で間違って買っちゃったんだけどお前読むかなって」

アルミン「え?あ、読む…」

ジャン「おう」ヒョイ

ジャン「つーか、んなあせって隠さなくても俺ぁエロ本ぐらいで「ちがうよ!」」


アルミン「もう!エレンと言いミカサと言い」

アルミン「なんで最近の子はすぐにそっちに持っていきたがるんだよ」ブツブツ

ジャン「あぁ?ちげえのか。尚更何だよ」

アルミン「君には教えない。絶対バカにするし」

ジャン「しねえよ」


アルミン「するだ…うわ、ちょっと!無理やり…もう!!」アワアワ


バッ



ジャン「こりゃ押し花か?」

アルミン「あーそうだよ」

ジャン「……っく」ブルブル

アルミン「…ほらやっぱりバカにするじゃないか!」

アルミン「だから嫌だったんだ」プンプン

ジャン「い、いや…バカにしたかったわけじゃねえけどよ」ブルブル

ジャン「あんまりにもイメージにピッタリで……っく、ふふ…ははははっ」バンバン

アルミン「…ジャン。怒るよ」イラァ


ジャン「ふ、ふ…わ、わるかった…だから睨むなよ」

アルミン「ふん」プイ


ジャン「だぁ、わかってるって」

ジャン「どうせあれだろ?お前の彼女が関係してんだろ」

アルミン「かっ!?……違うよ、アニは…そんなんじゃ」


ジャン「誰もアニなんて言ってねえけどな」



アルミン「……」ス

ジャン「お、おいその据わった目で人指し指構えんな」


アルミン「さっきから全面的にジャンが悪いんだからしょうがないよね」ジリジリ

ジャン「そのまま近づいてくるんじゃねえ!!」

ギャー


アルミン「ジャン」

アルミン「僕は女じゃないし、それらしく見せてるつもりもないよ」ムス

ジャン「誰もそんなこと言ってねえだろ」ボロッ

アルミン「……ぴったりとか言ったじゃないか」ムス

ジャン「…あー、……悪かったって」

アルミン「ふん。もういいよ」



ジャン「でも意外だな。お前らまだ付き合ってなかったのか」

アルミン「まあ……」

ジャン「告らねえの?」

アルミン「……」


アルミン「勇気が出ないってのもあるかもしれない」

アルミン「僕は弱虫で、とても彼氏にするにはお勧めできない男だしね」

アルミン「でもそれ以上に」


アルミン「今は、言うべきじゃないと思うんだ」


ジャン「?」

アルミン「彼女にも、色々抱えてるものがあるみたいだから」

アルミン「僕が今言葉に出して気持ちを伝えてしまったら」

アルミン「ますます彼女を苦しめる気がする」


ジャン「いや、そんなことは…ねえだろ」




ジャン「第一、アニはお前のこと…」

アルミン「ジャン、この話はもう終わりだ」

アルミン「僕は行くから」

アルミン「じゃあね」



バタン



ジャン「……さすが座学一位様は、恋愛にも小難しいこと考えてんのな」ハァ


~~~~~~~~~~~~~~~


ミーナ「あれ、休日にアニが部屋にいるなんて珍しいね」

ミーナ「アルミンと約束しなかったの?」

アニ「あいつは今日なんか用事があるんだってさ」

アニ「最近朝は忙しいみたいだよ」

アニ「……聞いても内緒って言われるけど」フン

ミーナ「へえええ」ニヤニヤ


ミーナ「さみしいねアニ」ニマニマ



アニ「……」ス

ミーナ「何で人差し指を構えるの!?」


バンッ

アニミナ「」ビクッ

ミカサ「アニ……いる?」キョロ


アニ「ミカサ?」

ミカサ「ここにいた…良かった」ホッ

ミカサ「一緒に来て」

アニ「?」





ミカサ「アルミンが倒れた」


アニ「!?」ガタッ





アニ「脳震盪?」

ミカサ「そう」

アニ「なんでそんなことになったのさ」

ミカサ「……」

ミカサ「アルミンにはアニに言わないように口止めされてたのだけれど」

ミカサ「ここ数週間アルミンに頼まれて私とエレンは毎朝自主練に付き合っていた」

アニ「自主練?」

ミカサ「そう」

アニ「だからあいつは最近忙しそうにしてたんだね」

ミカサ「その通り」


ミカサ「で今日は格闘訓練をしていた」

ミカサ「アルミンの相手をエレンがして、私が傍で見て改善点を指摘する」

ミカサ「それがいつもの流れ」

ミカサ「ただ、いつもと違ったのは…アルミンの調子がとてもよかったこと」

ミカサ「そのせいで、驚いて勢いづいたエレンが思い切りアルミンをふっ飛ばして」

ミカサ「遠くに飛ばされたアルミンは運悪く鉄に頭を強打して…」


アニ「なるほどね」

アニ「……脳震盪だけで済んでよかったよ」

ミカサ「本当に」


ミカサ「幸い今日安静にしてれば明日からの訓練に支障はないそうだから」


アニ「アルミンは今どこに?」

ミカサ「自室のベッドで眠ってる」

ミカサ「本当は目が覚めるまで見ててあげたい」

ミカサ「けれど私とエレンはこれから始末書を書かされるので」

ミカサ「アニにアルミンを頼みに来た」

アニ「意外だね。あんたは…アルミンに私が近づくのを」

アニ「良しとしてなかったように見えたけど」

ミカサ「……私たち以外でアルミンが一番心を許してるのは」

ミカサ「きっとあなただと思ったから」

アニ「……」


ミカサ「これ、男子寮の見取り図」ヒラ

アニ「どうも」ヒョイ

ミカサ「昼間は見張りはいない」

ミカサ「でもあまり人に見られないように」

ミカサ「変なうわさがたっては大変」

アニ「わかってる」


アニ「ねえ、アルミンはなんで自主練のこと私に内緒にしてたの?」

ミカサ「……それは…」

ミカサ「あとで本人に聞けばいい」

アニ「…あいつ、素直に教えてくれる?」

ミカサ「さあ」

ミカサ「どうしても知りたければ」

ミカサ「看病したことを引き合いに出せばきっと教えてくれる」

アニ「……あんた…」

ミカサ「じゃあ、よろしくアニ」タタタ

アニ「…」


……




アルミン「ん…んぅ?」

アルミン「あれ…僕……」ゴシゴシ

アニ「……目が覚めた?」

アルミン「あ……に…?」

アルミン「どうして…、そもそもここは…」

アニ「あんたの部屋だよ」

アルミン「え!?」ガバッ


アニ「ちょっと、急に起き上がったら!」

アルミン「…っい、」クラ

アニ「もう」ソ

アルミン「…ぅ…」ポフン

アニ「…頭打って脳震盪起こして倒れたんだって」

アルミン「あ…あ、なるほどね」

アルミン「でもなんでアニがここに…」

アニ「ミカサが私に教えてくれたから」

アニ「あと、看病してほしいとも」

アルミン「……そっか」


アルミン「見ててくれたんだね、ありがとう」

アルミン「いつごろから?」

アニ「昼ごろから」

アルミン「今は…」

アニ「四時くらいじゃない?」

アルミン「そんなに長く…。ごめんね」シュン

アニ「別に。頼まれなくてもやってただろうし」




アニ「そんなことより」


アニ「なんで、教えてくれなかったの?」



アルミン「……何が?」


アニ「自主練のこと」

アルミン「……それもミカサから?」

アニ「うん」


アルミン「あー……」

アニ「言ってくれたら…、私だって手伝ったのに」

アルミン「……」



アルミン「君は、その…ほら、エレンにも教えてるだろ?」

アルミン「その上僕に教えるなんて、大変だし…」シドロモドロ


アニ「…」

アニ(冷や汗掻いてるし、目も泳いでる)

アニ(いやならいやってはっきり言えばいいのにね…)

アニ「…」シュン


ごめんなさい
中途半端ですが今日はここまで

※ここで出てくる脳震盪の軽度などは
現実のものとは違います

アルミン「あ…」

アルミン「違うんだ、アニ…」

アルミン「僕は……」

アルミン「僕は…ただ君に迷惑を掛けたくなくて」

アニ「…そんなに必死に弁明しなくても…アルミンが本当は何が言いたいのかはよくわかったから…」フイ

アルミン「っ」

アニ「……」

アルミン「聞いてくれ」

アルミン「……確かに今のは建前だ」

アルミン「ごめん…」

アニ「……」

アルミン「……」


アルミン「僕が君に言いたくなかったのは」


アニ「いいよ、わざわざ言わなくても」


アルミン「アニ、君は誤解してる」

アニ「誤解なんかじゃないでしょ」

アニ「アルミンは私と訓練するのが嫌だった」

アルミン「そうだけど、そうじゃないんだ!」

アニ「意味がわからない」

アルミン「だから!」






アルミン「僕はただアニに、格好悪いところ見られたくなかっただけだよ!」

アニ「………は?」


アルミン「……ただでさえ弱くて嫌になるのに、好…じゃなくて、アニに教えを乞うなんて…男としてこの上なく格好悪いじゃないか」

アニ「えっと…」


アルミン「うわぁ……もう、最悪だ…」ズーン

アルミン「だから内緒にしてたのに……」ズーン

アルミン「結果的に一番情けないばれ方をするし」ズーン


アニ「…それだけ?」

アルミン「それだけって言わないでよ」

アルミン「僕にとっては…それだけのことじゃないんだ」

アニ「……ごめんなさい」


アニ「でも、私はアルミンが体力面で劣るから格好悪いなんて思っちゃいないよ」

アルミン「フォローなんてしなくていいから」

アニ「私がお世辞を言ってるとでもいいたいの?」


アルミン「……だって」

アニ「言うわけないってアルミンならよくわかってるでしょ」

アニ「男にも色々あるのかもしれないけどさ」

アニ「私は頑張ってるアルミンのことを格好悪いなんて言わないよ」

アルミン「…」

アニ「言いたくなかったことを聞いちゃったのは悪かったね」

アニ「アルミンがコンプレックスに思ってるのはわかったから、無理に自主錬に付き合おうとかはしないさ」


アニ「でも……これだけは知っといて」




アニ「あんたが私のこと女の子って言ってくれた時から」

アニ「私にとってアルミンは…一番格好いい男の子だよ」

アルミン「!」


アルミン「!」

アルミン「あ、え……」カァア

アニ「……」カァア

アルミン「………そ、そっかあ…嬉しい…な」ソワソワ

アニ「……」ソワソワ

アルミン「アニが……そう言ってくれると、やる気が出るね…。うん、僕頑張るよ…」ヘヘ

アニ「その調子で、頑張って…」

アルミン「う、ん……」テレテレ

アニ「……」モジモジ


アニ(どうしよう)

アニ(最近すぐ変な空気になる)

アニ(私が照れてしまうせいでアルミンも返しに困ってるみたいだね)

アニ(視線の置き場がわからなくて散々きょろきょろして終いにちらっとアルミンを見るとあっちも同じ行動してるみたいで目が合ってしまう)

アニ(そうすると言葉に詰まって余計に話せなくなって……)

アニ(嫌ってわけじゃないんだけど、何となく恥ずかしい)



アニ(何か別の話題を…)


アニ「そ、う言えば、押し花ちゃんと出来た?」

アルミン「え?あ、ああ…うん」


アニ(ちょっと話題転換が露骨すぎたかな…)



アルミン「待ってね、確かあの本に挟んで」ゴソゴソ

アニ(ベッドの上に本を山積み…アルミンらしいっちゃらしいけどさ…)

アルミン「あ、あった!これだ」バッ

アルミン「ほら、綺麗に出来ただろ」

アニ「私より上手いんじゃない?」

アルミン「あはは、手先は僕のが良いからね」

アニ「…ふん」ゴッ

アルミン「ぐふっ」


アニ「……それよりアルミン、そんな本持ってたっけ?」

アニ「私、見たことないけど」

アルミン「そりゃそうだよ」

アルミン「ついこの間ジャンにもらったばかりだからね」

アルミン「そこまで有名ってわけではないんだけどマルコやミリウスは読んだことあるらしくって、昨日は夜に討論したよ」



アニ「ふうん」

アニ(私より先に?ずるい…)ムッスウ


アルミン「またそんな顔して」


アルミン「アニには向いてないと思ったから話さないでおくつもりだったんだけど…」

アニ「向いてない?」

アルミン「うん。暗い話なんだよ」


アニ「……いいよ。話して」

少し中断


あるところに一匹の狼男がいました

彼は人間に散々迫害された復讐として

人間に化け、人間を騙して襲うことを生きがいにしていました

ある日、いつものように人間に化けて人間の村近くに表れた狼男は一人の少女に出会いました

その少女は狼男が今まで出会ったどんな人間よりも優しく笑いかけてくれる、素敵なひとでした

狼男は少女に恋をしました

そして毎日のように少女のもとを訪れ、幸せな時を過ごし

二人は愛し合うようになりました

すっかり人を襲うこともなくなった狼男は、このまま人間として少女と一緒に生きることを決めました


そんなある日、少女は気づいてしまいました

彼が眠っている顔、その顔が狼にそっくりだということに

そしてあんなに頻繁だった狼男による被害が、自分が彼と出会って以来ぴたりとやんだことに

少女は苦しみました

いっそこのまま気付かなかったことにしようかとも思いました



次の日の朝、少女は狼男に言いました

今日は私の友人にあなたを紹介したいと

狼男は喜び、少女とともに友人のもとへ向かいました




気付けば、狼男は沢山の人間に囲まれていました

君の友人はずいぶんいっぱいいるんだね

狼男は少女に問いかけましたが、もう少女は自分に笑いかけてはくれませんでした



そう、少女は狼男のことを村のみんなに話してしまったのです


狼男はついに捕えられ、その場で処刑されました

大勢の人が喜びました

こうして人間の里には平和が訪れましたとさ


アニ「……」

アルミン「暗い、でしょ」

アニ「そうだね」

アニ「でも一応ハッピーエンドなんじゃない?平和が訪れたんだしさ」

アルミン「少なくとも狼男や少女にとっては違うと思うよ」

アニ「……」

アルミン「ごめんね。暗くなっちゃって」

アルミン「この話はもう…」

アニ「ねえ、」

アニ「もし……さ」

アルミン「ん?」



アニ「アルミンが、この少女だったら……」


アニ「どうしてた?」




アルミン「僕が……?」

アルミン「うーん、そうだなあ」

アルミン「…僕だったら…」

アルミン「苦しくて、悲しくて、迷って」

アルミン「気付いてしまった自分を呪いたくなって」

アルミン「信じたくなくて……」




アルミン「でもきっと、最後には」


アルミン「少女と同じ行動をとるだろうね」





アニ「そ…っか」ズキ


アニ「アルミン、らしいね」


アニ(ベルトルトに言われた通りだ)

アニ(私は無意識のうちに、アルミンに期待していた)

アニ(彼ならもしかしたら、私のことを受け入れてくれるんじゃないかって)



アニ(アルミンはそういう人間ではないって知ってた、はずなのにね)



アニ(私は思ったよりもずっとアルミンに……)


アニ(もう、これ以上一緒にはいられないね)

アニ(ここは私の本当の居場所じゃない)

アニ(どんなに取り繕っても、いつか崩れてしまう)

アニ(私は戦士だから)


アニ(きっと……いつかは、あんたを…)





アニ「暗いっていうよりは、悲しい話だね」

アルミン「うん。……ああ、でも…」



~~~~~~~~~~~~~~~~

アニ「……今まで心配かけてごめん」

ベルトルト「…いや」

ライナー「これから行ってくるのか?アルミンの所」

アニ「そう。それで、終わり。……もう関わらない」

ライナー「ここまで続いたんだ」

ライナー「どうせ残り少ないわけだし最後まで一緒にいてもいいんじゃないか?」

アニ「だめだよ。…自分が思ってるより私はアルミンに傾いてた」

アニ「このままじゃ本当に戦士に戻れなくなる」

アニ「……だから、今日で終わらせるよ」

ベルトルト「……アニ…」

アニ「大丈夫。ちゃんと、出来るから」

……


アニ(アルミンは……)キョロキョロ



エレン「でよ、そんときミカサがさぁ…」ハハハ

ミカサ「エレン。唾が飛んできたない」

ミカサ「もっとお上品に笑いなさい」

アルミン「ミカサ、それはちょっと…」

エレン「うふふふ、ミカサさんたらね」

アルミン「エレンもいちいちしなくていいから」


アニ(いた)


アニ「……アルミン」

アルミン「アニ?あれ…ごめん、今日って夜約束してたっけ」

アニ「違うけど…ちょっと話がある」

アルミン「話?」

アニ「アルミン借りていい?」

エレン「あんまり遅くなるなよ」ニヤニヤ

ミカサ「どうぞ」

アニ「どーも。来て」ギュ

アルミン「ちょ、そんなにひっぱらなくてもちゃんと歩けるって!」ヨロ

エレミカ「いってらっしゃーい」




アルミン「アニ、手握りしめすぎて痛いよ」

アルミン「そんな勢いよく歩かなくてもまだ時間は…」

アルミン「ねえアニ聞いてる?」

アニ「……」

スタスタ

アルミン「アニったら」

アニ「……」

スタスタ

アルミン「また何かあったの?」

アニ「……」

スタスタ

アルミン「アニ!」グイ

ピタ


アニ「……」

アルミン「どうしたの。話ってなに」

アルミン「黙ってちゃわからないよ」

アニ「……アルミンに…」

アルミン「ん?」




アニ「お別れを言いに来た」

アルミン「……は?」


今日はここまで
明日か明後日で終わる予定です




アルミン「え、……は……?」

アニ「……」

アルミン「どういう…こと?」


アルミン「まさかアニ開拓地にっ!?」ハッ

アニ「違うよ」

アニ「そういうお別れじゃない」

アルミン「…!」


アルミン「じゃあ……」


アニ「……もう、こうやって会ったり話したりするの、やめよう…ってこと」

アニ「普通の、ただの同期に、戻ろう」


アルミン「……な、んで」

アニ「…」

アニ「……それは……」

アルミン「また、言えないの?」

アニ「……」

アルミン「僕のこと、顔も見たくないぐらい嫌いになったとか?」

アニ「!」



アルミン「はは、もしかして図星?」

アルミン「……嫌われてたとは気付かなかったね。いつから演技派になったんだい、アニ」

アニ「あ……ち、ちがっ」

アルミン「ごめんね、君の気持ちを察してあげられなくて…」

アルミン「用事は済んだだろ?僕行くね。正直これでもダメージ大きいんだ。少し一人になりたい」

アニ「待っ…」

アルミン「ああ、大丈夫。心配しなくても明日からもう話しかけたりしないから」スッ

アニ「アルミン!」




ドン


アルミン「わっ」ヨロ

アニ「……」ギュー

アルミン「アニ?嫌いな男に抱きついたりしたら勘違いされちゃうよ」

アニ「ちがうよ…!」

アニ「違う……私は…アルミンのこと、嫌いになんかなってない…」ギュウウッ

アルミン「……」

アルミン「無理しなくても…」

アニ「無理じゃない!」

アニ「無理じゃないよ……嫌いになるわけないでしょ」

アルミン「なら、どうして何も言ってくれないんだ」


アニ「…」

アルミン「……アニ、泣いてるの?」



アニ「泣いてないよ」

アルミン「嘘つけ。また泣いてるじゃないか」

アニ「泣いてない」

アルミン「……」ハァ



アニ「……私は…」




アニ「……私は、…アルミンとは違うから」

アニ「アルミンといると…楽しくて、嬉しくて、…でも辛い」

アニ「だからもう一緒にはいられない」


アルミン「……」

アニ「自分勝手でごめんなさい」




アルミン「納得はいかない」

アルミン「でも、アニが辛いって言うなら、一緒にいてと無理強いすることもできない」

アルミン「ずるいよ」


アニ「ごめん…なさい」




アルミン「もう、こうして会うのも最後ってことだよね」

アニ「……」コクッ


アルミン「ねえ。こんなに困らせるんだ、仕返しぐらいしてもいいよね」

アニ「仕返し?」

アルミン「うん」




アニ(何か嫌がらせでもする気?)

アニ(笑ってるけど恐い顔してる。これは、怒ってる)

アニ(仕方ないね。何も悪くないアルミンを傷つけて振り回したんだから…何されても文句は言えない)


アニ「それでアルミンの気が済むなら…構わないよ」

アルミン「ありがとう」

アルミン「それじゃあ、よく聞いててね」






アルミン「僕はアニが好きだよ」





アニ「……」

アニ「……は、ぁ!!??」バッ

アルミン「あ、やっぱり涙目になってる。隠さなくてもよかったのにアニは強がりだね」ハハハ

アニ「……え、え、ちょ、い、今……な、ななななにを」ワタワタ

アルミン「何、聞こえなかったの?しょうがないなぁ」


アルミン「アニが、好きだよ」

アニ「~~~ッッ!?!?」カァアアア




アルミン「アニが…大好きだ」

アニ「も、もういい!聞こえたよ!!」

アルミン「アニ、す「もういいって!!!」」


アルミン「あれ、もういいの?理解してもらえるまで言うつもりだったけど…」


アニ「う、るさい!」


アニ「どうせ…どうせ嘘でしょ…」

アルミン「嘘じゃないよ。もしかして気付いてなかったの?」

アルミン「鈍感だね。そういう所も好きだよ」

アニ「だ、だからもういいってば!!!」カァアアッ



アルミン「残念、……いったい!地味に足踏むのやめてよアニ」

アニ「……騙されないよ。今の流れで言ったってことは、これは仕返し。私を上げて落とすための作戦でしょ」

アルミン「どうしてそう思うの?僕がアニに告白して、それが嘘だったとして何でアニが上げて落とされるの?」

アニ「そ、それは……」

アニ「あんたわかって言ってるでしょ」

アルミン「全く見当もつかないね」

アニ「ぐぅ……」ギロ

アルミン「睨まれても伝わらないけど」



アニ「私が……」

アルミン「うん」

アニ「私が、アルミンのこと、……」



アニ「…………好きだからだよ!!」カアアア




アルミン「……うん」ニコニコ

アニ「………」ソッ

アルミン「逃げないで」ギュウ



アニ「あんたやっぱり知ってたでしょ」

アルミン「いや、確信してたわけじゃないよ。僕の勘違いかもしれないって思ってた」

アルミン「実際、嫌われてるかもって時は本気で落ち込んだしね」

アルミン「だから聞きたかった。直接、アニの気持ちを」

アルミン「最後の可能性に掛けたんだ」


アルミン「あとは本当に意地悪い気持ち」

アルミン「好きにさせておいてここでお終い。もう忘れますさよなら、なんて一方的すぎる」

アルミン「散々僕を悩ませておいてあんまりだ」

アルミン「こうなったらアニが苦しもう何だろうが忘れないようにしてやるってさ」

アルミン「僕が告白すれば嫌でも数日はアニは僕のことで頭いっぱいになるだろ?」


アニ「それが仕返し?」

アルミン「そうだよ」

アニ「あんたって…怒らせるとこわい」

アルミン「別に怒ってないよ」

アニ「怒ってるよ」

アルミン「どうして?」

アニ「だって普段はもっと優しい顔してる」

アルミン「今はアニを手放したくなくていっぱいいっぱいなんだよ」

アニ「………」カァア



アルミン「真赤だね。林檎みたいで可愛い」ソッ

アニ「触ん…ない…で」

アルミン「嫌だったら振りほどけばいいさ。軟弱男の手くらい簡単に払えるよね」

アニ「……ずるい」

アルミン「どっちが」

アニ「今日のアルミンは変だよ」

アルミン「だから、余裕がないんだって」

アニ「うそ。だったらもっと動揺して…」

アルミン「精一杯取り繕ってるだけだよ。格好つけてるけど心の中じゃ動揺してる」


アルミン「密着してるんだからアニにも聞こえてるんでしょ、僕の心臓の音」

アルミン「壊れてしまいそうなくらい音立ててる。アニが近くにいるといつもそうだ」

アルミン「……好きだから」ギュウウッ



アニ「痛いよ…」


アニ(心が痛い。離れたくない。一緒にいたい。このままずっと…)

アニ(でも…)



アニ「何を言われても、もう…一緒にはいられない」フイ

アルミン「……わかってる。無理強いはしないって言ったろ」

アルミン「ただ、これだけは覚えておいて」

アルミン「僕はアニを待ってる」

アルミン「君が僕と一緒にいられるようになるまで、ずっと想い続ける」

アニ(そんな…)

アルミン「僕って結構強情で頑固で諦め悪いんだ」

アニ(そんな夢みたいな日は…来ない)ウル



アニ「あんたバカでしょ。私を想い続けてもメリットないよ」

アニ「……アルミンはもっと賢いと思ってた」

アルミン「知らなかった?」ニコニコ

アニ「バカ…でしょ」グス

アルミン「アニは泣き虫だね。強がってるくせにすぐ泣くんだから」

アニ「うるさい」プイ

アルミン「アニ……こっち向いて」ジッ

アニ「……」




アルミン「時間の限り、近くでアニの顔を見ていたいんだ」

アニ「顔なら明日からも見れるけど」

アルミン「今みたいな表情は見れない」

アルミン「ほら、恥ずかしいのは僕も一緒だから」

アニ「……」

アニ「…」チラッ


アルミン「……」クィッ



チュッ



アニ「」

アルミン「……」



アニ「……!?!?」カアアアアア

アニ「……い、ま……く、口に!!」

アルミン「……あ、あはは。今ならいける気がして…ああでもやっぱり恥ずかしいなこれ…」カアア

アニ「も、もう!このバカアルミン!!!」バシバシ

アルミン「いったいなぁ、アニったら」クスクス

アニ「いきなり、乙女の、唇を、奪って!!」バンバン

アルミン「宣言したらよかったの?」

アニ「そういう問題じゃないよ!!」カアアア

アルミン「……もしかして嫌だった?」



アニ「嫌……じゃない、から怒ってるんだよ!」フィ

アルミン「……」キュウウウン



アルミン「くっそぉ、アニは可愛いなぁこんちくしょう!」グシャグシャ

アニ「ちょっと!思い切り撫でないでよ、髪型崩れるって」

アルミン「どうせ後は寝るだけなんだからいいでしょ」ワシャワシャ

アニ「……そうだけど、…ぐしゃぐしゃなのアルミンに見られたくない」プク


アルミン「…」

アルミン「……気にしないのに」ナデナデ

アニ「……知ってるけど…嫌なもんは嫌なのさ」

アルミン「…そっか」ナデナデ

アニ「…ん…」

アルミン「……」ジッ

アニ「…」チラ



アルミン「……アニ…」

アニ「……何?」

アルミン「…目…閉じて」ソッ

アニ「アル…ミン…」

アルミン「……」スッ

アニ「……」キュ

アルミン「……好きだよ」










ギィ…バタン


ズルズル…ドサッ


アニ(結局、夜中になっちゃったね)

アニ(……終わった。夢のような時間が…全部、終わってしまった)

アニ(明日からは私たちはもとに戻る。ただの同期に)

アニ(そして私は、仮初めの女の子じゃなく戦士に戻って…)

アニ(故郷に帰る。私の本当の居場所はそこだけだから)




アニ(約束したんだ、お父さんと…必ず帰るって)



アニ(最初から決まってたことだよ)

アニ(私たちは何もかもが間違ってたんだ)

アニ(余りにも立場が違いすぎた)

アニ(私は戦士で、必要となればあいつをこの手で掛けることだってする)

アニ(故郷よりもアルミンを選ぶことはできない。だって後戻りするにも道がない)

アニ(共に生きるなんて夢のまた夢だよ)

アニ(私は人類を滅ぼして、……故郷に帰る)





アニ(アルミンに沢山幸せな時間をもらったのに…)

アニ(それを仇で返すんだ)

アニ(アルミンに好きだなんて言ってもらう資格なんかない)

アニ(あんたを裏切り続けている私には)

アニ(最低の女だと罵られても仕方がない)

アニ(ごめんなさい)

アニ(ごめんなさい)

アニ(ごめんなさい)



アニ「私は…アルミンが…」

アニ「……好き……だったよ」ポロポロ




アニ(そして、……さよなら)


今日はここまで
見てくれた方、ありがとうございました


~~~~~~~~~~~~~~

……




アルミン(やっと掃討作戦が終了したかと思ったら、今度は巨人殺しの犯人探しか)

アルミン(休まるときがないな)

アルミン(……!あの後ろ姿は…)

ダダダダ

アルミン「アニ!」ガシッ

アニ「……!」

アニ「……声が、大きいよ。あと腕、締め付けないで」クルッ

アルミン「………」フルフル

アニ「アルミン?」


アルミン「無事で…良かった」キュ

アニ「……」

アルミン「…」フルフル


アニ「アルミン、ただの同期は…」

アルミン「同期だって心配ぐらいするよ……」



アニ「ふん。私はあんたのが死にそうで心配だったね」

アルミン「あはは、それもそうだ」

アニ「…」



ジャン「おい、…お前ら」スタスタ

アルミン「ジャン?」

ジャン「……悪い、…ちょっと聞きたいことがあるんだ」

アルミン「どうしたの?」

ジャン「……マルコの…」



ジャン「マルコの死に際をしらねぇか……?」


アニ「!」

アルミン「…」

アルミン「ごめん、僕は知らないや…」

アニ「、…私も……」



ジャン「そうか…悪かったな。もし誰かが知ってるようなこと言ってたら知らせてくれるか?」

アルミン「うん…」

ジャン「…じゃあな」




アニ「私ももう行くよ」

アルミン「ああ…うん…」

アニ「どうせまた後で検査の時に会うでしょ」

アルミン「そうだね、ごめん引き留めて」パッ

アニ「……じゃあね」スタスタスタ

アルミン「……」

アルミン(アニ?)



……

……


アルミン(……)

アルミン(どういうことだ)

アルミン(何故、アニがマルコの立体機動装置を?)

アルミン(見間違えるはずがない。あれはマルコのでアニのではない)

アルミン(だって一緒に組み立てたんだ、……アニも、マルコも)

アルミン(マルコの遺体は装置を身につけていなかったと聞いた)

アルミン(マルコの装置を取ったのは…アニ?)

アルミン(どうしてそんなことをする必要があった)

アルミン(自分の装置が壊れたのか?)

アルミン(だとしたら何故掃討作戦の時に申告していないんだ?)


アルミン(あの時、ジャンがマルコのことを聞いて来た時)

アルミン(アニは一瞬顔がこわばった)

アルミン(本当に、……何も知らなかったのか?)

アルミン(いや、そのことに関してはただ、たまたま死ぬ前に外れてしまったマルコの装置をアニが拾ったのかもしれない)

アルミン(それに同期が沢山死んだんだ、アニだって動揺するさ)

アルミン(でも……だからといって『他人の装置を自分のもの』と偽って提出したことに変わりはない)


アルミン(このタイミングでそんな行動をとる理由は……一つしか考えられない)

アルミン(……アニが、今回の巨人殺しの犯人…なのか?)

アルミン(あの、アニが巨人が憎いという理由で……実行したのか?)

アルミン(ありえない。アニなら殺すことで人類に大きな損害が出ることくらいわかるはず)

アルミン(何か他にわけがあったのか?)

アルミン(もしかしたら……アニが抱えていたらしい何か、に関係があるのかもしれない)

アルミン(何なんだよ……それは)

アルミン(わからない。あんなに一緒にいたのに、…なんでわからないんだ)


アルミン(まさかとてつもなく大きなことに巻き込まれて…いるんじゃ……!)

アルミン(だとすればアニの身は安全なのか…?)

アルミン(また辛くて一人で泣いてるんじゃないのか)

アルミン(今すぐに会いたい。会って話したい…)

アルミン(……君は何を抱えてるんだ、アニ…)




ジャン「アルミン、考え事も良いがもうすぐ消灯だ。さっさと寝床につけよ」

アルミン「……ああ、ごめん」


ジャン「そう言えば……アルミンさ、」

アルミン「ん?」

ジャン「アニと別れたのか?」

アルミン「は……」

アルミン「…だから、僕はアニと付き合ってなんかないよ」

ジャン「でもよ、明らかにある時期からよそよそしくなったじゃねえかお前ら」

アルミン「……まあ、しいて言えば僕がふられたみたいなもんかな」

ジャン「はあ!?ふられた!?」

アルミン「うん」

ジャン「アニはアルミンのこと好きじゃなかったってか?」

アルミン「いや、両想いだったよ」

ジャン「……はぁ?」

アルミン「恋人らしいことも一通りはした」

ジャン「……どこまで?」

アルミン「ご想像にお任せするよ」



アルミン「でも、……もう一緒にはいられないからただの同期に戻ろうって」

ジャン「なんだそりゃ。憲兵団に入るから遠距離は無理ってことか?」

アルミン「んー……わからない。詳しくは話してくれなかったから」

アルミン「ただ……彼女が抱えてることに関係はある、と思う」

ジャン「何だよ、抱えてることって」

アルミン(……言うべきか)

アルミン「それは……」

アルミン(……言わざる、べきか)



アルミン「ごめん、僕もよく知らないんだ」


アルミン(アニ、僕は君を信じるよ…)

アルミン(きっと何か理由があるんだろ?)

~~~~~~~~~~~~~~~~

ウワータスケテエー
ギャー

ズシンズシンズシンズシン

アニ(巨人を引き連れて、走る)

アニ(目的のために、走る)

アニ(躊躇なんてしない)

アニ(刃向かうものはみな殺す)

アニ(躊躇はできない)

アニ(殺して、殺して、……エレンを目指す)

アニ(成功すれば故郷に帰れる)

アニ(やっと帰れるんだ。やっと終われる)

アニ(お父さんに……)


ズシンズシン



パシュッワー

アニ(……また来た)

アニ(殺して、……殺して、……)ガッ

バーン

アニ(躊躇は、しない)

アニ(今は心を無にして何も考えるな)


アニ(!)

アニ(あっちにもう一人いる)

アニ(煙弾を上げて、逃げ出した)

アニ(あいつがエレンかもしれない)


ドドドドドド


アルミン「行け!」

ドオン…


ズシン

アニ(……)

アニ(巨人の間は、人でいる間よりは、殺すことに戸惑わなかった)

アニ(きっとどこか離れた目線で巨人の自分を見ていた)

アニ(それが、いっきに現実に引き戻された気がした)

アニ(ああ、想定はしてたつもりだった、…でもまさか本当にこんなことになるなんて……)




アニ(……アルミン)

アニ(なんでここにいるのさ)



アニ(恐怖の色に目が染まってる)

アニ(いつもみたいな優しい眼差しじゃなくて、恐れと嫌悪の入った瞳でこっちを見ている)

アニ(殺さなきゃ)

アニ(早く。今ここで見逃したらアルミンならきっと怪しむ)

アニ(そしたら不味いことになるかもしれない)

アニ(早く殺せ、……やれ!!)






アニ(……でも)

アニ(何もアルミンを殺さなくても、作戦が成功すれば問題ないんじゃないの?)


アニ(そうだ。アルミンには私に襲いかかってくる様子もない)

アニ(刃向かってきたわけじゃないし)

アニ(要は、成功させればいいんだよ)

アニ(第一アルミンも私だなんて流石にわからないはず)



スッ

ズシンズシン…


アルミン「殺さない……のか?」ドクンドクン…

~~~~~~~~~~~~~~~


アルミン(……あの巨人は………)

アルミン(知性を持っていて、おそらくエレンを探しているだろう、“奴”は)

アルミン(エレンでもない僕を殺さず見逃したばかりか)

アルミン(同期でしか知り得ない死に急ぎ野郎というあだ名に反応して動きを止めた)


アルミン(考えたくなかったが)

アルミン(同じ104期生のなかで、怪しい行動をした人間を、僕は一人知っている)

アルミン(そして、……彼女がそうであるなら、今までの言動にも合致がいく)


アルミン(なにより僕が、見間違えるはずがない)

アルミン(あの、僕とよく似た瞳を…)


アルミン「『僕とは違う』……か…」

ジャン「ん?何か言ったかアルミン」

アルミン「いや…なんでもないよ」

ジャン「そうか。ぼさっとすんなよ、木の上とはいえここは壁外なんだからな」

アルミン「うん……ごめんねジャン」


『何かを変えることのできる人間がいるとすれば』

『その人はきっと…大事なものを捨てることができる人だ』


アルミン(僕は……どうだ)

アルミン(……決めなければいけない…)

~~~~~~~~~~~~~~~



アニ(失敗した)

アニ(あんなに沢山の人を殺して、殺して、……殺したのに)

アニ(失敗、してしまった)



アニ(結局アルミンのことも、殺せなかった)

アニ(あの時、殺すべきだったのにね)

アニ(アルミンの頭脳はあなどれない)

アニ(何か嗅ぎ付けたかもしれない)

アニ(私はよく知ってる)

アニ(三年間見てきたんだから)


アニ(私は、……何をしているんだろう)

アニ(こびりついた血が離れない)

アニ(足や手や体中に残ってる感触が離れない)

アニ(洗い流しても、こすっても、まとわりついてくる)

アニ(頭の中で私を非難する声が聞こえる)

『お前が殺した』

『お前が殺した』

『お前が…』

アニ(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい)

アニ(謝ると余計に酷くなる)

アニ(…それでも謝らずにはいられない)

アニ「ごめんなさい……」


アニ(怖い)

アニ(ごめんなさい)

アニ(私のせいだ)

アニ(また同じことをしなければいけないの?)

アニ(また人を殺すの?)

アニ(故郷に帰りたい)

アニ(でも……嫌だ。もうこんなことしたくない)

アニ(これ以上人を殺したくない)

アニ(……殺さなきゃいけない)

アニ(…)

アニ(助けて)

アニ(誰か助けて)



アニ(……アルミン……)


~~~~~~~~~~~~~~~

アルミン「……」ボフン

アルミン(自分でもよく帰ってきたなと思う)

アルミン(この布団の感触を味わっているのが嘘みたいだ)

アルミン(沢山の人が死んだ、今回の壁外調査で)

アルミン(多くの犠牲を払って得たものはなし)

アルミン(いや……僕にはわかったことがある、か)


アルミン「……アニ…」


アルミン(このままではエレンは殺される)

アルミン(大切な親友が死んでしまう)

アルミン(それだけじゃない)

アルミン(女型を野放しにすれば人類の存亡すら危うい)

アルミン(恐い。女型を目の前にした時の恐怖は忘れられない)

アルミン(巨人は恐ろしくて、憎むべき敵だ)

アルミン(例外はない)

アルミン(奴等は僕らを滅ぼす存在だ)



アルミン(他の人ならきっと今の時点で迷いはしなかった…)



アルミン(けど……アニは僕にとって、大切な人だ)

アルミン(エレンやミカサとはまた違う、)

アルミン(僕が守ると決めた女の子だ)

アルミン(どんなに離れても、好きでいる自信がある)

アルミン(いつか君ともう一度一緒に過ごせるその時まで)

アルミン(想い続けると誓ったから)

アルミン(だから……)

アルミン(信じたくない、信じられない)

アルミン(どうしても)


アルミン(働いてしまう自分の頭が憎らしい)

アルミン(確実な証拠はない)

アルミン(でも確信してる。あれはアニだ)

アルミン(僕があの時みたいに黙っていれば、女型の正体に気付くものはいないかもしれない)

アルミン(僕が……黙っていれば……)

アルミン(僕が黙っていたせいで……)



アルミン(そうだ。僕の甘さのせいで一体何人の人間が死んだんだ?)スクッ


アルミン(防げたはずの犠牲が…出た)


アルミン「くっそぉ……」ダンッ

アルミン「僕は……僕は……どうすれば…良いんだよ…!」ギリギリ


アルミン(親友か、愛する人か)

アルミン(大義かエゴか)

アルミン(どちらかを選べっていうのか)

アルミン(切り捨てることを)

アルミン(僕に選択させるのか)

アルミン(なんて、なんて残酷なんだ)







『 私はとうに 人類復興の為なら 心臓を捧げると誓った兵士』



アルミン「……」ハッ


アルミン(………いや、違った)

アルミン(そもそも僕に選択肢なんかなかったんだ)

アルミン(持ち合わせていなかった)

アルミン(僕の答えは三年前のあの日から決められている)

アルミン(たった、ひとつに)



アルミン(……僕はアニが好きだ)

アルミン(彼女が僕らの敵かもしれないとしても、まだ好きだ)

アルミン(あんなにも苦しんでいたアニを、救ってあげたい)

アルミン(僕だけは味方だと、言ってあげたい)

アルミン(……きっと、この想いは変わらない)

アルミン(この命尽きるまで…いや、尽きたって変わらない)




アルミン(だが僕は兵士だ)

アルミン(アルミン・アルレルトという一人の人間である前に)

アルミン(人類のために心臓をささげた一介の兵士だ)


アルミン(この結論に至った自分が憎くてたまらない)

アルミン(愛する人をこの手に掛けようとしている自分が嫌で、嫌でたまらない)ギリリ

アルミン(現実を信じたくない。信じられない)ポタッ

アルミン(それでも、僕はやらなければいけないんだ)ポタポタ

アルミン(捧げてしまった心臓は、もう僕のもとにはないのだから)ポロポロ




アルミン「……う、……くぅ……」ボロボロ

アルミン「……アニ……あ、にぃッ…」ボロボロ

アルミン「……ご、……め…ん…っ」グッ


ゴシゴシ

フラフラ


ギィ…バタン


コンコン

アルミン「アルミン・アルレルトです。エルヴィン団長にお話があって参りました」

エルヴィン「はいりたまえ」

アルミン「ハッ!失礼いたします」ガチャッ


……


~~~~~~~~~~~~~~~


アニ(久しぶりに会ったアルミンはあのころと変わらない振りをした瞳の奥に)

アニ(壁外で見たような恐怖の色を宿していた)

アニ(変わってしまったんだね)

アニ(ばればれだよ、……ばか)

アニ(無謀な賭けだ)

アニ(それでも私は最後まで、あんたに悪く思われたくなかった)

アニ(本当にバカな女)

アニ(でもこれがエレンを奪う最後のチャンス)

アニ(故郷に帰る…これは私にとっても賭けだ)






アニ「そっちには行けない」

アニ「私は…戦士になりそこねた」

エレン「だから…!つまんねぇって言ってるだろうが!!」

アルミン「話してよアニ!僕達はまだ話し合うことが出来る!」

アニ(無理だよ。わかってるんでしょ)

アニ(あんたが私にそんな目を向けてることが何よりの証拠だ)


アニ「ねえアルミン、***の花言葉にさ、…『疑い』ってのがあるんだよ」

アルミン「!」

アニ「知らなかったでしょ?」


アニ「私は、あんたにもらったこの想いのせいで、あんたに疑われて、摘み取られそうになってる」

アルミン「……アニ、…僕は………!」

アニ「……滑稽だね」

アニ(アルミン、私があんたの良い人でよかったね)

ミカサ「もういい」

ミカサ「これ以上聞いてられない」

アニ(ひとまずあんたは賭けに勝った)

ミカサ「不毛……」

ミカサ「もう一度ズタズタに削いでやる、女型の巨人」




アニ(…でも私が賭けたのはここからだから)


アニ(故郷に……帰る)

……



ヒュンッ


ミカサ「アニ…落ちて」トンッ

アニ(落ちる。落ちていく)


アニ(負けたんだね)


アニ(私は、戦士にもなれず)

アニ(女の子にもなれず)

アニ(故郷に帰ることも)

アニ(幸せな夢の続きを見ることも叶わず)

アニ(初めて心から好きになった人に利用されて)

アニ(ここで、消える)

アニ(私にふさわしい、みじめな最後)



アニ(お父さん、約束守れなくてごめんなさい)

アニ(故郷に帰りたい)

アニ(アルミン、裏切ってごめんなさい)

アニ(あんなにも想ってくれたのに)

アニ(あんたはもう私のことを二度と想ってなんかくれないだろうね)

アニ(それでいい。この世界で私たちが結ばれることはないんだから)



アニ(ねえ、…いつか話してくれた話の続き…)


アニ(もしこんな私にも次があるのなら…)

アニ(今度は、……今度こそは…)





『でもこの話には続きがあるんだ』

『続き?』

『マルコが教えてくれたんだけどね』

『どんな?』

『きっと聞いたらアニはがっかりするよ』

『教えてよ。気になる』

『えっとね、』


『数百年の時が流れて、普通の人間に生まれかわった狼男は再び少女と出会い恋に落ち』

『今度こそ何にも邪魔されることなく、二人は末永く幸せに暮らしましたとさ』


『……だって』


『……』

『ほら、やっぱりがっかりしたでしょ』

『だって完全に蛇足だよ。つまらない。無理やり』

『あはは、手厳しいなアニは』

『あんただってそう思わないの?』

『そうだね。確かに初めは思ったよ』

『……』

『でも、今が残酷な世界だからこそ、ご都合主義でも何でもいい、次は絶対……幸せなハッピーエンドが待ってる』

『そういう希望みたいなものを持っても、いいんじゃないかな』



『……中途半端で情けない希望だね』

『そうだね』

『救いがあるんだかないんだか』

『うん』

『でも……嫌いじゃないよ』

『……僕もだよ』








アニ(あんたの隣で、普通の女の子として………………生きたい)



シュウウウ…カキン



今まで見てくださった方、本当にありがとうございました
ハッピーエンドにするには自分の技量が足りませんでした
時間と機会があれば転生後二人がちゃんと幸せになるまで、とか書いてみたいです

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