初霜「提督定食一つお願いします」 (54)


*初霜が独断と偏見で鎮守府事情について騙るだけ(主に食事内容)
*キャラ崩れているところがあります
*不定期

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――鎮守府 食堂――



間宮「いつものね。AとBどっちにします?」

初霜「えっと(メニュー確認中)……じゃあ、今日はAで」

間宮「はーい。日替わり提督定食A、一つお願いしまーす!」パタパタ

初霜「ふぅ……あれ? 若葉じゃない」

若葉「ん? ああ初霜か、丁度良かった。悪いが空いている席が少なくてな。隣、座らせてもらうぞ。どうせ相席するなら姉妹艦との方が気兼ねなくて良い」ヨッコイショット

初霜「それは構わないけれど……少し驚いちゃった」

若葉「ん? 何にだ」

初霜「だって、若葉は喫煙席でしか食事をしないと思っていたから」

若葉「……あのな。私は喫煙者だが、だからこそマナーはキチンと守るし、任務に支障を来すほど吸うヘビースモーカーでもない。……確かに、こういう喫煙禁煙が選べる場では大抵喫煙席の方を選ぶが……そもそも喫煙席を選んでも吸わない時だってあるしな。結局はその時の気分さ」

初霜「早霜のバーでお酒を飲んだ後もよく吸っている、って話を聞くけれど……」

若葉「……なら言わせて貰うが、ついこの間。私はお前の行動に凄く驚かされたんだが」

初霜「え? な、何のこと?」

若葉「なにって「はーい! 日替わり提督定食A一つです」「あ、はい! ありがとうございます」「若葉ちゃんの掛け蕎麦セットも、もうすぐ出来るから待っててね」……あ、ああ。頼む間宮さん」

若葉「……話は後で良いから、冷めないうちに食べてしまえ」

初霜「そ、そう? じゃあ遠慮なく……いただきます」




初霜(まずは……そうね、やっぱり御味御汁から……(ズズズ)……うん、薄すぎず濃すぎない、煮干しと昆布の良い出汁が出てる)

初霜(具はもやしだけだけど、それが逆にシンプルで白味噌の邪魔も出汁の邪魔もしてないわ。シャキシャキとした心地良い歯触りもしっかりと残してある、絶妙な煮加減)

初霜(御味御汁って不思議よね。汁物なのに食事に付いていると一番最初にお箸を伸ばしたくなるんだもの。この島国に生まれた人……艦娘の性なのかしら)

初霜(さて次は……よし、キンピラゴボウにしましょう。ゴマ油とお醤油の良い香り、それに大きさも長さも全部均一で綺麗……)モグモグ

初霜(うんうん、このしっかりとした歯ごたえ。やっぱりきんぴらゴボウはこうでなくっちゃね)

初霜(昔は外国の人にゴボウを見せたら『日本人は木の根なんか食べる』って割と偏見的に見られていたらしいけど……今はそうでもないみたい。誤解が解けただけじゃなくて、こんなにおいしいって知って貰ったんだもの。当然かしら)

初霜(主菜前だけど十分おかずになるし、もうごはんも口に入れちゃおっと。……ああおいしい。和食って良いわよね……)

若葉(相変わらず美味しそうに食べるものだ……いや、食べるようになった、と言う方が正しいか。私が言うのも何だが、良い事だ……おっと)

間宮「はーい、掛け蕎麦セットです。セットは醤油の焼きおにぎりで良かったですよね?」

若葉「ああ……(さてと、私も冷めない内に食べるとするか)」




初霜(若葉は掛け蕎麦セットね……たまにはお蕎麦も良いなぁ……って、ええ!? いきなりかき揚げをお蕎麦の上に置いちゃうの!!?

初霜(そんな事したら……あ、ああ! 染みちゃう!! かき揚げのお船がおつゆの海に轟沈しちゃう!!)


若葉「」ズルズル


初霜(若葉の馬鹿! せめてお蕎麦を一口か二口食べてから、中盤から終盤に掛けて着水させて、タイタニック号みたいにゆっくりと沈めていくのが王道でしょう!?)

初霜(私達で言うなら提督は愚か、旗艦の指示成しに独断で敵艦隊に突っ込む様なものよ! 目の前の戦果欲しさに大切な物を見失っちゃって!!)

初霜(……うう、いいもん! 食事の最中に余計な事は気にしたらダメって赤城さんも言ってたし! 若葉の事なんて放っておいて食べちゃいましょう)

初霜(今日のメインは……鶏もも肉と七種の野菜の甘酢あんかけ。どっちかと言えば和風にアレンジされた中華って感じがするけど……)モグ……


初霜(…………ッッッツ!!)バクバク


初霜(おいしい! 薄く衣をまぶして揚げてある鶏もも肉はプリプリでとってもジューシー! 噛むだけでお肉のうま味が口に広がっていく……でも、これだけじゃないわ)

初霜(大ぶりに切られてるから形も歯ごたえも残っている玉ねぎ、綺麗な花形に抜かれている、かわいらしいにんじん、微かな苦みをくれるピーマン、料理全体を濃すぎない味に引き締めてくれている里芋……)

初霜(そしてこの醤油ベースのとろとろとした餡……料理の食材全てを一纏めにしてくれている旗艦……いいえ、私達船が動くのに必要不可欠な燃料! ご飯が、ご飯が進んじゃう!!)モグモグムシャムシャ

初霜(そして合間に食べるこの胡瓜の浅漬け! うん、良い漬かり具合。お口の中に残った嫌な部分だけを上手く取り除いてくれる、まさしく清掃員ね! この子もまた、立派な編成艦。いないなんて考えられない!)





初霜(ふぅ、一気に七割以上も食べちゃった……ああ、もうご飯が足りないわ! おかわりしたいけど……でも私駆逐艦だからごはんのお変わりなんてしたら……)ウーン

若葉(どうせまた「太っちゃうー」とか「残しちゃうかもー」とか「鎮守府の食費がー」とか、くだらない事を考えているんだろうな……)ズルズル


若葉「はぁ……ほら喰え。それだけじゃ少し足りないだろう」つ焼きおにぎり

初霜「え?」

若葉「お代わりを頼むほどじゃないけど、ご飯がないとちょっと……って奴だろう? この食堂に小ライスは無いからな、遠慮せずに喰え」

初霜「で、でもそれだと若葉の分が半分に……お蕎麦ももう殆ど無いし……って、なんでかき揚げ殆ど食べてないの?」

若葉「どちらも気にするな。私は改二のお前よりもさらに小食だからな。それに心配せずとも、今から少しばかり量は増える」

初霜「(増える……?)……だけど「ああそうそう、そう言えばその焼きおにぎりも提督が考案したメニューでn」頂くわ!」

若葉「あ、ああ……」





初霜(か、噛んだ瞬間に香ばしい醤油の香りが……! まだ熱くてホロホロと崩れるお米に匂いが絡みついて……ああ、たまらないわ。焼きおにぎりの醍醐味よね)

初霜(それと、このさわやかな香り……もしかして大葉? 細かく刻んで醤油で味を付けた大葉をご飯に混ぜ込んであるのね)

初霜(ど、どうしようこれだけでも十分美味しすぎて……ってあれ? 若葉の焼きおにぎりは……?)


若葉「」フンフーン(鼻歌)


初霜(な……!? お蕎麦を食べ終わった後の、おつゆだけが入っているお椀に焼きおにぎりを!? 「増える」って疑似雑炊によるかさ増しの事だったの!?)


若葉「」ハフハフ


初霜(み、見た目もお行儀もあまり良くないけど……(ゴクリ)……お、美味しそう……!!?)

初霜(そ、そっか! 最初に躊躇無く沈めたかき揚げ……! あれは言わば「おかず」じゃなくって「雑炊の具」!!)

初霜(若葉が求めていたのは揚げ物特有のザクザクとした歯ごたえじゃなくて、おつゆにたっぷり浸かって、ご飯と一緒に掻き込む事が出来るやわやわ感!!)

初霜(普通の食材じゃあそこまで合わないかもしれないけど、何種類もの食材が一度「揚げる」という行程を通して一纏めになっているかき揚げなら、自然にご飯と混ざり合うわ!!)

初霜(若葉は自分なりに一番おいしい食べ方を模索していたのね……それに比べて私は……出された料理を、普通に美味しく食べる事しか出来ていないじゃない……)


初霜「……完敗ね」

若葉「は?」

初霜「あ、ううん! 何でも無いわ」


初霜(せめて、最後まで美味しく頂きましょうか)





初霜(取りあえず……またきんぴらゴボウね。うん、何度食べても美味しい……なんでしょう。私にはいないはずなのに、こう、おばあちゃんの味を想起させるというか……安心する味わい)

初霜(あ、お味御汁の事忘れてた! ……冷めない内に……うん、おいしいし落ち着く。和食、と言うよりはこれも家庭の味って感じがするわ……お母さんの味ね)

初霜(甘酢あんかけも濃いのに飽きないわ……鶏肉とお野菜も餡も、練度ばっちりね! どんな深海棲艦だって大破確定よ!! 無骨で、でも優しい感じがするこれは……)



初霜(………提督の味、かなぁ)



初霜「ふぅ……ご馳走様でした」

若葉「ん? ああ、食べ終わったのか」

初霜「ええ。食べ終わったんだったら、先に行ってても良かったのに」

若葉「私は午後の業務まで少し時間があるからな。食後くらい、のんびりさせて貰うさ……所で、さっきの話なんだがな」

初霜「えっと……ご、ごめんなさい。なんだったかしら?」

若葉「ほら、食べ始める前に行ってただろう。お前の行動に驚かされたって」

若葉「お前、この前提督考案メニュー以外の物を注文していただろう。いつもいつも、必ずと言って良いほど提督メニューを頼むお前が、だ。正直熱でもあるのかと疑ったぞ」

初霜「そそそ、そんなこと無いわ! たまたまいつも、その時食べたいなって思うのが提督が考えているメニューってだけで深い意味は……」

提督「……なんだ、俺がどうかしたか」

初霜「くぁwせdrftgyふじこlp!!?」




若葉「提督。提督も昼食か?」

提督「まぁ、それも兼ねて少し間宮と相談をな……ん? 初霜はまたその定食を頼んでるのか。気に入ってくれるのは嬉しいが……いつも有りがちなメニュー編成で悪い」

初霜「そ、そんな事無いです!! 提督が考えるご飯はどれも凄く美味しいですから! この前教えてくれた、間宮さん特性一押し裏メニューも凄く美味しかったですし!! リンゴと豚肉がもう……」

若葉(……ああ、なるほど。この前頼んでいたのはそれか)

初霜「それに比べて私はあまりお料理上手じゃないし、セルフサービスで良くある調味料でアレンジを加えるのがあまり好きじゃないヘタレだし……出された料理を普通に食べる事しか出来なくて……少し申し訳なく感じますし……」

提督「なにを言ってる、それで十分だろう」

初霜「……へ?」



提督「俺は料理人じゃないが、それでも自分が作ったり、考えたりした飯を誰かが残さず食べてくれるってのは、嬉しいものだ」

提督「それで笑顔になったり、満足そうな顔になっていたら尚更だな。まぁあの馬鹿共みたいに大量に喰われると流石に困るが……」

提督「お前はいつも普通に、残さずに、旨そうに笑顔で飯を食べてくれるからな。俺としてはありがたいし、嬉しく思う」アタマナデナデ

初霜「……」



提督「きっと間宮や伊良子も、そう思っているはずだ……っと、少し話が過ぎたな。俺はもう行くが、二人とも午後の任務に支障を来さない程度に休憩を入れろ。じゃあな」

若葉「ああ、分っていさ」

若葉「……初霜?」





初霜「………………」





若葉「やれやれ……頭を撫でられた程度で赤面して硬直するぐらいなら、まだまだケッコンへの道は遠そうか」



食事編その1 終わり

一番難しいのは初霜らしい口調

ちなみに基本三日に一度。
それと、いつかカニは食べると思うけどカニバは無い。

これ喫煙設定いる?

喫煙所編とかもあるんじゃね?

>>16 喫煙席の方が雰囲気感じられる店とか喫煙席しか無い店とかあるんよ。若葉に付ける必要あるかと言われれば趣味

>>17 すまんな。>>1はたばこを吸ってる人を格好いいな。とは思うが吸わない




初霜(皆さんこんにちは。初春型駆逐艦の四番艦、初霜です)

初霜(今日は鎮守府の創設記念日……の代休日で、お仕事はお休みなんです)

初霜(創設記念日当日は大本営直属の元帥や大将の方がお越しになったり、ちょっとしたお祝いの籍が設けられるので、お休みどころでは無いんです……気疲れという意味では、いつもより大変だったりします)

初霜(その代休も、人によって取れる日がまちまちで……私の場合、記念日当日から十日後にようやくお休みが取れたんですよね……)

初霜(なので、今日は私服で鎮守府の外……大型ショッピングモールまで遠出しています)

初霜(久々の完全オフなんだもの。次何時お休みが取れるか分らないし……楽しまなくちゃ損よね!)

初霜(そうやって意気揚々と鎮守府を飛び出した私は今……)


初霜「うぅ……ヒック……」ズビズビ


初霜(ショッピングモールに併設されている映画館のロビーですすり泣いています……)



初霜(一応言っておきますが、迷子なんかじゃありませんよ?)

初霜(時間もたっぷりあるし、映画でも見ようと気楽な心持ちで前から気になっていた今話題のアニメ映画を見たのですが……)

初霜(それが大当たりで……終盤辺りから涙腺が緩みはじめ、エンディング辺りでは人目もはばからずもうボロボロと泣いてしまったんですよね……)

初霜(悲しい結末でも無ければ、切ない終わり方でも無く、まさに「ああ良かったぁ……」と言える結末なのに涙が出てしまう……これが嬉し泣きって奴でしょうか。多分)



初霜(青春、恋、運命……どこかの少年誌ではありませんが、そんな三大原則が詰まった映画を見て、素直に「良いなぁ」……って思う事が出来ました)

初霜(……『かつての運命を乗り越えるために存在する』って言われた私達ですけれど……)

初霜(ああゆう素敵な『運命』だったら幾らでも乗っかりたい、と思うのはやはり不謹慎でしょうか)

初霜(……単純に、主人公さんとヒロインさんが羨ましかっただけかもしれませんね。あの二人はまさしく『運命によって出会い、定めを乗り越えた』人達でしたから)



初霜(……私達も負けてはいられません。いつか運命を乗り越え、皆さんに久遠の平和を……)










グゥ~……


初霜「…………//////」カァアアアアアアア



初霜(……映画館の暗い……違うわね……そう、黒いロビーに響き渡ったその音は、間違いなく私のお腹から出た物で……)

初霜(もう恥ずかしくて恥ずかしくて。私は泣いていた事も忘れて、急いで映画館を抜け出しました)

初霜(だってしょうが無いでしょう!? 私は映画館で映画を見る時はSサイズのジュース以外、持ち込まない主義なんですから!!)

初霜(最近は何種類ものフレーバーがあるポップコーンやら、割と本格的なホットドッグ、ケーキなんかまで用意されていますけど……)

初霜(食べるのに夢中で映画に集中できなかったり、ジュースもSサイズ以上にすると途中でトイレに行きたくなったりするので、食べ物や飲み物は基本買わないようにしているんです)


初霜「まぁその反動として、終わった後は急にお腹の虫が鳴り出したりするんだけど……
ああもう恥ずかしい」

初霜「この際何でも良いわ。早く何かお腹に入れちゃいましょう」


初霜(私は気持ち足早に、ショッピングモール内にある大きめのフードコートへとやって来ました)

初霜(流石に休日だけあって、人がかなり多いです。親子連れに学校帰りと思われる中高生、カップルらしき男女や老夫婦と思われる方までいます)

初霜(人混みが嫌い、と言う人も多いですけど……私はこういう雰囲気、嫌いじゃ無いです)

初霜(フードコートに出店しているお店の雰囲気も相まって、まるでちょっとしたお祭り会場みたい。みんな楽しそうですし……こういう人混みなら、逆に気分が良くなっちゃいます)



初霜「さてと、何を食べようかしら……」



初霜(情けない話ですけれど外食でお店やメニューを選ぶ時、私は凄く優柔不断になってしまいます)

初霜(鎮守府の食堂では基本迷わz……ちょ、ちょっとばかり多めに提督考案のメニューを頼んでいますから。それが無いと、逆に何を頼んで良いか迷ってしまうんですよね……)



初霜「たこ焼きとお好み焼きは、このあいだ黒潮と浦風に凄く美味しいのをごちそうして貰ったばかりだから却下」

初霜「ラーメンと餃子……美味しそうだけど、今はそういう気分じゃ無いのよね……これもごめんなさい」

初霜「石焼きビビンバ……フードコートメニューとしては珍しいわ……でも間が悪い事に、つい昨日の晩ご飯がビビンバだったのよね……」

初霜(どうしよう……中々「これ!」と言ったのが無いわ……このままじゃもう一回お腹の虫が鳴っちゃいそう……)

初霜(落ち着くのよ初霜。私のお腹の電探と羅針盤が指し示している場所はどこ? 私が対峙するべき敵艦はどこにいるの?)



初霜(そうやって私がお腹の具合を確かめながらフードコートを半周ぐらいしたタイミングで、そのお店は見つかりました)



初霜(サンドウィッチとクラブサンド……うん、うん! ここよ!! 野菜たっぷりのサンドウィッチ……今の気分にぴったり!!)

初霜(最近生野菜を食べていなかった気がするし……丁度良いわ!)メニューチラリ

初霜(へぇ……追加のトッピングや、かけるソースまで選べるのね……種類も豊富……や、野菜は全部増量無料!? 良いの!!?)

店員「いらっしゃいませー! ご注文お決まりでしたらお伺いします」

初霜「あ、えっと……」

初霜(ど、どうしようまだ全然決まってないのに……待って貰うのは簡単だけど、それはなんとなく嫌ね、申し訳ないし……ん?)





プラ板『ご注文にお迷いでしたら「おまかせ」をどうぞ! 店員があなたに合いそうなサンドウィッチをお作りいたします』





初霜(……たまには冒険するのも一興かしら。他人に私がどう見られているのかも気になるし……ね)

初霜「えっと。お、おまかせでお願いします! あ、野菜は全種類増量で、ドリンクはレモンソーダを」

店員「はい、かしこまりました! 少々お待ちください」



初霜(そう言うと店員さんは私の目の前で手早く、幾種類もの野菜や食材を、トーストしたパンに挟んでいきました。みるみるうちに美味しそうなサンドウィッチが出来上がっていきます)

初霜(……思えば、私がいつも食べている主食は大抵ご飯か麺で、パンなんて久しぶりです。イタリアやドイツ艦の皆さんは、まだ私達の鎮守府には配属されていませんから……配属されたら、パンを使ったメニューは増えるんでしょうか?)



店員「お待たせしました! 特製おまかせサンドです!」

初霜(……まぁ今はそんな事、別に良いですよね! サンドウィッチ美味しそうですし!!)



初霜(……浮かれていた私が自分の失態に気づいたのは、代金を払って注文した食事を受け取った後の事でした……)

初霜(休日に大型ショッピングモールのフードコートでお昼を取る事なんて久しくありませんでしたから、基本中の基本を忘れていたんです)

初霜(……あらかじめ自分の席を取っておく、という当たり前の行動を!!)



初霜(どどどど、どうしましょう……どこかの席が空くまで待つ!? 幸いサンドウィッチは温かい食べ物でも、そこまで冷たい食べ物でも無いから最悪それでも良いけれど……)

初霜(いえ、でもポテトとジュースは別ね! どちらも冷えたり温くなったら格段に味が落ちる!!)


アレ? アレ、ハツシモジャナイ?


初霜(……ち、違う。それだけじゃ無かった!!)


ホントウダ! オーイハツシモチャーン!!
……キヅイテナイノカナ?


初霜(本当に一番まずいのはサンドイッチのパン! これは確かトースターでトーストされた物だったはず!! つまり温かくなっている!!)

初霜(そして見ている限り、野菜を含め中に挟んである食材は、適度に冷やされた物だったわ……このままじゃあパンも食材も、お互いの温度で台無しになっちゃう!! どうしましょうどうしたr)

???「おーい初霜ったら!」

初霜「わひゃあ!!?」

???「わひゃあ! って……おーおー、見た目通りの可愛らしい声出すんだねぇ」

初霜「秋雲……?」



初霜(後ろから肩を叩かれ、軍艦らしからぬ情けない声を上げてしまった私が後ろを振り返ると、そこには秋雲が艦娘カードにも載っているあの余裕の表情で立っていました)



秋雲「そそ、秋雲さんだよ。ちょーっと巻雲と一緒にショッピングデート……もとい、画材やらPCの外付けHDやらを買いにね。初霜は?」

初霜「え、あの……映画を見た帰りだけど……」

秋雲「ほほーん。ならちょーっと荷物持t……もとい、お昼食べたら一緒に買い物しない? 向こうで席とってあるから」



初霜(……なんだか不穏な単語が聞こえたような気もしましたが、同僚のお誘いですし、何より何の苦労も無く席に座れるとあって、私はすぐにその提案に乗りました)



巻雲「ですからー。秋雲はいっっっつも私を子供扱いしてくるんですよ! この前だってですね……」

初霜「は、はぁ……で、でも秋雲は正式な手順を踏まれていた場合、夕雲型一番艦……もとい、秋雲型一番艦になっていたかもしれない艦ですし……」

秋雲「おっと、その発言は見過ごせないねぇ初霜。この際IFの話は良いとして、誰かを子供扱いするのと、自分がお姉ちゃん振る舞いをするのとは、似て非なる別物だよ」

初霜「……正直どっちでも良いです……」



初霜(は、話が長い……いや席に座ってから数分も経ってないんだけれど凄く長く感じる!! 待て、を命令されているワンちゃんってこんな感じなのかしら……)

初霜(……話を遮るみたいで悪いけれど、本当にどっちでも良い……と言うかどうでも良いし、もう話を無視してご飯食べちゃいましょっと)





・おまかせサンド 野菜をたっぷり使った特製のサンドウィッチ。大きめのパンに挟まれている為、他に何が使われているかは食べるまで謎。

・焼きポテト 揚げて、では無く、オーブンで焼いてある櫛形に切られたポテト。ジャガイモの香りが鼻をくすぐる。

・レモンソーダ 微炭酸。レモン果汁ですっきり爽やかな後味。


初霜(うーん、おいしそう! ……さて、どうしましょうか。普段はいきなりメインには行かないんだけれど……)

初霜(随沿艦が一隻だけだし、いきなり旗艦に攻撃しちゃいましょうか!!)バクリ!



初霜(す、凄い! 一口噛んだ瞬間、口の中でザクフワジャクバリって凄い気持ちいい音がしたわ!!)

初霜(硬くトーストされたパン、しっかりと冷やされて噛む度にジャキジャキって音がするレタスに玉ねぎ)

初霜(音まで美味しい、ってよく表現としてあるけれどこう言う事よね……食べているだけで耳が気持ちいいもの)


秋雲「(へぇ……良い顔するじゃん)」ガサゴソ


初霜(そして……このなんとも言えない香りと酸味……このサンドウィッチのメインは……燻製されたサーモンとクリームチーズ!!)

初霜(しっかりと燻されたサーモンと、ぬっとり濃厚なクリームチーズの連携は……悔しいけれど抜群ね。お互いがお互いの良さを引き出し合って雷撃の威力を何倍にも高めているわ……)


巻雲「(うわぁ、美味しそうに食べるなぁ……顔がほころんでいます)……ふえ? 秋雲何してるの?」

秋雲「ん~? いやちょっとねー」


初霜(でも、それだけじゃない……幾ら連携が良くても、ただの雷撃じゃここまでの高威力になる事は無いわ……そう、この威力に隠れた秘密は……大ぶりに切られたトマトと濃い目のバジルソース!!)

初霜(ともすればくどいと感じてしまいかねないサーモンとチーズの濃厚な味をより味わい深く、より濃厚に、けれどしつこく無く仕立て上げる最後の調整員!)

初霜(トマト、チーズ、バジルと言えばイタリアのカプリチョーゼが有名だけれど……それにサーモンの濃厚さと野菜のフレッシュ感が加わって……うん、まさに戦艦でも一撃で轟沈させる必殺の酸素……サーモン魚雷ね!!)バクバク

訂正

初霜(トマト、チーズ、バジルと言えばイタリアのカプリチョーゼが有名だけれど……それにサーモンの濃厚さと野菜のフレッシュ感が加わって……うん、まさに戦艦でも一撃で轟沈させる必殺の酸素……サーモン魚雷ね!!)バクバク

初霜(トマト、チーズ、バジルと言えばイタリアのカプレーゼが有名だけれど……それにサーモンの濃厚さと野菜のフレッシュ感が加わって……うん、まさに戦艦でも一撃で轟沈させる必殺の酸素……サーモン魚雷ね!!)バクバク

カプリチョーザは店の名前だろうが俺



初霜(そしてこの合間に食べる焼きポテトも侮れないわ……まだまだ残ってるこのホクホクとしたジャガイモの感じ)

初霜(塩と少しのスパイスだけのシンプルな味付け……だからこそより強くジャガイモの味を感じられる……必殺の魚雷をより当てやすくするための足止め砲撃……うーん、こっちの連携も良いわ)

初霜(……でもね。だからこそ弱点というのがあるのよ……とても美味しいからこその弱点が、ね)

初霜(それは……単純な満足感の少なさ!! ジャンクフード全般に言える事だけど、スパイスを効かせる事が多いかの艦隊編成は凄く鋭く、強いわ……言うなれば雷巡四、軽巡二の超攻撃的な物……最悪、攻撃を始める前にこちらの艦隊は大惨事となる……)

初霜(けれど本来雷巡、軽巡の装甲はその圧倒的魚雷搭載数に比例して脆い物……駆逐艦ほどでは無いけれど、重巡、戦艦の砲撃が直撃した場合、呆気なく大破させられてしまう程度の物でしか無いわ……)

初霜(……加えて、今回は野菜を多く積み、女性でもペロッといけてしまうように作られた物……残念だけど、私の敵じゃあ無かったのよ)フッ……

初霜(……あ、レモンサイダー美味しい……なるほどね、敵艦隊の撃退に失敗した場合の殿……自分達の痕跡をスキッと消し去るこの手際……お見事です)チュー


初霜「……って、秋雲なにやってるの?」

秋雲「あ、これ? これはですなー……ジャーン! 秋雲作『頬張る天使』」

初霜「」ブーッ!!



初霜(ええ、皆さんのご想像の通りです……秋雲が見せてきたのは、サンドウィッチを頬張る、何故か背中から羽が生えた私の絵(可愛さ三割増し))

初霜(……人が食事してる時に何やってるんですかこの人は!!?)



巻雲「あわわわ! は、初霜、大丈夫ですか!?」フキフキ

初霜「ゲホッ、ゴホッ……あ、ありがとう巻雲……あ、秋雲あなた何して……」

秋雲「いやぁ、こう美味しそうに料理を食べてる初霜を見てたらさ、なんて言うのかこう、インスピレーションがむくむくと沸いてきましてなぁ……」

秋雲「気づいたら紙と鉛筆でシャシャッとラフ画を描いていた……何を言ってるのか分らねーと思うが」

初霜「分りますから消してください!!」

秋雲「えー? 折角初霜主演の料理漫画のプロットが脳内で組み上がりそうな所だったのに……」

初霜「漫画まで書かれるところだったんですか!!?」



初霜(その後、渋る秋雲をなんとか説得し、艦娘の誰にもその絵を見せないようにするという約束をさせました……)

初霜(……その際「初霜が何か食べてる所って、可愛いし微笑ましいから消したくないんだよね」と言ってくれていましたけど……)

初霜(……秋雲の社交辞令ですよね、きっと、うん)


ショッピングモール編 ① 終わり

ちなみに自炊以外モデル店があります。そして初霜に食べて欲しい物募集

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの114514さん   2017年07月27日 (木) 19:17:07   ID: t2g-xikE

初霜いいゾ~これ

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