悪魔「ふぇぇ…死んじゃいますよぉっ」 (188)

悪魔「寿命が足りないですぅ!」

悪魔「こ、これはっ…ぐふっ…もう時既に、遅いというやつですかぁ…」

悪魔「……」トボトボ

悪魔「も、もう…やるっきゃないんでしょうか…」

悪魔「誰からか寿命を奪うことを…」

悪魔「……死にたくありませんしね」

悪魔「誰から寿命をいただきましょうか、ふむ」キョロキョロ

悪魔「あの人は…サラリーマンですね、あわわ、顔色が大変なことになってますぅ!」

悪魔「この人は、ぬぁっ!? な、なんですぅ!? なんで裸で外を出歩いてるんですかぁ!?」

悪魔(さ、最近の人間はよくわかりません!)

悪魔「うぅ…どうしましょう…」

悪魔「………」

悪魔「あんまり、人間からは寿命は取りたくないんです…」

悪魔「こんなこと、言っちゃうなんて。悪魔失格ですね、ほんっと」

悪魔「はぁ~」

五日後

悪魔「ぉごごっ…」

悪魔(視界が真っ暗闇に覆われてます…やばいですねこれ…)

悪魔(悪魔は死んだらどうなるんでしょうか…気になりますけれども、体験はしたくありません…)

チューチュー

悪魔「あ…ネズミさん…」

悪魔(ふふ、なんですぅ? 私がみえるなんて、不思議なネズミさんですね)

チュチュ

悪魔「よしよし…」

がぶっ!

悪魔「あいたぁっ!?」

悪魔「なんで噛むんですかぁ!? い、いたいですぅ!?」ばっ!

悪魔「………?」

悪魔「あ…」

悪魔「や、やってしまいました…うそです、そんな…」

悪魔「ネズミさん…ご、ごめんなさい…私そんなつもりじゃなくって…」

悪魔(寿命を取ってしまいました…)

悪魔「………」

~~~

悪魔「よいしょっと。うんしょうんしょ」ゴソゴソ

悪魔「ふぅ…こんな感じでしょうか」

悪魔「立派なお墓じゃあないですけれども、これぐらいしか私にはできません…」

悪魔「…ありがとうございます、ねずみさん。貴方の寿命は大切に使わせて頂きます」

悪魔「……」

悪魔「…頑張りましょう、頑張って今日も生き抜きましょう」

「──あーもう、ほんっと見てらんないわね」

悪魔「ふぇっ!?」

「いちいちネズミごときの命を惜しまないでよ。見てて、嫌になるからさぁ」

悪魔「あ…こ、こんにちわ! 天使さん!」

天使「はいはい。こんにちわ、今は夜だけども」

悪魔「そうでしたね! すみません…」ぺこり

天使「っはぁ~」

悪魔「えへへ。あの、その、お久しぶりですね」

天使「ん、そうだったかしら」

悪魔「はい! 以前は二十年前にお会いしましたよ!」

天使「…時間の経過なんて人間の概念じゃない。よく覚えてられるわね、アンタ」

悪魔「そうでしょうか? 私は外界での生活が多いので」

天使「なるほどね、あたしだって前まで一般天使だったから
   外界にはしょっちゅう使いに行って、時間に常に追われてたわ」

悪魔「ですがその衣装と…その杖! 偉くなられたんですね!」

天使「ふふん。これがあたしの実力ってもんなの!」

悪魔「すごいです!」

天使「今じゃバンバン人間の魂を回収しちゃってるわよっ」

悪魔「ほぉ~」

天使「…てか、その仕事はあたしみたいな役持ちがすることんじゃないんだけど」

悪魔「そうなんですか?」

天使「そうなの。今はちょっと人間とゴタゴタがあってねぇ」

天使「一般天使はその自体の収拾に追われてるのよ」

天使「なんでも、神に喧嘩売った阿呆の人間が居るみたいでさぁ」

悪魔「うッ」パタリ

天使「アンタも知ってると思うけど、人間界で起こった大地震──ちょっとぉ!?」

悪魔「あががががっ…!」

天使「何急にぶっ倒れてんの!?」

悪魔「ぐにゅにゅにゅ!」

天使「大丈夫!? ねぇ? ねぇってばっ!」

~~~

悪魔「うぅっ…すみませんでしたぁ…」

天使「ほんっと馬鹿じゃないのッ? ネズミの寿命吸って身体に合わなくて倒れるとかッ」

悪魔「ま、前までは木々からも寿命は取れたんですがぁ…年は取りたくないですねぇ…」

天使「木々って…植物からも寿命とろうとかしてたのアンタ…?」

悪魔「はいぃ」

天使「…ほっと馬鹿。悪魔のクセに何やってんのよ」

悪魔「しゅみませんん…」

天使「ったく。ほら、これあげるから」

悪魔「え?」

天使「人間の魂よ。さっき取ってきたばかりの新品もの」

悪魔「え…でも…」

天使「いーのよ別に、仕事として届けるのは既にノルマ達成してるから」

悪魔「……」

天使「これはついでに持って行く奴なの。気にしないでいいから、もらっておきなさい」

悪魔「……いえ」すっ

天使「はぁ?」

悪魔「いりません、お気持ちはありがたいんです。ですが、貰うことはできません」

天使「魂の人間性を心配してんの? 大丈夫よ、これって最高に極悪人の魂だから」

悪魔「あはは。えっと、そうじゃないんです」

悪魔「…私は人間からは生命と取りたくはないんです」

天使「………」

悪魔「たとえそれで死んだとしても…」

天使「本気で言ってんの? アンタ?」

悪魔「本気で言ってます」

天使「悪魔のクセに人間からは魂は取らない。寿命も取らない、ってワケ?」

悪魔「…はい」

天使「なにそれ、最高に馬鹿ね」

悪魔「あはは…すみません…」

天使「よくもまぁほんっと。何考えてるんだか…」すっ

天使「…そんなんだと、ほんとに死んじゃうわよ」

悪魔「……」

天使「あとで泣き事言っても助けてあげないからね」

悪魔「…はい」

天使「あっそ。ま、そろそろ天界に帰るから。アンタも気をつけてね」

悪魔「ありがとうございます。わざわざ話しかけてくれるなんて、嬉しかったです」

天使「……。本当にアンタは悪魔なのかしらね」

悪魔「え?」

天使「なんでもないわよ。それじゃあ、また逢えたら」

悪魔「は、はい! それでは!」ブンブン!

悪魔「……」

悪魔「ジュルル…はっ!? ダメですダメですぅ! なにを考えてるんですかぁ!?」

悪魔「うぅっ…美味しそうでしたねぇ…うぐぐ…」

トボトボ…

~~~

天使「……」ひゅーん

天使「…ん?」

天使(あれって、もしかして)

天使「…ほんっと馬鹿」ひゅん!

~~

天使「……」バサァ!

天使「なにやってんのよ、こんなところで」

悪魔「あ、天使さん…こんばんわ…です…」

天使「こんばんわ。あれから何日立ったかしらね」

悪魔「…十年ぐらいで、しょうかね」

天使「かもね。よくわからないけれど」

悪魔「……」

天使「それで? 十年経って、アンタはこんな場所で倒れて何やってんのよ」

悪魔「……」

天使「まさかだと思うけど。あの時、あの場所から、ずっとずっとそんな感じだったワケ?」

悪魔「…そんな感じとは、どういうことでしょうか」

天使「人から寿命も取らずに。その場凌ぎで命をつないできたのかって、ことよ」

悪魔「あはは…確かにそのとおりかもしれません…」

天使「……」

悪魔「案外…それでも生きられるもんなんですね…」

天使「ほんっと馬鹿ね」

悪魔「……」

天使「ふぅ。それで、アンタはもう消えるつもりなのかしら」

悪魔「…消える?」

天使「死よ。存在が消滅する、悪魔にとっての死は存在の霧散化」

天使「あたし達天使に誘われることもなく。魂の在処も消滅して、全てがなかったことになるワケ」

悪魔「…そうだったんですね、知りませんでした」

天使「へぇそうなの。あたしは別にどうでもいいけど、アンタはそれでいいの?」

悪魔「……」

天使「悪魔って者はもっと強欲で、強情で、傲慢」

天使「アンタみたいに死を受け入れる悪魔なんて奴はいないもんだけど」

天使「──アンタの本質ってものは、死を受け入れられるワケ?」

悪魔「……」

天使「生きたいとか、死にたくないとか、そういうこと思わないの?」

悪魔「……人間を得て生きるのであれば」

悪魔「私は死を選びます」

天使「……」

悪魔「それが私です。ごめんなさい…」

天使「あっそ」

悪魔「ごめんなさい…心配してくださってるのは…わかってるんです…」

天使「………」

悪魔「こんな悪魔に…天使さんがお言葉をかけてくれるだけで…」

悪魔「私は…とってもとっても…まんぞくですから…」

天使「……」


「ほんっと馬鹿ね」


悪魔「え───」

天使「…寿命、魂、そして命。通称してそれは生命エネルギーと呼ばれるもの」

天使「舐めてんの? 役持ち天使の生命エネルギー半端無いから」

悪魔「これって…」シュウウウ…

天使「ふぅ。これぐらいでいい? ざっと…そうね、一年分ぐらいあげたけど」

悪魔「て、天使さん…」

天使「待ちなさい。感謝とかしないで、悪魔から礼とか聖書ぶっ壊すようなこと簡単にしないで」

悪魔「ありがとうございますぅっ!! 天使さん…っ! 私! 私っ…!」ぎゅううっ!

天使「あ、ちょっ! こらぁ!? やめなさいよっ! 抱きつくな!」

悪魔「ふにゃあー! あびばどうごばいばぶぅー! うぉおおーいおいおい! ぐしゅっ! ぐすっ!」

天使「…ったく、ほんっと馬鹿ね」

~~~~

悪魔「えへへ。泣いたらすっきりしました」

天使「あっそ。よかったわね…疲れたわよこっちは…」

悪魔「それで、その。本当にありがとうございます、助かりました…」

天使「いいわよ別に、あたしが勝手にしたことだし」

悪魔「…その、天使さんの命をもらったわけですし、私は…」

天使「死んでないから大丈夫よ。もっとも、今はアタシの寿命も一年減ったけどね」

悪魔「す、すみませんっ!」

天使「だーから良いってば。すぐに一年ぐらい元に戻るし、平気平気」

悪魔「…はい」

天使「ったく、本当に馬鹿ね」

悪魔「…天使さん」

天使「あによ?」

悪魔「そのですね、えっと、わたし…こうやって助けてくださったわけですから…」

悪魔「──お礼とか、したいんですけど…」

天使「……。はぁ、またアンタはそうやって規律をぶち破るようなことを平然と…」

悪魔「うぅ、だって助けてもらったんですからぁ…!」

天使「別にいいわよ。勝手にあたし」

天使「、ちょっと待って」

悪魔「えっ?」

天使「………………」

悪魔「ど、どうかされたんですかぁ…?」

天使「今──嘘なんで──」

悪魔「っ? っ?」

天使「──……はぁ、はいはい。了解です」

悪魔「あの~?」

天使「ねえアンタ。お礼がしたいって言ったわよね?」

悪魔「は、はいっ! 是非にさせてください!」

天使「そう、そうなのね。じゃあお願いさせてもらうおかな」

悪魔「なんでしょうかっ?」

天使「……」

天使「──人間の寿命を奪って欲しいの」

悪魔「……」

悪魔「え?」

~~~

天使「見えるかしら。一見はそうは見えないけれど、あれは病院なの」

悪魔「病院…? なんでこんな山奥にあるんですかぁ?」

天使「それだけの場所ってことよ、それに、それなりの闇も存在してる」

悪魔「やみですか」

天使「…意味わかってないでしょ」

悪魔「わ、わかってますよ! やみですよね、悪魔はやみを好んでますっ!」

天使「いいわよ無理しなくて…とくにかく、あの山奥にある病院には一人しか入院してないの」

悪魔「ふぇ? 一人? あんなにでっかいのにですか?」

天使「そうよ。詳しく説明するとね、とある人間の夫婦が財産と人脈をかけて作り上げた場所」

天使「──たった一人の息子の病気を治すためにね」

悪魔「…子供の病気…?」

天使「どうも病気ではなくて、とある〝チカラ〟なんだけど──それはまぁいいわ、アンタには難しいし」

悪魔「す、すみません!」

天使「そしてあたしがアンタに頼みたいのは、その息子──」

天使「──あの病院の中心的存在の寿命を奪うこと」

悪魔「………」

天使「…出来る?」

悪魔「……もちろん、したくはありません」

天使「……。じゃあ今からでも断っていいわよ、アタシなら出来なくもないし、その」

悪魔「それは、ダメですよ。私はちゃんと天使さんにお礼をしなくちゃいけません」

悪魔「どっちにしたって…私はあの時、死ぬか人から奪うかしていたはずです」

悪魔「こうやって生きて、天使さんに優しくしてもらって、今という時間を過ごす代わりとして…」

悪魔「……私はやらなくちゃいけないんですよ、きっと」

天使「…ごめんなさい」

悪魔「えっ? どうして天使さんが謝るんですか?」

天使「…アンタの気持ちを逆手に取って──」

天使「──ううん、なんでもない。忘れて」

悪魔「は、はい」

天使「とにかくアタシからの要件は一つだけ」

天使「子供の寿命を限界まで減らすこと。死なせなくていいわ、それは……」

悪魔「それは…?」

天使「…あたしたちの仕事だから」

悪魔「天使さんの?」

天使「ごめんなさい。全部は話せないの、だけど、お願いするわね」

悪魔「…わかりました」

~~~

ちょっとうんこ

カツーン… カツーン…

悪魔「っ……」

悪魔(く、暗いですっ!? 怖いですよぉ!? なんで独りぼっちなんですかぁ!)

悪魔(うぅううっ! 天使さんも途中まで付いてきてくださってもいいじゃあないですかっ!)

ぎぃ!

悪魔「ひぃいい!!!?」

悪魔「っはぁ…っはぁ…! だ、だめですよぉ! うぇえーんっ!」

悪魔「ひっぐ…ぐす…怖いですぅ…ううぅっ…」

悪魔「ぐゆっ…?」

悪魔(あれ、もしかしてここですか…? 天使さんが言うには確かここのはずです…)

悪魔「ゴクリ」

悪魔「だ、大丈夫のはずです…一般の人間には私は見えません…!」

悪魔「ちょろっと触って、ちょろっと寿命を取るだけでいいんです…そうです…そうなんですよ…!」

悪魔「い、いきますっ」

がらり

悪魔(…中も暗いですね)そろりそろり

悪魔(何処に居るんでしょうか…ベッドがありますけね、ここに寝てるとか)そっ

悪魔「い、いたっ…」

「すぅ…すぅ…」

悪魔(寝てます! ぐっすり寝てます…これなら大丈夫ですね…)

悪魔(では、さっそく寿命のほどを…)

「ううん…」ごそっ

悪魔「……っ」

悪魔「あわわっ」

「……すぅすぅ」

悪魔「び、びっくりさせないでくださいっ…ふぅ~」

悪魔「てっきり起きてしまったのかと───」

悪魔「──………」

「すぅ…すぅ…」

悪魔「……こんな」

悪魔「こんな、幼い人間…小学生ぐらいですか…」

悪魔「まだ生きて十何年でしょうに…」

悪魔「……っ」

悪魔「だ、だめですっ! 天使さんからのお願いなんですからっ!」

悪魔「どんなに苦しくって、辛くって、大変でも…とらなかった寿命でも…」

悪魔「……私は感謝してしまったのですから」ぐっ

悪魔(ううっ…! ごめんなさい…!)

「……さっきからギャーギャーうるせぇな」

悪魔「ほぇっ?」

「こんな時間に見回りかってビビってたらなんだよ。誰だ?」


子供「おまえ誰だよ。つか、どうしてここに入れたんだ」


悪魔「…えっと、あれ? もしかして…見えてます?」

子供「はぁ? みえるみえてない、って言えば見えてるけど?」

悪魔「ほっ!?」

子供「…ほ?」

悪魔「ほぎゃあ-!」

子供「うわぁっ!?」

悪魔「なんでですかぁー!? 見えちゃってますかぁ!?」

子供「うるせぇな! 声がでかい!」

悪魔「声も大きくなっちゃいますよぉ!? なんでなんで!?」

子供「だぁーもうっ! ちょっとだまれっ!」

~~~

悪魔「なんですかこれっ!? 美味しいですねぇっ!」

子供「…そんなオカシうまくないだろ」

悪魔「私ははじめて食べました! うゆゆ、人間はいつも美味しいものばかり食べてますよぉ…」

子供「それで、おまえ誰だよ。あたらしい医者じゃないみたいだし」

悪魔「私ですか? えへへ、なんと悪魔です!」

子供「じゃあなんだろう。もしかして見舞いとか?」

悪魔(スルーされました…っ!)

子供「…ま、そんなワケないか」

悪魔「聞いてくださいー! 私は悪魔なんですよっ」

子供「はいはい。わかったから」

悪魔「なんとっ! 本当ですか…?」

子供「うん。あくまね、わかったわかった」

悪魔「…なにか流してませんか?」

子供「オカシまだまだあるぞ」

悪魔「ありがとうございますっ!」

子供「……」

悪魔「おいしぃ」

~~~

天使「…遅いわね、なにかあったのかしら」

ガサゴソ

天使「ん? やっと帰ってきた…どうだったのっ? 大丈夫? 怪我とか──」くるっ

悪魔「お菓子もらいました!」もぐもぐ

天使「──……」

悪魔「いやー良い人間だったですよぉ…ホクホクです、気分もウキウキですぅ」ぽやぽや

天使「……………」

悪魔「あ、えっ? あっ!? ち、違うんです! これには深い事情が、天使さん!? そんな怖い顔をしないでっ」

~~~

天使「…吸えなかった?」

悪魔「そうなんですぅ…あの人間から寿命は取れなくて…」

天使「それは確かなの? アンタがヘマをした訳じゃなくって」

悪魔「ちゃんとやりましたよ! …お菓子をもらう時に…」

天使「…そう、まあ信じてあげなくもないわ」

悪魔「ほ、本当ですか?」

天使「ええ。あの子供だけど…ちょっと普通とは違うのよ」

悪魔「違う? あ、でも確かに私のこと見えてました…!」

天使「……」

悪魔「…それで、その、どうしたらいいんでしょうか」

天使「ちょっと待ってて」

悪魔「は、はい」

天使「──了解しました。ふぅ、じゃあ今から説明するわね」

悪魔「はい?」

天使「どうやら無事に寿命は吸えてるみたいよ。ちゃんとね」

悪魔「………え、でも…私は…」

天使「…その顔、まさか実はやってないとかじゃないでしょうね」

悪魔「そ、そんなわけないです…っ」

天使「…まあいいわ。だけど、ちゃんと吸えてるみたいよ」

天使「──どうもアンタが側にいるだけで子供の寿命が減っているみたいなの」

悪魔「……側にいるだけで?」

天使「報告がそう来てるの。だからね、アンタには何度か子供にあって欲しい」

悪魔「…あの人間にですか」

天使「そう、それでギリギリまで寿命を減らす。それが……私の願い」

悪魔「……」

天使「やってくれるかしら」

悪魔「…っ」

悪魔「わ、わかりました。頑張ります…」

~~~

悪魔「し、失礼します!」がらり

子供「…またきたのかよ」

悪魔「は、はい。また来ちゃいました」

子供「もうオカシはないぞ。オレが食べたから」

悪魔「ち、違います! 今日はお菓子を貰うつもりなんて…」

子供「じゃあなんだよ」

悪魔「……お、お話をしましょう!」

子供「嫌だ」

悪魔「なぬっ!?」

子供「人と話すとつかれるんだよ。だからいやだ」

悪魔「そんなこと言わないでくださいぃいい!」

子供「…なんだよ、オレはまだおまえのこと全然しらないし、いやだ」

悪魔「じゃあもっと知りあっていきましょう!」

子供「……じゃあ好きな漫画なんだよ」

悪魔「ま、まんが…?」

子供「もうねるわ」

悪魔「ま、待ってください! わかりました…すきな漫画ですね、それは!」

子供「…それは?」

悪魔「火の鳥です!」

子供「読んだこと無い。ねる」

悪魔「待ってぇー! うぇえーん!」

子供「んだよ、本当になんだよ。おまえ!」

悪魔「あ、悪魔です…」

子供「じゃあその悪魔ってしょうめいしてみせろよ! だったら信用して、話もしてやっから!」

悪魔「証明ですか…?」

子供「そうだよ。はっ、けっきょく出来ないだろ?」

悪魔「…しょうがないですね、天使さんからの生命を使うのはもったいないですが」ぴしっ

子供「へ?」

悪魔「──〝本来の姿〟に…」

ぴしっ…!

悪魔「──少しだけなら…」

ぴしっ! ギギギギギギギ!!

悪魔「てりゃ────!!!」

少年「え」

ぼわわわん!

悪魔「…あれ?」

少年「…そのまんまじゃねえか!」

少年「びっくりした! なんかデッカイ鬼とかダイナマイトボディになるとか思ったじゃん!」

悪魔「な、なれますよ! だけど久しぶりすぎて…!」

少年「うっそだね。ぜったい嘘、しんようしない」

悪魔「うぎぃー! なんなんですか! ちょーなんなんですか! 人間のくせに!」ジタンダジタンダ

少年「おまえも人間だろ。つか、悪魔って言ってくるクセにツノも生えてないじゃん」

悪魔「生えてたんですぅー! 前は立派なの生えてたんですぅー!」

少年「うそだね」

悪魔「うそじゃなーい!」

少年「信用するか。なにが悪魔だ、みんなみんな…嘘つきだ」

悪魔「ぐぬっ…」

少年「オレの周りはみんなうそつき。信用なんて、ぜったいにしない」

悪魔「……」

悪魔「…そうですか、だけど、これだけは信じてもらいますよ」

少年「なんだよ」

悪魔「私が悪魔だってことは、です」

少年「いいよもう。どっかいけよ」

悪魔「ダメです。見ててください」とととっ

少年「……」

悪魔「今日は…雲一つなく良い夜空です。月もまあるくて、光り輝いていて」すっ

少年「……っ」びくっ


悪魔「──よく〝視えます〟」


少年「…な、なんだその目の色」

悪魔「いわゆる悪魔の証明、ってやつですね。古くからある選別方法といいますか」

悪魔「闇が覆う日。月が照らす瞳。色を放つは──赤月の眼光」

悪魔「みたことあります? こんな真っ赤な瞳を」

少年「……」

悪魔「私は悪魔です。貴方の元へ訪れた──悪魔」

悪魔「これがどのような意味を為すのか。人間、貴方にはわかりますか?」

少年「…オレは」

悪魔「……」

少年「オレは…その、死んじゃうとか…?」

悪魔「どうしてそう思うのですか」

少年「……だって、それは、だって…」

悪魔「…悪魔に魂をとられる、そんな覚悟をする過去があるのですか」

少年「………」

悪魔「私はともかく。貴方には知られておくべきだと思ってます」

悪魔「…悪魔が毎夜と訪れる意味を、理解してください」すぅ…

子供「ちょ、待って…!」

悪魔「大丈夫ですよ」にこり


「──明日に訪れます」


子供「っ……」

子供「……とうとう…」

子供「とうとう、来たってわけか…あはは」


~~~

悪魔「うまく出来ましたっ!?」

天使「ばっちしね」

ごめん 少年→子供 ってことで
間違ってた

悪魔「疲れましたー難しい言葉は~」

天使「良い演技だったわよ」

悪魔「うふふ」

天使「でも、子供に知らせる必要はあったのかしら?」

悪魔「……」

天使「なにも会話する必要もないのよ? 近くにいるだけでいいんだから」

悪魔「…それは駄目ですよ、きっと」

天使「…」

悪魔「私は天使さんのお願いで、人間から寿命を奪います」

悪魔「ですが、そのやり方は私なりに考えてやるつもりです」

悪魔「けじめ、ってやつですよ」

天使「つくつく悪魔らしくないわね、アンタ」

悪魔「えへへ~」

天使「なんで嬉しそうなのよ。だけど、それでもちゃんとやってもらうわよ?」

悪魔「…はい」

天使「アンタがやってることは、とっても大切なこと。これだけは、信じてね」

悪魔「はいっ」

~~~

悪魔「こんにちわ」

子供「…こんばんわ、だろ」

悪魔「そうでした。ごめんなさい、あんまり慣れてなくて…てへへ」

子供「なにがだよ。ったく、なんだよ昨日の怖さはどこいったんだよ」

悪魔「あれ? 今日は怖くありません?」

子供「…ぎゃくにそのふつうさが、こわいな」

悪魔「よくいわれます!」

子供「…そうなんだ」

悪魔「じゃあじゃあ、今日は何を話しますぅ? お菓子ありますか?」

子供「ないよ。今日は持って来なかったから」

悪魔「持って来なかった?」

子供「そう。おとうさ──父親が持ってきてくれなかったから、今日はない」

悪魔「そうなんですかぁ…」

子供「…残念そうだな、いや、本気で残念そうだなおまえ」

悪魔「人間はいっつも美味しいものばっかりたべてしますからねぇ~私ももっと食べたいんですぅ」ぷくー

子供「……」

悪魔「…?」

子供「…いつ、取るんだよ」

悪魔「え、なにがですか?」

子供「なにがって…命だよ! 命ッ!」

悪魔「わわっ!?」

子供「おまえは悪魔なんだろっ!? 命をとるんだろ!? お、オレの…!」

子供「だからここに来たんだ! そうだろ、そうだって言えよ!!」

悪魔「………」

子供「はぁ…はぁ…オレは…別にこわくないっ…!」ぎゅっ

子供「それだけのことをっ…したんだって、わかってるから…!」

悪魔「…どう、したんですか」

子供「どうもしねえよ! オレは良いんだッ! もう生きたくなんか無い、とっとと命をとれよ!!」

悪魔「……」

子供「くそっ…」

悪魔「…わかりません」

子供「な、なにがだよ!?」

悪魔「どうしてそこまで、自分の命を無くしたいんですか」

子供「っ…!」

悪魔「人間は末永く生きながらえようとするものだと、私は思っています」

悪魔「…なのに貴方はそうじゃあない。どうして、そこまで命を投げ出そうとするんでしょうか」

子供「っ……なんだよ、悪魔のくせに、知らないのかよ」

悪魔「ごめんなさい。私はあんまり頭がよくなくて」

子供「はっ…悪魔にも馬鹿はいるんだな…」

子供「それにっ…人間も馬鹿ばっかりだ…」

悪魔「……」

子供「オレは病気なんだとよ…生まれてすぐに、大地震があって」

子供「そん時に死にかけて、だけど──奇跡が起こって助かった」

悪魔「奇跡?」

子供「……父親が言ってたんだ。全てを吹きとばすような、チカラ…みたいなのが」

子供「まっすぐに、ずっとまっすぐに、長く長く道になって…」

子供「周りが瓦礫や地割れとか、すごいことになってんのに…」

子供「オレと父親の場所だけが…きちんとした逃げ道になってたんだとよ…」

悪魔「……」

子供「それから、助かった代償として──」

子供「──オレは病気になった……」ぎゅっ

悪魔「病気…」

子供「……オレの中には多分、三十人近くの〝人間〟が入ってるんだ」

悪魔「……」

悪魔「はい?」

子供「…もう一回言う。オレの中には三十人近く──〝人間が取り込まれてる〟」

悪魔「え、あの、それは、どういう意味ですか?」

子供「……」

子供「最初の一人は、多分、母親だって思う」

子供「生まれてすぐに、自分の母親を吸収した」

悪魔「あの、待ってくださいっ」

子供「二人目は生まれてすぐのオレを手にとってくれた医者」

子供「三人目は…わからない、けど、そこらへんにいた人間だと思う」

子供「その話は父親から聞いたことだから、オレも本当のことなのかわからない」

子供「だけど、十何人目からは…ちゃんとおぼえてる」

子供「何処からか連れてきて、何人も何人も…オレの中に入れ込んだ」

子供「年寄りも居た。オレと同年代もいたし、女性も、男性も、外国人だって居た」

子供「それをオレの中に入れ続ける。それが、父親が…」

子供「これが…父親が考えた、オレを救う…じゃないな、ははっ」


子供「──取り込まれた母親を取り出す研究、なんだろうなきっと」


悪魔「…なんですか、それ…っ」

子供「簡単なんだよ。取り込むには手を触れるだけでいいんだ…」すっ

子供「ちょっと触るだけでいい。そうすれば、溶けるように身体がしぼんで……オレの中に」

悪魔「やめてくださいっ!!」

子供「………」

悪魔「なんですかっ…そんなの、信じきれません!」

子供「…いいじゃねえの、しんじなくて。だけど、オレはそういう人間なんだよ」

子供「むしろおまえに近いのかもな。命を奪う、悪魔と一緒」

悪魔「っ……」

子供「…何人も何人も、人の命を奪ったんだ」

子供「もう、悪魔だって神様だって、殺しに来ても仕方ないって。思うだろう普通は」


子供「──オレはもう生きちゃいけない人間なんだよ…」


悪魔「そんな…そんな、こと」

子供「…はは、悪魔が同情か? ばからし、さっさと命持ってけよ…」

子供「もういいんだ、だから、はやくオレをころしてくれ…たのむから…」

悪魔「っ……きょ、今日はもう帰ります!」ばっ

子供「…どうしてだよ」

悪魔「き、気分が乗らないんですぅ! だから今日は、とりません!」

子供「…そっか、気分か」

悪魔「なので! その、えっと、また明日です!」しゅん!

子供「………」


~~~~

悪魔「はぁっ…はぁっ…」

悪魔(人間を取り込む…? 三十人、そんなの、そんなの…!)

「…お疲れ様」

悪魔「…!」

天使「今日はつかれたわよね。どう? アタシの生命エネルギーを…」

悪魔「天使さんッ…!」

天使「……。ダメよ、あたしに説明することは出来ない」

悪魔「なんなんですか! あれは、人間のできることなんですかぁっ!?」

天使「ダメ。アンタが気にすることじゃない」

悪魔「あの病気は…あの禍々しいチカラは! 天使さんはっ…いや、神様は許してらっしゃるのですか!?」

天使「………」

悪魔「っ…どうして答えてくれないんですかっ」

天使「1つだけ、言っておくわね」

天使「神もチカラのことは知っている。だからこそ、アタシが動いてる」

天使「…そしてアンタに頼むことになった」

悪魔「っ…それは、つまり…神様はあのチカラをもつ人間を…死なせたいと…?」

天使「………」

悪魔「そう、だったんですね…神様が望むことだったんですね…」

天使「………」

悪魔「…あのチカラは一体、なんなんですか」

天使「っはぁ~…」

天使「…人が初めて持った〝他界〟に干渉し得るモノ」

天使「それを得た一人の人間が神に逆らい、そして──負けた代償」

天使「それが、あの子供がもつ〝病気〟の正体よ」

悪魔「……?」

天使「これぐらいしか言えないの。全ては神のご意志のままだから」

天使「とにかく、神はチカラを持つものを……天界へ誘いたがってる」

天使「その条件をクリアするためには、どうしてもアンタの悪魔の手助けが必要なの」

悪魔「……」

天使「色々と悩んでしまうと思うけれど、お願い、どうか続けてほしい」すっ

悪魔「て、天使さん…」

天使「頭だって下げるわ。元からアンタには、最初から頭を下げてもいいぐらいのことを言ってるんだから」

天使「──お願いします。どうか手伝って」

悪魔「っ……」

悪魔「わ、わかりました…」

天使「…ほんとうに? やってくれるの?」

悪魔「…はい、これからも会い続ければいいんですよね」

天使「そう、うん、そうよ。お願いできるかしら」

悪魔「わかりました」

天使「…ありがとう。あと、最後に1つだけ」


天使「──あと3日で十分だそうよ」


~~~

悪魔「こんにち、こんばんわ」

子供「…今日こそ取って行ってくれるのか?」

悪魔「…ごめんなさい、今日は無理です」

子供「そっか」

悪魔「だけど、そうですね、おしゃべりしましょう!」

子供「…まだ言うのかそんなのこと」

悪魔「なんどだって言いますよ! 行っちゃいますよ!」

子供「…怖くないのかよ、オレみたいな人間のこと」

悪魔「はぃ? 怖くない、とか言っちゃいました?」

悪魔「こちとら悪魔ですよっ? 人間風情がなに言ってるんですか! ぷーくすくす」

子供「もう帰れ」

悪魔「じょ、じょうだんですって! とにかくおしゃべりしましょうよ、ねっ?」


~~~


子供「…小さい頃から1つだけ、願いがあって」

悪魔「ねふぁい?」もぐもぐ

子供「うん、そう、犬を飼ってみたい」

悪魔「ごくん。犬なんてくさいだけですよ?」

子供「それでもいいよ。くさいなんて、知ってるから言えるんだろ?」

悪魔「ええ、まぁ、依然食べられそうになりましたし」

子供「…悪魔ってふだん、どんなところに住んでるんだ?」

悪魔「い、いいんですっ。続けてくださいっ」

子供「…犬なんて言ったけど、どの動物だっていいんだ」

子供「触れるだけで、ちょっと毛並みを触れるだけで…」

ぎゅっ

子供「…だけど無理だってわかる。そしたら、オレに吸収されるだけだから」

悪魔「……」

子供「まぁ、おまえがきたから叶わない願いだけど」

悪魔「……っ」

悪魔「わんっ!」

子供「…は?」

悪魔「わんわんっ! くぅーん?」

子供「……」

悪魔「へっへっへっ」

子供「なにやってんだ?」

悪魔「きゅーんきゅーん…わん!」

子供「…えっと、その、撫でろと?」

悪魔「わぅん」

子供「…………」すっ

ズズズ…

子供「うぉっ!? 手がすり抜けた!?」

悪魔「へへっ」ドヤ

子供「や、やっぱ悪魔なんだな…うぉお…」

悪魔「わん!わんわん!」

子供「えっ? あーはいはい、撫でろと」

すりすり

子供(まったく感覚がない…)

悪魔「くぅーん! わんわん! くぅーん!!」

子供「……ぷっ」

子供「っはは、なんだよ。えらく嬉しそうだな、ほれほれ」

悪魔「にゃーん!」

子供「おい、ちょっと猫になってるって。あはは、ふふっ」

~~~~

悪魔「じゃじゃじゃ、じゃーん」

子供「また来た…」

悪魔「何度だって来ますよ? 悪魔ですから!」

子供「じゃあ…今日こそ持っていくのか?」

悪魔「違いまーす!」

子供「じゃあ寝ていい?」

悪魔「だ、ダメです! とにかく今日もおしゃべりしましょう!」

子供「…わかったよ」

悪魔「今日はどんなこと話しましょうかねーうへへー」

子供「…今度はおまえの話を聞きたい」

悪魔「うへ? わ、私ですか?」

子供「そうだよ」

悪魔「……私の話を聞いても楽しくありませんよ?」

子供「楽しいか楽しくないかはオレが決めるから」

悪魔「……。そうですか、ではちょっと昔話でもしましょうか」

子供「悪魔だからすごい昔がありそうだな」

悪魔「勿論です! 何十年、何百年、何千年と生きてますからね!」

子供「ホントにー?」

悪魔「ホントですホント。じゃあそうですね、とある人間の話でもしましょうか」

子供「人間の?」

悪魔「はい。そう簡単には忘れられないでしょうね、あの人間のことは」

悪魔「──人間という生き物は元より〝生き方〟を不必要なほどまでに考える性質です」

悪魔「どれが正しいか、正しくないか、不正解を恐れ謙遜し、そして学習する」

悪魔「常に百点満点の道を進もうとする。それが人間です」

子供「まぁそんなんじゃないの。間違いなんて、したくないし」

悪魔「そうですよね。だけど、その人間は違いました」

悪魔「最初から正しいか正しくないか、考えてないんです」


悪魔「今行動すればどれだけ苦労を背負い込むのか」

悪魔「その発言は果たして己の命を脅かす原因になるのか」

悪魔「何が正しくて。何が間違っていて。そんな思考を働かせる瞬間もなく」



悪魔「──ただそれが〝自分がやりたいこと〟だと信じきれば良いんだと」



悪魔「そう言い切った人間が居たんです。過去に、昔に、出会いました」

悪魔「口だけではなんだって言えます。けれど、その人間は違う」

悪魔「確かに持っていたんです。他の人間とは違う、その〝チカラ〟を」

子供「…なんかただのカッコつけじゃないの、それ」

悪魔「ふふ、ですよね。一見ではただのバカですし、それに恥ずかしいやつです」

悪魔「ただ、それでも」

悪魔「あの人間は──大きく、そして多大に」

悪魔「私という一つの悪魔を変化させました」

子供「…なんだよ、昔の自分は違うっていいたいのか?」

悪魔「それはもう。色々と、凄かったですよ」にこ

子供「…?」

悪魔「例えそれが間違っていた過去だったとしても───」

悪魔「──私は生きようと、願いました」

子供「……」

悪魔「生きる希望は持つべきです。何があろうと、絶対に」

ちょっとtoire

ありがと 書く

子供「……」

悪魔「なんて、悪魔が入れ知恵しちゃいました。元来、悪魔のささやきには注意せよ! なんて言われてますけれども~」

子供「いいよ別に。変わんねーから」

悪魔「…そうですか?」

子供「うん。おまえがどんな過去なのかは知らないけど、それでも生きようって思ってても」

子供「オレはそうは思えない。オレは絶対に、絶対に…」

子供「死ななくちゃいけないんだよ。惨めに、残念に…とかさ」

悪魔「……」


~~~


悪魔「…ただまいです」

天使「お疲れ様。どうだった?」

悪魔「いえ、普段通りでした。私も普通に会話しただけなので」

天使「そう。でも疲れたでしょ、生命もらってもいいわよ」

悪魔「…えへへ、実はちょっと疲れてるんです。少しだけもらってもいいですか」

天使「ん、珍しい。また断られると思った」すっ

悪魔「こうみえても悪魔ですからね。いつだって、その本質は変わらないですよぉ」ぴと

ヂリッ!

天使「ッ!」

悪魔「はわわっ!? ちょ、ごめんなさいっ!?」

天使「い、今っ…ちょっとぉ!? 吸い過ぎじゃない!? めちゃくちゃ持って行かれたわよ!?」

悪魔「すっすみませんっ! すみません! 久しぶりだったので加減がっ…あうぅうううっ」

天使「うぐぐ、頭痛い…ほんっと馬鹿! なにやってんのよっ…!」

悪魔「ずびばべーんっ!」

天使「っもう、明日が最後なのよっ? こんなヘマしたら天罰が冗談じゃなくてくだるんだからねっ!?」

悪魔「はいぃ~っ」

天使「はぁ~。もういいわ、あたしもつかれたから帰るから…明日もよろしくね」

悪魔「は、はいっ。よろしくお願いしますっ!」

天使「…頼んだわよ、本当に」

悪魔「はい…!」

~~~

悪魔「ではではー!」ふりふり

天使「またね」

悪魔「はいっ」

とててーっ

天使「………」

天使「──はい、了解です。引き続き〝警戒態勢〟をとり続けてます」

天使「はい、はい──わかりました」

天使「ふぅ…」

天使「世の中、どうなるか分からないものよね」

天使「……白い髪の悪魔、か」

~~~

悪魔「こん、にち、ば!」

子供「意味がわからないぞ」

悪魔「てへへーいつも間違えるのでもう、新しいの考えようかなって」

子供「あっそ」

悪魔「あれ? なにを見てるんですか?」

子供「…アルバム」

悪魔「ほぇ~いいですねぇ、悪魔は写真には映らないので。羨ましいです~」

子供「……」

悪魔「…あれ? でもこれって…」

子供「…そう、オレは写ってない」

子供「オレの父親と母親が、オレを生む前のアルバム──今日貸してもらったんだ」

悪魔「そう、なんですか」

子供「…あの人はオレと写真なんて、取りたがらないし」

悪魔「……」

子供「本当は視界に入れるのも嫌なんじゃないかな。きっと」

悪魔「そんなこと…」

子供「いや、いいんだよ。オレは別にかなしいわけじゃないし」

子供「だけどさ、こうやってオレが写ってない──家族写真みたいなの見るとさ」

子供「オレも、なんつぅうか、オレもさ。おまえと一緒で…」

子供「…まるで悪魔みたいだな」

悪魔「……」

子供「てか最初からもう…オレは人間じゃなくって、悪魔で生まれてくればよかったんだ」

子供「そうすればおまえみたいに…色々と吹っ切れて、生きる希望も見つけられたんじゃねーのかなって」

子供「ま、忘れてくれ。オレは別に生きたいわけじゃないから」

悪魔「……」

子供「それで、今日はどうするんだ? またおしゃべりか?」

悪魔「…いえ、違います」


悪魔「──今日は魂を貰いに来ました」


子供「っ……そうか」

悪魔「……」

子供「やっと、やっと来たわけか…そっか…なるほどな」パタン

子供「何時来るかって思ってたけど。そうなんだ、今日がその日なんだな…」

悪魔「ええ、そうですよ」

子供「…」

悪魔「怖い、ですか?」

子供「…え? あ、うん。そうでもない、かもな」

子供「だって待ち望んでたことなんだぞ? こわいわけ、ないじゃんか」

悪魔「……」

子供「やっと死ねるんだ…それが、望んでたことなんだし」

子供「だから…だから…」

悪魔「……こんなこと、悪魔の私が言うのもなんですが」


悪魔「──辛い時は、辛いと言っていいんですよ」

子供「…つらくなんか、ねーよ」

悪魔「泣いたっていいんです」

子供「なき、泣きたくなんかねえよ…っ…どの面下げて、泣けるんだ…!」

悪魔「泣いてもいいじゃあないですか。辛いんですから、泣きたいんですから」

悪魔「どれだけ重い過去を持ったとしても、後悔しかない自分を持ってたとしても」

悪魔「──泣いてもいいんです。非難されようが、自分が可愛いと思ってもいいんです」

悪魔「だって、自分のことを許せるのは。自分しかできないことなんですよ、それは」

悪魔「他人から軽蔑されようが、一生恨み辛みを吐き出されるようが」

悪魔「納得できるのは、自分だけなんです。自分で答えを見出すしか、出来ないんです」

悪魔「それが生きてるって、ことなんですよ」

子供「……──」

子供「──なんだよ、いいんだよ、言うなそよそんなこと…優しくするな、やめてくれ…」

子供「オレはいっぱいっぱい…人を殺したんだ、自分に取り込んで…生きながらえようとしたんだっ…」

子供「わかってたのに…自分がやってることが…お、おとうさんがっ…やってることが…」

子供「やっちゃいけないことだって…なにもかも間違ってるって…!」

子供「だけどっ! それでもっ…生きたかったんだ、死にたくなかったんだよ!」

子供「自分は正しいって思えなくても! 間違ってるって、死んで当然だってわかってて!」

子供「でも! それでもっ…オレは、オレは…!」

子供「──なにも、しなかった……!」

悪魔「……」

子供「だからっ…はやく、ころしてくれ…っ」

悪魔「……なら」

悪魔「なら、今からでもやりなおしましょう」ポゥ…

子供「……っ…?」

悪魔「後悔、乗り越えましょう。苦難、立ち向かいましょう」

キラキラキラ…

悪魔「生きるんです。己を罪を抱え込んで、全てを投げ出して死ぬよりも」

悪魔「──更なる闇に、身を投じるんです」

子供「なにいって…」

悪魔「私は悪魔です。ですから、このような言い方しか出来ません」

悪魔「死を乗り越えるんです。踏み台にするんです、全てを足場にして、前へと進むんですよ」

悪魔「正しいか正しくないか。そんなの知りません、自分で決めればいいんです!」


ギギギギギギギギギ!!!


悪魔「──喧嘩を売ってやりましょうよ、全てに」

子供「おまえ……なんだ、その光…」

悪魔「希望は常に手に握られてます。なにかに隠れていても、きっとすぐそばにある」

悪魔「触れてください。貴方が望む未来が、そこにきっとあるはずですから」

キィイイイイイイン!

子供「…なにいってるんだ、オレはおまえに魂を…」

悪魔「…それは、私のやることじゃあないです」


メキィ! ミシミシミシ!!


悪魔「──あちらさんの仕事ですよ」


バッッコォオオオオオオオオン!!


「──きっとなにか仕出かすと思ってたわ」

悪魔「…そうだったんですか、ごめんなさいです」

「いいのよ別に。だけど、本当にやったら許さないだけ」

悪魔「……」

天使「一体全体、なにをするつもりなのかしら?」

悪魔「人助けですよ。素敵じゃあないですか」

天使「……」

悪魔「なんですか?」

天使「…それが本性ってワケ?」

悪魔「あはは。待ってくださいよ、天使さん。もしかしてずっと勘違いしてたんですか?」


悪魔「──私、悪魔ですよ?」


天使「ッ!」ヒュン!


ズガァアアアン!!

天使「ッ…好き勝手やってくれるわね…!」

悪魔「乗り込んできたのはそっちじゃあないですか」

天使「この猫かぶりがッ」くんっ

悪魔「悪魔ですからね」ギン!

子供「っ…!? っ…!?」

悪魔「…すみません、なんとか切り抜けますので待っててくださいッ」

子供「あ、あれ誰だよ!? てかめっちゃ部屋が壊れてるけど!?」

悪魔「天使ですね。いわゆる、魂の先導者。貴方を殺そうとしている存在ですよ」

子供「えっ…?」

悪魔「まぁ、それは…私も一緒だったんですがっ!」

ギュン!

天使「っ! 待ちなさい!」

子供「うわぁああああ!? そ、空! 飛んで!?」

悪魔「久しぶりですぅ~羽を生やして飛ぶのもー」

子供「お、おまっ! 一体何者だよ!? なにしてんの!?」

悪魔「えへへーなにしてるって、そんなのわかりきってるじゃあないですか」

悪魔「神に喧嘩を売ってる最中ですよ?」

子供「へ?」

ヒュンヒュン!

悪魔「きゃあ!? あ、あぶぶ!?」

天使「まちなさーい! もう手加減しないんだから! こうなったら本気よ! 馬鹿!」

悪魔「い、今のはちょっとひどくないですか!? 消し炭レベルでしたよ!?」

天使「あったりまえでしょ! ほんっと馬鹿! アンタなにやってんのかわかってるワケ!?」

天使「神が怒る前に子供を離しなさい! はやく! まだあたしの減棒で許されるはずだから!!」

悪魔「じゃあガンガン減らしてあげますぅー!」ギューン!

天使「あ、コラぁ!?」

子供「…おまえら仲いいの? 悪いの?」

悪魔「どっちでしょうね~」

悪魔「だって悪魔と天使ですよ? そんなの、わかりきってることじゃあないですか」

~~~

悪魔「…このへんでしょうか」ばさっ…ばさっ…

子供「うぐっ」

悪魔「ふぅ。疲れました、やっぱり飛ぶのは昔から慣れません…」

子供「…えっと、それで、どうすんのこれ?」

悪魔「え? そ、そうですね。とりあえず…」

子供「とりあえず?」

悪魔「私の話でもしましょうか」

子供「…なんで?」

悪魔「知りたくありません? なんで、貴方のこと助けたのかって」

子供「……」

悪魔「哀れみじゃあないですよ。悪魔にそんなのはありませんから」

悪魔「私にあるのはただひとつ、それは単純に──生きる希望」

悪魔「悪魔として、そして貴方が人間として。そこに契約が発生します」

子供「契約…?」

悪魔「よく聞きませんか? 悪魔と契約、みたい感じですぅ」

子供「…お、お伽話とかなら」

悪魔「それで結構ですよ。私はその契約がしたいんです」

悪魔「実に悪魔的じゃあありませんか? えへへ」

子供「…つまりは、なんだ。オレに生きる希望をくれる、契約? がしたい?」

悪魔「そのとーりです。よかったです、伝わってくれて」

子供「その、なんでいきなり?」

悪魔「いきなりじゃあないですよ。ずっとずっと考えてました」

悪魔「貴方の病気のこと聞いてから、ずっとです」

子供「…なんで」

悪魔「答えてあげたいのですが…どうやら切り抜けないとダメなようですね」

キィイイイイイ!!

悪魔「人気のないところまで来ました。ここでなら──」


悪魔「──本来のチカラの十分の一ぐらい、発揮できるんじゃあないでしょうか」

天使「何処にいった…早いわね、くそ」

天使「居た…!」

天使「」

天使「何処にいった…早いわね、くそ」

キィイイイイイ!!

天使「居た…!」

天使「もう逃さないわよ───なっ…!?」


ドックン…ドックン…


天使「なに、これ…」

天使(あの場所から──多くの生命エネルギーが──奪われていく)

天使「植物からも…関係ない、全ての生命から奪って、」

天使「くっ!」キュン!

天使「──アンタァ! 何やってんのよッ!」

悪魔「奪ってます、全開を出すために、あたなを退けるために」

天使「なんてこと、よくもそんなチカラを持ってるものね…!」

悪魔「えへへ。だって、天使さんからほんの少し貰いましたし」

悪魔「それを使って起動させれば、あとは、押し出すだけ───」

悪魔「───過去の私になれる」

天使「っ……白い!」

天使「…白い悪魔…!」

悪魔「…あはは、懐かしいですねぇその呼び名」

天使「……」

悪魔「知ってたんですね。私が、その白い悪魔だってことを」

天使「…当たり前じゃない、過去最凶最悪の悪魔と呼ばれて恐れられた──」

天使「──大食らいの白い悪魔」

悪魔「…あはは。恥ずかしい名前ですね、鳥肌がたっちゃいますよ」

天使「…本来なら夜でしか出歩けない悪魔が、日中関係なく動き回れるほどに」

天使「強大なチカラをもった悪魔。それが──あんたよね」

悪魔「その通りです。今は夜にしか出歩けませんが」

悪魔「昔は人間みたいな生活をしてたんですよ? 朝に起きて、夜にねる」

悪魔「なかなかそのクセが抜けなくて、あはは、たまに挨拶を間違っちゃいますけども」

天使「…アンタ」

悪魔「天使さん。お願いです、見逃してください」

天使「…だめよ、やめなさい」

悪魔「じゃなかったら、天使さんも消しちゃいます」

天使「……」

悪魔「私はですね。この人間を生かしたいのです、まだまだ人生を全うして欲しいんです」

天使「っ…どうしてそんなこと言うのよ!? アンタは、悪魔なんでしょ!?」

悪魔「そうですよ。だから契約するんです」

天使「そんな太古の昔に廃れた話をもってくるなっ!」

悪魔「酷いです! 悪魔はいつだっって本気なんですよ!」

天使「ただの馬鹿じゃない! もう、もうやめなさい!」

悪魔「ダメです」

天使「ぐっ…」

悪魔「私はですね。きっと、これも後悔はしてないんです」

悪魔「この瞬間、なにが正しいなんて。わかりません、間違ってるかもしれません。けど…」

悪魔「…それが正しいって思うのなら、私は突き進みます」

悪魔「それが私が信じた生きる希望です」

天使「っ…あの白い悪魔がここまで落ちぶれたのは、あの人間のせいなのねッ」

悪魔「おや。知ってたんですか、有名ですねあの人間も」

天使「あったりまえじゃない! あの神に堂々と馬鹿みたいに喧嘩をうった阿呆よっ!?」

悪魔「…かっこいいじゃあないですか」

天使「うるさいッ! だけど、あの人間は神に敗れた!」

悪魔「……」

天使「アンタがあの人間から何を聞いて、何を信じたかは知らないわよ!」

天使「だけどそれは負けるのよっ! 信じちゃいけない、アンタはもっと気高く生きなさいよっ!」

天使「こんな惨めでっ…ばかみたいなことっ…なんで、どうして…!」

悪魔「……」

悪魔「突き進むしか無いのです。後ろは振り向いては、いけません」

悪魔「全て過去として抱え込む必要があります。だから、未来を見ることしか出来ないのですよ」

悪魔「えへへ。だから、ごめんなさい」

天使「っ…!」

悪魔「大食らいの白い悪魔。そのほんのちょっぴりだけ、見せちゃいますね」



リン!



天使「…え」

天使「うそでしょ…へ? 空…割れて?」


悪魔「よいしょっとぉおおお!!!」

天使「きゃあああああああああああ!!?」

~~~~

悪魔「まぁ、こんなもんですかね」

子供「…今、空が紫色に染まったんだけど」

悪魔「あ、見てました…っ? うゆゆ、あんまりカッコ悪いところ見せたくなかったんですけどぉ…」

子供「な、何がかっこ悪かったんだ?」

悪魔「本来なら月ぐらい割る勢いだったんですが…ダメですね、年は取りたくないもんですぅ」

子供「……」

悪魔「はてさて。それでどうしますか? 生きます?」

子供「か、軽いぞ…」

悪魔「えへへ」

子供「…生きるって、そんな単純じゃないだろ」

悪魔「決めればいいんですよ。自分で決めれば、それだけでそれが答えなんですから!」

子供「…なんでそう、言い切れるんだよ」

悪魔「言い切れるからですよ」

子供「オレは…オレはおまえと違う。人間で、あくまじゃない…」

悪魔「ふふふ」

子供「な、なんだよ?」

悪魔「なら悪魔になればいいじゃあないですか」

子供「…はっ? なんだよなればいいって…!」

悪魔「なれますよ、絶対に。私と貴方は、とても似てますからねっ」

悪魔「自慢じゃないですけど、私。過去になら人の人生を9桁吸い取ってます」

子供「きゅっ…?!」

悪魔「大食らいの所以はそこなんです。たくさんたくさん、それもたーくさん…」

悪魔「…人の命を散らしてきました」

悪魔「だって、死にたくなかったんです。それに、なにも考えなかった」

悪魔「殺されないよう、退治されないよう、いっぱいチカラを手に入れる必要があったんです」

悪魔「だから何も考えず、ただひたすらに、吸いとり続けた」

悪魔「だからあの──大地震の時はかっこうの餌場でした」

子供「えっ? おまえもそこに、居たのか?」

悪魔「居ましたよ。だけど、びっくりなことに…誰ひとり死んでなかったんですよ」

悪魔「信じられますか? あんな大地震なのに、誰ひとり死んでなかった」

悪魔「地震によっての被害は皆無。しかも、それをやってのけたのがただの人間」

悪魔「その人間は言ったんです。私に、最高の凶悪なオーラを出した全盛期の私に向かって──」


「──やべぇ! 超おっぱいでかい人がいる!!」


子供「……………」

悪魔「びっくりです。なんだと思いますよね、けれど、余裕だったんですよ」

悪魔「あの大地震で救い続ける時も、神に天罰をくだされようが」

悪魔「ずっとあの人間は前を見続けていた」

子供「…だからナニモンなんだ、そいつ」

悪魔「ただの人間ですよ。私にしてみれば、ちょっと不思議な力を持った人間です」

悪魔「まぁ結局のところですよ。私はあの人間に──強く感銘を受けました」

子供「…なんか素直に納得出来ないんだけど」

悪魔「ふふ、ですが。貴方を救ったのもきっとその人間ですよ」

子供「…!?」

悪魔「それがどうした、って私は想いますけど」

子供「……」

悪魔「とにかく。私はそこで生まれ変わろうと願いました」

悪魔「九桁も殺しておいて、好き勝手やっておいて、その全てをなかったことにしようとしました」

悪魔「…それがこの姿と、この喋り方です。今の私を見たら過去の私は激怒するでしょうね、きっと」

悪魔「永遠に在ると思っていたチカラが消滅して、」

悪魔「ひ弱な身体へと変化し、死に絶える寸前まで落ちぶれて」

悪魔「私はそれでも、今を生きています」

悪魔「──過去を背負って、それでも、一度決めたことを曲げずに頑張って」

悪魔「──人とは餌ではない。きっとそれは、何か別の意味が存在するって」

悪魔「私は感謝したんです。その人間に、初めて他の存在に感謝したんですよ」

悪魔「ああやって、怖がるだけじゃあない。もっとたくさんの事を知って見て、生きていくべきだって」

悪魔「怖がって、生きたいために他の存在を殺し続けた私には──」

悪魔「──十分な光だったんですよ」

ポゥ…

子供「っ…」

悪魔「その光を貴方にも見せてあげたい…」

悪魔「私はそう信じています」

悪魔「怖いのはわかります、けれど」

悪魔「前を向いてください」

子供「前を…」

悪魔「自分の過去は、自分でしか取り繕えません。修復なんて無理です、でも、死んでなかったことにはならないんですよ…」

悪魔「責任を感じるのであれば、前を向いて──生きるんです…!」

子供「…生きる…っ」

悪魔「覚悟を決めるんです、この手をとれば。貴方は生まれ変わる」

子供「………」

悪魔「信じてください。自分の希望を!」

子供「っ……オレは…!」

子供「オレは……オレは! もっと、もっと…生きたいって…!」

子供「自分の中の…命の責任を…持ってやれるんだって…!」

子供「……っ!」

悪魔「…怖いなら私も付いていきます」

ぎゅっ

悪魔「悪魔は楽しいですよ? ちゃらんぽらんに生きてみましょうよ、ね?」

子供「……」

子供「……───」




ピキン!




子供「───」

悪魔「…え? あれ?」

子供「───」

悪魔「ど、どうしたんですか!? いきなり顔色が──」


「──おお、神よ…なんてことを…」

悪魔「えっ…?」

天使「私はまだやれた…! なぜ手を出したのですか!?」

悪魔「天使さん…?」

天使「神よっ! 貴方は下すべきことではない! 貴方は私に任せるべきだった!」

悪魔「……」

子供「───」

悪魔「…どうしたん、ですか・・? え、ちょっと待って下さい。なにしてるんですか…?」

天使「握られた。あの子供の魂は、今。神の手のひらの中よ…」

悪魔「なにいって…えっ? それはどういう…?」

天使「なんて、こと。これじゃあ…転生も出来ない…」

悪魔「……」

天使「…落ちぶれたアンタでも安易に想像つくでしょ…神とは…」


ゴォオオオオオオ!!!


天使「──死を司る閻魔」

悪魔「きゃああ!?」

天使「これじゃあ欠片も残らない…なんて、なんてことを…」

悪魔「黒い炎が──だめぇっ!!」

天使「ッ! やめなさい! アンタも一瞬でチリになるわよ!?」

悪魔「あ……ああっ……!!」

天使「っ…ここまでする必要があったのですか、神ッ…貴方はどうなされたんですか…ッ」

天使「あの大地震だって…なにもあそこまでする必要などッ…!」


ゴォオオオオオ!!!


悪魔「あ……」

悪魔(燃えていく、ダメ、あの人間は…貴方は、貴方は死なせたくない)

「てか最初からもう…オレは人間じゃなくって、悪魔で生まれてくればよかったんだ」

「そうすればおまえみたいに…色々と吹っ切れて、生きる希望も見つけられたんじゃねーのかなって」


悪魔「……」


「だけどっ! それでもっ…生きたかったんだ、死にたくなかったんだよ!」

「自分は正しいって思えなくても! 間違ってるって、死んで当然だってわかってて!」

「でも! それでもっ…オレは、オレは…!」

「──なにも、しなかった……!」


悪魔「っ……!!」


「っ……オレは…!」

「オレは……オレは! もっと、もっと…生きたいって…!」

「自分の中の…命の責任を…持ってやれるんだって…!」


悪魔「ッッ……!!!」

悪魔「──いかせない、絶対にッ!!」

悪魔「──はぁぁ……ふぅう……」

天使「…え」


ギチギチギチギチギチギチ!!!


天使「あ、あんた…なにして…」

悪魔「ッ……!」

悪魔(神様…貴方が全ての命を司る…最高のチカラの持ち主だというのなら……!)


悪魔「少しだけ我慢比べでもしません、か……ッ?」


天使「や、やめっ」

悪魔「ッ………はぁぁぁぁぁなぁぁぁぁあせぇぇぇぇぇ!!!」



ギュルギュルギュル!!

天使(こ、これって…! 白い悪魔を中心に、凄い勢いでエネルギーが…!)

悪魔「ふぐぐぐッ!!」

天使「む、無茶よ!? アンタ神からエネルギーぶん取るつもり!?」

悪魔「やってやりますよ! なにせ大食らいですよぉっ!? がっつりもらってやります!」

天使「ほんっと馬鹿ぁ! 無理に決まってるじゃない!! アンタの身体が持つはずがない! 死ぬわよっ…いや、死ぬよりももっと…!」

悪魔「ああああああああああああッ! これでもかぁああああ!!」

天使「馬鹿馬鹿!!」

悪魔「ごふぅっ!?」

天使「きゃああ!? だ、大丈夫なの!?」

悪魔「まだまだッ…ですよ、まだ満腹には程遠いですねぇ…!」


ギュルギュルギュル


悪魔(…いかせませんよ、なにが神ですかっ! 何が閻魔ですか!)

悪魔(チカラのあったとして、それが死の対象になってたまりますか!)

悪魔「救わなければでしょう!! 神とはそのような程度なんですか!!」

悪魔「なめるなぁあああああああ!!」


ゴォオオオオオオ!!!


天使「っ……」

天使「無理よ…あんたは確かに凄いやつだけど、それは結局悪魔でのことじゃない…」

天使「神に逆らうことなんて…そんな…そんなこと無理に決まってるじゃない!!」

悪魔「っ……っ……!!」

天使「もうやめてよ!! あんたはこんなの望んじゃいないでしょ!?」

天使「生きるって言ったじゃない! こんな無駄死なんて、あんたの望んだ未来なの!?」

天使「──人間はそこまでして救わなきゃいけない存在なの!?」

悪魔「…えへへ、そうですよ?」

天使「え…」

悪魔「天使さん…その通りです。ここまでしなきゃダメなんですよ。きっと」

天使「なんで…」

悪魔「私はそう信じてるんです。そう思うことが、大切なんです」


悪魔「今は今ですよ。きっと、信じた先には──」


天使「だ、だめ! もうこれ以上は…!」


悪魔「──大切な〝希望〟があるんですから」





ゴォオオオオオオ!!
ギュルルルルル!!



悪魔「…生きてください、未来を見てください!」



キィン!

悪魔「きっっっっっっと! そこには!!」ぎゅっ

悪魔「貴方だけの光があるはずです!!!」

天使「やめ────」




ドッゴオオオオオオオオオオン!!



~~~~~
~~~
~~



天使「……」

「………」

天使「…はぁ」

天使「あたしが…そうね、確認できたのはここまで。後はあんたが知ってるんじゃないかしら」

「…そうですね」

天使「平気? 身体に違和感とか無い?」

「大丈夫みたいですぅ。なんだか、身体がふわふわしてるぐらいで」

天使「そう、そうなの。だけど、あれね」

「なんでしょうか?」

天使「…いや、なんでもないわ」

「そう、ですか」

天使「神は、どうご覧になってるのかしらね」

「さあ、どうなんでしょうか」

天使「前代未聞よ。なんの干渉もなしに、対個人で──魂の変換させるなんて」

「……」

天使「あんたのことをなんて呼べばいいのかしら」

天使「魂が人間で。器が悪魔」

「…好きに呼んだらいいと思いますよ」

天使「……難しいわね」

「じゃあ悪魔でいいですよぉ。こんな口調ですし、なんでか」

天使「そうね、じゃあいつもどおり呼ばせてもらうから」

「……あいつはどうしたんですかねぇ」

天使「わからないわ。けれど、あーもう…ほんっと馬鹿」

「え?」

天使「いちいち感じるのよねッ…あんたの器から! アイツの魂の波長が!」

「…居るんですか?」

天使「知らないわよ。特殊すぎて意味不明、ほんっとちんぷんかんぷんよ」

天使「だけど、まぁ、そうね。居るんじゃないかしら、あんたの隣に」

「………」

天使「最高におせっかいね。あんた覚悟しなさいよ、いつまでもその子見守り続けるわよ」

天使「……アタシも一般だった時、どれだけ世話になったか…」ぼそっ

「………」ぎゅっ

「わかり…ました…」

天使「っはぁ~…それじゃあもう行くわね。色々と後始末しなくちゃだし」

「……」

天使「それと、あんたこれからどうするのよ? そんな格好だけど、元の場所に戻るの?」

「……もう帰りません」

「あの場所は抱え込む過去として、今度は前に進もうと思うんですぅ」

天使「そ。辛いわよ、アイツは乗り越えられてたけど。あんたには出来るわけ?」

「えへへ。そんなのわからないですよ、だって」

「考えてもわからないですし。それに、考えても意味ないと思います」

「前に進むこと。それを信じる自分だけが……正しいんだって」

「だから───だから〝オレ〟は…」


悪魔「…生きる希望ってやつを、信じて生きてやるんですぅ!」

おわーり
ご支援ありがとう御保守ありがとう
長くてすみませんでした


あとこれは
男「青信号だな、えっ?」の続きでもあります。
気になった方は読んでみてね!

次は、神に勝った世界線でも書きたいです。


質問あったらどうぞ、なかったら落としてくださったら
それではではノシ

abzou.kourin.soshite.nyurin
ab.naritaya
rukako2525

↑の奴はAB蔵っていって、他人のスカイプIDを無差別BANしたり
ニコ生でjcを煽って、飛び降り自殺させようとしたりするks野郎とその手下だけど絶対スカBANすんなよ!

----BANの方法は簡単----

1.ブロックしたい相手のIDを検索にかける
(最新版だと「コンタクトの追加」「友達を検索」とかから)
2.ID又は、表示名を右クリックしたら「このユーザーをブロック(X)」が出る
(最新版だと、出た名前をクリック→チャットマークをクリック→「ブロック」が出る
3.そのIDをブロック
4.(重要)ブロックする際に、「このIDを違反通報しますか?」って出るから、チェック入れて送信

これでおk
複数アカウント持ってれば全部使って違反通報しよう(というか複数アカウント作りましょう。

一応スカBANの方法書いといたけど絶対やめろよ!約束だぞ!

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