佐藤心「らめええええええええん♡」 (17)

心「ラーメン食べたい」

梨沙「うるさい」

心「すんません」


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心「おなかすいた~」

梨沙「まだ夕方の4時よ? この後次のライブの打ち合わせがあるのに」

心「よくわからないけど今日はめちゃくちゃおなかが減ってるぞ……」

梨沙「お昼ちゃんと食べたの?」

心「食べた♪ ていうか梨沙ちゃんも一緒に食べたから知ってるでしょ」

梨沙「そうなんだけど……なーんか量が少なめかなって思ったのよね」

心「あー……そういえば、今日のお昼はあんまり食欲がなかったんだよね。午前中のトレーナーのしごきがきつすぎて、逆に食べる気になれなかった」

梨沙「それで今お腹が減ってるのね。理由がわかってよかったじゃない」

心「やったーー☆」

心「でも、理由がわかってもお腹が膨らむわけじゃないんだよね☆」

梨沙「まあね」

心「はあ……お腹すいた」

梨沙「お菓子でも食べたら? ポテチあるわよ」

心「えー、太る」

梨沙「いつも食べてるじゃないのよ。飛鳥が買ってきたポテチの袋に勝手に手突っ込んで」

心「今ダイエット中っていうか。食欲の秋だーって言って食べ過ぎたから、カロリー調整してるところなの」

梨沙「何キロ太ったの?」

心「ぐさぁーっ!!」

梨沙「うわ、びっくりした」

心「ちびっ子の言葉の刃は時として強烈だな☆ だな……」

梨沙「な、なんかごめん」

心「キロ単位では増えてないから! 絶対増えてないから!!」

心「とにかく、今空腹に負けてポテチに手を伸ばすわけにはいかないの」

心「はぁとは空腹なんかに絶対屈しない♪」

梨沙「ふーん」ボリボリ

心「だからって目の前で堂々とポテチ食べられるとめっちゃ辛い☆」

梨沙「めんどくさいわね……!」

梨沙「ほら! 食べたいなら食べなさいよ」ズイッ

心「えっ……いや、だからダイエット中で」

梨沙「お腹減ってたらこのあとの打ち合わせも集中できないでしょ! それに、隣でぐーぐーお腹の虫が鳴ってたらこっちも気が散るし!」

梨沙「はい、食べるっ!」

心「ら、ラジャー……」ポリポリ

梨沙「おいしい?」

心「おいしいです……」

梨沙「ならいいわ!」フフン

心「ありがとう梨沙ママ……」

梨沙「誰がママよっ!!」

心「ソルティー☆」

心「下手に我慢するのも精神によくないし、いっそラーメン食べに行っちゃおうかな♪」

心「どう梨沙ちゃん? 今日の晩御飯一緒に食べない?」

梨沙「ラーメンかあ。うん、いいわよ」

心「さすが♪ 飛鳥ちゃんもうすぐ戻ってくるし、あの子も誘おうーっと」




ガチャリ


飛鳥「ただいま」

心「お、噂をすれば♪」

飛鳥「?」

梨沙「飛鳥。今日の晩御飯、ラーメンに食べに行かない?」

飛鳥「ラーメンか」

心「太るとか気にしちゃダメだぞ☆」

飛鳥「いや、別に気にしていないけど」

飛鳥「そうだな……うん、かまわないよ。ラーメンも悪くない」

心「よーし、これで3人目! 飛鳥ちゃん、どっか行きたいお店とかある?」

飛鳥「チャーハンがおいしいところ」

梨沙「チャーハン指定してきた」

飛鳥「チャーハンがちゃんとしている店はラーメンの味も保証されている。ボクの持論だ」

心「なるほど☆」

梨沙「なるほどなの?」

飛鳥「あぁ。たとえば、この前Pに連れて行ってもらったラーメン屋はチャーハンも麺もおいしくて」

心「……連れて行ってもらった? プロデューサーに?」キュピーン

飛鳥「……あ」

心「飛鳥ちゃーん♪ その話初耳だから、くわしく聞かせてほしいなあ♪」ニコニコ

飛鳥「あ、あぁ、うん」

梨沙「来週あたり、プロデューサーに同じ店に連れていけってお願いするつもりね……」

別の日


心「10月4日は天使の日らしいぞ☆」

梨沙「天使? なんで」

飛鳥「10は英語でTen。4(し)と合わせて『てんし』ということさ。まあ、簡単な語呂合わせだね」

梨沙「へえ」

心「ということは、今日ははぁとの日でもあるわけ♪」

梨沙「え? なんで?」

心「だって、はぁとといえば天使みたいなところあるし♪」

飛鳥「初めて聞いた」

心「むぅ、失礼しちゃう☆ ちゃんと天使の衣装を着たこともあるんだぞ☆」

梨沙「どっちかっていうとアタシのほうが天使ね! パパも『梨沙の産声はまるで天使のようだった』って言ってたし!」

心「いやいやいや、はぁとが天使だよ♪ みよ、このエンジェリックスマイル☆」ニコー

梨沙「ならアタシだって! ほらっ」ニコニコー

飛鳥「笑顔でにらめっことは、また珍しい光景だ」

心「飛鳥ちゃんも参戦する?」

飛鳥「遠慮しておくよ。ボクは自分が天使だとは思っていない」

飛鳥「そもそも、二人のように満面の笑みを意識して作るのは得意じゃない」

梨沙「アタシも別に得意ってわけじゃないけど。なんか楽しいこと考えたら、笑えない?」

飛鳥「楽しいこと……」

飛鳥「………」

飛鳥「ククッ」ニヤリ

梨沙「どっちかっていうと、天使より悪魔っぽい笑い方ね」

心「何を考えたのか気になるなぁ」モグモグ

梨沙「ところで、ハートさんは口をもぐもぐさせて何してるの? なんか食べてる?」

心「ううん。さっきサクランボ食べたでしょ? あれの茎を舌で結ぶ練習してるの♪」

飛鳥「サクランボの茎? どうして」

心「うーん……まあ、オンナを磨くため? 難しいけど、結構夢中になれていいかも☆」

梨沙「よくわかんないけど、面白いならアタシもやってみる!」

飛鳥「ふむ」←なんとなくやってみる

梨沙「ぐぬぬ……結構難しいわね、これ」

心「でしょ? 器用じゃないとなかなかできないよね」

飛鳥「………」

梨沙「ねえ、飛鳥がさっきから無言なんだけど」

心「よっぽど熱中してるってことだな☆」

数十分後


P「ただいまー」

心「あっ! プロデューサー、ちょうどいいところに♪」

P「はい?」

心「見て見て♪ やっと茎を舌だけで結べたの♪」ベー

梨沙「アタシも!」ベー

飛鳥「なんとかなるものだね」ベー

P「はあ……なるほど。いきなり3人とも舌を出してきて、何事かと思いました」

ちひろ「プロデューサーさん、モテモテですね♪」

P「そういう意味ではないと思いますよ」

飛鳥「?」

梨沙「そういう意味?」

心「はぁとはそういう意味だったりして」ボソッ

その日の夕方 事務所の屋上


飛鳥「………」

飛鳥「今日は、夕焼けがきれいだ」

飛鳥(昔から、なんとなく空を見上げる機会が多かった)

飛鳥(特に、夕焼け空)

飛鳥(薄暮、トワイライト、黄昏時。昼と夜、彼方と此方の境界が曖昧になり、すべてが溶けて入り混じるような感覚を覚える)

飛鳥(その感覚が、魅力的でもあり……同時に、怖くもあった)

飛鳥(自分という存在が形を失い、どこかに消え去ってしまうようで――)


梨沙「飛鳥。やっぱりここにいた」

飛鳥「……梨沙」

梨沙「アンタ、屋上好きよね。何してたの?」

飛鳥「空を見ていた」

梨沙「空? ふーん……」

梨沙「あっ」

飛鳥「ん?」

梨沙「今日の夕焼け、きれいじゃない?」

飛鳥「……ふふ、そうだね」

心「あ、ふたりともここにいたんだ。探したぞ♪」

飛鳥「心さんも来たのかい」

心「飛鳥ちゃん、本当に屋上好きだよねー」

梨沙「それ、さっきアタシが言った」

心「ありゃ?」

飛鳥「それで、ボクたちに何か用かい」

心「大したことじゃないよ? ただ、一緒に帰ろうかなーって☆」

飛鳥「ボクは、もう少し空を眺めているつもりだけど」

心「空? わあ、今日の夕焼けきれいじゃない? 雲の量とか形とかいい感じ!」

飛鳥「……あぁ、そうだね」

心「はぁともちょっと夕焼け眺めていこうかな♪」

梨沙「アタシもそうしようかな」

飛鳥「コーヒーをタンブラーに淹れてきたんだ。飲むかい」

梨沙「飲む!」

心「はぁとも♪」


飛鳥(……少し前までは、ひとりで空を見上げることが多かった)


梨沙「にがっ」

飛鳥「正直ボクも苦いと思っている」

心「はぁとは別にへーき☆」

梨沙「スウィーティーじゃないわね」

心「はぁとはスウィーティーだけど、酸いも甘いも噛みわける大人でもあるから☆」ドヤァ

梨沙「あ、アタシだってこのくらい平気だし!」ゴクゴク


飛鳥(今は、誰かと一緒に空を見る機会が増えた)

飛鳥(それが果たしていいことなのか、悪いことなのか。答えは出ないけれど)


梨沙「……にがぁ」

心「ハハハ、うぬにはまだ早いわ☆」

飛鳥「ふふっ」


飛鳥(まあ……誰かとセカイを分かち合うことも、悪くないと思っている)



心「………」

心「飛鳥ちゃんのエンジェリックスマイル、いただき♪」


おしまい

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
ラーメン食べたいしコーヒー飲みたい

シリーズ前作:二宮飛鳥「楽園からの帰還」 的場梨沙「おかえりー」

その他過去作
相葉夕美「花言葉」
モバP「甘えるいずみん」

などもよろしくお願いします

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