球磨「クマーーーーーー!!!」ジタバタ
漁師「おわぁ!? なんだ、女の子が釣れたぞ!?」
数週間後
提督(元漁師)「そういうわけで提督になった」
球磨「どういうわけかさっぱりわからんクマ」
提督「俺が聞きたい」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1475591747
吹雪「初期艦として配属されました吹雪です! よろしくお願いします!」
提督「うん、よろしく」
球磨「よろしくだクマ」
吹雪「えっ」
提督「ん?」
吹雪「もう艦娘がいらっしゃるんですか?」
提督「うん? あー」
提督「なんか海で釣りしてたら、釣れちゃったの」
球磨「釣られてしまったクマ」
吹雪「つ、釣れた……!?」
提督「そのせいで漁師だったのが提督に大抜擢されたんだよなあ」
提督「一番最初の艦娘って意味だと球磨が初期艦になるのかな」
球磨「そうクマね、提督の初めては球磨が頂いたクマよ」
提督「変な言い方すんな」
吹雪「」ポカーン
吹雪「……はっ!?」
吹雪「そ、そうだ、重要な事をお伝えしなきゃいけないんです」
提督「重要な事?」
吹雪「この鎮守府では建造が使えません」
提督「建造が?」
球磨「使えない?」
吹雪「はい」
提督「…………??」
球磨「建造って何クマ?」
吹雪「あっ、そこから説明しなきゃいけないんですね……」
説明終了
提督「えっ!? つまり新しい艦娘が造れないの!?」
吹雪「そうなんです……」
吹雪「増え続ける敵に対して、こちらの艦娘の数が足りなくなってきて」
吹雪「それに伴って建造用の機材がどこの鎮守府でも不足していて」
吹雪「なのでここのような新設の鎮守府まで手が回らない状態なんです……」
提督「ええー……なんで鎮守府の数だけ増やすの……」
球磨「つまり球磨と吹雪の二人だけで戦うことになるクマ?」
吹雪「今のままだと、そうなります……」
吹雪「一応、現代化改修や装備の開発とかは行えるんですが」
提督「元々の艦娘がいなけりゃあどうにもならんな」
提督「となると、別の方法で艦娘を集めないとな」
球磨「今の話だと、他の鎮守府から寄越してもらうのは無理そうクマね」
吹雪「でもどうやって……」
提督「……釣るか!」
球磨「釣るしかないクマ!」
吹雪「ええっ? 釣る???」
球磨「船と釣り竿はあるクマ?」
提督「漁師時代のものを持ってきている」
球磨「よし、行くクマ」
吹雪「あの、ホントに釣るんですか?」
提督「他に方法が無いのだから仕方あるまい」
海上
提督「よし、始めるか」
吹雪「……釣れるんですか……?」
提督「知らん、とりあえず鋼材とか弾薬とか、支給された資材を釣りエサに使う」
吹雪「確かに建造や修理に使う資材ですけれど……」
提督「二人は周りの警戒を頼む」
球磨「わかったクマ」
吹雪「は、はい……」
球磨「……」
吹雪「……あの」
球磨「クマ?」
吹雪「なんで球磨さんはその、釣られてしまったんですか?」
球磨「おおう、それを聞いてくるクマか……まあいいけど」
球磨「そうクマね……話すと長くなるクマけど」
吹雪「(話すと長くなるほどの話なんですか?)」
球磨「その日球磨はいつも通り、優雅に海を泳いでいたクマ」
吹雪「(う、海を泳いでた??)」
球磨「そしたら、前方にオキアミがぶらぶら漂っていたクマ」
吹雪「お、オキアミ」
球磨「そのオキアミがこの球磨の人生の分岐点になるとは、その時は思いもしなかったクマ」
吹雪「は、はあ……」
球磨「目の前でふわりふわりと誘うように動くオキアミ……」
球磨「球磨はこれに食いつかずにはいられなかったクマ」
吹雪「オキアミに食いついたんですか……」
球磨「そしたら後は知っての通りクマ」
吹雪「釣られちゃったんですね……」
球磨「口の中に釣り針が刺さってすごく痛かったクマ、ちぎれるかと思ったクマ」
球磨「そんなところクマ」
吹雪「(……く、くだらねー! 聞くんじゃなかった!)」
寝る
ちなみに>>1の釣り知識はぬし釣りってゲームを昔やってたくらいですので変なとこがあっても大目に見てください
提督「おーい、ちょっと来てくれ」
球磨「クマ?」
吹雪「なんです?」
提督「一匹釣れたんだけどさ」
吹雪「えっ、釣れたの!?」
イ級「」ビチビチ
吹雪「!?」
提督「このブラックバスみたいなやつ、何だ?」
球磨「うーん、球磨にはわからんクマ」
吹雪「こ、これ深海棲艦ですよ!?」
提督「深海棲艦? 艦娘か?」
吹雪「違いますよ! 敵です敵!」
提督「なんだ外道か、じゃあリリースするか」ポイッ
チャプン
イ級「」スイー
吹雪「ええー!?」
提督「ん?」
吹雪「逃がすんですか!?」
提督「いけなかったか?」
吹雪「だって敵ですよ!?」
提督「なるほど外来種か」
吹雪「いや確かに外来種という言い方もできるかもしれないですけど!」
イ級「」スイー
球磨「あ、さっきのブラックバスだクマ」
イ級「!」
イ級2「!」
イ級3「!」
球磨「な、なんか数が多いクマ」
イ級4「!」
ズドン!
提督「うわ! 攻撃してきた!」
吹雪「ほらあ仲間呼んで襲ってきたじゃないですかあ!」
提督「お、応戦だ応戦! 砲撃準備!」
戦闘終了
球磨「面食らったクマ……」
提督「ひい、ひい……船は無事のようだな、お前ら大丈夫か?」
吹雪「なんとか無傷ですけど……」
提督「そうか、それはよかった」
吹雪「よくないですよ! 酷い目に遭いましたでしょうが!」
提督「わ、わかったよ、次からはリリースしないでその場で締めるよ」
吹雪「食べ物じゃないです、敵です!!」
提督「わかったって……おっ?」
吹雪「今度はなんです?」
提督「竿に当たりが来た!」
球磨「かかったクマ?」
吹雪「またイ級じゃあないですよね……」
提督「いや、これはブラックバスより大物っぽいぞ……そら!」グイ
ザパァンッ
多摩「にゃあああああああああ!!!」ジタバタ
提督「来た! これ艦娘だ! 艦娘でしょこれ!」
球磨「あっ、多摩じゃないかクマ」
吹雪「マジで釣れちゃった!?」
多摩「うう、オキアミに釣られるとは、不覚をとったにゃ……」
吹雪「(オキアミで釣ってたのかよ、鋼材や弾薬はどうした)」
球磨「よう、お前も釣られたかクマ」
多摩「あ、お姉ちゃん、もしかしてお姉ちゃんも?」
球磨「恥ずかしながらその通りクマ」
球磨「オキアミの魅力には誰も勝てないクマ」
多摩「うん……仕方ないのにゃ」
吹雪「(オキアミ好きすぎるでしょ)」
多摩「釣られてしまったからには協力するにゃ、よろしくにゃ」
提督「これで3体か、なんとか出撃できる数かな?」
数日後
吹雪「…………けほっ」大破
球磨「クマー……」中破
多摩「あかんにゃ……」大破
提督「……流石に3人だけでの運用は無理があったか」
球磨「そもそも数が違いすぎるクマ、やっこさん数十体もいるクマ」
吹雪「お、おかしいです、この近辺の海域でこんなに深海棲艦がいるだなんて……」
多摩「逃げ帰るのがやっとだったにゃ」
提督「ううむ……とりあえずお前達は入渠ドッグで修理だ」
吹雪「ドッグ三つあるんですか?」
提督「ああ、建造できないから他のところを補強しといた」
多摩「建造できないって、ありえんにゃ……」
球磨「今思うと、めっちゃキツイクマ」
提督「修理が終わったら、戦力増強だな」
球磨「戦力増強というと……」
吹雪「またアレですか?」
提督「うむ、アレしかあるまい」
多摩「アレ?」
海上
多摩「あーなるほど、艦娘を釣るのかにゃ」
提督「そうだ」
球磨「前はブラックバスが釣れて大変な目に遭ったクマ」
吹雪「ブラックバスじゃなくてイ級です」
提督「エサはオキアミでいいだろ」
球磨「いいと思うクマ」
多摩「オキアミなら間違いなく釣れるにゃ」
吹雪「(よくないだろ)」
提督「じゃあお前達は周りの警戒を頼む」
球磨「了解クマー」
多摩「ところで、お姉ちゃんは提督に釣られてから鎮守府に来るまで数週間の期間があったんにゃよね」
球磨「うん? そうだクマ」
多摩「その間って何してたんだにゃ?」
球磨「えーと、その間は提督と一緒に暮らしてたクマ」
吹雪「え、司令官と一緒に?」
球磨「そうクマ、正確には提督とその両親と一緒クマ」
球磨「漁師の家だったから漁の手伝いもしたクマよ」
多摩「へぇ」
吹雪「その両親って、球磨さんが海で釣れたって言って信じてもらえたんですか?」
球磨「そう言って信じる奴がどこにいるクマ、そこは提督がうまい事言ってごまかしたクマ」
多摩「どんな?」
球磨「海で遭難した記憶喪失の女の子を救出した、身を寄せる場所が無いからしばらくうちで預かろう」
球磨「という話になったクマ」
多摩「それでもかなり無理があるにゃ……」
球磨「なんか親父さんとお袋さんにうちのせがれを貰ってくれって迫られたクマ」
多摩「おやおや、親公認なのかにゃ?」
球磨「いやいや、そんなんじゃないクマって」
吹雪「(親父さん、お袋さんって呼んでるあたり、満更でもないんじゃ)」
球磨「後は捜索願が出ていないか警察に行ったら、そこから大本営に知られてなんやかんやで提督と一緒に鎮守府に来ることになったクマ」
提督「おーい、ちょっと来てくれ」
多摩「あ、呼ばれたにゃ」
球磨「何クマ?」
ビチビチ
提督「サバが釣れた!」
多摩「おお!」
提督「今日の晩御飯は焼きサバだ!」
球磨「やったクマ!」
吹雪「……いやあの、魚が釣れるのは当たり前なんですけど、その、艦娘は?」
提督「まだ当たりナシだ」
吹雪「そ、そうですか」
提督「ただ、一匹変なのが釣れてな」
提督「この前吹雪の言ったようにすぐに締めたんだが」
吹雪「はあ」
提督「こいつ」
ハ級「」シーン
提督「このブルーギルみたいなやつ」
吹雪「ハ級だ! 深海棲艦だ!!」
提督「やっぱ深海棲艦かー、前の奴みたいに黒かったからもしやと思ったが」
吹雪「こいつはこのまま沈めちゃいましょう」
提督「うむ、吹雪がそういうならそうするか」ボチャ
ハ級「!」バシャバシャ
提督「あれ、まだ生きてやがった」
吹雪「! 球磨さん、仕留めて!」
球磨「ほいさ!」ズドン
ハ級「!?」轟沈
吹雪「ふう……危なかった」
多摩「何を必死になってるにゃ?」
球磨「前にブラックバスを逃がしたら、集団で襲いかかってきたんだクマ」
吹雪「あの時は散々な目に遭いました……あと、ブラックバスじゃなくてイ級ね」
提督「……お」
提督「来た、来た」
球磨「艦娘クマか?」
提督「……うーん、にしては引きが今までと違うなあ」
提督「なんつーか、抵抗しないというか、お前らみたいに暴れないというか」
ザパァンッ
北上「おあーーーーー」ブラブラ
提督「あっ、艦娘かこれ?」
球磨「おう、北上じゃないかクマ」
多摩「本当に釣っちゃったにゃ」
吹雪「よくこんなに簡単に釣りますね……」
北上「な、何? これ」
球磨「よくぞ来た我が妹よ、歓迎するクマ」
北上「え、あ、球磨姉と多摩姉じゃん」
多摩「釣られた者同士、仲良くしようにゃ」
北上「あーそうか、釣られたのねあたし」
球磨「気に病む必要ないクマ、オキアミには勝てんクマ」
北上「だよねー、丁度小腹が空いていたところにオキアミが目に入ったらそりゃもうダメだよ」
多摩「それはもう無理だにゃ」
北上「いやあ卑怯だよね、オキアミ」
吹雪「(このオキアミ推しは何なの)」
提督「よしこれで4人か」
提督「何とかなるか?」
吹雪「多分まだ無理です」
提督「だよな……しばらくは近辺海域を見回りつつ練度上げだな」
一週間後
提督「喜べ!」
球磨改「いきなりなんだクマ?」
提督「大本営から支援として艦娘が支給されるぞ!」
多摩改「おお! 仲間が増えるにゃ!?」
北上改「よかったぁー、4人だけじゃあ全然手が回んなかったからねー」
提督「いやあ、建造無しは辛すぎるって何度も懇願した甲斐があったよ」
吹雪改「(よかったぁ、私以外姉妹艦だから少し場違い感があったんだよね)」
吹雪「その応援っていつくるんですか?」
提督「連絡だと、もうすぐ来る話なんだが」
球磨「え、早くない?」
コンコン
提督「どうぞ」
ガチャ
大淀「失礼します」
大淀「本日付で配属されることになりました大淀です、よろしくお願いします」
明石「同じく、明石です、よろしくお願いします!」
提督「ああ、よろしく頼む」
球磨「いやあ、これで少しは楽になるクマ」
提督「そうだな、3人ずつになるが、二艦隊になれば活動の幅が」
大淀「え……あの、少し待ってください」
提督「ん? 何?」
明石「私達、それぞれ事務と開発担当として、いわば裏方として配属されたわけで」
大淀「その、出撃するのは少し……」
提督「え、マジで」
大淀「ところで……先程3人ずつで二艦隊と言ってましたが」
大淀「他の艦娘は?」
吹雪「ここにいる4人で全員です」
大淀「えっ」
多摩「建造出来ないもんだから増員できないのにゃ」
明石「えっ」
北上「新しい艦娘が来るって言うから期待したんだけど、そっかー裏方かぁ」
大淀「……ち、ちょっと待って」
大淀「ちょっとー! これどういうこと?」ヒソヒソ
明石「私に聞かないでくださいよ!」ヒソヒソ
大淀「艦娘が4人しかいないだなんて……新設の鎮守府とは聞いてたけど流石にこれは……」
明石「それより、建造できないって何ですか、私は一体何のためにここに来たんですか」
大淀「うう……先が思いやられる」
明石「どうなるんでしょう私達……大ハズレ引いたなあ……」
球磨「(……丸聞こえだクマ)」
吹雪「……あの、司令官」
提督「ん?」
吹雪「大淀さんと明石さんって、全ての鎮守府で配属されるんですよ」
吹雪「だからここの鎮守府の事情を知らないまま配属されてきたんじゃ……」
提督「……てことは、建造できないから支援してってお願いが通ったわけじゃないのか……」
球磨「世知辛いクマ……」
提督「まあその、なんだ……よろしくな」
大淀「は、はい……よろしくお願いします……はあ」
数日後
提督「大淀のおかげで書類整理が実に楽になったぞ」
吹雪「明石さんのおかげで、装備が充実してきました」
球磨「でも重労働なのはなんら変わってないクマ!!」
多摩「休みが欲しいにゃー!」
北上「だるいー、疲労度マックスだよ」
提督「だよなあ、何とかしないとなあ」
提督「よし、先の出撃で近辺の深海棲艦は排除できたし」
提督「釣りに行くか」
球磨「よし来たクマ」
海上
提督「天気よし! 場所よし!」
大淀「……あの」
吹雪「はい?」
大淀「本当に釣れるんですか?」
吹雪「はい、見ちゃったので」
明石「…………オキアミで?」
吹雪「……はい、見てしまったので」
北上「それで、何かアテはあるの?」
多摩「今まで通り当てずっぽうじゃないかにゃ」
提督「いいや、今回はアテがあるぞ」
多摩「そうなの?」
提督「ここに明石から貰った艦娘カタログがあってな」
提督「これを参考に釣ろうと思う」
球磨「ほうほう」
提督「じゃあ北上、エサを付けてくれ」
北上「え、あたしが?」
提督「ほら、オキアミ」
北上「んー、うまい」モシャモシャ
提督「食うなや! 釣り針につけるの!」
北上「あーごめんごめん、つい」
北上「てか、なんであたしが付けるのさ」
提督「カタログを信じれば、北上が付けることに意味があるらしい」
北上「そうなの? ほい、付けたよ」
提督「サンキュ、じゃあ早速」ポチャ
グイ
提督「おっ、来た!」
吹雪「早っ!」
提督「ぬお、引きが強いな……だが俺にかかればこの程度!」グイ
ザパァンッ
大井「北上さああああああああん!!!」ジタバタ
提督「よっしゃあ釣れた!」
北上「あれー、大井っちじゃん」
大淀「う、うわあ……ホントに釣れちゃった」
大井「くうっ……不覚!」
大井「北上さんが付けたオキアミで釣りあげる……なんて卑怯な! 卑怯なっ!」
北上「それで釣られるのは大井っちだけだよ」
球磨「相変わらずの北上ラブクマね」
吹雪「なんで北上さんが付けたオキアミってわかるんだろう……」
大淀「…………」
明石「ビックリですね」
大淀「はい、出撃中に艦娘と遭遇したという報告は少なからずあったそうですが……」
明石「釣れただなんて聞いたことないですね」
大淀「ね」
大井「あーもう、口の中が釣り針で痛いわ……はっ!!」
大井「北上さんっ!」ガバッ
北上「おあー、なんあよおおいっひ」
多摩「なんで口の中見てんのにゃ」
大井「……キズは見当たらないけど……」
大井「あなたも釣られたの? 釣り針が刺さったの!?」
北上「あーうん、あれは痛かったね」
大井「貴っ様ァ!!」バッ
提督「おわぁ、なんだ!?」
大井「北上さんの口の中にキズをつけるなんて!」
大井「そこに直れ! 沈めてやる!」
提督「ま、待てやめろ、あー落ちるぅ!?」
球磨「わー! 落ち着くクマ!?」
提督「助けて!」
大井「オラァ!」ゲシッ
提督「あおぉぉああ!?」ザブーン
吹雪「あー! 司令官ーー!?」
提督「ぶはっ!」
提督「あ、あ、あの野郎~、何も海に蹴落とす事は無いだろう」
提督「いやぁ、引き上げてくれて助かったよ」
ヲ級「ヲッ」
提督「……」
ヲ級「……」
提督「誰?」
ヲ級「ヲ?」
吹雪「あーー!? 司令官が敵に捕まった!」
球磨「え、あれも深海棲艦クマ?」
大淀「空母ヲ級、深海棲艦の中でも強い部類です!」
大井「よし! あの不届き者を合法的に消すチャンスね!」
大井「人質として囚われるも、俺ごと撃てと諭した提督の英断により深海棲艦と共に沈む! 筋書きはバッチリ!」
北上「やめたげてよ、流石にかわいそうだよ」
提督「……なんかうちの奴らが騒いでるなあ」
提督「悪いけどあそこまで連れてってくんない?」
ヲ級「ヲッ?」
提督「オキアミあげるから」
ヲ級「!」
ヲ級「ヲッヲッ!」スイー
明石「ち、近づいてきましたよ!?」
多摩「どうするにゃ?」
球磨「提督が捕まってるから迂闊に撃てないクマ……」
提督「ふう」ザパン
吹雪「あれ……」
提督「いやあ助かったよ」
ヲ級「ヲッ」
提督「はい、お礼のオキアミ」ヒョイ
ヲ級「ヲッ!」モキュモキュ
ヲ級「♪」
大淀「え、餌付けで手懐けてる……!?」
球磨「さすがオキアミだクマ」
大井「オキアミなら仕方ないわね」
明石「えぇー……?」
吹雪「し、司令官、大丈夫ですか!?」
提督「大丈夫なわけあるか! こちとら全身ずぶ濡れだぞ!」
吹雪「い、いや、そうじゃなくて、何か変なことされませんでしたか?」
提督「え、変なこと? なんで」
吹雪「だって、深海棲艦ですよ!?」
提督「えっ、艦娘じゃないの?」
ヲ級「ヲ?」
提督「どうみても女の子じゃん、これ艦娘だよね、艦娘でしょ? クラゲみたいなの被ってるけど」
吹雪「…………はあ」
ヲ級「ヲッ」スイー
提督「あれ、行っちゃうの? うち艦娘いないからぜひ来て欲しかったんだけど」
ヲ級「ヲ……」フルフル
提督「ダメかー、じゃあ仕方ないな」
ヲ級「ヲッ」フリフリ
提督「じゃーなー」
大淀「…………」
明石「逃がしてよかったんですか……?」
大淀「さ、さあ……でも敵意は無さそうだったし……」
提督「さてと、服が濡れたし、帰るしかないな」
大井「……」ジトッ
提督「北上ー、この子何とかして」
北上「大井っち、許してあげなよ」
大井「北上さんがそういうのなら許してあげます♪」キリッ
提督「なんだこの切り替えの早さ」
球磨「さすがとしか言いようが無いクマね」
数日後
提督「艦娘が増えた事と各々の練度が上がった事で、出撃もかなり安定してきたな」
球磨改「明石が改修した装備も役立ってるクマ」
多摩改「でもやっぱり5人だとちょっと……にゃあ」
北上改「重労働なのは変わってないんだよねぇ」
大井改「私は北上さんがいれば……」
吹雪改「もうヘトヘトですよ私……」
大淀「私まで出撃する始末ですし……はあ」
提督「前々から大本営に何とかしてくれって頼んでるんだが、相変わらず手応えがなくてなあ」
明石「……ふぁーあ……」ウトウト
提督「ん? なんだ明石、眠そうだな」
明石「ああすみません……ちょっと徹夜で作業してまして」
提督「徹夜? 何かやってるのか?」
多摩「そりゃあ何度も出撃すれば装備もボロボロになるにゃ」
球磨「きっと修理や整備に追われてるんだクマ」
提督「なるほどそうか、無理はするなよ」
明石「誰のせいで無理するハメになってんですかーもー……」
提督「お、オレワルクナイワルクナイ、ワルイノダイホンエー」
北上「この様子ならまだ大丈夫そうだね」
提督「そんじゃあ、今日は釣りに行くか!」
球磨「お、そうこなくてはクマ!」
提督「球磨、多摩、北上、大井は護衛を頼む」
北上「あいよー」
提督「吹雪、大淀、明石は鎮守府で待機していてくれ」
大淀「了解しました」
提督「しゃあ! 行くぞ!」
多摩「今日の晩御飯はお魚にゃ!」
大井「煮魚とかいいですよねー」
北上「たまには贅沢してお刺身もいいよね」
球磨「調理法は釣った魚を見てから考えるクマ」
吹雪「なんでこの人たち晩御飯の話をしてるの?」
大淀「いや、普通に聞いていれば当たり前の話題なんですけど……まあ……」
海上
提督「さて、艦娘カタログを見た限りだと……」
提督「お前らも期待したりしてるんじゃないのか?」
北上「まあ、ここまで揃っちゃったらねー」
提督「でもそう都合よく釣れてくれるもんかなあ」グイ
提督「お、アジ釣れた!」
球磨「任せろクマ、我々が釣れろ釣れろゴルァと、念を送ってやるクマ」
多摩「ふにゃーー、釣れないと集中砲火にゃ」
北上「魚雷だよー、釣れなかったら40門からの酸素魚雷だよー」
提督「……ほ、程々にな?」
大井「もう、お姉さん達ったら……」
大井「もっとこう、ケツに魚雷突っ込んでそのまま神風アタックさせてやるってくらいの意気込みじゃないと」
提督「お前が一番こえーっての」
北上「あー大井っち、その話はあたし苦手だわ……」
大井「あっ……ご、ごめんなさい」シュン
グイ
提督「お、来た」
球磨「おお、祈りが届いたクマ」
提督「全部脅しだったじゃねえか……この引きは魚だな」
大井「何よアイツ、だらしが無いわね」
提督「よっと」グイ
ハ級「」ビチビチ
提督「ブルーギルだった」
球磨「はいはーい駆除駆除」ズドン
ハ級「!?」轟沈
提督「ばっか、バラしてから駆除してくれよ、あー釣り針がおじゃんだ」
球磨「む、それはすまんかったクマ」
多摩「お姉ちゃんはせっかちだにゃあ、もう少しのんびりするにゃ」
北上「そーそー、何事ものんびりが一番だよ」
球磨「お前らはのんびりしすぎだクマ」
球磨「お詫びに球磨がエサをつけるクマ」
球磨「このオキアミに釣れろ釣れろゴルァと念じれば、きっと釣れるクマ」
多摩「集中砲火ー……」
北上「酸素魚雷ー……」
大井「えっと、だったら、機関爆発ー……」
提督「流石にかわいそうになるからやめてあげて」
球磨「これでよし」
球磨「これで絶対釣れるはずだからじっくり待つクマ」モシャモシャ
提督「待って、なんでオキアミ食ってんの君達」
大井「あ、すいません、つい手が伸びちゃって」
提督「それ釣りエサだからね? おやつじゃないからね?」
北上「それよりほら、引いてるよ」
提督「ん? マジだ」グイ
提督「お? これは……この感触は艦娘だ、間違いない」
球磨「お、 ついにくるクマ?」
提督「そぉーらよっ」グイ
ザパァンッ
木曾「キソォォォーーーー!!!」ジタバタ
多摩「来た! 木曾来たにゃ! これでビクトリー! にゃ」
大井「これで全員揃ったわね!」
北上「今更だけど、艦娘1人釣り上げる提督の腕力とその重さに耐える釣竿の強度がすごいよね」
木曾「う、うへえ、なんだなんだ?」
球磨「よく来たクマ、歓迎するクマ」
木曾「あ、あれ? 姉さん達、勢揃いだな」
北上「みんな釣られたからねー」
木曾「釣られた……あ、ああ、そうだ」
木曾「あのオキアミ……食いつかないと命に関わるって、何故か本能で感じたんだよな……」
多摩「そのオキアミには、我々みんなの思いを込めたにゃ」
木曾「そうなのか……へへ、姉さん達の熱い想い、受け取ったぜ」
球磨「カッコつけたこと言ってんじゃねークマ!」ガン
木曾「いてっ!?」
大井「来るのが遅いんですよ!」
多摩「呼んだらさっさと来いにゃ!」
北上「こちとら少人数でオーバーワークだってーの」
木曾「ちょ、ま、なんでみんなで俺を叩くんだ!?」
木曾「そ、そこのお前! た、助けてくれ! 助けてください!」
提督「……」
提督「さーて、今日の晩御飯釣らなきゃな……」
木曾「ああああ! てめえ覚えてろよ!」
多摩「ここに玉網があるにゃ」
球磨「よし、ケツにぶっ刺してやるクマ」
木曾「やめろ! それはマジでやめて! あっ、待ってください!?」
提督「お前ら俺の道具でやるんじゃねえよ!?」
…………
木曾「ひどいや姉さん……」小破
球磨「すまん、やりすぎたクマ」
北上「はい、仲直りのオキアミ」
木曾「……アリだな」モシャモシャ
提督「とにかく、これで姉妹艦が全員揃ったってことだな」
球磨「つーか、球磨型しかおらんクマ」
北上「他は大本営から送られてきた艦だしね」
提督「晩御飯も結構釣れたし、そろそろ戻るか」
数日後
木曾「建造できねえっておかしいだろ!?」
大井「まあ、そう思うわよね」
多摩「誰もが通る道だにゃ」
提督「安心しろ、建造以外のバックアップは十分に整えているぞ!」
木曾「その前に数を増やせ数を!」
木曾「こんなブラック鎮守府だなんて聞いてねえぞ……」
多摩「数日おきじゃなくて、毎日釣ることはできないにゃ?」
提督「できるのであればそうしたいんだけどな……」
提督「俺は書類を書かにゃあならんし、お前らだって出撃しないといけないし」
提督「今だってノルマ達成の為に球磨、北上、吹雪、大淀が出撃してるんだ、こうして鎮守府に艦娘を残しておけるだけでもありがたい」
球磨『そうだクマー、マトモに休みを貰ったことなんて無いクマー!』
大淀『私は事務方なのにー!』
提督「無線越しに文句を言ってくるな!」
提督「あとな、釣りをするにしても護衛がいるだろ」
提督「最初期の頃こそ仕方なかったが、本当の所は数がまばらな時にブラックバスやブルーギルに襲われちゃあ適わん」
吹雪『イ級とハ級ですってば』
多摩「ところで明石は?」
提督「ここのところ工廠に篭もりっきりだ」
木曾「あいつが一番働いてんじゃないのか?」
提督「俺だって働いてらぁ、この書類に全部ハンコ押してくんだぞ」
大井「そもそも何の書類なんですかそれ」
提督「資材の収支とか出撃の報告書とか」
木曾「そんなにたくさん溜まるもんなのか?」
提督「そりゃあ溜まるよ溜まる。管理職は大変なんだぞ」
多摩「そのくせに頻繁に釣りに出かけてるのにゃ」
提督「艦娘の増員は最重要事項だろう!」
木曾「釣りイコール増員って、なんかおかしいよな……」
提督「そうだ、今度お前らにも釣り教えてやるよ」
提督「俺以外にも釣りができるようになれば色々と効率がいいだろ」
大井「それはそうかも……」
提督「鎮守府に来る前に、球磨のやつにも教えてみたんだが、あいつはせっかちだからてんでダメだった」
多摩「そりゃそうにゃ、お姉ちゃんは川でシャケ捕まえてる方が性に合ってるにゃ」
木曾「基本的に身体動かすタイプで、じっとしてられないんだよな」
大井「この前出撃中に石ころ持ってきてると思ったら、海の上で水切りやってたわ」
木曾「あーあれか、深海棲艦にたまたま当たって、無駄に怒らせて余計な戦闘するハメになったんだよな」
提督「あいつはガキか」
球磨『全部聞こえてるクマーー!! 帰ったら覚えてろクマ!』
球磨「あいつら~、好き勝手言いやがるクマ」
北上「いやあ大人気だねー球磨姉」モシャモシャ
球磨「お前は何食ってるクマ」
北上「ん? オキアミ」
球磨「提督ー! 北上が、もがっ」
北上「わあ待って! バラすのやめて!」
提督『ん? 北上がどうした?』
北上「な、何でもないよー、ナハハ」
提督『はあ、何でもいいけど、真面目にやれよー』
球磨「んー、んー!」
北上「……あ、ごめんごめん」
球磨「ぶはっ、窒息死させる気かクマ」
北上「ごめんってば、オキアミで手打ちにしてよ」
球磨「むう、この場は許してやるクマ」モシャモシャ
吹雪「…………」
大淀「緊張感がまるで無いですね」
吹雪「ですね」
北上「吹雪と大淀もオキアミ食べる?」
吹雪「えっ……いえ、私はちょっと……」
大淀「私も少し……匂いが、その」
球磨「やめとくクマ、そいつら建造組だからオキアミの良さがわからんクマ」
北上「あーそういえばそうだったね、勿体ないなー」
吹雪「建造組って何」ヒソヒソ
大淀「おそらく出生の違いでは」ヒソヒソ
吹雪「あーなるほど、さすが天然産は野性味溢れてますねぇ」
大淀「(ああ吹雪ちゃん……すっかり毒づいちゃって……)」
数日後
明石「ふ、ふふふ……ついに出来ましたよ提督」
提督「出来たって、何が?」
明石「建造用の、機材です……!」
提督「建造用の機材……まさか!?」
明石「そうです……」
明石「ついに! 我が鎮守府でも! 建造が!」
明石「できるようになったんです!!!」
球磨「な、なんだってー!? クマ」
提督「そ、それで、その建造は上手くいくのか!?」
明石「はい……」
那珂「艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよー♪」
明石「この通り、正常稼働確認済みです……!」
球磨「おお……おお……!!」
提督「よくやった! よくやった明石!」
明石「へ、へへ……徹夜で頑張った甲斐が、ありましたね……」
那珂「……あの、那珂ちゃんだよー♪」
多摩「聞いたにゃ! 建造が出来るって!?」
球磨「そうだクマ!」
大井「ついに、ついにこの日が……!」
北上「よかったぁー……やっと過労働から解放される……!」
吹雪「やっと……やっとのんびり休める日が!」
木曾「おかしいと思ってたんだよ、建造できねえってさ、だがそれもオサラバなんだな……!」
大淀「やっと私が出撃しなくても済むようになるんですね……」
那珂「……えっと……那珂ちゃん、ですけど……」
明石「そういうことなので、寝かせてください……」
提督「ああ、ゆっくり休め……!」
明石「ぐぅ」バタリ
吹雪「わあ、ここで寝ないでください!」
球磨「そこのソファーに寝かしてやるクマ」
木曾「よいしょっと、手間かけさせるなあ」
提督「よし、明石の頑張りは無駄にしないぞ!」
提督「高速建造材はたんまり溜まってるからな、たくさん建造するぞー!」
多摩「おー!」
那珂「…………」
那珂「みんなに無視されても、那珂ちゃんは負けません……!」グスン
提督「で、何を建造する?」
球磨「空母クマ! まずは空母で制空権を取ってもらうクマ!」
多摩「やっぱり、戦艦の大火力が必要になってくるにゃ」
北上「でもさー、戦艦は弾薬消費激しいし、まずは重巡からでよくない?」
大井「燃費を考えるなら、軽空母の方が……」
木曾「数が足りない! 駆逐艦でもいいからまず数を増やそう!」
提督「見事にバラバラだな」
球磨「じゃあここは副司令官である吹雪に決めてもらうクマ」
吹雪「ええ、私? ていうか副司令官って何」
提督「まあお前らだけで話し合ってもまとまらん事は目に見えてるしなあ」
吹雪「じゃあ……まずは数を増やす方向で」
木曾「だよな」
多摩「えー」
北上「理由としては?」
吹雪「……」
吹雪「休みが欲しいんです……」
提督「…………すまん」
…………
明石「ふわぁーあ……ぐっすり眠っちゃった」
提督「あ、明石、起きたか……」
明石「あ、提督、おはようございます」
提督「その、寝起きで悪いんだが、伝えなきゃいけないことがあるんだ」
明石「んー? なんです?」
提督「えーと、な……」
提督「お前が作ってくれた建造用の機材、壊しちゃったんだよな」
明石「…………」
提督「その、あまりに嬉しかったものでな」
提督「基本は最低値レシピで高速建造材を使いながら、たまに空母レシピとか戦艦レシピとか回しまくってたらさ」
提督「煙吹いて炎上した挙句に完全停止しちまった」
提督「あ、消火はちゃんとやったぞ」
明石「……」
明石「寝ぼけてるのかな、よく聞こえませんでした」
提督「建造用の機材が壊れた」
明石「…………」
提督「すまん、本当に申し訳ない!」
提督「しかし北上のヤツがつまんでたオキアミが何を間違ったか資材の中に混入してて」
提督「さらに煙が出た所でよせばいいのに木曾のヤツが建造を強行して」
明石「…………」
提督「……明石ー?」
明石「…………」
提督「気絶してる……」
…………
夕張「軽巡の夕張です」←建造でできた子
夕張「寝込んでしまった明石先輩の代わりに開発方面を担当することになりました」
提督「うむ、すまんがよろしく頼む」
提督「じゃあ俺は釣りに行ってくる」
夕張「はあ、釣り?」
提督「うむ、調子に乗ったせいで建造ができなくなっちまったからな」
提督「何かあったら、大淀に言ってくれ」
夕張「わ、わかりました」
夕張「……あの、大淀さん」
大淀「何でしょうか」
夕張「その……本当に釣りで艦娘が釣れるんですか?」
大淀「釣れてしまいます」
夕張「……釣れてしまうんですかー……」
海上
提督「それじゃあ釣りを始めるぞー」
球磨「クマー」
吹雪「壊れるくらい建造したのに、いつものメンバーですね」
提督「うむ、今回はお前らの釣りの腕を見たいと思ってな」
提督「今回の様子を見て、良かった人には今後釣りを教えようと考えている」
提督「建造が使えなくなった以上、釣りできる人数は多いことに越した事はないからな」
多摩「なるほどにゃ」
木曾「で、何を釣るんだ? いつも通り当てずっぽうか?」
提督「今回はとある艦種を集中的に釣ろうと思う」
提督「そこでアドバイザーを連れてきた」
提督「今回の建造でできた唯一の空母である龍驤だ」
龍驤「龍驤や、よろしくお願いするでー」
大井「よろしくお願いしますね」
北上「てことは、今回釣るのは空母?」
提督「そうだ」
提督「では先生、アドバイスをお願いします」
龍驤「誰が先生やねん、まあいいけど」
龍驤「てゆーか、アドバイスっていうほどでもないんやけどな」
龍驤「空母ならボーキサイトをエサにすれば簡単に釣れると思うで」
提督「アドバイス終わり!」
吹雪「え、終わり?」
提督「じゃあ頑張ってねー、俺も釣るから」
球磨「よし! この前散々馬鹿にされたから見返してやるクマ!」
多摩「まー、のんびりとやるにゃ」
釣り開始
球磨「……」ソワソワ
球磨「ぅー……」
北上「落ち着きなよ球磨姉」
球磨「そう言われても……ぬー、早く来い来い」ソワソワ
多摩「やっぱり落ち着きが無いにゃ」
木曾「多摩姉、引いてるぞ」
多摩「えっ? あっ、あー……逃げられたにゃ」
球磨「のんびりすぎるのも考えものだクマ!」
多摩「何得意げになってるにゃ」
北上「そーそー、やっぱりのんびりやった方が」
大井「北上さん引いてる!!!」
北上「んえ? お、おう、来てるね」
大井「いいわ! 北上さんその調子! いける!」
北上「う、うん」
大井「そこ! 北上さんそこ! もう少しよ!」
北上「わかってるよ」
大井「きてる!きてる! もうすぐ!!」
北上「ぬぬぬ…………あっ」
大井「あーーーーー!!! 逃げた! こんにゃろう!」
大井「せっかく北上さんが釣ろうとしてあげてたのに! なんて失礼な奴!」
木曾「大井姉うるさいよ……」
多摩「北上はのんびりできそうにないようにゃね」
北上「お、大井っち、程々にね……」
吹雪「……」
吹雪「お、来た、せーの!」グイ
ザパァンッ
吹雪「やった! イワシだ!」
球磨「おお……吹雪、やるクマね」
木曾「えっ、ボーキサイトで普通の魚が釣れるのか……?」
提督「あっちは盛り上がってるなー」
龍驤「なー」モシャモシャ
龍驤「というか、ホンマに艦娘が釣れるとは思っとらんかったわ」チラッ
赤城「ボーキサイトは空母を罠に嵌めるために大量に使われた歴史があります」
赤城「なので私が釣られてしまった事は、決して慢心などではございません、決して」ブツブツ
龍驤「そんな歴史聞いたことあらへんよ……」モシャモシャ
提督「開始して2分で釣れるとは思わんかったのでびっくりした」
提督「ところでお前は何食ってんだ」
龍驤「オキアミ」モシャモシャ
提督「食うなよ、それ釣りエサだぞ」
龍驤「あーごめんごめん、つい手が伸びてしもうて」
提督「全く……しかしなんだ、お前もオキアミいけるんだな」
提督「建造で造られた子は総じてオキアミが苦手らしいんだが」
龍驤「そうなん? うちは結構好きなんやけどな」モシャモシャ
提督「だから食うなって」
提督「(龍驤を建造した時、資材にオキアミが混入したせいかな……)」
…………
龍驤「結果発表ー!」
吹雪「いつから勝負形式になったんですか?」
龍驤「艦娘チーム、イワシ4匹と駆逐艦1人」
雪風「しれぇ!」
吹雪「ちなみに釣ったのほとんど私です」
提督「お前ら……」
球磨「やっぱり体動かさないとダメクマ、釣りは性に合わんクマ」
多摩「なんかエサばっかり取られるにゃ……」
北上「惜しいとこまではいくんだけどさー、なんか直前で逃げられるんだよね」
大井「北上さんの方ばかり気になってしまって」
木曾「俺は頑張ったんだぞ、イワシ1匹ぽっちだけど……」
提督「唯一釣れた艦娘も空母じゃなくて駆逐艦じゃねえか」
雪風「しれぇ!」
吹雪「……」
球磨「その駆逐艦は、異様に吹雪に懐いてるクマ」
多摩「さすが副司令官だにゃ」
雪風「しれぇ! しれぇ!」
提督「えらいくっついてんな、カルガモかなにかか?」
吹雪「さ、さあ……」
龍驤「対する司令官は、イワシ9匹、空母2人、軽空母3人、駆逐艦1人」
木曾「多いな!?」
赤城「慢心ですって……? 認めません、私は認めません」
加賀「ボーキサイトで罠に嵌めたと聞きました。これは冷静な私と言えども、頭に来ました」
鳳翔「ああ、釣られてしまうなんて、お恥ずかしいです……」
瑞鳳「食べりゅ……」
隼鷹「酒無い?」
時津風「しれー」
提督「こんなにたくさん釣れるんなら、もっと早くボーキサイトで釣ればよかったな」
時津風「しれーしれー」ギュ
吹雪「えっ、ちょ」
提督「はは、懐かれたな」
吹雪「なんで?」
木曾「副司令官だからだな」
吹雪「そんな理由で??」
雪風「しれぇ! しれぇ!」
時津風「しれー! しれー!」
吹雪「うわっ、やかましっ!」
提督「よし帰るか、その駆逐艦2人はお前が面倒見てやってくれ」
吹雪「ええ!?」
数日後
提督「ぬおおおあ」
大淀「ぐえぇ」
球磨「どうしたクマ、二人してぐったりして」
提督「ああ、この前の建造でたくさんの艦娘を確保出来ただろ」
提督「それで大本営からもいっぱしの戦力と認められたみたいでな」
提督「本格的な任務がすごく増えたんだよ」
大淀「それによって出撃回数が増えて、他にも遠征もできるようになって艦娘ごとの弾薬燃料管理とかも人数分増えて」
大淀「おかげで処理すべき書類も増えすぎまして大変なんですよ」
大淀「はあ……やっと出撃が無くなって事務に専念できるようになったらこれですよもう」
球磨「まあ、優秀な艦娘が増えたおかげで球磨もいくらかは楽できるようになったクマ」
提督「そりゃ丁度いいや、暇ならこっち手伝え」
球磨「ええー、仕方ないクマねぇ」
提督「そして俺は釣りに行く」
球磨「は? それはちょっと通らないクマ」
提督「えー、俺もう疲れたよ」
提督「海で波に揺られたい気分なんだよ今は」
球磨「行くんだったら球磨も行くクマ」
提督「よし、一緒に行くか」
球磨「よし来たクマ!」
大淀「おい待て」
提督「安心しろ大淀、俺は抜かりないのだ」
ガチャ
吹雪「司令官、用事ってなんですか?」
雪風「しれぇ」
時津風「しれー」
提督「吹雪隊を呼んでおいた」
吹雪「え、吹雪隊って何」
大淀「ああ、副司令官なら安心ですね」
吹雪「前から疑問だったんですけど、いつから私は副司令官になったんですか?」
提督「じゃあ、あとは任せた!」
球磨「行ってくるクマ!」
吹雪「はあ? ちょっと、おい!」
大淀「では吹雪さん、こっちの書類をお願いします」
吹雪「えぇー……私だって暇じゃないんですけど」
大淀「何やってたんですか?」
雪風「私達3人で大富豪やってました」
時津風「聞いてよ、何回やっても雪風にばっかりジョーカーがいくんだよ、おかしいよね」
吹雪「あれ、あなた達普通に喋れたの?」
雪風「しれぇー」
時津風「しれーしれー」
吹雪「……」
大淀「暇してたんですね、じゃあお願いします」
吹雪「ふぇぇ……」
海上
提督「じゃあ釣るか」
球磨「クマ」
提督「お前釣りは性に合わないんだろ、一緒に来てよかったのか?」
球磨「人がやってるのを見てる分には問題無いクマ」
提督「そか」
球磨「クマ」
提督「そういや、お前と二人きりになるのは随分久しぶりな気がするなあ」
球磨「んーと……思い返せば、漁師時代以来だクマね」
提督「マジで?」
球磨「マジクマ」
提督「はー、そんな昔なのか」
球磨「そうクマー、出撃出撃ばっかりで全っ然時間が取れなかったクマァー」
提督「不貞腐れんなって」ポンポン
球磨「や、やめるクマー、髪が乱れるクマ!」
提督「このアホ毛どうなってんの? 前から気になってたんだけど」
球磨「クマー、それセットに時間がかかるんだクマ!」
提督「セットしてんだこれ!」
球磨「球磨のアイデンティティだクマ!」
提督「あ、サバ釣れた」
球磨「おぉー」
提督「……」
球磨「……」
提督「アイデンティティだって?」
球磨「そうクマ、球磨のチャームポイントだクマ」
提督「お前はクマクマ言ってるだろ、それはアイデンティティじゃないのか」
球磨「確かに最初はキャラ付けのためにクマクマ言ってたクマ」
提督「キャラ付けだったのかよ」
球磨「そうクマ、しばらくして流石にクドイかなーって思ってこの語尾を止めようと思ったクマけど」
提督「けど?」
球磨「すっかりクセになってしまって、直そうと思っても直らんのだクマ」
提督「ほう」
球磨「なので、語尾を矯正するのは後回しにして、まずは他のアイデンティティを模索中だクマ」
提督「……どうなんだそれは」
球磨「でもそのうちちゃんと矯正はしたいと思ってるクマ」
提督「あ、サバ2匹目釣れた」
球磨「おぉー」
提督「……」
球磨「……」
提督「ちゃんと矯正したいって?」
球磨「そうクマ」
球磨「今の状態だと、どうにもイロモノ扱いされてしまうんだクマ」
提督「おめーら姉妹全員が大概じゃねーか」
球磨「それはこの際置いておくクマ」
球磨「実際のところ、やれゆるキャラだの、やれリラックスできるだの、やれ蜂蜜キメてるだの」
球磨「散々な言われようだクマ」
提督「はあ」
球磨「これでは威厳も何もあったもんじゃないクマ!」
提督「俺は今のままでもいいと思うけどな」
球磨「クマ?」
提督「あ、サバ3匹目」
球磨「おぉー」
提督「……」
球磨「……」
球磨「今のままでもいいって?」
提督「おう」
提督「なんつーか、球磨は球磨のままでいる方が球磨らしいというか」
球磨「意味わからんクマ」
提督「そー言われてもなー、元漁師だからよー、言葉がこう、うまく出ねーんだよ」
提督「とにかくだ、球磨はクマクマ言ってる方が球磨らしいってことだよ」
球磨「クマクマクマクマ言い過ぎだクマ」
提督「そんなに言ってないクマー」
球磨「真似すんなクマー!」
提督「はっはっは」ポンポン
球磨「むーーー……」
球磨「……まあ提督がそう言うなら語尾はこのままにするクマ、イマイチ腑に落ちないけど」
提督「おう、人間無理しない程度が一番だ」
球磨「艦娘って人間なのかクマ?」
提督「うーん……考えてみたら、海で釣れる時点で人間じゃないな」
球磨「それもそうだクマね」
提督「4匹目」
球磨「お、今までよりデカいクマ」
提督「……」
球磨「……」
提督「しかし困った」
球磨「どうしたクマ?」
提督「吹雪に仕事を押し付けてきた手前、何か艦娘が釣れなきゃ怒られちまう」
球磨「あー、吹雪も暇してたみたいだから別にいいと思うクマけど」
提督「いや、吹雪のことだから絶対ネチネチ言ってくる」
提督「あいつ、お前ら姉妹に揉まれまくったせいですっかりひねくれちまったんだよ」
球磨「球磨達のせいにすんなクマ、絶対提督の方に原因があるクマ」
提督「俺ぇ? 俺が何したってんだよ」
球磨「じゃあ球磨達が何したっていうクマ」
提督「……」
球磨「……」
提督「大本営が悪いな」
球磨「そうクマね、建造できない鎮守府によこしたのが元凶クマ」
提督「そのせいでハードスケジュールになったからな、そりゃ歪むわな」
提督「はあ、釣れねーかなー」
球磨「そう簡単に釣れないと思うクマ、今までがうまくいきすぎたクマ」
提督「だよなー」
提督「ちょっとお前海ん中潜って獲ってきてよ」
球磨「アホ言うなクマ、提督こそたまには身体動かすクマ」
提督「おい押すなよ」
球磨「ほら行くクマー」グイ
提督「お前が行けお前が」グイ
球磨「やめるクマー!」
提督「お前こそやめろよ!」
球磨「クマァァー! あっ」ズルッ
提督「あちょ、引っ張んな、うわっ」ズルッ
ドボォン
吹雪「……で、二人で海に落っこちてずぶ濡れになったと?」
提督「いやあ、はは……面目ない」
球磨「いや、球磨は艦娘だしずぶ濡れになっては」
吹雪「一緒に落ちたんでしょうが」
球磨「く、クマ……」
提督「まあそのなんだ、サバあげるから、ほら」
提督「鳳翔さんに頼めばシメサバにしてもらえるから」
雪風「やったぁ」
時津風「わぁい」
吹雪「あのですね、そんなんで許す私じゃあ……」
提督「な? こいつらに免じて、な?」
雪風「しれぇ」
時津風「しれー」
吹雪「いやいや、免じてってなんですか免じてって」
吹雪「はあ……まあいいですけど」
提督「うっしゃ」
大淀「提督、まだ書類残ってますよ」
提督「うええええぇぇぇ」
寝る
書き溜めが尽きたから更新頻度が減るっす
数日後
提督「うーむむ」
多摩「うにゃあー」
大淀「どうしたんですか提督?」
提督「大本営からの伝達でな」
提督「内容はまだ分からんが、他鎮守府と合同の大きな作戦を考えているらしい」
大淀「ふむ」
多摩「にゃん」
提督「その時まで戦力を整えておけ、とのことだが……」
提督「この前建造でできた戦艦2人とこの前釣れた正規空母2人でなんとかなるかな?」
大淀「艦隊の人数にすら達してないじゃないですか」
大淀「それに大規模作戦となると、連合艦隊が必要になると思いますよ」
多摩「にゃうー」
提督「連合艦隊?」
大淀「簡単に言うと、艦隊2つ分です、12人」
提督「12人とな」
提督「えーと、将来性を加味して、今は……何人になるかなあ」
大淀「今現在だと」
提督「さっき言った4人」
大淀「ダメですね」
提督「まず数の確保だよなあ」
多摩「にゃあ、にぃゃあー」
提督「ところでさ」
大淀「はい」
提督「この猫はなんだ」
大淀「なんでしょうね、この猫」
多摩「猫じゃないにゃ」
提督「猫だろ」
多摩「違うにゃ」
大淀「この前身をかがめながら移動してると思ったら、ネズミを追いかけてましたよ」
大淀「穴の中に逃げ込まれて、本人は壁に頭ぶつけてましたが」
多摩「み、見てたのにゃ?」
提督「やっぱり猫じゃないか」
多摩「違うって言ってるにゃー」
提督「ほれ」スッ
多摩「むっっ……」ピク
提督「ほれほれー」
多摩「ぬ、ぬぬぬ……」
大淀「(猫じゃらし……)」
多摩「ふっ、ふっ!」バッ
提督「おー」
多摩「……はっ、思わず手が」
提督「ほーれ、ほーれー」
多摩「じゃらすってば! うぅー」
大淀「遊ぶのは程々にして、仕事してくださいねー」
提督「わかった、ちょっと釣りしてくる」
大淀「何故そうなる」
提督「戦力増強は優先事項である、違うこと言ってる?」
大淀「違いませんけど、目の前の仕事を放り投げてまですることじゃないですよね」
提督「それはほら、そこに寝転がってる奴に任せればいいだろ」
多摩「うにゃ?」
大淀「はあ、代役がいるなら構いませんが」
多摩「いや、ま、待つにゃ! 多摩はこれから大事な用があるんにゃ!」
提督「そんな大事な用を任せた覚えは無いぞ」
多摩「じゃあほら! 吹雪にでも任せたらいいにゃ、副司令官だし」
提督「いやあでも、吹雪にばっかり押し付けるのは流石に悪い気がするんだよな」
多摩「さっき吹雪隊のみんなでジェンガやってたにゃ、お姉ちゃんも一緒だったにゃ」
提督「おう大淀、あいつら呼び出して仕事手伝ってもらえ」
大淀「了解しました」
海上
提督「つーわけで、始めるか」
多摩「にゃ」
龍驤「おー」
瑞鳳「はい」
提督「おめーらはなんで来たんだ」
多摩「魚が食べたい気分なのにゃ」
提督「やっぱり猫だろ」
多摩「違うにゃ」
龍驤「あのな? 隼鷹が酒飲んで手ェつけられなくなったんや」
提督「日が出てるうちから飲んでんのかあいつ」
龍驤「なんか建造でできた重巡の……えーと、那智? って人と意気投合してもうて」
瑞鳳「鳳翔さんを犠牲に、おっと、鳳翔さんが私達を逃がしてくれたんだけど」
提督「鳳翔さんも大変だな……お前らのせいで」
瑞鳳「それで、何を釣るんですか?」
提督「戦力増強したいから、戦艦か正規空母を釣りたいなあ」
龍驤「正規空母かあ、確かにうちら軽空母じゃ力不足かも知れへんけど」
提督「いやいや、お前らには随分助けられてるんだよ、玉子焼きうまいし」
瑞鳳「あ、えへへ」
龍驤「せやせや、あれ食べたらほっぺた落ちたでぇ」
提督「あのセリフ言ってあのセリフ!」
瑞鳳「あ、あのセリフですか?」
龍驤「あーあれな、うちも聞きたいわあ」
瑞鳳「し、仕方ないなーもう、にへへ」
瑞鳳「それじゃあ、ゴホン」
瑞鳳「玉子焼き、食」
提督「あ、来た」
龍驤「お、何釣れるん?」
提督「結構でかいぞこれ、そら」グイ
多摩「おお、大きいにゃ!」
龍驤「カツオやないか! ええもん釣ったな!」
提督「どんなもんよ」
瑞鳳「聞けよ!」
瑞鳳「ぶー、いいもんいいもん、私も釣りするもん! ぷんすか!」
龍驤「じゃあうちも釣ろーっと」
多摩「多摩はカツオを食べるにゃ」
提督「お前魚捌けるの?」
多摩「あっ、あー……」
提督「……」
多摩「……そのままかぶりつくにゃ」
提督「猫」
多摩「だから違うって言ってるにゃ」
多摩「ぶー、仕方ないから帰るまで我慢するにゃ」
提督「お前は本当に何しに来たんだ……」
多摩「にゃんだっていいでしょー」
提督「……」
多摩「……」
提督「……」
多摩「……ぉー」キョロキョロ
提督「……」
多摩「あそこ! あそこに魚いるにゃ」
提督「どこだよ」
多摩「あそこにゃ!」
提督「あそこ言われても分かんねえよ!」
多摩「むー! 提督は目が悪いにゃ!」
提督「俺は視力両方1.5だよ! お前が指す方向が大雑把なの!」
多摩「だからあっちにゃ!」
提督「あっちの、どこ」
多摩「あっちのあそこら辺」
提督「あっちのあそこら辺の……どこ」
多摩「あっちのあそこら辺のあのあたりにゃ」
提督「あっちのあそこら辺のあのあたりか、ふむ」
提督「わかるわけねえだろ!」
提督「はぁーもういいよ、指し示さなくてもいいから、お前ずっとそっち見てろ」
提督「俺は俺で好きにやる」
多摩「ちぇー、提督とはそりが合わんにゃ」
提督「……」
多摩「……ぉ、来た、来た」
提督「……」
多摩「そーっと……」
多摩「ふんっ!」バシャッ
提督「わぶっ!?」
多摩「あ、この、逃げんにゃ!」バシャバシャ
提督「てめえ横で飛沫立てんな! かかってんだろ!」
多摩「魚がすぐそこまで来てたのにゃ! 提督のせいで逃げられたにゃ!」
提督「俺のせいかよ! お前がバシャバシャやるからだろ!」
龍驤「あっちは賑やかやな」
瑞鳳「そうだね……あっ」
瑞鳳「来た、かかった!」
龍驤「お、頑張れ!」
瑞鳳「おりゃー!」グイ
ザパァン
瑞鳳「…………」
龍驤「…………」
瑞鳳「……ひ、ヒラメ……」
龍驤「……」
提督「あ、なんか釣れた?」
瑞鳳「……」チャポン
提督「あ、逃がしたの? ねえ何釣れたの?」
瑞鳳「何でもないよ」
提督「何でもないって言われても、気になるなあ」
龍驤「ええから、多摩の相手でもしとき」
提督「あいつなー、さっき水かけてきやがってさあ」
提督「そしたらさ、魚が逃げるだろって、どっちが逃がすようなことしてんだよって話で」
瑞鳳「もう! 提督うっさい!」
提督「(´・ω・`)」
瑞鳳「全くもう……」
龍驤「オキアミつまむ?」
瑞鳳「食べりゅ」
龍驤「ほい」
瑞鳳「ありがと」
龍驤「……」モシャモシャ
瑞鳳「……」モグモグ
グイ
龍驤「……お、来た? 来た!」
瑞鳳「え、来たの?」
龍驤「おおおー! 来てるで! この引きは大物や!」
瑞鳳「頑張って!」
龍驤「おりゃあ!」グイ
ザパァン
大鳳「むぐう!!」ジタバタ
龍驤「……」
瑞鳳「……ぉ、ぉぅ」
大鳳「む、むぐ」ジタバタ
提督「ん、また釣れた?」
多摩「おー、艦娘にゃ! やるにゃ!」
大鳳「むぐむぐ」ジタバタ
提督「お?」ジー
龍驤「……なんや」
瑞鳳「何見てるの」
大鳳「んんんー」ジタバタ
提督「……何でもないよー?」
多摩「似たようなの釣ったなって思ってるにゃ」
提督「ばっ、ばばば馬鹿言うんじゃないよ!」
瑞鳳「提督、何持ってるんですか?」
提督「え? 何って、まな板……ほあ!?」
龍驤「よし、蹴落とせ」
提督「待って違うの! これはカツオを捌いてやろうと思って、決してお前らのことまな板って思ってるわけじゃ」
瑞鳳「私が裁いてやります!」ドンッ
提督「誘導尋問だー! あぁー!!」ザブゥン
龍驤「悪は滅んだ、また一つ海が平和になったな」
大鳳「むぐー!(降ろしてください!)」ジタバタ
翌日
北上「提督ー、釣り行かない?」
提督「行かない、ズズ」
北上「え?」
提督「1週間は行かない、ズズッ」
北上「えー、なんでさ」
提督「最近、釣りに行くとさあ、ズズ、いつも海に落とされてんだよ」
提督「おかげで鼻風邪引いたよ、ズズッ」
北上「通りで鼻すすってると思った」
提督「そういうわけだから、ズズ、しばらく行かない」
大淀「そうですね、少しは真面目に事務もこなしてください」
大淀「提督が目を通さないといけない書類もあるんですから」
大淀「あと鼻かんでください」
提督「すまん、ズビーッ! ふぅ」
北上「風邪じゃあ仕方ないかー」
提督「お前はなんで行きたいんだ」
北上「聞いてよ、大井っちが最近激しくてさー」
提督「最近激しい、ほう、激しい?」
北上「いや変な意味じゃないからね?」
北上「ほら、吹雪隊の雪風と時津風いるじゃん」
提督「ああ、吹雪に異様に懐いてる奴らな、ズズ」
北上「アレを見習って、大井っちがベタベタしてくるんだよね」
北上「流石に煩わしいんだけど、大井っちが聞いてくれなくて」
提督「ズズ」
北上「だから少し距離を置きたいんだよ」
提督「わかった、大井は今度の遠征に組み込んで……ズビーッ、組み込んでおこう」
北上「おおー、提督話わかるー」
コンコン ガチャ
夕張「失礼します」
提督「おー夕張、どした?」
夕張「えっとですね、ズズ、聞いてもらいたいことが、ズズ、ありまして」
夕張「ズズ……すみません、ティッシュください」
大淀「はい」
夕張「ありがとうございます……ズビーッ!」
提督「鼻どうした?」
夕張「ああ、ちょっと倉庫で探し物をしてたら、ホコリがすごくて」
夕張「そのおかげで、鼻がやられて……ズビーッ」
提督「なるほどな、俺も今、ズズ、鼻風邪引いててな、ティッシュ」
大淀「はい」
提督「サンキュ、ズビーッ」
夕張「あー、提督もなんですね」
提督「で、聞いてもらいたいことって?」
夕張「はい、あのですね」
夕張「明石先輩が部屋から出てこなくて」
提督「あーーー……明石か……」
北上「あれからずっとだよねぇ」
夕張「ご飯は食べてるみたいなんですけど、ズズ」
夕張「ティッシュください」
大淀「私はティッシュ係ですか」
夕張「ズビーッ」
提督「あれなあ、どうするかなあ」
北上「この前も提督が行ってたけど、ダメだったみたいだしね」
大淀「提督が叫んでたあれですか」
夕張「『明石ー!! 俺だー!! 出てきてくれー!!』でしたっけ」
提督「大声出して注目集めたら、目立ちたくない心理で俺を黙らそうとするために、ズズ、出てきてくれるんじゃないかと思って、ズズ」
大淀「逆に恥ずかしくて出てこれないですって」
提督「うん、ドアの隙間からスパナ投げつけられた、ズズ」
北上「いやあ、見事なタンコブだったよね」
提督「うまく帽子の中に隠れてよかったよ……ズズ」
夕張「とすれば……ズズ、建造機材を修理するしかないですかね」
提督「ふむ、そうしたら明石も出てきてくれるか……ズズ」
夕張「あれ、すごく複雑な作りだったから今まで手がつけられなかったんですけど」
夕張「倉庫漁ってたら設計図が見つかったので、ズズ、何とかなると思います」
提督「なんで設計図を倉庫に置いてるんだ……ズズ」
夕張「それじゃあ、修理する方向でいいですか?」
提督「うん、まか、ズズ、任せるよ」
夕張「わかり、ズズ、わかりました」
大淀「二人共鼻かんでください、ほらティッシュ」
夕張「すみません、ズビーッ、それでは失礼します」
提督「よし」
提督「修理するとこ見てくるか」
北上「あたしも行ってみよーっと」
大淀「書類」
提督「鳳翔さんのとこで、ズズ、隼鷹とかが呑んでるだろうからそこから何人か救出してきて」
大淀「みんな酔い潰されてると思うので使い物になりませんよ」
提督「じゃあ吹雪隊でいいや」
大淀「わかりました」
北上「扱いがテキトーだよねぇ……」
大淀「ああそうだ、北上さん」
北上「ん?」
大淀「はい、ティッシュ」
北上「あー……私がティッシュ係ね、そうね」
工廠
夕張「じゃあこれから直すんですけど」
夕張「何が原因で壊れたんですか?」
提督「資材にオキアミが混入して、ズズ、そのまま建造したら煙吹いて炎上した」
夕張「ふむ、それじゃあ、そこら辺を修理すれば……ズズ」
北上「見るからに無理だよね、全体が錆び付いてるもん」
提督「消火するのに海水使ったからなあ」
夕張「えぇ、海水って……ズビーッ」
北上「てかさあ、修理するより一から作り直した方が早くない?」
夕張「一から作る? うーん……」
夕張「諦めましょう! こんなの私じゃ作れません!」
提督「短い夢だったな……ズズ」
北上「これ直れば釣りする手間も無くなったのにね」
提督「お前がオキアミを混ぜたせいだぞ」
北上「違うよ、木曾が建造を強行したせいだよ」
提督「そうか木曾か、そうだな」
夕張「まあ元々は明石先輩を部屋から出す話ですし」
夕張「修理以外で、ズズ、何か考えてみましょう」
提督「そうだなあ、出すだけなら何とかなるかもしれんな」
夕張「本当ですか?」
提督「俺が明石の部屋の前で、ズズ、大声で叫ぶだろ」
北上「前と同じじゃん」
提督「そこがキモだ」
提督「俺が叫ぶと、俺をだま、ズズ、黙らせようとするために明石がスパナか何かを投げつけようと」
夕張「ああ、その時ドアを開けますね」
提督「そう、そこを狙って引きずり出す」
北上「引きずり出すんだ」
提督「その後は知らん」
夕張「重要なのはそこからですよね? ズズ」
提督「そんなのその時に考えればいいだろ、行くぞ」
部屋の前
提督「じゃあ俺が叫ぶから、手筈通りにな」
北上「うん」
提督「おー」
ガチャ
ゴンッ
提督「おあ゛ッッ」
明石「ん? あぁすみません、ドアの前にいるとは思わなくて、ズズ」
提督「ぉあぁ、鼻がっ」
北上「思いきりドアにぶつかったね……」
明石「何か用ですか?」
夕張「明石先輩が部屋から出てこないので、ズズ、心配してたんですよ」
明石「あー、それは御心配おかけしました、ズズ」
北上「鼻どうしたの」
明石「ちょっと鼻炎みたいで……ズズ」
北上「あー、そりゃ大変だね」
提督「あーいて……部屋でなんかやってたの?」
明石「ちょっとですね、ズズ、艦娘のさらなる改造についてあれこれやってて」
提督「さらなる改造? ……ズズ」
明石「そうです、多くの場合は改二と呼ばれてて、まあこれ自体はほか、ズズ、他の鎮守府でも普通に行われてることなんですけれども、ズズ」
明石「私が部屋に引きこもっズズ、引きこもって行った研究の結果」
明石「改造に必要な資材を大幅に抑えることができます、ズズ」
提督「ほう! 資材を抑えるとな」
北上「……ん?」
北上「うち、建造してないからその分資材余って」
明石「黙れ」
北上「えっ……は、はい、ごめんなさい」
明石「他にもですね、その研究の副産物が、ズズ、ありまして、実際のところそっちが重要ですね」
提督「副産物? ズズ」
夕張「なんでしょう……ズズ」
北上「その前にみんな鼻かみなよ、ほらティッシュ」
提督「すまん」
夕張「ごめんなさい」
明石「すみません」
明石「ズビーッ! えーと、なんでしたっけ」
北上「副産物」
明石「そう、研究の副産物なんですが」
明石「他の鎮守府の記録によると、改二になるためには一定の練度が必要になるんですが」
明石「この必要練度に達していなくても、改二に改造することが可能なんです!」
提督「必要練度が無くても改二に?」
明石「そう、例えば北上さん」
北上「あたし?」
明石「今すぐ改二になれます」
北上「え、マジで」
明石「マジです、ズズ」
提督「やったじゃん、戦力増強だぜ」
北上「でもさー、なんか怖くない? その改造」
明石「安心してください」
那珂改二(練度22)「那珂ちゃんだよ! もっと素敵になっちゃった! きゃは♪」
明石「この通り、成功しました」
北上「マジじゃんこれ、うわーすごいなー」
夕張「すごい! これすごいですよ! ズズ」
提督「明石やるじゃん! ありがとう! ズズ」
明石「いえいえそんな、ズズ」
那珂改二「あっ、またこのパターンなんですね」
提督「それじゃあ、早速北上を改造するか」
北上「うん、ちょっとドキドキするね」
明石「それでは北上さん一名、ごし、ズズ、ご招待ー」
北上「え、そういうノリ?」
那珂「今日のロケ弁はノリ弁当でした」
夕張「明石先輩の部屋で改造するんですか? ズズ」
明石「改造道具は今ここに置いてますからね」
明石「あ、提督はここで、ズズ、待っててくださいね、男子禁制ですよ!」
提督「そうか、一緒に行こう」
夕張「そういうノリはいらないです」
提督「あ、はい、わかりました、ズズ」
那珂「昨日のロケ弁もノリ弁当でした」
明石「ではでは、少しお待ちくださいねー、ズズ」バタン
提督「……」
那珂「……」
那珂「(提督と2人きり! これはチャンス!)」
那珂「(ここで那珂ちゃんの存在をアピールするぞぉ!)」
那珂「提と」
明石「できましたよー」ガチャ
那珂「早ッ!? そういえば私の時も早かった!」
北上改二「やあやあ、スーパー北上様だよー」
提督「おー、服装変わったな」
北上改二「うん、力がみなぎってくるよ、生まれ変わった気分だね」
提督「これからも期待してるぞ、ズズ」
北上改二「任しといてよ、だから鼻かんでね」
提督「ズビーッ、えーと、当初の目的も達したし、戻るかな」
北上「そだね」
大井「素敵なことがあったと直感が告げたので」ニュッ
提督「おう大井、どこから湧いた」
大井「北上さっ……」
北上改二「やー大井っち」
大井「」ズギュウウン
大井「北上さん何それカッコイイ!!!」ガバッ
北上「うおお!?」
大井「ねえ持ち帰ってもいいですか! 持ち帰りますね!」
提督「え、あ、はい」
明石「あ、大井さんも改造し」
大井「ひゃっほう!」ビューン
北上「うわああぁぁぁ……」
明石「……行っちゃった」
夕張「息をつく間も無かったですね、ズズ」
明石「そうだ夕張さん、改造道具を、ズズ、工廠に持っていくから手伝ってくれます?」
夕張「はい、わか、ズズ、わかりました」
夕張「それでは提督、私はここで」
提督「おー」
バタン
提督「1人になったなー」
那珂「…………」
提督「……ズズ、戻ろ」
提督「吹雪のやつ怒ってないかなー」スタスタ
那珂「……」
那珂「那珂ちゃんスマイルゥ!」
那珂「…………はぁ」
数日後
球磨「クマー……」
多摩「にゃー……」
球磨「クマーーーーー」
多摩「にゃーーーーー」
球磨「クマァァァァーーーーー!!」
多摩「にゃぁぁぁぁーーーーー!!」
大井「うわっ、執務室に入った途端に姉2人がうるさい」
球磨「ん? 大井クマか、球磨は今、少し虫の居所が悪いけど何か用クマ?」
大井「球磨姉さんと多摩姉さんが事務仕事なんて、珍しいわね」
球磨「クマ、これにはわりと込み入った事情があるクマ」
多摩「この前、提督と多摩とで釣りに行った時、大鳳っていう装甲空母の艦娘が釣れたのにゃ」
大井「あー、そういえば増えてたわね」
多摩「その子、どうやらかなり珍しい艦娘らしいにゃ」
多摩「それで、どうやって釣ったんだと大本営に呼び出しくらったのにゃ」
大井「ああ、それで提督がいないのね」
大井「いつも事務仕事してる大淀さんは?」
球磨「提督から風邪を移されてダウンしたクマ」
多摩「鼻水とくしゃみがひどかったにゃ」
大井「こういう時に毎回仕事を丸投げされる吹雪隊は?」
多摩「吹雪隊は提督から釣りを命じられたにゃ」
球磨「球磨達より釣りの腕があるからだってさクマ、失礼しちゃうクマ」
大井「ああ、それで事務仕事に回されて球磨姉さんは気が立ってるのね」
球磨「いーや、それは些細な問題クマ、球磨が怒ってるのはもっと別のことクマ」
大井「え?」
多摩「明石がなんか改二になれる研究してたのは知ってるにゃ?」
大井「もちろん知ってるわ、北上さんが改二になってさらに魅力的になってたもの」
球磨「…………」
球磨改「球磨は改二になれなかったクマ……」
大井改二「……あー、そういう事……」
多摩「お姉ちゃんはまだいい方にゃ、多摩は色々な面ですっかり置いてきぼりにゃ」
球磨「腹いせに2人で木曾の黒マントをバカにしてやったけど、まだまだ怒りが収まらんクマ」
大井「通りで木曾が涙目になってたわけね」
球磨「それで、えーと、大井は何の用でここに来たクマ?」
大井「北上さん知らない?」
球磨「北上は今出撃中だクマ」
多摩「この前の建造で出来た戦艦2人も改二になったから、一緒に試運転に行ってるにゃ」
球磨「(腹いせにとびきり難しい海域に出撃させたのは大井には黙っておくクマ……)」
多摩「そうだ、提督が大井に遠征の予定を入れてたにゃ」
多摩「行ってくるにゃ」
大井「えー、遠征? 北上さんとしばらく会えないじゃない」
多摩「知らんにゃ」
大井「知らん、じゃないわよ! 重要よ!」
多摩「そんにゃこと言われても……」
球磨「しょうがないクマ、ほれ」ピラ
大井「何これ」
球磨「カップルに人気のある遊園地のペアチケット」
大井「ッ!」バッ
球磨「おっと」サッ
大井「ちっ……」
球磨「遠征から帰ってきたらあげるクマ」
大井「……遠征の内容は」
球磨「指令書やるクマ、目を通しとくクマ」
大井「さっさと終わらせて来るから、そのチケットしっかりとっておきなさいよ!」
球磨「いってらっしゃいクマー」
多摩「(ちょろいにゃ)」
多摩「ところでそれ、どこで手に入れたにゃ?」
球磨「提督の机の引き出しに入ってたクマ、何故入ってたかのは知らないクマ」
多摩「勝手に引き出し開けるのかにゃ……」
大井「ええと、遠征のメンバーは……」
赤城「どうも、よろしくお願いします」クチャクチャ
加賀「よろしく」クチャクチャ
大井「あなた達ね、よろしくね(ガム噛んでる?)」
不知火「不知火です」←建造組
ヴェールヌイ(以下響)「ヴェールヌイだよ」←建造組
「「二人合わせてぬいぬいです」」
大井「……は、はあ」
響「私がさらなる改造でヴェールヌイになったから、コンビを組んでみたんだ、ウラー」
大井「そ、そうですか」
大井「ところで、そちらの二人はなんでガム噛んでるんですか?」
不知火「放っておくとオキアミをガンガン食べるので、落ち着かせるためにガムをあげました」
響「それでも何回かガムを飲み込んでるんだよね」
大井「(どんだけ食い意地張ってるのよ)」
赤城「食べます? オキアミ」
大井「あ、じゃあ一つ」ヒョイ
不知火「え……」
大井「?」モグモグ
不知火「オキアミ、食べるんですね……」
大井「ああ、あなた達建造組だからオキアミは苦手なのね」
不知火「ええ、こればかりは落ち度ではありません」
響「ニェ ヌラーヴィッツァ……好きになれない」
大井「指令書によれば、遠征メンバーはこの5人で全員のようね」
響「へえ、5人なんだね」
大井「……私が旗艦にされてるわね、まあいいけど」
大井「にしても、空母が必要な遠征かあ……ええと、指令書には」
大井「……補給路の確保、ねえ」
不知火「補給路の確保?」
大井「なんでも、近々大規模な作戦が行われるらしいから、色々と準備してるみたい」
大井「それで、うちの鎮守府には、最前線と補給基地を繋ぐ補給路の確立を任されたようね」
加賀「ふむ」
大井「要は敵がいたらぶっ飛して海域を確保しろってことね」
不知火「いつもの出撃と大体一緒ですね」
大井「それじゃあさっさと行って終わらせてきましょうか」
赤城「わかりました」
加賀「了解」
大井「……オキアミは置いていきなさい」
赤城「……オキアミ? いえ、知らない子ですね」
大井「艤装の中に隠し持ってるじゃないですか、匂いでわかりますよ、置いてって」
加賀「ここは譲れません」
大井「不知火、ヴェールヌイ」
不知火「はい」ヒョイ
響「ダー」ヒョイ
赤城「あ、オキアミが! ご無体な!」
加賀「ああ……そんな」
だめだねみぃ
海上
赤城「……」
加賀「……」
響「釣竿構えて釣り糸垂らしながら航海してる……」
加賀「補給は大事」
赤城「しかし、釣れないですね……」
大井「諦めなさい、私も前に釣りをしてみたけれど、全然ダメだったわ」
赤城「提督って、結構釣りが上手だったんですね」
加賀「サンマでも釣れないかしら」
不知火「せいぜいコンブあたりじゃないですかね」
加賀「コンブ……まあ、それも悪くないですね」
響「コンブでいいのか……」
大井「そろそろ指定された海域のはずだけれど」
赤城「2時方向に複数艦影あり、おそらく深海棲艦です」
加賀「8時方向にも船影が1つ、こちらは遠くて判別がつかないわね」
不知火「(しっかり索敵してるんですね、食ってばかりかと思ってました)」
大井「まずは2時方向の敵を片付けましょう、行くわよ!」
響「ウラー!」
ヌ級1「ヌッ(定時報告せよ)」
イ級1「イー(こちら、以上無いッスよ)」
ドォン!
イ級2「イギィ!?」轟沈
ヌ級2「ヌッ!?(敵襲じゃねーか! 何やってんだ!)」
イ級3「イ!?(いやどっちかと言うとヌ級さんの仕事ッスよね、索敵)」
イ級1「イィー!(ええい、緊急配備につけ!)」
ヌ級1「ヌッ!(艦載機発艦!)」
赤城「相手はこちらに気付いたみたいですが、遅かったですね」
加賀「このまま制空権を確保します」
ドォンドォン
イ級3「イー!?」轟沈
イ級1「イッ!?」轟沈
ヌ級1「ヌッ!?」大破
大井「次は私の番ね」
大井「改二になった私の実力を見せてあげるわ! 海の藻屑となりなさいな!」ズドドド
ドゴォン
ヌ級2「!?」轟沈
大井「よし、あと少し!」
チャプン
潜水カ級「カー……(や、やべえ、壊滅じゃねえか)」
潜水カ級「カッ(こうなったら、一矢報いて……)」
響「バレてないと思っていたかい?」
潜水カ級「!?」
不知火「沈め」
ドォンドォン
潜水カ級「カァー!」轟沈
ヌ級1「ヌゥー!(別働隊へ緊急通達! この海域は放棄! 放棄!)」
加賀「これで終わり」バシュン
ドォン
ヌ級1「」轟沈
大井「ふう、大したこと無かったわね」
赤城「上々ね」
加賀「やりました」
不知火「(……この2人、最後まで釣竿を手放さなかったわね)」
響「(釣竿と弓を片手で一緒に持って構えるなんて、器用だね……ハラショー)」
ググ
赤城「あっ、引いてます」
響「え、かかったの」
赤城「よいしょ」グイ
ザパァン
巻雲「んぅー!?」ジタバタ
大井「うひゃあ、艦娘釣っちゃった」
赤城「なんだ、艦娘ですか……」
不知火「なんだで済ますんですか」
赤城「リリースしましょう」
巻雲「!?」
大井「いや待ちなさいよ、それはかわいそうでしょう」
加賀「だったら……食べる?」
巻雲「!?!?」
大井「やめなさい」
巻雲「……」ビクビク
大井「そんなにビクビクしなくても食べないから」
響「ところで、もう一つの船影は?」
加賀「ええと……深海棲艦では無さそうね」
加賀「……あっ、釣りしてますね」
赤城「釣り船ですか、お魚分けてくれませんでしょうか」
加賀「というか、見たことのある顔ですね」
赤城「そうなんですか、お魚分けてくれそうですね」
大井「見知った顔……民間人が来る場所でもないし、提督は大本営に行ってるし、とすると……」
吹雪「あれ、大井さん? こんなところで奇遇ですね」
雪風「しれぇ」
時津風「しれー」
大井「いやこっちのセリフよ、どうしてこんなところまで来てるのよ吹雪」
時津風「釣りを任されたまではよかったんだけど」
雪風「釣りに夢中になってたら、波に流されてここまで来てしまいました」
赤城「そう、お魚釣れてる?」
時津風「サンマが数匹釣れてるよ」
加賀「やりました」
響「食べ物しか頭に無い……」
巻雲「しれーかんさま~!!」ダキッ
吹雪「うわっ!?」
巻雲「びぇ~!」
吹雪「な、何? この子どうしたんですか?」
大井「さっき赤城さんが釣ったのだけれど」
吹雪「…………あっ……」
巻雲「しれーかんさまー!」
吹雪「ちょ、ちょっと、くっつきすぎだってば」
不知火「あっという間に懐きましたね」
響「ズドーラヴァ、さすが副司令官」
吹雪「副司令官は関係無いよね!?」
大井「それじゃあその子は任せてもいいかしら?」
巻雲「しれーかんさまー」
吹雪「うー、こうなっちゃったら仕方ないですね……」
赤城「では、私達は周辺の見回りを続けましょう」モグモグ
加賀「そうね」モグモグ
時津風「あーー!! 釣ったサンマが全部無くなってるよぉ!!」
雪風「ひどいですー!」
大井「この食う母2人は全くもう……」
赤城「大井さん、行きましょう」
雪風「サンマ返せー! バカー!」
加賀「さっき釣れた艦娘と交換ということで」
巻雲「しれーかんさまぁー……」ビクビク
吹雪「…………」
大井「ふん!」ドゴッ
加賀「痛い」
赤城「きゃあ、直上」
大井「後で私からキツく言っておくわ」
吹雪「お願いします……こっちはこっちで大変そうなので」
巻雲「ふぇぇ……」
雪風「うわーん! サンマー!」
時津風「うぇーん! とられたー!」
吹雪「あー、よしよし、また釣ろうね、ね、ね?」
響「(幼稚園の先生みたいだね)」
大井「じゃあ私達は行くわね」
赤城「大井さんひどい」
加賀「頭にきました」
大井「うっさい! 釣竿も没収! ぬいぬい!」
不知火「はい」ヒョイ
響「ダー」ヒョイ
赤城「そんなご無体な!」
加賀「そんな、そんな」
赤城「……」ズーン
加賀「……」ズーン
不知火「めっちゃ落ち込んでるのですが」
大井「放っておきなさい」
響「この2人に索敵してもらわないと困るんだけど」
大井「目視で何とかなるでしょ」
不知火「えぇ……」
ピピピ
大井「あら、無線? 誰からかしら」
大井「はい、こちらオキアミ鎮守府所属の大井です」ピッ
提督『オキアミ鎮守府ってなんだよ、そしたら俺はオキアミ提督かよ』
大井「あれ、提督? なんで無線を?」
響「オキアミ鎮守府?」ヒソヒソ
不知火「釣りで艦娘を増員させてるうちの鎮守府が、他の鎮守府からそう呼ばれているそうです」ヒソヒソ
響「あー、確かに天然産の艦娘はみんなオキアミ食べるしね」ヒソヒソ
提督『大本営の用事が終わったから、帰りに補給基地の予定場所に寄ってみたんだ』
提督『お前らが遠征で近くの海域に来てるだろうと思って』
大井「そうなんですね」
提督『それで、少し聞きたいことがあって無線を繋げたんだが』
大井「はい、なんでしょう」
提督『お土産で何か欲しいものある?』
大井「無線切っていいですか」
提督『いやいや待って待って』
大井「なんで任務中にそんなしょうもない用事で無線を繋げるんですか!」
提督『いやだって、俺もお前らも内地に赴くことなんてそうそう無いだろ?』
提督『だから何か買ってきてやろうと思ったのに』
大井「そんなもん適当でいいわよ適当で!」
提督『適当かあ……わかった、適当に買っていくよ』
提督『その代わり文句言うなよ?』
大井「はいはい」
提督『あと、真面目な話なんだが』
大井「そっちを先に話しなさい」
提督『改二の調子はどう?』
大井「ん? ああ、すこぶる順調よ、まさにハイパーって感じね」
提督『そうか、そりゃよかった』
提督『じゃあ切るぞ、遠征頑張れよ』
大井「えっ、真面目な話終わり?」
提督『うん』
大井「その程度で無線繋げんな!」
提督『またまたぁ、照れんなって』
大井「帰ったら魚雷ぶち込むわよ」
提督『すまんじゃあな』ブチッ
大井「あっ、逃げるように切ったわね……」
提督「ひぃー、こえーこえー」
龍驤「なー? だからそんなくだらんことで無線繋げんなって言ったんや」
提督「だってよお、お土産どうするかとか、お前ら気にするじゃん?」
瑞鳳「よっぽど変なものでなければ大丈夫だと思いますよ」
提督「まあ、適当でいいって言ってたから、さっき買ったあのアレでいいか」
大鳳「……あの、これはさすがに……」
龍驤「いやアレはダメやで、アレこそよっぽど変なものやで」
提督「よっぽど変なものとはなんだ、俺が考えに考えて選んだお土産だぞ」
瑞鳳「勢いだけで買ったよね、衝動買いだよね」
大鳳「というかそれ、お土産目的で買ったものではないですよね、面白がって買ってましたよね」
提督「いーのこれで! 文句は言わないって言ってたぞ大井は! 文句あっか!」
龍驤「どうなっても知らんで、うち……」
大井「時間を無駄にした気分ね……哨戒の続きを」
赤城「ふん! ふん!」バシャバシャ
大井「この赤い人は何してるの?」
不知火「魚を見つけたので、手づかみで捕まえようとしています……」
加賀「……狙いを澄まして……」キリキリキリ
大井「こっちの青い人は?」
響「魚を艦載機で射抜こうと……」
加賀「……そこ!」バシュ
赤城「ぎゃあ!?」ドゴォン
加賀「あ、ごめんなさい」
大井「あ~ん、誰かなんとかして~! 私じゃどうにもできない~!」
おまけ
大本営に呼ばれた時の提督他3名
上司「早速だけど、大鳳をどうやって入手したのか、ぜひ話を聞きたい」
上司「艦娘管理書には、釣り上げたとかいうもはやいつも通りの理由が書かれているが」
大鳳「ええと……」
提督「いやまあ……釣り上げたってしか言えないですね」
提督「というか、釣ったの俺じゃなくてこっちです」
龍驤「釣ったのはうちだけど、普通に魚釣るようにしてたのと変わらへんで、エサはオキアミやったし」
上司「なるほど、君が…………」
龍驤「……」
瑞鳳「……」
大鳳「……」
上司「……」
上司「あっ……」
瑞鳳「提督、あいつ殴り飛ばしていい?」
龍驤「うちは蹴っ飛ばしたる」
大鳳「じゃあ私はボウガンで実弾飛ばします」
提督「待ってやめて、俺の首が飛んじゃう」
1週間後
提督「練度上げるぞ!」
大淀「いきなりどうしたんです?」
提督「主力にする艦娘がある程度揃ってきたから、ここら辺で練度を上げる方法を確立しておこうと思ってな」
大淀「ふむ、確かに練度は大事ですね」
提督「まあ最終的には明石がなんとかしてくれると思うんだが、俺も形だけでも考えておかねばなるまい」
大淀「考えるフリですか……」
提督「と言っても、俺ひとりで考えるのもなあ」
提督「球磨……は多摩と一緒に出撃してたな」
提督「北上……も大井と一緒に外へ遊びに行ってるしなあ」
大淀「なんでも、大井さんが前の遠征でひどく疲れたので北上さんに癒してもらうとかなんとか」
提督「そんなに難しい任務だったかな……北上も振り回されて大変だな」
提督「となると木曾か、木曾は今どこいる?」
大淀「鳳翔さんの所で飲んだくれてます」
提督「飲んでるぅ? そりゃまた一体どうして」
大淀「そこまでは知りませんが、何かあったんじゃないでしょうか」
提督「うむ、ここは俺が話を聞きに行ってやらないとな、行ってくる」
大淀「書類」
提督「吹雪隊」
大淀「はい」
鳳翔さんのとこ
木曾「んっんっんっ!」グビグビ
木曾「ぷっはぁーーーてやんでぇこのやろうばかやろうこんちくしょう!!」ダンッ
隼鷹「あっはっはっは! 木曾ちゃんいい飲みっぷりだねぇー!」
那智「うむ、我々も負けていられないな」←建造組
龍驤「う゛ぉえ゛」チーン
瑞鳳「サラシィー……肉まん仕込んでサラシを巻けば……だし巻き……」ウトウト
鳳翔「あの、そこまでにしておいた方が……」
木曾「こぉれが飲まずにやってられるかよクソッタレぇー!」
提督「思っていたより酷いもんだった」
鳳翔「あら提督、ここに来るなんて珍しいですね」
提督「そこの眼帯黒マントと話がしたかったんだが……」
木曾「そうだよ黒マントだよ!」
提督「うおっ」
木曾「なんだってんだよぉ、球磨姉と多摩姉は黒マントを馬鹿にしてばかりでよお」
隼鷹「馬鹿にしてばかり! あははうまいなー! 座布団一枚!」
木曾「おらぁ!」ブンッ
隼鷹「あいったぁ!?」ゴンッ
鳳翔「ああっ、グラスを投げないでください!」
木曾「大体さあ、いっつもいっつも俺に押し付けられるんだよ!」
木曾「この前の建造機材が壊れたの、いつの間にか俺1人の責任になってるし! 北上姉のヤロー!」
木曾「提督が買ってきたクソまずいお土産のお菓子は姉妹分全部俺が食うハメになったり!」
提督「クソまずいってなんだよ!? せっかく買ってきたのに! 選んだ龍驤に謝れ!」
龍驤「おいぃ、選んだのは提督……あ゛お゛お゛」
瑞鳳「提督ずるいよぉ……勢いだけで選んだくせにぃ……オムレツ……」
木曾「飲むしかねえだろうがよぉちくしょおお」
木曾「あれ? おい! グラスが無えぞ! こら鳳翔誰が下げていいって言ったんだッ!」
鳳翔「さっきあなたが投げたじゃないですか……」
木曾「ちっ……仕方ねえ」パシッ
那智「あっ、おい、私のグラスを取るな!」
木曾「酒だよぉ! 早くしろよ!」
鳳翔「……はい」トクトク
木曾「んっっ……ぷはーっ!」
那智「返せ!」パシッ
木曾「あ、テメエなんだよ喧嘩売っ」
木曾「てっ」バターン!
提督「!?」
那智「!?」
木曾「」
提督「お、おい、いきなり気を失ったぞ、どうした?」
鳳翔「睡眠薬を仕込ませていただきました」
提督「……し、したたかっすね」
鳳翔「おかげさまで」
那智「グラス、奪い返したのに使えんではないか……」
隼鷹「このやろうグラスぶつけやがって! ってあれ、死んでるよぉー」
鳳翔「すみませんが提督、この子持ち帰ってください」
提督「えぇー?」
隼鷹「お持ち帰り!」
那智「送り狼! 飢えた狼!」
隼鷹「ホテルへイン! ホテルでイン!」
提督「蹴っ飛ばすぞ酔っぱらい共!」
提督「仕方ねえな……よいしょ」
隼鷹「おんぶかよそこはお姫様だっこだーろぉ!」
提督「うるせー飲んでねえで仕事しろ!」
那智「そういう提督は釣りばかりしているではないか」
提督「建造できないから釣りしか艦娘増やす手段が無いの! 最重要任務なの!」
龍驤「お゛う゛う゛う゛っ!!」
瑞鳳「あー、龍驤ちゃんが限界来てるよ、チャウダー出しそう」
隼鷹「あーあ、相変わらず酒ダメだね龍驤は」
那智「お前が飲ませたんだろう」
鳳翔「バケツ置いときますね」
提督「付き合いきれん、惨事を見る前に退散しよ……」
提督「うーん、こいつどうするかなあ」
木曾「ぅー……」
提督「このまま部屋に転がしてもいいんだが、今の話を聞いてるとなあ……放置するのもなあ」
提督「執務室に戻っても吹雪がいると思うからなあ、絶対怒られる」
提督「……釣り行くか、その間に目も覚めるだろ」
雪風「あっ、提督だ」
時津風「あー、しれーに仕事押し付けた提督だ」
巻雲「提督さーん、しれーかんさまが怒ってますよ」
提督「げっ! 吹雪隊に見つかった! 逃げろ!」
雪風「提督がまた釣りに行こうとしてます!」
時津風「しれーに仕事なすりつけて自分はらくしよーとしてる!」
巻雲「提督さーん、しれーかんさまカンカンですよ!」
提督「釣りはうちの鎮守府では立派な執務じゃい! 行ってくる!」ダッ
雪風「あ、逃げた」
時津風「しれーに報告だー」
巻雲「木曾さん、寝てたけどどうしたんでしょうか」
※吹雪隊のみんなは副司令官である吹雪のことをしれぇと呼ぶので、提督のことは普通に提督と呼びます。
海上
木曾「」
提督「こいつ起きねえな……睡眠薬って、結構効き目長いんだな」
山城「すごく酒臭いわね……」←建造組
比叡「大丈夫なんです? 酒と一緒に睡眠薬って」←建造組
提督「お前らなんで一緒に来てるの?」
比叡「お姉様を釣り上げるためです!」
山城「姉さま、今山城が姉さまを釣り上げます」
比叡「気合い! 入れて! 釣ります!」
提督「お、おう、わかったから向こうで適度にやっててくれ」
比叡「はーい」
山城「ええ」
提督「……」
木曾「」
提督「……」ペシペシ
木曾「ぅぁぉー」
提督「こいつ起きねえな」
提督「俺も釣るか、よっ」シュッ
提督「……」
木曾「」
提督「……」
木曾「」
提督「こいつ、こんなへそが出るような服着て、寒くねえのか」
提督「つうかみんなへそ出してるよな、何? そういうのがトレンド?」
山城「ひぃぃ~!?」
提督「ん? なんだ?」
提督「どうしたー?」
比叡「提督! 私が釣り上げたタコが! 山城さんに!」
山城「いやぁー! なんで私に絡みつくのよ~!」
提督「う、うおっ」
比叡「ああっ! タコ足が服の隙間から入り込んでます!」
山城「ひぃっ!? ちょっ、そこは!?」ビクッ
提督「あ、あわわわ」
山城「は、早く取って~!」
比叡「提督! 早く取りましょう! このままだとタコがどんどん服の中に!」
提督「いや俺が取るのは色々とマズイだろ! お前が取れよ!」
比叡「えー……私、こんな気持ち悪いのはあんまり触りたくないです……」
提督「いいから取れ!」
提督「なんとか比叡が引っ張り取った」
比叡「ひぇー……ヌルヌルしてます、早く離したい……」
山城「身体がベトベトするぅ……不幸だわ……」
提督「あー、その、早く服を直せ」
山城「え? きゃあ! 提督のエッチ!」
提督「タコのせいだろ! 俺は悪くねぇ! タコよこせ、締めてやる」
比叡「はいどうぞ」ポイッ
提督「バッカ、なんで投げんだよ」
木曾「」ベチャッ
提督「あっ、木曾の腹に落ちた」
タコ「」モゾモゾ
提督「服の中に入っていきやがった……」
比叡「……」
提督「……釣りの続きしよ」
比叡「今度こそ! お姉様を釣ります!」
山城「早く姉さま釣れないかしら……」
提督「……」
木曾「……ん……ん?」
木曾「まぶし……外?」
木曾「って、ひゃあああ!?」ビクッ
提督「うわ、って木曾か、起きたのか」
木曾「ふ、服の中に何かが、ひいっ!?」
木曾「た、タコ!? こいつタコかよ! なんだよコイツ! 離れろ、この!」
木曾「んううー! 吸盤が、くそ!」
提督「……」
木曾「……なっ!? 何見てんだよ! 手伝えよ! あ、いや、こっち見んな!」
提督「どうしろってんだよ!」
木曾「ひぃ、ひぃ、なんとか取れた……」
木曾「このタコ、海に投げ捨ててやる!」ポイッ
提督「ああ、せっかくのタコが」
木曾「くっそー、服が捲れあがってやがる……下着もズレてるし……」
提督「……」
木曾「……み、見んじゃねえよ!」
提督「見てねえよ!」
木曾「……ぬあっ、落ち着いたら頭痛くなってきた……」
木曾「あーそうだ飲みすぎたんだった、くそ……」
提督「……」
木曾「……うっ」
提督「今度は何だ?」
木曾「……ふ、船って、結構揺れるよな……うっぷ」
提督「海に出せよ! 海だぞ! 船の中でやるなよ!?」
木曾「ふーーーっ……」
提督「早くここら辺から船を移動させよう……」
木曾「……なんで俺は船に乗ってるんだ?」
提督「起きたら一緒に釣りしようと思ってたんだが」
提督「今の状態じゃ無理そうだな、寝とけ」
木曾「そうする……」
提督「(そういえばなんで俺は木曾を船まで連れてきたんだっけ?)」
提督「(えーと、ヤケ酒あおってアレコレ言ってたから釣りに誘おうと思って……)」
提督「(その前だ、なんで俺は木曾を探してたか……)」
提督「(思い出した、練度上げの方法を相談するんだった)」
提督「……まっいいかー、どうせ明石がなんとかするさぁー、釣り釣り」
木曾「……俺さー」
提督「ん?」
木曾「末っ子なもんだからさ」
木曾「いっつも姉さん達にいじられるんだよ」
提督「あー、そうだよな、いつも何かやられてるよな」
木曾「それ自体はまあいいんだけどよ」
木曾「なんつーか、たまに行き過ぎなところもあってさ」
木曾「どうしたらいいかな」
提督「知らん、俺は生憎一人っ子だ」
木曾「はあー……提督は頼りにならねえな」
提督「るせぇ、放っとけ」
提督「まああれだよ、嫌じゃないなら別にいいだろ」
木曾「あーーー俺も妹がいたらなあー」
木曾「いじり倒してやったのになあー」
比叡「うーん……釣れませんねー……」
山城「そうね……」
山城「さっきからエサだけ盗られてるわ……不幸ね」
比叡「そんなに美味しいんですかね、オキアミ」
山城「ちょっと私には理解できないわね……くさいし」
比叡「天然産の皆さんは好んで食べてますよね、特に赤城さんや加賀さん」
山城「この前、酒飲んでる連中がオキアミの素揚げを食べてたのよ」
比叡「うわっ」
山城「奴ら美味しそうにバリバリ食べてたわ、建造組の那智さんは苦い顔して食べようとしなかったけど」
比叡「ひぇー……」
比叡「……」
山城「……」
比叡「もしここでお姉様が釣れたら……」
比叡「そのお姉様はオキアミをバリバリ食べるお姉様なんですよね」
山城「その話はやめなさい、不幸になるだけよ」
比叡「そうですね……でもそれを考え始めたら、釣れない方がいい気もしてきて……」
山城「やめなさいと言ってるの! あああ、私の想像上の姉様がオキアミ食べ始めてるわ! ひい!」
比叡「お姉様ー! お茶菓子にオキアミ出さないでください! うひゃあ!」
クイッ
比叡「あ、竿引いてる」
山城「あら、羨ましいわ……あなたにばっかりアタリが来て」
比叡「んー……でもなんだか引きが弱いんですよね」
山城「じゃあ長靴か何かね」
比叡「船で沖に出てるのに長靴が釣れますかね……」
ゴンッ
提督「うわっ!? なんだ?」
木曾「う゛っ、船揺らさないで……」
提督「俺じゃないぞ」
比叡「あーすいません提督、私の竿にかかった獲物が船に激突したみたいで」
山城「見た感じでは船は無事そうだったわ」
提督「それならいいけどな、それなりの衝撃だったからびっくりした」
提督「で、何釣れたの?」
比叡「今釣り上げます、ぶつかったせいで気を失ったのか、簡単に引き上げられますね」クイッ
ザパァンッ
まるゆ「きゅう~~……」
提督「あ、艦娘だ」
山城「長靴じゃなかったのね……」
提督「気を失ってるな」
山城「さっき頭ぶつけたんでしょうね」
まるゆ「うう~……」
提督「寝かせておくか、木曾、見といて」
木曾「はいはい」
まるゆ「」
木曾「……」
まるゆ「」
木曾「……」ツンツン
まるゆ「隊長ぉぉぉ!!」
木曾「っ!?」ビクッ
まるゆ「」
木曾「な、なんだよ、寝言かよ……なんて寝言だ」
木曾「……」
まるゆ「」
木曾「こいつ、艦種はなんだ?」
比叡「んー? スク水来てるし、潜水艦じゃないですかね」
木曾「潜水艦か……」
まるゆ「」
木曾「鈍臭そうに見えるなあ、本当に潜れんのか?」
まるゆ「ふぉお!」ガバッ
木曾「うわっ!?」
まるゆ「……?」キョロキョロ
木曾「こ、こいつ大丈夫か? 跳ね上がるように起きたぞ?」
まるゆ「!」
木曾「……な、なんだよ、俺のこと見て」
まるゆ「隊長」
木曾「は?」
まるゆ「たいちょー!」
木曾「……隊長って俺か?」
まるゆ「たいちょー」
木曾「おい、擦り寄ってくんなよ、おい」
提督「なんだ、懐かれたのか」
木曾「ええ? 懐かれたの俺? なんで?」
提督「隊長だからじゃない?」
まるゆ「たいちょー」
木曾「俺隊長でもなんでもねえよ!? 吹雪じゃあるまいし」
提督「じゃあ今何か決めるか、うーん」
山城「彼女の作ったカレーは美味しかったわよね、料理隊長でどう?」
比叡「私を差し置いて料理隊長は認めませんよ!」
提督「じゃあ真面目に考えて水雷隊長」
山城「でも北上さんや大井さんの火力の方が凄まじいのよね」
比叡「眼帯隊長」
提督「黒マント隊長」
山城「えーと……へそ出し隊長」
木曾「ただの俺の特徴じゃねーか!」
まるゆ「たいちょー」
提督「そうだなぁ、球磨型の末っ子だから、もう末っ子隊長でいいかな」
比叡「あ、なんか語呂がいいですね」
山城「ここまで来たら、もうなんでもいいわ」
木曾「投げやりじゃねえか、もはや隊長って言いたいだけだろ」
まるゆ「たいちょー」
提督「そういうわけで、お前は今から末っ子隊長だからお前が面倒見ろよ」
木曾「えぇー……」
提督「お前妹が欲しいって言ってたじゃないか」
木曾「いや、言ったけど……」
まるゆ「たいちょー?」
木曾「俺が欲しかったのはいじり倒せるような妹なんだけどなあ……」
提督「さて、そろそろ帰るか」
比叡「ダメです!! お姉様がまだ釣れていません!」
山城「姉さまが釣れるまで帰れないわ!」
提督「知るか! 勝手に付いてきて文句言うなや!」
山城「あぁっ! 姉さまが遠ざかる! 不幸だわぁー!」
比叡「うわああ! お姉様ぁぁー!見捨てないでぇー!」
提督「くっそー、うちの鎮守府に戦艦がこの2人しかいないのが不安すぎる……」
まるゆ「たいちょー!」
木曾「どうすりゃいいんだよ……」
数日後
木曾「なあ吹雪、ちょっと相談があるんだが……」
吹雪「え、なんです?」
木曾「ええとだな、その」
まるゆ「たいちょー」
木曾「……子供との接し方? って言うのかな、まあそういうのを教えてほしいんだが」
吹雪「……なぜ私に相談するんですか?」
木曾「だってお前さあ」
雪風「しれぇ」
時津風「しれー」
巻雲「しれーかんさまー」
木曾「……な?」
吹雪「いや、な? って言われても……」
木曾「頼むよ副司令官!」
吹雪「知らないですよ末っ子隊長さん!」
まるゆ「たいちょー」
雪風「たいちょ、違った、しれぇー」
木曾「なんだよぉ、お前そういうの得意だろ?」
吹雪「得意でも何でもないですよ、私が聞きたいくらいです」
木曾「あぁもう、どうすりゃいいかなあ」
まるゆ「たいちょー?」
木曾「お前はのんきでいいよなあ、お前のことで悩んでるのになあ」
吹雪「……ん?」
提督「ん? あっ」
吹雪「……」
提督「……」
提督「(やっべぇー……釣具持って船に乗ろうとしてるところを吹雪に見つかった)」
吹雪「…………」ジトー
提督「(吹雪のヤツ、『まーたこのスットコドッコイは私に雑務押し付けるつもりだよーもーいい加減にしろよー』とか思ってる顔だ……)」
雪風「提督」
時津風「提督ー」
巻雲「提督さーん」
提督「(お前ら揃って俺を指差すんじゃねえ、巻雲テメエわざわざ袖をまくって指差すなや)」
提督「……あーーー、その、なんだ」
吹雪「……」
提督「一緒に釣りしようぜ、な?」
提督「(この雰囲気で書類片付けてとお願いできねえっす)」
吹雪「はあ、それならいいですけど」
提督「……木曾」
木曾「ん?」
提督「大淀の手伝い、頼むな」
木曾「えぇー? 俺かよ……球磨姉あたりでも連れてくか」
まるゆ「たいちょー」
木曾「お前も手伝うんだぞ」
まるゆ「?」
木曾「わかってんのかなこいつ……」
提督「じゃ行くぞー」
吹雪「はい」
雪風「はーい」
時津風「いえっさー」
巻雲「しゅっぱつー」
提督「お前ら当たり前のように付いてくるんだな……」
海上
提督「よっしゃ釣るかー」
吹雪「何釣るとか決まってます?」
提督「大物狙いで戦艦」
吹雪「ほう、大きく出ましたね」
提督「うちに戦艦は比叡と山城しかいないからな」
提督「2人だけってのは不安なんだよな、色々と、色々と」
吹雪「ふむ、まあ心配になりますよね、色々と」
提督「そこでだ、艦娘カタログを見ると、比較的簡単に釣れそうな戦艦がいてな」
吹雪「はい」
提督「それで必要なのが……」
吹雪「……」
提督「…………うん、のんびり釣ろうか」
吹雪「なんでそこでやめるんですか! そこ重要ですよね!?」
提督「俺の口からは言えん、言ったらどうなるかわからん」
吹雪「どうなるかわからん程のことなんですか……」
提督「どうしても知りたきゃ自分でカタログ見ろ」
吹雪「はあ、そうします」
吹雪「えーとカタログ……あれ、どこ置きました?」
提督「ん? そこに置いて……あれ」
不知火「不知火です」
響「ヴェールヌイだよ」
「「二人合わせてぬいぬいです」」
不知火「カタログは私達が見させてもらってます」
吹雪「え、は、はあ」
提督「君ら、いつの間に来てたの?」
響「吹雪隊の方々に、吹雪隊に入らないかと勧誘されたんだけど」
不知火「ただでは入ってやりませんよと、私達と勝負して負かせてみせろと、言ってやりましたら」
響「それじゃあ釣りで勝負だ、ということになったんだよ」
吹雪「雪風ー、時津風ー、巻雲ー?」
雪風「しれぇ!」ビシッ
時津風「しれー!」ビシッ
巻雲「しれーかんさま!」ビシッ
吹雪「敬礼してんじゃねえよ、何勝手に約束してるんですか」
不知火「ではカタログを見てみましょう」
雪風「ほー、いろんな子がいますね」
時津風「なるほどー、提督の秘蔵本なだけはあるね」
響「これで提督は夜な夜な……スーカ」
提督「変な言いがかりつけんなや!」
巻雲「あ、ここに謎の白い汚れが」
吹雪「…………」
提督「それただの印刷ミスだろ! そんな目で見るな!」
吹雪「変態は置いておいて、カタログ見ましょう」
提督「君らねぇ……」
響「勝負の内容だけど」
響「戦艦が欲しいと言ってたから、戦艦を釣った方が勝ち」
響「どっちも戦艦が釣れなかったら、より多く艦娘あるいは魚を釣った方が勝ち」
響「で、いいかな?」
巻雲「オッケーです!」
雪風「受けて立ちましょう!」
吹雪「えーと、戦艦のページね、どれどれ」
響「……ふむ」
吹雪「…………」
不知火「駆逐艦のパンツ」
吹雪「…………」
響「駆逐艦のパンツが好みな艦娘がいるのか」
吹雪「…………」
時津風「しれー、駆逐艦のパンツだって」
雪風「パンツ! パンツで釣れるんですって!」
吹雪「お前らパンツ連呼すんな!」
響「この勝負、貰ったね」
響「ポイントは、パンツをエサとすることに対する羞恥心だ」
響「つまりこの勝負、パンツを脱げる者が勝つ」ヌギヌギ
吹雪「マジで脱いだよ……」
響「さあ不知火、君も」
不知火「私パンツはいてないです」
響「えっ」
不知火「スパッツはいてるので、パンツははいてないです」
響「……」
不知火「なのでヴェールヌイ、頑張ってください、私は普通に釣ります」
響「……オバルヂェーチ」
まあ、こうなるな(釣果無し)
とうとう読者にもオキアミキメすぎておかしくなった人が出始めたな…
吹雪「……さ、釣りますか」
雪風「誰がパンツ脱ぎます?」
時津風「わたしはちょっと……服、キワどいし」
巻雲「タイツの下なので脱ぐのめんどくさいです」
雪風「雪風は、その、そもそも服が透けてるので脱いだら危ないです」
時津風「……」
吹雪「……何、その目は」
雪風「しれぇー」
時津風「しれーー」
巻雲「しれーかんさまー」
吹雪「私は脱ぎませんよ! 脱がないからな!」
響「……」
不知火「……」
響「……お?」
不知火「……」
響「引いた、かかったね」グイ
不知火「……」
響「……あれ? 引きが……」
不知火「……」
響「…………」
響「ピズダー! ブリャーーチ!!」バンッ
不知火「どうしましたか」
響「ウカラデノォーエ ニージニェエ ビリヨー!!」
不知火「パンツを取られたんですか、ご愁傷様です」
響「ウムリーチェ! ウムリーチェ! ウムリーチェ!!」バンッバンッ
不知火「ええ、ええ、普通に釣りましょう」
不知火「ほら、イワシが釣れましたよ、実はこれ4匹目です」
響「ウムリーチェ!」
雪風「あわわわ……あっちの方が多く釣れてます」
時津風「このままじゃ負けちゃうよお……」
吹雪「別にいいじゃないですか、負けても吹雪隊に入らないってだけでしょ?」
吹雪「(私としてはそっちの方が面倒が少なくていいんだけれど)」
巻雲「あ、あのう、実はですね……」
時津風「わたし達が負けたら、提督が買ってきた例のクソまずいお土産を全部食べなきゃいけないんです」
吹雪「ぜ、全部……まあ、自業自得なんじゃないですかね、そういう約束なんですよね?」
巻雲「しれーかんさまも一緒に」
吹雪「なんだと」
吹雪「何故私を巻き込んだ! 言え!」
雪風「ひぃー! ごめんなさい~!」
吹雪「あーもう、クソッタレ……あっちは今何匹?」
不知火「釣れました、8匹目です」
響「…………9匹目」
吹雪「結構順調みたい……で、こっちは」
時津風「3匹だよ」
巻雲「しれーかんさまが釣った3匹だけです」
吹雪「ダメだ、このままだと負ける」
吹雪「(ううう……あのお土産のお菓子、一口食べた途端に一瞬意識が飛んだんだよね)」
吹雪「(あれを姉妹分食べた木曾さんは顔が緑色になって次の日ガリガリのゲッソリになってたなあ)」
吹雪「(それを余ってる分全部? 死ぬやんけ)」
雪風「しれぇ……」
時津風「しれー……」
巻雲「しれーかんさまー……」
吹雪「…………くっ」
吹雪「背に腹はかえられないですか……」
響「…………」
不知火「……よし、12匹目です」
不知火「ここまで釣れれば、勝ったも同然ですね」
響「……そうだね」
不知火「機嫌直してください、あれは不慮の事故です」
響「……」
吹雪「ぬおおおお!?」
グラッ
不知火「!?」
響「船が揺れたけど……一体何が?」
提督「なんだなんだ? 何があった!?」
吹雪「うっひゃあ!?」
吹雪「こ、これが、戦艦の引き!」
吹雪「うぇひいっ!」ググッ
提督「どうした吹雪!」
不知火「何がありました?」
時津風「でっかいのがかかった!」
巻雲「多分、例の戦艦!」
響「ば、馬鹿な、ヒットさせたなんて……」
不知火「まさか、エサは……」
雪風「パンツ! パンツです! しれぇの!」
吹雪「ちょっと! なんで言うの!」
提督「何ぃ! じゃあ吹雪は今」
吹雪「それ以上言ったらぶっ飛ばすぞ!」
提督「はい」
吹雪「ぐ、ぐぬぬぬぬぬ!」
雪風「しれぇ! がんばれー!」
巻雲「すぐそこまで来てます! 踏ん張ってー!」
時津風「しれーーー!」
吹雪「ぬ、ぬ、ぬ……ぬおりゃあああ!」グイッ
ザパァンッ
陸奥「あらあああああああ!!!」ジタバタ
吹雪「えっ」
提督「んっ?」
時津風「あれっ」
響「そっち?」
巻雲「予想と違う」
>陸奥「あらあああああああ!!!」ジタバタ
なんかめっちゃ笑ってしまった
陸奥「な、なんて事かしら、私が釣られてしまうなんて」
吹雪「…………」
陸奥「……あら、あなたが私を釣ったのね」
陸奥「駆逐艦なのに、これでもビック7である私を釣るなんてやるじゃない、褒めてあげるわ」
時津風「しれーのパンツ握りしめて言うセリフかな」
響「私のパンツも持ってるみたいだ」
陸奥「あ、ああ、これは、その、違うのよ」
陸奥「長門、長門のやつがね? なんだか嬉しそうにしてたから問い詰めてやったらヴェールヌイちゃんのパンツ手に入れたって言うから」
陸奥「私はそれを叱ってそれで私が持ち主に返してあげようと思ったんだけど」
陸奥「その道中で吹雪ちゃんのパンツを見つけてこれは長門に見つかったらいけないと思って私が回収しようとしたらこんなことに」
響「なんで私のパンツだってわかったんだい?」
陸奥「えっ? そ、それは……長門! 長門がそう言ってたのよ!」
吹雪「なんで私のパンツだってわかったんですか?」
陸奥「え、えっと、それも長門が」
吹雪「見つかる前に回収したんですよね?」
陸奥「あ、そ、そうだった、その、あーー……」
吹雪「まあいいや、パンツ返してください」
陸奥「あ……そ、そうね、返さなくちゃね……」
陸奥「……」
吹雪「……」
響「……」
陸奥「私のパンツと交換でいい?」
吹雪「アホぬかしてんじゃねえぞ」
陸奥「そ、そうよね、ごめんなさい」
陸奥「……」
陸奥「……」スンスン
吹雪「嗅ぐなや! 早く返せ!」
陸奥「あ、ご、ごめんなさい」
陸奥「……」ペロッ
陸奥「はい」
吹雪「舐めただろ! 返す前にパンツ舐めただろ!」
吹雪「うう、このパンツ履き直したくないなあ……」
提督「……」
吹雪「何見てんの!!」
提督「え? ああ、すまん、その」
提督「よくやったと褒めたくてな」
吹雪「え、司令官……」
提督「頑張ったな、吹雪」ナデナデ
吹雪「あ、そ、その、ありがとうございます……」
提督「……あと」
提督「早くそのくまさんパンツはけよ、風邪引くぞ」
吹雪「オラァ!」ドゴォッ
提督「あああああああああ!!! スネがあああああああああ!!!」ジタバタ
時津風「うわぁ、痛そうなローキック……」
吹雪「ふんっ」
響「……ハラショー、見事だ」
不知火「どうやらこの勝負、我々の負けのようです」
吹雪「ん? ああ、そういう話なんでしたっけ、忘れてた」
響「約束通り、私達は吹雪隊に入るよ」
不知火「それでは……」
響「しれーかん」
不知火「しれー」
吹雪「…………」
響「しれーかん、うらー」
不知火「うらー」
雪風「しれぇ、うらー!」
時津風「しれー、うらー!」
巻雲「しれーかんさまー、うらー!」
吹雪「………………」
陸奥「何? あの子達、非常に混ざりたいのだけれど」
提督「スネがあ、スネがああ!」ジタバタ
吹雪「……はは、だれかどうにかしてぇ」
おまけ
陸奥が釣れるまで
長門「ぬっふっふっふ!」
長門「今日はいい日だ!」
長門「なにせ、パンツが手に入ったのだからな!」
長門「どうやらパンツをエサにこの私を釣り上げようとしていたみたいだが、甘い! 実に甘い!」
長門「私ほどにもなれば、その程度の罠は見抜いて当然なのだ!」
長門「そんなエサで長門が釣られ……なんていう失態はしない! する余地が無い!」
長門「ぬひひ、ともあれ私のおパンツコレクションがまた潤うな……」
陸奥「おパンツコレクションがなんですって?」
長門「あっ……」
陸奥「……」
長門「む、陸奥、いたのか」
陸奥「そのヴェールヌイちゃんのパンツ、どこから?」
長門「貰った」シレッ
陸奥「嘘つけ! またどこかからひったくって来たんでしょ!」
長門「ひーん! ごめんなさい!」
陸奥「よこしなさい! 私がヴェールヌイちゃんに返してくるわ」
長門「(´・ω・`)」
陸奥「全くもう」
長門「……ん? なあ陸奥」
長門「そのパンツ、なんでヴェールヌイちゃんのパンツってわかったんだ?」
陸奥「え? 長門がそう言ったんじゃない」
長門「言ったかな? ……いや、私は一言もそんなこと」
陸奥「言 っ た わ よ ね ?」
長門「(´・ω・`) はい」
陸奥「さて、ヴェールヌイちゃんにパンツを返してあげないと……」
陸奥「……」
陸奥「少しくらいなら嗅いでも……あら?」
陸奥「あそこに漂っているのは……吹雪ちゃんのパンツだわ! しかもくまさんパンツ!」
陸奥「あら! あらあらあら!」キラキラ
陸奥「……こ、これはいけないわね」
陸奥「長門に見つかっちゃったら、あっという間に持っていかれちゃうわね」
陸奥「そ、そうなる前に私が回収しないとね、そ、そう、これは世の中の平和を守るためなのよ……ぐへへ」
陸奥「……あら?」グイ
陸奥「ちょ、これ、釣り針?」
陸奥「あ、待って、第三砲塔に絡まった! わあ!?」
陸奥「あらあああ!?」
ザパァンッ
このSSまとめへのコメント
大鳳さん釣りたいな〜
釣りで艦娘ゲットできるとか新感覚だった。吹雪の立ち回り面白い
吹雪隊すき
ちょっと5-5までレ級釣りに行ってくる