敵将軍「まあ、うちの国に逆らうなんてバカなマネはよすんだな、ハハハハ」
軍師「出来らぁっ!」
敵将軍「今なんていった?」
父「よせ、香介!」
軍師「いいんだよ、父ちゃん!」
軍師「300の兵で5000の兵に勝ってやるっていったんだよ!」
敵将軍「こりゃあ面白い小僧だぜ」
父「いや、こいつは戦略のことになるとすぐムキになるんだよ」
父「すまん、こいつにかわって謝る!」
敵将軍「そうはいかないぜ、司令官さん」
敵将軍「大勢の兵士の前でケチをつけられたんだ」
敵将軍「こりゃあどうしても、300の兵で5000の兵に勝ってもらおう」
軍師「え! 300の兵で5000の兵に勝て!?」
敵将軍「今、オレの率いる軍は向こうの平原に陣取っている」
敵将軍「どうやって5000の兵を300で撃退するか……見せてもらうぜ!」
軍師「やってやらぁっ!」
父「香介、あんなこといっちまって……一体どうする気だ?」
父「10倍以上の兵力をどんな策略で補うつもりなんだ?」
軍師「簡単だよ、父ちゃん」
軍師「なにも5000の兵とまともにぶつかり合う必要はない」
軍師「あっちから勝手に兵の数を減らしていくようにすりゃいいのさ!」
父「どうやって?」
軍師「あの敵将軍は、昔はワルだったって噂を流すんだぁっ!」
「将軍、あなた昔は不良だったんですってね」
「失望しました……軍を抜けます」
「短い間でしたが、お世話になりました」
敵将軍「ま、待てっ! お前たち!」
敵将軍「誰だ、こんな根も葉もない噂を流したのは!」
父「おい、香介! 敵兵が1000人脱走して、4000人に減ったそうだ!」
軍師「やったぁっ!」
父「今度はどうするんだ?」
軍師「あの敵将軍はオタクだって噂を流すんだぁっ!」
「不良だったぐらいならともかく、オタクって……」
「すみません、今日で軍を辞めます」
「剣に生きる者として、オタクに従いたくはありませんので」
敵将軍「おい、行かないでくれ!」
敵将軍「こりゃあとんでもないことになってきたぞ!」
父「敵兵がさらに1000人減って、3000人になったぞ!」
軍師「へへへ、どんなもんだい!」
父「これで敵の兵力はちょうど10倍……どうする?」
軍師「もっと噂を流すんだぁっ!」
軍師「あの敵将軍はワキガだってなぁっ!」
「将軍、あなたワキガらしいですね?」
「おじいちゃんの遺言で、ワキガの人とは付き合うなと言われていて……」
「故郷に帰ります」
敵将軍「オレはワキガなんかじゃないのに……!」
敵将軍「まずい、どんどん兵が減っていく!」
父「香介、やったな! 敵兵がついに2000になった!」
軍師「よっしゃあーっ!」
父「だが、もちろんこれで終わりじゃねえんだろう?」
軍師「ああ、もっともっと噂を流す!」
軍師「あの敵将軍はクチャラーだってことにしよう!」
「クチャラーとかないわー」
「食べる時音立てるのはちょっと……」
「できれば行儀いい人に仕えたいんで、さよなら」
敵将軍「ま、待てっ! 待ってくれーっ!」
父「さあ、敵兵は残り1000だ! どうする!?」
軍師「もちろん、手は抜かねぇっ!」
軍師「敵将軍は学歴を詐称してるって噂を流してやるんだぁっ!」
父「これがうまくいきゃ、敵陣は崩壊だぜ!」
「あんた、学歴偽ってたんだって?」
「幼卒なのに大卒って偽るとか大胆すぎるだろ!」
「あなたのことは尊敬していたのですが……残念です」
敵将軍「あああ……みんな去ってしまう……。流出が止まらない……」
父「ハッハッハ、敵陣地には一人も兵士が残ってねえっ!」
父「いよいよ300人で、あの将軍をひっ捕らえちまうか!?」
軍師「いや、もしかすると援軍が来る可能性もある!」
父「そりゃそうだな」
軍師「だから、あの敵将軍は男のケツを狙ってるって噂を流すんだ!」
軍師「そうすりゃ、敵将軍は完全に孤立する!」
……
父「大変だ、香介!」
軍師「どうしたんだい、父ちゃん?」
父「敵の兵力が回復しちまった!」
軍師「なんだってぇ!?」
父「それどころか、10000人に増えちまった!」
軍師「なんだってぇぇぇ!?」
父「うちの300人はみんな捕まっちまって、こっちにも兵が迫ってる!」
軍師「なんだってぇぇぇぇぇ!?」
「敵国の300人の兵士を捕えました!」
「敵国の司令官と軍師も捕えました!」
「我が国の勝利です!」
敵将軍「ご苦労」
敵将軍「一時はどうなることかと思ったが、どうにか勝てたな……」
敵将軍(しかし、オレのところに集まってくれた10000人には褒美をやらねばならん)
敵将軍(褒美……つまりあいつらの望みを叶えてやらねばならん)
敵将軍(10000人かぁ……こりゃあ大変だ)
おわり
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