茜「野球中継みましょう!」 (14)


本作は9月2日に行われた埼玉西武ライオンズ対千葉ロッテマリーンズ20回戦の試合をモチーフにしています。

また、独自設定を組み込んでいます。

もし、お読みになる場合はご注意いただきますようお願い申し上げます。

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茜「未央ちゃん!遅かったじゃないですか!中継始まっちゃいますよ!」


18:00になると事務所のテレビの前で野球観戦が始まるのは、もういつもの光景になった。


未央「ふぅー…なんとか間に合った。はいこれジュースとお菓子。」


ありがとうございます!とジュースを受け取る茜に未央は言い放つ。


未央「茜ちん!今年の埼玉vs.千葉シリーズこそ!我らが千葉がいただきだよ!」

茜「言ってくれますね未央ちゃん!今年も譲るつもりはありません!私は栃木出身ですが、心は埼玉にあります!
  魂の青い炎は!さらに熱く!燃え上がっています!!!」

 
2人の掛け合いに対して、事務所のアイドルは口々に言う。うるさい、家でやれ、姫川友紀の方がマシだ、と。



未央「いやーそれにしても茜ちんが野球を見るようになるとはね。さすがの未央ちゃんもこれは予想できなかったなぁ。」

茜「確かに私はラグビーに青春をかけてますが、スポーツは何でも好きですよ!」


それに、と声のトーンを落として続ける。


茜「日本のラグビー人気は今一つですからね…W杯や五輪で注目こそされましたが、地上波で毎試合放送…というわけにもいきませんでしたからね…」


ガックリと肩を落とし、寂しそうに話す茜に未央はその肩を抱く。


未央「わかるよ茜ちん…自分の好きなものが世間的にはマイナーっていうのは悲しいもんね…」

茜「未央ちゃん…」


顔を上げて未央を見つめる茜はその目に涙を浮かべている。


未央「…でもね茜ちん!茜ちんのラグビーへの熱い気持ちはラグビー界にもきっと伝わっているよ!だから落ち込まないで!
   茜ちんならラグビー界を盛り上げられる…そんなアイドルに絶対なれるよ!」

茜「未央ちゃん…!」

未央「茜ちん…!」


はっしと抱き合う2人から溢れる青春の輝きに事務所は照らされた…


そう!2人で力を合わせればどんな苦境だって乗り越えられる…!


茜のラグビーへの熱い想いはきっと報われる…そんな期待を我々は胸に抱いた。


茜「まぁそれはそれとして!今日の試合は絶対負けませんからね!なにせライバル!シリーズ!ですから!」

未央「ふっふっふ…そう簡単に勝たせてあげるわけにはいかないなぁ!」


さっきの青春ドラマはなんだったのか。


そんな2人を横目に高森藍子は本を読んでいる。


このやり取りはいつものことですっかり慣れきっているようだ。


…そもそもどうして茜が野球を見るようになったのか話しておく。


それは各自SR[1番センター]姫川友紀を参照してもらいたい。答えはそこにある。


次になぜ埼玉のチームを贔屓にしているかだが…


まず、基本的に栃木県民は姫川友紀の好きな東京のチームを贔屓にしている人が比較的多い。(ソースは筆者)


だが、栃木県出身である茜は埼玉のチームを選んだ。


これは埼玉が栃木のお隣りの県という単純な理由だった。


茜は言う。


茜「埼玉なら東京より近いですしね!今度走って球場まで行ってみたいです!」


ちなみに距離的には変わらない。


どちらも徒歩約17時間だ。


そして、理由はもう一つある。


彼女は埼玉の岡〇選手に首ったけなのだ。



理由を問うと、たまたま見ていた中継でその選手が一塁にトライを決めたらしい。そしてそのあとのガッツポーズで心を奪われました!…だそうだ。


要は一塁へのヘッドスライディングとガッツ溢れるプレーに魅了されたらしい。


それで埼玉のチームを贔屓にしたようだ。


茜「いや〜〇田くんはガッツがすごいですからね!テレビの前のこっちにまで闘志が伝わってきますよ!つい応援も熱くなってしまいますね!」


茜は語る。くん付で呼ぶ辺り、相当お気に入りらしい。


未央「茜ちんはあまり有名じゃない選手好きだよね。 
   てっきりお〇わりくんとかが好きかと思ったよ。ごはん好きだしね。」

茜「むむっ!違いますよ未央ちゃん!確かに私はごはんは大好きですが、彼のニックネームの由来はキャンプの声出しからですよ!まぁ、詳しいことはよく知りませんが。」

未央「へぇーそんなこと知らなかった。てっきりご飯が好きなのかと…」


横に大きいしね、と付け加える。


茜「失礼しちゃいますね!私は選手みんなのファンですからね!そういうことはきっちりしておかないと!」

未央「茜ちんがそんなに野球にのめり込んでるとは恐れ入りました…」


ははーと茜に頭を下げる。


茜「そういえば未央ちゃんはどうして千葉のチームを好きなんですか?」

未央「そりゃ私は千葉県民ですからね!とは言ってもクラスに熱烈なファンがけっこういてさ、 
   その話を聞いてるうちになんとなく見始めたのがきっかけなんだよね。」


どの学校にも必ずいるかなりのガチ勢がたまたま同じクラスだったらしい。


しかし、野球に興味の無い女の子を引き込むとは大した手練れだ。


茜「なるほど!そういえば未央ちゃんが野球をみるようになった理由を聞いたのは初めてでしたね!」

未央「私は茜ちんが野球をみるようになった理由はなんとなく分かってたけどね…」


姫川友紀の犠牲者を目の前に未央は悲しげな顔をする。


未央「でもこうやって友達と話題を共有できるのは素敵なことだって私は思うよ。」

茜「未央ちゃん…!」


茜はその熱く燃えた真っ直ぐな瞳を未央に向ける。


未央「だから今日はうちが気持ち良く勝って、いっぱい千葉の話をしようね?」


ニヤリと悪い顔をする未央。


野球は人の心を汚すのだ。


茜「それはこっちの台詞ですよ未央ちゃん?」


あぁ…あの茜がなんて顔を…野球に罪はない。それに熱中してしまう人の心がいけないのだ。


藍子は変わらず読書をしている。そもそも野球はあまり詳しくなく、またパリーグには興味が無いようだ。


未央「わわ!茜ちんもう18:00過ぎてるよ!早くテレビ点けて点けて!」

茜「は!おしゃべりに夢中になってしまいました!え、えっと、確かこのチャンネルでしたよね…」


まだ試合は始まっていないようだった。


茜「あれ?未央ちゃん、今日試合ありますよね?」

未央「そのはずだけど…あっ!今日は18:30からじゃん!」

茜「道理で試合が始まってないわけですね!でも助かりました!プレイボールの瞬間を見れないところでしたからね!」


18:00開始に慣れていると緩急をつけた開始時刻に対応できないときがあるものだ。



茜「さぁ気を取り直しまして!試合が始まりますよ?」

未央「今日の先発はエースの石〇だからね!最多勝と最優秀防御率の2冠圏内だし、なんとか勝って欲しい!
   球場の相性もいいし、茜ちんのとこからは1番勝ち星を稼いでるし、期待できる!与えても1点でまとめて欲しいね!」

茜「うちの先発は〇星選手です!なんたって自身8連勝中ですしね!さらに球場の相性もいい!投手戦は覚悟ですね!」


お互い自慢のエース同士の対決だ。いかに少ないチャンスをものにできるかで試合は決まる。


試合が始まった。


立ち上がりから得点圏にランナーを置く両エースは序盤に捕まった。


まずは3回に埼玉が1点先制する。


茜「うおお!!!メシアーー!!!!ボンバーーー!!!」


4回には千葉が1点返し、同点にする。


未央「ええええ!?セーフティスクイズ!?!?」


その後は互いにランナーを出しながらも8回を投げ切り、一失点で見事に抑えた。


未央「ぐぬぬ…この展開は予想してたけど…」

茜「延長に入ってからの中継ぎ勝負ですね…!」


延長は埼玉が再三チャンスを作ったがあと1本が出ない展開が続いた。


茜「あぁーーー!!点が入らないーーー!!」


隣では未央が胃を押さえながらうめいている。


未央「なんとか…抑えてくれ…」


試合は結局1対1の引き分けで終わった。


延長に入ってからの緊張感でへとへとになった2人は残っていたジュースを飲み干し、熱い握手を交わした。


茜「中継ぎ陣の踏ん張りが見事でした!チャンスを作ったのはいいんですがもう一押しさせてくれませんでしたね!」

未央「ありがとう!そっちはまさか増〇牧〇を2回ずつ投げさせるとはね…そりゃ打てないよ…」


お互いの健闘を称え合う2人は全国の野球ファンに見せてあげたいくらい清々しく、美しかった。


そうだ、野球に情熱をかける人々はこんなにも素晴らしいのだ。


未央「まぁ、そんな継投してたら来年『も』中継ぎが整わないね。そんな采配してるからBクラスなんだよ。」

茜「そちらは貧弱なバッターばかりで迫力に欠けますね?守り勝つにしても二遊間が緩いですし、中継ぎも駒が足りてないんじゃないですか?」

未央「打線はまだしも、守備と投手に関しては茜ちんには言われたくないかなぁ?」


………。


茜「なににしても明日も試合がありますからね!CSの可能性も消えたわけじゃありませんし、明日こそ勝ちますよ!」

未央「こっちだってCSで下尅上をしてやりたいからね!明日だって負けられないよ!」


やはり野球はいいものだ。


~ゲームセット~

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