モバP「だりやすかれんと秋の休日」 (30)
―――お昼下がりの泰葉のお部屋
泰葉「…………」カキカキ…
泰葉「……ふう」
泰葉(よし。これでようやく夏休みの課題もおしまい)
泰葉「ん、んーっ……」
泰葉(さて、なにしようかな。出かけるにしても雨降りそうだし……)
ライーン
泰葉「あ」
加蓮
『いま家にいるー?遊びに行っていい?』
泰葉「……ふふ」
『いるよ。気をつけて来てね』
泰葉「少しお部屋の掃除しておこう――」
ぴんぽーん がちゃっ
加蓮「来たよー♪」
泰葉「早いよ……」
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加蓮「ふふっ、びっくりしたでしょ。近くまで来てたんだー」
泰葉「もう。いないって返事してたらどうするつもりだったの?」
加蓮「んー、そのときは泰葉が帰ってくるまで……部屋の前で体育座りしてじっと待つ?」
泰葉「犬ですかあなたは」
加蓮「忠犬だよーわんわん」
泰葉「お手」スッ
加蓮「それよりなんかないー? 歩き回ってたらお腹空いちゃって――」ガチャリ
加蓮「あ、パピコあるじゃーん。食べよ食べよー♪」
泰葉「……というより猫……。はぁ」
加蓮「おいし」チュウチュウ
泰葉「うん」チュウチュウ
加蓮「冷たい……」プルプル
泰葉「寒い……」プルプル…
加蓮「9月にアイスは無理あったね」
泰葉「いつか処理しなきゃならなかったし……」
加蓮「あっためて泰葉~」ムギュー
泰葉「鬱陶しいです」グイ
加蓮「あん、いけずー」
泰葉「ところで」
加蓮「んー?」
泰葉「その袋どうしたの?」
加蓮「これ? 秋服ー。ショップ見てたら雨降りそうだったから。1番近い泰葉のとこに避難してきたってわけ」ガサッ
泰葉「あぁ、そういう」
加蓮「そそ。持つべきは親友だよねー」
泰葉「ふふふ。その親友の家をクローゼット代わりにするのはやめてほしいけどね」
加蓮「ぎくー。あはは」
泰葉「まだ去年の服しまってあるんだけど」
加蓮「あ、そういえば置きっぱなしだったっけ」
泰葉「やっぱり忘れてたんだ……」
加蓮「えへ、ごめんごめん。今度古着屋さん持ってこっか」
泰葉「でも結構たくさんあるよ? 李衣菜入れて3人でも運び切れるかな……」
加蓮「いいこと思いついた。Pさんに車出してもらおう」
泰葉「Pさんかわいそう」クスッ
加蓮「そしたらそのあとはドライブに連れてってもらうとかね♪」
泰葉「あんまりわがまま言ってると愛想尽かされちゃうかも」
加蓮「ないでしょ。あのPさんだよ?」
泰葉「…………」
加蓮「え、ないよね? ないって言ってよ泰葉」
泰葉「……そういう大人を何人も見てきたから……」
加蓮「いやあああああ」
泰葉「まぁPさんに限ってあり得ないでしょうけど」
加蓮「だよねー♪」
泰葉「ふふ、でもドライブはいいと思うな。Pさんにも羽を伸ばしてもらいたいし」
加蓮「ね。Pさんもだけど、ちひろさんも働きすぎ」
泰葉「いつか私たちで慰安旅行でもプレゼントしてあげる?」
加蓮「あっそれいい! ……ん? でもそしたら」
泰葉「?」
加蓮「Pさんとちひろさんが2人きりで旅行に行くってことに」
泰葉「あ」
加蓮「…………」
泰葉「…………」
加蓮「私たちもついていこうね」ニッコリ
泰葉「そうね、慰安旅行はやっぱり全員で行かないとね」ニッコリ
加蓮「定番は温泉かなー」
泰葉「かな。李衣菜が前にお仕事で行ったところとか、どう?」
加蓮「あー行きたーい。李衣菜、肌すべすべになって帰って来たし」
泰葉「そういえば加蓮、ずっと頬ずりしてたね……李衣菜恥ずかしがってた」
加蓮「だってー♪」
泰葉「ふふ。私ちょっと寂しかったよ、そのとき」
加蓮「あ、それは頬ずりされたいって意味かな~?」ジリッ
泰葉「……余計なこと言っちゃったかなってぁぁぁあああ」
加蓮「うりうりうりー♪」スリスリスリ
泰葉「きゃふっ! もうかれ、加蓮っやめ、あは、あははは♪」ジタバタ
加蓮「んー、泰葉もすべすべー。スキンケアばっちり♪」
泰葉「い、意識し始めたのはアイドルになってからだけど……やぁんっ」
加蓮「ふふー、まだまだ♪ パピコで冷えた体をあっためよう♪」
泰葉「も、もうやめてっ。充分あったまったから――あっ眼鏡!」バッ
加蓮「っきゃ……あっ! ご、ごめん泰葉っ! 歪んだりしてないっ?」
泰葉「う、うん、平気。はぁ、すっかり忘れてた……テーブルの上に置いといて良かった」
加蓮「ごめーん、調子乗っちゃった……」シュン…
泰葉「ううん、いいってば……ふふ、無くてもそんなに困らないし」
加蓮「目ぇ悪いなら必要でしょ……。ていうか勉強してたんだ」
泰葉「うん、さっきまで。夏休みの課題が残ってたから。……加蓮さんはどうですか? もう終わりました?」
加蓮「う。加蓮さんはね……も、もう少しで終わるかな……? よ、余裕余裕……」
泰葉「そうですか。なら教えなくても平気ですよね」クスクス
加蓮「ウソー! ウソですー! お願い数学教えてー!」
泰葉「ふふふ♪」
加蓮「うぅ、なんで課題の量が他のみんなと同じなの……アイドルで忙しいって知ってるはずなのに……」
泰葉「ほら、加蓮の学校は部活も活発でしょう? 忙しさじゃあまり変わらないんじゃないかな」
加蓮「そもそも授業受けらんないときもあるんだから問題分かんないし! あの鬼教師ぃ!」バフバフ
泰葉「待って枕に八つ当たりしないで」
加蓮「もおお、ライブチケあげたんだからちょっとはサービスしてよねー!」ムギュウウウ
泰葉「あああ潰れちゃう潰れちゃう」
加蓮「あ、泰葉の匂い」スンスン
泰葉「てい」ベシッ
加蓮「いたいっ!?」
泰葉「まったくもう」
加蓮「て、手加減してよ……コブになったらどうすんの」ズキズキ…
泰葉「砂糖でも擦り込んでおけば? ……加蓮の先生もライブ観に来てくれるのね」ナデナデ
加蓮「んー。知らない間にCDまで買ってくれてたみたいでさ、クラスの友だちも。ファンだーって」
泰葉「ふふ、そうなんだ。私のところもそうだよ、チケットはそれぞれ自分で取ってたけれど」
加蓮「……あげるんじゃなくて売りつけた方が良かったかな。クラスみんなにオークション式で……ふっふっふ」
泰葉「悪い顔してる」
加蓮「あは。やんないけどね」
泰葉「あまり目立つことしないようにね?」
加蓮「はーい。慎ましく礼儀正しく、芸能活動に支障が出ないよう気をつけてまーす」
泰葉「ん、よろしい」
加蓮「って言っても、最近は目立たなくても学校側から寄ってくるんだよね。文化祭近いから、学校全体で私を客寄せに使おうってハラみたい」
泰葉「ああ……事務所通してもらわないと困る話ね、それ」
加蓮「ま、私も丁重にお断りしてるけど。先生もクラスメイトも庇ってくれてるからなんとかなってる感じ?」
泰葉「ふふっ、みんな優しいね。でもあんまりしつこかったら、Pさんにも言ってね?」
加蓮「うん、分かってる。……えへ。色んな人たちに支えられてるね、私たち」
泰葉「ええ、感謝しないと。……だから課題もしっかりね?」
加蓮「……あい。かんしゃ、カンシャ……」
泰葉「やる気出して」
加蓮「学校嫌い……課題増える……。あ、でも好き……みんな応援してくれる……うぅ……」
泰葉「こ、今度課題持ってきて? 一気に片付けちゃおう、李衣菜もいるし……ね?」
加蓮「李衣菜ねぇ……。でも李衣菜バカだもん、公式てきとーだし文法もうろ覚えだし。役に立たないでしょ」
泰葉「いないからってその言い草はひどいよ……」
加蓮「ふーんだ。私たちを置いてバンドのライブ観に行ってる李衣菜なんか知らなーい」
泰葉「ずっと楽しみにしてたって言ってたじゃない……。李衣菜だって好きなことしたいでしょう」
加蓮「むー。1人で行くならまだいいけど。他の子とデートでしょ?」
泰葉「木村さんね。お仕事で会うたびに仲良くなってたから、李衣菜」
加蓮「…………」プクー
泰葉「ふふ、女の子に嫉妬しないの。だったら一緒に行けば良かったのに」
加蓮「それはそれで……。あんまり知らないバンドだし、私が行ったら水差しちゃうかなって」
泰葉「そんなことないと思うけど。色々教えてもらったら?」
加蓮「李衣菜に頼んだら知識偏り
そー。自分で曲聴いた方がよっぽどマシだよ、うん」
泰葉「もう……そういうこと言って。寂しいくせに」
加蓮「……違うし」プイ
泰葉「よしよし、私がいるからね。というか、だからうちに来たんじゃないの?」ナデナデ
加蓮「うー……」
泰葉「んー……、本当に降り出しそうね」ポフポフ…
加蓮「……李衣菜大丈夫かな。傘持ってってるかな」
泰葉「心配?」
加蓮「違うってばー。ほら、風邪引いたらお仕事に穴空いちゃうでしょっ」
泰葉「うんうん」クスクス
加蓮「もう!」
泰葉「ふふっ♪」
加蓮「泰葉のいじわる」
泰葉「うん。加蓮にだけいじわるするの」
加蓮「えー。李衣菜には?」
泰葉「あの子は勝手に自爆するから」
加蓮「……泰葉も結構李衣菜に厳しいよね」
泰葉「そう?」
加蓮「あはは♪ 李衣菜、きっと今頃くしゃみしまくってるよ――」
泰葉「風邪と勘違いしてるかも――♪」
―――
――
―
―――ライブ会場
李衣菜「――ぷえっくち!」
夏樹「おっと。大丈夫かだりー?」
李衣菜「う、うん……ライブの熱冷めちゃったのかな」
夏樹「風邪引かないようにしないとな。もうじき雨も降りそうだし」
李衣菜「ん、なつきちも気をつけてね。もうすぐステージ控えてるんでしょ?」
夏樹「ああ。今日のライブだって、ステージの下見なところもあったからさ」
李衣菜「へへ、びっくりしたよ。着いたら男の人と一緒にいるんだもん――へっくし!」
夏樹「お、おいおい。ほんとに風邪引いたんじゃないか?」
李衣菜「んんっ、だ、大丈夫……きっと噂されてるんだよっ」
夏樹「はは、どこかでファンに見られてたのかもな。ま、どっちにしろ早めに帰って風呂にでも入りな」
李衣菜「ん、そうする……あ、ここから近いのって――」
「――木村さん。お待たせしました」スタスタ
夏樹「お、プロデューサーさん。もういいのか?」
「はい。ステージ関係の方とは、また後日話すことになりましたので」
夏樹「そっか、お疲れさま」
「いえ、私もおふたりの休日に申し訳ありませんでした。多田さんにもご迷惑をおかけして……」
李衣菜「あはは、迷惑だなんて。気にしないでくださいっ」
李衣菜「お客さんが入ってる状態で会場全体を見ないと、分からないことってありますもんね」
「……はい。バンドの演奏も素晴らしいものでした。……それを見ているあなた方の笑顔も」
夏樹「おいおい、口説き文句か? あたしはともかく、だりーは別事務所のアイドルだぜ」
「あ、そ、そういうわけでは決して……!」
李衣菜「ふふっ♪ うちのプロデューサーもそういうことよく言うから慣れてますよ。褒めて伸ばす、いいと思います!」
「…………。……恐縮です」サス…
夏樹「だりーまで口説くなって……。あたしらのプロデューサーを引き抜く気か?」
李衣菜「そんなことしないよー。”なつきちの”プロデューサーさん、とったりしないから♪」
夏樹「ははは! からかうなよ♪」ワシャワシャ
李衣菜「へへへー♪」
「……いい、笑顔です」
夏樹「――じゃあな、だりー。またアツいライブ、観に行こうぜ!」
「お疲れさまでした。……そちらのプロデューサーにも、よろしくお伝えください」
李衣菜「はい、またお仕事でもよろしくお願いしますっ。なつきちもまたね、ばいばい!」
李衣菜「――よしっ。私も帰ろっと」
李衣菜「……泰葉に連絡~」
『降りそうだからさ、今から行っていい?』
李衣菜「んー。…………既読はやっ」
泰葉
『もちろん。オマケも付いてるけどいい?』
加蓮
『オマケとはなによヽ(`Д´)ノ』
李衣菜「あぁ、加蓮もいるんだ……ふふふっ」
『じゃあ夕飯の材料も買ってくね』
泰葉
『ありがとう。加蓮が来たからお買い物行けなかったの』
加蓮
『え、私邪魔だった?』
泰葉
『うん』
加蓮
『うんて』
『なんで一緒なのにラインで漫才してんの。私も混ぜてよー』
李衣菜「……あははっ♪」
―――
加蓮「泰葉、私のことお邪魔虫だと思ってたんだ……」
泰葉「ご、ごめんね? 冗談だから、冗談……機嫌直して、ね、ねっ?」
加蓮「いいよ、李衣菜来たら私帰る。泰葉もその方がいいでしょ」
泰葉「か、加蓮~……!」
加蓮「ふふふっ。いじわるの仕返し♪」
―――
李衣菜「夕飯は……寒くなってきたしおでんがいいかな。それとも月見そばとか? どうしよっかなー」テクテク
李衣菜「へへ、今度は2人も一緒にライブ観に来れたらいいなぁ――♪」
おわり
というお話だったのさ
秋分の日ですね、今年もあと100日ですよプロデューサーさん……
>>16謎の改行入ってるやん
読みづらくなって申し訳ない
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