自虐 (35)

東京03ネタ

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披露宴会場にて


小鳥「はいはい、新郎新婦さんこっち向いてくださいね~、写真撮りますから」

小鳥「いきますよ、な~ぬ~ね~の~、足りない一文字は?……にーっ!」
パシャッ


小鳥「あっはっはっはっはと……はいお待たせ、撮ってきましたよー」


ちひろ「お二人ともすごい戸惑ってるじゃないですか、あれ」

小鳥「なんでだろ」

律子「分かりづらかったからでしょ?」


ちひろ「いやぁ、それにしてもカッコいい旦那さんですね、羨ましいなぁ三浦さん」

小鳥「まぁでもアイドルですからねえ」

律子「胸も大きいですし」

小鳥「ねー」


ちひろ「……しっかしみんな結婚していきますね」

律子「ウチの事務所でももう三人目ですか、ラッシュですね」

小鳥「まぁそういう年齢ってことでしょう」


律子「千川さんは、結婚とかしないんですか?」

ちひろ「私ですか? いやー、そういうのはまだ考えられないですね」


律子「え?彼氏さんとはもう何年くらい付き合ってましたっけ」

ちひろ「んー、5年くらい?」

律子「じゃあもうそろそろでしょう」

ちひろ「いやぁなんか向こうもやりたいことあるみたいで、秋月さんは?」


律子「私はまだ半年くらいですからね付き合って」


小鳥「……へー、お二人とももう彼氏とかいるんだー」

ちひろ「はい、音無さんは?」


小鳥「いやぁ、いませんねぇそれが」

ちひろ「会社で出会いとかないんですか?」

小鳥「いやぁ全然ありませんよ……」


小鳥「ま、あったところで……どうせ私じゃあ無理でしょうけど!」


ちひろ「………ぁ、あぁ」

律子「………………」


小鳥「あっははははは……はは、は」


ちひろ「………コホン」

律子「………」


小鳥「………」


ちひろ「……えっと、秋月さんはお相手の方とどこで知り合ったんです?」

律子「え?ああ、会社ですけど」

ちひろ「うわ、じゃあオフィスラブじゃないですか、羨ましい~」


小鳥「何しに事務所来てるんですかもう仕事してください仕事!」

ちひろ「そうだそうだー」

律子「え?じゃあそっちはどこで出会ったんですか?」

ちひろ「私? 私はちゃんと飲み会」

律子「ちゃんとって何ですか」


小鳥「うん、飲み会はちゃんとしてますね」

ちひろ「ですよね」

小鳥「正式なやつですもんね」

ちひろ「正式なやつですから」

律子「なんなの正式なやつって」


ちひろ「いやぁでもこうして人の結婚式くると、やっぱいいなあって思っちゃいますよね」

小鳥「……うんうん」


律子「そうですか?………あっ、もしかして千川さんって、人の結婚式きて泣いちゃうタイプとか?」

ちひろ「いや流石に一回も泣いたことはないですけど、でもやっぱりいいなぁって思うじゃないですか」


律子「ふぅん、でも私は結婚するとしたらこんな派手な式は挙げませんね」

ちひろ「秋月さんってそういう感じですもんね……音無さんは?」


小鳥「私は派手にいきたいですねぇ、たっくさん人呼んで、みんなから祝ってもらうような……」


小鳥「でも………私じゃそんな集まらないか!」

ちひろ「……………」

小鳥「…………」

律子「……………」


小鳥「あはははははは……」


ちひろ「……」

律子「……」


ちひろ「……でも、準備とか大変でしょうね」

律子「ですね、お金もかかるし」

ちひろ「お金かぁ、私ぜんぜん貯金ないんですよ……秋月さん溜め込んでそうですよね、そんな感じしません?」

小鳥「あー、わかるわ」

律子「何でですか、ありませんよそんなの」


律子「小鳥さんこそどうなんですか」

小鳥「いやぁ私の安月給じゃ貯金までなかなか」


小鳥「家賃、食費、光熱費……ギリギリ払えてないんじゃないかな~!うん」

小鳥「貯金どころか、借金しないとですねぇ!」


ちひろ「……ぁぁ」

律子「……………」


小鳥「あははははは!……ねえ」

ちひろ「……え?………さ、さぁ」


小鳥「………まあ、大丈夫だとは思いますけどもね……と」

ちひろ「そ、そうですか」


小鳥「うん」


ちひろ「あぁ…………でも、あれですね、子供は欲しくないですか?」

律子「いや全然ないです、自分の時間が欲しいので」

ちひろ「秋月さんって本当ストイックですよね、私は欲しいですねえやっぱり、甥っ子とかすごく可愛くて」

小鳥「わかるわー、私も子供欲しいわ~、うん……」


小鳥「でもあれか、私が親じゃあ子供が可哀想か!」


ちひろ「…………ぅ」

律子「……………」


小鳥「……ほら、ほらほらもしも、もしもですよ? 娘が産まれちゃって……趣味が私に似ちゃったら最悪でしょう?」

律子「……」


小鳥「ねぇ」ジッ

ちひろ「…………」サッ


小鳥「あはは、あれか! あれだ、金もなけりゃ相手もいないし……私に子供は一生無理かなーって、さ」



小鳥「…そんなことないですよって言ええええええええっ!!!」

ちひろ「!?………ぁ、はい?」



小鳥「……ぜんっぜん言わねーのなお前ら、そんなことないですよって、ぜんっぜん言わねーのな」

ちひろ「……どういうことですか?」


小鳥「いや私がさ……ねえ、盛り上げようと思ってワザと自虐的なこと言ってるんだから、『そんなことないですよ』って言わないと」


小鳥「じゃないと私が本当にそういう人みたいになっちゃうよ?」

ちひろ「違うんですか?」

小鳥「違うよ!!!」

ちひろ「あっ、違うんだ」


小鳥「違うわ!……待ってじゃあ二人ともどういう気持ちでずっと聞いてたの?ねえ」


ちひろ「かわいそうだな、って」

小鳥「……ふざけんなよ!受け入れてんじゃねぇよ」

小鳥「かわいそうっておま最悪だよ……律子さんは?」

律子「やっぱり」

小鳥「やっぱりってなんだよ!なんだよそれタチ悪いなおい……」


小鳥「ちょっと待ってよ……そんなことないですよって、言ってよそこは……」

ちひろ「いやでも音無さんとはこういう場でしか会わないですし……今の状況もよく分かりませんから、まぁ本人が言うならそうかな」


小鳥「マジメだな」

ちひろ「はい?」

小鳥「マジメだなぁ千川さんは、マジメだなぁ」

ちひろ「あっ、はぁ…」


小鳥「あのね、実際の状況なんかどうだっていいの」

小鳥「なんかさぁ、よくあるでしょう? 自分のことをこう……蔑んで言うみたいなさ」

ちひろ「はぁ」

小鳥「そういうのあるじゃん」


律子「でも小鳥さんだったら、実際そうだろうなぁと思ったので」


小鳥「……なんなの律子さんは、ねぇ」

律子「しっくりきた、しっくりきたなぁって」

小鳥「きてんじゃねえ!私をどういう人だと思ってるの私を」

律子「…………そういう人」


小鳥「このぶっ殺すぞ!テメこの野郎!!」

ちひろ「ちょやめましょうよ!三浦さんの結婚式ですよ、なんで揉めなきゃいけないんですか」

小鳥「………お二人が私の自虐流すからでしょ!!!!!!」

……シーン


ちひろ「………ちょ、一瞬会場にいるみんなこっち見たじゃないですか、やめてくださいよ恥ずかしい」


小鳥「ハッキリ言っときますけど、私そんなダメじゃありませんから」

ちひろ「わ、分かりました分かりましたよ」

小鳥「分かってない」

ちひろ「いやもう分かりましたってば」


小鳥「そんな簡単には分からせませんからね!」

ちひろ「どういうことなんですか!?」



小鳥「よーしじゃあ、今から私が言った自虐を振り返って、実際のとこ教えてあげますよ」


ちひろ「………何言ってるんですか、何ですか自虐を振り返るって」

小鳥「はい最初の自虐ーーっ!」

ちひろ「なになに?ねぇなに」

小鳥「私なんて言ったか覚えてますかー?」

ちひろ「覚えてないですよそんなの」


律子「……覚えてますよ」

ちひろ「クールだなお前」


律子「小鳥さんに彼氏がいないって話から、『どうせ出逢いがあったところで私じゃ駄目だろう』って言ってました」


小鳥「あーはいはいそれな、そう言いました自虐で確かにそう言いました。でも実際は!」


小鳥「……出逢いの中から、一度付き合ってます!」


ちひろ「………そうですか」

小鳥「………」

ちひろ「………」



小鳥「はい次ーーっ!」

ちひろ「なんですかこれ! なんて無駄な時間なんですか」


小鳥「無駄ってなによ、誤解を解いてんだこっちはよ!」

ちひろ「いや大して解けてないんですけど」

小鳥「次ーーっ!」


律子「結婚式の話から、『式にたくさん人呼びたいけど、私じゃそんなに集まらないかー』って」

小鳥「はいそう言った、確かにそう言いましたでも実際はぁ!……」


小鳥「……………集まんじゃない?」

ちひろ「…………はい」



小鳥「……はァい、はい次ーーっ!」

ちひろ「やめましょやめましょう、本当もうこっちがツライですこっちが」

小鳥「続けて律子さーん」

律子「貯金の話から…」

ちひろ「もういいでしょもうやめて! 切なすぎるよ、私もう涙出ちゃいますよ、私このままいったら本当ヤバいですよ」


小鳥「……続けろぃ」


律子「『私の安月給じゃ家賃食費光熱費ギリギリ払えてない』って」

小鳥「ぎりっぎり払えてます!!」バンッ

ちひろ「はい分かりました、座りましょう……ね?座りましょう」

小鳥「………ギリッギリです」

ちひろ「はい座りましょう、座りましょう座りましょう、ね?」


小鳥「…………キツいです」

ちひろ「キツいって言ったらダメでしょ、いまキツいって言うのぜったいダメでしょ?!」


小鳥「足らないです」

ちひろ「知らないです」

小鳥「でも生きてまーーーーす!!!……」

ちひろ「はい!はい座りましょう、座ってください……みなさん何でもないですから、何でもないですから」


小鳥「……………」ズーン


律子「……それで最後の自虐は」

ちひろ「もういいよ!」

小鳥「よくねーよ、誤解を解くんだ!」

ちひろ「解けてないですよさっきから全然」

律子「いきますよ?」

小鳥「いけーーっ!!」


律子「子供の話から、『私が親じゃ可哀想、娘が私に似たら最悪、相手も金もない、子供は私にはどうせ無理だろう』って言ってました」

ちひろ「もういいよ!……もう」

小鳥「……………」


ちひろ「……まぁ確かに、音無さんそう言ってました、私も覚えてます」

ちひろ「でも音無さん、そんなことないですよ」


小鳥「……そんな軽はずみなこと言うなァ!!」


ちひろ「………嘘でしょ?」

小鳥「何が『そんなことないですよ』だ……」

ちひろ「いや自分が言えっていったんじゃないですか」


小鳥「……お前に何が分かるんだよぉ」

ちひろ「は?」

小鳥「お前に私の何が分かるんだよぉ!!知った風な口叩くなぁ!!!」


ちひろ「……うわぁ、もう情緒が……もう」

小鳥「もうダメだぁわたしは、もう……」ガックリ

ちひろ「結婚式ですから、三浦さんの結婚式ですよ?」


小鳥「一度付き合った人も、浮気してたしさぁ……」

小鳥「馬券だボートだっていって色々お金使わされてさ……捨てられましたよ!!」

ちひろ「やめましょう!ね? ほんともうやめましょう結婚式ですから」


小鳥「そんなものよ、私なんて……そんなもんなのよぉぉ……」

小鳥「やだよぉもう、私の人生だれか買ってくれないかなぁ……」

小鳥「んな奴いるわけねぇかあ!」


ちひろ「そんなことないですってば音無さん」

小鳥「いねえだろがよぉ!!」



小鳥「ぁあ?……じゃあお前、もらってくれんのかよ……ぁあ?なぁ、私のこともらってくれんのかよぉぉ、ぉぉぉおお、おおお」

小鳥「なぁ、おい………おいよぉおおおあ、おああおいおおおおおあぶぁあああ……おほ、ほごぉおおおおお!!」

ちひろ「っ……w、ちょ、音無さん」

律子「w」


小鳥「……ァア?!なあ、もらってくれんのかよぉぉおお、なぁ、なぁあ?!………ぐす、うぉぉおおおおおお!!」



ちひろ「……ごめんなさい無理です」

小鳥「………」


小鳥「…………あっはっははっはっばぁぁはーーはっはっひっひぁはわば!!あぁぁあああぁぁぁ……うぅぅぅ、うぉぉぉおおぉぉぉ」

ちひろ「泣かないでください音無さん……私もう一生のトラウマですよ」


律子「……あ、音無さん、なんか呼んでるみたいですよ?」

小鳥「え?」

律子「スピーチ、呼んでますって」


小鳥「ぁ、あぁ……ちょっと、待ってよ、ぐすっ……待たしとけ、待って……うぷ」



小鳥「ぐすっ、ええ………どうも、新婦の事務所の同僚の音無といいます」


小鳥「……今日は、新婦のあずさちゃんたってのお願いということで……」

小鳥「特技の尻文字で、二人にお祝いの言葉を贈りたいと……思います」

ちひろ「……えぇ」


小鳥「いきます……おめでとうのおの字はこう書くの? あっこう書いてこう書いてこう書くの……」クイックイッ


ちひろ「ああ、もう私泣きそう……泣いちゃう泣いちゃう、やばいやばいやばい」

ちひろ「結婚式初の涙でちゃいそう……」

おわる

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