提督「安価でほのぼの鎮守府」 (63)

提督「なんだ安価とは」

大淀「高次元存在にアクセスして、そこに記される概念内容をこの世界に還元する操作のことです」

提督「意味が分からない」

大淀「例えば私たちが『ここに100ターレルのお金がある』と言っても、実際手元にお金があることにはなりませんよね? しかし今からアクセスする存在は違います。彼らが『提督のもとに100ターレルあり』と言えば、本当に提督はお金を得ることが出来るのです」

提督「そいつは面白いな」

大淀「労せずして世界に影響を与えられるその努力効率の良さから、この操作は些か皮肉的に『安価』と呼ばれています」

提督「なるほど」カチャカチャ

大淀「しかし、当然上手い話には裏があるもので、いくつか注意すべき点と規則が……って何をしているんですか!?」

提督「いやいやちょっと世界平和を願ってね?」

『この世界は>>3である』

安価内容は適当に思いついた単語でも、シチュエーションでもお好きにどうぞ

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ホモ

『この世界はホモである』
艦娘のほとんどが消えました。

提督「あれ? 大淀? あいつどこ行った」

憲兵「よお」

提督「憲兵か。何の用だ」

憲兵「人類を救った英雄の顔を拝みにな」

提督「英雄だと?」

憲兵「深海棲艦は全て消え去った。戦争は終わったんだよ」

提督「どういうことだ。我々は深海棲艦の軍勢に押されていたではないか」

憲兵「なんだ気付いていないのか。お前の安価操作のおかげだよ。まさか世界中の女ともども深海棲艦を消滅させるとは盲点だった。たった一つの冴えたやり方だ」

提督「ふざけるな。そんな膨大な犠牲の上に成り立つ平和なんて私は認めない」

憲兵「犠牲か。それはどうだろうな。そう思っているのはお前だけかもしれないぞ」

提督「なにが言いたい」

憲兵「安価による世界改変は過去にも遡及する。今回の場合「世界はホモである」という命題影響を受けた者は同時に女の存在を根本的に忘却することになる。だから犠牲などと誰も思っていないだろうな」

提督「そんな馬鹿な。だったらお前はどうして覚えているんだ!」

憲兵「簡単な話だ。安価による影響を受けなければ忘却するはずないだろ」

提督「それは」

憲兵「俺はもともとホモだったんだよ。だから安価によって改めて影響される必要もなく、以前の世界の記憶もそのまま持つに至っている」

提督「そんな抜け道が。だったら私の場合はどうなるんだ。私も艦娘たちの記憶を持っている」

憲兵「お前もホモだったんだろ」

提督「ありえない」

憲兵「素直になれよ。体は正直だぜ」さわさわ

提督「触れるな。[ピーーー]ぞ」ぱしん

憲兵「やれやれ。……この安価の原則として操作者本人は影響を受けないようになってるんだよ」

提督「なぜ」

憲兵「なぜだと。それは改変前と後の世界を比べて右往左往する観測者が最低一人いなければ面白みに欠けるからだろ」

提督「誰が面白がる。いや答えなくていい。くだらない答えが返ってきそうだ」

憲兵「まあ何にせよ。お前が深海棲艦もろとも艦娘を消してしまった悲しみや後悔を理解出来るのはナチュラルホモである俺だけだ。ホモに感謝しろよ」

提督「死ね。こんなのは一時的な悪夢に過ぎない」

憲兵「何をする気だ」

提督「決まっている。安価で世界がおかしくなったのならもう一度操作して戻すだけだ」

憲兵「待て。やめろ。原則的に『安価は前の安価内容を抹消する意図で用いてはならない』んだ」

提督「安価の原則なんて知るか」

憲兵「落ち着けよ。お前は安価が俺たちの意図とは裏腹に動くことを身を持って知ったばかりだろ。愚直に安価を出したところでロクなことにならんよ」

提督「じゃあこのまま艦娘たちを見殺しにしろと言うつもりか」

憲兵「話を聞け。安価に対抗できるのは安価だけ。それは正しい。だが、直接的に安価を否定する安価は出来ない。それは逆に言えば間接的な否定は許されると言うことだ」

提督「間接的」

憲兵「いきなり世界を変えるのではなく、地道に一歩ずつ変えていって世界を戻す道だ」

提督「言うのは簡単だが、実際何から手を付ければ良いんだ」

憲兵「さあな安価に聞けば良いんじゃないか?」

提督「そんな曖昧な題だとリスクが高すぎる」

憲兵「だったら無難にどこに行けば良いかくらいから改変を始めればいいんじゃないか」

提督「そうだな。そこくらいか」

『提督と憲兵が向かう場所>>15

レジスタンス

提督「鎮守府の地下にこんなところが。なんなんだここはいったい」

憲兵「レジスタンスのアジトだな」

提督「何に抵抗してるんだ」

憲兵「今世界を席巻しているホモは筋肉派いわゆるガチムチ系ホモなんだ。そいつらが男性的マッチョな性質を愛するのに対してここの連中は繊細優美なものを愛するらしい」

提督「ホモなのだから仲良くしろ」

憲兵「筋肉派が赤薔薇に形容されるので、ここのレジスタンスどもは白バラ運動と自らを名付けているらしい」

提督「というかなぜ鎮守府の地下にホモの組織があるんだ」

憲兵「さあな。第一の安価改変ホモインパクトの際、女の比率が高いここは一時的に真空領域となったのだろう。それを補完するために白バラホモが配置されたと考えるべきか」

提督「そんな無駄な考察聞きたくなかった。ってあれは女か……?」

憲兵「レジスタンスの一人か。ふん、地下組織らしくいかにも穴掘って埋まってそうな奴だ」

提督「とりあえず話を聞くか」

憲兵「おいお前」

>>18「ひいっ、な、なんですか!?」

男の娘な夕雲くん

提督「お前、夕雲か!?」

憲兵「いや、待てこれは」

男の娘な夕雲くん(以下夕雲)「ち、近づかないでください」びくびく

提督「安心しろ。私だ。この鎮守府の提督だ」

憲兵「提督、こいつはお前の知っている夕雲ではない」

提督「なにを言っている」

夕雲「あなたたちも私に怖いことするんでしょう……? どっかいって!」

提督「どうしたんだ一体。いつもの余裕はどこにいった」

憲兵「こいつは恐らくたった今発生した個体だ。お前との記憶を共有してないな」

提督「夕雲は夕雲のはずだ」

憲兵「仕方ない。ならば一つの事実を突き付けてやろう。これを見ろ!」スカートメクリアゲ

夕雲「っ!? ……きゃあああああああああ!?」

―――――ぱしんっ

憲兵「という訳で、分かったか」

夕雲「きゅう……」

提督「お前容赦ないな」

憲兵「わざわざ殴られる必要もない」

提督「安価というのは本当に信じられないな。新たな存在を瞬間的に構築するのか」

憲兵「それは今は亡き大淀が最初に説明してただろうに」

提督「……それにしても何故夕雲はあんなに怯えていたんだ。曲がりなりにも夕雲として生まれた存在だ。あの態度には違和感がある」

憲兵「理由は単純にここが白バラ運動の本拠ということだろうな。奴らは言ってしまえばオネェ系だ。そして、夕雲は性別こそ男だが、姿は以前と変わらない。神格化でもされて祭り上げられたか」

提督「それは具体的になにをされるんだ」

憲兵「さあな。けど、面白いな。女の時は男を手玉に取るタイプが男になると男不信とは」

提督「……」

憲兵「そんな怖い顔するなよ。さて、提督。この夕雲をどうするつもりだ」

提督「そんなもの決まってる。保護する」

憲兵「あんまりお勧めは出来ないが……追跡の影が近づいて来てるか。では、そのように」

$

提督「何とか執務室まで戻ってこれたな」

夕雲「すう……すう……」

憲兵「この素晴らしきホモ世界の哀れな被害者を一人救えて良かったな」

提督「その被害者を文字通りに生み出したのも半ば私たちだ。マッチポンプも甚だしい」

憲兵「で、どうするんだ。これ」

提督「……」

憲兵「考えなしか」

提督「今夕雲が起きても怯えさせるだけだ。こいつからしてみれば誘拐されたような状況だろうからな」

憲兵「確かに通常なら丸く納めるのは困難な状況だ。通常ならな」

提督「何か策があるのか」

憲兵「台詞安価だ。上手くいけば確実に上手くいく」

提督「これに頼る気か!? ちょっと待て!」

夕雲「う、ん……?」

憲兵「さあ、眠り姫のお目覚めだ。魔女の林檎か王子の口吻か」

夕雲「>>31

何か、思い出せそう……あなたは?

夕雲「何か、思い出せそう……あなたは?」

提督「! 夕雲お前には以前の記憶が」

憲兵「いや安価は過去に遡及する。思い出が捏造され、未知の性質が発露するだけかも知れない」

提督「じゃあどうしろと」

憲兵「今こいつの存在は非常に不安定なんだ。慎重にお前の望む答えに誘導しろ」

提督「誘導って。例えば言葉を復唱させるのはどうだ? 『全て思い出しました提督。私は女だったはずです』と言わせたら良いのか?」

憲兵「安価に言わせられたのならともかく、提督に言わされた程度では何の意味もない」

提督「くそ。漫画みたいな言語誘導なんて私には無理だぞ」

夕雲「あ、あの、私の質問に答えてくれませんか……?」

提督「……私は提督だ。そして、お前は深海棲艦と戦う艦娘という存在で私の部下だ」

憲兵「それで俺はこの提督と単なるおホモだちだ」

提督「おい」

夕雲「>>35

艦娘・・・女?

夕雲「艦娘……女?」

提督「! この世界にはないはずの単語が出たぞ! 夕雲、そうだ。お前は本来女なんだ!」

夕雲「うう……」

憲兵「提督、ことを焦るな」

提督「何故だ! 元の世界への糸口なんだぞ!」

憲兵「落ち着けよ。この夕雲がたとい己を女だったと自覚しても、問題を直接的に解決しないかも知れない。むしろリスクが高い」

提督「こいつが俺の知る夕雲とは別個体だからとでも言うつもりか?」

憲兵「いいや、この夕雲と以前の夕雲との接続は可能性として十分にある。
更に言えば、世界は原則的に余分な存在を減らそうとするオッカムの剃刀だ。むしろ、以前の夕雲と一体になるのは自然でさえある」

提督「だったら、何故止める」

憲兵「お前のそういうクールぶってて、その実直情的な所好きだぜ。だが、よく物事を見るべきだ」



提督「ほう。では、お前は俺より深く洞察してると?」

憲兵「ああ、少なくとも今のお前よりは」

提督「ならさっさと言え」

憲兵「お前は第一の安価改変の時に違和感を持たなかったのか」

提督「あ? 違和感しかない。だから、こうして」

憲兵「そうではなく。どうして女が消える必要があった」

提督「それは安価が『この世界はホモである』としたからだろ」

憲兵「いやいや、おかしいだろ。『この世界には男しかいない』なら消えるのも分かる。だが、『ホモである』というのは概念上女を排斥しないんだ」

提督「そりゃホモはあくまでも同性愛だからな。対義語はヘテロだ」

憲兵「そうだ。そこが重要なんだ。第一安価改変のホモインパクトはあくまでヘテロという関係を抹消するのが本来的であって、女が消えたのはいわゆるコラテラルダメージだと言うことだ」

提督「どっちも一緒だろ」

憲兵「いや、違う」

提督「どこが」

憲兵「この改変された世界が女自体を排斥しないということは女自体を世界に引き戻すのは可能ということだろう」

提督「それは結構なことだ」

憲兵「どうだろうな」

憲兵「問題はどうして女は概念上排斥される必要もないのに排斥されたかだ」

提督「そんなの簡単だろ、男と女がいればヘテロが生じるかもしれないからだ。
私たちの元ヘテロ世界でも少数ながらホモがいたのを考えると改変後の世界であっても物好きなヘテロがいてもおかしくない」

憲兵「正しい。完全なホモ世界のためにヘテロの芽を摘んだということだ。だから、理論上世界は今二つあるはずなんだ。この男だけの世界と女だけの世界」

提督「なんだその仮説は」

憲兵「俺の相方が消えているのが論拠だ」

提督「お前の相方なんて知らん」

憲兵「だろうな。一応は艦娘のカテゴリーなのだが」

提督「しかし、女だけの世界ということは深海棲艦もまたそこに」

憲兵「そうなるな。そして、そこではいまだ戦争は続いているわけだ」

提督「やはり早く戻さないとな」

憲兵「決意を改めるのはよろしい。ただし困難はここにある」

憲兵「女は排斥されていない。故に取り戻すことは可能。だが、ヘテロの関係は許されない。ここから導きだされる結論はーーーー」

提督「なるほど。そういうことか。つまり、近しい間柄の女は戻せないと言いたいのか貴様は」

憲兵「正解。現状『女』という類は取り返せるかも知れないが、お前は艦娘という最も大切にする存在を取り戻すことは不可能となっている」

提督「しかし、お前は先程この夕雲が以前の夕雲になるというのは十分ありうることと言ったではないか」

憲兵「言ったな。そして今もそう思っている」

提督「では取り返せないなんてことは」

憲兵「恐らくこの夕雲が完全にお前の知るあの夕雲を取り戻す時、この世界から弾かれる。つまり消えるはずだ」

提督「夕雲と私の関係がヘテロと検知されるのか」

憲兵「そうだ。磁石のプラス極同士が反発するように好意は世界によって引き離される」

提督「では私がマイナスになって艦娘に対し徹底的に冷たく接すれば」

憲兵「それは一つの案としては良い。ただ君に出来るかな? 言っておくとこの夕雲の記憶を戻した所で俺たちを取り巻く事情まで知ることは出来ない。つまり、こいつからしてみれば、急に提督が冷たくなったという印象になるわけだ。泣くかもな」

提督「……どうすれば」

憲兵「俺から何か提案しても良いが、やはりここはこの世界のルールに則り」

提案「まさか」

憲兵「世界、場所、人物、台詞ときたら次は行動だ」

提督たちの次の行動>>48

びっくりするほどユートピアする

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