【艦これ】実録・恐怖の鎮守府 (297)

※キャラ崩壊の可能性あり

※台本書きです

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――とある日の鎮守府・『休憩室』――


女『一体なにが起こってるの!?』

男『そんなのこっちが知りてぇよ!!』


提督「zzz……」ウトウト

電「……」ドキドキ

天龍「ど、どうせ後ろから来るんだろ? 分かってんだオレは」ビクビク

川内「いいとこなんだから黙っててよー」

長門「……」

加賀「……」


男『はぁ、はぁ、なんとか逃げ切ったな』

女『ええ、そうみた……い……』

男『? どうしたんだよ、固まって』


?『……ンデ……マエ』

男『っ!』


幽霊『シンデシマエェェェェェェェ!!』ガシッ

男『うわぁぁぁぁぁぁぁ!!』


電・天龍「きゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」

提督「ハッ! な、なんだ、どうした?」

川内「あははは! 顔おもしろーい!」


提督「……ああ。そういや、みんなでホラー映画を観てるんだったな」


電「こ、怖すぎなのです。夢に出るのです」ブルブル

川内「え? そんなに怖かったかなー、私は楽しめたけどなー」

天龍「今の観て笑うとか正気じゃねぇぞ!」ブルブル

川内「天龍は逆に怖がりすぎでしょー」アハハ


提督「で、面白かったのか?」

電「司令官さんは寝てたのです?」

提督「すまん。仕事明けでな、眠くて眠くて」

電「あ……無理に付き合わせてしまってごめんなさいなのです」

提督「いや、俺も気になってた映画だしな。寝ちゃったけど」

川内「なかなかよかったよ! 特に幽霊の顔が爆笑!」

提督「ホラーを観た後の反応とは思えん」

提督「それとは逆に、電と天龍は見事な怖がりっぷりだな」

電「目を塞いでしまったのです」カァァ

天龍(怖がりだと?)

天龍「……ま」

天龍「まあ、よーく考えたら、あれ作り物だしな」

電「!?」


天龍「そう考えたら怖くはねぇな」フフン

電「嘘つきなのです! ごまかしはいけないのです!」

天龍「ごまかしてねぇよ。見た直後は怖がってたのは認めるがよ」

天龍「もうビビらねぇしヘッチャラだぜ?」

電「ぐぬぬ」

提督「落ち着け電、そう突っかかることでもないだろ」

提督「それよりも」


提督「長門は眉間にシワが寄ってるが、どうした?」

長門「……うむ」

長門「どうも引っかかるんだが、最後に出てきた血の気のない奴は何が目的で現れたのか」

電「幽霊のことなのです?」

長門「そうだ。出てきた理由を説明して欲しかったな」

長門「あと幽霊ならもっと人型に寄せるべきだ。あれではまるで化け物じゃないか」

提督(……いるよなこういう奴。こいつの場合、天然なのかもしれんが)


加賀「長門さんの言う通りよ」

提督「!」

加賀「あまりにも現実離れしていて、ちっとも怖くなかった」

加賀「所詮は創作物ということね。現実で起こる天災や人災の恐怖には到底かなわないわ」

天龍「……なあ加賀」

加賀「何かしら」

天龍「オレの気のせいならいいんだがよ」


天龍「声、震えてねぇか?」

加賀「は?」


加賀「言ってる事の意味が分からないのだけれど」

天龍「そのまんまの意味だよ。もしかしてお前……」


川内「わっ!!」

加賀「!?」ビクッ

川内「あはははっ! 過剰なビビり方だね!」

天龍「一航戦もオバケにゃ敵わないってか? あはははは!」

プチッ

加賀「さすがに頭に来ました」ゴゴゴゴゴ

川内「え? わ! ちょっ」

天龍「おおお落ち着けって!」

電「そうなのです! テーブルを振りかざしたら危ないのです!」


提督「元気な奴らだな」

長門「全くだ。さて……次の映画を観る前に用を足して来るか」

提督「ん? まだあるのか」

長門「川内が本土へ行って、何本も借りてきたからな」スッ

スタスタ

提督「……長門の奴、堂々と厠へ行くとはホラー映画泣かせだな」


天龍「あれ? 長門はどこ行ったんだ」

提督「花を摘みに行った」

天龍「は? 夜にわざわざ外へか?」

電「……天龍さん、もしや勘違いしてるのです?」

電「花を摘みに行くというのは隠語で…」

川内「トイレに行くって意味だよね。私でも知ってるよ」

天龍「!? あ、あー……そういやそうだったな」


加賀「誤魔化したわね」

天龍「!!」


加賀「自分の無知を認めずに見栄を張るのは、とても見苦しいことよ」

天龍「んだとコラ!」

加賀「あら。図星を突かれて怒るなんて、まるで子供ね」

天龍「い、言いたい放題言いやがってぇぇぇ!!」

電「2人ともストップなのです! 喧嘩はダメなのです!」

川内「ねーねー、次どれ観るー?」


提督「……長くなりそうだな」



――十五分後――


天龍「さすがに長すぎねえか」

川内「うん。おっきい方にしても長すぎるよね」

電「川内さん、もうちょっと言葉を……」

提督「けど2人の言う通りだな。何かあったのか?」

川内「便秘とか?」

電「川内さんっ!」

クイッ クイッ

加賀「……提督」

提督「ん、どうした加賀」

加賀「その……お願いが……」モジモジ

加賀「お……お手洗いに行きたいのですが」

提督「お前もか。待ってるから行ってきていいぞ」


加賀「いえ、ですから」

加賀「……つ、ついて来てもらえませんか……」ボソッ

提督「……ああ……なるほど。分かった」スッ

提督「皆すまん、俺と加賀で夜食でも作ってくるから」

提督「3人で待っててくれるか。長門が来たら気にせず映画を観てくれ」

電「分かったのです!」

川内「夜食!? 楽しみ!!」

天龍「ちょうど小腹が空いてたんだよなー」


――鎮守府通路――


スタスタ

加賀「……あの」

提督「ん?」

加賀「ありがとうございます。私を気遣ってくださって」

提督「気にするなよ。怖い物は誰にだってあるしな」


提督「にしても」

ギュウウ

提督「加賀、少し歩きづらい」

加賀「すみません……」

提督「はは、よっぽど怖かったんだな」

加賀「笑わないでください……」カァァ

加賀「触れられない物には、どう対応していいか分からないですし」

提督「まあ、そうだな」

加賀「はい。襲われるにしても、相手が暴漢の類ならこの身一つでどうにかできるのですが」

加賀「例えば関節を外したり、急所を突いたり」

提督(……絶対に怒らせてはいけない艦娘トップランカーだな)



――トイレ前――


提督「夜食用意したいし食堂にも寄るつもりだが」

提督「ここで待ってた方がいいか?」

加賀「お願いします」

提督「でもここから食堂まで10メートルもない…」

加賀「お願いします」

提督「分かったから縋るような目をするな」

加賀「……では」

スタスタ

提督(そういえば、長門もここにいるのか?)

提督(休憩室から一番近いし、呼んだら返事があるかもしれない)

提督「しかし、それは不躾な気が……」

提督「まあ加賀も長門を心配してるだろう。戻ってきたら様子見を頼むか」



ユラァ…


提督「……?」


ユラァ… ユラァ…


提督「あー、まずいな」

提督「疲れのせいだな。窓の外で火の玉が浮いて移動してる幻覚が……」ゴシゴシ

提督「……うん、やっぱりそんなものない」

提督「疲れを溜めすぎるのは良くないな」ハァ…



加賀(……何というか)

加賀(明かりがあるとはいえ、トイレ内がいつもより不気味に見えるわ)

加賀(きっとあんな映画を観たせいね。長門さんが面白そうな内容だと言ったから……)

加賀(そうだわ。長門さんもお手洗いに行ったのなら、ここにいるはず)

加賀(さっきの部屋から一番近いし)


ポチャン…


加賀「!!」ビクッ

加賀(……水の音……?)

加賀(手洗い場かしら……そうね。きっとそう)


ポチャン… ポチャン…


加賀(誰かが蛇口を最後まで捻らなかったのね。全く、仕方ないわね)


ポチャン ポチャン ポチャン ポチャン


加賀「!!?」

加賀(き、急に音が早く……誰かが蛇口を捻った……?)

加賀(でも私以外には提督か……)


加賀「ひょっとして長門さん?」

加賀「長門さんよね。私を脅かそうとしてるのかしら」

加賀「だとしたらあまりにも悪質で子供じみてるわ、今すぐやめて…」


『ウ……ウウウ……ウッ……』


加賀「!?!?!?」

加賀(う、呻き声……!)

加賀(気のせいよ。私の空耳に違いないわ)


『ウウウ……ウ……ウウ……』


加賀(……いえ……確かに、聞こえる……)

加賀(これも長門さん? いえ、誰にしたって限度があるわ)

加賀「いい加減にして! 感情を露わにして怒るわよ!」


『ウウウ……ウウウウウウ……』

ズッ… ズッ… ズッ…


加賀(ひ……引きずる音……?)

加賀(……何かが、こっちに来る……!?)

加賀「誰でもいいわ! お、お願いだからこれ以上は……本当にやめて……!」




ピタッ



加賀(……止まっ、た……?)

加賀(待って。確か今の音、私が入ってる個室のすぐ前で……)



ドンドンドンドンドンドンッ!!!!



加賀「」




提督「そういえば今日は、少し肌寒いな。夏が終わったばかりなのに」

提督「鳳翔のとこで一杯やりたい気分だが、もう閉まってるよな……残念だ」

バタンッ!

提督「お、出てきた…」

ギュッ

加賀「……っ!」ガタガタガタ

提督「ど、どうした加賀?」


加賀「出ました」

提督「は? 出たって……ああ。スッキリして…」

加賀「ち、違いますッ!」

加賀「幽霊です、幽霊が出たんです!」

提督「幽霊ってお前……あの幽霊? ゴースト?」

加賀「とにかく3人のもとへ行きましょう、早く」グイグイ

提督「ちょっと待てって。お前急に出て来たけど、手は洗ったのか」

加賀「……すみません。まだ」

提督「じゃあサッと洗って…」

加賀「トイレには近づきたくありません!」

提督「そのままで過ごすのか?」

加賀「でも……でも……」

提督(かなり取り乱してるぞ……中で何が)


提督「よし分かった。とりあえず食堂へ行こう」

提督「手も洗えるし夜食も手に入る。おまけに広いし、明かりを全部つければちっとも怖くないだろ」

加賀「わ、分かりました。では早速」グイグイ

提督「抱きつきながら引っ張るなよ……」


――食堂――


提督「で、何があった?」

加賀「……」チラ…チラ…

提督(さっきから出入り口を気にしてるが)

提督「加賀、落ち着いて話してくれ。お前の言うことを信じるから」

加賀「……はい」


――――


提督「……そして最後には、ドアを思い切り叩かれた……と」

加賀「にわかには信じがたい出来事ですが」

提督「いいや、俺は信じる」

加賀「……! 本当ですか?」

提督「あの加賀がこんなに怯えてる、それだけで説得力がある」

提督「まあ日頃の行いというか、普段人にイタズラやちょっかいをかける奴だったら、あしらってたかもな」


川内&天龍「へっくしょい!!」

電「2人とも、仲良しくしゃみなのです」

川内「風邪でも引いたかなぁ?」

天龍「フフ……さては誰かがオレのこと噂してんなー?」


――――


加賀「ありがとうございます」ペコリ

提督「お礼なんていいよ、それより」

提督「加賀の身に起きたことは信じるが、幽霊かどうかは疑いの余地がある」

提督「今から俺が確かめて来よう」スッ

加賀「え、女子トイレへですか」

提督「この際致し方ない。言っておくが…」

加賀「はい、提督にやましい気持ちがないことは分かっています」

提督「そう理解してくれると嬉しい。じゃあすぐに戻るから」

スタスタ

書き溜め尽きたのでここまでで…
今週中にまたあげます


加賀「……そうね。幽霊じゃなく艦娘のイタズラかもしれない」

加賀「私の早とちりであって欲しいわね」

加賀「待っている間、おにぎりでも握ろうかしら」


――その頃、『休憩室』――


天龍「しっかし遅えなー。夜食準備にこんなかかるか?」

電「何を作るかにもよるのです」

川内「カップ麺がいいなぁ、時間かかんないし」

天龍「お前……この前こっそり食って、鳳翔さんに叱られたの忘れたのかよ」

川内「でも提督と加賀さんが用意するならワンチャンあるよ!」


パタンッ


天龍・川内・電「!?」ビクッ

電「何の音なのです?」

天龍「さ、さあ……」

川内「……ああ。これだよこれ」スタスタ


川内「ほら、本棚の本」

電「なーんだ、本だったのです」ホッ

天龍「あービビっ……てねえけど、納得したぜ」

電(またごまかしたのです)

川内「あははっ、こんなんで驚くとかビビりだねー!」

天龍「なっ! び、ビビってなんか……!」



パキンッ



天龍・川内・電「っ!?」


天龍「……おい。い、今のは何だ」

電「わ、分からないのです。川内さん?」

川内「さあ……何だろうね」


パキッ パキンッ


電「また聞こえたのです!」


パキ パキンッ パキッ


川内「……これ……、ひょっとしてアレかも」


天龍「アレ? アレって何だよ」

川内「えーと……私も詳しくは知らないんだけど」

川内「ラップ音ってやつ」

天龍「らっぷおん?」

電「電、知ってるのです。ラップ音というのは」

電「この世に存在しない者が、存在する者に送る信号なのです」

川内「なんでそんなオカルトな言い回しなの」

天龍「どど、どういうことだよ! 分かりやすく言えよ!」

川内「んーと、つまり」



川内「その場に幽霊がいるって証拠」

天龍「…………」




パキンッ




天龍「うわあああああああああっ!!!!」

電「きゃあああああああああっ!!!!」


川内「ちょっと、待ってよ! まだそうと決まったわけじゃ…」

天龍「でもそうかもしんねえだろ!? こんなとこ居られるか!!」スタタタッ

ガッ

天龍「あ、あれ?」

電「どうしたのです?」

天龍「ドアが開かねえ!!」

川内「は? う、ウソでしょ?」

天龍「ウソじゃねえよ! いくら引っ張っても……!!」ググググ

電「電も手伝うのです!」スタタタッ

川内「開かないなんて、そんなはずないじゃん!」スタタタッ


ググググ


川内「な……何で? ホントに開かない」

天龍「だから言っただろ!?」

電「はわわわ! これはもしかして幽霊さんの仕業なのです?」

川内「バカな……!」



パキンッ パキッ パキンッ パキッ


天龍「おいまた鳴り出したぞ!!」

電「自己主張が激しいのです! 嫌なのです! 怖いのです!」

川内「ゆ、幽霊なんていないと思ってたのに……」

天龍「うおぉぉぉここから出せえぇぇぇ!!」ドンドンドン

電「電を食べてもおいしくないのですー! 食べるなら天龍さんの方がお肉もついてて美味しいのですー!」

天龍「どういう意味だコラァ!! つーかてめえオレを生け贄にするつもりか!?」

川内「色々ツッコみたいけど2人とも落ち着いてよ!!」



ウオー! ココカラダセー! ドンドンドン…




――食堂――


加賀「……? 今、何か聞こえたような」

加賀「いえ、きっと空耳よ。今の私は疲れてるのよ」

加賀「よし。人数分のおにぎりとお茶ができたわ」

加賀「あとは提督が来るのを……」



パキンッ



加賀「ん? 何かしら今の」


加賀「天井から聞こえたような」


パキッ パキ


加賀「鼠かしら。それか建物の軋む音か」

加賀「……まさか……」

加賀(いえ、いくらなんでも考えすぎよ。これも霊的な何かだなんて)

加賀(ダメね……さっきの事が頭から離れなくて、思考がそっちに行ってしまう)

加賀(こういう時は楽しいことを考えましょう。楽しいこと、楽しいこと)



プツン



加賀「っ!」

加賀(……一番奥の明かりが……消えた?)

加賀(ありえないわ、スイッチはちゃんとオンになっているのに)



プツン プツン



加賀(!? また消えた……奥の明かりが……)

加賀(ま、まるでこっちへ迫ってくるみたいに)


プツン プツン プツン プツン


加賀(これも誰かのイタズラ!? それとも……!)




   プツン



加賀(……とうとう全部、消えてしまった……)

加賀(暗くて何も見えないわ。て、提督に……)




ズッ… ズッ… ズッ…




加賀「!?!?!?」

加賀(こ、これはさっきも聞いた……引きずるような音……!!)

加賀(一体どこから? 何も分からない……! だ、誰か……!)



ズッ… ズッ… ズッ…



ズッ… ズッ…




ピタッ



加賀「……!」

加賀(……す)

加賀(すぐ隣に……何かが……)




『フー……フー……フー』



加賀(い、息づかいも聞こえる……私の……)

加賀(私の、耳元で……っ!)




『……オニギリ……』




加賀「っ!!」




『……オニギリ……チョウダァイ?』




加賀「――ッ――ッ!!!!」






――トイレ前――


提督「んー……何も異常はなかったけどな」

提督「やっぱり誰かのイタズラなのか? 個室も全部空いてて、長門の行方も分からないままだし」

提督「……ここで考えても仕方ない。食堂に戻るか」


バンッ!!


提督「!? な、なんだ?」


天龍「うおおおお!! やっと開いたああああ!!」

電「幽霊さん大嫌いなのですうううう!!」

川内「あっ! 提督!!」


スタタタタッ


提督「お前ら、どうし……待て止まれ!! あぶな…」



ドンッ!!



提督「い……痛つつ……腹にタックルが……!」

電「司令官さん! 司令官さぁぁん!」グシグシ

提督「うお!? 鼻水が服……に……? 電、何で泣いてるんだ?」


天龍「ゆゆゆ幽霊がししし信号を送ってきてそそそそれで」

提督「落ち着け! く、苦しっ……! 首が絞まる!!」

川内「私が説明するよ」

提督「せ、川内。お前は落ち着いてるな」

川内「はは……正直、これでも震えて混乱してるけどね……」


ダンッ!!


提督「ん? 何の音だ」

電「わわっ!」

提督「どうした電」

電「か、加賀さんが」


スタタタタッ


川内「す、すごい勢いでこっちに……!」

提督「え?」


ドォォォォォン!!


天龍「ぐはぁっ!?」


川内「ああ! 加賀さんが天龍を吹っ飛ばして提督に!」

加賀「ブツブツ……ブツブツ……」

提督「か、加賀? おい、どうしたんだ」

電「すごく震えてるのです」

川内「待って、何か言ってるよ?」スッ



加賀「おにぎりはあげますから祟らないで、おにぎりはあげますから祟らないで、おにぎりは(ry」



提督・川内・電「……」

提督「意味が分からん」

電「ひょっとして……。加賀さんも、電たちと同じような目にあったのです?」

提督「同じような目?」

川内「うん……実はね」




ズッ… ズッ… ズッ…




提督・川内・電「?」

加賀「ッ!!」

提督「な、何だこの音」


川内「見て提督、加賀さんが頭を抱えて怯えてる」

加賀「もう嫌……やめて、お願い……」ブルブル

電「こんな加賀さん見たことないのです」

提督「この音がそんなに……?」



ズッ… ズッ… ズッ…



電「何かを引きずっているのです」

川内「ねえ、これ食堂から聞こえない?」

電「あ……ホントなのです」

提督「……?」

提督(今気づいたが、食堂の明かりが消えている)

提督(加賀か。いや、こんなに怯えている奴が律儀に消すとは思えない)

提督(……勝手に消えた?)




ズッ… ズッ… ズッ…



川内「……な……」

電「なんなのです? あの人……!」

提督「!!」

提督(髪の長い……女? 前に垂らしていて顔が見えない)

提督(いや、それよりも……周りの空間が歪んで見える。明らかに異質だ)

電「食堂から出てきたのです!」

川内「こっちに来るよ!?」


加賀「い、嫌……嫌っ……!」スタタタッ

川内「あ! 加賀さん、どこに行くの!?」


提督「みんな加賀の後を追え」

電「えっ!?」

提督「逃げるぞ!」

川内「で、でも」


天龍「」ピクピク

川内「そこでのびてる天龍は?」

提督「……俺が背負う」

提督「とにかく急げ! すぐそこまで来てる!」

電「分かったのです!」

川内「あーもう、ホント何これー!!」


スタタタッ





『フ……フフ……』





――鎮守府通路――


電「はぁ、はぁ……。加賀さん見失っちゃったのです……」

提督「も、ものすごい速さだったな」

川内「あんなの追いつけないよ……いくら声かけても聞かないし」

川内「それよりさ。二人とも、気づいた?」

電「えっ」

提督「何に」

川内「食堂の辺りからここまで、ずーっと逃げて来たけど」

川内「他の部屋に明かりが一つもついて無かったの」


電「それがどうしたのです?」

川内「おかしいでしょ。今はまだ23時だよ」

川内「いつもなら数人の艦娘が起きてるのに、今日は誰も……」

提督「……そういえばそうだな」

電「き、きっとたまたまなのです! みんなとても疲れてて、早めに寝てるのです!」

川内「そうかな。日を跨ぐまでお笑いのDVD観てる龍驤さんや、料理の練習してる比叡さんとか」

川内「必ず誰かの部屋に集まって毎晩お酒を飲んでる艦娘数人も、みんな揃って寝てるのは変でしょ」

提督「お前詳しいな」

川内「まあね。夜更かししてると色んな発見があるんだよ」

提督「しかし、確かに食堂で比叡を見かけなかったし」

提督「あの酒飲み共が今の時間帯で床に就くとは思えないな」

電「じゃあ、何で明かりが消えてるのです?」

川内「んー……何でだろ」

提督「……」


提督「話してても解決しない。ここは実際に確かめてみるのが一番だな」

提督「ひとまず加賀と長門を探しながら、色んな艦娘の部屋を調べてみよう。本当に寝てるならそれでいいし」

川内「えっ、いいの? あんな貞子や伽耶子みたいな幽霊がいるんだよ。みんなにも知らせた方が……」

提督「幽霊?」

電「間違いないのです! きっと電たちを脅かしたのも、あの幽霊さんなのです!」

提督「……そういえばお前たち、休憩室で何があったんだ」

川内「うん。話をしてたら急にラップ音がしてさ」

電「それで怖くなって部屋を出ようとしたら、ドアが開かなくなったのです!」

川内「んで、しばらく叩いてたら急に開いて、逃げ出して提督と鉢合わせ」

提督「ラップ音……って、あの心霊現象のやつか」

川内「私も最初は信じられなかったんだけどね。こんなに出来事が重なっちゃうと……」

提督「……なるほどな」


提督(加賀の異様な怯え方も、その幽霊が原因か)

提督(正直バカらしいが……電はまだしも、オカルトを信じなさそうな川内までこの反応となると)

提督(というか実際この目でそれっぽいの見ちゃったし……信じるしかないのか?)



――入渠ドック前――


加賀「はぁ……はぁ……」

加賀「散々よ……ホラー映画を観ていただけなのに、どうしてこんな目に……」

加賀「提督たちとはぐれてしまったし……どうすれば……」


ガタッ


加賀「っ!?」

加賀(ま、また物音……今度は何なの?)



???「ふぅー♪ いいお湯ですっきりしたー!」



加賀「!?」

加賀(この声は……!)スタタタッ


バッ!


那珂「きゃっ!? な、なーんだ……加賀さんかぁ」

那珂「急に入って来るからビックリしたじゃないですか! もー」

加賀「……」


那珂「……? どしたんです、そんなポカーンとして」

加賀「……っ」ウルウル

ギュッ

那珂「ひゃっ!? ちょ、ちょっと……何で抱きつくんです!?」

加賀「ありがとう。居てくれてありがとう」

ギュウウウ

那珂「意味分かんないです! ていうか、私まだバスタオル1枚で……!」

加賀「あ……ごめんなさい。つい感極まってしまって」

加賀「後ろを向いているから、どうぞ服を着て」

那珂「えっ。あの、できればもう少し離れて」

加賀「早く」

那珂「……はい」



那珂「あのー、終わりましたけど」

加賀「そう。あなたにお願いがあるの」クルッ

那珂「な、何ですか」

加賀「私と一緒に、提督たちを探してくれるかしら」

那珂「提督たち?」

加賀「ええ、はぐれてしまって」

那珂「はぐれたって、なら他の艦娘にも聞けばいいんじゃ……」

那珂「例えば大淀さんに頼んで放送してもらうとか」

加賀「……。そうしたいのは山々なのだけれど」

那珂「あっ……そっか。今は夜遅いし、寝てる艦娘に悪い…」


加賀「違うわ」

那珂「……?」

加賀「聞こうにも、聞ける艦娘がいないのよ」





加賀「艦娘の部屋や各所を回ってみたんだけど」

加賀「1人も見つからないの。たった1人も」

那珂「……は?」




――隼鷹の部屋――


提督「おい、居たか?」

川内「ううん。奴らが飛びつきそうな高級のお酒をエサにしてるけど」

川内「ちっとも反応がないね」

電「こっちもなのです。いくら寒いギャグを言ってもツッコミが来ないのです」

提督「……そうか。事態はいよいよ深刻だな……」

提督「さっきから艦娘の部屋や、艦娘がよく行く場所を探しているのに……1人も見当たらないなんて」

提督「こんなことありえるか?」

川内「そうだね。まるでみんなが一斉に神隠しにあったみたい」

電「せ、川内さんっ! 怖い言葉はやめてくださいっ!」プンスカ

川内「だって、それ以外考えられないし」

提督「というより」

ここまでで
三連休は用事で更新ができないので、明日に少し更新したいと思ってます

というか今日ですね、すみません

コメントありがとうございます!
ちょっとだけ更新します

提督「さっきから、鎮守府が異様な空気に包まれ始めている感じがする」

提督「ひょっとして神隠しにあってるのは俺たちかもな」

電「司令官さんまで……!」ウルウル

提督「……すまん。悪ノリした」


天龍「――んっ」

川内「あっ。提督、天龍が目を覚ましたよ!」


提督「大丈夫か?」

天龍「痛ってぇ……あれ。オレどうなって……」

電「加賀さんとぶつかって、今まで気を失ってたのです」

川内「提督がずっとおんぶしてくれてたんだよ」

天龍「ああ、そうか……提督が……。おんぶ?」

天龍「っ!? い、今すぐ降ろしてくれ! 恥ずい!」

提督「もう大丈夫なのか」

天龍「大丈夫だから!! 歩けるから!!」

提督「無理はするなよ」スッ

天龍「お、おう」

天龍(ホントはまだ少しフラフラするけど……)

天龍「はぁ……くそ、加賀のヤロー覚えてやがれ」

天龍「って、そういや加賀はどうしたんだ? つーかここは?」

電「説明するとややこしいのですが」

川内「手短に話すね」


――――


天龍「か……髪の長い幽霊……それに他の艦娘がいないって……!」ゾクッ

天龍「それ、マジな話なのか? オレをからかってんじゃねえよな?」

提督「マジだ」

川内「大マジだよ」

電「超マジなのです」

天龍「からかってんだろお前ら」

川内「じゃあ試しに他の部屋見回ったら? 誰もいないから」

天龍「……そ、そうか……」

天龍「まあ休憩室でも、あんなに怖ぇ事が起きたからな……信じるぜ」

川内(素直に怖いって言った。今までめっちゃ強がってたのに)

天龍「で? これからどうするつもりなんだよ」

提督「ああ、それを決めようと思ってたんだ。鎮守府から逃げて、どうにかなるわけでもなさそうだが」

電「なのです……」


川内「……はは」

天龍「? なに笑ってんだよ」

川内「いや、今のは乾いた笑いっていうか」

川内「この状況、まるでホラー映画みたいだなーって」アハハ…

電「ホラー映画なのです?」

川内「うん。ポルターガイストに消えた仲間、そして髪の長い幽霊」

川内「結構ベタなホラーの展開じゃない?」

天龍「ベタかどうかは知んねぇけど……確かに映画みてぇだな」

提督「……ホラー映画……か」

提督「なあ川内。ホラー映画の登場人物は、こういう時どんな行動をとるんだろうな」

川内「えっ……いや、あくまで映画の話だし」

提督「こんな状況に立たされて映画も何もないだろ」

提督「色んなことを積極的に試してみよう。打開策が見つかるかもしれない」

川内「そうかな……」

電「電は賛成なのです!」

天龍「オレも。何もしないよりはずっといいだろ?」

川内「……そう、だね」

川内「ビクビクして何もしないよりはマシだよね!」

電「なのです!」

天龍「おう! んじゃさっそく作戦会議だ!」

川内「あ……でも」

川内「実は私、言うほど詳しくないんだよね」エヘヘ

天龍「はあ!? お前よくホラー映画観てんじゃねえか!」

川内「うん、ホラーは観るよ。でも幽霊系はあんまり……」

川内「長門さんなら結構知識あるけど、いなくなっちゃったし」

電「よ、よく分からないのです」

川内「ホラーっていうジャンルの中にも、また種類があるんだよ」

川内「ゾンビだったら詳しいんだけどなぁ」

天龍「知らねぇよ」

提督「で、でもベタな展開は分かるんだろ?」

川内「うーん……そうだなー……」

川内「幽霊の話は、そもそもの原因をどうにかして解決、ってパターンが多いのかな」

電「原因なのです?」

川内「うん。だから、あの髪の長い幽霊がどうして現れたのかを探らないと」

天龍「探るって……どうやって?」

川内「……どうやればいいんだろうね」

電「直接聞けばいいのです!」

提督「思い切りがいいな」

天龍「やれるならぜひやってくれ電」

電「はわわ……じょ、冗談なのです……」

川内「んー、じゃあとりあえず食堂付近に行ってみる?」

川内「何か手がかりが見つかるかもしれないよ」

提督「そうするか。加賀の身に何かが起きたトイレも近くにあるし」

天龍「行きたくねえけど……しゃーねぇ」

川内「あいつに遭遇しないことを祈るのみだね」

電「なのです!」


天龍「……電、これで何も進展がなかったら」

電「?」

天龍「幽霊に質問しろよ」

電「っ!?」

天龍「言い出しっぺだからな」

電「だから、あれは冗談なのですっ!」アタフタ

電「うぅ……言わなければよかったのです……」

スタスタ



――その頃、『執務室』――


加賀「いないわね」

加賀「ここで待っていれば来るかしら」

那珂「……」

加賀「……那珂さん、どうしたの?」

那珂「いや……まさか」

那珂「私がお風呂に入ってる間、みんながいなくなってるなんて思わなくて」

那珂「言葉が出ないっていうか」

加賀「無理もないわ」

加賀「私だってまだ受け入れたくないもの」

那珂「あの……ということは」

加賀「?」

那珂「加賀さんの身に起きた事も、髪の長いオバケも、全部ホントのこと?」

加賀「ええ、間違いなく。私のすぐ隣まで迫って来たのよ」

加賀「おまけに耳元で囁かれて……ダメ、思い出したくもないわ」

那珂「……そ、そっか……全部ホントのこと……か」ブルブル

加賀「……」

加賀(震えてる。当然ね、意味も分からずこんな状況に陥って)

加賀(私もいつまでも怯えてる場合じゃないわね。那珂さんを守らないと)

那珂「……」

加賀「大丈夫よ、安心して。私が側についてる…」


那珂「よっし!!」パンッ

加賀「!?」ビクッ


加賀(自分の顔を、両手で叩いた……!?)

加賀(もしかして恐怖のせいで頭が……)

那珂「あたた……ちょっと気合入れすぎちゃった」

加賀「な、那珂さん?」

那珂「はい? ああ、ごめんなさい。もう大丈夫ですから!」

加賀「えっ、大丈夫って……」

那珂「そりゃ唐突にこんなこと起きてわけ分かんないですし、ちょっと……いえ、かなり怖いですけど」

那珂「だからと言って逃げてたら、何も解決しませんよねっ☆」キラッ

加賀「……」

那珂「おどおどせず現実を受け入れないと! それに」

那珂「テレビのお仕事で、心霊特番とか呼ばれた時の予行演習にもなりますし!」エヘヘ

加賀(……こ、この娘……)

加賀(かなりの度胸の持ち主ね。長い間過ごしていて今更気づくなんて)

那珂「加賀さん、これからどうします? 私はここから移動して、提督たちを探したいなって思うんですけど」

那珂「何ならオバケに立ち向かっちゃいます? なーんて!」

加賀(なんだか……今まで逃げ回ってた私がバカみたい)フフッ

ここまでで
来週にまたあげますm(_ _)m

加賀「ありがとう那珂さん。おかげで勇気が沸いた」

那珂「へ?」

加賀「実は私、あなたと出会うまで幽霊が怖くて震えていたの」

加賀「一航戦が情けない話ね……でも、もう平気よ。これからはあなたを引っ張るくらいの気持ちで…」


ガチャガチャ!!


加賀・那珂「!?」


…コンコン


那珂「だ、誰だろ」

加賀「……私に任せて」

那珂「加賀さん?」

加賀「きっと提督よ。すぐ確認するからそこで待っていて」

那珂「念のため慎重に行動した方が…」

加賀「ええ、心配しないで」スタスタ

加賀(要は考え方の問題ね。気を張り詰めすぎず、良い意味で楽観的になれば心にも余裕が生まれる)

加賀(現に今の私は、どんな状況も冷静に対処できる自信があるわ)


スタスタ

加賀「……」チラッ

那珂「……」コクリ

加賀「誰?」

提督「おお、その声は加賀か!」

加賀「! ……はい」

加賀(よかった。やっぱり提督だわ)ホッ

加賀「そうです、私です」

提督「なぜ執務室に?」

加賀「提督たちを探していたらここに行き着いて」

加賀「また探しにここを出ようか考えていたところなんです」

提督「なるほど……あと少し遅かったらすれ違ってたな」

加賀「ええ。待っていて正解でした」

提督「とりあえず、ここを開けてくれるか」

加賀「はい」スッ

那珂「待ってください!」

加賀「? どうしたの那珂さん」

那珂「なんか、おかしくないですか」

那珂「提督の声しか聞こえないし。他のみんなは?」

提督「……」

加賀「考えすぎよ」

那珂「でも」

提督「どうした、早く開けてくれ」

加賀「……。分かった、用心しましょう」

那珂「は、はいっ」


加賀「提督」

提督「なんだ? 開いたのか?」

加賀「いえ……あの」

加賀「他の皆はそこにいるんですよね」

提督「……いや」

提督「実ははぐれてしまってな。詳しい話は入ってからにしよう」

加賀(はぐれた?)

加賀「何かあったんですか」

提督「だから詳しい話は入ってからだ」

加賀「……」

那珂「加賀さん……」

加賀「……」

提督「どうした加賀。早くしてくれ」

加賀「すみません提督、まずどうして皆とはぐれたのかを説明して頂けますか」

加賀「こちらが納得できれば鍵を開けます」

提督「……分かった」

提督「さっき皆と一緒に行動していたら幽霊が出たんだ」

提督「お前も見ただろう、髪の長い奴だ」

加賀「……」

提督「で、逃げているうちにバラバラになってしまって」

提督「皆を探していたら、途中で那珂と会ってな」

加賀・那珂「っ!?」

加賀「那珂さんと?」

那珂「そ、そんなはず……ありえないよ……」

提督「それで…」

加賀「待ってください提督。那珂さんは私と行動を共にしていたんです」

加賀「仮に那珂さんと会ったのなら、一緒にいる私とも顔合わせしたはず」

提督「……」

加賀「しかし私にはその覚えがありません。もちろんここにいる那珂さんにも」

加賀「どういうことなのか、説明を」

提督「……」


スタタタタッ


加賀(! 足音が遠ざかっていく)

那珂「どうしました?」

加賀「いなくなったわ」

那珂「ど……どういうことですか?」

加賀「あなたの予想通り、提督じゃなかったのかも」

那珂「やっぱり! でも……」

那珂「声は丸っきり提督だったのに……オバケってボイスチェンジできるんですか?」

加賀「さあ。でもありえない話ではないわね。そもそも存在が異様だから」

那珂「はー……オバケって高性能なんですね……」

加賀「……」

ペタン

那珂「わ! 加賀さん大丈夫ですか?」

加賀「ええ……緊張が解けただけよ」

那珂「あはは、なるほど。ずっと脚が震えてましたもんね」

加賀「! き、気づいてたの?」カァァ

那珂「そりゃあれだけガクガクしてれば嫌でも」

加賀「どうかこのことは内蜜に」

那珂「ふふ、誰にも言いませんってば」

加賀「ありがとう……」

加賀(感化されて強がったけれど、やっぱり怖いものは怖いわね……)



ギャアアアアアア!!



加賀「……! 今のは……悲鳴?」

那珂「遠くの方から聞こえましたね」

那珂「どうします? 助けに行った方が……」

加賀「いえ、また幽霊が偽装している可能性があるわ」

加賀「それに助けに行ったところで、私たちには何もできない。ここにいて合流を待つのが吉よ」

那珂「できますよ! みんなを誘導してここに連れて来ればいいじゃないですか!」

那珂「そうすれば人数も増えて心強いし、これからの作戦をじっくり練れますよ!」

加賀「……そうかしら」

那珂「はい。こういう時はどんどん行動した方が、いい結果に繋がりやすいと思います」

加賀「……」

加賀「そうね……そうかもしれない。ちょっと慎重になり過ぎていたかも」

加賀「分かったわ、ここを出て皆を助けに行きましょう」

那珂「えへへ! そう来なくちゃ!」

加賀(この子……こんなにアクティブだったのね……)



――診察室――


天龍「ちくしょう……マジだ、マジで居やがった……!」

天龍「髪の長い幽霊……あいつのせいでみんなバラバラに」

天龍「つーか怖すぎだろ! トイレ近い時に見たら絶対漏らす自信があるぞ」


川内「できれば持ちたくない自信だね」

天龍「っ!?」ビクッ


天龍「せ、川内!! 居たのかよ心臓止まりかけたぞてめえっ!!」

川内「しっ……! 口にチャックして。大声出すとあいつに見つかるよ……!」

天龍「……」

川内「うん、オッケー。提督と電は知らない?」

天龍「……知ってたらそっちにオレも逃げてる」

川内「ホントビビりだねー」

天龍「あんなん見たら誰だってビビるっつーの……!」

川内「てか結局、食堂付近を調べる前に散り散りになっちゃったし」

川内「どうしようね?」

天龍「どうするって、こっちが聞きたいくらいだよ。お前ホラー好きなんだから何か策を考えろよ」

川内「だから幽霊系は得意じゃないんだって」

天龍「ちっ、使えねーな」

川内「……」ムカッ

川内「へー……そういうこと言うんだ」

天龍「な、何だよ。事実だろ」

川内「そっかそっかー。じゃあ」

川内「私はこれから1人で提督と電を探すから、天龍はここにずっと隠れてればいいよ」

天龍「は?」

川内「じゃね」スタスタ

天龍「ちょ、待て」ガシッ

天龍「オレが悪かった。謝るから一緒に居てくれ」

川内(手のひら返すの早っ)

川内「……ごめんなさいは?」

天龍「ごめんなさい」

川内(面白いくらい素直ー。普段もこんな感じならいいのに)



『ドコダ……ドコニイル……』



天龍・川内「!!」

天龍「い、今……通路の方から声が……!」

川内「すぐ近くにいるんだよ、隠れて……!」


ガラッ!


『……ドコニ……イルノ……?』


川内(危なかった)

天龍「お……おい」

川内「なに」

天龍「ベッドの下はさすがにキツイだろ」

川内「しょうがないじゃん、他に隠れるとこないし」

天龍「でもよ……か、下半身が引っかかって……」

川内「ああ、天龍お尻が大きいもんね」

天龍「あ? てめ、こんな時に喧嘩ふっかけて…」

川内「待って……! マズイ」


ズッ… ズッ… ズッ…


川内「入ってきた」

天龍「……っ」

天龍「ど、どうすりゃいいんだ?」

川内「ジッとしてて」


ズッ… ズッ…


『……ドコニイル』


ズッ… ズッ… ズッ…


『フフ……ウフフフフヒヒヒヒ』



天龍(わ、笑ってる……! どっか行けどっか行けどっか行け)

川内「……」



『……イナイ……ノカ……ココニハ……』



ズッ… ズッ… ズッ…


ガラガラ


ピシャ



川内「……」

天龍「……い、行ったみたいだな」

天龍「はー、薄ら寒いのに汗でびっしょりだ」

川内「ストップ」

川内「まだ安心するのは早いよ」

天龍「大丈夫だろ。もう部屋出て行ったし」

川内「いいからもうちょい大人しくしてて」

天龍「? 何を根拠に…」


ガラガラ!!



『……ヤハリ……イナイ……』


ガラガラ


ピシャ


ズッ… ズッ… ズッ…




天龍「……っ……!」ドキドキ

川内「ね? 一度いなくなったと思わせて」

川内「実はまだいるってのが、ホラーのお約束の一つなんだよ」

天龍「……も、もう出ていいのか?」

川内「足音が向こうの方に行ったし、大丈夫だよ」

天龍「そうか。よかった……」


川内「ふぅ、なんとかやり過ごしたね」

天龍「……川内」

川内「ん?」

天龍「その、さっきは……マジで悪かった」

天龍「使えねーとか言ってよ」

川内「もういいよ。すぐ謝ったし」

天龍「あれは1人になるのが嫌で、引き止めるために仕方なくっつーか」

天龍「本気で謝らせてくれ。ごめん」スッ

川内「あ、頭まで下げなくても……。私の方こそイジワルしてごめんね」

天龍「おう、気にすんな。それよりもこれから頼りにしてるぜ」ヘヘッ

川内「うーん……過度な期待を寄せられても困るけど」

川内「まあできるだけ頑張るよ!」エヘヘ



ズッ… ズッ… ズッ…



天龍・川内「!!!!」

天龍「ま、またこの音……戻ってきたのか!?」

川内「違う」



ズッ… ズッ… ズッ…



川内「こ、これ」

川内「私たちの後ろから聞こえる」

天龍「……!!」


天龍・川内「……」ソー…




『ミーツケタ』




天龍「」

川内「……まさか裏の裏とは……」



『アハハハハハハハハハハハハハ』



キャアアアアアアアアア…!




――鎮守府通路――


提督「はぁ、はぁ……やっと撒いたか」

提督「あと少しで加賀と合流できたのに……くそ、幽霊が来なければ……」

提督「仕方ない。もう一度執務室へ行って、今度こそ……ん?」


シクシク… シクシク…


提督「泣き声だ」

提督「幽霊が新しい脅かし方を試してるのか。それとも艦娘の誰かか」

提督「……行ってみるか」スタスタ



――愛宕・高雄の部屋――


提督「ここか?」


シクシク… シクシク…


提督「……」

コンコン

提督「誰かいるのか?」

電「! し、司令官さん……なのです?」

提督「電か! よかった……」

提督「しかし、何で愛宕と高雄の部屋に?」

ここまでにします
内蜜…誤字してたorz 続きは今週中に

電「えっと……幽霊さんから逃げるのに必死で、気がついたらここにいて」

電「出ようにも出られなくて、ずっと隠れてたのです」

提督「……なるほど。俺も今逃げてきたところなんだよ」

提督「執務室に加賀がいてな。合流しようと思ったんだが中に入る前に幽霊が現れて」

提督「それで仕方なく会話を切って……」

電「加賀さんは入れてくれなかったのです?」

提督「やたら用心深かった。それにあのまま執務室に入っていたら加賀にも危険が及ぶ可能性もあったし」

提督「ところで、そろそろ入ってもいいか。あいつが来ない内に」

電「あっ、待ってください!」

提督(またか)

提督「どうした?」

電「あ、あの……その……今は誰とも会えない……のです」

提督「……? 何で?」

電「訳は言えないのです! ごめんなさいなのです!」

提督「納得できないぞ。こんな状況だし、一刻も早くみんな揃った方がいいだろ」

電「……」

電「でも……恥ずかしい、のです」

提督「は?」

電「し、仕方ないのです。司令官さんだから打ち明けるのです」

電「実は電……幽霊さんが怖くて怖くて……」

電「それで……映画を観てた時にお茶を飲みすぎてて……それで、えっと……」

提督「……」

提督「粗相したのか」

電「はわわ……」

電「だ、誰にも言わないでください! 幽霊さんが脅かさなければトイレにも行けたのです! ホントなのです!」

提督「分かってる、幽霊が全部悪いよ。今聞いたこともずっと胸にしまっておくから」

提督「だからここを開けてくれ」

電「……その前に、お願いしてもいいのです?」

提督「お願い?」

電「なのです。司令官さんにこんなお願いしていいのか分からないのですが」

電「濡れてしまったものを脱いだので……電は今、下がスースーしているのです」カァァ

提督「……」

電「だから、今から電のお部屋に行って……」

提督「まさか替えの下着を取って来てくれと?」

電「司令官さんにしか頼めないのです」

提督「なあ電。今は緊急時なんだ、パンツくらい…」

電「電は緊急事態の板挟みなのです! それにぱんつくらいなんて」

電「司令官さんはデリカシーがないのです!」

提督「……そ、そうか。悪かった」

提督「でも男の俺じゃなくて、川内とか天龍とか他にいるだろ」

電「他のみんなはいつここを通るか分からないのです」

電「それにバカにしてくるような人が揃い踏みなのです。お願いします……何も穿かずに過ごすのは嫌なのです」

提督「しかしな……」

提督「ん、いや待て。そこにある物を借りるのはどうだ?」

電「え?」

提督「愛宕と高翌雄のだ。やっぱりサイズ的に無理か」

電「ああ……ここは2人のお部屋だったのです?」

電「一応さっき探してみたのですが」

電「合わないものばかりなのです。それに……はわわ……!」

電「電には色んな意味でまだ早いのです! ザ・大人なのです」

提督「……聞いた俺が悪かったな、すまん」

電「あ、縞々があったのです」

提督「……」

電「あ! フリフリがついてるこれは可愛いのです! でもこっちの面積が小さい黒の…」

提督「実況しなくていい」


――――

スタスタ

提督「結局取りに行くことになった」

提督「なんでこの状況で……まあぐちぐち言っても仕方ないけど」

提督「電の部屋は確か2階。ここは3階だから、階段を使って……」

スタスタ




――第6駆逐隊の部屋――


提督「ここだな。鍵も開いてる」

提督「他のメンバーはいないな……本当に皆消えてしまったのか……」

提督「えーと、ここのタンスか?」

提督「あった。けどどれを持っていけばいいのやら」ゴソゴソ

提督「……あかつきのは分かりやすいな。名前がしっかり書いてある」

提督「まあ適当に見繕おう。このネコでいいか」

提督「……」

提督「しかし、こっそり忍び込んで女児の下着を漁るこの絵面。かなりヤバいよな」


――――


ズダダダダダッ

天龍「うおおおおおおおお!!」

川内「天龍っ! 私を押しのけないでよ!」

天龍「お前がオレの邪魔をしてんだろうが!! んなことより!」

天龍「後ろ見てくれ! あいつはまだ追っかけて来てるか?」

川内「なんで私が確認するの!?」

天龍「頼むよオレ怖すぎて見れないんだよ!!」

川内「あのね……言っとくけど私も怖いんだから!!」

川内(はぁ、仕方ないなぁもう……!)

川内「……」チラッ


『イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ』


川内「めっちゃ笑ってるしめっちゃ追いかけてきてる!!」

天龍「めっちゃ怖えぇぇぇぇぇ!!」


ズダダダダダッ


――――


スタスタ

提督「さて、早く電のところ……に……?」

提督「今……遠くから声がしたような」


ズダダダダダッ


提督「!?」

天龍「提督っ!!」

川内「止まれない避けてーーーー!!」


ドーーーーーーン!!



提督「ぐふっ!? ま……また衝突か」

川内「だから避けてって言ったのに……」

提督「無茶言うな!」

天龍「……はっ! 川内あいつが来るぞ!」

川内「そうだ早く逃げないと!!」

提督「何? 幽霊が出たのか!?」

天龍「ああ出たんだよ!! 提督も一緒に逃げ……」

天龍「あれ」

川内「い、いない」

提督「なんだ?」

川内「あのね! 私たちさっきまで追いかけられてたんだけど」

天龍「消えた……どっかに潜んでるんじゃ」ササッ

川内「ありえるね。神出鬼没だもん」ササッ

提督「おい、俺を盾にするように後ろに隠れるな」

天龍「でも提督男だろ? 女のオレたちを守るのが役目ってもんじゃねぇのかよ」

提督「その意見に文句はつけんが、お前はもう少し女らしく振る舞え」

天龍「ぐっ……い、痛いとこ突くじゃねぇか」

提督(自覚してるのか)

ハラリ

川内「ん?」

川内「ねえ提督、ポケットから何か落ちたよ?」

天龍「何だそれ」

提督(ポケット? ……ま、まさか!!)


天龍「……」

川内「……これ」

天龍「……パンツか……?」

川内「うん、しかも駆逐艦の」

提督「こ、これはその……違うんだよ!」

提督(マズイ。このままだと)

提督(俺が、混乱に乗じて艦娘のパンツを盗むような変態だと思われてしまう)


天龍「驚いたぜ」ジリジリ

川内「提督ってこういうことする人だったんだ。しかも駆逐艦相手に……」ジリジリ

提督「露骨に距離を置くな! お前ら怖かったんじゃないのか!」

川内「今となっては提督も恐怖の対象かなぁ」

天龍「安心しろよ、黙ってるから。そのかわり極力オレに近づかないでくれ」

提督「待て!! お前らは大いに誤解してるんだ、これは……!」


電『だ、誰にも言わないでください! 幽霊さんが脅かさなければトイレにも行けたのです! ホントなのです!』

提督『分かってる、幽霊が全部悪いよ。今聞いたこともずっと胸にしまっておくから』


提督「……っ」

川内「まあ……そうだね。提督がこんなことするような人に思えないし」

天龍「……それもそうだな。言い分を聞いてから判断してもいいか」

川内「で、どういう誤解なの?」

提督「……」

提督「じ、実はな」


提督「俺にもよく分からないんだよ」

天龍・川内「はあ?」


提督「俺も今気づいた。何でポケットから艦娘のパンツが?」

川内「いやでも提督、第六駆逐隊の部屋から出てきたよね」

提督「ただ隠れてただけだ。ここが六駆の部屋だというのにも今気づいた」

天龍(なんか胡散くせぇな)

提督「本当だ信じてくれ」

川内「ふーん……じゃあ何?」

川内「これも心霊現象の一つで、幽霊がポケットにこっそりパンツを忍ばせたとでも?」

提督「ああ、それだ! それはありえるな! 全く幽霊の奴め」

提督「きっと仲間の信頼関係を壊して本当の意味でバラバラにするつもりなんだ。恐ろしい」

天龍・川内「……」ジー

提督(視線が痛い)

川内「……分かったよ」ハァ

提督「!」

川内「その線で信じてあげるよ」

天龍「正直ウソにしか思えねぇけど、提督がパンツ盗むよりかは信じられるしな」

提督「お前ら……ありがとう」


川内「じゃあ、これは私が元の場所に返しとくね」スタスタ

提督「!?」


提督「待て!」バッ

川内「え」

天龍「お、おい提督……パンツを奪い取って何してんだよ……」

提督「いや……その」

提督「これはひょっとして呪いかもしれない」

川内「呪い?」

提督「こうは考えられないか」

提督「幽霊はこのパンツにありったけの怨念を込めてポケットに入れた」

提督「で、ポケットからパンツを引き離そうとすると、その怨念が俺の命を削り取ってしまうんだ」

川内「なにその変な呪い!?」

天龍「バカらしいにもほどがあるぞ!!」

提督「もっともだ。しかし現に川内がパンツを持っていこうとした時」

提督「少しずつ息苦しくなっていくような気がした」

提督「だから可能性はある」

天龍・川内「……」

天龍「おい、提督どうなっちまったんだよ」ヒソヒソ

川内「こっちが知りたいよ。もしかして恐怖で頭が……」ヒソヒソ

提督(すごく変な目で見られている。当然だ、状況が状況とはいえ)

提督(頭のおかしいことを……俺は……)



ズッ… ズッ… ズッ…



提督・天龍・川内「っ!?」

天龍「こ、この音……」

川内「まさかまた……!」



『……ウフフフフ……ミツケタ……』



提督「来た! 後ろからだ、逃げるぞ!!」

天龍「また追いかけっこかよぉぉぉぉ!!」

川内「パンツについて話してる場合じゃなかった!!」

スタタタタッ


提督(ありがとう幽霊、今だけは感謝する)

提督(あとはこいつらを電のいるところへ)

提督「2人ともこっちだ!」

提督「さっき電を見かけたんだ、合流しよう!」

川内「電を見たの?」

天龍「なんで先に言わねえんだよ!」


スタタタタッ




――愛宕・高翌雄の部屋――


電「はわわ……そんなことが……」

天龍「は、走りっぱなしで疲れたぜ」

川内「落ち着ける場所がないって、かなりキツイね」

提督「……」

提督「電、これを」ボソッ

スッ

電「あ……。あの、二人には……」

提督「言ってないから心配するな」

電「……! ありがとうなのですっ」ニコッ

提督(かわりに誤解を与えまくったが)

提督「2人の注意を引きつけておくから、こっそり穿いて来い」

電「なのです」スタスタ


提督「そういえば川内、何か手がかりは見つかったか?」

川内「え? 手がかりって、幽霊の?」

川内「……強いて言うなら、提督が持ってるパンツかな」ジー

天龍「だな」ジー

提督(またこの目)

川内「まあ冗談はさておき、何もなかったよ。ってか探す余裕もない」

天龍「オレも逃げんのが精一杯だ」

提督「そうか……かく言う俺も、見つけたのは加賀くらいだ」

天龍「えっ、加賀がいたのか?」

提督「ああ、執務室にな」

提督「入ろうとしたら幽霊が現れて合流できなかったが……」

川内「じゃあこれからすることは決まったね!」

川内「まずは加賀さんと合流して、今度は離れないよう行動する」

川内「状況打開については歩きながら考えようよ!」

天龍「川内の意見に賛成だぜ。大勢で行動した方が気も紛れるしな」

提督「うん、そうしよう。ただ俺が執務室に行ったのは数十分前だから」

提督「加賀が今もいるかどうか分からない。なるべく早めに行こう」

スタスタ

電「何か決まったのです?」

天龍「……電。そういやお前、隅っこで何してたんだ」

電「へ? あ、えと……何か使える物がないか探してたのです!」

川内「使える物、か」

電「なのです。でも」

電「愛宕さんと高翌雄さんの服や下着しかなかったのです」

川内「……服や……」

天龍「……下着、ねえ……」

提督「どうしてこっちを見る」

川内「そういや提督、呪いのパンツはどうしたの」

天龍「ポケット確認しろよ。またパンツが増えてるかもしれねぇぞ」

提督(こいつら徹底的にバカにしてるな)

電「ぱんつ、なのです?」

ここまでにします。高翌翌翌雄って誰だ…また誤字
次は水曜あたりに

うお、なんか打ち込んだコメントと違う

メール欄に saga で高翌雄のバグがなくなるで

>>122
ありがとうございます

1よメ欄にsaga入れな

>>133
そうでした、すみません
今更ですが…

天龍「電は知らなくて……いや知っといた方がいいかもな」

川内「提督のポケットにね、知らない内にパンツが入ってたんだって。駆逐艦の」

天龍「おまけに呪いがかかってるんだと。電は危ねえから近寄んなよ」

電(それって……!)チラッ

提督(いいんだ電。俺のことは気にするな)

電(……司令官さん……ごめんなさいなのです)



――その頃、食事処間宮――


那珂「誰もいませんね」

加賀「そうね。絶え間なく続いていた悲鳴を辿って来たのに、急に途絶えてしまって」

加賀「やっぱり幽霊の仕業だったのかしら」

那珂「……だとしたら、すみません。加賀さんは疑ってたのに」

加賀「いいのよ。提督たちの可能性もあったんだし、結果は違ったというだけ」

加賀「また一から探しましょう」

那珂「は、はいっ」

加賀(……本当に嫌な夜)

加賀(天気予報が曇りだったせいか、星ひとつ見当たらないわ)

加賀(月明かりもぼんやりしていて不気味ね)

那珂「あれ?」

加賀「? どうしたの」

那珂「いえ……たぶん気のせいです」

加賀「いいから教えて」

那珂「……」

那珂「えっと……資材置き場の方から、何か音がしたような」

加賀「資材置き場?」

那珂「はい。でもあそこって、今ライトが故障してて明かりがつきませんよね」

那珂「さすがに確かめに行くのは怖いかなーって」

加賀「……そうね」

加賀「覚悟を決めるしかないわ」スタスタ

那珂「え? 行くんですか!?」

加賀「仕方ないでしょう。資材置き場はただでさえ危険な場所なのよ」

加賀「幽霊の仕業でなくても、山積みになっているたくさんの資材が崩れ落ちて」

加賀「提督たちがその下敷きになっているかもしれない」

那珂「で、でも……」

加賀「さっきまでの威勢はどうしたの、早く行くわよ」グイッ

那珂「ちょっ、待ってください! 加賀さんは逆に行動的になってませんか!?」

加賀「あなたのおかげで少し冷静になっただけよ。一航戦がいつまでもビクビクしてるわけにはいかないし」

加賀「普段の出撃のように引っ張らないといけないから」

加賀「今は艦隊じゃなくてあなたをね」

那珂「うー……」

加賀「けれど」

那珂「?」

加賀「怖いものは怖いわ。幽霊が出た時は一緒に戦いましょう」ガクガク

那珂「脚震えてますね」

那珂「了解です、私も根性出します……!」

那珂「ただ戦うのはさすがに勘弁です。引きずる音がしたら即逃げましょう」アハハ…

加賀「……ええ、そうね。賛成よ」

スタスタ



――執務室――


バンッ!

提督「加賀!!」

電「い、いないのです」

川内「見事にすれ違ったね」

提督「……やっぱり、あの時執務室に入っていれば……」

天龍「落ち込むなよ。逆に言えば、入らなかったからオレたちと合流できたんじゃねえか」

天龍「過ぎたこと責めても仕方ねえよ」

提督「……そうだな」

電「あの、次はどうするのです? 加賀さんを探すのです?」

川内「もちろん。でも打開策を考えながらね」

天龍「打開策、ねぇ……手がかり探しにまた食堂行くのか?」

天龍「奴が出てきたらどうしようもねえぞ」

川内「それなんだよねー、下手したらまたバラバラになるし」


ズッ… ズッ… ズッ…


提督・天龍・川内・電「!?」

提督「この音……通路から?」

電「大変なのです! ドアを閉めないと!」

川内「私に任せて!」スタタッ

バタンッ

川内「……」


ズッ… ズッ… ズッ…


天龍「す……すぐ側に居やがる」

提督「……」




ズッ… ズッ… ズッ…


ズッ… ズッ…


……



川内「……」

川内「……行ったみたい」

電「はわわ……冷や冷やしたのです」

天龍「いや、まだ安心するのは早いぜ」

天龍「幽霊の奴、ドアが無くても自由に部屋を行き来できるんだ」

提督「何? 本当か」

川内「うん、私と天龍がそれで一杯喰わされてさ」

天龍「あの時は何とか逃げられたけど、次同じ目に遭ったらどうなるか」

電「……あれ?」

電「あ、あの……」

電「それじゃあつまり」

電「執務室のドアに注意しても」

天龍・川内「…………」

電「い……意味がない、ということなのです……?」

天龍・川内「…………」


川内「だね」

天龍「意味ねえな」

電「は、はわわ……」



『ウフフフフフ……』



提督「!!」

電「幽霊さんの声なのですっ!」

天龍「へ……部屋の中から聞こえねえか……?」

川内「っていうか……!」



『アハハハハ……ヒヒヒ……』



川内「提督の机の下から……」

天龍「出てきやがった!」

提督「ドアを開けろ!!」


ガチャガチャ!


川内「あれ? ウソ、開かないよ!?」

天龍「んだと!?」


ガチャガチャガチャ!


天龍「あーくそ! またカルチャーテイストか!!」

川内「ポルターガイストって言いたいの?」

電「こっちに迫って来るのですっ!」



ズッ… ズッ… ズッ…



『イッショニ……アソボ……イヒヒヒヒ』



提督(くそ……万事休すか……?)

天龍「そうだ!」

天龍「おい電、腕の見せ所だぜ!」

電「ふぇ?」

天龍「お前言ってただろ、幽霊に質問すればいいってよ」

電「……」


天龍「やってみろ!!」

電「!?!?!?」


電「い、嫌なのです! 絶っ対に嫌なのです!」ブンブンブン

天龍「言い出しっぺの法則ってやつだ、ついててやるから頑張れ!」グイグイ

電「押さないでなのですっ! 天龍さんは鬼畜なのですっ!」

提督「おい天龍!!」

川内「待って提督、やらせてみよう」

提督「でも……!」

川内「もう目の前まで行っちゃったし、祈るしかないよ」

提督「……」




『……フフフ……』



天龍「ほら、早く質問だ」

電「な、な……何を聞けば……っ」

天龍「あ? んーと、その前にまずは挨拶だろ」

電「はわ……えっと……えっと……」


電「こ、こんにちは……なのです……」ニコッ



『…………』



電「……無視なのです」

天龍「……ひょっとして外人か?」

電「はろーなのです」


『…………』


天龍「んだよ礼儀がなってねえな。まあいい、質問だ」

電「なのです」

川内「……」

提督「あいつら悠長だな」



天龍「何でオレたちを襲うのか聞け」

電「……幽霊さんは、どうして電たちを追いかけるのです?」


『……フフ……』

『フフフフフフフフフフフフフフフフフ』


電「わ、笑われたのですっ」

天龍「なな、何がそんなにおかしいのか聞け……!」

電「あの……ゆ、幽霊さん……」

電「何でそんなに笑ってるのです……?」


『……タ……』


『……テ……ヤロ……』


天龍「!」

電「何か言ってるのです」

天龍「耳をすませろ!」


天龍・電「…………」







『タ ベ テ ヤ ロ ウ カ ?』








天龍・電「」



『アハッ』


『アハハハハハハハハハヒヒヒヒヒヒヒ』



ズッ… ズッ…



川内「やば! また動き出した!」

提督「失敗か、2人とも逃げろ!!」


電「……電はおいしくないのです……電は……」ガタガタ

天龍「」


川内「ダメだよ! 電は腰が抜けてるっぽいし、天龍は泡吹いて気絶してる!」

提督「くそっ!」スタタタッ

川内「提督!? 何するつもり!?」

提督「2人に……近づくなぁぁぁ!!」

少なめですがこの辺で
土日に一気に進めたい…





ドン!!!! 

ガラッシャーン!!!!




川内「……て、提督」

川内「幽霊に体当たりして、2人を……」





川内「…………あれ?」

川内「体当たりが、できた???」





提督「ぐう……げほっ、ごほっ……!」

提督「ま、まさか触れることができるとは」

提督「ん?」

ムニュ

提督「何だこの手触り」

???「うぅ……」ピクピク

提督「なっ……! お、お前は……!」





提督「赤城!?」



赤城「……お、お腹に……ダイレクトアタックが……」ピクピク

川内「幽霊が……赤城さん!? ど、どういうこと?」



ガチャッ



『ウフフ……ツイニバレチャッタ』




川内「ぎゃあぁぁぁぁ!? ここここっちが本物の幽霊!?」



『ア……』


『コノマスク、トラナイトネ』スッ



提督「!?」

川内「えっ! ウソ……」


提督・川内「龍田っ!?」

龍田「うふふ、怖がってくれたかしら~」


川内「ゆ、幽霊が2人いて? それが赤城さんと龍田?」

提督「お前……これはどういうことなんだ!? 説明しろ!!」

龍田「そんなに怒鳴らないで~。もちろん説明するわ……でも、その前に」

龍田「みんなのコンディションが色々マズイことになってるから」

龍田「落ち着くまで待ってもらえないかしら~?」



電「おいしくないのです……おいしく……」

天龍「」

赤城「うっ、気持ち悪い」


川内「あー、そうだね」

提督「……分かった」

龍田「ちょっとやりすぎちゃったわね~……」



――――



――数十分後・とある地下――



スタスタ

電「ぐすん……よかったのです……死を覚悟したのです……」ウルウル

天龍「この仕返しは必ずするぞ龍田」ゴゴゴゴゴ

龍田「そうね~、ごめんなさい。お詫びはまた今度するわ」

赤城「まだお腹が……」ズキズキ

提督「……」

提督「で、説明するために場所を変えているわけだが」

提督「どこだここは」

川内「機械がいっぱいあって物々しいね」

龍田「ここはね~、明石ちゃんと夕張ちゃんの研究施設へ繋がる道よ」

提督「研究施設?」

赤城「ええ。聞いた話では、お給料で少しずつ拡張していったらしいですよ」

提督「そういえば秘密基地を作ってるとか言ってたな」

提督「こんなスケールがデカいとは思わなかったが」

川内「だねー。しかも食堂の下にあるなんて」

提督「というか、その2人のもとへ向かっているということは」

川内「黒幕は……」

赤城「想像通りよ。2人とも待ってるわ」

スタスタ



――数分後――


明石「あ、来た来た」

夕張「みなさんようこそ! 私たちの研究施設へ…」

ガシッ

天龍「てめえらが首謀者かぁ!! どういうことかさっさと説明しやがれ!!」

夕張「いひゃいいひゃいはらひへー!!」
  (痛い痛い離してー!)

提督「やめてやれ天龍」

天龍「……ちっ」パッ

夕張「アゴが外れるところだったぁ……暴力反対!」

天龍「うるせえ! 散々人をビビらせといてよぉ……」

天龍「あー怒りが収まらねえぜ!!」

明石「聞きたいこと何でも話すから!」

天龍「当然だ!!」

明石「え、えっと……まずは何から説明を?」

電「知りたいことが多すぎるのです」

川内「んーとね……じゃあ聞くけど」


川内「犯人は誰なの?」

明石「犯人?」


川内「天龍も言ってたけどさ。幽霊を装って私たちを襲おうと考えた首謀者」

明石「ああ……それは私たち2人よ」

天龍「やっぱりか!!」

夕張「ひっ! アゴ掴むのはやめて!」

提督「落ち着け天龍。何故こんなことをしたんだ?」

夕張「……それは……」

明石「話せば長くなるというか」

提督「なるべく手短に頼む」

明石「分かりました」

明石「実は一週間くらい前に、私たち本土へ買い物に行ったんですけど」

明石「その時、見てしまったんです」

提督「見てしまったって、何を」

明石「夕張」

夕張「えーっと、これです」ササッ

提督「これは……? 何のチラシだ」

川内「なになに……『恐怖で秋を彩れ、オバケ屋敷大会』」

天龍「『オバケ屋敷のスタッフになって入場者を怖がらよう』」

電「『一番怖いオバケ屋敷を作った参加者には、なんと賞金500万円』……」


天龍・川内・電「500万円!?」


天龍「すごいわよね~。もし優勝できたら鎮守府のために使うらしいわ~」

赤城「それだけあれば美味しいものがたくさん……うへへ」

夕張「赤城さん、食費に全部はつぎ込みませんよ?」

提督「……500万ねぇ……現実味のない数字だな」


提督「しかし、なるほどな。何となく読めてきたぞ」

提督「つまりお前らはその大会に参加して優勝を狙うために」

提督「俺たちを実験台にしたわけか?」

明石「あはは……やだなぁ、実験台なんて人聞きの悪い」アセアセ

夕張「オバケのスーツを作って、その性能を確かめたかったんです!」

夕張「ちょうどそこへ『提督たちがホラー映画鑑賞をする』という情報が入ってきて」

天龍「標的にしたんだな」

夕張「……うん」

天龍「このやろ!」バッ

電「暴力はいけないのです!」ササッ


川内「あれ? ねえ、ってことはさ」

川内「鎮守府のみんながいなくなったのも、私たちを怖がらせるため意図的に?」

赤城「ええ。あなたたちが休憩室に入ったのを見計らって」

赤城「皆にはこの研究施設に移動してもらったの」

電「!! ということは、神隠しなんかじゃないのです?」

龍田「ふふ、ちゃんと全員いるわよ~。今は各自用意された部屋で就寝中ね~」

電「よ、よかったのですぅ……!」ウルウル

提督「待て。別々の部屋があるのか? い、一体どれだけの費用を……」

夕張「結構掛かりました。でも、鎮守府の避難用スペースにもなるように作ったので」

夕張「艦娘の皆からもお金を寄付してもらったんですよ」

天龍「そういやそんなことがあったような」

電「『鎮守府の設備を良くするために』って、お金を渡した気がするのです」

提督「俺もだ」

明石「おかげでこんなにいい場所ができました。ありがとうございます」

提督「……。ま、まあ皆のためになるならいいが」

川内「……」


川内「にしてもさー、なかなかの演出だったよね」

電「?」


川内「あははっ。全部作り物って分かったら余裕出てきたよ!」

川内「ラップ音とかポルターガイストとか、ドアが開かなくなったりさ」

川内「あれ全部仕掛けなんでしょ?」

明石「そうよ」

夕張「どうだった? 怖かった?」

電「とっても怖かったのです……」

夕張「よかった! 作るの大変で大変で……そう言ってもらえると報われる!」

川内「仕掛けを動かすタイミングも2人が?」

明石「ああ、それは……」

夕張「仕掛け人兼演出家の人が考えたんだよ」

天龍「? 誰だそれ。龍田か?」

龍田「いいえ、私と赤城さんは幽霊役よ~」

赤城「ほら、このスーツとマスクを装備して」ゴソゴソ

赤城「内部にあるスイッチを押すと」ポチッ


『……ヒヒヒヒヒヒ……ドウ?』


電「幽霊さんの声なのです!」

提督「周りの空間も歪んだ。どうなってるんだ」

明石「私たちの自信作です!」

夕張「すごいでしょ!」

提督「……すごいな」

提督「それを作るのにもすごい金がかかってそうだなぁ」

明石・夕張「……」

提督「おい、目を逸らすな」

川内「……赤城さんと龍田さんじゃない……仕掛け人……」

川内「あっ! もしかして!」



川内「長門さん?」



夕張「おー、正解!」

川内「やっぱり!」

天龍「はっ? 長門って仕掛け人だったのかよ!?」

明石「ホラー映画に詳しいって聞いたから相談したの」

明石「そしたら色々指導してくれて」

川内「なるほどー、長門さんならアドバイスできるね」

提督「じゃあ居なくなったのもわざとか」

明石「はい、計画の一部です」

電「ずっと心配してたのです! よかったのです!」

川内「で、本人はどこにいるの?」

龍田「部屋で待機してるはずよ~」

龍田「あ、そういえば……みんなが来たら呼んでくれって言ってたような」

龍田「ちょっと行ってくるわ~」

夕張「じ、じゃあ私呼んで来ますね!」

明石「あっ、私も!」

スタタタッ

提督「……逃げたか」

提督「スーツ制作に用いた金額については後でゆっくり話し合うとして」

提督「赤城、一つ聞きたいんだが」


『ナンデス?』


提督「……マスクを取れ」


ヌギヌギ


赤城「はい」

提督「加賀はどこにいる?」

天龍「ああ、そういやすっかり忘れてたぜ」

川内「私も。安心すると気と一緒に心配事も抜けるのかな」

電「抜いちゃダメなのです!」

赤城「んーと……加賀さんは、仕掛け人の那珂ちゃんと一緒のはずですよ」

川内「那珂ちゃん!? 那珂ちゃんもこの計画に加わってるの?」

赤城「ええ。それと神通さんも、モニターで皆さんの行動を確認してました」

川内「うわー! 悪趣味!」

提督「一体何人関わってるんだ」

赤城「長門さん、明石さん、夕張さん、私、龍田さん、那珂ちゃん、神通さん」

赤城「スタッフは7人ですね」


電(……モニターって……まさか、電のあのことも……!?)ガーン

電「はわわ……」フラフラ

天龍「お、おいどうした電!」

電「……この世の終わりなのです……」

天龍「はあ?」

提督「そうか……まあそれはいいとして」

提督「早く加賀にも事実を知らせてやらないと。連絡できるか?」

赤城「モニター室に行けば、那珂ちゃんに無線で指示できると思います」

提督「連れて行ってくれ」

赤城「分かりました。ではこちらへ」

スタスタ


――モニター室――


コンコン ガチャ

赤城「神通さん、ちょっとお願いが…」

神通「すー……すー……えへへ……」

川内「寝てるね」

天龍「ま、そろそろ0時を過ぎるからなぁ。オレも……ふあぁ」

赤城「神通さーん、起きてー」

神通「……んー……ん? はっ!」

ガバッ

神通「あ、赤城さん! すみません私……!」

赤城「いえいえ、お疲れ様」

神通「あ……提督たちがここにいるということは」

赤城「とうとうバレちゃった」

赤城「それでお願いなんだけど、那珂ちゃんと連絡とってもらえるかしら」

赤城「加賀さんにネタばらしして欲しいって」

神通「了解です」ピッ ピッ


提督「……しかし」

提督「このいくつもあるモニター、鎮守府の各所が映っているが」

提督「隠しカメラか?」

赤城「超小型らしいです」

川内「えー……プライバシーもへったくれもないね」

天龍「ひょっとしてトイレにも?」

赤城「あるらしいわ。ただ流石に個室内には設置してないっぽいけど」

電「あったら大変なのです!」

川内「あ」

川内「ねえ、いいこと思いついたんだけどさ」ニヤリ

天龍「なんだよ」

川内「加賀さんには真実を知らせずに、もうちょっと幽霊騒ぎを起こして」

川内「ここでその様子を見るってのはどうかな?」

天龍「おお! 面白そう!」

提督「ダメだ。そんな非道な事できるか」

電「なのです! 可哀想なのです!」

川内「じ、冗談だってば……本気にしなくても」

天龍(ちぇっ)


神通「……」

神通「……おかしいですね」

赤城「繋がらないの?」

神通「はい、ノイズが邪魔して何が何だか」



コンコン ガチャ

龍田「あ、やっぱりここに居たわ~」

提督「龍田、それに明石と夕張……ん?」

提督「長門はどうした」

明石「それが、部屋に居なかったんです」

夕張「研究施設のトイレにも確認しに行ったんですけどね」

川内「他の艦娘のとこじゃないの?」

龍田「『部屋でくつろいでる』って言ってたから、遊びに行くなんてことは……」

夕張「念のため確認してきますね」ガチャ


神通「……ダメです。何度試しても繋がりません」

赤城「そう、困ったわね」

明石「? どうしたんです?」

提督「那珂と連絡を取ってるんだ」

天龍「繋がらねえんだと。こんな時に故障かよ」

明石「故障って、そんなはずないわ。ちょっと貸して」

神通「はい」スッ

ここまでで
天龍の口調が…ww 龍田でした、誤字すみません
次は水曜、早ければ火曜にあげます

川内「あっ、いいこと思いついた」

天龍「またかよ」

川内「今度はホントにいいことだよ! 無線が繋がらないならさ」

川内「このモニターでどこにいるかチェックしてみない? 場所の影響とかあるかも」

電「なるほどなのです!」

赤城「神通さん、お願いできる?」

神通「探してみますね」カチャカチャ

明石「おっかしいなぁ。鎮守府内なら繋がるはずなんだけどなぁ」


提督「……ふと気になったんだが」

赤城「?」

提督「なんでモニターを監視する奴が神通しかいないんだ」

提督「交代制にすれば神通も疲れで眠らなかったし、こうしていちいち探すようなことは…」

赤城「交代制ですよ」

提督「……そうか」

神通「私が監視しなくちゃいけない時に眠ってしまったので、私の落ち度です……すみません」

赤城「そんなに重く考えなくてもいいのよ。監視なんて名ばかりの気楽な役目だから」

川内「そもそも何のために監視してんの? 私たちがちゃんと驚いたかを確認したいから?」

赤城「確認はあとで録画を観ればできるし、もしもの時に素早く対応するためだと思うわ」

赤城「立てかけた物が崩れて怪我をした場合とか……」

電(録画されてるのです!?)ガーン

提督「鎮守府内にそんなものあったか?」

赤城「ありません。だから、危険が及ぶことはまず無いですね」


電(……もうダメなのです……電の失態が記録として残っているのです……)

電(みんなから笑い者にされるのです)フラフラ

天龍「い、電? 大丈夫か?」

電「いっそ殺してほしいのです」

天龍「何言ってんだよ!?」




――資材置き場――


スタスタ

那珂「うわぁ……真っ暗だよぉ……」

加賀「窓から差し込む月明かりだけが頼りね」

那珂「それでもかなり頼りないですけどね……はは」

加賀「……」

那珂「資材は崩れてないみたいでよかったですね!」

加賀「そうね」

スタスタ


加賀「ねえ、那珂さん」

那珂「何ですか?」

加賀「聞きたいことがあるのだけれど」

加賀「さっきあなた……」

加賀「『戦うのは勘弁、引きずる音がしたら逃げよう』」

加賀「こう言ったわよね」

那珂「? はい……だって、何だかんだ怖いですし」

那珂「えっ、まさか加賀さん戦闘する気ですか!? すごい勇気…」


加賀「どうして知ってるの」

那珂「へ?」


加賀「私が見た幽霊が、引きずる音を出しながら現れるって」

加賀「そこまで話してはいないはずよ」

那珂「そ……そうでしたっけ?」

那珂「いや、言いましたよっ! もー、加賀さん怖さで混乱しすぎですよー!」アハハ

加賀「まだ気になる点があるわ」

那珂「え」

加賀「入渠ドッグであなたと会った時の話よ」

加賀「私が『提督とはぐれた』と言ったら、あなたはその言葉に何の疑問も持たなかったわね」

加賀「いつも生活して見知っている鎮守府なのだから、普通は『探している』と言うはず」

加賀「『はぐれた』という言葉を使うのはおかしいと思わなかったのかしら」

那珂「……それは……」

加賀「考えすぎかもしれないわ、でもずっと気がかりだったの」

加賀「ねえ那珂さん……これは所詮、憶測に過ぎないのだけれど」


加賀「あなた、この鎮守府で何が起きているか知っていたんじゃないの?」

那珂「……」


加賀「私たちが幽霊に襲われていることを知っていた」

加賀「その途中で『はぐれた』ことも知っていた」

加賀「だから、私の混乱した説明にもすんなり対応できた」

那珂「……」

加賀「違うかしら」

那珂「……」



――モニター室――



神通「おかしいですね」

提督「……」

赤城「鎮守府内のどこを探してもいないなんて」

川内「ちゃんと隅から隅まで映したの?」

神通「もちろんです」

提督「死角になっている場所があるんじゃないか? それか隠れているか」

明石「一応死角を作らないように設置したので……あるとしたら後者ですかね」

電「隠れている加賀さんを、どうやって探せばいいのです?」

天龍「簡単な話だろ。もうオバケごっこは終わったんだしよ」

天龍「みんなで上に出て直接探せばいいんだよ」

赤城「あ、それもそうね」

明石「……待ってください。その前に」

明石「神通ちゃん、ちょっとどいて」

神通「え? は、はい」スッ

明石「えーっと……」カチャカチャ

提督「何してるんだ?」

明石「録画データを画面に映します」

明石「今まで撮影した加賀さんの後を辿って行けば、何か分かるかなって」

川内「おー! あったまいいー!」



ガチャ

夕張「やっぱり長門さん居ませんでした!」

龍田「艦娘のみんなに聞いても分からないって」

赤城「そうですか……どこ行っちゃったのかしら」

電「はわわ、神隠しなのです?」

天龍「バーカ。幽霊は作り物だっただろうが」

電「じゃあ長門さんはどこへ行ったのです?」

天龍「そ……それは……」

明石「出ました!」



『パキッ』

加賀『ん? 何かしら今の』



提督「これは……加賀が夜食を作っているところか」

川内「えぇー、夜食おにぎりー? カップ麺を期待してたのにー」



『プツン』



電「で、電気が消えたのです!」

夕張「私がやったの。タイミングを調整してね」




『ズッ… ズッ…』



明石「そして幽霊役の赤城さんが加賀さんを脅かして」

赤城「すっごく怖がってくれて満足です♪」

川内「食堂にいたの赤城さんだったんだ」

龍田「……ねえ、ちょっと遡りすぎじゃないかしら~」

提督「だな。赤城が食堂から出てきて、俺たちを襲うところを再生してくれ」

明石「分かりました」カチャカチャ


――――


那珂「……ふ」

加賀「?」

那珂「あはははっ。鋭いですねー、加賀さん」

加賀「……」

加賀(雰囲気が、変わった?)

那珂「あんなにビクビクしてたのに、頭の中ではしっかり考えてたんですねー」

那珂「さすが一航戦というか」

加賀「答えて。私が言ったことは…」

那珂「当たってますよ」

加賀「!」

那珂「私、知ってました。加賀さんや提督が幽霊に追われてること」

加賀「やっぱり……」

那珂「さて、ここで問題です」

那珂「何で知ってたと思います?」ニコリ

加賀「えっ」

加賀「……そ、それは……」

那珂「さすがにそこまでは分かりませんよね」

那珂「特別に教えてあげてもいいですよ」


那珂「ただし、条件があります」

加賀「……条件?」


那珂「ふふっ」

スタスタ

加賀(! こっちに近づいてくる……!)

加賀(まさか……この娘……!)







那珂「あなたの魂、私にください」









――――



『ドォォォォォン!!』

天龍『ぐはぁっ!?』



提督「ここから再生してくれ」

天龍「……この時か、オレが気絶したのは」

電「加賀さんの突進は凄かったのです」

川内「猛牛のようだったね」



『ズッ… ズッ…』



川内「赤城さんが食堂から出てきた」

赤城「我ながらなかなかの演技ね」エッヘン

電「なのです。とても怖かったのです」ブルブル



加賀『い、嫌……嫌っ……!』スタタタッ

川内『あ! 加賀さん、どこに行くの!?』



明石「で、加賀さんがパニックで突っ走ったんですね」

夕張「このビビりようだし、優勝はもらったわね」フフン

龍田「すごいスピードで走り抜けて行くわ~」

提督「ちゃんと追えよ」

明石「分かってます」カチャカチャ



――――



那珂「……へへ」

加賀「……?」




那珂「なーんてっ♪」




加賀「……」

那珂「えへへ、ビックリしました!? 私オバケっぽかったです!?」

加賀「……???」

那珂「あ、何のことか分からないですよね。えっと――」



加賀「――オバケ屋敷大会?」

那珂「はい! それに優勝するため、明石ちゃんと夕張ちゃんが企画したものなんです」

加賀「……」

那珂「加賀さん?」

加賀「……」ペタン

那珂「わっ! だ、大丈夫です?」

加賀「そういうことだったのね……気が抜けたわ」

那珂「あはは、胸中お察しします」

加賀「でもやり過ぎじゃないかしら? これは後でキツく言わないとね」

那珂「おお……結構怒ってます?」

加賀「当然よ。こんな目に遭わされてヘラヘラ笑う方がおかしいわ」

那珂「で、ですよねー!」アハハー

加賀「あなたも含めて、説教しないと気が済まないわね」

那珂「ええっ!? 私も!?」

加賀「当然よ、加担したんだから」

加賀「何なら今ここでする?」

那珂「今はやめてください!」

加賀「……ふふっ」


加賀(でも、よかった。本当によかったわ)

加賀(……)

加賀(……そうね)

加賀(よかったはず……なのに……何故かしら?)

加賀(まだ何かが引っかかってる。違和感のようなものが……)




ガタンッ




加賀・那珂「!?」

那珂「な、何……?」

加賀「……誰か来るわ」

那珂「えっ……」



ヒタ… ヒタ…



那珂「……へ?」

加賀「!?」

加賀(そんな……まさか……!)




???「……加賀、さん……?」



加賀「あなたは……那珂、さん?」

那珂?「あーよかった! 加賀さんだ!」

加賀「これはどういうこと」

那珂?「え?」

加賀「那珂さんが……2人?」

那珂「……っ」

那珂?「え……そ、そんな……!」


那珂「あ、あなた……誰?」

那珂「誰なの!? 私とそっくりの顔をして!!」

那珂?「誰って、こっちが聞きたいよ! あなた何なの!?」

那珂「加賀さん逃げましょう! 私こんなの知りません……! きっと本物の幽霊です!!」

那珂?「なっ、失礼な!! 那珂ちゃんは幽霊なんかじゃないもん!」

那珂?「そっちこそ、顔も声も私のマネして気味が悪いよ! 加賀さん、そいつから離れた方がいいよ!」

加賀(い、一体どうしたら)

那珂「耳を傾けちゃダメです! 早く逃げましょう!!」グイグイ

加賀「ちょっと! 引っ張らないで……!」スタタタッ


那珂?「待って!!」


那珂?「分かったよ」

加賀「……?」

那珂「分かったって、何が?」

那珂?「……あなたが」

那珂?「歌とダンスの天才で頭も良くて、絶世の美少女すら羨むキュートな顔で」

那珂?「どんな男の子もメロメロ、女の子たちの憧れの的。笑顔になるたび争いが一つ減ると噂されてて」

那珂?「全世界のみんなから超好かれてる正真正銘のスーパーアイドル・那珂ちゃんだって言い張るなら」


加賀・那珂「…………」


那珂?「証拠を見せてよ!」

那珂「は……はあ? 証拠って、何言ってるの? そっちが先に見せるべきでしょ!」

那珂?「どうして!?」

那珂「こんな暗い場所に1人で現れるなんて不自然じゃないの!? 疑惑が強いのはそっちなんだよ!!」

那珂?「うっ……た、確かに……!」


キラーン

加賀「!」

加賀(……ああ、そうだわ)

加賀(ずっと引っかかっていたことが何なのか、ようやく分かった)



――――



加賀『はぁ……はぁ……』

加賀『散々よ……ホラー映画を観ていただけなのに、どうしてこんな目に……』



夕張「やっと立ち止まった」

明石「すごいスタミナ。さすが一航戦ね」

龍田「ここは、入渠ドッグの前ね~」



『ガタッ』

加賀『っ!?』



赤城「……?」

電「またまた物音なのです」



加賀『!?』

『スタタタッ』

『バッ!』



川内「何かに気づいたよ? ドッグに入ったね」

天龍「……」





加賀『……』

加賀『……っ』ウルウル

ギュッ




天龍「……あのさー」


天龍「さっきから加賀の奴、1人で何やってんだ?」




加賀『ありがとう。居てくれてありがとう』



川内「えっ?」

提督「……」



加賀『あ……ごめんなさい。つい感極まってしまって』

加賀『後ろを向いているから、どうぞ服を着て』

加賀『早く』



提督「……?」



加賀『そう。あなたにお願いがあるの』クルッ

加賀『私と一緒に、提督たちを探してくれるかしら』

加賀『ええ、はぐれてしまって』

加賀『……。そうしたいのは山々なのだけれど』



全員「…………」

川内「……ね、ねえ」

川内「これ、さ……加賀さん、何かと話してない?」

神通「そう見えますね」

天龍「な、何かって……何だよ」

川内「……」

天龍「黙るなよっ!」

龍田「加賀さんの様子を見る限り、パニックに陥ってるわけじゃなさそうね~」

明石「恐怖のあまり精神がおかしくなったとか?」

夕張「現実的に考えればそれしかないよね」

電「……じゃあ」

電「非現実的に考えたら、どうなのです?」



全員「…………」



赤城「……ま、まっさかぁー!」

赤城「本物の幽霊がいるなんて、ありえないですよねぇー?」アハハ

神通「でも、この映像を観てると……」

提督「見えない『何か』が加賀の目の前にいて」

提督「その『何か』と会話をしているようにしか見えないな」

ここまでで
風の影響か電波が…
次は土日に更新します

お前たちの罪(那珂ちゃん解体数)を数えろ!

明石「とりあえずもうちょっと見てみましょう」

提督「頼む」

明石「早送りしますね」カチャカチャ


――――


加賀「どちらが本物の那珂さんなのか分かったわ」

那珂・那珂?「!!」

加賀「実は私、頭の中で引っかかっていたことがあって」

加賀「でもそれが何なのか分からなくて、ずっと考えていたの」

加賀「けれど今、やっと原因が分かった。スッとしたわ」

加賀「その指輪よ」

那珂「……ゆ」

那珂?「指輪……?」

加賀「そう」


加賀「あなたが嵌めている、ケッコンカッコカリの指輪」

那珂?「ああ、これですね」キラーン


加賀「さっき現れた那珂さんには指輪がある」

加賀「でも、今まで私と一緒に居た那珂さん……あなたは」

那珂「……」

加賀「提督から頂いたはずの指輪を嵌めていないのよ」

加賀「これが違和感の正体」

那珂「……」

加賀「あなた何者なの? どうして那珂さんの格好をして私に近づいたの」

那珂「……」


那珂「ふふっ」

那珂「あーあ、迂闊だったなぁ。せっかく騙せてたのに」

加賀「……隠そうとしないのね」

加賀(また雰囲気が変わった)

偽那珂「うん。言い逃れできないしー、悪あがきは嫌いだからね」

偽那珂「仕方ない……こうなったら強行手段だよ」

偽那珂「お願い長門さん」

加賀「!?」


ドスッ


那珂「きゃっ!?」

加賀「那珂さん!? どうした…」クルッ


長門「……」

加賀「長門、さん……?」

那珂「……」

加賀(那珂さん……気絶してる? まさか長門さんが?)

加賀「これはどういうことなの」

長門「……」スタスタ

加賀「待って! それ以上近づいたら…」

ヒュンッ

ドスッ!

加賀「うっ……!」

偽那珂「あはは! さっすがビッグセブン、一瞬で懐に潜り込むなんて♪」

加賀「長門さん……何で…」

ドカッ

加賀「ぐっ……!」

加賀(……ダメ……意識、が……)

加賀(提、と……く……)


バタンッ



――

――――

――――――





加賀『いないわね』



明石「加賀さん、執務室まで来ましたね」

提督「俺と加賀が合流するかしないかの瀬戸際だな」

夕張「……にしても、変だなぁ」

神通「そうですね……加賀さん、ずっと1人でぶつぶつ言ってます」

夕張「それもそうだけど」

夕張「ほら、那珂ちゃんが加賀さんに近づいて仕掛け人やるはずだったのに」

赤城「そういえば、いつまで経っても現れないわね」



加賀『……那珂さん、どうしたの?』



川内「!」

天龍「今……」

電「那珂さん、って言ったのです?」



加賀『な、那珂さん?』



龍田「確かに言ってるわね~」

神通「どういうことなんでしょうか」

提督「……」

加賀『ありがとう那珂さん。おかげで勇気が沸いた』

加賀『実は私、あなたと出会うまで幽霊が怖くて震えていたの』


提督「……この言葉を信じるなら」

提督「加賀が話している何かは、那珂の容姿をしている……?」

川内「な、何で那珂ちゃんなの?」

明石「さあ……」



『ガチャガチャ!!』

『…コンコン』


天龍「お、提督じゃねえか」

電「ここで合流しそうになったのです?」

提督「ああ。でも途中で幽霊に扮装したどっちかがやって来て……」

赤城「えっ」

龍田「私たち、襲った覚えはないわよ~?」

提督「……は?」

提督「いやいや、馬鹿な……」



加賀『ええ。待っていて正解でした』

提督『とりあえず、ここを開けてくれるか』

加賀『はい』



提督「ほら、この直後だよ逃げたのは。俺がいる通路を見ると分かるだろ」

川内「何もいないよ?」

天龍「提督が何かに気づいて、走り出したのは分かるけどよ」

提督「……」

提督「ありえない……で、でも確かに見たんだぞ? 赤城や龍田が演じていた幽霊と同じ姿のものを」

龍田「と言われても」

赤城「私たちこの時、次の脅かしポイントでスタンバイしてましたし」

川内「それってもしかして、私と天龍のいた診察室?」

赤城「ええ」

提督「……じゃあ俺が見たのは一体……」

電「本物の幽霊なのです?」

天龍「またお前は……」

電「でもそうとしか考えられないのです」

天龍「見間違いってこともありえるだろ? 何でもかんでも幽霊に持って行くんじゃねえ」

電「じゃあ他にどんな事実があるのです?」

天龍「だから見間違えだよ! 加賀のおかしな言動も頭がおかしくなったんだろ!」

電「そんなの目を逸らしてるに過ぎないのです! 現実を受け入れるべきなのです!」

天龍「現実じゃありえねえ事だから疑ってんだろうが!」

川内「ちょっとちょっと、喧嘩はよしなって!」

神通「そうですよ。何にしたって、手がかりを辿って行けば真実は分かるんですから」

夕張「……」



加賀『すみません提督、まずどうして皆とはぐれたのかを説明して頂けますか』

加賀『こちらが納得できれば鍵を開けます』



夕張「加賀さん、提督が去った後なのにまだ提督と会話してるつもりだね」

明石「ドアの向こうに耳を澄ませてるし、さっきまで話してた相手とは違うっぽいわ」




加賀『待ってください提督。那珂さんは私と行動を共にしていたんです』

加賀『仮に那珂さんと会ったのなら、一緒にいる私とも顔合わせしたはず』



龍田「……話の内容はさっぱりだけれど」

龍田「加賀さんが今まで話していた相手は、那珂ちゃんの姿をしているってことで間違いないみたいね~」

提督「……」

提督「明石、早送りしてくれ」

明石「え?」

提督「何となく嫌な予感がするんだ。加賀がどこへ行ったのか早く知りたい」

明石「分かりました」カチャカチャ

川内「ねーねー加賀さんもそうだけどさ」

川内「あと2人の行方も追った方がいいんじゃない? 録画されてないの?」

夕張「そうね、別モニターでちょっと確認してみる」カチャカチャ


赤城「……あら?」

電「どうしたのです?」

赤城「明石さん、出入り口のとこ拡大して映してもらえる?」

明石「了解です」カチャカチャ




『スタスタ』

長門『……』



天龍「っ!! な、長門だ! あいつ何してんだよ!」

川内「ドアの前で立ち止まったよ!」



長門『……』

『ガチャガチャ』



電「開けようとしてるのです」

明石「ここでしかロックは解除できないから無理よ」

提督「……ドアに細工したのか」

明石「すみません。でも外に逃げられると監視できないので……」

夕張「オバケ屋敷にならないしね」



長門『……』

『ガチャ』

『スタスタ』



川内「あれ、開いたけど?」

夕張「なっ、そんなはず……!」

神通「ドアも一人でに開きませんでしたか」

天龍「自動ドア?」

明石「そんな機能つけてないわ」

電「心霊現象なのです!」

天龍「……マジかよ……」

龍田「ねえ、見て」

龍田「加賀さんも来たわ」

提督「!」



加賀『……ドアが開いてる?』

加賀『ええ、悲鳴は外から聞こえるわ』

加賀『行きましょう』

『スタスタ』



夕張「……そっか、なるほど」

夕張「建物の外に出てるんだもん、監視カメラに映らないはずよ」

提督「……」

スタスタ

川内「提督!? どこ行くの?」

提督「決まってるだろ。お前らはここで待機しててくれ」

電「加賀さんがどこにいるか分かるのです?」

提督「分からない。でもカメラが届かない場所に行ってしまったんだ」

提督「あとは人力で探すしかない」スタスタ

川内「待って! 私も!」

赤城「私もご一緒します!」

スタタタッ

夕張「どうする? 私たちも行く?」

神通「そうですね」

明石「人数は多い方がいいし…」

天龍「待て」スッ

天龍「何人かはここに居た方がいい。もしもの時のためにな」

神通「もしもの時……?」

天龍「ああ。探しに行ったオレたちが戻って来なかったら」

天龍「大本宮に連絡をするんだ」

明石「あはは、そんな大事にしなくても…」

天龍「いいから連絡しろ!!」

明石「わ、分かったわ」

電「天龍さん、探しに行くのです?」

天龍「おう、お前はここにいろよ。怖いだろ?」

天龍「……それと」

天龍「さっきはバカにして悪かったな。謝るぜ」

電「いいのです。そもそも、幽霊だなんて信じる方がおかしいのです」

電「絶対に戻ってきてくださいなのです!」

天龍「へっ……あったりめえだ!!」

スタタタッ

電「……天龍さん……」


明石「……」

夕張「何この茶番」

龍田「しっ! せっかく良い雰囲気なんだから邪魔しちゃダメよ~」ボソッ

神通「でも」

神通「長門さんや那珂ちゃんが消えてしまって、記録した映像データには不可解な現象がいくつか」

神通「冗談ではすまない出来事が起ころうとしている気がするのは、私だけでしょうか」

明石・夕張「……」

龍田「そうね~、万が一の時のために備えておいて損はないわね」

龍田「天龍ちゃんが言ったように、他との連絡手段は確保しておきましょう」

夕張「まあそれに関しては大丈夫ですけど」

龍田「なら安心ね♪」

明石「……幽霊ねぇ……」



――――



加賀「うっ」ピクッ

加賀「……こ、ここは……どこ?」

加賀「見覚えのない設備ばかりね。ほとんどが錆びてしまっている」

加賀「……偽物の那珂さん、それに長門さんは見当たらない」

加賀「どこへ行ったのかしら……?」


那珂「うぅ……」

加賀「!」

加賀「那珂さん! よかった……大丈夫?」

那珂「……い……」

那珂「痛ったーい! もー! また暴力振るうなんて長門さんサイテー!」

加賀「ピンピンしてるわね」

那珂「あっ、加賀さん!」

加賀「指輪があるということは本物ね」

加賀「あなた、ここがどこだか分かるかしら」

那珂「へ? ……ここは」

加賀「知らないって顔ね」


那珂「いえ、知ってます」

加賀「!」


加賀「本当に?」

那珂「はい! だって私、ついさっきまでここに居ましたから」

加賀「ここに……居た?」

加賀「意識が戻って早々に悪いのだけれど、説明をお願いできる?」

那珂「もちろんです」

那珂「話せば長くなるんですけど……実は私、仕掛け人で」

那珂「あっ、仕掛け人っていうのは、私加賀さんを側で監視する役割があって」

那珂「加賀さんは知らないかもですけど、実はこれオバケ屋敷の予行練習で」

加賀「ゴチャゴチャしてて意味不明よ」

那珂「あう……すみません」

加賀「でも大丈夫。オバケ屋敷のことは知ってるから」

那珂「え? そうなんですか?」

加賀「あの偽物の那珂さんが教えてくれたのよ。どうやら話だけは本当だったみたいね」

那珂「偽物……そういえば、あれ何なんですか? 変装?」

加賀「こっちが知りたいわ。私、今まであれを那珂さんだと信じて一緒に行動してたのよ」

那珂「えー!? 何それ怖い!!」

那珂「っていうか普通間違えますか!? 今までずーっと一緒の鎮守府で過ごして来たのにー!」プンスカ

加賀「……」

那珂「ほら、この那珂ちゃんスマイルは本物の那珂ちゃんにしかできませんよ! ねっ☆」ニコッ

加賀「……そうね」

加賀「思い返せば、あなたはそういうイラッとくる性格よね」

那珂「イラッとくる!?」

加賀「正直言うと、指輪が無くても」

加賀「あの美少女がどうのこうのという長ったらしい思い上がりで何となく察しがついたわ」

那珂「思い上がり!?」

那珂「ひ、ひどい! 言葉のナイフを投げつけて!」

加賀「……もういいわ。早く続きを話して」

那珂「あ、はい……えっと」

那珂「偶然を装って加賀さんと合流するつもりで、入渠ドッグに隠れてたんですけど」

那珂「突然長門さんに背後から襲われたんです」

加賀「……」

那珂「間違いないですよ!」

那珂「私、パニックになっちゃって。必死に抵抗したんですけど結局意識を失っちゃって……」

那珂「でも、その間際に顔を見ることができたんです。あれは絶対に長門さんでした」

加賀「……そう」

加賀「だからさっき、『また暴力振るうなんて』と言ったのね」

那珂「あ、でも……」


那珂「やっぱりあれは長門さんじゃないのかも」

加賀「は?」


那珂「上手くは言えないんですけどね。何というか……こう……」

那珂「姿は長門さんなんですけど、中身は長門さんじゃないというか」

加賀「……」

ここまでで
>>210 今まで食ったパンの数を覚えているのか!

次は火曜に投稿します

>>231
パンの枚数?聞きたいかね?昨日までで99822枚だ

那珂「でも私の偽物みたいな感じではなくて、長門さんではあるんですけど……あっ」

那珂「その目は私をバカにしてますね!?」

加賀「……いいえ」

加賀「言いたいことは分かるわ。私も同じことを思ったから」

加賀「長門さんと対峙した時、虚ろな目をしていたのよ」

加賀「おかしな話だけれど……もしかしたら操られているのかも」

那珂「操られてる。それ、確かにしっくりくる表現ですね」

加賀「で、気がついたらここに?」

那珂「そうなんです。最初訳分かんなくて、とりあえず出口探そうと思って」

那珂「あそこの扉が開いてたんで進んで行ったら、資材置き場に出たんです」

加賀「……! 繋がってるのね」

那珂「はい、だからここは鎮守府内であることには違いないですよ」

加賀「よかった。それを聞いて安心したわ」スタスタ

加賀「これもかなり古い扉ね」

ググッ

加賀「……開かないわ」

那珂「えっ、さっきは開いたんですけど」

加賀「私たちをここに閉じ込めた犯人が」ググッ

加賀「同じ失敗をしないように戸締り確認したようね」

那珂「それってやっぱり、あの偽物?」

加賀「他に考えられないでしょう。何が目的なのかは不明だけど」

那珂「目的かぁ……」

那珂「那珂ちゃんの可愛さと人気に嫉妬して、成り代わりたかったとか?」

加賀「もしそうなら私にバレた時点で終わりよ」

那珂「だから加賀さんもここに閉じ込めたんですよ! 他のみんなに悟られないように!」

加賀「……なるほど。意外といい線かも」

那珂「!」

加賀「けど」

那珂「?」

加賀「那珂さんを羨んでの行動だとしたら、かなりの変わり者ね」

那珂「なっ!? どういう意味ですか!?」

加賀「そういう意味よ」

那珂「またまたひどい!!」


加賀(……窓には鉄板が打ちつけられている)

加賀(扉はここ以外に無いし、完全な密室状態ね)

加賀(誰かが気づいてくれるのを待つしかないのかしら)

那珂「あーーーーっ!!」

加賀「!?」ビクッ

加賀「い、いきなり大声出さないで! ビックリするでしょ」

那珂「ごめんなさい。でも忘れてたこと思い出したんです!」

加賀「……何を忘れていたの」

那珂「ふっふっふー。その冷めた目を、期待と希望を込めた目に変えてみせますよ」

那珂「私、加賀さんを側で監視する仕掛け人だったので」

那珂「本部にいる神通ちゃんとコンタクトをとるため」

那珂「この小型無線機を渡されていたんですっ!」ジャーン

加賀「!」

加賀「じゃあ、それを使えば……」

那珂「目の色が変わりましたね? そうです、助けを呼べますよ!」エッヘン

加賀「さっそくお願い」

那珂「……もうちょっと嬉しがるとか」

加賀「嬉しいわすごく嬉しい」

那珂「棒読みにも程がある」

那珂「こほん……では」

那珂「もしもし! 聞こえる? もしもーし!」

加賀「どう?」

那珂「電波が悪いのか、まだ何も」

那珂「神通ちゃん、聞こえてるー? 那珂ちゃんだよー!」

加賀「……まさか」

加賀「何かの衝撃で壊れたとか」

那珂「それはないと思います。ノイズは聞こえるので」

加賀「壊れたからじゃないの?」

那珂「もー悲観しすぎですよ! 私に任せてください!」

那珂「神通ちゃーん! おーい! 明石さんでも夕張さんでも、誰でもいいので応答してくださーい!」

那珂「誰かー!! お願いしまーす!!」

加賀(……脳に響くわ)

加賀(少し離れてましょう)スタスタ

那珂「いじわるしてるのー!? だとしたら陰湿だよー!! 泣いちゃうよー!!」

那珂「このままじゃ那珂ちゃんのエンジェルボイスが嗄れちゃうよー!? おーい!!」



――食事処間宮――


提督「居たか?」

赤城「いえ、どこにも」

川内「資材置き場の方も確認したけど見つからなかったよ」

天龍「あの仏頂面め、どこ行きやがったんだ」

提督「……」


提督「俺のせいだ」

天龍「あ?」


提督「俺が執務室で加賀と合流できていたら、こんなことにはならなかった」

天龍「まだ言ってんのかよ……あれは仕方ねえって」

川内「そーそー。てか別に加賀さんが消えたわけじゃないんだし、そんなに気負わなくても」

天龍「これだけ大声で探しても反応ないってことはさ、どっかで寝てんじゃねえの?」

川内「それはさすがにないでしょ」

提督「……。でもお前らも見ただろ」

提督「あの奇妙な現象の数々、ただ事じゃない。加賀の身に何か起きている可能性は充分ある」

赤城「確かにそうですが」

赤城「でも、いくら何でも消えるなんてことは……」




那珂「みんなー!」スタタタッ


提督・赤城・川内・天龍「!!」

提督「那珂! お前今までどこに…」

提督「……?」

那珂「はぁ……はぁ……ちょっと待って、息が……」

川内「かなり慌ててるけど、どうしたの?」

天龍「ははーん、分かったぜ」

天龍「さてはお前、今まで寝てたな? さっき起きたから焦ってんだろ?」

赤城「寝てたにこだわるわね」

赤城「大丈夫よ那珂さん、落ち着いて話して」

那珂「は、はい」

那珂「でも、みんなこそ落ち着いて聞いてほしいの」

那珂「今から言うことは、全部ホントのことだから」

天龍「な……何だよ」

那珂「……実はね」

那珂「今まで私、ずっと閉じ込められてたの」

川内「へ?」

赤城「誰にですか?」

那珂「それがややこしいんだけど、私と全く同じの姿をした『何か』」

天龍「『何か』って何だよ」

那珂「分かんないよ! ただ、急に背後から襲われて」

那珂「あっ、加賀さんも一緒にいたよ!」

提督「!」

提督「加賀も?」

那珂「うん。今も閉じ込められてる」

那珂「私は何とか逃げて来たんだけど……早く助けないと、あいつに何かされるかも!」

川内「……」

川内「ねえ、ひょっとして那珂ちゃんの言ってる『何か』って」

川内「加賀さんが話してた、見えない何かじゃないの?」

赤城「かもしれないわね。映像には映らなかったけど」

赤城「肉眼では見えるのかしら」

天龍「そ、それってやっぱ……幽霊なのか!?」

赤城「分からない。でも急を要するのには違いないわ」

赤城「那珂さん、案内してくれる?」

那珂「はい!」

スタタタッ


提督「待て」


川内「どうしたの提督?」

天龍「早くしねえと加賀が!」

提督「那珂、指輪はどうした」

赤城「指輪?」

提督「ケッコンカッコカリの指輪だよ。嵌めていないけど」

提督「どこかに落としたのか?」

那珂「えっ……あ、ホントだ!」

那珂「気づかなかった……逃げるのに必死だったから……」

提督「というか疑問なんだが」

提督「お前はどうやってその場所から逃げたんだ? 加賀は今も閉じ込められているんだよな」

提督「一緒に逃げることはできなかったのか?」

那珂「……」

天龍「んなこと気にしてる場合かよ!」

提督「大事な事だよ。答えてくれ」

那珂「……」


那珂「はぁ、めんどくさいなぁ」


川内「!?」

天龍「な、那珂?」

那珂「もうちょっと簡単に引っかかってくれるとやりやすいのになー」

赤城「……あなた、那珂さんじゃないわね?」

提督「本物はどこにいる」

那珂「ふふふ、どこだろうね」

川内「え。うっそ、マジで偽物?」

川内「気づかなかったー……すごいそっくり」

天龍「お前姉妹だろうが!!」

偽那珂「さっきみたく強行手段で行くしかないね」

偽那珂「てかこの方が手っ取り早いし」

偽那珂「長門さんお願い」

赤城「えっ」

提督「長門だと?」


スタスタ

長門「……」


天龍「おお長門じゃん! 今までどこにいたんだよ!」

提督「待て天龍。様子がおかしい」

川内「……なんかさ」


長門「……」ユラァ


川内「目が濁ってない? 動きもゾンビみたい」

天龍「いやゾンビの動き知らねえし」

提督「っ! 気をつけろ天龍!」

天龍「え?」


ヒュンッ

ドスッ


天龍「うっ……!」


バタンッ


川内「天龍!?」

赤城「は、早すぎて見えなかった」

長門「……」

提督「皆、長門から離れろ!」

偽那珂「遅いよ」


ヒュンッ

ドスッ


川内「っ!?」


バタンッ


赤城「川内さん!」


ヒュンッ


赤城「くっ!」ガシッ

長門「……!」

偽那珂「へー、すごいね。長門さんの動きを止めるなんて」

提督「長門……どうして……いや」

提督「お前か那珂。何故こんなことをする」

偽那珂「あれ? まだ那珂って呼ぶんですね」

偽那珂「そうですねー、理由はあとで話してあげますよ」


ドスッ

赤城「ぐぅっ……!」


バタンッ


偽那珂「今倒れてる3人と、そして提督」

偽那珂「あなたを気絶させて別の場所に幽閉してからね」

提督「……」


ヒュンッ

ドスッ



――モニター室――


神通「……あの」

龍田「どうしたの~?」

神通「何か聞こえませんか」

電「?」

夕張「やだな、変なこと言わないでよ」

神通「いえ、本当に……歌声のようなものが……」


『……ザザッ……キヅカナイノー……ワタシガミンナニー……ガガッ……』


明石「……本当だ。微かに聞こえる」

夕張「えぇ……何なの気味が悪い」

電「もしかして……呪いの歌なのです?」

電「聞いたものは7日後に死んでしまうという」

夕張「ちょっとぉ! 怖いからやめてよ!」

明石「電ちゃん何気に知識が豊富よね」

龍田「……ふふっ。違うわよ~」

龍田「これは無線の音ね~」

神通「あっ! すっかり忘れてました!」カチャカチャ

神通「もしもし、どなたですか?」


――――


那珂「……あ! やっと繋がった!」

神通『その声は、那珂ちゃん!?』

那珂「うん! 那珂ちゃんだよ! もー、あと少しで加賀さんにも歌ってもらうとこだったよ!」

加賀「歌わないわよ」

神通『加賀さんもいるの!? 無事だったのね……今どこにいるの?』

那珂「んーと、それがね、分からないの」

神通『分からない? どういうこと?』

那珂「話せば長くなるんだけど、えっと……」

那珂「すみません加賀さん、お願いします」スッ

加賀「分かったわ」


――――


ガガッ

加賀『もしもし、神通さん?』

神通「加賀さんですか!」

加賀『ええ。繋がってよかった』

神通「どうして那珂ちゃんと……」

加賀『話すと本当に長くなるのよ』

加賀『ただ訳あって説明してる時間がないから、今から言うことを質問せずに聞いて欲しいの』

神通「分かりました」

加賀『ありがとう。私たちは今、古い設備が置かれている場所にいるわ』

加賀『窓も出入り口も封鎖されて閉じ込められてるの。どうしようもない状況よ』

加賀『ただ、鎮守府内……あること……ザザッ……かくに……済み、で……ガガッ』

神通「? 加賀さん? どうしました?」



加賀『……電……ザザッ……乱れ……』


ブツンッ


『ザーーーー……』


明石「どうしたの?」

神通「途切れてしまいました」

電「電波が悪いのです?」

夕張「んー……電波の問題じゃないと思うわ」

龍田「故障かしら~」

夕張「故障だとしたら……きっと那珂ちゃんが乱暴に扱ったせいね」

電「それよりも!」

電「加賀さんが何を言ってるか、全部聞き取れたのです?」

神通「全部かどうかは分からないけど」

神通「那珂ちゃんと一緒に、古い設備に閉じ込められてるって」

電「閉じ込められてる!?」

夕張「誰に!?」

神通「それは話す余裕が……でも」

神通「窓も出入り口も封鎖されてるって。あと鎮守府内がどうだって」

明石「……古い設備……鎮守府内……」

明石「と言ったら、あそこしかないわ」

龍田「思い当たるふしがあるの?」

明石「ええ。実はこの鎮守府、古い歴史があって」

夕張「今の提督が着任する時に設備を一新したらしいんだけど」

夕張「ある設備だけは、場所ごと移動して完全に新しく作られたんだって」

電「それはどこなのです?」

明石「工廠よ」

神通「……ということは」

神通「那珂ちゃんと加賀さんは今、古い工廠に?」

明石「だと思う。確か資材置き場に、そこへ通じる道があったはずよ」

夕張「でも変じゃない? 危険だからって、鉄板を打ちつけて入れないようになってたはずだけど」

龍田「どうでもいいことよ。今は2人を助け出すのが先決」

神通「赤城さんに無線で知らせますね」カチャカチャ

神通「もしもし赤城さん? 応答願います! 那珂ちゃんと加賀さん、2人がいる場所が分かりました!」

神通「赤城さん聞こえますか! 赤城さん!」

ここまでで
>>235 もはやパン中毒…

次は木曜日にあげます



――旧・工廠――


赤城「……」

神通『応答してください、赤城さん!』

偽那珂「へー、こんなちっちゃいのに通信できるんだね」

神通『!? 那珂ちゃん? どうして赤城さんの…』


グシャッ

バチバチッ!


『ザザッ……ザーーーーー……』


偽那珂「ちっちゃいから壊すのも簡単」

偽那珂「にしても、余計なことしてくれたね。場所がバレちゃったじゃん」


加賀「……!」

那珂「川内ちゃん! 天龍ちゃん! みんな起きて!」

提督・赤城・川内・天龍「……」

那珂「提督、それに赤城さんも!」

加賀「……どうして」

加賀「どうしてこんなことをするの? あなたの目的が分からないわ」

加賀「皆を集めて何をする気なの」

偽那珂「……」

偽那珂「そうだね。もう話してあげてもいいけど」

偽那珂「その前に……長門さん。提督を起こしてあげて」

長門「……」スタスタ

ドカッ

提督「ぐっ!?」

那珂「きゃっ! ちょっと何するの長門さん!!」ササッ

提督「ごほっ……こ、ここは……?」

加賀「提督、意識が?」

提督「加賀、それに那珂」

那珂「大丈夫提督? 蹴られたとこ痛くない?」

提督「蹴られた……そういえば脇腹が痛むな」

長門「……」

提督「誰がやったのか予想はつくが」

偽那珂「さてと、じゃあ望み通り話してあげるよ」

提督「! お前は……」

偽那珂「私の目的、それはね」



偽那珂「その提督の顔を苦痛で歪めること」



加賀「提督?」

提督「……」

那珂「何でそんなことするの!?」

偽那珂「……そっか。そうだよね」

偽那珂「あなたみたいに大切にされてる艦娘は、提督っていう存在を憎むなんてことしないよね」

那珂「え?」

偽那珂「鎮守府で生活できて、艦隊のアイドルともてはやされて、さぞ気持ちのいい気分だろうね」

那珂「な、何を言ってるの?」

那珂「!! あ、あなた……まさか……!」

偽那珂「ふふっ。気づいた?」

偽那珂「そう、私は――」

那珂「私の生き別れた姉妹?」

偽那珂「……」

提督・加賀「……」

那珂「だって顔もそっくりだし、声も…」

偽那珂「違う。私は――」

那珂「じゃあ親戚?」

偽那珂「違うってばっ!!」

加賀「さしずめ、今まで解体された那珂さんの魂といったところかしら?」

那珂「っ!?」

偽那珂「ふふふ、話がスムーズに進んで助かるよ。ただ厳密に言うと」

偽那珂「私はね……今まで解体されてきた艦娘の魂なんだよ」

提督「艦娘の魂、だと?」

偽那珂「提督なら分かるでしょ。艦娘は建造されたら、どれか3つの道を歩まされる」

偽那珂「鎮守府の戦力として数えられるか、近代化改修によって他の艦娘の力になるか」

偽那珂「そして解体されるか」

偽那珂「私はその解体された艦娘たちの無念によって生み出された、魂の集合体なんだよ」

加賀「……」

那珂「ほ、ホントに幽霊だったんだ……」

偽那珂「なぜ解体するの? みんなと一緒に戦いたいのに、戦えるのに」

偽那珂「解体するくらいならどうして建造したの」

偽那珂「憎い。解体した奴が憎い」

提督「……」

偽那珂「あなたにも心当たりがあるはず」

偽那珂「罪のない艦娘たちを何回解体したのかな? それとも何十回?」

加賀「やめて。提督を責めるのは筋違いよ、提督だって仕方なく…」

偽那珂「仕方なく? そんな言い訳通用しない」

偽那珂「それに私の中にある記憶だと、一部では見せしめにするような行為が行われてたらしいじゃん」

偽那珂「特定の艦娘が建造されないからって、那珂ちゃんをことごとく解体して」

提督「……だからその姿なのか」

偽那珂「多分ね。気づいた時には那珂ちゃんだったから」

加賀「待って」

加賀「仮にそういう行為があったとして、私たちの鎮守府では…」

偽那珂「勘違いしないでよ。重要なのはそこじゃないんだから」

提督「俺が実際に艦娘を解体したかどうか、か?」

偽那珂「その通り」

提督「……」

提督「……確かに解体はしたことがある」

偽那珂「やっぱりね」

提督「だが無暗に行ってはいない」

提督「ちゃんと鎮守府の事を考えて…」

偽那珂「それだよ。鎮守府の事を優先で艦娘のことを考えてないよね」

偽那珂「艦娘にも命はあるのに。自分で自分を残酷だと思わないの?」

加賀「提督、耳を傾けてはダメです」

提督「……」


提督「すまなかった」ペコリ

偽那珂「……」


那珂「謝る必要なんてないよ!」

加賀「そうです、そもそも艦娘の目的は…」

提督「いいんだ。解体して、艦娘の自由を奪ってしまったことは事実だ」

偽那珂「……まあ」

偽那珂「今更謝っても遅いけどね」

那珂「それはないんじゃない!?」

偽那珂「だって謝れば済む問題じゃないもん」

那珂「じゃあどうして欲しいの? 土下座!? 何なら那珂ちゃんも一緒に土下座するよ!」

加賀「那珂さん落ち着いて」

偽那珂「さっき言ったでしょ。私は提督の苦しむ顔が見たいんだよ」

偽那珂「長門さん」

長門「……」スタスタ

加賀「!」

加賀「ひょっとして、長門さんを利用して提督に暴力を?」

偽那珂「それもいいけどねー。残念ながらハズレ」


ガシッ


那珂「へ?」

長門「……」グイグイ

那珂「ちょっ、痛い! 何するのっ!」

加賀「那珂さんをどこへ連れて行く気?」

偽那珂「ふふふふ」

提督「!!」

提督「まさか解体する気か?」

加賀「なんですって……!」

偽那珂「ピンポーン♪ 鋭いじゃん」

偽那珂「提督には今後もずっと苦しんで欲しいからね。こうすれば大ダメージでしょ」

提督「それだけはやめてくれ! 頼む、何でもする……!」

偽那珂「あははは! いいねぇ、その顔が見たかったの!」

加賀「長門さん目を覚まして!」

長門「……」

偽那珂「無駄だよ。長門さんの意識は私の手中」

長門「……」ドンッ

那珂「きゃっ!」

那珂「い、嫌……嫌だよ! ここから出して! 解体なんてひどすぎる!」ドンドンドン

那珂「まだ武道館でライブやってないし紅白にも出てないし!」ドンドンドン

那珂「それに何より、全国のファンが深い悲しみに打ちひしがれるよ! ファンの悲しむ顔は見たくないよー!」ドンドンドン

偽那珂「……なんかあなたは個人的にムカつくし、解体のし甲斐あるよ」



――――


スタタタッ

武蔵「……私が必要とは……一体何事だ……」ムニャムニャ

電「鉄板を壊すには砲撃じゃ危険なのです!」

明石「だから、武蔵さんの馬鹿力で開けてもらえないかなーって」

神通「でも素手で打ち破るなんて……本当にできるんでしょうか」

夕張「できるわよ。前に分厚いの何枚かを正拳突きで砕いたの見たから」

龍田「期待できるわね~」

神通(……普段どんなトレーニングしてるんだろう)

明石「でも、赤城さん本当にどうしちゃったんだろ」

夕張「まだ無線繋がらないの?」

明石「ええ。何かあったのかも」

神通「もしかして、加賀さんたちを閉じ込めた犯人に……」

龍田「可能性はあるわね~。急ぎましょう」


――――


偽那珂「さて、このスイッチを押せば解体機が作動するけど」

提督「やめてくれ! この通り!」スッ

偽那珂「ふふっ、何も言ってないのに土下座してくれるなんてね。良い物が見れた」

偽那珂「解体はやめないけどね」

加賀「那珂さんを解体するくらいなら私を!」

偽那珂「友情に熱いねー、でもダーメ♡」

偽那珂「さあお待ちかね! 解体ショーの始まりだよ!」




バチンッ!



偽那珂「っ!?」

提督「……スイッチが」

加賀「はじけ飛んだ?」

偽那珂「なっ……一体何が……!」


ユラァ… ユラァ…


???『やめなさい。あなたのやっていることは、間違いよ』


加賀「……あれは何?」

提督「!」

提督(火の玉……トイレ前の通路で見かけたやつか……?)

偽那珂「な、何なの?」

???『私はあなたと似たような存在』


パァァァァァァァ


偽那珂「くっ、眩しい!」

加賀「目が開けられない……!」

提督「……!!」

提督(あの姿は……)

偽那珂「……!?」

偽那珂「そ、そんな馬鹿な!」

???『……』

加賀「那珂さんが……2人?」

提督「いや、解体機の中にいる那珂を含めたら3人だ」

加賀「どういうことでしょう」

提督「……見当もつかない」


偽那珂「何者?」

???『言ったはずです。私はあなたと似たような存在』

???『解体された艦娘の魂、その2です』

偽那珂「その2!?」

???『ただし、憎しみや怒りといった負の感情に包まれているあなたとは違う』

???『慈しみなどの温かい感情を主にした魂の集合体なのです』

???『そうですね……仮にあなたが黒とすれば、私は白』

???『白那珂とでも言いましょうか』

黒那珂「……白那珂……?」

白那珂『はい』


提督・加賀「…………」

那珂「ねえ何が起こってるの!? ねえ!」

黒「で?」

黒「その白那珂が、何しにここに来たの」

白『あなたを止めるためです』

黒「はあ? 止めてどうするの」

黒「あなたも解体された側なら分かるでしょ? 提督たちが憎くないの?」

白『はい、何故なら』

白『提督たちの心にも悲しみの感情があったことを知っているからです』

黒「悲しみって……そんなのあるわけ…」

白『確かに躊躇の二文字がない提督もいます。ですが、それは鎮守府を運営していく上で仕方のないこと』

白『それに着任して間もない頃は、どの提督もためらいや悲しみを私たち艦娘に抱いてくれたはず』

黒「……」

白『そもそも、私たちが解体されたことによって』

白『僅かながら資材も生まれます』

白『解体は決して無駄ではないのです』

黒「ふん。そんなの知ったことじゃないよ」

黒「何であれ私の中の憎しみは消えない。説き伏せようとしたって無駄なんだから」

白『……そうですか』

白『では、力ずくで止めるしかないですね』スッ

黒「面白い、やってみなよ」スッ

提督・加賀「…………」

那珂「ねえったら! どうなってるの!? 教えてよ!」


黒「はあっ!」

ガシッ

白『遅い』ヒュンッ

ドカッ

黒「ぐふっ!」

白『まだまだ』ドカッ バキッ

黒「げふっ、ごはっ!」

白『とどめです』

ズドンッ

黒「あがっ……!」


提督「白那珂強いな」

加賀「軽快なフットワークですね」

黒「……くそ」

黒「くそ、くそ、くそっ!」ブンブンブン

白『まだ動きますか。打たれ強いのは認めますが』サッサッサ

黒「そこっ!」ヒュンッ

白『!?』

パァンッ

白『ぐっ……!』

白『フェイントですか、やりますね』

黒「舐めるな!」

ドカッ バキッ ゴスッ ヒュンッ


――――


スタタタッ

電「鉄板が無くなってて、武蔵さんがいなくても通れたのです!」

武蔵「起こされ損だな」

神通「でも、加賀さんや赤城さんを閉じ込めた犯人がいるはずですから」

神通「何だかんだ武蔵さんの力が必要になるかもしれません」

明石「見て! あの扉の向こうが工廠のはずよ!」

夕張「よし、早く助け出そう!」スタタタッ

ググッ

夕張「あれ! 開かない!」

龍田「閉じ込められてるって言ってたわよね~」

夕張「あっ、そっか」エヘヘ

武蔵「……どうやら」

武蔵「私の出番のようだな」パキ ポキ

電「でも、こんな大きな扉を壊せるのです?」

武蔵「任せろ」スー ハー

武蔵「……はあっ!!」


ドゴォォォォォォン!!


神通「す、すごい……一撃で……」

龍田「さすが武蔵さんね~」

明石「加賀さん、那珂ちゃん! 助けに来ましたよ!」

スタタタッ



黒「はあああああっ!!」

白『……っ!!』


ドガガガガガガガガ


電・明石・夕張・龍田・神通「…………」

武蔵「……どうして那珂が2人いて、ド○ゴンボールのような戦いを繰り広げているんだ?」

提督「お前ら!」

電「あっ、司令官さん!」

加賀「助けに来てくれたのね」

神通「加賀さんも、ご無事でなによりです!」

龍田「天龍ちゃんたちも大丈夫ね~。気絶はしてるけど」

明石「……あの……」

夕張「あれ、どういうことですか?」


黒「オラオラオラオラオラオラオラ!!」

白『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄』


加賀「……」

提督「後で話す。今は白い方を応援してくれ」

明石「は、はあ……」

白『隙あり!』

ズドンッ

黒「がはぁっ……!」

白『今度こそ、手ごたえありです』

黒「う……うう……」


バタンッ


白『はぁ……はぁ……』

白『……どうですか? これに懲りたら、もう解体するのはやめてください』

黒「はぁ……はぁ……ふ、ふふっ」

白『何がおかしいんですか』

黒「ふふふ……違うよ」

黒「拳を交えるたびにさ、流れて来たんだよ。あなたの気持ちが」

黒「こういうことが言いたかったんだね」

白『……』

黒「私、間違ってたのかも」

黒「自分勝手っていうか。解体されたって事実だけに固執しすぎて」

黒「周りのものが見えなくなってた」

黒「あなたのおかげで、それに気づけたよ」

白『じゃあ』

黒「うん……解体はやめる」

黒「人数も多くなってきちゃったね」

ポウ…

白『……』

黒「はは……憎しみが浄化されつつあるせいか」

黒「私の身体も消えていくね」

白『……あなたの拳、重かったです』

黒「何言ってんの? あなたの方が何枚も上手だったじゃん」

黒「あっ。そうだ」

黒「提督」

提督「!」

黒「それに加賀さんと、集まってきたみんな。騒ぎを起こしてごめんなさい」ペコリ

黒「私もうすぐ消えちゃうから、今気絶してる3人と……あと」

黒「閉じ込めちゃった私にも、謝ってたことを伝えて欲しいの」

提督「……分かった」

提督「こっちもすまなかった。お前の気持ちを考えず」

黒「もういいって」クスクス

黒「でも、謝ってくれて救われた気持ちもあるよ」

黒「ありがとう。それじゃ」


スー…


明石「……き、消えた」

夕張「本物の、幽霊……?」

龍田「ビックリ」

電「」ガタガタガタ


白『……』

加賀「あなたも消えるの?」

白『はい。役目は終わりましたから』

加賀「あの黒い那珂さんを止めるのが役目?」

白『そんな気がしたんです』

提督「……1つ聞きたいんだが」

提督「何でお前らはこの鎮守府に現れたんだ?」

白『さあ……雰囲気に誘われたのでしょうか』

白『よく言いませんか? 幽霊は怖がる人間の側に現れるって』

提督「……なるほどな」

白『では、そろそろ私も』


スー…


電「ここ、こっちも消えたのででsss」

バタンッ

武蔵「おい電が気を失ったぞ」

明石「ひ、非科学的よ。ありえないわ」ガタガタ

夕張「あれはプラズマか何かだよきっとそうだよ」ブルブル


提督「……」

加賀「全て終わったんでしょうか」

提督「……みたいだな」



那珂「もーダメぇぇ! このまま解体されちゃうんだぁぁ! うわぁぁん!」ドンドンドン



――――――――

――――――

――――




――1週間後、執務室――


スタタタッ

バンッ!

明石「提督! 朗報ですよ!」

長門「お前たち、せめてノックくらいしろ」

夕張「すみません! でもこれ見てください!」スッ

提督「何の記事だ?」

提督「……『白熱のオバケ屋敷大会、優勝は明石&夕張率いるチーム』」

長門「結局参加したんだな」

夕張「当たり前ですよ! あんなにお金と時間をかけたんだし!」

明石「500万円もゲットしました! 鎮守府の費用に回せますよ!」

提督「本当にもらえたんだな……おめでとう」

提督「だが、まずはこの前の騒ぎでかけた金を…」

明石「もちろん分かってます。ただ……あの……」

提督「?」

明石「工廠に使う分を、他よりちょっと多めにして欲しいなーって」

夕張「お願いしますっ!」ペコリ

提督「まあ、そのくらいいいけど」

夕張「ホントですか!? やった!」

明石「これであの開発を進めることができる!」フフフ

提督「無駄使いするなよ」

明石「はい、ありがとうございます!」

明石「それでは報告以上です!」

夕張「提督愛してますっ!」

バンッ

スタタタッ…

長門「全く、調子のいい奴らだな」

提督「あれがあいつらだろ。落ち着いてたら別人かと疑うよ」

長門「それはそうだが」

長門「……しかし、信じられない出来事だったな」

提督「幽霊騒動か」

長門「うむ。私は途中から意識を失っていたんだが」

長門「今更ながら、本当に幽霊だったのか?」

提督「……」

提督「人によって見解は違うと思うが」

提督「俺はそうだと信じてる」

長門「……そうか」

長門「にしても惜しいことをした」

提督「?」

長門「本物の幽霊がどんな言動をするのか興味があったのにな」

長門「私を起こせなかったのか?」

提督「近づいたら殺されそうだったからな」

長門「ふふっ、またまた。それは言い過ぎだろう」

提督「いや冗談抜きで」



ズッ… ズッ… ズッ…



長門「ん? この音は」

提督「……あまり思い出したくない音だが」


ズッ… ズッ… ズッ…


長門「執務室に向かって来るぞ」

提督「……」

提督「天龍か、川内のイタズラだな」ハァ…

スタスタ

バンッ

提督「おい! いい加減に……!」

提督「……?」

長門「どうした」

提督「誰もいない」

長門「何だと?」スタスタ

長門「……確かに」

提督「……」

長門「ま、まさか……!」


長門「本物の幽霊か!?」キラキラ


長門「どこだ、どこにいる! ここか!?」ササッ

長門「それともここか! 幽霊よ、恥ずかしがらずに姿を見せてくれっ!」

提督「……」

提督「……こいつは川内、いや」

提督「それ以上のオカルトオタクかもしれない」


――――


白『よく言いませんか? 幽霊は怖がる人間の側に現れるって』


――――


提督「長門、お前のところには一生来そうもないな」

長門「幽霊ー! ちょっとでいいから! 先っぽだけでいいから!」





おわり

見てくださってありがとうございました
一応ホラーギャグ?で始めたんですが、噛み合わなかったような…

依頼出してきます

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年09月20日 (火) 21:59:44   ID: T6i52y98

髪の長い幽霊がオニギリって、正体は加賀さんの相棒の赤い人ってオチな気がしてきた

2 :  SS好きの774さん   2016年10月16日 (日) 11:34:20   ID: TY9uWdhb

乙です。赤城さんはわかりやすいですねw

3 :  SS好きの774さん   2016年12月23日 (金) 00:23:43   ID: 6hCRf4sr

頭悪いやつが頑張って書いたってかんじやな

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