咲「水の惑星 AQUA」 (287)

咲「水の惑星 AQUA」

・咲の登場人物がARIAの世界をなぞるようです。
・咲さんが水先案内人(ウンディーネ)を目指していくお話です。
・アリシアさんやアリア社長など他の登場人物は後でのお楽しみです。
・地の文無しです。
・原作らしくのんびり進行ですがよろしくお願いします。

・こちらはおまけのイラストです。上手くはないですが想像の足しになれば嬉しいです。
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira116686.jpg


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1472272759

アナウンス「――本日は太陽系航宙社、長野=ネオ・ヴェネツィア便をご利用いただき、まことにありがとうございます」

アナウンス「当機はまもなく、惑星アクアの大気圏に突入します」


咲(――前略、今、船の中でこのメールを書いています)

咲(昨日は機内で一晩中興奮して眠れませんでした)ポチポチ

咲(…機内で座席がわからなくて迷子になりかけたという理由もありますが、それはさておき)ポチポチ

咲(もうすぐ新天地に着きます)ポチポチ

アナウンス「かつて火星と呼ばれたこの惑星が惑星地球化改造(テラフォーミング)されてから、はや150年――」


咲(京ちゃんに教えてもらったパソコンで、なるべくこちらのことをお伝えしたいと思います)ポチポチ


アナウンス「当機はまもなく、目的地ネオ・ヴェネツィア上空に達します。21世紀前半まで地球(マンホーム)のイタリアに存在していた水の街…、ヴェネツィアをベースに造られた水と共に生きる港町でございます」


咲(では…落ち着いたらまたメールを書きますね)ポチポチ

咲(追伸――、心配しないでくださいね。私は、緊張していますが元気です)ポチポチ

咲(ずっとずっと、憧れていたんです)ポチポチ

咲(地球歴2301年 4月3日 宮永咲)ポチポチ パタン

咲(なってみせます、「水先案内人(ウンディーネ)」!)ゴッ

アナウンス「パリン ジジッ ――みなさまにお知らせします。本船はただいま電離層を抜けました」

アナウンス「到着までしばしの間、眼下の景色をお楽しみください」


ヴォン


咲(ひゃあっ!?…ま、まわりが透明に…!?あ、映像かぁ…。足元まで透明だから落っこちたかと…。でも…)

咲(…綺麗。すごく綺麗…!海も空も、青色に輝いて…!あ、カモメ飛んでる…)

咲(どんどん高度が下がってる。きっと、あの街が…!)


「――水の惑星「AQUA」へようこそ」

「――マルコポーロ交際宇宙港へようこそ。ネオ・ヴェネツィア観光のお客様は3番窓口を…」

咲(よかった行先合ってる!迷子にならずにすんでよかった…)

咲(…こっちだ。この先に…!)タタタッ


咲「わあ…っ!」

咲(まぶしい水面、遠い空、行きかうゴンドラ、潮の香り。地球(マンホーム)のバーチャルネットで見た通り、いや、それ以上…!さすが憧れの水の都――)

咲「気持ちいい…」

咲「…」

咲「…」

?「…」じー

?「…」ぺろっ

咲「ふえっ!?」ビクン

?「」ぺろぺろ

咲「…」

?「」ぺろぺろぺろぺろべろーん

咲「わ、私はおいしくないですよぅ…」

?「」じー

咲「もしかして、火星ネコ?生で初めてみたよ」

咲(火星にしかいない火星ネコ。地球ネコより大きい…。あと、この子なぜか顔の右側の毛が長い?)

火星ネコ「にゃー」ステキデス

咲「ネコさんも、誰かと待ち合わせ?」

火星ネコ「ny」グギュルルル

咲「…」

火星ネコ「…///」

咲「お弁当、一緒に食べる?待ち合わせまで、まだ時間あるし」

火星ネコ「にゅ」ステキデス

咲「私、宮永咲といいます。地球(マンホーム)から来ました。よろしくね」

火星ネコ「うまうま」ヨロシクデス

咲「もうすぐ私の下宿先の人が迎えに来てくれるの。どんな人かはまだわからないけど、今日からお世話になって、この星に住むんだ」

咲「猫さんも誰かと待ち合わせ?」

火星ネコ「んにゅ」ヨッコイショ

咲「ん?猫さん、それ私のバック…」

火星ネコ「」フラフラ アッ

咲「落ち…!ね、ねこさーん!」バッ

火星ネコ「きゅう~」

咲「よ、よかったぁ…。ちょうどゴンドラに落っこちて…」ホッ

咲「…ってあれ!?私のバッグ!!そこのゴンドラのおじさーん!」ダッ

咲「待っ」ズルッ コテン

咲「…ううっ…おじさあん…」ヨロヨロ

咲「おじさーん!待ってくださーい!!」タタタッ

咲「え、えいっ!」ピョン スタッ

咲「突然お邪魔してすみません!私のバックが落ちてしまって…」

?「おう、立つと危ねーぞ!」グラッ

咲「って、わわわっ」ヨロヨロ ストン


?「…」スイー

咲「あの、すみません。私さっきの場所で待ち合わせをしてて…」

?「…」ゴトッ

咲(あ、止まってくれた。でも、あれって…郵便受け?)

ガサガサ ドサッ

咲「手紙…、郵便屋さんだったんだ」

咲「もしかして郵便物回収のお仕事中でしたか?お仕事のお邪魔をしてしまって本当にすみません…」

郵便屋「あー…。いいってことよ」

咲(…あっちの船は交通整理をしてる。あっちは大きな荷物の輸送。あっちは、ラーメンの出店?)

咲「本当にみなさん船でお仕事してるんだぁ」

郵便屋「滑稽だろ?星間旅行ができるご時世にわざわざ船でうんとこさとやんなきゃ始まらねえんだ、この街は。まったく不便で不便でならねぇ」

郵便屋「でも、不思議と落ち着くんだよな」

咲「…はい、わかります」

郵便屋「おうっ、嬢ちゃんにもわかるかい?」

咲「はい、何となく…」


咲「私、地球(マンホーム)出身でして、街はどこも美観化と合理化が進んでいてスッキリしていました。買い物も仕事も全部家でできるし、便利です。…私、あまり機械は得意ではないんですけれども」

郵便屋「あぁ、だろうな」

咲「ええっ、わかるんですかっ」

郵便屋「どう見たって機械が得意そうには見えねぇな」

咲「うぅ…」

郵便屋「んで、機械がイヤになったってか?」

咲「いえ、そうではなく…。そのスッキリした便利な街の姿が物足りなく感じてしまうんです」

咲「私…、その街、長野からもろくに出たことないのに、わがままなんですかね」

郵便屋「…」

郵便屋「…、はあっはっはっはっは!!」

咲「へ!?(笑われたっ!?)」

郵便屋「嬢ちゃん、若いのに面白いこというなぁ。…このネオ・ヴェネツィアには何しに来たんだ?旅行か?」

咲「…私、「水先案内人(ウンディーネ)」になりたいんです」

郵便屋「水先案内人(ウンディーネ)ってこの街の伝統的な観光客専門のゴンドラ漕ぎのことか?」

咲「はい。今日から「ARIAカンパニー」という会社に下宿して見習いから修行するんです」

郵便屋「しかし、水先案内人になる試験は難しいってよく聞くぞ?この街のイメージを代表するアイドル業みたいなもんだからなぁ」

咲「はい…。私、気が弱くて、アイドルには向いていないかもしれません…」

咲「でも私…、ゴンドラが漕ぎたいんです。女性は水先案内人になるしかないので…」

郵便屋「まあ他の職のゴンドラ漕ぎは男専門だからなあ」ンー


郵便屋「…。嬢ちゃん、ちょっと漕いでみるか?」


咲「え…、いいんでしょうか?」

郵便屋「んー?かまやしねえって」

咲「…」

咲(夢にまで見た、ゴンドラ漕ぎ…)ドキドキ

咲「…いきます!」

スウーッ

郵便屋「お、うまいうまい」

スウーーーッ

郵便屋「うまいうま…」

スウーーーーーーッ

郵便屋「嬢ちゃん…、もうちっとスピード落さんとな」

咲「はひっ!」ハッ

咲「す、すみません…。緊張で我を忘れて…」

郵便屋「そうかいそうかい」ホッホッホ

スウーーーーーッ

郵便屋「…ん?この向きは…」

郵便屋「嬢ちゃん後ろ!壁っ!!」

咲「?」

郵便屋「ぶつかる!!」

咲「――」クルッ

コーン!

郵便屋「っ!う…おぉ、助かった…」

咲「ふう…」


?「…」スゥッ


咲「あ…」クルッ

郵便屋「ん、あぁ、そうだ。今すれ違ったのが…」

咲「――「水先案内人(ウンディーネ)」!」

咲(真っ白なゴンドラ。真っ白な制服。真っ白な肌。腰よりも長い髪。…綺麗)ペタッ


郵便屋「あー…。嬢ちゃんは立派な水先案内人になれるよ」

咲「え?」

郵便屋「んー、いや何だ…。あんな漕ぎ方ができるんだ。間違いねーよ」

咲「…。ぶつかりそうだったのに?」

郵便屋「いや、本当本当。いいターンだった」

咲「…またまたぁ」

郵便屋「まあぼちぼちがんばれや」

咲「…はい!」


郵便屋「…おうっ、運河(メインストリート)に出っぞ」

咲「…!」

――――
――

咲「…うん…?」ウトウト

咲「…ふわあああぁ…」ネムネム

郵便屋「おう、起きたか」

咲「…はい。あ、綺麗な夕日ですね。…夕日?」ハッ

咲「…寝てしまった…!」サーッ

郵便屋「お?どうした嬢ちゃん」

咲「どどどどうしよう下宿先の方をままま待ち合わせ場所に…!」アタフタアタフタ

郵便屋「おう、嬢ちゃん落ち着け」


「あ…、起きたみたいだね、宮永咲さん」


咲「…!」


「ようこそ、「ARIAカンパニー」へ」

「郵便屋さん…、あなたがあんまり気持ちよさそうに眠っていたから目覚めるまで待っていてくれたの」

咲「…えっ、どうしてここが?」

郵便屋「嬢ちゃん最初に「ARIAカンパニー」に下宿するって言ってただろ」ンー

咲「…!お、おじさんっ、ありがとう…っ!」ガシッ

郵便屋「おっ、なんだなんだわかったから船の上で暴れるなっ」


スウーッ

咲「本当にありがとうございました」ぺっこりん

「…見えなくなっちゃったね。私たちも入りましょう」

咲「あ…、あの、今日はすみませんでした」

「え?」

咲「待ち合わせ場所で結局迎えの方と会えなかったんです」

「…。あらあら、そうだったの」

「社長直々に迎えに行ってくれたんだけど残念だったね」

咲「しゃ…社長!?」

咲(大遅刻…社長激怒…クビ…路頭…強制送還…!?)

「ねっ、社長っ」

火星ネコ「にゅ」オカエリナサイ

咲「え…、あの、社長は?」

「目の前だよ?」

咲「…え~~~~~!?」

「やっぱり混乱しちゃったみたい。ごめんなさい、アリア社長がどうしても新人のあなたを迎えに行くって聞かなくて…」

咲「社長…、ネコさんが社長…?」

「火星ネコはしゃべれないけど知能は人間並みなの。あ、お名前はアリア・ポコテン・ナルカっていうの。ね、社長」

ナルカ「にゅ」ヨロシクデス

「よろしく、って」

咲「は…はい!よろしくお願いします」

「さてと、ご飯にしよっか。咲ちゃんはお魚は好き?」

咲「は、はいっ。あのっ」

「あ、自己紹介してなかったね。いけないいけない」


慕「慕、白築慕。よろしくね、咲ちゃん」


咲(やっぱり、ゴンドラですれ違った水先案内人(ウンディーネ)の人!しらつき、しのさん…!)

咲「よろしくお願いします、白築さん!」

慕「えー、慕でいいよぉ」

ワイワイ ワイワイ

ナルカ「…にゃー」ステキデス

今日の投稿は以上です。
こんな感じで、咲が灯里、慕(大人)がアリシアさん、成香っぽい猫がアリア社長でARIAの世界をなぞっていきます。
続きは月曜日に投稿したいと思います。
次は藍華の登場ですが、藍華役はどの子でしょうか。イラストは果たして間に合うのか…。
こちらはおまけのイラストです。上手くはないですが想像の足しになれば嬉しいです。
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira116687.jpg

最高に期待
咲慕の絡みにも期待

おお!コメいただいてる!ありがたやありがたや…
>>18 応えられるよう頑張ります。ただの原作の焼き直しにならないよう、雰囲気やキャラを壊さないように、の加減は探り探りですね 笑

咲「水の惑星 AQUA」

・今日の投稿です。
・咲が灯里、慕(大人)がアリシアさん、成香っぽい猫がアリア社長で、
  水先案内人(ウンディーネ)としてARIAの世界をなぞっていきます。
・藍華はいったいどの咲の登場人物でしょうか。

咲(――前略、アクアに着いて初めての朝です)

咲(これから始まる、新しい生活の幕開けです。…zzz)ムニャムニャ


ギイィ
とことこ ぽすっ
うんしょ うんしょ
いそいそ


咲「…ふ?」ムニャ…

咲「朝かぁ…。そういえばさっき物音が…」

ででん

咲「ふあっ!?」ビクッ

咲「…アリア社長!?…ナルカ社長?」

ナルカ「にゅ」オシゴトデハ アリアデス

咲「お…、おはようございます(なぜベッドに…)」

ナルカ「にゅ」ゴザイマス

咲「あれ、4月なのにカレンダーが8月…。あぁ、火星(アクア)だからか」

咲(火星(アクア)の自転周期は地球(マンホーム)とほぼ同じ24時間)

咲(ただ、公転周期は2倍で1年が24か月も…、わぁ、カレンダーが分厚い…)

咲(カレンダーでは8月ですが、地球(マンホーム)で言えば4月)

ガチャッ

咲(うぅ、まだまだ春先で朝はちょっぴり寒いです)ブルッ

咲(でも、外の空気はすきっとしていて、窓を開けたら部屋の空気が綺麗になった気分です)


咲(あれ?向こうの人、水先案内人(ウンディーネ)の制服だ)

?「…」


咲(わっ、目が合っちゃった。…って、行っちゃった。今の人、私と同い年くらいかな)ドキドキ

ぽみゅぽみゅ

咲「?どうしましたアリア社長」

ずいっ

咲「…!こっ、これは…!!」

慕「~♪」ジャッ ジャッ

咲「…し、しのさん。おはようございます」コソコソ

慕「あ、おはよう咲ちゃん。って、何隠れてるの?」

咲「制服、着てみました…」テレテレ

慕「わ~!うんうん、似合う似合う」

咲「は、恥ずかしいです…」カオマッカー

慕「アリア社長ったら早く咲ちゃんの制服姿が見たくて持ち出したんだ。びっくししたでしょ?」

咲「あははは…、ちょっぴり」

慕「さあ、朝食にしよう」

咲「はい(アボカドとエビのベーグルだ…!)」

慕「って社長、もう食べ終わったんですか?」

ナルカ「けぷっ」ゴチソウサマデス

咲(はやっ!)

「「いただきまーす」」

咲「もぐ…、お、おいしい…!」


咲(昨日も食べたけど、慕さんのご飯は本当に美味しい…!小さいころから料理をしていた、って言ってたけど、お店の料理と言われても信じるかも…)モグモグ

咲(料理だけじゃない。腰より長い綺麗な髪、真っ白な肌、優し気な表情、本当にアイドルのような…)ゴクッ...

慕「…」

咲「…な…、なんでしょう…?」

慕「ふふっ」


慕「ちょっと、嬉しいだけだよ」


咲「…」

咲「…///」モグモグ


慕「じゃあ朝食を食べ終えたらお手並み拝見といきますか」

咲「…!はいっ!」

ザザーッ

咲「み、宮永咲、いきまぁーす」ユラユラ

慕「はいはーい」フリフリ

咲(よーし。…あ)

?「…」

咲(今朝、窓から見かけた…。じゃなくて、今は、集中…)グイッ

スパーーーッ


慕「…」

慕「…嘘、こんなに…。でも、あれ…?」

慕「…あ…」

ナルカ「」ぽよんぽよん

スイーッ

咲「戻りました!」キラキラ

ナルカ「」タノシソウデス

慕「――…すごいよ、咲ちゃん。でも…ちょっと言いにくいんだけど」


慕「漕ぐ方向、逆だよ?」

咲「」



郵便屋「おう、嬢ちゃんじゃねーか」フン フン


咲「…郵便屋さん、ゴンドラの後ろに立って漕いでますね」

慕「う、うん」

咲「…今の私みたいにゴンドラの前で漕ぐと、お客さんの視界、遮っちゃいますもんね」

慕「…うん」

咲「」ガクッ

慕「咲ちゃん。正しい向きで漕いでみよっか?」

咲「…はい」

へろ~~~

咲「よっ、ほっ」

へろろ~~~

慕「…まっ、最初はこんなもんだよね」

慕「これから一緒に頑張ろうね」

咲「~~~っ、ありがとうございますっ」

慕「えへへ。…って流されてるよー」

咲「あ、あれ?」


ごちっ

咲「わっ、す、すみません!(ゴンドラがぶつかっちゃった!)」

?「…」

咲「あ…、さっきの…」

慕「あ、憧ちゃん。ゴンドラの練習?」

スイーッ

憧「はい、自主トレです」

慕「紹介するね。今度ウチに入った宮永咲ちゃん」


慕「で、彼女はこの街の同業店「姫屋」に下宿している、新子憧ちゃん」

慕「咲ちゃんと同じ見習い水先案内人(ウンディーネ)なの」

「ごめんくださーい…」

慕「あ、お客さん。はーい」

慕「じゃあ咲ちゃん、仕事から戻るまで練習しててね。アリア社長、お願いします」

ナルカ「にゅっ」オマカセアレ ピョン


咲(同じ、見習い水先案内人(ウンディーネ)…)

咲「あ…、あの、憧、ちゃん?朝ここに来てたよね?」

憧「…」ジ-

咲「?」

憧「…」ジ-

咲「…」ジ-

客「歩くの疲れた…、ダルい…」

慕「ふふっ、小瀬川さんったら、ご利用いただく度に同じことを言っていますよ?」

客「それでも、また来たいと思える」

慕「はい。ご満足いただけるよう頑張ります。――お手をどうぞ、お客様」

客「…うん」


咲「憧、ちゃん…、慕さんに会いに来たの?」

咲「――……もしかして、朝来てたのも?」

咲「憧ちゃんって、もしかしてストーカー?」

憧「…もー、けたたましいわね~」

咲「ご、ごめんなさ…。あーっ!」

憧「ん?」

咲「アリア社長が流されてるー!!」

憧「ってあんたゴンドラ留めてなかったの?」

咲「お願い憧ちゃん!早く追わないと!」ヨイショ

憧「なんで私の船に乗ってるのよ。…しょーがないわねえ」

スイーッ

憧「うーん、ダメね。この時間帯は潮の流れが複雑だからなぁ。あっちはうまい具合に流れにのっちゃってるから早い早い」ヤレヤレ

咲「そんなっ、あきらめちゃダメだよ憧ちゃん!」

憧「いや自分で漕ぎなさいよ。…あ」


スッ

ザァ


咲「――、」

トン クルッ
トーン

咲「…慕さん、一瞬で追いついて、オールでアリア社長のゴンドラ押し戻しちゃった…」ポ-ッ

憧「…さすが慕さん」ハフゥ…

咲「すごいなぁ…。私もいつかあんな風に軽やかに漕げるようになりたいなぁ」

憧「無理無理」フルフル

咲「即答っ!?」

憧「そりゃそうよ。慕さんは水先案内人(ウンディーネ)の中でもトップクラスだもん」

咲「へぇーっ」

憧「『へぇー』って知らないでARIAカンパニーに下宿してるの?もったいない」

咲「う、うん」

憧「…」

憧「私の中では慕さんがアクアナンバー1の水先案内人(ウンディーネ)なのよ!」

咲「…」

咲「憧ちゃん…、見習い水先案内人(ウンディーネ)同士頑張ろうねっ」

スッ

憧「…何?その手…」

咲「へ?握手だけど…」

憧「…」

咲「え…、い、嫌?」

憧「別に嫌じゃないけど、握手ってのがなー」

咲「えぇ…」

憧(…ん?待てよ?)ピコーン

憧(咲と友達になる(握手)→咲と会う機会が多くなる→咲は慕さんと同じ店→慕さんと会う機会が多くなる!)←計算ができる女の子

憧「友達っ」ガシッ

咲(今、憧ちゃんの脳内で何か計算したみたい…)←読むが好きな女の子

憧「じゃあ練習始めよっか」

咲「うんっ」

咲(こうして記念すべき火星(アクア)での一日目は幕を閉じました)

咲(友達もできたし、慕さんがすごい人だってわかったし)

咲(これからの毎日がわくわくです)

憧「ワキが甘い!足腰が弱い!背筋曲がってる!私もARIAカンパニーがいい!」

咲「は、はいぃ!」

咲(…た、楽しみです!)


――――
――


慕(もう夕方になっちゃった。まだ咲ちゃん練習してるかな?)

慕(逆漕ぎには色々びっくりしたけど、まだまだこれからだよね)

慕(…なにより、漕いでる時のあのキラキラした表情)

慕(まるで、真新しい本を読んでいるときのような――)



憧「牛乳飲む!キャベツ食べる!鶏肉食べる!」

咲「む、胸のことはいいよぉ!」

憧「あきらめない!その気になれば人間数日で変わるの!」ポヨ-ン


慕「…えへへ」

慕「ただいまーーー」

憧「あっ、慕さんだ!」

咲「おかえりなさーい!」

今日の投稿は以上です。
藍華は憧チャーでした。勝気なしっかり者、いいですよね。
次回は土曜日に投稿したいと思います。
こちらはおまけのイラストです。上手くはないですが、想像の足しになれば嬉しいです。
憧描くのやたら難しかった…。
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira116942.jpg

こんばんは。まだまだ暑い日が続きますが、物語はこれから夏に向かっていきます。
それでは今日の投稿を始めたいと思います。よろしくお願いします

百合豚の俺としては慕が結婚するのか不安ではあるが待ってた、始めて頂戴

咲「水の惑星 AQUA」

・咲が灯里、慕(大人)がアリシアさん、成香っぽい猫がアリア社長で、
  憧が藍華で、水先案内人(ウンディーネ)としてARIAの世界をなぞっていきます。

ピーーーッ…
ピョロロロロ…

咲(――前略、今日はとってものんびりしています)ポーッ

慕「…」ペラッ

ナルカ「にゅ、にゃ」←カモメに手を振ってる

咲(事の始まりは今朝でした)

ザザーッ

咲「ふわあああ…」ネムネム

トントン
トン ジャボッ

咲「…じゃぼ?」

ザザーッ

咲「…は」

咲「はひ~~っ!?」


咲「慕さん、たったった大変ですー!」

慕「うん?」ペラッ

咲「一階が水浸しです!洪水です!床上浸水してます!っていうかお店の中でお魚泳いでましたよ!?」アタフタ

慕「うん」パタン

咲「…え、慕さん驚かないんですか?」

慕「うん」ニコニコ

慕「そっか、咲ちゃんは初体験だったね、『アクア・アルタ』」

咲「アクア…アルタ?」

慕「そう。毎年この時期に起こる高潮現象。南風と潮の干満に気圧の変化が重なって起こるの」

慕「アクア・アルタの間は街の機能がほぼマヒするから、みんな家でのんびり過ごすの」

咲「あ、だから昨日たくさん買いだめを」

慕「そう。あ、ゴンドラも危ないから乗っちゃダメだよ。乗り上げちゃったら大変」

咲「はーい」

咲(…というわけで街から水が引くまでお店も開店休業です)ポチポチ

咲(このアクア・アルタが終わると、ネオ・ヴェネツィアの本格的な夏がotozure)ポチポチ

咲「…ってあれ!?ひらがなにならない!?し、慕さーん!」

慕「うん?ああ、英数ボタン押しちゃったんだね。はい」ポチ

咲「あ!戻りました!ありがとうございます」

慕「えへへ、どういたしまして」


慕「じゃあ咲ちゃん、あとよろしくね」

咲「あっ、ゴンドラ協会の会合ですね?」

慕「うん。夕方には戻れると思うの」

咲「はい。いってらっしゃいませ」

咲(慕さん、協会の会合にも呼ばれちゃうんだ。水先案内人(ウンディーネ)の中でもトップクラスって憧ちゃんが言ってたけど…)


じゃぼーん


咲「?」

ナルカ「にゃぁぁぁ…」シクシク

咲「どうしましたアリア社長…。ってうわぁ、買いだめしてたご飯全部海に落としちゃったんですか?」

ナルカ「」グスングスン

咲「別のご飯ありますから」

ナルカ「」フルフル

咲「私と同じご飯では?」

ナルカ「」フルフル

咲「うーん…、どうしようかなぁ。アクア・アルタでどこもお休みって言ってたし」

ナルカ「」...クスン

咲「向こう街のあのお店なら開いてるかも?」

ナルカ「!」ホントデスカ!?

咲「行ってみますか?」

ナルカ「にゃ!」ステキデス

咲「ゴンドラに乗らなければ大丈夫ですよねっ。行きましょうっ」

咲「…さすがにもう道には迷わないはずです。多分」ボソッ

ナルカ「」エッ

立った、フラッグ立った。

咲「長靴はいて、小さいゴンドラに紐をつけて、っと。どうぞ乗ってくださいアリア社長」

ナルカ「にゅ」ピョン

咲「では行きましょうっ」


ジャボッジャボッ


咲(足元に注意しないと。道から水路に踏み外したら大変…)


ジャボジャボ
ザブッザブッ


咲(うわわ、もう長靴に水が入っちゃった)ジャボジャボ

咲(まるで大雨が上がった後みたい。…ちょっと、楽しいかも)


ザブッ
ガボッガボボッ


咲「~♪ってあれ。長靴満杯になっちゃった」

ぬぎぬぎ クルッ
ザバーッ

咲「長靴びしょびしょ。…いっか、裸足で!」

ナルカ「」ハダシデス

パシャッパシャッ

「気をつけて帰るんだよー」

咲「はーい!」

ナルカ「♪」ハーイ

咲「なんとか道にも迷いませんでしたし。少しは火星(アクア)の住民になれたかな」

ナルカ「…」ダイブ トオマワリ シテマシタガ

咲「それにしても、お気に入りのあってよかったですねっ、アリア社長」

ナルカ「にゅ」ステキデス

咲「さぁ雨が降らないうちに…、あ」


ポッ
ポツ ポツ

ザザー…

咲「はあ、はあ、ここなら雨宿りできますね」

ナルカ「にゅ…」ビショビショ デス

咲「すごい雨ですね。遠くが霞んでる…」


ナルカ「!」ピョコンピョコン

咲「ん?どうしたんですかアリア社長。…向かいのお家?」

咲「あー、可愛い黒猫さんがいますね。…へくちっ」クシュン


「あれ…、もしかして咲?」


咲「あ…、憧ちゃん…?」

憧「なにしてんの!いいからこっちまで来なさい!ここウチの店だから!」

咲「う、うん。…雨宿りの向かいのお家が憧ちゃんのお店だなんて、すごい偶然ですね!アリア社長!」

ナルカ「♪」ステキデス

咲「おじゃましまーす…」

憧「街中水に浸かってる上に大雨なのに何してるのよ!はいタオルっ」

咲「ありがとう。…あったかい」フカフカ

憧「ちょっ、なんで裸足なのよ?」

咲「…水遊び?」

憧「私までツッコミどころが洪水起こしてきたわ…。とにかく上がっていきなさい」


咲「わぁ…、すごい大きい。まるでお城みたい」

憧「姫屋(うち)は老舗だから社員も多いしね。はいこっち」

咲「ここ、憧ちゃんの部屋?」

憧「そ。入って」

咲「お、お邪魔します」ガチャ

咲「可愛いお部屋…。あっ、さっきの黒猫さん。地球ネコなんだ」

憧「ああ、姫屋(うち)の社長のヒメコよ」


ヒメコ「…」サワガシカネ


咲「ふえ?社長?」

憧「そう」

咲「うそぉ…、猫さんが社長なわけ…。アリアカンパニーじゃあるまいし」

憧「…あんた何も知らないのね」

咲「え?」

憧「アリア社長もヒメコ社長も青い瞳をしてるでしょ?」

咲「う、うん」

憧「水先案内人(ウンディーネ)は青い瞳の猫を「アクアマリンの瞳」と呼んでるの。アクアマリンは昔から海の女神として航海のお守りとされてたの」

憧「だからネオ・ヴェネツィアで水先案内人(ウンディーネ)を営む者はみんな、青い瞳を持った猫をお店の象徴にして仕事の安全を祈願するの」

咲「…全然知らなかった。てっきり慕さんの茶目っ気だと…」

憧「なにそれ慕さんの茶目っ気とか見たいんだけどっ」

咲「青い瞳の守り神かぁ」


咲「なんだか素敵だね」


憧「…」

憧「恥ずかしいセリフ禁止!」

咲「ええー」

憧「さっきの「お城みた~い」も恥ずかしかった」

咲「そんな言い方しないよぅ!」


ナルカ「」ジーッ

ヒメコ「…?」ナンネ

ナルカ「…///」ス ステキデス

ヒメコ「…」プイッ ツーン

ナルカ「」ガーン

憧「これから夕飯作るけど食べてく?」

咲「あ、うん。ごめんね。私も手伝うから」

憧「咲って料理できるの?」

咲「慕さんほどじゃないけどね。慕さんの手料理は本当に美味しいんだぁ」ウットリ

憧「――予定変更よ咲。今からARIAカンパニーに行きましょう!」クルッ

咲「いや外大雨だよ!?私も料理頑張るから戻ってきて憧ちゃあん!!」ガシッ

ザアアアアアアアア


咲「はい、ご飯ですよアリア社長」

憧「ヒメコ社長もどうぞ」

ナルカ「♪」ウマウマ

ヒメコ「~」モグモグ

ナルカ「にゃぐにゃぐ」ケフ

ナルカ「…」

ナルカ「かぷっ」←最後にとっておいた魚

ヒメコ「…?」

ナルカ「…///」メシアガッテ クダサイ///

ヒメコ「…」

がしっ

憧「どうしたんですかヒメコ社長。いきなりしがみついて」

ナルカ「」ガーン

ヒメコ「にゃー」ブチョー ブチョー

ザアアアアア


咲「雨…、やまないね」

憧「まあねー、この時期は大雨がどばーっとよく降るから」

憧「街中が水浸しの上にこの大雨じゃ、外に出るのは危ないわね。最悪海に流されるわ」

咲「…」ジーッ

憧「?」

咲「あの、その、憧ちゃん。もし雨がやまなかったら」

憧「…」

咲「…///」

憧「なに赤くなってるのよ。…泊まってく?」←社交辞令

咲「本当っ!?」

憧「やまなかったらね!」

咲「じゃあ慕さんに連絡するね」

憧「なぬっ」

咲「もしもし。…はい。…ええ。…わかりました」

咲「憧ちゃんによろしくねって」

憧「はぁ~…、慕さーん…」ウットリ

憧「…あんたが慕さんだったらよかったのに」ゴローン

咲「あ、本気でいってるね…」ヒドッ

憧「しかたない。慕さんが普段どんな感じか教えてくれたら許したげる」ノビー

咲「…教えるよりも教えてほしいな、って」

憧「うん?」

咲「慕さんのこともだけど、憧ちゃんのことも教えてほしいな、って。ほら、せっかくだし…」テレテレ

憧「…」


憧(…この娘って、ほんとに…)


憧「しかたないわねぇ。教えたげるからそこに直りなさい」グデーン

咲「少なくとも起きようよ憧ちゃん…。制服しわになっちゃうよ」ヨイショ

憧「いや、咲もほんとに正座しなくていいから…」

咲(結局、夜になっても雨はやまず、憧ちゃんの部屋に泊めてもらうことになりました)ポチポチ

咲(水没した街を歩いたり、滝のような雨にあったり)ポチポチ

咲(すごい冒険をしたような、楽しい一日でした)ポチポチ

憧「ねえ、いつも誰にメールうってるの?」

咲「…、秘密?」テレテレ

憧「まぁ彼氏ではないでしょうけど」

咲「否定された!?」

憧「冗談よ。…え、本当に彼氏!?」

咲「ち、違うよぉ!」


――――
――



ザアアアアア


咲(…知らない天井で眠るのってドキドキするなぁ)

憧「」スー スー

咲(…おやすみなさい)

咲「…ふっ?」パチッ

むくり

咲(あれ…、雨の音がしない?)

憧「」スーッ スーッ

咲(ちょっと、外を見てみよう。起こさないように…)

ギィ…
サァッ…


咲(…ふわあ…!)

咲(雨、上がってたんだ。風もやんで、水が鏡みたいに夜空を映し出している…)

咲(雲の切れ間からの星明りが、街をうっすら照らしていて、お昼よりの時よりもくっきり見えるみたい…)


咲(…)

咲(明日は、晴れるといいな)

今日の投稿は以上です。 雨上がりの夜に、なぜか景色が鮮明に見えるのって何なんでしょう。綺麗ですよね。
ヒメ社長は姫子でした。まんまです 笑
次回は土曜日に投稿したいと思います。

誰にメールしてるのか気になる

今日ブックオフで【あまんちゅ】立ち読みした。
天野こずえは日常でふと目が眩んだ一刹那に澄んだ幻想へと移る世界観が良いよね。
咲が主役になっててもそんな雰囲気が霞まないから楽しんで読んでる。乙!

コメントありがとうございます!やっぱりコメントもらうと嬉しいですね

>>45
アクアで同性婚が禁止されてるとは書かれていない&アリシアさんが男性と結婚したとは書かれていない。つまり…?
本作で慕さんはどうなるのでしょうね

>>53
確かにフラグでしたね 笑
そのうちサイドストーリーで、本編に登場させられなかったキャラが出る、咲さん迷子編でも考えておきます

>>66
原作通り最終話まで引っ張ってしまいますが、どうぞお楽しみください

>>67
ありがとうございます!雰囲気を出すために「…」等が多くなってしまうのがアレかなと思っていましたが、これからも丁度いい感じを目指して頑張ります
ボキャ貧の私は「なんかめっちゃいいよね!」しか言葉が出ませんでした…。ボキャブラリください(直球)

ボキャブラリーね…初めは好きな歌や話に登場する台詞の一節をパクって改変すれば良いと思うよ。
慣れてきたら単語を入れ替えたり言葉を並べ替えたり、後は異音同義で重複を減らすとか。
自分は良く好きな詩や短歌のフレーズをうろ覚えで反芻したりしてるな。

こんばんは。九月とはいえ、昼間はまだまだ夏ですね。
怪談と言えば夏ですが、秋の方が怪談が多い気がするのは私だけですかね。
それでは今日の投稿を始めたいと思います

>>69
良い言葉にたくさん触れる、ということですね。ありがとうございます!

咲「水の惑星 AQUA」

・咲が灯里、慕(大人)がアリシアさん、成香っぽい猫がアリア社長で、
  憧が藍華、姫子っぽい猫がヒメ社長で、水先案内人(ウンディーネ)としてARIAの世界をなぞっていきます。

咲(――前略 その日はポカポカの洗濯日和で、とっても気持ちのいい朝でした)


ナルカ「にゅ」イッテキマース


咲(アリア社長…、月に一度お出かけするんだよね。どこ行ってるんだろう)


慕「猫の集会かもね」

咲「…猫の集会?」

慕「そう。地球(マンホーム)のハイランド地方に伝わる昔話では、猫は自分たちだけの王国を持っているんだって」

咲「あ、その本読んだことあります」

慕「そっか。咲ちゃん本好きだもんね」

咲「えっと確か、自分の家から猫がいなくなったときは、猫の王様が国中の猫を集めて集会を開いてるんでしたっけ」

慕「そうそう。猫の王様は猫妖精(ケット・シー)といって、胸に白いブチがある、牡牛くらい大きい黒猫なんだって」

咲「猫の王国かぁ…」ポワーン

慕「行ってみたいよねぇ…」ポワーン

咲「あったらいいなぁ」

慕「残念ながら人間は入れないらしいけどね」

咲「どうしてでしょう?」

慕「もしかしたら猫妖精(ケット・シー)が妖術を使ってるのかもね」

慕「さっ、今日も憧ちゃんと練習でしょ?がんばってね」

咲「はいっ」


憧「…で?」

咲「だから、アリア社長を追いかけてみようよぉ」

憧「あれれー、練習はいーのー?」

咲「どうせ練習するなら目的地があった方がいいでしょう?」

憧「んー、そりゃまあ」

咲「それにその、猫の王国を見られるかもしれないしっ」フルフル

憧「はいはい興奮しないの。まったく、夢見る文学少女め」

咲「あ!アリア社長のミニゴンドラ!」

憧「っていうか、咲のオールさばきで追いつけるの?」

咲「…」

憧「…しょうがないわね。憧ちゃん大先輩におまかせあれ!」

咲「…憧ちゃん大先輩…っ!」キラキラ

憧「…恥ずかしいセリフ禁止!」プィ

咲「自分で言ったのに!?」

咲「いたっ!あそこ!」

憧「こんな細い水路に曲がって行くなんて…、絶妙に潮の流れに乗ってるわね」

咲「この先、何があるか憧ちゃん知ってる?」

憧「ううん。とりあえず行ってみましょう」


咲(水路が細い…。水路を挟んでる建物、なんだか不思議…)

憧(…人がいるはずなのに、誰もいない)

咲(あれは…、たくさんのかざぐるま?)

憧(建物伝いに洗濯物…。なのにこの人気の無さは…)


憧「もうずいぶん漕いでるわよね。どこまで続くのかしら、この狭い水路」

咲「…うん」

咲「何だかまるで」


咲「迷宮に迷い込んだみたい」

憧「こわ…。は、恥ずかしいセリフ禁止!」

咲「ごめ…。あ…」

咲「出口だよ、憧ちゃんっ」

憧「はいはい」


咲「ここは…」

憧「まだアクアが火星と呼ばれていた頃の入植地(プラント)の跡地ね。こんな所につながってたなんて」

咲「あっ」

憧「なぁに?」

咲「…今、誰かが見ていたような」

憧「こんな廃虚に人がいるわけないじゃない。脅かさないでよもう!」

憧「さっ、急がないとアリア社長を見失うわよ」

咲「こっちだよね」

憧「うん」

咲「…」

憧「…」

咲「…音、何にもしないね」

憧「…うん」

咲「それにここ…、空気が止まってる」

憧「…」

咲「…!」

憧「どうしたの?」

咲「…うん」

咲「やっぱり誰かに見られてる気がして…」

憧「…脅かすセリフ禁止!」

咲「えへへ…」

咲「あれ?」

咲「アリア社長を見失っちゃった」

憧「ええー。大丈夫よこれだけ殺風景な一本道じゃない」

咲「…うん。迷うはず、ないよね」

憧「…」

咲「ねえ、憧ちゃん。私、なんだか怖くなっちゃったよぉ」

憧「猫の王国を見たいんじゃなかったの?あるわけないけど」

咲「はひっ」アセアセ

咲「ん?」

咲「あれ?ここ…さっき通らなかった?」

憧「そう?気のせいじゃない?」

咲「そ…そうかなぁ」

憧「…」

咲「ねえ、憧ちゃん。やっぱり通ったよぉ」

憧「一本道でそんなことあるわけないでしょ?」

咲「うーん…」

咲「ん?」

咲「…」

憧「…」

咲「憧ちゃん…」

憧「…ふむ」

憧「さすがにヤバイ香りがぷんぷんしてきたわね」

咲「戻ろう!戻ろうよ憧ちゃん」

憧「落ち着きなさい咲。普通に戻っても同じところをぐるぐる回るだけよ」


慕『もしかしたら猫妖精(ケット・シー)が妖術を使ってるのかもね』


咲「…!」ブルッ

咲「どどどどどどどうしよう憧ちゃん」カタカタ

憧「だだだだだだだから落ち着きなさいって」カタカタ


スゥーー…


咲憧「ひいいいいいいい!!!」

憧「…って」

咲「…アリア社長!」

ナルカ「」ヒョコッ

咲「よかったぁ…。私たち迷子になっちゃってたんですよぉ…」グスッ


憧(し、心臓止まるかと思った…)ハアァァ


咲「同じ所をぐるぐる回って…、帰り道がわからなくなっちゃって…」

ナルカ「」スッ

咲「あっち?…え」

憧「あれ…、こんな道さっきまであったっけ?」

咲「あの道を行けば帰れるんですか?」

ナルカ「」コクッ

咲「じゃあアリア社長も一緒に…」

ナルカ「」フルフル

咲「え?でも…」

憧「大丈夫よ。ここに用事があって来たんだから一人で帰れるわよ」

ナルカ「」コクッ

憧「さっ、急いで帰りましょ!」

咲「あっ…」


咲(…いる)


咲(…遠ざかるアリア社長の後ろに、いる)


咲(…たくさんの、猫たちが、廃虚にいる。その向こうに)


咲(…黒い、大きな、…猫?)


咲(…それとも、あれは…、…)

憧「はーーー、戻ってこれたぁ」

憧「一時はどうなることかと思ったわね、咲」

憧「…咲?」


咲「…」


咲(その日はポカポカの洗濯日和で)

咲(ちょっぴり不思議な一日でした)

咲(その後、アリア社長はいつも通り帰ってきて)

咲(そして、いつも通りに日常が戻ってきました)


――――
――

憧「腰が入ってない!」

咲「はいっ。…ん~、いい風だねぇ」

憧「っ!咲っ、咲っ!」

咲「…!あ、あそこは」

憧「…あの、通路ね」

咲「…、れ、練習続けよう?」

憧「…そうね」

今日の投稿は以上です。
憧がいると話がスムーズになる気がします。動かしやすいんですかね。
次回は土曜日に投稿したいと思います。
あとカープファンの方、優勝おめでとうございます!

初めて見つけた乙
最初霞さんやあわあわが出てくるのかと思ったのは俺だけじゃないはず

淡は分かるが何故に霞さん?

>>88
中の人


憧咲いいね
ARIAの雰囲気にも合ってる気がするし
あとちゃちゃのん大歓喜じゃな

こんばんは。夜は涼しくなりましたが、それだけに日中の蒸し暑さがうっとおしいですね
半人前と言えば、なかなかゴールドからプラチナになれず、戦いのシロウトからエースになれない日々です。これがオレの物語か…
では本日の投稿を始めたいと思います。

>>87 >>88 >>89
中の人ネタも少し考えました。霞さんにぞっこんなあわあわ…、ありですね 笑
>>90
ありがとうございます!ちゃちゃのんもどこかで出番があるかもしれません。モブだとしても出してみたい咲キャラはたくさんです。

咲「水の惑星 AQUA」

・咲が灯里、慕(大人)がアリシアさん、成香っぽい猫がアリア社長で、
  憧が藍華、姫子っぽい猫がヒメ社長で、水先案内人(ウンディーネ)としてARIAの世界をなぞっていきます。

憧「じゃーん!」パッ

咲「…?」ジー

憧「違ーう!手袋手袋!」

咲「…ああ!片手袋(シングル)だ!」


咲(――前略、何と憧ちゃんが見習いから半人前に昇格しました)


咲「すごいねっ、憧ちゃんっ!もう半人前かぁ」

憧「ふっふっふ~、一人前の水先案内人(ウンディーネ)になるのも時間の問題ねっ!」

咲(一人前の水先案内人(ウンディーネ)になるには見習いの両手袋(ペア)、半人前の片手袋(シングル)と段階を踏みます)

咲(手袋なし(プリマ)になって初めて一人前の水先案内人(ウンディーネ)というわけなのです)


咲「ねぇねぇ、昇格試験の内容ってどんなだった?」

憧「…」

咲「…」

憧「教えたげなーい」

咲「ええーっ」

憧「んじゃね~」

咲「ええっ、もう帰るの!?」


咲(ほ、ほんとに自慢しに来ただけなの、憧ちゃん…)

慕「そう、憧ちゃんもう半人前になったの。さすがだね」

慕「そういえば、どうして一人前に近づくにつれて手袋を外すかわかる?」

咲「いえ」

慕「余分な力を入れずに自在にゴンドラを操れるようになれば、手にマメや傷ができなくなるからだよ」

咲「…そっかぁ。(慕さんの手、綺麗…)」

咲「私の手、まだまだマメだらけです」

慕「…」


慕「よしっ、ピクニックに行こっか、咲ちゃん」


咲「ピクニック?」

慕「そっ。とっておきの場所を教えてあげる。アリア社長も一緒にね」

ナルカ「にゅ」ステキデス

咲「わわっ、慕さんのお弁当!」

慕「即席だけどね」


咲(即席っていっても絶対美味しいんだろうな…)オナカ ヘリソウ


慕「さぁ、ゴンドラの操縦頑張ってね、咲ちゃん」

咲「はいっ」


咲「慕さんのとっておきの場所ってどこなんですか?」

慕「それはついてからのお楽しみだよっ。あ、そこの水路に入って」


咲(…あまり行かない街外れの方向だ。集中しなくちゃ。…あっ)


咲「おじさーん、こんにちはー」

郵便屋「おう、嬢ちゃんじゃねーか」

咲「こんな街外れまで配達ですか?」

郵便屋「おう、まーな」


郵便屋「がんばれよーーー」


咲「…?はーい?」

咲(…ん?また対面走行の船…)


咲「よっ、ほっ、とっ」

咲「ふー…。この水路、開けている場所にあるのに、やけに狭いですね」


咲(ってまた対面走行の船。水先案内人(ウンディーネ)のゴンドラだ)


水先案内人(ウンディーネ)「がんばってねー」


咲「?」


咲「…今の水先案内人(ウンディーネ)の人すごいなぁ。あんな大きなゴンドラでこの狭い水路を通ってるんだ」

慕「これから行く場所は観光地としてとても有名なの」

慕「だから交通量が多いし、さっきみたいに対面走行も頻繁に起きるから、漕ぎ手の技量が問われるの」

慕「咲ちゃんもいつか一人前の水先案内人(ウンディーネ)になったら、お客様をいっぱい乗せてよく来ることになるかな」ニコッ

咲「…!がんばりますっ」

慕「うんうん」

咲「…慕さん、ピンチです」

慕「うん?」

咲「行き止まりです。目の前に壁が…。これは鉄板です」

慕「大丈夫。別に行き止まりじゃないよ」

咲「え?」


「姉ちゃん、ここ初めてかい?」


咲「へ?はい」

「もうちょっと待ってな、そろそろ…。おっ、着いたみたいだな」ゴォン ゴォン


咲(…!行き止まりが割れて、中から船が…)


「さあ、姉ちゃんもう入っていいぞ」

咲「はっ、はい?」

鉄板www

「おーし、閉めるぞ」

咲「あっ」

咲「…行き止まりの扉が閉まって、閉じ込められてしまいました」

慕「そうだね」


ザアアアアア


咲「!?し、慕さん!上から水が!」ヒシッ

慕「まあまあ落ち着いて。よしよし」ナデナデ

咲「ふあっ!す、すみません、いきなり抱きついてしまって。慕さん、これはいったい…」

慕「ここは、水上エレベーターだよ」

咲「水上…エレベーター?」

慕「そう。川を堰き止めて、この中だけ水位を自由に上下できる、水のエレベーター」

慕「上流に行きたいときは水を溜めてゴンドラごと上昇。下流に行きたいときは水を抜いていく、っていう仕組みなの」

慕「ここまでの水路の道幅が狭いのは、このエレベーターの幅に合わせて造られてるからなの」

慕「とってものんびりで、時間がかかるけどね」

咲「どれくらいですか?」

慕「上りは30分くらいかな」

咲「のんびりエレベーターですね…」


慕「うん。だけど、私は好き」

「よう、姉ちゃん」

咲「あ、おじさん。さっきまで下にいませんでしたか?」

「おお。そこの階段登ってきただけだかんよ」

咲「おじさん…、一日中お仕事でここに?」

「ん?ああ」

「まあ仕事っつーより、ここはおじさんの秘密基地だかんよ」

咲「…」

咲「…素敵な秘密基地ですね」

「…そう言ってくれるのは、うちの孫くらいさ」


「おお。さあ、水が溜まったぞ。行ってこい」

咲「…はいっ」

ナルカ「ぷいにゅ~」

咲「どうしましたアリア社長。…あっ」

咲「ネオ・ヴェネツィアが…、あんなに小さくなってる」


咲(遠くに、来ちゃったんだ。通ってきた道が、どこまでも続いてるよう…)


咲「…慕さん」

慕「ん?」


咲「私も、のんびり大好きです」


慕「…、うんっ」

慕「さっ、目的地までがんばってね、咲ちゃん」

咲「はいっ」

咲(それからも、狭い水路とたくさんの対面走行の船にぶつからないよう操縦を続けました)

咲(気が付いたら、アリア社長がお弁当をすべて平らげてしまい、しばらく空腹のままの操縦となりました)

咲(でも、二回目の水上エレベーターでお弁当を販売していて、慕さんが買ってくれました)

咲(お弁当を食べている間、アリア社長ももの欲しそうにしていましたが、罰…ではなく健康のためにお預けです)

咲(そんなアリア社長が眠たそうにしているのを見ていたら、眠く…)


慕「咲ちゃん、こっちに来てお昼寝しよう?」


咲(…そんな慕さんの言葉に甘えてしまい、うとうとと…)


慕「咲ちゃん咲ちゃん」

咲「…はひ?」パチッ

慕「起きて。終点だよ」

咲「…終点…?」

ふわっ…

咲「…」

咲「わあぁ…!」

咲(すごい…、一面の風になびく芝生に、たくさんの風車!)

咲(夕焼けに照らされて、オレンジに輝いてるみたい…)


咲「綺麗…。素敵です」


慕「咲ちゃん。左手をかして?」

咲「?」スッ

スルッ


慕「合格、おめでとう」


咲「…?合格って…」

慕「この難しい陸橋水路を無事にトラブルなく、よく一人きりで漕ぎきったね」

慕「今日一日かけて通ってきた道は、両手袋(ペア)の昇格試験に使われる道でもあるの」

咲「…」

咲「…じゃあ」

慕「うんっ」ニコッ


慕「今日から咲ちゃんは片手袋(シングル)だよ」

咲「…あっ」

咲「ありがとうございます…!」

慕「うんうん」ニコニコ

慕「この試験は内緒で行うのがネオ・ヴェネツィアの伝統行事なの。知らないのは見習い水先案内人(ウンディーネ)」

咲「あ、だからみんながんばれって」

慕「そう。この丘はね、水先案内人(ウンディーネ)の間では「希望の丘」って呼ばれてるの」

咲「希望の…丘…」

慕「ここからだとネオ・ヴェネツィアが一望できるでしょう」

咲「…はい」


慕「この景色は、がんばった未来の水先案内人(ウンディーネ)の卵たちへのごほうびなのかもね」

今日の投稿は以上です。
途中、他スレにコメントしようとしたら自分のスレに送信していました。失礼しました。
次回は土曜日に投稿したいと思います。

こんばんは、最近寒いなと思っていたら風邪ひきました。うらめしや寒暖の差
誤投稿を励ましてくださってありがとうございます。また、雰囲気を気に入っていただきありがとうございます。
今回からAQUAの第二巻に入ります。
暁くんはどのキャラクターでしょうか
では投稿を始めたいと思います。

咲「水の惑星 AQUA」

・咲が灯里、慕(大人)がアリシアさん、成香っぽい猫がアリア社長で、
・憧が藍華、姫子っぽい猫がヒメ社長で、水先案内人(ウンディーネ)としてARIAの世界をなぞっていきます。
・暁くんはいったいどの娘がなるのでしょう。

咲(――前略、早いもので私が火星(アクア)に来てからもう半年が経ち、ネオ・ヴェネツィアの暮らしもすっかり板についてきました)

咲(火星(アクア)の公転周期は地球の2倍で、1年が24か月あるので、今はなんと14月です)

咲(さあ、火星(アクア)で初めて迎える、地球の2倍長い夏の始まりです)


咲「おはようございます、慕さん」

慕「おはよう、咲ちゃん」


咲(食事当番と掃除・選択当番は、慕さんとかわりばんこでやっています)

咲(アリア社長も…)


ナルカ「」ウンショ ウンショ

ズ… ズ…

咲「…シーツに引きずられてるように見える…」

ナルカ「…」オモイデス


咲(結果はともかく、よく一緒に手伝ってくれます)

咲(朝ご飯の日課は慕さんとの個人レッスンです)

咲(あ、朝ご飯は生ハムフルーツサンドでした。生ハムってメロンだけじゃなかったんですねっ)

咲(個人レッスンでは、お客様が来店するまでの間、つきっきりで指導してもらえます)

咲(そう、慕さんの場合お客様がわざわざ来店してくれるんです)

咲(この街の観光客専門の舟漕ぎである水先案内人(ウンディーネ)は、街でお客様を探すのが普通なのですが)

咲(トップクラスの水先案内人(ウンディーネ)である慕さんには、予約の電話がひっきりなしなのです。今もこうして――)


慕「さあ、出発だよ咲ちゃん」

咲「はいっ!」


咲(そうそう、見習いの両手袋(ペア)から半人前の片手袋(シングル)に昇格して、嬉しいことがたくさん増えました)

咲(慕さんの助手として、憧れだった一人前の手袋なし(プリマ)の同乗できるようになったのもその一つです)

咲(私がアクアに来た日にすれ違った、あの真っ白なゴンドラに、乗れるんです!)

咲(とっても興奮しましたが、心配なことも…)

咲「…すみません慕さん。お客様の応対で、とんちんかんなことを言ってしまいました…」

慕「『猫のカレンダーには、かわいくないかわいい猫がのってなくて…』って言ったらお客様頭に『?』マーク浮かべてたね」

咲「す、すみませんっ」

慕「ううん、結局はお客様も『確かに!』って言ってたし、楽しんでもらえたんじゃないかな?」

咲「…どうすれば、接客が上手になるのでしょうか」

慕「咲ちゃんは咲ちゃんの見たもの、感じたものをお話しすればいいよ。咲ちゃんのお話し、素敵だもん」

咲「そ、それは…」

慕「さっきのは『上手な返事をしよう』って考えすぎちゃったんじゃないかな。考えすぎると、どんどん自分の言葉から遠ざかっちゃうこともあるんだ」

咲「そう…ですね」

慕「大丈夫。咲ちゃんのお話しでイヤに感じたことなんて、一回もないもの」

咲「…そ、そうですか?」

慕「うんうん。あ、私も『猫のカレンダーには、かわいくないかわいい猫がのってない』っていうのは賛成だよ」

咲「でっ、ですよね!」


咲(人より内気な私ですが…、お客様とのお話も、頑張っていきたいですっ)

咲(そして、同乗していて改めて痛感するのが)

咲(慕さんの、すごさです)

咲(軽やかな舵さばき。変幻自在な操船術。その姿はまさに)

咲(水上を舞う、水の妖精(ウンディーネ)そのものです)


慕「…咲ちゃんなあに?そんなに見つめられると照れちゃうよ」テレテレ

咲「いっ、いえ、何でもっ」


咲(見惚れるって、こういうことを言うんだろうなぁ…)

咲(私もいつか、慕さんみたいに、素敵な水先案内人(ウンディーネ)に…)


咲(そして、慕さんの仕事がオフの日)

咲「よろしくお願いします」

慕「うんうん」


咲(オフの日、慕さんは私の水上実習につきあってくれます)

咲(半人前は、一人前の水先案内人(ウンディーネ)が指導員として同乗していれば、実際にお客様を乗せてもいいことになっています)

咲(車でいう仮免段階の路上実習といったところでしょうか)

咲(ただ、半人前の私が乗れるのは黒いゴンドラです)

咲(料金も一人前の白いゴンドラに比べ安くなっています)

咲(でも、半人前のゴンドラに乗りたがるお客様はあまりいません)

咲(一人前のゴンドラの方が安全で確実だからです。…少し、切ないです)


慕「ちょっとお手紙を出してくるから、ここで待っててね」

咲「はい」

咲「…」


咲(私の水先案内人(ウンディーネ)デビューは、まだまだ先のようです)

咲「…んんっ」ノビーッ


クイーッ

咲「…」クイックイッ


「なんや、えらい立派なくせっ毛やな。これもうツノやん」


咲(…)

咲(ええーーーー!?)ツノ!?


「なあ、あんた水先案内人(ウンディーネ)やんな?」


咲「はっ、はい」

「あんたのゴンドラ、なんで黒いん?他のゴンドラみーんな白やん」

咲「そっ、それは…、私がまだ半人前だからで…」


咲(こ、怖そうな人にかっ、からまれましたっ!っていうかなんで私の髪…)クイックイッ

「半人前?」クイー

咲「は、はい」

「半人前ってことは料金も安かったり?」

咲「はっ、はひぃ…」

「よっしゃ!」ガッツポ

咲「!?」ビクッ


「なあ、つの子、浮島への空中ロープウェイ駅まで頼むわっ」


咲(…)

咲(つの子!?)

慕「あれっ?咲ちゃんお客様?」パアァ

咲「えっ」

慕「すごいね咲ちゃん!初めてのお客様だよっ!」ニコニコ


咲(…お客様?)

咲(…そっか、これってもしかして)

咲(お客様を乗せる、私の水先案内人(ウンディーネ)としての初デビュー!?)


「…な、なあなあ、つの子!」ガシッ

咲「はひっ」ビクッ

「あ、あの人誰!?え、えらい美人やけど…」

咲「え、えっと、慕さんという、水先案内人(ウンディーネ)の中でもトップクラスの…」

「慕さん…。あ、あんな美人さんと同乗とか照れるわ…///」モジモジ


咲(お客様…。ってあれ?背中に当たる胸の感触が柔らか…っていうか私よりも大き…)

慕「さあ、出発いたしましょう。お手をどうぞ、お客様」ニコッ

「はっ、はいっ!」スタスタ

咲「…ほっ」

慕「咲ちゃんっ」

咲「は、はい」

慕「…」コクッ

咲「…!」


咲(宮永咲、がんばりますっ!)

ス…

ス…

ス…

「…なあ、つの子」

咲「…はい」ドキドキ

「…犬の散歩してるおっさんに、追い抜かれたよな」

咲「…はい」ドキッ

「…つの子超ノロ伝説!」

咲「」ガ-ン!


ガン!


「…壁に、ぶつかったな」

咲「すっ、すみません!すぐに体勢を…」アタフタ


ガン!


「…」

咲「わわっ、前からも後ろからも他の舟が!すみませんすみませんすみません!」アタフタアタフタ

咲「ようやく抜けれた…。本当にすみません…」

「気にすんな。まだ半人前なんや」

「半人前の半人前による半人前のための黒いゴンドラ。そのための安い運賃なんやろ?」


咲(そんなに「半人前」連呼しなくても…)ナゼリンカーン...


慕「お客様はどちらからいらしたのですか?」

「っ!あ、はい。浮島ッス」

慕「もしかして、ご職業は浮島の「火炎乃番人(サラマンダー)」じゃないですか?」

「はっ、はい!一応!」


咲(…火炎乃番人(サラマンダー)?)


慕「やっぱり!御召の制服を見て、もしやと思っていたんですよ」

「ははっ、ゆーてもまだ半人前ッスけどね」


咲(!…この人も半人前なんだ。…っていうか、慕さんにだと態度違うなぁ…)シュン

「いやー、地上にはめったに降りないんで街で迷って困っとったんスよ」


「まあ今日中に換えれりゃいいんで楽勝ッスけど」


慕「あれ、でも今日は空中ロープウェイは定期点検日ですよね?」


「へ?」


慕「確か夕方6時で営業が終わるんじゃ?」


「夕方…6時?」


時計「5時半過ぎたでー」


咲「…」


咲「へ?」

咲「~~~~~!!!」ザバザバザバザバ

「…つの子、間に合うんか?」アセタラー

咲「…つ、つの子じゃ…」ゼエゼエ

「間に合うんかゆーとんねん!」アセドバー

咲「…っ」


咲「…ごめんなさい。私の腕では間に合いません」

咲「…慕さん、お願いします」

慕「…」


「…待てや!」

「おい、つの子…、オレはあんたの客やぞ」

「たとえ半人前でも、水先案内人(ウンディーネ)なんやろ?」

咲「…」...グッ

慕「…」

「…それに」

咲「?」

「半人前の運賃しか、オレ出されへんぞ?」マジデ

咲「…」

咲「…わかりました」

咲「慕さん、お客様。しっかりつかまっててくださいね」

「なにを…、うおっ!?」グラッ

クルリッ

慕「咲ちゃん、まさか!」

「いたた…。ってつの子、方向が逆やん。Uターンしてどないすんねん?」

慕「すみませんお客様」

「へっ?」ドキッ

慕「これからお客様の視界を遮る漕ぎ方をさせてもらいます」

「?」

咲「――行きます!」


くんっ
スウーーーーーーーッ

「お、おおっ!早っ!」

慕「逆漕ぎの咲ちゃんは、無敵なんです!」

「へえ…」


「やるやん、つの子っ」

後輩ちゃんまだ出てないけど候補が一人しか思い浮かばない……原作では同級生だけど

「――まもなく本日の最終便時刻になります。ご利用のお客様は――」


慕「よかった、間に合いましたねっ」

「どうもッス」

咲「」ゼェッ ハアッ

「よお、ご苦労やったなつの子」カミグイー

咲「つっ、つの子じゃありませんっ!」

「はっはっ」ケラケラ

「まあ、お互い立派な一人前になれるようがんばろーや」

咲「…あ、えっと…」

「ま、オレは時間の問題やけどな!」

咲「…」


「じゃあな、水先案内人(ウンディーネ)さん」


咲「…」

慕「」ぺこり

咲「」ぺっこりん

慕「よかったね、初めてのお客様が優しい方で」


咲(優しい!?)ガーン

咲(あ…、そういえば名前も聞けなかった…)


咲(初めてのお客様ですっかり舞い上がって、いろいろ失敗しちゃったけど…)

咲(私にしては、上々のデビューだったことに、しておきます)


慕「ところで…、ちゃんと代金もらった?」

咲「…あ」

今日の投稿は以上です。
暁くんの名前はAQUA最終話で明らかになっていたのでそれに習いました。いったい誰なのでしょう(すっとぼけ)
忙しい期間が終わったので投稿ペースを少しだけ早くしたいと思います。
次回は火曜日に投稿したいと思います。
この先の登場人物もだし、ナルカ社長やヒメコ社長の絵も描かなきゃなぁ…

>>127
後輩ちゃんも含めて登場人物の年齢操作はしたりしなかったりすると思います。二次創作ということでご容赦ください…

こんばんは、この寒暖の差は確実に殺しにきてますね…
今回はアリア社長ことナルカのお話です。ナルカ社長が心の中でしゃべります。
では今日の投稿を始めたいと思います。

皆さんコメントありがとうございます。どうぞまったり登場人物予想してくださいね。
問題はウッディ君ですね…、一応決まってはいるのですが…

咲「水の惑星 AQUA」

・咲が灯里、慕(大人)がアリシアさん、成香っぽい猫がアリア社長で、
  憧が藍華、姫子っぽい猫がヒメ社長で、水先案内人(ウンディーネ)としてARIAの世界をなぞっていきます

ナルカ(今日は、年に一度の大掃除の日です)

ナルカ(社長という立場である以上、自分から働く事で社員さんの模範にならなければなりません)フンス

ナルカ(社長としての腕の見せ所です!手始めにこの花瓶を…)ヨイショ


ふら
ふらふら
ぐらぐらぐら


ナルカ(あっ)グラッ


咲「あっ」


がしゃーん


咲「大丈夫ですか?」アワワ

慕「あらら。箒と塵取りだね」

咲「アリア社長に荷物の移動は無理ですよ。私たちだけでやれますので」

慕「破片の片づけは私がやっちゃうから、咲ちゃんはお掃除続けて?」

咲「はい。アリア社長は見ているだけでいいですからね?」


ナルカ(そ、そんな訳にはいきません!働きます!)ガシッ

ナルカ(…)グググ...

咲「だから見ているだけで大丈夫ですよ、アリア社長」ヒョイッ


ナルカ(…が、がーん…)

ナルカ(な、ならこの本を棚に…!)ンググ...

慕「大丈夫ですよ、本の整理は私がやりますから」スッ


ナルカ(…が、ががーん…)

ナルカ(…)

ナルカ(……)ぽつん

ナルカ(…ぐすっ)シュン

ナルカ(ネコだから。そんなことは関係ないのです)

ナルカ(私はただ、みんなに、みんなと…)

ナルカ(…こんな私は、社長失格です)トボトボ


カタカタ
ゴソゴソ
トコトコ

パタン

咲「あれ?今ドア開きましたよね」

慕「アリア社長かな?」

咲「…あっ、慕さん。机の上にこんな手紙が」

慕「なになに?『さがさないでください。アリア・ポコテン・ナルカ』」

咲「こ、これ、家出では…!」

慕「うーん、お出かけじゃないかな」

咲「えっ」

慕「きっと夕ご飯までには帰ってくるよ」

咲「ええ…」

ナルカ(家出したはいいものの行く当てがありませんでした…)グスッ グスッ

ナルカ(…)グーッ

ナルカ(…とりあえずお昼にしましょう)

ナルカ(…)モグモグ

ナルカ(…♪)モグモグ


バサバサ

ナルカ(わ、カモメさんです)

カモメ「…」

ナルカ(…)

ひょい
ぱくっ

ひょい
ぱくっ

ナルカ(…)モグモグ

カモメ「」モグモグ

ナルカ(お友達ができました!素敵です)モグモグ

ザザーッ


「ピィーー」

カモメ「…!ピィーー」

ばさばさ


ナルカ(…)

ナルカ(また、ひとりになってしまいました…)グスッ

ナルカ(そうだ!ヒメコ社長に会いに行きましょう!)

ナルカ(ヒメコ社長ならきっと、気持ちをわかってくれるはずです)

ナルカ(ヒ、ヒメコ社長なら、きっと…///)テレテレ

ナルカ(ひ、姫屋さんは、遠いです…)ハア ハア

ナルカ(あ!居ました!ヒメコ社…)


スッ


憧「わぁ、綺麗な夕焼けですね、ヒメコ社長」

ヒメコ「にゃー」ブチョート ミタカ

憧「もうすぐ晩御飯ですよ。行きましょ」

ヒメコ「!」ミズタキ タベタイ!

ナルカ(…)

ナルカ(…行きましょう)トボトボ

とぼとぼ
とぼとぼ

ナルカ(結局、会社に戻ってきてしまいました…)

ナルカ(…やはり、ここしかないんです)

ナルカ(あの時から、ずっと…)

咲「大掃除終わりました」

慕「お疲れさま。夕ご飯すぐにできるからね」

咲「はいっ。そういえばアリア社長まだ帰ってないですね。探してきます」

慕「はーい」


ポタッ

咲「雨?こんなに天気がいいのに?」ミアゲー


ナルカ「ぐすっ、ぐすっ」どーん


咲「はひぃっ!?」ビクッ

ナルカ「…にゃぁ」シクシク

咲「アリア社長、なぜ屋根の上に…?」

慕「あらら、降りられなくなっちゃったのかな」

咲「あ、脚立もってきますね」

慕「うん、おねがい」


カタッ カタッ

慕「はい。もう大丈夫ですよ」


ナルカ(…)


きゅっ

咲「アリア社長、しがみついちゃいましたね」

慕「うん。よっぽど怖かったのかな」


慕「今日はみんな頑張ったから、夕ご飯は特製オムライスだよ」

咲「…!美味しいですっ、卵がふわふわ!」

慕「生クリームを加えるとふわふわになるんだよ」

ナルカ「もにゅ、もにゅ」オイシイデス

慕「…」

慕「美味しいですか?アリア社長」ニコッ

ナルカ「にゅ!」ステキデス

今日の投稿は以上です。
次回の投稿は金曜日にしたいと思います。

ステキデス、乙っ。

こんばんは、そろそろ風鈴を仕舞わなくちゃですね。
では今日の投稿を始めたいと思います。

>>154-155
ありがとうございます!これから寒い季節になるのでステキなあったかい話にできるよう頑張ります

咲「水の惑星 AQUA」

・咲が灯里、慕(大人)がアリシアさん、成香っぽい猫がアリア社長で、
  憧が藍華、姫子っぽい猫がヒメ社長で、水先案内人(ウンディーネ)としてARIAの世界をなぞっていきます。

咲(――前略、地球(マンホーム)よりも太陽から遠いとはいえ、やっぱり火星(アクア)の夏も暑いです)

咲(でも、夏は嫌いじゃありません)

咲(夏の太陽が作り出す真黒な日陰は、私のお気に入りスポットだったりします)

咲(日陰で浴びるそよ風は、クーラーから浴びる風よりも涼しい気がします)

咲(そして今日は、慕さんが素敵な物を見せてくれました)


慕「咲ちゃん、おはよう」

チリーン

咲「わ、何ですかこれ?可愛いです」

慕「何って…風鈴だよ?」チリリーン

咲「風鈴…!初めて見ました!」

慕「…そっか、地球(マンホーム)にはもう風鈴を飾る習慣はないんだね」

咲「はい…。確か風鈴って、涼しい音で暑さを和らげてくれるんですよね」

慕「そうだよ。ちなみにこの風鈴は特別製で、『夜光鈴』といって夜に光るの」

咲「光るんですか?この風鈴が?」

慕「うんっ。火星(アクア)だけの特産品なの。大体1か月で寿命が来ちゃうんだけど」

咲「寿命…」

慕「今日から3日間、サンマルコ広場で夜光鈴市があるから行ってくる?」

咲「えっ、市場があるんですか!」

慕「うんっ、かわいいのは早い者勝ち」

咲「早い者勝ち…。私、とろくさいから苦手です…」ドヨーン

慕「ま、まあまあ、とりあえず行ってよう?好きな風鈴が見つかるはずだよっ」

咲「…、はいっ」


咲(…と、いうわけで今日はお買い物です)

咲「わあっ、すごい!こんなにいっぱい屋台が出てるんだ。」

咲「右も左も夜光鈴…。あっ」


憧「あづ~~~~~~いぃ…」ドヨーン


咲「憧ちゃんだぁ!憧ちゃんも買いに来たの?」


憧「…。あづ~~~~~~い」スタスタスタ


咲「…あ、憧ちゃ~~~ん!」ガシッ

憧「ふきゅっ!ああもう無視したのは悪かったから!暑いんだから離しなさいっ!」←暑いので気が立ってる

咲「あ゙ご゙ぢ゙ゃ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ん゙…!」ウルウル

憧「わかったわかった!一緒に夜光鈴買いに行くわよ!泣ーかーなーいーのっ!」←やけくそ


咲「ねえ、憧ちゃん」←泣き止んだ

憧「んー?」←落ち着いた

咲「夜光鈴って、寿命が来るとどうなっちゃうの?」

憧「んー、ああ。だんだん光が弱くなっていって、最後には中の玉そのものが消えるの」

咲「そうなんだ…。電池式の豆電球みたいだね」

憧「原理までは知らないけど、その儚さがウケてる理由。ごく稀に、綺麗な結晶になって残ることもあるみたいよ」

咲「へぇーっ!すごいねっ」


チリーン


咲「あ…」

憧「ん?」

咲「…私、この夜光鈴にしようかな」

憧「はやっ。もう決めたの?」

咲「うんっ。…一目惚れ?」

憧「いや、私に聞かれても」

咲「夜が楽しみだなぁ。どうやって光るんだろう」


「…夜光鈴の中の玉が、火星(アクア)だけで採れる夜光石でできているから」

咲・憧「えっ?」

売り子「石の中のルシフェリンがルシフェラーゼという酵素や用で酸素と結びついて…」


咲(眼鏡の売り子さん、パソコン見ながら話してる…)

憧(この暑さなのに紫のロングスカートって、熱中症怖くないのこの人…)


売り子「…綺麗な結晶で残るかはリアルラックに左右される。ネトゲもリアルも、最後は運ゲー…」

憧「あーはい、これください」プチッ

売り子「…まいど」


ちりーん

咲「…えへへ、お揃いだね、憧ちゃん」

憧「んー、夜光鈴は夏の火星(アクア)の風物詩だし、1個は買わなきゃね。あー暑い」

慕「あれ?いらっしゃい憧ちゃん」

憧「こんにちは慕さん!夜光鈴市で咲とばったり会っちゃったので来ちゃいました?」


咲(この切り替わりにもだいぶ慣れたなぁ…)


慕「そうなんだ。ちょうどよかった、そろそろかなと思ってスイカ切ってたの。一緒に食べよ?」

咲・憧「はいっ」

咲「んー!冷えたスイカ美味しいっ」シャクシャク

憧「は~、生き返るわね」モグモグ

チリーン

憧「…ふぅー」

咲「綺麗な音色だね」

慕「風鈴の音色は、魔除けの役割もあったんだって」

憧「へー、そうなんですか」

咲「綺麗な音色を嫌う鬼や厄病を、風鈴の音で遠ざけていたんだって。古い本に夏の描写として取り入れられたりもしたんだよ」

憧「よく知ってるわね。さすが文学少女」

慕「なんだか、不思議なお話だよね」

ポワッ

咲「わあっ、本当に夜になったら光るんですね」

ナルカ「にゃ」

咲「…触っても熱くない。店員さんのお話、もっと聞いておけばよかったな」

ナルカ「」フシギデス

咲「そろそろお茶にしますかアリア社長。あ、そうだ」

ナルカ「?」


咲「夜光鈴をランタン代わりにして…と。お茶をどうぞ。アリア社長」

ナルカ「」アリガトウゴザイマス

咲「ゴンドラの上でティーセットを広げられるなんて、海が凪いでいるおかげですね」

咲「…夜の海って、ちょっぴり怖いけど綺麗ですね」

咲「でも、こうして紅茶を飲んで夜光鈴の明かりを見ていると、とっても落ち着きます…」

咲「…アリア社長、明日もこうして、夜の海の上でお茶を飲みませんか?夜光鈴の明かりの下で」

ナルカ「にゅ」ステキデス

――――
――

チリーン

慕「おかえりなさい、咲ちゃん」

咲「ただいまです」


ポッ ポッ


咲「あれ?夜光鈴が…」

慕「点滅してるね。…そろそろ寿命みたい」

咲「…、もう、1か月経ったんですね」

慕「…」

咲「…」

慕「今日は私も会社に泊まろうかな」

咲「え…?」


咲「どうぞ、慕さん」

慕「ありがとう。そっか、毎晩こうしてアリア社長とティータイムしてたんだ」

咲「はい」

慕「じゃあ今晩はきっとびっくりするよ」

咲「えっ、何でですか?」

慕「夜光鈴の中の玉が夜光石だって話は聞いたよね」

咲「はい」

慕「石は光と一緒にどんどん小さくなっていって、最後には器からポトリと落ちちゃうの」

慕「だから、このネオ・ヴェネツィアでは、夜光鈴との最後の別れを惜しんで、水辺に繰り出す風習があるの」

咲「へぇ…。あ、だから夜なのにゴンドラがたくさん…」

慕「夜光鈴は夜光鈴市の3日間でしか売られないの」


慕「だから、今日あたりから夜光鈴を買った街中の人たちが、いっぱい集まってくるよ」

. . .: .  .  . : :  . ゜ '  ; ゜ ; . * . .  , o 。゚ . .゚ . , ' . :. . .: .  .
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こニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ
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咲「…わあぁっ、すごい!海が夜空みたい…!」

慕「…綺麗だよね。あ、あそこ」


咲「あ…、光が海に落ちていく…」

慕「夜行石は火星(アクア)の海底でしか採れない鉱石なの」

慕「だから、最後の輝きを見送りながらこうして海に還してあげるんだ」

咲「…きれい…」


ポッ ポッ


慕「咲ちゃんのもそろそろだね。あ、私のも」

ポウッ
チャポン…


慕「…また、会えるよね」


咲「?」

慕「ううん。…淋しくなっちゃうね」


咲「あっ!し、慕さん!これ…!」

慕「…わあっ!すごいよ咲ちゃん!これ滅多に残らない夜行石の結晶だよ!」

咲「…もう、お別れだと思っていたのに」

慕「うん、私も初めて見た――」

ポロッ


慕「…咲ちゃん?」

咲「あれ…?」ポロポロ

慕「…泣いているの?」

咲「な…、なんででしょう…?」ゴシッ

慕「だめ、手でこすったら腫れちゃうよ」スッ

咲「あ…。ありがとう、ございます…」


――――
――

カッ
ジリジリ
シャワシャワ

憧「ふー、今日も熱いですねー」

慕「自主練お疲れさま。…咲ちゃん、まだ漕いでるんだ」

憧「咲、休憩時間なのに頑張りすぎ。倒れなきゃいいけど」

慕「…」

慕「なんだかんだ言って、ちゃんと咲ちゃんのこと見ててくれてるね」

憧「ふきゅっ!?そ、そんなことないです、いや、そんなことあります!咲のことは任せててください、慕さん!」

慕「ふふ、これからもよろしくね」

咲「アリア社長も憧ちゃんと一緒に休憩されなくていいんですか?」

ナルカ「にゃ」フルフル

咲「『社員に付き合うのが社長の仕事』ですか?ありがとうございます、アリア社長」

ナルカ「にゅ」

咲「それにしても暑いですね…。そうだ、夜光鈴つけましょう」ゴソゴソ


チリーン


咲(あの時、なぜ泣いてしまったのかは今でもわかりません)

咲(ですが――、まあ良しということにしておきます)

今日の投稿は以上です。
試しにAAを使ってみました。すこしずれてしまいましたが雰囲気が伝われば幸いです。
困ったことに書き溜めが尽きてしまいました、書かないと…
次回は水曜日に投稿したいと思います。

夏の終わりだね
今年は9月まで暑かったから丁度よかった
こういう風流な感じもARIAっぽくていい

こんばんは。また夏のように蒸し暑くなりましたね。
台風も近づいているようなのでどうか皆さんお気を付けください
では今日の投稿を始めたいと思います。
ついに暁くんが誰なのか明らかになりますね!いったい誰なんや…(すっとぼけ

>>174
ありがとうございます!

咲「水の惑星 AQUA」

・咲が灯里、慕(大人)がアリシアさん、成香っぽい猫がアリア社長で、 
 憧が藍華、姫子っぽい猫がヒメ社長で、水先案内人(ウンディーネ)としてARIAの世界をなぞっていきます。

咲(――前略、長かった火星(アクア)の夏も終わりに近づきました)

咲(でも、まだまだ残暑が厳しい今日この頃です)


慕「まだまだ陽が高いね。しばらく暑そう」

咲「浮き島はもっと暑いんでしょうね。太陽に近いし、大変そう」

慕「あれ、咲ちゃんって浮き島に行ったことなかったっけ?」

咲「そういえば行ったことなかったです」

慕「…行ってみたい?」

咲「!」ガタッ

慕「ちょうど週末に夏の終わりを締めくくる一大イベントがあるし」

咲「イベント…ですか?」

慕「みんなで遊びに行こっか」

咲「はいっ!」


「――本日は当駅をご利用いただき、誠にありがとうございます」


咲「おはよう、憧ちゃん!」

憧「おはよー」


慕「おはよう、憧ちゃん」

憧「おはようございます、慕さん!今日は誘ってくれてありがとうございます」キラキラ


慕「いえいえ」

憧「慕さんとご一緒できるなんて光栄です!」

慕「えへへ」ニコニコ

咲「さあ、早く行きましょうっ」フンス

憧「はいはい。咲って内気な割にこういうのはノリノリなのよね…」

ナルカ「にゃ」オハヨウ ゴザイマス

ヒメコ「…」プイッ

ナルカ「」ガーン

プシュー
ガコン
ゴウン ゴウン


咲「ロープウェイ出発しましたねっ」ワクワクソワソワ

憧「こらっ、大人しくしなさい」ペチッ

咲「あうっ」

慕「そうだ咲ちゃん」

咲「はい?」

慕「実は浮き島ってただ浮いてるだけじゃないんだ。火星(アクア)の上空にたくさん浮いてる、大きな気候制御装置なの」

咲「気候制御装置?」

慕「うん。火星(アクア)は地球(マンホーム)より太陽から遠いから本当はとても寒いの」

慕「だからああして上空から太陽光や大気をコントロールしてるの」

咲「あ、そういえば地球(マンホーム)にもありました」

憧「ほら、見えてきたわよ」

咲「…!お、大きい…。あれが…」


「――ご乗車お疲れ様でした。当便はまもなく浮き島へ到着いたします」

憧「んー、着いた着いた」ノビーッ

咲「わ、私ちょっと先に行ってますねっ」

たったった

慕「あらあら。気をつけてね」

憧「転ばないでよー。ってヒメコ社長もアリア社長も行っちゃった」


咲「うわあああぁぁぁ…!」


咲(すごい…!目の前が、全部空…!)

咲(下を見ると少し怖いけど…、まるで、空を飛んでいるみたい…!)


憧「咲ったら、見惚れちゃって」

慕「えへへ、ここからの景色は壮観だもんね」

くいっ


咲「!?」クイー


「よっ、久々やな、つの子」


咲「…ああー!あの時の!」ズサッ


憧「え、何あの人。いきなり咲の髪引っ張って…」


慕「紹介するね。火災之番人(サラマンダー)の、江口セーラさん」

慕「今日一日、浮き島の案内役をお願いしたの」


セーラ「お手柔らかにっ」

咲「…そ、その節はどうも」

セーラ「おうっ!」アセタラー

咲「す、すごい汗ですね」

セーラ「仕事場からすっ飛んで来たからな」アセアセ

咲「そ、そうですか」

セーラ「…」アセポター

咲「…」アトズサ

セーラ「…」ニジリ

咲「…」アトズサ


セーラ「」ダッ

咲「きゃあああああ」ダッ


慕「えへへ、仲良しさんだね」ニコニコ

憧「騒がしいいじりキャラとおとなしいいじられキャラにしか見えませんが…?」


セーラ「はははははは自分オレの汗がそんな嫌かうりうり」ギュウウウ

咲「ひやあああああ!!だ、だれかぁぁぁぁ!!」

セーラ「しっかしあんた胸ないなあ。ちゃんと食べとる?」ムニムニ

咲「あ、やぁ、そこっ…さわ…っ!」ビビグン


慕「えへへ、仲良しさんだね」ホワーン

憧「手慣れたセクハラ親父と目覚めかけてる文学少女にしか見えませんが…?」


セーラ「さっ、行きましょう慕さん!もーすぐ列車が出るでー!」ツヤツヤ

咲「ううぅ…」フラフラ

ガタンゴトン


咲「あの…セーラさん。火災之番人(サラマンダー)ってどんなお仕事なんですか?」

セーラ「平たく言えば、でっかい窯の番人やな。上見てみ」

咲「大きい建物から、煙がもうもうと立ち上がっていますね」

セーラ「あれがオレらの仕事場や。あの炉から火星(アクア)の大気に膨大な熱量を放射しとんねん」

咲「へえぇ…。大変なお仕事なんですね」

セーラ「まあな」フンス


憧「咲ー、デッキに出てみる?」

咲「あ、うんっ!」


ガコン
サアッ


憧「うわ、よくあんな細い柱で線路と列車を支えれるわね」

咲「…」

憧「…何してるの?来ないの?」

咲「う、うん。今行くよ」

憧「ほら、つかまりなさい」スッ

咲「あ、ありがと…」キュッ

ガタンゴトン

憧「ね、平気でしょ?手すりつかまって」

咲「うん…」


フワッ


咲「わあっ…!」

憧「ね、いい眺めでしょ?」

咲「うんっ。いつか本で読んだ、空中列車みたい…!」

咲「絶景だねっ!」


ガタンゴトン

セーラ「さて!着いたことだしメシ行こか!うまい店あんねん!」

咲「何屋さんですか?」

セーラ「粉もん!」

咲「…こなモン?」

憧「イントネーションが古の怪獣と一緒よ、それ」


セーラ「あったあった。ようスズ、空いとる?」

店員「いらっしゃーい!あ、セーラさんやないですか。あそこのミニテーブルと普通のテーブルなら空いてますよ」

慕「じゃあ、私とアリア社長とヒメコ社長でミニテーブル使いますね」

咲・憧・セーラ「えっ」

慕「ふふっ、後は若い人たちでごゆっくり~。…このセリフ、一回言ってみたかったんだよねっ」グッ

セーラ「そ、そんなことないですよ!慕さんだって、わ、若、若わか…」プシュー

憧「そ、そうですよ!むしろ慕さんの方が、わ、若、若わか…」プシュー

店員「え、セーラさんまじですか…。あ、お客さんもそれでいいです?すいません立て込んでて」

咲「…えっ」

店員「はい、当店(ウチ)特製導火線お好みです。はよ食べんと、導火線に火ぃついて美味しなくなりますよ。出来立てのうちにどうぞ!」


咲(…)

憧(…)

セーラ(…)

咲(…き、気まずい…!)


セーラ「…」ジー

憧「…」ジー

セーラ「なにさっきからメンチくれとんねん。えーっと」

憧「新子憧よっ。あなたこそ慕さんになれなれしいのよマニッシュ」


ゴゴゴゴゴゴゴ


咲(な、何か話題を振らなくては…!)

咲「セ、セーラさんってすごいお仕事してたんですねっ」

セーラ「ん?まーな。まだ見習いやけど」

セーラ「つの子は確か地球(マンホーム)出身やんな?」

咲「はい、ってつの子じゃないですよぉ…」

セーラ「地球(マンホーム)かて、今じゃ気候制御装置に頼ってるらしいで」

咲「そうですね。確か完全自動機械制御です」

セーラ「火星(アクア)じゃ、あくまで手動制御での運行やから、その分大雑把やねん」

咲「…ひょっとして最近残暑が厳しいのも?」

セーラ「あー、すまんすまん」ハッハッハ

セーラ「まあオレら火災之番人(サラマンダー)は正確な機械やないし、多少はご愛敬ちゅうやっちゃ。ごちそうさん」

憧「はやっ」

咲「確かに…、地球(マンホーム)に住んでいたときはいつも快適な気候だったけど」


咲「何ででしょう。私はこっちの方が好きです」


憧・セーラ「…」

セーラ「こいつ、変わりもんやんな?」

憧「あ、気づいた?」

咲「えっ…?」

店員「毎度おおきにー!」


セーラ「そんじゃ、ぼちぼちメインイベントの『花火』を見に行きましょか」

咲「花火?」

慕「あら、言っちゃった。咲ちゃん花火は知ってるよね」

咲「あ、はい、一応。でも地球(マンホーム)で見たのは全部ホログラムの疑似映像でしたから、本物は初めてです」

セーラ「本モンは迫力が違うからな。ビビるで」

憧「先にトイレ行っときなさいよ」

咲「大丈夫だよぉ!…でも一応行っておこうかな」

セーラ「トイレはこの先や」

咲「はい。…本物の花火かぁ。楽しみですっ」

セーラ「…子どもみたいなやっちゃな」

憧「あ、気づいた?」


慕「…」

慕「…」ニコッ


――――
――

慕「すごい、特等席だね」

セーラ「地元でもめったに知らん穴場ッスから。眺めも最高ッスよ」

咲「…」ポチポチ

慕「またいつものメール?」

咲「はい。本物の花火の感想を送ろうと思って」


ひゅ~~~~~~~…


憧「あ、始まったわよ!」


ダン!!


咲「ひゃあっ!」

パラパラパラ
しゅーーー
ババババババ
ピューヒューー
バチバチバチ
ドンドンドン!バン!
ドーンッ
パチパチパチパチッ!


咲「す、すごい音…。お腹まで響きます」

慕「えへへ、そうだね」

咲「綺麗…。まるで、光のお花畑みたいです」

憧「恥ずかしいセリフ禁止!」

セーラ「うんうん」

慕「えへへ」ニコニコ

咲「何で本物の花火は、地球(マンホーム)ではなくなっちゃったんだろう」


慕「…」

憧「…」

セーラ「…」

咲「…」


ドオン
ドドン


咲「慕さん、私」

咲「こうして花火を見ている時や」

咲「風鈴の音を聞いている時」

咲「風を感じる時」

咲「ゴンドラを漕いでいる時」

咲「時々、胸がきゅっとなるんです」

咲「とても楽しいはずなのに、どこか切ないような…」

咲「…何故なのでしょう?」

慕「…それはきっと」

慕「懐かしいんだよ」


咲「…懐かしい?」

咲「みんな初めて体験することなのに、ですか?」

慕「そう」

咲「…」

咲(なぜでしょう)

咲(その時、慕さんの言葉が、コトリとはまった気がしました)


咲(――ひょっとしたら、アクアという惑星は、宝箱)

咲(いえ、私にとって一冊の本なのでしょう)

咲(素敵な思い出がいっぱいいっぱい詰まった、遠い昔の物語)

咲(だからこそこんなにも懐かしく、だからこそこんなにも愛おしい)

咲(そして、私の物語はまだまだこれからです)

今日の投稿は以上です。
暁くんはセーラでした。さすがにバレバレでしたね。セーラのイラストもいつか書きたいです。
次回は少々時間が空いて、16日の日曜日に投稿したいと思います。
AQUA編が終わり、いよいよARIA編に入ります。これからもどうぞよろしくお願いします。

こんばんは、とってもお久しぶりです。
ここ最近忙しかったのがようやく落ち着いきました。
もうおしまいにしてしまおうかとも思ったのですが、やっぱり書きたくなったので、またのんびり再開したいと思います。
よろしくお願いします。保守してくださった方々、ありがとうございます。

咲「水の惑星 AQUA」

・咲が灯里、慕(大人)がアリシアさん、成香っぽい猫がアリア社長で、 
  憧が藍華、姫子っぽい猫がヒメ社長で、水先案内人(ウンディーネ)としてARIAの世界をなぞっていきます。

ニュースキャスター「地球(マンホーム)のみなさま、おはようございます」

ニュースキャスター「今日は水の惑星『AQUA』からお送りします」

ニュースキャスター「かつて火星と呼ばれたこの惑星が惑星地球化改造されてから、はや150年」

ニュースキャスター「地表の9割以上が海に覆われた火星(アクア)は、今日では水の星として親しまれております」

ニュースキャスター「今日ご紹介する街、ネオ・ヴェネツィアは21世紀前半まで地球(マンホーム)のイタリアに存在していた水の街、ヴェネツィアをベースに造られた港街です」

ニュースキャスター「一年中観光客で賑わうこの街には街のイメージを代表するアイドル業が存在するんですね」

ニュースキャスター「それがこの街の伝統的な観光客専門の舟(ゴンドラ)の漕ぎ手」


ニュースキャスター「水先案内人(ウンディーネ)です」

咲(――前略、お元気ですか?)ポチポチ

咲(私が火星(アクア)にやって来てから、早いものでもう11か月が経ちました)ポチポチ

咲(火星(アクア)に来てから初めて迎える、秋です)ポチポチ


咲(秋、最初のイベントと言えば衣替え)ポチポチ

咲(「ARIAカンパニー」の制服も、今日から冬服です)ポチポチ

咲(夏服もお気に入りでしたが、冬服もかなり気に入ってしまいました)ポチポチ


咲(…)カガミ ジーッ

咲(…///)テレテレ

慕「咲ちゃーん、着替えた?」ガチャッ

咲「ふわっ!?し、慕さん…」

慕「わあっ、冬服も似合うねっ、可愛いよ咲ちゃん」

咲「…あ、ありがとうございます…」カオマッカー


咲(慕さんは相変わらずとっても優しいです)ポチポチ

咲(時間を見つけては半人前の私の水上実習に付き合ってくれます)ポチポチ


咲(それではまたメールしますね)ポチポチ

咲(地球歴2301年10月1日 宮永咲)ポチポチ

慕「ちょっと休憩しよっか」

咲「はい。あ、ちょっと郵便出してきます」

慕「うん、じゃあここに舟付けてるね」

咲「はい」

ぴょこ

咲「あ、アリア社長も行きます?」

ナルカ「にゅ」ハイ


ストン

咲「さあ、戻りましょう」

咲「すっかり秋ですね。この間紅葉が始まったと思ったらもう落葉してます」

ナルカ「にゃ」

咲「あ、そこのお店でこのタイツ買ったんですよ。…最初、すっごいデニールが薄いものを勧められてしまいましたけど」

ナルカ「にゅ」セクシーデス

咲「…」カガミ ジー

咲「…」テレテレ

「…」ジー

咲「はひっ!ななな、なんでしょう!?」

「この辺に交番はない?」

咲「あ、はい、ちょっと遠いですけど」

「そっかー、近くにはないのか」ハー

咲「あの…、どうしたんですか?」

「友達が勝手に迷子になったの。まったく、あれほど私から離れないでっていってたのに、もー」

咲「…」

咲「よ、よかったら、一緒に探しましょうか?」

「えーいいよ、私急いでるし」

咲「えっと、観光でいらしてるんですよね?」

「そうだけど」

咲「このネオ・ヴェネツィアは入り組んでますから、ヘタに歩き回ると永遠に迷子になっちゃいますよ」

「え」

咲「お友達が」

「えっ」


咲「私、水先案内人(ウンディーネ)をさせていただいています。この街には、少し詳しいんです」


「…」

「そう、じゃあお願いするね。もー、梢ちゃんたら世話がやけるんだから…」

咲「はいっ。では舟へどうぞ。あ、あの」

「?」

咲「ようこそ、水の都ネオ・ヴェネツィアへ」

「…あ、ありがと」プイッ

咲「えー、火星(アクア)の自転周期は地球(マンホーム)とほぼ同じで、一日は24時間なのですが」

「んー」カタカタカタ

咲「公転周期は地球(マンホーム)の2倍あり一年が24か月ですので、今は19月です」

「あー、ガイドしなくていいよ。それより梢ちゃん探して。ってもー落ち葉邪魔!」パッパッ

咲「でもお客様、せっかく観光にいらしたのですから、のんびり楽しまれた方が…。紅葉がきれいですよ?」

「いーよ。時間は無駄なく使わなくちゃ」カタカタカタ

ナルカ「…」ジーッ

「…ところでこの猫は?」

咲「わが社のアリア社長です」

「社長っ!?」

咲「はい、この街で水先案内人(ウンディーネ)を営む者はみんな、青い瞳を持つ猫をお店の象徴にして、仕事の安全を祈願しております」

「いや冗談でしょう…そんな不合理な…」

咲「いえ、本当ですよ」

「で、そちらの方は?」

慕「」ペコッ

咲「指導員の白築慕さんです。私はまだ半人前なので、一人前である慕さんに同乗していただいてるんです」

「ふーん。…え、半人前なの!?」

咲「は、はい」

「大丈夫かなー、もー…」

咲「…も、もちろん大丈夫でしゅっ!」

「…世界の違いを感じる…」アタマカカエ

咲「うぅ…」シタ カンダ

「あーもー時間がどんどん浪費されちゃうよ」ブチブチ

咲「…そういえば、お客様はどちらからお越しですか?」

「もちろん地球(マンホーム)だよ」

咲「やっぱり!私も地球(マンホーム)出身なんですよ!」

「へ?そうなの?」

咲「はい!」

「火星(アクア)は地球(マンホーム)より一世紀くらい遅れてるんでしょ?不便じゃない?」

咲「はい、とっても不便ですね。掃除も洗濯も全部手作業ですし」

「それは面倒だね。なんでこんな不便なところに来たがるんだろ」

咲「火星(アクア)には、お友達が?」

「そう、梢ちゃんが『ちょっと火星(アクア)に旅行に行きませんか』なんて言い出したから来たの」


咲(『ちょっと』で星間旅行ができるなんて、お金持ちなんだぁ…)

「それにしても、道路も水路も複雑すぎない?地球(マンホーム)みたいに合理的に整備すればいいのに」

咲「…地球(マンホーム)の街では、迷子になりようがないですもんね」

「そうだよ。地球(マンホーム)だったら、迷子になるようなことなんて1回もなかったのに」

咲「…」

「…」ハッ

「私じゃなくて友達が、だからね!」

咲「…、観光の方だけでなく、私も未だに迷子になるときがありますよ」

「ええ…。大丈夫かなー、もー…」

咲「ここは、そういう街なんです。このネオ・ヴェネツィアは」

「…?どういう意味なの?」


ぐるるるるるる…


咲「…?」

ナルカ「?」フルフル

慕「」フルフル

「…///」

咲「…、あ、ちょっとお腹すいちゃったなぁ。すいません、少し寄り道していいですか?」

「えっ、あ、しょ、しょうがないなあ、少しだけだよっ」プイッ

咲「ただいま戻りましたぁ」

「…」

咲「はいっ、こちらお客様の分です」

「…ありがと。はいお金」

咲「いえ、ごちそうさせてください」

「えー、いいのに。まあいいいけど」


咲(さらっと最高額紙幣が出てきたことは気にしないでおきましょう…)


「っていうかこれ何?」

咲「じゃがバターです」

「じゃがばたー?」

咲「熱いうちがお勧めですよ。あむっ」モグモグ

ナルカ「にゃー…」オイシソウデス

咲「アリア社長もどうぞ。慕さんもいかがですか」

慕「ありがとう。失礼いたします、お客様」

「あ、はい…」

「…」

「…はむっ」

「…あっつい」モキュモキュ


もぐもぐ
もきゅもきゅ


咲「お客様、緑茶はいかがですか?」

「…うん」

「…」ズズーッ

咲「はふっはふっ」モグモグ

「ねえ、なんでこんな不便な街に住んでるの?」

咲「…」

咲「もう、地球(マンホーム)にはこんなに美味しいじゃがバターは、売っていませんから」

「…」

咲「えっと、後はですね。ここ『不便』だから全部自分の手でできるじゃないですか」

咲「それがなんだか、嬉しいんです」


さあっ
さやさや

「…」

咲「わあぁっ、落ち葉が花吹雪みたいです!」

咲「秋ですね」

「…」

「うん、そうだね」

咲「…はいっ」

「…」ズズーッ


「…あ、もしかして椿野さん?」

「ぶーっ!」ブハッ

咲「ふえっ!?大丈夫ですかお客様!?」

「げほげほ…。こ、梢ちゃん?」

梢「不注意ではぐれてしまうとは…。ご迷惑をおかけしてしまったことを謝罪します」

咲「あ、いえ、そんな…」

「自分から火星(アクア)旅行持ちかけといて迷子になっちゃだめだよ、もー」

梢「あの、お店の外で待っている約束をして、先に外に出たのは椿野さんだったのですが」

「…、そうだっけ」

梢「はい」

「…」

咲「…」

「と、とにかく帰るよ!もー!」プンスコ


梢「それでは失礼いたします」

咲「はいっ、良い旅を」

「…ねえ、まだ名前聞いてなかったよね。よかったら教えて?」

咲「宮永咲と申します」

「…そっか」

「いろいろぐじぐじ言ってごめんね。宮永さんには勝てなかったよ」

咲「…え?」

「いつかまた、じゃがばたーを食べに来たいな」

「その時はまた宮永さんに案内をお願いするね」


「素敵な水先案内人(ウンディーネ)さん」


咲「…」

咲「」ペッコリン

咲(私たち水先案内人(ウンディーネ)には様々なお客様との出会いがあります)ポチポチ

咲(もちろん、そのほとんどはすぐに別れてしまうものですが)ポチポチ

咲(それでもやっぱり、めぐり遭えたことが嬉しいんです)ポチポチ


慕「咲ちゃん、紅茶入ったよ。じゃがバターのお礼」

咲「わっ、ありがとうございます」


咲(そしてまた、一人前の水先案内人(ウンディーネ)を目指して、この火星(アクア)に来て本当によかった)ポチポチ

咲(そう思える今の自分が、とっても嬉しいんです)ポチポチ


慕「明日からも頑張ろうね、咲ちゃん」

咲「はいっ!」

今日の投稿は以上です。
ARIA編が始まりました。ARIAの雰囲気を出せるように、咲のキャラクターが生き生きできるように頑張ります。

次回は年が明けてからになります。
よいお年を!


酉付けてくれるとうれしい

こんばんは。ヒートテックが命綱な季節ですね…。
では、今日の投稿を始めたいと思います。

>>221
酉つけました!これからもよろしくお願いします。

咲(――前略、本日晴天なれども波高し)


咲「…よしっ、オール磨き終わりっ」


咲(秋晴れの心地よいこの日、我が『アリアカンパニー』は舟(ゴンドラ)の定期整備をすることになりました)


慕「咲ちゃん、オールは陰干ししてね」

咲「はーい」


咲(せっかくのお天気なので、仕事道具も一式ピカピカにしてしまいます)

咲(…向こうのお家もたくさんお洋服干してる。みんな考えること同じなんだなぁ)


ナルカ「にゅ」ピコーン

咲「それにしても憧ちゃん遅いなぁ」


ナルカ「」テクテク

ナルカ「にゃー」コンニチハ


「あっ、静かにしてくださいアリア社長っ」シーッ


咲「?あ、憧ちゃんだ。おはよう。ヒメコ社長もおはようございます」

ヒメコ「ふあー…」ノビーッ

咲(憧ちゃんは私が火星(アリア)に来て初めてできた、一番のお友達です)

咲(私と同じく水先案内人(ウンディーネ)を目指していて、ネオ・ヴェネツィアで一番大きな老舗の『姫屋』に勤めています)

咲(ちなみに我が社のアリア社長はヒメコ社長にラブラブです)


咲「なかなか来ないから心配し…もがっ」ギュッ

憧「しーっ、慕さんに見つかるでしょ!」ヒソヒソ

咲「へ?見つかったら困るの?」


憧「…どう?」スクッ

咲「…へ?」

憧「似合うかって聞いてるの」

咲「…いつも通りとってもかわいいよ?」

憧「うっ、そ、そうじゃなくて!慕さんに冬服姿を初披露する前に万全を期したい乙女心がわからないの?」

咲「あ、そっか」

咲「うん、とっても似合ってるよ」


咲(慕さんは火星(アクア)の水先案内人(ウンディーネ)の中でもトップクラスの実力の持ち主でファンが多く、憧ちゃんもそのひとりです)

咲(…もちろん、私も…)テレテレ

慕「あら、いらっしゃい憧ちゃん」

憧「おはようございます」

慕「冬服、よく似合ってるね」

憧「わあっ、ありがとうございますっ。…やたっ」グッ


咲(慕さんにメロメロな憧ちゃんも、とってもかわいらしいと思います)


ゴウンゴウン
サアアア

「わははー、海猫運送でーす」

慕「お疲れ様でーす」

「そんじゃ始めるぞー」


咲(本日の定期整備のメインイベント、舟の陸揚げです)

咲(舟を陸上に移動して、徹底的にお掃除します)

慕「ロープ外れないように気を付けてね」

咲・憧「はーい」


慕「OKでーす」

「はいよー」


ゴウンゴウン
ザアアア

ゴウンゴウン


咲(普段、私たち水先案内人(ウンディーネ)は水に浮かぶ舟しか見ていないので)

咲(空に浮かぶ姿を見上げるのは、とっても新鮮です)


憧「オーライ、オーライ。って咲、そこにいたらつぶされるわよ」

咲「わひっ」


ゴウンゴウン
ゴウン

ガコーン

おおーっ
ぱちぱちぱちぱち


咲「ぴったり台の上に着地しましたね。すごいです!」

「わはは、褒めても何も出ないぞー」

慕「咲ちゃーん、憧ちゃーん。私、海運局で書類の更新手続きしてくるから」

慕「ゴンドラ、ピカピカにしてあげてね」

咲「はーい」

憧「いってらっしゃーい」


咲「おおー、何かわからないけど、いっぱい付いてますね」

ナルカ「」クンカクンカ

ナルカ「うっ…」フラッ

咲「ア、アリア社長大丈夫ですかっ」

憧「咲ー、ほいっ」ポイッ

咲「ぅわわ。これは?」キャッチ

憧「ヘラよ。舟の底に付いたアサ貝を取るの」

咲「あー、浮島のお好み焼き屋さんで使ったね」

憧「食べちゃダメよ」

咲「食べないよぉ!」

憧「それでは、気合い入れいってみよー」

咲「お、おー!」

ぐっ

咲「おっ」

ぐぐっ

咲「おおっ」

べろん

咲「取れたっ。なんかこれ面白いかも」


シビーーーーーーッ

憧「あはははははーーー。気分爽快ね」

シビーーーーーーッ

咲「憧ちゃんホースの水しぶき冷たいよぉ」

憧「…」

じょろろろろろ

憧「あはははははー--」

シビーーーーーーッ

咲「あ、憧ちゃんっ」


咲「ホース借りまーす」

憧「あいよー」


シュワッ


咲「…あっ。憧ちゃん、憧ちゃんっ」

憧「んー?」ワッシャワッシャ

憧「あによ」ピョコ

咲「見て見て!ホースのシャワーから虹が出てるよ!」

憧「…」

咲「きれいだねっ」

憧「って遊んでる場合かーい」

ぱこっ

咲「あうっ」

咲「…」

咲「あっ、憧ちゃん、憧ちゃんっ」

憧「…、あんなのよっ」ピョコ

咲「ほら、見て見て」スッ

憧「なによ座り込んで。…この泡がどうしたのよ」

咲「違う違う、水たまりの中」

憧「…だからこの石?油がどーしたのよ」


咲「水たまりにも虹ができたよっ。さっきの虹が水たまりに落ちちゃったみたいだね」

憧「…」

憧「…恥ずかしいセリフ禁止!」

咲「ええー」

憧「これが防水コート用オイル」コト

憧「こっちが水滑り用オイル」コト

憧「そしてこれが、アリシアさんのお手製スペシャル仕上げワックス」ジーン


ぬりぬりぬりぬり

ぬりぬりぬりぬり


憧「よーし、終わりっ!」

憧「って、おーい、そっちまだ終わらないの?」

咲「あ、うん。なんだか」


咲「早く終わっちゃうのがもったいなくて」


憧「…」

憧「私も二度塗りに入りますかー」

憧「右舷、よーし」

咲「よーし」

憧「左舷、よーし」

咲「よーし」

咲「ワックス終了ー!」

憧「わー」パチパチ


憧「…ピカピカですな」

咲「うんっ」

憧「いい天気ですな」

咲「うん」

憧「お昼寝日和ですな」ゴロン

咲「うん。…えっ」

憧「朝からよく働いたし、ちょっとくらい休んでもいいでしょ。ふあぁ…」ノビーッ

咲「う、うーん…。大丈夫、かなぁ」

咲「…」

咲「……」ウトウト



――――
――

ぷいにゅ~~~っ!


咲「…ふわぁ…。結局寝ちゃった…」

憧「…んー、よく寝た。ってもう夕方じゃない」

咲「あれ、アリア社長?」

憧「咲っ、あれ」


ザアアアアアア

ザザーーーン


咲「慕さん、戻ってたんだ。アリア社長も…」


慕「…」

ザザーーーン

憧「…綺麗」

咲「…いつ見てもすごいオールさばきだなぁ」

憧「当たり前でしょ。慕さんは、私の中では火星(アクア)ナンバー1の水先案内人(ウンディーネ)なんだから」

咲「…」

憧「…」

咲「…、私も」

憧「まねっこ禁止!」

咲「ええー」


咲「…いつか、慕さんみたいな水先案内人(ウンディーネ)になれるかなぁ」

憧「…何言ってるの。お馬鹿ねぇ」

咲「はひっ」

憧「当たり前でしょ」


憧「私たち、舟(ゴンドラ)大好きだもんね」


咲「…」

咲「うんっ」

慕「…」

ちょいちょい


憧「…」

咲「…」

憧「行くわよ、咲っ!」

咲「わっわっ、待って待って」モタモタ



咲『それから、私たちは三人で、日が暮れるまでずっと舟(ゴンドラ)を漕ぎました』

咲『夕焼けに照らされてキラキラ光る水面はとても眩しくて』

咲『ピカピカになった舟(ゴンドラ)の乗り心地は最高でした』

今日の投稿は以上です。慕さん(アリシアさん)がゴンドラを漕いでいる場面の描写ができればよかったのですが、冗長になりそうだったのでカットしました。アリシアさん尊い
なるべくはやく次の投稿をしたいと思います。不定期になってしまい申し訳ありません。

こんにちは。もうじき花粉の季節ですね。
寒いのも大変ですが、花粉症にとってはため息ものです。

では、今日の投稿を始めたいと思います。

咲(――前略、今日は憧ちゃんとおでかけです)

咲(何と穴場のケーキ屋さんを教えてくれるそうです)

咲(秋と言えば、私としては読書の秋ではありますが)

咲(食欲の秋も、とっても魅力的です)

咲(…お肉がお胸につけば良いですが…、それはさておき)


咲(憧ちゃんとは、この街の観光名所のひとつでもある、有名な橋の前で待ち合わせです)

咲(その橋がある場所は、一年中観光客で賑やかなネオ・ヴェネツィアの中心街です)

咲(何度も通る場所ですが、やっぱり来るたびにドキドキしちゃいます)

咲「よしっ、5分前に到着です」

咲「憧ちゃんが来るのが待ち遠しいですね、アリア社長っ」

ナルカ「にゃー」

咲「さて、ゴンドラを停めてっと」


くいっ


咲「ととっ…!?」グイーン


「ようっ!」


咲「ああっ、セーラさん!」

セーラ「久しぶりやな、つの子っ」


咲(セーラさんは、半人前の私が初めて舟(ゴンドラ)に乗せたお客様です)

咲「私、つの子じゃないですよぉ…」

セーラ「あーん?せやったらこの立派なもみあげはなんやっちゅーねんっ」グッ グッ

咲「は、はひぃ…」

セーラ「で、ここで何しとんねん?」

咲「そ、その橋の上でお友達と待ち合わせなんですぅ…」

セーラ「むっ、待ち合わせ。俺と一緒やん」

咲「えっ、セーラさんもここで?」

セーラ「せや!約束は10時やっちゅーのに、一向にけえへんねん」


咲(もう2時間も立ってる…。だから機嫌悪いのかぁ…)

セーラ「…ちゅーことで、つの子サクッとこの辺を案内してくれや」ポン

咲「へっ?」ビクッ

咲「なっ、なんでそうなるんですか?」

セーラ「そんなん、待ちくたびれた俺の気分転換のために決まってるやん」

咲「でも、セーラさん地元民じゃ…」

セーラ「ちゃうわボケ。俺は生まれも育ちも浮島や」

セーラ「下の街のことなんか詳しく知るかっちゅーねん」


咲(セーラさんは、浮島でこの火星(アクア)の気候を制御する)

咲(火炎乃番人(サラマンダー)という立派なお仕事をしています)

咲(ちょっぴり怖いけど、実はいい人です)

咲(…多分)

咲「でも、私も待ち合わせが…」

セーラ「あの橋が見える範囲ならええやろ」

咲「でも、私まだ半人前だから指導員同乗じゃないとお客様は乗せ…」

セーラ「よいしょっと」ストン

咲「って、セーラさん?」

セーラ「客やなきゃええんやろ?」

咲「へっ」

セーラ「俺たち友達やもんなっ」ニコッ キラキラ


咲(…た、タダ乗りする気ですか…)

咲(う、うーん…。どうしよう…。いいかなぁ…)


咲「本当にちょっとだけですよぅ」

セーラ「おうっ」

咲「え、えー、では、右手を御覧ください」

咲「あちらがマルコポーロ国際宇宙港です」

セーラ「でっけー建物やなぁ」

咲「この街の空の玄関口ですからね」

咲「元々は今から150年前の火星移住プロジェクトの開始当時に建てられたそうです」

セーラ「ふーん。…なかなか案内うまいやん」

咲「あ、えと、一応修行してますから」

セーラ「あの慕さんの下でやろ?うっとこの先輩と交換してーな、つの子」

咲「え、えぇー…」

咲「あ、続いてサン・マルコ広場です」

咲「向かって右からサン・マルコ寺院に時計塔、大鐘楼と並んでいます」

セーラ「ん、おいつの子、あれなん?」

咲「え?」

セーラ「あの円柱の上にいるカッコいいやつ」

咲「あぁ、あの獅子は旧約聖書に出てくる正義の化身の像です」

咲「この街にも多数存在していて、その地の平和を守っているんです」

セーラ「ほ~。まるで俺みたいやな」

咲「はひっ?」

セーラ「火炎乃番人(サラマンダー)が光や熱量を操作してるのは知ってるやろ?」

咲「はい」

セーラ「人々が地球(マンホーム)と同じ環境で住めるようにするのが俺らの仕事」

セーラ「この地の平和は俺が護ったってんねん。感謝しとき」

咲「あ、えっと、ありがとうございます…?」


リーンゴーン
リーンゴーン


セーラ「おっ、もう1時か?」

咲「そろそろ橋に戻りましょうか。きっともう来てますよ」

セーラ「せやなっ」

咲「…」

セーラ「…」

咲「まだ来てないですね」


咲(憧ちゃん遅いなぁ。大丈夫かなぁ)ポワーン

セーラ(3時間待ちやぞ、3時間…!)ゴゴゴゴゴ


咲「待ちぼうけしながらぼーっとしていて、ふと我に返ると」

セーラ「あん?」

咲「何考えてたか忘れることってないですか?」

咲「そんなぼーっとした時間って良いですよねぇ」

セーラ「よかねーわ」イライラ

咲「…え、えーっと…」キョロキョロ


すとん


咲「あ、あの、セーラさんもここに座りませんか?」

セーラ「…」

咲「か、壁を背にして座ると、落ち着くそうですよ?」

セーラ「…」

セーラ「…はあぁ…」


すとん


咲「…えへへ」

セーラ「しかしマイペースな奴やなつの子は。つの子かて散々待ちぼうけしとるやんか」

セーラ「もー3時やぞ。少しはイラついたりするやろ」

咲「あ、本当ですね」

咲「お腹すいたなぁと思えば、もうこんな時間でした」ポワーン


セーラ(…あかん、話通じひん…)


咲「こういう時は周りの人を見てみませんか?」

セーラ「?」

咲「たとえばあの小さな子ども」


子ども「」ゼェ ゼェ


咲「とても変わったお洋服ですね」

セーラ「あー、グルジアだかどっかの民族衣装やろ」

咲「すごい疲れた様子ですね。足取りもふらふらです」

セーラ「しょってる荷物のせいやろ。夜逃げでもしてきたんちゃう?」

咲「うーん、なかなかに謎なお子さんですね」ムムム

セーラ「…つの子」

咲「はい」

セーラ「どーでもいい。本っ当にどーでもいい」

咲「はひぃ…」

セーラ「…はあぁぁぁぁ」

咲「…ふふっ」

セーラ「ん、何かおかしいかつの子」

咲「あ、えっと、セーラさんがため息橋の前でため息をるいていたので」

セーラ「ため息橋?えらい妙な名前やな」

咲「はい。あの正面の橋です」

咲「昔から、あのため息橋ではたくさんの人がため息をついてきたんですよ」

セーラ「ただの橋にしか見えへんけど、何で?」

咲「この街は地球(マンホーム)のヴェネツィアをベースにした建物や逸話が再現されているんです」

咲「昔のヴェネツィアでは右の建物は牢獄で、左の宮殿は裁判所だったんです」

咲「だから囚人さんたちは判決後、必ずあの橋を渡って牢獄に入ったそうです」

咲「そして、あの小さな窓から美しいヴェネツィアの街並みを見つめて」

咲「思わず嘆きのため息を洩らしたそうです」

セーラ「なるほど、それでため息橋か」

咲「はい」

咲「…私たちは今、その美しい景色の中でこうしてのんびり過ごせています」

咲「ため息ものですよね」

バサバサバサバサッ


咲「うわぁ、見てください!すごい数の鳥が…!」

セーラ「…」

セーラ「ま、いっか」


ふわふわ
ぱしっ


セーラ「ほら、やるわ」

咲「これは…、鳥の羽?」

セーラ「今日の礼や」

セーラ「まあまあ楽しかったで、つの子。またそのうち案内してや」ニッ

咲「あっ…。はいっ」ニコッ


「ぷぷぷ、水先案内人(ウンディーネ)に真っ白な羽をプレゼントなんて、お似合いでございますよ」ニヤニヤ

咲「へ?」

セーラ「あーーーーー!やっっっっっと来よったか!!」

「やっとって、なんか勘違いしてませんかね」

セーラ「はあ!?お前がメモに10時って書いとったやろが!」

「こちらがそのメモです。よーく見てみてください」

咲「…あ、あれ?セーラさん、10時ではなくて16時って書いてありますよ」

セーラ「…へ?」

「…」

セーラ「…」

咲「…」

セーラ「…」ズーン

咲「あ、あわわ、セーラさん、お気を確かに…」

「いえ、ほっといてもらって大丈夫ですよ、水先案内人(ウンディーネ)さん」

咲「え、あの…」


浩子「申し遅れました。船久保浩子です。セーラさんの後輩になります。よろしくです」

咲「あ、えっと、宮永咲と申します」

浩子「宮永さんがセーラさんの相手をしとってくれたんですか。せっかちで大変だったでしょう」

咲「えっ、いやその、私も待ち合わせ仲間というか…」


浩子「なるほど。宮永さんは陸の上でも、立派な水先案内人(ウンディーネ)さんのようで」


咲「…あ、ありがとうございます」

浩子「…なるほどなるほど」

浩子「では、行きますね。ほらセーラさん行きますよ、しゃきっとせんかい」

セーラ「」ドヨーン


咲(こうして、セーラさんは待ち人と会うことができました)

咲(それにしても、憧ちゃん結局来なかったなぁ)

咲(なんだか今日は、いっぱい待ちぼうけしてしまいました)

咲(でも、退屈なんて全然しませんでした)

咲(だって、ここは水の都ネオ・ヴェネツィア)

咲(とびっきりの「ため息」ものの街ですから)


咲「えっ、約束の日は一週間後?」

憧『あんた…、おばかねぇ…』

今日の更新は以上です。
セーラたちの関西弁は、書いてて関西の人たちに不自然に思われないかいつもひやひやです。
次回も早めに更新したいです。

こんばんは、また最近寒くなりましたね。
紅葉の景色が懐かしく思えます。

では、今日の投稿を始めたいと思います。

咲(――前略、秋本番です)

咲(紅葉で有名な小島があるということで、今日は慕さんとアリア社長と一緒におでかけです)

咲(私の街ネオ・ヴェネツィアがあるアドリア海は多島海で、大小いろんな島が点在します)

咲(地球(マンホーム)から火星(アクア)に人々が入植してきた当時)

咲(出身国別に島が割り振られて、それぞれの文化村を作ったそうです)

咲(だから今でも島ごとに、いろんな国の昔の風景が色濃く残っています)

咲「うわぁ…!大きな鳥居がいっぱいですね!」

慕「この島は日本の文化村だったんだって」

咲「すごいです…!神社なんて昔の映像記録でしか見たことなかったです」


咲「…あ」


咲「あの、この像はいったい…」

慕「ああ、お狐さまだね。この神社の守り神さまだよ」

咲「へえぇ…」ジーッ


咲(…不思議な顔だなぁ)


「いらっしゃーい…」

慕「あ、おいなりさんが絶品のお店だって」

咲「おいなりさん!」

慕「せっかくだから買ってく?」

咲「はい!」


咲「10個ください」

売り子「…まいど」

咲「わぁ…、なんだかとっても甘い香りがします」

売り子「うちのは黒糖が入っているので」

咲「黒糖ですか、楽しみです」

売り子「うん、きっと気に入る」ニコッ


咲(わっ、売り子さんすごいいい笑顔…)

売り子「…今日は、紅葉を見に?」

慕「はい」

売り子「…今日はいい天気だから、お狐様に会えるかもしれない」

咲「えっ、会えるんですか?」

売り子「運が良ければ。ここのお狐様は気まぐれだから」

咲「へえぇ…、会ってみたいです…」


売り子「…でも、気をつけてほしい」

売り子「稀に、人を一緒に連れて帰ってしまうから」

売り子「神様と人間の世界は違う。連れて行かれてしまってはだめ」

売り子「こっちの世界に、戻ってこれなくなる」

咲「…」ブルブルブル

慕「あらら、咲ちゃん大丈夫だよ」

売り子「…まあ、のんびり楽しんできてほしい。ここは良いところだから…」

咲「は、はい」

慕「では」

咲「はい。行きましょう」

売り子「…」



「…」

慕「ここが千本鳥居だよ」

咲「うわ…、引き込まれてしまいそう…」

慕「荘厳だよね」

咲「鳥居も真っ赤で、紅葉も真っ赤で、まるで世界中が赤い魔法にかかったみたい…」

慕「ふふっ」

咲「本当にきれい…」


咲「怖いくらい」


慕「咲ちゃん咲ちゃん」

咲「えっ、あ…。ごめんなさい、ぼーっとしてました…」

慕「迷子にならないようにね。はい」スッ

咲「はひ…、すみません」


ぎゅっ


咲「…慕さんの手、あったかいです」

慕「ふふっ」



ひた…

咲「!」

慕「どうしたの?」

咲「今、誰かいたような…」

慕「え?」

咲「気のせい、でしょうか…」


ポツッ
ポツッ ポツッ


慕「わぁ、珍しい」

慕「お天気雨だよ」

咲「お日様が出てるのに雨が?」

慕「そっか、地球(マンホーム)の天気は完全な自動機械制御だから、咲ちゃんは初体験なんだね」

咲「はい。お天気雨かぁ」

咲「摩訶不思議、です」

慕「そういえば、確かお天気雨には素敵な別名があったはずなんだけど」

咲「私もなにかでみたような…」

慕「うーん、なんだったかなぁ」

咲「うーん、なんでしたっけ…」

慕咲「…」

慕「まずは雨宿りだね」

咲「はひっ」


たったったったっ


――――
――

咲「はぁ、はぁ」

ナルカ「にゃ」ソコデス

咲「あ、あった!やっと雨宿りできますね、慕さん、アリア社長」

咲「…」

咲「あれ、慕さん?」

咲「…」

咲「ど、どうしましょう…、迷子になってしまいました」


咲「…ひゃっ!」


ナルカ「?」

咲「あ…、いえ、お狐さまの像と、目が合ってしまって…」

咲「あの、アリア社長っ、慕さんと合流しましょう。雨も小降りですし、行きましょう」

ナルカ「にゅ」

咲「はぁ、はぁ」

咲「し、慕さーん」

咲「…なにも、聞こえない」

咲「…この雨なのに、お供え物のろうそくの火は消えないんですね」

咲「小雨の中で揺らめく火がとても綺麗です。…妖しいくらい、綺麗です」

咲「アリア社長」

咲「なんだかこの道」

咲「違う世界へ、つながってそうですね」

咲「…」ハッ

咲「な、なに言ってるんだろ私。早く慕さんを見つけなきゃ」


ひた…


咲「」ビクッ

咲「…」


咲(気のせい…だよね…)

咲(…)


ひた…

ひた…


咲(…気のせいなんかじゃない)


ひた…

ひた…ひた…


咲(さっきから、何かがついて来る?)

売り子『今日はいい天気だから、お狐様に会えるかもしれない』

売り子『ここのお狐様は気まぐれだから』


咲(ひょっとして…、お狐さま?)


ひた…ひた…

ひた…ひた…ひたっ

ひたっひたっひたっひたっ


咲「あっ」


ぺたんっ

ナルカ「にゅ?」ダイジョウブ デスカ?

咲「…アリア社長」

咲「私…、ちょっぴり、怖いかも…」


シャンッ


咲「っ」ビクッ


シャンッ

シャンッシャンッ

咲(…来る、なにかが、たくさん…)

咲(あれは、行列…。たくさんの人が…)

咲(…いや、あれは、人なの…?)

咲(普通の人は、狐のお面は着けない)


ひたひたひた


咲(誰かがこっちに来た…!)

咲(狐のお面を着けた、ちいさな、子ども…?)

お面の子「…」


スッ


咲(子どもが、手を差し伸べている)

咲(まるで、着いて来てと言っているかのよう…)


売り子『でも、気をつけてほしい』

売り子『稀に、人を一緒に連れて帰ってしまうから』

売り子『神様と人間の世界は違う。連れて行かれてしまってはだめ』

売り子『こっちの世界に、戻ってこれなくなる』


咲(…!)


ポンッ

お面の子「…」

咲「あの…、これ、おいなりさんです」

お面の子「…」

咲「わ、私は、そっちには行けないので、代わりに…」

お面の子「…」


たったったっ…


咲「あ…」

咲「い、行っちゃった…」


シャンッシャンッ
シャンッ

ザアッ

咲「っ、風が…」

咲「あ、れ、さっきの人たちは…」

咲「…雨、上がってます」

咲「…戻りましょう、アリア社長」

アリア社長「…にゃあ」

慕「…」

売り子「…お茶をどうぞ」

慕「…」フルフル

売り子「…心配しなくても、あの子はきっと大丈夫」

慕「…」


しのさーん!


慕「っ!」ガバッ

咲「慕さーんっ!」

慕「咲ちゃん…っ!」


タッタッタッ
ぎゅっ

咲「しのさあん…っ!」グスッ

慕「良かった…。痛いところはない?」グスッ

咲「はい…。ごめんなさい、私、迷子になってしまって…」

慕「ううん、私の方こそ、ごめんなさい。咲ちゃん本当に大丈夫?」

咲「はい。…あの、私お狐さまの行列に会っちゃったんです」

慕「お狐さまに?」

咲「はい。おいなりさんだけ持って行ってしまったんですけど…」


売り子「…油揚げは、昔からお狐様の大好物」

売り子「お狐様に会えたのも、無事なのも、うちのおいなりさんのお陰。かも」


咲「そ、そういえば…」

咲「…あの、もいっこおいなりさんください」

売り子「…まいど」

慕「本当に咲ちゃんが無事でよかったよ」

咲「ご心配をおかけして本当にすみません」

慕「…あれ?あのお狐さまの像のとこ、おいなりさんがお供えしてあるけど…」

咲「…もしかして、私の?」


咲(もしかすると)

咲(お狐さまはただ、おいなりさんが欲しかっただけなのかもしれません)

咲(怖がってしまって、ごめんなさい)

慕「咲ちゃん、お狐さまの行列ってどんな風だったの?」

咲「少し怖かったけど、とても綺麗でした」

咲「そういえば、白無垢を着ている人がいましたよ。花嫁さんが着る」

慕「花嫁?」

慕「あ!思い出した!お天気雨の別名」

咲「えっ、なんでしたっけ」


慕「狐の嫁入り、だよ」

今日の投稿は以上です。

今日は慕さんのお誕生日ですね。しのたんイェイ~
まっすぐで愛らしい慕ちゃんが、どんな感じの大人になるかとても楽しみです
一枚しか参考文献はないですが、笑顔あふれる落ち着いた大人になってそうですね
本編での登場は何年後ですかね…

次回もよろしくお願いします。

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