奉太郎「千反田の耳元でささやいてみる」 (25)
氷菓のSSです。
短めになってます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1371026259
ある日の放課後。地学準備室。
古典部の部室にいるのは、俺と千反田だけ。
今日も机を挟んで、向かい合わせで静かに読書をしている。
える「これ、親戚からの頂き物です。好きにつまんでください」
そう言って千反田は、お菓子がたくさん入った箱を差し出してくる。
俺は何も言わず、一つつまんだ。
える「不毛です!」
奉太郎「……」
える「不毛なんです!」
奉太郎「……か」ボソッ
える「折木さん?」
奉太郎「『そうか』と言ったんだ」
える「そうでしたか。ですが折木さん、もっと大きな声で発言してください」
奉太郎「……」
える「そんなに小さな声でしゃべられても、聞こえませんよ?」
える「話が逸れてしまいました。とにかく、不毛なんです! 何かしましょう、折木さん!」
奉太郎「……んどくさい」ボソボソ
える「はい?」
奉太郎「『めんどくさい』と言ったんだ」ハァー
える「ですから、そんな小さな声じゃ聞こえません!」
奉太郎(めんどくさい……)
える「どうしたのですか、折木さん? 今日は一段とテンションが低いですよ?」
奉太郎(ただでさえ今日は声を発することすらだるいのに)
奉太郎(千反田といると、どうもしゃべらなければいけない羽目になる)
奉太郎「帰るか……」ボソッ
える「帰るのですか?」
奉太郎「今のは聞こえたんだな」
える「正直言ってよく聞こえませんでしたが、折木さんが発する雰囲気で察知しました」
奉太郎「……さいで」
える「というか、帰ってはダメです!」
奉太郎「なぜだ? 特別やることも無いし、帰っても問題ないだろう」
える「せっかくこうして部室にいるのですから、何かしなきゃ勿体無いです!」
奉太郎「……」
える「そうだ! こうしましょう!」ピキーン
奉太郎「?」
える「折木さんの発声練習をしましょう!」
奉太郎「」
奉太郎「は?」
える「ですから、もっと声が大きくはっきりしゃべれるように練習しましょう!」
奉太郎「やらん。やらなくても良いことはやらない」
える「面接試験とかでも重要なことですから、やらなくて良いことではないです!」
奉太郎「確かにそうかもしれんが、別に今やる必要はないだろ」
える「『善は急げ』です」
奉太郎(こいつは一度決めるとなかなか曲げないからな……)
奉太郎(なんとかこの状況を簡単に抜け出す方法はないだろうか……)
奉太郎「……あっ」ピキーン
える「では早速始めましょう。まずは息を大きく吸って深呼吸しまs」
奉太郎「なぁ千反田。こうすればもっと早く解決するんじゃないか?」
そう言って俺は座っていた椅子から立ち上がり、千反田の隣の椅子に座った。
奉太郎「ほら、こうすれば聞き取りやすいだろ?」
える「! た、確かにそうかもしれませんが……」
奉太郎「? まだ聞き取りづらいか? じゃあこうしよう」
える(!!??!???!!!!???//////////////)
奉太郎「こうすれば、さすがに聞こえるだろ……?」ボソボソ
える「お、折木さん! そんな、み、耳元でしゃべらないでください!//////」カァー
奉太郎「なぜだ? お前が俺の声が聞こえないって言ったからだぞ?」ミミモトデボソボソ
奉太郎「これが一番手っ取り早い方法じゃないか」ミミモトデボソボソ
奉太郎(やらなければならないことは手短に、だ)
える「そんな、耳元で話さなくても、大きな声で話せば済む話です!///」
奉太郎「めんどくさいんだよ。それに今日はもう可処分エネルギーが残されていない」ミミモトデボソボソ
える「だ、だからって……、そんな、恥ずかしぃ……、です……//////」ボソボソ
奉太郎「ん? どうした? 今度はお前の声が小さくなってるぞ」ミミモトデボソボソ
える「だって、折木さん、が……//////」ミミモトデボソボソ
奉太郎(……可愛い……)
ガラガラッ
里志「やぁ! ごめん二人とも! 遅くなっちゃった〜、……って、あれ?」
摩耶花「ごめんね〜! 福ちゃんが宿題忘れて先生に怒られt、……ん?」
奉太郎&える「」
里志&摩耶花「……帰ろっか」
える「ま、待ってくださいお二人とも!! ち、違うんです!!」
里志&摩耶花「ナニガー?」ニヤニヤ
える「折木さんの声が小さくて聞こえないから、もっと大きな声で話してと私が言ったら、こうしようって折木さんが……」
里志&摩耶花「ニヤニヤ」
える「私の耳元で話せば、大きな声を出す必要ないから、って//////」
里志&摩耶花「ふ〜ん」ニヤニヤニヤ
奉太郎「これが一番手っ取り早い方法だろ?」
里志「いや〜、まさか『あの』ホータローがね〜」ニヤニヤ
摩耶花「ついに『あの』折木が……。良かったね、ちーちゃん」グスッ
奉太郎「おい、『あの』ってどういうことだ」
える「はぁ〜、すごく緊張しました……///」
奉太郎「何で緊張するんだ?」ミミモトデボソボソ
える「だ、だから折木さん、やめて、ください……//////」
奉太郎「今度からお前と会話する時はこの方法でいこう(面白いから)」ミミモトデボソボソ
里志「やっぱ僕たち帰ろうか」コソコソ
摩耶花「そうね。二人の邪魔しちゃ悪いしね」コソコソ
翌日の放課後。地学準備室。
今日もまた、古典部の部室にいるのは、俺と千反田だけ。
今日、里志と伊原はいわゆるデートというやつらしい。
奉太郎(……)
える(……//////)
える「あ、あの、お、折木さん//////」
奉太郎「?」
える「な、何で今日は最初から、と、隣に座って本を読んでいるのですか……?///」
奉太郎「だから昨日言ったじゃないか。今度からお前と会話するときは、お前の耳元で話す、と」ミミモトデボソボソ
える「は、恥ずかしいので、や、やめて、ください……///」
奉太郎「そう言いつつ、お前逃げないじゃないか」ミミモトデボソボソ
える「はぅ……///」カァー
奉太郎(やべぇ超可愛い)
奉太郎(ちょっといたずらしてみよう)
奉太郎「」フゥー
える「はぅあ!!」ビククッ
奉太郎「」クスクス
える「な、何するんですか!? 折木さん!//////」
奉太郎「何って、お前の耳に息を吹きかけただけだが?」ミミモトデボソボソ
える「だから耳元でしゃべらないでください!///」
奉太郎「嫌なら逃げればいい」ミミモトデボソボソ
える「そ、それは、その……」シュン
奉太郎「その代わり、もう俺としゃべることはできなくなるだろうな」ミミモトデボソボソ
える「! それはダメです!」
奉太郎「なら、このままでいくしかないな」ミミモトデボソボソ
える「ぅ……//////」
〜一方、里志と摩耶花は〜
摩耶花「今頃、折木とちーちゃんは、またイチャイチャしてるのかしら」
里志「だろうね。ホータローには、僕たちが今日部室に行かないことをあらかじめ伝えておいたよ」ニヤッ
摩耶花「GJ福ちゃん!」ニヤニヤッ
里志「ところで、耳元でささやかれるのって、女の子的にはどうなの?」
摩耶花「さぁ? 人によって違うだろうし、私は別にどっちでも良いかな」
摩耶花「あと、男の声質にもよるんじゃない?」
里志「あぁ。確かにホータローはあぁ見えて、結構良い声してるしね」
摩耶花「えぇ〜? あの折木が〜?」
里志「なんと言っても、CV:中○悠一さんだしね」
摩耶花「あぁ……」
さらに翌日の放課後。地学準備室。
今日も、いつもの二人だけ。
える(//////)ドキドキ
奉太郎(……)
える(……?)
える(今日は折木さん、隣に座ってきません……)
える(何かあったのでしょうか……。私、気になります……)
える「あ、あの! 折木さん!」
奉太郎「?」
える「今日はなぜ、と、隣に座らないのですか?」ドキドキ
える(そういえば私ったら!)
える(こんなこと聞いたら、折木さんにまるで隣りに座って欲しいみたいじゃないですか!///)カァー
奉太郎「ふむ」
ガタッ トコトコ ストン
奉太郎「これで、良いのか?」ミミモトデボソボソ
える「えっ? あっ、いえ、あの、その……///」
奉太郎「なんだ、こうじゃないのか?」ミミモトデボソボソ
える「いえ、あの、ち、違います……!//////」カァー
奉太郎「そうか、じゃあ戻るぞ」
ガタッ トコトコ ストン
える「えっ……」
奉太郎「? お前は俺に隣りに座って欲しくないんだろ?」
奉太郎「だから元の位置に戻っただけだ」
える「あの……」
奉太郎「これで良いんだr」
える「折木さん!」
ガタッ トテトテ チョコン
奉太郎「なんだ」
える「はい! どうぞ!」グイ
奉太郎「いや、いきなり俺の膝の上に座ってきて、『どうぞ』と言われてもな」
える「! で、ですから!/// ね? わかるでしょう?///」
奉太郎「いやさっぱり」ニヤニヤ
える「くっ……。で、ですから、み、耳元でささやいてください!!//////」カァー
奉太郎「最初からそう素直になれば良いんだ……」ミミモトデボソボソ
える「はふぅ〜//////」ウットリ
奉太郎「今日は何の本を読んでいたんだ?」ミミモトデボソボソ
える「何も読んでません……」
える「折木さんに耳元でささやいてもらいたくて、内容なんか覚えていません///」
奉太郎「お前は可愛いな……」ナデナデ
える「折木さん//////」
奉太郎「好きだよ、える……」ミミモトデササヤキ
【完】
このSSまとめへのコメント
いいよいいよ
最高かよぉ