男「コンマガチャで能力バトルロワイヤル?」一部コンマ判定 (275)

第一弾ガチャ

01~10 少し身体強化
12~20 身体強化
21、23~30 軽い物を浮かせる
31、32、34~40 人間を浮かせられる
41~43、45~50 腕を変化させられる
51~54、56~60 身体全体を変化させられる
61~65、67~70 一メートル先に瞬間移動
71~76、78~80 十メートル先に瞬間移動
81~87、89、90 感情を読み取る
91~98 一人の心を読める

00触れた相手の能力をコピーする(複数可)
11、22超スピード
33、44視界範囲なら瞬間移動
55、66同時に何人でも心を読める
77どんな物でも触らずに動かせる
88、99どんな能力も影響されない(間接的にも)

≪その他ルール≫
舞台は高校、二年A組クラスメイト10名を無作為に選出。

三人のチームを作成可能(二人は不可)。

心肺停止後、完全に死を迎えたと運営側が判断した時点でゲームオーバー。

敷地内に配置されたアイテムは自由に使用可能。

勝利者は能力を得る事が出来、同時に百万円を手に入れる。

次のバトルロワイヤルへの参加権も与えられる。


※行動安価ではなくキャラ作成時にコンマ判定を使うだけです。

状況により、能力の強弱を覆す展開になる事もあります。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1471431311

主人公作成

埋めて貰えるとありがたいです。

名前:
性別:
部活:
性格:
その他(あれば):


安価下1

いつの間にか更新されてましたね、

では主人公

名前 石田 純一郎
性別 男
部活 なし
性格 短気
その他 家が貧乏 父親が小さい頃に亡くなっている 弟が二人いて、7才と6才

能力 人間大の物を浮かせられる(動かせる)



キャラ1

久瀬理御 くぜりおん

科学部
超合理主義でなおかつ基本的に自分こそが最優先される独善的な人間
変装変声が得意で偽ることにたけている

能力 身体全体を変化させられる


キャラ2

名前:月島 下弦 (つきしま かげん)
性別:女
部活:合気道
性格:親友以上には人懐こく、それ以下には冷たい
その他(あれば):男に襲われたことがあり、以降は女以外には関わろうとしない。詰まる所のレズ

能力 身体を少し強化



多いですが残り七人もお願いします!

全員が集まり次第、物語はスタートします!

安価下1~7

名前:
性別:
部活:
性格:
その他(あれば):

名前 鹿島 透(かしま とおる)
性別 女
部活 TRPG部(部員募集中)
性格 面白いこと至上主義
その他 ゲームの天才。ゲームと名のつくものならなんでも得意で、大会の優勝歴あり。

さっそくありがとうございます!

それではすぐ話を展開させますね!

物語の整合性を保つ為に多少の性格や設定変更があるかもしれませんが、出来る限りレスの通りのキャラにしますのでよろしくお願いします。

シナリオも今から考えますので時々時間が空くかもしれませんがよろしくお願いします。


では、さっそく始めます。


 ぽきり。


 ぽきり。ぽきり。


 人としての何かが折れていく。


 ぽきり。


 教師は毎日を感謝しろなんて言うが、俺は毎日世界を恨み続けた。


 ぽきり。


 貧乏の所為にするなと言われた事がある。


 ぽきり。


 ああ、俺はその通りだなと思った。


 ぽきり。


 それを言った金持ちの豚は“金持ちであったにも関わらず”二度と歩けない足と醜い顔を手に入れたからだ。


 ぽきり。


 ああ、俺が短気であるのも何かが折れた所為なのだろうか。


 ぽきり。


 母親は今日も豚に股を開き、弟達は俺に怯える。


 ぽきり。


 高校に通っているのは――した父親への贖罪だ。





 第一章「汝、ガチャで人を殺したまえ」




 


 石田純一郎はうぅんと呻き声を漏らした。

 いつもより布団が硬かったからだ。生まれてから一度も買い変えた事がなく、煎餅のように平べったくなった布団とは言えあまりにも固い。

「……は?」

 目を開けると木目調の床に驚きの声を上げた。視線を動かすと机と椅子が整然と並んでいる。

「学校……?」

 通りで固いはずだ。純一郎は肘を支点に身体を持ちあげる。何日も関節を動かしていないような鈍い痛みに顔をしかめた。

「何で俺は……」

 こんな所で眠っていたのか。記憶を掘り返すも眠る直前の事が思い出せない。

(そもそも学校に行ったのか? 休日に?)

 記憶が確かならば、眠る前は土曜日だったはずだ。つまり今は日曜日であり、学校に行く必要はない。

 部活に所属していない純一郎は狐か狸に化かされたような感覚に苛立ちを募らせる。

「真っ暗で何も見えねぇな」

 真夜中なのか、黒板の上に置かれた時計を確認する事ができない。月明かりで世界の輪郭が覗ける程度だ。

「くそ、きもちわりぃ」

 自分が何故ここにいるのか思い出せない。喧嘩をして気絶した覚えもなく、身体に痛みもない。

「……まぁいいや、帰――」

 休日まで学校にいたくないと純一郎は廊下へと振り返る。

 そこには、



『 やぁ 、 君は 選らば れた。 と ても幸運 だ ね 』



 中身の飛び出した熊のぬいぐるみが楽しそうに笑っていた。


 機械音声のような、それでいて妙に艶のある声が耳に届く。

 言葉を発する度に揺れる熊のぬいぐるみは、まるで“自分が喋っている”と言いたげに純一郎を見つめていた。

「くそがっ! 俺がビビると思ってんのか!?」

 純一郎は教室の至る所に向かって叫び声を上げた。隠しカメラやマイクがあると思ったからだ。

 貧乏だった彼は凶暴な性格を得るまで沢山苛められた。こういう悪戯も何度も受けた経験がある。

『 ひ ひっ、 悪戯? いたず ら だって? 』

 壊れたテープレコーダーのように言葉の区切りが悪い。それが純一郎を余計苛立たせる。

「お前は黙ってろ!!」

 純一郎が怒りを込めてぬいぐるみを踏みつぶしにかかる。


 だが、彼の足がぬいぐるみを踏みしめる前に、純一郎は宙を舞った。


「がっ!! ぐっ!!」

『ふ、 ははっ!! 君、おもし ろ いね! 怖く な いのかい!?』

 ケタケタと笑うぬいぐるみ。純一郎はようやく自分の置かれた立場を理解する。

「お前……一体何だ?」



 自分の置かれた立場。それは――。



「じゃあ君達はこの世界の存在じゃないって事?」

 久瀬理御は自分の命よりも、目の前の特異な存在について知る事を優先した。彼にとって死の定義は知識欲を満たせない事だったからだ。

『 そんなの 今は 関係 な いよね? 』

「ああ、はいはい。そうだね。大体こういうのは勝ち残らなきゃ駄目だよね」

 理御は決して状況を理解した訳ではない。

 目が覚めたら学校の床に眠っており、目の前には奇妙な犬のぬいぐるみ。

 機械音声のような、それでいて人間味のある声で喋る何かはこう言った。


 今から殺し合いをしてもらう、と。


「それで、ルールとかないの?」

 理御にとって“何故”かは重要ではなかった。数ある謎の中で“最も価値が低い”答えだと思ったからだ。

 だからクラスメイト十人で殺し合いをしろと言われた瞬間、それを受け入れた。

 何故の先にあるもの、それを知る為に――。

「女性の参加者はいるの?」

 別の教室で月島下弦は鮫のぬいぐるみを睨みつける。理不尽に対する怒りではない、もっと澄んでいて、それでいて汚い感情だ。

『 今回は た くさん いる ね 』

「……っ!」

 奥歯を噛みしめる。下弦にとってクラスメイトの女子は全員大切な友達、いやそれ以上であり、誰ひとりとして殺す対象にならないからだ。

「男子生徒は皆殺しにしてやる。だが、女子生徒は――」

『それは無理な話だ。月島下弦』

「……?」

 ぬいぐるみは急に流暢に喋り始めた。下弦は警戒して一歩下がる。

『……だが、そうだな。……二人まで』

「ふたり?」

『ああ、この殺し合いは三人チームを作る事ができる。理由は明かせないが、三人チームなら許される』

「……女子生徒の参加者を教えろ」

『選ぶのか?』

「……っ!!」



『“選ばれて”襲われた君が、“殺しても良い”相手を選



「黙れぇええええええ!!」

 下弦の叫びは教室の外へ漏れる事はなかった。

 ゲームが始まるまでは決して外に干渉する事ができない。それがルールだからだ。

「……ガチャ、ですかぁ?」

 七倉緑は大袈裟に首を傾げた。男子からは好意的に捉えられるその動きを猫のぬいぐるみは無感情に見つめている。

『 そう だ。 平等 に殺し合える よう ガチャで 能力を 得る 』

「はぁ、そうですかぁ」

 緑はあまり興味なさそうに頬に手を当てた。イマイチ理解できない事もあるが、それ以上に“どうでもいい”事だったからだ。

 だが、ぬいぐるみの言葉で表情が一変する。



『その能力は勝ち残れば“永久に使い続ける事が出来る”』



「!」

 緑の右眉がピクリと動いた。おっとりとした表情は変わらないが、内心は激流が渦巻いている。

『君の両親を殺した相手、精神鑑定の結果次第では刑を受けないそうだね』

「………」

 どこでそれを聞いたのか。緑は口にしなかった。

 もっと優先する言葉があったからだ。



「……人を殺せるような能力は――」



 猫のぬいぐるみは無感情に彼女を見ていた。

「断る」

 朽賀一郎はきっぱりと言い放った。カバのぬいぐるみは無感動に彼を眺めている。

『 好きに する と 良い 』

「……帰って良いのか?」

 一郎は殺し合いしろと言われて心から嫌悪し、拒絶した訳ではない。むしろ自分の本性を知っている彼は、高鳴る心臓の理由が“興奮”している所為だと理解していた。

 だが、それでも彼は自制し、参加を拒否しようとした。

 人は正しく生きられる。彼の師が生き方を持ってそれを証明したからだ。


『 良いよ 帰れば た だ、君以外は 参加 するみ たいだけど 』

「知った事では――」

『 拒否できると しら な いかも ね 』

「!!」


 一郎の心が動いた。ぬいぐるみの言葉が正しければ、参加者の中に何も理解できず承知せず参加させられる人間がいるのだ。

 それはかつて、血と暴力の世界しか知らなかった自分のように――。


「……その者の名を教えろ。参加してやる」


 一郎の決意は固く、ぬいぐるみの答えは――。



『本人に き け 』



 

「へぇ、これが私の能力なんだぁ」

 樋川理鈴はぷかぷかと浮かぶ机を楽しそうに見ていた。

『慣れればそのまま動かせる』

 流暢にしゃべるイカのぬいぐるみの足元には、開いたカプセルが転がっている。

「でも、これで殺し合うって難しそうなんだけど」

『能力がなくとも人は人を殺す事が出来る。君が男であり女であるように不可能などない』

「………」

 理鈴はぬいぐるみの言葉に反応する事無く廊下に出た。

 教室から廊下に出るとゲームはスタートする。

 早く動いた者ほど、有利になる。

「あそことあそこにいるんだ」

 何故ならプレイヤーが待機中の教室は、赤く光って見えるからだ。

「……僕は体育館へ行こう」


 理鈴は肩まで伸びた髪をポニーテールに縛ると、一目散に体育館へと向かった。

 “男の自分”なら、どれだけ汚れても気にならないからだ。


 教室の光は八つ。

 理鈴がその意味を考える事はなかった。

「えぇ!? む、むむ、無理だよぉ!?」

 有柄紅葉は殺し合いを全力で拒んだ。参加者の中でも最も業が浅く、綺麗な存在であったからだ。

 だが、逆に言えばそれは“弱者”であるとも言える。

『君が参加すれば、助かる命もあるかもしれないのに』

 少女のぬいぐるみは小刻みに震えた。

 紅葉はその言葉を聞いて「そうかもしれない」と思った。

「で、でも……私一人じゃとても…」

『じゃあ、チームを組めば良いよ。クラスメイトなんだから助けあって、ね』

「……う、うん、じゃあ…」

 紅葉は安易に頷いた。

 クラスメイトなんだから助けあって“殺し合ってね”。


 ぬいぐるみの真意にも気付かずに――。


「あーあ、しょうもない能力を手に入れたなぁ」

 生徒会室の最奥で黒神棺は不快感をあらわにした。

 拳ほどの物を浮かせられる能力。それが彼の手に入れた力だ。

「まぁ、結局は首を斬れば勝ちなんだし、どうでも良いか」

 棺は職員室からかき集めたカッターナイフを机の上に並べ、楽しそうに数を数えた。

 彼は典型的なサイコパスであったが、一週回って常識人でもあった。

 何をどうすれば社会に適応する事が出来るか知っているだけの、狂人。それが黒神棺だ。

「殺した後の死体って、殺した人の物なのかなぁ」

 棺は楽しそうに笑う。

 校舎に輝く七つの赤い光を眺めながら。


 もっとも早く教室を出たのは鹿島透だった。

 彼女はどうすればこのゲームで生き残る事が出来るか即座に予測を建てた。


 一つ、チームを組む事。

 出来れば男子を一人組み込む事が望ましい。男子二人は“透の所有権を賭けて殺し合う”場合がある。

 透はゲームで生き残る為ならどうでも良いクラスメイトにさえ処女を捧げる気でいた。妊娠しようが負けるよりはよっぽどましだと、彼女はそう考える。


 一つ、全員の能力を知る事。

 猿のぬいぐるみはガチャの中身を全て教えはしなかった。中にはとんでもないレア能力もあるとも言っていた。

 万が一目が合うだけで殺す事の出来る能力を誰かが手に入れていたとしたら。

 敵の力を知る事は勝利への必須条件だった。


 最後に、誰よりも早く判断し動く事。

 これはもはやジンクスとも言える透の戦い方だった。

 一度きりの戦いではあるものの、ルールは怖ろしく適当だ。ばったり出会って殺し合いになってもおかしくない。

 前提条件のチームを組むにしても、殺気だっている相手が話を聞いてくれるとは限らない。少しでも早く動き、状況を把握する事が勝利への近道だと思ったのだ。


「一年B組の教室」


 透は向かい校舎の一階で光る教室へと走った。三つに分かれた校舎の中で唯一一か所だけの光だったからだ。

 そこにいるのが誰であれ、リスクは最も小さい。

 逆に自分のいる校舎は四つも光っている。

 透は笑っていた。


 これがゲームであると誰よりも理解していた――。


 

「おおっ、本当に瞬間移動したでーす!!」

 一メートル先へと飛び越えたレイス・ノーベルは嬉しそうに叫んだ。教室を出なければ能力が使えないと言われたので、現在は廊下にいる。

「……クラスメイトと殺し合いなんて不本意でーす」

 哀しげな表情を浮かべるレイス。彼女は誰よりも他人を敬い、誰よりも尊重していた。

 異国の人種である自分を受け入れてくれたクラスメイト。その意味を良く理解していた。

(二人しか助けられませんが、全力を尽くします……)

 レイスは出来れば一番仲の良かった水瀬と鹿島を助けたいと思った。

「いえいえ、違います。参加していないのが一番です」

 四十人のクラスメイトの中から十名の選出、二人とも選ばれてなくてもおかしくはない。

 だが、レイスが楽観視する事はなかった。彼女の叔父は戦争体験者で、何度も何度も彼女に戦場を生き残るコツを教えたからだ。


『いいか、この世に希望ねぇ。あるのは結果だけだ。楽観視の悪魔はいつだって希望を囁くが、それが現実になる事はねぇと思え』


「……分かってまーす」


 レイスは拳を小さく握る。その中には鹿島から貰ったサイコロのキーホルダーがあった。


「レイス……さん?」


 廊下の先、十数メートルほど離れた位置で誰かがレイスを呼びかける。

 おっとりとした表情にほんわかとした雰囲気。

 レアガチャを手に入れた唯一の参加者、七倉緑だった。

「緑? 緑も参加者に!?」

 レイスは眉をひそめフラフラとよろめいた。廊下の窓に身体を預け、緑をジッと見つめる。

(緑の様子がおかしいです……)

 哀しみの表現は演技だった。七倉緑の様子は極めていつも通りだったが、端々で違和感を覚えたからだ。


 まず、のんびり屋の緑は普段体重を後ろにかける癖がある。

 踵に体重を預ければ預けるほど、反応速度に対する身体とのズレは大きくなる。

 武術家なら話は変わってくるかもしれないが、一般人が何かしらの行動を取る時は“ほぼつま先に体重をかける”のだ。


 次に、視線の動きがおかしかった。

 廊下を舐めるように奥へ奥へと移動し、その射線上にレイスがいるような。

 “何かを目測しているような”感じが見受けられる。

(超能力として線を意識しなければならないのは……)

「………」
「……レイスさん?」
(………分からない…)

 レイスは日本に来てから漫画文化にどっぷりと浸かった。

 だが、少女漫画のほとんどにバトルはなく、特に超能力バトル物となると、クラスメイトの伊藤に借りた少年漫画くらいだったがまだ読めていはない。

(こうなったら、……野生の勘でーす)

 七倉緑が殺意……ほどではないにせよ敵意を秘めているのは確かだ。

 なら自分が出来る事は、

「緑、もし良かったらレイスと――」
「……っ!」

 刹那、緑の重心が更に前へと移動した。それは元軍人の叔父にひたすら訓練を受けたレイスだからこそ分かる違いだった。

(瞬間移動!!)

 ブゥン、と音がした。

 ふわりと身体が浮く感覚が押し寄せ、自分が“二階の外”にいる事を全身で理解する。

「……落ち着くのでーす」

 背中にジワリと汗をかく。同時に重力の波に身体が引き寄せられ、地面へと落下を始める。

 二階とはいえ下手をすれば骨が折れるかもしれない。怪我をすれば圧倒的に不利になる。

(………)

 だんだんと、地面が近づいてくる。

 5、4、3、2、1、

(今です! 瞬間移動!!)


 再び身体の中でブゥンと音が響く。

 地面に激突するはずだった身体は斜め上へと移動し、地面から三十センチの前方へと移動した。

 落下エネルギーは消えさり、ふわりと地面へ着地する事に成功した。

「……ふぅ、予測通りで助かりました」

 レイスは予測と口にしたが、実際は“経験した上”の行動だった。

(窓を突き破る勢いが一切なくなったので、瞬間移動は移動の際に生じるエネルギーを消し去る副作用があると踏みましたが、流石のレイスちゃんだったようですね)

「ごめんね緑。レイスは殺される訳にはいかないですよ」

 見上げると、先ほどまで自分のいた廊下の窓に亀裂が入っていた。それは端から端まで稲光のように水平に走っている。

(どうやら緑は怖ろしい力を手に入れたようですね……)

 だが、不思議と負ける気はしなかった。

 七倉緑は悪い子ではない。レイスはそう確信していたからだ――。

≪報告書≫

1stコンタクト

緑 VS レイス 決着つかず。

レイスが瞬間移動する事により逃亡。

東校舎

屋上

三階 一郎 

二階 緑 純一郎 紅葉

一階 レイス(グラウンド)


中央校舎

生徒会室 棺

二階 下弦

一階 透


西校舎

二階 理御


体育館 理鈴

今日はここまでにします!

誰と誰が出会って欲しいかレスを頂けると三レスまで優先します!

※戦うか、仲間になるかは展開次第。

では!

登場人物

1.
名前:石田 純一郎
能力 人間大の物を浮かせられる(動かせる)

2.
名前:久瀬理御 くぜりおん
能力 身体全体を変化させられる

3.
名前:月島 下弦 (つきしま かげん)
能力 身体を少し強化

4.
名前:七倉 緑 ななくらみどり
能力 超スピード(能力に耐える身体に変化している※見た目は変わらない)

5.
名前:朽賀 一郎(くが いちろう)
能力 人間大の物を浮かせられる(動かせる)

6.
名前:樋川 理鈴
能力 人間大の物を浮かせられる(動かせる)

7.
名前:有柄 紅葉(ありつか もみじ)
能力 身体を少し強化

8.
名前:黒神棺 くろかみひつぎ
能力 軽い物を浮かせられる

9.
名前:鹿島 透(かしま とおる)
能力 身体を少し強化

10.
名前:レイス・ノーベル
能力 一メートル先へ瞬間移動


 有柄紅葉は異端児ぞろいと言われる二年A組の中において、最も俗物的で可愛らしい女性だと評されて“いた”。

 もはや恋愛がアイデンティティと言っても過言じゃないほど異性を好きになりやすい性質の彼女は、入学してから半年で五人の男性と付き合った。

 恋愛体質と言っても、肉体の関係は一切持たない。彼女の父親が地元で有名な人間である事も起因して彼氏のほとんどが手を出さなかったのだ。

 一方で紅葉の恋愛体質は彼氏彼女の関係で縛る事が出来ない。その理由も父親にあり、毎晩違う女を抱いていた所為だが、彼女自身は「人として好きになる事を誰も阻めない」と豪語する。

 一年経って見れば彼女も立派な二年A組の一人であり、『見える地雷』と呼ばれ男子生徒に敬遠されている。


 そんな彼女にも、好き嫌いの強弱はある。例えば、同級生の久瀬の事は少し好きだが、朽賀の事はかなり好きだ。見た目や考え方だけでなく、その人の生い立ちも大事にする紅葉。


 彼女がこの学校で最も好いている男子が――、



「あ、やっぱりここにいたんだね」



 生徒会室。生徒会長の椅子に座る彼は不敵に笑う。

「やぁ有柄、殺し合いだと言うのに楽しそうだね」
「うん、だって棺君ってこういうの好きでしょ?」

 棺は苦笑いを浮かべる。最も俗物的な彼女が“最も異端児な自分”の本質を見抜いているのだ。これほど面白い事はない。

「じゃあ、殺されても良いのか?」
「ち、違うよ! 私は棺君の仲間になりたいだけ!」
「仲間?」
「う、うん! それで最終的にはごにょごにょ」

 なるほど、本質を見抜いているとしても理解には至っていない訳か。棺は少しがっかりした。

 この世界において自分でさえ自分をおかしいと思う棺。そんな彼を理解する女性が紅葉であったなら。

 裏切られた白い期待は薄汚れ――、



「残念だけど、僕は誰とも仲間になるつもりはない」



 棺は右手を上げ、パチンと指を鳴らした。

「え……?」

 紅葉の視線が棺の指に向かう。

「ああ、今のは君の視線を奪う為でそれ以外に他意はないよ」

「視線……?」

 死と隣り合わせな父親と違い、紅葉は平和な世界で生きてきた。

 よもや、規律を作り、護る生徒会室の頭上に包丁があるなどと想像する事も出来ず――。

≪報告書≫

1、緑VSレイス
決着つかず。レイスが瞬間移動する事により逃亡。

2、○棺VS紅葉●死亡
棺は得た能力により、誰かが来るまで包丁を生徒会室入口にて浮遊させていた。
自身の能力の限界を測る為でもあったが、たまたま紅葉が現れた為、落下させる。
落下スピードで殺す事は出来なかったものの、動揺した紅葉を刺し殺す。


 樋川理鈴が肉体的に女性であり男性である事は一部の教師と生徒だけのしる秘密であった。

 校長の指示により体育を免除された理鈴は一部の生徒から批判を浴びたが、二年生になってからは個性の強いクラスメイトのおかげで目立つ事がなかった。

 だが、より大きな屈辱を受けたのは春の事である。


「理鈴ちゃんって男の子なんだよね?」


 父親が裏の世界に生きる紅葉はクラスメイトの情報を全て握っていた。

 もちろんそれを利用して悪事を働く事はなかったが、時折このような無責任な発言をする事がある。

「……あ、え……と」

 この時、理鈴は二つの失敗をした。

 即座に否定しなかった事と、男の子という単語に過剰な反応を見せた事だ。

 その時の紅葉が知っている事と言えば理鈴が戸籍上では男として登録された事くらいで、両性の性器を有しているとは露とも思っていない。精々女装の趣味があるのか程度の認識だった。

 理鈴の反応を見た紅葉は、自分が理鈴を傷つけた事に酷くショックを受けた。


 そして、調べた。



「理鈴ちゃんごめんね! 貴方が男であり女であるなんて知らなかったの!」

 休み時間の廊下で紅葉は深々と謝った。理鈴は顔を真っ赤にして逃げようとしたが、

「謝罪に対して許すなり許さないなり反応は見せるんだ」

 と、月島下弦が逃げ道を阻む。

「あ……あぁ…」

 別クラスの生徒からふたなりの理鈴と呼ばれるようになったのはそれからだ。

 だが理鈴は彼らを恨んだりしない。恨むべきは、



「月島も参加してたんだ。嬉しいな」



 地獄の扉を開けた二人――。


 体育館の端と端、月の光に照らされる下弦と理鈴。

 妖精のように美しい二人は真っ向から対峙していた。

「嬉しい? 理鈴はこの状況を良しとしているのか?」

 下弦の言葉に理鈴はクスクスと笑った。下弦は軽蔑するような視線を理鈴に送る。

「あーあ、月島ったら私の事を女の子だと思ってる時はあんなに優しかったのに」

 大袈裟に残念がる理鈴に月島はしれと、

「その頃の理鈴は精神的に女だった。今は――」


「黙れっ!!!」


 体育館に響く甲高い声。理鈴はペニスが付いているだけで基本的には女性の身体つきをしている。

「……残念だが、君は君自身を追い詰めている。私にはどうする事も出来ない」

 下弦の突き放すような言葉に理鈴は不敵な笑みをこぼす。

「ふふっ、それは貴方も同じじゃない」
「………」
「後天性のレズの癖に、誰かに何かを諭す権利があると思うの?」

 下弦の頬が少しだけ紅く染まる。理鈴は図星を突けた事が嬉しくピョンピョンと跳ねた。

「まぁどうでも良いけどね。あんたが私の人生を壊したのは確かだし、どう思っていようと殺すだけ」

 理鈴の殺気だった瞳に下弦は膝を柔らかく構えた。

 相手の能力が分からない以上、合気道のような近距離戦は好ましくない。

 それでも下弦は構えた。月島下弦の生き方を見せるように――。


「ほんとカッコイイね月島。私、人間としてあんたの事――」

「……!?」


 理鈴が右手を前に向けると、下弦の重力がフッと失われた。


「死ねぇえええええ!」

 ブゥンと腕を振る理鈴。追随するように下弦が壁端へと吹き飛ぶ。

(こんなに強力な能力も得られるのか!?)

 下弦は自分の不運さを嘆いた。ほんの少しだけ身体能力を強化する自分とは随分な違いだ。

「だがっ!!」

 壁に激突する瞬間、下弦は“身体の柔らかさを強化した”。

「ぐっ!!」

 全ての力を受け流せた訳ではないが、関節や骨へのダメージは半減できた。下弦は安堵し、同時に対策を建てる。

(見える範囲全て動かせるのか……、だったら逃げるしか手はないが……)

「逃がさないよ!」

 理鈴が再び右手を向ける。本来は見えてさえいれば動作のいらない力だが、漫画を好む理鈴はついポーズを決めてしまっていた。

 かつての強者と弱者はすっかり入れ替わり、下弦は逃げ場のない戦場へと身を落とす――。


 廊下を警戒して歩いていた朽賀一郎にとって、二つの幸運と一つの不運が襲う。

「……くっ!!」
「あっはははははは!!」

 全速力で逃げる一郎に対し、ピンク色の煙が追いかける。

「久瀬!! お前は敵か味方か!!」

 煙、それも少し吸い込んだだけで意識を失うような劇薬へと変化した久瀬理御に対し、一郎は問いかける。

「僕は知識欲の味方さぁ! 君が意識を失ったら色々と能力を試させてよ!!」
「くそがっ!!」

 一郎は前から理御の異常性を拒絶していた。

 知識欲の下僕である理御に善悪はない。かつて自ら進んで悪へと身を落とし、そこから善へと進んでいる一郎にとって異次元の存在だったからだ。

(マッドサイエンティストに与える能力としてはひいきが過ぎるんじゃねぇか!?)

 一郎の能力は精々人間レベルの物体を動かす程度、何にでも変身できる化物相手にどうにかできる力ではない。

「いやぁ! ほんと楽しみだなぁ! 君は興味ないかい!? 男性の胃の中で人間が生まれたらどうなるかとかさ!!」
「一ミリもない!! 死ね!!」
「あははははは!! 死ぬのは君なんだなぁああああ!!」

 一郎は逃げる。全速力で。

 体育館の先にあるプール。そこにさえいけば活路は見出せると信じて。

「……がっ!!」

 何度も何度も痛みと向き合いながら、下弦は少しずつ理御を知っていく。

(あの力で動かせるのは一度に一つ。それも人間程度の大きさと重さ)

 理御の視線を追っていると、何度か壁を破壊して攻撃しようとしているのが分かった。まったくもって無理なのか理御はその度に悔しそうな顔を見せる。

(大きさに依るのかもしれないが、動かすスピードはさほど速くない。力の込め具合で痛みを和らげる事も簡単になってきた)

 それでも、対処の方法が見えてこない。距離や状態を気にせず干渉できる理御の力は遮蔽物のない体育館において無敵だったからだ。

(まるで蟻地獄だな……)

 何度か出口に向かってみたものの、その度に理御は下弦を中央へと引きもどす。

「月島ってすっごく強いイメージがあったけど、意外と弱いんだね」

 理御は常に考えていた。いかにすれば下弦に屈辱を与えられるか。自分の落ちた地獄へ引きずり込む事が出来るか。

「理御、君が何と言おうと私は私であるだけだ。屈服したりはしないよ」
「……ふぅん、じゃあさ、こんなのはどう?」

 身動きの取れない下弦に近づき、理御はおもむろにスカートをはぎ取った。黒のスパッツが露わになる。

「女の癖にパンツじゃなくてスパッツって」

 クスクスと笑う理御に対し、下弦は軽蔑した目で、

「君の女性像は随分と乙女チックなのだな」

 と呟いた。

「……ほんと、君って人は」

 理御の指がスパッツのゴムにかかる。理御は基本的に女性であり、恋の対象も女性であるため脱がす事自体に興奮したりはしない。

 だが、理御のスカートは大きな山を作っていた。下弦はまだ気づいていないが、確かにそれは勃起した性器だった。

(今から月島にする事を考えると僕の部分が大きくなっちゃうよ)

 ズルとパンツがずれ落ちる。下弦は性器を見られようと動揺していなかったが、


「これが苦手なんでしょ? 月島」


 と、自分のスカートをめくり上げた理御を見て悲鳴を上げる。

「い、いやっ!!」

 理御はニヤリと笑う。

 そう、その顔が見たかったんだ。そう言わんばかりに。

あ、名前間違えた。↑の理御は理鈴です。ごめんさい。

訂正

「……がっ!!」

 何度も何度も痛みと向き合いながら、下弦は少しずつ理鈴を知っていく。

(あの力で動かせるのは一度に一つ。それも人間程度の大きさと重さ)

 理鈴の視線を追っていると、何度か壁を破壊して攻撃しようとしているのが分かった。まったくもって無理なのか理鈴はその度に悔しそうな顔を見せる。

(大きさに依るのかもしれないが、動かすスピードはさほど速くない。力の込め具合で痛みを和らげる事も簡単になってきた)

 それでも、対処の方法が見えてこない。距離や状態を気にせず干渉できる理鈴の力は遮蔽物のない体育館において無敵だったからだ。

(まるで蟻地獄だな……)

 何度か出口に向かってみたものの、その度に理鈴は下弦を中央へと引きもどす。

「月島ってすっごく強いイメージがあったけど、意外と弱いんだね」

 理鈴は常に考えていた。いかにすれば下弦に屈辱を与えられるか。自分の落ちた地獄へ引きずり込む事が出来るか。

「理鈴、君が何と言おうと私は私であるだけだ。屈服したりはしないよ」
「……ふぅん、じゃあさ、こんなのはどう?」

 身動きの取れない下弦に近づき、理御はおもむろにスカートをはぎ取った。黒のスパッツが露わになる。

「女の癖にパンツじゃなくてスパッツって」

 クスクスと笑う理御に対し、下弦は軽蔑した目で、

「君の女性像は随分と乙女チックなのだな」

 と呟いた。

「……ほんと、君って人は」

 理鈴の指がスパッツのゴムにかかる。理御は基本的に女性であり、恋の対象も女性であるため脱がす事自体に興奮したりはしない。

 だが、理鈴のスカートは大きな山を作っていた。下弦はまだ気づいていないが、確かにそれは勃起した性器だった。

(今から月島にする事を考えると僕の部分が大きくなっちゃうよ)

 ズルとパンツがずれ落ちる。下弦は性器を見られようと動揺していなかったが、


「これが苦手なんでしょ? 月島」


 と、自分のスカートをめくり上げた理鈴を見て悲鳴を上げる。

「い、いやっ!!」

 理鈴はニヤリと笑う。

 そう、その顔が見たかったんだ。そう言わんばかりに。


 一郎にとっての不運は理御に出会った事そのものだったが、幸運は自らの力で引きこんだ。

「あれ、あれあれ? 体育館で面白い事してるね!!」

 中庭を羽ばたくピンクの煙は一郎ではなく体育館で戦う下弦と理鈴に注目した。

 一郎はわき目も振らずにプールへと向かう。プールの水があれば少なくとも煙状態の理御に対抗出来ると思ったからだ。

 その判断、そのものが幸運だった。たまたま体育館で争っていた二人に対して理御は興味を持った。それは知識欲を優先する彼にとって、“一郎で実験するより面白い”ものだったからだ。

 そしてもう一つの幸運はプールから西校舎へと移動した時に起きるのだが、今はまだ――。




「ふむふむぅ、そう言えば樋川理鈴はどちらの性器も持つ実験対象だったねぇ」

 理鈴は逆に自ら不幸を呼びこんだ。下弦の精神を壊す為に出したペニスが、理御の興味を引いてしまったからだ。

「月島下弦はただの男性恐怖症だけど、女性の身体で実験する事は多いか」

(例えば、僕自身が精子に変身したら、彼女の卵子と受精するのか……とか?)

 非常に興味深いと理御ははしゃぐ。いつの間にか元の姿に戻り、ピョンピョンと跳ねていた。

「となると、樋川理鈴が性器を挿入する前に僕がいかなくちゃね★」

 理御はまるでお祭りをしているかのように勢いよく扉を開く。

 いや、彼は実際にこの祭りを楽しんでいた。



 面白い玩具が二つもあるのだから――。



 

≪報告書≫

1、緑VSレイス
決着つかず。レイスが瞬間移動する事により逃亡。

2、○棺VS紅葉●死亡
棺は得た能力により、誰かが来るまで包丁を生徒会室入口にて浮遊させていた。
自身の能力の限界を測る為でもあったが、たまたま紅葉が現れた為、落下させる。
落下スピードで殺す事は出来なかったものの、動揺した紅葉を刺し殺す。

3、一郎VS理御
決着つかず。理御の興味が体育館へ移動したため一郎は逃げ切れる。

4、●?下弦VS●?理鈴VS○?理御
再び煙へと変化した理御が二人を気絶させる。
捕まった二人の死は確認できていないが、ゲームへの参加は不可能だと思われる。

登場人物

1石田純一郎
2久瀬理御
3月島下弦
4七倉緑
5朽賀 一郎
6樋川 理鈴
8黒神棺
9鹿島透
10レイス・ノーベル

死亡
7有柄紅葉


 鹿島透が東校舎へと訪れた時、ほぼ入れ違いで下弦が体育館へと向かった。

 紅葉が生徒会室へと向かう姿を見て透は棺を仲間に入れる事を諦めた。

(紅葉が棺と出会った以上、敵にも味方にも出来ない)

 はっきりいって紅葉はお荷物でしかない。仲間に入れるだけ無駄だ。もしその紅葉を棺が仲間にしたなら、チームを組むメリットが薄れてしまう。もし殺したなら棺と仲間になる事は出来ない。

(一番慕っていた紅葉を殺すような男が私を裏切らない訳がないからね)

 そうなると、残り七人のうちから二人を選ばなくてはならない。下手をすれば既にチームが出来ている可能性もある。

(三人一チームと言った以上、二人チームは組めないだろう)

 ゲームをより過激にするための処置だろう。基本的に運営はチームを組んで欲しくないはずだ。十人の参加者のうち二人チームを作ってしまうと最大で五チームもできる。クラスメイト二人ならチームも組みやすいだろう。

 だが、三人となると話は別だ。出会うとすれば一対一である事がほとんどで、チームを組むなら三人目を見つけなければならない。

(チームじゃない状態で三人目を一緒に探すリスクを取る馬鹿はいないだろう)

 それこそがこのゲームを勝ち残る肝であり、透のリードしている点だった。

(私なら出来る。何故ならクラスメイトは私がゲーマーだと皆知っているからだ)

 説得力はその人の生き様に宿ると透は考える。自分がゲームの為に三人組を組む必要があると言えば、多くの人は納得し、耐えてくれるだろう。

(後は、その仲間を見つけるだけ……)



「……鹿島?」
「……朽賀一郎」



 理御から逃げ続け、溢れるほど汗をかいた一郎。

 彼の幸運はここから始まる。


 一郎は即座に身がまえた。透は全国レベルのゲーマーであり、理御と同じ“異端児中の異端児”だからだ。

「……構える必要はない。私は貴方とチームを組みたい」

 透は即座にチーム加入を要請する。朽賀一郎の性格を考えると回りくどい台詞は無用だった。

「それが本心であるか罠であるか俺には判断付かない」
「……私の能力は身体を少し強化する程度」

 と、透は壁を殴った。コンクリートの壁にひびが入る。

「いや、それくらいなら覚悟さえあれば出来る。証明にならない」

 透は首を傾げる。一郎にしては随分と慎重だったからだ。

「……とてつもない強敵と出会った?」
「……ああ、理御だ。久瀬理御」
「どんな能力?」
「…………何にでも変身できる力」
「……そう」

 透は一郎に背を向けた。そのあまりに無防備な姿に一郎は戸惑う。

「お、お前、俺に殺されるとか考えないのか!?」
「貴方を仲間にする為には誠意と敵意のなさを示す必要がある。三顧の礼だけでは足りないみたいだから」
「……っ」

 一郎は前から透の人を駒扱いする姿勢を苦手としていた。運動会で相手を油断させるためにわざと負けたり仲間に手を抜くように指示する奴だ。結果的に優勝できたとはいえ気持ちの良い物じゃない。

(だが、命を賭けた時は頼もしく感じてしまうな……)

 一郎は構えを解いた。透と仲間になる事が最善だと考えたのだ。

「……久瀬理御の能力は完璧じゃない。チームを組めば勝つのは容易」
「本当か?」

 透は頷き、そして、

「その前に、私も覚悟を見せる」

 と、おもむろに透は一郎の唇に触れた。もちろん自身の唇で。

「!?」

 女性と縁のなかった一郎にとって、動揺はあまりにも大きかった。
 だが、透の真っすぐな視線に動揺はすぐ消えた。

(そうか、仲間になる為の“儀式”か)

 一郎は少し残念に思った。目の前の美少女がもし、もし“少しでも好意を持って”行動したのならば。

「……ぷは、ファーストキスにしては随分と淡泊なキスだったかも」
「言ってろ」

「なるほど、念力のような力ね」

 透は一郎の力を見て小さく頷いた。まるで“その力だけで勝てる”ような言い方だった。

「あいつの能力に比べたら本当にちっぽけだ」
「……そうかな?」

 透が首を傾げると一郎はムッとした。まるで自分の逃走劇が無駄だったかのような言い回しだったからだ。

「あんな奴にこれでどう戦えって言うんだ!」
「例えば、煙状態の彼を大きな壁で分断する方法」
「……?」
「貴方の話を聞いている限り、同時にいくつも変身する事は出来ない」
「分断するとどうなるんだ? まさか内臓が飛び出るって言うのか?」
「それは実際にやってみないと分からない。瞬間的に壁を透過するほどの小さな原子の粒に変身されたら無意味だから」
「………」

 一郎は透が自分とは違う“真の天才”だと改めて感じた。話だけで自分よりも状況を把握していたからだ。

「とにかくチームを組み次第、久瀬理御を倒す。違う敵と戦闘中に入られると厄介だから」
「……あ、ああ、分かった」


 瞬間、遠くで怒号が響いた。壁が粉々に砕け散ったような音だ。


「羨ましい能力だな」
「……ほんと」


 出来れば仲間にしたいと思う一郎と透だったが、その音の主が緑で、彼女が話を聞く相手じゃないとはまだ知らない。



 緑と戦う人物

1、純一郎
2、棺
3、レイス

※ここで出会った人物は一郎達と仲間になる事はありません。


 安価下1


 純一郎が絶望したのは緑の能力が超スピードだからではなかった。

(耐えられるのかっ!?)

 緑の身体が全力でぶつかっても傷一つなく、コンクリートを粉々に吹き飛ばした事だった。

「ふふっ、次は外さないからね」

 緑の笑みに純一郎の背筋が凍る。

 だが、緑のおっとりとした性格(即座に殺さない)だった為にチャンスを得る事が出来た。

「ふんっ!!」
「えっ?」

 純一郎が力を発動し、緑を持ちあげる。掛け声の割りにあっさりと持ち上がった純一郎は拍子抜けした。

 対して緑は動揺した。超スピードで呪縛から抜け出そうにも身動き一つ取れなかったからだ。

(そうか、人間の大きさの物を動かすスピードは遅くても、パワーはケタ違いなのか)

 今回のガチャで緑はかなり良い能力の一つを手に入れた。だが、必ずしも能力のレア度が勝敗に直結する訳ではない。

「言いざまだな糞女。ぶっ殺してやる」
「………」
「………」

 純一郎には十分な殺意があった。チャンスもあった。

 しかし、決定打がなかった。

 持ち上げた緑をどうすれば殺せるか。

 閉ざされた空間である廊下において、彼女を殺す方法が見つからない。万が一壁に当たったりすれば、その反動を利用して超スピードで呪縛から解放される可能性もあった。

(どうする……)

 純一郎は非常に短気な人間ではあったが、貧乏な生活が育んだ狡猾さがあった。

 生き残る為の術を見つける力は、参加者の誰よりも優れていた。

「……お前はどうして俺を襲ったんだ?」

 純一郎の問いに緑は即座に応えた。

「私の両親を殺した犯人を殺す為」
「……ああ、そう言えば気が狂ってるとかで無罪になりそうだったな、あいつ」

 全国ニュースにもなった無差別殺人事件。被害者の娘である緑は犯人に強い強い憎しみを抱いている。

(今まで方法がなかったから諦めていたくせに、今更かよ)

 純一郎は緑を軽蔑した。それほどの殺意があった癖に、今まで犯人を放置していたからだ。そして力を得たからと言って殺そうとしている。

(だけどまぁ、利用は出来るか……)

「分かった。それを手伝わせろ」
「……えっ?」

 緑は純一郎という人間がどういう人間か良く知らない。

 今まで一言も話した事無いし、一生関わる事のない人間だと思っていた。

 短気で粗暴な人間。

 その彼が、私の殺意に同調しようとしている。

(……ああ、違うか。“私がそこに堕ちただけ”……か)

 緑はニコリと笑う。氷のように冷たく、マグマのように熱い笑み。

 その二人を見ていたのは――、


1、レイス
2、棺


安価下1※選ばれた方が純一郎チーム、選ばれなかった方が一郎チームへ入ります。

「ねぇ、僕も混ぜてよ」

 ふらと現れた棺を見て、純一郎は即座に力を解いた。緑が即座に行動しようとすると、

「今僕が死ねば君の頭上の流酸が降り注ぐよ」

 と、純一郎の頭上を指差した。

「なっ!?」

 自分と似た能力なのは間違いない。だが自分はそれほどまで有効的に使えるだろうか。焦った純一郎はすぐに後ろに下がったが、硫酸はそれに合わせて移動する。

「僕はね、二人とも良いかい。僕は“信頼を裏切る事に快感を感じる”異常者なんだ」

 突然の告白に緑は首を傾げ、純一郎は警戒を強める。

「それはつまり俺達を裏切るってことじゃねぇか」
「いや、違う。そうじゃない。だって君達は僕を少しも信用しちゃいないじゃないか」

 その場合は“君達にとって都合の良いように動きたくなる”。棺は淡々と語った。

「だから君達と仲間になるんだ。君達が僕を信用しなければしないほど君達にとって良い事が起きるだろう」

 純一郎は迷った。これはとても危険な交渉だと思ったからだ。

 例えるなら、私は一切利益を度外視していると商人が言ったとしよう。

 彼は言葉の通り毎回毎回タダで商品を提供する。すると商人はいつの間にか“感謝”という利益を得る事となる。

 それでは彼の言葉が嘘になってしまう。だから商人は不良品を渡す。“一切利益を度外視しているのだから”。

(つまり問題はメリットとデメリットを足し算する事……か)

 短気な彼にとって、そのようなこまごまとした計算は面倒なだけだ。硫酸など“被ってしまって”棺を殺したい。

 
 ――返事をしたのは緑だった。


「良いよ。ね、純一郎君」
「……本当に良いのか?」

 純一郎の問いに緑は頷く。

「うん、だって私の方が強いし」

 なるほど、一理ある。純一郎はそれ以上追及せず提案を受け入れた。

「面白い事になりそうだね」


 純一郎、緑、棺のチームが出来上がった。

 とてもちぐはぐで、歪な形が――。


 この学校の理科室は非常に気密性の高い教室だ。

 何故なら理御が実験の為に改造に改造を重ね、擬似的な真空状態さえつくれるほどの強度を得たのだから。

「ここで理御を倒す」

 透は淡々とプランを語った。


 まず、レイスと理御の二人きりの状態を作る。

「おおっ、さっそくレイスちゃんの出番ですね!?」
「二人きりにして大丈夫か?」
「大丈夫。あの人は殺人に興味はない」

 生物の機能が停止する様など、小動物で何度も見ているはずだ。透は理御の性格を深く深く読み解いていた。

「レイスが正しければ今頃下弦と理鈴は実験道具にされているはず」
「……クソヤロウがっ!」
「二人は残念だけど、チャンスでもある」
「何言ってんだよ! お前!!」

 一郎の怒りに透は溜息を吐いた。

「私だって辛い気持ちはある。貴方がずっと運動会の事を引きずっているように、私だって全てが全て楽しい訳じゃない」
「なっ……お前……」

 見抜かれていた。一郎は頬が熱くなるのを感じた。

「だけど、感情に任せて動けばより辛い現実が待っている。理御の性格なら次にレイスを実験台にしたいはずだから」
「……異人だからですね」

 レイスの寂しそうな顔に透は頷いた。

「私とレイスの能力を理御は知らない。たぶん彼は何もできずに死ぬと思う」

 二人きりの状態を作る事が出来れば、次に一郎が窓の端を切りぬいて指し込んだ風船を能力で大きく膨らませる。

「この風船は理御が実験の時に良く使う強度の高いやつ。教室の空気を半分くらい吸い込んでも割れない」
「なるほど、擬似的に気圧を下げるって訳か」
「ボンって破裂するですか?」
「ううん、人間の身体はそんなに弱くない。私達が狙うのは一つ。“酸素濃度の低下”」
「さっきからしょんべんくせーのはその所為か?」
「うん、なるべく軽い気体で上部を満たしたいから」
「煮込んでるのは何の液体なんだ?」
「私のおしっこ」
「…………足りるのか?」
「気休め程度には。それに理御の気を逸らす事もできる」
「なるほど……」

 透は勝つ為には何でもする。自分でさえも犠牲にするのだ。

「すげぇなお前」
「……あの時の事、許してくれる?」

 ここにきて初めて人間らしい表情を見せる透。気まずそうな、それでいて恥ずかしそうな顔だ。

「ああ、そうだな。理御に勝ったらな」
「……どっちにしても、勝つ」
「青春でーすね!」

 真空状態に近づけて酸素濃度が極めて低くなった段階でレイスは廊下へと移動する。

 後は酸素の無くなった部屋で活動を停止するまで待つのみだ。

 一郎とレイスは若干不安だったが、それ以上の作戦を思いつかなかったので従う事にした。



 一郎が理御を理科室まで呼び込む間、レイスと透は二人きりになっていた。

「それにしても意外でーす」
「……何が?」
「透が一郎の事を好いていた事でーす」

 透は「ああ、そのこと」と冷淡に切り返した。

「この作戦の肝は“一郎が私の事をどこまで信頼できるか”にかかっているから」
「……だからあんな事を?」
「勝利を得るために必要なの」
「……ふぅん、良いですけどー」

 レイスの目から逃げるように透はそっぽを向いた。

「レイスも……」
「はい?」
「レイスも絶対に生き残ってね」
「当たり前でーす! 三人一緒に勝ち残るですよー!」
「……ええ、そうね」

 透がレイスの顔を見る事はなかった。

 この時、レイスが彼女と目を合わしていれば、結果はまた変わっただろう。

今日はいったんここまで!

たぶん明日には一通りの決着がつくと思うんですが、話の続きとして、

1、ほぼ同じ条件で別の十人を戦わせる。
2、ネクストステージとして勝利者が別の戦いに参加させられる。
3、勝利者を合わせた十人が今回と同じ条件で戦う。※勝利者は能力が二つになる。

選んでください!

安価下2つ目のレスが採用されます!では!!

≪個人メモ2≫

01~10 身体が相手に触れると五秒間操れる
12~20 身体が相手に触れている限り操れる

21、23~30 自由自罪 投げた物を初速のスピードのまま操れる。
31、32、34~40 自由自罪act2 視界内の動いてる物体の速度を落とす事無く操れる(意思のある者は無理)

41~43、45~50 触れている液体を操れる(硬質化なども自由自在)※自分の水分と同じ量まで
51~54、56~60 触れている液体を操れる※量の制限なし

61~65、67~70 皮膚を触れた物と同じ色や材質に変える
71~76、78~80 皮膚を視界内の物と同じ色や材質に変える

81~87、89、90 息を止めている間、自分はあらゆる干渉を受け付けない。
91~98 息を止めている間、視界内の三点まであらゆる干渉を受け付けなくなる。

00触れた相手の能力をコピーする(複数可)
11、22 自分の姿が相手に映らなくなる
33、44 視界内の人間を動かす事が出来る≪息を止めている間≫
55、66 視界内の液体を操れる。※参加者は無理
77 息を止めている間、自分に対して幸運が訪れる
88、99 参加者の視界を共有できる。※自分を含めて同時に三人まで


 純一郎が膝から崩れ落ちた時、レイスは彼から視線を逸らす事しかできなかった。

「……は、はは…、“こうなる事”まであいつは織り込んでいたのかな……」

 能力者が二人死んだ部屋だと言うのに、昼間の理科室と何一つ変わりない。

「いえ、透ちゃんは恐らくその先まで読んでいます」
「え……?」

 レイスはグラウンド外にいる三つの影を見つめながら、

「このゲーム、チームを組むメリットってあると思いますか?」
「いや、あまり……」
「一見すると全くないように思えます。実際チームを組んだのかどうかも曖昧ですし」
「じゃあ、ただルールに織り込んでみただけなのか?」

「透ちゃんはそこにゲームの本質を見たのだと思います」

「と、言うと?」

 純一郎が顔を上げると、レイスは満面の笑みを浮かべていた。

「“チームが勝利すれば死んだ者も生き返る事ができる”。ゲームではありがちな事ですよね」
「……言ってしまえば緊張感がなくなる」
「三人一チームという組みづらいルールにした理由はその恩恵の大きさにあるのだと透ちゃんは言っていました。そもそも、これが第一弾ガチャだとすれば第二、第三のガチャも予定されていると考えるのが妥当でーす」
「…………まさか?」


 ――死んだ参加者も生き返る?


「このゲームの記憶を消される可能性は高いですが、ありえまーす」
「……あいつと、また、会える?」

 純一郎は泣いていた。涙こそ流れていなかったが、レイスは純一郎の肩をぽんと叩いた。

「勝たないと透ちゃんの気持ちが消されちゃいますよ?」
「……それは嫌だな」

 純一郎は立ち上がり、レイスの視線を追った。

「石田、七倉、黒神……か」
「彼らは普段から仲良いのでしょうか?」
「……ははっ、ありえないな」
「では、勝機はあります」
「何故だ?」
「だって、



 私達にはすでに絆がありますです!!」



 最後の戦いが、始まる。

あ、名前間違えましたorz


誤:純一郎
正:一郎

です。


「外なら七倉の能力をフルに生かせるだろ」

 純一郎の提案で選ばれた戦場はグラウンドだった。

 帰宅部、美術部、生徒会と普段はグラウンドを利用しない三人のいる光景。

 それはこのゲームの異常性を象徴しているようだ。


 “普通ではないゲーム”と言う事を。


「僕は別に廊下で血なまぐさい戦闘しても良かったんだけどなぁ」
「うぅ、壁にぶつかるのは嫌ですよぉ……」

 緑はすっかりいつもの調子に戻っていた。この状況で普段通りに振る舞える事自体が異常だとも気付かずに。

「俺が敵を能力で固定し、七倉が超スピードで殺す。正直お前の出番はないんだがな」

 純一郎の言葉に棺は笑いながら、

「あははっ! そう言われたら活躍したくなっちゃうなぁ」

 と、答える。緑は不安そうに純一郎の背中へ隠れ、純一郎は溜息を吐く。

「ま、なんにしても七倉がいる限り負ける事はないだろう。不意を突かれない為にもグラウンドが望ましい」
「三人いれば全方向を見張れますもんね!」
「……見張る必要はないみたいだけどね」

 棺が部室棟を指差すと、一郎がゆっくりと純一郎達に近づいていた。右手には木刀を所持しており、ぎらぎらと殺気に満ちている。

「彼一人かな?」 

 棺の嬉しそうな顔を見た純一郎は、

「油断するな、俺達が組んでいる時点で何が起きても不思議じゃないんだ」

 と呟いた。棺は苦笑する。

「当初の予定通り、俺があいつの身体を固定する!」

 純一郎は両手を前に出し、叫んだ。

「止まれぇえええええ!」
「くっ……」

 一郎の身体がガチリと固定される。

「よし、今だ!!」

 純一郎は勝利の確信をした。後は緑が力の限り一郎にぶつかるだけだと。

 

 ――だが、緑が動く事はなかった。



「七倉!? 何して――」

「……あ、あれ………動けないな?」

 否、緑は“動けなかったのだ”。

「まさか、俺と同じの――」




 ――銃声が轟く。



「……七倉?」

 純一郎は後ろを確認する事が出来なかった。能力を使い続けるには一郎を視界内に留めておく必要があるからだ。

 だが、彼女がどうなったかすぐに分かる事となる。

「ごめ……んね、母さ…」

 どさり。緑が地面に倒れる。

「なるほど、レイスノーベルも参加していたのか」

 棺は一郎のさらに向こうを見ていた。

 三百メートルほど離れた場所でレイスが銃を構えている。暗い所為か棺にはそれが何の銃であるか分からない。

「七倉緑、すまないね。銃撃部に“部活動の一環”として本物の銃と弾丸を一つずつ購入して良いと許可したのは僕だ」

 まったく悪びれた様子を見せない棺に対し、死体は不満を漏らさない。

「……さて、石田純一郎。ここで二つほど疑問が湧いてくるのだが」
「あいつらが仲間ならもう一人はどこかってことか?」
「……それと“なぜ七倉緑が最も強い能力を有していると分かったか”と言う事だ」

 普通に考えれば僕を狙うはずだ。棺は当たり前かのように言った。
 純一郎は即答する。

「“だから”だろ。お前みたいないかにも強そうな奴と、俺みたいな不良が七倉と組む訳がない。もし組むとしたら……」
「……なるほど、石田純一郎は短気な割りにクールだね」
「うるせぇ。それよりも七倉がいなくなった時点でチームは解散だ」
「……と言うと?」


「お前は好きなように逃げろって言ってんだ」


 純一郎の言葉に棺はようやく人間らしい顔を見せた。

「……それは仲間意識から来る言葉かい?」
「…………さてな」

 


 不思議なもんだな。純一郎は心の中で苦笑いを浮かべる。

(黒神棺みたいなやつでも仲間になれば勝たせてやりたくなる)

 純一郎の短い人生において、おおよそ仲間と呼べる存在がいた事はない。それどころか友と呼べる関係さえ築いた事がない。

「……君はどうするつもりだ?」

 棺の言葉に純一郎は、

「俺は美少女好きだからよぉ。七倉を殺した一郎達が許せねぇんだ」

 と答えた。あからさまな嘘に棺は苦笑する。

「やれやれ、だったらレイスノーベルを殺せないじゃないか」
「……日本万歳だよ」
「……割りと面白くないね、君」

 棺は包丁を構えると、固定された一郎の下へと走り出した。

「おい!? レイスの弾が残ってたらどうするんだよ!?」

 棺の能力では弾丸を止める事はできない。もちろん純一郎の能力でも弾丸を視認する前に死ぬだろう。

「それはそれで面白いじゃないか! 大体僕が君の言う事を聞く訳がないだろう!」
「……くそっ!!」

 純一郎は動く事が出来なかった。一郎が自分自身に能力をかけて呪縛から逃げ出そうとしていたからだ。それを抑え込むには集中する必要があった。

(銃を使ってきたという事はレイスの能力は良い物じゃないって事だ!)

 純一郎はそう自分に言い聞かせた。だが不安は一向に拭いされない。

(縛られている状態で自分以外に能力を使えないだけまだましか……)



「レイスーーーーっ!!」



 一郎の叫びにレイスが答える。

「任せてくださーい!!」


 パァンッ!!


 再び銃声が鳴り響く。

 実弾だと驚いた純一郎は能力を解いてしまったが、すぐにただの空砲だと気づく。

「黒神!! 能力が解け――」

 純一郎の言葉すらも切り裂くように、一郎の木刀が黒神を斬りつけた。

「ぐぅ!? なかなかっ!!」

 肋骨が内臓に刺さる感触に棺の表情が苦悶に満ちる。

「生徒会長、悪いが俺は負け――」
「純一郎!! “刺せ”!!」

 棺の叫びに純一郎は反応する。

(誰にも気づかれないように包丁を投げていたのか)

 純一郎は棺に対して尊敬の念さえ抱いていた。

 そして、彼の意を汲む為にクルクルと回転する包丁を能力で落とす。

「……くっ!!」

 一郎の首筋から噴水のように吹き出す血。

(勝った!?)

 純一郎が勝利のガッツポーズを取ろうとした瞬間、


「油断大敵雨あられでーす」
「がっ……こ、ぽぉ……」


 ドクドクと脈動する“肉塊”が純一郎の目に留まる。

「どう……や…」

 それが自分の心臓だと気付いた時、純一郎は死よりも理由を欲した。――負けた理由を。

「瞬間移動で空を飛んだのでーす」
「く……そ…」

 純一郎は悔しかった。
 死ぬ事がではない。緑の、そして棺の想いを継げなかった事が。

(まだ死にたく――な、



 そして、ゲームは終了した。


試合結果

MVP 黒神棺

勝利チーム
1石田純一郎
4七倉緑
8黒神棺


死亡
2久瀬理御
3月島下弦
5朽賀 一郎(Aチーム)
6樋川理鈴
7有柄紅葉
9鹿島透(Aチーム)
10レイス・ノーベル(Aチーム)

≪報告書≫

1、緑VSレイス
決着つかず。レイスが瞬間移動する事により逃亡。

2、○棺VS紅葉●死亡
棺は得た能力により、誰かが来るまで包丁を生徒会室入口にて浮遊させていた。
自身の能力の限界を測る為でもあったが、たまたま紅葉が現れた為、落下させる。
落下スピードで殺す事は出来なかったものの、動揺した紅葉を刺し殺す。

3、一郎VS理御
決着つかず。理御の興味が体育館へ移動したため一郎は逃げ切れる。

4、●?下弦VS●?理鈴VS○?理御
再び煙へと変化した理御が二人を気絶させる。
捕まった二人の死は確認できていないが、ゲームへの参加は不可能だと思われる。

5、●理鈴VS○理御
理鈴を実験し骨と髪だけにする。

6、○棺VS●下弦
身動きの取れなくなった下弦を殺す。

7、○レイスVS●理御
理化室を一郎が真空状態にし、透が理御を取りこみレイスが透を空間移動する事で鉄の檻に理御を閉じ込める事に成功。
数分後に人間の身体へと戻ろうとした理御が高密度の空間に身体を復元できず死亡。
結果的に一郎とレイスが生き残る事となる。

8、●緑VS○レイス
一郎の能力により固定された緑の額をレイスが実弾で撃ち抜く。

9、○純一郎VS●一郎
棺が投げた包丁を純一郎が能力で操り、一郎の首筋を切り裂く。

10、○レイスVS●純一郎
瞬間移動の連続により空中散歩したレイスは純一郎の背後に移動し、心臓を抜く。

11、○棺VS●レイス
最後まで相手に能力を見せなかった棺が、近づいてきたレイスの脳天に包丁を落とす。かなりの高度から落としたためレイスは即死。ゲームは黒神棺チームの勝利で終わる。


「……なるほど、全員生き返るけど記憶は僕以外にね」

 朝、ベッドから目覚めた黒神棺は試合結果とこれからの事を“理解していた”。

・勝った者は能力を保持したまま、次のゲームへ行くかもう一度バトルロワイヤルするか選べる。
・負けた者はゲームの記憶を失い、日常生活に戻る。

「……僕は狂っているが、自分の学校の生徒と殺し合うくらいなら“他人を殺したいと思う”」

 棺は次のゲームへ行く事を選んだ。
 能力は軽い物を浮かせられるだけの陳腐なものだが、それが逆に自身の強さを証明できるのだと思った。

(……いや、何を馬鹿な…)

 ふと浮かんだもう一つの気持ち。




 純一郎と緑の強さを証明するために戦い続けたい。




 それが本物かどうか、今はまだ―――。




 続く。。。

なんとか九時までに間に合いましたね。

では、予定通り九時から次のバトルロワイヤルの募集を行います。

本日の21:00:00.0以降でないと無効になりますのでお間違いなく!!

今から少し離れるので、安価は置いて行きます。

安価下1~10※21時以降

名前:
性別:
部活:
性格:
その他(あれば):



コンマ判定します。

01~10 身体が相手に触れると五秒間操れる
12~20 身体が相手に触れている限り操れる

21、23~30 自由自罪 投げた物を初速のスピードのまま操れる。
31、32、34~40 自由自罪act2 視界内の動いてる物体の速度を落とす事無く操れる(意思のある者は無理)

41~43、45~50 触れている液体を操れる(硬質化なども自由自在)※自分の水分と同じ量まで
51~54、56~60 触れている液体を操れる※量の制限なし

61~65、67~70 皮膚を触れた物と同じ色や材質に変える
71~76、78~80 皮膚を視界内の物と同じ色や材質に変える

81~87、89、90 息を止めている間、自分はあらゆる干渉を受け付けない。
91~98 息を止めている間、視界内の三点まであらゆる干渉を受け付けなくなる。

00触れた相手の能力をコピーする(複数可)
11、22 自分の姿が相手に映らなくなる
33、44 視界内の人間を動かす事が出来る≪息を止めている間≫
55、66 視界内の液体を操れる。※参加者は無理
77 息を止めている間、自分に対して幸運が訪れる
88、99 参加者の視界を共有できる。※自分を含めて同時に三人まで


※コンマで得た能力以外で明らかに特殊な力を使う事はできません。(魔法や超能力など)
足が速いとかタイピングが速いなどは大丈夫です。(物語の性質上噛ませ犬になる可能性が高いですが)


では!21時まで感想とか頂けると嬉しいかと!!

生き返った今回の参加者を次のゲームに参加させることはできますか?


名前:赤須(あかず) キヌ

性別:女

部活:未所属(学外の道場に通っている)

性格: ぶっきらぼうでやや口が悪い。
もともとは活発で明るい性格だったが、ある事件に巻き込まれ、周囲から押し付けがましい同情や哀れみにさらされたため、本来の性格はすっかりなりをひそめてしまった。

その他:幼い頃、誘拐事件に巻き込まれた経緯から自衛のために格闘技を修めている。
過去の経験から、個人の意思を無視して押し付けられる理不尽が大嫌い。ろくな説明もせずに悪趣味なバトルへの参加を促す運営も当然嫌い。もし生身の主催者に出会えたら、思いっきり蹴りとばしてやろうと決めている。

今回参加者(コンマ間違ってたら教えてください!)

no.1
名前:須木奈佐木漱 すきなさきすすぎ
性別:女
能力:自由自罪act2 視界内の動いてる物体の速度を落とす事無く操れる(意思のある者は無理)

no.2
名前:赤須(あかず) キヌ
性別:女
能力:触れている液体を操れる(硬質化なども自由自在)※自分の水分と同じ量まで

no.3
名前:宮崎 詩乃 みやざきうたの
性別:女
能力:触れている液体を操れる※量の制限なし

no.4
名前 桜庭 友紀(さくらば とものり)
性別 男
能力:触れている液体を操れる※量の制限なし

no.5
名前:鈴原 冬乃
性別:女
能力:皮膚を触れた物と同じ色や材質に変える

no.6
名前:星宮 公子(ほしみや きみこ)
性別:女
能力:身体が相手に触れると五秒間操れる

no.7
名前 鹿金 喜一郎(しかがね きいちろう)
性別 男
能力:身体が相手に触れると五秒間操れる

no.8
名前:日向暁(ひゅうがあかつき)
性別:男
能力:自分の姿が相手に映らなくなる

no.9
名前 黒神密 くろかみひそか
性別 女
能力:触れている液体を操れる(硬質化なども自由自在)※自分の水分と同じ量まで

no.10
名前:国立宮 永姫 くにたちのみや ながひめ
性別:女
能力:触れた相手の能力をコピーする(複数可)

三十分くらいかかるかなぁと思って十人目のコンマみたら目が点になりました。

以前異世界物でキャラ募集安価してた時もそうですが、皆さまのキャラを書いてると本当に愛おしくなります。

ご協力ありがとうございました。性格やら背景やらまとめるので更新は明日以降になります。

また、今回間に合わなかった方ももう一度募集安価ありますのでそのままキャラは温めておいてください。

※ルールやら世界設定は前回と同じです!

>>119 返答遅れました! 違う学校なので参加はできません! ご質問ありがとうございました!

安価ースレマンとしてはM気質な自分を追い込む構成をするので今から少しだけ更新します。


 須木奈佐木漱(すきなさぎすすぎ)にとってここは戦場だったのだろうか。

 銃剣。といってもあくまでレプリカであるが、漱は血まみれの腕でそれを抱いていた。

「勝たなねば意味を成さない。勝たねば意味を成さない」

 須木奈佐木家はその名を歴史に刻んではいない。何故なら“彼らは負けたから”だ。

 それが第二次世界大戦を意味するのか、日本の欧米化を意味するのかは須木奈佐木家の者にしか分からない。


 だが、確かに言える事は彼らが“名を残さぬ事”で日本は再び日が昇る国になったと言う事だ。


 子孫の漱は彼らの血を脈々と継いでいる。一度たりとも負ける訳にはいかなかった。

「死よ。私は勇敢なれど無謀ではない」

 漱は立ち上がった。破れた制服から肉が剥き出している。

 それでも漱の表情は鉄火面であった。


 ただ一つ、彼女自身も気付かぬ事があった。


 須木奈佐木家は軍略の家系。銃剣を持つ役割にはない事を――。



第二章「血と、証明と」



 


 赤須キヌは目が覚めた瞬間跳び跳ねた。

 即座に周囲を見回し、そこが学校の教室である事を確認すると、

「このクソ野郎がぁああああ!」

 と、机の上に座っていたペンギンのぬいぐるみを全力で回し蹴りした。

 ぬいぐるみは黒板まで一直線に飛んでいき「ふぎゃ」と声を上げる。

「……ちっ、ぬいぐるみか」

 キヌは短い髪をぼりぼりと掻く。かつて誘拐された際に髪を掴まれた経験から、腰まで伸びた髪をバッサリと切ってしまった。

 十数年続けてきた格闘技もあいまって彼女に近づく男子はいない。

『 いた い   な 』

 テープレコーダーの壊れたような音、それでいて人間味のある口調はキヌを混乱させる。

「もう良いって、出てこいよ誘拐犯」

 全方位に向かって殺気を放つも、ぬいぐるみ以外に反応はない。

『 君 は 選ばれた 』

「はぁ!?」

『こ のげー むに』 

 ペンギンのぬいぐるみは口を大きく開け、『ごっ……がっ…ごっ』と次々に綿を吐き出していく。

 その光景は男勝りのキヌでさえ恐怖を抱くものだった。

 そして、



 ――ころん。



「……ガチャガチャ?」

 半分赤色、半分透明の球体。真ん中には線が入っており、それが開くものであるとキヌは理解する。

「くだらねぇ演出だな、おい」

 キヌは迷う事無く開いた。

「……………ゲームだと?」

 カプセルの中身は空っぽだったが、キヌは知識と能力を得た。

 このゲームのルール、そして触れている液体を操る能力を。


 宮崎詩乃の耳に毛虫のぬいぐるみの声が届く事はなかった。

 彼女は父親を殺してしまったその日から自分と狂った母以外の世界を認識する事はないからだ。

 無数の生徒と席を並べている時も、満員電車で他人に圧迫されている時も、コンビニで支払いをする時も。

 詩乃の目の前に人はいない。完成された世界で彼女は生きる。


『ま、勝手に理解してしまうんだけどね』


 毛虫のぬいぐるみは流暢な日本語を喋り終えると、メリメリとその身体を破って行った。

『……ごっ…ごぇっ……ごぼっ…』

 中から綿が飛び出し、次いでカプセルが転がり落ちる。

 机から落ちた衝撃でカプセルが割れると、

「……嘘、いや……」

 強制的に知識と能力が詩乃に入り込む。



 このゲームに拒否権はない。参加後にゲームを降りる事はできるが、最初から参加しないという選択肢は存在しない。



 詩乃の完成された世界は壊れてしまった。

 その外にある世界は果たして何色なのか――。

 

今日はここまでにします! では!!


 桜庭友紀には二つ秘密がある。


 一つは校舎裏の壁を毎日殴っている事。五割程度の力で始めたそれは半年経ってようやく六割まで上昇した。

 彼は地元のヤンキーグループに所属しているものの喧嘩などしたことがなく、相手を殴った時に怪我をさせる心配よりも自分の拳を心配していた。


 もう一つは陸上部に誘われている事である。

 これといって集中的に運動をした事無い友紀だが、体育の活躍を見た陸上部の部員から熱烈な勧誘を受けていた。

 だが、彼がその申し出を受ける事はない。

 
 何故なら、彼は根っからの弱者であり、臆病ものだからだ。


『 ぐふ 。 君みたいな人間が参加す るなんておもし ろいね 』

「……なんだよこれ、訳わかんねぇよ…」

 薄暗い教室で友紀は泣いた。

 彼を慰める友人はここにはいない――。


『 ねぇ それ うざいよ 』

 鈴原冬乃の口から発せられるチッチッチという小さな音。

 目の見えない彼女にとって知らない場所で目覚めると言う事が何を意味するか健常者には分からないだろう。

(教室……? なんで?)

 音の反響から学校の教室に似た空間である事は察知できた。椅子や机の材質と数、壁までの距離から推測したのだ。

「何故私は私は教室にいるのでしょう?」

 冬乃の問いに対して車のぬいぐるみはこのゲームの主旨を答えた。

「……なるほど、そして私の能力は皮膚を触れた物と同じ色や材質に変えるのですね」
『 ぎゃは 、 目の 見えないおま えには 使えな い 能力だった か!? 』
「どうでしょう? まだ使ってないので分かりません」

 中身の綿を吐き出した車のぬいぐるみはつまらなそうに、

『あ   そ』


 と呟き停止した。


「……十人での殺し合い…」

 冬乃が考える事は一つ。




(何人の友人を救えるでしょうか……)




 


 教室を真っ先に飛び出したのは星宮公子だった。

 彼女は八方美人としてクラスメイトからでさえしばしば卑下される。臆病で警戒心が強く、その割に自尊心が高い為ジッとしていられない。

 殺し合いのゲームと知って彼女はすぐさま、

「と、友達見つけなきゃ!」

 と走り去ってしまったのだ。

 彼女は殺し合いを否定的に捉えた訳じゃない。ただ、“こんな事一人で決められない”と拠り所を求めたのだ。


 そして、彼女は紅い光に満ちた教室を見つける。


 出てきたのは――、

「あら、公子さん。貴方も参加してたのですね」

「黒神さん!!」



 生徒会副会長の黒神密だった。




 鹿金喜一郎は何度か夜の教室を体験している。

 殆どはミステリー小説を書く為の取材だったが、一度だけ、別の目的でそこに訪れた。


≪死体と授業を受けるならどこか≫


 彼にとってそれは妄想ではない。現実として死体と肩を並べて授業、特に歴史の授業を受けたいのだ。

 死体は男性でも女性でもどちらでもいい。ただ出来るなら若い方が良かった。

 何故なら彼にとって生と死はスイッチのオンオフ程度の違いであり、老衰はそのスイッチが限りなく緩む現象だったからだ。


「つまり、殺した死体を好きにして良いって事だね?」

『ああ、 そんな 暇が あれば ね 』


 あるに決まってるだろ。喜一郎は心の中で笑った。

 彼は誰よりも学校を熟知している。

 ミステリー小説の中でも彼の好みは完全犯罪物だ。

 空間を理解し、支配する。

 その為には細かな知識が必要で、実際に見たり触ったり“舐めたり、咀嚼したり”する必要がある。

(死体と性行為をする事も可能なのか……)

 ならば、絞殺のような人体が崩れるやり方は避けなければならない。

 出来るだけ“死体が死に気付かないような”方法。


 喜一郎は今、短い人生の中で最も興奮していた。



 日向暁の空手論は相手を破壊する事にある。

 極論を述べるなら型やワザなど必要ない。相手の機能を破壊できるなら鈍器を使っても構わないと思っていた。

 その理由は彼の幼少期にある。


 彼の父親は教師で母親は専業主婦であった。

 彼は幼い頃から母親の浮気現場を眺めて育つ。一人、二人、多い時には十人以上を相手にする時もあった。


 それでも喜一郎にとって彼女は母親であり、護られ、護るべき存在であった。


 だが、彼は一度として母親に護られた事はない。

 それどころか愛情を注いでもらった事さえない。

 母親は酔うと、

『私の両親は屑で貧乏だった。あの人の事は気持ち悪いけど教師で安定している。お前なんて本当は産みたくなかった』

 と喜一郎を責めた。彼はそれを真摯に受け止めた。


 自身に存在価値はないと真っ向から受け止めたのだ。


「……要は全員殺せば勝ちなんだな?」

『チームを組めば最低七人でクリアも可能だけどね』

 熊のぬいぐるみ、といっても綿が弾け飛んで形を成していないが、それは楽しそうに語った。

「いや、良い。俺は誰かに組んでもらう価値はない」


 喜一郎はこのゲームを大きくも小さくも捉えていない。

 ただ、姿が見えなくなる能力は自分にとても合っていると思った。

「……さて、やるか」

 熊のぬいぐるみは彼にも聞こえない声で、

『 今回の本命さん、がんばってね 』

 と呟き、機能を停止した。


 黒神密にとって、世界は紙芝居のようなものだった。

 誰もが結果しか求めず、結果に過程を付ける。事実など必要としない。

 腹違いの兄は「結果なんて関係ない。過程が楽しければそれでいい」と言っていたが、密は全力で否定する。

「あんたが私の兄でいられるのも結果が良かったからじゃない」

 黒神家に仕えるメイドとの子。彼らの父の気まぐれで生まれた兄は当初処分の対象だった。

 密は彼が生かされた理由を知っている。


 幼少時から見た目が良く、ハッキリと喋る事が出来たから。

 そして何より、彼が生まれてから五年経っても母が男の子を産まなかったから。


「私が男だったらあんたは死んでいた。それでも過程がどうこう言えるのかしら」


 蜜は教室を出た瞬間に星宮公子を見つけて内心驚いた。

(彼女のような何の価値もない女性も参加しているなんて……)

 正直、このゲームは選ばれし者のみの高尚な遊びだと思っていた。

 具体的に言うなら漱や喜一郎のような優れた人間が選ばれるのだと。

「あら、公子さん。あなたも参加していたのね」
「黒神さん!」

 締まりのない表情。相手が命を狙ってもおかしくない状況でなお他人に頼ろうとする腐った性根。

(……私のもっとも嫌いなタイプ)

 だが、密は結果を求める性質を持っている。

 例え嫌いなタイプでも使える“物”は使う。

「公子さんがいて安心しましたわ」
「わ、私も!」

 密は知っている。公子が自分や漱のような人間を苦手としている事を。

 それでもなお媚びを売る彼女を密は殺してしまいたかった。

(我慢、我慢よ……)

 このゲームの三人でチームを作るルールは簡単そうに見えて中々成立しない。

 バラバラな位置でスタートする為、出会うとしたら一対一、その状態で三人目を探すのはリスクが伴うからだ。

 その点、公子のような臆病で他人依存な人間は使いやすい道具だった。

「もしよろしければ、私とチームを組みません?」
「い、いいの!?」

 笑顔を見せる公子。自身に価値を見いだしたのだろう。

(確かに価値はありますわね。……“道具としての”)

 密は心の中で笑っていた。

 いつか、公子が無様に死ぬ姿を見るだろう。

 その時は彼女に見えるように笑ってやろう。

 黒神家の人間に負けは許されない――。


 国立宮永姫。彼女を一言で表すなら「完璧人間」だ。

 正確に言うなら「完成された人間」。出自、容姿、思考、どこをとっても一級品の彼女を下に見る事の出来る人間はいない。

「なるほど、それでは私は他人の能力を借りて戦えば良いのですね?」

 ただ、彼女を知る者は皆、同じ事を想う。

「と言う事は、私のお願いを断れない皆様は最初から負け戦をするつもりなのでしょうか!?」


 完成されすぎて馬鹿、と。


「では、さっそくまいりましょう」

 スキップしながら教室を去る永姫。

 確かに彼女は優秀な馬鹿でああったが、優秀には変わりない。

 しぶとく生き残る事は観戦する者達の誰の目にも明らかだった。

マップ


●第一校舎
一階(一年生)
二階(二年生)
三階(三年生)
屋上

○第二校舎
一階(特進一年生)
二階(特進二年生)
三階(特進三年生)
屋上

◎第三校舎
一階技術・家庭科・理科室・職員室
二階図書室・宿直室・多目的ホール
三階音楽室・空き教室
屋上

△部室棟

×体育館

★食堂

グラウンド

テニスコート

□□□□□□ぐ
□●●●●□ら
□□□□□□う
□○○○○□ん
□□□□□□ど
□◎◎◎◎□□
□□□□□□て
□△□×★□に
□□□□□□す


※本当はもっとおしゃれな形にしたいのですが、分かりやすさ重視でいきます。

ゲーム開始時配置


●第一校舎
一階(一年生)冬乃
二階(二年生)公子&黒神
三階(三年生)詩乃
屋上

○第二校舎
一階(特進一年生)キヌ
二階(特進二年生)
三階(特進三年生)漱
屋上

◎第三校舎
一階技術・家庭科・理科室・職員室 暁
二階図書室・宿直室・多目的ホール 喜一郎
三階音楽室・空き教室
屋上

△部室棟 永姫

×体育館

★食堂 友紀

グラウンド

テニスコート

□□□□□□ぐ
□●●●●□ら
□□□□□□う
□○○○○□ん
□□□□□□ど
□◎◎◎◎□□
□□□□□□て
□△□×★□に
□□□□□□す


 日向暁はガチャの恩恵の強さに驚いた。

(デメリットはないのか……?)

 息を止める必要もなく、目を閉じる必要もない。

 ただ自分が消えたいと思った瞬間から、手を握るような感覚で消える事ができるのだ。

 もちろん服も一緒に消える。

「これで負ける要素はあるのか?」

 暁の欠点は己に価値を見いだせない事によって、実力や状況を正当評価出来ない事にあった。

 空手の試合でもしばしば相手の実力を大きく見てしまって負ける事もある。

 今回の場合は、自身の能力を過信してしまった。

 それが事態を好転させるかどうかは分からないが、一つだけ確かに言える事は、“いつもより慎重さに欠ける”ということだ。

「とりあえず道着に着替えるか」

 暁は姿を消したまま部室棟へ向かう。

 その先に待っていたのは国立宮永姫。


 レアガチャ同士の戦いが始まる。


 

(あれは……国立宮?)

 第三校舎から部室棟へは中庭を一直線に向かう事が出来る。

 姿の消えている暁は体育館裏の永姫を見て、

(…………逃げるか?)

 と、考えた。

 国立宮家と言えば地元で知らぬ者のいない大地主だ。噂では政治にも絡んでいると言われている。

 暁の性格上、彼女を軽く見る事は出来ない。

 例え本人の資質とガチャの能力だけで戦うとは言え、彼女は由緒ある家系、簡単に倒せる相手とは思えない。

(……しかし、だからこそ目覚めていない今なのでは?)

 永姫は確かに勉学においてその才能をいかんなく発揮していたが、格闘技に長けている話は聞いた事がない。

 名の知れた彼女に喧嘩を売る者もおらず、暴力とも無縁の生き方をしてきただろう。

(…………よし、やろう)

 暁は決意した。

 永姫の事を大きく捉え、自分の得た能力を過信した。

 差し引きゼロの計算だった。


「とりあえず校舎ですわね」

 永姫は軽い足取りで校舎へと向かう。まるで休み時間の教室移動のように。

(出来ればクラスメイトと争うような事はしたくありませんけど……)

 彼女は他人を支配する存在として育てられていたが、優しく育ち過ぎた所はある。

 それは優秀すぎた結果であり、家族が咎めることはなかった。

 優しさは油断に繋がり、油断は失敗を産む。


「他の方はどんなのうり゛ょっ!?」


 後頭部から全身に流れる強烈な痛み。

 散弾銃で吹き飛ばされたような、そこに頭は残っていないんじゃないかと思ってしまうような衝撃。

 暁による全力の蹴りが原因だと永姫が気付く事はない。

(……え…と………な…にが………おき…?)

 意識が朦朧とする。世界がぐにゃぐにゃと歪み、痛みと吐き気に襲われる。

「……すごいな、気絶しないのか…」

 誰かの声が聞こえる。男の声だ。

(……このま……だめ…………消えな……きゃ…)

 永姫は何が起きたか分からなかったが、“どんな能力にやられたか”は分かった。

 相手に触れるだけでコピーする能力。

 それは“相手から触れられた”場合でも発動する。

「……なっ!? 君も消える能力を!?」

 上手く消える事が出来たのだろう混乱する男性の声をしり目に永姫はその場から逃げ出した。

(これが……痛み)

 永姫は負けて逃げ出した屈辱よりも自身の受けた痛みに興味を抱いていた。

(勝つ為には……これを与えなければならない…)

 背筋がゾクゾクと震える。


 恐怖によるものか、それとも――。


≪報告書≫

1、永姫VS暁 引き分け(永姫逃亡)

 優勝候補暁による奇襲により、永姫に大ダメージを与える。
 しかし、永姫が彼の能力をコピーし逃走、暁が自分の能力を分け与える結果となった。


 冬乃は自身の能力について考えていた。

 触れた物の色や材質をコピーする能力。例えば鉄をコピーすれば鉄の強度を得る。

 しかし、形状をコピーすることは出来ない。包丁を触ったからと言って相手を斬りつける右腕になったりはしない。

(目の見えない私は何をコピーすれば良いのかしら……)

 物に手を触れれば、自分が何をコピーするのか頭で理解できる。

 ステンレス、木、プラスチック、ゴム――、

(ゴム?)

 ふと、頭に構造が浮かぶ。弓矢のようなシステム――ゴムパチンコ、いわゆるスリングショットだ。

 チッチッチ、と舌を鳴らして音を飛ばす。

 輪ゴムの材質は音の返りが独特ですぐに分かる。

「……あった」

 輪ゴムは細くてもかなりの強度を誇る。それが指の太さになれば相当だろう。

「括りづらい……」

 力の強い右腕で引っ張る事を考えると、左手の指を結ばなければならない。右手と口でしっかりと結ぶ。

「できた」

 引っ張るとぐにゃりと気持ち悪い感触が両手に広がる。

 左腕を地面と平行にし、弓を引くように指を引っ張って行く。

(弾は……シャーペンとかが良いかな)

 幸い普通科の教室は勉強道具を置きっぱなしで帰る生徒が多い。武器となる物は沢山あった。

「……何だか漫画のキャラクターみたい」

 長方形の学校鞄の中に文房具を沢山入れる。ハサミやコンパスは優秀な武器になるだろうが、焦って怪我する危険性があるので除外した。

「よし、行こう」

 準備が整い、扉を開ける。

 心優しいクラスメイトを一人でも多く助けるため。

 心なきクラスメイトから護る為に。


「……誰?」

 冬乃は廊下へと出た瞬間、二人の気配を感じた。

 背の低い女子と、スタイルの良い女子だ。

「冬乃さん!? 休学中なんじゃ!?」

 公子の声が廊下に響く。黒神は内心舌打ちしながら、

「休学と言ってもクラスメイトには変わりないわ。無作為に選ばれたのではないかしら?」

 と説明する。公子は「あ、そっか!」と笑った。

「二人ともこのゲームに参加しているのですか?」
「ええ、そうよ。一人で怖かった所に公子さんが現れたの。心強い味方ね」

 密の言葉に公子が照れた。冬乃は密の言葉が嘘だとすぐに見抜く。

(声の通りがあまりにも良すぎる。感謝している雰囲気じゃない)

 冬乃はすぐに二人の関係性を予測する。

(おそらく黒神さんが星宮さんを利用している)

 目が見えないからこそ見えてくる真理。

(だけど二人を引き離す事が最良か分からない)

 下手をすれば密が公子を見捨てる場合もある。だが、それはあくまで予想であり、ゲームが終わるまで利用し続けるかもしれない。

 それは勝利を意味し、下手に彼女だけで動いて殺されるよりも良い結果を産むかもしれない。

「あ、そうだ! 冬乃さんを仲間にするのはどうかな!?」

 公子の言葉に密は無表情で「公子さん?」と呟いた。

 その声の震えから冬乃は密に歓迎されていない事を察する。

(目の見えない私なんて足手まといだものね……)

 冬乃は休学して半年以上の間、トレーニングを続けて様々な技術を身に付けた。舌打ちによる空間把握もその一つだ。

 だがそれらは健常者に理解されるものではない。彼女達にとって障害者は“劣る存在”なのだ。

「私は他にやる事があるから……」

 結局、冬乃は二人をそのままにしておく事にした。少なくとも自分よりは公子に良い結果をもたらすだろうと思ったからだ。

「分かりましたわ。公子さん、無茶を言ってはいけませんわ」
「……でも」
「それではこうしましょう。冬乃さん、“私達は最後の最後まで干渉し合わない事”」

 密の提案は願ってもない事だった。どちらも大切なクラスメイトだ。争わないに越した事はない。

「それでお願いします」

 冬乃と密達は争う事をしなかった。

 密は冬乃の能力を知りたかったが、公子に疑われるような事は避ける事にした。


 小さな、ほんの小さなしこりだけが二人の間に残った。

「私の兵士となって戦え」

 中央階段で対峙していた漱とキヌ。

 漱の申し出をキヌは「絶対に嫌だ」と拒否した。

 キヌは誰かに押しつけられるような生き方、特に理不尽な重圧を嫌悪していた。

 軍人気質である漱の事は前から嫌いで、出来るだけ関わらずに生きてきた。

「ふん、貴様のような単細胞にこのゲームを生き残る術があると思わないが?」
「あぁ!? 決めつけんじゃねぇよ屑が! 私は最初からお前らを相手にしてねぇよ!」

 キヌは運営の理不尽さに苛立っていた。強制参加の殺し合いゲームなんて許されたものではない。

「なおさら指導者は必要ではないのか?」
「見つけてぶっ飛ばすだけだ!」
「どうやって見つけるつもりだ? 探偵でも雇うのか?」
「それは……その、い、勢いだよ!!」
「………」

 敗北者社会の弊害だ。漱は苛立ちを募らせる。
 海外の犬となった日本が無知な者にも権利を与え続けた結果、露骨な勘違いが目立ってきた。

(貴様の目的を果たす為に必要な物も分からないのか!!)

 昔なら赤須キヌは優秀な駒であっただろう。消費物としてこれほど効率の良い素体はない。

 だが、彼女は自身を駒だと認める事ができない。それどころか、自分がプレイヤーであるかのように振る舞う。

「では、戦って決めないか?」
「何をだよ」
「赤須キヌ。貴様が勝てば我が命くれてやろう。だが、私が勝てば貴様は私の従順な犬となれ」

 冷静に考えればキヌが勝てば漱の命は必然的になくなる為、決めごとに何のメリットもない。
 だが、駒にはそれが理解できない。

「よーし分かった! やってやるよ!!」

 キヌは好戦的に両手をパンパンと叩いた。

「……戦術も戦略も知らぬ愚かな駒に世界を教えてやろう」

 先に動いたのは漱だった。


 漱はキヌに背を見せると階段を駆け上がった。

「待てこのやろう!!」

 あれだけ煽られて放っておく訳にはいかないとキヌも追いかける。

 漱の背が教室に消えた。キヌもすぐさま扉を跨ぐ。


 ――刹那、眼前に机が迫る。


(あの細腕で端から端まで投げるのか!?)

 キヌは机を両腕で受け止めた。が、おかしい。

「なんだ!?」

 勢いが止まらない。まるで車に押されているような感覚。

 漱の得た能力自由自罪act2は物体の速度を一定に保つ。

 速度を保つと言う事はエネルギーを失わないと言う事だ。

 このゲームにおける能力の優位性は“現実よりも強い力”であり、人間の力が能力に勝ることはない。

「くそがっ!!」

 キヌは膝の力を抜き潜り込むように受け流した。机はそのまま壁にぶち当たり、コンクリートと鉄を破壊してグラウンドへと落下する。

「これが能力か……」

 キヌは自身の力を過信していた事を悟った。暁とは真逆の位置にいた彼女にとって、大いなる気づきだった。

 しかし、彼女の能力は液体を操る力。近くに彼女の知る液体は存在しない。

「どうだ、赤須キヌ。貴様に勝利の道筋が見えるか?」
「……うるせぇ、黙ってろ」

 キヌは先ほどの漱のように逃げ出す事を考えていた。水場に行けばまだ勝機はあるのではないかと。

「私を視界の外に置けば、貴様は成すべなく負けるぞ?」

 漱の言葉はキヌの心に強く響いた。根拠のない言葉だったが妙な説得力がある。

(くそ……、どうすれば……)

 思考を巡らせれば巡らせるほど、キヌは自分の知略に限界があるのだと気づく。

 決して大きな差があった訳ではない。むしろ多くの状況でキヌに分があっただろう。

「……くそ、私の負けだ」

 だが、キヌは負けを認めた。自身に足りない物、それを漱が持っていると認めた。

「よし、では約束通り私の――」


「……がっ!?」


 不意に現れた包丁が、キヌの身体に突き刺さった。


「やれなかった!? くそっ!?」

 暁の持つ包丁の切っ先が首筋に触れた瞬間、キヌは身体を捩じらせた。

 それは無意識でも反応できるように研ぎ続けた彼女だからこそできる反射であり、同時に能力で“血液を操作していた”から出来た芸当でもあった。

 キヌの能力が別の物だったら首筋から血を噴射して死んでいただろう。

「キヌ! 扉を閉めろ!!」
「くっ!!」

 包丁が刺さった状態でキヌは振りかえり扉を閉めた。漱は包丁の向きと角度からキヌを刺した人物が廊下側にいると判断したのだ。

 事実、暁は廊下にいた。締め出された状態で逃げるべきか追撃するべきか迷っていた。

(あの二人を一緒にさせていて良いのか!?)

 他人を大きく見る暁にとって、漱とキヌのコンビはあまりにも脅威だった。


 だから漱の能力が物体を動かす力であると知った時点でキヌを消す事にしたのだ。

 殺す相手の能力を知る必要はないと考えた彼の失敗だ。


(警戒された状態のキヌと漱に勝てるとは思えないな)


 暁は逃げ出した。これもまた彼の自分を低く見積もる癖が出来た芸当だった。


≪報告書≫

1、永姫VS暁 引き分け(永姫逃亡)

 優勝候補暁による奇襲により、永姫に大ダメージを与える。
 しかし、永姫が彼の能力をコピーし逃走、暁が自分の能力を分け与える結果となった。

2、漱VSキヌ 引き分け

 漱の能力と知略に屈したキヌは戦闘を放棄、彼女の軍門に下る。

3、キヌVS暁 引き分け(暁逃亡)

 姿を消した状態でキヌを殺しにかかる暁。
 だがキヌの超人的な反射により致命傷は避けられ、さらに教室から締め出される。
 漱とキヌを相手にできないと暁は逃亡する。


ゲーム開始時配置


●第一校舎
一階(一年生)暁
二階(二年生)公子&黒神
三階(三年生)
屋上 詩乃 喜一郎

○第二校舎
一階(特進一年生)永姫
二階(特進二年生)キヌ&漱
三階(特進三年生)
屋上

◎第三校舎
一階技術・家庭科・理科室・職員室 暁
二階図書室・宿直室・多目的ホール
三階音楽室・空き教室
屋上

△部室棟

×体育館 冬乃

★食堂

グラウンド 友紀

テニスコート

□□□□□□ぐ
□●●●●□ら
□□□□□□う
□○○○○□ん
□□□□□□ど
□◎◎◎◎□□
□□□□□□て
□△□×★□に
□□□□□□す

いったんここまでにします!(もしかしたら後で少し更新するかも?)

今回は大まかなシナリオ上、引き分けが多かったですが、次の戦いからはサクサク死んでいきます!

いつも感想ありがとうございます! では!


 須木奈佐木家において、漱の評価は大きく割れていた。


 自分達の役割を戦術家と称する派閥にとって、彼女は限りなく無能であった。

 大局で判断できない役立たず、所詮は女だ、と。


 一方で彼女こそ須木奈佐木家の完成系だと言う者もいる。

 かつての国と国が争う時代は終わり、見えない敵とあらゆる場面で戦わなければならない現代。

 漱の状況判断、役割分担、リーダーシップはまるで、“パズルのように戦略を完成させていく戦女神”のように見えると称する。


(どちらにせよ、だ。私は私以外になる事は出来ない。戦場もまた然りだ)


 自分が戦略家であろうと戦術家であろうと、生まれ変わる事も出来なければ戦場を選ぶ事も出来ない以上、正しい姿など選べるわけがない。

 漱は須木奈佐木家の女に生まれて“しまった”と自覚した時点で、そう考えるようになった。


「鈴原冬乃。貴様の力が欲しい」

「……目の見えない私に出来る事などありますか?」

 体育館の中央、指の材質をゴムに変えた冬乃はシャーペンを矢に見立てて漱の首筋を狙っていた。

 対して漱は無防備に彼女の下へと近づく。入口ではキヌが扉を閉めて見張っていた。

「ああ、君のその探知能力がなければ勝てない相手がいる」
「……姿を消す能力があるのですか?」
「察しが良いな。その通りだ」

 漱は自分が“二度”透明人間に襲われた事を説明した。一人は殺意があり、もう一人は何かを確かめるために近づいてきたのだと。

「私は二人目が危険だと考える。格闘家のキヌでさえ気付かぬほど殺気を消せるなんて普通ではない」
「……どうやって気付いたのですか?」
「私の能力は見える範囲で動いている物体を、速度を落とさず動かせる力だ。一人目と出会った時、壁際に背を当てて常に消しゴムの欠片を周りに飛ばしていた」
「急に何かがぶつかった、と?」
「ああ、自由自罪なら腹部を貫通する事も出来ただろうが、手負いの獣ほど危険な物はないからな。あえて見逃したのだ」
「………」

「この能力の弱点は見える範囲しか動かせない事にある。人間は肉食動物に似て目が前についていて死角が多い。姿の見えない相手に優位で戦えるほど便利な能力ではないのだ」
「……それは私の技術も同じかと」

 不安そうに答える冬乃の手を漱はがっちりと掴んだ。

「私が貴様の力を欲した以上、それは貴様の価値が最も高いと言う事だ。私やキヌを理由に断るなら引きさがるが、自身を理由に断る事は許さん」

 冬乃は漱の手が燃えるように熱い事に驚いていた。

(これが……生きる力)

 目の見なくなった私には到底出せない熱だと冬乃は考える。
 羨ましくもあり、怖くもある。

「……ふっ、臆病な顔をしている。昔の私を見ているようだ」
「須木奈佐木さんの?」
「ああ、私もかつて生きる事に恐れを抱いていた。須木奈佐木家で生きる為に不可欠な資質を持っていなかったからだ」
「……どう折り合いを付けたのですか?」

 漱の握る手がさらに強くなる。だが冬乃は痛いとは思わなかった。むしろ心地良いとさえ――。


「折り合いなどつけられるはずもない。私一人ではどうあがいても未完成なのだ」
「だったら――」


「だが、仲間がいれば変えられる」


「!」
「冬乃。貴様がいれば結果を出せるのではない。“貴様がいれば私は生きられる”のだ」

 かつて、目が見えた頃。
 冬乃には漱が物語の主人公のように見えた。
 誰よりも強く、美しく、気高い女性。

 そんな彼女に求められて、断る理由など見つかるはずもない。


「……一つだけ、約束してください」
「ああ、一つだけでなくとも構わんがな」
「いえ、一つだけで構いません」



 ――良い人は助けてあげてください。



 漱は静かな声で、「分かった」と返事をした。


 永姫にとって誤算だったのは、黒神密が予想以上に狡猾な人間だった事だ。

 生徒会副会長に座して教師生徒近所の住人、多方面から支持される密。小さい頃から社交場に連れて行かされていた永姫でも彼女の真意を読みとるまではいかなかった。

「ほ、ほんとにいたんだ!? 姿を消す人!?」
「触れるだけで人を操れるくらいなのだから、姿を消すくらいどうってことないでしょう」

 そう言いながら密は鞄の紐で永姫の身体を縛った。気絶している永姫はあっさりと両手足を拘束された。

 密は公子の能力を把握してすぐに「気絶しろと考え続けろ」と命令をした。

 本来は陰から襲ってきたり空間移動してきたりした時の為だったが、姿を消してくるとは内心驚きだった。優位性を保つ為に決して公子には言わなかったが。

「公子さん、まずは気絶から目を覚まさせる。一旦手を放してすぐに手を当て“自分の使用できる能力を喋れ”と命令するのよ。その後またすぐに手を放して“気絶しろ”と命令しなさい」
「うん、分かった。“目を覚まして”」

 永姫の背中に触れた公子は、言われるがままに能力を使用した。

「う、ううん……」

 強制的に意識を覚醒させられた永姫は眠そうに周囲を見回した。

「“自分の使用できる能力を喋れ”」
「!?」

 永姫はようやく状況を理解した。が、公子の命令に抗う事はできなかった。

「私の能力は他人の能力をコピーする事。姿を消す事。触った液体を操る事。見える範囲の物体をそのままのスピードで動かせる事。


 触れた相手を五秒間操れる事」


「!! 公子! すぐに命令を――」

 密の叫びに公子はビクリと手を放した。

「遅いですわ!」

 永姫は倒れた状態から腹筋を使って密の足に自分の足を着ける。

「紐を解きなさい!」
「くっ!」

 永姫の状況判断は的確だった。密の実力を改めた事も幸いし、指示系統を混乱させる事ができた。
 公子は何が起きたか判断できずキョロキョロと視線を往復させていた。


 紐が解けた瞬間、永姫の姿がスゥと消える。

「公子! 逃げるわ「“心臓を止めなさい”」
「ぐっ!?」

 命令された密の身体がビクンと跳ねた。心臓が急停止した所為で至る所の血管が破裂してしまったのだ。

「黒神さん!?」

 近寄ろうとする公子の前に永姫が姿を表す。

「ひっ!?」
「……ふふっ、そんな驚かなくても良いじゃない?」
「わ、私は……そのっ……」
「良いですわ。分かっていますの」
「……え?」

 戸惑う公子に対して永姫はいつもと変わらぬ笑みで、



「貴方は脅されていた。それだけですわよね?」



 差し出された永姫の右手を公子は――、

≪報告書≫

1、永姫VS暁 引き分け(永姫逃亡)

 優勝候補暁による奇襲により、永姫に大ダメージを与える。
 しかし、永姫が彼の能力をコピーし逃走、暁が自分の能力を分け与える結果となった。

2、漱VSキヌ 引き分け

 漱の能力と知略に屈したキヌは戦闘を放棄、彼女の軍門に下る。

3、キヌVS暁 引き分け(暁逃亡)

 姿を消した状態でキヌを殺しにかかる暁。
 だがキヌの超人的な反射により致命傷は避けられ、さらに教室から締め出される。
 漱とキヌを相手にできないと暁は逃亡する。

4、○喜一郎VS●詩乃(死亡)

 死を求めた詩乃が喜一郎に命を差し出す。喜一郎の能力により窒息死。

5、○暁VS●喜一郎(死亡)

 喜一郎の能力が発動する前に身体から拳を放す事で回避、頭蓋骨が粉々に砕けるまで殴り続けた。

6、○永姫VS●密(死亡)

 公子から奪った能力により、心臓を止めるよう密に命令。急な心肺停止により死亡。

いったんはなれます。一時間後に更新すると思います。

次は空気と化した友紀君メイン(予定)です。


 友紀はある意味で幸運な男であったと言える。

「……え、俺……死んじゃうの?」

 金属バットで後頭部を一撃。一瞬で死ぬ事はなかったが、べっこりと凹んだ後頭部を見た者は彼が生きられるとは思わないだろう。

 友紀はこのゲームで何も成せなかった。自分を殺した暁のように失敗もしなければ、永姫のように活躍もしていない。

 ただ一生懸命ゲームに参加し、隠れながら場所を変えていただけだ。

 姿を消した暁の存在に気付かず、バットの一撃を受けた。それだけの話だ。

「どっちみちお前じゃ無理だ。友紀」

 友紀と暁はクラスでも比較的仲が良い。友紀にとって暁の自信の無さは話しやすさであり、暁にとって友紀の弱さは劣等感を刺激しない心地良さがあった。

 だからこそ、暁は彼を見つけるとすぐに「殺してやらなくては」と考えた。

 友紀は殺人に耐えられるほど強くない。悩み苦しんだ挙句、自暴自棄になるだろう。

 それは男として最も恥ずべき行為で、例え無価値な自分でも避けたい結果だ。

「……あぁ、俺は………な、に……も」

 ゆっくりと、友紀は意識を失っていく。

 そんな彼を見下ろしながら、暁は、

(漫画ならお前みたいな優柔不断なタイプが主人公になれるのにな……)

 と、彼の死を悼んでいた。



「……後は須木奈佐木達と黒神達、それと……国立宮か」



 全員の戦力を把握した暁にとって、永姫が最も驚異的な存在であった。

 そんな彼が取った選択は、

(須木奈佐木達と戦うべきだ。……結果はどうなるにせよ)

 このゲームを大きく変える。

≪報告書≫

1、永姫VS暁 引き分け(永姫逃亡)

 優勝候補暁による奇襲により、永姫に大ダメージを与える。
 しかし、永姫が彼の能力をコピーし逃走、暁が自分の能力を分け与える結果となった。

2、漱VSキヌ 引き分け

 漱の能力と知略に屈したキヌは戦闘を放棄、彼女の軍門に下る。

3、キヌVS暁 引き分け(暁逃亡)

 姿を消した状態でキヌを殺しにかかる暁。
 だがキヌの超人的な反射により致命傷は避けられ、さらに教室から締め出される。
 漱とキヌを相手にできないと暁は逃亡する。

4、○喜一郎VS●詩乃(死亡)

 死を求めた詩乃が喜一郎に命を差し出す。喜一郎の能力により窒息死。

5、○暁VS●喜一郎(死亡)

 喜一郎の能力が発動する前に身体から拳を放す事で回避、頭蓋骨が粉々に砕けるまで殴り続けた。

6、○永姫VS●密(死亡)

 公子から奪った能力により、心臓を止めるよう密に命令。急な心肺停止により死亡。

7、○暁VS●友紀(死亡)

 後頭部を金属バットで殴られた友紀。二度殴られ、死亡。

「永姫さんなら絶対優勝だよね!」

 公子の言葉に永姫は「どうですかねー」と答えた。

 関係は主従であったが、永姫は決して公子の態度を咎めたりはしない。

 それはまるで、“結果さえ出してくれるなら何も求めない”と言いたげな、公子を道具としてしか見ていないような態度だった。


 だが公子はそれを“永姫さんが頼りにしてくれている”と勘違いしていた。


 密との関係を対等だと勘違いしていた公子にとって、その勘違いは必然と言えた。

「ねぇ公子さん」
「うん?」


「今から須木奈佐木さん達を殺しに行くけど、助けてくれますよね?」


「!?」

 永姫の言葉に公子は戦慄した。

(あ、あの須木奈佐木を相手にするって無理っしょ!?)

 それどころか仲間までいるような言い方。


 公子が戸惑っていると、


「ああ、公子さんは何もしなくて良いの。私が全部終わらせるから」
「え?」

 永姫の眼は本気だった。あの誰しもが恐れる漱を相手に一歩も引く様子はない。

(そ、それなら別に……)

「あなたには暁君の相手をして欲しいの」
「暁って日向暁?」
「ええ、頼めるかしら?」

 それならまだ大丈夫かな。先ほどの戦いで永姫を戦闘不能まで追い込んだ自信が公子を変える。


 密でさえ永姫が“わざと捕まった”事に気付かないのだから、仕方ない話だった。


 永姫のプランに使いやすい道具は必要不可欠で、参加者を見る限り公子しかいない。

(別に貴方が暁君を倒す必要はないの。ただ、彼にとっての優先順位が私より貴方の方が先であれば……)


 永姫はすでに終わりまで見据えていた。

 それは参加者全員を把握していない漱でさえ到達していない高みであった。

名前:黒神 聖(くろかみ ひじり)
性別:女
部活:生徒会
性格:聖女のような善人。
その他:二重人格者。歪(ひずみ)という名前の別人格を持っており、それを知っているのは双子の兄だけ。

とりあえず第二ステージは後で詰めるとして、第三試合を始めます!
……の前に能力まとめなきゃですね

今回参加者1~5

no.1
名前:読売朝姫(ヨミウリアサヒ)

能力:ゲーム中起きた事を三度まで本当になかった事に出来る。
※ただし、自分が認知している出来事だけ。

性別:女
部活:新聞部
性格:ザ・ジャーナリストでなかなかしつこい性格
備考:
人の秘密を暴くために隠密行動や心理掌握が得意。
しかし自分の本音を明かすことはない。
基本的に他人を信用していないし猜疑心がとてつもなく高く一人を好む


no.2
名前:影野明(カゲノアキラ)

能力:身体の一部や全身を架空の生物に変えられる。

性別:男
部活:園芸部
性格:気弱だが芯は強い
備考:
元々線の細い体と女性に間違われる顔だちにコンプレックスをもっていたが、とある女性に恋心を持ち何とかふさわしい男になりたいと望んでいる。

no.3
名前:加藤獅子心(カトウレオンハルト)

能力:対象二点を入れ替える。

性別:男
部活:陸上部
性格:勇ましい名前とは裏腹に、卑屈かつ根暗な性格。
そこそこ高い能力を持つが自分を過小評価する癖があり、世の中で一番信じられない物は自分。ウザい。
が、むしろ自分以外の総てを全力で信じられる謎のポジティブさがあるので、まさかの部内のムードメーカー。後ろ向きに前向き。
備考:
自分のDQNネームがコンプレックス。
一郎とか二郎とか、もっと普通の名前が良かった。
変わった名前の相手には、勝手に親近感を覚えて優しくなる。
ちなみにコンプレックスの原因は、幼少期に名前をからかわれ虐められたから…では無く、中学生時代に中二病を拗らせて色々やらかした事が原因だったりする。
今も完全には治っておらず、テンションが上がると、我が胸に眠る獅子の魂よ今こそ漆黒の牙を突き立てよナンチャラカンチャラとか言い出す。

no.4
名前:黒神聖(クロカミヒジリ)

能力:身体の一部や全身を架空の生物に変える事が出来る。

性別:女
部活:生徒会
性格:聖女のような善人。
備考:
二重人格者。
歪(ひずみ)という名前の別人格を持っており、それを知っているのは双子の兄だけ。

今回参加者6~10


no.5
名前:煤田命理(ススダイノリ)

能力:ゲーム中に起きた事を一度だけなかった事にする。
※実際ではない

性別:女
部活:帰宅部
性格:いわゆるいじめられっ娘。心の中の復讐は強いが極めて弱気
陰湿なセクハラを常に受けているので男性相手の被害妄想は特に強い
その他:スタート時点ですでにボロボロの状態
耐える精神力だけはおそらく誰よりも強い

no.6
名前 瀬乃渡(セノワタル)

能力:ゲーム中に起きた事を一度だけなかった事にする。
※実際ではない

性別 男
部活 水泳部
性格 猪突猛進
備考
考えるより先に体が動くスタミナオバケ
勉強が出来るバカ

no.7
名前:更月深夜(サカツキミヤ)

能力:独立した分身を一体作りだせる。

性別:女
部活:生徒会
性格:一見するとすぐに自分を責めやすい献身的な性格に見えるが
強すぎる自責のために自身を傷つけることを喜ぶ異常者であり
自身が求める絶望のために周囲を巻き込むことを躊躇しない極めて利己的な人物
備考:
傷つけば傷つくほど強くなっていく

no.8
名前:盟神探湯 神子(クカタチミコ)

能力:対象の位置を変化させる

性別:女
部活:宗教部
性格:絶滅主義者
備考:
とある宗教の教祖にして御神体、異教徒は人にあらず、つまり世界は一度滅ぶべき

no.9
名前:榊原正義(サカキバラマサヨシ)

能力:遠隔操作の分身を一体作りだせる

性別:男
部活:粛清部
性格:頑固者の杓子定規
備考:
正義はやり過ぎなければ正義に非ずを信条に徹底した正義の代行者
何者よりも自分よりも正義を頂点においている


no.10
名前:アナスタシア・ロスチャイルド

能力:遠隔操作の分身を一体作りだせる。

性別:女
部活:経済部
性格:帝王学を叩き込まれた天才
備考:
黒幕の正体について心当たりがある。
世界的支配者大富豪の一族でプライドが高い


 読売朝姫にとって報道とは事実を伝える事であり、手段や演出は二の次だと考える。

 それは彼女が夜中の学校で目が覚めても写真撮影を始めない事で証明された。

(実体験の言葉に勝る素材はないのよ)

 演出を嫌う彼女の記事はあまり人気がなく、またありのままに書くスタイルは劣等感を持つ教師や部活生からひんしゅくを買っていた。

 朝姫は新聞部に入った時から“人に嫌われても真実に嫌われるな”と己を律し続けており、学校新聞の片隅においやられた今でも信念を曲げる事はない。

『 今か ら 殺し 合いを して もらいま す 』

 木彫りの熊から妙な声が響いた。機械音声のような、それでいて妙に人間味のある声。

「殺し合い? 何か目的があるのですか?」

 朝姫の取材スタイルは山と谷を何度も往復させるスタイルだ。

 言いにくい事を最初に聞いて緊張感を高め、次に答えやすい質問で心の紐を緩ませる。

 次にまた緊張感を高めて緩ませ、何度も続けるうちに相手はポロリと本音を語るのだ。

 だが――、

『 読売 朝 姫。 君の 心根に 母親の裏切り があって も、 それはわた し 達の 所為ではない 』

「なっ!?」

 朝姫は身体がカァと熱くなるのを感じた。誰にも言った事のない秘密。

 読売朝姫が読売朝姫である為の根幹部分。

 小学低学年の時、浮気性の母親が近所の中学生を呼びこんで性行為に耽っていた。

 それを見た朝姫が父親に訴えても母親の罪を立証する事が出来なかった悔しさ。


『 今は た だ、 勝つ為の方法 を考えろ 』


 ポンと音が鳴り、木彫りの熊の背中からカプセルが飛び出した。

 それは勝手に開き、中から一枚の紙が舞い上がる。

「……ゲーム中に起きた事を三度までなかった事に出来る?」

『レアガチャだね。おめでとう。この部屋から出た後に起きた事を実際になかった事に出来るから、それで勝利を掴んでね』

 カプセルが飛び出した所為か、音声が妙にクリアに聞えた。子供のような大人のような不思議な声だ。

 朝姫はすぐに教室を飛び出したりはしなかった。

 報道は鮮度が命と考える者は読者の反応ばかり考える愚か者であり、本当に良い報道をする為には心も体も準備が必要だと彼女は考える。

「……よし、勝者になれなくても最後まで勝ち残ろう」

 ジャーナリストとしての戦いが始まる――。

「こ、ここはどこ!?」

 影野明は目を覚ました瞬間、異様な光景に涙ぐんだ。

 学校で寝た覚えがないのに、教室の中にいたからだ。

『 やぁ 影野あき ら君 』

「ひぃっ!?」

 羊のぬいぐるみがゲームの説明をしている間も、明は終始怯えるばかりだった。

 彼は明らかな弱者であり、今回の賭けでも歴代最高オッズを叩きだしている。

「身体の一部や全身を架空の生物に変える事が出来る……?」

 この能力を見た時、明はどうしたらいいか分からなかった。

 何故なら彼は創作物には一切興味がなく、架空の生物をほとんど知らなかったからだ。

 この能力の肝は知識量にあり、例え本来は強力な生物に変身したとしても、何が出来るか分からなければただの置物になってしまうからだ。

 それでも、明は「や、やれるだけやってみよう」と自分に言い聞かせた。


(僕は強くなるんだ。……強く)


 明には目標があった。

 片想いしている女性にふさわしい男になる事。

 少なくとも困難に対して真っ向から立ち向かう事のできるような強さを身に付ける事。


 明の目に迷いはなかった――。



「いや、断らせてもらって良いっすか」

 加藤獅子心は虎のぬいぐるみの説明に即答した。

 殺し合いなんて出来るはずがないと。

(俺なんかどうせ扉を出た瞬間にボウガンで殺されるオチしか用意されてないんだし)

 獅子心の卑屈さは内面にばかり向かっていた。

 自分のような奴に勝ち目などない。

 たまたま一回勝ってもすぐに殺されてしまうだろう。

 それならば最初から参加しない方が得策だ。

 教室から出ようとする獅子心に虎のぬいぐるみは、

『もし参加しなければ君の中学時代の楽しい思い出を世界に発信するけど良いかな?』
「……へ?」

 ダラダラと滝のように汗が流れた。

「な、なな、何でその事を?」
『それも何をしたかだけじゃない。“その時に何を想っていたか”も全部発信するからね』
「は、はぁ!?」

 獅子心の脳裏で黒い思い出が駆け巡る。

『例えば中学一年生の時、“人間も動物なのだから四足で移動するべきだ”と校舎内で手を着いて移動してたよね。あれの真意は女子のパンツを見たいからだって――』
「ややややります! 参加しますからっ!!」


 獅子心の心に火が点いた瞬間だった――。



 このゲームにおいて不参加を表明する事は稀なのだが、今回に限っては獅子心だけじゃなく黒神聖も首を横に振った。

「人を傷つけるなんて不徳行為、私にはできません」

 聖はただ断るだけでなく、

「このような愚行はおやめなさい。貴方達に何の権限があると言うのですか」

 と、運営側を批判するまでに至った。

『君みたいなタイプ、一番向いてるんだけどねぇ』

 イルカのぬいぐるみから発せられる声は妙に挑発的で、聖の優しさを弄ぶかのように言葉を続けた。

『殺し合いが悪って誰が決めたのさ?』

「人類の歴史において殺しが肯定された事はありません。限定的な流れで死に繋がる事はあったかもしれませんが、文明世界の維持に殺しの制限、否定は不可欠です」

『まぁ、ずっと殺しあったら一人しか残らないからね。でも、それはやりすぎが駄目ってだけで、食事だって量を間違えれば毒になるよ?』

「その為に本能が存在します。人の身体は許容量を越えれば警告するように出来ています。それを無視して食べ続ける事は無謀であり例外です」

『じゃあ君は他人の殺したいと思う気持ちを否定するわけだ?』

「否定はしません。ですが多くの人々は他人を殺したいと思うほど憎んでも一方で我慢するべきだと自制します。もし勢いを止められずに人を殺めてしまったら、それは悲劇であり肯定できるものではありません」

『……なるほど、君が本当に正しい人間であるなら今までの言葉は真理かもしれないね』

「どういう意味ですか?」

『今はなんとも言えないよ。ま、どっちみちゲームを降りる事はできないんだ。精々逃げまわって少しでも関わらないようにしてみたらどうかな?』

 カプセルの飛び出したイルカのぬいぐるみは、ボォッと炎が巻き上がって跡かたもなく消え去った。

「私は絶対に参加などしません……」


 頑なに殺し合いを否定する聖だが、その顔には不安の色が見えた。

 どこかで殺し合いを望んでいるような――。

まだ第二ステージ案募集しているなら、


ゲーム名:鬼退治

内容:襲撃者『鬼』が徘徊する学校で生き延びる。

勝利条件:三つの内、いずれかを満たす。
・鬼を倒す(倒した時点で生き残っている参加者と、生き残っている参加者のチームに所属していた参加者が勝利)
・参加者の全滅(鬼を除く残り人数が一人、もしくは1チームだけになった時点で生き残っている参加者と、生き残っている参加者のチームに所属していた参加者が勝利)
・通行証を手に入れ、ゲームのフィールドから脱出する(チーム所属の有無に関わらず、脱出に成功した参加者のみ勝利として扱う)


用語説明:
・『鬼』……このゲームでの敵。ゲームフィールドである学校内を無作為に徘徊し、参加者を発見すると襲いかかる激強NPC。高い戦闘力を有し、参加者同様に能力を持っている。個体ごとに能力は異なるが、『任意の能力無効化』『参加者全員の能力コピー』『レアガチャの能力複数所持』など極めて強力。通常1ゲームに一体だが、参加者の人数や所有能力等如何によってはゲームバランス調整の為、複数体投入されることも。基本的に単独戦闘での撃破はほぼ無理ゲー。

・『ミッション』……ゲームスタート時に参加者に与えられる指令。強制的なものではないが、達成すると『通行証』が手に入る。『ミッション』の内容はそれぞれで異なる。

・『通行証』……所持した状態で脱出すればゲームクリアとなるアイテム。『ミッション』を達成することで一つ手に入る。脱出できるのは一つにつき一人だけなので、チームでの脱出クリアを目指す場合は人数分を入手する必要がある。なお、『通行証』は譲渡された物や奪った物でも問題なく使用可能。



ゲーム案です。
必要ないならスルーしてくれて構いません。

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