女「わたしの声が聞こえたら」(78)

男「ただいまー」

女「おかえりー」

男「!?」

女「?」

男「……」

女「どうしたん?」

男「お前、なんでおるん」

女「さあ、なんでやろねー、ひひ」

男「帰ってきちゃったん?」

女「帰ってきちゃったんかなー、恋しくて」

男「……お前らしい」

女「やろー」

・関西弁注意
・口調がきついように読めるかもしれませんが、特に怒っているわけではありません

女「キミも、『ただいま』って言うてたやん?」

男「……つい」

女「キミらしい」

男「……やろ」

女「ささ、寒かったやろ、コタツ入り」

男「ああ、ありがとう」

女「上着も、脱いで脱いで」

男「ああ」

女「……」

男「あれ、脱がしてくれるんじゃないの?」

女「それはちょっと無理なんやわー」

男「あ、そう」

女「そういうもんやん?」

男「そっか、そういうもんか」

男「あれ、コタツ電源入ってへん」

女「だから、無理なんやって」

男「あ、そうか」

女「ほらほら、入って入って」

男「はいはい」

女「ちょっと待っとったら温くなるからなー」

男「知っとる」

女「今日も、遅かったやん」

男「最近、ちょっと立て込んどるから」

女「忙しいのは、ええ事かな?」

男「仕事がないよりかは、マシかな」

女「ふむ」

男「しかし、疲れてるんかな」

女「ふむ?」

男「お前が、こんなにはっきり見えるとは」

女「ふうむ」

女「霊感あったっけ?」

男「ない、と思うてた」

女「ないと思うとったけど、実はあった?」

男「うん、そういうことやろうね」

女「びっくりやなー」

男「おれの台詞や」

女「ちょ、足伸ばしすぎ、狭いって」

男「お前足ないやろ」

―1ヶ月前―

女「わたし、登場!!」ズビッ

男「ううん、肩こったぁー」ノビー

女「聞こえますか、返事をしてください」

男「ちょっと無理してやりすぎたな、続きは明日でええか」

女「わたしの声が聞こえたら、返事をしてください!!」

男「今日はここまでにしとこ」

女「わたしの声が」

男「……」パチン

真っ暗

女「……」

男「あーねむ」ゴソゴソ

女「……」

女「あかんな」

―3週間前―

女「そろそろこの部屋にも馴染んできたでー」フワフワ

男「このカップ麺まっず」

女「不摂生はあかんよ不摂生はー」

男「最後まで食えん」

女「ちゃんと栄養あるもん食わな太るでしかし」

男「ちゃんと栄養あるもん食わなあかんな」

女「!」

男「明日はなんか作るか……」

女「なんかちょっと一瞬シンクロしたな……」

女「もっと色々言うたったら、わたしのこと気づくやろか」

男「……」

女「あ、明日はハンバーグがええんちゃうかなー」

男「……」

女「明日は!! ハンバーグが!! ええんちゃうかな!! って!!」

男「明日はラーメン作るか」

女「なんでやねん!!」ズコー

ぼちぼちいきます
あとすみません冬設定です季節感なくてすみません

―2週間前―

女「なんや、女の影がないな! あんた!」

男「……」ボー

女「最近家でテレビばっかやんか! たまには他の女とデートでも行ったらどうやの!」

男「……」ボー

女「それはそれでイヤやけどな!」

男「……」ボー

女「かといって、わたしのことを思い出している風でもない!」

男「……」ボー

女「なんやの! あんた!」

男「……」グスッ

女「!?」

男「……あー、思い出したらあかん」グスッ

女「な、なんやの」

男「なんでなん……なんでおれじゃなかったん……」グスグス

女「……」

男「あー、くそ……もっかい……会いたい……」グスン

女「な、なんや、可愛いとこあるやん」ドキドキ

―1週間前―

男「~♪」

女「機嫌ええな」

女「料理しながら鼻歌とか、機嫌ええな」

男「~♪」

女「なんや、女か。女でもできたん」

男「~♪」

女「そっか……」

男「~♪」

女「女に手料理食べさしてあげる約束でもしたんかなあ」

男「~♪」

女「羨ましいわー。キミ、料理わたしより上手かったもんなあ」

男「~♪」

女「あ! これ! オムライスやんか! わたしの唯一の得意料理やんか!」

男「~♪」

女「この男パクりよった! 悪い男やでほんま!」

男「おっしゃ、できた」

女「相手の女許すまじ」

女「うち来たら秒殺で呪い殺したるからなほんま」

女「玄関先で血ぃ吹き出してオムライスどころじゃなくしたるからなほんま」

男「~♪」

女「あれ? 自分で食べるん?」

男「~♪」モグモグ

女「あれか、予行演習か」

男「うん、うまい」モグモグ

女「ええなー、わたしも食べたいなー」

男「んー、でも、あいつほどうまくは作れへんな」モグモグ

女「んっ」ドキッ

―3日前―

男「なんか最近耳鳴りがするんです」

医者「ふむ、ちょっと調べてみましょうか」

……

女「なんやなんや、出かけたと思ったら医者って」

女「心配になるやんか、どしてん」

……

男「どうです?」

医者「ううん、特に問題はなさそうですが……お薬出しておきましょうか」

男「はあ……」

医者「これで改善が見られなければ、また来てください」

男「……はい」

女「あかんで無理したら! はよ寝とき!」

男「んー」

女「家事やっといてあげるから……って言えたらええねんけどなあ」

男「んー、だるい」

女「ほら! はよ寝ぇ! 薬飲んではよ寝ぇ!」

男「んー、耳鳴りがひどい……」

女「はよ横んなれ! わたしとお医者さんの言うことはちゃんと聞いとき、て!」

男「なんかうるさい……」

また明日です ノシ

―現在―

女「あれか、耳鳴りの原因、わたしやったんか」

男「たぶんな」

女「ごめんて」

男「……うん」

女「心配なったんよ、キミがどうしてるか」

男「……うん」

女「わたしは元気やで?」

男「見たらわかるわ」

女「わたし、だいぶ見守っててんで?」

男「だいぶって、どれくらい」

女「1ヶ月くらい?」

男「長ない!? それ」

女「ずっと気づいてくれへんかってんもん」

男「え、その間ずっと見てたん!?」

女「あ、見たらあかんところは見てへんで」

男「……」

女「トイレとか、風呂とか、アレとか、な」

男「うああああああああああああああああああ」

男「なにしとんねんお前ぇぇぇえ!!」

女「だから見てへん言うてるやん」

女「一緒に住んでる時も気ぃ遣ってくれてたんやなあ、って思ったわ」

女「わたしも気づけへん隠し場所、よおけあったんやねえ」

男「やめろマジやめろ」

女「しゃあないって、男やねんから、ふつうやって」

男「息子のエロ本見つけたお母さんみたいな発言マジやめろ」

女「気づいてくれへんのが悪いんやん!!」

男「霊感ない言うとるやろアホぉ!!」

男「あれ、じゃあなんで今日は見えるん」

女「わたしの台詞やしな」

男「いやおれの台詞やろ」

女「いっつも『おかえり』言うててんで」

女「今日はちゃんとこっち見るからびっくりしたわ」

男「『おかえり』ちゃうやろ、おれが『おかえり』言うんやろ」

女「そうかなー」

男「おかえり」

女「おう、ただいま」

男「ずっとおんの?」

女「ずっとはおらんのちゃう?」

男「まあ、しばらくおりぃな」

女「そうしたいけどなー、なんかなー、今日だけって気がせんでもない」

男「そっか」

女「うん、なんか特別っぽい」

男「なんか食うか」

女「んー、食えへん気がする」

男「どこおったん、うち帰ってくるまで」

女「なんかなー、ふわっふわ、しとったわ」

女「ほんでな、なんか意識がはっきりしてくるやろ」

女「気づいたらうちの近くまで来ててな」

女「『参上!』言うて入ってきたのに、キミ全然気づかへんかってん、悲しかったわー」

女「あれ、『登場!』やっけ」ズビッ

男「どっちでもええわ」

女「『見参!』やったかもしらん」ズビッ

男「そこほんまどうでもええわ」

女「はよ彼女つくりや」

男「……ん……おう」

女「なんや、未練あんのか、わたしに」

男「……ふはっ」

女「な、なんよ」

男「『未練あんのか』って、それ、おれの台詞やろ」

女「……」

女「ひひ、ほんまやな」

男「未練あんのか」

女「あるわ、ばりばりあるわ」

男「あー、こんなん絶対忘れられへんやん」

女「忘れるつもりか」

男「いや、忘れるつもりないけど」

男「もうあれや、次の彼女とか言うな、な」

女「おう」

男「悲しなるわ」

女「わたしも悲しなった」

男「やろ」

女「うん」

女「キミは、ご飯は」

男「外で食べてきた」

女「あれやで、ちゃんと栄養あるもん食べや」

男「ん……」

女「長生きしぃや」

男「……おう」

女「横断歩道はちゃんと気ぃつけて渡るんやで」

男「お前には言われたない」

女「……」

男「ごめん、うそ」

といった感じです
次はたぶん日曜に ノシ

男「寒ないんか、そのかっこ」

女「あんま寒さは感じひんな」

男「あれは、あの、三角のやつ」

女「あー、あれな、なかった」

男「なんで?」

女「知らんしな。初めてやねんから知らんしな」

男「そらそうか」

男「あれかな、経費削減的な」

女「知らんしな! あの世の経済状況とか知らんしな!」

男「……あの世の?」

女「この世の経済状況もよお知らんけどな! わたしあほやから!」

男「ていうか、死人にあの三角の紙貼っつけるん、今もうやってないやろ」

女「うん、見たことないわ」

男「せやろ、だからほれ、現代的になってきてるってことよ」

女「もうええやん? その話」

男「そもそもあれなんなん? 紙? 布?」

女「まだいくか」

男「キョンシーのお札とはどう違う訳?」

女「ほんま知らん興味ないキョンシーに聞いといで」

男「そういや、足ないんも気になっとった」

女「お、話題が変わったで」

男「なんでないん?」

女「知らん、最初からなかった」

男「鎖かなんか足首についてなかった?」

女「わたしは罪人か」

男「現世の咎を洗い流すために切り落としたとかいう設定なんかな」

女「わたしを前にして『現世の咎』とか言うなや!」

女「きれいな魂じゃ!!」

女「キミほんま失礼やな」

男「な、ちょっと触っていい?」

女「え、ええけど、無理や思うで」

男「……」スカッ

女「な?」

男「……むう」スカッ

女「な? 無理やて」

男「……」スカッスカッ

女「あんな、なぜそんなにも執拗に胸を狙うん?」

女「セクハラやで自分? 訴えられんで?」

男「いや、どうせ触るなら、思て。触るだけタダやん?」

女「ほんまどついたろかこの男」

男「せいっ」ズボッ

女「ぐわあああああああ!! 内臓がああああああああ!!」

男「ふふふ、地獄の苦しみを味わうがいい」グリグリ

女「ぐあああああああああ!! あほか!!」スカッ

男「ノリノリやんけ」

男「どうやって立ってんのお前」

女「立ってへんで、浮いてるで」

男「いや、そらわかるけどや」

女「ちょうどいい高さに浮いてるねん」

女「意識したら床もすり抜けるからな、わたし」

男「マジか、ちょおやってみて」

女「ん」スッ

男「おおおおお、なんか埋まってるみたいやな」

女「手ぇだけ出すとかもできるで」スッ

男「ドラクエにおったぞ、こういう敵」

女「あ、これどうこれ。スリッパの上に浮いてるわたし」

男「あ、ちゃんと足あるように見えるわ」

女「せやろ! わたし完全体やろ! パーフェクトボディやろ!」

男「でもそれ、歩かれへんやろ」

女「まあその辺は……不完全やねん……人間やもの」

男「完全体やのに不完全なんか」

女「色々あるねん……わたしにも……人間やもの」

男「それ言うといたらいい感じになってるって思ってるその顔が腹立つ」

また明日です ノシ

男「おし、ちょっと出かけよか」

女「なんで?」

男「なんか、今日が最初で最後なんならさ、外行きたい思て」

女「どこ行くん」

男「夜景と星見にいこ」

女「あー、ええな」

男「寒いけどな」

女「寒い方がよお見えるしな」

男「うん」

女「あ、わたしの上着残ってるやん」

男「うん、捨てれん」

女「捨てんでええからや、焼いて」

男「焼く!?」

女「そう、お寺とか行って焼いてもろて」

女「そしたら私、また着れるねん」

男「はー」

女「さすがに今は、これは……」

男「?」

女「あれ、触れるな」

男「?」

女「あれ、着れるな、これ、なんで?」

男「はい、お出かけ用のカバン」

女「なんやの、これも大事に置いとったん」

男「うん、捨てれん」

女「中身は」

男「うん、ちょっとぐしゃってなっとるけど、まあきれい」

女「これも焼かんと……」

男「……」

女「あれ、触れるな」

男「……」

女「あれ、持てるな、ふつうに」

男「なんやねん、ふつうに色々触れるやん」

女「壁とかキミとか食器とか、全然触れんかってんけどなあ」

男「あれちゃう? 生前大事にしてた自分のもんは、触れるんちゃう?」

女「あー、そっか、そうなんかな」

男「じゃあなんでおれには触られへんねん」

女「う」ドキッ

男「大事ちゃうかったんや」

女「だ、大事大事!! 超大切やったで!!」

男「手ぇも繋がれへん……」

女「だ、大丈夫大丈夫、こうやってな、ほら、寄り添っていこ、な?」

男「んー、ん?」

女「ほら、わたしの温もり感じて?」

男「なんかヒヤッとする……ん?」

女「そら冬やからや! しゃあない! な!」

男「なんか、質量を感じる……」

女「え、マジで」

男「手ぇ出して」

女「ん」スッ

男「……」スカッ

女「あかんか」

男「でも、ここ、なんか触れてる気がする」

女「ひじ?」

男「ていうか、服?」

女「あー、そういうことか」

男「?」

女「あれやん、服はまだ現世のもんやん」

女「わたしが着れてんのはなんでか知らんけどさ、だから触れるんやん」

女「なんか、上着が、現世とあの世の中途半端な存在になってるってことやろ」

女「知らんけど」

男「まあ、そういうことでいっか」

女「だからほら、寄り添っていこ、な」ギュ

男「ん」

女「ぎゅーっとしとるで、感じる?」ギュ

男「ん、ちょっと」

女「なんや、照れてんの」

男「照れてへん」

男「あれ、ちょっと待って、お前、他の人にも見えんの?」

女「知らん」

男「足ないの見られたらやばない?」

女「……ええやろ、別に」

女「暗いしわからんって」

男「……ええか、別に」

女「そうそう」

男「ほないこか」

女「おう!」

では、また明日です ノシ

バタン

スイー

男「ドアいらんの便利やな」

女「あんま乗った気せえへんけどなあ」

男「シートベルト締めや」

女「意味ないやろ」

男「いや、もしお前が他の人に見えるんやったら……」

女「あ、そか、おまわりさんに止められてまうな」

男「やろ」

女「……シートベルト触れへん」スカッ

男「……おれが締めたる」カチャカチャ

女「……シートベルト貫通しとる、わたし」

男「……もっと腹引っ込めて」

女「無理!」

男「お前太ったか?」

女「体重ゼロになったわ!」

男「見た目の話や」

女「レディに体形の話すんなよしばくぞ!」

ブロロロロロロロロ

女「なあ、音楽かけて」

男「ん、これでええ?」

女「うん」

~♪

女「ドライブん時はやっぱこれやねえ」

男「久しぶりにこれ聴いたわ」

女「わたしの好みやからな、いっつも」

男「いや、なんか、思い出すから」

女「泣く? 大丈夫?」

男「泣かんし」

女「もっとなんかふざけたやつかける?」

男「いや、これでええよ」

男「ていうかなんやねん、ふざけたやつって」

女「あ、なあなあ、コーヒー買ってこや」

男「うん」

女「コンビニはあかんか、目立つか」

男「おれが買ってくるから、ここおり」

女「うん」

男「ふつうにしとくんやで」

女「ん、ふつうな」

バタン

女「もしわたしが他の人に見えへんのやったら、あの男は空の車をエンジンかけっぱ鍵あけっぱで放置する変な人やと思われるな」

女「……」

女「鍵せめてかけるべきやわ」スカッ

女「……」

女「変質者が来ませんように……」

女「ど、泥棒も……」

女「……」

女「できたらカッパとか妖怪も来んといてほしいわ……」

男「ほい、ただいま」

女「遅い! 心細かったやないの!」

男「え、なんで」

女「わたしが他の人に見えへんかったらなあ、あんた空の車エンジンかけっぱ鍵あけっぱやで!」

男「あ、ほんまやな」

女「泥棒来たらどうすんの!」

男「ちゃっちゃと呪い殺しといて」

女「そんな即効性のある呪い持ってへんわ!」

男「エルボーくらいかませるんちゃう」

女「わたしに怖い思いさすなって! マッチョの泥棒来たらどうすんの!」

男「マッチョやったら鍵かけといてもこじ開けられるやろ」

女「そんな現実味のないマッチョの話はしてへん!」

ブロロロロロロロロ

女「え、こっちの道行くん」

男「うん、だって人少ない方がええやろ」

女「イヤやこっち」

男「なんでよ」

女「お墓あるやん」

男「は?」

女「怖いやん、お墓」

男「お前なに言うてんの?」

女「おばけとか出たらイヤやん」

男「お前なに言うてんの?」

キキッ

男「おし、着いたで」

女「外寒いかなあ」

男「お前寒ないやろ、たぶん」

女「寒くて荒れたらいややなあ、女子やし」ヌリヌリ

男「ハンドクリームなんかあったんか」

女「カバンの中ずっと入っとったんや」ヌリヌリ

男「リップクリームもかい」

女「用意ええやろ、女子力高いやろ」ヌリヌリ

男「お肌気にするって、どうやの、それ、全然怖ないな」

女「女子やからな、ふつうに女子やからな」ヌリヌリ

男「足元気いつけや」

女「大丈夫、歩いてないから」ギュ

男「斬新やな、その返し」

女「ひひ、勝手に飛んでいかへんから安心して」ギュ

男「あー、なんか、泣きそうなってきた」

女「え!? なんで!? 大丈夫!?」

男「……」

女「な、泣かんといて……」オロオロ

男「消えんといて」

女「……消えたくないわ……でも」

男「もっとおって」

女「……新しい彼女できひんで、そんなん言うとったら」

男「いらんから」

女「……もう、未練たらたらなん、やっぱキミやん」

男「……うん」

明日ラストです ノシ

女「ここ座ろ」

男「うん」

女「……月、きれいやなあ」

男「……うん」

女「星も、夜景も、きれいやな」

男「……うん」

女「手ぇ繋いでええ?」

男「……無理やろ?」

女「できるで、たぶん」ギュ

男「……え?」

女「ほらな、どう?」

男「あ……繋げた……?」

女「ひひ、手ぇ繋いで、夜景見んの、めっちゃ久しぶりやね」

男「……あ、ああ……」

女「星も、今日はよお見えるね」

男「……ああ」

女「わたしの思い出、ロマンチックに終わらせるために、わたし戻ってきたんかもわからんね」

男「……」

女「わたし、幸せやったよ」

女「ずっと幸せやったし、この1ヶ月も、幸せやったよ」

男「……」

女「キミはな、明日から、生まれ変わって新しい人生を送り」

女「わたし空で見守っとるから」

女「わたしのこと引きずって不幸になっとんの、見たくない」

男「……」

女「まあちょっとは、嫉妬するかも知らんけど」

女「あれやで、変なしょうもない女に引っかかったら呪うからな」

男「怖いな」

女「わたしのこと一切忘れても怒るからな」

男「うん」

女「最後にもっかい会えて、話せて、よかった」

男「くっそ、おれも、なんか気の利いたこと言えたらええねんけど」

女「うん」

男「なんも思いつかへん」

女「ええねん」

女「キミはそれでええねんで」

女「あ、あかん、足消えてきた」

男「え、うそ!?」

女「ほらー、やっぱ今日だけやってんやん」

男「あ、あ、あ」

女「情けない顔しなやー」

男「あ、おれ、すっごい、幸せやった」

男「生まれ変わったら、またお前を好きになるから!」

女「おう」

女「こっち向いて」

男「ん」

女「……ん」チュッ

男「!?」

女「ひひ、できた」

男「え? え?」

女「わたし、天才やろ」

男「……」

男「はは、お前天才やわ」

女「ほなな」

男「……盆には……また帰っといで」

女「おう、できるか知らんけど」

男「線香のにおい、好きやったやろ」

女「うん、好きやった」

男「大福、供えたるから」

女「イチゴ入ってるやつな」

男「あれ高いねん」

女「一年に一回くらいええやろ」

男「わかったわかった」

女「わたしの声が聞こえたら、また相手したって」

男「……おう」

女「ほなな」

スゥ……

男「あ……」

男「ありがとう、幸せやったよ」

男「最後にまた会いに来てくれて、ありがとうな」

女「……見えんくなってもたか」

女「……わたし、まだおんねんけどな」

男「まだおんのかい!」

女「まだ聞こえんのかい!」ズコー


★おしまい★

関西弁可愛いから、よし自分も書こう、と思ってくれる人がいたらうれしいです

    ∧__∧
    ( ・ω・)   ありがとうございました
    ハ∨/^ヽ   またどこかで
   ノ::[三ノ :.、   http://hamham278.blog76.fc2.com/

   i)、_;|*く;  ノ
     |!: ::.".T~
     ハ、___|
"""~""""""~"""~"""~"


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