国王「明日、勇者には魔王討伐に出立してもらう」 (45)

大臣「お呼びでしょうか、国王陛下」

国王「うむ。遅かったではないか」

大臣「申し訳ありません。こののどかな常夏の港町は王都からあまりにも遠く離れておりまして」

国王「いつ何時であっても、朕の呼び出しには即応してもらわぬと国政が滞るというものだ」

大臣「こ…これは失礼いたしました!して、ご用件とは?」

国王「うむ、そなたは魔王のことを知っておるか?」

大臣「それはもちろん」

大臣「現在は伝説の勇者によって封印されていますが、復活させようとする不穏な動きが魔界で見られると…」

国王「どうやらその魔王が復活したようなのだ」

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大臣「なんと…それは本当ですか?」

国王「魔界に放った間者からの報告だ。まず間違いないだろう」

国王「そこでだ、大臣」

大臣「はっ」

国王「かねてから準備を進めてきた勇者による魔王討伐計画を、今こそ実行に移そうと思う」

大臣「かしこまりました。では、勇者や勇者と行動を共にする者たちを、来週後半に王都に招集しましょう」

国王「来週後半だと?」

大臣「はっ、これから討伐参加者に文を送りますので…」

国王「遅いわ!」

大臣「し、しかし…」

国王「既に魔王が復活したと言っただろう。初動の1分が、1秒が重要なのだ。即刻ここに招集するのだ」

国王「明日、勇者には魔王討伐に出立してもらう」

大臣「そうは言いますが、メンバーが…」

国王「幸い、勇者はこの港町の出身だ。それに、他のメンバーも事前に選定は済ませているではないか」

国王「明日の正午までにここに討伐メンバーを招集させよ。良いな!」

大臣「はぁ…かしこまりました。できるだけのことはしてみましょう」

国王「うむ、頼んだぞ」

大臣「…ところで国王陛下、なぜこのような港町に御滞在を?」

国王「うむ、バカンスにちょっとな」

大臣「おい!」

---(翌日正午)---

国王「大臣よ、勇者たちはそろったか?」

大臣「はっ、何とか」

国王「では、早速このホールに連れて参れ」

大臣「かしこまりました。…皆の者、入りなさい!」

「「「はっ!」」」ゾロゾロゾロ

大臣「国王陛下、私のほうから紹介させていただきます」

国王「うむ」

大臣「まず、勇者。今回の魔王討伐の要となる者です」

勇者「お久しぶりです国王陛下!この身を賭して魔王討伐に向かう所存です!」

国王「うむ、よろしく頼むぞ」

大臣「つづいてニート。勇者とともに旅をします」

ニート「よくわかんないけど、ひと夏の余興ってことで参加させてもらうんで、ま、よろしく」

国王「う…む…?」

大臣「つづいてリストラ無職。勇者とともに職探しの旅をします」

リストラ無職「リストラ無職と申します。このたび、国王陛下から頂いたこの任を天職と思い、私の経験を生かして働かせていただきたいと思います」

国王「何と…」

大臣「以上であります」

国王「待て待て待て!」

大臣「どうしましたか?」

国王「『どうしましたか』ってことがあるか!勇者以外の人選がおかしいだろうが!」

大臣「そうは申されましても、わずか1日では…」

国王「ええい、戦士はどうしたのだ戦士は!」

大臣「戦士は王都より北の工業都市の、さらに北にある氷の町の出身でして…」

国王「1日では厳しいというのなら、あと半日くらい待つぞ」

大臣「いえ、ここに来るにはお盆の帰省ラッシュに2回も巻き込まれるため、到着の目途が全く立たないとのことです」

国王「おお…、では、武闘家はどうした?」

大臣「武闘家は、この世界の裏側で4年に1度行われるスポーツの祭典に出場しているとのことで、とても戻ってこれないようです」

国王「よりによってこんな時に…」

大臣「恐らく、彼等もそう思ってると思いますよ」

国王「…で、では、僧侶はどうした?」

大臣「王都の寺院に連絡したところ、大神官殿に『先祖たちが一斉に帰ってくるこの時期に、僧侶を外に出せるわけがなかろう。愚か者めが!』と一喝されました」

国王「どいつもこいつも、くだらん言い訳をしおって…!」

大臣「お言葉ですが、こんな時期に魔王討伐を始める方が無茶かと」

国王「何が無茶なものか!日常生活と、この世界の存亡と、どっちが大事なのだ!」

大臣「魔王の動向は彼等には伝わっていないでしょうから、やむをえませんよ」

国王「そなたもそなただ。戦士たちが無理だとしても、この人選は何だ!」

大臣「多くのものが休暇をとっている昨日今日ですから、街をふらついている者は極端に少なく…」

国王「街をふらついている者から人選するな!」

大臣「しかし国王陛下、私が面接したのですが、リストラ無職の受け答えは素晴らしく…」

国王「そいつは面接慣れしているからだろうが!受け答えは素晴らしくてもどこにも採用されないってことは、人間性に難があるんだろうが!」

国王「そんなことも解らないとは、そなたはゆとりか?メタボを指摘され、コレステロール値と血糖値に注意するよう言われているらしいが、ゆとりか?」

国王「…待てよ、大臣。今、大神官殿に一喝されたと言ったか?」

大臣「ええ」

国王「という事は、勇者たちに神の祝福を与える儀式を行う大神官殿も来られないという事か?」

大臣「そこは私が交渉を重ねまして、大神官殿は明日の早朝、一瞬だけこちらに立ち寄られるとのことです」

国王「むぅ…、仕方がない。この3名で明日早朝、出立の儀を執り行おう」

大臣「その件ですが国王陛下、一つ朗報がございます」

国王「何だ?申してみよ」

大臣「大神官殿が、魔王討伐の候補者を一人連れてきてくれるそうです」

国王「おお、それは有り難い」

---(さらに翌日早朝)---

国王「おお、大神官殿。待っておったぞ」

大神官「いやいや、遅くなってしまったようじゃのう」ホッホッホッ

国王「笑い事ではないぞ大神官殿。そなたがいないと勇者たちが出立できないではないか」

大神官「いやしかしのう、先祖たちが帰ってくる大切な時期に討伐なんぞ始めずとも…」

国王「朕は先祖ではなく今を生きる民の生活を預かっているのだ。必要とあらば時期は選ばん」

国王「ところで大神官殿。魔王討伐の候補者を連れてきて頂いたようだが…」

大神官「おお、そうじゃった。ほれ、挨拶せい」

盗賊「っす。盗賊でやす」

国王「…なぜ盗賊?」

大神官「王都の神殿にある宝物を盗みに入った所を私が捕まえてのう。ピッキング能力はかなりのものだから役に立つであろう」ホッホッホッ

盗賊「素早さでもだれにも負けねえっす」

国王「老人の大神官に捕まっているではないか!」

国王「ところで大神官殿、勇者たちは既にロビーで待機している」

国王「早速出立の儀を執り行いたいのだが、彼らに神の祝福を与えてくれるだろうか?」

大神官「国王よ、そのことなのじゃが、神の祝福を与えるには私だけでは無理なのじゃ」

国王「何と…!どういうことだ?」

大神官「いや、神の祝福という以上、実際に女神の助力が必要となるのじゃ」

国王「その女神とやらに助力を求めればよいではないか」

大神官「勿論、助力を求めようと女神にLINEを送っているのじゃが、これが一向に既読にならんもので…」ホッホッホツ

国王「LINE!?世界観の話は置いとくとして、人類の存亡が懸かっている一大事の連絡手段にLINE!?」

国王「そなたはゆとりか?ひげを蓄え、白髪をなびかせているが、ゆとりか?」

大神官「まあまあ、そうカッカしなさんな。女神には連絡さえつけばよいのじゃ。今から電話してみよう」プルルル…プルルル…

国王「世界観が…あぁ…」

大神官「なかなか出ないのう…おっ」

女神“もしもしぃ?”ワイワイガヤガヤ

大神官「あ、女神様でいらっしゃいますかな。私、人間界の大神官と申しますが…」

女神“あー、大神官?どうしたんだよ一体”ヒサシブリジャネエカ イイカラハヤクオクニツメロッテ

大神官「実はこの度、私どもでは勇者に魔王討伐をお願いしようとしておりましてな、ぜひとも女神様のご助力を賜りたいと思いまして…」

女神“あー、はいはい。じゃあオーイコッチナマミッツー!に祝コッチハサワーヨッツー!てやるハヤクシロヨ”

大神官「も し も ー し ! どうも雑音がひどくてよく聞き取れないのですが!」

女神“わりーわりー。学生時代に一緒にヤンチャしてた奴らと久しぶりに同窓会やっててさぁ”

大神官「天界でもそんな季節とはのう…」

女神“人間が休んでる時期じゃねえと、うちらも休めねえだろ”

大神官「さて、勇者への祝福の件なのですが…」

女神“んー、いつ頃?”

大神官「今からお願いしたく…」

女神“あぁ!?今同窓会やってるっつってんだろ。明日以降で!”

大神官「いや、それでは勇者たちが出立できませんぞ。人間界が魔王に蹂躙されてしまっては遅いのですぞ」

女神“勇者とか装備に祝福という名のチート機能を与えるのなんて、勇者が魔王城に入る直前でいいんだろ?”

大神官「ま、まあそうですが…」

女神“んじゃ、その頃に遠隔でチャッチャッとやっとくから、とりあえず先に出立させちゃえよ”

大神官「少々お待ちを、国王にも聞いてみますゆえ」

大神官「国王よ、今日のところは形式的に出立の儀を執り行い、後日女神から勇者一行に祝福を与えるという形ではどうかのう」

国王「なぜそのような面倒な段取りを踏もうとする?」

大神官「女神は今同窓会で忙しいようなのじゃ」

国王「同窓会!?もういい、朕が直接女神と交渉する。そのスマホを貸せ!」バッ

国王「ああ、もしもし。私が人間界の国王だが」

国王「うむ、魔王が復活したとの知らせが入ったので、可及的速やかに魔王討伐を行いたいのだ」

国王「いや、それでは勇者一行の道中の安全が保障されないではないか。途中で不慮の事故に遭ったらどうするおつもりか」

国王「『それならそれまで』とはどういうことだ。一体人間界の将来をなんだと思っておるのだ」

国王「はっ…いや、そんなつもりでは…」

国王「い…いや、それは…」

国王「滅相もございません。朕…いや私は天界第一の下僕ですので…」

国王「も、もちろんでございます。女神様あっての大神官殿。大神官殿あっての王国でございます」

国王「いやいや朕…わたくしめなんぞ小さな王国で細々とした管理をお任せいただいているに過ぎない存在でございまして」

国王「またまた女神様もお人が悪い。私なんぞ駒のようにお使いくださいませ、はっはっは…」

国王「ええ…ええ…もちろんでございます女神様」

国王「ははあ、仰せの通りに。かしこましました!では…」ピッ

国王「…ふん」

国王「何だあのガラの悪い女神は!天界も堕ちたものだな」ケッ

国王「『死神を差し向ける』などと脅迫まがいのことを言いおって…!あいつ魔王じゃないのか?」

国王「大神官殿も苦労が絶えないな、あんなクソ女神が相手では…大神官殿、人が話している時にスマホをいじるとはどういう了見だ?」

大神官殿「いや国王殿、終話ボタンを押さないから通話が続いておるのじゃ。しかし私の老眼ではどれが終話ボタンだか…」

国王「」

今日はここまでとさせていただきます。
明日、いよいよ出立です。

こんな誰でも思いつきそうなネタはやっぱり何番煎じ状態ですか…
この後もお盆ネタで引っ張るしか考えていなかったので、
たぶん何番煎じが続いてしまいます。
期待してくださった方には申し訳ないのですが、
パクリのような状態を続けてしまうのはもっと申し訳ないので、
終了させていただきたいと思います。

また被りそうにない一発ネタを思いついた時には、
よろしくお願いいたします。

ああもう何番煎じだろうと番茶には番茶の味ってもんがあるぜ!

---(数日後)---

ニート「おいおい、勇者さんよ。魔王城ってのはこれか?」

勇者「これが魔王城…」

リストラ無職「長いようで短い旅路でしたね」

ニート「おざなりな感じの出立の儀から2日くらいしか経ってねえだろ。短いようで短い旅だったろうが」

勇者「まあまあ、ついさっき女神様の祝福も得たことだし」

盗賊「あれも何だか取って付けたような感じでやしたね」

ニート「何か俺たち、あまり期待されてないんじゃね?」

リストラ無職「そりゃ、あなたには社会が期待してませんよ」フッ

ニート「黙れよ、社会の歯車にもなれなかったゴミが」

盗賊「底辺のご両人には、社会の一員としての自覚が欠けてるでやすね」

ニート・リストラ無職「「あんたは反社会の一員だろうが!」」

勇者「まあまあ!いま俺たちがやるべきなのは魔王討伐だろ。些細なことは置いといて前に進もう」

リストラ無職「ここまで、全く敵にも遇わずすんなり来れたましたから、このままの流れで行きたいですね」

盗賊「これもあっしの能力の賜物でやすよ」

ニート「なんか俺たち、魔物にも相手にされてないんじゃね?」

勇者「相手にされないならそれも結構。俺たちの役割は、魔王が本格的に力をつける前に倒すことなんだ」

勇者「それじゃみんな、いざ、魔王城に入ろう!」ギイッ

~シーン~

ニート「…これだよ」

リストラ無職「もぬけの殻…ですね」

盗賊「こりゃあ腕が鳴るってもんでやすよ」ウヒヒ

勇者「盗賊!こんなところで宝箱を漁っても呪われるだけだ!」

ニート「おいおい、言っとくが『魔王様もお盆で帰省してました』なんてネタは意識高い読み手に叩かれる元だぞ」

勇者「魔王たちがなぜ魔王城にいないのかは知る由もないけど、俺たちの旅はネタでも何でもない!人類の存亡をかけた戦いだ!みんな、そのことを忘れるな!」

盗賊(リカバリーの仕方に無理があるでやすよ…)

リストラ無職(無理があっても見なかったことにするのが大人の対応って奴ですよ…)

勇者「お前たち2人の括弧書きが一番メタ要素メタ要素してんだよ!」

勇者「みんな、この城のどこかに魔王がいるかもしれない。すべてのフロアを虱潰しに当たっていこう!」

---(半刻後)---

リストラ無職「城内は全部回りましたけど、玉座も含めてもぬけの殻ですね…」

盗賊「宝物庫ももぬけの殻にしちゃったでやすよ」

勇者「…財宝を袋に詰め込んだまま、どうやって魔王と戦うつもりだ?」

ニート「ただ、このホールみたいな部屋だけが、客を待つかの如く磨きこまれてるってわけか」

勇者「手掛かりがあるとしたら、この部屋だろうな」

リストラ無職「あの…魔王様…?」

勇者「ん?どうしたリストラ無職」

リストラ無職「これだけ探していなかったんですから、『魔王はいなかった』ってことにして帰っちゃうというのはどうでしょう…?」

勇者「たった半刻探しただけで何を言い出すんだ!俺たちの使命を忘れたのか?」

ギイッ…ギイッ…

盗賊「シッ…!誰か来るでやす!」

ガチャッ

??「あいやあ、この城内も少し見ないうちにすっかり変わってしまったなや」

勇者「お、お前は何者だ!」

??「おや、お客さんだべか?」

勇者「俺は勇者。魔王を討伐するためにこの城にやってきた。魔王を知らないか?」

??「魔王?そいつは…俺のことだべな」

魔王「これは相手せねばねな」

ニート「なっ…」

リストラ無職「に…逃げましょう…」

盗賊「ぬ…ぬっ殺すでやす」

ニート「ね…寝言は寝て言えよ盗賊!殺る前に殺られるって!」

勇者「のんびり『あいうえお作文』なんてやってる場合か!」

勇者「はじまってるんだぞエンカウントは!」

魔王「久々の戦闘だなや…鈍った体を起こすにはちょうどいいか。どれ、全力で行かせてもらおう」コォォ…

盗賊「不穏な黒い瘴気…初めて見たでやす」ガクガク

魔王「ヘアッ!!」ゴオッ

リストラ無職「ほわっ!」ブルブル

勇者「見てたらやられるぞ!俺が前衛で切り込む!みんな、フォローを頼む!」

勇者「魔王!覚悟!」チャキッ

魔王「トオッ!」

勇者「しまった!魔王が後ろに!ニート危ない!」

ニート「ふん」ザシュッ

魔王「ぐおう!腕が!」

リストラ無職「は…反重力魔法!」

魔王「おおぅ…あ、足が…地に付かね…」

リストラ無職「勇者さん!魔王は文字通り浮足立っています!今こそその剣で魔王の胸を貫いてください!」

勇者「おう!」

魔王「ふっ、笑止!おらには魔法もあることを忘れるな」……

盗賊「!!!!!」

魔王「なっ、勇者の姿が見えねえ、どこさ行った!?」

勇者「何を訳の分からないことを!魔王、覚悟!」ザクッ

魔王「く…っ…!おらの負けだ…」

勇者「とどめだ!」

魔王「待て待て、その必要はねえ。おらはもう消える」

勇者「そんなの信用できるか!」

魔王「本当だ。いやあ、戦術は進化してるんだな。久々に楽しませてもらったぞ、おめえら…」フッ

盗賊「本当に消えた…」

ニート「これでいい…のか?」

リストラ無職「はは…やりましたね勇者さん!」

勇者「いやいやいや!みんな一体何者だよ?」

勇者「魔王が目前に迫って来た時の、ニートの冷静な剣さばきは何なんだ?」

ニート「俺の家は、代々王国唯一の港の土地を所有している関係で、何もしなくても王国から潤沢な金が入ってくる」

ニート「そんな家だから、小さいころから剣術をはじめとする習い事はみっちり仕込まれたぜ」

勇者「実は隠れた名家ってわけか…」

勇者「それからリストラ無職の魔法、見たこともないけど一体何物なんだ?」

リストラ無職「私の前職は、港の倉庫の管理でしてね…」

リストラ無職「倉庫にうず高く積まれた商材を管理したり入出庫するのに、この反重力魔法が重宝しましてね」

勇者「そんな魔法、これまで見たこともないぞ?」

リストラ無職「魔法は学校や寺院で見かけるような、攻撃したり祝福したりというものだけではないんです。実用面でも社会を支えているんですよ」

勇者「それは知らなかった…。でも、そんな高い技能があるなら、なぜリストラなんか…」

リストラ無職「…傷口抉っちゃいます?」フフ

勇者「いや、すまない。そういうつもりではないんだ」

リストラ無職「冗談ですよ。実は私、実用的な魔法だけでは満足できず、反重力魔法に火炎魔法を組み合わせたらどうなるのかを会社の倉庫で実験してしまい…」

ニート「王国唯一の港を破壊し尽くした惨劇はお前の仕業か!」

勇者「すごいけど、盗賊以上の犯罪者じゃないか…」

勇者「…そういえば、魔王は最後に俺を見失っていたみたいだけど、俺は一体何が起こったんだろう?」

盗賊「あっしでやすよ」

勇者「えっ?」

盗賊「あっしは、自分だけでなく任意の対象の存在感を一時的にゼロにできるんでやすよ」

勇者「なんと…、じゃあ、この勝利は決してまぐれなんかじゃないんだ…」

盗賊「そうでやすよ。あっしらの能力の結集の賜物でやす」

勇者「そうか、俺たちは本当にやり遂げたんだ…」

パタパタパタ…

盗賊「シッ…!誰か来るでやす!」

リストラ無職「えっ?」

ガチャッ

??「わらわの知ってる部屋よりずーっと綺麗ではないか…」

ニート「何だあの二次元から出て来たみたいな少女は?」

??「!!…お前たち、何者だ?」

勇者「俺は勇者。魔王を討伐するためにこの城にやってきたが…もう帰るところだ」

??「待つのじゃ」

勇者「いえ、もう用件は済んだので…」

??「面白そうではないか!わらわもお手合わせ願えぬか?」キラキラ

勇者「俺たちは遊びに来たわけじゃないんだ。一刻も早く国王の許に戻らないといけない」

??「なら、こう言ったらどうじゃ?---わらわが魔王じゃと」ニコッ

ニート「はぁ!?」

リストラ無職「確かに年齢的に先代魔王?の娘なのかもしれませんが…」

盗賊「即位が早すぎるでやすよ!」

勇者「いや、魔王というのはそういうものなのかもしれない。俺たちの使命は、魔王の芽を摘むこと」

勇者「つまり、やるしかない…!」

ニート「待てって!」

盗賊「あっし、いたいけな少女に手を掛けるなんて嫌でやすよ!」

リストラ無職「やめましょうよ…」

勇者「見た目は罠かもしれないんだぞ!みんな、覚悟を決めよう!」

盗賊「ひいっ」

リストラ無職「ごめんねごめんねごめんね…」

ニート「俺、一生勇者を許さないからな!」

~~~

ニート「…ふう、もうこんな剣、俺は二度と握れねえ」ガクッ

リストラ無職「少女殺人犯より爆弾魔の方が、まだ人として生きていけました…」

盗賊「あっしだって、いくら反社会に生きる身とはいえ、人道に反したのは今日が初めてでやすよ!」

勇者「仕方ない、仕方なかったんだ…」ギリッ

ニート「おい勇者さんよ!さっさとズラかろうぜこんな所はよ!」

ズシン…ズシン…

盗賊「シッ…!誰か来るでやす!」

リストラ無職「もう何なんですかこの城は!」

---(一刻後)---

ニート「だぁーっ!何なんだ魔王って奴は、次から次へと…!俺たちはいったい何人倒せばいいんだよ!」

盗賊「もう5人は倒したでやすよ…」

リストラ無職「私にはもう魔力がありません。これ以上の戦いは無理です…」

ニート「俺だってもう剣が折れちまったよ!」

盗賊「勇者さん、そろそろ戻るでやすよ」

勇者「でも…」

~~~

??「ウランバナの準備は終わりましたね」

??「ああ、そろそろ集結していることだろう」

??「今年も年に一度の宴が始まりますね、魔王様」

魔王「我は、歴代魔王が一堂に会するこの宴に、現魔王として参加するのは初めてだ。楽しみだぞ、側近」

側近「ええ、この宴を経て魔王様は力がより強く、配下の者は結束がより強くなるのです」

魔王「ふふ、まさか我が魔王の立場でウランバナを主宰するとは…皆の者!今日は魔王城で夜通し飲み明かすがよい!!」

魔族s「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

ニート「おい勇者さんよ…。なんか城の外にとんでもない強面の野郎と大量の魔族が集結してるぜ…」

リストラ無職「ひいっ」

盗賊「勇者さん、グズグズしてるからまた面倒なことになるんでやすよ…」

勇者「グズグズとは何だ!危険の芽を見過ごすことなどできるわけがないだろ」

ニート「今の俺たちの体力じゃ、立ち向かうこともできねーだろうが!」

勇者「くっ…!」

リストラ無職「いいですか勇者さん、落ち着いてよく聞いてください」

勇者「なんだ?」

リストラ無職「私たちは国王陛下の『魔王を討伐せよ』との命を受けてここに来ました」

勇者「ああ」

リストラ無職「普通に考えらた魔王『一人』を討伐することを意味するでしょう」

勇者「まあ」

リストラ無職「ところが私たちは、すでに魔王を5人も討伐しました。ここで帰っても、咎めを受けるどころか5倍の褒賞を頂戴すべき状況なのです」

勇者「う…ん…?」

リストラ無職「ですから、ここで胸を張って凱旋しましょう!」

勇者「そんな馬鹿な…!」

盗賊「馬鹿な話じゃないでやすよ!ほら、帰りましょう」ヒョイ

勇者「待て盗賊、俺を担ぎ上げるんじゃない!」ジタバタ

盗賊「こうでもしないと勇者さんはいう事を聞かないでやすよ」

ニート「あー早く家帰って寝てえ」

=完=

煽られるままに書き進めてしまいましたが、こりゃないわ…
コンクリートに詰めて海に沈めたい内容なこともあり、html化依頼をさせて頂きました。
既出ネタであることをご指摘いただいた方をはじめ、貴重なご意見をありがとうございました。

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