モバP「だりやすかれんの親愛度」 (17)



―――事務所


P「ハートドリンク?」

ちひろ「はい。なんでも、年頃のアイドルとのコミュニケーションを円滑に図るために開発された新薬らしいです」

P「新薬……。具体的にはどんな効能が?」

ちひろ「説明書には……『飲んだとき近くにいる異性がより魅力的に見えるよう錯覚し惚れさせます』、とありますね」

P「うん、危ない薬ってことがよく分かりました。なんでそんなものがウチに」

ちひろ「所長さん宛に美城プロから送られてきまして……元社員の縁だそうですけど」

P「えぇー……。相変わらずだなあそこは……」

ちひろ「う、うーん……。私たち、所長さんに引き抜かれて正解だったかもしれませんね」

P「ですねぇ」


李衣菜「――甘っ。なにこれ美味しいね」

泰葉「栄養ドリンク……? 勝手に飲まないほうがいいんじゃ」

加蓮「平気平気、別に怒られないでしょ。ほら泰葉も♪」

泰葉「んぐ。……あ、美味しい……」


「「あっ」」

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P「ちょ、お、おいおいおい飲んだのかそれ!?」

ちひろ「ああああごめんなさい置きっぱなしにしちゃってました!」

李衣菜「ひゃっ。あ、やっぱりダメでした? えへへ」

加蓮「たくさんあったしいいかなと思って。ふふっ」

泰葉「ご、ごめんなさいっ。そうですよね、これはPさん用の……!」

P「いや、俺用でもないんだよそれ! 大丈夫か!?」

ちひろ「か、体になにか違和感はありません!?」

李衣菜「違和感? ……特にないですけど。大丈夫ですよ、すごく甘くて飲みやすかったです」

加蓮「うん、なんていうか……女の子の好みにドンピシャ、って感じ? 普通に流行りそう」

泰葉「……もう一本飲みたいくらいには美味しかったです」

加蓮「ふふっ、甘いの好きだもんねー泰葉は」

李衣菜「でも栄養ドリンクでしょ? 飲み過ぎたら確実に太るよこれ」


P「……なんともないようですけど」

ちひろ「みたいですね……。プロデューサーさん、実は女性説?」

P「んなわけないでしょう」

ちひろ「ただの誇大広告だったんでしょうか……?」

P「や、まぁ字面通り受け取ったらただの媚薬ですし……さすがにあの美城でもそんな代物を堂々と作るはずが」


加蓮「あ、なんだか体ぽかぽかしてきたかも。お腹あったかい」

李衣菜「うん、元気出てくる感じするね。効果てきめん、ってやつ?」

泰葉「2人とも顔赤い……ふふ、火照ってる?」

加蓮「泰葉だって赤いよー?」クスクス


P「まずいですね」

ちひろ「ええ、まずい気がしてきました」

P「……ちょっと出たほうがいいですかね」

ちひろ「そ、そうですね。落ち着くまでプロデューサーさんは離れていたほうが……」

P「じゃあ適当にその辺をうろついて……」

泰葉「あ……Pさん、お仕事でしたか? どこへ……?」

P「えっ、あー……いや、そうじゃないんだけどな。ちょっとぶらつこうかなーと」

李衣菜「だったら、私たちも一緒に。せっかくのオフですし、できるだけPさんと過ごしたいです」

加蓮「そもそも事務所に遊びに来たのもPさんに会うためだしねー」

李衣菜「へへ、どこ行きます? CDショップとか、楽器屋もいいですよね♪」

加蓮「私は映画がいいなー。あまーい恋愛映画なんてどう? ふふふっ♪」

泰葉「私は……Pさんの行きたいところで。2人とは違ってわがままは言いませんよ」

李衣菜「なにそれ泰葉ー!」

加蓮「自分だけ点数稼ぐ気ー!」

泰葉「ふふ、そんなつもりはないけど……♪」


きゃっきゃっ


P「あ、あー……! えっと、そのだな――!」

ちひろ(あれ……? これっていつもとそんなに変わってないのでは)



―――


李衣菜「――はぁ。栄養ドリンクじゃなくて薬だったんですか?」

P「あ、ああ。どんなが副作用があるか分かったもんじゃないし……すまん、飲む前に注意すれば良かったんだけど」

泰葉「い、いえ、私たちも勝手に飲んでしまって……本当にすみませんでした」

加蓮「うん、ごめんなさい……。って、でもそんなに距離取らなくてもいいんじゃない?」

P「だって近くにいる異性に、って説明あるから……い、一応な?」

李衣菜「うぅ……私たちが悪かったですけど、そんなに離れられたら寂しいですよー」

加蓮「Pさん、大丈夫だってばー。私たちなんともないよ?」

P「万が一ってことがあるだろ? 俺はしばらく外にいるから、3人はここで待機しててくれ」

李衣菜「ええー、そんなこと言わないでくださいよ~……」

泰葉「というか、本当にそんな……惚れ薬みたいな効果があるんですか? いくら美城プロの製品開発部と言っても……」

ちひろ「あのスタドリやエナドリを開発したところですからね……。どうとでもなりそうなのがまた……」

泰葉「……説得力はありますね……。でも、他になにか書いてないんですか? 対象外、みたいな」

ちひろ「あぁ、たしかに。待ってくださいね……効能のインパクトが強すぎて他のところを読み落としてるかも」ペラペラ…

泰葉「はい、お願いしますちひろさん」


加蓮「待ってよPさーん♪ 逃げないでよーっ」テテテー

P「か、加蓮! こっち来るなっての!」

李衣菜「もう……加蓮、Pさんを困らせちゃ――」

加蓮「李衣菜っ、挟み撃ち!」

李衣菜「……よし、任せて♪」タタッ

P「こら李衣菜!?」


泰葉「……早くしてあげてください、Pさんがいつものようにおもちゃにされてます」

ちひろ「ああもう、詳しい作製工程とかいらないでしょ……! 頼まれたって作りませんよこんなもの!」ペラペラペラ

ちひろ「――あ、あった、ありましたよっ。『以下の場合、効果は無く』――」

泰葉「あ、本当ですかっ?」

ちひろ「『対象となる異性に既に一定以上の愛情がある場合は、即効性の栄養剤となります』」

ちひろ「『この場合の効能は血行がよくなり体温の上昇など』……ですって」

泰葉「はぁ、なるほど。……ん? なるほど……?」


加蓮「つっかまーえたっ♪」ムギュ

李衣菜「へへっ、Pさんゲットだぜ♪」ギュー

P「なああもう! いい加減にしろっ!」

「「えへへー♪」」


泰葉「……薬、効果無いってことでいいんでしょうか?」

ちひろ「そう……ですねぇ。私見ですけど、普段とまったく変わらないと思います」

李衣菜「泰葉も手伝って、Pさん抑えるのっ!」

加蓮「おとなしくしてよPさんっ、大丈夫だって♪」

P「いやだー! 薬のせいで好かれても嬉しくないー!」ジタバタ

泰葉「……ふふ。うんっ、私も混ぜて!」ギュッ

P「うわ、泰葉まで! これ薬の効果なんですよねちひろさんっ!?」

ちひろ「ふふっ♪ さて、どうでしょうねー?」

P「えええ、なんでそんな温もりで溢れた目で見てるんですか!」

李衣菜「Pさん、やっぱり今から出かけましょう!」

泰葉「わがまま、少しくらい言ってもいいですよね……♪」

加蓮「買い物には荷物持ちも必要だしね♪」

P「分かった、分かったから! どこでもついてくからとにかく離れろ、っていうかお前たちなんかすごくあったかいな――!」



ちひろ「ふふふ。私も飲んでみよう――」

ちひろ「……うん。私も変わらないみたいです、プロデューサーさん♪」ポカポカ…



おわり

というお話だったのさ
346の技術力は世界一

ひとつ前のお話
李衣菜「北条加蓮」泰葉「南国の姿」

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