【モバマスSS 】凛「寄せては返す」 (8)

今更ながら渋谷凛ちゃん生誕祭SSです。

〇地の文あり
〇短い
〇なんか書きたいことだけ書いた感じ

です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1470841003

急にスカウトしてきた、怪しい大人。
そんな印象だったのが、2人の時間が長くなる度に変わっていった。

川の水が流れて、海へ辿り着くように。
いつしか、憧れは好意へと流れていった。

......................................................

陽が強く射す朝、目覚まし代わりに届いたメール。
内容は簡単なものだった。

[誕生日おめでとう]

プロデューサーらしい簡潔な文面。

「覚えてたんだ......」

自分の誕生日を覚えていていてくれたことに、少しだけ胸が暖かくなる。
でも、それだけでは物足りないから。
寝ぼけた顔で驚くプロデューサーが見たくて、私はベッドから起き上がった。

......................................................

シャワーを浴びて、身だしなみを整えて、私に一番似合う服を選んで。
家を出て、事務所へと向かった。
前にちひろさんからこっそり借りた合鍵を使って、事務所の分厚いドアを開く。

小さい仮眠室のドアをこっそり開けて、呑気に寝ているプロデューサーの顔を覗き込む。少し焼けた頬に手を当て、何回か軽く叩いた。

「......プロデューサー、起きて」

「ん......何だよ......」

「ふふっ......」

少しラフな口調。
寝ぼけている間だけ見せてくれる素顔に、つい笑みがこぼれる。
仕事の時とは違う間抜けな顔を見て、イタズラをしたくなってしまった。

狭いベッドの中に潜り込み、プロデューサーの体を抱きしめた。
外見よりもがっしりした体つきと温かい体温を感じて、私の顔が熱くなっていくのがわかった。

「......凛......?」

照れを誤魔化す様にプロデューサーの顔を見つめると、プロデューサーが半目になりながらこっちを見ていた。
その表情に、愛しさを感じて。
「好き」という感情が、波を立てて寄せてくる。

「えっ、ちょ、お前、何して......」

もう既に意識が覚醒したらしいプロデューサーが、私を見て顔を真っ赤にしていた。大人らしくない、初心な顔。今まで彼女がいたことはあったのかな?

不意に、奈緒の言葉を思い出した。
人間は目を開けているだけでは覚醒していると言えなくて、目に写っているものを把握して、それで理解の助けになるって。

もう、一瞥。目の前には、好意を寄せている人。
大胆な行動を取った代償に、急に恥ずかしさが込み上げてきた。
私はまだ、目覚めていなかったみたいだ。

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