俺ガイルのifストーリー。
季節は2年の3学期。
SS初投稿です。
誰も幸せにならないSSなのでご注意ください。
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結衣「ヒッキー…、さがみんがしんじゃった」
八幡「はぁ?」
三学期、年が明けて最初の登校日。俺がクラスに入ると目を真っ赤にし涙を浮かべる由比ヶ浜が小声で話しかけてきた。
由比ヶ浜にそう言われ相模の席を覗き込む…と、相模が使っていた机の上に花瓶に入った花が添えられていた。
クラスの雰囲気も正月の休み明けなど関係なく、皆が押し黙り悲痛な面持ちだ。俺の登校がいつも通りギリギリだった事もありすぐに担任が入ってくる。
学校側からは冬休み中に相模が交通事故が原因で亡くなった事。現在、親御さんと確認している最中なので極力騒ぎ立てないで欲しいという旨の連絡だった。言い回しは柔らかかったがいわゆる箝口令(かんこうれい)というやつだ。
重苦しい雰囲気のまま始業式へ向かう。特に相模の事は話題に上がらずいつも通りの挨拶が終わると教室に戻りSHR終え放課後になる。授業は明日からという事もあり担任が早く帰れと生徒達を追い出し始める。
それぞれ席を立ち教室を出て行くが、帰る者同士でヒソヒソと話しているのが伺える。俺は特に会話に参加するでもなくそのまま奉仕部へと向かった。
後ろにいる由比ヶ浜の気配を感じながらドアを開ける。
八幡「うす」
結衣「やっはろ一…」
俺が部室へ入ると、由比ヶ浜もそれに続いた。
雪乃「こんにちは、由比ヶ浜さん。比企谷くん。久しぶりかしら」
八幡「まぁ、そうだな」
結衣「うん。あっ、あのね…ゆきのん」
雪乃「なにかしら、由比ヶ浜さん」
結衣「もう知ってるかもしれないけど、あの…、えっと……、さがみん…相模さんがしんじゃったんだ……」
雪乃「えっ…、それはどういう事かしら、由比ヶ浜さん。知らない事なのだけれど」
八幡「俺達もさっき教室で聞いたんだ。交通事故だったらしい。それ以外は特にわからん」
雪乃「そうなの…。相模さんが…」
あれから三日ほど経ち教室の活気も少し戻りつつある。その間に相模は自殺だった事が分かった。年末に車に撥ねられ先日息を引き取ったらしい。今になって考えれば、悩んでいた素振りはクラスで何度か目撃されていたようだ。
奉仕部に着きいつも通りイスに座ったところで…
結衣「ヒッキー、ゆきのん。さがみんの事で話しておきたい事があるんだ」
八幡「なんだ…」
雪乃「ええ」
俺は息を呑み、雪ノ下は本を閉じる。
結衣「さがみん…なんか悩んでたみたい。あの体育祭の後、遥ちゃんと、ゆっこちゃん、二人とギクシャクして結局ケンカしちゃったらしくて…それでスゴく落ち込んでたみたい……」
結衣「ヒッキー…。さがみん二学期の最後の方って、けっこう休みがちだったじゃん?来ても体育とかずっと休んでたし。あの時の雰囲気的にもなんか病んじゃってたんじゃないかって、他の子が……」
結衣「あと、前にさがみんのノートをチラっと見た子がいて、『体育祭の委員長なんてやらなければよかった』って、埋め尽くすように書いてあったんだって……」
雪乃「…」
結衣「ねぇ、やっぱりあたし達の所為なのかな…。
さがみんを体育祭の委員長にしなかったら、こんな事にならなかったのかな?二人共もさがみんの友達のままだったのかなぁ……。もう、分かんないよ」
八幡「由比ヶ浜…」
体育祭が終わった後の相模は前と同じような印象だった、それは覚えている。だがそれ以上に相模の心を圧迫したものが体育祭で生まれた二人との軋轢(あつれき)だ。
その原因を作ったのは相模を担ぎ上げた俺達奉仕部なのは明らかだ。そして俺達は体育祭が終わりクラスの雰囲気が改善された事で全てが終わったと思い込み満足してしまった。
だが、相模とあの二人の仲が拗(こじ)れていたのは誰が見ても明白だ。体育祭の後、相模と二人の溝を埋めるのは簡単な事だったはずだ。なのに気づいていながらそれを放棄した。
分かっていた事なのに……。自分なら簡単だから、自分のケツは自分で拭くのが当たり前の事だから。それは大した事じゃないと、己が尺度で測りあげく丸投げしたのだ。相模の精神的な弱さは十分理解していたはずなのに…。
結衣「それに…あたし、さがみんに終業式の日に声掛けられたんだ。時間あるかって」
結衣「なのにあたし。クリスマスイベントの準備があったから、忙しいから無理って断わっちゃって……」
結衣「あの時、さがみんの話をちゃんと聞いてあげたらって思うと、あたし……」
由比ヶ浜の目からはポロポロと涙がこぼれ落ちていた。
雪乃「由比ヶ浜さん。あなたの所為ではないわ…」
雪乃「私が…彼女の人生を台無しにしてしまったのよ」
八幡「雪ノ下…」
雪乃「体育祭で…相模さんに自信を取り戻してもらおうと思っていたはずなのに……傷つけただけ」
雪乃「人ごとこの世界を変えるだなんて大層な事を言っておいて、相模さんの命を奪ってしまったわ……。結局、人一人満足に救えていないじゃない」
雪乃「私がいれば…そう思っていたのだけれど。本当に救えなくて変えるべきは、そんな思い上がった自分だったなんて…」
そう言い頬を伝う涙を隠す事なく決意した表情を見せる雪ノ下。俺は不謹慎だと分かりながらも、その美しさから目を逸らす事ができなかった。
結衣「ゆきのん……」
八幡「……」
雪乃「由比ヶ浜さん、比企谷くん…」
雪乃「もう終わりにしましょう……。奉仕部はこのまま活動を続けるべきではないわ。これ以上、犠牲者は出せないもの……」
八幡「分かった」
結衣「そう…だね」
その後長く続いた沈黙のから別れるまでの間、俺は二人に対して何も言う事ができなかった。
こうして奉仕部としての活動は終わり。その後も俺達は互いに干渉する事なく、それぞれの道を歩んでいった。
平塚先生も体育祭での監督責任を追及され他の学校へ異動になった。それほど問題になった訳ではないはずだが、噂も色々出てきたからか学校側として責任の所在を明らかにした形だろう。先生にとってはこの学校に残るより良かったんじゃないかと思う。
卒業した今となっては、総武高で奉仕部の存在を知る者はほぼいない。記録にも残っていないのかも知れないが、そのほうが良いかもしれない。
相模南の死を始め、この学校は奉仕部によって何人もの人生が変わってしまったのだから。
やはり俺が奉仕部に入ったのはまちがっている
おわり
見ていただいて、ありがとうございました。
このSSまとめへのコメント
交通事故なんだろ?関係なくね。
元凶である屑山殺せよ!ゴミks