絵里「穂乃果ってすごいわよね」
穂乃果「ん?」
絵里「ほら、穂乃果が屋上でラッパを吹くと白いハトがどこからともなく現れて飛んで行くじゃない?」
穂乃果「そんなこともできたような……」
絵里「実は私もあれやりたいの」
穂乃果「え?」
絵里「わたしも・あれが・やりたい」
穂乃果「えぇぇ……」
――屋上
穂乃果「はい、じゃあもう一回だよ絵里ちゃん」
絵里「すぅぅ……」
絵里「――――っ」プェエエ~
――しーん
絵里「……やっぱりだめみたい」ハァ
穂乃果「絵里ちゃんのラッパはぜんっぜん気持ちが伝わってこないよ!」
絵里「いや、吹き方とかそういう問題じゃないの?」
穂乃果「もっとこう『ハトさんあつまれー!』って気持ちを込めるんだよ!」
絵里「へ、へぇ……精神論なのね」
穂乃果「穂乃果がお手本やるから絵里ちゃんはよく見てて!」
絵里「え? ええ」
穂乃果「すぅぅぅぅっ…………!」
穂乃果「――――――っ!!」パラッパッパッパー♪
――ばさばさばさっ! バサバサバサバサ……
絵里「す、すごい……」バサバサバサ
穂乃果「絵里ちゃん、しっかり特訓ファイトだよ!」
穂乃果「まごころで呼び出すんだよ! じゃあね!」
――バタン!
絵里「……」
絵里「……」スゥゥ
絵里「――」プェェ~
絵里「……」
絵里「んーん……」ハァ
絵里(まごころ……まごころ?)
絵里(とにかく、こう……『来て』って強くイメージして)
絵里(気持ちを強く、強く込めて――)すぅぅぅぅっ
絵里「――――っ」パラッパー♪
絵里「吹けたわっ」パッ
絵里「鳥はっ!?」キョロキョロ
――しーん
絵里「……なんてね」フゥ
――バタン!
絵里「ん?」クルッ
ことり「……!」
絵里「こ、とり――? どうしてここに?」キョトン
ことり「あ、あのね! なんとなぁく、絵里ちゃんに呼ばれたような気がして……!」
ことり「そんなはず、ないんだけどなぁ……」
絵里「うーん、私はただラッパを吹いていただけで――あっ」ピーン
絵里(鳥は鳥でも「ことり」を呼んでしまった、ってコト?)
ことり「絵里ちゃん? おぉーい!」
絵里「あ、ごめんなさい! ええっと、実はね――」カクカクシカジカ
ことり「――――なるほど、ラッパでハトさんを呼ぶ特訓をしてたんだね」
絵里「そうなのよ。でも穂乃果に『気持ちが伝わってこない』って言われちゃって……」
絵里「悔しいからぜっっったいにハトを出したいのよ!」
ことり「……能力の行使には『まごころ』を消費――」ブツブツ
絵里「? 何か言った? ことり」
ことり「! な、なんでもないのよ! なんでも!」アタフタ
絵里「まごころ、ねえ……。それってどうやったら込められるんだろう」ウーン
ことり「『まごころ』かぁ……。あ、そうだ!」
ことり「絵里ちゃん、ちょっと目をつぶっててね?」
絵里「? こう、かしら……」ギュッ
ことり「――――『告げる《order》』」ブワァ
絵里「ことり……?」
ことり「『爾、吾ガ左ヲ以テ全トシ、右ヲ以テ壱トセヨ』――!」ゴォッ
絵里「な、何が起こっているの……!?」
ことり「『此処ニ出ルハ終焉ニシテ開闢ノ獣――顕現《appearance》』ッ!」ドォンッ
絵里「――! な、何かの……気配!」
――しーん
ことり「絵里ちゃん、目、開けていいよぉ♡」
絵里「こ、これは……!」
絵里「…………小さな、鳥?」パチクリ
鳥「ぴよ?」ピヨ
ことり「ね? どぉ、絵里ちゃん? 何かわかった?」
絵里「いえ――全く、何もわからないわ」
ことり「そっか。そう、だよね……」ブツブツ
ことり「今の絵里ちゃんがハトさんを呼べないのって、きっとそういうことだと思うなぁ」
絵里「どういうこと? あんまりよくわからないんだけど」
ことり「今ことりはこの子――ぴよ子ちゃんを『顕現《appearance》』させた。でもその間、絵里ちゃんは何も感じなかった。でしょう?」
ぴよ子「ぴぃ!」ピチチ
絵里「……ええ。何かこう、ぶわっ、とか、ごぉーっ、とかは感じたけど」
ことり「そっか。じゃあきっとそれが今の絵里ちゃんの限界」
ことり「うーん、分かりやすく言うと……レベルが上がりきっちゃってるんだよね、絵里ちゃんは」
絵里「そんな! じゃあ……。じゃあ、私にはラッパで鳥を呼ぶことはできないってこと……?」
ことり「今のままでは、ね。でも、もしかしたら」
絵里「もしかしたら?」
ことり「レベルの上限を上げれば、できるかもしれない。――興味、ある?」
絵里「……あるわ!」グッ
ことり「じゃあそのラッパを持って、今週末ことりのうちに来てください♪」
ことり「ことりが手取り足取り、一から十までぜーんぶ! ――――教えてあげます♡」ニコッ
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