ガンスリンガーシンデレラ (51)


ガンスリの設定×アイマス(デレマス)

キャラの口調、呼称など一部異なっております。
見る人によっては不快な気分になるかもしれません。ご了承ください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1469138736


 [福祉技術研究所]


所長「福研へようこそ――武内くん」

武内「こちらこそよろしくお願いします」

所長「だいたいの話は聞いていると思うが……」

所長「そして、こちらから声をかけておいてなんだが」

所長「今からいくつか質問をして、君の適性を簡単にだが調べさせてもらう」

所長「それと同時進行で、これからの話をさせてもらうよ」

武内「かまいません」

所長「まず――武内くん」

所長「現在、この日本をどう思う?」

武内「どう……とは?」

所長「君の思ったままでいい」

武内「一言で表すならば……。混沌としていますね」

所長「その通り」

所長「移民の流入、治安の悪化、他国との武力衝突、テロリズム、そして局所的に内戦も起こり」

所長「我が国の警察、自衛隊だけで全てを治めるのは困難な事態になった」

武内「はい」

所長「そこで……。政府はこの組織を設立した」

所長「義体――君も説明を受けただろう」

武内「はい」

所長「いずれ起こる可能性の高い、大規模な争い」

所長「それに備えるため、そして未然に防ぐため……軍備の増強や軍事技術の発展が急務となっている」

所長「その一端を担っているのが、我々が研究している義体技術」

武内「その技術の集大成が『あの女の子たち』のことですか?」

所長「そうだ」

所長「もちろん、まだ完成形ではない。改良点は山ほどある」

所長「将来的には自衛隊、一般への普及を目指している」

所長「この組織、そして義体はいわば前日譚にすぎない」

所長「我々が現在行っているあらゆる業務は、義体技術の普及を目指した試験運用」

武内「はい……」

所長「そして、武内くん――君にもその使命を果たしてもらいたい」



武内「はい」

所長「レンジャーとして最前線を経験」

所長「とある前線での掃討任務の際、解放戦線のゲリラ攻撃を受けて左目を負傷」

所長「現在の視力は?」

武内「術後は良好ですが……。負傷の影響で視力は大幅に低下し、視界のほんの一部が歪んでいます」

所長「なるほど……。日常生活に支障は?」

武内「ありません」

所長「激しい運動は?」

武内「できます」

所長「よろしい……」

所長「それでは、君が自衛隊を除隊した理由は、第一線で戦うことができなくなったから――それで良かったかい?」

武内「その通りです」

武内「手術は成功しましたが、視力の関係で第一線から外されました」

所長「君が望めば、留まることはできたということか」

武内「はい」

所長「第一線にこだわる理由は?」

武内「戦闘です」

所長「戦うことが好きなのか?」

武内「違います」

所長「それでは、なぜ?」

武内「解放戦線の奴らを殺すためです」

所長「そこまで憎む理由は……」

武内「それは――」

所長「幼い頃に、家族を殺害されたから?」

武内「……」

武内「はい」

所長「故郷を追われ、一時的に疎開を余儀なくされた」

所長「その後君は養護施設で育ち、自衛隊へ入隊」

所長「――なぜ、我々の声に応えたのかね」

武内「この研究所では、義体とともに特殊な任務を行っていると聞いたので」

所長「その任務で、解放戦線の人間を消すことができるから……というわけか?」

武内「はい」

所長「なるほど……。よろしい」

所長「この場所では、君の望みが叶うだろう」

所長「その代わり、こちらの要求にも応えてもらうことになるが……いいかね?」

武内「もちろんです」

所長「君には義体の担当官になってもらいたい」






武内「担当官……」

所長「ああ……。義体を一人前のキリングマシーンに育ててもらいたい」

武内「……」

所長「いいかね?」

武内「……」

武内「はい」

所長「よし、決まりだな」

所長「武内くん、君を歓迎しよう」

武内「ありがとうございます」

所長「さっそくだが――君が担当することになる新しい義体を紹介しよう」

所長「ついてきたまえ」

武内「はい」





 [調整室]


所長「ここで義体の調整、修復などを行っている」

所長「身体的に重大な障害を持つ人間の中から選ばれ、ここで義体となる」

ちひろ「所長、お疲れ様です」

所長「彼女はここの技師をまとめるリーダーだ」

ちひろ「こちらの方は……」

所長「今日から正式に担当官となった武内くんだ」

武内「よろしくお願いします」

ちひろ「なるほど、例の新しい担当官の方でしたか――こちらこそよろしくお願いします」

ちひろ「私は技術部、部長の千川ちひろです」

ちひろ「この調整室で義体の開発、調整などを行っています」

ちひろ「気軽に『ちひろ』と呼んで下さい。他の方もそう呼んでいるので」

武内「はい……。ちひろさん、でよろしいでしょうか?」

ちひろ「はい!」

所長「そして、ちょうど今調整を受けているあの娘が……君が受け持つことになる義体だ」

武内「……」

所長「ここの慣習で名前は担当官がつけることになっている」

所長「彼女は義体になってまだ日が浅い」

所長「ちひろ君、調子はどうだね?」

ちひろ「特に問題は見られません。条件付けも順調です」

武内「条件付け……。つまり、洗脳のことでしたよね?」

所長「そうだ。身体能力、感覚器官を強化した、いわばサイボーグのような存在だ」

所長「条件付けによって担当官の命令を忠実に守る仕様となっている」

義体「あの……。はじめまして」

武内「……ッ!!」

義体「新しいプロデューサーさんですか……?」



武内「プロデューサー?」

武内「条件付けは確か……以前の記憶を封印・抹消することも可能だと……」

所長「ああ――しかし、先程述べた通りまだ試験段階の技術だ」

所長「一長一短、例外もあり得る」

ちひろ「申し訳ありません……。条件付けは順調なのですが……」

ちひろ「微かに以前の記憶と混同している部分がまだ見受けられる状態でして」

所長「許容範囲内だ、問題ない……。他の義体でも初期に見られる兆候だ」

所長「その内完全にリセットされるだろう」

義体「あの……」

所長「この人が、新しく君の担当官になる武内くんだ」

義体「武内さん……」

所長「条件付けによって、この環境や世界の知識は既に植え付けてある」

所長「安心したまえ」

武内「はい……」

武内「よろしく……お願いします」

義体「武内、プロデューサーさんですね」

義体「私、頑張ります……。よろしくお願いします」

武内「……」

所長「それでは、調整を続けてくれ……。邪魔したな」

ちひろ「いえ、お疲れ様です」

所長「武内くん、君にはこれからのことを説明しよう」

所長「次の場所へ移動しよう」

武内「はい」



 [所長室]


所長「少し混乱しているかな?」

武内「はい……」

所長「無理もない……。誰もが通る道だ」

所長「彼女はどうやら……以前はアイドルだったようだ」

武内「アイドル……?」

所長「彼女が出演するイベントに両親を招待した際、会場で爆弾テロが発生」

所長「テロで両親を失い、自身も瀕死の重体で病院へ運び込まれた」

所長「植物状態となった彼女の面倒を見る親戚もおらず、一人この世に取り残された」

武内「そして、この場所へ……?」

所長「そうだ」

所長「以前の記憶を消し、容姿を変え……彼女は義体として生まれ変わった」

所長「しかし、まだ以前の記憶……その欠片が残っているようだ」

所長「プロデューサーという単語も、恐らくそれのせいだろう」

武内「……」

所長「解放戦線によるテロだ」

所長「君と境遇も似ている……。いい相棒になるだろう」

武内「……」

所長「彼女を立派な義体として育て上げ、任務を成功させてほしい」



所長「従って、これから当分は彼女に訓練を施してもらう」

武内「訓練……」

所長「訓練を施すと言っても、何も『全て教えろ』というわけではない」

所長「既に様々な知識を条件付けで植え付けてある」

所長「君の役目は、彼女を任務に就けるように育てることだ」

所長「義体といっても個人差はある」

所長「共に過ごし、その性質を理解し、データを採取する」

所長「そうして完全な義体へ育て上げるのだ」

所長「彼女の特質を見出し、それに見合ったプログラムを施してくれ」

武内「特質……」

所長「射撃、格闘、教養、知識……一定の水準までなら条件付けでなんとかなるが」

所長「条件付けで補えない部分もある」

所長「それを義体へ学習させるのが君の役目だ」

所長「ここの規定の範囲内であれば、君の裁量で物事を行って構わない」

所長「無論、条件付けもだ」

武内「条件付けも……ですか?」

所長「ああ。彼女は君の相棒となる」

所長「つまり、君と共に任務へ赴くことになる」

所長「君が使いやすいように、条件付けによって改造を施してもよい……ということだ」

武内「はい……」

所長「念を押すようだが……規定の範囲内だ」

所長「過度な条件付けはただでさえ短命な彼女たちの寿命を更に短くする」

武内「……」

所長「担当官の仕事は、主にそのようなことだ」

武内「義体技術の発展のため、彼女を育て上げデータを採取する……」

所長「そうだ」

所長「例外を除き、こちらから一日のノルマや決まり事を言い渡すことはない」

所長「任務が入るまでは君の裁量に任せる」

所長「軍人の日常と似たようなものだ」

所長「頼んだぞ」

武内「かしこまりました……」



 [射撃訓練場]


武内(あれから――担当官としての日々が本格的に始まった)

武内(そして、俺が今置かれている状況……それを説明するには複雑すぎる闇がある)

武内(まず……この福祉技術研究所という組織)

武内(義体技術の研究……その技術をやがては軍や民間の医療へ役立てるため)

武内(未だ試験段階とはいえ、ここで生まれたノウハウは確かに還元されている)

武内(例えば――義手や義足、再生医療など)

武内(しかし、それはこの組織を世間へ肯定させるための手段に過ぎない)

武内(表の顔に過ぎない)

武内(裏の顔――それは、義体技術によって生まれたキリングマシーンを汚れ仕事に使役させること)

武内(この組織は政府の傘下に置かれている)

武内(ということは……彼女たちは政府の汚れ仕事に従事させられているというわけだ)

武内(反政府組織、解放戦線の人間を抹殺すること)

武内(謀反を企てる人間を粛正すること)

武内(所長は『前日譚に過ぎない』と言ったが、それは間違いだ)

武内(義体技術が発展し、それが完全に世界へ浸透しても)

武内(この組織が消えることはないだろう)

武内(それは所長が『キリングマシーンに育てて欲しい』と言った、あの言葉に如実に表れている)

武内(この組織がドロドロに汚れた秘密機関であることを隠しもせず認めているのだ)

武内(なんの罪もない、身体障害を負った少女を殺人マシーンに仕立て上げ)

武内(それをただ『人形』のように使いまわすのだ)

武内(使い捨ての人形だ)

武内(奴らは己の保身のために、復讐のために、欲望のために人形を使う)

武内(自分の手は汚すことなく、その業をいたいけな少女に背負わせる)

武内(クソ野郎どもだ)



義体「あの……。プロデューサーさん……?」

武内(しかし――俺もその内の一人に変わりない)

武内(現に、この少女を完全なる殺人機械へ仕立て上げようとしている)

武内(俺は何のためにここへ来た?)

義体「……」

武内(志半ばで散っていった戦友のため)

武内(家族の復讐のため)

武内(理由はある……あるんだ)

武内(しかし……。そのために動けば動くほど)

武内(二度と平和な世界へ戻れないような気がする)

武内(思い出が、帰る場所が遠のいていくような気がする)

武内(気のせいではない)

武内(俺は、一体どうすれば――)

義体「プロデューサーさん」

武内「すまない……」

義体「あの、撃ち終わりました」

武内「……」

武内「グッドショットだ」

武内「その調子だ」

義体「はいっ! ありがとうございます!」

武内「拳銃の次は――こっちを使ってみろ」

義体「これは、サブマシンガンですか?」

武内「ああ。これから数多くの場面で使うことになるだろう」

武内「今のうちに慣らしておけ」

義体「はいっ!」

武内「それと、俺はプロデューサーじゃない」

義体「あ、すみませんっ!」

義体「あの、自分でも分からないんです……」

武内「……?」

義体「どうしてこの言葉を言ってしまうのか……」

義体「自然と出てきてしまうんです……」

義体「あの、もっと条件付けで――」

武内「もういい」

義体「えっ……」

武内「無理して変える必要はない」

義体「あの、すみません……」

武内「謝るな――それより、早く弾を込めろ」

義体「は、はいっ!」



義体「――どうでしょうか?」

武内「ああ、いいぞ」

武内「よくやった」

義体「ありがとうございます! もっともっと頑張ります!」

武内「ああ。それじゃ、次は――」

???「調子はどうだい?」

武内「――?」

???「おっと、これは邪魔しちゃったかな?」

武内「高木さん……」

高木「バディの調子はどうだい?」

武内「……」

武内(高木さん――俺と同じく担当官の一人)

武内(この組織の設立初期から担当官をしている最古参の人間)

武内「順調です」

高木「教える人がいいからかな……。さすが元レンジャー」

武内「いえ、そんなことは」

???「高木さん、不器用だもんね」

武内「……?」

義体「あ、凛ちゃんっ!」

凛「お疲れ」

高木「誰が不器用だって!?」

凛「だから、高木さんのことだよ」

武内(凛――そう名付けられた、高木さんが担当している義体)

武内(彼がどう考えているのか分からないが、二人の信頼関係は厚い)

武内(そのように見える)

高木「俺はだな、一から丁寧に……」

凛「また始まった。いつもの説教かな」

高木「何が説教だ、いい加減にしろよ?」

武内(担当官というのは、何の感情もなく義体を人形同然に扱うものと思っていたが)

武内(彼を見ると……どうやら、そうでもないらしい)

武内(彼はこの義体のことをどう捉えているのか)

武内(機械、サイボーグ……。それとも、特殊ではあるが人間の一種とか)

凛「はいはい、冗談だよ」

高木「まったく……」

凛「……」

武内「……?」

高木「ん? どうした?」

凛「でも、いい加減にしなかったら――どうするの?」



武内「……ッ!!」

高木「どうしたんだ? 凛」

凛「条件付けしてみる? たくさん」

高木「お前――」

凛「分かってるよ」

凛「でも、他の娘が……」

武内「……」

凛「他の娘が、もう……」

高木「凛……」

凛「もう、食べ物の味も感じられなくて、担当官の名前も覚えられないって……」

凛「ねえ、私も近い内にそうなっちゃうんでしょ……?」

凛「分かってるし、受け入れてるけど……」

凛「ごめんね、ちょっと一人にさせて――」

高木「あ、待ってくれ凛!」

武内「……」

義体「……」

高木「いやー、お見苦しいところを……。ごめん」

武内「いえ……」

高木「ちょうどそこを通りかかったからさ、どんな調子かなーと思って」

武内「高木さん……」

武内「彼女を追わなくてもいいんですか?」

高木「大丈夫。あいつが行く場所くらい把握してる」

武内「長い付き合い――ということですか?」

高木「ああ」

高木「気丈に振る舞っているけど、内心はあんなふうに臆病なんだよ……。あいつは」

高木「あいつのこれからの運命を考えれば、その恐怖が計り知れないのは分かっているけど」

武内「条件付けで制御しよう――というわけではないようですね」

高木「ああ。俺は過度な条件付けには反対している」

高木「君も既に説明を受けたと思うけど」

高木「ただでさえ短命な義体の命を更に縮めてしまう」

高木「ただ……担当官によっては自分の都合のいいように行う者もいるんだ」

高木「まるで人形のように……!」



武内「……」

高木「おっと、ごめんよ」

高木「それじゃ……邪魔したね」

武内「いえ……」

高木「武内くん――君はどんな考えか分からないけど」

高木「俺は……。義体の最期を何度も見てきた」

武内「……」

高木「この組織のことも、そして彼女たちが無理やり背負わされた運命についても理解している」

高木「現実は見えているつもりだ――俺たちは人道を外れた悪魔も同然だと」

武内「悪魔……」

高木「だからこそ、俺は彼女たちを物のように扱いたくない」

高木「義体だって、一人の人間だ」

高木「君にも……それを知って欲しい」

武内「……」

武内「高木さん」

高木「……?」

武内「それでもあなたが担当官を続けるのは……何故ですか?」

高木「……」

高木「彼女たち全員の最期を……せめて俺一人だけでも看取ってやるためだ」

高木「彼女たちがこの世に生きていた事実を、せめて俺だけでも忘れないためだ」

高木「それが……俺の責任なんだ」

武内「……」

高木「じゃあ、あいつのところへ行ってくるよ――」

武内「……」

義体「あの、プロデューサーさん?」

武内「すまない――少し休憩しよう」

義体「はいっ!」

武内「休憩が終わったら、次の訓練だ」

義体「はいっ! 頑張ります!」



 [闘技場]


武内「本来は教官をつけるんだが……」

武内「今回は俺が相手になる」

義体「ほ、本当ですかっ?」

武内「ああ、手加減はいらない」

武内「今までに習得した技術を俺にぶつけてこい」

義体「は、はい――」


 [30分後]


武内「だいぶ上手くなったな」

義体「あ、ありがとうございます!」

武内「そこら辺の兵士だったら確実に倒せる」

義体「ほ、本当ですか……?」

武内「ああ」

武内「それじゃ――10分間休憩したら、いつものメニューを始めるぞ」

義体「はいっ!」

武内「……」

???「よう、新入り」

武内「あなたは――黒井さん」

黒井「調子はどうだ?」

武内「順調です」

黒井「義体との関係は?」

武内「それは……」

黒井「どう接すればいいか分からない――といった感じか?」

武内「はい」

黒井「そうか……。ならば、俺なりのアドバイスだ」

武内「……?」

黒井「奴らのことを人間と思うな」



武内「……」

黒井「あいつらはただの駒だ。人形だ」

黒井「機械だ」

武内「機械……」

黒井「そうだ。余計な情を移すな――高木のようにな」

武内「……」

黒井「俺も元は特殊部隊にいた」

黒井「多くの戦友を失った」

黒井「そして……テロで伴侶も失った」

黒井「解放戦線が犯行声明を出した事件だ」

黒井「俺は奴らを許さない」

黒井「俺は復讐のためにここへ来た」

黒井「噂で聞いたが……。お前も元はレンジャーにいたんだろ?」

武内「はい」

黒井「それで、やはり復讐のためにここへ来た――ということか?」

武内「はい……」

黒井「なるほどな……。そんな目をしている」

黒井「復讐という『呪い』にとりつかれた者の目だ」

武内「……」

黒井「復讐を果たしたいなら、義体をうまく使え」

武内「……」

黒井「あいつらは殺しの道具だ。復讐のための道具だ」

黒井「自分が何故ここへ来たか――それを忘れるな」

武内「何故ここへ来たか……」

黒井「そうだ」

黒井「俺は復讐のためにここへ来た」

黒井「そして、それを成功させるために義体を使う」

黒井「復讐の道具として」

黒井「復讐のためなら、条件付けだろうが何だろうがすすんで行う」

武内「……」

黒井「お前がどうしようと勝手だが、俺から言えるのはそれだけだ」

武内「……」



???「黒井さんっ! 訓練終わったよー!」

黒井「未央か……」

武内(未央――黒井さんが担当する義体か)

未央「絶好調だよー! もうちょっとで教官から一本取れそうだったんだから!」

黒井「そうか……。後は休んでろ」

未央「ねぇねぇ、ちょっとは褒めてくれたっていいんじゃないっ?」

黒井「黙れ」

武内「……」

未央「……」

黒井「後は休んでろ。今日の予定は終了だ」

未央「……」

未央「分かったよ……。じゃあね……」

武内「……」

黒井「義体の癖に……鬱陶しい」

武内「彼女に名前を与えたのは、黒井さんですか?」

黒井「ああ、道具にも名前は必要だ」

武内「……」

黒井「じゃあな――新入り」

武内「はい……」



 [義体の部屋]


義体「凛ちゃん……。大丈夫?」

凛「うん、大丈夫。何でもないよ」

未央「もしかして……生理ってやつ?」

凛「それもある……かも」

義体「もっと条件付けをしてもらった方が――」

未央「あー、それはできないみたい」

義体「……?」

未央「しぶりんの担当官の高木さんが、できるだけ条件付けをしないように言ってるみたい」

凛「だから、その『しぶりん』ってのやめてよ。未央」

未央「いーじゃん! かわいいし」

凛「かわいくないよ」

義体「あの、何で『しぶりん』なんですか?」

凛「……」

未央「以前、高木さんが渋谷へ連れて行ってくれたみたいでさー」

未央「どうやら、色々と楽しかったみたいですなー。むふふ」

凛「やめてよ」

未央「それで渋谷って街のことが気に入ったみたいだから」

未央「だから渋谷が好きな凛ちゃんってことで、しぶりんと命名させて頂きました」

凛「こじつけにも程があるでしょ」

未央「そこのベッドに鎮座していらっしゃるテディベアさんも」

未央「高木さんからの愛のプレゼントだもんね」

凛「気持ち悪いよ」

凛「もう……。いい加減にしないと怒るよ?」

義体「そうだったんですか!? 素敵ですねっ!」

凛「だから、違うから……」

凛「……」

凛「もっと条件付けすればいいのに……」

未央「……」

義体「……」

凛「あの人は私のことをどんな風に思っているのか知らないけど」

凛「変に感情移入しちゃって……。馬鹿みたい」

凛「どうせすぐに死んじゃうんだから」



未央「……」

未央「でも、いいじゃん」

凛「え?」

未央「しぶりんのことをちゃんと『一人の人間』として見てくれる」

未央「それだけで、幸せだと思う」

凛「未央……」

未央「私なんか、完全に機械としか見られてないからねっ」

未央「条件付けも容赦ないし」

義体「未央ちゃん……」

未央「私も……。最近よく分からなくなってきてさ」

未央「昨日食べたあのお菓子の味とか――どんな味だったかよく分からなかった」

未央「甘かったのか、それともちょっぴりビターだったのか」

未央「もう、よく分からないんだ」

凛「……」

凛「ごめん……」

未央「いいんだ!」

未央「義体になったことと、条件付けのおかげでこうして自由に動き回れる」

未央「例え命が短くても……。それだけで十分だよ」

未央「私、たまに変な夢を見るんだ」

義体「夢……ですか?」

未央「うん。もしかしたら……義体になる前の記憶かもしれない」

未央「恐らく――私は全身が不自由だった」

未央「だからさ……。今こうして動けるだけで、それだけで幸せなんだ」

未央「欲を言えば……もっとかまって欲しいかなー……。なんて」

未央「あはは……。ま、でもそれだけで十分だよ」

義体「……」



未央「そういえば――新入りちゃん、まだ名前をもらってないの?」

義体「あ、はい……」

凛「早くつけてもらいたいよね」

義体「そうですね……」

義体「あの、私って信頼されていないのでしょうか……?」

未央「新入りちゃんの担当官って、確か……」

凛「武内さん……だっけ? 新しく入った人」

義体「はい」

凛「どんな感じの人なの?」

義体「悪い人ではない……と思います」

未央「悪い人ではない、かぁ」

未央「見た感じでは、ちょっと恐そうだけど」

義体「そ、そんなことないです!」

義体「優しく教えてくれるし……。怒鳴られたこともありませんし」

義体「でも……」

凛「でも?」

義体「何を考えているのか……よく分からないんです」

義体「あまり話してもくれないし……」

義体「あの人自身のことも教えてくれないんです」

凛「そっか……。でも、まだペアになって日が浅いからじゃないかな」

凛「キミとどう接すればいいか分からないんだよ」

義体「そう……ですかね」

凛「うん。それが段々分かってきたら」

凛「名前もつけてもらえるよ。きっと」

義体「はい……」



未央「まぁ、大丈夫だって!」

未央「きっと新入りちゃんがかわいくて名前を考えるのに迷ってるんだよ!」

義体「そ、そんなわけ……」

凛「あー、もしかしたらそうかもしれないね」

義体「そう……でしょうか?」

凛「意外とそういうことってあるみたいだよ」

未央「しぶりんの場合もそうだったんでしょーな」

凛「な、どういうこと?」

未央「なんでもないよー」

凛「ちょっと! 話してよ」

未央「なんでもありませーん」

義体「ふふっ……」

未央「あ、新入りちゃんが笑った!」

義体「あの……。ありがとうございます」

凛「あの人たちは私たちを子供みたいに見てるけど」

凛「そんな私たちを使ってるあの人たちだって、まだまだ子供なんだよ」

義体「子供……」

未央「ま、そんなことだし……。気長に待ってあげな」

義体「はいっ!」



 [会議室]


黒井「任務が入った」

武内「……」

高木「どんな任務だ?」

黒井「天ヶ瀬冬馬の抹殺だ」

高木「……ッ!!」

武内「天ヶ瀬……ですか?」

黒井「そうか……。新入りのお前は分からないだろうな」

黒井「お前がここへ来る数週間前、ここから逃亡した裏切者だ」

黒井「奴は春香という義体の担当官だった」

黒井「何を思い立ったのか知らないが、そいつは春香を連れてここから逃げた」

黒井「その際に、うちの職員や担当官、義体が犠牲になっている」

武内「駆け落ち……みたいなものですか?」

黒井「くだらない話だ。実にくだらない」

黒井「ただの人形に感情を抱くなんて」

高木「黒井……!!」

黒井「まぁ、つまりはそういうことだ」

黒井「奴は俺たちの仲間を殺した」

黒井「そして、現在もなお逃亡中だ」

黒井「義体は調整なしで長時間行動すれば……間もなく死ぬ」

黒井「それを見過ごすわけではないだろう」

黒井「だったら、最初から逃亡など図らない……」

黒井「まあ、後先考えず感情のみで動いた可能性もあるが」

黒井「いずれにしても、このまま奴が義体の死をただ待っているわけではないだろう」

黒井「何としてでも義体を生かすために……何者かと接触を図った可能性もある」

黒井「それで国外にでも亡命されたら――ここの秘密が外部へ漏れる」

黒井「絶対にそれを防がなければならない」

黒井「よって、天ヶ瀬冬馬を抹殺する」

高木「具体的な作戦は……」

黒井「それを今から決める」



黒井「赤羽根と美希が奴を追っていた」

武内「赤羽根さん……ですか?」

黒井「そうか――奴はずっと天ヶ瀬を追っていた一人だ」

黒井「ここへの出入りも激しかったから、お前はまだ面識がないかもしれないな」

武内「はい」

黒井「美希は、赤羽根が担当している義体のことだ」

黒井「まあ、そんなわけで……赤羽根組が奴を見つけ出した」

高木「どこだ?」

黒井「奴は春香を連れて横浜のスラムへ入った。それを赤羽根組が確認している」

黒井「移民、移民ギャング、解放戦線などが入り混じった危険な区域だ」

黒井「赤羽根組、うちの公安部が現在も奴らを監視している」

黒井「よって、俺たちも横浜へ入る」

黒井「機会を窺って、二人だけになったタイミングで襲撃する」

黒井「どのようにそそのかされたのか……」

黒井「春香は天ヶ瀬に心酔している」

黒井「俺たちが襲撃すれば、春香は激高し猛烈な反撃に出る」

黒井「春香は優秀な義体の一つ。簡単に天ヶ瀬を始末させてはくれないだろう」

黒井「だから、応援として俺たちが選ばれた」

黒井「いつも通り、俺が指揮を執る」

武内「まずは現場へ入り、機会を窺う……ということですね?」

黒井「ああ。義体のコンディションの問題で、長くはいられない」

黒井「それは向こうも同じ」

黒井「しかし、俺たちのやり方――戦術、戦闘スタイル」

黒井「そして何より、俺たちの顔は奴に割れている」

黒井「よって」

黒井「今回はお前が火ぶたを切れ――武内」

武内「……」

高木「おい……! 武内くんはまだここのやり方に慣れてないんだぞ!」

高木「彼の義体もそうだ!」

黒井「だから、それが狙いだと言っているんだ」

高木「そんな……!」

黒井「俺たちは天ヶ瀬に顔が割れている。義体も同様にな」

黒井「俺たちそれぞれの、義体を使った戦い方も全部……天ヶ瀬は知っている」

黒井「そこで、まだここのやり方に染まりきっていない武内に任せる」

黒井「それに、武内と新しい義体の存在を奴は知らないだろう」

黒井「所長からの命令だ」

黒井「武内――お前は奴を狩り立てろ」

武内「……」

高木「武内くん……」

武内「はい」

黒井「よし。決まりだな」



 [中庭]


高木「武内くん……良かったのかい?」

武内「はい……。命令ですから」

高木「そうか……」

高木「武内くん――君はまだ義体に名前をつけていないみたいだね」

武内「……」

武内「はい……」

黒井「――名前はつけておけ」

高木「黒井……!」

黒井「道具として使う以上……行動時に円滑に動けるようにな」

武内「はい……」

黒井「それと、義体にも作戦を伝えておけ」

黒井「早急に――」タッタッタッ

武内「はい」

高木「……」

高木「あまり、黒井の言いなりになるなよ? 武内くん」

武内「言いなり?」

高木「ああ。奴は自分のことしか考えていない」

高木「自分が一番かわいいんだ」

高木「自分の野望のためなら、義体を使い捨ての道具として使う」

高木「そして……人間もね」

高木「自分のために、人を駒のように使うんだ」

高木「だから――黒井の言いなりになれば、君は黒井に殺される」

武内「……」

高木「奴の駒になりたくないなら、あまり深入りするなよ?」

武内「はい……」



武内「そういえば――高木さん」

高木「……?」

武内「高木さんは、どのように彼女の名前をつけたのですか?」

高木「凛のことか……」

高木「実は、素体の頃の彼女を知っているんだ」

武内「素体……。義体になる前の彼女……ということですか?」

高木「ああ」

高木「姿形は変わっても、彼女は彼女という人間」

高木「そう思いたくて、俺は素体と同じ名前をつけた」

武内「なるほど……」

高木「まあ、あまり思いつめるなよ?」

武内「はい……。あの、どう接していいか分からなくて」

高木「俺も最初はそうだった。まあ、今もなんだけど」

高木「解決法はあるさ」

武内「解決法……?」

高木「彼女と円滑な関係になりたいなら、君の方から声をかけることだ」

高木「コミュニケーションの基本は挨拶だ」

高木「一番大切なのも挨拶だ」

高木「まずは挨拶からで……どうかな?」

武内「挨拶……。はい……」

武内「ありがとうございます」

高木「――彼女たちの命は一瞬だ」

武内「……」

高木「だからこそ、後悔のないようにな――」タッ

武内「……」

武内「後悔――か」



 [横浜、とあるホテル……夕暮れ時]


義体「綺麗なホテルですね……」

武内「ああ」

義体「この街も、なんというか……大人の街というか、そんな雰囲気ですね」

武内「そうだな。まあ、すぐ近くでは移民が大量に流入してスラムになっているが」

義体「男女二人組も多かったですね」

武内「ああ」

義体「あの人たちは、どんな関係なんでしょうか」

武内「……?」

武内「恋人じゃないか?」

義体「恋人……」

義体「それじゃ、プロデューサーさんと私も恋人ですか?」

武内「それは違うだろ」

義体「ご、ごめんなさい……。あまり外の世界のことは知らなくて……」

武内「外の世界というか……。常識だな」

義体「常識……。ごめんなさい」

武内「いや、謝るな。俺の責任でもある」

武内「これからはもっとお互いに話し合おう」

義体「……!!」

武内「名前のことも……。悪かったな」

義体「プロデューサーさん……!」

武内「共に行動するパートナーとして、お前をもっと知りたい」

義体「私も……。プロデューサーさんのことを知りたいです」

武内「だが――それは作戦の後だ」

武内「作戦は頭に入っているな?」

義体「はい」

義体「現在、赤羽根さんや公安部の捜査員の方が天ヶ瀬さんを監視していて」

義体「高木さんペアと黒井さんペアはそれぞれの地点で待機しています」

武内「ああ。彼らは天ヶ瀬に対して包囲網を形成する――港のコンテナ置き場で」

武内「天ヶ瀬を尾行し、そこへ追い詰めるのが俺たちの役目だ」

武内「ルートも覚えているな?」

義体「はい」

武内「俺たちのことを知らないとは言え、この時間帯に少女を連れた男がいると怪しまれる」

武内「だが、それが狙いだ」

武内「奴を疑心暗鬼にさせて、狩り立てる」

武内「初めての任務だが、頼んだぞ」

義体「はい! 私、頑張ります!」



 ブー……


武内「電話か――もしもし」

赤羽根「もしもし、武内くんで良かったかな? 初めまして、赤羽根です」

武内「こちらこそ……よろしくお願いします」

赤羽根「早速だけど、冬馬くんがねぐらを出た」

赤羽根「頼んだよ――あ」

美希「よろしくなのっ――あ、ハニー!」

赤羽根「ちゃんと見とけって言っただろ、美希――ごめん、武内くん」

武内「いえ……」

赤羽根「彼は大通りを北東へ、スラムからそちらへ向かっている」

赤羽根「頼んだよ」

赤羽根「俺は先回りして合流地点に行ってるから」

武内「了解――作戦を開始します」

武内「念のためもう一度確認しておく。この二人が標的だ」

武内「覚えたな?」

義体「はい!」

武内「それじゃ、行くぞ――」



春香「冬馬さん、恐らく公安部ですよ……。公安部」

冬馬「ああ……。クソ、捜査員の奴らが見張ってやがる」

冬馬「人混みにいる限り、奴らは攻撃してこない」

冬馬「だが……。しつこく嗅ぎ回っているのを見ると」

冬馬「俺たちを人混みから剥がして、人気のない所へ追い立てているようだな」

冬馬(さて……どうする……)

冬馬(調整を全く受けずにここまで来た)

冬馬(春香の限界も近い……)

冬馬(くそ、このままじゃ……)

冬馬(福研……。あんな腐った組織に春香の命を奪われるわけにはいかない)

冬馬(もっとクリーンな組織で……)

冬馬(その為に……。俺はアメリカへ渡る)

冬馬(その手筈になっている)

冬馬(だが――果たしてその組織はクリーンなのか)

冬馬(そんなわけ……いや!)

冬馬(ここまで来ておいて、余計な考えは捨てろ)

冬馬(義体の研究として、春香は大事に扱われるだろう)

冬馬(例え俺が用済みで消されても……。春香だけは……)

春香「冬馬さん?」

冬馬「すまねぇ……。何でもない」

冬馬「約束の時間はもうすぐだ」

冬馬「予定通り、このまま港へ向かう」

春香「はい!」



武内「来た――始めるぞ」

義体「はい……」

冬馬(捜査員らしき人影が消えた……?)

冬馬「追ってこないな」

春香「冬馬さん……。後ろ」

冬馬「……ッ!!」

冬馬「青年と少女のペア――」

春香「義体ですよ、義体」

冬馬「その可能性は高いが……。見ない顔だな」

冬馬(新入りか……? 義体らしき少女も見たことがない)

冬馬(青年と、バッグを担いだ少女――間違いない)

冬馬(だが……)

冬馬「春香、もう一度振り返れ」

春香「はい――」

武内「……」

義体「……」

春香「青年の方が、電話を使っています」

冬馬「……」

冬馬(適切な距離を保ちつつ、俺たちのことを決して追い抜かない――一本道で)

冬馬「新手の義体か……」

冬馬(さて、どうしたものか――時間はない)

冬馬(春香も衰弱している……。いくら優秀な義体とは言え、まともにやり合うのは……)

冬馬(年貢の納め時か……?)

冬馬「いや――」

武内「ええ。彼は港方面へ向かっています」

武内「もしかしたら――我々が狩り立てる必要もなかったのかもしれません」

黒井「初めからここが目的だったということか」

黒井(だが、こんな港へ来てどうするつもりだ?)

黒井(やはり、何者かと接触を――)

黒井「分かった。そのまま尾行を続けろ」

黒井「このまま計画通り、俺はクレーンの上で待機している」

武内「了解――このまま尾行を続けます」

義体「プロデューサーさん、二人の歩く速度が上がっています」

武内「ああ。迷いがない……」

義体「あ、電話を使いましたね」

武内(誰と話している……?)

冬馬「分かった――感謝する」

冬馬「あと数分で着く……。頼んだぞ」

春香「冬馬さん、まだ追ってきます」

冬馬「ああ……」

冬馬「もう気にするな。早く港へ向かうぞ」



春香「気にしない……ですか?」

冬馬「ああ。港へ迎えが来る」

冬馬(どうせ仕切っているのは黒井の奴だろうが……。甘かったな)

冬馬(港で待ち構える作戦だろう)

冬馬(自分たちの狩場だと思っているに違いない)

冬馬(だが――狩られるのはお前の方だ、黒井)

武内「もう振り返らないな……」

武内(腹を決めたか?)

武内(いや、何かがおかしい……)

武内(俺たちの尾行があるにも関わらず、焦る様子もない)

武内(むしろ、堂々としている……?)

武内(開き直っている……? 違う)

武内(何か企んでいる……。その余裕だ)

武内(黒井さんへ連絡を――)

武内「……」

武内「繋がらない……?」

武内(どういうことだ)

武内(これは……もしや)

武内(似ている――あの状況に)

義体「プロデューサーさん……?」

武内(自分たちが優位に立っているという驕り)

武内(それがもたらす誤算)

武内(最前線――ゲリラの待ち伏せ、強襲)

武内(あの時の感覚だ)

武内(狩る方が狩られていた……あの感覚)



義体「プロデューサーさん……」

武内「おい」

武内(港への一本道……。今は俺たちしか存在しない)

武内(歩道の横は雑木林か……。クソ……)

武内(人が来ない内に……)

義体「はい?」

武内「武器を抜くぞ」

義体「え……」

武内「港へ着く前に、奴をしとめる」

義体「でも、作戦が――」

武内「何回かコールしたが、繋がらない」

武内「嫌な予感がする」

義体「……」

義体「分かりました」

武内「少し速度を上げるぞ。有効射程まで接近する」

義体「はい」

武内「合図で武器を抜いて、そして撃て――」

冬馬「……」

春香「冬馬さん、後ろの二人……近付いてきてます」

冬馬(察したか?)

冬馬(まあ、無理もない……)

冬馬「ペースを上げるぞ」

春香「冬馬さん」

冬馬「何だ? 気にするな、どうせ攻撃して――」

春香「危ないっ!」スチャ



 ヒュン!!


冬馬「攻撃してきただとっ!?」

冬馬「クソッ! 春香、行くぞ!」

春香「はい!」バラララララ!!

武内「クソッ!」ダン! ダン!

義体「大丈夫ですかっ!?」ババババ! バン! バン!

武内「それはお前の方だ……!」

武内(こいつ、俺を庇って――!)

義体「私は大丈夫です! こんなのかすり傷です!」

武内「クソ……!」

武内(林へ逃げられた……)

武内「まだ動けるか!?」

義体「私は義体です! こんな傷では死にません!」

武内「すまない――止血する!」スッ

義体「大丈夫です、二人を追いましょう! 逃げられてしまいます!」

武内「落ち着け。奴の義体にも何発か命中した……」

武内「調整なしの義体には致命傷になるだろう」

武内「逃げる速度は落ちるはずだ。すぐに遠くへは逃げられない」

武内「そして、天ヶ瀬は義体を見捨てるわけにはいかないだろう」

義体「プロデューサーさん……」

武内「よし。大丈夫か?」シュッ

義体「はい!」

武内「奴らを追うぞ――」



 [港、コンテナ置き場]



黒井「……」

黒井(何を企んでいる――天ヶ瀬)

未央「黒井さん」

黒井「どうした」

未央「――音がする」

黒井「……」スッ

未央「海……。船着き場の方だよ」

未央「何か接近してくる」

黒井「……」

黒井「ああ」

黒井「なるほど――はめられたのは俺たちの方だったか」

未央「敵?」

黒井「それ以外に考えられるか?」

黒井「高木」

高木「どうした?」

黒井「どうやらお客さんのようだ。天ヶ瀬のお迎えらしい」

高木「規模は?」

黒井「高速ボートで船着き場へ接近中。規模は……分隊規模だな」

高木「10人程度か……。どうする?」

黒井「港へ上陸後、拠点を確保しつつ天ヶ瀬と春香を回収……それで任務は完了」

黒井「そういう魂胆だろう」

高木「ああ」

黒井「どこの誰だか知らんが、俺たちから仕掛ける」

黒井「赤羽根、聞こえたか?」

赤羽根「ええ……。了解」

黒井「奴らがコンテナ置き場の迷路に接近したら始める」

黒井「クレーンの上にいる俺たちが注意を引き付ける」

黒井「奴らが迷路の中へ隠れたら、お前たちの出番だ」

黒井「アリジゴクに迷い込んだアリどもを狩れ。未央からの一発が合図だ」

高木「了解」

赤羽根「了解」

黒井「分かったな? 未央」

未央「うん」

黒井「こちら黒井――捜査員を港へ集合させろ。ただ今より天ヶ瀬組を迎えに来た、正体不明の集団と交戦する」



黒井「――よし」

未央「タイミングは?」

黒井「俺の合図で撃て」

黒井「いち、に、さん……9人か」

黒井「暗視スコープ、アサルトライフル、ライトマシンガン……。戦争でも始める気か?」

黒井「厄介な機関銃手を狙え」

黒井「目標までの距離400m。風は南西から3メートル、気温は――」

黒井「敵が静止した。動き出す前にやるぞ」

黒井「今だ――撃て」

未央「……」

未央「――ッ」



高木「凛、暗視スコープをつけろ」

凛「やってる」

高木「未央に釘付けにされてる間に、一気にたたみかけるぞ」

凛「分かってる――高木さんは危ないから隠れてて」

高木「俺だって戦うさ」

凛「戦うのは私たちの役目なんだけど」

高木「お前が戦っているところを黙って見ているわけにはいかない」

高木「俺の代わりはいくらでもいるが、お前の代わりを見つけるのは難しい」

凛(平気でそういうこと言うんだから……。もう……)

凛「私はあなたの命令に従うように刷り込まれてる」

凛「だから、あなたの代わりはいないの。高木さん」

高木「凛……」

凛「それを義体の私から言わせないで」

凛「お願いだから、危ない真似はしないでね」

高木「まあ、サポートくらいはするさ。素人じゃない」

高木「俺だって元は――」


 パアアアアアアアアアアアアアン!!!!


凛「始まった――行くよ!」



美希「……」

美希「こっちに近付いてきてるの、ハニー」

赤羽根「コンテナに隠れながら、相手の隙を突こう」

赤羽根「未央の射線に入らないように気をつけろよ」

美希「バッチリなの」

赤羽根「美希……」

美希「どうしたの? ハニー」

赤羽根「春香のこと……その、大丈夫か?」

美希「ミキ、悲しいの」

赤羽根「……?」

美希「春香は仲間だったはずなのに」

美希「じょーけんづけってやつなのかな」

美希「もう、何の感情も湧いてこないんだ」

美希「ハニー、ミキっておかしいのかな?」

赤羽根「……」

赤羽根「いや、美希じゃない――この世界がおかしいんだ」

美希「……」

赤羽根「準備はいいか?」

美希「……」


 パアアアアアアアアアアアン!!!!


美希「――ッ!!」



冬馬「はあ……。やつらを撒いたか?」

春香「気配は……感じません」

冬馬「春香――大丈夫か?」

春香「……」

春香「はい……」

冬馬(これは、ヤバいな……。クソッ)

冬馬「大丈夫だ。合流場所に着いたぞ」

春香「本当……ですか……?」

冬馬「ああ。迎えが来ているはずだ……」

春香「……」

冬馬「おかしい……。静かすぎる……」

冬馬(合流し、ノースドッグから本国へ入る手筈だったはず)

冬馬(どうして、誰もいない……)

冬馬(奴らが攻撃してこない。掃除されたか?)

冬馬(だが、合流するはずの奴らもいない)

春香「……」

冬馬(待て。連絡を取ろう)

春香「冬馬さん」

冬馬「どうした?」

春香「嫌な予感がする」

冬馬「嫌な予感?」


春香「誰かい――」ブシュッ!


 パアアアアアアアアアアアン!




春香「……ッ!?」

冬馬「春香ッ!?」

黒井「……」

黒井「春香の左脚部に命中。グッドショットだ」

未央「……」

冬馬「春香ッ……!! クソッ!!」

冬馬(馬鹿な!! まさか……)

春香「冬馬さん……。逃げてください……」

冬馬「馬鹿野郎……! それじゃ本末転倒だ……!」

春香「私はいいから……。早く……」

冬馬(どこだ……!? どこから撃ってきた!?)

春香「冬馬さ――危ないッ!!」バラララララ!!!!


凛「――ッ!!」ズドオオオンッ!!


春香「ン゛ッ!!」ブシュッ

冬馬「春香アアアアッ!!」バン! バン!

冬馬「クソッ! この野郎ッ!」

春香「冬馬さ……コンテナの陰……」バラララ!


美希「……」ダダダン!!


春香「クッ……!!」ブシュッ

冬馬「やめろ……!!」

冬馬「福研の犬どもがッ!!」

冬馬「出てきやがれ……卑怯者ッ!!」ダン! ダン!

春香「逃げて……。私たちは囲まれている……」バラララ!

冬馬「そんな……!!」

冬馬(奴らが部隊を壊滅させた……!?)

冬馬(特殊部隊でも……敵わなかったのか……)

冬馬(そうか、それが義体……。だったな……)

冬馬(俺が一番知っているはずなのに……)

冬馬「春香……」

春香「はい」


冬馬「すまな――」ブシュッ



春香「――ッ!?」

春香「冬馬さん!?」

春香「よくも冬馬さんをおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

春香「死ねええええええええええええええええええええええ」スッ


義体「……」ズドドドドドッ!!!!


春香「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!」ブシュッ! ブシュッ!

義体「……」

義体「敵の義体、沈黙」

義体「完全に殺しますか?」

武内「よくやった」

武内「だが、殺すな」

武内「可能であれば生け捕りにして、再利用する――そう言われている」

武内「見張っておけ」

義体「はい」

冬馬「てめぇ……!!」

武内「すみません」

武内「あなたに恨みはありませんが、命令ですので」

冬馬「お前……。新人か?」

武内「はい」

冬馬「お前は何も感じないのか……?」

冬馬「何の罪もない少女を……殺しの道具にすることを……!」

武内「……」

武内「それが仕事ですので」

冬馬「……!!」

冬馬「お前も……はまってしまったわけか……」

武内「……?」

冬馬「底なしの沼に!」

冬馬「ハハハッ……。もう逃げられないぞ」

冬馬「あのクソッタレな組織に入ったら最後」

冬馬「その呪縛から逃れることはできないっ……!」

冬馬「組織を抜けたとしても、奴らに監視される」

冬馬「入ったら最後、自由などない」

冬馬「死ぬまで重い罪を背負うことになる……」

武内「……」

冬馬「お前は……逃げられないっ!」



武内「……」

黒井「そいつの戯言に耳を傾けるな」

武内「黒井さん」

冬馬「黒井……!!」

黒井「よくやった、武内」

黒井「そして、久しぶりだな――裏切者」

冬馬「てめぇ……!」

黒井「残念だが、迎えなら来ない」

冬馬「……!!」

黒井「俺たちが全て始末した」

冬馬「この……! 外道がっ!」

黒井「あいつらは何者だ?」

冬馬「それを俺が言うと思うか……!?」


 ブー、ブー……


黒井「おっと、誰かから連絡が来たようだぞ?」

冬馬「……ッ!!」

黒井「出なくていいのか?」

冬馬「くそが……!!」スッ

冬馬「もしもし……」

???「残念だが、作戦は失敗した」

冬馬「――ッ!?」

???「我々はこれで手を引かせてもらう」

冬馬「そんな……! 研究のチャンスを逃す気かッ!?」

???「それなら問題ない。間に合っている」

冬馬「ど、どういうことだっ!?」

???「データが欲しかった。それだけだ」

???「君には悪いが、実験させてもらった」

冬馬「なん……だと……!?」

???「あれは我々の兵士ではない――金で雇った者だ」

冬馬「そ、そんなっ……!」

???「いいデータが取れた。君には感謝するよ」

???「それでは――」

冬馬「ま、待て……!!」

冬馬「俺を騙したのかッ!?」



黒井「貸せ」

冬馬「おい、やめ――」

黒井「もしもし」

???「これはこれは。初めまして」

???「全て見させてもらったよ」

黒井「お前は何者だ? アメリカ人」

???「アメリカ人? 何のことかな?」

???「全て見ていたよ」

???「これが公になれば大問題だな」

黒井「大問題? なんのことだ?」

黒井「取引でもしたいのか? それとも脅しているつもりか?」

???「別にそういうわけではない」

黒井「大問題と言ったな?」

???「……」

黒井「それを言うなら、お前の国の兵士が俺たちの国の中で作戦行動に出た――これが公になればそれこそ大問題だな」

???「我々の兵士? 違うな」

???「金で雇われた一般人、もしくは解放戦線の兵士じゃないか?」

黒井(あくまでもしらを切るつもりか)

黒井「分かった。お互いに秘密を抱えてるわけだ」

黒井「俺たちは何も見なかった――そういうことでどうだ?」

???「……」

黒井「俺には交渉権はない。何かあるなら一番上のお偉いさんへ言ってくれ」

???「そうだな。そういうことにしよう」

???「貴重なデータをありがとう。それでは――」

黒井「……」スッ

黒井「よくもやってくれたな、天ヶ瀬」



冬馬「ふっ……。ざまぁみやがれっ!」

黒井「だが、残念だったな」

冬馬「……?」

黒井「お前は見捨てられた。そして、このことは『暗黙の了解』として闇に消える」

冬馬「な……!!」

黒井「お前の目論見は失敗した。お前は利用されただけだ」

黒井「哀れな男だ」

冬馬「……ッ!!」

冬馬「そんな……」

黒井「もう、お前に用はない」

黒井「消えろ」

黒井「武内、こいつにとどめを刺せ」

武内「……」

武内「はい」

黒井「天ヶ瀬、春香は回収させてもらうぞ?」

冬馬「やめろ……!! それだけは……!!」

黒井「未央」

未央「なに?」

黒井「春香を拘束しろ」

未央「はーい」

冬馬「クソッタレがっ!! やめろおおおおおおおおおおおおおおおお」

黒井「武内」

武内「……」

武内「はい……」

武内「未央を手伝ってやれ」

義体「はい」

黒井「車両が到着した」

黒井「捜査員の車両まで運べ」

黒井「武内、俺たちは先に乗ってるぞ?」

黒井「片付けてから、すぐに来い――」



武内「はい」

武内「……」

冬馬「新人……。これが奴らのやり方だ」

武内「……」

冬馬「お前も……ずっと重い罪を背負って生きていくことになるだろう」

冬馬「死ぬまで。生きている限り」

冬馬「お前は福研に使われ、そして捨てられる」

冬馬「お前は義体をどう思う?」

武内「……」

冬馬「黒井のように、道具として見ているのか?」

冬馬「だがな……。義体だけじゃない」

武内「……?」

冬馬「俺たち担当官もただの道具に過ぎない」

冬馬「福研の道具だ」

冬馬「それを……忘れないことだ」

冬馬「お前はもう……逃げられないッ!」

武内「……」


 パァンッ! カランカラン……


武内「さようなら――」



 [調整室]


武内(あれから――俺は担当官として完全に定着している)

武内(定着してしまった)

武内(俺は義体を道具として使い、解放戦線や反政府組織の人間を殺す)

武内(外道になってしまった、悪魔になってしまった)

武内(重い罪、逃げられない……。あの男の言葉)

武内(今でも鮮明に思い出される――悪夢のように)

武内(だが……。これでいい)

武内(俺は復讐を達成する為に)

武内(解放戦線の壊滅の為に)

武内(その為に生きる)

武内(平和な日常などない……。最初から、これからも)

武内(一人目を殺した日から――既に悪魔になっている)

義体「あの……」

武内「……」

武内「お前か」

義体「はい! 調整、終わりました」

武内「そうか――この前はよくやった」

義体「ありがとうございます! プロデューサーさん!」

武内「……」

武内「プロデューサー……」

武内(調整したのに直ってない……?)

義体「あっ……!! ご、ごめんなさい……」

武内「……」



ちひろ「あ、武内さん」

武内「ちひろさん」

ちひろ「ごめんなさい……。異常などは特にないんだけど」

ちひろ「この口調だけは、何故か改善されないの」

義体「あの……。もっと条件付けをしてくだされば、直ると思います!」

義体「だから、その……」

ちひろ「そうね……。条件付けを少し強めてみれば、改善すると思うけど」

武内「いえ、大丈夫です」

義体「……ッ!?」

武内「行動に支障がないなら、それで十分です」

ちひろ「分かったわ」

武内「調整、ありがとうございました」

武内「行くぞ――」

義体「は、はい……!!」



 [屋上]


義体「あの、ここは……?」

武内「俺のお気に入りの場所だ」

義体「星が、綺麗です……」

武内「……」

義体「あの……」

武内「何だ?」

義体「どうして、あの時条件付けをしなかったんですか……?」

武内「俺のやり方に不満があるのか?」

義体「い、いえ! 違います!」

義体「ただ、どうしてなのかなって……」

武内「行動に支障がないなら、それでいい」

武内「それだけのことだ」

義体「そう……ですか……」

武内「……」

義体「……」

武内「お前、確か四月に生まれたそうだな」

義体「……?」

武内「卯月だ」

義体「うづき……?」

武内「お前が義体として生まれた日――四月のことを卯月とも言う」

武内「だから、卯月だ」

武内「お前の名は卯月だ」

義体「……」


卯月「はい」


武内「嫌か?」

卯月「いえ……。何故か、懐かしい気がします」

卯月「とてもいい名前だと思います」

卯月「ありがとうございます! プロデューサーさんっ!」

卯月「私、頑張りますっ!」



武内「――ッ!!」

武内(何故か……)

卯月「プロデューサーさん……?」

武内(何故か――目の前の義体の微笑みが)

武内(在りし日の妹の面影と重なった気がした)

武内(こいつは……似ている)

武内(初めて見たあの日から……)

武内(これは神の悪戯か……?)

武内(俺に、罪を意識させているのか?)

卯月「あの、プロデューサーさん……」

卯月「泣いて……泣いているんですか?」

武内「……ッ!?」

武内(自分でも分からない)

武内(一筋、自然と涙が落ちた)

武内(人をあやめ、幾度となく血で汚してきた手で拭う)

武内(俺は汚れている。汚れきっている)

武内(真っ黒な自分から、とうに枯れたはずの涙が流れる)

卯月「プロデューサーさん……」

卯月「……」ダキッ

武内「――ッ!?」

卯月「私、プロデューサーさんが悲しまないように」

卯月「もっともっと、頑張ります……!」

卯月「だから、元気になってください」

卯月「プロデューサーさんは、私が守る……」ギュッ



武内(違う……。違うんだ……)

武内(そうじゃない。俺は――)

武内(俺は、お前に人を殺して欲しくは……)

武内(道具、なんだろ?)

武内(何故、今更ためらう?)

武内(俺は――)

武内「卯月」

卯月「はい」

武内「ありがとう――」

卯月「……」

武内(分かっている)

武内(ただの気休めだった)

武内(俺はもう逃げることはできない)

武内(これからも、染まっていく――真っ黒に)

卯月「プロデューサーさん……」



卯月「これからも、よろしくお願いします」





 終




ありがとうございました。

どうでもいいけど、今回の各キャラの装備のイメージ↓

卯月→MAT49
未央→スプリングフィールドM14
凛→モスバーグM500/M1911(サブ)
美希→H&K MP7
春香→H&K MP5K
武内→M92
高木→FN SCAR
黒井→FN MINIMI
赤羽根→H&K MP7
冬馬→H&K USP

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