居酒屋
友紀「いやぁ、でもびっくりしたよ。拓海ちゃんはともかく、文香ちゃんもこういうところ来るんだね」
拓海「アタシはともかくってのはどういう意味だァ、ああ?」
友紀「だって、拓海ちゃんってヤンキーなんでしょ?だから、若いうちからこういう居酒屋来てても違和感ないかなーって」
拓海「アタシはヤンキーじゃねえ、元特攻だっての。それに酒もタバコも興味はねえよ」
菜々「ヤンキーと暴走族って違うんですか?」
拓海「違う違う。な?」
文香「…えっ?」
拓海「違うだろ?」
文香「さあ……私にはよくわかりませんが……」
拓海「なんだよ、違いの分からねえヤツばっかりだ」ケッ
菜々「今日はお二人だけですか?お酒、飲んでなんかないですよね?」
文香「いえ…プロデューサーさんと撮影の打ち上げに……私たちはジュースです」
友紀「来てるんだ、プロデューサー」
菜々「プロデューサーさんはどこに?おトイレですか?」
拓海「ああ、酔って吐いてる。やっぱダメだわ、あの人」
友紀「お酒弱いからなぁー」
菜々「弱いくせに好きなんですよね」
友紀「苦労するタイプだよ、あれは」
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文香「ちょっとプロデューサーさんの様子を見てきます」スッ
拓海「おう、頼んだ」
友紀「あっ、店員さーん。中ジョッキ1つ」
拓海「二人は普通に飲みに来たのか?」
友紀「うん、休みが被ったから買い物して、一杯やりにきたー」
菜々「あっ、ナナはもちろん、ジュースですよ!17歳ですからね!」
友紀「無理することないのになあ……あ、なにこれ、美味しそう」
拓海「あぁ、なんだっけ……なんか……揚げモンだろ」
菜々「なんか揚げモンって……」
友紀「もーらいっ」パクッ
拓海「それ、文香のだぞ?」
友紀「いいじゃーん、もう一皿頼めば。んー!うまー!なんだろ、お肉なのは間違いないんだけど…」
拓海「マジで?……ちょっとアタシも」パクッ
菜々「あーあー、拓海ちゃんまで…」
拓海「へへっ、悪ぃな文香……おー!なんだこりゃ、うめえ!初めて食う味だな」
友紀「ねー!美味しいよこれ!本当、なんの揚げ物なんだろ」
菜々「え…そんなに美味しいんですか………じゃ、じゃあ菜々も…ごめんなさい、文香ちゃん」パクッ
友紀「あっははー、同罪同罪!」
菜々「へぇ~!確かにとっても美味しい!鶏肉?とはまた違いますかねぇ」
拓海「なんだろうな、これ」
文香「…戻りました」ガタッ
友紀「おかえり~。どうだった、プロデューサーは」
文香「ダメですね。マーライオンのようでした」
拓海「だらしねぇなぁ…」
友紀「ちょっとあたしも見てくるー!」ガタッ
菜々「ああもう、そっとしておいてあげましょうよぅ…」
文香「………おや?」
拓海「ん?」
文香「………私の揚げ物がないのですが…」
菜々「あっ、ごめんなさい、それは……」
拓海「悪ぃ悪ぃ、みんなで食っちまった」
文香「えっ!?」
拓海「全部」
文香「そ、そんな……まだ食べてないのに……」
拓海「悪かったって」
文香「美味しかったですか…?」
拓海「おお、もう絶品も絶品!なんの肉だったのかわからねえけど」
文香「くぅ………食べたかったのに…!」
菜々「も、もう一皿頼みましょう!ね?」
拓海「そうそう、あれなんて料理だ?」
文香「それが、私もにもわからないんですよね……プロデューサーさんが注文したのですが、運ばれてくる前にトイレに駆け込んでしまったので」
拓海「プロデューサーが頼んだのか…」
友紀「たっだいまー!」ガタッ
菜々「おかえりなさい。どうでした?」
友紀「すっごいよー!もう顔真っ白になってた!」
文香「友紀さん、私の揚げ物食べたでしょう」
友紀「えっ?ああ、ごめんねー!もう一つ頼もうよ!美味しかったし!」
菜々「それが、プロデューサーが注文したので、なんていうメニューなのか分からないんですよ」
友紀「えぇ~?メニューみれば大体分かるんじゃないの?」
菜々「あー、確かにそうですね……って、うわっ!?なんですか、このメニュー表の分厚さは!?」
文香「……ここのお店はメニューの豊富さが売りなんです」
拓海「すげぇぞ?和洋中、全部食える」
菜々「うわぁ…これはちょっとしたタウンページですよ…しかも、メニューの写真とかないんですか」
文香「はい……更に言えば、ジャンル毎の分類すらされていないのです」
友紀「粗雑ーぅ!」
菜々「……別なの頼みます?」
友紀「えぇー!?やだやだ!さっきの謎揚げ食べたぁ~いぃ~!」
文香「私も食べてみたいです………気になって仕方がありません…」
拓海「なら探してみるしかねぇな」
友紀「あっ!だったらゲームしようよ!」
菜々「ゲーム?」
友紀「さっきの謎揚げの正体が分かるまで帰っちゃダメゲーム!」
菜々「えぇ~?なんですかそれ…」
拓海「面白そうだな!」
文香「……いいでしょう、絶対に謎揚げを食べてみせます……!」
菜々「なんでそんなにやる気満々なんですか…」
友紀「やる気まんまんマーーーン!やる気ビーーーーーーーーーム!!!」
菜々「きゅぴぴぴーーーーん!!!やる気電波受信!!!ちょっと、プロデューサーの様子を見てきますから、その間に注文しちゃってていいですよ!絶対に当てましょう!」ガタッ
友紀「……なに、やる気電波って」
拓海「アンタがやりだしたんだろうが」
文香「そんなことより早く注文しましょう…」
友紀「むむっ!文香ちゃんからとてつもないやる気を感じる…!もしかして、やる気まんまんマンレディだったりする?」
文香「そうです…私はやる気まんまんマンレディ……謎揚げの正体を暴く知的探求者…」
友紀「やる気まんまんマンレディってなんだろうね」
拓海「アンタがやりだしたんだろって……とりあえず、揚げモンだろ?それっぽいものをいくつか頼んでみっか」
文香「では……手作りメンチカツ、ミートボール揚げ、トンカツあたりを攻めてみましょうか」
友紀「おおっ、手堅いねぇ~。いい牽制球」
拓海「まあ、そのあたりが無難か」
文香「……………」
拓海「……………?」
文香「あ…あの…注文してもらえますか…?」
拓海「えっ…ああ………すみませーん!手作りメンチとぉ…」
文香「……すみません」
菜々「ただいま戻りましたー」ガタッ
友紀「おかえりー」
菜々「いやー、大丈夫ですかね、プロデューサー。水みたいなの吐いてましたけど」
拓海「えぇ…?まあ……あいつなら大丈夫だろ……アタシらのプロデューサーを信じようぜ?」
文香「熱い展開ですね…」
友紀「信じるっていってもゲロ吐いてるだけだもんなぁ……」
菜々「あ、オーダーきましたよ」
拓海「どれ……」モグモグ
文香「あむ……」
友紀「うーん……美味しいけど…」
菜々「…どれでもないですね」
拓海「ハズレかぁ」
文香「…そういえば、謎揚げの味を知っているのってみなさんだけなんですよね」
菜々「確かに」
文香「どんな味でしたか?」
友紀「えー?肉味」
拓海「うん……肉味だった」
文香「なんですか肉味って……」
菜々「いやでも、本当に肉味としか言い表せない味でしたよねぇ」
拓海「そうそう。すげー美味い肉味」
文香「そうですか……」
友紀「噛んだらサクサクの衣がシャオッ!中のふんわりお肉からジューシーな肉汁がじゅわあ~っと溢れて…」
菜々「そういえば、ちょっと歯ごたえのあるものが入ってましたよね」
拓海「あー…あったかもな。それも肉っぽかったけど」
文香「あっ、それいいヒントで……ぁ痛ッ!!!!」ガターン
拓海「えっ!?」
友紀「なにぃ……?」
文香「攣ったっ……足攣りました……ッ!」
拓海「なんで突然…」
友紀「あっははははは!」
文香「ああ……痛い……いた……ひたひぃ……!」
菜々「足が攣った時は、一度立って、アキレス腱を伸ばすようにするといいですよ」
文香「いやダメです…!痛い、痛いですもん……!立てないです…!」
菜々「いいから立ってください。脹脛を元の状態に戻してあげないと…」
文香「ああああ痛いです!あっ……だめ……あー…あー!」
友紀「あはははははははは!!!」
文香「笑わないでください!!!」
菜々「脹脛マッサージしてあげますから、ほら」モミモミ
文香「くぅぅ…!………ごめんなさい…神様ごめんなさい……!」
拓海「足攣った時って何故か神様に謝るよな……あ、ちょっとプロデューサー見てくるわ」ガタッ
友紀「いってらー」
文香「ふぅ……ふぅ……治まりました」
友紀「そういうのっていきなりくるから嫌だよねー。店員さーん、ビールおかわりー!」
菜々「ナナもこの前、寝てるときに急に攣って死ぬ思いをしましたよ」
友紀「歳なんじゃない?」
菜々「やっぱりそうですかねぇ……って、ナナは永遠の17歳ですから!この中じゃ最年少!やったーーーーー!!!!」
友紀「次なに頼む?」
文香「そうですね……歯ごたえがあるものが入っていたそうなので、食感がありそうなものを頼んでみましょうか」
友紀「じゃーあー………軟骨入り鳥団子揚げ、砂肝入り鳥団子揚げ、さいころステーキ入り鳥団子揚げってのを頼んでみようか」
文香「良い選択です……ナイスチョイス……」
友紀「店員さーん、追加で注文いいですかー?」
菜々「怒涛の鳥団子押し」
文香「さいころステーキ入りって凄いですね……」
友紀「ね~」
拓海「うぃ~」ガタッ
文香「お帰りなさい」
拓海「なんか、黒いの吐いてたけど、大丈夫だろ」
菜々「なんで自己完結しちゃったんですか…」
友紀「きたよ~、鳥団子シリーズ」
拓海「なんだこりゃ」
文香「食感がありそうなものをチョイスしてみました」
拓海「なるほどなぁ」
友紀「あーん!……うーん、おいちい!」モグモグ
菜々「美味しいですね、これ!」モグモグ
文香「これは正解を掴んだのでは…!」
拓海「いや、美味いけど、謎揚げとは形が違うぜ?」モグモグ
菜々「確かに、謎揚げは楕円形で、もうちょっと大きかったですかねぇ」
文香「……………なんでそれを先に言わないんですか、馬鹿なんですか」
拓海「そんなキレんなよ…」
文香「キレてないです。ほら、さっさと食べて次注文しますよ」
菜々「えぇ…キリがないですよぅ…」
友紀「ちょっとプロデューサーに正解聞いてくるよ」ガタッ
文香「あっ!ダメですよ!ズルですよ、ズル、そんなの!」
拓海「今から頼むやつがハズレたら正解を聞けばいいだろ。ほらほら、なに頼むよ」
文香「…仕方ないですね、それでいきますか」
菜々「この、めちゃくちゃ美味しい揚げとかどうですか?当店オススメって書いてありますし」
拓海「適当なネーミングだな…」
文香「ふむ……ではその、めちゃくちゃ美味しい揚げと、爆弾揚げというのを頼んでみましょう……拓海さん」
拓海「ったく……店員さーん!」
菜々「爆弾揚げってなんなんですかねぇ」
拓海「爆弾を揚げたんだろ」
菜々「そんな適当な返事しないでくださいよぅ」
拓海「正直、もう胃もたれしてきた……これ食ったら帰ろうぜ?」
文香「ダメですよ……当てるまで帰れません」
拓海「強情だなあ…」
菜々「爆弾揚げっていうくらいだから、大きいんじゃないですかね」
文香「確かに……」
拓海「おー、早い、もうきた……うわあ、案の定、デケェな、爆弾揚げ」
菜々「すっごい…手のひらぐらいありますよ……でもこれ、さつま揚げですよね」
拓海「でっかいさつま揚げだな。謎揚げじゃねえな」
文香「くぅ……では本命のめちゃくちゃ美味しい揚げを待ちましょう…」
菜々「じゃあ、この爆弾揚げ食べちゃいますよ?」
文香「どうぞ……あまり、さつま揚げが好きではないので」
菜々「美味しいんですけどねぇ、さつま揚げ」モグモグ
友紀「…………」ガタッ
拓海「お帰り」
友紀「…………」
菜々「…?……どうかしました?」
友紀「プロデューサーが吐いてるの見てたら…もらっちゃったぁ……」
菜々「あちゃ~…」
友紀「口の中が気持ち悪いよぅ……具合悪いぃ……もう帰ろうよぉ~……」
文香「あっ、めちゃくちゃ美味しい揚げがきましたよ…!」
拓海「うわぁ…ちっちぇ…これぼんじりのから揚げじゃねえか?」
文香「ぐぅぅぅぅ………!友紀さん、正体は……プロデューサーさんから謎揚げの正体は聞いてきましたか…!」
友紀「え……あー……謎揚げね…あれ、謎揚げだって」
文香「……はい?」
友紀「だから…『謎揚げ』っていうメニューなんだってさ」
文香「…………ハアアアアアアアアア!!?」
拓海「くっだらねぇ、帰ろうぜ」
文香「待ってください!せめて…せめて謎揚げを食べてから帰りたいです…!」
友紀「それ一日一皿限定のメニューなんだってさ」
文香「」
菜々「へぇ~、やっぱり美味しかっただけありますね」
拓海「だな」
友紀「さーて、帰ろう帰ろう」
拓海「ほら、いくぞ文香」
文香「……………ふぇぇぇん」グスッ
菜々「えっ!?」
拓海「泣くほどかよ…」
文香「私だけ…食べてない……」グスッ
友紀「また食べに来ればいーじゃーん」
拓海「そうそう。ほら、送ってってやるから…」
文香「拓海さんの運転は荒いから嫌です……」
拓海「うっせぇな!いいから帰るぞ!」
菜々「あのぅ…プロデューサーはどうします?」
友紀「タクシー呼んでおけば、適当に帰るでしょ。お会計済ませてくるね」
拓海「ああ、ゴチっす!……ほら、早く立てって」
文香「そんなに急かさないでくださ……ぁ痛ッ!!!……ああまた…足が…!!!…神様……!!!」
終劇
これにて終了ですー
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