――おしゃれなカフェ――
加蓮「おー……?」
藍子「?」
加蓮「や、あっちの子さ、前に私が着てたのと同じ服を着てる」
藍子「じゃあ、加蓮ちゃんのファンかもしれませんね!」
加蓮「もしそうなら、藍子のファンにもなってほしいなぁ」
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――まえがき――
レンアイカフェテラスシリーズ第28話です。
以下の作品の続編です。こちらを読んでいただけると、さらに楽しんでいただける……筈です。
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
~中略~
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「小雨のカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「虹を見に行きましょう!」
・高森藍子「加蓮ちゃんの」北条加蓮「膝の上に」
藍子「私のファンに……?」
加蓮「モバP(以下「P」)さんと少し話したんだ。どういう人達が私を応援してくれてるのかな? って。そっから盛り上がって、Pさんはどんな気持ちでプロデュースしてるの? って聞いたりして」
加蓮「なんとなく思うんだ。今更なんだけどね? 私のファンと藍子のファンって、たぶんぜんぜん違うんだろうなーって」
加蓮「分かっててもそれがなんだか悔しくて。ってことで私は決めました。私のファンを見つけたら藍子のファンになってもらいます。私の目標っていうか……そんな感じ! 具体的にはなんにも思いついてないけど」
藍子「ありがとうございますっ。でも、自分のこともしっかり考えてくださいね? 私のことは後回しでいいですから」
加蓮「藍子藍子。説得力がゼロだよそれ」
藍子「……あはは。自分のことを考えるのはなかなか難しいです」
加蓮「アイドルがなーに言ってんの」ベチ
藍子「あうっ」
加蓮「カフェテラスだとこういう景色も見れるんだよね。ちょっと忘れそうになってたかも」
藍子「ずっと雨続きで、室内の席にしていましたから」
加蓮「こうしてぼーっと外を眺めるのも悪くはないね。って言っても、人なんてぜんぜん通りかからないけどさ」
藍子「ここ、穴場のカフェですから。だからこそ、たまに通りかかった時が嬉しいんです♪ あっ、もしかして、もう少し賑やかな場所に行きたい気分ですか?」
加蓮「んーん。いいよ。賑やかさで埋めないといけない物なんてないし」
藍子「埋めないといけないもの……?」
加蓮「さー何でしょう? なんて、これもまた今更かな。それにほら、ここからの景色、たまに見ないと忘れちゃいそうだし?」
藍子「……忘れないでくださいよー、もー。ここで私と加蓮ちゃん、何度お話ししたと思ってるんですかー」
加蓮「藍子のことは忘れないよ? それ以外のことを片っ端から忘れているだけ」
藍子「覚えてあげてくださいっ」
加蓮「ふふっ」ホオヅエ
加蓮「暑くなったねー。夏、到来!」
藍子「今年も夏が来ちゃいましたっ」
加蓮「暑い!」
藍子「暑いですっ」
加蓮「ジメジメするのは同じなのに梅雨より何倍も楽しい! 不思議!」
藍子「楽しいこと、いっぱい待ちわびてますから!」
加蓮「開放感!」
藍子「夏休みっ」
加蓮「いきなり雨が降って来るのは困る!」
藍子「雨上がりには虹を見に行きましょうっ」
加蓮「そしてそれ以上にテストがウザい!」
藍子「……い、嫌なことを思い出させないでください」
加蓮「覚えてあげろって言ったの藍子でしょ?」
藍子「嫌なことは覚えていなくていいんですっ。加蓮ちゃんは、だって……お話を聞いてたら、なんだか嫌なことをいっぱい覚えちゃってるみたいで……だから、楽しいことをいっぱい覚えてほしいんです」
加蓮「そこは否定しない。でもテストは無視できないよね?」
藍子「……このお話は終わりにしましょう!」
加蓮「えー? 加蓮ちゃんが先生からテストの問題集を掠め取るまでのお涙頂戴なお話はー?」
藍子「またそんなことをやってるんですか……」
加蓮「楽できるところは楽しなきゃ。って言いつつ藍子はねー。そうだ、Pさんに泣きついてみるといいよ。あの人教えるの得意だから」
藍子「どうしても困っちゃったら、そうしますね」
加蓮「迷惑かけたくない?」
藍子「Pさん、いつも忙しそうですから……」
加蓮「藍子が泣きついたら他の仕事ぜんぶ放り投げると思うよ? そうしてもらえる方がPさんも嬉しいだろうし。あ、でも教えてもらう時の服装には気をつけた方がいいかもね」
藍子「服装?」
加蓮「……」
藍子「……?」
加蓮「……」
藍子「……何したんですか加蓮ちゃん」
加蓮「……えーっと、うん……ちょおっと気合を入れすぎました」
藍子「気合を入れすぎたんですか」
加蓮「逃げられた」
藍子「逃げ……? …………あぁ」
加蓮「逃げてくれたことがちょっと嬉しかった」
藍子「…………」ジトー
加蓮「藍子が泣きついたら他の仕事ぜんぶ放り投げると思うよ? そうしてもらえる方がPさんも嬉しいだろうし。あ、でも教えてもらう時の服装には気をつけた方がいいかもね」
藍子「服装?」
加蓮「……」
藍子「……?」
加蓮「……」
藍子「……何したんですか加蓮ちゃん」
加蓮「……えーっと、うん……ちょおっと気合を入れすぎました」
藍子「気合を入れすぎたんですか」
加蓮「逃げられた」
藍子「逃げ……? …………あぁ」
加蓮「逃げてくれたことがちょっと嬉しかった」
藍子「…………」ジトー
あ、重複失礼……。久々にやらかしました。>>8はなかったことに~
藍子「加蓮ちゃん、気合を入れていなくても眩しいんですから」
加蓮「だってさ、いや、だって聞いてよ。久しぶりに2人きりだったんだよ? 事務所の中だよ? ちひろさん退社した後だよ? 邪魔者いないんだよ?」
加蓮「……ひっつく理由がテスト勉強教えてーってのは我ながら色気なさすぎるけどさー。こんなチャンスを逃すアホはいないって。藍子以外」
藍子「それ、遠回しに私のことをアホだって言っていますか?」
加蓮「ん? この前の雨の日の散歩で最後まで腕を絡めるどころか手を繋ぐこともできなかった恋する乙女(笑)がいるんだってー?」
藍子「……わ、私は恋する乙女ではなくゆるふわ乙女ですから」
加蓮「おおそう来た」
藍子「それに、あれは加蓮ちゃんが強引すぎるだけですっ。だって、見るからにPさん困ってましたもん」
加蓮「そんなPさんも楽しそうだって言って写真を撮ったのは?」
藍子「私ですね」
加蓮「あれあれ? 私のこと言えないんじゃない?」
藍子「駄目な物は駄目です。加蓮ちゃん、Pさんを困らせないでくださいっ」
加蓮「…………あれ? ……うん? うん?? ……ま、いっか」
加蓮「世話焼きなPさんと、世話を焼かれるのが嫌いな私。じゃあどっかイメージを変えるしかないよね。結果、逃げられる訳だけど」
藍子「うーん……次は上手くいくといいですね、加蓮ちゃん。でも、Pさんが悩んだりしない方法の方が、私は嬉しいです」
加蓮「はーい。じゃPさんに逃げられた分だけ藍子にひっついてやろ」
藍子「ふふっ、私が代わりでいいんですか?」
加蓮「代わりじゃないよ。藍子は藍子、PさんはPさん。逃げられた分っていうのは……フラストレーション?」
藍子「加蓮ちゃん、そういう時は力いっぱい抱きしめてくるから……想いは伝わってきますけれど、ちょっぴり痛いです」
加蓮「え、マジ? それはごめん。加減が効いてないのかも」
藍子「ううん。大丈夫ですよ。いっぱいぎゅって来てくださいね? その方が加蓮ちゃんの気持ちが伝わって来て……ぎゅって、抱きしめ返したくなりますから」
加蓮「…………」
藍子「ねっ?」
加蓮「…………とりゃ」ビシ
藍子「いたいっ。なんでですかーっ!」
加蓮「うーん。……ムカついた?」
藍子「ばかーっ。いじっぱり!」
加蓮「よしもう一発」スッ
藍子「きゃーっ」アタマガード
……。
…………。
加蓮「静かなカフェに蝉の鳴き声、耳を済ませば遠くから都会の音……かぁ。まるで世界を外から見ているみたいだね」
藍子「世界を、外から……ですか?」
加蓮「マンガを読んでる気分っていうか、アイドルをテレビで見てる気分っていうか」
藍子「うーん……?」
加蓮「例えばさ? 藍子はここにいるでしょ。でもテレビで藍子を見た時は何か違うの。そんな気持ち……うーん、それも何か違う気がするー」
藍子「テレビで見た時の加蓮ちゃんと、ここにいる加蓮ちゃん……」
加蓮「難しい話になっちゃったね。たいしたこともないし忘れていいよ」
藍子「…………」ジー
加蓮「?」
藍子「はぁい。そうしますね」
加蓮「……なんか悩んだ?」
藍子「ううん……。私は、どっちも加蓮ちゃん、私の大好きな人、ってくらいしか違いは分からないなって」
加蓮「言ってて飽きない?」
藍子「飽きちゃ駄目ですっ。それに、加蓮ちゃんが忘れない為に何度だって言うんです!」
加蓮「だーかーらー藍子のことは忘れないってば、もー」
藍子「ふふっ。……ふうっ。ちょっぴり暑いっ」
加蓮「暑いねー。中に移動する?」
藍子「もっと暑くなったらそうしましょう。今日は、ここにいたい気分……」
加蓮「奇遇だね、私も」
藍子「クーラーの効いた部屋は、快適ですけれど……ここにいる方が、夏の中にいるって気持ちになれるんです」
加蓮「夏の中、ねぇ」
藍子「あ、私、さっき加蓮ちゃんが言いたかったことが分かっちゃったかも」
藍子「部屋の中から外を見るより外にいた方が、夏の中にいるってことですね!」
加蓮「…………」
藍子「…………!」フンス
加蓮「……あはは。ごめん、ちょっと違う、っていうかたぶん全然違う」
藍子「」ガクッ
藍子「む~。残念です。加蓮ちゃんの気持ちが分かったと思ったのに……」
加蓮「まーいいよいいよ。謎かけでもないし本当になんでもない話だから。でも藍子の言うことは賛成。暑いところにいる方がさ、夏に生きてるって気がするよね」
藍子「夏に生きている、ですか?」
加蓮「うん。ほら、暑い方がアイスが美味しいし。プールに入りたくなるのも暑いからだよ。つまりそれは夏に生きてるってこと!」
藍子「夏に生きる私たちっ! ふふ、なんだか青春ドラマとか撮れちゃいそう」
加蓮「だから私ももうちょっとここにいたいな。いい?」
藍子「先にここにいたいって言ったの、私ですから」
加蓮「そういえばそうだったね。いつの間にか私の手柄にしちゃった」
藍子「加蓮ちゃんの手柄にされちゃいましたっ」
加蓮「そこで張り合って来たら面白いんだけどなー」
藍子「それなら私、分け合う方が好きです」
加蓮「残念」
加蓮「こうして外にいると、いつもは煩い蝉の鳴き声も、」
<ジジジジジジ
<ジジジジジジ
<ジジジジジジジジジ
加蓮「……駄目だ、意識したらやっぱり煩い」
藍子「……ですね」
加蓮「勘弁してほしいよね……」
藍子「さすがにちょっと……」
加蓮「藍子でも駄目?」
藍子「うぅ……はい。この時期は耳を塞いでも聞こえちゃうから……森なんて本当に。だから、森へのお散歩はお預けにしちゃいました」
加蓮「そうなんだー」
藍子「森には、涼しくなってから行くんです。虫よけスプレーもいっぱい買って、また写真を撮らなきゃ!」
加蓮「ふふっ」
加蓮「みーんみんみん。みーんみんみ……ああ、ダメだこれ、どこかの宇宙出身千葉県在住妖怪腰痛めアイドルが頭に浮かんでくる」
藍子「うちゅうしゅっしん、ちばけんざいじゅう……、……加蓮ちゃん、もう1回っ」
加蓮「えーと、千葉県在住妖怪……あれ? なんだっけ」
藍子「そもそも、それって?」
加蓮「呪文じゃないかなぁ。ウサミン星人を一発で撃退できる」
藍子「撃退しないであげてくださいね。そういえば……ふふっ」
加蓮「ん?」
藍子「ううん。菜々さんとPさんの、事務所での追いかけっこを思い出しちゃって……あ、あははっ、笑っちゃ失礼なのは分かるんですけど……あの時の菜々さんが、その、あまりにも、あまりにも必死すぎてっ……!」プルプル
藍子「わ、笑ったら失礼だっていうのは、分かってるんですけど……!」プルプル
加蓮「ウワサには聞いてるよ、ウワサでしか聞いてないけど……また水着絡みなんだって?」
藍子「うく、うくくっ……」プルプル
加蓮「くそぅ。なんでそんな面白そうなことが起きている時に私は居残りレッスンなんてやっていたんだ!」
藍子「……ご、ごめんなさいっ、もう大丈夫です」
加蓮「戻ってくるの早かったね、おかえり」
藍子「それ以上に気になることができちゃったから……でしょうか」
加蓮「気になること?」
藍子「はい。加蓮ちゃん、居残りレッスンなんてやっていたんですか?」
加蓮「ぎゃー藍子の目が鋭くなったー」
藍子「無理しないでって言いましたよね。私も、Pさんも」ズイ
加蓮「ちょちょ、怖いから。ちょっとマジで怖いから藍子。ちょっとだけ顔引っ込めて」
藍子「あ、はいっ」スッ
加蓮「アレだよー、サマーフェスに向けての下準備。ほら、夏の野外LIVEでしょ? トレーナーさんがさ、倒れずに体力を温存するようにってばっかり言ってくるんだ」
藍子「私も何度も言われてますよ。夏は大変だからって」
加蓮「それだとさ、なんか変に抑えてダンスしてるって感じでモヤモヤしてて。ちょっと限界に挑戦してみたくなったっていうか……も、もちろん迷惑をかけない程度にね?」
藍子「あ、それちょっぴり分かります!」
加蓮「藍子も?」
藍子「思いっきりやりたくなっちゃいますよね。ううん、体力は大切で、倒れちゃ駄目で、熱中症も危なくて……気をつけないといけないことはいっぱいありますよね」
藍子「でも、ずっと抑えめにしていたら、体がむずむずしちゃって……」
加蓮「だよねだよねー」
藍子「でもっ。加蓮ちゃんは……う、うう……ええと……ごほんっ。心配だけはさせないでください、加蓮ちゃん」
加蓮「はーい。で、本音は?」
藍子「……だって、頑張り過ぎないでくださいって言ったら、加蓮ちゃん、絶対に怒りますもん。それか拗ねちゃいます」
加蓮「うん、そーだね。心配してくれる人がいるのは分かるんだけど……」
藍子「そのうち、加蓮ちゃんがPさんと追いかけっこしちゃうかもしれませんね」
加蓮「火事場の馬鹿力は私にはないもんなぁ。すぐにPさんに捕まっちゃいそう。あ、でもアイドルの時は簡単に限界を超えられ――だから藍子、その顔で詰め寄ってくるのはパス。ホントパス。怪談にはまだ1週間早い」
藍子「怖いお話とかは、私はちょっと……」
加蓮「ん? とっておきの体験談とかほしい? ほら病院って色々と出」
藍子「来週は私がずっとお話ししちゃいますね! 加蓮ちゃんのお話する番、ぜんぶとっちゃいますから!」
加蓮「楽しみにしとくねー。ところでさ、藍子はPさんと追いかけっこしないの?」
藍子「追いかけっこですか? 私は……うーん。Pさんと一緒に走るのなら、楽しそう……かな?」
加蓮「やっぱり平和だねー。そういえば藍子とPさんが喧嘩するところって見たことないなぁ」
藍子「Pさん、私にいつも優しくしてくれますから」
加蓮「……言い方言い方」
藍子「?」
加蓮「なんでも。こう……なんかないの? Pさんへの不満とか。今なら私しか聞いてないよ?」スッ
藍子「スマートフォンを取り出しながらそう言われても……」
加蓮「あ、ごめん、つい癖で」
藍子「何の癖なんですか!?」
加蓮「さぁぶっちゃけてみようか。藍子ちゃんの愚痴コーナー!」
藍子「わ、わー?」...パチパチ?
加蓮「さんにーいちはいっ」
藍子「…………?」
加蓮「いや、だから藍子が愚痴を言うの。なんでもいいよ? アイドルのことでもプライベートのことでも。はい改めてー、どうぞっ」
藍子「ええっ。えっと、愚痴……ぐち?」
加蓮「それか不満」
藍子「不満……。うーん、不満……。……なかなか思いつかないです」
加蓮「しゅーりょー。視聴率にはならないねこれじゃ」
藍子「ごめんなさいっ。じゃあほら、加蓮ちゃんが代わりに!」
加蓮「いやいや、藍子が言うから意味があるんだってば。テストめんどくさいー! とかでもいいんだよ?」
藍子「あ……そういえばそれがありましたっ」
加蓮「加蓮ちゃんがうざーい! とかでもいいし」
藍子「……………………それ、本当に言ったらすっごく落ち込みますよね?」
加蓮「え? ……い、いやいや……ほら? 藍子の冗談くらい簡単に見抜けるし? それにほら……藍子はそういうこと言わないって分かってるし?」
藍子「本当に?」
加蓮「当然、うん、マジマジ」
藍子「今度、本当に言っちゃおうかな……?」
加蓮「や、やめなさい藍子。ファンはそんな藍子の姿なんて望んでないわよ!」
藍子「……ですねっ」
加蓮「ほっ」
藍子「あ、今ほっとした」
加蓮「それはほら、アレだって」
藍子「あれって?」
加蓮「藍子がさ、……ね? ファンからがっかりされなくてよかったーって。ね? それ以上の意味なんてないから。ないったらないの!」
藍子「……ふふ。そういうことにしておきますね♪」
加蓮「うんうん、そういうことにしておこう」
藍子「同じお話をするなら、いいところや好きなところのお話がしたいです」
加蓮「それはそれで照れちゃいそうだね」
藍子「ふふっ。急に褒められたら、顔が真っ赤になっちゃいそう?」
加蓮「でしょ? だから」
藍子「……ふふっ♪」
加蓮「何を企んでいるー!?」
藍子「えっと……ヒントはこれですっ」スマフォトリダス
加蓮「ヒントっていうかそれ答え! そ、そうやって私の弱味ばっかり握って何がやりたいのよ!」
藍子「弱みじゃありません。思い出です!」
加蓮「加蓮ちゃんを味方につけても嫌なアイドルを潰すくらいしかできないわよ!」
藍子「そんなことしなくでいいですよ!?」
加蓮「なら最初にまず藍子を潰す」
藍子「私加蓮ちゃんにとって嫌なアイドルなんですか!?」
加蓮「……ふうっ。加蓮ちゃん劇場しゅーりょー」
藍子「前にもやっていましたよね。もしかして、ハマっちゃいましたか?」
加蓮「うん、ちょっとだけ。……でもホントに藍子は手強いなぁ」
藍子「そんなことないですよ。……あの、私、加蓮ちゃんにとって――」
加蓮「ここで会ってなければそうなってたかもね?」
藍子「…………?」
加蓮「藍子ごときにやれるとはー。ぐわー」
藍子「……うふふっ」
加蓮「ま、これだけ楽しそうなら愚痴も何もあるわけないっか」
藍子「毎日が楽しいから、嫌なことがあってもすぐに忘れちゃうのかも……?」
加蓮「割り切るねー」
藍子「加蓮ちゃんも、嫌なことがあったら周りに言って楽しい日にしちゃいましょう!」
加蓮「そだね。その時には……ん? お便り募集、不満をぶつける、藍子が浄化……あ、これ面白そう。Pさんに提案してみよっかな……よーし、次のネタができた!」
藍子「……加蓮ちゃんの考えることが早くて、私、ちょっぴりついていけてないですけれど」
加蓮「あ、ごめんごめん。自己完結しちゃった。ええとね、」
藍子「あんまりよくなさそうなことを考えてるってことは私にも分かります」ジトー
加蓮「藍子の――え、あ、あはは? そう? 見間違いじゃない?」
藍子「……もうっ。でも、Pさんのお話をする加蓮ちゃんがすっごく楽しそうで――」
藍子「……………………」ウーン
藍子「……Pさんを困らせるのは、駄目、とはもう言いませんね。でも、ほどほどにしてください」
加蓮「はーい。でもほら、私がPさんを困らせて、藍子が泣きつかれる。役割分担役割分担」
藍子「そんなことしなくても……」
加蓮「刺激は必要だって。退屈……退屈なんてもう言えないけど、ほら、たまには刺激的にね?」
加蓮「藍子だってほら、ずっと営業とかレッスンばっかりより、たまには大きなLIVEとか、ファンがいっぱい来てくれる握手会とかした方が楽しいでしょ?」
藍子「…………、…………!」ポン
加蓮「そーゆーことです」
藍子「そういうことなんですね」
加蓮「そーゆーこと」
藍子「……LIVEも握手会も、Pさんやファンの皆さんから頂ける時間なんです。すごく楽しい時間で、いつも感謝の気持ちでいっぱいで……私はいつも、もらってばっかりなんです」
藍子「加蓮ちゃんは、そういうのを自分で作り出すんですよね。そんな加蓮ちゃんがいつも楽しそうだから……私も、ちょっとだけ……ちょっぴりだけ、そういう風になっていいのかな……?」
加蓮「あははっ。ほらほら、藍子もPさんを困らせちゃえっ」
藍子「そういうことじゃないです~っ。もうっ! やっぱり加蓮ちゃんはもうちょっと控えめになるべきです! Pさんにとかっ!」
加蓮「ここで藍子さんの名言いきましょう。『あ・ら・もー」
藍子「私は大胆に控えめくらいでいいんですっ!!!」
加蓮「いや、どっち?」
――少し経って――
藍子「ぜーっ、ぜーっ……」
加蓮「落ち着いたー?」
藍子「ふうっ……。ううう~~~~~っ」
加蓮「ごめんごめん。ごめんってば。ほら、あちこちに汗出ちゃってるよ」フキフキ
藍子「がるる~~~」
加蓮「威嚇しつつはねのけたりしない忠犬藍子ちゃん。……はい、これでオッケーっと」
藍子「ありがとうございます。…………もう。疲れちゃいました」
加蓮「お疲れ」
藍子「私、前にも言いましたけれど……加蓮ちゃんとここでお話していたら、加蓮ちゃんが疲れちゃうことがよくあって……そうじゃなくて、加蓮ちゃんにはゆっくりしてほしいなって思っていました」
藍子「でも、最近……私の方が疲れちゃってる気がします……」
加蓮「そっか」
藍子「ひとごとみたいにっ」
加蓮「え? あはは、ごめんごめん。ちょっと気が抜けちゃって」
藍子「いいんですけれどね。振り回されるのも、けっこう好きですから」
加蓮「たまには刺激を!」
藍子「でも加蓮ちゃんは刺激ばっかりですっ」
加蓮「すみませーん。アイスコーヒーお願いします!」
藍子「じゃあ、私もっ」
……。
…………。
加蓮「…………」ゴクゴク
藍子「…………」ゴク
加蓮「…………」ゴクゴク
藍子「…………」ゴク
加蓮「……急に落ち着くー」
藍子「きっと、コーヒーを飲んでるからですよ」
加蓮「あ、それあるかも。なんかたまーに飲みたくなるんだよね。こうやってほら、大騒ぎした後とか」
藍子「はしゃいじゃった後とか?」
加蓮「そうそう。なんとなく。ちょっとかっこつけ」
藍子「私も、コーヒーやココアを飲むと落ち着けるんです。落ち着いて、穏やかになれて……」
加蓮「ふー…………」ゴクゴク
藍子「ふふっ…………」ゴク
加蓮「…………」ゴクゴク
藍子「…………」ゴク
藍子「……お姉ちゃんっ♪」
加蓮「またそのネタぁ?」
藍子「ついっ。だって今の加蓮ちゃん、そんな感じでしたもん」
加蓮「はいはいおねーちゃんおねーちゃん。おねーちゃんはちょっと騒ぎ疲れちゃいました。……ごめんね藍子? 今日はちょっと好きにやりすぎちゃったかも」
藍子「もう慣れちゃいましたよ~」
加蓮「そっかー」
藍子「…………」ズズ
加蓮「試しに1回やってみる?」
藍子「お姉ちゃんをですか?」
加蓮「そっちじゃないっ。一緒にいるだけでぜんぜん話もしないでのーんびり……あ、それただの昼寝になるコースだ」
藍子「いつの間にか眠っちゃいそう。また加蓮ちゃんの膝の上でお昼寝したいなぁ……」
加蓮「すっごく幸せそうだったもんね、あの時の藍子」
藍子「それに、加蓮ちゃんにいっぱい怒られちゃいましたよね」
加蓮「世話焼きとか私の趣味じゃないんだけどね。藍子、そんなことさせないでよー?」
藍子「はーいっ。次は、怒られないで膝を借りられるようにしますね」
加蓮「ん? なんかごっちゃになってない?」
加蓮「…………」ゴクゴク
藍子「…………」ズズ
<カナカナカナカナ...
加蓮「……同じ鳴き声でも、これくらいがちょうどいいね」
藍子「ひぐらしの鳴き声を聞くと、夕方って感じがしますね」
加蓮「1日の終わりー。なんて、まだまだ明るいから実感湧かないけど」
藍子「まだ、もうちょっとゆっくりできる……って思ってたら」
加蓮「いつの間にか8時9時になって。なんにもないのに焦っちゃって」
藍子「焦っちゃうんですか?」
加蓮「え? あー……どうだろ。なんかこう、置いて行かれてるって気がしない?」
藍子「うーん」
加蓮「しないか。相変わらず気が合わないね」
藍子「あ、でも、ひぐらしの鳴き声が聞こえてくると、ちょっぴり寂しくはなりますね」
加蓮「あるある。なんかこう、儚いよね」
藍子「儚いですよね」
加蓮「蝉って数日しか生きられないって言うし」
藍子「きっと、短い時間をせいいっぱい生きているんですよね……」
加蓮「私は人間に生まれちゃったもん。それを感謝するって柄でもないし。人間は人間らしく、長い人生を楽しむよ」
藍子「……ふふっ。加蓮ちゃんいのに、加蓮ちゃんらしくないっ♪」
加蓮「きさまも蝉にしてやろうかー」
藍子「きゃー」
<カナカナカナカナ...
加蓮「ちょっと涼しくなってきた?」
藍子「涼しくなってきちゃいましたっ。……ぶるぶるっ」
加蓮「……寒いの?」
藍子「今、風が吹いてきたから……不意打ちでしたっ」
加蓮「そっか。……そんな藍子の手元に残るアイスコーヒー」
藍子「えぅ」
加蓮「大丈夫、頼んでだいぶ経ったからぬるくなってるよ、きっと」
藍子「…………えいっ」ゴク
藍子「……みたいですっ。思ったより冷たくなくて、それなのに飲みやすくて……ふふっ、まだ美味しい♪」
加蓮「そっか。よかったね」
藍子「はいっ」
加蓮「…………」
藍子「…………♪」ゴクゴク
藍子「ごちそうさまでした。加蓮ちゃん、今日はもう帰りましょうか」
加蓮「ん、そうしよっか。暑くなくなっちゃったし、今日の夏はもうおしまい」
藍子「終わっちゃいましたね。続きは、また明日。明日になったら、また夏が来ますよ」
加蓮「そして週が明けるとテストが来ます」
藍子「せっかく忘れようとしてたのに!」
加蓮「くくっ。さすがに勉強している時はクーラーの部屋の中だね。暑いと集中なんてできないし」
藍子「カフェテラスで勉強するのもけっこう楽しいんですよ?」
加蓮「え、マジ?」
藍子「いつもよりゆっくりできて、自然と暗記もできて。勉強だけじゃなくて、お仕事の台本を読む時なんかも、私、よくカフェに寄っちゃいますから」
加蓮「なるほどねー」
藍子「あ、でも今回はPさんに教えてもらっちゃいます。だから、勉強会は事務所で」
加蓮「キャミソールにミニデニムで勝負だっ」
藍子「そんなことしませんから! できませんから!!」
加蓮「Pさんが逃げた先には私が待ち伏せとくね。じゃあ計画通りに」
藍子「計画なんて立ててないじゃないですか! それ待ち伏せじゃなくて捕食になっちゃいますよね!?」
加蓮「大丈夫。骨は藍子に残してあげる」
藍子「骨しか残らないんですか!?」
……。
…………。
加蓮「さ、帰ろっか。……お、あっちの人」
藍子「?」
加蓮「藍子が前に着てたのと同じ服着てる人、発見っ」
藍子「……ホントです! 私を見てくれたのかも……♪」
藍子「あの人が、加蓮ちゃんのファンでもありますようにっ」
加蓮「だといいね」
おしまい。
読んでいただき、ありがとうございました。
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