母「ウチの家族は中毒者だらけ」 (16)

父「ふぅー……」スパー…

母「あなた、ちょっとタバコ吸いすぎよ!」

父「そうかぁ? まだ一箱しか吸ってないぞ」

母「まったく……ニコチン中毒なんだから」

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息子「このっ、このっ、くそっ!」カチカチッ

母「あんた、いつまでゲームしてんの!」

息子「このボスを倒したらやめるよ!」カチカチカチッ

母「まったく……ゲーム中毒なんだから」

娘「あっ、LINEきた!」

母「朝からずっとスマホにかじりつきっぱなしじゃない!」

娘「だってぇ、友達とずっと繋がっていられるんだもん!」

母「まったく……スマホ中毒なんだから」

―病院―

母「……というわけなんです。困ったものですわ」

イケメン医師「マダムも苦労なされていますね」フフッ

母「本当ですわ、中毒者ばかりで……。どうすればいいでしょう?」

イケメン医師「そういった依存症の患者は私も扱ったことがありますが――」

イケメン医師「生半可な方法では、依存症から立ち直れる見込みは薄いです」

イケメン医師「やはり環境から変えていかねばなりません」

イケメン医師「あなたの手で、タバコやゲームを強制的に制限してしまうのです」

母「なるほど! いつもいつも私の相談に乗ってくれてありがとうございます、先生!」

イケメン医師「いえいえ、これもマダムのためですから」ニコッ

―家―

父「あれ、タバコは?」キョロキョロ

母「私が回収したわ。タバコは全部、私しか知らないところに隠したわ」

父「えええええ!?」

母「これからはタバコは一日一本! いいわね!」

父「そんな殺生な~!」

母「これもあなたの健康のためなのよ! ……あと家計」

息子「――ん?」

息子「なにさ、このタイマー」

母「ゲームは一日一時間! もし過ぎると自動的にゲームの電源が切れる仕組みよ」

息子「ちょっと待ってよ! なんだよそれ!」

母「ウフフ、知り合いのお医者さんに作ってもらったのよ」

母「これぐらいしなきゃ、あんたのゲーム中毒は治らないってね!」

娘「ひっどーい! スマホ取り上げるなんて信じらんなーい! なにすんのー!」

母「信じられないのはこっちよ!」

娘「ハァ? なんでよ!」

母「スマホに頼らなくたって、友達と繋がることはできるわ!」

娘「どうやって!?」

母「直接会えばいいのよ! ほら、いい天気だから出かけてらっしゃい!」

父「ま……たしかにタバコやめた方が健康にはいいかもな」


息子「ヒマだからサッカーしてたら、こっちにも結構ハマっちゃったよ」


娘「友達の家に行ってくるね!」





母「……案外あっさりうまくいっちゃったわね」

―病院―

イケメン医師「いかがでしたか?」

母「先生のアドバイスのおかげで、うまくいきましたわ!」

母「本当にありがとうございます」

イケメン医師「とんでもない」

母「でも……」

イケメン医師「でも?」

母「なんででしょう……せっかく家族の問題が解決したのに……」

母「なんだかイライラするんです」

イケメン医師「おや、それはいけませんね」

イケメン医師「でしたらこの私が、マダムのイライラを取り去ってあげましょう」



イケメン医師「さぁ……私に身も心も委ねて下さい……」ニコッ

母「委ねるわけないでしょ、このバカ!」バシッ

イケメン医師「ぶっ!?」

母「そうやっていつも患者のおばさん口説いてんでしょ!? 知ってんだから!」バシッバシッ

イケメン医師「うげっ! べぼっ!」

母「この熟女中毒が! そのクサレ根性、今ここで叩き直してやる!」

イケメン医師「全部バレてたってわけか~! ご、ごめんなさ~い!」

―家―

母「あー……イライラする」

母「誰か中毒者いないかしら?」

母「そうだわ! 近所でアルコール依存症と向き合う会、なんて催しがあったわね!」

母「あれにカウンセリング側として参加できないかしら! 電話してみよっと!」



息子「このところ、お母さんやけにイライラしたり、はりきったりしてるよね」

娘「どうしたんだろ?」

父「多分……中毒者中毒ってやつなんだろうさ」





                                     おわり

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