提督「妙高は空を見る」 (52)
提督(うちの鎮守府の妙高はよく空を見上げている。
なんでもまだ艦だったときの記憶がそうさせているみたいだ。
昔こそ空を睨んでいたが今はそんなことはなく、ただの癖になっているらしい。
私はそんな妙高の姿が愛おしくて仕方がない。
普段真面目な彼女が見せる唯一の隙なのだから)
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提督(執務室での休憩中、彼女は空を見上げている)
提督「おおい、妙高。なにか見えるのか?」
妙高「え、あ、はい。いい天気だなと思いまして」
提督「確かに今日は雲一つない見事な青空だな。こんなに暖かいと昼寝のひとつでもしたくなる」
妙高「そんなこと言って執務をさぼらないでくださいよ」
提督「わかっている。しかし眠気は襲ってくるのだ」
妙高「もう少ししたら暖かいではなく暑いになりますよ」
提督「だからこそ今昼寝すべきではなかろうか」
妙高「ダメです」
提督「わかりました」
提督(彼女はいつも通り空を見上げている)
提督「おおい、妙高。なにを見ているのだ?」
妙高「え、あ、はい。鳥が飛んでいます」
提督「そうか、鳥は気楽でいいもんだ。私もああなりたい」
妙高「提督は鳥にはなれませんが……」
提督「が、どうした?」
妙高「鳥頭と言われても仕方ない部分はありますよね」
提督「し、失礼な」
妙高「聞いていますよ、昨日も羽黒との約束をすっぽかしたみたいですね」ゴゴゴ
提督「あ……はい……忙しくて」
妙高「羽黒寂しがっていましたよ」ゴゴゴゴゴ
提督「ご勘弁を」
妙高「出来ません!大体提督はよく約束を忘れていますよね!」ガミガミ
こんな感じでゆっくりと更新していきます!
ぼちぼち書いていきます。
提督(彼女は雨空を見上げている)
提督「今日は雨が降っているな、妙高」
妙高「はい、提督。梅雨入りしたみたいですね」
提督「これから雨が多くなるな」
妙高「提督は雨はお好きですか?」
提督「いや、あまり好きではない。むしろ嫌いだな。やっぱり空は晴れてないと」
妙高「梅雨にも梅雨の楽しみ方があるんですよ」
提督「というと?」
妙高「目を閉じて雨の音を聞いてみるんです。そうすると……心が落ち着きますよ」
提督「……うむ、悪くないな」
妙高「気に入ってくれたなら幸いです」
提督「今年の梅雨は少しだけいい気分で過ごせそうだ」
提督(廊下で妙高が空を……いや、あれは木を見上げているな)
提督「おおい、妙高。なにを見ているのだ?」
妙高「あ、提督。木に蝉が止まっているのが見えまして」
提督「まだ梅雨も明けてないのに気が早いやつらだ」
妙高「徐々に夏らしくなってきましたね。提督は夏はお好きですか?」
提督「暑いし湿気は多いし暑いし食べ物はすぐだめになるし暑いし夕立も良く降るけど、なんだかんだで夏は好きだな」
妙高「暑いのがそんなにいやなんですか?」
提督「確かに暑いのは嫌いだが暑くなきゃ夏になった気がしない。難儀なものだ」
妙高「わがままですね。ですがわかる気もします」
提督「妙高は夏は好きか?」
妙高「好きですよ。夏はどこか開放的な気分になれる気がします」
提督「今年あたりは妙高も水着になってみてはどうだ?」
妙高「考えておきます」
今日はこれで終わりです。
妙高さんを旗艦にしているからなのか、初風掘りが終わりません。
ぼちぼち更新します。
提督(妙高が星空を見上げている。今日は七夕だもんな)
提督「おおい、妙高。星は見えるか?」
妙高「はい、提督。今日は天気もよく天の川が良く見えます」
提督「織姫と彦星が一年に一度会える日ね。妙高はあの話どう思う」
妙高「とても悲しい話だと思いますよ。思い人に会うことができないなんて」
提督「意外だな。妙高なら自業自得だと言うと思っていたが」
妙高「提督の中の私の像はどうなっているのですか?」
提督「だって仕事をサボるなんて許されざることだなんていつも許さないじゃん」
妙高「それは……提督のためを思って……」
提督「それはわかっているよ。いつもありがとな。それはそうと例えばこの話に俺たちを当てはめてみた場合な……」
妙高「それは織姫が私で彦星が提督ということですか?」
提督「ああそうだ。妙高だったら仕事終わるまで遊ばせてくれなそうだな」
妙高「当たり前です」
提督「まあそうしたらずっと一緒にいれるな」
妙高「なに恥ずかしいこと言っているのですか!」
提督「ダメだったか?」
妙高「ダメでは……ないですけれど」
提督(妙高がみんなの短冊を見上げている。話しかけようとしたが先客がいるようだ)
那智「姉さん。なにを見ていられるのですか?」
妙高「あら、那智。片付ける前に今一度みんなの願い事を見てみようかと思って」
那智「姉さんはなんて書いたのですか?」
妙高「私はやっぱり一番大事なこと。みんな無事でありますようにと。那智はどう書きました?」
那智「姉さんらしいですね。私はやっぱり勝利です」
妙高「足柄の願いと被っていますね。二人とも仲がよろしいこと」
那智「なんだか複雑な気分ですね。足柄が願っていてくれるなら私は違う願いにするべきか」
妙高「まあいいじゃないですか。二人で願えばそれだけ叶いやすくなりますよ」
那智「そうですね……。羽黒はなんて書いていますか?」
妙高「お姉ちゃんたちみたいになりたい……と書いてありますね」
那智「羽黒らしいですが少し照れますね」
妙高「そうですね。だからこそ羽黒の見本になるような姉で痛いですね」
那智「はい。頑張りましょう」
妙高「とりあえず那智は禁酒……とは言いませんが少しお酒を控えてみては?」
那智「耳が痛い話です」
今日はここまでです。
少し過ぎちゃいましたが書きたかったので七夕ネタを出しました。
提督(妙高は今日も雨空を見上げている)
提督「はあ、また雨だな」
妙高「数日前に雨もいいとか言っていたじゃないですか」
提督「マイナスがゼロになっただけだ。この連日の雨でまたマイナスに傾いた」
妙高「確かに雨が続いたりすると洗濯物を干せないので大変ですよね」
提督「妙高の雨に対する不満はそれだけか」
妙高「海に出ると雨が降っていてもいなくても濡れますし、まあ視界が悪いのは辛いですね」
提督「俺はジメジメした空気に気分まで陰鬱になっていく」
妙高「はいはい。それじゃてるてる坊主でも作ったらどうですか?」
提督「駆逐艦や軽巡の子達が作ってるのを最近良く見るな」
妙高「羽黒も作っていましたよ」
提督「そうか……じゃあ次執務室に来た子に作ってもらうか」
妙高「そこで自分が作ると言わないのが提督らしいですね」
提督(妙高が夕暮れ時の空を見上げている)
提督「夕焼けが綺麗だな」
妙高「そうですね。綺麗です」
提督「執務室の景色は綺麗だろ!母港と海を一望できるからな」
妙高「よほど気に入っているのですね」
提督「ああ!やっぱりみんなのいる海を眺めていたいじゃないか」
妙高「提督らしい考え方ですね」
提督「そうかな。それにしても今日は夕日が綺麗だ」
妙高「海に反射して綺麗ですね」
提督「『おしまいのちょっと前、生き物ぜんぶミカン色』」
妙高「どうしたんですか急に?」
提督「この前秋雲が呟いていたのだが綺麗な言葉だと思って」
妙高「綺麗ですね」
提督「綺麗だな」
提督(妙高が夜空を見上げている。っと今日も先客がいるな)
足柄「妙高姉さん、なにを見ているの?」
妙高「あら足柄、ちょうど星を見ていたところです」
足柄「星なんて見てて楽しいの?」
妙高「こう、ゆっくり眺めていると楽しいものですよ」
足柄「そんな姉さんに星を見るのがより一層楽しくなるアイテムがあります」
妙高「なにかしら?」
足柄「じゃじゃーん、お酒です!一緒に飲みましょ」
妙高「いいのかしら?」
足柄「姉さんはいつも頑張っているからたまには贅沢もしなきゃだわ」
妙高「ううん、まあ足柄も一緒に飲んでくれるなら」
足柄「もちろんそのつもりよ」
妙高「星を肴に星見酒……なかなかいいものですね」
足柄「いつもうるさく飲んでいるけど、たまにはこうしたしんみりしたのもいいものね」
提督(なにあれ混ざりたい。……いや、たまには姉妹水入らずの時間を楽しんでもらおう)
提督(妙高が今日も木を見上げている)
提督「おおい、なにを見ているんだ?」
妙高「ああ、提督。アブラゼミだけでなくミンミンゼミも鳴いているなと思いまして」
提督「いよいよ夏らしくなってきたな」
妙高「こうしてセミを見ていると、小さいころはよく捕まえたのを思い出します」
提督「意外だな。妙高はそういうことしないと思っていたが」
妙高「足柄に捕まえて見せてくれと頼まれ。提督は捕まえたりしなかったのですか?」
提督「俺はセミよりカブトムシやクワガタを捕まえてたかな。そういえば駆逐艦の子達ならそういった虫は喜ぶだろうか」
妙高「私からはちょっと、女の子が多いのであまり喜ばれない可能性もあります」
提督「欲しがる子がいるなら捕まえてきてやろうかと思ったが」
妙高「それは提督が捕まえに行く口実を欲しいだけじゃないですか?」
提督「ばれてしまったか」
妙高「提督の考えることなら大体わかります」
提督(妙高が何日かぶりの青空を見上げている)
提督「晴れたな」
妙高「晴れましたね」
提督「梅雨明けたな」
妙高「梅雨明けましたね」
提督「太陽が眩しいな」
妙高「これでもかというほど照り付けていますね」
提督「なあ妙高……」
妙高「どうしましたか?」
提督「暑い……」
妙高「提督はわがままですね」
提督「だって文句の一つも言いたくなるだろ。たしかに晴れろといったけど誰がここまでやれといった!」
妙高「いいじゃないですか、夏らしくて」
提督「確かにな……。風鈴でもつけるか」
妙高「視覚的にも聴覚的にも涼しくなっていいですね」
提督「根本は解決していないけどな」
提督(妙高はこの前つけたばっかりの風鈴を見上げている)
提督「よほど気に入ったのか?」
妙高「あ、提督。はい、自分でも驚くほどに風鈴に惹き付けられています」
提督「風鈴を見ている妙高は絵になるな」
妙高「どうしたんですか急に」
提督「いや、大和撫子とは妙高のような女性を指すのだと思ってな」
妙高「少し照れますね」
提督「どうだい、たまにはその髪ほどいてみたら?」
妙高「執務や戦闘の邪魔になるので束ねているのですが」
提督「今日は出撃もないしいいだろ」
妙高「執務のほうは?」
提督「妙高の髪を下ろした姿を見るためだ。今日の分は全部やってみせよう」
妙高「提督の本気を出すポイントがわかりませんね。いいですよ、提督の熱意に負けました」
提督「よし!」
妙高「その代わり、手伝いますが執務はしっかりやってくださいよ」
提督「妙高はしっかりしているな。当たり前だ」
妙高「……はい。どうでしょうか?」
提督「……」
妙高「あの……提督……?」
提督「すまん、見とれていた」
妙高「もう、調子がいいんですから」
提督「繰り返すがやはり妙高のような女性を大和撫子というのだろうな」
提督(妙高がてるてる坊主を見上げている。うん、先客がいるな)
羽黒「妙高姉さん、なにを見ているんですか?」
妙高「あら羽黒。そろそろこのてるてる坊主も片付けないとと思ってね」
羽黒「梅雨も明けましたもんね」
妙高「最後にお礼をしておきましょう」
羽黒「はい!てるてる坊主さん、ありがとうございました」
妙高「ありがとうございました」
羽黒「それにしても数多いですね」
妙高「なんだかんだでみんな作っていきましたからね。提督なんて多すぎて怖いって言ってましたよ」
羽黒「かわいいじゃないですか。それにしてもてるてる坊主って作る人の個性が出ますよね」
妙高「そうね。このかわいらしいのは確か羽黒のよね」
羽黒「はい!このみんなのより少し大きいのは足柄姉さんのですね」
妙高「あとこの少し表情が固いのが那智のね。本人にそっくりだわ」
羽黒「あはは、そうですね!あ、この凄く丁寧なのは妙高姉さんのですよね」
妙高「あら、少し奥にあったのにばれてしまいましたか」
羽黒「妙高姉さんのよさが出ていると思います!」
妙高「ありがとね、羽黒」
提督(なにあのほんわか空間)
提督(妙高が雲を見上げている)
提督「妙高、今日はなにを見ている?」
妙高「あ、提督。入道雲を見ていました」
提督「三大夏の風物詩の一つだな」
妙高「なにがあるんですか?」
提督「昼間に見上げる入道雲、夕暮れのヒグラシの鳴き声、夜遠くから聞こえる花火の音」
妙高「二つはわかりますが花火の音ですか」
提督「ああ、どこからともなく聞こえてくる光も見えない花火が夏らしいんだ!」
妙高「提督は夏にこだわりがあるようですね」
提督「まあな。そういえばそろそろこの近くで花火大会やるみたいだが妙高は行くのか?」
妙高「提督はどうなさるのですか?」
提督「俺か?ここから花火が見えるだろうし、ずっとここにいるかな。もう屋台とか喜ぶ歳でもないしな」
妙高「ではご一緒させてもらってよろしいでしょうか?」
提督「別にかまわないが……姉妹で行ったりしないのか?」
妙高「もうあの子達もお祭りで喜ぶ歳ではないでしょう。それに他の人に誘われているかもしれないし」
提督「そうだな。じゃあ一緒に見ようか」
妙高「ありがとうございます」
提督(妙高と花火を見上げている)
提督「綺麗なもんだな」
妙高「そうですね」
提督「俺がガキのころは花火は近くで見るに限ると思っていたもんだよ」
妙高「どうしてですか?」
提督「音がさ、好きだったんだ。心臓に響いてくるあの音が」
妙高「では今はどうして?」
提督「綺麗なものは遠くから見ても綺麗だなと。こうしてゆっくり見るほうがいいと思ったな」
妙高「ふふ、大人になられたのですね」
提督「しかし、俺もたまには童心に返りたくなる」
妙高「いつも童心に返っていませんか?」
提督「そんなことはない。花火を見ると叫びたくなるだろ、たーまやーって」
妙高「提督、花火の掛け声で有名な玉屋や鍵屋は江戸時代に有名だった花火師の屋号で玉屋にいたっては今は存在していませんよ」
提督「いいんだよ、そんな細かいこと。雰囲気で楽しめれば問題ない」
妙高「よくありません、私も那智も足柄も羽黒も全員妙高と呼ぶようなものですよ」
提督「わかった。じゃあ今日打ち上げている花火師の屋号はなんだ?」
妙高「……たーまやー」
提督「妙高の融通がきくところ俺は好きだよ」
提督(妙高は俺の顔を見上げている)
提督「ど、どうした妙高。なにか俺の顔のについているか?」
妙高「いえ、提督。こういった上目遣いというのが殿方には有効だと雑誌に書いてあったもので」
提督「はぁ、足柄のものか?」
妙高「いえ、羽黒のものです」
提督「そういうお年頃だもんな」
妙高「それで提督には効果はありましたか?」
提督「まあ、そう、なんだ。少しだけ効果あったぞ。少しだけな」
妙高「そうですか。少しだけですか」
提督「なんだ、何かたくらんでいるのか?」
妙高「何もたくらんでいませんよ。ただ……」
提督「ただ?」
妙高「お願い事などがあるときに使おうかと」
提督「例えばどんなだ?」
妙高「そうですね……提督、初風ちゃんの捜索にもう少し力を入れて欲しいのですが」
提督「ぐっ……、中規模作戦が近い今あまり無理は出来ないのだ」
妙高「わかっております。しかし皆さんの錬度を上げることも兼ねて捜索というのも悪くないことだと思います」
提督「わかった……検討しよう」
提督(妙高がぼんやりと空を見上げている)
提督「……」
妙高「あ、提督。そばにいらしたならお声をかけてくださればよかったのに」
提督「いや、な。今日は妙高もなにか思うところはあるのか?」
妙高「それは、ありますよ。色々」
提督「重巡洋艦妙高は終戦まで戦い抜いたもんな」
妙高「私の中の艦の記憶がやっぱり語りかけてきます」
提督「うむ、そうなのか」
妙高「だけど今は感傷に浸る余裕はありません。今だって私たちは戦争の真っ只中です」
提督「そうだな。平和を取り戻すための戦いだ」
妙高「でも……大丈夫でしょうか?」
提督「なにがだ?」
妙高「あ、いえ。変なことを言ってすみません」
提督「いや、いい。謝るな」
妙高「終戦は相手が人間だったから成り立ちました。しかし、深海棲艦相手となると……」
提督「確かに妙高の言おうとしている事はわかる。俺たちの道は二つかもしれない。一つは武力による完全制圧。または殲滅」
妙高「常に新しい種類の深海棲艦が確認されています。これはあまり現実的ではないかもしれません」
提督「ああ、そしてもう一つは……話し合いによる和平だ」
妙高「最近言語を理解する種も現れてるとのデータもありますから近い将来実現するかもしれませんね」
提督「出来ることなら平和な海を眺めたいものだ」
提督(妙高が熱心に風鈴を見上げている)
提督「そんなに風鈴が好きなのか?」
妙高「はい、提督。この透明な見た目と澄んだ音色が私の心を掴んで離さないんです」
提督「そうか……、あ、いいもんがあったな」
妙高「なんでしょうか?」
提督「少し毛色は変わるけど……あったあった」
妙高「なんですかそれは?」
提督「びーどろ、ぽっぺんって言ったほうがわかりやすいかな?」
妙高「どうしてそこに?」
提督「前に佐世保のやつにもらったんだ。使わなくてしまっておいたけど、妙高にあげるよ。気に入るといいけど」
妙高「どうやって使うのですか?」
提督「細くなっているところから息を吹き込むんだ。優しくな、強く吹くと割れてしまうから」
妙高「はい。えっと……」ポッペンポッペン
提督「どうだ?」
妙高「すごく……かわいらしい音ですね」ポッペンポッペン
提督「気に入ってくれたか?」
妙高「はい!」ポッペンポッペン
提督「喜んでくれて嬉しいよ」
提督(妙高がどんやりとした空を見上げている)
提督「妙高、どうしたんだ?」
妙高「あ、提督。夕立が来そうだと思いまして」
提督「ぽい?」
妙高「そっちの夕立ちゃんではありません」
提督「確かに一雨降りそうだな。しかし……」
妙高「どうしたのですか?」
提督「いや、夕立があまり好きではないんだ」
妙高「どうしてですか?」
提督「ただでさえ暑いのに湿度が増してじめじめするだろ。あの空気が好きではない」
妙高「夏らしくていいじゃないですか。提督は夏らしいものがお好きだといっていましたよね」
提督「それとこれとは別だ。さらにいつも俺が移動中に降ってくる。それも俺が傘を持ってないときに限ってだ」
妙高「それは提督が準備をしていないのが悪いのでは?」
提督「それもこれも夕立が悪い」
妙高「提督はわがままですね」
提督「しかし、それもこの前までの話だ。少しだけ考え方が変わった」
妙高「なにがあったのですか?」
提督「妙高が突然の雨に降られたことがあっただろ?」
妙高「ああ、ついこの間ありましたね」
提督「雨に濡れた妙高を見て夕立も悪くないと思ったのだ」
妙高「その発言はセクハラでは?」
提督「違う!妙高のその艶やかな髪が濡れた姿はとても美しい!」
妙高「大きな声を出さないでください……少し……恥ずかしいです……」
提督「濡羽色の髪が美しい女性は日本の財産だ」
提督(妙高が台風の空を見上げている)
提督「ひどい雨だな」
妙高「ええ、提督。風もすごいですね」
提督「今日は全業務は中止だな」
妙高「下手に遠征や出撃をさせたら皆に危険が及びますもんね」
提督「作戦の最中だが、だからこそ今日はみんなに休んでもらうことにしよう」
妙高「皆も喜ぶと思います」
提督「ということで妙高、君も今日は秘書官の業務を休みなさい」
妙高「……そうですか」
提督「どうした?」
妙高「いえ、休日の過ごし方を忘れてしまって」
提督「は?どういうことだ?」
妙高「休みの日は秘書官の業務をしていたため」
提督「それがない日だってあっただろ」
妙高「そういう日は妹たちの演習に付き合っていました」
提督「はぁ……」
妙高「なんですかそのため息は!」
提督「重症だな。仕方ない、命令だ。今日はゆっくり休みなさい」
妙高「そうは言われても……」
提督「……コーヒーとお菓子を持ってくるからそこに座ってなさい」
妙高「そのくらいは私がやります」
提督「いいや、命令だ」
妙高「……はい」
提督「これを機に休み方を覚えろ」
提督(妙高が手持ち無沙汰に空を見上げていた)
提督「おおい、戻ったぞ」
妙高「あ、提督。ありがとうございます」
提督「そんなに暇か?」
妙高「いえ……、提督になにかやってもらっているのに私だけが働かないのは……」
提督「いいんだ。妙高にはいつも世話になっているからこんぐらい問題ない」
妙高「でも……」
提督「ということで妙高は今日一日ゆっくりしてくれ。今からもてなすから」
妙高「……え?」
提督「おおい、入って来い」
那智「妙高姉さん、今日は私たちに何でも言ってください」
足柄「いつも世話になっている分なんでもやっちゃうわよ」
妙高「今日はなにか特別な日でしたっけ?」
羽黒「いえ、提督の気まぐれです」
提督「まあ、そういうことだ」
妙高「頭が痛くなってきそうなのですが……」
那智「達磨を持ってこようとしたら羽黒と提督に止められたため今日はコーヒーでいいでしょうか?」
提督「当たり前だろ」
那智「なに、貴様!休みの日の飲む達磨の美味さがわからぬのか!」
提督「どんだけ声を荒げているんだ。妙高が飲みたいなら今からでも用意させるけど」
妙高「いえ、大丈夫です」
足柄「私からはカツ……といいたいところだけどこれも羽黒と提督に止められたからクッキーでいいでしょうか?」
羽黒「さすがにおやつにカツは重いですよ。コーヒーにもあわないし」
妙高「それじゃみんなで食べましょう。あれ?提督、どちらにいかれるのですか?」
提督「姉妹水入らずの時間を邪魔したら悪いかなって」
妙高「変なところで律儀なんですから」
羽黒「せっかく提督にお誘いいただいたんです。一緒にすごしましょう」
提督「そうか、ではお言葉に甘えて」
提督(8月25日、本日は大安なり。最近の若者はそういうのを気にしなくなったというが古き良き日本男児としてそこは考えるべきであろう)
提督「あーあー妙高。今日は星が綺麗だ。散歩にでも行かないか?」
妙高「珍しいですね、提督。よろこんで受けさせていただきます」
提督(妙高は珍しいと言いながらもさして気にしたそぶりを見せない。あの笑顔はこれから起こることを見過ごしているというのか)
提督「夜だから少しは涼しくなってるかと思ったがそれでも暑いな」
妙高「そうですね」
提督「ここら辺は明かりがあまりないから星が良く見えるな」
妙高「はい。綺麗です」
提督「ただ聞いた話だが海上で見る星はもっと綺麗だとか。俺も見てみたいものだな」
妙高「ふふ、残念ですね。艦娘だけの特権です」
提督「うらやましい限りだ」
提督(さあ、充分歩いただろう。心の準備?そんなものはいつまでたっても完了しないためやらないのが吉だ)
提督「先の中規模作戦はご苦労だった」
妙高「ありがとうございます」
提督「とどめは妙高の一撃だと聞いている」
妙高「いえ、みなさんと力を合わせた結果です」
提督「そうか。まあ、みんなにも感謝している。それとだな、作戦中に錬度が最大になったと聞いている」
妙高「はい」
提督「ここまで長かったな」
妙高「長かったですね」
提督「それでだな……」
妙高「はい」
提督「……ああ、まどろっこしいのは苦手だ。妙高、……俺とケッコンしてくれ」
提督(妙高は少しだけ驚いたように目を大きくし、またいつもの表情に戻った)
妙高「……はい」
提督「これをつけてくれるか?」
妙高「わかりました」
提督(妙高のその細くて綺麗な指に指輪を通す)
妙高「ありがとう……ございます」
提督(妙高の声は震えていて、目にはうっすらと涙が光っていた。それが月明かりに反射して俺は思わず)
提督「綺麗だ……」
提督(なんて呟いてしまった)
妙高「なにがですか?」
提督「いや、なんでもない。それじゃ戻ろうか」
妙高「はい」
提督(妙高が名残惜しそうに空を見上げている)
提督「どうした、妙高」
妙高「いえ、今私はとても幸せで。少しでもこんな時間が続けばなと」
提督「別に戻ったら終わるわけじゃないだろ」
妙高「そうなのですが……」
提督「……わかった。もう少しだけ空でも見てようか」
妙高「ありがとうございます」
提督「気にするな」
妙高「そういえば、せっかくなので聞きたいことがあるのですがよいでしょうか?」
提督「なんだ?」
妙高「こんな夜に連れ出したから私はてっきり月が綺麗だと告白されると思っていました」
提督「そんな気障なセリフは俺にはあわん。男なら玉砕覚悟、当たって砕けろが信念だ」
妙高「……納得しました。とても提督らしいですね」
提督「なるほど、それで少し驚いていたのだな」
妙高「はい」
提督「……なあ、妙高」
妙高「なんでしょうか?」
提督「これからも俺の隣にいてくれるか?」
妙高「そのつもりです。これからも、ずっと……」
以上で終わりです。初心者提督ですが初めてのケッコン相手が妙高さんです。
錬度90あたりから書き始めて今日付けで妙高さんとケッコンしました。
妙高さんは素晴らしい女性なのでこれからSSが少しでも増えたらなと思います。
このSSまとめへのコメント
このようなssが読みたかったんだ
妙高さんのイメージぴったりの作品で最高です。